JP2005067744A - エレベータ群管理システム、エレベータ群管理方法、およびエレベータ群管理プログラム - Google Patents

エレベータ群管理システム、エレベータ群管理方法、およびエレベータ群管理プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】OD単位でエレベータ制御目標を設定可能であるとともに、OD単位で設定されたエレベータ制御目標に向けた群管理制御を実現可能にする
【解決手段】ビル内の任意階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し、エレベータカゴを割り当てる群管理制御を実行するエレベータ群管理システムにおいて、エレベータ制御目標は、出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて設定する設定手段を備えることを特徴とし、前記エレベータ制御目標を制御目標として前記群管理制御を実行することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータ群管理のためのシステム、方法、ならびにプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベータ群管理システムはエレベータの運行効率の向上ならびに乗降客へのサービスの向上を目的とし、ビル内の任意の階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し群管理アルゴリズムによって最適なエレベータカゴを割り当て、その運行を制御するというものである。発生したホール呼びに対し群管理アルゴリズムがエレベータカゴを割り当てる際には、現時点においてビル全体で発生している全てのホール呼びへのサービス状況に加え、カゴ呼び、カゴの位置、およびカゴの乗車人数等のカゴ情報が加味される。また、エレベータ群管理システムが採るエレベータ群管理制御の方針は、ビル全体を考慮した平均的なエレベータパフォーマンスを向上することであり、このような制御方針に従ってエレベータカゴを割り当てるようシステムは構成されている。
【0003】
複数台のエレベータカゴのなかからホール呼びに割り当てるエレベータカゴを選択するにあたり、それぞれのエレベータカゴは評価される。この評価に用いられる評価関数には、交通需要に応じて選択された可変パラメータによって重み付けがなされる。
【0004】
従来、評価関数を重み付けするための可変パラメータの選択をニューラルネットワークを用いて行う技術が例えば下記特許文献1において提案されている。この特許文献1に記載された技術では、ある交通需要において、ある可変パラメータを用いた場合のエレベータパフォーマンスをニューラルネットワークに学習させ、交通需要と可変パラメータを入力するとエレベータパフォーマンスの予測値を出力するニューラルネットワークエレベータモデルを構築しておく。このニューラルネットワークエレベータモデルから出力されるエレベータパフォーマンスの予測値のうち、最良の予測値を与える可変パラメータを上記評価関数を重み付けするための可変パラメータとして選択する。
【0005】
また、エレベータ群管理システムにエレベータシミュレータを実装し、ある交通需要において、ある可変パラメータによる制御を行った場合のエレベータパフォーマンスをシミュレーション(模擬実験)に基づいて予測する技術が例えば特許文献2において提案されている。この特許文献2には、利用者の感性による制御目標値の要求を受け付け、かかる要求に応じてエレベータの群管理制御を行うことについて記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−226425号公報(特願平1−47136号)
【特許文献2】
特開2000−318938号公報(特願平11−125978号)
【発明が解決しようとする課題】
従来のエレベータ群管理システムは、いずれも、上述のようにビル全体を考慮した平均的なエレベータパフォーマンスを向上することをエレベータ群管理制御方針としており、特定の出発階と特定の行先階との間、つまり特定のOD(Origin Destination)間のエレベータパフォーマンスを向上させるといった詳細な制御は困難である。現在のビル構成事情では、一社占有ビルというようなビル形態は減少しており、複数のテナントがビル内に入居するような複合型ビルが増加している。このような複合型ビル形態においては、ビル内のテナント等の入れ替え等が頻繁に発生する。この場合、ある時間帯のOD交通需要の変化や、時間帯毎の特定OD間でのエレベータ制御結果の変化が、一社占有ビルの場合に比べて頻繁に発生する。OD交通需要がめまぐるしく変化する場合、エレベータの制御目標を平均的に向上させることを目的とする従来のシステムでは、時間帯などに応じて特定OD間のパフォーマンスのみを向上させることは上述のように困難であることから、OD交通需要の変化に十分に対応しているとは言えない。この問題は、カゴ割り当て制御における可変パラメータの選択にニューラルネットワークを利用したり、可変パラメータをシミュレーションにより選択するといった上述の従来技術においても同様である。
【0007】
したがって、ビル全体の平均的なエレベータパフォーマンスの向上を目的とするのではなく、OD単位でエレベータパフォーマンスの制御目標を部分的に定めることができるエレベータ群管理システムの提供が望まれている。
【0008】
したがって本発明は、OD単位でエレベータ制御目標を設定可能であるとともに、OD単位で設定されたエレベータ制御目標に向けた群管理制御を実現するエレベータ群管理システム、方法、ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点に係るエレベータ群管理システムは、ビル内の任意階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し、エレベータカゴを割り当てる群管理制御を実行するエレベータ群管理システムにおいて、エレベータ制御目標は、出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて設定する設定手段を備えることを特徴とし、前記エレベータ制御目標を制御目標として前記群管理制御を実行することを特徴としたエレベータ群管理システムである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るエレベータ群管理システムの概略構成を示すブロック図である。同図に示すように本システムは、エレベータ制御目標2を操作者が設定する際のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を提供するエレベータ制御目標値設定部1を備える。また、エレベータ制御目標値設定部1により設定されたエレベータ制御目標2に向けたエレベータ群管理制御に適用される群管理アルゴリズムを決定する群管理アルゴリズム決定部3を備える。すなわち本システムは、各々が異なるエレベータパフォーマンス結果を与える複数の群管理アルゴリズムを予め備えている。各々の群管理アルゴリズムは群管理アルゴリズム識別子によって識別される。群管理アルゴリズム決定部3は後述する処理に従って、エレベータ制御目標2に向けたエレベータ群管理制御に適用される群管理アルゴリズムを一つ決定し、その識別子をエレベータ群管理部5に出力する。
【0012】
エレベータ群管理部5は、少なくとも2台以上のエレベータカゴ61を有するエレベータ6の群管理制御を実行する部分であり、当該ビル内の任意の階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し、群管理アルゴリズム決定部3により決定された群管理アルゴリズムを実行して最適なエレベータカゴを割り当てる。
【0013】
また本実施形態のシステムは、群管理アルゴリズム決定部3が群管理アルゴリズムを決定する際に必要とする情報を収集、記録するための構成要素として、OD交通需要検出部11と、エレベータ性能事例データ記憶部4と、エレベータ運行制御結果検出部10と、エレベータ性能事例データ集計部12とを備える。
【0014】
OD交通需要検出部11およびエレベータ運行制御結果検出部10は、エレベータ6に備えられたホール呼び検出部7、カゴ呼び検出部8、およびカゴ情報検出部9に接続されており、エレベータ6の運行時にこれらの検出部から必要な情報を取得する。
【0015】
