JP2005076022A - 光重合開始剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 蛍光灯による室内照明光や、口腔内を照らすデンタルライト等の環境光に対しては安定であり操作性に優れる一方、重合用光照射器を用いた強い光照射に対しては迅速に硬化し、優れた物性の硬化体を与えると共に、高温での保存安定性にも優れた、歯科用コンポジットレジン用として好適な光重合開始剤。
【解決手段】 (A)下記一般式(1)
【化1】
Figure 2005076022

(式中、Rは水素原子、水酸基又は炭素数1〜15の有機基であり、Xはハロゲン原子である。)で示される4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン等のトリハロメチル基により置換されたトリアジン−2(1H)−オン化合物、(B)カンファーキノン等のα−ジケトン、(C)N,N−ジメチル安息香酸エチル等の芳香族アミン化合物からなる光重合開始剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フォトレジスト材料、印刷製版材料、ホログラム材料、特に歯科用材料に有用な新規な光重合開始剤並びにこれを配合した1ペースト型の光重合型歯科用コンポジットレジンに関する。さらに詳しくは、従来の光重合開始剤に比べて環境光(強度の弱い光)に対しては安定であるが、ハロゲンランプやキセノンランプ等の照射器を用いた強い光照射により、著しく短時間で速やかに重合が完結し、より高い硬化体物性を得られ、且つ、長期間保存しても活性の低下しない光重合開始剤並びに1ペースト型の光重合型歯科用コンポジットレジンを提供するものである。
光照射によりラジカルまたはイオン種を発生し、重合性の不飽和化合物または環状化合物を重合させる光重合開始剤に関しては、種々の提案がなされている。一般的には、光を吸収しそれ自身が分解して重合活性種を生成する化合物や、さらに適当な増感剤を組み合わせた系が広く検討され、使用されている。
前者の例としては、アシルフォスフィンオキサイド化合物やα−ジケトン化合物が知られており、後者の例としてはα−ジケトン化合物と第3級アミン化合物との組み合わせがよく知られ、特に歯科用材料の分野で有用に用いられている。
例えば、歯科用材料の分野では、当該光重合開始剤は、コンポジットレジンと呼ばれる(メタ)アクリレート系単量体および無機フィラー(充填材)を主成分とするペースト状組成物に添加し、該コンポジットレジンを光重合性のものとするために用いられる。当該コンポジットレジンはペーストの状態で歯牙の充填や成形を行った後に歯科用の光照射器等により光を照射して硬化させて使用される(以下、重合硬化させるために照射する光を「照射光」ともいう。一般にこのような照射は、α−ジケトン化合物の主たる吸収域である360〜500nm程度の波長域における光強度が100〜1500mW/cm程度の出力の光源を用い、0〜10mm程度の距離から行う)。具体的には、歯科診療室内で上記ペースト状組成物を、修復すべき歯牙の窩洞に充填し、歯牙の形に形成した後に、専用の光照射器を用いて照射光を照射して重合硬化させたり、あるいは歯科技工所内において上記組成物を石膏模型上で修復すべき歯牙の形に築盛し、これを光照射により重合硬化させてから硬化体を得、ついで歯科医院において、この硬化体を歯科用接着剤を用いて歯質に接着させる等の方法により歯の修復が行われている(例えば、非特許文献1)。
しかしながら、上記のα−ジケトン化合物と第3級アミン化合物とを組み合わせて光重合開始剤として用いた場合には、充填や築盛等の操作をしている間にペーストの粘度が上昇してしまい、操作が困難になってしまうという問題があった。
即ち、充填や築盛等の操作は人間が形状を確認しつつ行うものであり、また最終的に重合させて得られる硬化体の色調も重要であるため、通常は口腔内を照らすデンタルライトあるいは蛍光灯のような室内灯等の白色光の下で行う必要がある(以下、このような人間の視認のために用いられるこれらの光を「環境光」と呼ぶ。一般的な環境光は、視認性等を考慮して500〜10000ルクス程度に調整されている。光源にもよるが、α−ジケトン化合物の主たる吸収域である360〜500nmにおける光強度は1mW/cm以下であり、前記照射光の数%にも満たない)。他方、近年では、歯科用の光重合開始剤としては、人体に対して影響の少ない可視域の光で重合開始能を有するものが用いられている(例えば、歯科用として代表的なα−ジケトンであるカンファーキノンは、極大吸収波長が468nmにある黄色の化合物である)。そして、上記α−ジケトン化合物に対して第3級アミン化合物を組み合わせた重合開始剤は可視域の光に対して良好な重合活性を有するものであるが、その重合活性の良さゆえ、環境光に対しても鋭敏に感応して硬化が開始する。従って、充填や築盛等の操作に不可欠な環境光の下で作業を行うと、この重合活性の高さが逆に不利に働き、徐々に硬化が進行してしまい、上記のような問題を生じるものである。
充填や築盛等の操作をしている間のペーストの粘度の上昇という現象は、用いる光重合開始剤の添加量を減らしたり重合禁止剤を多めに添加したりすれば回避することが出来る。しかし、このような方法を適用した場合には、照射光を従来と同程度の時間照射しても十分な硬化が起こらずに、得られる硬化体の強度が低下する、硬化体の表面近傍に未重合モノマーが多量に残ってしまう等の問題がしばしば起こる。このため、重合硬化を十分進行させるためには照射光の照射時間を長くする必要がある。しかしながら、上記コンポジットレジンは患者の口腔内で使用されることが多く、照射時間を長く取ることは操作に時間がかかるだけではなく、患者にも多大な負担を強いるという問題があった。
