JP2005052904A - 振動ドリル - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題はドリルモード及び振動ドリルモードにおいて、ドリルの振動が使用者には伝わりにくい構造にすることである。
【解決手段】第2ラチェットと振動ドリル本体の一部との間に第1のスプリングを設け、第2ラチェットの反復移動が上記第1部材に衝突しない範囲で行なわれるようにすると共に、第2ラチェットの回転の許容及び抑止を切替える手段を有し、第2ラチェットの回転を許容するときはスピンドルに回転力のみを付与し、第2ラチェットの回転を抑止するときはスピンドルに振動と回転力を付与するようにした。
【選択図】図16

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えばコンクリートやモルタル、タイル等の穴開け作業に用いられる振動ドリルに係り、特にドリルビットを回転することにより穿孔加工を行うドリルモードと、ドリルビットに回転と振動を与えることにより穿孔加工を行う振動ドリルモードを有する振動ドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】実用新案出願公開昭59−69808号
【特許文献2】特開平8−323520号
この種の振動ドリルの従来例を図1に示す。同図において1は振動ドリルの外郭を形成すると共に内蔵部品を所定の位置に配置する本体枠部であり、ギアカバー17、インナカバー18、アウタカバー19、ハウジング7、ハンドル部6を有する。2はこのギアカバー17内の横方向に挿通されたスピンドル、3はスピンドルの先端に装着されたドリルチャックである。スピンドル2の中央部付近には回転ラチェット4が取り付けられている。回転ラチェット4はスピンドル2の回転と共に回転し、スピンドル2の軸方向の移動と共に移動する。また回転ラチェット4の一方の面4aには鋸歯状の凹凸が形成されている。
【0003】
5は上記回転ラチェット4と対向する位置に配置された固定ラチェットであり、その一方の面5aには同様に鋸歯状の凹凸が形成されている。固定ラチェット5は中空円筒状をしており、スピンドル2の回転及び軸方向の移動とは無関係に固定されている。
【0004】
一方、ハンドル部6に連接するハウジング7の内部にはモータ8が配置されている。モータ8の回転駆動力は回転軸9を介して歯車10に伝達される。歯車10はセカンドピニオン11に圧入されているため上記の回転駆動力はセカンドピニオン11に伝達される。セカンドピニオン11は歯数の異なる2ヶ所のピニオン部11a、11bを有し、それぞれが低速ギア12及び高速ギア13と係合しており、セカンドピニオン11が回転すると両ギア12、13も回転する。
【0005】
14はクラッチディスクでありスピンドル2と係合し、且つその軸方向に摺動できるように取り付けられている。図1のようにクラッチディスク14が低速ギア12の凹部に挿入されると、セカンドピニオン11の回転が、低速ギア12及びクラッチディスク14を介してスピンドル2に伝達される。一方、クラッチディスク14が図1の位置から右方向に摺動し、高速ギア13の凹部に挿入されると、セカンドピニオン11の回転が、高速ギア13、クラッチディスク14を介してスピンドル2に伝達される。従って、クラッチディスク14の移動によりスピンドル2を低速回転させたり高速回転させることができる。
【0006】
15は振動ドリルの動作モード、即ちドリルモードと振動ドリルモードの切替えを行うためのチェンジレバーである。このチェンジレバー15にはチェンジシャフト16が圧入されており、チェンジレバー15を回動させることによりチェンジシャフト16も一緒に回動する。チェンジシャフト16には図2、3、4に示すように切欠部16aがあり、この切欠部16aが図2の位置にあるときはインパクトドリルがドリルモードとして作動し、切欠部16aが図3の位置にあるときは振動ドリルモードとして作動する。
【0007】
(A)ドリルモード
今、ドリルチャック3に装着したビット(図示せず)を被加工面に接触させ、ハンドル部6を図1の矢印の方向に押した場合、チェンジシャフト16の切欠部16aが図2の位置にあるとスピンドル2の端部がチェンジシャフト16に当接し、右方向に動くことができない。従って回転ラチェット4の凹凸面4aと固定ラチェット5の凹凸面5aとは接触しない。従ってモータ8の回転駆動力は低速ギア12又は高速ギア13を介してスピンドルに伝達してビットは回転力を付与される。
【0008】
(B)振動ドリルモード
