JP2005071616A - 有機電界化学発光素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の薄膜型の有機電界化学発光素子は、構発光効率が低く、液体中で発光するという問題点に対し、安定な状態で、経時劣化の少ないかつ、高い効率で電気化学発光を起こす有機電界化学発光素子を提供することを課題とする。
【解決手段】絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする有機電界化学発光素子により、上記の課題を解決する。
【選択図】 図1
【解決手段】絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする有機電界化学発光素子により、上記の課題を解決する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界を印加することにより化学反応を誘導し、これにより化学発光する有機電界化学発光素子(有機ECL素子)に関する。詳しくは、化学発光が安定な状態に保持され、かつ発光強度に優れた有機ECL素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から発光する素子として、有機電界発光素子(有機EL素子)が近年盛んに研究、開発されてきている。この有機EL素子は、自発光型の発光素子であり、原理的には発光色を自由に変えることができる。この有機EL素子は、フルカラー表示が可能なこと、及び消費電力が小さいこと、大面積での発光が可能なことより、ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
この有機EL素子は、電子、ホールが、電極から有機発光層、電荷輸送層に、トンネル過程や、ショットキー過程によって注入される。しかしこの注入効率は不十分である。この電荷の注入効率を向上させるためには、電極材料として仕事関数の小さいリチウム、マグネシウムといった水、酸素等にあまり抵抗性の強くない金属を用いる方法があるが、高電圧での駆動での、電極―有機界面でのミクロ的な剥離や、電極酸化によるダークスポットの形成等による素子の劣化が進行するといった問題点を残している。
【0004】
また、電荷注入型EL素子の欠点を解決するものとして、ヒーガーらによって有機ECL素子が考案された(Science145、808(1964):非特許文献1)。
この有機ECL素子は、注入タイプの有機EL素子の発光層と電荷輸送層の代わりに発光材料と電解質とを基本構成材料とする発光層を用い、これを一対の電極間にそれらの対向面と接するように配置したものである。
【0005】
また化学発光を起こすためには適当な電圧を印加することが必要である。これら電圧の印加法として、交流法と直流法があり、それぞれ一長一短がある。直流法は、一方の電位を常に酸化電位以上、もう一方の電位を常に還元電位以下に設定しておけば、定常的に発光させることのできる非常に簡単な方法である。直流法では、特に発光効率を上げるために両電極をできるだけ接近させることが重要である。
【0006】
これは、各電極上で生成したラジカルの寿命が短いため、カチオンラジカル、アニオンラジカルの出会う確率を短時間に上げることによるものである。前述のように、電位変化は必要でなく、このため充電電流などの非ファラデー電流が生じない。このために入力電流を効果的に利用できる。
【0007】
このため、両電極間を効果的に接近させる提案が種々なされてきている。この代表的なものとして、薄膜セル方式がある。これは基本的には、2枚の平行電極を対向させ、スペーサで両者を隔てて、内部に有機発光材料と電解材料を適当な溶剤中で拡散し、これを封止する。このようにしてシュネッドラーらは、ITOと白金電極に挟まれた薄層セル内にルブレンを封入し、連続500時間以上の発光を観測したと述べている(J.Electrochem.Soc. 1289〜1294 頁、129巻、 1982年:非特許文献2)。
ここでは電極間隔が10μmを越えており、このため発光効率を上げるのにも限界がある。
【0008】
特開平10−92201号公報(特許文献1)には、一対の電極と、これら一対の電極の間に設けられ、発光性物質および電解質を含む発光層とを具備し、前記電解質がそれぞれ200以上の分子量の陽イオンおよび陰イオンからなる塩類であることを特徴とする発光素子が開示されている。また、特許文献1には、電解質を固体電解質として用いる場合、金属酸化物、無機ガラスなどの無機マトリックスを含んでもよいことが記載されているが、絶縁性支持体としての具体的な記載は一切ない。
【0009】
また、特開平10−135540号公報(特許文献2)には、電気化学発光物質の溶液と、前記溶液に電位を印加する電極と、前記溶液および前記電極とを収容する容器とを含んでなる電気化学発光セルにおいて、前記容器は透明な材料からなり、前記電極は絶縁性基板上に形成された微小な間隙で隔てられた複数のパターン状の電極であり、前記容器の外側に光共振器を配設することを特徴とする電気化学発光セルが開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1および2に記載の技術では、十分な発光効率は得られていない。
【0010】
このように電極間隔を如何にして狭くするか、且つ発光層を均一な状態に保持するかは、有機ECL素子の重要なポイントのひとつである。このためには電極間の短絡を防止することも必要になってくる。また、薄膜セルの電極間隔が10μm以下にするためには場合によってはもはや支持電解質も必要としなくなる。
【0011】
一方、有機ECL素子の発光効率を下げている大きな原因の一つに、セル内の水分の存在がある。水分は強力な消光作用を有しており、支持電解質、溶剤からの混入は極力避けることが必要である。更には使用溶剤についても発光材料と安定なエキサイプレックスを形成するような性能を有することが、発光に関してその幅を持つものもある。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−92201号公報
【特許文献2】
特開平10−135540号公報
【非特許文献1】
Science145、808(1964)
【非特許文献2】
J. Electrochem. Soc.、1289〜1294頁、129巻、1982年
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安定な状態で、経時劣化が少なく、かつ高効率で電気化学発光を起こす有機ECL素子を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解(ゾル化)し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする有機ECL素子が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の有機ECL素子は、絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする。
【0016】
図1は、本発明の有機ECL素子の基本構成を示す斜視図である。
図1に示す有機ECL素子は、絶縁性基板1の上に、微細な櫛型の間隔をもって配置された第一の電極2と第二の電極3とをそれぞれ外部回路に接続して電圧を第一の電極端子4と第二の電極端子5と、化学発光物質を含有する電界溶液を保持する容器7と、容器7を挟んで配施された光共振器8とから構成されている。容器7は第一の電極2と第二の電極3の各電極面が内部溶液に接するような構造であり、更に光が取り出せるように、ガラス、プラスチック材料より形成されている。光共振器8(例えばファブリーペロー共振器であって、3つ以上の反射鏡を用い、光路が多角形をなすものを使用できる。)は、多量の光を発生させることができる。透明容器7中で、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により、有機発光材料が電解質中で発光し、透明容器7を透過した発光が、光共振器8によって増幅され、多量の光が発生する。
【0017】
配線部分は、この個所において電極反応が起ることのないように、第一の電極端子4、第二の電極端子5及び各電極の開口部6を除いて、絶縁物質で被覆する。