以上の構成において、エレベータ6及びホール呼び検出部7、カゴ呼び検出部8、およびカゴ情報検出部9を除く構成要素は、コンピュータソフトウェア、またはコンピュータソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより実現することができる。これらの場合、エレベータ群管理のためのコンピュータとエレベータ6の実機との間は、制御に必要な電気信号を送受するための制御盤や通信インタフェースボードを介して接続される。
【0016】
本実施形態のエレベータ群管理システムにおいて実行される処理は、3つの処理ブロックに大別することができる。すなわち、OD単位でエレベータ制御目標の値を設定する処理ブロック1と、エレベータ性能事例データを収集し記録する処理ブロック2と、使用すべき群管理アルゴリズムを決定する処理ブロック3である。
【0017】
以下、これら3つの処理ブロックのそれぞれについて詳細に説明する。まず処理ブロック1では、OD単位でエレベータ制御目標2を設定する。
【0018】
図2はエレベータ制御目標値設定部のGUIの一例を示す図である。エレベータ制御目標値設定部1は、コンピュータのディスプレイにエレベータ制御目標2の設定画面F21を表示する。この設定画面F21からも分かるように、エレベータ制御目標2は、5行×5列の表形式を有する。この表は、行項目がエレベータの出発階床を表し、列項目がそのエレベータの行先階床を表すいわゆるOD(Origin Destination)表に相当する。すなわち、エレベータ制御目標2のデータ構造はOD表からなる。設定画面F21において、A階床からB階床への移動に対応する欄が選択されると、例えば別のウインドウとして画面F22が現われる。この画面F22によれば、A階床からB階床へ移動するエレベータの制御目標項目である「待ち時間」、「サービス時間」、「長待ち率」のそれぞれの設定状況をグラフにおいて確認することができる。
【0019】
なお、エレベータ制御目標2はエレベータ納入後にオンラインで変更したり、夜間やメンテナンス時等のエレベータ休止中にオフラインで設定変更することができる。また、エレベータ制御目標項目は、上記のみならず、「乗車時間」、「乗車人数」、「カゴ通過間隔時間」、「カゴ最大通過間隔時間」、「カゴ通過回数」の少なくともいずれかを含む。
【0020】
ここで、OD表について簡単に説明する。
交通流量の定量分析には、出発地を行とし、目的地を列とする配列表が用いられる場合がある。この配列表は一般にOD表と呼ばれる。OD表は、任意の出発地から任意の目的地へのトラフィックを特定でき、特定の期間、目的、あるいは他の分類に用いられる。n×m配列のOD表において、nは出発地の数、mは目的地の数に相当する。出発地と目的地の数が同一であるとき、n=mであり、正方のOD表となる。このようなOD表が本実施形態のエレベータ群管理に用いられる。上記出発地は出発階床に対応し、上記目的地は行先階床に対応する。
【0021】
本実施形態の説明において、エレベータ制御目標2のOD表等における「階床」、ならびにODを指定する際の「階床」とは、複数の特定階床を一つに纏めた階床の上位概念のことをいう。複数の特定階床は、異なる階床にまたがるレストラン街や、店子等に対応する場合もあり、階床の最小単位、つまり単一階床に対応する場合もある。なお、OD表における第1の階床に対応する特定階床と、OD表における第2の階床に対応する特定階床とは、重複しないものとする。
【0022】
また、複数の特定階床を一つに纏めて表す上位概念階床と、具体的な階床(すなわち単一の階床)とがOD表において混在してもよい。また、このようなOD表を用いて設定されるエレベータ制御目標項目は、上記「待ち時間」、「サービス時間」、ならびに「長待ち率」のみに限定されず、項目数も少なくとも1つ以上の任意である。OD表は、これらの値を出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて表す。
【0023】
(OD表の設定)
図3は、エレベータ制御目標の設定内容の一例を示す図である。エレベータ制御目標2は、複数のOD表からなる。各々のOD表は、異なる項目に対応している。一つのOD表、すなわち項目別エレベータ制御目標は、OD毎にその内容(OD制御目標)を設定することができる。図3に示すように、本実施形態では、「待ち時間」、「サービス時間」、「長待ち率」というエレベータ性能項目をエレベータ制御目標設定可能項目としており、それぞれの項目別エレベータ制御目標のOD制御目標値を設定可能である。
【0024】
(エレベータ制御目標の設定値)
図3に示すように、エレベータ制御目標項目「待ち時間」において、A階床からB階床へ移動する制御目標値は25と設定されている(単位はsec(秒))。これは、「A階床からB階床へ向かうエレベータ乗客の平均待ち時間は25secを目標とする。」という意味である。
【0025】
図4はOD制御目標の種類を示す図である。OD制御目標は、具体的な数値により設定することもできるし、数値範囲や条件とすることもできる。以下の説明では、これらを総称して「OD制御目標値」と称する。例えば、図4(a)に示すように、「A階床からB階床へ向かうエレベータ乗客の平均待ち時間は25sec以下であればよい」という設定や、図4(b)に示すように、「A階床からB階床へ向かうエレベータ乗客の平均待ち時間は25sec以上30sec以下」という設定、図4(c)に示すように、「A階床からB階床については任意の平均待ち時間でよい。」というような設定が可能である。また図4(d)に示すように、「A階床からB階床は25sec」、「B階床からC階床は30sec以上40sec以下」、「D階床からB階床は30sec以下」、「E階床からA階床は任意」という具合に、具体的な数値、数値範囲、条件を混在して設定されてもよい。このように一つのエレベータ制御目標項目について、OD毎に制御目標値が設定される。同様に、他のエレベータ制御目標項目ついてもOD制御目標値が設定される。このような設定及び変更等が完了すると、エレベータ制御目標2の記憶内容は更新される。なお、設定変更が行われなかった場合、以前の設定値が反映される。
【0026】
このようにエレベータ制御目標値設定部1によれば、エレベータ制御目標2をOD単位で細かく設定することができる。
【0027】
図3で示したようなエレベータ制御目標2をエレベータ6の制御目標とし、処理ブロック3は群管理アルゴリズムの決定を行う。処理ブロック3の群管理アルゴリズム決定方法については後に詳細に説明する。
【0028】
(エレベータ制御目標の合成)
次に、エレベータ制御目標が複数存在する場合について説明する。
【0029】
例えば8時から9時の間のエレベータ制御目標2が複数存在する場合など、エレベータ制御目標が同時に複数個存在する場合、エレベータ制御目標合成部(不図示)のOD制御目標値合成演算処理により、これらのエレベータ制御目標は一つのエレベータ制御目標に合成される。以下、その合成方法を説明する。
【0030】
(合成方法1)
OD制御目標値SとSをOD制御目標値合成演算処理を用いて、エレベータ制御目標合成値Sを以下に示す。
【数1】
Figure 2005067744
【0031】
以上のようにOD制御目標値合成演算処理を行うことで、同時に存在する複数のエレベータ制御目標を一つのエレベータ制御目標2に合成することができる。なお、3つ以上のエレベータ制御目標をエレベータ制御目標合成部により合成する場合には、順次に合成を行う。
【0032】
(合成方法2)
あるいは、エレベータ制御目標の設定が可能な管理者が複数存在し、それぞれが要求するエレベータ制御目標2が同時に複数個存在する場合、エレベータ制御目標を設定可能な管理者が各階床A,B,C,D,Eの各々の管理者である場合、各管理者が設定しても無意味なOD制御目標値に関しては、図5のようにマスキングなどを施すことにより設定できないようにする。
【0033】
例えば、A階床の管理者にとっては、B階床からC階床、D階床からB階床へ移動するエレベータ6の乗客に対するサービスは、直接関係がない。この場合、A階床を経由しないODに対する制御目標値を、A階床の管理者が設定できないようにする。
【0034】
一方、「A階床の管理者が設定したA階床からB階床へのOD制御目標値」と「B階床管理者が設定したA階床からB階床へのOD制御目標値」は、A階床管理者とB階床管理者の設定したOD制御目標値が重複設定となる。このような場合には、エレベータ制御目標合成部のOD制御目標値演算処理により、A階床からB階床へのエレベータ制御目標値の合成を行う。あるいは、時間帯ごとに管理者に優先順位を付与してもよい。例えば、ある時間帯においては階床管理者優先度をA,B,C,D,Eとする。そうすると、先に述べたA階床からB階床へ移動するOD制御目標値は、A階床管理者とB階床管理者の設定値が重なっているが、優先順位はA階床管理者の方が高い。この場合、A階床管理者が設定したエレベータ制御目標値が設定される。
