JP2005072884A - ダイバーシチ受信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のダイバーシチ受信装置はドップラ効果の周波数偏移を除去した信号出力なので、ドップラ計測や信号の変復調ができる標準の追跡管制装置を使用できない。
【解決手段】 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号8の位相差を調整する位相差調整部12、位相差調整部12の出力を位相差調整部12の入力に戻す第1の帰還路15,16、受信信号8から周波数偏移を除去する周波数同期部11、周波数同期部11で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号26を周波数同期部11の入力に戻す第2の帰還路15,16、位相差調整部12と周波数同期部11により処理された2個の調整後受信信号22を合成して合成受信信号31を出力する合成部13、周波数同期信号26を使用して合成受信信号31に周波数偏移を付加する周波数偏移付加部14、前処理として受信信号8を増幅する2個の自動利得制御増幅器10を備える。
【選択図】 図2

Description

この発明は、衛星、ロケットあるいは航空機などの移動体を地上設備で追尾するためなどに使用する、移動体からの2つの直交する偏波成分の信号をダイバーシチ合成するダイバーシチ受信装置に関するものである。
衛星追尾などに使用する従来のダイバーシチ受信装置は、2つの直交する偏波成分の信号から、位相同期ループ(Phase Locked Loop:PLLと略す)を利用してドップラ効果による周波数偏移を除去し、位相同期した信号を合成するものであった。ドップラ効果による衛星の視線速度を計測する処理は、PLL内の電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCOと略す)の周波数を計測することで実現していた。(例えば、非特許文献1を参照)
船川、『宇宙開発事業団の追跡管制システム』、日本航空宇宙学会誌、社団法人日本航空宇宙学会、昭和59年5月、第32巻、第364号、p.256−257
従来のダイバーシチ受信装置は、ドップラ効果による周波数偏移を除去した信号を出力するので、受信信号またはPLL内で発振する周波数偏移を持つ局部発振信号にあるドップラ効果による周波数偏移を計測して移動体の位置や速度を計測する装置が、信号の復調装置とは別に必要であった。近年、移動体の追跡管制装置の標準化が進展し、70MHzや140MHzなどの標準周波数帯を入力として、変復調、距離測定、ドップラ計測による視線速度計測を行う追跡管制装置が安価に市販されるようになってきた。従来のダイバーシチ受信装置ではこのような追跡管制装置を利用することができず、追跡管制システムの低コスト化を実現することが難しいという課題があった。
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、ドップラ効果による周波数偏移を有する信号を出力するダイバーシチ受信装置を得ることを目的とする。
この発明に係るダイバーシチ受信装置は、周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部と前記周波数同期部により処理された2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前記周波数同期信号を使用して前記合成受信信号に周波数偏移を付加する周波数偏移付加部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備えたものである。
また、周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部により処理され、前記周波数同期部では処理されない2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備え、前記周波数同期信号を前記位相差調整部が利用するようにしたものである。
さらに、周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記位相差調整部により処理された2個の調整後受信信号を合成する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する非同期検波方式による2個の自動利得制御増幅器とを備えたものである。
この発明に係るダイバーシチ受信装置は、周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部と前記周波数同期部により処理された2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前記周波数同期信号を使用して前記合成受信信号に周波数偏移を付加する周波数偏移付加部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備えたものなので、ドップラ計測と信号の変復調ができる標準の追跡管制装置を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
また、周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部により処理され、前記周波数同期部では処理されない2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備え、前記周波数同期信号を前記位相差調整部が利用することを特徴とするものなので、ドップラ計測と信号の変復調ができる標準の追跡管制装置を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
さらに、周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記位相差調整部により処理された2個の調整後受信信号を合成する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する非同期検波方式による2個の自動利得制御増幅器とを備えたものなので、ドップラ計測と信号の変復調ができる標準の追跡管制装置を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
実施の形態1.
図1は、この発明が適用される追跡管制システムの概念を表すシステム構成図である。この追跡管制システムは、衛星1と地上局2とで構成される。図1には衛星1と地上局2をそれぞれ1個しか書いていないが、追跡管制システムが追跡管制する衛星1の数はそのシステムにより決まり、地上局2は1個以上の必要な数を所定の箇所に配置する。地上局2には、衛星1との間で電波を送受信する送受信アンテナ3と、衛星1の追跡管制のための信号処理などを行う追跡管制装置4と、衛星1との間の電波の周波数(2000MHzを超える高周波)と追跡管制装置4が処理する信号の周波数(70MHz程度)との間の変換を行う送信信号周波数変換装置5と受信信号周波数変換装置6、直交する2偏波の受信信号をダイバーシチ合成するダイバーシチ受信装置7とを有する。送受信アンテナ3は、送信には右旋偏波または左旋偏波を切替えて使用でき、右旋偏波と左旋偏波の両方を受信する。なお、ここでは円偏波を使用するものとして、右旋偏波をP偏波とし左旋偏波をQ偏波として説明するが、垂直偏波と水平偏波を使用する場合でも動作は同様である。
地上局2には図1に示す以外の装置もあるが、本発明を説明する上で必要なものだけを示す。追跡管制装置4やダイバーシチ受信装置7などに関しても、本発明に必要なものだけを説明する。
追跡管制装置4は、送信信号の変調を行う変調部4Aと、受信信号の復調を行う復調部4Bと、衛星1と地上局2との間の距離を計測する測距部4Cと、受信信号のドップラ効果による周波数偏移から衛星1の視線速度を計算するドップラ計測部4Dとを有する。なお、測距部4Cでは、衛星1へ信号を送信してから送信した信号に対する衛星1からの返信信号を受信するまでの時間を計測することにより、衛星1と地上局2との間の距離を測定する。視線速度とは衛星1の速度の地上局2の方向への成分であり、衛星1の地上局2への接近または後退の速度である。視線速度の計測は、ドップラ効果による周波数偏移を計測して行う。
デジタル通信を行なう場合では、変調のことを符号化と呼び、復調のことを復号化と呼ぶ場合がある。本明細書では、変調には符号化も含み、復調には復号化も含むものとする。
この実施の形態1のダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図を、図2に示す。ダイバーシチ受信装置7は、P偏波の受信信号8PとQ偏波の受信信号8Qを入力として、合成出力信号9を出力する。ここで、符号の末尾のPは右旋偏波すなわちP偏波に関することを意味し、Qは左旋偏波すなわちQ偏波に関することを意味するものとする。また、受信信号8などのようにPまたはQを末尾につけない表記は、P偏波とQ偏波の両方にあてはまる場合を意味するものとする。受信信号8P,8Qなどのような表記は、P偏波とQ偏波に関するものがそれぞれあることを明示する場合に使用する。
図2などのブロック図では、信号には『(周波数、位相)』という形式で、その信号の位相同期した定常状態での周波数と位相と変調信号を含むかどうかを表示する。変調信号を含む場合は、位相を『0度+変調』などのように表示する。
