JP2005072884A - ダイバーシチ受信装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号8の位相差を調整する位相差調整部12、位相差調整部12の出力を位相差調整部12の入力に戻す第1の帰還路15,16、受信信号8から周波数偏移を除去する周波数同期部11、周波数同期部11で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号26を周波数同期部11の入力に戻す第2の帰還路15,16、位相差調整部12と周波数同期部11により処理された2個の調整後受信信号22を合成して合成受信信号31を出力する合成部13、周波数同期信号26を使用して合成受信信号31に周波数偏移を付加する周波数偏移付加部14、前処理として受信信号8を増幅する2個の自動利得制御増幅器10を備える。
【選択図】 図2
Description
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、ドップラ効果による周波数偏移を有する信号を出力するダイバーシチ受信装置を得ることを目的とする。
図1は、この発明が適用される追跡管制システムの概念を表すシステム構成図である。この追跡管制システムは、衛星1と地上局2とで構成される。図1には衛星1と地上局2をそれぞれ1個しか書いていないが、追跡管制システムが追跡管制する衛星1の数はそのシステムにより決まり、地上局2は1個以上の必要な数を所定の箇所に配置する。地上局2には、衛星1との間で電波を送受信する送受信アンテナ3と、衛星1の追跡管制のための信号処理などを行う追跡管制装置4と、衛星1との間の電波の周波数(2000MHzを超える高周波)と追跡管制装置4が処理する信号の周波数(70MHz程度)との間の変換を行う送信信号周波数変換装置5と受信信号周波数変換装置6、直交する2偏波の受信信号をダイバーシチ合成するダイバーシチ受信装置7とを有する。送受信アンテナ3は、送信には右旋偏波または左旋偏波を切替えて使用でき、右旋偏波と左旋偏波の両方を受信する。なお、ここでは円偏波を使用するものとして、右旋偏波をP偏波とし左旋偏波をQ偏波として説明するが、垂直偏波と水平偏波を使用する場合でも動作は同様である。
地上局2には図1に示す以外の装置もあるが、本発明を説明する上で必要なものだけを示す。追跡管制装置4やダイバーシチ受信装置7などに関しても、本発明に必要なものだけを説明する。
デジタル通信を行なう場合では、変調のことを符号化と呼び、復調のことを復号化と呼ぶ場合がある。本明細書では、変調には符号化も含み、復調には復号化も含むものとする。
図2などのブロック図では、信号には『(周波数、位相)』という形式で、その信号の位相同期した定常状態での周波数と位相と変調信号を含むかどうかを表示する。変調信号を含む場合は、位相を『0度+変調』などのように表示する。
第2基準信号19の周波数は第3基準信号20の周波数の120倍である。第1基準信号18、第2基準信号19、第3基準信号20は位相が一致しており、最も周波数が低い第3基準信号20の位相が所定値(ここでは0度とする)の場合には、第1基準信号18と第2基準信号19の位相も同じ所定値になる。なお、ここで示した周波数の数字は例であり、他の周波数を使用してもよい。他の周波数を使用する場合も、第2基準信号19と第3基準信号20の周波数の比が整数になるようにし、第1基準信号18と第2基準信号19と第3基準信号20の位相は一致させる。
増幅後受信信号21P,21Qは、それぞれミキサ16P,16Qにより周波数同期部11と位相差調整部12の出力信号と混合されて調整後受信信号22P,22Qとなる。
狭帯域フィルタ23は、第1基準信号18の周波数である10MHzの前後3kHz程度の周波数帯域だけを選択的に通すフィルタである。狭帯域フィルタ23が調整後受信信号22の中の変調信号を除去することにより、調整後受信信号22の周波数と位相を第1基準信号18に一致させることが容易になる。狭帯域フィルタ23P,23Qを通過した信号をそれぞれ、調整後受信基準信号24P,24Qと呼ぶ。
主位相検波器11Bは、合成受信基準信号25と第1基準信号18を入力とする。主位相検波器11B、ループフィルタ11D、VCO11Cは直列に接続され、VCO11Cの出力がミキサ15P,15Qの入力になる。VCO11Cが発振して出力する信号を周波数同期信号26と呼ぶ。周波数同期信号26と位相差調整部12のP偏波に関する出力信号(位相差調整信号27Pと呼ぶ)とを、その和の周波数の信号を出力するようにミキサ15Pで混合し、ミキサ15Pの出力信号(PLL同期信号28Pと呼ぶ)と増幅後受信信号21Pとの差の周波数の信号を出力するようにミキサ16Pで混合される。ミキサ16Pの出力信号である調整後受信信号22Pが、狭帯域フィルタ23Pを通過して、最適比合成器11Aの入力となる。そのため、周波数同期部11とミキサ15Pとミキサ16Pとで、フィードバックループが構成される。
ミキサ15P,15Qとミキサ16P,16Qが、本発明で言う第2の帰還路である。
これらの両方または何れか1個のループが、主位相検波器11Bで検出される第1基準信号18と最適比合成器11Aの出力である合成受信基準信号25との位相差をゼロにするように動作するフィードバックループすなわちPLLである。PLLにより、最適比合成器11Aの出力である合成受信基準信号25は第1基準信号18と周波数と位相が同期することになる。周波数同期部11は、10Hz〜3000Hz程度の制御信号を出して動作する。
