JP2005074946A - 印刷装置、印刷方法及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】 自然画の画質向上を図る。
【解決手段】 2種類以上の濃度が異なるブラックインクを吐出するブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷をする印刷装置において、自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類が異なる。
【選択図】 図13

Description

本発明は、媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタ等の印刷装置、印刷方法及びプログラムに関する。
紙や布、フィルムなどの各種媒体に対してインクを吐出して印刷を行う印刷装置として、インクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、シアン(C)やマゼンダ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)といった各色のインクを吐出するインク吐出部を備え、このインク吐出部から各色のインクを吐出して媒体に印刷を行う。
ところで、このようなインクジェットプリンタで吐出されるブラック(K)のインクは、他の色のインクに比べて色が濃く、このため、媒体に吐出されたときに、非常に滲みが目立ち易いといった問題があった。このようにインクの滲みが目立ち易いと、印刷される画像の画質に悪影響を及ぼし、画質低下を招く大きな要因となる。
そこで、従来から、ブラック(K)のインクを吐出する際には、その吐出のためのデータに基づき、ブラック(K)のインクが吐出される領域の輪郭部を抽出して、その輪郭部に対してインクの吐出量を少なく設定する処理が行えるようになっている(特許文献1、2及び3参照)。このような処理を行うことによって、輪郭部におけるブラックインクの滲みを抑制することができ、画像全体の画質向上を図ることができる。
特開2002−292848号公報 特開2003−53943号公報 特開2003−48340号公報
この他に、ブラック(K)のインクには、前述したように他のインクに比べて色が濃いため、媒体上にドットとして形成されたときに、そのドットがはっきりと目立つという、いわゆるドット視認性(粒状性)の問題があった。このようにドットが目立つと、デジタルカメラ等で撮影された写真をはじめとする自然画を印刷した場合に、印刷画像にざらつき感が発生するという不具合が発生することがあった。
一方、ブラック(K)のインクは、文字や記号などのテキスト画像を印刷する場合には、その輪郭をはっきり目立たせるために、色の濃度が濃い方が好ましい。これは、インクの色の濃度が淡いと、文字や記号等の輪郭がくっきりと表れず、見づらくなるからである。
本発明は、このような事情に鑑みたものであって、その目的は、自然画印刷時におけるドット視認性の問題を可及的に解消することができ、またテキスト画等の自然画以外の画像の印刷時に輪郭をくっきりさせてそれぞれ画像向上が図れるようにすることにある。
前記目的を達成するための主たる発明は、色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷を施す印刷装置において、
自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類が異なることを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
本発明によれば、自然画と自然画以外の画像について各々画質の向上を図ることができる。
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷を施す印刷装置において、
自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類が異なることを特徴とする印刷装置。
このように自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、吐出するブラックインクの種類が異なることで、自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで個々に相応しい適したブラックインクを用いることができ、これにより、自然画及び自然画以外の画像の画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記自然画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他の前記ブラックインクに比べて色の濃度が低くても良い。このように色の濃度が低いブラックインクを用いることにより、自然画の画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記自然画以外の画像に、テキスト画が含まれていても良い。このようにテキスト画については、自然画と異なる種類のブラックインクを用いることによって、画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記テキスト画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他のブラックインクに比べて色の濃度が高くても良い。このようにテキスト画については、色の濃度が高いブラックインクを用いることで、画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ブラックインクを吐出するための吐出データに基づき、前記ブラックインクを吐出しようとする領域の輪郭部を抽出する輪郭部抽出手段を備え、前記自然画以外の画像を印刷する場合に、前記輪郭部抽出手段により抽出された前記輪郭部と、前記輪郭部以外の他の部分とで、前記ブラックインクの単位面積当たりの吐出量が異なっても良い。このようにブラックインクの吐出領域の輪郭部と、この輪郭部以外の他の部分とで、ブラックインクの吐出量が異なることにより、自然画以外の画像の画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記輪郭部への前記ブラックインクの単位面積当たりの吐出量は、前記輪郭部以外の他の部分への前記ブラックインクの単位面積当たりの吐出量に比べて少なくても良い。このように輪郭部へのブラックインクの吐出量が少なければ、さらに画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ブラックインクにより形成されるドットのサイズは、前記輪郭部と、前記輪郭部以外の他の部分とで異なっても良い。このように輪郭部と輪郭部以外の他の部分とで、ドットのサイズが異なることにより、画質向上を容易に図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットのサイズは、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットのサイズに比べて小さくても良い。このように輪郭部のドットのサイズが小さければ、より一層の画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ブラックインクにより形成されるドットの数は、前記輪郭部と、前記輪郭部以外の他の部分とで異なっても良い。このように輪郭部と輪郭部以外の他の部分とで、ドットの数が異なることにより、画質向上を容易に図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットの数は、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットの数に比べて少なくても良い。このように輪郭部のドットの数が少ないことで、より一層の画質向上を図ることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ブラックインクは、顔料インクであり、顔料の含有量に応じて色の濃度が異なっても良い。このように顔料インクを用いることで、色の濃度が異なるブラックインクを簡単に用意することができる。
色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷を施す印刷装置において、
自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類が異なり、
前記自然画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他の前記ブラックインクに比べて色の濃度が低く、
前記自然画以外の画像にテキスト画が含まれ、
前記テキスト画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他のブラックインクに比べて色の濃度が高く、
前記ブラックインクを吐出するための吐出データに基づき、前記ブラックインクを吐出しようとする領域の輪郭部を抽出する輪郭部抽出手段を備え、前記自然画以外の画像を印刷する場合に、前記輪郭部抽出手段により抽出された前記輪郭部に吐出される前記ブラックインクの吐出量は、前記輪郭部以外の他の部分に吐出される前記ブラックインクの吐出量に比べて少なく、
前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットのサイズが、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットのサイズに比べて小さく、
前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットの数が、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットの数に比べて少なく、
前記ブラックインクは、前記各ブラックインクにおける顔料の含有量に応じて色の濃度が異なることを特徴とする印刷装置。
色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷をする印刷装置において、
前記ブラックインクを吐出するための吐出データに基づき、前記ブラックインクを吐出しようとする領域の輪郭部を抽出する輪郭部抽出手段を備え、
前記輪郭部抽出手段により抽出された前記輪郭部への前記ブラックインクの単位面積当たり吐出量と、前記輪郭部以外の部分への前記ブラックインクの単位面積当たり吐出量との差が、前記ブラックインクの種類に応じて異なることを特徴とする印刷装置。
色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出して媒体に印刷をする印刷方法において、
自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、吐出する前記ブラックインクの種類を異ならせることを特徴とする印刷方法。
色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出するブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷を施す印刷装置において実行されるプログラムであって、
自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類を異ならせる処理を実行することを特徴とするプログラム。
===印刷装置の概要===
本発明にかかる印刷装置の一実施形態として、インクジェットプリンタ1と、コンピュータ1100とを備えた印刷システムを例にとり、その概要について説明する。
図1は、本実施形態にかかる印刷システム1000の外観構成を示した説明図である。この印刷システム1000は、インクジェットプリンタ1と、コンピュータ1100とを備えている。コンピュータ1100は、表示装置1200と、入力装置1300と、記録再生装置1400とを有している。プリンタ1は、紙や布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ1100は、プリンタ1と電気的に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。表示装置1200は、ディスプレイを有し、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のユーザインタフェースを表示する。入力装置1300は、例えばキーボード1300Aやマウス1300Bであり、表示装置1200に表示されたユーザインタフェースに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバの設定等に用いられる。記録再生装置1400は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置1400AやCD−ROMドライブ装置1400Bが用いられる。
コンピュータ1100には、プリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、表示装置1200にユーザインタフェースを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタドライバは、インターネットを介してコンピュータ1100にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
===プリンタドライバ===
<プリンタドライバについて>
図2は、プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
コンピュータ1100では、コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ1102やアプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ1102は、アプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110からの表示命令に従って、例えばユーザインターフェース等を表示装置1200に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム1104は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム1104のユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム1104により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム1104は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ1110に画像データを出力する。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンタ1に出力する。ここで、印刷データとは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと画素データとを有するデータである。また、コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。また、画素データとは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素に関するデータであり、例えば、ある画素に対応する媒体S上の位置に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)である。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを印刷データに変換するために、解像度変換処理部1112と、色変換処理部1114と、ハーフトーン処理部1116と、ラスタライズ処理部1118とを備えている。以下に、プリンタドライバ1110の各処理部1112、1114、1116、1118が行う各種の処理について説明する。
解像度変換処理部1112は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体Sに印刷する際の解像度に変換する解像度変換処理を行う。解像度変換処理とは、例えば、紙に画像を印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。以下、画像データを解像度変換処理したRGBデータをRGB画像データと呼ぶ。
色変換処理部1114は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する色変換処理を行う。なお、CMYKデータは、プリンタ1が有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGB画像データの階調値とCMYK画像データの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ1110が参照することによって行われる。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応するCMYKデータに変換される。なお、色変換処理後のデータは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。以下、RGB画像データを色変換処理したCMYKデータをCMYK画像データと呼ぶ。
ハーフトーン処理部1116は、高階調数のデータを、プリンタ1が形成可能な階調数のデータに変換するハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、例えば、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換する処理のことである。このハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などを利用して、プリンタ1がドットを分散して形成できるように画素データを作成する。ハーフトーン処理部1116は、ハーフトーン処理を行うとき、ディザ法を行う場合にはディザテーブルを参照し、γ補正を行う場合にはガンマテーブルを参照し、誤差拡散法を行う場合は拡散された誤差を記憶するための誤差メモリを参照する。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば720×720dpi)を有している。ハーフトーン処理されたデータは、例えば、各画素につき1ビット又は2ビットのデータから構成される。以下、ハーフトーン処理されたデータのうち、1ビットデータのものを2値データと呼び、2ビットデータのものを多値データと呼ぶ。
ラスタライズ処理部1118は、マトリクス状の画像データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理を行う。これによりラスタライズ処理されたデータは、印刷データに含まれる画素データとして、プリンタ1に出力される。
本実施形態にかかるプリンタドライバ1110にあっては、これらの処理部1112、1114、1116、1118の他に、輪郭抽出処理部1120と、輪郭処理部1122とを備えている。これら輪郭抽出処理部1120及び輪郭処理部1122が行う処理については、後で詳しく説明する。
<プリンタドライバの設定について>
図3は、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースの説明図である。このプリンタドライバ1110のユーザインターフェースは、ビデオドライバ1102を介して、表示装置に表示される。ユーザーは、入力装置1300を用いて、プリンタドライバ1110の各種の設定を行うことができる。
ユーザーは、この画面上から、印刷モードを選択することができる。例えば、ユーザーは、印刷モードとして、高速印刷モード又はファイン印刷モードを選択することができる。そして、プリンタドライバ1110は、選択された印刷モードに応じた形式になるように、画像データを印刷データに変換する。
なお、本実施形態にあっては、この他に印刷モードとして、テキスト画印刷モードと、自然画印刷モードとを備えている。これらテキスト画印刷モード及び自然画印刷モードについては、後で詳しく説明する。
