JP2005069773A - 有機物の定量分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 四塩化炭素を用いず且つ低コストな方法で、試料中の有機物を抽出し、赤外線吸収分析により定量分析する方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の有機物の定量分析方法は、抽出有機溶媒を用いて試料中の有機物を抽出有機溶媒層に抽出し、該抽出有機溶媒層から前記抽出有機溶媒を揮散させて残留物を得、該残留物に重水素化溶媒を添加して重水素化溶媒溶液を得、該重水素化溶媒溶液を赤外線吸収分析により定量分析する。また、前記定量分析は、波数3170〜3100cm−1、波数2970〜2910cm−1及び波数2870〜2840cm−1の範囲内にある1個以上の赤外線吸収ピークにおける、前記重水素化溶媒溶液と前記重水素化溶媒との間の差スペクトルにより行われることが好ましい。また、赤外線吸収分析により定量分析する際に用いる吸収セルのセル光路長が5mm以下であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、固体及び水溶液中の有機物の赤外線吸収分析による定量分析方法、詳しくは、イオン交換樹脂及びイオン交換樹脂に通液される原水等の中に含まれる防錆剤や油脂類等の有機物を四塩化炭素を用いずに赤外線吸収分析法で定量分析する有機物の定量分析方法に関するものである。
固体及び水溶液等の試料中の有機物を定量分析する方法としては、従来、試料を四塩化炭素で抽出し、この抽出液について波数2970〜2910cm−1及び波数2870〜2840cm−1の範囲内にある3個の赤外線吸収ピークの吸光度を測定し、OCB標準混合溶液の対応量に換算して求める方法が知られている。しかし、四塩化炭素は、オゾン層を破壊する物質としてモントリオール議定書において、製造及び消費量の段階的削減が計画されており、将来、四塩化炭素で抽出する方法を用いることができなくなる。このため、四塩化炭素を用いないで試料中の有機物を抽出する方法が望まれている。
これに対し、特開平7−233398号公報(特許文献1)には、ヘキサン等の非極性有機溶剤とアセトン等の極性溶剤との混合溶剤を用いて有機物を抽出する方法が開示されており、この方法によれば四塩化炭素を用いないで試料中の有機物を抽出することができる。
特開平7−233398号公報(第2頁、第7頁)
しかしながら、特許文献1記載の方法は、ヘキサンやアセトンがC−H結合を含むため、抽出した試料溶液を用いて赤外線吸収による定量分析を行うと、試料中の有機物のC−H結合等のピークと、ヘキサンやアセトンのC−H結合の赤外線吸収ピークとが重なり、定量分析をすることができないという問題があった。
なお、抽出溶剤として重水素化溶媒を用いれば、重水素化溶媒はC−H結合を含まないことによりそのピークが試料中の有機物のC−H結合の赤外線吸収ピークと重ならないため、定量分析をすることができる。しかしながら、重水素化溶媒は非常に高価であるため、大量に使用することが必要な試料中からの有機物の抽出溶媒として用いるとコストが高くなってしまうという問題があった。
従って、本発明の目的は、四塩化炭素を用いず且つ低コストな方法で、試料中の有機物を抽出し、赤外線吸収分析により定量分析する方法を提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、抽出有機溶媒を抽出溶媒として用いて有機物を抽出し、抽出有機溶媒を揮散させ、残留物を重水素化溶媒で溶解して赤外線吸収分析用試料溶液とすれば、四塩化炭素を用いず且つ低コストな方法で試料中の有機物を赤外線吸収分析により定量分析することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明(1)は、抽出有機溶媒を用いて試料中の有機物を抽出有機溶媒層に抽出し、該抽出有機溶媒層から前記抽出有機溶媒を揮散させて残留物を得、該残留物に重水素化溶媒を添加して重水素化溶媒溶液を得、該重水素化溶媒溶液を赤外線吸収分析により定量分析することを特徴とする有機物の定量分析方法を提供するものである。
