JP2005055884A - 熱可塑性プラスチックレンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学特性、熱特性、力学特性に優れかつ耐すり傷性、耐衝撃性といった各種性能のバランスに優れたプラスチックレンズを射出成形により安価に生産すること。
【解決手段】 ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックを成形してなるレンズ基材の少なくとも一面に、ハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズおよびガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックを成形してなるレンズ基材の少なくとも一面に、プライマー層を形成し、続いてハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズ。

【選択図】 なし

Description

本発明は透明性、低複屈折などの光学的特性に優れ、かつ耐すり傷性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性、可とう性、耐熱性、耐光性、耐候性などに優れ、さらに、生産性に優れた熱可塑性プラスチックレンズとりわけ眼鏡用として好適な熱可塑性プラスチックレンズに関する。
近年数々の光学用途に熱可塑性プラスチックの使用が提案されている。とりわけ、ヘルスケア用途として眼鏡用レンズがあげられるが、薄型化、軽量化、安全性(耐衝撃性)、ファッション性などの観点から活発な材料開発が行われている。眼鏡レンズは、現在では安全性、軽量化などがガラスより優れている点で市場の90%は透明樹脂成形体からなる樹脂製レンズが占めている。従来の眼鏡レンズ用樹脂製レンズはCR−39、アクリル(ハロゲン原子含有ビスフェノールA系、硫黄原子含有系など)、ポリウレタンなどがあげられるが、これらはすべて熱硬化性であり樹脂製レンズの製造法はガラスモールド内にモノマーを注型、重合するキャスト重合法が用いられる。この方法では均一な樹脂製レンズを得るために長時間の重合プロセス、応力歪みを緩和するためのアニーリングプロセスなど製造コストが高くなるという問題点がある。ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂をレンズに適用すれば成形性が良く、キャスト重合に比べ格段に製造コストを安くできる射出成形法等を用いることができるが、ポリカーボネートは熱硬化性樹脂と比較して耐薬品性が乏しいという問題があった。また、ポリカーボネートは耐衝撃性に富む透明プラスチック基材ではあるが、表面硬度(鉛筆硬度)が低い(2B)ため、ハードコート性を有する被膜の形成によりハードコートを行っても十分な耐すり傷性が得られないという課題がある。さらにポリカーボネートは分散が大きく、色滲み(色収差)を生じやすく、染色しづらい点や、射出成形の応力歪みにより、複屈折を生じやすく、光学歪みの小さいレンズを得るのが難しいといった課題もある。
また、上述のように熱硬化性樹脂製眼鏡レンズ基材の衝撃強度向上、表面耐擦り傷性向上や反射防止の機能を施すためにレンズ基材に各種コーティングを施すことが特許文献1、2、3、4、5、6に記載されている。一方、熱可塑性透明プラスチックとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどが知られており、特許文献7、8、9にはポリメタクリル酸メチルやポリカーボネート樹脂にハードコートを施し、眼鏡用レンズとして使用することが開示されている。しかしながら、熱可塑性樹脂であるポリメタクリル酸メチルは耐熱性が低いため、各種コーティングを行う際に基材の変形が生じるなどの問題がある上、耐薬品性とりわけ、薬品によるストレスクラッキングの発生などの問題がある。また、ポリメタクリル酸メチルの表面硬度(鉛筆硬度)は2Hであり、ハードコート性を有する被膜によるハードコートを行う際に、十分な耐すり傷性を得るためには、基材の表面硬度が十分ではない。熱可塑性透明プラスチックの耐熱性を向上する手法として、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体を押出機を用いて加熱して環化反応させることにより得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体が特許文献10、11に開示されているが、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する重合体を製造する際の重合温度が高いため、押出機を用いて該重合体を加熱処理して得られるグルタル酸無水物単位を有する共重合体は著しく着色するという問題があった。
また、特許文献12、13、14には不飽和カルボン酸単量体単位を含有する重合体溶液を真空下で加熱することによりグルタル酸無水物単位を含有する共重合体を製造する方法が開示されている。しかし、これら公報に記載されている方法においても不飽和カルボン酸単量体を含有する重合体を溶液中で製造する際の重合温度が高いため、重合体を溶液のまま真空下で加熱しても、得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体の着色抑制効果は十分ではなく、プラスチックレンズに求められる高度な無色性の要求を満たすものではなかった。さらに得られた共重合体を空気中で高温滞留させた際、著しく着色し滞留安定性(熱変色性)に劣るという問題があった。
さらに、優れた耐熱性を有する透明樹脂として、グルタル酸無水物構造を有する重合体を多官能性分子鎖連結剤で架橋してなる透明樹脂が、特許文献15に開示されているが、同文献には上記樹脂を光学レンズに用い得ることは記載されているものの、実用的なプラスチックレンズを得るための手段については全く開示されていない。さらに同文献記載の透明樹脂は、上記ポリメタクリル酸メチルと比較すると全光線透過率がやや低い傾向があるものであった。
特開昭63−141001号公報(第1頁、実施例) 特開平3−109502号公報(第1頁、実施例) 特開昭63−87223号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭60−214301号公報(第1−2頁、実施例) 特開平5−25299号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭60−214302号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭49−107031号公報(第1頁、実施例) 特開昭52−112698号公報(第1頁、実施例) 特開昭53−111336号公報(第1頁、実施例) 特開昭49−85184号公報(第1−2頁、実施例) 特開平1−103612号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭58−217501号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭60−120707号公報(第1−2頁、実施例) 特開平1−279911号公報(第1−2頁、実施例) 特開2002−293835号公報(第1−2頁、実施例)
本発明者らは、上記欠点を解決するため鋭意検討を重ね、射出成形可能な熱可塑性透明プラスチックでありながら、熱硬化性樹脂に匹敵する優れた光学特性、低光学歪性、耐薬品性、耐熱性を有し、さらに耐衝撃性および表面の耐すり傷性を改善しかつ良好な接着性を有し、また多種の色に染色可能なハードコート性を有するプラスチック成形体を見出し、本発明に至った。本発明の目的は、高い衝撃強度、耐すり傷性、優れた反射防止性、高い透明性、低光学歪性、低分散性等に優れたプラスチックレンズ、とりわけプラスチック眼鏡レンズを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
[1]ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックを成形してなるレンズ基材の少なくとも一面にハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズ、
[2]ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックを成形してなるレンズ基材の少なくとも一面に、プライマー層を形成し、続いてハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズ、
[3]上記[1]または[2]記載の熱可塑性プラスチックレンズにおいて、熱可塑性プラスチックのかわりに、ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックにゴム質含有重合体を添加した組成物を用いる熱可塑性プラスチックレンズ、
[4]熱可塑性透明プラスチックのガラス転移温度が130℃以上であり、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が4H以上であることを特徴とする上記[1]〜[3]いずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ、
[5]熱可塑性透明プラスチックが下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有する構造を有する熱可塑性重合体である上記[1]〜[4]いずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ、
Figure 2005055884
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
[6]熱可塑性重合体が、(i)上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%を有する共重合体であることを特徴とする[5]に記載の熱可塑性プラスチックレンズ、
[7]熱可塑性重合体が、上記(i)(ii)の単位にさらに、(iii)不飽和カルボン酸単位を10重量%以下、および/または、(iv)その他のビニル系単量体単位を10重量%以下有する共重合体であることを特徴とする[5]または[6]に記載の熱可塑性プラスチックレンズ、
[8]前記不飽和カルボン酸単位(iii)が、下記一般式(2)で表される構造を有する[7]記載の熱可塑性プラスチックレンズ、
Figure 2005055884
(ただし、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
[9]前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)が、下記一般式(3)で表される構造を有する[6]〜[8]のいずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ、