ダイバーシチ受信装置7は、前処理として受信信号8P,8Qを所定の大きさの信号電力にそれぞれ増幅する自動利得制御増幅器であるAGC増幅器10P,10Qと、受信信号8にあるドップラ効果による周波数偏移を除去する周波数同期部11と、受信信号8P,8Qの位相差を調整する位相差調整部12と、周波数同期部11と位相差調整部12で処理された2個の受信信号を合成する合成部である最適比合成器13と、最適比合成器13の出力信号にドップラ効果による周波数偏移を付加する周波数偏移付加部14と、周波数同期部11と位相差調整部12の出力信号を混合するミキサ15P,15Qと、ミキサ15Pの出力信号と受信信号8Pを増幅した信号を混合するミキサ16Pと、ミキサ15Qの出力信号と受信信号8Qを増幅した信号を混合するミキサ16Qと、周波数同期部11と位相差調整部12と周波数偏移付加部14とで使用する基準周波数の信号を発振する基準信号発振部17とから構成される。
基準信号発振部17は、10MHzの第1基準信号18と、60MHzの第2基準信号19と、500kHzの第3基準信号20とを出力する。図2などのブロック図では、基準信号発振部17が出力する基準信号は、”*1”などのような記号の箇所で使用されるものとする。
第2基準信号19の周波数は第3基準信号20の周波数の120倍である。第1基準信号18、第2基準信号19、第3基準信号20は位相が一致しており、最も周波数が低い第3基準信号20の位相が所定値(ここでは0度とする)の場合には、第1基準信号18と第2基準信号19の位相も同じ所定値になる。なお、ここで示した周波数の数字は例であり、他の周波数を使用してもよい。他の周波数を使用する場合も、第2基準信号19と第3基準信号20の周波数の比が整数になるようにし、第1基準信号18と第2基準信号19と第3基準信号20の位相は一致させる。
受信信号8は、−70〜−140dBmという非常に微弱な電波である。なお、dBmは信号電力の10を底とする対数を10倍して表現する単位であり、1mWを0dBmとする。−140dBmは、信号電力が10−14mWという非常に微弱な電波である。AGC増幅器10により、受信信号8を所定の大きさの信号電力になるように増幅する。所定の大きさの信号電力は、周波数同期部11や位相差調整部12が安定的に動作する大きさとする。P偏波とQ偏波の信号電力を同じにすることにより、位相差調整部12でP偏波とQ偏波の位相を信号電力が違う場合よりも正確に計測できる。その理由は、以下である。周波数同期部11や位相差調整部12は所定の範囲の電力の信号に対してだけ動作が保証されており、所定の範囲外の電力の信号では動作が保証されていない。所定の信号電力の範囲内でも、同じ信号電力で使用した方が素子や回路の非線形性の影響による誤差が出にくい。
AGC増幅器10は、受信信号8の振幅のピークを検出して増幅する非同期検波方式と、受信信号8に同期させて振幅が最大になる位相での振幅を計測して増幅する同期検波方式の何れかを選択して使用できる。PLLが位相同期するまでは非同期検波方式として同期した後は自動的に同期検波方式に変更するように使用できる。衛星追跡システムの使用者の操作でも非同期検波方式と同期検波方式の選択が可能である。ここで、同期検波方式の方が非同期検波方式よりも雑音の影響を受けにくい。その理由は以下である。非同期検波方式では、雑音により信号の振幅のピークが増大することはあっても減少することはない。これに対して、一定時間での雑音の平均はゼロなので、同期検波方式の方が雑音の影響を受けにくい。AGC増幅器10P,10Qがそれぞれ受信信号8P,8Qを増幅した信号を、増幅後受信信号21P,21Qとする。
増幅後受信信号21P,21Qは、それぞれミキサ16P,16Qにより周波数同期部11と位相差調整部12の出力信号と混合されて調整後受信信号22P,22Qとなる。
周波数同期部11は、調整後受信信号22P,22Qをそれぞれ入力として第1基準信号18の周波数付近だけを選択して通す狭帯域フィルタ23P,23Qと、狭帯域フィルタ23P,23Qの出力を合成する最適比合成器11Aと、第1基準信号18と最適比合成器11Aの出力信号との位相差を検出する主位相検波器11Bと、電圧による発振周波数の制御が可能なVCO11Cと、主位相検波器11Bで検出した位相差からVCO11Cの制御電圧を決めるループフィルタ11Dとを有する。ループフィルタ11Dは、ラグリードフィルタとする。
狭帯域フィルタ23は、第1基準信号18の周波数である10MHzの前後3kHz程度の周波数帯域だけを選択的に通すフィルタである。狭帯域フィルタ23が調整後受信信号22の中の変調信号を除去することにより、調整後受信信号22の周波数と位相を第1基準信号18に一致させることが容易になる。狭帯域フィルタ23P,23Qを通過した信号をそれぞれ、調整後受信基準信号24P,24Qと呼ぶ。
最適比合成器11Aは、その出力である合成受信基準信号25のS/N比が最大になるように、調整後受信基準信号24P,24Qを合成して、合成受信基準信号25を作成する。ここで、S/N比は、信号(Signal)と雑音(Noise)の比である。
主位相検波器11Bは、合成受信基準信号25と第1基準信号18を入力とする。主位相検波器11B、ループフィルタ11D、VCO11Cは直列に接続され、VCO11Cの出力がミキサ15P,15Qの入力になる。VCO11Cが発振して出力する信号を周波数同期信号26と呼ぶ。周波数同期信号26と位相差調整部12のP偏波に関する出力信号(位相差調整信号27Pと呼ぶ)とを、その和の周波数の信号を出力するようにミキサ15Pで混合し、ミキサ15Pの出力信号(PLL同期信号28Pと呼ぶ)と増幅後受信信号21Pとの差の周波数の信号を出力するようにミキサ16Pで混合される。ミキサ16Pの出力信号である調整後受信信号22Pが、狭帯域フィルタ23Pを通過して、最適比合成器11Aの入力となる。そのため、周波数同期部11とミキサ15Pとミキサ16Pとで、フィードバックループが構成される。
周波数同期部11とミキサ15Qとミキサ16Qとでも、同様のループが構成される。Q偏波に関しても同様に、位相差調整信号27Q、PLL同期信号28Q、調整後受信信号22Qを定義する。
ミキサ15P,15Qとミキサ16P,16Qが、本発明で言う第2の帰還路である。
これらの両方または何れか1個のループが、主位相検波器11Bで検出される第1基準信号18と最適比合成器11Aの出力である合成受信基準信号25との位相差をゼロにするように動作するフィードバックループすなわちPLLである。PLLにより、最適比合成器11Aの出力である合成受信基準信号25は第1基準信号18と周波数と位相が同期することになる。周波数同期部11は、10Hz〜3000Hz程度の制御信号を出して動作する。
位相差調整部12は、位相差調整信号27P,27Qをそれぞれ出力する移相器29P,29Qと、調整後受信基準信号24P,24Qの何れかと第1基準信号18との位相差に比例する直流電圧をそれぞれ出力する副位相検波器12P,12Qと、副位相検波器12Pと副位相検波器12Qの出力の差を求める差演算器12Aと、差演算器12Aの出力から移相器29P,29Qのどちらかを制御する信号を演算する位相差信号演算部12Bと、移相器29P,29Qのどちらかを位相差信号演算部12Bの出力先として選択する選択スイッチ12Cと、移相器29Qと選択スイッチ12Cの間にある符号反転器12Dとを有する。位相差信号演算部12Bの出力を位相差信号30と呼ぶ。移相器29Pは、位相差信号30と第2基準信号19と第3基準信号20とを入力にして、位相差調整信号27Pを出力する。移相器29Qも、Q偏波に関して同様の入出力になる。ただし、位相差信号30は符号反転器12Dにより正負を反転されて移相器29Qに入力される。
位相差調整部12、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Q、狭帯域フィルタ23P,23Qによりフィードバックループを構成している。つまり、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Q、及び狭帯域フィルタ23P,23Qは、本発明で言う第1の帰還路である。
移相器29Qに位相差信号30の符号を反転して入力する理由を説明する。位相差は相対的なものであり、P偏波の方が進んでいる場合はQ偏波の方は遅れている。そのために、何れか一方の移相器29には位相差信号30の符号を反転して入力する必要がある。調整後受信基準信号24Pの位相が進んでいる場合に位相差信号30が正の値になり、移相器29では位相差信号30に比例して位相差調整信号27の位相を遅らせる。位相差調整信号27の位相が遅れると調整後受信基準信号24の位相も遅れる。調整後受信基準信号24Pの位相が遅れると、位相差信号30は正の値で小さくなりゼロに近づく。このため、移相器29Pには位相差信号30をそのまま入力すれば、調整後受信基準信号24Pの位相を正の値からゼロに近づけるフィードバックになる。移相器29Qでも同様のフィードバックとするためには、位相差信号30の正負を反転して入力する必要がある。なお、符号反転器12Dをどちら側に設置するかは、ミキサ16での入力の正負、副移相器検波器12P,12Qのゲインの正負、差演算器12Aでどちらを基準にするかに合わせて決める。
位相差調整信号27P,27Qは、その周波数はともに第3基準信号20と同じで、位相差が受信信号8P,8Qの間の位相差を相殺して調整後受信基準信号24P,24Qの位相を一致させるように調整された信号である。位相差調整部12は、3Hz未満の制御信号を出して動作する。
最適比合成器13では、その出力である合成受信信号31のS/N比が最大になるように調整後受信信号22P,22Qを最適な比率で合成する。
周波数偏移付加部14は、VCO11Cが出力する周波数同期信号26と第3基準信号20との和の周波数の信号を出力するように混合するミキサ14Aと、ミキサ14Aの出力の偏移化信号32と合成受信信号31との差の周波数の信号を出力するように混合するミキサ14Bとを有する。ミキサ14Bの出力が、ダイバーシチ受信装置7の合成出力信号9である。
