JP2005062113A - 屈折率分布の測定方法及び測定装置 - Google Patents

屈折率分布の測定方法及び測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 測定装置として大型化することなく、また、測定が短時間で可能であって、測定対象物の3次元的な屈折率分布を定量的に求めることが可能な方法及び装置。
【解決手段】 測定対象物8を通過した物体光を参照光と干渉させ、干渉縞データを取得する手順、干渉縞データから受光面191における測定対象物8を通過した光の複素振幅を計算する手順、測定対象物8と交わる形で光軸10に垂直な少なくとも3面の仮想面24を設定する手順、受光面191における測定対象物8を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により各仮想面24における光の複素振幅を計算する手順、隣接する仮想面24間の光の複素振幅の差を取る手順、隣接する仮想面24間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面24間の屈折率分布を計算する手順を含む。
【選択図】 図2

Description

本発明は、屈折率分布の測定方法及び測定装置に関し、特に、レンズやプリズム等の光透過性光学素子の屈折率分布を3次元的に測定する方法及び装置に関するものである。
レンズやプリズム等の光透過性光学素子において、その内部に屈折率の不均一性があると、通過する光の波面が擾乱を受け、これらレンズやプリズムを用いた光学系が所望の性能を得られないことがある。特に、プラスティックを材料として成型によってレンズやプリズム等を作る場合は、大きな屈折率の不均一性が生じやすい。この問題を解決するためには、まず、製作したこれら光学素子の屈折率の不均一性、換言すれば屈折率分布を測定する必要がある。
レンズやプリズム等の光透過性光学素子の屈折率分布を測定する方法として、従来、特許文献1〜4に示されているような方法が知られている。
特許文献1に記載の方法では、測定対象レンズを、その平均屈折率に近い屈折率を有するマッチング液に浸漬し、この測定対象レンズ及びマッチング液を透過した光を物体光とし、これと参照光を干渉させて、その干渉縞の様子からその測定対象レンズの屈折率分布を目視せんとする。このとき、物体光若しくは参照光の拡がり角を微調整することで、測定対象レンズの平均屈折率とマッチング液の屈折率の違いによって発生する物体光のパワー成分を打ち消し、屈折率分布の目視を容易ならしめている。
特許文献2に記載の方法では、測定対象レンズに2つの可干渉光束を、測定対象レンズの光入射面の反対面の見かけの曲率中心で交差するように入射させ、この反対面から反射する2光束の干渉縞を、測定対象レンズをその光軸の周りに回転させつつ観測することで、測定対象レンズ全周について光路長差が求まり、これより屈折率分布が計算される。
特許文献3に記載の方法では、まず、測定対象レンズの形状を測定し、この形状データに基づいて光線追跡シミュレーションを行い、その測定対象レンズを透過した光の波面を計算する。次に、その測定対象レンズを透過した光と参照光を干渉させて、その干渉縞からその測定対象レンズを透過した光の波面を計算する。そして、光線追跡シミュレーションから求めた波面と干渉縞から求めた波面の差が、測定対象レンズの内部不均一によるとみなして屈折率分布を求める。
特許文献4に記載の方法では、まず、測定装置の構成として、測定対象物をその平均屈折率に近い屈折率を有する試液(マッチング液)に浸漬し、この測定対象物及び試液を透過した光を物体光とし、これと参照光を干渉させて、その干渉縞を検出器で検出するようにする。また、測定対象物を所定の軸の周りに回転できる機構を備えている。測定データは、測定対象物の複数の回転位置について干渉縞として取得され、この干渉縞から透過物体光の波面が求められる。そして、このようにして求まった測定対象物の複数の回転位置についての波面データから、CT(コンピュータートモグラフィー)の原理に基づき、測定対象物の3次元的屈折率分布が計算される。
特許第2678465号公報 特開2000−193553号公報 特開2003−98040号公報 特開平8−122210号公報 青木由直、石塚滋樹著「数値的2次元フレネル変換法」(電気通信学会論文誌、第57巻(1974年)−B、第8号、第511〜518頁)
特許文献1に記載の方法では、測定対象レンズの屈折率分布を定性的に把握しやすいが、定量的な測定はできない。また、見えるのは測定対象レンズの2次元的な屈折率分布、換言すれば測定対象レンズの光軸方向に積分した屈折率分布であって、3次元的な屈折率分布を見ることはできない。
特許文献2に記載の方法では、定量的な測定が可能であるが、測定できるのは、測定対象レンズの2次元的な屈折率分布であって、3次元的な屈折率分布を見ることはできない。また、測定対象レンズの全面について測定するためには、測定対象レンズを回転させると共に、2光束の間隔を変えて多数の半径について測定する必要があるため、測定に時間がかかる。また、測定対象レンズの面形状の誤差の影響を受けやすい。