一方、振動ドリルモードの場合はチェンジレバー15を回動させてチェンジシャフト16の切欠部16aを図3の位置にもってくる。そうするとドリルチャック3に装着したビットを被加工面に接触させ、ハンドル部6を図1の矢印の方向に押すと図4に示すようにスピンドル2の端部が切欠部16aの中に入る。つまりスピンドル2が右方向に若干移動するために、回転ラチェット4の凹凸面4aが固定ラチェット5の凹凸面と接触することになる。
【0009】
被加工面を穿孔するに際し、図4の状態でスピンドル2を回転すると、回転ラチェット4が固定ラチェット5を噛合状に係合して回転するために両ラチェット4及び5の凹凸面により振動を生じ、この振動がスピンドル2を通じてビット(図示せず)に伝わる。つまりビットには回転力と振動が付与され、その両方により穿孔動作が行われることになる。
【0010】
しかしながら上記のような振動ドリルにおいては振動ドリルモードで動作するときに、ラチェット4及び5の凹凸面が圧接した状態で回転することにより生ずる振動がビットに伝達するだけでなく、固定ラチェット5及びインナカバー18を通じてハウジング7からハンドル部6にも伝達する。このため振動ドリルの使用者に大きな振動が伝わり、不快感を生じるという問題がある。特に長時間に亘って連続的に振動ドリルを使用する場合は、使用者に伝わる振動が使用者の健康に影響を及ぼすことがないように配慮されなければならない。
【0011】
この使用者に伝わる振動を低減するための構造についてはいくつかの提案がなされている。例えば特許文献1には図5に示すようにクラッチカム21をスピンドル20の軸方向に移動可能に支持すると共に、スプリング23により回転カム22に押圧付勢する構造が開示されている。
【0012】
同図において21は回転カムでスピンドル20と共に回転する。回転カム21のカム面21aには鋸歯状の凹凸が形成されている。
【0013】
一方、クラッチカム22はスピンドル20に対して軸方向にスライド可能な中空円筒状部とフランジ部22bよりなる。そのフランジ部22bのカム面22cには鋸歯状の凹凸面が形成されている。またクラッチカム22の後端部付近にはその周面に規制溝22aが設けられている。規制溝22aには垂直方向に延びるプレート24が係合している。クラッチカム22のフランジ22bとプレート24との間にはスプリング23が設けられている。
【0014】
スプリング23は、常にはクラッチカム22を回転カム21側に付勢しており、スピンドル20の後退時にはカム面21aと22cとが圧接される。そしてスピンドル20に加わる押圧力がスプリング23の弾発力に打勝ったときは、スプリング23が圧縮してクラッチカム22が後退する(図の右方向に移動する)。しかし規制溝22aが設けられているのでクラッチカム22はその溝の横幅の範囲でしか移動できない。クラッチカム22が後退した位置からスプリング23の弾発力により前進すると回転カム21に衝突し、回転カム21はスピンドル20と共に振動する。
【0015】
このような構造によればカム面21aと22cの接触により生ずる振動がスプリング23により緩和されてハンドル部(図示せず)に伝わるため、図1のようにラチェット5が固定配置された構造に比較して使用者に伝わる振動が低減するという効果がある。
【0016】
しかしながらクラッチカム22はプレート24に係合した溝22aの横幅の範囲で前進、後退を繰り返すために、クラッチカム22の後端部22dがプレート24に繰り返し衝突する。
【0017】
従ってこの部分で生ずる振動は依然としてハンドル部に伝達するのを避けることができないし、又、後端部22d或いはプレート24が機械的疲労により壊れ易いという問題を生ずる。また特許文献1と同様の技術を用いた製品があるが、穿孔作業時に僅かな押し付け力を与えただけでスピンドル若しくはクラッチカムが後方に衝突してしまい、振動がハンドル部に伝達するのを避けることができなかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は上記のような従来の問題点を解決した振動ドリルを提供することにある。
【0019】
具体的には、本発明の目的は穿孔能力を損なうことなく使用者に伝達する振動を低減できる振動ドリルを提供することである。
【0020】
本発明の他の目的はドリルチャックに装着したビットには大きな振動を発生し、ハンドル部には相対的に小さい振動が伝達する振動ドリルを提供することである。
【0021】
本発明の他の目的はスピンドルと共に回転する第1のラチェットと、スピンドルの軸方向に移動する第2のラチェットを設け、第2のラチェットをスプリングにより支持して振動する部品が本体枠部に衝突しない構造(以下フローティング構造と呼ぶ)とすることによりラチェットを構成する部材が機械的疲労を生じにくい振動ドリルを提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は第2ラチェットの回転の許容及び抑止を制御する簡便な手段を有し、第2ラチェットの回転を許容するときはスピンドルに回転力のみを付与し、第2ラチェットの回転を抑止するときはスピンドルに振動と回転力を付与する振動ドリルを提供することにある
