JP4315771B2 - 有機材料インキの選定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性に優れた有機層を形成するための有機材料インキの選定方法に関する。
有機材料、特に有機高分子材料を利用した有機材料インキ及びその材料で形成される有機デバイスは、有機トランジスタ、有機半導体、液晶表示デバイスなど、多方面で研究されている。
有機材料インキで形成された有機層を含む有機デバイスは、多くの場合、熱的製造プロセスを経由して製造される。低耐熱性の有機材料インキは、この熱的製造プロセスを経由する過程で、材料自体の劣化(バルクの化学構造変化)や、有機材料インキで形成された積層体の層間界面の状態変化を伴い易い。そのため、低耐熱性の有機材料インキを用いた有機デバイスの製造は生産性が悪く、高性能の有機デバイスや有機素子を製造することが難しいという問題があった。材料自体の劣化は、従来より化学構造の研究において高い熱的安定性を有する材料が提案されているため改善されつつある。一方、層間界面の状態変化は、界面の電子状態の影響が大きいと考えられているが、電子状態を解析する手法が十分に確立されていないため、層間界面の状態変化の研究は進んでいない。層間界面の状態変化の少ない積層構造の検討が不十分なまま、有機デバイスの最終的な性能向上を目指して研究が進められているのが現状である。
上述した層間界面を解析する手法としては、多重内部反射赤外分光法や、ケルビンプローブ接触電位差測定法等が提案されている。しかし、これらの手法は特定の界面のみの測定しかできないことから汎用性がなく、さらに再現性にも乏しいという難点があり、上述した層間界面の有効な解析手法とは言えなかった。
ところで、スラブ型光導波路を利用して界面、表面吸着物、薄膜、極微量の試料などのスペクトルを高感度に測定するための装置が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。このスペクトル測定装置は、ある一定の波長幅を持つ光、例えば白色光をレンズで集光して、レンズと所定間隔に設定したプリズムから光をスラブ光導波路の光導波路膜に入射し、光導波路膜内を全反射した光をプリズムを経てプリズムと所定間隔に設定したレンズで取り出し、分光器で出射光を分光し、検出器に送ることにより、極めて大きな反射回数が得られ、高感度のスペクトルの測定が可能である。
特開平8−75639号公報 特開2001−108611号公報
本発明は、耐熱性に優れた有機層を含む有機デバイスの開発を目的としてなされたものであって、耐熱性に優れた有機層を形成する有機材料インキの選定方法の提供を目的とする。
本発明者らは、有機デバイスを形成するための各種の材料について検討している過程で、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定で得られる乾燥過程のスペクトルデータに着目し、そのデータの経時的変化が有機層成膜時の界面現象の状態変化を表していること、及びその状態変化が得られる有機層の耐久性に影響していることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記課題を解決するための本発明の有機材料インキの選定方法は、耐熱性に優れた有機層を形成するための有機材料インキの選定方法であって、有機材料及び有機溶媒を含む異なる組成の有機材料インキを調製するプロセスと、前記有機材料インキで形成した各有機層の乾燥過程における経時的な紫外可視吸収スペクトルデータを、スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定装置を用いて1秒単位で測定するプロセスと、前記各有機層を形成する異なる組成の有機材料インキの中から、前記紫外可視吸収スペクトルデータの330nm〜480nmの範囲で1秒単位の吸収強度変化率が50%以上となる波長を有する有機材料インキを選定するプロセスと、を有することを特徴とする。