特許文献3に記載の方法では、定量的な測定が、測定対象レンズを固定したままで可能である。しかし、別途測定対象レンズの形状を測定し、さらに、それに基づいた光線追跡シミュレーションが必要になり、結局、最終的に屈折率分布を求めるまでに時間と労力がかかってしまう。さらに、上記特許文献1、2同様、3次元的な屈折率分布を見ることができない。
特許文献4に記載の方法では、測定対象物の3次元的な屈折率分布を定量的に測定することが可能である。しかし、測定対象物を所定の軸の周りに回転させる機構が必要であるから、測定装置として大型化し、よって高価格化を招く。また、対象物を所定の軸の周りに回転させて、多数の回転位置でデータを取る必要があるので、測定に時間がかかる。
本発明は従来技術の上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、測定装置として大型化することなく、また、測定が短時間で可能であって、測定対象物の3次元的な屈折率分布を定量的に求めることが可能な方法及び装置を提供することである。
本発明の屈折率分布の測定方法は、光透過性光学素子の屈折率分布を測定する方法であって、
該光透過性光学素子を通過した物体光を参照光と干渉させ、撮像装置によって干渉縞データを取得する手順、
前記干渉縞データから、前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅を計算する手順、
測定対象物たる前記光透過性光学素子と交わる形で、光軸に垂直な少なくとも3面の仮想面を設定する手順、
前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により前記少なくとも3面の仮想面における光の複素振幅を計算する手順、
隣接する仮想面間の光の複素振幅の差を取る手順、
前記隣接する仮想面間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面間の屈折率分布を計算する手順、
を含むことを特徴とする方法である。
この場合に、物体光路中に測定対象物及びそれを内包する容器を配置せずに、物体光と参照光を干渉させ、これによって形成される干渉縞がヌルの状態になるよう調整する手順を先立って含むことが望ましい。
本発明のもう1つの屈折率分布の測定方法は、光透過性光学素子の屈折率分布を測定する方法であって、
ア)該光透過性光学素子を通過した物体光を参照光と干渉させ、撮像装置によって干渉縞データを取得する手順、
イ)前記干渉縞データから、前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅を計算する手順、
ウ)測定対象物たる前記光透過性光学素子と交わる形で、光軸に垂直な少なくとも3面の仮想面を設定する手順、
エ)前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により前記少なくとも3面の仮想面における光の複素振幅を計算する手順、
オ)隣接する仮想面間の光の複素振幅の差を取る手順、
カ)前記隣接する仮想面間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面間の屈折率分布を計算する手順、
キ)測定対象物及びそれを内包する容器を反転させる手順、
ク)前記キ)の手順の後、前記ア)からカ)までの手順を再度行う手順、
を含むことを特徴とする方法である。
以上において、回折積分計算は、フレネル・キルヒホッフの回折積分公式、又は、レーレー・ゾンマーフェルトの回折積分公式をフレネル近似した回折積分に基づくことが望ましい。
本発明の屈折率分布の測定装置は、光透過性光学素子の屈折率分布を測定する装置であって、
該光透過性光学素子を通過した物体光を参照光と干渉させ、撮像装置によって干渉縞データを取得する手段、
前記干渉縞データから、前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅を計算する手段、
前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により仮想面における光の複素振幅を計算する手順、
隣接する仮想面間の光の複素振幅の差を取る手段、
前記隣接する仮想面間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面間の屈折率分布を計算する手段、
を含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、測定対象物の3次元的な屈折率分布を定量的に求めることが可能である。また、マッチング液の中で測定対象物を回転させたりする必要はないので、装置として大型化することがない。したがって、安価に装置を作ることができる。また、測定・計算に基本的に必要な干渉縞データは、後記の第1実施形態では3枚若しくは4枚、第2実施形態でもその2倍にすぎないので、必要なデータ取得が短時間で行える。そのデータを基にした計算も短時間で行えるため、測定全体に要する時間も短くてすむ。
