JP2005066627A - 摩擦撹拌接合方法及びその治具と有摩擦撹拌接合部部材 - Google Patents

摩擦撹拌接合方法及びその治具と有摩擦撹拌接合部部材 Download PDF

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Abstract

【課題】摩擦撹拌接合にて、接合強度の優れた接合部を短時間で得る。
【解決手段】支持用治具10の上端面には、水平断面が略円形となる凹部18が設けられている。積層部20の上端面に摩擦撹拌接合用工具16のプローブ24が埋没すると、埋没部近傍の肉が塑性流動を起こす。その結果、塑性流動した肉が凹部18に流入するので、比較的大きな領域にわたって肉が撹拌される。凹部18に流入した肉が冷却固化することにより、凸部44を有する有摩擦撹拌接合部部材42が得られるに至る。
【選択図】図3

Description

本発明は、複数個の部材が積層されて形成された積層部を接合するための摩擦撹拌接合方法及びその治具と、該摩擦撹拌接合方法によって得られる有摩擦撹拌接合部部材に関する。
部材同士を積層させ、その積層部を接合する方法としては、スポット溶接が一般的であるが、近年、摩擦撹拌接合によって接合することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、周知のように、摩擦撹拌接合においては摩擦撹拌接合用治具のプローブを埋没させて部材の肉を塑性流動させた後、該プローブを離脱させるので、離脱箇所に離脱穴が残留し、このために接合部の接合強度が小さくなるという不具合がある。
この不具合を回避するため、特許文献1に記載された技術では、積層部の両端面に治具を当接させるとともに、両端面側に摩擦撹拌接合用治具を配置させるようにしている。すなわち、一端面側の治具の貫通孔に挿入されたプローブを積層部に埋没させて摩擦撹拌接合を行った後、前記埋没に伴って他端面側の治具の貫通孔に流入した肉を該他端面側に配置されたプローブで押し戻す。このように突出した肉を離脱穴が平滑となるまで押し戻すことによって、平滑面を得ることを試みている。
一方、特許文献2に記載された技術では、治具の平滑面に積層部を載置するとともに回転動作して埋没するプローブの周辺に付加材料片を供給し、この付加材料片を部材とともに接合することで、離脱穴を充填するようにしている。
特開2001−259863号公報 特開2003−56678号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、2個の摩擦撹拌接合用工具を互いに相反する方向に設置する必要があるため、摩擦撹拌接合装置の構成が複雑となるとともに、設備投資が高額になるという不具合がある。
また、特許文献2に記載された技術では、付加材料片が必要となる分、材料コスト、ひいては摩擦撹拌接合コストが上昇してしまう。しかも、付加材料片の供給機構を設ける必要があるので、この場合においても摩擦撹拌接合装置の構成が複雑となり、設備投資が高額となる。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、摩擦撹拌接合装置の構成を複雑化させることなく、しかも、接合された積層部の接合強度が良好となる摩擦撹拌接合方法及びその治具と、有摩擦撹拌接合部部材を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、複数個の部材が積層されることによって形成された積層部の一端面を支持用治具で支持し、前記積層部の他端面から摩擦撹拌接合用工具のプローブを埋没させて該積層部を摩擦撹拌接合する摩擦撹拌接合方法であって、
前記支持用治具に凹部を設け、
前記プローブを回転動作させながら前記積層部の前記他端面側から前記凹部に指向して埋没させることにより、前記凹部上の前記積層部を接合するとともに、前記プローブの埋没方向に指向して突出する凸部を前記積層部の前記一端面に設けることを特徴とする。
すなわち、本発明においては、支持用治具に凹部を設け、摩擦撹拌接合を施す際、この凹部に積層部の肉を流入させるようにしている。このようにすることにより、積層部が陥没して多くの肉が撹拌することになる。その結果、肉が撹拌されない非撹拌部では、上方の部材において陥没に伴って形成された突出部が下方の部材における陥没部に塑性変形によって嵌合し、同時に、撹拌部では、積層された部材の当接部位の肉同士が多量に塑性流動される。この状態で冷却固化することによって形成される接合部では、嵌合及び摩擦撹拌接合によって接合強度が良好となる。
しかも、この場合、積層部にバリが発生することが抑制される。従って、特に摩擦撹拌接合を行った後に仕上げ加工を行う必要がないので、加工時間を短縮することができ、結局、加工効率を上昇させることができる。
なお、凸部に水平断面が略円形となる部位を設け、且つ前記水平断面の直径をプローブの外径に比して大きく設定することが好ましい。この場合、肉が容易に凹部に流入するようになる。その結果、摩擦撹拌接合時に、積層された部材同士の当接部位の肉を多量に撹拌させることができるので、接合部の接合強度が一層良好となる。
また、本発明は、複数個の部材が積層されることによって形成された積層部を摩擦撹拌接合する際、前記積層部の一端面を支持するための摩擦撹拌接合用支持用治具であって、
摩擦撹拌接合用工具のプローブが回転動作しながら前記積層部の他端面側から埋没することに伴い、前記積層部の前記一端面に前記プローブの埋没方向に指向して塑性流動する肉を収容するための凹部を有することを特徴とする。