この発明は、スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定を行い、その結果得られる経時的なスペクトルデータを基に、異なる有機材料インキで比較を行うことにより、耐熱性に優れた有機層を形成するための有機材料インキを選定する方法である。耐熱性に優れた有機層を形成するための有機材料インキは、前記スペクトルデータが急激な強度変化を伴う不連続点を示す。従って、前記スペクトル測定において、このような強度変化を示す有機材料インキを選定することにより、有機材料インキで形成された有機層の界面状態変化を予測することができ、より望ましい有機デバイスの開発に利用できる。
本発明の有機材料インキの選定方法において、前記紫外可視吸収スペクトルデータが、熱、光、電場及び磁場から選ばれる1又は2以上の外的要素が印加された条件下で測定されることを特徴とする。
この発明によれば、熱、光、電場及び磁場から選ばれる1又は2以上の外的要素が印加された条件下でも、前記スペクトルデータが急激な強度変化を伴う不連続点を示す。従って、前記スペクトル測定においてこのような強度変化を示す有機材料インキを選定することにより、有機材料インキで形成された有機層の界面状態変化を予測することができ、より望ましい有機デバイスの開発に利用できる。
本発明の有機材料インキの選定方法において、前記有機材料インキが、水系溶液、非水系溶液又はそれらの組成物であることを特徴とする。
以上説明したように、本発明の有機材料インキの製造方法によれば、スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定において乾燥過程における経時的なスペクトルデータが急激な強度変化を伴う不連続点を示す有機材料インキを選定するので、この有機材料インキで形成された有機層の界面状態変化を予測することができる。その結果、より望ましい有機デバイスの開発に利用できる。すなわち、前記有機材料インキで形成される有機層、さらにその有機層から形成される有機デバイスは、耐熱性に代表される耐久性に優れたものとなる。
以下、本発明の耐熱性に優れた有機層を形成するための有機材料インキ、その選定方法、及びその有機層を含む有機デバイスについて具体的に説明する。
本発明の有機材料インキの選定方法は、経時的な測定データが急激な強度変化を伴う不連続点を有する有機材料インキを選定することを特徴としている。また、本発明の有機材料インキの選定方法は、熱、光、電場及び磁場から選ばれる1または2以上の外的要素が印加された条件下で行った場合の経時的な測定データが急激な強度変化を伴う不連続点を有するものである有機材料インキを選定することを特徴としている。
そうした選定方法は、有機材料インキの溶液を調製するプロセス(準備プロセス)と、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置を用いてスペクトルデータを測定するプロセス(測定プロセス)と、その測定で得られる経時的なスペクトルデータにおいて急激な強度変化を示す有機材料インキを選定するプロセス(選定プロセス)と、を少なくとも有する方法である。
(準備プロセス)
準備プロセスは、本発明の選定方法の対象となる有機材料インキを形成するため、有機材料及び有機溶媒の選定、その構成部分の含有量の選定、溶液の調製を行うプロセスである。
溶媒種としては、トルエン等の芳香族溶剤、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。より詳細には、水系溶液としては、スルホン化ポリアニリンを5重量%含有する水溶液または水分散液が挙げられ、スルホン化ポリチオフェンを5重量%含有する水溶液または水分散液が挙げられる。非水系溶液としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)を5重量%含有するトルエン溶液、ポリ(p−フェニレンビニレン)を5重量%含有するシクロヘキサノン溶液が挙げられる。
(測定プロセス)
測定プロセスは、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置を用いて、有機材料インキで形成された有機層の状態変化を経時的に測定するプロセスである。
最初に、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置について説明する。スラブ型光導波路分光法は、分子や官能基の振動を捉える赤外分光法ではなく、電子状態やエネルギーバンドギャップに関わる短波長域の界面吸収特性を経時的に測定できる分光法である。そのため、化学結合や化学構造の変化を伴わない膜状態の微妙な変化や相違、ダイナミクスの分析に有効である。