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図2を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に基づく屈折率分布測定装置の概略構成を示す。図中、符号1は、コヒーレンスの良い光源、例えばレーザーである。光源1より発せられる光は、実効的に単色と見なし得る光で、その波長λは、測定対象物が実使用される際に用いられる波長、若しくは、それに近い波長であることが望ましい。測定対象物が、ある波長帯域、例えば白色光に対して用いられる場合は、その波長帯域内の1つの波長とする。
符号2は、光源1から発せられた光ビームの光束径を所定の光束径に拡大するビームエキスパンダーである。この拡大された光束径は、測定対象物に至るまでの間、光束のケラレがないとして、少なくとも、測定対象物の最大正射影の最大長(正射影の面積が最大になる状態で、この正射影を内部に含められる最小円の直径)より大きければよいが、これより20%から50%程度大きい方が実用的には望ましい。ビームエキスパンダー2の構成としては、図示はしないが、一般的に用いられているように、第1の凸レンズ群と第2の凸レンズ群を組み合わせたもの、あるいは、前置凹レンズ群と後置凸レンズ群を組み合わせたもの等を用いることができる。
符号3は、所定の分岐比、例えば透過約50%、反射約50%で入射光を分岐する第1のビームスプリッターである。第1のビームスプリッター3は、その分岐面31が光軸4に対して約45°の角度になるよう配置される。
符号5は、第1の反射鏡であり、その反射面51が光軸6に対して約45°の角度となるよう配置される。
符号52は、第1の反射鏡5の方向を調節する機構であり、紙面に平行な方向、及び、垂直な方向の調整軸を有する。
符号7は、測定対象物8を内包する容器である。測定対象物8は、係止部材9により容器7の中で所定位置に係止される。容器7は、光軸10に垂直な窓71、窓72を有する。窓71及び窓72には、光源1が発する光の波長に対し透明であって、しかも、均質性の十分高い部材、例えば高均質光学ガラスが材料として用いられる。さらに、窓71及び窓72は、その両面が高い平面性を有する平面とされる。容器7と測定対象物8の空隙には、測定対象物8の平均屈折率に近い屈折率を有するマッチング液11が充填される。マッチング液11はまた、光源1が発する光の波長に対し透明である。
符号12は、測定対象物8を内包する容器7の全体的な温度の均一化、及び、外部温度変化の補償を行う温度調節器である。ただし、本測定装置全体が良好に温度調節された環境に置かれる場合等は、温度調節器12はなくともよい。
符号13は、所定の分岐比、例えば透過約50%、反射約50%を有する第2のビームスプリッターである。第2のビームスプリッター13は、その分岐面131が光軸10に対して約45°の角度になるよう配置される。なお、第2のビームスプリッター13は、名称に拘わらず、後述の通り、光結合器として用いられる。
符号14は、第2の反射鏡であり、その反射面141が光軸4に対して約45°の角度となるよう配置される。また、第2の反射鏡14には、例えばピエゾ素子を用いた微小変位装置15が装着されており、反射面141の垂直方向に第2の反射鏡14を微小量変位させることができる。微小変位装置15は、駆動器16を介して、コンピューター17によって制御される。
符号18は、撮像装置であり、CCD(電荷結合素子)等の2次元イメージセンサー19を含む。撮像装置18は、2次元イメージセンサー19の受光面191が、光軸10に垂直となるよう配置される。あるいは、撮像装置18は光軸20の側に配置してもよい。撮像装置18はコンピューター17に電気的に接続されている。
全体的に見ると、この装置の構成は、いわゆるマッハ・ツェンダー型干渉計と同様の構成となっている。
次に、上記のように構成した測定装置の動作について説明する。
光源1を発した光ビームは、ビームエキスパンダー2に入射し、光束径の拡大された平行光束21として、したがって、平面波として、これを射出する。光束21は第1のビームスプリッター3に入射し、反射光束22と透過光束23に分岐される。反射光束22は、第1の反射鏡5で反射して光路を約90°曲げられ、測定対象物8を内包する容器7に入射する。容器7には、測定対象物8の平均屈折率に近い屈折率を有するマッチング液11が充填されているので、光束22は略平行性を保ったまま容器7を射出する。ただし、測定対象物8の屈折率の不均一性に応じて、射出した光の波面は平面からずれる。容器7を射出した光束221は、第2のビームスプリッター13に入射し、これを透過した光束222は物体光として2次元イメージセンサー19に入射する。