位相差調整部12、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Q、狭帯域フィルタ23P,23Qによりフィードバックループを構成している。つまり、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Q、及び狭帯域フィルタ23P,23Qは、本発明で言う第1の帰還路である。
位相差調整信号27P,27Qは、その周波数はともに第3基準信号20と同じで、位相差が受信信号8P,8Qの間の位相差を相殺して調整後受信基準信号24P,24Qの位相を一致させるように調整された信号である。位相差調整部12は、3Hz未満の制御信号を出して動作する。
周波数偏移付加部14は、VCO11Cが出力する周波数同期信号26と第3基準信号20との和の周波数の信号を出力するように混合するミキサ14Aと、ミキサ14Aの出力の偏移化信号32と合成受信信号31との差の周波数の信号を出力するように混合するミキサ14Bとを有する。ミキサ14Bの出力が、ダイバーシチ受信装置7の合成出力信号9である。
このダイバーシチ受信装置7は、2個の偏波の受信信号8の信号電力の差すなわちAGC増幅器10の増幅ゲインの差が所定値KT(=10dB程度とする)以上ある場合は、増幅ゲインが小さいすなわち信号電力が大きいの方の偏波だけを出力する。また、選択スイッチ12Cは、増幅ゲインを利用して制御する移相器29を選択する。そのために、最適比合成器11A、最適比合成器13、差演算器12A、及び選択スイッチ12Cには、AGC増幅器10の増幅ゲインも入力される。
まず、ダイバーシチ合成の必要性を説明する。衛星1はP偏波である右旋偏波またはQ偏波である左旋偏波の何れかを送信するが、衛星1の姿勢が本来の姿勢からずれる場合や、衛星が90rpm程度の回転運動する場合などがあり、P偏波とQ偏波の両方の偏波の信号が地上局2では受信される。その理由は、以下である。衛星1の本来の姿勢では円偏波アンテナからはP偏波である右旋偏波が送信されるとする。衛星1が回転して衛星1の円偏波アンテナが地上局2から見て反対の位置になると、Q偏波である左旋偏波で送信することになる。P偏波またはQ偏波だけを受信していると、衛星1が回転する場合には受信信号が間欠的にゼロになり、衛星1を追尾できなくなる場合がある。また、一方の偏波の信号しか利用しないので、両方の偏波の信号を利用する場合よりも信号強度が小さくなる。さらに、フェ−ジングなどの伝播路による劣化は直交する両偏波に同時には発生しないことが経験的に知られており、両偏波を利用することは安定動作につながる。このため、2つの偏波信号を合成するダイバーシチ合成が必要である。
(1)RとLの位相差が180度の場合
|R+L|=|R−R|=0で、合成する意味がない。
(2)RとLの位相差が90度の場合
|R+L|=|R+jR|=(√2)×|R|となる。
(3)RとLの位相差が0度の場合
|R+L|=|R+R|=2×|R|となる。
つまり、RとLの位相を一致させてから合成する場合が、合成後の信号強度が最も大きくなる。なお、RとLに含まれる雑音は位相が一致していないので合成しても2倍にはならず、位相を一致させて合成するとS/N比が改善される。このように位相差調整は、合成受信信号31の信号強度を大きくしS/N比を改善する上で必要かつ重要である。なお、水平偏波と垂直偏波を使用する場合も同様になる。
V :衛星1の視線速度。地上局2に向う場合が正。
C :光速。
F :衛星1が送信する信号の周波数。2000MHz以上。
ΔFd:ドップラ効果による周波数偏移。最大200kHZ程度。
fm :変調周波数。4kHz〜500kHz程度。
Fd :地上局2での受信信号の周波数。
F0 :周波数偏移ΔFdがゼロ時の受信信号8P,8Qの周波数。70MHz。
F1 :第1基準信号18の周波数。10MHz。
F2 :第2基準信号19の周波数。60MHz。
F3 :第3基準信号20の周波数。500kHz。
ΦP :受信信号8Pの位相。
ΦQ :受信信号8Qの位相。
ΔFd=F×(V/C) (式1.1)
ドップラ計測部4Dでは、ΔFdを計測して追跡管制装置4が管理するFから(式1.1)により衛星1の視線速度Vを計算する。
地上局2での受信信号の周波数Fdは、衛星1が送信する信号の周波数Fに(式1.1)のΔFdが加わるので、以下となる。
Fd=F+ΔFd=F+F×(V/C) (式1.2)
受信信号周波数変換装置6により周波数を変換されて、受信信号8P,8Qの周波数は、F0+ΔFdになる。
FJ :調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の周波数。
ΦJ :調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の位相。
ΔΦ :主位相検波器11Bで検出する合成受信基準信号25と
第1基準信号18との位相差。
Vd :主位相検波器11Bの出力電圧。
Kd :主位相検波器11Bのゲイン。VdのΔΦに対する比例係数。
Vf :ループフィルタ11Dの出力電圧。
Kv :VCO11Cの周波数感度。入力電圧に対する出力周波数の変化率。
FV :VCO11Cの発振周波数すなわち周波数同期信号26の周波数。
FV0 :Vfがゼロの時のVCO11Cの発振周波数。
Kr(S):ループフィルタ11Dのラプラス変換した伝達関数。
ΦJ1 :位相同期した定常状態でのΦJ。
変数の定義から主位相検波器11Bで検出する位相差ΔΦに関して、以下の式が成立する。なお、積分は所定の時間の起点から行う。
ΔΦ=∫2π×(FJ−F1)dt+ΦJ (式1.3)