図1は、スラブ型光導波路分光法の原理図である。スラブ型光導波路においては、光導波路基板1に光2を入れると、その光2が光導波路基板1の表面で全反射して進む。このとき、光導波路基板上に測定に供される塗布膜3を形成すると、基板内を全反射して進む光2の表面波が塗布膜中に僅かに染みこむ。この表面波は、エバネッセント波4と言われ、図1中に記載したように、塗布膜内に指数関数的に減衰しながら染みこむ。このときの染み込み深さ(dp)は、次式のように表される。下記式において、λは入射波波長、θは入射角度、nは導波路基板の屈折率、nは塗布膜もしくはサンプル膜周辺環境の屈折率である。
Figure 0004315771
このスラブ型光導波路においては、染み込み深さ(dp)が非常に浅く、調整により光導波路基板1の表面から1μm以内に存在する分子のみについての情報を選択的に且つ非破壊的に解析することができる。また、より薄い光導波路基板1を用いることにより、反射回数を増やすことができ、より高感度で測定することができる。こうしたスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置としては、特開平8−75639号公報及び特開2001−108611号公報に開示されている測定装置を挙げることができ、より具体的には、システムインスツルメンツ社製のSIS−50型装置を挙げることができる。
図2は、特開平8−75639号公報に開示されているスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置の一例を示す構成図である。図2において、光源10としては、遠紫外から遠赤外までのうち任意の波長範囲を持つ光を発射する光源が使用され、例えば、Xeランプが使用される。光チョッパー30は、光源10からの光を一定の周期の断続光にするものであり、光源10と入射光側光ファイバー31の間に設けられる。試料測定部は、入射光側レンズ11、出射光側レンズ15、入射光側プリズム12、出射光側プリズム14、スラブ光導波路13、位置制御機構16を有している。入射光側レンズ11は、入射光側光ファイバー31の出口側の先端に設けられ、出射光側レンズ15は、出射光側光ファイバー32の入口側の先端に設けられる。なお、特開2001−108611号公報に記載のように、プリズムを使用しない光結合法を適用することもできる。
図3と図4は、スラブ型光導波路の平面図と断面図であり、入射光側プリズム12と出射光側プリズム14は、スラブ型光導波路13上に配置される。各プリズム12,14は、試料54と参照部分53をプリズムを付け直すことなく測定可能にするため、細長いものが使用される。スラブ型光導波路13は、光導波路層52を支持するための基板51と、光導波路層52とからなる。スラブ型光導波路13の片側部分には帯状に試料54が載り、その反対側、即ち試料54のない部分は参照部分53となる。
検出部は、図2に示すように、分光器41、光電子増倍管43、増幅器44、及びコンピュータ42を有している。光源10から発射された白色光は、光チョッパー30で一定の周期の断続光にされた後、入射光側光ファイバー31に導入される。入射光側光ファイバー31に導入された断続光は、入射光側光ファイバー31を通り、出光側の先端に設けられた入射光側レンズ11で集光され、適当な角度で入射光側プリズム12に導入される。入射光側レンズ11で集光された断続光は、入射光側プリズム12に導入された後、スラブ光導波路13の光導波路層52内に入射し、その光導波路層52内に入射した断続光は、光導波路層52内で全反射を繰返した後、光導波路層52内から出射し、出射光側プリズム14に導入される。出射光側プリズム14に導入された断続光は、出射光側光ファイバー32の入光側の先端に設けられた出射光側レンズ15により取り出され、出射光側光ファイバー32によって、分光器41に送られる。分光器41によって分光された断続光は、光電子増倍管43、増幅器44を経て、コンピュータ42に送られ演算処理されることにより、スペクトルが得られる。