このような構成の有機ECL素子において、容器7中に化学発光物質を含有する溶液を注入する。これら電解質の構成、及びゲル化条件については、下記の各実施例の項目において、表として記載した。このようにして作成された有機ECL素子に、第一の電極端子4と第二の電極端子5との間で発生する光を透明容器7光共振器8で増幅して取り出し、これを発光デバイスやレーザーとして適用する。
【0018】
電極の間に使用溶剤に室温時ゲル状態を保持する高分子材料からなる電解質を均一に配置することにより、薄膜化の際の短絡を防止するとともに、発光層を固定化することにより安定した有機ECL素子を形成する。
【0019】
このようにして得られた本発明の有機ECL素子は、通常0.5〜10V程度の直流電圧で駆動され、0.1〜1000mA/cm2 電流値を示す。輝度については、最大1000cd/m2 以上を示し液晶及びブラウン管を超える。
輝度を向上させるためには、その発光の中核をなす材料の開発がまず重要である。次にこれらの材料を、特定のECL素子に適合した溶剤に高濃度で溶解させることも重要になってくる。 またこの状態を常時安定に保つことも重要であり、特に電解質の状態、更には櫛型の場合の電極配置構造、配置距離も重要となってくる。本発明は、後者を中心とした有機ECL素子及びこれらに対応する好ましい各材料に関する。
【0020】
有機ECL素子は電流駆動型の発光素子であるために、一画素に対して電流制御用トランジスタとそのゲートに電圧を印加するためのトランジスタの二つが必須となる。また、十分な電流を供給するために、常圧駆動型のアレイに比べて太い電極線を必要とする。したがって、ガラス基板などの透明基板を用いて透明基板側から発光を取り出す場合には、二つのトランジスタと電極線により、開口率が低下する。しかし、シリコンなどの半導体基板を用いた場合には、半導体基板上にトランジスタを構築することができ、基板面に対して反対方向から発光を取り出すことができるので、開口率の低下がなく好ましい。
【0021】
<基板について>
電極の基板材料としては、石英、ガラス、表面を酸化処理したシリコン、 酸化アルミニウム等の半金属材料等を用いることができる。また、電極や溶液を収容する容器材料として、透明性の高いガラス、石英、テンパックス、プラスチック等を用いることができる。
【0022】
<電極について>
通常、有機ECL素子で用いられる電極としては、平行平板電極、及び櫛形電極の二つのタイプを挙げることができる。平行平板電極は、一対の平行電極の間に発光層を挟持して発光層を平行に配置したものである。一方、櫛形電極とは、一対の櫛形状の電極を、交互に対電極の間に入り込むように配置したものである。平行平板電極を用いた場合、少なくとも一方の電極は、透明もしくは半透明電極であることが好ましい。
【0023】
櫛形電極を用いる場合、一対の櫛形電極は基板上に配置される必要がある。その場合も透明な基板を用いた方が、基板側から発光を取り出すことができるので好ましい。また、電極の形状としては、曲線構造にして、イオンの流れをスムーズにさせることも必要となってくる。
【0024】
電極としては、白金、金、銅、チタン、パラジウム、錫、ニッケル、銀、アルミ等の金属、酸化インジウム、酸化錫、及びこれらの金属を含む合金、酸化インジウム、酸化錫、ITO等の半導体及び各種導電性カーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。
【0025】
更には櫛形電極の角を角度のある状態から図3に示すような放物状態にすることもできる。 このような櫛形電極にすることにより、角部での発光の低下による発光の不均一化防止を図ることができる。この時ペーストに用いる溶剤は、電解質使用溶剤と同じものを用いてもよい。
【0026】
<異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物について>
次に有機ECL素子の化学発光材料としては、可視光領域から紫外光領域で蛍光を有する化合物であればよい。
特に、芳香族系共役化合物、シラン化合物、ビスピリジン系金属錯体化合物、芳香族アミン化合物、芳香族エナミン化合物、複素環系共役化合物、オキサゾール化合物等が好ましい化合物として挙げられる。具体的な化合物としては、9、10−ジフェニルアントラセン、ルブレン、トリフェニレン、2、3−ジフェニルトリフェニレン、9−(α、α―ジシアノビニル)アントラセン、9−スチリルアントラセン、2、7―ジフェニルフェナントレン、5、6、11、12−テトラフェニルナフタセン、4、4’−ビス(2、2’−ジフェニル−4−イル)−ジフェニル、トリス(2、2′−ビピリジイル)ルテニウム、シス−ビス(チオシアナート)−ビス(2、2′−ビピリジイル)ルテニウム、 N、 N,N′、N′−テトラフェニルベンジジン、N、N′−ジフェニル、N、N′−ジ(α―ナフチル)ベンジジン、また高分子タイプのもとしては、ポリ(P−フェニレン−エチニレン)、ポリ(P−フェニレン−エチニレン−m−フェニレン−エチニレン)等のアリ−レン:アセチレン結合からなる芳香族系共役系高分子化合物が挙げられる。高分子タイプのものとしては、特開平6−166743号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0027】
これらの化合物として、芳香族系共役化合物及びビスピリジン金属錯体化合物が特に高い発光効率を有する化合物が多い。
構造的な観点からは、2、6、10−トリフェニルトリフェニレン及びトリ(ビフェニルー4−イル)アミンのように、フェニル基に代表されるアリール基が置換基数として2個以上ついているものが好ましい。アリール基は相対的には多ければ多いほどよいが、合成上、及び溶解性、溶融性等の点もあり、4個ぐらいの置換数が適当といえる。
【0028】
一方、ビスピリジン系金属錯体化合物としては、最近有機太陽電池の分光増感色素と近年注目を浴びており、種々の材料が得られるようになり、この中より好ましい構造も明らかになってきている(JACS、115、632P(1993))。
【0029】
これらの構造としては、配位子としてビスピリジン、及びビスピリジンの一部及び全部が1、10―フェナントロリン(構造式1)及び 1、8−ナフチリジン(構造式 2)のような環状構造になったものとルテニウム等の三価の金属から構成される金属錯体が好ましい発光材料として見つかってきている。
【0030】
【化1】
【化2】
【0031】
なお、溶解性についてはその濃度が発光強度にほぼ比例し、そのためには、極力発光材料の溶解性をたかめる構造にする必要がある。溶解性向上と化学発光特性向上との間には、相反するところも多く、基本構造のみで論ずることができにくい側面がある。
このためには、溶解性向上のためには、芳香族環、複素環の一部を低級アルキル基、アルコキシ基に置換することが必要である。特に分岐状の低級アルキル基、アルコキシ基の置換体が好ましい。
ビスピリジン系金属錯体の場合は配位子を上記方法により置換したものを用いる以外に、配位子の種類を同一にしないようにするとか、溶解性に優れた配位子(例えばアセチルアセトン誘導体)を用いることも必要になってくる。
また更なる発光層の固体化のためには、電子吸引性基(特にシアノ基、トリフロロ基)からなる高分子材料を上記溶剤に溶解させることにより発光強度を弱めることなしに、更なる発光層の固体化をはかることも必要となってくる。
【0032】
これらの高分子としては、ポリアクリロニトリル、またアクリロニトリルと酢酸ビニル、ブタジエン、メタアクリレート、アクリレートとの共重合体があげられる。更にはフッ化ビニリデンと酢酸ビニル、ブタジエン、メタアクリレート、アクリレートとの共重合体があげられる。
このような高分子材料としては、同じ置換基同志の組み合わせのほうが溶解性、発光性等で好ましい。
【0033】
<電解質について>
電解質基本構成は、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を含有することである。
更に発光寿命を改善するためには、陽イオン及び陰イオンから構成される塩類からなる電解質を加えることも必要になってくる。ただ、これら電解質は前述の溶剤に対して溶解性が悪いものが多く、自ら、材料及び加える量も限られてくる。
【0034】