また、本発明(2)は、上記発明において、前記定量分析が、波数3170〜3100cm−1、波数2970〜2910cm−1及び波数2870〜2840cm−1の範囲内にある1個以上の赤外線吸収ピークにおける、前記重水素化溶媒溶液と前記重水素化溶媒との間の差スペクトルにより行われることを特徴とする。
また、本発明(3)は、上記発明において、前記抽出有機溶媒の揮散が、前記抽出有機溶媒層を80℃以下に加熱することにより行われることを特徴とする。
また、本発明(4)は、上記発明において、前記赤外線吸収分析により定量分析する際に用いる吸収セルのセル光路長が5mm以下であることを特徴とする。
本発明(1)に係る有機物の定量分析方法によれば、四塩化炭素を用いず且つ低コストな方法で試料中の有機物を赤外線吸収分析により定量分析することができる。
本発明(2)に係る有機物の定量分析方法によれば、重水素化溶媒中にわずかにC−H結合が含まれるような場合であっても、重水素化溶媒溶液及び重水素化溶媒のスペクトルをそれぞれ採った後これらの差スペクトルを採ることにより重水素化溶媒中にわずかに含まれるC−H結合の吸収を差し引くことができるため、定量精度をより高くすることができる。
本発明(3)に係る有機物の定量分析方法によれば、80℃以下に加熱することにより、抽出有機溶媒層は揮発し、目的成分である有機物が残留し、抽出有機溶媒層と目的成分とを容易に分離することができるため、有機物の抽出率をより高くすることができる。
本発明(4)に係る有機物の定量分析方法によれば、再現性良く重水素化溶媒溶液と重水素化溶媒の差スペクトルを得ることができ、定量精度をより高めることができる。
(抽出工程)
本発明では、まず、抽出有機溶媒を用いて試料中の有機物を抽出有機溶媒層に抽出する。本発明で用いられる試料は、有機物を含む固体又は水溶液である。本発明で用いられる固体試料としては、例えば、イオン交換樹脂、汚泥、土壌等が挙げられる。また、水溶液試料としては、例えば、前記固体試料から水又は水溶液に抽出したものや、イオン交換樹脂に通液される原水、発電所復水、工場排水、工業用水、純水、超純水等が挙げられる。
本発明において有機物とはC−H結合を含み、一般的に有機物と称されるものであればよく特に限定されないが、例えば、炭化水素、炭化水素誘導体、動植物油脂類及び脂肪酸等が挙げられる。ここで炭化水素誘導体とは炭化水素の一部が他の原子や官能基と置換された化合物をいう。有機物のより具体的な例としては、防錆剤、機械油(タービン油)、グリース、石油等の油脂類、界面活性剤等が挙げられる。
本発明で用いられる抽出有機溶媒としては、試料中から有機物を抽出することが可能な一般的なものであればよく特に限定されないが、例えば、ヘキサン(bp68.7℃)、クロロホルム(bp61.2℃)、ジエチルエーテル(bp34.5℃)、ベンゼン(bp80.0℃)、パーフルオロメチルシクロヘキサン(bp76.3℃)、2,3,3−トリメチル−1−ブテン(bp78.0℃)、2,2−ジメチルペンタン(bp79.2℃)、2,2,3−トリメチルブタン(bp80.8℃)、ジクロロメタン(bp40.2℃)、シクロヘキサン(bp80.7℃)等が挙げられる。このうちヘキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル及びジクロロメタンは、沸点が70℃以下と比較的低温で揮散させることができることから、試料中の有機物が分解し易い80℃を超える温度での揮散が不要となるため好ましい。特に、ヘキサンは有機物の抽出効率が非常に高いため好ましい。上記抽出有機溶媒は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
抽出有機溶媒層は、試料に抽出有機溶媒を添加し抽出操作をした後に水層又は固体試料と分離して観察される抽出有機溶媒の層であり、試料中の有機物が溶解している層である。抽出操作とは、試料中の有機物を抽出有機溶媒層に移すことをいう。抽出操作の方法としては、試料が固体の場合は、例えば、以下の(1)〜(4)を行う方法が挙げられる。例えば、(1)ソックスレー抽出器を用い、該固体に抽出有機溶媒を添加して還流等を行い、抽出する。(2)分液ロートを用い、イオン交換水(純水)にメチルオレンジを加えて塩酸で酸性にした後、抽出有機溶媒を添加し、振とうを行った後、静置する。これにより、抽出有機溶媒層が水層と分離して形成される。(3)抽出有機溶媒層を分取し、純水を加えて振とうを行った後、静置する。この操作はメチルオレンジが中性側の色(オレンジ)になるまで繰り返す。(4)抽出有機溶媒層を分取し、無水硫酸ナトリウムを加えて抽出有機溶媒層を脱水して、有機物が抽出された抽出有機溶媒層を得る。