また、光重合開始剤の添加量を減らすなどして環境光安定性を向上させたものでも、照射光の光強度を高くすることによって硬化時間の短縮や、硬化体強度の向上は計れる。しかしながら、高い光強度を得るためにはその分多量のエネルギーが必要となる。また、可視光といえどもあまりに強い光は人体、特に目に対する障害を生じる可能性がある。さらに、一般的に光強度の高い光源は、発熱も強い傾向があるため、その熱による生体へのダメージも懸念されている。そのため近年では、照射光源も低エネルギー化が進行しており、レーザーダイオード等を用いた20〜100mW/cm程度の光照射器が普及し始めている。従って、単純に光重合開始剤の添加量を減らすなどの方法では前記課題の解決は事実上困難である。
即ち、上記従来の光重合開始剤を用いたペースト状組成物では、環境光に対する安定性と照射光に対する反応活性のバランスを取ることが困難、即ち環境光程度の弱い光では硬化が起こらず、他方、歯科用の光照射器等によって強い光照射を行うと急速に硬化するものを得ることはできなかった。さらにまた、患者の負担を軽減するため、従来よりも更に短い時間で充分な硬化性を得ることも同時に求められている。
このような問題を解決すべく、α−ジケトン化合物と第3級アミン化合物の組み合わせ以外の光重合開始剤が種々検討されており、例えば、(メタ)アクリレート系重合性単量体、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤及びアミン化合物を含んでなる光硬化性歯科用材料が知られている(例えば、特許文献1)。この歯科用材料は、十分な環境光安定性と高い硬化体物性を有するものの、硬化に要する光照射時間は従来の光硬化性歯科用材料と同程度であり、更なる短時間化に対する要求を満たすものではなかった。また、重合開始剤成分として、アリルヨードニウム塩、増感剤及び電子供与体を用いることも知られている(例えば、特許文献2)。この光重合開始剤を用いた組成物は重合硬化に要する照射光照射時間が従来に比べて短時間になっている。しかしながら、歯科治療に要する時間を短くするために、更なる短時間での硬化が望まれている。また、当該光重合開始剤を用いた場合には、環境光安定性には大きな改善は見られていない。
一方、トリハロメチル基で置換されたs−トリアジン化合物は光照射により酸を発生する化合物であり、従来、光カチオン重合の重合開始剤として用いられてきたが、近年では、他の成分と組み合わせてラジカル重合の開始剤として用いられ始めている。例えば、アリールボレート化合物、トリハロメチル基で置換されたs−トリアジン化合物等の光酸発生剤及び可視光に吸収を有する色素からなるラジカル重合開始剤が提案されている(例えば、特許文献3、4)。
これら光重合開始剤においては、光酸発生剤が分解して酸を生じ、この酸がアリールボレート化合物を分解して活性ラジカル種を生じ、重合を生起する。アリールボレート化合物の分解によって生じる活性ラジカル種は極めて重合活性が高く、従来のラジカル重合開始剤に比して、酸素による重合阻害を受け難く、また、硬化時間も短く、さらに弱い光に対しても充分な活性を有するとの利点があり、歯科用の接着材用としては極めて有用である。
しかしながら、弱い光に対しても充分な活性を有するということは、逆に、環境光に対する安定性が低いということであり、このような光重合開始剤を歯科用コンポジットレジン用の光重合開始剤として用いることはあまり望ましくはない。
細田裕康編、「光重合型コンポジットレジンの基礎と臨床」、日本歯科出版、昭和61年2月10日、p.9−20 特開2000−16910号公報 特開昭63−273602号公報 特開平1−138204号公報 特開平9−3109号公報
本発明者らは、上記課題を解決し、環境光程度の弱い光(360〜500nmにおいて1mW/cm未満)に対しては高い安定性を有し、しかもハロゲンランプやキセノンランプ、あるいはレーザーダイオード等の照射器による強い光照射(同20mW/cm程度以上)により、著しく短時間で重合が完結し、良好な硬化体物性を得られる歯科用コンポジットレジン用として有用な新規の光重合開始剤として、α−ジケトン化合物及びトリハロメチル基により置換されたs−トリアジン化合物、及びアミン化合物からなる光重合開始剤を見出し既に提案した(特願2003−68737号)。この光重合開始剤においては、アミン化合物として、芳香族アミン化合物と脂肪族アミン化合物とを併用することにより、芳香族アミン化合物のみを使用した場合よりも、硬化体を太陽光等の紫外光に暴露した時の着色が少なく、また、脂肪族アミン化合物のみを使用した場合よりも硬化速度を速くすることができる。
しかしながら、本発明者らのさらなる検討によれば、(メタ)アクリレート系単量体に、上記光重合開始剤を配合した光重合性組成物において、脂肪族アミンとしてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン化合物を配合した場合には、50℃程度の比較的高温での保存時に、経時的に重合活性が低下するという問題点があることがわかった。