一方、第1のビームスプリッター3を透過した光束23は、第2の反射鏡14で反射され、第2のビームスプリッター13に入射する。ここで反射された光束232は参照光として2次元イメージセンサー19に入射する。
以上のように、2次元イメージセンサー19に入射した物体光束222と参照光束232は互いに干渉して干渉縞を形成する。このとき、微小変位装置15によって第2の反射鏡14を微小量変位させると、変位量に応じて参照光の光路長が変わり、したがって、参照光に位相シフトが加えられる。
次に、上記のような測定装置の動作によって、測定対象物8の屈折率分布を求める方法について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図2では、図1に示した測定装置の構成要素の中、測定対象物8とその周辺、第2のビームスプリッター13、及び、2次元イメージセンサー19の受光面191を示す。また、ここで、受光面191にxy座標を取り、光軸10をz軸に取る。座標原点は、受光面191と光軸10の交点である。
受光面191における物体光222の複素振幅をUs (x,y)、位相シフトを加える前の参照光232の複素振幅をUr (x,y)とすると、それぞれ次のように表せる。
Figure 2005062113
Figure 2005062113
ここで、iは虚数単位、As (x,y)、Ar (x,y)は各々、物体光222、参照光232の振幅、φs (x,y)、φr (x,y)は各々、物体光222、参照光232の位相である。
測定の手順として、まず、測定対象物8を内包する容器7を物体光路中に置かない状態で観測する。このとき、調節機構52を適宜操作し、観測される干渉縞がいわゆるヌルの状態になるようにする。こうすると、参照光の位相φr (x,y)は(x,y)によらず実質的に定数、例えば0とみなすことができる。
次に、測定対象物8を内包する容器7を物体光路中に置き、干渉縞データを取得する。このとき、微小変位装置15を駆動して参照光にδの位相シフトを加えると、次の(3)式で表される干渉縞データが、受光面191での干渉強度I(x,y,δ)として得られる。以下の式中、“*”は複素共役を示す。
Figure 2005062113
加える位相シフトδとして、0(位相シフトを加えない状態)、π/2、π、3π/2を選び、これらに対応する4種類の干渉縞データを取得する。(3)式に、δ=0、δ=π/2、δ=π、δ=3π/2を代入して計算すると、物体光222の複素振幅Us (x,y)を表す次の(4)式が得られる。
Figure 2005062113
あるいは、加える位相シフトとして、0(位相シフトを加えない状態)、2π/3、−2π/3を選び、次の(5)式から物体光222の複素振幅Us (x,y)を求めてもよい。
Figure 2005062113
上述の通り、参照光232Ur の位相は実質的に0と置けるので、Ur * =Ar (x,y)となる。Ar (x,y)は、物体光の光路を遮り、参照光232のみ2次元イメージセンサー19に入れることで求める。以上の手順で、(4)式、又は、(5)式により、Us (x,y)が求まる。
次に、図2に示すように、測定対象物8を内包する容器7の中に、光軸10に垂直な複数の仮想面24を設定する。仮想面24の第1面は、図2の状態で見て測定対象物8の最も左にある部位と接する位置に取る。また、仮想面24の最終面(第m面、mは3以上の整数)は、図2の状態で見て測定対象物8の最も右にある部位と接する位置に取る。さらい、仮想面24の第1面と最終面の間に、(m−2)個の仮想面を、適宜、例えば等間隔に設定し、第1面からk番目の面を第k面とする。第k面のz座標をzk とする。
次に、上記の手順で求まったUs (x,y)、及び、次の(6)式を用いて、第k面での複素振幅分布U(x’,y’,zk )を、k=1からk=mまでについて、コンピューター17で計算する。(x’,y’)は、第k面に設定された座標であって、その原点は光軸10との交点である。
Figure 2005062113
ここで、積分範囲は、2次元イメージセンサー19の領域とする。zS は波動光学的に見た第k面のz座標であり、第k面がz座標に関してマイナス側にあることを考慮すると、次の(7)式で表わされる。
Figure 2005062113
ここで、nb 、nw 、nl は各々、第2のビームスプリッター13、容器7の窓72、マッチング液11の波長λに対する屈折率である。また、db 、dw は各々、第2のビームスプリッター13、容器7の窓72の光軸10の方向に見た厚さである。dl は、仮想面24の第m面(最終面)から窓72のマッチング液11と接する面までの距離である。これらの値は事前に求めておく。ns は、測定対象物8の平均屈折率である。ns の値としては、測定対象物8を構成する材料の波長λに対する屈折率の公称値(カタログ値)を用いればよい。dkmは仮想面24の第k面と第m面(最終面)の間の距離である。