また、試料が水溶液の場合の抽出操作の方法としては、以下の方法が挙げられる。(1)分液ロートを用い、試料水溶液にメチルオレンジを加えて塩酸で酸性にした後、抽出有機溶媒を添加し、振とうを行った後、静置する。この後は、試料が固体の場合の上記(3)及び(4)と同様の作業を行う。なお、上記抽出操作において塩酸を加えたのは、試料中にアミンが含まれる場合アミンの吸収が目的成分(有機物)のC−H結合と重なり妨害となるが、アミンが酸性で水層に移動して抽出有機溶媒層より除去されるからである。
(揮散工程)
次に、抽出有機溶媒層から抽出有機溶媒を揮散させて残留物を得る。この方法としては、例えば、抽出有機溶媒層の入ったビーカーを抽出有機溶媒回収装置内に入れ、加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、有機物が揮散しない温度である80℃以下で且つ抽出有機溶媒層の沸点以上であることが好ましい。例えば、ヘキサンは、その沸点が68.7℃のため70〜80℃に加熱するが、ジクロロメタンは沸点が40.2℃のため40〜80℃で加熱を行うことが好ましい。得られる残留物は、試料中の有機物である。
(測定溶液調製工程)
次に、残留物に重水素化溶媒を添加して重水素化溶媒溶液を得る。該溶液は、残留物を重水素化溶媒に洗いこみ、再溶解させることにより得られる。本発明において重水素化溶媒とは、分子中の水素原子が重水素原子に置換されている形態の有機溶媒をいう。重水素化溶媒としては、例えば、重水素化クロロホルム、重水素化ベンゼン、重水素化ブロモホルム、重水素化クロロベンゼン、重水素化シクロヘキサン、重水素化ブロモベンゼン、重水素化1,2−ジブロモエタン、重水素化1,2−ジクロロベンゼン、重水素化ジクロロメタン、重水素化ジエチルエーテル、重水素化酢酸エチル、重水素化エチルベンゼン、重水素化ヘキサン、重水素化メチルシクロヘキサン、重水素化オクタン、重水素化トルエン、重水素化キシレン、重水素化テトラヒドロフラン、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン等の非極性重水素化溶媒;重水素化エタノール、重水素化メタノール、重水素化プロパノール、重水素化アセトン等の極性重水素化溶媒等が挙げられる。
重水素化溶媒は抽出した有機物を溶解するものであれば、どのようなものでもよい。しかし、極性重水素化溶媒は水分が混入しやすく、O−H結合の吸収ピークが有機物のピークに悪影響を与えるため、非極性重水素化溶媒、特に重水素化クロロホルムが好ましい。
(赤外線吸収分析)
次に、重水素化溶媒溶液中の有機物を赤外線吸収分析により定量分析する。赤外線吸収分析は、通常、波数3170〜3100cm−1、波数2970〜2910cm−1及び波数2870〜2840cm−1の範囲内にある1個以上の赤外線吸収ピークの吸光度を測定し、同一ピークにおける前記重水素化溶媒溶液の吸光度と前記重水素化溶媒の吸光度との間の吸光度の差、すなわち差スペクトルを測定し、該差スペクトル単独又は複数のピークにおける差スペクトルの合計値を、別途上記範囲内にピークを有する標準物質について求めた差スペクトル単独又は複数のピークにおける差スペクトルの合計値について作成した検量線に当てはめて、重水素化溶媒溶液中の有機物の濃度を算出することにより行う。本発明では、重水素化溶媒がC−H結合をほとんど持たず上記範囲内にピークがないため、重水素化溶媒を溶媒として用いた溶液をこのまま赤外線吸収分析に供しても重水素化溶媒のピークが有機物の赤外線吸収分析ピークの障害になることがない。