(式1.3)より、位相同期した定常状態では、以下である必要がある。
FJ=F1 (式1.4)
ΔΦ=ΦJ1 (式1.5)
主位相検波器11Bの出力電圧Vdは、以下となる。ここで、後で説明するようにΔFdが増加するとFJひいてはΔΦは減少するので、ΔFdの増加に対してVdひいてはFVが増加するように下の式の比例係数にマイナスをかける。
Vd=−Kd×ΔΦ (式1.6)
Vf=Vd (式1.7)
VCO11Cの発振周波数FVは、以下となる。実際にはVCO11Cの動作は時間遅れがあるが、ここでは無視する。
FV=FV0+Kv×Vf (式1.8)
ミキサ15Pでは出力信号の周波数は入力信号の周波数の和であり、ミキサ16Pでは出力信号の周波数が入力信号の周波数の差になるので、FJは以下となる。ΔFdが増加するとFJが減少することが分かる。
FJ=FV+F3−(F0+ΔFd) (式1.9)
位相同期した定常状態では(式1.4)が成立するので、(式1.9)に(式1.4)を代入して、FVについて解くと以下となる。
FV=F0+ΔFd+F1−F3 (式1.10)
VCO11Cの出力である周波数同期信号26の周波数であるFVが、ドップラ効果による周波数偏移を有する。
FV0―Kv×Kd×ΦJ1=F0+ΔFd+F1−F3
ΦJ1=(―F0―ΔFd―F1+F3+FV0)/(Kv×Kd) (式1.11)
位相同期した定常状態では、(式1.10)の周波数FVでVCO11Cが発振することにより、調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の周波数が第1基準信号18と同じF1になり、第1基準信号18との位相差ΦJが(式1.11)で計算できるΦJ1になることが分かる。なお、KvとKdが大きくて、ΦJ1は0度に近い値である。そのため、図2などでは、位相は0度と表示する。
δFd:周波数偏移ΔFdの変動分。
δFV:VCO11Cの発振周波数FVの変動分。
δVd:主位相検波器11Bの出力電圧Vdの変動分。
δVf:ループフィルタ11Dの出力電圧Vfの変動分。
δΔΦ:主位相検波器11Bで検出する位相差ΔΦの変動分。
δVf=Kr(S)×δVd (式1.12)
(式1.3)に(式1.9)を代入してFJを消去すると、変動分に関して以下となる。
−δΔΦ=∫2π×(δFd―δFV)dt (式1.13)
周波数偏移ΔFdの変動分δFdに対するPLLの制御ブロック図は、(式1.6)、(式1.12)、(式1.13)から図3となる。なお、図3のKdのブロックの入力は−δΔΦなので、ゲインは−KdではなくKdである。
図3の制御ブロック図から、δFdとδFVとの間には、以下の関係式が成立する。
δFV=(Kd×KV×(Kr(S)/S))×(δFd−δFV)
δFV=1/(1+S/(Kd×KV×Kr(S)))×δFd (式1.14)
Kr(S)=(1+T2×S)/(1+T1×S) (式1.15)
ここに、図4に示す回路定数とT1、T2の間には、以下の関係がある。
T1=(R1+R2)×C1 (式1.16)
T2=R2×C1 (式1.17)
(式1.15)を(式1.14)に代入して、以下の式を得る。
δFV=(1+T1×S)/(1+b×S+a×S2)×δFd (式1.18)
ここに、(式1.18)での係数a、係数bは以下である。
a=T2/(Kd×KV) (式1.19)
b=T1+T2/(Kd×KV) (式1.20)
(式1.19)と(式1.20)により係数a、係数bは正であることが保証されているので、(式1.18)でδFVが安定でδFdに追従することが分かる。よって、PLLによる周波数同期部11は、調整後受信基準信号24P,24Qと合成受信基準信号25の周波数を、第1基準信号18と同じF1に安定させることができる。
KP:AGC増幅器10Pの増幅ゲイン
KQ:AGC増幅器10Qの増幅ゲイン
XP:調整後受信信号22Pの複素ベクトル。
XQ:調整後受信信号22Qの複素ベクトル。
XG:合成受信信号31の複素ベクトル。
(1)KP>KQの場合。P偏波の信号強度の方が小さい場合。
|XG|=|XP|×(KQ/KP)+|XQ| (式2.1)
(2)KP≦KQの場合。P偏波の信号強度の方が小さくない場合。
|XG|=|XP|+|XQ|×(KP/KQ) (式2.2)
(式2.1)と(式2.2)によれば、AGC増幅器10の増幅ゲインが小さい方すなわち信号強度が大きい方の偏波の信号に、増幅ゲインの逆数の比を乗じたもう一方の偏波の信号を加算する。ここで、信号強度は信号電力により計測するものとする。同じ信号電力に増幅するAGC増幅器10では、増幅ゲインの逆数が増幅前の信号電力に比例することになる。受信信号8P,8Qには同じ大きさの雑音があると考えられ、増幅ゲインが大きい方の受信信号8P,8Qでは雑音の割合が多くなる。S/N比が低く雑音が多い方の信号の比率を少なくする(式2.1)または(式2.2)の割合で合成すると、合成受信信号31のS/N比は最大になる。なお、信号強度は信号電力ではなく信号の振幅の電圧などで計測することにしてもよい。
ΔΦP :副位相検波器12Pで検出する調整後受信基準信号24Pと
第1基準信号18との位相差。
ΔΦQ :副位相検波器12Qで検出する調整後受信基準信号24Qと
第1基準信号18との位相差。
VP :副位相検波器12Pの出力電圧。
VQ :副位相検波器12Qの出力電圧。
KM :副位相検波器12P,12Qのゲイン。
VS :差演算器12Aの出力電圧。
KS(S):位相差信号演算部12Bのラプラス変換した伝達関数。
KN :位相差信号演算部12Bのゲイン。