図5は、本発明に好ましく適用するスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置である。図5に示すスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置は、多重反射型紫外可視吸収スペクトル測定と、蛍光発光スペクトル測定とを同時に行うことができる装置である。この測定装置は、塗布膜3と光導波路基板1との間の多重反射型紫外可視吸収スペクトルを検出する紫外可視吸収用CCD分光器7を備えている。また、光導波路から取り出される蛍光発光9を検出する蛍光用PMT分光器8を備えている。なお、符号5はプリズムであり、符号6は反射ミラーである。
この多重反射型紫外可視吸収スペクトル測定は、界面の電子状態変化、配向状態に関する情報を入手するのに有効である。
こうしたスペクトル測定装置は、上記の各分光器7,8から得られた経時的な分光情報を、解析装置101に出力する。図5に示す解析装置101は、得られた分光情報を解析可能に処理する機能を有するものであれば特に限定されず、パーソナルコンピュータ等の演算機能を内蔵した情報処理装置又は画像表示装置、又は演算素子を内蔵したプリンター装置等を挙げることができる。こうした解析装置101により、例えば図5に示すように、時間軸に対する分析情報を表示することができる。
塗布膜の乾燥過程における経時変化は、外的要素を与えない状態で、又は、外的要素を一時的、断続的又は連続的に印加した状態で測定される。
上記の外的要素とは、一時的、断続的又は連続的に印加される熱、光、電流及び磁気から選ばれる1又は2以上の要素のことである。有機材料インキの乾燥過程にこれらの外的要素を印加することにより、塗布膜の乾燥過程での界面状態の経時変化情報が測定される。
熱には、温熱と冷熱が含まれる。光には、レーザ(位相のそろった単色光)、紫外線、可視光線、赤外線等、波長の異なる光が含まれ、また、電子線、放射線が含まれ、また、X線、γ線等の放射も含まれる概念で定義する。電流は、直流でも交流でもよく、電流値も各種の値で印加可能である。磁気は、任意の磁場を与えた場合であり、磁石による磁場でも電磁石によるものでもよい。
熱を印加する装置としては、例えば、ホットプレート、熱線ヒーター等が挙げられ、光を照射する装置としては、例えば、紫外線露光装置、電子線露光装置等が挙げられ、電流を印加する装置としては、例えば、直流電源装置又は交流電源装置が挙げられ、磁気を印加する装置としては、例えば、電磁石、強力永久磁石等が挙げられる。
また、一時的にとは、上述した外的要素を一度印加することにより、塗布膜の化学情報が経時的に変化するような場合に適用される印加スタイルである。また、断続的にとは、上述した外的要素を一定時間毎に印加することにより、塗布膜の化学情報が経時的に変化するような場合に適用される印加スタイルである。また、連続的にとは、上述した外的要素を絶え間なく連続して印加することにより、塗布膜の化学情報が経時的に変化するような場合に適用される印加スタイルである。
次に、他の測定データとの関係について説明する。
塗布膜に対する他の測定として、熱分析測定や質量分析、分光分析を行うことができる。熱分析測定としては、熱重量減少変化測定(TGA)、示差熱分析測定(DSC)、昇温脱離ガス分析測定(TDS)等を挙げることができる。これらのうち、熱重量減少変化測定(TGA)や示差熱分析測定(DSC)等の一般的な熱分析測定を行うことによって、界面の重量変化やエネルギー変化に関する情報を入手することができ、塗布膜の乾燥過程における界面の電子状態変化と膜の熱的挙動変化との関係が明らかとなる。また、質量分析としては、一般的な質量分析装置(MS)を連動させて行うことにより、膜界面の熱的変化や経時的変化中に生じたガス成分に関する情報を入手することができ、アウトガス分析結果との間では、界面の電子状態変化と、変化の過程で膜より生じる分解物、アウトガス成分との関係が明らかとなる。また、分光分析装置としては、赤外分光測定(IR)、蛍光発光分光測定、ラマン分光測定、X線光電子分光測定(XPS)、和周波分光測定(SFG)、第2高調波分光測定(SHG)等を挙げることができる。これらのうち、赤外分光測定(IR)を連動させることにより、化学結合や、化学構造変化に関する情報を入手することができ、界面の電子状態と膜の化学構造変化、変質との関係が明らかとなる。
こうした異種分析手段での測定については、外的要素を印加して得られたスペクトルデータを時間軸展開し、その結果明らかになった塗布膜に生じる変化を段階毎に特定し、その段階毎に保持した状態で行うことが望ましい。その結果として得られた分析データは、例えばスペクトルデータの顕著な状態変化の解明に有効に利用することができる。