また、上記波数域のうち、特に、2975〜2945cm−1、2945〜2915cm−1及び2875〜2845cm−1のそれぞれの範囲内にあるピークの吸光度で計算すると、従来四塩化炭素による溶媒抽出法で標準物質として用いられてきたOCB標準混合溶液を用いて定量分析できるため好ましい。また、特に上記3つのピークにおける吸光度値を合計した合計の吸光度値で計算すると、従来の四塩化炭素を用いた溶媒抽出法と同様に定量分析することができるためさらに好ましい。なお、2975〜2945cm−1の範囲内にあるピークは芳香環及びCH基のC−H間伸縮振動、2945〜2915cm−1の範囲内にあるピークはCH基及びCH基のC−H間伸縮振動、2875〜2845cm−1の範囲内にあるピークはCH基、CH基及びCH基のC−H間伸縮振動を示すものである。なお、本発明において用いられる赤外線吸収スペクトルのピーク(例えば、2975〜2945cm−1、2945〜2915cm−1、2875〜2845cm−1、)は、それぞれ当該範囲付近のピークも含む。吸収ピーク位置は、試料の状態や測定条件等により若干シフトする場合があるが、本発明の吸収ピーク位置はこのような場合のピークも含むことを意味する。
上記範囲内にピークを有する標準物質としては、例えば、OCB標準混合溶液、ヘプタン、2,4−ジメチルペンタン、3−メチルペンテン−1、デセン−1、トルエン、スチレン等が挙げられる。このうち、OCB標準混合溶液は、従来四塩化炭素による溶媒抽出法で標準物質として用いられてきたものであり溶媒抽出法による定量分析値との比較が容易であるため好ましい。以下にOCB標準混合溶液を用いた赤外線吸収分析の例を示す。なお、以下の例では、標準物質としてOCB標準混合溶液を用いて説明しているが、標準物質はこれに限定されるものではない。
<検量線の作成>
標準物質として、OCB標準混合溶液の濃度が異なる重水素化溶媒溶液を数種類作製する。次に、ガラスセル、石英セル等の吸収セルに、これらの標準物質及び該重水素化溶媒をそれぞれ採り、これらのセルについて空の吸収セルを対照セルとして赤外線吸収スペクトルを測定し吸光度を求める。得られた各標準物質のスペクトルの吸光度(A)から重水素化溶媒のみのスペクトルの吸光度(A)を波数毎に差し引き、波数毎の差スペクトルを吸光度(A′)で求める。なお、吸収セルは、複数用意して、各標準物質及び重水素化溶媒を入れるセル並びに対照セル毎に用いてスペクトルを測定してもよいが、吸収セルを1個のみ用い、セル内の中身を入れ替えて各標準物質及び重水素化溶媒を測定してもよい。
本発明では、赤外線吸収スペクトルの測定の際に用いる吸収セルのセル光路長が通常5mm以下、好ましくは0.5〜3mmである。なお、一般的な赤外線吸収スペクトルの測定においては、吸収セルのセル光路長を10〜50mmとする。しかし、現時点ではC−H結合が100%重水素化されている重水素化溶媒試薬を入手することは困難であるため、本発明においてセル光路長を10〜50mmとすると、重水素化溶媒試薬中にわずかに含まれるC−H結合の影響が出て、重水素化溶媒溶液と重水素化溶媒の差スペクトルをうまく採れないおそれがある。このため、本発明では、再現性良く重水素化溶媒溶液と重水素化溶媒の差スペクトルを得、定量精度をより高めるために、吸収セルのセル光路長を上記範囲内とすることが好ましい。
各標準物質の差スペクトル(A′)をOCB標準混合溶液の濃度に対してプロットして検量線を作成する。なお、差スペクトル(A′)は、OCB標準混合溶液の2975〜2945cm−1、2945〜2915cm−1及び2875〜2845cm−1のそれぞれの範囲内にあるピークについて、それぞれのピークにおける差スペクトル(A′)、又は2個以上のピークの差スペクトル(A′)の合計値(A′合計)を採る。
<未知試料の定量分析>
有機物含有量が未知の試料から有機物を抽出して作製した重水素化溶媒溶液について、検量線作成用の標準物質と同様にして吸光度(A)及び差スペクトル(A′)を求め、該差スペクトル(A′)を検量線に当てはめて重水素化溶媒溶液のOCB標準混合溶液相当濃度を算出する。なお、検量線が合計値(A′合計)を基にして作成されている場合は、重水素化溶媒溶液についても同様に合計値(A′合計)を求めて算出する。
なお、本発明では、差スペクトル(A′)を求めずに、単純に重水素化溶媒をバックグラウンドして、重水素化溶媒溶液のスペクトルを得る方法も可能であるが、この方法だと重水素化溶媒の重水素化が100%でなく重水素化溶媒中にC−H結合が含まれる場合は、C−H結合のピークが悪影響を及ぼし定量精度が十分に上がらないおそれがある。そこで上記の差スペクトル(A′)を求める方法を用いると、重水素化溶媒中にわずかにC−H結合が含まれるような場合であっても、重水素化溶媒溶液及び重水素化溶媒のスペクトルをそれぞれ採った後これらの差スペクトルを採ることにより重水素化溶媒中にわずかに含まれるC−H結合の吸収を差し引くことができるため、定量精度をより高くすることができるため好ましい。
