JP2005060752A - 液中電極材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 液中においても安定で、大容量の液体の処理を行うことのできる電極を提供する。
【解決手段】 本発明では、比較的平坦性のある基材上にダイヤモンド被覆を形成する従来法とは異なり、大きさが5〜60mmの固体片に予め導電性ダイヤモンドを被覆しておき、これを支持体で支持し、互いに接触させて全体としての通電性を実現する形態の電極を、種々の電気化学的処理に利用するものである。
本発明の電極材料、電極材料集合体は、溶液中の溶質の酸化還元反応等に極めて有用な特性を有し、また本発明の電極は、センサ、液処理、改質等のための電極として利用できる。
【選択図】 図3
【解決手段】 本発明では、比較的平坦性のある基材上にダイヤモンド被覆を形成する従来法とは異なり、大きさが5〜60mmの固体片に予め導電性ダイヤモンドを被覆しておき、これを支持体で支持し、互いに接触させて全体としての通電性を実現する形態の電極を、種々の電気化学的処理に利用するものである。
本発明の電極材料、電極材料集合体は、溶液中の溶質の酸化還元反応等に極めて有用な特性を有し、また本発明の電極は、センサ、液処理、改質等のための電極として利用できる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、導電性ダイヤモンドで被覆した電極材料に関する。より詳しくは、大きさが5〜60mmの固体片を導電性ダイヤモンドで被覆し、これらの固体片を互いに接触させた電極材料集合体、およびこれを用いた電極に関する。
導電性ダイヤモンドを基材表面に膜状に堆積して電極とし、これに通電することによって、液中で電気分解を起こし、液を変質することが行われている。これは、導電性ダイヤモンドを電極として用いた場合、水の電気分解を起こすまでの下限電圧を他の電極より著しく高くとれるという性質(広い電位窓)があることに起因している。
導電性ダイヤモンドを電極として、液中で電気化学反応を起こすことの特徴は、以下の5点に要約される。即ち、(1)電位窓が広い、(2)バックグラウンド電流が小さい、(3)物理的、化学的に安定である、(4)酸化還元系に対して電子移動度が低い、(5)電極反応の選択性がある、という特徴を有する(非特許文献1〜3参照)。
これらの中で(1)については、このダイヤモンドがいわゆるsp3カーボンで形成されており、表面の化学種の吸着サイトが著しく少ないことに起因する。このため、水の電気分解の電極として用いるときに生じる過電圧が、水素で1.0V、酸素で1.2Vと高く、電位窓全体では3.5Vにもなるという極めて大きな特徴を有する。例えば、非特許文献2には、他の電極材料と比べた場合のダイヤモンド電極の広い電位窓が示されている。即ち、この電位窓は、例えば白金電極を用いた場合は1.6〜2.2V、グラッシーカーボン電極を用いた場合は約2.8Vであるのに対して、ダイヤモンド電極の場合は3.2〜3.5Vである。
また、(2)については、このダイヤモンドが通常の導電材料と比べてはるかに半導体に近い特性を持ち、表面官能基が少ない構造を有しているので、表面の電気二重層容量が数μF/cm2と、グラッシーカーボンより2桁も少ない値となっていることに起因する。これは、電気二重層を形成するためのキャリアを電極表面に移動するのに必要な電流密度によって、バックグラウンド電流密度が影響されることによるものである。その結果、高い信号電流/バックグラウンド電流比を得られるので、導電性ダイヤモンドを用いた電極は、例えば酸化還元物質の高感度なセンサや、水溶液中に含まれている金属、生態系物質の微量センサの電極となりうる。
また、(5)については、ダイヤモンド電極を用いると、水の酸化や還元が抑制される反面、溶質の酸化還元反応が極めて容易に起こるという選択反応性を有するので、センサや液処理、液改質等への有用性が高い。そして、特許文献1には、導電性ダイヤモンドを含む陽極を用いて、溶液を電気分解して溶質を酸化する廃水溶質の処理方法が記載されている。
さらに、ダイヤモンド被覆にP型不純物であるホウ素(B)をドーピングすることによって、比抵抗を自由に変化させることができる。CVDダイヤモンド被覆の最大許容濃度の104ppm程度までホウ素をドーピングすることによって、比抵抗を104μΩcm程度に低減することができる(非特許文献3、4参照)。また、非特許文献2には、ホウ素のドーピング量を変化させたときの電位窓の変化の例として、0.1mol/lのNa2SO4溶液中において、ホウ素導入量が102ppmのときに、5.0V以上の特に広い電位窓が得られることが示されている。