【0035】
次に、処理ブロック2のエレベータ性能事例データの収集及び記録について説明する。
【0036】
本実施形態では、エレベータ6の運行状況を実測し、その実測結果に基づいてエレベータ制御結果を算出し、これをエレベータ性能事例データとして記録する。エレベータ性能事例データのデータ構造及び詳細については後に説明する。
【0037】
ホール呼び検出部7は、ビル内に発生したホール呼び情報を検出し、カゴ呼び検出部8はエレベータカゴ61で発生したカゴ呼び情報を検出し、カゴ情報検出部9は「カゴの荷重」、「カゴの進行方向」、「カゴの速度」、「カゴの位置」等のカゴ情報を検出する。
【0038】
OD交通需要検出部11は、ホール呼び検出部7、カゴ呼び検出部8、カゴ情報検出部9から受信したデータをもとに、当該ビル内のエレベータ6において実際に発生したOD交通需要を検出し、OD交通需要データを作成する。OD交通需要検出部11によるOD交通需要データの検出方法については、特公平7−106845号公報、特公平5−71513号公報、ならびに特公平1−15473号公報等の記載を参考にすることができる。
【0039】
エレベータ運行制御結果検出部10は、OD交通需要検出部11によりOD交通需要データが検出された間のエレベータの運行制御結果を検出し、少なくともエレベータ制御目標として設定可能なエレベータ制御項目について、OD単位のエレベータ制御結果を表すデータを作成する。このエレベータ制御結果データはエレベータ乗客へのサービス結果(実績)に相当するデータであり、「待ち時間」、「サービス時間」、「長待ち率」の値をOD単位で表すものである。
【0040】
OD単位でエレベータ制御結果を検出する方法としては、ホール呼び検出部7、カゴ呼び検出部8、カゴ情報検出部9により検出されたホール呼び情報、カゴ呼び情報、カゴ情報に基づいて検出することができる。例えばこれらの情報をエレベータ運行制御結果検出部10に送信し、
ホール呼び情報が表す「発生時間」と「発生階床」や、カゴ情報が表す「カゴ到着時間」、「ドア開時間」、「ドア閉時間」、「カゴ停止時間」、「カゴ荷重」、あるいはホール呼びから派生したカゴ呼びのカゴ呼び情報が表す「目的階床」に基づいて逐次的に乗客の「待ち時間」、「サービス時間」、「長待ち率」を算出する。これをOD単位で集計することにより、「OD単位エレベータ制御結果」を得ることができる。
【0041】
次に、エレベータ性能事例データについて説明する。エレベータ性能事例データ集計部12は、OD交通需要検出部11により取得された「OD交通需要データ」、エレベータ運行制御結果検出部10により取得された「OD単位エレベータ制御結果データ」、これらのデータが取得される間に適用された群管理アルゴリズムを識別するための「群管理アルゴリズム識別子」を、一つのデータセットとして集計する。このデータセットにデータセット番号を発番し、図6に示すような構造のデータをエレベータ性能事例データとして出力する。出力されたエレベータ性能事例データはエレベータ性能事例データ記憶部4に記憶される。尚、データセット番号は、エレベータ性能事例データ記憶部4へ記録する際に、エレベータ性能事例データ記憶部4により発番される。
【0042】
このように、エレベータ性能事例データが収集される毎にエレベータ性能事例データ記憶部4は図6のようなデータ構造のエレベータ性能事例データを記録していく。
【0043】
以上のように、エレベータ運行制御結果検出部10は、エレベータ乗客へのエレベータ制御結果をOD単位で検出し、このエレベータ制御結果を図6に示すOD単位エレベータ制御結果データフィールドに格納し、加えて「OD交通需要データ」、「群管理アルゴリズム識別子データ」をそれぞれのデータフィールドに格納し、エレベータ性能事例データを作成し、エレベータ性能事例データ記憶部4へ記憶する。
【0044】
図7は、以上説明したエレベータ性能事例データの収集から記録までの一連の処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
先ず、(B21−1)において、OD交通需要検出部11によるOD交通需要データ検出中のエレベータ制御結果が、エレベータ運行制御結果検出部10によりOD単位で取得される。
【0046】
次に、(B21−2)では、OD交通需要検出部11による検出の終了判定が行われる。検出終了の場合は(B21−3)および(B21−5)に処理が移行する。終了してない場合には(B21−1)に戻り、OD単位でのエレベータ制御結果の取得を継続する。
【0047】
(B21−3)では、OD交通需要検出部11により検出されたOD交通需要データが取得され、(B21−4)ではそのOD交通需要データがエレベータ性能事例データ集計部12に送信される。
【0048】
一方、(B21−5)では、エレベータ運行制御結果検出部10によりOD単位で検出されたエレベータ制御結果データがエレベータ性能事例データ集計部12に送信される。
【0049】
次に、(B21−6)では、OD交通需要検出部11からの「OD交通需要データ」と、エレベータ運行制御結果検出部10からの「OD単位エレベータ制御結果データ」、ならびにOD交通需要データが検出された間にエレベータ群管理部5により使用された群管理アルゴリズムを識別するための「群管理アルゴリズム識別子」とを一つのデータセットとするエレベータ性能事例データがエレベータ性能事例データ集計部12により作成される。作成されたエレベータ性能事例データは、(B21−7)においてエレベータ性能事例データ記憶部4に送信される。
【0050】
最後に、(B21−8)では、エレベータ性能事例データ集計部12により作成されたエレベータ性能事例データがエレベータ性能事例データ記憶部4に書き込まれ、記憶される。
【0051】
最後に、処理ブロック3における群管理アルゴリズムの決定方法について説明する。ビルエレベータ6で使用される群管理アルゴリズムは、群管理アルゴリズム決定部3により決定される。図8は、この群管理アルゴリズム決定部3による群管理アルゴリズム決定の処理を示す概念図である。
【0052】
上述したように、エレベータ群管理部5は、ホール呼びが発生した階床にどのエレベータカゴ61を割り当てるかを群管理アルゴリズムに従って決定する。この際に用いられる群管理アルゴリズムを、群管理アルゴリズム決定部3はエレベータ群管理部5に実装されている複数の群管理アルゴリズムのなかからいずれかに決定する。以下その方法について説明する。
【0053】
(検索キーである交通需要データの検出)
まず、ビル内に発生しているOD交通需要を検出する。これには処理ブロック2で説明したOD交通需要検出部11が用いられる。検出されたOD交通需要データは群管理アルゴリズム決定部3に送信される。このOD交通需要データは、エレベータ性能事例データ記憶部4へのデータ検索の際の検索キーの一部として用いられる。
【0054】
(検索キーであるエレベータ制御目標の送信)
また、処理ブロック1で説明したエレベータ制御目標2も群管理アルゴリズム決定部3に送信される。このエレベータ制御目標2は、エレベータ性能事例データ記憶部4へのデータ検索の際の検索キーの他の部として用いられる。
【0055】
(参照方法と群管理アルゴリズム決定までの概要)
図9は、群管理アルゴリズム決定部による群管理アルゴリズムの決定方法を説明するための図である。
【0056】
群管理アルゴリズム決定部3は「OD交通需要データ」、「エレベータ制御目標」の2つのデータを検索キーとし、この検索キーにマッチするデータをエレベータ性能事例データ記憶部4から検索する。つまり、検出されたOD交通需要データが表す現時点でのOD交通需要の状況において、エレベータ制御目標を達成するエレベータ群管理制御の実行可能性が、運行事例(実績)に基づいて確認されている群管理アルゴリズムを検索する。図9に示すように、検索キー内のOD交通需要データと、エレベータ性能事例データのデータセット内のOD交通需要データフィールドは両者を比較可能であり、また検索キー内のエレベータ制御目標とエレベータ性能事例データのデータセット内のOD単位エレベータ制御結果データフィールドは両者を比較可能である。
【0057】
具体的には、まず、群管理アルゴリズム決定部3は、エレベータ性能事例データ記憶部4を参照し、検索キーとエレベータ性能事例データ記憶部4に記憶されているエレベータ性能事例データとの比較を行う。つまり、「OD交通需要データ」とエレベータ性能事例データiの「OD交通需要データフィールド」に格納されているOD交通需要データとを比較し、「エレベータ制御目標」とエレベータ性能事例データiの「OD単位エレベータ制御結果データフィールド」に格納されているOD単位エレベータ制御結果データとの事例類似度演算を行う。