このダイバーシチ受信装置7は、2個の偏波の受信信号8の信号電力の差すなわちAGC増幅器10の増幅ゲインの差が所定値KT(=10dB程度とする)以上ある場合は、増幅ゲインが小さいすなわち信号電力が大きいの方の偏波だけを出力する。また、選択スイッチ12Cは、増幅ゲインを利用して制御する移相器29を選択する。そのために、最適比合成器11A、最適比合成器13、差演算器12A、及び選択スイッチ12Cには、AGC増幅器10の増幅ゲインも入力される。
以上で構造の説明を終了する。以下で動作を説明する。本発明に係るダイバーシチ受信装置7は、P偏波とQ偏波という2つの直交する受信信号8P,8Qを位相差調整して最適比に振幅合成を行うものである。その動作を説明する前に、ダイバーシチ合成と位相差調整の必要性について説明しておく。
まず、ダイバーシチ合成の必要性を説明する。衛星1はP偏波である右旋偏波またはQ偏波である左旋偏波の何れかを送信するが、衛星1の姿勢が本来の姿勢からずれる場合や、衛星が90rpm程度の回転運動する場合などがあり、P偏波とQ偏波の両方の偏波の信号が地上局2では受信される。その理由は、以下である。衛星1の本来の姿勢では円偏波アンテナからはP偏波である右旋偏波が送信されるとする。衛星1が回転して衛星1の円偏波アンテナが地上局2から見て反対の位置になると、Q偏波である左旋偏波で送信することになる。P偏波またはQ偏波だけを受信していると、衛星1が回転する場合には受信信号が間欠的にゼロになり、衛星1を追尾できなくなる場合がある。また、一方の偏波の信号しか利用しないので、両方の偏波の信号を利用する場合よりも信号強度が小さくなる。さらに、フェ−ジングなどの伝播路による劣化は直交する両偏波に同時には発生しないことが経験的に知られており、両偏波を利用することは安定動作につながる。このため、2つの偏波信号を合成するダイバーシチ合成が必要である。
次に、位相差調整の必要性を説明する。そのために、P偏波である右旋偏波の信号(Rと略す)とQ偏波である左旋偏波の信号(Lと略す)の信号強度が同じで位相が異なるいくつかの場合で、RとLをそのまま加算する信号合成について考察する。なお、RとLをそのまま加算した信号をR+Lと表記する。
(1)RとLの位相差が180度の場合
|R+L|=|R−R|=0で、合成する意味がない。
(2)RとLの位相差が90度の場合
|R+L|=|R+jR|=(√2)×|R|となる。
(3)RとLの位相差が0度の場合
|R+L|=|R+R|=2×|R|となる。
つまり、RとLの位相を一致させてから合成する場合が、合成後の信号強度が最も大きくなる。なお、RとLに含まれる雑音は位相が一致していないので合成しても2倍にはならず、位相を一致させて合成するとS/N比が改善される。このように位相差調整は、合成受信信号31の信号強度を大きくしS/N比を改善する上で必要かつ重要である。なお、水平偏波と垂直偏波を使用する場合も同様になる。
ダイバーシチ受信装置7の動作の説明に戻る。動作を説明するために使用する変数の定義を以下に示す。
V :衛星1の視線速度。地上局2に向う場合が正。
C :光速。
F :衛星1が送信する信号の周波数。2000MHz以上。
ΔFd:ドップラ効果による周波数偏移。最大200kHZ程度。
fm :変調周波数。4kHz〜500kHz程度。
Fd :地上局2での受信信号の周波数。
F0 :周波数偏移ΔFdがゼロ時の受信信号8P,8Qの周波数。70MHz。
F1 :第1基準信号18の周波数。10MHz。
F2 :第2基準信号19の周波数。60MHz。
F3 :第3基準信号20の周波数。500kHz。
ΦP :受信信号8Pの位相。
ΦQ :受信信号8Qの位相。
ドップラ効果による周波数偏移ΔFdは、衛星1が送信する信号の周波数F、衛星1の速度の地上局2方向への成分すなわち視線速度V、及び光速Cの間で以下の関係にある。なお、VとΔFdは負の値もとり得る。
ΔFd=F×(V/C) (式1.1)
ドップラ計測部4Dでは、ΔFdを計測して追跡管制装置4が管理するFから(式1.1)により衛星1の視線速度Vを計算する。
地上局2での受信信号の周波数Fdは、衛星1が送信する信号の周波数Fに(式1.1)のΔFdが加わるので、以下となる。
Fd=F+ΔFd=F+F×(V/C) (式1.2)
受信信号周波数変換装置6により周波数を変換されて、受信信号8P,8Qの周波数は、F0+ΔFdになる。
まず、周波数同期部11の動作を説明する。そのために、以下の変数を定義する。ここでは仮に位相差調整部12により調整後受信信号22P,22Qの位相は一致するものとして説明する。
FJ :調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の周波数。
ΦJ :調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の位相。
ΔΦ :主位相検波器11Bで検出する合成受信基準信号25と
第1基準信号18との位相差。
Vd :主位相検波器11Bの出力電圧。
Kd :主位相検波器11Bのゲイン。VdのΔΦに対する比例係数。
Vf :ループフィルタ11Dの出力電圧。
Kv :VCO11Cの周波数感度。入力電圧に対する出力周波数の変化率。
FV :VCO11Cの発振周波数すなわち周波数同期信号26の周波数。
FV0 :Vfがゼロの時のVCO11Cの発振周波数。
Kr(S):ループフィルタ11Dのラプラス変換した伝達関数。
ΦJ1 :位相同期した定常状態でのΦJ。
最適比合成器11Aは、後で説明する最適合成器13と同様に動作する。
変数の定義から主位相検波器11Bで検出する位相差ΔΦに関して、以下の式が成立する。なお、積分は所定の時間の起点から行う。
ΔΦ=∫2π×(FJ−F1)dt+ΦJ (式1.3)
(式1.3)より、位相同期した定常状態では、以下である必要がある。
FJ=F1 (式1.4)
ΔΦ=ΦJ1 (式1.5)
主位相検波器11Bの出力電圧Vdは、以下となる。ここで、後で説明するようにΔFdが増加するとFJひいてはΔΦは減少するので、ΔFdの増加に対してVdひいてはFVが増加するように下の式の比例係数にマイナスをかける。
Vd=−Kd×ΔΦ (式1.6)
ループフィルタ11DはVdを入力としてVfを出力とするが、位相同期した定常状態では以下が成立する。
Vf=Vd (式1.7)
VCO11Cの発振周波数FVは、以下となる。実際にはVCO11Cの動作は時間遅れがあるが、ここでは無視する。
FV=FV0+Kv×Vf (式1.8)
ミキサ15Pでは出力信号の周波数は入力信号の周波数の和であり、ミキサ16Pでは出力信号の周波数が入力信号の周波数の差になるので、FJは以下となる。ΔFdが増加するとFJが減少することが分かる。
FJ=FV+F3−(F0+ΔFd) (式1.9)
位相同期した定常状態では(式1.4)が成立するので、(式1.9)に(式1.4)を代入して、FVについて解くと以下となる。
FV=F0+ΔFd+F1−F3 (式1.10)
VCO11Cの出力である周波数同期信号26の周波数であるFVが、ドップラ効果による周波数偏移を有する。
(式1.10)に(式1.8)、(式1.7)、(式1.6)、(式1.5)を代入して、ΦJについて解くと以下となる。なお、以下では位相同期した定常状態での値なので、ΦJをΦJ1に置き換える。
FV0―Kv×Kd×ΦJ1=F0+ΔFd+F1−F3
ΦJ1=(―F0―ΔFd―F1+F3+FV0)/(Kv×Kd) (式1.11)
位相同期した定常状態では、(式1.10)の周波数FVでVCO11Cが発振することにより、調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の周波数が第1基準信号18と同じF1になり、第1基準信号18との位相差ΦJが(式1.11)で計算できるΦJ1になることが分かる。なお、KvとKdが大きくて、ΦJ1は0度に近い値である。そのため、図2などでは、位相は0度と表示する。
さらに、周波数偏移ΔFdに変動がある場合に、PLLによる周波数同期部11が周波数同期させる過程を考察する。そのために以下の変数を定義する。
δFd:周波数偏移ΔFdの変動分。
δFV:VCO11Cの発振周波数FVの変動分。
δVd:主位相検波器11Bの出力電圧Vdの変動分。
δVf:ループフィルタ11Dの出力電圧Vfの変動分。
δΔΦ:主位相検波器11Bで検出する位相差ΔΦの変動分。
(式1.6)は変動分に対しても成立する。(式1.7)の替わりに以下の式が成立する。
δVf=Kr(S)×δVd (式1.12)
(式1.3)に(式1.9)を代入してFJを消去すると、変動分に関して以下となる。
−δΔΦ=∫2π×(δFd―δFV)dt (式1.13)
周波数偏移ΔFdの変動分δFdに対するPLLの制御ブロック図は、(式1.6)、(式1.12)、(式1.13)から図3となる。なお、図3のKdのブロックの入力は−δΔΦなので、ゲインは−KdではなくKdである。
図3の制御ブロック図から、δFdとδFVとの間には、以下の関係式が成立する。
δFV=(Kd×KV×(Kr(S)/S))×(δFd−δFV)
δFV=1/(1+S/(Kd×KV×Kr(S)))×δFd (式1.14)
ループフィルタ11Dは図4に示すラグリードフィルタなので、その伝達関数Kr(S)は以下となる。
Kr(S)=(1+T2×S)/(1+T1×S) (式1.15)
ここに、図4に示す回路定数とT1、T2の間には、以下の関係がある。
T1=(R1+R2)×C1 (式1.16)
T2=R2×C1 (式1.17)
(式1.15)を(式1.14)に代入して、以下の式を得る。
δFV=(1+T1×S)/(1+b×S+a×S)×δFd (式1.18)
ここに、(式1.18)での係数a、係数bは以下である。