しかし、導電性ダイヤモンドを電極として用いて、大容量の液体の電気分解や、液中物質の酸化還元処理、分解等を高効率に行うためには、大面積で欠陥のないダイヤモンド表面を確保する必要がある。通常ダイヤモンド被覆電極を作製する場合、図1に示すように導電性基材(金属、または不純物をドーピングした絶縁体)を下地として、この基材表面の少なくとも一部に導電性ダイヤモンドを堆積している。ダイヤモンドによる基材の被覆は、例えば熱フィラメントCVD、マイクロ波CVDにより施工する技術が確立している。そして、本来絶縁体であるダイヤモンドに導電性を付与するために、CVD成膜雰囲気内にホウ素等を含むドーピングガスを導入している。
しかしながら、大面積の基材に欠陥のない健全性の高いダイヤモンド被覆を形成することは非常に難しく、特に浸食性の高い液体中で電極を用いる場合、欠陥の存在による被覆寿命の低下が著しい。この結果、一枚の被覆面積を小さくしたセグメントを多数張り合わせて電極を構成することや、必要以上に被覆厚を増加することにより、欠陥を起源とする被覆の損傷を抑制し、使用寿命を極力長くするように配慮しているが、本質的な対策とはなっていない。
一方、固体片の集合体を導電性且つ通液性の支持体に収納して陽極とすることは、電解メッキ等では従来から行われている。例えば、非特許文献4には、電解はんだメッキ装置内に直径15mmのはんだボールをチタン製のかごに収納したものを陽極として用いたものが記載されている。この場合、メッキの進展に伴って陽極表面は溶出、減肉するが、ボール状陽極はチタン製のかごに収納されているので、陽極の左右方向の最外点位置は一定に保たれ、陽極・陰極両極間の距離は常に一定に保たれる。これは、均一なメッキ施工にとって好都合な条件を与える。
しかし、導電性ダイヤモンドで被覆した固体片を電極材料とし、これらの集合体を電極として用いた例については、知られていない。
本発明の課題は、液中においても安定で、大容量の液体の処理を行うことのできる電極を提供することにある。
本発明者らは、特定の固体片にダイヤモンドを被覆した電極材料、およびこれらの電極材料を互いに接触させた電極材料集合体、さらにこれらの電極材料集合体を支持体で支持した電極を用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、大きさが5〜60mmの固体片を、導電性ダイヤモンドで被覆した電極材料である。
また、本発明は、上記の2以上の電極材料を含む電極材料集合体であって、1の電極材料が少なくとも1つの他の電極材料に接触する電極材料集合体である。
さらに、本発明は、上記電極材料集合体を備えた電極である。
また、本発明は、上記電極材料集合体を、支持体で支持した電極である。
また、本発明は、上記の2以上の電極材料を含む電極材料集合体であって、1の電極材料が少なくとも1つの他の電極材料に接触する電極材料集合体である。
さらに、本発明は、上記電極材料集合体を備えた電極である。
また、本発明は、上記電極材料集合体を、支持体で支持した電極である。
本発明の電極材料、電極材料集合体は、溶液中の溶質の酸化還元反応等に極めて有用な特性を有し、また本発明の電極は、センサ、液処理、改質等のための電極として利用できる。
本発明では、比較的平坦性のある基材上にダイヤモンド被覆を形成する従来法とは異なり、大きさが5〜60mmの固体片に予め導電性ダイヤモンドを被覆しておき、これを支持体で支持し、互いに接触させて全体としての通電性を実現する形態の電極を、種々の電気化学的処理に利用するものである。
本発明に用いる固体片の形状としては、ダイヤモンドを被覆できるものであれば特に制限はないが、例えば、粉末状、粒子状、ビーズ状、球状、角状のような塊状物、または、繊維状、紐状、綱状、索状、棒状のような線状物(細長いもの)等を挙げることができる。
本発明に用いる固体片の大きさは、5〜60mmである。固体片の大きさが5mm未満では、目的とする液体の活発な通過が妨げられ、固体片周囲の流動が停滞し、固体片付近の液組成が局所的な濃度不均一を生じて処理効率が低下する場合がある。また、固体片の大きさが60mmを超えると、電極としての接液面積が減少し、所定の液処理の効率、速度が低下する場合がある。
そして、本発明において固体片の大きさとは、固体片が粉末状、粒子状、ビーズ状、球状のように球形に近い物であればその直径を意味し、角状やその他の塊状物であれば、その最大の長さを意味する。また、本発明において固体片の大きさとは、固体片が繊維状、紐状、綱状、索状、棒状のような線状物(細長いもの)であれば、長手方向の最大の長さを意味する。したがって、例えば、繊維状の固体片の場合、その直径が5mm未満であっても、長さが5〜60mmであれば、固体片として本発明に用いることができる。