また、こうした異種分析手段での測定を、外的要素を印加して行ったスペクトル測定と同じ外的要素を同じ条件で塗布膜に経時的に印加しながら行うようにしてもよい。この場合には、異種分析手段の外的要素の印加条件を、スペクトル測定の場合と同じにして測定するので、得られた分析データは、例えばスペクトルデータとの対比が容易であり、その結果、状態変化の解明に有効に利用することができる。
また、上述したスペクトルデータ及び分析データ、さらにそれらの解析結果を、有機材料インキで形成された有機層の特性データと比較し、両者の関係をより解析することができる。有機層の特性データとしては、例えば、耐熱性データ、耐光性データ、膜硬度データ、ガスバリア性データ等を挙げることができる。こうした特性データは、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置で測定されたスペクトルデータや異種分析手段により測定された分析データと対比される。対比した結果、特性データの特異的な結果が、スペクトルデータ及び分析データ、さらにそれらの解析結果に対応している場合に、そのスペクトルデータが示す界面挙動の状態変化が特性に影響していることが明らかになる。
(選定プロセス)
選定プロセスは、測定で得られる経時的なスペクトルデータにおいて急激な強度変化を示す有機材料インキを選定するプロセスである。異なる組成の有機材料インキを上述の測定装置で測定し、得られた経時的な測定データが急激な強度変化を伴う不連続点を有する有機材料を挙げ、それぞれの対比から明らかになる結果に基づいて最適な材料が選定される。また上述の分析結果と対比して最適な材料を選定してもよい。
「経時的な測定データが急激な強度変化を伴う不連続点を有する」とは、スラブ型光導波路を利用した塗布膜の乾燥過程における経時的なスペクトル測定データにおいて、秒単位で測定したときに、吸収強度変化率が50%以上であるような急峻な変化を示し、不連続点を有する変化を示すことをいう。
なお、上述した塗布膜は、有機材料インキを塗布した塗布膜に対応する。
ここで、有機材料インキの乾燥過程とは、例えば、有機材料インキを光導波路基板上に塗布した後、その材料中に含まれる溶媒等が除去したり、化合物が反応したりして成膜される経時変化過程のことである。
こうした経時変化の態様は、有機材料インキからなる塗布膜の配向性、結晶性に最も関与するものである。結晶性とは、膜全体における結晶化割合をいい、配向性とは、同じ方位を持つ結晶が膜中に含まれる割合をいう。その塗布膜を乾燥して得られた有機層は、高結晶性、高配向性であるため、耐熱性等の特性について優れた性質を有し、熱的製造プロセスを経由する有機デバイスには極めて有効である。
また、塗布適正を向上させる目的で水溶液、非水溶液又は組成物に界面活性剤等の添加剤を加えて用いる場合でも、その添加によって膜界面の電子状態にどのような影響が出るかについて経時的に解析することも可能である。
本発明においては、塗布膜の材料特性に応じて、又は、印加する外的要素と塗布膜との間の関係に応じて、各種の外的要素から適当な外的要素を選択する。このとき、1種類の外的要素を印加してもよいし、2種類以上の外的要素を印加してもよい。2種類以上の外的要素を印加する場合には、各外的要素の印加スタイル(一時的、断続的、連続的)は同じにしてもよいし、異なる印加スタイルにしてもよい。例えば、一の外的要素は連続的に印加し、他の一の外的要素は断続的に印加することもできる。
本発明の有機材料インキは、こうした外的要素を付与した場合においても、その塗布膜の乾燥過程でのスペクトルデータの経時的な変化が、上述した変化態様であることが好ましく、それゆえ、結晶性、配向性について優れた性質を有し、分子配列が規則的であるため耐熱性、耐光性、膜強度、膜硬度、緻密性、ガスバリア性等に優れた有機層が形成されることとなる。
以上説明した有機材料インキは、有機デバイスに含まれる有機層を構成することが好ましい。得られる有機層は、安定した特性を有するので、その有機層から形成される有機デバイスは、熱的プロセスダメージが少なく、耐熱性等の耐久性に優れる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1)