また、ユーザーは、この画面上から、印刷の解像度(印刷するときのドットの間隔)を選択することができる。例えば、ユーザーは、この画面上から、印刷の解像度として720dpiや360dpiを選択することができる。そして、プリンタドライバ1110は、選択された解像度に応じて解像度変換処理を行い、画像データを印刷データに変換する。
また、ユーザーは、この画面上から、印刷に用いられる印刷用紙(媒体)を選択することができる。例えば、ユーザーは、印刷用紙として、普通紙や光沢紙を選択することができる。紙の種類(紙種)が異なれば、インクの滲み方や乾き方も異なるため、印刷に適したインク量も異なる。そのため、プリンタドライバ1110は、選択された紙種に応じて、画像データを印刷データに変換する。
このように、プリンタドライバ1110は、ユーザインターフェースを介して設定された条件に従って、画像データを印刷データに変換する。なお、ユーザーは、この画面上から、プリンタドライバ1110の各種の設定を行うことができるほか、カートリッジ内のインクの残量を知ること等もできる。
===プリンタ1の構成===
図4は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図5は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の内部構成を示す斜視図である。また、図6は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の内部構成を示す縦断面図である。以下、本実施形態のインクジェットプリンタ1の基本的な構成について説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、図4に示すように、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、センサ50、およびコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ1100から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ1100から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体Sに画像を形成する。プリンタ1内の状況はセンサ50によって監視されており、センサ50は、検出結果をコントローラ60に出力する。センサ50から検出結果を受けたコントローラ60は、その検出結果に基づいて、各ユニット20、30、40を制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙など)Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるためのものである。すなわち、搬送ユニット20は、媒体Sを搬送する搬送機構(搬送手段)として機能する。搬送ユニット20は、図6に示すように、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。ただし、搬送ユニット20が搬送機構として機能するためには、必ずしもこれらの構成要素を全て必要とするわけではない。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された媒体Sをプリンタ1内に自動的に給紙するためのローラである。給紙ローラ21は、D形の断面形状をしており、円周部分の長さは搬送ローラ23までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて媒体Sを搬送ローラ23まで搬送できる。搬送モータ22は、媒体Sを搬送方向に搬送するためのモータであり、DCモータにより構成される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された媒体Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の媒体Sを支持する。排紙ローラ25は、印刷が終了した媒体Sをプリンタ1の外部に排出するローラである。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を所定の方向(以下、走査方向という)に移動(走査移動)させるためのものである。キャリッジユニット30は、図5に示すように、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、走査方向に往復移動可能である。(これにより、ヘッドが走査方向に沿って移動する。)また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジ90を着脱可能に保持している。キャリッジモータ32は、キャリッジ31を走査方向に移動させるためのモータであり、DCモータにより構成される。
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ヘッド41は、本発明の色インク吐出部としてノズルを複数有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。このヘッド41は、キャリッジ31に設けられている。そのため、キャリッジ31が走査方向に移動すると、ヘッド41も走査方向に移動する。そして、ヘッド41が走査方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体Sに形成される。
センサ50には、リニア式エンコーダ51(図5参照)、ロータリー式エンコーダ52(図6参照)、紙検出センサ53(図6参照)、および紙幅センサ54(図6参照)等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の走査方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される媒体Sの先端の位置を検出するためのものである。この紙検出センサ53は、給紙ローラ21が搬送ローラ23に向かって媒体Sを給紙する途中で、媒体Sの先端の位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ53は、機械的な機構によって媒体Sの先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ53は紙搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは媒体Sの搬送経路内に突出するように配置されている。そのため、媒体Sの先端がレバーに接触し、レバーが回転させられるので、紙検出センサ53は、このレバーの動きを検出することによって、媒体Sの先端の位置を検出する。紙幅センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。紙幅センサ54は、光学センサであり、発光部から媒体Sに照射された光の反射光を受光部が検出することにより、媒体Sの有無等を検出する。そして、紙幅センサ54は、キャリッジ41によって移動しながら媒体Sの端部の位置を検出し、媒体Sの幅を検出する。また、紙幅センサ54は、状況に応じて、媒体Sの先端も検出できる。紙幅センサ54は、光学センサなので、紙検出センサ53よりも位置検出の精度が高い。
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニット(制御手段)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ1100とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
===ヘッド41===
<ヘッドの構成について>
図7は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示したものである。ヘッド41の下面には、同図に示すように、各色のインクノズル群、即ち、イエロインクノズル群411Yと、マゼンダインクノズル群411Mと、シアンインクノズル群411Cと、ブラックインクノズル群411Kとが設けられている。このうち、ブラックインクノズル群411Kは、本実施形態では、低濃度ブラックインクノズル群411Kと、高濃度ブラックインクノズル群411Kとの2種類備えている。低濃度ブラックインクノズル群411Kは、色の濃度が低い低濃度ブラックインクを吐出するノズル群である。また、高濃度ブラックインクノズル群411Kは、色の濃度が高い高濃度ブラックインクを吐出するノズル群である。これら低濃度ブラックインクノズル群411K及び高濃度ブラックインクノズル群411Kは、本発明のブラックインク吐出部に相当する。なお、これら低濃度ブラックインクノズル群411K及び高濃度ブラックインクノズル群411Kからそれぞれ吐出される低濃度ブラックインク及び高濃度ブラックインクについては後で詳しく説明する。
各ノズル群411Y、411M、411C、411K、411Kは、それぞれ各色のインクを吐出するための吐出口であるノズル♯1〜♯180を複数個(本実施形態では180個)備えている。
各ノズル群411Y、411M、411C、411K、411Kの複数のノズル♯1〜♯180は、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720)である場合、k=4である。
各ノズル群411Y、411M、411C、411K、411Kのノズル♯1〜♯180は、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯180)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯180よりも搬送方向に下流側に位置している。また、紙幅センサ54は、紙搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯180とほぼ同じ位置にある。各ノズル♯1〜♯180には、各ノズル♯1〜♯180を駆動してインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。