ΔΦS :位相差信号演算部12Bの出力の位相差すなわち位相差信号30。
ΦV :周波数同期信号26の位相。
ΦSP :移相器29Pの出力信号である位相差調整信号27Pの位相。
ΦSQ :移相器29Qの出力信号である位相差調整信号27Qの位相。
ΦV1 :位相同期した定常状態でのΦJをΦJ1とするΦV。
VP=KM×ΔΦP (式3.1)
VQ=KM×ΔΦQ (式3.2)
差演算器12Aでは、以下の式が成立する。
VS=KM×(ΔΦP−ΔΦQ) (式3.3)
位相差信号演算部12Bでは、位相差信号30すなわちΔΦSに関して以下の式が成立する。
ΔΦS=KS(S)×VS (式3.4)
ここで、KS(S)は、以下の積分特性を持たせる。このような特性は、コンデンサによるアナログ回路などで容易に実現できる。
KS(S)=KN/S (式3.5)
ΦSP=0 (式3.6)
ΦSQ=ΔΦS (式3.7)
逆に、Q偏波の信号強度が大きい場合は、以下となる。
ΦSP=−ΔΦS (式3.8)
ΦSQ=0 (式3.9)
P偏波とQ偏波のどちらの信号強度が大きいにしろ、以下が成立する。
ΦSP−ΦSQ=−ΔΦS (式3.10)
ΔΦP=ΦSP+ΦV−ΦP (式3.11)
ΔΦQ=ΦSQ+ΦV−ΦQ (式3.12)
(式3.11)から(式3.12)を引いて、以下の式を得る。
ΦP−ΦQ−(ΦSP−ΦSQ)=ΔΦQ−ΔΦP (式3.13)
(式3.3)、(式3.4)、(式3.10)、及び(式3.13)により、ΔΦQ−ΔΦPを消去すると、以下となる。
(ΦP−ΦQ−(ΦSP−ΦSQ))×KS(S)×KM=ΦSP−ΦSQ(式3.14)
ΦSP−ΦSQ=
(KS(S)×KM/(1+KS(S)×KM))×(ΦP−ΦQ) (式3.15)
(式3.15)に(式3.5)を代入して、以下となる。
ΦSP−ΦSQ=(KN×KM/(S+KN×KM))×(ΦP−ΦQ) (式3.16)
(式3.16)より、ΦP−ΦQの変動に対して、ΦSP−ΦSQは安定に同じ量だけ変動することが分かる。なお、ΦSPとΦSQのどちらをどれだけ変化させるかには自由度があり、(式3.11)と(式3.12)によるΦVは一意には決まらない。
(式3.13)に(式3.16)を代入して、以下となる。ΦP−ΦQの変動に対して、ΔΦP−ΔΦQはゼロに落ち着くことが分かる。
ΔΦP−ΔΦQ=((KN×KM/(S+KN×KM))−1)×(ΦP−ΦQ)
=−(S/(S+KN×KM))×(ΦP−ΦQ) (式3.17)
ΦU:移相器29で使用される3度単位で離散値化された、立ち上りタイミング。
ΦD:移相器29で使用される3度単位で離散値化された、立ち下りタイミング。
ΦUとΦDは、以下のように計算する。なお、以下の式ではΔΦSは度を単位とする実数である。
ΦU=[(360.0+ΔΦS)/3]%120 (式3.18)
ΦD=[(540.0+ΔΦS)/3]%120 (式3.19)
ここに、[X]はガウス記号であり、実数Xより大きくない最大の整数を意味する。X%Yは、整数Xを整数Yで割った時の余りを意味する。例えば、ΔΦS=5.5度であれば、ΦU=1、ΦD=61になる。また、ΔΦS=−9.9度であれば、ΦU=116、ΦD=56になる。
移相器29が3度単位で位相を変化させたとしても、(式3.16)の安定性には影響を与えない。ただし、調整後受信基準信号24P,24Qには3度未満の位相差が残ったままになる。調整後受信基準信号24P,24Qの位相差が3度程度であれば、位相差が最適比合成する合成受信信号31に影響を及ぼさない。その理由は、cos(3度)=0.999なので、合成受信信号31の振幅の誤差は無視できる。位相変調された変調信号は0度と180度などのように大きく離れており、3度程度の位相差は問題にならない。
ここで、位相差信号演算部12Bは、位相を離散値で制御する場合には、離散値よりも小さい位相差は位相差ゼロと扱う。そうしないと、移相器29が1離散値の幅で振動することになる。
まず、調整後受信基準信号24P,24Qの位相が異なる場合の合成受信基準信号25の位相の計算方法を、図7により説明する。図7はP偏波の信号強度が大きい場合の図であるが、以下で導出する式はQ偏波の信号強度が大きい場合にも成立する式である。
図7より、複素ベクトルXG,XQの複素ベクトルXPに直交する成分に関して以下が成立することが分かる。
|XG|×sin(ΦJ−ΔP)=(KP/KQ)×|XQ|×sin(ΔQ−ΔP) (式4.1)
複素ベクトルXPに平行な成分に関しては、以下の式が成立する。
|XG|×cos(ΦJ−ΔP)=
|XP|+(KP/KQ)×|XQ|×cos(ΔQ−ΔP) (式4.2)
AGC増幅器10では増幅後の信号強度が同じになるように増幅するので、以下となる。
|XP|=|XQ| (式4.3)
|XG|=(1+KP/KQ)×|XP| (式4.4)
(式4.3)と(式4.4)を(式4.1)に代入して、|ΦJ−ΔP|と|ΔQ−ΔP|とを微小と見てθが微小な場合のsinθ≒θという近似を使用し、両辺を|XP|で割ると、以下となる。
(1+KP/KQ)×(ΦJ−ΔP)=(KP/KQ)×(ΔQ−ΔP) (式4.5)
(式4.5)をΦJについて解くと、以下となる。
ΦJ=(KQ×ΔP+KP×ΔQ)/(KP+KQ) (式4.6)
(式4.6)においてΔP=ΔQとするとΦJ=ΔP=ΔQとなり、位相同期した定常状態ではΔPとΔQはΦJ1になる。
−ΦJ= (KQ/(KP+KQ))×(ΦP−ΦSP−ΦV)
+(KP/(KP+KQ))×(ΦQ−ΦSQ−ΦV) (式4.7)