歯科用材料においては、歯科医院等への輸送の際に、自家用車等で輸送される場合が多いが、夏季には、このような車内の温度が50℃を超えることも珍しくはない。また、50℃よりも低い温度でも、長期間の保存では、同様に重合活性の低下が起こることが予測される。
従って、本発明は、1mW/cm未満の環境光に対しては高い安定性を有し、しかも照射器による20mW/cm以上の強い光照射を行えば、著しく短時間で重合が完結し、良好な硬化体物性を得られる歯科用コンポジットレジン用として有用な新規の光重合開始剤であって、かつ、保存安定性に優れた光重合開始剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、前記α−ジケトン化合物、トリハロメチル基により置換されたs−トリアジン化合物、及びアミン化合物からなる光重合触媒において、上記s−トリアジン化合物に替えて特定のトリアジン−2−オン化合物を採用すると、保存安定性が向上することを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、(A)下記一般式(1)
Figure 2005076022
(式中、Rは水素原子、水酸基又は炭素数1〜15の有機基であり、Xはハロゲン原子である。)で示される1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン化合物、(B)α−ジケトン化合物、(C)芳香族アミン化合物からなる光重合開始剤である。
本発明の光重合開始剤は、従来公知の光重合開始剤と比較して、強い照射光に対して同じ硬化速度であれば、環境光(弱い光)に対する安定性が高く、逆に、環境光安定性が同等であれば遥かに速く重合硬化を完結させることができる。そして、置換トリアジン−2(1H)−オン化合物を用いることで良好な保存安定性を得ることができ、高温で長時間保存しても重合活性がほとんど低下しない。さらに、得られた硬化体は機械的強度が高く、歯科用充填材である光重合性コンポジットレジンとして特に好適に使用できる。
本発明の光重合開始剤に用いる(A)成分の1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン化合物は少なくとも一つのトリハロメチル基で置換されていることを特徴とする。
上記一般式(1)中、Xで表されるハロゲン原子は塩素、臭素、ヨウ素の各ハロゲン原子が好適に使用されるが、塩素原子が置換したトリクロロメチル基を有する化合物を用いるのが好ましい。
上記一般式(1)中、Rは炭素数1〜15の有機基である。該有機基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等の炭素数1〜15の非置換のアルキル基;トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、α,α,β−トリクロロエチル基等の炭素数1〜15のハロゲンにより置換されたアルキル基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニリル基、ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基等の炭素数6〜15の置換基を有しても良いアリール基;ビニル基、アリル基、2−フェニルエテニル基等の炭素数2〜15の置換基を有してもよいアルケニル基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜15の置換基を有しても良いアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜15の置換基を有しても良いアルコキシ基等が例示される。
上記一般式(1)で示される化合物の中でも、重合活性が優れている点で、Rが置換基を有してもよいアルキル基である化合物を用いることがより好ましく、トリハロゲン置換メチル基(トリハロメチル基)が特に好ましい。
上記一般式(1)で示される置換トリアジン−2(1H)−オン化合物を具体的に例示すると、4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4、6−ビス(トリブロモメチル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−フェニル−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−フェニル−6−トリブロモメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−(p−クロロフェニル)−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−(m−メトキシフェニル)−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−(p−メトキシフェニル)−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−フェニルエテニル−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−フェニルエテニル−6−トリブロモメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−(4−ビフェニリル)−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、4−メトキシ−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン等を挙げることが出来る。