a=T2/(Kd×KV) (式1.19)
b=T1+T2/(Kd×KV) (式1.20)
(式1.19)と(式1.20)により係数a、係数bは正であることが保証されているので、(式1.18)でδFVが安定でδFdに追従することが分かる。よって、PLLによる周波数同期部11は、調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の周波数を、第1基準信号18と同じF1に安定させることができる。
次に、最適比合成器13の動作を説明する。そのために、以下の変数を定義する。
KP:AGC増幅器10Pの増幅ゲイン
KQ:AGC増幅器10Qの増幅ゲイン
XP:調整後受信信号22Pの複素ベクトル。
XQ:調整後受信信号22Qの複素ベクトル。
XG:合成受信信号31の複素ベクトル。
受信信号8P,8Qには雑音も含まれており、最適比合成器13は合成出力信号9でのS/N比が最大になるように、以下のような最適比合成を行う。
(1)KP>KQの場合。P偏波の信号強度の方が小さい場合。
|XG|=|XP|×(KQ/KP)+|XQ| (式2.1)
(2)KP≦KQの場合。P偏波の信号強度の方が小さくない場合。
|XG|=|XP|+|XQ|×(KP/KQ) (式2.2)
(式2.1)と(式2.2)によれば、AGC増幅器10の増幅ゲインが小さい方すなわち信号強度が大きい方の偏波の信号に、増幅ゲインの逆数の比を乗じたもう一方の偏波の信号を加算する。ここで、信号強度は信号電力により計測するものとする。同じ信号電力に増幅するAGC増幅器10では、増幅ゲインの逆数が増幅前の信号電力に比例することになる。受信信号8P,8Qには同じ大きさの雑音があると考えられ、増幅ゲインが大きい方の受信信号8P,8Qでは雑音の割合が多くなる。S/N比が低く雑音が多い方の信号の比率を少なくする(式2.1)または(式2.2)の割合で合成すると、合成受信信号31のS/N比は最大になる。なお、信号強度は信号電力ではなく信号の振幅の電圧などで計測することにしてもよい。
その次に、位相差調整部12の動作を説明する。そのために、以下の変数を定義する。
ΔΦP :副位相検波器12Pで検出する調整後受信基準信号24Pと
第1基準信号18との位相差。
ΔΦQ :副位相検波器12Qで検出する調整後受信基準信号24Qと
第1基準信号18との位相差。
VP :副位相検波器12Pの出力電圧。
VQ :副位相検波器12Qの出力電圧。
KM :副位相検波器12P,12Qのゲイン。
VS :差演算器12Aの出力電圧。
KS(S):位相差信号演算部12Bのラプラス変換した伝達関数。
KN :位相差信号演算部12Bのゲイン。
ΔΦS :位相差信号演算部12Bの出力の位相差すなわち位相差信号30。
ΦV :周波数同期信号26の位相。
ΦSP :移相器29Pの出力信号である位相差調整信号27Pの位相。
ΦSQ :移相器29Qの出力信号である位相差調整信号27Qの位相。
ΦV1 :位相同期した定常状態でのΦJをΦJ1とするΦV。
副位相検波器12P,12Qの入出力の間には、以下の式が成立する。
VP=KM×ΔΦP (式3.1)
VQ=KM×ΔΦQ (式3.2)
差演算器12Aでは、以下の式が成立する。
VS=KM×(ΔΦP−ΔΦQ) (式3.3)
位相差信号演算部12Bでは、位相差信号30すなわちΔΦSに関して以下の式が成立する。
ΔΦS=KS(S)×VS (式3.4)
ここで、KS(S)は、以下の積分特性を持たせる。このような特性は、コンデンサによるアナログ回路などで容易に実現できる。
KS(S)=KN/S (式3.5)
位相差信号演算部12Bの出力である位相差信号30は、選択スイッチ12Cにより信号強度が小さい方の偏波の移相器29に入力される。なお、位相差信号30が入力されない移相器29では、位相差がゼロとして入力されたものとして動作する。選択スイッチ12Cは周期的(例えば0.2秒ごと)にAGC増幅器10の増幅ゲインをチェックし、増幅ゲインの比すなわち信号強度の差が所定値以上であり、信号強度が小さい偏波が選択されていない場合に、信号強度が小さい偏波の移相器29に位相差信号30が入力されるように切替える。増幅ゲインの比すなわち信号強度の差が所定値未満の場合は、信号強度が同じと判断して、切替えは行わない。こうすることにより、選択スイッチ12Cの切替えを必要最小限にする。選択スイッチ12Cを頻繁に切替えると、移相器29が十分に動作する時間もなく切替えばかり行うことになるので、位相差調整部12が位相差を一致させるのにより長い時間かかることになる。
P偏波の信号強度が大きいとすると、位相差信号30であるΔΦSは移相器29Qの方に入力されるので、以下となる。
ΦSP=0 (式3.6)
ΦSQ=ΔΦS (式3.7)
逆に、Q偏波の信号強度が大きい場合は、以下となる。
ΦSP=−ΔΦS (式3.8)
ΦSQ=0 (式3.9)
P偏波とQ偏波のどちらの信号強度が大きいにしろ、以下が成立する。
ΦSP−ΦSQ=−ΔΦS (式3.10)
ミキサ15では周波数同期信号26と位相差同期信号27の和の周波数であるPLL同期信号28を出力し、ミキサ16ではPLL同期信号28と増幅後受信信号21の差の周波数の信号を出力とするので、位相に関して以下が成立する。なお、増幅後受信信号21の位相は受信信号8の位相と同じである。
ΔΦP=ΦSP+ΦV−ΦP (式3.11)
ΔΦQ=ΦSQ+ΦV−ΦQ (式3.12)
(式3.11)から(式3.12)を引いて、以下の式を得る。
ΦP−ΦQ−(ΦSP−ΦSQ)=ΔΦQ−ΔΦP (式3.13)
(式3.3)、(式3.4)、(式3.10)、及び(式3.13)により、ΔΦQ−ΔΦPを消去すると、以下となる。
(ΦP−ΦQ−(ΦSP−ΦSQ))×KS(S)×KM=ΦSP−ΦSQ(式3.14)
(式3.14)は、位相調整部12の動作特性が図5のブロック図で表現できることを意味している。なお、(式3.13)と(式3.3)より、KMのブロックの出力は、−VSになる。(式3.14)を変形すると、以下の式になる。
ΦSP−ΦSQ=
(KS(S)×KM/(1+KS(S)×KM))×(ΦP−ΦQ) (式3.15)
(式3.15)に(式3.5)を代入して、以下となる。
ΦSP−ΦSQ=(KN×KM/(S+KN×KM))×(ΦP−ΦQ) (式3.16)
(式3.16)より、ΦP−ΦQの変動に対して、ΦSP−ΦSQは安定に同じ量だけ変動することが分かる。なお、ΦSPとΦSQのどちらをどれだけ変化させるかには自由度があり、(式3.11)と(式3.12)によるΦVは一意には決まらない。
(式3.13)に(式3.16)を代入して、以下となる。ΦP−ΦQの変動に対して、ΔΦP−ΔΦQはゼロに落ち着くことが分かる。
ΔΦP−ΔΦQ=((KN×KM/(S+KN×KM))−1)×(ΦP−ΦQ)
=−(S/(S+KN×KM))×(ΦP−ΦQ) (式3.17)
移相器29は、3度単位の離散値で位相を制御する。移相器29の動作を説明するために、以下の変数を定義する。
ΦU:移相器29で使用される3度単位で離散値化された、立ち上りタイミング。
ΦD:移相器29で使用される3度単位で離散値化された、立ち下りタイミング。
ΦUとΦDは、以下のように計算する。なお、以下の式ではΔΦSは度を単位とする実数である。
ΦU=[(360.0+ΔΦS)/3]%120 (式3.18)
ΦD=[(540.0+ΔΦS)/3]%120 (式3.19)
ここに、[X]はガウス記号であり、実数Xより大きくない最大の整数を意味する。X%Yは、整数Xを整数Yで割った時の余りを意味する。例えば、ΔΦS=5.5度であれば、ΦU=1、ΦD=61になる。また、ΔΦS=−9.9度であれば、ΦU=116、ΦD=56になる。
移相器29の動作を説明する図を、図6に示す。図6(a)が500kHzの第3基準信号20の波形であり、図6(b)が位相差調整信号27の波形である。図6では、ΦU=2、ΦD=62とする。移相器29は周期的(例えば0.2秒ごと)に位相差信号30すなわちΔΦSを取り込んで、(式3.18)と(式3.19)により、ΦUとΦDを計算する。移相器29は500kHzの第3基準信号20の位相がゼロになった時点から、60MHzの第2基準信号19の位相がゼロになる回数を数える。その回数がΦUになると、矩形波である位相差調整信号27の立ち上りを出力する。位相がゼロになる回数がΦDになると、位相差調整信号27の立ち下がりを出力する。こうすると、位相差調整信号27は、第3基準信号20よりもΦU×3度だけ位相が遅れた信号になる。矩形波に含まれる高調波はミキサで除去されるので、位相を制御するために矩形波を使用しても問題は発生しない。なお、矩形波の方が位相を制御しやすい。
3度単位に位相を制御するのは、第2基準信号19と第3基準信号20の周波数の比が120であることによる。360度をこの比の120で割った商が3度なので、3度単位で位相を制御できる。第2基準信号19と第3基準信号20の周波数の比を別の整数に変えれば、位相を制御する単位すなわち刻み幅を変更できる。ΔΦSを3度単位の離散値に変換する際に切捨てを使用したが、四捨五入、切り上げまたは他の方法の何れでもよい。例えば四捨五入にする場合は、(式3.18)で360.0の替わりに360.5とし、(式3.19)では540.0の替わりに540.5とすればよい。
移相器29が3度単位で位相を変化させたとしても、(式3.16)の安定性には影響を与えない。ただし、調整後受信基準信号24P,24Qには3度未満の位相差が残ったままになる。調整後受信基準信号24P,24Qの位相差が3度程度であれば、位相差が最適比合成する合成受信信号31に影響を及ぼさない。その理由は、cos(3度)=0.999なので、合成受信信号31の振幅の誤差は無視できる。位相変調された変調信号は0度と180度などのように大きく離れており、3度程度の位相差は問題にならない。