Figure 2005055884
(ただし、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を示す)
[10]ハードコート性を有する被膜の表面にさらに、無機化合物の蒸着による単層または多層の反射防止膜を形成してなる[1]〜[9]いずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズである。
本発明によって得られたハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズは、以下に示す効果がある。
(1)射出成形による生産が可能であり、大量生産性および安価なプラスチックレンズを提供可能である。
(2)高アッベかつ光学歪みの小さいプラスチックレンズが得られる。
(3)高い耐すり傷性の表面を有し、耐熱性、耐久性に優れている。
(4)耐衝撃性に優れる。
本発明に用いる熱可塑性透明プラスチックは、一般には鎖状の高分子であり、温度を上げると軟化し、流動性を示すようになり熱と圧力で望みの形に成形することができる透明樹脂である。具体的には、熱プレス成形、射出成形、射出圧縮成形、押出成形などにより賦形が可能である。本発明においては、その化学構造としては特に制限はないが、以下の特徴を備えるものを選択的に用いることにより、本発明の効果が奏される。
すなわち、本発明に用いる熱可塑性透明プラスチックはその耐熱性の指標となるガラス転移温度が120℃以上であり、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは140℃以上、最も好ましくは150℃以上である。上限としては射出成形が可能である限り特に制限はないが、200℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が120℃未満ではハードコート性を有する被膜の被膜形成、反射防止性付与などの後加工工程の際に熱可塑性透明プラスチックレンズ基材が変形するなどの問題が生じる可能性があるため好ましくない。尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度(Tg)である。
また、本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックは、その表面硬度が、鉛筆硬度(JIS−K−5401)で測定して3H以上であり、4H以上が好ましい。表面硬度が2H以下の熱可塑性透明プラスチックをプラスチックレンズ基材として使用した場合、通常の方法でハードコート性を有する被膜を形成しても十分な表面硬度は得られず、一方、ハードコートの性能を高めようとすると膜厚を厚くする必要があるため好ましくない。
本発明は、プラスチックレンズとして好適な性能を有するものであり、本発明に用いる熱可塑性透明プラスチックのアッベ数としては50以上の樹脂を用いるのが好ましく、さらに好ましくは53以上である。アッベ数50以上の場合、色収差が小さく、眼鏡レンズとして好適である。なお、アッベ数は光の分散の度合いを表す指標であり、
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc)
(ここで、nd:d線屈折率(波長587.6nm)、nf:f線屈折率(波長656.3nm)、nc:c線屈折率(波長486.1nm)。)
の式で表される。測定は、熱可塑性透明プラスチックのASTM1号ダンベルのチャック部分をダイヤモンドカッターで長手方向に対して直角に切断し、その断面を長手方向、元の成形品の端面を幅方向として、全ての面を#1200のバフ研磨で鏡面仕上げを行い、幅方向、長手方向の2面の屈折率を測定する。測定は、各面の直角度を補正するため、裏表の平均値として求め、さらに、長手方向と幅方向の平均値により評価するものとする。アッベ数は屈折計(例えば、カルニュー工業(株)製:KPR−2)により、d線、f線、c線の屈折率を測定し、上式により算出したものである。本発明において、単に屈折率という場合にはd線屈折率を指す。
また、本発明に用いる熱可塑性透明プラスチックの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましいのは90%以上、最も好ましいのは92%以上である。また、全光線透過率の上限としては通常94%程度である。
また、本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックまたはその組成物は、透明性を表す指標の1つであるヘイズ値(濁度)が、3%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。これにより高度な透明性を有する。また、ヘイズ値の下限としては通常、0.5%程度である。
なお、上記熱可塑性透明プラスチック、あるいは組成物の全光線透過率およびヘイズは、いずれもプレス成形により得た50mm×50mm×1mmの成形品を用い、23℃でJIS−K7361およびJIS−K7136に従い、測定した値である。
また、本発明における、熱可塑性透明プラスチックは、上記のような特徴を有するものを選択すればよいが、かかる特性を満足する熱可塑性透明プラスチックの好適な例として、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するものが開示できる。
本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックとして好ましいものは、上記のごとく、下記一般式(1)
Figure 2005055884
(上記式中、R、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で表されるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体であるが、中でも(i)上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する共重合体若しくは上記単位に(iii)不飽和カルボン酸単位を有する共重合体又は上記(i)(ii)若しくは上記(i)(ii)(iii)の単位にさらに(iv)その他のビニル系単量体単位を有する共重合体が好ましい。
また本発明に好ましく使用できる熱可塑性重合体は、紫外線吸収剤などの添加剤を用いずに測定した、280nm波長での吸光度(ここで、吸光度は、厚さ100μmのフィルムを用いて、分光光度計で測定したときの値を示す)が0.5以下であることが好ましい。
また、上記熱可塑性重合体は、上記の特定波長において特定範囲の吸光度特性を有することにより、黄色度(Yellowness Index)の値が5以下の色調に優れた成形品が得られることを見出した。尚、ここでいう黄色度(Yellowness Index)とは、上記熱可塑性重合体のガラス転移温度+100℃でプレス成形し得た厚さ1mm成形品をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機(株)製)を用いて測定したYI値である。このような熱可塑性重合体を得るためには、特に、後述する共重合体(A)の製造時に重合温度を90℃以下の温度に制御することが重要である。
このような本発明に好ましく使用できる上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体は、基本的には以下に示す方法により製造することができる。すなわち、後の加熱工程により上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位(i)を与える不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体と、前記その他のビニル系単量体単位(iv)を含む場合には該単位を与えるビニル系単量体とを共重合させ、共重合体(A)とした後、かかる共重合体(A)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し(イ)脱アルコール及び/又は(ロ)脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。この場合、典型的には、共重合体(A)を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基が脱水されて、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位が生成される。
この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(4)
Figure 2005055884
(ただし、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
で表される化合物、マレイン酸、及びさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。なお、上記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸単量体は、共重合すると上記一般式(2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位を与える。
また不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、下記一般式(5)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2005055884
(ただし、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を示す)
これらのうち、炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は置換基を有する該炭化水素基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると上記一般式(3)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を与える。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル(但し、本発明における「(メタ)アクリル酸」の記載は、アクリル酸またはメタアクリル酸とを略して表示したものである)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いる共重合体(A)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体を用いてもかまわない。その他のビニル系単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができるが、透明性、複屈折率、耐薬品性の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