<ヘッドの駆動について>
図8は、ヘッドユニット40の駆動回路の説明図である。この駆動回路は、前述のユニット制御回路64内に設けられており、同図に示すように、原駆動信号発生部644Aと、駆動信号整形部644Bとを備えている。本実施形態では、このようなノズル♯1〜♯180の駆動回路が、各色の色インク及びクリアインクのノズル群、即ち、イエロインクノズル群411Y、マゼンダインクノズル群411M、シアンインクノズル群411C、低濃度ブラックインクノズル群411K、高濃度ブラックインクノズル群411Kごとに各々設けられ、ノズル群411Y、411M、411C、411K、411Kごとに個別にピエゾ素子の駆動が行われるようになっている。図中に各信号名の最後に付されたかっこ内の数字は、その信号が供給されるノズルの番号を示している。
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインク量が、インクとなって各色の各ノズル♯1〜♯180から吐出される。
原駆動信号発生部644Aは、各ノズル♯1〜♯180に共通して用いられる原信号ODRVを生成する。この原信号ODRVは、一画素分の主走査期間内(キャリッジ31が一画素の間隔を横切る時間内)に複数のパルスを含む信号である。
駆動信号整形部644Bには、原信号発生部644Aから原信号ODRVが入力されるとともに、印刷信号PRT(i)が入力される。駆動信号整形部644Bは、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)として各ノズル♯1〜♯180のピエゾ素子に向けて出力する。各ノズル♯1〜♯180のピエゾ素子は、駆動信号整形部644Bからの駆動信号DRVに基づき駆動される。
<ヘッドの駆動信号について>
図9は、各信号の説明のためのタイミングチャートである。すなわち、同図には、原信号ODRVと、印刷信号PRT(i)と、駆動信号DRV(i)の各信号のタイミングチャートが示されている。
原信号ODRVは、原信号発生部644Aからノズル♯1〜♯180に共通に供給される信号である。本実施形態では、原信号ODRVは、一画素分の主走査期間内(キャリッジが一画素の間隔を横切る時間内)において、第1パルスW1と第2パルスW2の2つのパルスを含む。なお、この原信号ODRVは、原信号発生部644Aから駆動信号整形部644Bに出力される。
印刷信号PRTは、一画素に対して割り当てられている画素データに対応した信号である。つまり、印刷信号PRTは、印刷データに含まれる画素データに応じた信号である。本実施形態では、印刷信号PRT(i)は、一画素に対して2ビットの情報を有する信号になる。なお、この印刷信号PRTの信号レベルに応じて、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRVを出力する。
駆動信号DRVは、印刷信号PRTのレベルに応じて原信号ODRVを遮断することによって得られる信号である。すなわち、すなわち、印刷信号PRTが1レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVの対応するパルスをそのまま通過させて駆動信号DRVとする。一方、印刷信号PRTが0レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVのパルスを遮断する。なお、駆動信号整形部644Bは、ノズル毎に設けられているピエゾ素子に駆動信号DRVを出力する。そして、ピエゾ素子は、この駆動信号DRVに応じて駆動される。
印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「01」に対応しているとき、第1パルスW1のみが一画素区間の前半で出力される。これにより、ノズルから小さいインク滴(以下では、小インク滴とも言う)が吐出され、紙には小さいドット(小ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「10」に対応しているとき、第2パルスW2のみが一画素区間の後半で出力される。これにより、ノズルから中サイズのインク滴(以下では、中インク滴とも言う)が吐出され、紙には中サイズのドット(中ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「11」に対応しているとき、第1パルスW1と第2パルスW2とが一画素区間で出力される。これにより、ノズルから大きいインク滴が吐出され、紙には大きいドット(大ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「00」に対応しているとき、第1パルスW1および第2パルスW2のいずれも一画素区間で出力されない。これにより、ノズルからは、いずれのサイズのインク滴も吐出されず、紙にはドットが形成されない。
以上説明したとおり、一画素区間における駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)の4つの異なる値に応じて互いに異なる4種類の波形を有するように整形されている。
===ブラックインク===
高濃度ブラックインク及び低濃度ブラックインクについて詳しく説明する。
<高濃度ブラックインク>
高濃度ブラックインクは、色の濃度が高い、即ち色が濃いブラックインクであり、非常に鮮やかに発色することができ、画像を鮮明に形成することができるインクである。本実施形態では、この高濃度ブラックインクの色の濃度が、低濃度ブラックインクよりも高く設定され、このことから、主に、文字や記号、グラフィック等のテキスト画の印刷に使用される。
<低濃度ブラックインク>
一方、低濃度ブラックインクは、色の濃度が低い、即ち色が淡いブラックインクであり、例えば、デジタルカメラで撮影された写真画像などの自然画を印刷するときに必要な中間調の色を的確に出すのに適しているインクである。本実施形態では、低濃度ブラックインクの色は、高濃度ブラックインクに比べて色が淡く、このことから、主に、自然画の印刷に使用される。
<色の濃度差>
本実施形態にかかる高濃度ブラックインク及び低濃度ブラックには、顔料インクが用いられている。顔料インクは、その顔料の含有量に応じて、色の濃度を設定することができる。つまり、顔料の含有量を大きく設定すれば、色の濃度を高くすることができ、また顔料の含有量を小さく設定すれば、色の濃度を低くすることができるのである。このように高濃度ブラックインク及び低濃度ブラックに顔料インクを用いることで、色の濃度の異なるブラックインクを簡単に作成することができる。
===印刷動作について===
図10は、印刷時の処理のフロー図である。以下に説明される各処理は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
印刷命令受信(S102):コントローラ60は、コンピュータ1100からインターフェース部61を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ1100から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の給紙処理・搬送処理・インク吐出処理等を行う。
給紙処理(S104):まず、コントローラ60は、給紙処理を行う。給紙処理とは、印刷すべき紙をプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラ60は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラ23まで送る。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。紙が印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド41の少なくとも一部のノズルは、紙と対向している。
ドット形成処理(S106):次に、コントローラ60は、ドット形成処理を行う。ドット形成処理とは、走査方向に沿って移動するヘッドからインクを断続的に吐出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラ60は、キャリッジモータ32を駆動し、キャリッジ31を走査方向に移動させる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッドからインクを吐出させる。ヘッドから吐出されたインク滴が紙上に着弾すれば、紙上にドットが形成される。
搬送処理(S108):次に、コントローラ60は、搬送処理を行う。搬送処理とは、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータを駆動し、搬送ローラを回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
排紙判断(S110):次に、コントローラ60は、印刷中の紙の排紙の判断を行う。印刷中の紙に印刷するためのデータが残っていれば、排紙は行われない。そして、コントローラ60は、印刷するためのデータがなくなるまでドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に紙に印刷する。印刷中の紙に印刷するためのデータがなくなれば、コントローラ60は、その紙を排紙する。コントローラ60は、排紙ローラを回転させることにより、印刷した紙を外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
印刷終了判断(S112):次に、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行う。次の紙に印刷を行うのであれば、印刷を続行し、次の紙の給紙処理を開始する。次の紙に印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
===印刷モード===
本実施形態にかかるインクジェットプリンタ1にあっては、印刷モードとして、自然画印刷モードと、テキスト画印刷モードとを備えている。これら2つの印刷モードについてそれぞれ詳しく説明する。