ΦJが位相同期した定常状態の値であるΦJ1から変動すると、(式1.6)、(式1.12)、(式1.8)により、Vd、Vf,FVも変動する。FVの変動を積分すると、ΦVのΦV1からの変動分になる。(式4.7)、(式1.6)、(式1.12)、(式1.8)とΦVの変動分がFVの変動分の積分であることから、ΦPとΦQの変動に対する制御ブロック図は、図8のようになる。なお、Kdのブロックに対する入力は、−ΦJ+ΦJ1すなわち−δΦJなので、ゲインは−KdではなくKdになる。
受信信号8Qの位相ΦQが時刻t1でステップ状にΔXだけ変化した場合を、図10に示す。
位相の変化があった偏波の方の位相を制御する場合は、ΦVがゼロに戻る。そうでない場合は、ΦVが位相の変化量だけ増加する。信号強度が弱い方の偏波を制御する方(実線で書いた方)が、ΦVの変化の絶対量が少なくなる。なお、変化の絶対量とは、増加量の絶対値と減少量の絶対値の和とする。図9(c)のΦVは、実線ではΔX増加するのに対し、破線ではΔXの2/3ほど増加して0に戻る。つまり、図9(c)のΦVの変化の絶対量は、実線ではΔXで、破線では(4/3)×ΔXである。図10(c)でも同様に、ΦVの変化の絶対量は、実線では(2/3)×ΔXで、破線ではΔXである。
FG:合成出力信号9の周波数。
ミキサ14Aでは出力信号の周波数が入力信号の周波数の和で、ミキサ14Bでは差であることから、以下となる。ここで、ミキサ14Aでは周波数同期信号26と第2基準信号19を混合し、ミキサ14Bではミキサ14Aの出力である偏移化信号32と合成受信信号31とを混合する。
FG=FV+F3−FJ (式5.1)
(式5.1)に(式1.4)と(式1.10)を代入して、以下となる。
FG=F0+ΔFd (式5.2)
つまり、ダイバーシチ受信装置7の合成出力信号9の周波数が、受信信号8と同じ周波数になり、ドップラ効果による周波数偏移ΔFdを持つことになる。合成出力信号9の位相は周波数同期信号26と同じΦPである。ここで、厳密にはΦPはΦP+ΦJ1となるが、ΦJ1は微小なので、位相の検討を行なう場合にはΦJ1をゼロとして扱うことにする。基準信号に位相同期させた後で復調するので、合成出力信号9の位相がゼロでなくても復調に影響を与えない。
ミキサ16P,16Qでは、F0+ΔFdとF0+ΔFd+F1の周波数の信号を混合してF1の周波数の信号を作成したが、F0+FdとF0+ΔFd−F1の周波数を混合してF1の周波数の信号を作成してもよい。他のミキサでも、出力信号を所定の周波数(FXと呼ぶ)にするために、周波数の和または差がFXになる2個の周波数を混合して作成するようにしてもよい。ミキサは混合する2個の信号の周波数の和または差が所定の周波数の信号を出力するものであれば、どのようなものでもよい。ダイバーシチ受信装置7を構成できれば、何個のミキサを使用してもよい。
選択スイッチ12Cは、所定の条件が満足した場合にスイッチの切替えができるものであればどのようなものでもよい。符号反転器12Dは、所定の範囲の位相差信号30の正負を反転できるものであればどのようなものでもよい。
信号強度が小さい方の偏波の方の移相器29を位相差調整部12が制御するとしたが、信号強度が大きい方の移相器29を制御してもよい。主位相検波器11Bの出力も位相差演算部12Bが利用して、主位相検波器11Bの出力と差演算器12Aの出力とからΦPとΦQを計算し、変化が大きい方の偏波の移相器29を制御してもよい。また、選択スイッチ12Cをなくして、位相差演算部12Bが移相器29P,29Qの両方の制御量を計算して制御するようにしてもよい。その場合には、1個の移相器29を制御する場合の制御量を、位相差演算部12Bが2個の移相器29の制御量に妥当な割合で配分する。
この効果を説明するために、PLLが非同期時のダイバーシチ受信装置7の動作を説明する。PLLが非同期時には、調整後受信信号22P,22Qと合成受信信号31の周波数FJは、第1基準信号18の周波数F1とは異なる。しかし、合成出力信号9の周波数FGは、以下のようにPLLが同期時と同じになる。
(式5.1)に(式1.9)を代入して、以下の式を得る。
FG=FV+F3−(FV+F3−(F0+ΔFd)
=F0+ΔFd (式5.3)
つまり、PLLが同期するかどうかによらず、合成出力信号9の周波数は、受信信号8と同じになる。これは、周波数偏移付加部14で合成出力信号9に周波数偏移を付加することによる。
2個の偏波の受信信号8の信号電力の差すなわちAGC増幅器10の増幅ゲインの差が所定値KT以上ある場合には、最適比合成器11Aと最適比合成器13は、信号強度が弱い方の偏波を合成に使用しない。位相差調整部12の差演算器12Aは、出力をゼロにする。選択スイッチ12Cは、増幅ゲインの差がKT以上の場合もKT未満の場合と同様に動作する。ただ、KTは信号強度を同じと見る所定値よりも大きいので、信号強度が小さい方の偏波の移相器29を制御するように選択する。なお、差演算器12Aには、増幅ゲインの差がKT以上かどうかどうかだけを入力するようにしてもよい。また、選択スイッチ12Cには、2個の受信信号8P,8Qの信号強度が同じか、どちらかが大きい場合にはどちらが大きいかだけを、入力するようにしてもよい。
このように、信号強度の差が所定値以上の場合に信号強度が小さく雑音が多い偏波の方の受信信号を合成に使用しないので、合成出力信号9のS/N比を増加させることがなく、位相同期できないことが少なくなるという効果がある。