上記トリアジン−2(1H)−オン化合物は1種または2種以上を混合して用いても構わない。また、その一般的な添加量は、重合性単量体100重量部に対して0.005〜10重量部程度、より好ましくは0.03〜5重量部程度である。
本発明の光重合開始剤における第二の成分は、(B)α−ジケトン化合物である。該α−ジケトン化合物としては公知の化合物が何ら制限なく使用できる。上記α−ジケトン化合物を具体的に例示すると、カンファーキノン、カンファーキノンカルボン酸、カンファーキノンスルホン酸等のカンファーキノン類;ジアセチル、アセチルベンゾイル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等を挙げることができる。
使用するα−ジケトン化合物は、重合に用いる光の波長や強度、光照射の時間、あるいは組み合わせる他の成分の種類や量によって適宜選択して使用すればよく、単独または2種以上を混合して使用することもできる。これらのなかでも、歯科用に用いることを考慮すると、可視光域に最大吸収波長を有す化合物であることが好ましく、一般的にはカンファーキノン類が好適に使用され、特にカンファーキノンが好ましい。また、添加量も組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常は重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部の範囲である。配合量が多いほど照射光による硬化時間が短くなり、他方、少ないほど環境光安定性に優れる。
本発明の光重合開始剤における第三の成分は、(C)芳香族アミン化合物である。当該芳香族アミン化合物は、窒素原子に結合した有機基のうちの少なくとも一つが芳香族基であるアミン化合物である。本発明の効果である速い硬化速度は、このような芳香族アミン化合物を用いた場合にはじめて発現する。同じアミン化合物であっても、芳香族アミン化合物に替えて、窒素原子に結合した有機基として芳香族基を有しない(水素原子又は脂肪族基だけが結合している)脂肪族アミン化合物を用いると、ほとんど硬化は進行しない。
上記芳香族アミン化合物としては、公知のものが特に制限なく使用できるが、より重合活性が高く、また揮発性が低いため臭気が少なく、さらには入手が容易な点で、第3級窒素原子に一つの芳香族基と、2つの脂肪族基が結合したアミン化合物(以下、第3級芳香族アミン化合物とも称す)であることが好ましい。代表的な第3級芳香族アミン化合物としては下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
Figure 2005076022
(式中、R及びRは各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していても良いアルキルオキシカルボニル基である。)
上記置換基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等の非置換のアルキル基;クロロメチル基、2−クロロエチル基等のハロゲンにより置換されたアルキル基;2−ヒドロキシエチル基等の水酸基により置換されたアルキル基等の炭素数1〜6のものが挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、p−メトキシフェニル、p−メチルチオフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニリル基等の炭素数6〜12のものが例示され、置換基を有していてもよいアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−フェニルエテニル基等の炭素数2〜12のものが、置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のもの等が例示され、置換基を有していても良いアルキルオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アミルオキシカルボニル基、イソアミルオキシカルボニル基等のアルキルオキシ基部分の炭素数が1〜10のものが例示される。
上記R及びRとしては、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3の非置換のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基を再度具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基等が挙げられる。
また、Rとしては、その結合位置がパラ位であることがより好ましく、さらには、アルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。
このようなRがパラ位に結合したアルキルオキシカルボニル基である芳香族アミン化合物を具体的に例示すると、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸プロピル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸プロピル等が例示される。