共重合体(A)の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができるが、不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
本発明に好ましく使用できる熱可塑性透明プラスチックとしては、黄色度の小さいものが好ましいが、この熱可塑性重合体においてそのような黄色度の小さいものを得るためには、前述したとおり、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を90℃以下の重合温度で重合することにより、前記共重合体(A)を製造することが重要である。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために好ましい重合温度は80℃以下であり、特に好ましくは70℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上、好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能であるが、この場合も昇温する上限温度は90℃以下に制御することが重要であり、好ましくは85℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
本発明において、共重合体(A)の製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100重量%として、不飽和カルボン酸系単量体が15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は好ましくは50〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%、これらに共重合可能な他のビニル系単量体を用いる場合、その好ましい割合は0〜35重量%、特に好ましい割合は0〜10重量%である。
不飽和カルボン酸系単量体量が15重量%未満の場合には、共重合体(A)の加熱による上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位の生成量が少なくなり、耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸系単量体量が50重量%を超える場合には、共重合体(A)の加熱による環化反応後に、不飽和カルボン酸単位が多量に残存する傾向があり、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、本発明に好ましく使用できるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体の分子量は、重量平均分子量で3万〜15万であることが好ましい。このような分子量を有するグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体は、共重合体(A)の製造時に、共重合体(A)を重量平均分子量で3万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。なお、ここでいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
共重合体(A)の分子量制御方法については、例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、本発明の特定の分子量に制御するものであれば、特に制限はなく、共重合する単量体種により、その添加量は異なるが、通常、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.3〜5.0重量部であり、好ましくは、0.8〜5.0重量部であり、さらに好ましくは0.9〜4.0重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部である。例えば、t−ドデシルメルカプタンを使用する場合には、1.0〜3.0重量部の範囲で特に有効であり、n−ドデシルメルカプタンを使用する場合には、0.6〜2.0重量部の範囲で特に有効である。
本発明における共重合体(A)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造する方法は、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や窒素気流中などの不活性ガス雰囲気で、または真空下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜320℃の範囲、より好ましくは180〜300℃の範囲、さらに好ましくは、220〜300℃の範囲である。
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のスクリュー直径(D)とスクリューの長さ(L)の比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向がある。押出機を用いて共重合体(A)を加熱する際の押出機のシリンダ温度は180〜320℃に設定することが好ましく、180〜300℃に設定することがより好ましく、220〜300℃に設定することがさらに好ましく、220〜290℃に設定することが特に好ましい。
さらに本発明では、共重合体(A)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用できる。
本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックとして好ましく使用できる熱可塑性重合体中の前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量は、表面硬度及びガラス転移温度が本発明の範囲内であれば、特に制限はないが、好ましくは熱可塑性重合体100重量%中に好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは25〜50重量%、とりわけ30〜45重量%が好ましい。グルタル酸無水物単位の含有量とガラス転移温度の関係は、他の共重合成分の種類によっても変わるため一概にはいえないが、グルタル酸無水物単位が多い方がガラス転移温度は上昇する傾向にあるため、少なすぎると耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。
また、本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックとして好ましく使用できる熱可塑性重合体は、上記グルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位からなる共重合体が好ましく使用できる。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位量は、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは50〜75重量%、さらに好ましくは55〜70重量%である。
また、上記熱可塑性重合体には、上記(i)および(ii)成分の他に不飽和カルボン酸単位および/または、共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。
本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックとして好ましく使用できる熱可塑性重合体においては、共重合体(A)の(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコール反応を十分に行うことにより熱可塑性重合体中に含有される不飽和カルボン酸単位量は10重量%以下、すなわち0〜10重量%とすることが好ましく、より好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜1重量%である。不飽和カルボン酸単位が10重量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、共重合可能な他のビニル系単量体単位量は0〜35重量%であることが好ましいが、より好ましくは10重量%以下、すなわち0〜10重量%であり、さらに好ましくは0〜5重量%である。特に、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体単位を含有する場合、含有量が多すぎると、無色透明性、光学等方性、耐薬品性が低下する傾向がある。
上記熱可塑性重合体における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物単位は、1800cm-1及び1760cm-1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。
また、1H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分として、スチレンを含有する場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックとして好ましく使用できる熱可塑性重合体は、ジメチルホルムアミド溶液、30℃で測定した極限粘度が0.1〜0.7dl/gであることが好ましく、0.3〜0.6dl/gであることがより好ましい。
さらに本発明で好ましく用いられる熱可塑性重合体は、ガラス転移温度+100℃で10分間滞留させた前後の黄色度差が5以下の優れた滞留安定性(熱変色性)を有する。尚、ここでいうガラス転移温度+100℃で10分間滞留させた前後の黄色度差とは、前記したYI値と、熱可塑性重合体のガラス転移温度+100℃でプレス成形機上で10分間滞留させた後の厚さ1mm成形品をそれぞれJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機(株)製)を用いて測定したYI値の差の絶対値を示す。
このような黄色度差を有する熱可塑性重合体を得るには特に上述のように、共重合体(A)の(イ)脱水及び/または(ロ)脱メタノール反応を十分に行い、熱可塑性重合体中に含有される不飽和カルボン酸単量体が10重量%を越えないようにするのが重要である。
本発明に使用する熱可塑性透明プラスチックは、さらにゴム質含有重合体を添加し、組成物とすることは、レンズに成形した際の耐衝撃性を高めることができるため好ましい。ゴム質含有重合体を添加した場合にも上記の全光線透過率ならびにヘイズを維持することが、プラスチックレンズとして好ましい。