ここで、位相差信号演算部12Bは、位相を離散値で制御する場合には、離散値よりも小さい位相差は位相差ゼロと扱う。そうしないと、移相器29が1離散値の幅で振動することになる。
受信信号8P,8Qの何れかまたは両方の位相が変化した場合は、位相差調整部12が(式3.16)により調整後受信基準信号24P,24Qの位相差をゼロに近づけるように動作するとともに、周波数同期部11も動作して調整後受信基準信号24P,24Qの位相を同じように変動させる。その動作の過程を説明する。
まず、調整後受信基準信号24P,24Qの位相が異なる場合の合成受信基準信号25の位相の計算方法を、図7により説明する。図7はP偏波の信号強度が大きい場合の図であるが、以下で導出する式はQ偏波の信号強度が大きい場合にも成立する式である。
図7より、複素ベクトルXG,XQの複素ベクトルXPに直交する成分に関して以下が成立することが分かる。
|XG|×sin(ΦJ−ΔP)=(KP/KQ)×|XQ|×sin(ΔQ−ΔP) (式4.1)
複素ベクトルXPに平行な成分に関しては、以下の式が成立する。
|XG|×cos(ΦJ−ΔP)=
|XP|+(KP/KQ)×|XQ|×cos(ΔQ−ΔP) (式4.2)
AGC増幅器10では増幅後の信号強度が同じになるように増幅するので、以下となる。
|XP|=|XQ| (式4.3)
(式4.3)を(式4.2)に代入して、|ΦJ−ΔP|と|ΔQ−ΔP|を微小と見て、θが微小な場合のcosθ≒1という近似を使用すると、以下となる。
|XG|=(1+KP/KQ)×|XP| (式4.4)
(式4.3)と(式4.4)を(式4.1)に代入して、|ΦJ−ΔP|と|ΔQ−ΔP|とを微小と見てθが微小な場合のsinθ≒θという近似を使用し、両辺を|XP|で割ると、以下となる。
(1+KP/KQ)×(ΦJ−ΔP)=(KP/KQ)×(ΔQ−ΔP) (式4.5)
(式4.5)をΦJについて解くと、以下となる。
ΦJ=(KQ×ΔP+KP×ΔQ)/(KP+KQ) (式4.6)
(式4.6)においてΔP=ΔQとするとΦJ=ΔP=ΔQとなり、位相同期した定常状態ではΔPとΔQはΦJ1になる。
(式4.6)に(式3.11)と(式3.12)を代入すると、以下となる。
−ΦJ= (KQ/(KP+KQ))×(ΦP−ΦSP−ΦV)
+(KP/(KP+KQ))×(ΦQ−ΦSQ−ΦV) (式4.7)
ΦJが位相同期した定常状態の値であるΦJ1から変動すると、(式1.6)、(式1.12)、(式1.8)により、Vd、Vf,FVも変動する。FVの変動を積分すると、ΦVのΦV1からの変動分になる。(式4.7)、(式1.6)、(式1.12)、(式1.8)とΦVの変動分がFVの変動分の積分であることから、ΦPとΦQの変動に対する制御ブロック図は、図8のようになる。なお、Kdのブロックに対する入力は、−ΦJ+ΦJ1すなわち−δΦJなので、ゲインは−KdではなくKdになる。
図8の制御ブロック図では、位相差調整部12により決まるΦSPとΦSQとを含んでいる。周波数同期部11の動作は位相差調整部12の動作よりも速いので、周波数同期部11の過渡現象を考える上ではΦSPとΦSQは固定値と見てよい。すると、周波数同期信号26の位相ΦVの動作特性は、発振周波数FVの変動分に対するのと同様な式で表現でき、安定である。そのため、PLLが位相同期した状態では、合成受信基準信号25の位相ΦJが(式1.11)で計算できるΦJ1になるように、ΦVが調整されてΦV1になる。ただし、ΦV1はΦSPとΦSQに依存するので、一意には決まらない。
受信信号8Pの位相ΦPが時刻t1でステップ状にΔXだけ変化した場合の、周波数同期部11と位相差調整部12の動作による位相の変化の1例を示す図を、図9に示す。図9では、KQ/KP≒2とP偏波の信号強度の方が大きいとし、移相器29が位相を連続量で制御する場合とする。図9(a)に受信信号8Pの位相ΦPを、図9(b)に受信信号8Qの位相ΦQを、図9(c)に周波数同期信号26の位相ΦVを、図9(d)に位相差調整信号27Pの位相ΦSPを、図9(e)に位相差調整信号27Qの位相ΦSQを、図9(f)に調整後受信基準信号24Pの位相ΔPを、図9(g)に調整後受信基準信号24Qの位相ΔQを、それぞれ示す。なお、変化前の値をΦP0などのように変数名に0を付加した変数で表現する。図9(c-e)では、信号強度の小さい方の位相ΦSQを位相差調整部12が制御する場合を実線で示し、信号強度が大きい方の位相ΔPを制御する場合を破線で示す。位相ΦSPと位相ΦSQのどちらを制御するかで、図9(f)の位相ΔPと図9(g)の位相ΔQにも厳密には差があるが、差が僅かなので位相ΦSQを制御する場合だけを表示する。
受信信号8Qの位相ΦQが時刻t1でステップ状にΔXだけ変化した場合を、図10に示す。
受信信号8Pの位相ΦPまたは受信信号8Qの位相ΦQのステップ状の変化に対して、ΔPとΔQをともに定常状態の値であるΦJ1に戻すことができる。時刻t2までは図8の制御ブロック図による周波数同期部11の過渡現象があり、ΦVが速く変化する。時刻t2以降は、(式4.7)で左辺を−ΦJ1とした式を満足するように、ΦVはΦSPとΦSQの変化に合わせて変化する。
位相の変化があった偏波の方の位相を制御する場合は、ΦVがゼロに戻る。そうでない場合は、ΦVが位相の変化量だけ増加する。信号強度が弱い方の偏波を制御する方(実線で書いた方)が、ΦVの変化の絶対量が少なくなる。なお、変化の絶対量とは、増加量の絶対値と減少量の絶対値の和とする。図9(c)のΦVは、実線ではΔX増加するのに対し、破線ではΔXの2/3ほど増加して0に戻る。つまり、図9(c)のΦVの変化の絶対量は、実線ではΔXで、破線では(4/3)×ΔXである。図10(c)でも同様に、ΦVの変化の絶対量は、実線では(2/3)×ΔXで、破線ではΔXである。
以上で、位相差調整部12の動作の説明を終了し、周波数偏移付加部14の動作を説明する。そのために、以下の変数を定義する。
FG:合成出力信号9の周波数。
ミキサ14Aでは出力信号の周波数が入力信号の周波数の和で、ミキサ14Bでは差であることから、以下となる。ここで、ミキサ14Aでは周波数同期信号26と第2基準信号19を混合し、ミキサ14Bではミキサ14Aの出力である偏移化信号32と合成受信信号31とを混合する。
FG=FV+F3−FJ (式5.1)
(式5.1)に(式1.4)と(式1.10)を代入して、以下となる。
FG=F0+ΔFd (式5.2)
つまり、ダイバーシチ受信装置7の合成出力信号9の周波数が、受信信号8と同じ周波数になり、ドップラ効果による周波数偏移ΔFdを持つことになる。合成出力信号9の位相は周波数同期信号26と同じΦPである。ここで、厳密にはΦPはΦP+ΦJ1となるが、ΦJ1は微小なので、位相の検討を行なう場合にはΦJ1をゼロとして扱うことにする。基準信号に位相同期させた後で復調するので、合成出力信号9の位相がゼロでなくても復調に影響を与えない。
このように周波数偏移付加部14を備えて合成受信信号31に周波数偏移を有する周波数同期信号26を混合することにより、ダイバーシチ受信装置7の合成出力信号9の周波数がドップラ効果による周波数偏移ΔFdを持つので、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
ここでは、ダイバーシチ受信装置7の合成出力信号9の周波数を受信信号8と同じ周波数としたが、ドップラ効果による周波数偏移ΔFdを持ち追跡管制装置4が処理できる周波数であれば、受信信号8と同じでなくてもよい。合成出力信号9を、例えばベースバンド信号にしてもよい。なお、追跡管制装置4の入出力の周波数を同じにすると、追跡管制装置4の送信信号をそのまま折り返して受信信号とするなどして追跡管制装置4単体としての試験をやりやすいので、追跡管制装置4の入出力の周波数が同じなるように合成出力信号9の周波数を決める場合が多い
ミキサ16P,16Qでは、F0+ΔFdとF0+ΔFd+F1の周波数の信号を混合してF1の周波数の信号を作成したが、F0+FdとF0+ΔFd−F1の周波数を混合してF1の周波数の信号を作成してもよい。他のミキサでも、出力信号を所定の周波数(FXと呼ぶ)にするために、周波数の和または差がFXになる2個の周波数を混合して作成するようにしてもよい。ミキサは混合する2個の信号の周波数の和または差が所定の周波数の信号を出力するものであれば、どのようなものでもよい。ダイバーシチ受信装置7を構成できれば、何個のミキサを使用してもよい。
周波数同期部11のPLLは、ドップラ効果の周波数偏移の想定する範囲とその変化速度の想定する範囲に対して、位相同期できるものであればどのようなものでもよい。主位相検波器11Bは、第1基準信号18との位相差を所定の精度で検出できるものであればどのようなものでもよい。ループフィルタ11Dも、ラグリードフィルタでなくてもラグフィルタやその他のフィルタでもよく。PLLとして必要な周波数特性や応答特性などの特性を実現できるものであれば、ループフィルタ11Dはどのようなものでもよい。VCO11Cは、所定の範囲の周波数の信号を所定の精度で電圧を制御することにより出力できるものであれば、どのようなものでもよい。主位相検波器11BやVCO11Cのゲインの大きさも、所定の範囲で位相同期できるものであればどのような大きさでもよい。
位相差調整部12は、調整後受信基準信号24P,24Qの位相差をゼロにできるような制御ができるものであれば、どのようなものでもよい。副位相検波器12P,12Qは、第1基準信号18との位相差を所定の精度で検出できるものであればどのようなものでもよい。差演算器12Aは、副位相検波器12P,12Qで検出した所定の範囲の位相の差を、所定の精度で計算できるものであればどのようなものでもよい。位相差信号演算部12Bは、差演算器12Aの出力から位相差信号30を作成できるものであれば、どのようなものでもよい。位相差信号演算部12Bに積分特性を持たせたが、積分特性ではなく大きなゲインを持たせてもよい。ただし、大きなゲインを持たせる場合には、位相は連続量で制御する必要がある。その理由は、離散値で位相を制御すると離散値の刻み幅未満の誤差が残り、大きなゲインでフィードバックをかけると位相が振動してしまうからである。