本発明に用いる固体片の材質としては、ダイヤモンドを被覆できるものであれば特に制限はないが、例えば、モリブデン、ニオブ、イリジウム、レニウム、タンタル、タングステン、シリコン等を挙げることができる。この中でも、モリブデンおよびニオブを、好ましい例として挙げることができる。
本発明の電極材料のダイヤモンド被覆の厚さとしては、2〜20μmであることが好ましい。2μm未満では、被覆に欠陥が存在する場合、その影響を著しく受けやすくなる場合があり、20μmを超えると被覆に長時間を要し、そのための費用が高くなり、欠陥の影響を抑える効果がその被覆の費用に比べて少なくなる場合がある。
本発明の電極材料を製造する方法としては、固体片をダイヤモンドにより被覆できる方法であれば特に制限はない。例えば、図2に示すように、熱フィラメントCVD装置のサセプタ上に固体片を載置し、CVD操作を行うことによりダイヤモンドで被覆された固体片を得ることができる。なお、この場合の固体片の材質としては、CVD実行の際の高温に耐えるものが用いられる。
本発明の電極材料を製造する他の方法としては、例えばマイクロ波プラズマCVD法を用いることができる。この場合の一般的なダイヤモンドの被覆条件の例を、表1に示す。この条件により、被覆速度が0.1〜10μm/hでダイヤモンドを容易に被覆することができる。
本発明の電極材料集合体は、上記の電極材料同士を電気的に接触させることにより形成される。接触の方法としては、電極材料間で電流が流れるものであれば特に制限はないが、例えば、後述するように支持体で電極材料を支持し、電極材料同士を直接接触させる方法が用いられる。電極材料同士を電気的に接触させる他の方法としては、電極材料間に他の導電性物質を挿入し、電極材料同士を間接的に接触させる方法がある。挿入する導電性物質としては、導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、金属や導電性高分子材料、導電性接着剤、導電性セラミック、炭素等を挙げることができる。そして、接着剤等を介して電極材料同士を接着した場合は、電極材料集合体をそのまま電極として用いることもできる。なお、ここで挿入する導電性物質としては、電極使用時の接液による劣化・損傷の少ないものが好ましい。
本発明に用いる支持体の形状としては、複数の電極材料を支持して電極材料集合体を形成するか、または電極材料集合体を支持できるものであれば特に制限はないが、通常は円筒状若しくは中空の角柱状のものが用いられる。そして、その壁面、底面および/または上面は、網目状であることが好ましい。網目状とすることにより、液中において電極材料集合体周辺を液が活発に通過できるようになる。網目のサイズは、用いる電極そのものの大きさや液の性質に応じて適宜決定されるが、通常5〜20mm程度のものが用いられる。
また、本発明に用いる支持体の材質としては、導電性、絶縁性のいずれのものも使用できるが、導電性であるものが好ましく、例えば、チタン、金等を挙げることができる。
次に、図3に本発明の電極の配設例を示す。図3では、固体片の表面を導電性ダイヤモンドで被覆して電極材料とし、これを複数接触させ電極材料集合体とし、さらにこれらを導電性の支持体で支持して電極としている。なお、この例では、本発明の電極を陽極として使用している。前述のようにダイヤモンド被覆にはP型不純物元素をドーピングしているため、ダイヤモンド膜は導電性を有している。また、各電極材料の固体片は、互いに隣接するもの同士が弾性的に接触しているため、支持体からの電流をそのまま伝導することができ、液の電気化学処理に使用することができる。大面積に連続した膜を被覆するのとは異なり、このように被覆することにより、欠陥のない小面積の連続被覆の集合体を容易に作製することができる。
また、固体片を複数集めて相互に接触するように保持することによって、必要充分な接液面積を獲得することができる。
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<電極材料の製造>
固体片としてモリブデン製の直径10mmの球体を用い、この表面にマイクロ波プラズマCVDによって、導電性ダイヤモンドを厚さ10μmになるまで堆積して、電極材料を製造した。なお、ドーパントとしてホウ素を用い、10,000ppmの割合でダイヤモンドにドーピングして、導電性ダイヤモンドとした。
固体片としてモリブデン製の直径10mmの球体を用い、この表面にマイクロ波プラズマCVDによって、導電性ダイヤモンドを厚さ10μmになるまで堆積して、電極材料を製造した。なお、ドーパントとしてホウ素を用い、10,000ppmの割合でダイヤモンドにドーピングして、導電性ダイヤモンドとした。
<電極材料集合体および電極の製造>