これらの制約がある中で、好ましい陽イオンとしては、Li、Na等の1価のアルカリ金属イオン、一方、好ましい陰イオンとしては、Cl、F、Br等の1価のハロゲンイオンが代表的なものとして挙げられる。これら以外にも陰イオンとして、4フッ化硼素(BF4)イオン、炭酸イオン、燐酸イオン、酢酸イオン等も挙げられる。
電解質を溶液にして用いる場合には、発光層は、10〜80%の溶剤を含むことができる。これら溶剤としては、場合によっては発光そのものにも影響をあたえ、その選択も重要となってくる。また発光材料に対する溶解性、更には電離化させることも重要となってくる。
【0035】
<電解質に使われる有機溶剤について>
電解質に使われる溶剤の比誘電率は、15以上であることが必要になってくる。
これら溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセチルアセトン、N―メチルピロリドン、イソプロパノール、エチレンカーボネート、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロベンゼン、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、テトラフロロエタン、2―テトラフロロー1、2−ジクロロエタン、1、2−ジクロロー1、1、2、2−テトラフロロエタン、フロロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、 n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロンニトリル、サクシオニトリル等が挙げられる。特に非水性で酸化を受け難く、強い電子吸引基であるニトリル基を有する溶剤が好ましい。この代表例としてアセトニトリル、プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0036】
更に極性の低い溶剤では、発光材料としても利用可能なエキキサイプレックスを形成しやすく、発光材料に幅を持たせることができる。
【0037】
<電解質に使われる高分子化合物について>
これら材料として新規材料を開発してもよいが、すでに各種用途に用いられている高分子材料の中から選択してもよい。これら高分子材料としては電荷輸送性、熱的安定性、加水分解安定性に優れているのが基本的な要素である。
このような材料としては、二次電池用の高分子電解質として用いられている高分子材料があげられる。これら高分子材料の中でも、特に含フッ素系ビニルモノマーから構成されているホモポリマー及びこれらビニルモノマーとの共重合体ポリマーが好ましい。更に、これらポリマーの構造の一部が架橋構造を有していてもよい。この中でも熱的条件(熱時ゾル−室温時ゲル)によってゾル−ゲル変化をもたらすような材料が好適である。
【0038】
具体的材料としては、高分子を構成する主鎖構造(エチレン構造)の水素の一部もしくはすべてがフッ素に置換された構造のモノマーであり、更には水素が塩素、フッ素、シアン、トリフロロメチル等の電子吸引基で置換された構造のものは好ましいものが多い。具体的には、4フッ化エチレンや含フッ素系有機化合物、トリフロロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、クロロトリフロロエチレン等やこれらをポリマー化した樹脂である。
またこれらの単量体単位(モノマー)の組み合わせによるいわゆる共重合体、他のモノマー(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アクリルアミド等)との2元共重合体、3元共重合体等の多元共重合体も好ましい。中でもポリビニリデンフルオライド(ポリフッ化ビニリデン)及び4フッ化エチレン単独重合体(PTFE)及びこれらとエチレン、プロピレン、ブタジエン等の共重合体がゲル化特性、発光特性に優れている。
【0039】
4フッ化エチレンの溶解温度は327℃であり、ポリビニリデンフルオライドの溶解温度は170℃であるのに対して共重合体にすることによりこれら高分子材料はガラス転移点が極度に低い(殆ど常温以下)特徴を有してくる。
【0040】
この中でもガラス転移点が室温以下のものは、カチオンラジカル、アニオンラジカルの輸送速度が液体状とほぼ同様であり、高分子材料を加えても、速度低下現象を起こさない。反対に高分子材料を加えることにより、速度が早くなる傾向が見られる。これら材料の中でも、エチレンとテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)等は、旭硝子(株)、グンゼ(株)より一部市販されている。
加熱時これら高分子材料をゾル化するためには熱的作用だけでなく、溶剤の助けを借りてゾル化するのが好ましい。
【0041】
これら溶剤としては、安定性に優れ、比較的高沸点でかつ吸水性のない、電子吸引性の非プロトン溶剤が適している。具体的な溶剤としては、アセトニトリル(BP:82℃)、ブチロニトリル(BP:118℃)、スクシノニトリル(BP:267℃)、バレノニトリル(BP:104℃)、α―トルニトリル(BP:233℃)、ベンゾニトリル(BP:192℃)、イソブチロニトリル(BP:104℃)、エチレンカーボネート(BP:238℃)、プロピレンカーボネート(BP:242℃)、ベンゾトリフルリド(BP:102℃)、1、1、2、2―テトラクロロ−1、2−ジフロロエタン(BP:93℃)、シネオール(BP:176℃)ジペンテン(BP:178℃)等が挙げられる。特に強い電子吸引基から構成されているニトリル系の溶剤はイオン輸送速度が早く、このため発光効率もよい傾向が認められる。なお、BPは沸点を意味する。
【0042】
ゾル化温度は70から100℃で超音波等の助けを借りてほぼ完全の形で行い、次いで、室温まで自然冷却によりゲル化にした方が良く、急激な冷却では緻密なゲルが出来にくいことがある。これら溶剤の割合は体積比で50%以上加えたほうがよいが、あまり量が増えすぎると、ゲル状態が崩れてしまう。また一旦ゲル化した電解質は比較的高温(70℃付近)になってもゾル状態にはならず安定状態にも優れている。
【0043】
<ECL素子の製造方法について>
有機ECL素子は、櫛型電極、平行電極に関係なく、まず有機ECL材料を溶解した溶液を、スピンコート、キャストコート、デイッピング、バーコート、ロールコート等の手段により電極、及び基板上に塗布することにより発光層を形成する。
特に、ガラス製不織布を電極間に均一に充填する際には直接機械的な手段で行ってもよいが、好ましくは適当な溶剤(IPA等)でガラス製 不織布をペースト状態にし、これを上記コート法により充填し次いで減圧下乾燥する。場合によってはペースト充填したものを超音波等の手段により均一化を促進してもよい。
【0044】
次に電解質を電極間に注入する方法としては、塗布以外にも、キャスティングやデイッピング等の方法が挙げられる。この場合でも電解質の均一化のために低湿下で超音波をかけることも必要になってくる。尚、対になる電極をミクロン、サブミクロンの微細間隔に配置するように作成するには、フォトリソグラフィとドライエッチング法、あるいはリフトオフ法、あるいはイオンミリング法等の微細加工技術を組み合わせて基板上に作成する。また一方、ピエゾ素子を利用して微小電極を接近させる方法等が挙げられる。
【0045】
また一般的には、発光層が形成されたECL素子は、防湿シールで被覆することが必要である。この防湿シールとしては、アルミニウム箔、アルミニウムとポリエチレン又はポリカーボネートとからなる金属ラミネートフイルム等を用いることができる。またシール部の表面にモレキュラーシーブ等の防湿材を含有させてもよい。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1〜20)
図2は本発明の実施例を説明する図である。
噛み合った白金製の櫛形電極12、13が透明な絶縁性基板である、石英基板11の下面において、発光セルを形成する。
具体的には、直径3インチの円盤状の石英基板11上に、露光装置を用いて、噛み合った櫛形電極12、13、参照電極20、外部電極(対抗電極)21、端子部分のレジストパターンを形成し、スパッタ装置でチタン、白金の順に堆積し、メチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し超音波洗浄器を用いてリフトオフし、噛み合った櫛形の電極12、13、参照電極20、対抗電極21、端子部分のパターン以外の金属部分を基板より剥離した。この時の白金電極の膜厚は700Åとした。