狭帯域フィルタ23P,23Qと最適比合成器11Aはなくしてもよいが、その場合にはループフィルタ11Dが変調信号の周波数を通さないようにする必要がある。また、狭帯域フィルタを1個だけ使用して、最適比合成器13と主位相検波器11Bの間に挿入するようにしてもよい。最適比合成器13と主位相検波器11Bの間に狭帯域フィルタを挿入する場合も、周波数同期部11が変調信号の影響を受けることなく周波数同期ができるという効果がある。位相差調整部12の入力には変調信号があるが、変調信号は両偏波で同位相なので位相差調整部12の動作に影響はない。
以上のことは、関係する構成要素を有する他の実施の形態でもあてはまる。
実施の形態2は、実施の形態1の周波数偏移付加部14の構成を変更したものである。
図12は、この実施の形態2でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して異なる点だけを説明する。周波数偏移付加部14にミキサ14Aがなく選択スイッチ14Cが有る。選択スイッチ14Cは、ミキサ15Pの出力であるPLL同期信号28Pまたはミキサ15Qの出力であるPLL同期信号28Qの何れか信号強度が大きい方をAGC増幅器10P,10Qの増幅ゲインから判断して、ミキサ14Bで合成受信信号31と混合する信号として選択するものである。
選択スイッチ14Cは周期的(例えば0.2秒ごと)にAGC増幅器10の増幅ゲインをチェックし、増幅ゲインの比すなわち信号強度の差が所定値以上であり、信号強度が大きい偏波が選択されていない場合に、信号強度が大きい偏波の移相器29に位相差信号30が入力されるように切替える。増幅ゲインの比すなわち信号強度の差が所定値未満の場合は、信号強度が同じと判断して、切替えは行わない。
このように周波数偏移付加部14で、PLL同期信号28P,28Qの何れかを合成受信信号31に混合しても合成出力信号9に周波数偏移を付加することができる。そのためこの実施の形態2でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
実施の形態3は、狭帯域フィルタ23をなくして周波数同期部11のPLLの入力に変調信号が含まれるように、実施の形態1を変更したものである。
図13は、この実施の形態3でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して異なる点だけを説明する。周波数同期部11から、狭帯域フィルタ23P,23Qと最適比合成器11Aをなくし、最適比合成器13の出力を主位相検波器11Bの入力となるようにしている。
位相差調整部12と周波数偏移付加部14は、実施の形態1と同様に動作する。
この実施の形態3でも、標準の追跡管制装置4を使用することができるようになり、追跡管制システムの低コスト化が実現できるという効果がある。
実施の形態4は、周波数同期部11をなくするように、実施の形態1を変更したものである。
図14は、この実施の形態4でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して異なる点だけを説明する。周波数同期部11と周波数偏移付加部14がなく、基準信号発振部17がF0+F1−F3の周波数すなわち79.5MHzの第4基準信号33と、周波数F0+F1(=80MHz)の第5基準信号34も出力する。ミキサ15P,15Qは、周波数同期信号26の替わりに第4基準信号33を混合する。AGC増幅器10は、非同期検波方式で動作する。周波数偏移付加部14の替わりにミキサ35が有る。ミキサ35では第5基準信号34と合成受信信号31とを混合して、その差の周波数の信号を出力する。ミキサ35の出力が、合成出力信号9である。
FJ=F0+F1−(F0+ΔFd)=F1−ΔFd (式6.1)
周波数偏移ΔFdが符号を反転して、調整後受信信号22などに残る。
ミキサ35で周波数F0+F1の第5基準信号34と合成受信信号31の差の周波数の信号が出力信号になるように混合するので、ミキサ35の出力すなわち合成出力信号9の周波数FGは、以下となる。
FG=F0+F1−FJ=F0+ΔFd (式6.2)
合成出力信号9の周波数FGは、実施の形態1の場合と同じになる。合成受信信号31には周波数偏移分があり、ミキサ35で周波数偏移を付加するのではないので、ミキサ35は周波数偏移付加部14ではない。ただし、合成受信信号31の周波数偏移の正負が反転しているので、合成出力信号9では受信信号8と同じ周波数偏移となるようにするか、
ドップラ計測部4Dで入力の周波数偏移または計測した視線速度のどちらかの符号を反転させるかする必要がある。
実施の形態5は、位相差調整部12で副位相検波器12Pを1個だけ使用するように実施の形態4を変更したものである。図15は、この実施の形態5でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態4の場合の図14と比較して異なる点だけを説明する。副位相検波器12Qと差演算器12Aがない。基準信号発振部17が第1基準信号18を出力しない。第1基準信号18を出力できるようにしてもよいが、第1基準信号18は使用しない。
副位相検波器12Pは、調整後受信信号24Qを基準として調整後受信信号24Pとの位相差を検出する。副位相検波器12PはAGC増幅器10の増幅ゲインも入力にして、増幅ゲインの差が所定値KT以上ある場合には出力をゼロにする。このようにすると、副位相検波器12Pが、実施の形態4の場合の差演算器12Aと同様に動作する。副位相検波器12Pでは、同じ周波数の信号の位相差を検出する。
実施の形態6は、周波数偏移付加部14をなくし、位相差調整部12に関する第1の帰還路と周波数同期部11に関する第2の帰還路とで共通な部分をなくし、第1の帰還路と第2の帰還路をそれぞれ1個にするように、実施の形態1を変更したものである。