同一の有機材料を用い、異なる有機溶媒を用いて、2種類の有機材料インキを調製した。有機材料としては有機デバイスの電荷輸送材料として重要な導電性高分子材料の一例としてADS社製試薬ADS100REを用い、有機溶媒としては、関東化学株式会社製特級エチルベンゼン及び同社製特級トルエンを用いた。この2種類の溶媒にそれぞれADS社製試薬ADS100REの固形分を1重量%濃度で加温攪拌により完全に溶解させ、0.2μmフィルターにより塵除去を行った。次にそれぞれの有機材料インキを光導波路基板上に塗布した。トルエンを溶媒とした有機材料インキより形成された塗布膜を「塗布膜A」、エチルベンゼンを溶媒とした有機材料インキより形成された塗布膜を「塗布膜B」とする。
次に、スラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定装置(システムインスツルメンツ社製、SIS−50型)を用いて、上述した有機材料インキで成膜した塗布膜の乾燥過程の経時的な界面紫外可視吸収スペクトルデータを測定した。測定は、上述した溶液を、合成石英からなる光導波路基板(システムインスツルメンツ社製)の上に0.1mL滴下し、その後、室温で徐々に乾燥させて塗布膜中の溶媒種を揮発させ、乾燥過程における経時的なスペクトルデータを測定した。このとき、エバネッセント波の染み込み深さは約1μmであり、約1秒間隔で測定した。
この結果を図6及び図7に表す。図6及び図7中1〜3の符号は経時的な測定順を示し、その順は乾燥が進行することを示している。
図6に示すように、トルエンを溶媒とした塗布膜Aの乾燥過程における経時的なスペクトルデータは、秒単位の吸収強度変化率が50%以上であるような急激な変化を示さず、連続的であった。一方、図7に示すように、エチルベンゼンを溶媒とした塗布膜Bの乾燥過程における経時的なスペクトルデータは、秒単位の吸収強度変化率が50%以上であるような急激な変化を有するものであった。特に図7中の測定順2、3の480nm近傍においては、吸収強度がそれぞれ約2.3、1.1を示し、(2.3−1.1)/2.3×100≒52となり、秒単位の吸収強度変化率が52%であった。また、測定順2,3の330nm近傍においては、吸収強度がそれぞれ約3.2、1.5を示し、(3.2−1.5)/3.2≒53となり、秒単位の吸収強度変化率が53%であった。また、図6および図7の測定順3を比べてみると、全く同一の導電性高分子材料を用いているにも関わらず、乾燥塗布膜の吸収特性が異なっていることが分かる。
(実施例2)
上述の塗布膜A及び塗布膜Bを乾燥させたものを用意した。トルエンを溶媒とした有機材料インキより形成された塗布膜Aを乾燥したものを「有機層A」、エチルベンゼンを溶媒とした有機材料インキより形成された塗布膜Bを乾燥したものを「有機層B」とする。
有機層A及び有機層Bの耐熱性(熱的安定性)を、膜の光透過率、色度変化を尺度に測定した。耐熱性試験は洗浄済みの無アルカリガラス上に同一の膜厚1μm、同一の乾燥条件(室温常圧1時間乾燥)により形成した塗布膜を150℃のホットプレート上3時間静置することにより行い、その静置前後の特性を評価した。膜の光透過率及び色度測定は、オリンパス光学工業株式会社製顕微分光測定システムOSP−100を用いた。
結果を表1に示す。有機層Bは、熱的な劣化が顕著に現れる短波長域での強度変化(すなわち黄変)が小さく変色も少ないことがわかった。
Figure 0004315771
このことから、以下のことが考察できる。
有機デバイスを作成する乾燥工程等の熱的プロセスでは、ホットプレートのような熱源から、一般にガラス基板、膜界面、膜バルクの順で熱が伝導する。この過程で特にガラス基板から膜界面への熱の伝導、あるいはその伝導に伴う界面分子の構造変化、劣化に際し、有機層Aでは、分子配列が規則的でないため、分子鎖は比較的自由に動くことが可能であり、鎖切断や化学構造変化を起こしやすく、結果として膜の光透過率、色度に大きな変化が現れたものと思われる。一方、有機層Bでは、分子は配向性を持ち規則的に配列していると考えられ、分子運動性が比較的制限されるため耐久性が高く、結果として膜の光透過率、色度に変化が現れず、同一の有機材料を用いたインキでも、高耐熱性、高熱安定性の有機層が形成できたものと考えられる。