【0048】
次にリード部分を絶縁層で被覆するために、石英基板11にチッ化シリコン膜をスパッタ装置で形成し、反応性エッチング法により、噛み合った櫛形の電極12、13部分、参照電極20部分、対抗電極21部分、端子部分のチッ化シリコン膜を除去した後、石英基板11を所定の寸法にダイシングソーで切り出した。このようにしてギャップ幅2μm、櫛の長さ2mm、櫛の数100対の櫛形電極を作成した。
【0049】
この石英基板11の下面に形成された噛み合った櫛形の電極12、13に対向するように鏡面研磨した白金電極14を上面に設置したブロック15を厚さ12μmのテフロン(登録商標)製スペーサ16を介して配置した。このブロック15には電解液を供給、排出する流路的作用のための通路17、18を設け、これら通路は、櫛形の電極12、13と白金電極14とテフロン(登録商標)製スペーサ16により構成された、電解液を貯蔵する容器19に連結させた。
【0050】
次に、室温時にゲル化する高分子化合物を作製する。組成は、表1からなる発光電解液を作製し、室温に冷却することにより、ゲル化した発光電解液を作製した。
【0051】
高分子化合物には、4フッ化エチレン単独重合体、4フッ化エチレンとエチレン、または4フッ化エチレンと塩化ビニルの共重合体化合物を、そして、熱的作用だけでなく、ゾル化するのに用いる溶剤には、アセトニトリル(BP:82℃)、ブチロニトリル(BP:118℃)、ベンゾニトリル(BP:192℃)、エチレンカーボネート(BP:238℃)、またはスクシノニトリル(BP:267℃)を用い、共重合化合物と溶剤を、ビーカー等の適当な容器に20wt%:80wt%の割合で入れて混合し、80℃の温度で超音波洗浄器に入れほぼ完全な形のゾルを作製した。次いで、70℃の温度を保ったまま、化学発光材料および電解質を表1に示した濃度で添加して、発光電解液を作製した。また、表1において、共重合体のモノマー1とモノマー2の重量比率は、9:1とした。
【0052】
ただし、モノマー1およびモノマー2で「−」と記しているものは、そのモノマーは使用していないことを示しており、モノマー1しか記していない場合は、モノマー1を100%使用していることを示している。
4フッ化エチレンと他のエチレン、及び塩化ビニル等の重量比率は、4フッ化エチレンが80%以上が好ましい。
【0053】
さきに述べたようにして作成した容器19に、表1の組成からなる80℃程度の温度を保った前述のゾル状の発光電解溶液を、注射器を用いて注入し、自然冷却により室温にまで冷却した。次いで流路17、18をエポキシ樹脂で封止し、発光セルを作成した。尚、室温時これら各電解質溶液はどれもゲル化状態になっており流動性はなくなっていた。
【0054】
この時の発光の色調、及び強さについて測定した。更に素発光持続時間についても測定を行った。これらの結果について表2に示す。
【0055】
(比較例)
比較例として、前述の発光電解液に代わり、表1の比較例に記したような組成からなる発光電解溶液により、容器19に注射器を用いて注入した。次いで、流路17、18をエポキシ樹脂で封止し、発光セルを作製した。
【0056】
このようにして作成した21種類の有機ECL素子において、ポテンシオスタットを用いて、参照電極20に対して櫛形の電極12、13の一方の電位を+1.6V、他方の電極を−1.6Vに設定し、櫛形の電極12、13の裏面より発光を観察した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
これらの結果から、比較例と比較して、共重合体高分子を素子内に導入することによっても、発光強度を大きく変化させることがないことがわかった。
モノマー1だけを使用して有機ECL素子を作成したとき、実施例1、16、19の結果から、4フッ化エチレンを使用した方が、発光強度が高い傾向が見られた。
いずれの実施例の場合も、発光強度が得られていることから、発光素子として動作していることが確認されており、発光時間が比較例と比較して高くなっており、化学発光材料を変更しても安定した青色から黄色の光を発光する有機ECL素子を得られることがわかった。
【0060】
(実施例 21)
発光材料として、2、6、10−トリフェニルトリフェニレンの代わりにモノフェニルトリフェニレン,トリフェニレン,2、6、10−トリ−(p―シアノフェニル)−トリフェニレンを用いて実施例 2と同様にして有機ECL素子3種類を作成した。これらの各素子の発光強度を測定した所、モノフェニルトリフェニレン,トリフェニレン,については発光が観察されなかった。しかし2、6、10−トリ−(p−メトキシフェニル)−トリフェニレン(構造式 3)については、発光強度が30とより強い青色発光(450nm)を示した。発光時間は、0.4secであった。
【化3】
構造的に見て、多くのフェニル基が網目構造的に拡大していることと、電子吸引基が置換することにより、ラジカル発生が起りやすくなり、これが発光強度の増大をもたらしたものと考えられる。
【0061】
(実施例22)
発光材料として、トリス−ビピリジンRu錯体の代わりに、Ruに対し構造式1の1、10―フェナントロリンが配位したトリス−フェナントロリンRu錯体を用い、実施例 2と同様にして有機ECL素子を作成した。この素子の発光強度を測定した所、発光強度が15であり、610nmの発光波長、そして、発光時間は0.5secであり、ほぼトリス−ビピリジンRu錯体と等しい特性であった。
【0062】
(実施例 23)
図3は実施例23を説明する図である。本実施例では、噛み合った櫛形の電極12、13のパターンの角部分を直角型から4分の1円になるようにレジストパターン化することにより、2つの櫛形電極をウエーブ状の形状に変えた。このようにしたウエーブ状の櫛形の電極12、13を用いた以外はすべて実施例2に準じて有機ECL素子を作成した。その結果、実施例2と同様な特性を得、すなわち、発光波長が610nm、発光強度が12、発光時間が0.6secであった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、安定な状態で、経時劣化の少ないかつ、高い効率で電気化学発光を起こす有機ECL素子を提供することが可能となる。更にはこのような有機ECL素子の製造方法を提供することが可能となる。さらには、本素子を用いることにより、カラーディスプレーとしても十分対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機ECL素子の基本構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の有機ECL素子の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の有機ECL素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁性基板
2 第一の電極
3 第二の電極
4 第一の電極端子
5 第二の電極端子
6 開口部
7 容器
8 光共振器
11 石英基板
12,13 櫛形電極
14 白金電極
15 ブロック
16 スペーサ
17,18 流路
19 容器
20 参照電極
20a 電析部
21 外部電極(対抗電極)
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界を印加することにより化学反応を誘導し、これにより化学発光する有機電界化学発光素子(有機ECL素子)に関する。詳しくは、化学発光が安定な状態に保持され、かつ発光強度に優れた有機ECL素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から発光する素子として、有機電界発光素子(有機EL素子)が近年盛んに研究、開発されてきている。この有機EL素子は、自発光型の発光素子であり、原理的には発光色を自由に変えることができる。この有機EL素子は、フルカラー表示が可能なこと、及び消費電力が小さいこと、大面積での発光が可能なことより、ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