(6)式は、フレネル・キルヒホッフの回折積分公式、あるいは、レーレー・ゾンマーフェルトの回折積分公式をフレネル近似の下で表わした式として一般に知られている式である。
(6)式をコンピューター17で計算するに際しては。例えば、非特許文献1に記されているような1回のフーリエ変換による方法、あるいは、2回のフーリエ変換による方法を用いることができる。何れの方法においても、計算機で高速にフーリエ変換を行うアルゴリズムが知られているので、それを使えば計算は短時間で行える。
以上の手順によって、k=1からk=mまでの仮想面での複素振幅分布が求まったことになる。
次に、各仮想面の複素振幅分布から、以下のように測定対象物8の屈折率分布を求める。第k面での複素振幅分布は、光束22が容器7の窓71に入射してから第k面に至るまでに受ける振幅変調及び位相変調の累積が反映されていると考えることができる。したがって、第k面と第k−1面の複素振幅分布の差を取れば、第k−1面と第k面の間の層の位相変調量分布が求まる。この位相変調量分布はこの層の屈折率分布によるものと考えられるから、次の(8)式によって、第k−1面と第k面の間の層の屈折率分布Δnk (x’,y’)が求まる。
Figure 2005062113
ただし、Δnk (x’,y’)は、第k面上の点(x’,y’)と第k面上の基準点(例えば原点)における屈折率の差を表す。同様に、ΔΨk (x’,y’)は、第k面上の点(x’,y’)と第k面上の基準点(例えば原点)における位相変調量の差を表す。dk は第k−1面と第k面の間の層の厚さである。
上記の(8)式の計算を、コンピューター17によって、k=2からk=mまでについて行えば、測定対象物8全体について、屈折率分布が求まる。このとき、光束22が通過する範囲内においてマッチング液も上記計算の対象になる。マッチング液に屈折率分布が生じていると測定精度の悪化を招く恐れがあるので、上記手順に従って測定した結果、マッチング液に屈折率分布が生じていると判明した場合は、温度調節器12を操作する等して、マッチング液11の屈折率の均一化を図るのが好ましい。
上記で設定する仮想面の数mは任意であり、大きくすれば光軸10の方向に関してより詳細な屈折率分布データが得られるが、mが大きくなる程計算に長時間を要するので、実用的に必要なmの値は適宜設定する。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の装置の構成、装置の動作は第1実施形態と同様である。本実施形態では、まず、第1ステップとして、第1実施形態と同様の測定及び計算手順を一通り行う。ただし、測定対象物8の左半分(図2の状態で見て左半分)については、仮想面を設定せず、よって、(6)、(7)、(8)式の計算も行わない。
次に、第2ステップとして、測定対象物8を内包する容器7を光軸10の方向に関して反転する。すなわち、窓72の側から光束22が入射し、窓71の側から射出する状態にする。この状態で、同様の測定及び計算手順を実行する。ただし、第2ステップにおいても、測定対象物8の左半分(図2の状態から測定対象物8を内包する容器7を反転した状態で見て左半分)については、仮想面を設定せず、よって、(6)、(7)、(8)式の計算も行わない。
最終的な測定結果としては、第1ステップにおける測定対象物8の右半分(図2の状態で見て右半分)についての測定・計算結果と、第2ステップにおける測定対象物8の右半分(図2の状態で見て左半分)についての測定・計算結果を合成したものを以って、測定対象物8全体についての測定結果とする。
なお、測定対象物8を内包する容器7の反転は、手動で行ってもよいし、図示はしないが、自動反転機構を設けて、それによって行うようにしてもよい。単純な反転動作なので、自動反転機構を設ける場合でも装置が大型化することはない。
このような測定手順とすると、次のような利点がある。(6)、(7)式を用いた仮想面24の第k面の複素振幅の計算においては、測定対象物8の屈折率の不均一性の影響を考慮していない。したがって、2次元イメージセンサー19から見て測定対象物8の奥になる程、測定対象物8の屈折率の不均一性の影響を多く受け、測定誤差が生じやすくなる。そこで、このように測定対象物8を内包する容器7を途中で一旦反転させて測定することで、測定対象物8の左半分について測定誤差が大きくなることを防ぐことができる。
以上の第1実施形態、第2実施形態何れにおいても、干渉縞データ取得に際して、データ取得を多数回行い、その平均を取って後の計算に用いるデータとすることは勿論可能である。
本発明に基づく屈折率分布測定装置の概略構成を示す図である。 図1に示した測定装置の構成要素の中の測定対象物とその周辺の要部とを拡大して示す図である。
符号の説明
1…光源
2…ビームエキスパンダー
3…第1のビームスプリッター
4、6、10、20…光軸
5…第1の反射鏡
7…測定対象物を内包する容器
8…測定対象物
9…係止部材
11…マッチング液
12…温度調節器