この結果は、乾燥過程における溶媒種からなるπ電子層が塗布膜から一気に抜けることを示しているものと推察される。すなわち、乾燥過程の初期においては、光導波路基板面に並行なπ電子平面(高分子有機化合物)/並行なπ電子層(溶媒)/並行なπ電子平面(高分子有機化合物)の積層構造が一時的に形成されているものと考えられ、その後、乾燥が進むと、溶媒が一気に揮発し、上記の並行なπ電子層(溶媒)が抜け、図7に示すように劇的な吸収強度の変化が生じると考えられる。その結果、光導波路基板面に並行なπ電子平面(高分子有機化合物)/並行なπ電子平面(高分子有機化合物)からなる積層構造がそのままの状態で安定化すると考えられる。そうしたことは、その後の乾燥過程において吸収強度に変化が生じないことからも説明できる。
こうした界面紫外可視吸収スペクトルの結果は、有機材料インキで形成された有機電子素子の特性データをよく説明できる。結晶性や配向性が高い塗布型の有機電子素子では、界面分子の移動が不可能であるため、鎖切断や化学構造変化が起こりにくく、耐熱性、耐光性、膜強度、膜硬度、緻密性、ガスバリア性等に優れる。したがって、エチルベンゼンを溶媒種とする溶液から形成された規則的な積層構造を有する膜が、耐熱性に代表される耐久性に優れているという、図7に示す結果は矛盾なく説明される。
従来、素子作製し、特性評価まで行わなければ最適な有機材料インキを選定できなかったが、本発明の解析方法によれば、界面紫外可視吸収スペクトルと特性データとを対比して塗布膜界面の化学状態を解析することによって、乾燥過程での界面紫外可視吸収スペクトル変化が意味する現象を把握できる。その結果、この解析結果を援用することにより、他の有機材料インキの選定について、素子作製し、特性評価まで行わなくても、選定作業における方向性が明らかになるので、選定の大幅な簡略化が期待できる。
スラブ型光導波路分光法の原理図である。 特開平8−75639号公報に開示されているスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置の一例を示す構成図である。 スラブ型光導波路の平面図である。 スラブ型光導波路の断面図である。 本発明に好ましく適用するスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置である。 トルエンについての乾燥過程における塗布膜Aの界面紫外吸収スペクトルである。 エチルベンゼンについての乾燥過程における塗布膜Bの界面紫外吸収スペクトルである。
符号の説明
1 光導波路基板
2 光
3 膜(塗布膜)
4 エバネッセント波
5 プリズム
6 反射ミラー
7 紫外可視吸収用CCD分光器
8 蛍光発光用PMT分光器
9 蛍光発光
10 光源
11 入射光側レンズ
12 入射光側プリズム
13 スラブ型光導波路
14 出射光側プリズム
15 出射光側レンズ
16 スラブ型光導波路の位置、角度の制御機構
30 光チョッパー
31 入射光側光ファイバー
32 光ファイバー
33、34 レンズ
41 分光器
42 コンピュータ
43 光電子増倍管
44 増幅

Claims (3)

  1. 耐熱性に優れた有機層を形成するための有機材料インキの選定方法であって、
    有機材料及び有機溶媒を含む異なる組成の有機材料インキを調製するプロセスと、
    前記有機材料インキで形成した各有機層の乾燥過程における経時的な紫外可視吸収スペクトルデータを、スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定装置を用いて1秒単位で測定するプロセスと、
    前記各有機層を形成する異なる組成の有機材料インキの中から、前記紫外可視吸収スペクトルデータの330nm〜480nmの範囲で1秒単位の吸収強度変化率が50%以上となる波長を有する有機材料インキを選定するプロセスと、を有することを特徴とする有機材料インキの選定方法。
  2. 前記紫外可視吸収スペクトルデータが、熱、光、電場及び磁場から選ばれる1又は2以上の外的要素が印加された条件下で測定される、請求項1に記載の有機材料インキの選定方法。
  3. 前記有機材料インキが、水系溶液、非水系溶液又はそれらの組成物である、請求項1又は2に記載の有機材料インキの選定方法。
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