【0058】
エレベータ性能事例データ記憶部4に記憶されている各エレベータ性能事例データついて事例類似度演算を実行し、最も類似度の高い「OD交通需要データフィールド」と「OD単位エレベータ制御結果データフィールド」を持つエレベータ性能事例データ番号を検索する。
【0059】
次に、最も類似度の高いエレベータ性能事例データ番号の「群管理アルゴリズム識別子データフィールド」に格納されている「群管理アルゴリズム識別子」を取得し、これをエレベータ群管理部5に送信する。
【0060】
エレベータ群管理部5ではこの群管理アルゴリズム識別子に対応する群管理アルゴリズムを使用して、エレベータカゴ割り当て演算を実行する。
【0061】
図10は、群管理アルゴリズムの決定から群管理制御の実行までの一連の処理手順を示すフローチャートである。
【0062】
最初に、(B31−1)処理では、OD交通需要検出部11によりビル内のOD交通需要データが検出される。一方、(B31−2)処理では、処理ブロック1で示したエレベータ制御目標が設定される。
【0063】
次に、(B31−1)で検出されたOD交通需要データと、(B31−2)で設定されたエレベータ制御目標データを用いて事例類似度演算処理が行われる。ここでは、まず(B31−3)においてOD交通需要同士、つまり(B31−1)で検出されたOD交通需要データと、エレベータ性能事例データ記憶部4に記憶されているエレベータ性能事例データのOD交通需要データフィールドに格納されているOD交通需要データ(以後、混同を避けるため「OD交通事例データ」という)との交通需要類似度演算処理が実行される。
【0064】
(B31−3)における交通需要類似度演算処理によりエレベータ制御結果データが絞り込まれる。このデータについて、(B31−4)では、(B31−2)で設定されているエレベータ制御目標データとの性能類似度演算処理が実行される。
【0065】
そして、(B31−4)により得られた事例類似度演算処理結果から、最も類似したエレベータ性能事例データの群管理アルゴリズム識別子データフィールドに格納されている群管理アルゴリズム識別子が(B31−5)において選択され、(B31−6)では選択された群管理アルゴリズム識別子がエレベータ群管理部5に送信される。
【0066】
最後に、(B31−7)では、(B31−6)で送信された群管理アルゴリズム識別子に対応する群管理アルゴリズムを用いてエレベータ群管理部5がエレベータ群管理制御を実行する。
【0067】
(事例類似度演算方法の説明)
ここで、上記(B31−3)及び(B31−4)の事例類似度演算方法について詳細に説明する。なお、「OD交通需要要素データ」とは、OD交通需要データを形成する要素データであり、i階からj階への交通需要を示すデータである。「OD交通事例要素データ」とは、エレベータ性能事例データのOD交通需要データフィールドに格納されているOD交通需要データ(以下、混同を避けるため「OD交通事例データ」と称する)を形成する要素データであり、i階からj階へのOD交通需要の事例を示すデータである。「エレベータ制御目標要素データ」とは、エレベータ制御目標を形成する要素データであり、エレベータ制御目標設定可能項目Tにおけるi階からj階への制御目標値を示すデータである。「エレベータ制御結果要素データ」とは、エレベータ性能事例データの「OD単位エレベータ制御結果データフィールド」に格納されている「エレベータ制御結果データ」を形成する要素データであり、エレベータ性能項目Tにおけるi階からj階へのエレベータ制御結果を示すデータである。
【0068】
(1)事例類似度演算アルゴリズム1
(i)最初に、検索キーの一つである「OD交通需要データ」と、エレベータ性能事例データ記憶部4に記憶されているm個のエレベータ性能事例データの「OD交通需要データフィールド」に格納されている「OD交通事例データ」との交通需要類似度演算処理を例えば以下のように行う。
【0069】
(交通需要類似度演算処理)
(1):「OD交通需要データ」と「OD交通事例データ」について、同一OD間の各データの距離、すなわち|OD交通需要要素データ − OD交通事例要素データ|を計算する。例えば、同一OD間である1階から2階について、OD交通需要データの1階から2階の交通需要を示すデータ値と、OD交通事例データの1階から2階のOD事例を示すデータ値との距離を計算する。
(2):(1)の処理をすべてのOD間について行い、その総和(マンハッタン距離)もしくは2乗和を求める。
(3):すべてのOD交通事例データについて(2)を行い、総和(マンハッタン距離;もしくは2乗和)の小さいものからn個を選択する。これにより、対応するn個のエレベータ性能事例データが選択される。
【0070】
(ii)次に、選択されたn個のエレベータ性能事例データの各々の「OD単位エレベータ制御結果データフィールド」に格納されている「エレベータ制御結果データ」と、もう一つの検索キーである「エレベータ制御目標データ」との性能類似度演算処理を例えば以下のように行う。
【0071】
(性能類似度演算処理)
(4):「エレベータ制御目標データ」と「エレベータ制御結果データ」とについて、同一項目、同一OD間の類似度を計算する。ここでの類似度の計算方法は後述する。例えば、同一OD間である1階から2階について、「エレベータ制御目標データ」の項目「待ち時間」の1階から2階への制御目標を示すデータ値と、「エレベータ制御結果データ」の項目「待ち時間」の1階から2階へのサービス結果を示すデータ値との類似度を計算する。
(5):(4)の処理をすべての項目とそのOD間について行い、類似度の総和を求める。
(6):(5)の処理を、(3)で選択されたn個のエレベータ性能事例データのエレベータ制御結果データについて行い、最も類似しているのエレベータ性能事例データを選択する。
【0072】
(iii)最後に、上記処理(6)で選択されたエレベータ性能事例データの「群管理アルゴリズム識別子データフィールド」に格納されている群管理アルゴリズム識別子をエレベータ群管理部5に送信する。
【0073】
エレベータ群管理部5は、送信された群管理アルゴリズム識別子に対応する群管理アルゴリズムを用いてエレベータの群管理制御を実行する。
【0074】
(性能類似度演算の具体例)
次に、図11を参照しながら、性能類似度演算のさらなる具体例を説明する。上述したように、エレベータ制御目標の設定方法には幾つかのパターンがある。
【0075】
図11には、いずれもOD単位のテーブルで表現されたエレベータ制御目標とエレベータ制御結果データフィールドの一例が示されている。OD毎に両者の値を比較することにより性能類似度を計算する。ここで、i(=1,2,3)を出発階とし、j(=1,2,3)を行先階とする。またエレベータ制御目標に設定された値をGi,jとし、OD単位エレベータ制御結果データフィールドに格納されているデータ値をSi,jとし、OD単位の類似度をFi,jとする。このとき、性能類似度の値は次式に示される演算により算出することができる。
【数2】
Figure 2005067744
【0076】
(エレベータ制御目標の設定パターン1)
あるODのエレベータ制御目標が一つの値により設定される場合(例えば25sec等)、このODの類似度は次のように計算される。
【数3】
Figure 2005067744
【0077】
図11において、i=1,j=2のとき、エレベータ制御目標の設定値はG1,2=25となっている。これは、「1階から2階へエレベータの制御目標は25secである。」という意味であり、i=1,j=2のときの類似度の値は上式からF1,2=|25−35|=10となり、i=3,j=2のときはF3,2=|20−30|=10となる。
【0078】
(エレベータ制御目標の設定パターン2)
あるODのエレベータ制御目標が上限値を有する範囲によって設定される場合(例えば35sec以下等)、このODの類似度は次のように計算される。
【数4】
Figure 2005067744
【0079】
図11によると、i=1,j=3のとき、エレベータ制御目標の設定値はG1,3≦30となっている。これは、「1階から3階へのエレベータの制御目標は30sec以下であればよい。」と言う意味であり、i=1,j=3のときの類似度は上式からF1,3=0となる。
【0080】
なお、OD単位エレベータ制御結果データフィールドに格納されている値がエレベータ制御目標で設定された閾値以下の場合に上記のように類似度は0であるが、この閾値よりも大きい場合、例えば、S1,3=40とすると、類似度は、上式からF1,3=|30−40|=10であり、閾値との差を類似度とする。
【0081】