本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックとして、とりわけ好ましく使用できるグルタル酸無水物単位を有する熱可塑性重合体は、ゴム質含有重合体を含有せしめることにより、グルタル酸無水物単位を有する熱可塑性重合体の優れた特性を損なうことなく優れた耐衝撃性を付与することができる。ゴム質含有重合体としては、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体(B−1)や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル単量体などからなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体(B−2)等が好ましく使用できる。
本発明に使用されるコアシェル型の多層構造重合体(B−1)を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴム、および(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有するゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位およびブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分から構成される共重合体を架橋させたゴムも好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて不飽和グリシジル基含有単位、不飽和カルボン酸単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明のゴム質重合体を含有する多層構造重合体(B−1)において、最外層(シェル層)の種類は、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびその他のビニル単位などを含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれた少なくとも1種が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体が最も好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸共重合体であるもの、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる。ここで、“/”は共重合を示す。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸重合体であるものが、連続相(マトリックス相)である熱可塑性共重合体(A)との屈折率を近似させ得ること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
さらに、多層構造重合体(B−1)のコア成分とシェル成分の屈折率を近似させることも優れた透明性発現のために有効である。従って、例えば、上記の好ましい例において、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸重合体であるものにおいて、連続相(マトリックス相)である熱可塑性重合体と多層構造体(B−1)のコア層および最外層の屈折率を近似させることにより、特に優れた透明性が発現する。上記の場合、コア層の屈折率は、アクリル酸ブチルとスチレンの共重合比の変更により調節可能である。 なお、本発明における、上記好ましい多層構造重合体(B−1)における最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸重合体であるものについては、上記の多層構造重合体(B−1)における最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体であるものを加熱することにより、前述した熱可塑性重合体の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位が生成することを見出した。従って、最外層に不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体を有する多層構造重合体(B−1)を熱可塑性重合体などの熱可塑性透明プラスチックに配合し、適当な条件で、加熱溶融混練することにより、最外層に前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する多層構造重合体(B−1)が得られる。これにより、連続相(マトリックス相)となる熱可塑性重合体等の熱可塑性透明プラスチック中に、多層構造重合体(B−1)が、凝集することなく、良好に分散することが可能となり、組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうるものと考えられる。
本発明の多層構造重合体(B−1)の数平均粒子径については、得られる組成物の衝撃強度の点から0.01μm以上、透明性の点から1000μm以下であることが好ましく、さらに、0.02μm以上、100μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、10μm以下であることがさらに好ましく、0.05μm以上、1μm以下であることが最も好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、さらに、60重量%以上、80重量%以下であることがより好ましい。
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また常法により作製して用いることもできる。
また、本発明におけるゴム質含有重合体(B)として使用されるグラフト共重合体(B−2)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル単量体、不飽和カルボン酸単量体、芳香族ビニル単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体(B−2)に用いられるゴム質重合体としては、ジエンゴム、アクリルゴムおよびエチレンゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
本発明におけるグラフト共重合体(B−2)を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径は、0.1〜0.5μm、特に0.15〜0.4μmの範囲が好ましい。上記の範囲未満では得られる組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484-490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明におけるグラフト共重合体(B−2)は、ゴム質重合体10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を越える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
なお、グラフト共重合体(B−2)は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成するグラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は、0.1〜0.6dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
本発明におけるビニル共重合体(B−2)のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には、特に制限はないが、0.2〜1.0dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
本発明におけるグラフト共重合体(B−2)の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法により得ることができる。
本発明において熱可塑性透明プラスチックに対しゴム質含有重合体を配合する場合、それぞれの屈折率を近似させることにより、熱可塑性プラスチックレンズの透明度を必要な範囲に制御すればよい。屈折率の差が小さい程透明性が増す傾向にあり、具体的には、両者の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、熱可塑性重合体等熱可塑性透明プラスチックの各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはゴム質含有重合体に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などが挙げられる。
なお、ここで言う屈折率差とは、熱可塑性重合体等熱可塑性透明プラスチックが可溶な溶媒に、組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(熱可塑性重合体等熱可塑性透明プラスチック)と不溶部分(ゴム質含有重合体)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
また、組成物中での熱可塑性重合体等熱可塑性透明プラスチックとゴム質含有重合体の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作の後に、各成分を個別に分析可能である。
本発明において、熱可塑性重合体等熱可塑性透明プラスチックとゴム質含有重合体との重量比は、99/1〜50/50の範囲であることが好ましく、さらに、99/1〜60/40の範囲であることがより好ましく、特に99/1〜70/30の範囲であることが最も好ましい。
さらに、本発明で用いる熱可塑性透明プラスチックには、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。これらの添加剤は、例えば二軸押出機を用いた溶融混練や射出成形時に添加するなどの方法により、熱可塑性透明プラスチックに配合することができる。
本発明において熱可塑性透明プラスチックとゴム質含有重合体を配合する方法としては、熱可塑性透明プラスチックとゴム質含有重合体を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。また、熱可塑性透明プラスチックおよびゴム質含有重合体の両成分を溶解する溶媒の溶液中で混合した後に溶媒を除く方法も用いることができる。
また、上記組成物の製造方法として、前述の共重合体(A)とゴム質含有重合体を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練することにより、前述した環化反応による共重合体(A)の熱可塑性透明プラスチックへの変換を行うと同時に、ゴム質重合体成分の配合を行うことができる。また、この際、ゴム質含有重合体成分の一部に不飽和カルボン酸単量体単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体を含む場合の環化反応も同時に行うことができる。