<自然画印刷モード>
自然画印刷モードとは、自然画を印刷するのに適したモードのことである。ここでいう「自然画」とは、前述したように、例えば、デジタルカメラなどで作成された写真などの画像のデータに基づき印刷される画像のことをいう。ここで扱われる画像データとしては、例えば、JEPGやビットマップ等の各種静止画記憶方式により記録されたデータがある。この他に、画像データには、「フォトショップ(商品名)」等のレタッチ系アプリケーションソフトや「ペイントショップ(商品名)」等のペイント系アプリケーションソフトなどにより作成または編集されたデータも含まれる。プリンタ1は、自然画印刷モードが設定されていた場合には、自然画に適した印刷を行う。
<テキスト画印刷モード>
テキスト画印刷モードは、テキスト画の印刷に適したモードのことである。ここでいう「テキスト画」とは、例えば、ASCIIコードをはじめとする、文字や記号などを表す文字コードをはじめとするキャラクタコードや制御コードなどにより構成されたテキストデータに基づき形成された画像のことをいう。テキストデータには、「Microsoft Word(商品名)」や「一太郎(商品名)」といった各種ワープロソフトやテキストエディタなどで作成された文書データなども含まれる。このようなテキストデータに基づき印刷を行う場合には、テキストデータに含まれる文字コード等のキャラクタコードを、予め備えたフォント情報等を参照して、文字や記号などとして画像化する処理が行われる。ここでいうテキスト画とは、このような処理により印刷される画像のことをいう。
本実施形態では、テキスト画としては、このような文字や記号等の他に、例えば、「Vector Works(商品名)」等の各種CAD系アプリケーションソフトやその他アプリケーションソフトにより作成または編集された図形描画データに基づき形成されるグラフィック等の図形を含む。このほかに、テキスト画には、各種ワードプロセッサや表計算アプリケーションソフトなどの各種図形作成機能やグラフ作成機能などにより作成または編集された図形やグラフなども含まれる。
<印刷モードの設定>
これら2つの印刷モードの設定は、次のようにして行う。
図11は、テキスト画印刷モード及び自然画印刷モードの設定画面の一実施形態を示したものである。これらテキスト画印刷モード又は自然画印刷モードの設定は、前述したように、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースを通じて行う。テキスト画印刷モード又は自然画印刷モードの選択は、同図に示すように、ユーザインターフェースのプルダウンメニュー等を通じて行うことができる。
なお、本実施形態にかかるプリンタ1にあっては、ここでテキスト画印刷モードが選択された場合には、ブラックインクとして、高濃度ブラックインクが使用され、また、自然画印刷モードが選択された場合には、低濃度ブラックインクが使用される。
===プリンタドライバの処理===
プリンタドライバ1110は、印刷モードとして、テキスト画印刷モードが選択されていた場合と、自然画印刷モードが選択されていた場合とで、処理が異なる。その処理の違いについて詳しく説明する。
図12は、印刷時のプリンタドライバ1110の処理の概要を説明したフローチャートである。プリンタドライバ1110は、まず、アプリケーションプログラムから印刷命令を受ける(S202)と、この印刷命令により印刷指示されている画像データ、例えばアプリケーションプログラム上で編集された原画像の画像データ等を取得し、当該画像データを所定の解像度、例えば、720×720dpiの解像度などで表されるRGB画像データに変換する処理を解像度変換処理部1112にて行う(S204:解像度変換処理)。本実施形態では、プリンタ1は720×720dpiの解像度にて印刷を行うので、解像度変換処理部1112は、アプリケーションプログラムから受け取った画像データの解像度を、紙に印刷する際の解像度に等しい解像度のRGB画像データに変換する。なお、本実施形態における解像度変換処理後のRGB画像データは、256階調のRGBデータである。
次に、プリンタドライバ1110は、色変換処理部1114において、RGB画像データをCMYK画像データに変換する処理を行う(S206:色変換処理)。本実施形態では、RGB画像データが720×720dpiの解像度であることから、色変換処理後のCMYK画像データも720×720dpiの解像度になる。なお、本実施形態における色変換処理後のCMYK画像データは、256階調のCMYKデータである。
次に、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理部1116において、256階調のCMYK画像データを720×720dpiの解像度の多値データに変換する(S208:ハーフトーン処理)。本実施形態では、ハーフトーン処理されたデータは、各画素につき2ビットのデータが割り当てられた2ビットデータとして生成される。
ただし、ここで作成される多値データにあっては、印刷モードがテキスト画印刷モードに設定されている場合と、自然画印刷モードに設定されている場合とで、作成されるデータが大きく異なる。
図13は、ハーフトーン処理部の処理の流れを示したフローチャートである。図14は、自然画印刷モードが設定されていた場合の処理の概要を示し、図15は、テキスト画印刷モードが設定されていた場合の処理の概要を示したものである。図13に示すように、ハーフトーン処理部は、色変換処理部からのCMYK画像データに対してハーフトーン処理を行う際に、まず、印刷モードが自然画印刷モードに設定されているのか調べる(ステップS302)。ここで、自然画印刷モードが設定されていた場合には、プリンタドライバ1110は、使用するブラックインクとして、低濃度ブラック(K)のインクを選択し、図14に示すように、色変換処理部からのCMYK画像データに基づき、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロ(Y)及び低濃度ブラック(K)の各色の多値データを作成する(ステップS312)。
一方、ステップS302において、印刷モードが自然画印刷モードに設定されていなかった場合には、次に、ステップS304に進み、印刷モードがテキスト画印刷モードに設定されているか否か調べる。ここで、テキスト画印刷モードに設定されていない場合には、直ちに処理を終了する。一方、印刷モードがテキスト画印刷モードに設定されていた場合には、プリンタドライバ1110は、使用するブラックインクとして、高濃度ブラック(K)のインクを選択し、図15に示すように、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロ(Y)及び高濃度ブラック(K)の各色の多値データを作成する(ステップS306)。そして、次に、ステップS308に進み、このようにして作成した多値データのうち、高濃度ブラック(K)の多値データについて、その高濃度ブラックが吐出される領域の輪郭部を抽出する処理、即ち輪郭抽出処理を行う。この輪郭抽出処理は、プリンタドライバ1110の輪郭抽出処理部1120において行う。
そして、このような輪郭抽出処理を行った後、抽出された輪郭部に対して、高濃度ブラック(K)のインクの吐出量を減らす輪郭処理を行う(ステップS310)。この輪郭処理は、プリンタドライバ1110の輪郭処理部1122により行う。これら輪郭抽出処理部1120や輪郭処理部1122において行われる輪郭抽出処理や輪郭処理については、後で詳しく説明する。
ハーフトーン処理終了後、生成された各色の多値データは、図12に示すように、ラスタライズ処理部1118へと送られてラスタライズ処理される(ステップS210)。ラスタライズ処理部1118では、生成された多値データについて、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理を行う。そして、ラスタライズ処理部1118は、作成した印刷データをプリンタ1に出力する(S212)。
===輪郭抽出処理===
次に高濃度ブラック(K)の多値データに基づき、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される領域の輪郭部を抽出する輪郭抽出処理の手法について具体例を用いて説明する。
<多値データ>
図16は、高濃度ブラック(K)のインクの吐出領域の一例を示した説明したものであり、図17は、当該吐出領域に高濃度ブラック(K)のインクを吐出するための多値データの一例を示したものである。ここでは、高濃度ブラック(K)のインクの吐出領域が、図16に示すような、矩形の図形領域Agに設定された場合を例にして説明する。なお、矩形の図形領域Agの周囲の背景領域Abには、高濃度ブラック(K)のインクは吐出されないものとする。
高濃度ブラック(K)のインクを吐出するための多値データは、図17に示すように、2ビットのデータが割り当てられた多値データとなっている。図中の桝目は、仮想的に定められた桝目であって、画像を構成する際の最小構成単位である画素を示すものである。同図では、説明の簡略化のため、13画素×13画素からなる画像を用いて説明を行う。
各画素には、「00」、「01」、「10」又は「11」の2ビットデータが割り当てられている。画素に対応するデータ(画素データ)は、その画素の色(階調)を示す情報になる。そして、画素データが「00」である画素に対応する紙上の位置には、ドットは形成されない。また、画素データが「01」である画素に対応する紙上の位置には、小ドットが形成される。また、画素データが「10」である画素に対応する紙上の位置には、中ドットが形成される。また、画素データが「11」である画素に対応する紙上の位置には、大ドットが形成される。すなわち、画素データが2ビットデータであれば、一つの画素について4つの階調を表現することができる。
ここでは、図17に示すように矩形領域Ag内の画素に対して、画素データ「11」が割り当てられており、その周りの背景領域Abの画素には「00」が割り当てられている。なお、本実施形態のように所定の領域を塗りつぶす画像を構成する画素には、基本的に画素データとして「11」が割り当てられている。