また、一般式(2)で示される他の芳香族アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン等が挙げられる。
これら芳香族アミン化合物は、1種または2種以上を混合して用いても構わない。また、その一般的な配合量は、重合性単量体100重量部に対して0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.02〜3重量部である。
なお、芳香族アミン化合物が配合されていれば、それに加えて脂肪族アミン化合物を添加してもよいが、その場合、添加量が増えるに従い重合活性が低下する傾向があるためその添加量はできるだけ少ない方が好ましい。具体的には、配合される1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン化合物1モルに対して、脂肪族アミン化合物が0.5モル以下、好ましくは0.1モル以下、特に好ましくは全く含まれないことである。
本発明の光重合開始剤は重合性単量体を重合させるために用いられるものであり、特に制限なく公知の如何なる光重合性組成物用の重合開始剤として用いても良いが、なかでも、環境光安定性と硬化速度とを共に優れたものするという要求が特に強く、さらには一回当たりの使用量が少ないため、製造後、長期に保存されることの多い光重合型の歯科用コンポジットレジン用の重合開始剤として使用することが好ましい。
該光重合型の歯科用コンポジットレジンとは、ウ蝕等により欠損した歯牙を修復するために用いられる材料であり、一般には、(メタ)アクリレート系の重合性単量体と無機充填材を主成分とし、可視光の照射により重合硬化させるために光重合開始剤が配合されている。また、操作性を良好なものとするために、使用時に混合する必要のない1ペースト型の材料とされているものが多い。
以下に、本発明の光重合開始剤を用いた光重合性組成物の代表例である光重合型の歯科用コンポジットレジンをより詳しく説明する。
該光重合型の歯科用コンポジットレジンに含まれる重合性単量体としては、酸性基(スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸残基等)を有さない(メタ)アクリレート系の重合性単量体が、硬化速度や硬化体の機械的物性、耐水性、耐着色性等の観点から好適に用いられ、特に、複数の重合性官能基を有する、多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体が好ましい。当該多官能性の(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、公知のものが特に制限なく使用できる。一般に好適に使用されるものを例示すれば、下記(I)〜(III)に示されるものが挙げられる。
(I)二官能重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン(以下、bis−GMAと略記する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、D−2.6Eと略記する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略記する)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
(II)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(III)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
これら多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体は、必要に応じて複数の種類のものを併用しても良い。
さらに、必要に応じて、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等の単官能の(メタ)アクリレート系単量体や、上記(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を用いても良い。
なお、本発明の光重合開始剤の必須成分である芳香族アミン化合物は、酸と反応して塩を生じ、重合活性を失う傾向があるため、(メタ)アクリル酸、p−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフェート等の酸性基を有する重合性単量体は、(メタ)アクリレート系単量体等の不純物等として不可避的に混入してくる場合を除き、できる限り配合しない方が好ましい。なお、一般的な不純物量程度である場合には、前記アミン化合物を多めに使用することで重合活性を維持することが可能である。また、このような酸性化合物の中和の目的で脂肪族アミン化合物を配合しても良い。但しこの場合、前記したアミン化合物の好適な配合量は、このような酸により中和されて塩になった分を除く量である。