図16は、この実施の形態6でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して以下の点が異なる。
(1)周波数がF0+F1−F3(=79.5MHz)の第4基準信号33と、周波数がF0−F1(=80MHz)の第5基準信号34を、基準信号発振部17が出力する。
(2)周波数偏移付加部14の替わりに、第5基準信号34と合成受信信号31の差の周波数の信号を出力するミキサ35がある。
(3)最適比合成器11Aと主位相検波器11Bの間に、周波数同期信号26と合成受信基準信号25の差の周波数の信号を出力するミキサ36を追加し、周波数同期部11内でPLLを構成する。
(4)周波数同期信号26と10MHzの第1基準信号18との周波数の差の信号を出力するミキサ37を追加し、ミキサ37の出力信号を副位相検波器12P,12Qで第1基準信号18の替わりに使用する。
(5)ミキサ15P,15Qで、VCO11Cの出力である周波数同期信号26の替わりに第4基準信号33を混合する。つまり、ミキサ15とミキサ16を含むPLLを構成しないようにする。こうすると、調整後受信信号22は位相差調整部12で処理され、周波数同期部11では処理されなくなる。
(6)選択スイッチ12Cと符号反転器12Dと移相器29Qとミキサ15Qがなく、位相差演算部12Bの出力である位相差信号30は常に移相器29Pに入力され、ミキサ16QではPLL同期信号28Qの替わりに第5基準信号34を混合する。
ここで、前の装置の出力を入力とする装置を順番にたどると、同じ装置に戻る場合に、それらの装置の集合を、装置のループまたはループと呼ぶことにする。位相差調整部12に関する装置のループは、副位相検波器12P,差演算器12A、位相差演算部12B、移相器29P、ミキサ15P、ミキサ16P、狭帯域フィルタ23P、及びの副位相検波器12Pという1個だけである。つまり、ミキサ15P、ミキサ16P、及び狭帯域フィルタ23Pが、第1の帰還路になる。
装置のループの構成は異なるが、微小変動分に対する周波数同期部11と位相差調整部12の制御ブロック図は、実施の形態1の場合と同じになる。
周波数同期信号26の周波数FVは、ミキサ36で周波数同期信号26と合成受信基準信号25の差の周波数の出力信号を出力し、周波数同期部11はミキサ36の出力信号の周波数が主位相検波器11Bで使用する信号の周波数(FAとする)と同期すなわち同じになるように動作するので、以下となる。
FV−FJ=FA (式7.1)
(式7.1)に(式6.1)を代入してFVについて解くと、以下となる。
FV=FA+FJ=FA+F1−ΔFd (式7.2)
FVにもFJと同じ周波数偏移がある。
この実施の形態では周波数同期部11で第1基準信号18と同期させるので、FVは以下となる。
FV=2×F1−ΔFd (式7.3)
FB=FJ−FV=FA (式7.4)
つまり、周波数同期部11で位相差をとる基準として使用する信号と同じ周波数の信号をミキサ37で使用すればよい。
ミキサ37の周波数FJの出力信号を、副位相検波器12P,12Qで位相差をとる基準信号として使用する。このようにすると、副位相検波器12P,12Qで正確な位相差を検出でき、位相差調整部12が正確に位相差を調整できる。ただし、移相器29Pの1個だけにしたので、受信信号8P,8Qのどちらの信号強度が大きくてもP偏波の方で位相差を調整する。
合成出力信号9の周波数FGは、実施の形態4の場合と同様に、F0+ΔFdになる。
実施の形態7は、位相差調整部12に関する第1の帰還路と共通でない部分だけの周波数同期部11に関する第2の帰還路が1個あり、第1の帰還路と共通な部分が有る第2の帰還路が2個有るように、実施の形態1を変更したものである。
図17は、この実施の形態7でのダイバーシチ受信装置7の構成を表すブロック図である。実施の形態1の場合の図2と比較して以下の点が異なる。実施の形態6と同じ変更点には同じ番号をつけ、一部変更したものは(1A)のようにAを付加した番号とする。
(1A)周波数がF6(=2MHz)の第6基準信号38と、周波数がF0−2×F1+F6−F3(51.5=MHz)の第7基準信号39と、周波数がF0−2×F1+F6(=52MHz)の第8基準信号40を、基準信号発振部17が出力する。
(2A)ミキサ14Aで、第3基準信号20の替わりに第8基準信号40を混合する。ミキサ14Bで、合成受信信号31と偏移化信号32の和の周波数を出力するように混合する。
(3A)最適比合成器11Aと主位相検波器11Bの間に、合成受信基準信号25と周波数同期信号26の差の周波数の信号を出力するミキサ36を追加し、周波数同期部11内でPLLを構成する。また、主位相検波器11Bで第1基準信号18ではなく、第6基準信号38に対する位相差を検波する。第1基準信号18はどこでも使用しないが、基準信号発振部17の出力できるものとする。なお、基準信号発振部17が第1基準信号18を出力しないようにしてもよい。
(4A)周波数同期信号26と第6基準信号38との周波数の和の信号を出力するミキサ41を追加し、ミキサ41の出力信号を副位相検波器12P,12Qで第1基準信号18の替わりに使用する。
(5A)VCO11Cの出力である周波数同期信号26と第7基準信号39との和の周波数の信号を出力するミキサ42を追加し、ミキサ15P,15Qで周波数同期信号26の替わりにミキサ42の出力信号を混合する。
位相差調整部12に関するループは、実施の形態1の場合と同じものが2個ある。そして、第1の帰還路も、ミキサ15P,15Q、ミキサ16P,16Q、及び狭帯域フィルタ23P,23Qと、実施の形態1と同じである。