選択スイッチ12Cは、所定の条件が満足した場合にスイッチの切替えができるものであればどのようなものでもよい。符号反転器12Dは、所定の範囲の位相差信号30の正負を反転できるものであればどのようなものでもよい。
移相器29は3度単位の離散値で制御するとしたが、より細かく制御するようにしてもよいし、制御後に残る位相差がダイバーシチ受信装置7の動作が所定の性能を実現できる範囲であれば、より粗く制御するようにしてもよい。また、離散値による制御ではなく連続量で制御するようにしてもよい。移相器29は、所定の周波数の信号を所定の範囲内で所定の精度で位相を変化できるものであれば、どのようなものでもよい。
信号強度が小さい方の偏波の方の移相器29を位相差調整部12が制御するとしたが、信号強度が大きい方の移相器29を制御してもよい。主位相検波器11Bの出力も位相差演算部12Bが利用して、主位相検波器11Bの出力と差演算器12Aの出力とからΦPとΦQを計算し、変化が大きい方の偏波の移相器29を制御してもよい。また、選択スイッチ12Cをなくして、位相差演算部12Bが移相器29P,29Qの両方の制御量を計算して制御するようにしてもよい。その場合には、1個の移相器29を制御する場合の制御量を、位相差演算部12Bが2個の移相器29の制御量に妥当な割合で配分する。
位相器29は1個だけでもよい。増幅ゲインの差がKT以上の場合は差演算器12Aが位相差をゼロと出力し位相差調整部12は機能しないので、移相器29Pの1個だけでも問題は発生しない。ただし、移相器29を1個にすると、何らかの指標が最適になるように2個の移相器29を切替えるなどして制御できるという移相器29が2個あることによる効果は失われる。
周波数偏移ΔFdを持つ偏移化信号32をミキサ14Aにより作成したが、ミキサ15P,15Qの出力信号であるPLL同期信号28P,28Qも周波数偏移ΔFdを持つ同じ周波数なので、PLL同期信号28P,28Qの何れかをミキサ14Bの入力とするようにしてもよい。その場合には、ミキサ14Aが不要になる。ただし、信号強度が大きい方を使用できるように、PLL同期信号28P,28Qのどちらかを選択する選択スイッチが必要である。
このダイバーシチ受信装置7は、AGC増幅器10を非同期検波方式で動作させると、PLLが非同期の場合でも位相差調整部12と合成部13と周波数偏移付加部14は動作するという効果がある。
この効果を説明するために、PLLが非同期時のダイバーシチ受信装置7の動作を説明する。PLLが非同期時には、調整後受信信号22P,22Qと合成受信信号31の周波数FJは、第1基準信号18の周波数F1とは異なる。しかし、合成出力信号9の周波数FGは、以下のようにPLLが同期時と同じになる。
(式5.1)に(式1.9)を代入して、以下の式を得る。
FG=FV+F3−(FV+F3−(F0+ΔFd)
=F0+ΔFd (式5.3)
つまり、PLLが同期するかどうかによらず、合成出力信号9の周波数は、受信信号8と同じになる。これは、周波数偏移付加部14で合成出力信号9に周波数偏移を付加することによる。
PLLが非同期時の位相差調整部12では、副位相検波器12P,12Qが検出する位相が大きく変化するが、差演算器12Aにより変化分は相殺されて偏波間の位相差だけが検出されるので、位相差調整部12は正常に動作する。合成部13と周波数偏移付加部14の動作は、PLLの動作状態によらない。AGC増幅器10を非同期検波方式で動作させると、PLL非同期時でも位相差調整部12と合成部13と周波数偏移付加部14は正常に動作することになる。
2個の偏波の受信信号8の信号電力の差すなわちAGC増幅器10の増幅ゲインの差が所定値KT以上ある場合の、最適比合成器11A、差演算器12A、選択スイッチ12C、及び最適比合成器13の動作を説明する。図11に、ダイバーシチ受信装置のQ偏波の増幅ゲインがP偏波よりもKT以上大きい場合の動作を表すブロック図を示す。図11で、×印はその信号を使用しないことを意味する。
2個の偏波の受信信号8の信号電力の差すなわちAGC増幅器10の増幅ゲインの差が所定値KT以上ある場合には、最適比合成器11Aと最適比合成器13は、信号強度が弱い方の偏波を合成に使用しない。位相差調整部12の差演算器12Aは、出力をゼロにする。選択スイッチ12Cは、増幅ゲインの差がKT以上の場合もKT未満の場合と同様に動作する。ただ、KTは信号強度を同じと見る所定値よりも大きいので、信号強度が小さい方の偏波の移相器29を制御するように選択する。なお、差演算器12Aには、増幅ゲインの差がKT以上かどうかどうかだけを入力するようにしてもよい。また、選択スイッチ12Cには、2個の受信信号8P,8Qの信号強度が同じか、どちらかが大きい場合にはどちらが大きいかだけを、入力するようにしてもよい。
図11の場合だと、最適比合成器13は、調整後受信信号22Pをそのまま合成受信信号31として出力する。最適比合成器11Aも、調整後受信基準信号24Pをそのまま合成受信基準信号25として出力する。差演算器12Aは、出力をゼロとする。選択スイッチ12Cは、移相器29Qの方を制御するように選択する。このように動作するので、位相差調整信号27P,27Qの位相はゼロになり、周波数同期信号26の位相がΦPになるので、調整後受信信号24Pの位相はゼロすなわち第1基準信号18の位相と一致する。同様にして、調整後受信信号24Qの位相はΦP−ΦQになる。ただし、調整後受信信号24Qは最適比合成器11Aと最適比合成器13では使用されない。P偏波の信号強度が小さい場合も、P偏波とQ偏波を入れ替えて同様に動作する。
このように、信号強度の差が所定値以上の場合に信号強度が小さく雑音が多い偏波の方の受信信号を合成に使用しないので、合成出力信号9のS/N比を増加させることがなく、位相同期できないことが少なくなるという効果がある。
狭帯域フィルタ23P,23Qと最適比合成器11Aがあるので、周波数同期部11が変調信号の影響を受けることがないという効果がある。周波数同期部11が変調信号の影響を受けることがないので、ループフィルタ11Dの周波数特性を考える上で変調信号の周波数を通さないことを考慮する必要がなく、より高い自由度で設計でき、特に高価な部品を使用することなく、ダイバーシチ受信装置7としての性能向上をより容易に実現できるようになる可能性が高くなるという効果もある。
狭帯域フィルタ23P,23Qと最適比合成器11Aはなくしてもよいが、その場合にはループフィルタ11Dが変調信号の周波数を通さないようにする必要がある。また、狭帯域フィルタを1個だけ使用して、最適比合成器13と主位相検波器11Bの間に挿入するようにしてもよい。最適比合成器13と主位相検波器11Bの間に狭帯域フィルタを挿入する場合も、周波数同期部11が変調信号の影響を受けることなく周波数同期ができるという効果がある。位相差調整部12の入力には変調信号があるが、変調信号は両偏波で同位相なので位相差調整部12の動作に影響はない。
この実施の形態1では、位相差調整部12に関する第1の帰還路と、周波数同期部11に関する第2の帰還路とに共通でない部分がなく、ミキサ15Pとミキサ16Pという帰還路と、ミキサ15Qとミキサ16Qという帰還路とで、帰還路が2個ある。第1の帰還路と第2の帰還路の一部または全部を共通でなくしてもよい。第1の帰還路と第2の帰還路のどちらかまたは両方で、帰還路を1個または3個以上にしてもよい。
以上のことは、関係する構成要素を有する他の実施の形態でもあてはまる。
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1の周波数偏移付加部14の構成を変更したものである。
図12は、この実施の形態2でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して異なる点だけを説明する。周波数偏移付加部14にミキサ14Aがなく選択スイッチ14Cが有る。選択スイッチ14Cは、ミキサ15Pの出力であるPLL同期信号28Pまたはミキサ15Qの出力であるPLL同期信号28Qの何れか信号強度が大きい方をAGC増幅器10P,10Qの増幅ゲインから判断して、ミキサ14Bで合成受信信号31と混合する信号として選択するものである。
選択スイッチ14Cは周期的(例えば0.2秒ごと)にAGC増幅器10の増幅ゲインをチェックし、増幅ゲインの比すなわち信号強度の差が所定値以上であり、信号強度が大きい偏波が選択されていない場合に、信号強度が大きい偏波の移相器29に位相差信号30が入力されるように切替える。増幅ゲインの比すなわち信号強度の差が所定値未満の場合は、信号強度が同じと判断して、切替えは行わない。
図12では、P偏波の調整後受信信号22Pの信号強度が大きい場合を示す。PLL同期信号28Pの周波数はF0+ΔFd+F1であり、ミキサ14Bで周波数F1の合成受信信号31と混合すると、合成出力信号9の周波数はF0+Fdになる。合成出力信号9の位相は、PLL同期信号28Pと同じΦPになる。選択スイッチ14CでPLL同期信号28Pを選択する場合は、合成出力信号9の位相はΦQになる。
このように周波数偏移付加部14で、PLL同期信号28P,28Qの何れかを合成受信信号31に混合しても合成出力信号9に周波数偏移を付加することができる。そのためこの実施の形態2でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
実施の形態3.