(エレベータ制御目標の設定パターン3)
あるODのエレベータ制御目標が下限値と上限値とを有する範囲によって設定される場合(例えば30sec以上40sec以下等)、このODの類似度は次のように計算される。
【数5】
Figure 2005067744
【0082】
図11によると、i=2,j=3のとき、エレベータ制御目標の設定値は30≦G2,3≦40となっている。これは「2階から3階へのエレベータの制御目標は30sec以上40sec以下であればよい。」と言う意味であり、i=2,j=3のときの類似度は、上式からF2,3=0となる。
【0083】
なお、OD単位エレベータ制御結果データフィールドに格納されている値がエレベータ制御目標で設定された値の範囲外である場合、例えば、S2,3=25のとき、類似度F2,3=|30−25|=5となり、S2,3=45のとき、F2,3=|40−45|=5となる。
【0084】
(エレベータ制御目標の設定パターン4)
あるODのエレベータ制御目標が任意に設定される場合、このODの類似度は次のように計算される。
【数6】
Figure 2005067744
【0085】
図11によると、i=3,j=1のとき、エレベータ制御目標の設定値はG2,3=∀となっている。これは「3階から1階へのエレベータの制御目標は任意である。」と言う意味であり、i=3,j=1のときの類似度は無条件でF3,1=0となる。
【0086】
したがって、図11の例における性能類似度の値はF1,2+F1,3+F2,1+F2,3+F3,1+F3,2=30と算出される。なお、このように算出された性能類似度の値がより小さいほど、OD単位で設定されたエレベータ制御目標は、OD単位エレベータ制御結果データに類似しているとする。以後、性能類似度演算は、以上説明した演算方法により行うものとする。
【0087】
以上説明したように、群管理アルゴリズム決定部3は、複数のエレベータ制御目標がエレベータ制御目標合成処理により一つに合成された場合、あるいは最初から一つしか設定されていなかった場合について、群管理アルゴリズムを決定することができる。
【0088】
(エレベータ制御目標が複数の場合の性能類似度演算)
次に、処理ブロック1で設定されたエレベータ制御目標が同時に複数存在し、エレベータ制御目標合成処理を行わずに、複数のエレベータ制御目標を全て満たす群管理アルゴリズムを決定する方法について説明する。
【0089】
(性能類似度演算)
(0):交通需要類似度演算により性能類似度演算の対象となるエレベータ性能事例データが決定される。
(1):各エレベータ制御目標同士の距離を計算する。
(2):最大距離をmaxR とし、L=maxR/2とする。
(3):各エレベータ制御目標を中心とし、中心からの距離がL以下の空間にある対象エレベータ性能事例データの「エレベータ制御結果データフィールド」に格納されているエレベータ制御結果データの集合を
(i=1〜num:但しnumはエレベータ制御目標の設定数)とし、エレベータ制御目標毎にAを求める。
(4):空間A∩A∩…∩Anumにエレベータ制御結果データが存在すれば、このエレベータ制御結果データを持つエレベータ性能事例データを選択し、終了する。
(ア)空間A∩A∩…∩Anumに複数のエレベータ制御結果データが存在する場合、各エレベータ制御目標から距離の和が最小のエレベータ制御結果データを持つエレベータ性能事例データを選択し、終了する。
(5):存在しなければ、L=L+ε(但しε>0)として(3)に戻る。
【0090】
以上説明したように、処理ブロック1から処理ブロック3までの一連の処理により、OD単位で設定されたエレベータ制御目標に向けた群管理アルゴリズムを決定することができ、決定された群管理アルゴリズムによる群管理制御を実行することができる。
【0091】
したがって、本実施形態によれば、特に、ビル全体というマクロレベルでのエレベータの乗客運搬パフォーマンスの向上に着目するのではなく、OD単位のエレベータ乗客運搬パフォーマンスといった、よりミクロレベルな視点に着目し、木目細かなエレベータ制御パフォーマンスの向上が実現できる。また、同じ適用時間帯に複数のエレベータ制御目標を設定することもできる。
【0092】
具体的には、ビル内既発生の「OD交通需要」、「そのOD交通需要におけるエレベータのOD毎サービス結果」、「その時に使用された群管理アルゴリズム」とを一つのデータセットとしてデータベース化される(エレベータ性能事例データ記憶部4)。
【0093】
群管理アルゴリズム決定部3による群管理アルゴリズムのスイッチング時には、設定された「エレベータ制御目標」と「その時のビル内OD需要」を検索キーとして上記データベースを参照し、データベースに格納されている「エレベータのOD毎サービス結果」から、「エレベータ制御目標」を満足するエレベータ群管理制御の実行可能性が確認できている群管理アルゴリズムを実際のエレベータ群管理制御に使用することができる。
【0094】
これにより、OD単位で設定されたエレベータ制御目標を満足するよう群管理アルゴリズムを切り替えながらエレベータ群管理制御を実施することが可能になる。また、ビル全体のエレベータ運行のパフォーマンスを平均的に向上させるのではなく、OD単位でエレベータパフォーマンスを向上させることで、従来のエレベータ群管理システムと比較すると、より木目細かなエレベータ群管理制御を実現することができる。
【0095】
以下、第1実施形態の種々の変形例を説明する。
【0096】
(変形例1)
第1実施形態の変形例1は、エレベータモデルの出力結果を利用し、エレベータ性能事例データを作成するというものである。処理ブロック2で示したエレベータ運行制御結果検出部10をエレベータモデルに置換える。このエレベータモデルによりエレベータ運行模擬実験を行った結果をOD単位エレベータ制御結果データフォールドに格納し、エレベータ性能事例データ記憶部4へ記憶する。
【0097】
このとき、エレベータモデルとしては「エレベータシミュレータ」、「エレベータニューラルネットワークモデル」、「エレベータファジィモデル」等が考えられるが、エレベータ模擬実験出力としては少なくともエレベータ制御目標の設定可能なエレベータ性能項目を含み、これをOD単位でエレベータ制御結果を出力する。
【0098】
エレベータモデルとして「エレベータニューラルネットワークモデル」を使用する場合には、特開平2−226425号公報(特願平1−47136号)に記載されているニューラルネットワークを用いたエレベータパフォーマンスの予測方法を応用することができる。群管理アルゴリズム毎にパフォーマンス予測ニューラルネットを設け、入力層にOD交通需要データを入力し、出力層からOD単位でエレベータパフォーマンスを出力させる。この出力結果をOD単位エレベータ制御結果としてエレベータ性能事例データのOD単位エレベータ制御結果データフィールドに格納する。入力したOD交通需要データはOD交通需要データフィールドに格納する。また、使用したパフォーマンス予測ニューラルネットに対応する群管理アルゴリズムの識別子を群管理アルゴリズム識別子データフィールドに各々格納する。
【0099】
また、エレベータモデルとして、「エレベータファジィモデル」を使用する場合には、群管理アルゴリズム毎にパフォーマンス推論ファジィルールを設け、ファジィルールの前件部にOD交通需要データ、後件部にそのときのエレベータパフォーマンスをOD単位で推論するようなファジィルールを設計する。このファジィルールに従うエレベータパフォーマンスの推論結果をOD単位エレベータ制御結果とし、エレベータ性能事例データのOD単位エレベータ制御結果データフィールドに格納する。前件部に入力したOD交通需要データはOD交通需要データフィールドに格納する。使用したパフォーマンス推論ファジィルールに対応する群管理アルゴリズムの識別子は群管理アルゴリズム識別子データフィールドに各々格納する。
【0100】
ここで、「エレベータシミュレータ」をエレベータモデルとした使用した例を詳細に説明する。なお、エレベータシミュレータはC,C++などの高級言語でコーディングされ、エレベータ運行模擬実験を詳細に行うことができる。なお、詳細なエレベータ模擬実験を行うために、実機のエレベータ群管理部が実装している群管理アルゴリズムやエレベータ仕様が、エレベータモデルにも実装されている必要があることは言うまでもない。
【0101】
図12は、第1実施形態の変形例に係り、エレベータモデルを利用してエレベータ性能事例データを作成するよう構成されたエレベータ群管理システムの概略構成を示すブロック図である。この構成は、逐次的にエレベータ模擬実験を行ってエレベータ性能事例データを作成するためのものである。
【0102】