この有機EL素子は、電子、ホールが、電極から有機発光層、電荷輸送層に、トンネル過程や、ショットキー過程によって注入される。しかしこの注入効率は不十分である。この電荷の注入効率を向上させるためには、電極材料として仕事関数の小さいリチウム、マグネシウムといった水、酸素等にあまり抵抗性の強くない金属を用いる方法があるが、高電圧での駆動での、電極―有機界面でのミクロ的な剥離や、電極酸化によるダークスポットの形成等による素子の劣化が進行するといった問題点を残している。
【0004】
また、電荷注入型EL素子の欠点を解決するものとして、ヒーガーらによって有機ECL素子が考案された(Science145、808(1964):非特許文献1)。
この有機ECL素子は、注入タイプの有機EL素子の発光層と電荷輸送層の代わりに発光材料と電解質とを基本構成材料とする発光層を用い、これを一対の電極間にそれらの対向面と接するように配置したものである。
【0005】
また化学発光を起こすためには適当な電圧を印加することが必要である。これら電圧の印加法として、交流法と直流法があり、それぞれ一長一短がある。直流法は、一方の電位を常に酸化電位以上、もう一方の電位を常に還元電位以下に設定しておけば、定常的に発光させることのできる非常に簡単な方法である。直流法では、特に発光効率を上げるために両電極をできるだけ接近させることが重要である。
【0006】
これは、各電極上で生成したラジカルの寿命が短いため、カチオンラジカル、アニオンラジカルの出会う確率を短時間に上げることによるものである。前述のように、電位変化は必要でなく、このため充電電流などの非ファラデー電流が生じない。このために入力電流を効果的に利用できる。
【0007】
このため、両電極間を効果的に接近させる提案が種々なされてきている。この代表的なものとして、薄膜セル方式がある。これは基本的には、2枚の平行電極を対向させ、スペーサで両者を隔てて、内部に有機発光材料と電解材料を適当な溶剤中で拡散し、これを封止する。このようにしてシュネッドラーらは、ITOと白金電極に挟まれた薄層セル内にルブレンを封入し、連続500時間以上の発光を観測したと述べている(J.Electrochem.Soc. 1289〜1294 頁、129巻、 1982年:非特許文献2)。
ここでは電極間隔が10μmを越えており、このため発光効率を上げるのにも限界がある。
【0008】
特開平10−92201号公報(特許文献1)には、一対の電極と、これら一対の電極の間に設けられ、発光性物質および電解質を含む発光層とを具備し、前記電解質がそれぞれ200以上の分子量の陽イオンおよび陰イオンからなる塩類であることを特徴とする発光素子が開示されている。また、特許文献1には、電解質を固体電解質として用いる場合、金属酸化物、無機ガラスなどの無機マトリックスを含んでもよいことが記載されているが、絶縁性支持体としての具体的な記載は一切ない。
【0009】
また、特開平10−135540号公報(特許文献2)には、電気化学発光物質の溶液と、前記溶液に電位を印加する電極と、前記溶液および前記電極とを収容する容器とを含んでなる電気化学発光セルにおいて、前記容器は透明な材料からなり、前記電極は絶縁性基板上に形成された微小な間隙で隔てられた複数のパターン状の電極であり、前記容器の外側に光共振器を配設することを特徴とする電気化学発光セルが開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1および2に記載の技術では、十分な発光効率は得られていない。
【0010】
このように電極間隔を如何にして狭くするか、且つ発光層を均一な状態に保持するかは、有機ECL素子の重要なポイントのひとつである。このためには電極間の短絡を防止することも必要になってくる。また、薄膜セルの電極間隔が10μm以下にするためには場合によってはもはや支持電解質も必要としなくなる。
【0011】
一方、有機ECL素子の発光効率を下げている大きな原因の一つに、セル内の水分の存在がある。水分は強力な消光作用を有しており、支持電解質、溶剤からの混入は極力避けることが必要である。更には使用溶剤についても発光材料と安定なエキサイプレックスを形成するような性能を有することが、発光に関してその幅を持つものもある。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−92201号公報
【特許文献2】
特開平10−135540号公報
【非特許文献1】
Science145、808(1964)
【非特許文献2】
J. Electrochem. Soc.、1289〜1294頁、129巻、1982年
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安定な状態で、経時劣化が少なく、かつ高効率で電気化学発光を起こす有機ECL素子を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解(ゾル化)し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする有機ECL素子が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の有機ECL素子は、絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする。
【0016】
図1は、本発明の有機ECL素子の基本構成を示す斜視図である。
図1に示す有機ECL素子は、絶縁性基板1の上に、微細な櫛型の間隔をもって配置された第一の電極2と第二の電極3とをそれぞれ外部回路に接続して電圧を第一の電極端子4と第二の電極端子5と、化学発光物質を含有する電界溶液を保持する容器7と、容器7を挟んで配施された光共振器8とから構成されている。容器7は第一の電極2と第二の電極3の各電極面が内部溶液に接するような構造であり、更に光が取り出せるように、ガラス、プラスチック材料より形成されている。光共振器8(例えばファブリーペロー共振器であって、3つ以上の反射鏡を用い、光路が多角形をなすものを使用できる。)は、多量の光を発生させることができる。透明容器7中で、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により、有機発光材料が電解質中で発光し、透明容器7を透過した発光が、光共振器8によって増幅され、多量の光が発生する。
【0017】
配線部分は、この個所において電極反応が起ることのないように、第一の電極端子4、第二の電極端子5及び各電極の開口部6を除いて、絶縁物質で被覆する。
このような構成の有機ECL素子において、容器7中に化学発光物質を含有する溶液を注入する。これら電解質の構成、及びゲル化条件については、下記の各実施例の項目において、表として記載した。このようにして作成された有機ECL素子に、第一の電極端子4と第二の電極端子5との間で発生する光を透明容器7光共振器8で増幅して取り出し、これを発光デバイスやレーザーとして適用する。
【0018】
電極の間に使用溶剤に室温時ゲル状態を保持する高分子材料からなる電解質を均一に配置することにより、薄膜化の際の短絡を防止するとともに、発光層を固定化することにより安定した有機ECL素子を形成する。
【0019】
このようにして得られた本発明の有機ECL素子は、通常0.5〜10V程度の直流電圧で駆動され、0.1〜1000mA/cm2 電流値を示す。輝度については、最大1000cd/m2 以上を示し液晶及びブラウン管を超える。
輝度を向上させるためには、その発光の中核をなす材料の開発がまず重要である。次にこれらの材料を、特定のECL素子に適合した溶剤に高濃度で溶解させることも重要になってくる。 またこの状態を常時安定に保つことも重要であり、特に電解質の状態、更には櫛型の場合の電極配置構造、配置距離も重要となってくる。本発明は、後者を中心とした有機ECL素子及びこれらに対応する好ましい各材料に関する。
【0020】
有機ECL素子は電流駆動型の発光素子であるために、一画素に対して電流制御用トランジスタとそのゲートに電圧を印加するためのトランジスタの二つが必須となる。また、十分な電流を供給するために、常圧駆動型のアレイに比べて太い電極線を必要とする。したがって、ガラス基板などの透明基板を用いて透明基板側から発光を取り出す場合には、二つのトランジスタと電極線により、開口率が低下する。しかし、シリコンなどの半導体基板を用いた場合には、半導体基板上にトランジスタを構築することができ、基板面に対して反対方向から発光を取り出すことができるので、開口率の低下がなく好ましい。