このような支持用治具を使用して摩擦撹拌接合を行うことにより、積層部の肉が凹部に流入する。その結果、積層部の当接箇所が良好に撹拌されて接合強度が良好な接合部が得られる。
さらに、本発明は、複数個の部材が積層されることによって形成された積層部が摩擦撹拌接合で接合された有摩擦撹拌接合部部材であって、
前記積層部の一端面に、摩擦撹拌接合用工具のプローブが該積層部の他端面に埋没することに伴って突出形成した凸部を有することを特徴とする。
前記凸部は、積層された部材同士が摩擦撹拌接合用工具で接合される際、塑性流動する肉が上記支持用治具の凹部に流入した後に冷却固化することによって形成される。このような有摩擦撹拌接合部部材における接合部は、優れた接合強度を示す。
本発明によれば、支持用治具に凹部を設け、積層部に対して摩擦撹拌接合を行う際にこの凹部に塑性流動した肉を流入させるようにしているので、積層部における撹拌領域が大きくなる。このため、各部材の当接部位が大きく撹拌されて冷却固化するので、接合強度が良好な有摩擦撹拌接合部部材を得ることができるという効果が達成される。
以下、本発明に係る摩擦撹拌接合方法につき、該接合方法を実施する際に使用される支持用治具と、最終的に得られる有摩擦撹拌接合部部材との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、支持用治具10と、JIS記号の数字が5000番台であるいわゆる5000系のアルミニウムからなる第1ワーク12及び第2ワーク14と、摩擦撹拌接合用工具16との要部拡大概略斜視図である。この場合、支持用治具10の形状は略直方体であり、上端面の略中央部には、水平断面が略真円形状である略中空円柱体形状の凹部18が設けられている。
第1ワーク12及び第2ワーク14は互いに積層され、これにより積層部20が形成される。後述するように、この積層部20は、前記凹部18を覆った状態で摩擦撹拌接合される。
摩擦撹拌接合用工具16は、回転体22と、該回転体22の一端部に連結されて先端部が円錐状に湾曲したプローブ24とを有する。このプローブ24の外径は、支持用治具10に設けられた凹部18の直径に比して小さく設けられる。換言すれば、凹部18の直径は、プローブ24の外径に比して大きく設定される。なお、プローブ24の長さL、第1ワーク12の肉厚T1、第2ワーク14の肉厚T2は、例えば、約2.5mm、約1.5mm、約1.0mmに設定することができる。
ここで、摩擦撹拌接合用工具16は、その軸線が凹部18の軸線に略一致するように配置される。すなわち、プローブ24は、凹部18の上方に位置する。
本実施の形態に係る摩擦撹拌接合は、以下のようにして実施される。
先ず、図2に示すように、第1ワーク12と第2ワーク14とを積層して積層部20を形成し、該積層部20を支持用治具10に載置する。この際、積層部20で凹部18を覆う。
次に、摩擦撹拌接合用工具16を積層部20から所定距離で離間する位置まで下降させた後に回転体22を回転付勢し、プローブ24を積層部20の上端面に摺接させる。この摺接に伴って摩擦熱が発生することにより、積層部20におけるプローブ24の当接箇所及びその近傍が軟化する。その結果、図3に示すように、該プローブ24が積層部20に埋没するとともに、この埋没に対応して、積層部20の肉が凹部18に流入する。上記したように、凹部18の水平断面の直径がプローブ24の直径に比して大きいため、この流入は容易に進行する。
また、プローブ24の回転動作に伴って、積層部20における撹拌領域Aの肉が撹拌される。この際、該積層部20の肉が凹部18に流入しているため、当接部位の肉を多量に撹拌することができる。
さらに、プローブ24の埋没に伴って、第2ワーク14における第1ワーク12に臨む面に突出部26が形成されるとともに、第1ワーク12における第2ワーク14に臨む面に陥没部28が形成される。そして、突出部26は、陥没部28に嵌合する。なお、陥没部28の図3における下端部は、肉の塑性流動が行われない非撹拌部(塑性変形部)である。すなわち、陥没部28の図3における下端部は、塑性変形によって凹部18に対応する形状に成形される。
ここで、凹部18が設けられていない従来技術に係る支持用治具30上に載置された積層部20aに対し、プローブ24を埋没させた状態を図4に示す。この場合、該プローブ24によって撹拌される撹拌領域Bは、図3に示す撹拌領域Aに比して狭い。このため、図3及び図4から諒解されるように、第1ワーク12と第2ワーク14との境界線Mは、撹拌領域Bに比して撹拌領域Aの方に多く含まれる。換言すれば、本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法においては、従来技術に係る摩擦撹拌接合方法に比して、第1ワーク12と第2ワーク14との境界線Mを長距離にわたって撹拌することができる。
しかも、図4に示すように、積層部20aを陥没させない従来技術では、プローブ24が埋没することに伴い、第2ワーク14の肉が回転体22の側周壁部近傍まで塑性流動し、そこで隆起して円環状のバリ32が形成されてしまう。これに対し、本実施の形態によれば、図3に示すように、積層部20のプローブ24が埋没した分の肉が凹部18に塑性流動する。このため、肉が隆起することはなく、従って、バリ32が形成されることはない。
このように、凹部18が設けられた支持用治具10を使用することにより、バリ32を形成することなく積層部20を摩擦撹拌接合することができる。