次に、図4に示すように、実施例1で得られた電極材料4個を底面が1辺10mmの正方形の四角柱状の支持体に充填し、電極とした。なお、上記電極材料は、図4に示すように互いに接触しており、電極材料集合体を形成している。ここで用いた支持体は、チタン製のため導電性を有し、また、網目状の構造により通液性を有する。
次に、図4に示すように、実施例1で得られた電極材料4個を底面が1辺10mmの正方形の四角柱状の支持体に充填し、電極とした。なお、上記電極材料は、図4に示すように互いに接触しており、電極材料集合体を形成している。ここで用いた支持体は、チタン製のため導電性を有し、また、網目状の構造により通液性を有する。
<廃水の浄化試験>
実施例2で製造した電極を用いて、紙パルプ生産工程から排出される廃水の浄化試験を行った。
実施例2で製造した電極を用いて、紙パルプ生産工程から排出される廃水の浄化試験を行った。
なお、紙パルプ生産工程からの廃液としては、(1)木材中に含まれているリグニンやヘミセルロースを多量に溶解する蒸解廃液、(2)未晒スクリーン廃水、および(3)漂白廃水の3つがあるが、今回は、(3)の漂白廃水を用いた。即ち、クラフトパルプ漂白プラントにおける塩素化段階、およびアルカリ抽出段階から採取した液を各々1:1の容積比で混合したものをサンプル液とした。
試験は、図4に示すように、100cm3のサンプル液を液槽に入れ、実施例2で製造した電極を陽極、底面が1辺10mmの正方形の四角柱状のチタンを陰極とし、50mA/cm2の電流密度を常に印加して行った。なお、この50mA/cm2は、通常電極の限界電流密度に近い値である。
サンプル液の初期のpHは2.33、色度は3300度、化学的酸素要求量(COD)は1830mg/lであった。そして、サンプル液の初期の色度を1として、通電時間に対する色度の変化を調べた。結果を図5に示す。
また、比較例として、本発明の電極に替えて、陽極として底面が1辺10mmの正方形の四角柱状のモリブデンの表面を、厚さ10μmの導電性ダイヤモンドで被覆した角柱電極を用いた以外は、実施例3と同様の条件にて浄化試験を行った。結果を図5に併せて示す。
図5より、本発明の電極は、角柱状の電極に比べ、含有有機物の分解による脱色が速く進行しており、浄化速度が速いことがわかる。
Claims (10)
- 大きさが5〜60mmの固体片を、導電性ダイヤモンドで被覆した電極材料。
- 導電性ダイヤモンドの被覆の厚さが2〜20μmである、請求項1に記載の電極材料。
- 固体片が、塊状物または線状物である、請求項1または2に記載の電極材料。
- 塊状物が、粉末状、粒子状、ビーズ状、球状、角状からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項3に記載の電極材料。
- 線状物が、繊維状、紐状、綱状、索状、棒状からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項3に記載の電極材料。
- 固体片が、モリブデン、ニオブ、イリジウム、レニウム、タンタル、タングステン、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の電極材料。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の2以上の電極材料を含む電極材料集合体であって、1の電極材料が少なくとも1つの他の電極材料に接触する電極材料集合体。
- 請求項7に記載の電極材料集合体を備えた電極。
- 請求項7に記載の電極材料集合体を、支持体で支持した電極。
- 支持体が導電性である、請求項9に記載の電極。
Priority Applications (6)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011521102A (ja) * | 2008-05-14 | 2011-07-21 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア | ダイアモンド電極でリグニンを電気化学的に分解するための方法 |
-
2003
- 2003-08-08 JP JP2003289865A patent/JP2005060752A/ja active Pending
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JP2011521102A (ja) * | 2008-05-14 | 2011-07-21 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア | ダイアモンド電極でリグニンを電気化学的に分解するための方法 |
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