実施の形態3は、狭帯域フィルタ23をなくして周波数同期部11のPLLの入力に変調信号が含まれるように、実施の形態1を変更したものである。
図13は、この実施の形態3でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して異なる点だけを説明する。周波数同期部11から、狭帯域フィルタ23P,23Qと最適比合成器11Aをなくし、最適比合成器13の出力を主位相検波器11Bの入力となるようにしている。
狭帯域フィルタ23を使用しないようにすることにより、周波数同期部11のPLLの入力に変調信号が含まれるようになる。ただし、変調信号がPLLに影響を及ぼさないように、ループフィルタ11Dが変調信号を通さず低周波数分だけを通過させるロ−パスフィルタであるとする。ラグリードフィルタは高周波に対してはR2/(R1+R2)分だけ高周波成分を通すので、高周波分を通さないようにする対策が必要である。
位相差調整部12と周波数偏移付加部14は、実施の形態1と同様に動作する。
この実施の形態3でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
実施の形態4.
実施の形態4は、周波数同期部11をなくするように、実施の形態1を変更したものである。
図14は、この実施の形態4でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して異なる点だけを説明する。周波数同期部11と周波数偏移付加部14がなく、基準信号発振部17がF0+F1−F3の周波数すなわち79.5MHzの第4基準信号33と、周波数F0+F1(=80MHz)の第5基準信号34も出力する。ミキサ15P,15Qは、周波数同期信号26の替わりに第4基準信号33を混合する。AGC増幅器10は、非同期検波方式で動作する。周波数偏移付加部14の替わりにミキサ35が有る。ミキサ35では第5基準信号34と合成受信信号31とを混合して、その差の周波数の信号を出力する。ミキサ35の出力が、合成出力信号9である。
位相差調整部12は、実施の形態1で説明した周波数同期部11のPLLが同期しない場合と同様に動作し、調整後受信信号22P,22Qの位相を一致させるように動作する。周波数同期部11がないので、調整後受信信号22P,22Qと合成受信信号31の周波数FJは、以下のようになる。
FJ=F0+F1−(F0+ΔFd)=F1−ΔFd (式6.1)
周波数偏移ΔFdが符号を反転して、調整後受信信号22などに残る。
ミキサ35で周波数F0+F1の第5基準信号34と合成受信信号31の差の周波数の信号が出力信号になるように混合するので、ミキサ35の出力すなわち合成出力信号9の周波数FGは、以下となる。
FG=F0+F1−FJ=F0+ΔFd (式6.2)
合成出力信号9の周波数FGは、実施の形態1の場合と同じになる。合成受信信号31には周波数偏移分があり、ミキサ35で周波数偏移を付加するのではないので、ミキサ35は周波数偏移付加部14ではない。ただし、合成受信信号31の周波数偏移の正負が反転しているので、合成出力信号9では受信信号8と同じ周波数偏移となるようにするか、
ドップラ計測部4Dで入力の周波数偏移または計測した視線速度のどちらかの符号を反転させるかする必要がある。
この実施の形態4でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。さらに、周波数同期部12と周波数偏移付加部14をなくしたので、ダイバーシチ受信装置7をより安価に製作できるという効果がある。
実施の形態5.
実施の形態5は、位相差調整部12で副位相検波器12Pを1個だけ使用するように実施の形態4を変更したものである。図15は、この実施の形態5でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態4の場合の図14と比較して異なる点だけを説明する。副位相検波器12Qと差演算器12Aがない。基準信号発振部17が第1基準信号18を出力しない。第1基準信号18を出力できるようにしてもよいが、第1基準信号18は使用しない。
副位相検波器12Pは、調整後受信信号24Qを基準として調整後受信信号24Pとの位相差を検出する。副位相検波器12PはAGC増幅器10の増幅ゲインも入力にして、増幅ゲインの差が所定値KT以上ある場合には出力をゼロにする。このようにすると、副位相検波器12Pが、実施の形態4の場合の差演算器12Aと同様に動作する。副位相検波器12Pでは、同じ周波数の信号の位相差を検出する。
この実施の形態5でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。さらに、周波数同期部12と周波数偏移付加部14がなく、位相差調整部12から副位相検波器12Qと差演算器12Aをなくしたので、ダイバーシチ受信装置7をより安価に製作できるという効果がある。
実施の形態6.
実施の形態6は、周波数偏移付加部14をなくし、位相差調整部12に関する第1の帰還路と周波数同期部11に関する第2の帰還路とで共通な部分をなくし、第1の帰還路と第2の帰還路をそれぞれ1個にするように、実施の形態1を変更したものである。
図16は、この実施の形態6でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して以下の点が異なる。
(1)周波数がF0+F1−F3(=79.5MHz)の第4基準信号33と、周波数がF0−F1(=80MHz)の第5基準信号34を、基準信号発振部17が出力する。
(2)周波数偏移付加部14の替わりに、第5基準信号34と合成受信信号31の差の周波数の信号を出力するミキサ35がある。
(3)最適比合成器11Aと主位相検波器11Bの間に、周波数同期信号26と合成受信基準信号25の差の周波数の信号を出力するミキサ36を追加し、周波数同期部11内でPLLを構成する。
(4)周波数同期信号26と10MHzの第1基準信号18との周波数の差の信号を出力するミキサ37を追加し、ミキサ37の出力信号を副位相検波器12P,12Qで第1基準信号18の替わりに使用する。
(5)ミキサ15P,15Qで、VCO11Cの出力である周波数同期信号26の替わりに第4基準信号33を混合する。つまり、ミキサ15とミキサ16を含むPLLを構成しないようにする。こうすると、調整後受信信号22は位相差調整部12で処理され、周波数同期部11では処理されなくなる。
(6)選択スイッチ12Cと符号反転器12Dと移相器29Qとミキサ15Qがなく、位相差演算部12Bの出力である位相差信号30は常に移相器29Pに入力され、ミキサ16QではPLL同期信号28Qの替わりに第5基準信号34を混合する。
図16のブロック図では、ミキサ36の出力が周波数同期部11の主位相検波器11Bの入力になり、ループフィルタ11D、VCO11C、及びミキサ36が、前の装置の出力を入力とする関係にある。つまり、ミキサ36、主位相検波器11B、ループフィルタ11D及びVCO11Cで、1個のPLLが構成される。ミキサ36が、第2の帰還路になる。なお、副位相検波器12P,12QにVCO11Cの出力である周波数同期信号26がミキサ37を通って入力されているが、差演算器12Aで差をとるので位相差信号30には周波数同期信号26の影響は出てこない。そのため、位相差調整部12とミキサ15Pとミキサ16Pを含むようなPLLは構成されない。
ここで、前の装置の出力を入力とする装置を順番にたどると、同じ装置に戻る場合に、それらの装置の集合を、装置のループまたはループと呼ぶことにする。位相差調整部12に関する装置のループは、副位相検波器12P,差演算器12A、位相差演算部12B、移相器29P、ミキサ15P、ミキサ16P、狭帯域フィルタ23P、及びの副位相検波器12Pという1個だけである。つまり、ミキサ15P、ミキサ16P、及び狭帯域フィルタ23Pが、第1の帰還路になる。
装置のループの構成は異なるが、微小変動分に対する周波数同期部11と位相差調整部12の制御ブロック図は、実施の形態1の場合と同じになる。
周波数同期部11は、実施の形態1の場合と同様に安定に動作する。ただし、ミキサ15とミキサ16がPLLに含まれないので、ミキサ15の出力信号であるPLL同期信号28やミキサ16の出力信号である調整後受信信号22と合成受信信号31などには、周波数偏移があることになる。調整後受信信号22と合成受信信号31周波数FJは、実施の形態4の場合と同じで、F1−ΔFdになる。なお、調整後受信基準信号24、合成受信基準信号25の周波数もFJである。
周波数同期信号26の周波数FVは、ミキサ36で周波数同期信号26と合成受信基準信号25の差の周波数の出力信号を出力し、周波数同期部11はミキサ36の出力信号の周波数が主位相検波器11Bで使用する信号の周波数(FAとする)と同期すなわち同じになるように動作するので、以下となる。
FV−FJ=FA (式7.1)
(式7.1)に(式6.1)を代入してFVについて解くと、以下となる。
FV=FA+FJ=FA+F1−ΔFd (式7.2)
FVにもFJと同じ周波数偏移がある。
この実施の形態では周波数同期部11で第1基準信号18と同期させるので、FVは以下となる。
FV=2×F1−ΔFd (式7.3)
ミキサ37は、周波数同期信号26から周波数をFJの信号を作成するためのものである。ミキサ37で混合する信号の周波数をFBとすると、FBは以下のようになる。
FB=FJ−FV=FA (式7.4)
つまり、周波数同期部11で位相差をとる基準として使用する信号と同じ周波数の信号をミキサ37で使用すればよい。
ミキサ37の周波数FJの出力信号を、副位相検波器12P,12Qで位相差をとる基準信号として使用する。このようにすると、副位相検波器12P,12Qで正確な位相差を検出でき、位相差調整部12が正確に位相差を調整できる。ただし、移相器29Pの1個だけにしたので、受信信号8P,8Qのどちらの信号強度が大きくてもP偏波の方で位相差を調整する。
合成出力信号9の周波数FGは、実施の形態4の場合と同様に、F0+ΔFdになる。
この実施の形態6でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
実施の形態7.