本発明に係る有機物の定量分析方法は、例えば、イオン交換樹脂等の固体物や、イオン交換樹脂に通液される原水、発電所復水、工場排水、工業用水、純水、超純水等の水溶液の中に含まれる防錆剤や油脂類等の有機物の定量分析方法に使用することができる。
以下、本発明の実施例を挙げ、比較例と比較しながら本発明を詳述する。なお、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
(1)検量線作成用標準溶液の調製
OCB標準混合溶液(関東化学株式会社製、油分測定用、1mgOCB/ml)を共栓付き10mlシリンダー内に0.4ml添加し、これに重水素化クロロホルム(メルク株式会社製、ウバゾール、クロロホルム−d、NMR用)で液量を10mlに調整し、検量線作成用標準溶液を調製した(標準溶液4)。同様にして、OCB添加量が1.0ml、2.0ml及び4.0mlの検量線作成用標準溶液を調製した(それぞれ標準溶液10、標準溶液20及び標準溶液40)。
(2)検量線の作成
光路長(厚さ)1mmのガラスセルを6個用意し、4個のガラスセルのそれぞれに上記4種類の標準溶液を入れ、1個のガラスセルに重水素化クロロホルムのみを入れ、1個のガラスセルは何も入れずそのままセルホルダーにセットした。内部に何も入れないガラスセルは対照セルである。
セルホルダーを赤外線吸光分析装置にセットし、各セルについて横軸を波数、縦軸を吸光度として対照セルの吸光度で補正して各セルの赤外線吸収スペクトル(A)を求めた。重水素化クロロホルム、標準溶液4、標準溶液10、標準溶液20及び標準溶液40の波数3200〜2800cm−1の範囲における各スペクトルをそれぞれ、A(0)、A(4)、A(10)、A(20)及びA(40)と表す。図1にA(0)を、図2にA(4)を示す。図1及び図2において、3160cm−1近傍にあるピーク(図中a)、2990cm−1近傍にあるピーク(図中b)、2900cm−1近傍にあるピーク(図中c)は、重水素化クロロホルムに特有のピークであり、2960cm−1近傍にあるピーク(図中d)、2930cm−1近傍にあるピーク(図中e)、2850cm−1近傍にあるピーク(図中f)は、OCB標準混合溶液に特有のピークである。なお、図1には、ピークd、ピークe及びピークfはない。
次に、A(4)、A(10)、A(20)及びA(40)のそれぞれからA(0)を差し引いて、波数3200〜2800cm−1の範囲における差スペクトルA′を各標準溶液について求めた。標準溶液4、標準溶液10、標準溶液20及び標準溶液40の差スペクトルA′をそれぞれ、A′(4)、A′(10)、A′(20)及びA′(40)と表す。図3に差スペクトルA′(4)を示す。なお、重水素化クロロホルムの差スペクトルA′(0)はA(0)からA(0)を引いたものであるから波数3200〜2800cm−1の全域において0となる。
次に、A′(4)、A′(10)、A′(20)及びA′(40)のそれぞれにつき、ピークd、ピークe、ピークfの吸光度A′、A′及びA′を求め、これら3つの吸光度を加算して(A′+A′+A′)吸光度の合計値(A′合計)を算出した。重水素化クロロホルム、標準溶液4、標準溶液10、標準溶液20及び標準溶液40における上記3つの吸光度の合計値A′合計を、それぞれA′合計(0)、A′合計(4)、A′合計(10)、A′合計(20)及びA′合計(40)と表す。なお、A′合計(0)は0である。
これら4種類の標準溶液及び重水素化クロロホルムにつき、横軸をOCB標準混合溶液濃度、縦軸をA′合計としてプロットして検量線を求めた。結果を図4に示す。
(測定条件)
赤外線吸光分析装置:日本バイオラボラトリーズ株式会社製FT−IR、FTS175C
積算回数(バックグラウンド及び測定):128
スペクトル形式:吸光度(Abs)
(3)分析用試料溶液の調製