この場合、撹拌を開始しておよそ2秒後にプローブ24を離脱させることで肉の塑性流動を停止させれば、最終的に、境界線Mを含む積層部20の肉が冷却固化する。これにより第1ワーク12と第2ワーク14とが一体的に固相接合されて、図5に示すように、摩擦撹拌接合部位40を有する有摩擦撹拌接合部部材42が得られるに至る。この有摩擦撹拌接合部部材42は、凹部18に流入した肉が冷却固化することに伴って一端面側に突出形成された円柱体形状の凸部44を有する。従って、この場合、該凸部44の外径は、凹部18の直径と略同一となる。
有摩擦撹拌接合部部材42の摩擦撹拌接合部位40における剪断強度を、図4に示す従来技術に係る摩擦撹拌接合方法によって設けられた摩擦撹拌接合部位における剪断強度とともに、図6に示す。なお、図6において、横軸は撹拌時間である。
図6から明らかなように、撹拌時間が同一であれば、摩擦撹拌接合部位40の剪断強度は、従来技術による摩擦撹拌接合部位に比して著しく大きくなり、直径6mmの電極を用いて抵抗スポット溶接を行った場合と略同等となる。このように、本実施の形態によれば、接合強度が良好な有摩擦撹拌接合部部材42を製作することができる。この理由は、摩擦撹拌接合によって積層部20が良好に接合されたことに加え、図3に示すように、第2ワーク14に形成された突出部26が第1ワーク12に形成された陥没部28に嵌合されることによって第1ワーク12と第2ワーク14とが強固に接合されたためである。
また、図4から諒解されるように、従来技術に係る摩擦撹拌接合方法においては、プローブ24の長さLは、第2ワーク14の肉厚T2よりも必ず大きくなければならない。プローブ24の長さLが肉厚T2よりも小さい場合、埋没したプローブ24の先端が境界線Mに到達しないので、第1ワーク12の肉が撹拌されることがなく、このために第1ワーク12と第2ワーク14とを固相接合することができなくなるからである。さらに、埋没したプローブ24が支持用治具まで到達しないように、肉厚T1と第2ワーク14の肉厚T2との和は、プローブ24の長さLに比して小さくなければならない。
これに対し、本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法においては、プローブ24の長さLが肉厚T2よりも小さい場合であっても、図7に示すように、プローブ24が第2ワーク14に埋没することに伴って該第2ワーク14が陥没し、その結果、境界線Mが第1ワーク12に陥没する。このため、境界線Mの陥没部の近傍では、プローブ24の回転動作によって第2ワーク14の肉が撹拌されることに伴い、第1ワーク12の肉も撹拌される。従って、この場合においても積層部20を固相接合させて摩擦撹拌接合部位40を設けることができる。
また、図8に示すように、プローブ24の長さLが肉厚T1と肉厚T2の和より大きい場合であっても、陥没した積層部20の肉が凹部18に流入するのみであるので、プローブ24の先端部が支持用治具10に到達することはない。このため、積層部20と支持用治具10とが干渉することもない。
このように、本実施の形態によれば、様々な肉厚のワークを摩擦撹拌接合することが可能となる。従って、ワークの肉厚に対応する寸法の摩擦撹拌接合用工具に交換する必要がない。このため、煩雑な交換作業を行う必要がなくなるとともに、様々な寸法の摩擦撹拌接合用工具を用意する必要がないので、摩擦撹拌接合に要するコストを低廉化することもできる。
なお、凹部は、円柱形状の凹部18に特に限定されるものではなく、図9に示すように、開口部近傍にテーパ部50が設けられた凹部52であってもよいし、図10に示すように、開口部からテーパ状に縮径する凹部54であってもよい。また、図11に示すように、凹部18の底部に環状溝56を設けるようにしてもよい。
さらに、図12に示すように、長尺溝からなる凹部58であってもよい。この場合、プローブ24を走査することで、凹部58の形状に対応して、長尺な凸部が形成される。
さらにまた、凹部18、52、54、58の全空間に積層部20の肉が充填されなくてもよい。
そして、積層されるワークの個数は2個に限定されるものではなく、3個以上のワークを積層することもできる。
本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法を実施するための支持用治具と、摩擦撹拌接合される第1ワーク及び第2ワークと、摩擦撹拌接合用工具とを示す要部拡大概略斜視図である。 図1の支持用治具に積層部が載置された状態を示す一部縦断面拡大図である。 図2の積層部に摩擦撹拌接合用工具のプローブが埋没した状態を示す一部縦断面拡大図である。 凹部が設けられていない一般的な支持用治具に載置された積層部にプローブが埋没した状態を示す一部縦断面拡大図である。 本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法によって接合された接合部を有する有摩擦撹拌接合部部材の要部斜視説明図である。 図4の摩擦撹拌接合方法によって得られた一般的な有摩擦撹拌接合部部材、及び本実施の形態に係る有摩擦撹拌接合部部材における撹拌時間と剪断強度との関係を示すグラフである。 肉厚がプローブの長さに比して大きな部材を摩擦撹拌接合する状態を示す一部縦断面拡大図である。 肉厚がプローブの長さに比して小さい積層部を摩擦撹拌接合する状態を示す一部縦断面拡大図である。 開口部近傍にテーパ部が設けられた凹部を示す要部縦断面図である。 テーパ状に縮径する凹部を示す要部縦断面図である。 底部に環状溝が設けられた凹部を示す要部縦断面図である。 長尺溝形状の凹部が設けられた支持用治具の概略全体斜視図である。
符号の説明
10、30…支持用治具 12、14…ワーク
16…摩擦撹拌接合用工具 18、52、54、58…凹部
20、20a…積層部 24…プローブ
32…バリ 40…摩擦撹拌接合部位
42…有摩擦撹拌接合部部材 44…凸部
50…テーパ部