また、前記無機充填材としては、歯科用コンポジットレジンの充填材として公知の無機充填材が何ら制限なく用いられるが、代表的な無機充填材を例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等の金属酸化物類が挙げられる。また必要に応じて、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の歯科用の無機充填材として公知のカチオン溶出性の無機充填材を配合しても良い。これらは一種または二種以上を混合して用いても何ら差し支えない。
また、これら無機充填材に重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合充填材を用いても良い。
これら充填材の粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm〜100μm(特に好ましくは0.01〜5μm)の平均粒径の充填材が目的に応じて適宜使用できる。また、該充填材の屈折率も特に制限されず、一般的な歯科用の無機充填材が有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用でき、目的に合わせて適宜設定すればよい。粒径範囲や、屈折率の異なる複数の無機充填材を併用しても良い。
さらに、上記充填材の中でもとりわけ球状の無機充填材を用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた歯科用コンポジットレジンとなり得る。
上記無機充填材は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみを良くし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
これらの充填材の割合は、使用目的に応じて、重合性単量体と混合したときの粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、一般的には重合性単量体100重量部に対して50〜1500重量部、好ましくは70〜1000重量部の範囲で用いられる。
また、歯牙の色調に合わせるために顔料、蛍光顔料、染料、紫外線に対する変色防止のために紫外線吸収剤を添加してもよいし、その他、歯科用コンポジットレジンの成分として公知の添加剤を、本発明の効果に影響のない範囲で配合しても良い。
このような光重合型のコンポジットレジンを製造する方法は特に限定されず、公知の光重合型コンポジットレジンの製造方法に従えばよい。一般的には、遮光下、配合する各成分を所定量秤とり、均一になるまで混練すればよい。
本発明の光重合開始剤を歯科用コンポジットレジンに配合する際の好適な配合量は、該光重合開始剤を構成する(A)〜(C)成分が前記範囲内にあり、かつその合計量が、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、さらには0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。
本発明の光重合開始剤は上記のような1ペースト型の光重合型歯科用コンポジットレジンにおいて特に好適に使用されるが、重合性単量体と混合した光重合性組成物として、その他の用途にも使用できる。その用途としては特に限定されないが、例えば歯科用の接着剤や義歯床材料、さらにはフォトレジスト材料、印刷製版材料、ホログラム材料等が挙げられる。これら一般的な用途においては、前記(メタ)アクリレート系重合性単量体に加えて、しばしば重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性の調節のために、上記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。これら他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これらの重合性単量体は単独または二種以上を一緒に使用することができる。
さらに本発明の光重合開始剤を配合した光重合性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の公知の重合開始剤を配合しても良い。当該他の重合開始剤成分としては、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類;酸化バナジウム(IV)アセチルアセトナート、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)等の+IV価又は+V価のバナジウム化合物類;テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩、テトラフェニルホウ素ジメチル−p−トルイジン塩、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム、ブチルトリ(p−フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム等のアリールボレート化合物類;3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、7−ヒドロキシ−4−メチル−クマリン等のクマリン系色素類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンソイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体;ベンゾフェノン、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体類等が挙げられる。但し、高い環境光安定性を得るためには、アリールボレート化合物類及び有機過酸化物はできる限り少量にした方が良い。また、クマリン系色素類等の色素類は、重合開始剤として作用するほどの量を配合すると、光重合性組成物の色調に大きな影響を与え、高い審美性を要求される歯科用コンポジットレジンにおいては、歯と異なる色調となってしまう傾向がある。