ここで、(X,Y)に位置する画素の画素データをF(X,Y)と表すこととする。例えば、同図において左上の画素の位置を(X,Y)=(0,0)とすると、この画素の画素データは、F(0,0)=00である。なお、このルールに従えば、F(2,2)=11である。
<輪郭抽出処理>
図18は、プリンタドライバ1110の輪郭抽出部1120により行われる輪郭画素の抽出処理を具体的に説明するものである。図18Aは、輪郭画素の抽出対象となる画像データの説明図である。なお、図18Aに示された桝目は、仮想的に定められた桝目であって、画像を構成する際の最小構成単位である画素を示すものである。なお、ここでは、説明を簡略化させるため、多値データではなく、「0」または「1」の2値データが対応づけられている。すなわち、図形領域Agの構成色の情報を有している画素には「1」の画素データが対応付けられ、有していない背景領域Aaの画素には「0」の画素データが対応付けられている。ただし、1つの画素に多値データ(2ビットデータ等)が対応づけられていても、輪郭抽出処理は、以下で説明する処理とほぼ同じである。
ここで、(X,Y)の位置の画素の画素データをF(X,Y)と表す。例えば、同図において左上の画素の位置を(X,Y)=(0,0)とすると、この画素データは、F(0,0)=0である。なお、このルールに従えば、F(2,2)=1である。
前述したように、輪郭部分の輪郭画素を画像データから抽出するためには、周囲の画素と比較して、画素のドットサイズが大きく変化している画素を抽出すれば良い。このドットサイズの変化は、微分を利用して、次式を用いて表すことができる。
F’(X,Y)=8×F(X,Y)−F(X+1,Y)−F(X+1,Y+1)−F(X,Y+1)−F(X−1,Y+1)−F(X−1,Y)−F(X−1,Y−1)−F(X,Y−1)−F(X+1,Y−1) (式1)
上式は、2次元の画像に関して、微分を利用して、ある画素の周囲の画素データに対する変化量を求めている。輪郭抽出部1120は、上式を用いて、各画素の周囲の画素に対する変化量を求める。
図18Bは、上記の式にて計算された各画素のデータF’(X,Y)の説明図である。つまり、図18Bは、周囲の画素と比較した変化量を表している。例えば、(X,Y)=(2,2)の位置では、その画素の周囲の8つの画素のデータと比較したときの変化量として、F’(2,2)=5となる。
図18Cは、外郭画素を示すための説明図である。図18Bの各画素データF’(X,Y)に対して、F’(X,Y)>1を閾値として2値化処理を施せば、輪郭画素を示すデータを取得できる(この2値化処理後のデータをf1(X,Y)とする)。輪郭抽出部1120は、上記のF’(X,Y)を2値化処理することによって、周囲の画素と比較して、ドットサイズの変化量の大きい画素を抽出できる。したがって、輪郭抽出部1120は、この2値化処理により、前記輪郭画素を抽出することができる。
また、輪郭抽出部1120は、輪郭画素等を抽出する際に、上式を用いる前に、画像データに対してフィルタリング処理を施しても良い。画像データのフィルタリング処理を施せば、画像の特徴に合わせた輪郭抽出処理を行うことができる。例えば、ノイズの多い画像データの輪郭画素を抽出する際には、輪郭抽出部1120は、上式を用いる前に、画像の平滑化処理を施しても良い。画像の平滑化処理とは、ある画素データを周囲の画素データの平均値に置き換える処理であり、画像データに対するフィルタリング処理の一種である。画像の平滑化処理後に輪郭抽出処理を行えば、ノイズの多い画像データであっても、輪郭抽出部1120は、輪郭画素を的確に抽出することができる。
===輪郭処理===
次に、プリンタドライバ1110の輪郭処理部1122で行われる輪郭処理については説明する。輪郭処理では、前述した輪郭抽出処理において抽出された輪郭部に対して、高濃度ブラック(K)のインクの吐出量を減らす処理を行う。この輪郭処理の具体的な処理の概要について以下に詳しく説明する。ここでは、再び、図16に示すような矩形状の図形領域Agに、高濃度ブラック(K)のインクを吐出する場合について説明する。多値データは、図17に示すような、1画素につき2ビットのデータが割り当てられた2ビットデータである。
図19は、輪郭処理を行わずに、図17に示す多値データに基づき、インクを吐出した場合のドットの様子を示したものである。図20〜図22は、輪郭処理を行った場合の多値データとドットの様子とをそれぞれ示したものである。
(1)形成されるドットのサイズを小さくする方法
図20は、形成されるドットのサイズを小さくする方法の一例を説明したものである。図20Aは、輪郭部に対応するドットを小さいドットに置き換える処理を行ったときの多値データの一例を示し、図20Bは、この多値データに基づき形成されるドットの様子を示している。
図20A中、画素(升目)の中で「11」と示されているのは、「大ドット」を形成することを表している。また、画素(升目)の中で「01」と示されているのは、「小ドット」が形成されることを意味する。なお、本実施形態では、画素の中が空白で示されているのは、「00」の2ビットデータ、即ち、高濃度ブラック(K)のインクを吐出しないことを表わすデータが格納されていることを意味している。また、ここでは示していないが、画素(升目)中の「10」と示されていた場合には、「中ドット」が形成されることを意味する。なお、以下の説明でも同様である。
図20Aに示すように、ここでは、前述した輪郭抽出処理により抽出された、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される矩形状の領域Agの輪郭部に対応する画素は、その画素データが「11」、即ち「大ドット」の形成を指示するデータから「01」、即ち「小ドット」の形成を指示するデータに置き換えられている。この画素データの置き換えは、矩形状の領域Agの輪郭部に沿って、高濃度ブラック(K)のインクが吐出されない非吐出領域Abと接する画素全体に対して行われる。
このように高濃度ブラック(K)のインクにより吐出される領域の輪郭部に対応する画素が、小さいドットに置き換えられることで、図19に示すように輪郭部のドットが小さいドットに置き換えられない場合に比べて、輪郭部に対する高濃度ブラック(K)のインクの単位面積あたりの吐出量を減らすことができる。これによって、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される領域の輪郭部におけるインクの滲みを抑制することができる。
(2)形成するドット数を少なくする方法
図21は、輪郭部に形成されるドットの数を減らす方法の一例を説明したものである。図21Aは、輪郭部に対応するドットの数を減らしたときの多値データの一例を示し、図21Bは、この多値データに基づき形成されるドットの様子を示している。
図21Aに示すように、ここでは、前述した輪郭抽出処理により抽出された、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される矩形状の領域Agの輪郭部に対応する画素が、一つ置きに、高濃度ブラック(K)のインクを吐出しないことを表わすデータ、即ち「00」(本実施形態では「空白」)に置き換えられている。この画素データの置き換えは、矩形状の領域Agの輪郭部に沿って、高濃度ブラック(K)のインクが吐出されない非吐出領域Abと接する画素全体に対して行われる。
このように高濃度ブラック(K)のインクにより吐出される領域の輪郭部に対応する画素が、1つ置きに、高濃度ブラック(K)のインクを吐出しないことを表わすデータ、即ち「00」(空白)に置き換えられることで、輪郭部に高濃度ブラック(K)のインクにより形成されるドットの数を減らすことができる。これによって、図19に示すように輪郭部のドットが小さいドットに置き換えられない場合に比べて、輪郭部に対する高濃度ブラック(K)のインクの単位面積当たりの吐出量を減らすことができ、これによって、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される領域Agの輪郭部におけるインクの滲みを抑制することができる。
なお、本実施形態では、高濃度ブラック(K)のインクにより吐出される領域の輪郭部に対応する画素が、1つ置きに、高濃度ブラック(K)のインクを吐出しないことを表わすデータに置き換えられていたが、本発明にあってはこのような場合に限らず、例えば3箇所に1箇所の割合や4箇所に1箇所など、任意の割合で置き換えるようにしても良い。また、このほかに、前述したように必ずしも一定の割合で置き換えるようにしなくても良い。
(3)(1)と(2)を組み合わせた方法
図22は、(1)のドットのサイズを小さくする方法と、(2)のドット数を少なくする方法法とを組み合わせた処理の一例を示したものである。図22Aは、輪郭部に対応するドットの数を減らし、かつその残ったドットのサイズを小さくしたときの多値データの一例を示し、図22Bは、この多値データに基づき形成されるドットの様子を示している。
図22Aに示すように、ここでは、前述した輪郭抽出処理により抽出された、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される矩形状の領域Agの輪郭部に対応する画素が、1つ置きに、高濃度ブラック(K)のインクを吐出しないことを表わすデータ、即ち「00」(本実施形態では「空白」)に置き換えられてドットが減らされるとともに、高濃度ブラック(K)のインクを吐出しないことを表わすデータに置き換えられなかった画素については、「小ドット」、即ち「01」のデータに置き換えられる。これらのデータの置き換え処理は、矩形状の領域Agの輪郭部に沿って、高濃度ブラック(K)のインクが吐出されない非吐出領域Abと接する画素全体に対して行われる。
このように高濃度ブラック(K)のインクが吐出される矩形状の領域Agの輪郭部に対応する画素が、高濃度ブラック(K)のインクにより形成されるドットが1つ置きに減らされるとともに、残った輪郭部のドットについては、小さいドットに置き換えることによって、輪郭部に対する高濃度ブラック(K)のインクの単位面積当たりの吐出量をより一層減らすことができ、これによって、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される領域Agの輪郭部におけるインクの滲みを確実に抑制することができる。