本発明において、熱可塑性透明プラスチックを成形してレンズ基体を得る方法には、公知の方法が採用し得、特に限定されないが、例えば、射出成形法、プレス成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、トランスファ成形法、積層成形法、押出成形法などが挙げられる。熱可塑性透明プラスチックの成形温度は、通常、ガラス転移温度+100〜200℃が好ましく、120〜170℃がより好ましい。また、射出成形を行う場合は、金型温度は、室温〜ガラス転移温度の領域が好ましい。
本発明の熱可塑性プラスチックレンズは、上記のように熱可塑性透明プラスチックまたは組成物を成形してなるレンズ基体の少なくとも一面に、ハードコート性を有する被膜を形成したものであるが、ハードコート性を有する被膜の前に、熱可塑性透明プラスチックまたは組成物を成形してなるレンズ基体の少なくとも一面に、プライマー層を形成し、続いてハードコート性を有する被膜を形成し熱可塑性プラスチックレンズとするのが好ましい。
本発明の熱可塑性プラスチックレンズにおいて熱可塑性透明プラスチックまたは組成物を成形してなるレンズ基材に形成するプライマー層とはレンズ基材とハードコート性を有する皮膜の密着性を高める目的以外に、熱可塑性プラスチックレンズの耐衝撃性を高める機能を有している。耐衝撃性の改良はハードコート性を有する皮膜上にさらに無機化合物の蒸着による単層または多層の反射防止膜を形成した場合に特に顕著に現れる。
本発明の熱可塑性プラスチックレンズ基材に好ましく形成することのできるプライマー層としては、熱硬化性樹脂製レンズ基材に使用されるプライマー層が使用できる。具体的には、ポリウレタン系、エポキシ系、アクリル系および/またはメタクリル系化合物とスチレンの共重合体の硬化物などがいずれも好ましく使用できる。
本発明において、上記のとおり、熱可塑性透明プラスチックレンズ基材へのプライマー層の形成は、ハードコート性を有する被膜の密着性向上や、熱可塑性透明プラスチックレンズの耐衝撃性向上といった効果をもたらすが、熱可塑性透明プラスチックレンズ基材にゴム質含有重合体を添加して組成物とした場合や、ハードコート性を有する被膜自体がこのような機能を有する場合には、プライマー層の形成は必ずしも必要ではない。
本発明においてプライマー層として好ましく使用できるポリウレタン系プライマーとしては、両末端に活性水素を有する化合物とジイソシアネート化合物の反応により得られる熱可塑性ポリウレタン、ポリオールとポリイソシアネートに硬化触媒を作用させ、加熱により硬化反応させることにより得られる熱硬化性ポリウレタンが挙げられる。
熱可塑性ポリウレタンの場合、両末端に活性水素を有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのアルキレングリコール類、ポリテトラメチレンアジペートなどのポリアルキレンアジペート類、ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリアルキレンカーボネート類、シリコーンポリオール類などと、ジイソシアネート化合物、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート等を触媒存在下で反応させた熱可塑性ポリウレタンを適宜溶剤で希釈し、レンズ基材上に塗布した後、加熱乾燥させることによりプライマー層を形成することができる。レンズ基材への塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法など公知の塗布方法から選択できる。
一方、熱硬化性ポリウレタンの場合、レンズ基材上にポリオール化合物とポリイソシアネート化合物、硬化触媒からなる組成物を塗布し、加熱により硬化させることでプライマー層を形成することができる。この場合、ポリイソシアネート化合物として非ブロック型、ブロック型のいずれも使用可能であるが、非ブロック型では室温で硬化反応が進行するため、組成物のポットライフが短いという問題があり、加熱によるブロッキング剤の脱離により初めて硬化反応が進行するブロック型のイソシアネートが好ましく使用できる。ポリオール化合物の具体例としては、分子内に複数個の水酸基を有するポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネートなどが例示できる。ブロック型ポリイソシアネートとしては市販のものが使用できるが、各種ジイソシアネート化合物の数量体をアセト酢酸、マロン酸などでブロックした化合物が使用できる。レンズ基材への塗布については適宜溶媒による希釈を行い、スピンコート法、ディッピング法等の公知の方法で行うことができる。硬化反応は適宜設定した温度と反応時間で行うが、通常100℃以上の温度で10分から2時間の硬化時間を要する。
エポキシ系のプライマー層としては、ジオールあるいはポリオールのジグリシジルエーテルをエポキシ硬化触媒により硬化させたものが例示できる。具体的にはグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジグリシジルエーテルを過塩素酸類等のエポキシ硬化触媒により硬化させたプライマー層が挙げられる。
レンズ基材への塗布に際しては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法等、公知の方法が適用可能である。エポキシ化合物と硬化触媒からなる組成物を塗布した後、適宜設定した温度、好ましくは100℃以上の温度で通常1〜60分加熱することによりプライマー層を形成することができる。
そのほか、アクリル系および/またはメタクリル系化合物とスチレンの共重合体の硬化物をプライマー層として使用することも可能である。
プライマー層をレンズ基材に塗布する際に、必要に応じてレベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、顔料、フォトクロ剤などの添加剤を添加してレンズに各種機能を付与することもできる。
本発明の熱可塑性プラスチックレンズは、レンズ基材の少なくとも一面に対してハードコート性を有する被膜を形成したものであり、好ましくは、前述のプライマー層を形成させた後、続いてハードコート性を有する被膜を形成したものである。
ハードコート性とは、プラスチックレンズ基材の表面硬度を補い、耐すり傷性を向上せしめるべく熱可塑性透明プラスチックよりも高硬度な被膜を付与することを言う。
本発明で使用可能なハードコート性を有する皮膜は、特に限定するものではなく、メラミン系、シリコン系、アクリル系、などが使用できるが、硬いハードコート皮膜が得られる点で、シリコン系、アクリル系が好ましい。これらのハードコート被膜は、常法により形成することが可能である。
本発明におけるシリコン系ハードコート皮膜の好ましい様態として、(a)一般式(6)
Figure 2005055884
(ただしR6は炭素数1〜5の炭化水素基または炭素数1〜4のアシル基である)で示されるケイ素化合物の加水分解物100重量部、(b)一般式(7)
Figure 2005055884
(ただしR7は炭素数1または2の炭化水素基、R8は炭素数1〜5の炭化水素基または炭素数1〜4のアシル基である)で示されるケイ素化合物の加水分解物400〜20重量部、および(c)硬化剤からなる組成物が例示できる。一般式(6)で示されるケイ素化合物において、R6の具体例はメチル、エチル、プロピルなどのアルキル基やアセチル基などのアシル基である。また一般式(7)のケイ素化合物における炭素数1または2の炭化水素とはメチルまたはエチル基であり、さらにR8はR6と同一群から選ばれるものであるが、両基は同一のものであっても異なっていてもよい。これらのケイ素化合物は既知の化合物であり、公知の方法により調製し得る。
一般式(6)および(7)のケイ素化合物はそれぞれ別々にまたは混合して、水単独または水と溶液(有機溶媒)と必要に応じて少量の酸を添加することにより加水分解される。
上記(c)の硬化剤とは炭素数1〜4の有機カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸および炭酸の各アルカリ金属塩中の少なくとも1種、または水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラn−ブチルホスホニウム、第四アンモニウムヒドロキシド、第四ホスホニウムヒドロキシドが例示できる。(c)硬化剤は上記(a)、(b)のケイ素化合物の加水分解物溶液に均一に溶解させ使用する。溶剤としては通常ジオキサン、アルコール類が好ましく使用できる。上記の溶液をレンズ基材に塗布し、ついでその表面を加熱することにより、ハードコート性を有するコーティング皮膜が形成される。塗布の方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、ロール塗りなど公知の方法を用いることができる。加熱条件については100℃以下の低温で硬化が可能である。
さらに、ハードコート性を有するシリコン系皮膜の別の好ましい様態として、(d)一般式(8)
Figure 2005055884
(ただし式中R9は炭素数1〜6の炭化水素基、メタクリロキシ基またはエポキシ基を有する有機基、R10は炭素数1〜4の炭化水素基、R11は炭素数1から5の炭化水素基、アルコキシアルキル基または水素原子、mは0または1を表す)で示される有機ケイ素化合物の1種もしくは2種以上、(e)粒子径1〜100nmのシリカ微粒子、(f)多官能エポキシ化合物および(g)硬化触媒からなる組成物の溶液をレンズ基材に塗布した後、加熱硬化させる手法が挙げられる。
上記一般式(8)で示されるケイ素化合物として、具体的には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等およびその加水分解物が例示できる。(e)シリカ微粒子としては一般的にコロイダルシリカあるいはシリカゾルと呼ばれる水またはアルコール系溶媒微粒子が分散されたものが好ましい。
(f)多官能エポキシ化合物としては、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジグリシジルエーテルなどの多官能アルコールのグリシジルエーテル類が具体的に例示できる。また、(g)硬化触媒としては過塩素酸類が好適なエポキシ硬化触媒として例示できる。
本発明におけるアクリル系ハードコート被膜の好ましい様態として、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含むコーティング剤を塗布後、重合及び/または反応せしめることにより樹脂とした被膜が好ましく用いられる。
本発明における1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基(但し、本発明における「(メタ)アクリロイル基」の記載は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基とを略して表示したものである)を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを用いることができる。具体的には、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の少なくとも1種を含むハードコート層を形成する化合物組成であることが、硬度ならびに硬化性はもちろん、耐摩耗性と可撓性に優れるので好ましい。