また、本発明の光重合開始剤を配合した光重合性組成物には、目的に応じその性能を低下させない範囲で水、有機溶媒や増粘剤等を添加することも可能である。当該有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、酢酸エチル等があり、増粘剤としてはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物や高分散性シリカが例示される。
本発明の光重合開始剤を配合した光重合性組成物を硬化させる際には、α−ジケトン系の光重合開始剤を硬化させるために用いられるのと同じ公知の光源を用いればよいが、低強度の光照射に対しては比較的安定で、他方、ある一定以上の高強度の光照射により急速に硬化するという本発明の光重合開始剤の特徴を生かすため、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、LED、ハロゲンランプ、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の可視光線の光源が何ら制限なく使用される。照射時間は、光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておけばよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略称(かっこ内)を以下に示す。
(1)略称・略号
(A)トリハロメチル基により置換された1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン化合物
・4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン(BTTO)
・4−フェニル−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン(PTTO)
(B)α―ジケトン
・カンファーキノン(CQ)
(C)芳香族アミン化合物
・N,N−ジメチルp−安息香酸エチル(DMBE)
・N,N−ジメチルp−安息香酸イソアミル(DMBI)
・N,N−ジメチルp−トルイジン(DMPT)
(D)重合性単量体
・2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン(bis−GMA)
・2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(D2.6E)
・トリエチレングリコールジメタクリレート(3G)
・1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルオキサン(UDMA)
(E)無機充填材
・球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシトリメトキシシラン表面処理物;平均粒径;0.5μm(E−1)
・球状シリカ−チタニア、γ−メタクリロイルオキシトリメトキシシラン表面処理物;平均粒径;0.08μm(E−2)
(F)その他の成分
・2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(TCT)
・トリエタノールアミン(TEOA)
・ハイドロキノンモノメチルエーテル(HQME)
また、光硬化性コンポジットレジンの調製方法、硬化特性(環境光安定性、硬化時間)及び硬化体の機械的強度の測定は以下の方法を用いた。
(1)光硬化性コンポジットレジンの調製方法
重合性単量体に対し所定量の光重合開始剤と無機充填材を加え、赤色光下にて均一に攪拌、脱泡して調製した。
(2)照射光のつよさ
被照射面における光強度(mW/cm)は、ウシオ電機株式会社製UIT−101を用い、360〜500nmの波長で測定して得た値を用いた。
(3)照射光による硬化速度
6mmφ×1.0mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに、調製したコンポジットレジンのペーストを充填してポリプロピレンフィルムで圧接し、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社;光出力密度700mW/cm)をポリプロピレンフィルムに密着して5秒、10秒、15秒と5秒間隔で照射し、それぞれの照射時間での硬化体の硬さを手で触って以下の基準で評価した。このときの照射面における光強度は640〜650mW/cmであった。
○:十分硬化して硬い。
△:少し硬化しているが柔らかいゲル状。
×:全く硬化していない。
(4)硬化体の硬度(ヴィッカース硬度)