【0021】
<基板について>
電極の基板材料としては、石英、ガラス、表面を酸化処理したシリコン、 酸化アルミニウム等の半金属材料等を用いることができる。また、電極や溶液を収容する容器材料として、透明性の高いガラス、石英、テンパックス、プラスチック等を用いることができる。
【0022】
<電極について>
通常、有機ECL素子で用いられる電極としては、平行平板電極、及び櫛形電極の二つのタイプを挙げることができる。平行平板電極は、一対の平行電極の間に発光層を挟持して発光層を平行に配置したものである。一方、櫛形電極とは、一対の櫛形状の電極を、交互に対電極の間に入り込むように配置したものである。平行平板電極を用いた場合、少なくとも一方の電極は、透明もしくは半透明電極であることが好ましい。
【0023】
櫛形電極を用いる場合、一対の櫛形電極は基板上に配置される必要がある。その場合も透明な基板を用いた方が、基板側から発光を取り出すことができるので好ましい。また、電極の形状としては、曲線構造にして、イオンの流れをスムーズにさせることも必要となってくる。
【0024】
電極としては、白金、金、銅、チタン、パラジウム、錫、ニッケル、銀、アルミ等の金属、酸化インジウム、酸化錫、及びこれらの金属を含む合金、酸化インジウム、酸化錫、ITO等の半導体及び各種導電性カーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。
【0025】
更には櫛形電極の角を角度のある状態から図3に示すような放物状態にすることもできる。 このような櫛形電極にすることにより、角部での発光の低下による発光の不均一化防止を図ることができる。この時ペーストに用いる溶剤は、電解質使用溶剤と同じものを用いてもよい。
【0026】
<異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物について>
次に有機ECL素子の化学発光材料としては、可視光領域から紫外光領域で蛍光を有する化合物であればよい。
特に、芳香族系共役化合物、シラン化合物、ビスピリジン系金属錯体化合物、芳香族アミン化合物、芳香族エナミン化合物、複素環系共役化合物、オキサゾール化合物等が好ましい化合物として挙げられる。具体的な化合物としては、9、10−ジフェニルアントラセン、ルブレン、トリフェニレン、2、3−ジフェニルトリフェニレン、9−(α、α―ジシアノビニル)アントラセン、9−スチリルアントラセン、2、7―ジフェニルフェナントレン、5、6、11、12−テトラフェニルナフタセン、4、4’−ビス(2、2’−ジフェニル−4−イル)−ジフェニル、トリス(2、2′−ビピリジイル)ルテニウム、シス−ビス(チオシアナート)−ビス(2、2′−ビピリジイル)ルテニウム、 N、 N,N′、N′−テトラフェニルベンジジン、N、N′−ジフェニル、N、N′−ジ(α―ナフチル)ベンジジン、また高分子タイプのもとしては、ポリ(P−フェニレン−エチニレン)、ポリ(P−フェニレン−エチニレン−m−フェニレン−エチニレン)等のアリ−レン:アセチレン結合からなる芳香族系共役系高分子化合物が挙げられる。高分子タイプのものとしては、特開平6−166743号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0027】
これらの化合物として、芳香族系共役化合物及びビスピリジン金属錯体化合物が特に高い発光効率を有する化合物が多い。
構造的な観点からは、2、6、10−トリフェニルトリフェニレン及びトリ(ビフェニルー4−イル)アミンのように、フェニル基に代表されるアリール基が置換基数として2個以上ついているものが好ましい。アリール基は相対的には多ければ多いほどよいが、合成上、及び溶解性、溶融性等の点もあり、4個ぐらいの置換数が適当といえる。
【0028】
一方、ビスピリジン系金属錯体化合物としては、最近有機太陽電池の分光増感色素と近年注目を浴びており、種々の材料が得られるようになり、この中より好ましい構造も明らかになってきている(JACS、115、632P(1993))。
【0029】
これらの構造としては、配位子としてビスピリジン、及びビスピリジンの一部及び全部が1、10―フェナントロリン(構造式1)及び 1、8−ナフチリジン(構造式 2)のような環状構造になったものとルテニウム等の三価の金属から構成される金属錯体が好ましい発光材料として見つかってきている。
【0030】
【化1】
【化2】
【0031】
なお、溶解性についてはその濃度が発光強度にほぼ比例し、そのためには、極力発光材料の溶解性をたかめる構造にする必要がある。溶解性向上と化学発光特性向上との間には、相反するところも多く、基本構造のみで論ずることができにくい側面がある。
このためには、溶解性向上のためには、芳香族環、複素環の一部を低級アルキル基、アルコキシ基に置換することが必要である。特に分岐状の低級アルキル基、アルコキシ基の置換体が好ましい。
ビスピリジン系金属錯体の場合は配位子を上記方法により置換したものを用いる以外に、配位子の種類を同一にしないようにするとか、溶解性に優れた配位子(例えばアセチルアセトン誘導体)を用いることも必要になってくる。
また更なる発光層の固体化のためには、電子吸引性基(特にシアノ基、トリフロロ基)からなる高分子材料を上記溶剤に溶解させることにより発光強度を弱めることなしに、更なる発光層の固体化をはかることも必要となってくる。
【0032】
これらの高分子としては、ポリアクリロニトリル、またアクリロニトリルと酢酸ビニル、ブタジエン、メタアクリレート、アクリレートとの共重合体があげられる。更にはフッ化ビニリデンと酢酸ビニル、ブタジエン、メタアクリレート、アクリレートとの共重合体があげられる。
このような高分子材料としては、同じ置換基同志の組み合わせのほうが溶解性、発光性等で好ましい。
【0033】
<電解質について>
電解質基本構成は、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を含有することである。
更に発光寿命を改善するためには、陽イオン及び陰イオンから構成される塩類からなる電解質を加えることも必要になってくる。ただ、これら電解質は前述の溶剤に対して溶解性が悪いものが多く、自ら、材料及び加える量も限られてくる。
【0034】
これらの制約がある中で、好ましい陽イオンとしては、Li、Na等の1価のアルカリ金属イオン、一方、好ましい陰イオンとしては、Cl、F、Br等の1価のハロゲンイオンが代表的なものとして挙げられる。これら以外にも陰イオンとして、4フッ化硼素(BF4)イオン、炭酸イオン、燐酸イオン、酢酸イオン等も挙げられる。
電解質を溶液にして用いる場合には、発光層は、10〜80%の溶剤を含むことができる。これら溶剤としては、場合によっては発光そのものにも影響をあたえ、その選択も重要となってくる。また発光材料に対する溶解性、更には電離化させることも重要となってくる。
【0035】
<電解質に使われる有機溶剤について>
電解質に使われる溶剤の比誘電率は、15以上であることが必要になってくる。
これら溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセチルアセトン、N―メチルピロリドン、イソプロパノール、エチレンカーボネート、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロベンゼン、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、テトラフロロエタン、2―テトラフロロー1、2−ジクロロエタン、1、2−ジクロロー1、1、2、2−テトラフロロエタン、フロロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、 n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロンニトリル、サクシオニトリル等が挙げられる。特に非水性で酸化を受け難く、強い電子吸引基であるニトリル基を有する溶剤が好ましい。この代表例としてアセトニトリル、プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0036】