エレベータモデル部20には、本実施形態に係る群管理システムが稼動しているビルの仕様(ロビー階床、階床数、階高等)と、エレベータの仕様(カゴ台数、カゴ速度、乗車可能人数等)と、どの群管理アルゴリズムを使用したエレベータ模擬実験を行うかを示す群管理アルゴリズム識別子情報が入力されている。
【0103】
エレベータモデル部20は、OD交通需要検出部11により検出されたOD交通需要データを入力し、これを、エレベータモデル部20で模擬発生させるエレベータ乗客の行先階、到着階の発生確率として利用する。また、OD交通需要データから乗客発生間隔を算出し、ビル内に発生する乗客はポアソン到着とすることで、「何時(発生時間)、どの階(到着階床)に発生し、それらの乗客の目的階は(カゴ呼び階)はどの階である」という属性を持ったエレベータ乗客群をビル内に擬似的に発生させることができる。
【0104】
次に、エレベータモデル部20に模擬実験で使用する群管理アルゴリズムをセットし、ビル内に擬似的に発生した乗客群に対して、セットした群管理アルゴリズムを使用した場合のエレベータ運行模擬実験を行い、乗客のエレベータ制御結果をOD単位で測定する。
【0105】
ここでエレベータ模擬実験結果としては、処理ブロック1で説明したエレベータ制御目標の設定可能なエレベータ性能項目のサービス結果をOD単位で収集することは言うまでもない。
【0106】
最後に、エレベータ運行制御結果検出部10を用いた場合と同様に、図13に示すようなデータ構造のエレベータ性能事例データをエレベータ性能事例データ記憶部4に記憶する。
【0107】
これらの処理を実装されている群管理アルゴリズムすべてについて繰り返し、群管理アルゴリズムすべてについて模擬実験が終了すると、エレベータモデル部20による模擬実験処理を終了する。
【0108】
図14に本実施形態で示したエレベータモデル部20を用いた場合のフローチャートを示す。
【0109】
(B22−1)では、OD交通需要検出部11によりOD交通需要データが検出されたかどうかを判定し、検出されていなければ(B22−1)により検出されるまで判定処理を繰り返す。
【0110】
(B22−1)でOD交通需要データが検出されたことが判定されると、(B22−2)では、検出されたOD交通需要データを取得し、(B22−3)では検出されたOD交通需要データをエレベータモデル部20へ入力する。
【0111】
(B22−4)では、エレベータモデル部20により実行された模擬実験で、実装されている群管理アルゴリズムすべてについてエレベータ模擬実験処理が終了したかどうかを判定し、すべての群管理アルゴリズムについてエレベータ模擬実験が終了していれば、(B22−11)の処理に進み、エレベータモデル部20よるエレベータ模擬実験処理を終了する。未実行の群管理アルゴリズムがあれば(B22−5)に進み、未実行の群管理アルゴリズムをエレベータモデル部20にセットし、(B22−6)でエレベータ模擬実験を実行する。
【0112】
エレベータ模擬実験処理が終了すると、(B22−7)によりエレベータ模擬実験結果データをOD単位で収集し、(B22−8)でエレベータ性能事例データが作成され、(B22−9)ではエレベータ性能事例データのデータ番号が発番される。
【0113】
最後に、(B22−10)によりエレベータ性能データをエレベータ性能事例データ記憶部4へ記憶する。
【0114】
以上説明したように、エレベータモデル部20を用いることによって、エレベータ性能事例データを擬似的に収集することもできる。
【0115】
(変形例2)
第1実施形態の変形例2は、エレベータ性能事例データ記憶部4内の交通需要データのクラスタリングに関するものである。エレベータ性能事例データ記憶部4に交通需要クラスタリング部(不図示)を追加し、OD交通需要データフィールドに格納されているOD交通需要データについてクラスタリングを実行する。
これにより、処理ブロック3での群管理アルゴリズム決定部3の事例類似度演算処理を簡略化することが可能になる。ここで、交通需要クラスタリング部によるOD交通需要データのクラスタリングには、K−means法などの既存のクラスタリング手法を用いることができる。
【0116】
OD交通需要クラスタリングを実施する場合の群管理アルゴリズム決定方法は次の通りである。エレベータ性能事例データ記憶部4において、交通需要データのクラスタリングを行われている場合の群管理アルゴリズム決定部3による群管理アルゴリズム決定方法としては、まず、群管理アルゴリズム決定部3が事例類似度演算処理を行うとき、群管理アルゴリズム決定部3に入力された「OD交通需要データ」がエレベータ性能事例データ記憶部4内のいずれのOD交通需要クラスタに属するかを判定する。どのOD交通需要クラスタにも属さない場合には、各クラスタの重心と「OD交通需要データ」との距離を計算し、最小距離の重心のクラスタに属するとする。
【0117】
次に、OD交通需要データが属するOD交通需要クラスタ内のエレベータ性能事例データのOD単位エレベータ制御結果データフィールドと、エレベータ制御目標値とのマンハッタン距離を計算し、最近傍のエレベータ性能事例データフィールドを持つエレベータ性能事例データ番号を探索する。
【0118】
次に、探索結果からこのエレベータ性能事例データ番号の「群管理アルゴリズム識別子データフィールド」に格納されている「群管理アルゴリズム識別子」を取得し、これをエレベータ群管理部5に送信する。
【0119】
以上説明したように、OD交通需要データのクラスタリングにより群管理アルゴリズム決定の処理を高速化することができる。
【0120】
(変形例3)
第1実施形態の変形例3は、図10のフローチャートに示した事例類似度演算処理の変形例に係わる。この演算処理は次のように構成されている。
【0121】
(2)事例類似度演算アルゴリズム2
(i)最初に、検索キーの一つである「OD交通需要データ」と、エレベータ性能事例データ記憶部4に記憶されているm個のエレベータ性能事例データの「OD交通需要データフィールド」に格納されている「OD交通需要データ」(ここでは、OD交通事例データとする)との交通需要類似度演算処理を行う。
【0122】
(交通需要類似度演算2)
(1):「OD交通需要データ」と「OD交通事例データ」とについて、同一OD間の要素データでOD交通需要要素データ値≦|OD事例要素データ値|…式(a)が全てのOD間の要素データ同士で成り立つ。
(2):(1)を全てのエレベータ性能事例データについて行う。
(3):(1)が成り立つOD交通事例データがあるとき終了し、(1)が成り立つ「OD交通事例データ」を持つエレベータ性能事例データを全て選択する。
(4):(1)が成り立つOD交通事例データがないとき、全てのエレベータ性能事例データの「OD交通事例データ」の各OD事例要素データについて+αとし、式(a)の範囲を広げ、(1)の処理に戻る。
【0123】
(ii)ここで、式(a)が成り立つ「OD交通事例データ」がn個存在する場合、このn個の各エレベータ性能事例データが持つ、「OD単位エレベータ制御結果データフィールド」に格納されている「エレベータ制御結果データ」と、もう一つの検索キーである「エレベータ制御目標データ」との性能類似度演算処理を例えば以下のように行う。
【0124】
(性能類似度演算2)
(5):「エレベータ制御目標データ」と「エレベータ制御結果データ」とで、同一項目、同一OD間の類似度を計算する。
(6):(5)の処理をすべての項目とそのOD間について行い、類似度の総和を求める。
(7):(6)の処理を、(3)で選択されたn個のエレベータ性能事例データのエレベータ制御結果データについて行い、最も類似しているのエレベータ性能事例データを選択する。
あるいは、性能類似度演算処理を以下のように行ってもよい。
【0125】
(性能類似度演算処理2−2)
(5):「エレベータ制御目標データ」と「エレベータ制御結果データ」とについて、同一項目、同一OD間の要素データ同士でエレベータ制御目標要素データ≦|エレベータ制御結果要素データ|…式(b)が全ての項目とそのOD間同士で成り立つ。なお、同一項目の同一OD間で、エレベータ制御目標要素データ値がエレベータサース結果要素データ値に含まれる。
(6):(5)を(3)で選択されたエレベータ性能事例データ全てについて行う。
(7):(5)が成り立つエレベータ制御結果データが存在するとき、終了する。
(ア):(5)が成り立つエレベータ制御結果データが複数個ある。
【0126】
「エレベータ制御目標データ」と、(5)が成り立つ「エレベータ制御結果データ」とで類似度を計算し、最も類似しているエレベータ制御結果データを持つエレベータ性能事例データを選択する。
(イ):(1)が成り立つエレベータ制御結果データが一つである。