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の使用割合は、固形分総量に対して50〜95重量%が望ましい。上記単量体の使用割合が50重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られ難く、またその量が95重量%を超える場合は、重合による収縮が大きく、硬化被膜に歪みが残ったり、被膜の可撓性が低下する傾向を示すので好ましくない。
上記ハードコート層の化合物組成を重合、及び/または反応させる方法として紫外線を照射する方法が挙げられるが、この場合には前記組成物に光重合開始剤を加えることが望ましい。
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせてもよい。光重合開始剤の使用量は、固形分中、0.01〜10重量部が適当である。
また他の方法として電子線又は放射線を重合、及び/または反応手段として用いることができる。電子線又は放射線を用いる場合は必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
本発明に用いられるハードコート層を形成する化合物組成には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなど、公知の熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、固形分中、0.005〜0.05重量%が好ましい。
上記のアクリル系ハードコート層の塗布手段としては、スプレー法、浸漬(ディップ)法、ロールコーティング法、ダイスコーティング法、グラビアコーティング法など、公知の方法が挙げられる。
本発明に用いられるハードコート層を形成する化合物組成には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の目的を損なわない範囲において、有機溶剤を配合することができる。
有機溶剤としては、基材が基本的に侵されない溶剤種を選択する必要があるが、通常、沸点が50〜150℃のものが、塗工時の作業性、重合、及び/または反応前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
本発明におけるハードコート性を有する被膜の屈折率は反射防止性の付与あるいは干渉縞のない熱可塑性プラスチックレンズを得るために1.40〜1.65の間で好ましく用いられる。また干渉縞のない高品質な熱可塑性プラスチックレンズを得るためには、熱可塑性透明プラスチック基材とハードコート性を有する被膜の屈折率差を±0.05に設定することが好ましい。特に干渉縞の発生を極力抑えることが必要な用途においてはその屈折率差を±0.02以内に設定することが好ましい。本発明におけるハードコート性を有する被膜の膜厚は特に限定されないが、密着強度の保持、耐すり傷性などの点から10〜20,000nmの間で好ましく用いられる。すなわち、10nm未満では被覆効果が認められず、20,000nmを越えると塗りむらなどが生じ易くなる。
本発明の熱可塑性プラスチックレンズにおいては、さらに必要に応じて反射防止性を付与することができる。反射防止性とは、透明成形体を通して物を見る場合、反射光が強く、反射像が明瞭であることはわずらわしく、例えば眼鏡レンズではゴースト、フレア等とよばれる反射像を生じて眼に不快感を与えるのを防止することであり、例えば単層被膜においては、基材より低屈折率の被膜を光学的膜厚が光波長の1/4ないしはその奇数倍になるように選択することによって極小の反射率すなわち極大の透過率を与えることである。ここで光学的膜厚とは、被膜の屈折率と該被膜の膜厚の積で与えられるものである。反射防止性を付与する方法としては、ウエットコーティングあるいは真空蒸着などのドライコーティングが挙げられる。また、反射防止性を付与する膜構成は単層であっても多層であっても良く、熱可塑性透明樹脂の屈折率、ハードコート性を有する被膜の屈折率および膜厚、あるいは要求される反射防止性能などによってその最適な組合せは決定される。尚、反射防止特性に関しては既に多くの組合せが提案されており(光学技術コンタクト,Vol.9,No.8.17〜23.(1971),OPTICS OF THIN FILMS,159〜282.A.VASICEK(NORTH−HOLLAND PUBLISHING COMPANY).AMSTERDAM(1960))、本発明においてもこれらの組合せを用いることは何ら問題ない。また、各層間の密着性向上手段として前述の前処理などが有効である。
また、本発明の熱可塑性プラスチックレンズは、特にその良好な光学的特性、力学特性、耐すり傷性、また射出成形性に優れ大型成形品への適用が容易であり、さらに染色性、耐熱性、耐光性、耐候性、耐薬品性を有していることから、眼鏡レンズを始めとする各種レンズ類に好適である。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各測定および評価は次の方法で行った。
1.熱可塑性透明プラスチックの諸性能
1.1 光学特性
各種熱可塑性透明プラスチックまたは組成物のASTM1号ダンベルのチャック部分をダイヤモンドカッターで長手方向に対して直角に切断し、その断面を長手方向、元の成形品の端面を幅方向として、各面を#1200のバフ研磨で鏡面仕上げを行い、幅方向、長手方向の2面の屈折率を測定した。測定は、各面の直角度を補正するため、裏表の平均値として求め、さらに、長手方向と幅方向の平均値により評価した。
屈折計(カルニュー光学工業(株)製:KPR−2)を使用し、d線(波長:587.6nm)屈折率(nd)、下式より求められるアッベ数(νd)を測定した。
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc)
(ここで、nd:d線屈折率(波長587.6nm)、nf:f線屈折率(波長656.3nm)、nc:c線屈折率(波長486.1nm)。)
すなわち、その数値が大きいほど低分散であることを示している。
1.2 光学歪み
射出成形により、直径35mm、中央部の肉厚1.48mm、外周部の肉厚2.2mm、フロントカーブの曲率Rf:181mm、バックカーブの曲率Rb:99mmのモデル凹レンズ(レンズ外周に設けられた幅5mm、厚み2.2mmの1点ゲートを有するもの)を成形し、2枚の偏光板の間に挟み、白色光を透過させ、光学的な歪みの有無を観察した。レンズ内に光学歪みが観察されないものを○、レンズ内に光学歪みを示す不均一な模様が観察されたものを×と判定した。
1.3 280nmでの吸光度
熱可塑性透明プラスチックを20重量%のTHF溶液とし、これを用いて流延法により100μmフィルムを作成した。(株)島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−1600PC)を用いて、該フィルムの280nmにおける吸光度を測定した。
1.4 黄色度(Yellowness Index)
熱可塑性透明プラスチックまたは、熱可塑性透明プラスチックにゴム質含有重合体を添加した組成物を、熱可塑性透明プラスチックのガラス転移温度100℃でプレス成形した厚さ1mmの成形品のYI値を、JIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
1.5 ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
1.6 透明性(全光線透過率、ヘイズ)
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、熱可塑性透明プラスチックまたは組成物をガラス転移温度+100℃でプレス成形して得た50mm×50mm×1mmの成形品の23℃での全光線透過率(%)を測定し、透明性を評価した。
1.7 表面硬度
射出成形により得られた、80mm×80mm×3mmの角板成形品の鉛筆硬度をJIS−K−5401に従い測定した。
1.8 耐薬品性
図1に示すように、試験片として射出成形により得た12.5mm×125mm×1.6mmの板状成形品1を、1/4楕円治具2の湾曲面3に沿わして固定後、薬液としてサラダ油(日清オイリオ(株)製、「日清サラダ油」)を成形品表面全体に塗布して60℃環境下で48時間放置後、クラックの発生有無およびその位置を確認した。図1はこの評価における1/4楕円治具および板状成形品の概略図である。そのクラック発生位置の最短長軸方向長(X)を測定し、下式により臨界歪みτ(%)を算出した。クラックの発生しなかった場合を○、その他は×と判定し、×の場合には限界ひずみ(%)を付記した。
τ=b/2a[1−(a−b)X/a−3/2×t×100
τ:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(127mm)
b:治具の短軸(38.1mm)
t:試験片の厚み(1.6mm)
X:クラック発生位置の最短長軸方向長(mm)。
1.9 耐衝撃性
2で成形したモデル凹レンズの剛球落下試験をFDA規格に基づき行った。約16.4gの剛球を127cm高さからレンズ中心部に向かって自然落下させ、割れないものを合格として○印、割れたものは×印の評価とした。なお、割れたものについては、同じ質量の剛球落下で割れない最高高さ(10cm刻み)を測定し、付記した。また、割れなかったものについては、前記の2倍の質量、すなわち、約32.8gの剛球をレンズ中心部に向かって自然落下させ、割れない最高高さ(10cm刻み)を測定し、付記した。
2.ハードコート性を有する被膜を形成したプラスチックレンズ、またはプライマー層およびハードコート性を有する被膜を形成したプラスチックレンズの諸性能
上記1.2で成形を行ったモデル凹レンズにハードコート性を有する被膜を形成したプラスチックレンズおよび、プライマー層を施した後に、さらハードコート性を有する被膜を形成したプラスチックレンズの特性評価を実施した。
2.1 外観
目視にて透明性やクラックを観察して無いものを○とした。
2.2 密着性
被膜面に1mmの熱可塑性透明プラスチック基材に達する碁盤目を被膜の上から綱ナイフで100個入れて、セロハン粘着テープ(商品名“セロテープ(登録商標)”ニチバン(株)製)を強く貼り付け90度方向に急速に剥がして被膜剥離の無いものを◎、被膜剥離数が1〜5のものを○、6〜10のものを△、11以上のものを×とした。
2.3 耐すり傷性
被膜面をNo0000のスチールウール(日本スチールウール(株)製:商品名“ボンスター”)で擦ってすり傷具合を判定した。判定基準は、以下のとおりである。
○・・・強く摩擦しても傷が付かない
△・・・強く摩擦すると少し傷が付く
×・・・弱い摩擦でも傷が付く。
2.4 耐衝撃性