更に極性の低い溶剤では、発光材料としても利用可能なエキキサイプレックスを形成しやすく、発光材料に幅を持たせることができる。
【0037】
<電解質に使われる高分子化合物について>
これら材料として新規材料を開発してもよいが、すでに各種用途に用いられている高分子材料の中から選択してもよい。これら高分子材料としては電荷輸送性、熱的安定性、加水分解安定性に優れているのが基本的な要素である。
このような材料としては、二次電池用の高分子電解質として用いられている高分子材料があげられる。これら高分子材料の中でも、特に含フッ素系ビニルモノマーから構成されているホモポリマー及びこれらビニルモノマーとの共重合体ポリマーが好ましい。更に、これらポリマーの構造の一部が架橋構造を有していてもよい。この中でも熱的条件(熱時ゾル−室温時ゲル)によってゾル−ゲル変化をもたらすような材料が好適である。
【0038】
具体的材料としては、高分子を構成する主鎖構造(エチレン構造)の水素の一部もしくはすべてがフッ素に置換された構造のモノマーであり、更には水素が塩素、フッ素、シアン、トリフロロメチル等の電子吸引基で置換された構造のものは好ましいものが多い。具体的には、4フッ化エチレンや含フッ素系有機化合物、トリフロロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、クロロトリフロロエチレン等やこれらをポリマー化した樹脂である。
またこれらの単量体単位(モノマー)の組み合わせによるいわゆる共重合体、他のモノマー(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アクリルアミド等)との2元共重合体、3元共重合体等の多元共重合体も好ましい。中でもポリビニリデンフルオライド(ポリフッ化ビニリデン)及び4フッ化エチレン単独重合体(PTFE)及びこれらとエチレン、プロピレン、ブタジエン等の共重合体がゲル化特性、発光特性に優れている。
【0039】
4フッ化エチレンの溶解温度は327℃であり、ポリビニリデンフルオライドの溶解温度は170℃であるのに対して共重合体にすることによりこれら高分子材料はガラス転移点が極度に低い(殆ど常温以下)特徴を有してくる。
【0040】
この中でもガラス転移点が室温以下のものは、カチオンラジカル、アニオンラジカルの輸送速度が液体状とほぼ同様であり、高分子材料を加えても、速度低下現象を起こさない。反対に高分子材料を加えることにより、速度が早くなる傾向が見られる。これら材料の中でも、エチレンとテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)等は、旭硝子(株)、グンゼ(株)より一部市販されている。
加熱時これら高分子材料をゾル化するためには熱的作用だけでなく、溶剤の助けを借りてゾル化するのが好ましい。
【0041】
これら溶剤としては、安定性に優れ、比較的高沸点でかつ吸水性のない、電子吸引性の非プロトン溶剤が適している。具体的な溶剤としては、アセトニトリル(BP:82℃)、ブチロニトリル(BP:118℃)、スクシノニトリル(BP:267℃)、バレノニトリル(BP:104℃)、α―トルニトリル(BP:233℃)、ベンゾニトリル(BP:192℃)、イソブチロニトリル(BP:104℃)、エチレンカーボネート(BP:238℃)、プロピレンカーボネート(BP:242℃)、ベンゾトリフルリド(BP:102℃)、1、1、2、2―テトラクロロ−1、2−ジフロロエタン(BP:93℃)、シネオール(BP:176℃)ジペンテン(BP:178℃)等が挙げられる。特に強い電子吸引基から構成されているニトリル系の溶剤はイオン輸送速度が早く、このため発光効率もよい傾向が認められる。なお、BPは沸点を意味する。
【0042】
ゾル化温度は70から100℃で超音波等の助けを借りてほぼ完全の形で行い、次いで、室温まで自然冷却によりゲル化にした方が良く、急激な冷却では緻密なゲルが出来にくいことがある。これら溶剤の割合は体積比で50%以上加えたほうがよいが、あまり量が増えすぎると、ゲル状態が崩れてしまう。また一旦ゲル化した電解質は比較的高温(70℃付近)になってもゾル状態にはならず安定状態にも優れている。
【0043】
<ECL素子の製造方法について>
有機ECL素子は、櫛型電極、平行電極に関係なく、まず有機ECL材料を溶解した溶液を、スピンコート、キャストコート、デイッピング、バーコート、ロールコート等の手段により電極、及び基板上に塗布することにより発光層を形成する。
特に、ガラス製不織布を電極間に均一に充填する際には直接機械的な手段で行ってもよいが、好ましくは適当な溶剤(IPA等)でガラス製 不織布をペースト状態にし、これを上記コート法により充填し次いで減圧下乾燥する。場合によってはペースト充填したものを超音波等の手段により均一化を促進してもよい。
【0044】
次に電解質を電極間に注入する方法としては、塗布以外にも、キャスティングやデイッピング等の方法が挙げられる。この場合でも電解質の均一化のために低湿下で超音波をかけることも必要になってくる。尚、対になる電極をミクロン、サブミクロンの微細間隔に配置するように作成するには、フォトリソグラフィとドライエッチング法、あるいはリフトオフ法、あるいはイオンミリング法等の微細加工技術を組み合わせて基板上に作成する。また一方、ピエゾ素子を利用して微小電極を接近させる方法等が挙げられる。
【0045】
また一般的には、発光層が形成されたECL素子は、防湿シールで被覆することが必要である。この防湿シールとしては、アルミニウム箔、アルミニウムとポリエチレン又はポリカーボネートとからなる金属ラミネートフイルム等を用いることができる。またシール部の表面にモレキュラーシーブ等の防湿材を含有させてもよい。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1〜20)
図2は本発明の実施例を説明する図である。
噛み合った白金製の櫛形電極12、13が透明な絶縁性基板である、石英基板11の下面において、発光セルを形成する。
具体的には、直径3インチの円盤状の石英基板11上に、露光装置を用いて、噛み合った櫛形電極12、13、参照電極20、外部電極(対抗電極)21、端子部分のレジストパターンを形成し、スパッタ装置でチタン、白金の順に堆積し、メチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し超音波洗浄器を用いてリフトオフし、噛み合った櫛形の電極12、13、参照電極20、対抗電極21、端子部分のパターン以外の金属部分を基板より剥離した。この時の白金電極の膜厚は700Åとした。
【0048】
次にリード部分を絶縁層で被覆するために、石英基板11にチッ化シリコン膜をスパッタ装置で形成し、反応性エッチング法により、噛み合った櫛形の電極12、13部分、参照電極20部分、対抗電極21部分、端子部分のチッ化シリコン膜を除去した後、石英基板11を所定の寸法にダイシングソーで切り出した。このようにしてギャップ幅2μm、櫛の長さ2mm、櫛の数100対の櫛形電極を作成した。
【0049】
この石英基板11の下面に形成された噛み合った櫛形の電極12、13に対向するように鏡面研磨した白金電極14を上面に設置したブロック15を厚さ12μmのテフロン(登録商標)製スペーサ16を介して配置した。このブロック15には電解液を供給、排出する流路的作用のための通路17、18を設け、これら通路は、櫛形の電極12、13と白金電極14とテフロン(登録商標)製スペーサ16により構成された、電解液を貯蔵する容器19に連結させた。
【0050】
次に、室温時にゲル化する高分子化合物を作製する。組成は、表1からなる発光電解液を作製し、室温に冷却することにより、ゲル化した発光電解液を作製した。
【0051】
高分子化合物には、4フッ化エチレン単独重合体、4フッ化エチレンとエチレン、または4フッ化エチレンと塩化ビニルの共重合体化合物を、そして、熱的作用だけでなく、ゾル化するのに用いる溶剤には、アセトニトリル(BP:82℃)、ブチロニトリル(BP:118℃)、ベンゾニトリル(BP:192℃)、エチレンカーボネート(BP:238℃)、またはスクシノニトリル(BP:267℃)を用い、共重合化合物と溶剤を、ビーカー等の適当な容器に20wt%:80wt%の割合で入れて混合し、80℃の温度で超音波洗浄器に入れほぼ完全な形のゾルを作製した。次いで、70℃の温度を保ったまま、化学発光材料および電解質を表1に示した濃度で添加して、発光電解液を作製した。また、表1において、共重合体のモノマー1とモノマー2の重量比率は、9:1とした。