このエレベータ制御結果データを持つエレベータ性能事例データを選択する。
(8):(5)が成り立つエレベータ制御結果データが存在しないとき、(3)で選択された「エレベータ性能事例データ」の各エレベータ制御結果要素データについて+αとして式(b)の範囲を広げ、(5)に戻る。
【0127】
(iii)最後に、(7)で選択されたエレベータ性能事例データの「群管理アルゴリズム識別子データフィールド」に格納されている群管理アルゴリズム識別子をエレベータ群管理部5に送信する。
【0128】
(変形例4)
第1実施形態の変形例4についても、図10のフローチャートに示した事例類似度演算処理の変形例に係わる。この演算処理は次のように構成されている。
(3)事例類似度演算アルゴリズム3
(1):「OD交通需要データ」と「OD交通事例データ」とについて、同一OD間の各要素データ同士で、OD交通需要要素データ値≦|OD事例要素データ|…式(c)が全てのOD間について成り立つ。
(2):(1)を各エレベータ性能事例データについて行う。
(3):(1)が各エレベータ性能事例データについて成り立たないとき、
OD交通事例データの各要素データについて+αとし、式(c)の成立範囲を広げ、(1)へ戻る。
(4):(1)が成り立つエレベータ性能事例データが存在するとき、
成り立つ「OD交通需要データ」を持つ全てのエレベータ性能事例データを選択する。
(5):「エレベータ制御目標データ」と「エレベータ制御結果データ」とで
同一項目、同一OD間の各要素データ同士で
エレベータ制御目標要素データ≦|エレベータ制御結果要素データ|…式(d)
が全項目における全OD間について成り立つ。
(6):(5)を各エレベータ性能事例データについて行う。
(7):(5)が各エレベータ性能事例データについて成り立たないとき、エレベータ制御結果データの各要素データについて+βとし、式(d)の成立範囲を広げ、(5)へ戻る。
(8):(5)が成り立つエレベータ性能事例データが存在するとき、成り立つ「エレベータ制御結果データ」を持つ全てのエレベータ性能事例データを選択する。
(9):(4)と(8)で選択したエレベータ性能事例データが一致する。
(10):一致しない場合には、(1)へ戻る。
(11):一致する場合
(ア):一致するエレベータ性能事例データが複数個ある。
性能類似度演算1を利用して距離を計算し、最小距離のエレベータ性能事例データを選択し、終了する。
(イ):一致するエレベータ性能事例データは一つである。
このエレベータ性能事例データを最終的に選択し、終了する。
【0129】
iii)最後に、(11)で選択されたエレベータ性能事例データの「群管理アルゴリズム識別子データフィールド」に格納されている群管理アルゴリズム識別子をエレベータ群管理部5に送信する。
【0130】
以上のような事例類似度演算処理により群管理アルゴリズムを決定する方法もある。
【0131】
尚、以上説明した群管理アルゴリズムの決定方法はあくまで一例であり、さらに変形可能である。例えば、交通需要類似度演算処理を行った後に性能類似度演算処理を実行して群管理アルゴリズムを決定するものとして説明したが、性能類似度演算処理の実行後に交通需要類似度演算処理を行っても構わない。
【0132】
(変形例5)
第1実施形態の変形例5は、類似度演算処理におけるOD単位の性能類似度演算計算式(2)に関するものである。
【0133】
これは数2を以下のように変形させ、各OD単位ついて重みwi,jを付加し、重要OD間の類似度計算結果を重要視した性能類似度計算を可能にしたものである。
【0134】
図11を例にとり説明すると、出発階i(=1,2,3)、到着階j(=1,2,3)とし、エレベータ制御目標とOD単位エレベータ制御結果データフィールドとの類似度をFi,j、各OD単位の重みをwi,jとした場合、本変形例5の計算式は、
【数7】
Figure 2005067744
【0135】
となり、重みwi,jを調整することで重要なOD間の類似度を重要視することができる。
【0136】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態はリアルタイムシミュレーションによる群管理アルゴリズムの決定に関する。第1実施形態はエレベータ性能事例データ記憶部4に蓄積されたエレベータ性能事例データに基づいて、いずれかの群管理アルゴリズムを決定するよう構成されるものとして説明した。これに対し第2実施形態は蓄積されたエレベータ性能事例データに依らず、エレベータ制御結果をリアルタイムの模擬実験(シミュレーション)により予測し、最もエレベータ制御目標に近いエレベータサービスを実行可能ないずれかの群管理アルゴリズムを決定するよう構成される。このような第2実施形態は、OD交通需要データが検出される毎に、エレベータモデル部20がエレベータ性能事例データを模擬実験により生成する第1実施形態の変形例1を応用したものである。
【0137】
図15は本発明の第2実施形態に係るエレベータ群管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【0138】
まず、エレベータ6において発生したOD交通需要データをOD交通需要検出部11が検出する。その検出方法は第1実施形態で述べた方法と同様でよい。
【0139】
次に、OD交通需要検出部11でOD交通需要データが検出されると、検出されたOD交通需要データをエレベータモデル部200に送信し、エレベータモデル部200ではOD交通需要データを受信するとエレベータ模擬実験を行う。
【0140】
エレベータモデル部200は、図16に示すように、エレベータ群管理システムが稼動するビル仕様(ロビー階床、階床数、階高等)、エレベータ仕様(カゴ台数、カゴ速度、乗車可能人数等)のエレベータ仕様情報、どの群管理アルゴリズムを使用したエレベータ模擬実験を行うかを示す群管理アルゴリズム識別子方法が入力されている。
【0141】
検出されたOD交通需要データはエレベータ模擬実験への入力とし、エレベータモデル部200が模擬発生させるエレベータ乗客の行先階、到着階の発生確率として利用する。また、OD交通需要データから乗客発生間隔を算出し、ビル内に発生する乗客はポアソン到着とすることで、「何時(発生時間)、どの階(到着階床)に発生し、それらの乗客の目的階は(カゴ呼び階)はどの階である」という属性を持ったエレベータ乗客群をビル内に擬似的に発生させることができる。
【0142】
次に、模擬実験で使用する群管理アルゴリズムをエレベータモデル部200にセットし、ビル内に擬似的に発生した乗客群に対して、セットした群管理アルゴリズムを使用した場合のエレベータ運行模擬実験を行い、乗客のエレベータ制御結果をOD単位で測定する。
【0143】
ここで模擬実験結果としては、処理ブロック1で説明したエレベータ制御目標の設定可能なエレベータ性能項目のサービス結果をOD単位で収集することは言うまでもない。
【0144】
次に、エレベータ制御目標と、エレベータ模擬実験結果との類似度演算処理を群管理アルゴリズム決定部30が実行し、群管理アルゴリズム識別子が示す群管理制御を実行した場合のエレベータ制御目標とエレベータ制御結果との類似度を保持しておく。ここで、類似度の演算方法を第1実施形態で示した性能類似度演算処理のいずれかを用いて計算することができる。
【0145】
これらの一連の処理を実装されている群管理アルゴリズムすべてについて繰り返し、エレベータ制御目標と最も類似しているエレベータ制御結果を出力した群管理アルゴリズム識別子を群管理アルゴリズム決定部30はエレベータ群管理部5に送信し、エレベータ群管理部5は受信した群管理アルゴリズム識別子が示す群管理アルゴリズムを使用してエレベータ群管理制御を実行する。
【0146】
以上のように構成された第2実施形態によれば、エレベータ性能事例データを蓄積することなく、リアルタイムで群管理アルゴリズムを決定することができる。
【0147】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0148】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、OD単位でエレベータ制御目標を設定可能であるとともに、OD単位で設定されたエレベータ制御目標に向けた群管理制御を実現できるエレベータ群管理システム、方法、ならびにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエレベータ群管理システムの概略構成を示すブロック図
【図2】エレベータ制御目標値設定部のGUIの一例を示す図
【図3】エレベータ制御目標の設定内容の一例を示す図
【図4】OD制御目標の種類を示す図