13…第2のビームスプリッター
14…第2の反射鏡
15…微小変位装置
16…駆動器
17…コンピューター
18…撮像装置
19…2次元イメージセンサー
21…平行光束
22…反射光束
23…透過光束
24…仮想面
31…第1のビームスプリッターの分岐面
51…第1の反射鏡の反射面
52…第1の反射鏡の方向を調節する機構
71、72…窓
131…第2のビームスプリッターの分岐面
141…第2の反射鏡の反射面
191…2次元イメージセンサーの受光面
221…容器を射出した光束
222…第2のビームスプリッターを透過した光束(物体光)
232…第2のビームスプリッターで反射された光束(参照光)

Claims (5)

  1. 光透過性光学素子の屈折率分布を測定する方法であって、
    該光透過性光学素子を通過した物体光を参照光と干渉させ、撮像装置によって干渉縞データを取得する手順、
    前記干渉縞データから、前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅を計算する手順、
    測定対象物たる前記光透過性光学素子と交わる形で、光軸に垂直な少なくとも3面の仮想面を設定する手順、
    前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により前記少なくとも3面の仮想面における光の複素振幅を計算する手順、
    隣接する仮想面間の光の複素振幅の差を取る手順、
    前記隣接する仮想面間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面間の屈折率分布を計算する手順、
    を含むことを特徴とする屈折率分布の測定方法。
  2. 物体光路中に測定対象物及びそれを内包する容器を配置せずに、物体光と参照光を干渉させ、これによって形成される干渉縞がヌルの状態になるよう調整する手順を先立って含むことを特徴とする請求項1記載の屈折率分布の測定方法。
  3. 光透過性光学素子の屈折率分布を測定する方法であって、
    ア)該光透過性光学素子を通過した物体光を参照光と干渉させ、撮像装置によって干渉縞データを取得する手順、
    イ)前記干渉縞データから、前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅を計算する手順、
    ウ)測定対象物たる前記光透過性光学素子と交わる形で、光軸に垂直な少なくとも3面の仮想面を設定する手順、
    エ)前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により前記少なくとも3面の仮想面における光の複素振幅を計算する手順、
    オ)隣接する仮想面間の光の複素振幅の差を取る手順、
    カ)前記隣接する仮想面間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面間の屈折率分布を計算する手順、
    キ)測定対象物及びそれを内包する容器を反転させる手順、
    ク)前記キ)の手順の後、前記ア)からカ)までの手順を再度行う手順、
    を含むことを特徴とする屈折率分布の測定方法。
  4. 前記回折積分計算は、フレネル・キルヒホッフの回折積分公式、又は、レーレー・ゾンマーフェルトの回折積分公式をフレネル近似した回折積分に基づくことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の屈折率分布の測定方法。
  5. 光透過性光学素子の屈折率分布を測定する装置であって、
    該光透過性光学素子を通過した物体光を参照光と干渉させ、撮像装置によって干渉縞データを取得する手段、
    前記干渉縞データから、前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅を計算する手段、
    前記撮像装置の受光面における前記光透過性光学素子を通過した光の複素振幅から、回折積分計算により仮想面における光の複素振幅を計算する手順、
    隣接する仮想面間の光の複素振幅の差を取る手段、
    前記隣接する仮想面間の光の複素振幅の差から、隣接する仮想面間の屈折率分布を計算する手段、
    を含むことを特徴とする屈折率分布の測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012132838A (ja) * 2010-12-22 2012-07-12 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 光位相測定装置、光位相測定方法およびプログラム
CN111650203A (zh) * 2020-04-24 2020-09-11 南京理工大学 一种微球内表面缺陷测量方法

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