【0052】
ただし、モノマー1およびモノマー2で「−」と記しているものは、そのモノマーは使用していないことを示しており、モノマー1しか記していない場合は、モノマー1を100%使用していることを示している。
4フッ化エチレンと他のエチレン、及び塩化ビニル等の重量比率は、4フッ化エチレンが80%以上が好ましい。
【0053】
さきに述べたようにして作成した容器19に、表1の組成からなる80℃程度の温度を保った前述のゾル状の発光電解溶液を、注射器を用いて注入し、自然冷却により室温にまで冷却した。次いで流路17、18をエポキシ樹脂で封止し、発光セルを作成した。尚、室温時これら各電解質溶液はどれもゲル化状態になっており流動性はなくなっていた。
【0054】
この時の発光の色調、及び強さについて測定した。更に素発光持続時間についても測定を行った。これらの結果について表2に示す。
【0055】
(比較例)
比較例として、前述の発光電解液に代わり、表1の比較例に記したような組成からなる発光電解溶液により、容器19に注射器を用いて注入した。次いで、流路17、18をエポキシ樹脂で封止し、発光セルを作製した。
【0056】
このようにして作成した21種類の有機ECL素子において、ポテンシオスタットを用いて、参照電極20に対して櫛形の電極12、13の一方の電位を+1.6V、他方の電極を−1.6Vに設定し、櫛形の電極12、13の裏面より発光を観察した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
これらの結果から、比較例と比較して、共重合体高分子を素子内に導入することによっても、発光強度を大きく変化させることがないことがわかった。
モノマー1だけを使用して有機ECL素子を作成したとき、実施例1、16、19の結果から、4フッ化エチレンを使用した方が、発光強度が高い傾向が見られた。
いずれの実施例の場合も、発光強度が得られていることから、発光素子として動作していることが確認されており、発光時間が比較例と比較して高くなっており、化学発光材料を変更しても安定した青色から黄色の光を発光する有機ECL素子を得られることがわかった。
【0060】
(実施例 21)
発光材料として、2、6、10−トリフェニルトリフェニレンの代わりにモノフェニルトリフェニレン,トリフェニレン,2、6、10−トリ−(p―シアノフェニル)−トリフェニレンを用いて実施例 2と同様にして有機ECL素子3種類を作成した。これらの各素子の発光強度を測定した所、モノフェニルトリフェニレン,トリフェニレン,については発光が観察されなかった。しかし2、6、10−トリ−(p−メトキシフェニル)−トリフェニレン(構造式 3)については、発光強度が30とより強い青色発光(450nm)を示した。発光時間は、0.4secであった。
【化3】
構造的に見て、多くのフェニル基が網目構造的に拡大していることと、電子吸引基が置換することにより、ラジカル発生が起りやすくなり、これが発光強度の増大をもたらしたものと考えられる。
【0061】
(実施例22)
発光材料として、トリス−ビピリジンRu錯体の代わりに、Ruに対し構造式1の1、10―フェナントロリンが配位したトリス−フェナントロリンRu錯体を用い、実施例 2と同様にして有機ECL素子を作成した。この素子の発光強度を測定した所、発光強度が15であり、610nmの発光波長、そして、発光時間は0.5secであり、ほぼトリス−ビピリジンRu錯体と等しい特性であった。
【0062】
(実施例 23)
図3は実施例23を説明する図である。本実施例では、噛み合った櫛形の電極12、13のパターンの角部分を直角型から4分の1円になるようにレジストパターン化することにより、2つの櫛形電極をウエーブ状の形状に変えた。このようにしたウエーブ状の櫛形の電極12、13を用いた以外はすべて実施例2に準じて有機ECL素子を作成した。その結果、実施例2と同様な特性を得、すなわち、発光波長が610nm、発光強度が12、発光時間が0.6secであった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、安定な状態で、経時劣化の少ないかつ、高い効率で電気化学発光を起こす有機ECL素子を提供することが可能となる。更にはこのような有機ECL素子の製造方法を提供することが可能となる。さらには、本素子を用いることにより、カラーディスプレーとしても十分対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機ECL素子の基本構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の有機ECL素子の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の有機ECL素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁性基板
2 第一の電極
3 第二の電極
4 第一の電極端子
5 第二の電極端子
6 開口部
7 容器
8 光共振器
11 石英基板
12,13 櫛形電極
14 白金電極
15 ブロック
16 スペーサ
17,18 流路
19 容器
20 参照電極
20a 電析部
21 外部電極(対抗電極)
Claims (13)
- 絶縁基板上に設けた第一の電極と第二の電極の間に、異なるイオンラジカル間のイオン衝突により発光する有機化合物と、該有機化合物を溶解する有機溶剤と、該有機溶剤に熱時溶解し室温時ゲル化する高分子化合物とを、少なくとも各一種類を基本構成とする電解質として備えることを特徴とする有機電界化学発光素子。
- 前記高分子化合物が、少なくとも含フッ素系ビニルモノマーを構成単位としている請求項1に記載の有機電界化学発光素子。
- 前記含フッ素系ビニルモノマーが、4フッ化エチレン、フッ化ビニリデンまたはフッ化ビニルである請求項2に記載の有機電界化学発光素子。
- 前記高分子化合物の一部が架橋構造を有している請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機電界化学発光素子。
- 前記高分子化合物が、含フッ素系ビニルモノマーと、エチレン、プロピレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ブタジエン、アクリロニトリルのいずれかとの共重合体化合物である請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機化学発光素子。
- 前記有機溶剤が、電子輸送性溶剤で構成される請求項1〜5のいずれか1つに記載の有機電界化学発光素子。
- 前記電子輸送性溶剤が、ニトリル基、ハロゲン、トリフロロ基の少なくとも1つの置換基を有する化合物である請求項6に記載の有機電界化学発光素子。
- 前記電子輸送性溶剤が、スクシノニトリル、バレノニトリル、ベンゾニトリル、n―ブチロニトリル、イソブチロニトリル、α―トルニトリルのいずれかである請求項6または7に記載の有機電界発光素子。
- イオン衝突により発光する前記有機化合物が、含窒素系複素環化合物を多座配位子とする金属錯体化合物から構成される請求項1〜8のいずれか1つに記載の有機電界化学発光素子。
- 前記電解質が、ポリアクリロニトリルまたはその共重合体高分子材料を加えたものからなる請求項1〜9のいずれかに1つに記載の有機電界化学発光素子。
- 第一の電極と第二の電極の双方が、櫛形に各々配置され、互いに曲線状の形状から構成されている請求項1〜10のいずれか1つに記載の有機電界化学発光素子。
- 光を増幅させる一対の光共振器を備えた請求項1〜11のいずれか1つに記載の有機電界化学発光素子。
- 前記電解質を加熱して、第一の電極と第二の電極との間に注入した後、当該電解質を室温以下まで冷却することによりゲル電解質を得る請求項1〜12のいずれか1つに記載の有機電界化学発光素子の製造方法。
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