FDA規格に基づき、剛球落下試験を行った。約16.4gの剛球を127cm高さから1.2項で示した寸法のレンズのハードコート性を有する被膜を形成した面の中心部に向かって自然落下させ、割れないものを合格として○印、割れたものは×印の評価とした。なお、割れたものについては、同じ質量の剛球落下で割れない最高高さ(10cm刻み)を測定し、付記した。また、割れなかったものについては、前記の2倍の質量、すなわち、約32.8gの剛球をレンズ中心部に向かって自然落下させ、割れない最高高さ(10cm刻み)を測定し、付記した。
3.反射防止膜を形成したプラスチックレンズの特性
上記1.2で成形を行ったモデル凹レンズにハードコート性を有する被膜を形成したプラスチックレンズまたは、プライマー層を施した後に、さらハードコート性を有する被膜を形成したプラスチックレンズ上に、さらに反射防止膜を施したプラスチックレンズの特性評価を実施した。
3.1 耐衝撃性
FDA規格に基づき、剛球落下試験を行った。約16.4gの剛球を127cm高さから1.2項で示した寸法のレンズ中心部に向かって自然落下させ、割れないものを合格として○印、割れたものは×印の評価とした。なお、割れたものについては、同じ質量の剛球落下で割れない最高高さ(10cm刻み)を測定し、付記した。また、割れなかったものについては、前記の2倍の質量、すなわち、約32.8gの剛球をレンズ中心部に向かって自然落下させ、割れない最高高さ(10cm刻み)を測定し、付記した。
参考例1
1.熱可塑性透明プラスチックの作製
共重合体(A−1a)の作成
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(A−1a)を得た。この共重合体(A−1a)の重合率は98%であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
熱可塑性透明プラスチック(A−1b)の作成
得られたビーズ状共重合体(A−1a)を、角型真空定温乾燥器(ヤマト科学(株)製DP−32型)を用いて250℃、2.6kPaに減圧し、30分間真空加熱処理を行い、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑透明プラスチック(A−1b)を得た。得られた熱可塑性透明プラスチック(A−1b)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm-1及び1760cm-1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性重合体(A−1b)中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、1H−NMRにより、定量した各共重合成分組成および各種特性評価結果を表1に示す。
参考例2
参考例1で使用した重合体(A−1a)を2軸押出機(TEX30((株)日本製鋼所製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数100rpm、重合体(A−1a)100重量部に対して、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給量5kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。
参考例3
参考例1において作成した共重合体(A−1a)に代えて、(A−1a)を作成する際の単量体の仕込み組成を以下に変更し、同様の方法で共重合体(A−2a)を作成した。
メタクリル酸 20重量部
メタクリル酸メチル 80重量部
これを用いて、参考例1と同様の条件で熱可塑性透明プラスチック(A−2b)を作成した。
参考例4
参考例3で作成した共重合体(A−2a)を用いて、参考例2と同様の操作を行い、熱可塑性透明プラスチック(A−2b’)を作成した。
参考例5
共重合体(A−3a)の作成
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調整した。メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保つ。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、アクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得る。得られた水溶液を懸濁剤として使用した)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(A−3a)を得た。この共重合体(A−3a)の重合率は98%であった。
メタクリル酸 30重量部
メタクリル酸メチル 70重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.6重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
熱可塑性透明プラスチック(A−3b’)の作成
得られたビーズ状共重合体(A−3a)を2軸押出機(TEX30((株)日本製鋼所製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数100rpm、重合体(A−a3)100重量部に対して、ナトリウムメトキシド0.1部を添加し、原料供給量5kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性透明プラスチック(A−3b’)を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。
参考例6
参考例5において作成した共重合体(A−3a)に代えて、(A−3a)を作成する際の単量体の仕込み組成を以下に変更し、同様の方法で共重合体(A−4a)を作成した。
メタクリル酸 15重量部
メタクリル酸メチル 85重量部
これを用いて、参考例5と同様の操作を行い、熱可塑性透明プラスチック(A−4b’)を作成した。
また、参考例1〜6で得られた、6種の熱可塑性透明プラスチックを射出成形機((株)名機製作所製M−50AII−SJ)に供して、成形温度:290℃、金型温度:100℃、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、射出圧力:10MPaで射出成形し、直径35mm、中央部の肉厚1.48mm、外周部の肉厚2.2mm、フロントカーブの曲率Rf:181mm、バックカーブの曲率Rb:99mmのモデル凹レンズを成形した。また、ASTM1号ダンベル、80mm×80mm×3mmの角板成形品、80mm×80mm×1mmの角板成形品および12.5mm×125mm×1.6mmの板状成形品を成形した。さらに、ガラス転移温度+100℃でプレス成形により、50mm×50mm×1mmの成形品を得た。これらの成形品を用いて、上記の方法により、屈折率等の光学特性、透明性、表面硬度、耐薬品性、光学歪み他について評価を行った。結果を表2に示す。
参考例7
ゴム質重合体(B−1)の作成
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル22重量部、メタクリル酸8重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は155nmであった。このゴム質含有重合体のシェルの組成が、共重合体(A−1a)の組成とほぼ一致するように設計した。
参考例8
ゴム質重合体(B−2)の作成
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(B−2)を得た。このグラフト共重合体(B−2)のグラフト率は45%、アセトン可溶分のメチルエチルケトン溶媒、30℃での極限粘度は0.36dl/gであった。
参考例9
ゴム質重合体の熱可塑性透明プラスチックのへの添加
参考例7で作成した、ゴム質重合体(B−1)20重量部と参考例2で作成したペレット状の熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状の組成物(C−1)を得た。
この組成物(C−1)にアセトンを加え、4時間還流した後、9,000rpmで30分間遠心分離することにより、アセトン可溶分と不溶分に分離した。アセトン不溶分については、赤外分光法で、グルタル酸無水物含有単位の特徴的ピークである1800cm-1および1760cm-1の吸収ピークの存在を確認し、ゴム質重合体(B−1)のシェル成分が加熱時に環化し、グルタル酸無水物構造が生成したことを確認した。
参考例10
参考例8で作成した、ゴム質重合体(B−2)20重量部と参考例2で作成したペレット状の熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状の組成物(C−2)を得た。
参考例9および10で得られた、2種のゴム質重合体のそれぞれと熱可塑性透明プラスチックの組成物を射出成形機((株)名機製作所製M−50AII−SJ)に供して、成形温度:290℃、金型温度:100℃、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、射出圧力:10MPaで射出成形し、直径35mm、中央部の肉厚1.48mm、外周部の肉厚2.2mm、フロントカーブの曲率Rf:181mm、バックカーブの曲率Rb:99mmのモデル凹レンズを成形した。また、ASTM1号ダンベル、80mm×80mm×3mmの角板成形品、80mm×80mm×1mmの角板成形品および12.5mm×125mm×1.6mmの板状成形品を成形した。さらに、ガラス転移温度+100℃でプレス成形により、50mm×50mm×1mmの成形品を得た。これらの成形品を用いて、上記の方法により、屈折率等の光学特性、透明性、耐薬品性、光学歪みについて評価を行った。結果を表2に併せて示す。
実施例1
参考例1で作成した、熱可塑性透明プラスチック(A−1b)のモデル凹レンズ成形品にプライマー層(D−1)、ハードコート性を有する被覆(E−1)および反射防止膜(F−1)の形成を行った。評価結果を表3に示す。
2.プライマー層(D−1)の形成
市販のポリウレタン溶液LQ3510(三洋化成(株)製、固形分濃度30%、トルエン/イソプロピルアルコール溶液)をさらに、トルエン/イソプロピルアルコール(容積比2/1)で希釈し、固形分濃度を10%に調整し、この溶液100重量部に対して、さらにシリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、L−7002)を0.05重量部添加し、プライマー溶液とした。この溶液を1で射出成形したモデル凹レンズの両面にディッピング法で塗布した。プライマー溶液を塗布後、110℃で40分間加熱処理し、熱可塑性プラスチックレンズにプライマー層(D−1)を形成させた。
3.ハードコート性を有する被覆(E−1)の形成