【図5】OD制御目標値の設定可能範囲の限定(マスキング)を示す図
【図6】エレベータ性能事例データのデータ構造の一例を示す図
【図7】エレベータ性能事例データの収集から記録までの一連の処理手順を示すフローチャート
【図8】群管理アルゴリズム決定部による群管理アルゴリズム決定の処理を示す概念図
【図9】群管理アルゴリズム決定部による群管理アルゴリズムの決定方法を説明するための図
【図10】群管理アルゴリズムの決定から群管理制御の実行までの一連の処理手順を示すフローチャート
【図11】性能類似度演算の一例を示す図
【図12】第1実施形態の変形例に係り、エレベータモデルを利用してエレベータ性能事例データを作成するよう構成されたエレベータ群管理システムの概略構成を示すブロック図
【図13】エレベータモデル部とエレベータ性能事例データとの関係を示す図
【図14】エレベータモデル部を用いた場合のエレベータ性能事例データの集計および記録の処理手順を示すフローチャート
【図15】本発明の第2実施形態に係るエレベータ群管理システムの概略構成を示すブロック図
【図16】エレベータモデル部を用いた場合の群管理アルゴリズム決定の説明図
【符号の説明】
1…エレベータ制御目標値設定部、2…エレベータ制御目標、3…群管理アルゴリズム決定部、4…エレベータ性能事例データ記憶部、5…エレベータ群管理部、6…エレベータ、61…エレベータカゴ、7…ホール呼び検出部、8…カゴ呼び検出部、9…カゴ情報検出部、10…エレベータ運行制御結果検出部、11…OD交通需要検出部、12…エレベータ性能事例データ集計部、20…エレベータモデル部

Claims (14)

  1. ビル内の任意階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し、エレベータカゴを割り当てる群管理制御を実行するエレベータ群管理システムにおいて、
    エレベータ制御目標は、出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて設定する設定手段を備えることを特徴とし、
    前記エレベータ制御目標を制御目標として前記群管理制御を実行することを特徴としたエレベータ群管理システム。
  2. 前記群管理制御によるエレベータ制御結果を出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて記憶する記憶手段と、
    前記エレベータ制御目標と前記エレベータ制御結果との類似度演算に基づいて、該エレベータ制御目標に最も類似するエレベータ制御結果を得る群管理アルゴリズムを決定する決定手段と、
    前記決定手段により決定された群管理アルゴリズムに従って前記群管理制御を実行する群管理制御手段と、を具備する請求項1に記載のエレベータ群管理システム。
  3. 前記群管理制御によるエレベータ制御結果を模擬実験により生成し、該エレベータ制御結果を出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて出力するエレベータモデルと、
    前記エレベータ制御目標と前記エレベータ制御結果との類似度演算に基づいて、該エレベータ制御目標に最も類似するエレベータ制御結果を得る群管理アルゴリズムを決定する決定手段と、
    前記決定手段により決定された群管理アルゴリズムに従って前記群管理制御を実行する群管理制御手段と、を具備する請求項1に記載のエレベータ群管理システム。
  4. 前記設定手段は、第1、第2のエレベータ制御目標候補を合成して前記エレベータ制御目標を生成する、請求項1乃至3のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  5. 前記設定手段は、第1、第2のエレベータ制御目標候補に優先度を付与し、前記優先度に応じて前記第1、第2のエレベータ制御目標のいずれかを前記エレベータ制御目標として選択する、請求項1乃至3のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  6. 前記決定手段は、出発階床及び行先階床の組み合わせと対応つけた第1、第2のエレベータ制御目標の全てを満足する群管理アルゴリズムを決定する、請求項2又は3のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  7. 前記ビル内の交通需要を検出して前記出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて出力する交通需要検出手段と、
    前記エレベータカゴの運行制御結果を検出するエレベータ運行制御結果検出手段と、
    前記エレベータ運行制御結果検出手段により検出された運行制御結果を集計して前記出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けたエレベータ制御結果を生成すると共に、該運行制御結果が得られた際の前記交通需要及び該運行制御結果が得られた際に適用された群管理アルゴリズムの識別子を該エレベータ制御結果に関連付けることにより、エレベータ性能事例データを出力するエレベータ性能事例データ集計手段と、をさらに具備し、
    前記記憶手段は、前記エレベータ性能事例データを記憶するエレベータ性能事例データベースからなることを特徴とする請求項2、4、5、6のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  8. 前記ビル内の交通需要を検出して前記出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて出力する交通需要検出手段と、
    前記エレベータカゴの運行制御結果を模擬実験により出力するエレベータモデルと、
    前記エレベータモデルから出力された運行制御結果を集計して前記出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けたエレベータ制御結果を生成すると共に、該運行制御結果が得られた際の前記交通需要及び該運行制御結果が得られた際に適用された群管理アルゴリズムの識別子を該エレベータ制御結果に関連付けることにより、エレベータ性能事例データを出力する手段と、をさらに具備し、
    前記記憶手段は、前記エレベータ性能事例データを記憶するエレベータ性能事例データベースからなることを特徴とする請求項2、4、5、6のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  9. 前記交通需要検出手段により検出された交通需要と、前記設定手段により設定されたエレベータ制御目標を検索キーとし、前記エレベータ性能事例データベースを検索する検索手段をさらに具備することを特徴とする請求項7又は8に記載のエレベータ群管理システム。
  10. 前記エレベータモデルは、エレベータシミュレータ、ニューラルネットワークモデル、ファジィモデルのいずれかを含む請求項3又は8に記載のエレベータ群管理システム。
  11. 前記交通需要検出手段により検出された前記ビル内の交通需要をクラスタリングするクラスタリング手段をさらに具備する請求項7乃至10のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  12. 前記エレベータ制御目標は、ホール待ち時間、乗車時間、サービス時間、乗車人数、長待ち率、カゴ通過間隔時間、カゴ最大通過間隔時間、カゴ通過回数の少なくともいずれかを含む請求項1乃至11のいずれかに記載のエレベータ群管理システム。
  13. ビル内の任意階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し、エレベータカゴを割り当てる群管理制御を実行するエレベータ群管理方法において、
    エレベータ制御目標は、出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて設定する設定ステップを具備し、
    前記エレベータ制御目標を制御目標として前記群管理制御を実行することを特徴とするエレベータ群管理方法。
  14. ビル内の任意階床において任意の時刻に発生したホール呼びに対し、エレベータカゴを割り当てる群管理制御を実行するエレベータ群管理プログラムにおいて、
    エレベータ制御目標を出発階床及び行先階床の組み合わせと対応付けて設定する設定手順と、
    前記エレベータ制御目標を制御目標として前記群管理制御を実行する手順と、をコンピュータに実行させるエレベータ群管理プログラム。
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