以上本実施形態にあっては、色の濃度が異なる2種類のブラックインク、即ち高濃度ブラックインクと、低濃度ブラックインクとが吐出可能であることによって、これら2種類のブラックインクを、自然画を印刷する場合と、テキスト画を印刷する場合とでそれぞれ使い分けることができ、これによって、それら自然画とテキスト画の印刷画質の向上を各々図ることができる。例えば、自然画を印刷する場合には、低濃度ブラックインクを使用した場合には、自然画の中間調の色合いを的確に出すことができ、これにより写真画像等の画像をきれいに印刷することができる。また、テキスト画を印刷する場合には高濃度ブラックインクを使用することによって、色が濃い分だけ、文字や記号、グラフィック等のテキスト画の輪郭をはっきり出すことができ、非常に読みやすく見栄えの良いテキスト画の印刷が可能である。
また、さらに本実施形態では、テキスト画を印刷する場合、即ち高濃度ブラックインクを使用する場合には、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される領域の輪郭部を抽出する輪郭抽出処理を行って、その抽出した輪郭部に対して高濃度ブラック(K)のインクの吐出量が減るような輪郭処理を行うことによって、高濃度ブラック(K)のインクが吐出される領域の輪郭部におけるインクの滲みを抑制することができ、より一層画質の向上を図ることができる。
===他の輪郭抽出方法===
前述の実施形態によれば、プリンタドライバ1110は、微分を利用して周囲の画素との変化量を求め、その変化量に基づいて輪郭画素を検出していた。しかし、輪郭画素の抽出処理は、これに限られるものではない。
図23Aは、他の実施形態の輪郭画素の抽出処理の検索の説明図である。図23B及び図23Cは、周囲の画素との比較の説明図である。図23Dは、本実施形態の輪郭画素抽出処理の結果の説明図である。画素データ等の説明は、前述のものと同様なので、省略する。なお、以下に説明される処理は、プリンタドライバ1110によって実行される。
まず、プリンタドライバ1110は、第1ラスタラインの画素データを検索(スキャン)しながら、画素データが1になる画素を検索する(図23A)。同図では、(X,Y)=(2,2)の画素が検索される。そして、プリンタドライバ1110は、この画素を輪郭画素として記憶する。
次に、プリンタドライバ1110は、輪郭画素の周囲の8つの画素を時計回りに比較する。まず、プリンタドライバ1110は(X,Y)=(2,2)の画素の周囲の8つの画素を例えば時計回りに比較する(図23B)。そして、プリンタドライバ1110は、画素データが0から1に変化する画素を検索する。同図では、(X,Y)=(3,1)の画素から(X,Y)=(3,2)の画素の間で画素データが0から1に変化する。そして、プリンタドライバ1110は、(X,Y)=(3,2)を新たに検索された輪郭画素として記憶する。
次に、プリンタドライバ1110は、新たに検索された輪郭画素の周囲の8つの画素を時計回りに比較する。ここでは、プリンタドライバ1110は(X,Y)=(3,2)の画素の周囲の8つの画素を時計回りに比較する(図23C)。そして、プリンタドライバ1110は、画素データが0から1に変化する画素を検索する。同図では、(X,Y)=(4,1)の画素から(X,Y)=(4,2)の画素の間で画素データが0から1に変化する。そして、プリンタドライバ1110は、(X,Y)=(4,2)を新たに検索された輪郭画素として記憶する。
この処理を繰り返すと、新たに検索された画素が、既に輪郭画素として記憶された画素と一致する。検索された画素が輪郭画素として記憶されていた場合、プリンタドライバ1110は、上記の処理を終了する。そして、プリンタドライバ1110は、検索処理の終了後、既に記憶されている輪郭画素を読み出せば、前記輪郭部分に対応する画素を検出できる。図23Dは、上記の処理によって輪郭画素として検索される画素を示している。本実施形態の輪郭画素の抽出処理によっても、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
===その他の実施の形態(1)===
前述した実施の形態では、自然画印刷モードでは低濃度ブラックを使用し、またテキスト画印刷モードでは高濃度ブラックインクを使用し、印刷モードに応じてブラックインクを使い分けていたが、本発明にあっては、自然画以外の印刷モード、例えばテキスト画印刷モード等においても、低濃度ブラックインクを使用しても良い。この場合、低濃度ブラックインクについては、高濃度ブラックインクの場合と同様に、前述したような輪郭処理を行ってもよく、また行わなくても良い。
なお、低濃度ブラックインクについて輪郭処理を行う場合には、輪郭部に対するインクの吐出量の減らし方が高濃度ブラックインクと異なるように設定すると良い。すなわち、輪郭部に対する低濃度ブラックインクの単位面積当たりの吐出量が、輪郭部に対する高濃度ブラックインクの単位面積当たり吐出量に比べて少なくなるように設定する。これは、低濃度ブラックインクが、高濃度ブラックインクに比べて滲みの発生が小さいからである。このように低濃度ブラックインクについても輪郭処理を行うことによって、よりインクの滲み発生を抑制することができる。
===その他の実施の形態(2)===
以上、一実施形態に基づき、本発明に係るプリンタ等の印刷装置について説明したが、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更または改良され得るとともに、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に係る印刷装置に含まれるものである。
また、本実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部又は全部をソフトウェアによって置き換えてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアによって置き換えてもよい。
また、被印刷体は、印刷紙の他に、布やフィルムなどであってもよい。
また、印刷装置側にて行っていた処理の一部をホスト側にて行ってよく、また印刷装置とホストの間に専用の処理装置を介設して、この処理装置にて処理の一部を行わせるようにしてもよい。
<印刷装置について>
本発明の印刷装置としては、前述したインクジェットプリンタに限らず、バブルジェット(登録商標)方式のプリンタなどの他のインク吐出形式により印刷を行う印刷装置であっても良い。
<ブラックインク>
前述した実施の形態では、本発明のブラックインクとして、2種類の色の濃度が異なるブラックインク、即ち低濃度ブラックインクと、高濃度ブラックインクとを用いていたが、本発明にあってはこれに限らず、色の濃度が異なる3種類以上のブラックインクを吐出できても良い。
また、ブラックインクの色については、厳密に純粋にブラック(黒)である必要はなく、印刷装置(プリンタ1等)に搭載されるインクの組み合わせから適宜ブラックインクに相当するインク又はブラックインクに近い色のインクであっても構わない。
<ブラックインク吐出部>
前述した実施の形態では、ブラックインク吐出部は、ブラックインクを吐出する多数のノズルを備えたブラックインクノズル群により構成されていたが、本発明にあってはこのような場合に限らず、ブラックインクを吐出するのであれば、どのようなノズル群を備えていても良く、またノズル以外の他の形態で構成されていても構わない。
また、前述した実施の形態では、本発明のブラックインク吐出部として、低濃度ブラックインクノズル群411Kと、高濃度ブラックインクノズル群411Kとの濃度の異なる2種類のブラックインクを吐出するブラックインク吐出部を備えていたが、ブラックインクノズル群を1つ備え、例えばインクカートリッジ90の交換等により、低濃度ブラックインク及び高濃度ブラックインクの双方が吐出可能に構成されていても良い。
<インク>
インクとしては、顔料インクの他に、染料インクをはじめとする各種インクを用いることができる。
<インクの色>
また、前述した実施の形態では、ブラックインク以外の他の色インクとして、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)の各色の色インクが用いられていたが、本発明にあってはこれに限らず、これら以外の色インク、例えば、ライトシアン(LC)やライトマゼンダ(LM)、ダークイエロ(DY)、グリーン(G)、バイオレット(V)、レッド(R)、ブルー(B)などの他の色の色インクが使用されても良い。
<インク吐出部の吐出機構について>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していたが、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
<プリンタドライバについて>
前述の実施形態によれば、コンピュータ1100でプリンタドライバ96が、輪郭抽出手段として輪郭部の抽出処理を行っていたが、本発明にあっては、これに限らず、例えば、プリンタ1に輪郭抽出処理を行うコンピュータプログラムを搭載して、そのコンピュータプログラムにより輪郭部抽出処理を行っても良い。すなわち、プリンタ1側で色境界部の検出処理を行っても良い。この場合、プログラムについては、プリンタ1に搭載されたメモリ等の適宜な記憶部に記憶すると良い。このようにしても、前述の実施形態とほぼ同様な効果を奏することができる。
<輪郭抽出処理・輪郭処理>
輪郭抽出処理及び輪郭処理については、本実施形態で説明した処理方法の他に、公知の処理方法を用いても良い。
<媒体Sについて>
媒体Sについては、前述した用紙として、普通紙やマット紙、カット紙、光沢紙、ロール紙、用紙、写真用紙、ロールタイプ写真用紙等をはじめ、これらの他に、OHPフィルムや光沢フィルム等のフィルム材や布材、金属板材などであっても構わない。すなわち、インクの吐出対象となり得るものであれば、どのような媒体であっても構わない。