実施の形態7は、位相差調整部12に関する第1の帰還路と共通でない部分だけの周波数同期部11に関する第2の帰還路が1個あり、第1の帰還路と共通な部分が有る第2の帰還路が2個有るように、実施の形態1を変更したものである。
図17は、この実施の形態7でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して以下の点が異なる。実施の形態6と同じ変更点には同じ番号をつけ、一部変更したものは(1A)のようにAを付加した番号とする。
(0)ミキサ16で、増幅後受信信号21とPLL同期信号28の差の周波数の信号を出力するように混合する。これにより、周波数同期部11と位相差調整12の帰還の方を、ミキサ16においてマイナスで混合することになる。そのため、主位相検波器11Bのゲインは−KdではなくKdとする。符号反転器12Dを、移相器29Pの方におく。なお、移相器29は正の入力に対して位相を遅らせるので、ミキサ16で受信信号8を正で入力すると、差演算器12Aで正の入力となるP偏波の移相器29Pの方で符号を反転する必要がある。
(1A)周波数がF6(=2MHz)の第6基準信号38と、周波数がF0−2×F1+F6−F3(51.5=MHz)の第7基準信号39と、周波数がF0−2×F1+F6(=52MHz)の第8基準信号40を、基準信号発振部17が出力する。
(2A)ミキサ14Aで、第3基準信号20の替わりに第8基準信号40を混合する。ミキサ14Bで、合成受信信号31と偏移化信号32の和の周波数を出力するように混合する。
(3A)最適比合成器11Aと主位相検波器11Bの間に、合成受信基準信号25と周波数同期信号26の差の周波数の信号を出力するミキサ36を追加し、周波数同期部11内でPLLを構成する。また、主位相検波器11Bで第1基準信号18ではなく、第6基準信号38に対する位相差を検波する。第1基準信号18はどこでも使用しないが、基準信号発振部17の出力できるものとする。なお、基準信号発振部17が第1基準信号18を出力しないようにしてもよい。
(4A)周波数同期信号26と第6基準信号38との周波数の和の信号を出力するミキサ41を追加し、ミキサ41の出力信号を副位相検波器12P,12Qで第1基準信号18の替わりに使用する。
(5A)VCO11Cの出力である周波数同期信号26と第7基準信号39との和の周波数の信号を出力するミキサ42を追加し、ミキサ15P,15Qで周波数同期信号26の替わりにミキサ42の出力信号を混合する。
図17のブロック図では、2重で3個のPLLがある。1個のPLLは、図16に示した実施の形態6の場合と同様、ミキサ36、主位相検波器11B、ループフィルタ11D、VCO11C、及びミキサ36というループである。残りの2個は、周波数同期部11、ミキサ41、ミキサ15P、ミキサ16P、及び周波数同期部11というループと、周波数同期部11、ミキサ41、ミキサ15Q、ミキサ16Q、及び周波数同期部11というループである。そのため、ミキサ36、ミキサ41、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Qが、第2の帰還路になる。このような2重のループを安定にするために、ミキサ36はミキサ16と同様に帰還の方をマイナスで混合する。そのために、第1基準信号18より周波数が低い第6基準信号38に周波数同期部11で周波数を同期させる。
位相差調整部12に関するループは、実施の形態1の場合と同じものが2個ある。そして、第1の帰還路も、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Q、及び狭帯域フィルタ23P,23Qと、実施の形態1と同じである。
周波数同期部11に関しては2重のループがあり、ミキサ15やミキサ16を通る外側のループは、ミキサなど動特性を考慮しない素子ばかりなので、ゲインが2倍の1個のループと等価である。そのため、微小変動分に対する周波数同期部11の制御ブロック図は、実施の形態1の場合にゲインを2倍にしたものになる。位相差調整部12の制御ブロック図は、実施の形態1の場合と同じになる。
周波数同期部11は、実施の形態1の場合と同様に安定に動作する。ただし、2重のループがあるので、周波数同期信号26の周波数FVと合成受信基準信号25の周波数FJに関して、以下のようになる。
ミキサ15とミキサ16では、以下の関係がある。
FJ=F0+ΔFd−(FV+F0−2×F1+F6−F3+F3)
FJ=ΔFd−FV+2×F1−F6 (式8.1)
ミキサ36では以下の関係がある。
FJ=FV+F6 (式8.2)
(式8.1)に(式8.2)を代入して、FVについて解くと、以下となる。
FV=F1−F6+ΔFd/2 (式8.3)
(式8.3)を(式8.2)に代入して、以下となる。
FJ=F1+ΔFd/2 (式8.4)
FVとFJともに、ΔFdの半分の周波数偏移を持つ。
FJがΔFdの半分の周波数偏移を持つので、副位相検波器12P,12Qでは同じ周波数の信号に対する位相差を検出するため、ミキサ41で周波数同期信号26と第6基準信号38の和の周波数が出力になるように混合する。ミキサ41の出力信号の周波数はFJと同じになるので、ミキサ41の出力信号を副位相検波器12P,12Qの入力とする。
合成出力信号9の周波数偏移付加部14で、周波数同期信号26と第8基準信号40とを合成受信信号31に加えるので、合成出力信号9の周波数FGは、以下のようになる。
FG=FJ+FV+F0−2×F1+F6
=F1−F6+ΔFd/2+F1+ΔFd/2+F0−2×F1+F6
=F0+ΔFd (式8.5)
合成出力信号9の周波数FGは、実施の形態1の場合と同じになる。このように、合成受信信号31の周波数偏移がゼロではなく受信信号8の周波数偏移と異なる場合に、周波数偏移付加部14により合成出力信号9の周波数偏移を受信信号8と同じにできる。
なお、合成受信信号31の周波数偏移がゼロではないので、周波数偏移付加部14では、合成受信信号31の周波数を周波数偏移が受信信号8と同じになるように所定倍して、所定の周波数になるように周波数を増減させて合成出力信号9を作成してもよい。
この実施の形態7でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
この発明が適用される追跡管制システムの概念を表すシステム構成図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の周波数同期部の動作特性を示す制御ブロック図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置のループフィルタの構成を示す回路図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の位相差調整部の動作特性を示す制御ブロック図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の移相器の動作を説明する図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の調整後受信信号の位相が異なる場合の最適比合成器で合成された信号の位相を説明する図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の周波数同期部の受信信号の位相の変動に対する動作特性を示す制御ブロック図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の受信信号の位相の変化に対する周波数同期部と位相差調整部の動作を説明する図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置の受信信号の位相の変化に対する周波数同期部と位相差調整部の動作を説明する別の図である。 この発明の実施の形態1のダイバーシチ受信装置のQ偏波の信号が弱い場合の動作を表すブロック図である。 この発明の実施の形態2のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。 この発明の実施の形態3のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。 この発明の実施の形態4のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。 この発明の実施の形態5のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。 この発明の実施の形態6のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。 この発明の実施の形態7のダイバーシチ受信装置の構成を表すブロック図である。
符号の説明
1 :衛星
2 :地上局
3 :送受信アンテナ
4 :追跡管制装置
4A:変調部
4B:復調部
4C:測距部
4D:ドップラ計測部
5 :送信信号周波数変換装置
6 :受信信号周波数変換装置
7 :ダイバーシチ受信装置
8P:受信信号
8Q:受信信号
9 :合成出力信号
10P:AGC増幅器(自動利得制御増幅器)
10Q:AGC増幅器(自動利得制御増幅器)
11 :周波数同期部
11A:最適比合成器
11B:主位相検波器
11C:VCO
11D:ループフィルタ
12 :位相差調整部
12P:副位相検波器
12Q:副位相検波器
12A:差演算器
12B:位相差信号演算部
12C:選択スイッチ
12D:符号反転器
13 :最適比合成器(合成部)
14 :周波数偏移付加部
14A:ミキサ
14B:ミキサ
14C:選択スイッチ
15P:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
15Q:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
16P:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
16Q:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
17 :基準信号発振部
18 :第1基準信号
19 :第2基準信号
20 :第3基準信号
21P:増幅後受信信号
21Q:増幅後受信信号
22P:調整後受信信号
22Q:調整後受信信号
23P:狭帯域フィルタ(第1の帰還路)
23Q:狭帯域フィルタ(第1の帰還路)
24P:調整後受信基準信号
24Q:調整後受信基準信号
25 :合成受信基準信号
26 :周波数同期信号
27P:位相差調整信号
27Q:位相差調整信号
28P:PLL同期信号
28Q:PLL同期信号
29P:移相器
29Q:移相器
30 :位相差信号
31 :合成受信信号
32 :偏移化信号
33 :第4基準信号
34 :第5基準信号
35 :ミキサ
36 :ミキサ
38 :第6基準信号
49 :第7基準信号
40 :第8基準信号
41 :ミキサ
42 :ミキサ

Claims (5)

  1. 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部と前記周波数同期部により処理された2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前記周波数同期信号を使用して前記合成受信信号に周波数偏移を付加する周波数偏移付加部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備えたダイバーシチ受信装置。
  2. 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部により処理され、前記周波数同期部では処理されない2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備え、前記周波数同期信号を前記位相差調整部が利用することを特徴とするダイバーシチ受信装置。
  3. 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記位相差調整部により処理された2個の調整後受信信号を合成する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する非同期検波方式による2個の自動利得制御増幅器とを備えたダイバーシチ受信装置。
  4. 2個の前記受信信号の信号強度の差が所定値以上の場合は信号強度が大きい方の前記受信信号だけを使用することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一に記載のダイバーシチ受信装置。
  5. 前記自動利得制御増幅器を非同期検波方式でも受信信号を増幅できるようにすること特徴とする請求項1〜請求項2の何れか一に記載のダイバーシチ受信装置。

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