ビニルトリエトキシシラン130重量部、メチルトリメトキシシラン190重量部を混合し、これに0.01Nの塩酸110重量部を加え、加水分解を行った。発熱を伴い、透明均一な溶液になるまで攪拌を続け、室温まで自然冷却した後、ジオキサン250重量部、氷酢酸1.2重量部、および酢酸ナトリウム0.8重量部を添加し、均一なハードコート溶液を調製した。上記プライマー層(D−1)を形成させたモデル凹レンズに対し、上記ハードコート溶液をディッピング法で塗布し、90℃、30分間加熱乾燥しハードコート膜を硬化させた。
4.反射防止膜(F−1)の形成
上記ハードコート性を有する被膜(E−1)を形成させたモデル凹レンズのハードコート被膜の上に無機物質であるZnO2/SiO2の混合物(光学的膜厚nd=λ/2)、ZnO2(nd=λ/2)、SiO2(nd=λ/4)を順次真空蒸着法で多層被覆した。このモデル凹レンズを評価した。結果は表3に示す。
実施例2〜4
参考例2〜4で作成した、熱可塑性透明プラスチックのモデル凹レンズ成形品にプライマー層(D−1)、ハードコート性を有する被覆(E−1)および反射防止膜(F−1)の形成を行った。評価結果を表3に示す。
実施例5
参考例2で作成した熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を用いて、作成したモデル凹レンズに対して、以下の方法でプライマー層(D−2)を施した以外は実施例1と同様の方法により、ハードコート性を有する被覆および反射防止膜を施し、評価を行った。結果は表3に示す。
プライマー層(D−2)の形成
グリセリンポリグリシジルエーテル(長瀬産業(株)製”デナコール”EX313)100重量部と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(長瀬産業(株)製”デナコール”EX212)100重量部に硬化触媒として過塩素酸マグネシウム5重量部を400重量部のイソプロピルアルコールと共に混合、希釈し、さらにシリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製,L−7002)0.1重量部を添加し、プライマー溶液とした。この溶液を、熱可塑性透明ブラスチック(A−1b’)にディッピング法により塗布(引き上げ速度10cm/分)し、100℃で60分間加熱処理し、プライマー層(D−2)をモデル凹レンズ上に施した。
実施例6
実施例2で作成した熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を用いて、作成したモデル凹レンズに対して、以下の方法でハードコート性を有する被覆(E−2)を施した以外は実施例1に記載の方法により、プライマー層、反射防止膜の形成を行い、評価を行った。結果は表3に示す。
ハードコート性を有する被膜(E−2)の形成
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン250重量部、コロイダルシリカ(日産化学工業製”メタノールコロイダルシリカ”固形分濃度30%)125重量部およびメチルセロソルブ450重量部からなる溶液に0.05規定の塩酸70重量部を添加し、加水分解を行った。この溶液を0℃で一昼夜熟成した後、グリセリンポリグリシジルエーテル(長瀬産業(株)製”デナコール”EX313)85重量部と過塩素酸マグネシウム5重量部を添加し、攪拌して均一溶液とした後、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、L−7002)0.05重量部を添加し、ハードコート被膜形成用溶液を調製した。既にプライマー層(D−1)を施した熱可塑性透明プラスチックレンズ(A−1b’)に対して、ディッピング法(引き上げ速度20cm/分)によりこのハードコート被膜形成用溶液を塗布し、80℃で1時間、100℃で2時間加熱硬化することにより、ハードコート被膜(E−2)を形成した。
実施例7
参考例2で作成した熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を用いて、作成したモデル凹レンズに対して、プライマー層の形成を行うことなく、以下の方法でハードコート性を有する被覆(E−3)を施し、さらに反射防止膜(F−1)の形成を実施例1に従い行い、評価を行った。結果は表3に示す。
ハードコート性を有する被膜(E−3)の形成
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)社製)90重量部、マクロモノマーAN−6S(末端基がメタクリロイル基で高分子量(セグメント)の成分がスチレン/アクリロニトリルであり、数平均分子量が6,000のマクロモノマー)(東亞合成(株)社製、固形分40重量%)20重量部、光開始剤1−ヒドロキシフェニルケトン(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製) 5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合して塗液Aとした。各樹脂成形品の上面に上記塗液Aを乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、オーブンで、80℃で5分、100℃で5分の2段階乾燥を行った後、塗膜からの高さ12cmにセットした80W/cmの強度を有する高圧水銀ランプ灯で紫外線を5分照射し、ハードコート層を形成した。
実施例8〜10
参考例2で得た熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)を用い、表3に示すようにプライマー層およびハードコート性を有する被膜の形成を行ったモデル凹レンズの評価を行った。反射防止膜の形成は行っていない。これらの評価結果を表3に併せて示す。
実施例11〜17
参考例5または6で得た熱可塑性透明プラスチック(A−3b’)、(A−4b’)を用い、表3に示すようにプライマー層およびハードコート性を有する被膜の形成、反射防止膜の形成を行ったモデル凹レンズの評価を行った。これらの評価結果を表3に併せて示す。
実施例18〜21
参考例9および10で作成した、熱可塑性透明プラスチック(A−1b’)にゴム質重合体(B)を添加してなる組成物を成形してなる、モデル凹レンズに、表3に示すプライマー層、ハードコート性を有する皮膜の形成、反射防止膜の形成を行い、これらの評価を行った。結果は、併せて表3に示す。
比較例1〜3
プラスチックレンズ基材として、ポリメチルメタクリレート(住友化学(株)製”スミペックス”MGSS、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製”ユーピロン”H3000)を射出成形し、反射防止膜を施さなかった以外は実施例1と同様の手順で評価を行った。また、CR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)の重合体である眼鏡レンズを実施例1のモデル凹レンズのサイズに切削加工し同様に評価を行った。結果を表3に示す。
比較例4〜6
上記比較例1〜3のレンズにさらに実施例1の手法で反射防止膜を施し、同様の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2005055884
Figure 2005055884
Figure 2005055884
耐薬品性試験に用いる1/4楕円治具の概略図を示す。
符号の説明
1.板状成形品
2.治具
3.湾曲面

Claims (10)

  1. ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックを成形してなるレンズ基材の少なくとも一面にハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズ。
  2. ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックを成形してなるレンズ基材の少なくとも一面に、プライマー層を形成し、続いてハードコート性を有する被膜を形成してなる熱可塑性プラスチックレンズ。
  3. 請求項1または2記載の熱可塑性プラスチックレンズにおいて、熱可塑性プラスチックのかわりに、ガラス転移温度が120℃以上で、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が3H以上の熱可塑性透明プラスチックにゴム質含有重合体を添加した組成物を用いる熱可塑性プラスチックレンズ。
  4. 熱可塑性透明プラスチックのガラス転移温度が130℃以上であり、かつ鉛筆硬度で表される表面硬度が4H以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
  5. 熱可塑性透明プラスチックが下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有する構造を有する熱可塑性重合体である請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
    Figure 2005055884
    (上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
  6. 熱可塑性重合体が、(i)上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%を有する共重合体であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
  7. 熱可塑性重合体が、上記(i)(ii)の単位にさらに、(iii)不飽和カルボン酸単位を10重量%以下、および/または、(iv)その他のビニル系単量体単位を10重量%以下有する共重合体であることを特徴とする請求項5または6に記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
  8. 前記不飽和カルボン酸単位(iii)が、下記一般式(2)で表される構造を有する請求項7記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
    Figure 2005055884
    (ただし、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
  9. 前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)が、下記一般式(3)で表される構造を有する請求項6〜8のいずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
    Figure 2005055884
    (ただし、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を示す)
  10. ハードコート性を有する被膜の表面にさらに、無機化合物の蒸着による単層または多層の反射防止膜を形成してなる請求項1〜9いずれかに記載の熱可塑性プラスチックレンズ。
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