試料としてイオン交換樹脂を用い、50mlを80℃で乾燥させた後、ガラス繊維円筒濾紙(アドバンテック株式会社製THIMBLE FILTER 86R、φ30×100mm)に入れ、このガラス繊維円筒濾紙をソックスレー抽出器の抽出管内にセットした。また、ソックスレー抽出器の溶剤フラスコ内にヘキサン(関東化学株式会社製、特級)を80ml入れ、溶剤フラスコを加熱するマントルヒーターの加熱温度をスライダックで調節することにより、抽出管と溶剤フラスコとの間でヘキサンを1回/10分の割合で2時間(12回)循環させて、試料中の有機物をヘキサン中に抽出した。
放冷後、ヘキサン全量を200ml分液ロートに移し、分液ロート内にpH2の塩酸酸性溶液を100ml加え、1分間振とうし、放置した。なお、塩酸酸性溶液は、イオン交換水にメチルオレンジを2〜3滴加え、さらに赤色になるまで塩酸を加えて作製したものである。その後、ヘキサン層を別の200ml分液ロートに移し、イオン交換水100ml及びメチルオレンジ2〜3滴を加え、1分間振とうし、放置した(分液−振とう操作)。この分液−振とう操作は、放置後の水層がオレンジ色になるまで繰り返した。
水層がオレンジ色になったところで、分液ロートから水層を排出し、無水硫酸ナトリウムを加え振り混ぜて脱水した後、下部に綿栓をしたロートにヘキサン層を移し、ろ過して、ろ液をビーカーに受けた。
次に、ヘキサン層を回収したビーカーをヘキサン回収装置(アドバンテック株式会社製n-HEXANE AUTO COLLECTOR RN-360)内に入れ、ヘキサンを完全に揮散させた。その後、重水素化クロロホルムでビーカー壁面をよく洗浄し、ビーカー底部の残留物を溶解して、重水素化クロロホルム溶液を得た。この重水素化クロロホルム溶液を共栓付き10mlシリンダーに回収し、重水素化クロロホルムで液量を10mlに調整し、これを分析用試料溶液とした。
(4)分析用試料溶液の赤外線吸収スペクトルの測定
光路長(厚さ)1mmのガラスセルを用意し、何も入れない状態、上記分析用試料溶液を入れた状態、及び重水素化クロロホルムのみを入れた状態で、それぞれのスペクトルを求めた。内部に何も入れない状態のガラスセルは対照セルとした。後は、「(2)検量線の作成」と同様の手順で、分析用試料溶液のスペクトルA(試料)、差スペクトルA′(試料)及び合計値A′合計(試料)を求めた。図5及び図6に分析用試料溶液のスペクトルA(試料)及び差スペクトルA′(試料)を示す。得られた合計値A′合計(試料)を上記検量線にあてはめて分析用試料溶液中の有機物のOCB標準混合溶液相当濃度を算出した。
試料濃度は、重水素化クロロホルム中の濃度が5.8mg/100mlであり、イオン交換樹脂中の濃度は12mg/L−樹脂であった。
重水素化クロロホルムの赤外線吸収スペクトルである。 標準溶液4の赤外線吸収スペクトルである。 標準溶液4と重水素化クロロホルムとの差スペクトルである。 実施例1の検量線である。 分析用試料溶液の赤外線吸収スペクトルである。 分析用試料溶液と重水素化クロロホルムとの差スペクトルである。

Claims (4)

  1. 抽出有機溶媒を用いて試料中の有機物を抽出有機溶媒層に抽出し、該抽出有機溶媒層から前記抽出有機溶媒を揮散させて残留物を得、該残留物に重水素化溶媒を添加して重水素化溶媒溶液を得、該重水素化溶媒溶液を赤外線吸収分析により定量分析することを特徴とする有機物の定量分析方法。
  2. 前記定量分析が、波数3170〜3100cm−1、波数2970〜2910cm−1及び波数2870〜2840cm−1の範囲内にある1個以上の赤外線吸収ピークにおける、前記重水素化溶媒溶液と前記重水素化溶媒との間の差スペクトルにより行われることを特徴とする請求項1に記載の有機物の定量分析方法。
  3. 前記抽出有機溶媒の揮散が、前記抽出有機溶媒層を80℃以下に加熱することにより行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機物の定量分析方法。
  4. 前記赤外線吸収分析により定量分析する際に用いる吸収セルのセル光路長が5mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機物の定量分析方法。
JP2003297724A 2003-08-21 2003-08-21 有機物の定量分析方法 Pending JP2005069773A (ja)

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