Claims (4)

  1. 複数個の部材が積層されることによって形成された積層部の一端面を支持用治具で支持し、前記積層部の他端面から摩擦撹拌接合用工具のプローブを埋没させて該積層部を摩擦撹拌接合する摩擦撹拌接合方法であって、
    前記支持用治具に凹部を設け、
    前記プローブを回転動作させながら前記積層部の前記他端面側から前記凹部に指向して埋没させることにより、前記凹部上の前記積層部を接合するとともに、前記プローブの埋没方向に指向して突出する凸部を前記積層部の前記一端面に設けることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
  2. 請求項1記載の接合方法において、前記凸部に水平断面が略円形となる部位を設け、且つ前記水平断面の直径を前記プローブの外径に比して大きく設定することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
  3. 複数個の部材が積層されることによって形成された積層部を摩擦撹拌接合する際、前記積層部の一端面を支持するための摩擦撹拌接合用支持用治具であって、
    摩擦撹拌接合用工具のプローブが回転動作しながら前記積層部の他端面側から埋没することに伴い、前記積層部の前記一端面に前記プローブの埋没方向に指向して塑性流動する肉を収容するための凹部を有することを特徴とする摩擦撹拌接合用支持用治具。
  4. 複数個の部材が積層されることによって形成された積層部が摩擦撹拌接合で接合された有摩擦撹拌接合部部材であって、
    前記積層部の一端面に、摩擦撹拌接合用工具のプローブが該積層部の他端面に埋没することに伴って突出形成した凸部を有することを特徴とする有摩擦撹拌接合部部材。

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