ミキサ15とミキサ16では、以下の関係がある。
FJ=F0+ΔFd−(FV+F0−2×F1+F6−F3+F3)
FJ=ΔFd−FV+2×F1−F6 (式8.1)
ミキサ36では以下の関係がある。
FJ=FV+F6 (式8.2)
(式8.1)に(式8.2)を代入して、FVについて解くと、以下となる。
FV=F1−F6+ΔFd/2 (式8.3)
(式8.3)を(式8.2)に代入して、以下となる。
FJ=F1+ΔFd/2 (式8.4)
FVとFJともに、ΔFdの半分の周波数偏移を持つ。
FG=FJ+FV+F0−2×F1+F6
=F1−F6+ΔFd/2+F1+ΔFd/2+F0−2×F1+F6
=F0+ΔFd (式8.5)
合成出力信号9の周波数FGは、実施の形態1の場合と同じになる。このように、合成受信信号31の周波数偏移がゼロではなく受信信号8の周波数偏移と異なる場合に、周波数偏移付加部14により合成出力信号9の周波数偏移を受信信号8と同じにできる。
なお、合成受信信号31の周波数偏移がゼロではないので、周波数偏移付加部14では、合成受信信号31の周波数を周波数偏移が受信信号8と同じになるように所定倍して、所定の周波数になるように周波数を増減させて合成出力信号9を作成してもよい。
2 :地上局
3 :送受信アンテナ
4 :追跡管制装置
4A:変調部
4B:復調部
4C:測距部
4D:ドップラ計測部
5 :送信信号周波数変換装置
6 :受信信号周波数変換装置
7 :ダイバーシチ受信装置
8P:受信信号
8Q:受信信号
9 :合成出力信号
10P:AGC増幅器(自動利得制御増幅器)
10Q:AGC増幅器(自動利得制御増幅器)
11 :周波数同期部
11A:最適比合成器
11B:主位相検波器
11C:VCO
11D:ループフィルタ
12 :位相差調整部
12P:副位相検波器
12Q:副位相検波器
12A:差演算器
12B:位相差信号演算部
12C:選択スイッチ
12D:符号反転器
13 :最適比合成器(合成部)
14 :周波数偏移付加部
14A:ミキサ
14B:ミキサ
14C:選択スイッチ
15P:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
15Q:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
16P:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
16Q:ミキサ(第1及び第2の帰還路)
17 :基準信号発振部
18 :第1基準信号
19 :第2基準信号
20 :第3基準信号
21P:増幅後受信信号
21Q:増幅後受信信号
22P:調整後受信信号
22Q:調整後受信信号
23P:狭帯域フィルタ(第1の帰還路)
23Q:狭帯域フィルタ(第1の帰還路)
24P:調整後受信基準信号
24Q:調整後受信基準信号
25 :合成受信基準信号
26 :周波数同期信号
27P:位相差調整信号
27Q:位相差調整信号
28P:PLL同期信号
28Q:PLL同期信号
29P:移相器
29Q:移相器
30 :位相差信号
31 :合成受信信号
32 :偏移化信号
33 :第4基準信号
34 :第5基準信号
35 :ミキサ
36 :ミキサ
38 :第6基準信号
49 :第7基準信号
40 :第8基準信号
41 :ミキサ
42 :ミキサ
Claims (5)
- 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部と前記周波数同期部により処理された2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前記周波数同期信号を使用して前記合成受信信号に周波数偏移を付加する周波数偏移付加部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備えたダイバーシチ受信装置。
- 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記受信信号から周波数偏移を除去する周波数同期部と、該周波数同期部で発振される周波数偏移が有る周波数同期信号を前記周波数同期部の入力に戻す第2の帰還路と、前記位相差調整部により処理され、前記周波数同期部では処理されない2個の調整後受信信号を合成して合成受信信号を出力する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する2個の自動利得制御増幅器とを備え、前記周波数同期信号を前記位相差調整部が利用することを特徴とするダイバーシチ受信装置。
- 周波数偏移が有る直交する偏波成分の2個の受信信号の位相差を調整する位相差調整部と、該位相差調整部の出力を該位相差調整部の入力に戻す第1の帰還路と、前記位相差調整部により処理された2個の調整後受信信号を合成する合成部と、前処理として2個の前記受信信号を所定の大きさに増幅する非同期検波方式による2個の自動利得制御増幅器とを備えたダイバーシチ受信装置。
- 2個の前記受信信号の信号強度の差が所定値以上の場合は信号強度が大きい方の前記受信信号だけを使用することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一に記載のダイバーシチ受信装置。
- 前記自動利得制御増幅器を非同期検波方式でも受信信号を増幅できるようにすること特徴とする請求項1〜請求項2の何れか一に記載のダイバーシチ受信装置。
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