印刷システムの全体構成の説明図である。 プリンタドライバが行う処理の説明図である。 プリンタドライバのユーザインターフェースの説明図である。 プリンタの全体構成のブロック図である。 プリンタの全体構成の概略図である。 プリンタの全体構成の横断面図である。 ノズルの配列を示す説明図である。 ヘッドユニットの駆動回路の説明図である。 各信号の説明のためのタイミングチャートである。 印刷時の処理のフローチャートである。 印刷モード設定画面の一例を示す説明図である。 プリンタドライバの処理の流れを示すフローチャートである。 ハーフトーン処理部の処理の流れを示すフローチャートである。 自然画印刷モード設定時の処理の概要の説明図である。 テキスト画印刷モード設定時の処理の概要の説明図である。 印刷の対象となる画像(原画像)の説明図である。 ハーフトーン処理された多値データの説明図である。 図18Aは、境界画素の検出の対象となる画像データの説明図である。図18Bは、データF’(X,Y)の説明図である。図18Cは、境界画素を示すための説明図である。 輪郭処理を行わなかったときに形成されるドットの様子を示す。 輪郭部へのインク吐出量を減らす処理の一例を説明する図である。 輪郭部へのインク吐出量を減らす処理の一例を説明する図である。 輪郭部へのインク吐出量を減らす処理の一例を説明する図である。 図23Aは、他の実施形態の境界画素の検出処理の検索の説明図である。図23B及び図23Cは、周囲の画素との比較の説明図である。図23Dは、本実施形態の境界画素検出処理の結果の説明図である。
符号の説明
1 プリンタ、20 搬送ユニット、 21 給紙ローラ、
22 搬送モータ(PFモータ)、23 搬送ローラ、 24 プラテン、
25 排紙ローラ、30 キャリッジユニット、 31 キャリッジ、
32 キャリッジモータ(CRモータ)、40 ヘッドユニット、 41 ヘッド、
50 センサ、 51 リニア式エンコーダ、 52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、 54 紙幅センサ、
60 コントローラ、 61 インターフェース部、 62 CPU、
63 メモリ、 64 ユニット制御回路、
644A 原駆動信号発生部、 644B 駆動信号整形部、
90 インクカートリッジ、
411Y イエロインクノズル群、
411M マゼンダインクノズル群、
411C シアンインクノズル群、
411K ブラックインクノズル群、
411K 低濃度ブラックインクノズル群、
411K 高濃度ブラックインクノズル群、
1100 コンピュータ、1102 ビデオドライバ、
1104 アプリケーション、1110 プリンタドライバ、
1112 解像度変換処理部、1114 色変換処理部、
1116 ハーフトーン処理部、1118 ラスタライズ処理部、
1120 輪郭抽出処理部、1122 輪郭処理部、
1200 表示装置、
1300 入力装置、 1300A キーボード、 1300B マウス、
1400 記録再生装置、 1400A フレキシブルディスクドライブ装置、
1400B CD−ROMドライブ装置、
1000 印刷システム、
1102 ビデオドライバ、 1104 アプリケーションプログラム、
1110 プリンタドライバ、
S 媒体、
LUT 色変換テーブル

Claims (15)

  1. 色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷をする印刷装置において、
    自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類が異なることを特徴とする印刷装置。
  2. 前記自然画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他の前記ブラックインクに比べて色の濃度が低いことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
  3. 前記自然画以外の画像に、テキスト画が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
  4. 前記テキスト画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他の前記ブラックインクに比べて色の濃度が高いことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
  5. 前記ブラックインクを吐出するための吐出データに基づき、前記ブラックインクを吐出しようとする領域の輪郭部を抽出する輪郭部抽出手段を備え、前記自然画以外の画像を印刷する場合に、前記輪郭部抽出手段により抽出された前記輪郭部と、前記輪郭部以外の他の部分とで、前記ブラックインクの単位面積当たりの吐出量が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷装置。
  6. 前記輪郭部への前記ブラックインクの単位面積当たりの吐出量は、前記輪郭部以外の他の部分への前記ブラックインクの単位面積当たりの吐出量に比べて少ないことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
  7. 前記ブラックインクにより前記媒体に形成されるドットのサイズは、前記輪郭部と、前記輪郭部以外の他の部分とで異なることを特徴とする請求項5または6に記載の印刷装置。
  8. 前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットのサイズは、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットのサイズに比べて小さいことを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
  9. 前記ブラックインクにより前記媒体に形成されるドットの数は、前記輪郭部と、前記輪郭部以外の他の部分とで異なることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の印刷装置。
  10. 前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットの数は、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットの数に比べて少ないことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
  11. 前記ブラックインクは、顔料インクであり、顔料の含有量に応じて色の濃度が異なることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の印刷装置。
  12. 色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷を施す印刷装置において、
    自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類が異なり、
    前記自然画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他の前記ブラックインクに比べて色の濃度が低く、
    前記自然画以外の画像にテキスト画が含まれ、
    前記テキスト画を印刷する場合に吐出される前記ブラックインクは、他のブラックインクに比べて色の濃度が高く、
    前記ブラックインクを吐出するための吐出データに基づき、前記ブラックインクを吐出しようとする領域の輪郭部を抽出する輪郭部抽出手段を備え、前記自然画以外の画像を印刷する場合に、前記輪郭部抽出手段により抽出された前記輪郭部に吐出される前記ブラックインクの吐出量は、前記輪郭部以外の他の部分に吐出される前記ブラックインクの吐出量に比べて少なく、
    前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットのサイズが、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットのサイズに比べて小さく、
    前記ブラックインクにより前記輪郭部に形成されるドットの数が、前記輪郭部以外の他の部分に前記ブラックインクにより形成されるドットの数に比べて少なく、
    前記ブラックインクは、顔料インクであり、顔料の含有量に応じて色の濃度が異なるとを特徴とする印刷装置。
  13. 色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出可能なブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷をする印刷装置において、
    前記ブラックインクを吐出するための吐出データに基づき、前記ブラックインクを吐出しようとする領域の輪郭部を抽出する輪郭部抽出手段を備え、
    前記輪郭部抽出手段により抽出された前記輪郭部への前記ブラックインクの単位面積当たり吐出量と、前記輪郭部以外の部分への前記ブラックインクの単位面積当たり吐出量との差が、前記ブラックインクの種類に応じて異なることを特徴とする印刷装置。
  14. 色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出して媒体に印刷をする印刷方法において、
    自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、吐出する前記ブラックインクの種類を異ならせることを特徴とする印刷方法。
  15. 色の濃度が異なる2種類以上のブラックインクを吐出するブラックインク吐出部を備え、当該ブラックインク吐出部から吐出した前記ブラックインクにより媒体に印刷を施す印刷装置において実行されるプログラムであって、
    自然画を印刷する場合と、自然画以外の画像を印刷する場合とで、前記ブラックインク吐出部から吐出される前記ブラックインクの種類を異ならせるステップを実行することを特徴とするプログラム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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