6mmφ×1.0mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドにペーストを充填してポリプロピレンフィルムで圧接し、歯科用光照射器(LUX・O・MAX、アケダデンタル社;光出力密度137mW/cm)をポリプロピレンフィルムに密着して10秒照射し、硬化体を調製した。得られた硬化体を微小硬度計(松沢精機製MHT−1型)にてヴィッカース圧子を用いて、荷重100gf、荷重保持時間30秒で試験片にできたくぼみの対角線長さにより求めた。このときの照射面における光強度は640〜650mW/cmであった。
(5)保存安定性の評価
調製した光硬化性コンポジットレジンを50℃に設定したインキュベーター内に遮光下保管し、一定期間毎に(3)と同様な方法でヴィッカース硬度を測定し、得られたヴィッカース硬度値の経時変化から保存安定性を評価した。
(6)環境光安定性試験
ペースト状の硬化性組成物試料の表面が10000ルックスになるように光源と試料との距離を設定した。光源には15W蛍光灯(松下電器製、商品名パルック)を用い、照度計(デジタルルックスメーターFLX−1330、東京硝子器械製。400〜700nmに感度を有する。)にて測定される照度が上記照度になるよう、試料と蛍光灯の距離を設定した。この照射面における光強度は0.4mW/cmであった。作製した光硬化性コンポジットレジンのペーストをポリプロピレンフィルムに0.03g量り採り、上記蛍光灯の光を所定時間時間照射した後、試料を押しつぶし、試料内部が固まり始めた時間を計測した。なお、照射時間は5秒間隔とした。この時間が長いほど環境光安定性に優れ、良好な操作余裕時間を得ることができる。
(7)曲げ強度
ステンレス製型枠に硬化性組成物を充填し、ポリプロピレンで圧接した状態で、一方の面から10秒×3回、全体に光が当たるように場所を変えてトクソーパワーライトにてポリプロピレンに密着させて光照射を行なった。ついで、反対の面からも同様にポリプロピレンに密着させて10秒×3回光照射を行ない硬化体を得た。#800の耐水研磨紙にて、硬化体を2×2×25mmの角柱状に整え、この試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ破壊強度を測定した。
実施例1〜5
bisGMA(60重量部)、3G(40重量部)からなる重合性単量体100重量部、無機充填材E−1を140重量部、E−2を60重量部、重合禁止剤としてHQMEを0.15重量部、及び表1に示す光重合開始剤からなる光硬化型コンポジットレジンを暗所下、メノウ乳鉢を用いて攪拌混合してペースト状の組成物を調製した。上記ペーストの環境光安定性ならびに硬化速度、硬化体のヴィッカース硬度ならびに曲げ強度を測定した。また、保存安定性に関しても評価を行なった。結果を表1に示す。
Figure 2005076022
比較例1〜5
実施例1〜5と同様に、表1に示す組成からなるペースト状の光硬化型コンポジットレジンを調製し、環境光安定性、硬化速度、曲げ強度及びヴィッカース硬度による保存安定性を評価した。なお、ヴィッカース硬度の測定は光照射の所定時間を10秒として得られた硬化体で行なった。
実施例1〜5及び比較例1〜5から理解されるように、トリアジン−2−オン化合物、α−ジケトン化合物、及び芳香族アミン化合物からなる光重合開始剤を配合した光重合性組成物は高い環境光安定性と良好な硬化速度、高い曲げ強度を有し、しかも50℃で14日保存後でもヴィッカース硬度は初期(0日)と同等であった。また、表中には示さなかったが、実施例1のコンポジットレジンは、50℃で96日保存後でもヴィッカース硬度は14と、初期の2/3程度の高い割合を保っていた。
比較例1は、本発明の必須成分であるトリアジン−2−オン化合物を加えない場合である。比較例1と実施例1〜4の比較から理解されるように、トリアジン−2−オン化合物が配合されない場合には、硬化速度が遅く、曲げ強度やヴィカース硬度も低いものとなる。
比較例2はトリアジン−2−オン化合物に替えてトリアジン化合物を加えた場合である。比較例2と実施例4の比較から、トリアジン化合物を加えた場合は初期の硬化性は高く硬化速度も速いが、50℃で14日保存後には初期の約半分のヴィッカース硬度に低下してしまう。
比較例3は、本発明の必須成分である芳香族アミンを添加しない場合である。この場合、非常に硬化速度は遅く、ほとんど硬化は進行しなかった。
比較例4は、芳香族アミン化合物に替えて、脂肪族アミン化合物であるトリエタノールアミンを用いた場合の例である。この場合にもほとんど硬化は進行せず、アミン化合物を全く配合しない場合と同等の結果しか得られなかった。
比較例5は、α−ジケトンを加えなかった場合の結果であり、やはりほとんど硬化は進行しなかった。

Claims (3)

  1. (A)下記一般式(1)
    Figure 2005076022
    (式中、Rは水素原子、水酸基又は炭素数1〜15の有機基であり、Xはハロゲン原子である。)で示される1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン化合物、(B)α−ジケトン化合物、(C)芳香族アミン化合物からなる光重合開始剤。
  2. 請求項1記載の光重合開始剤を配合した歯科用光重合性組成物。
  3. 請求項1記載の光重合開始剤、(D)酸性基を有さないラジカル重合性単量体、(E)無機充填材を含む1ペースト型の光重合型歯科用コンポジットレジン。
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