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するために、モータにより回転すると共に軸方向に移動可能なスピンドルと、該スピンドルと共に回転及び軸方向移動が可能な第1ラチェットと、該第1ラチェットと対向する位置に設けられ、スピンドルの軸方向に移動可能な第2ラチェットとを有し、上記第2ラチェットに対する上記第1ラチェットの相対回転に伴い、上記第2ラチェットが上記第1ラチェットに対し接触及び離間する反復移動を生じさせることにより、上記スピンドルに軸方向の振動を与える振動ドリルにおいて、本体枠部の一部に設けられた穴から第2ラチェットの円筒部材に設けられた凹部にボールを出し入れすることにより上記第2ラチェットの回転の許容及び抑止を切替える手段を有し、第2ラチェットの回転を許容するときはスピンドルに回転力のみを付与し、第2ラチェットの回転を抑止するときはスピンドルに振動と回転力を付与するようにしたことに一つの特徴がある。
【0024】
本発明の他の特徴は、第2ラチェットの後部と本体枠部との間に第1のスプリングを有し、該スプリングは上記第2ラチェットの反復移動が上記本体枠部に衝突しない範囲で行なわれるようなバネ定数であることにある。
【0025】
本発明の他の特徴は、上記ボールに近接した本体枠部に磁性体を有するチェンジレバーを設け、該チェンジレバーの磁性体の励磁、非励磁を制御してボールを凹部に出し入れすることにある。
本発明の他の特徴及び利点は以下の説明により一層明確に理解される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例について詳細に説明する。
(第1実施例)
図6は本発明の振動ドリルの第1実施例を示す主要部の構成図である。
図に示すように本体枠部101の中にスピンドル102が被削材119に対して前進(図の左方向移動)及び後退(図の右方向移動)移動ができるように設けられている。スピンドル102の先端部にはビット118を装着するためのチャック103が設けられている。本体枠部101のほぼ中央部に第1ラチェット104及び第2ラチェット105が設けられている。第1ラチェット104はスピンドル102と共に回転及び軸方向に移動し、一面に鋸歯状の凹凸を有する。第2ラチェット105は2重の円筒状をなし、内側円筒部105aはスピンドル102上を摺動する。外側円筒部105bは本体枠部101の内壁に沿ってスピンドル102の軸方向に摺動するが、回転運動はできないように円周面の一部に切欠部を有する。内側の円筒部105aと外側の円筒部105bの底部105cにカム面が形成され、鋸歯状の凹凸が形成されている。本体枠部101から内側のスピンドル方向に側壁部122が延在しており、その側壁部122と円筒底部105cとの間にスプリング120が設けられている。本実施例においてはこのスプリング120のバネ定数を適当に選定することにより、ビット118を被削材119に押し付けた時に、第2ラチェット105の端部105dが側壁部122に接触しないように構成したことに特徴がある。
【0027】
通常人間が振動ドリルを使用する場合に、被削材119にビット118を押し付ける時の本体枠部101への押し付け力を測定したところ、人によりバラツキはあるものの15〜25kgfの範囲にあることが見出された。従って本実施例では15〜25kgfの押し付け力が本体枠部101に加わったときに、第2ラチェット105の後方端部105dが側壁部材122に接触しないようなバネ定数を有するスプリング120が用いられる。即ち押し付け力が15〜25kgfの範囲では打撃力の発生部である第2ラチェット105がスプリング120によりハウジングから浮いた構造になっているため後述のように使用者に伝わる振動が低減する。
【0028】
即ち図6は本体枠部101を押し付ける力が0の場合を示しており、第1ラチェット104と第2ラチェット105は離間しているが、小さい押し付け力が発生すると図7のように、第1ラチェット104と第2ラチェット105が接触し、更に大きな押し付け力(15〜25kg)が発生すると図8のようにスプリング120が圧縮する。しかし大きな押し付け力が発生しても第2ラチェット105は図8のようにフローティング状態を維持する。
【0029】
なお、ここでは停止時の状態を前提として説明したが、穿孔作業時においても押し付け力が15〜25kgまでの範囲では手に伝わる振動が小さくなることは実験で確認済みである。また図8から分かるように、スピンドル102も本体枠部101に突き当たらないようになっている。
【0030】
図6の説明に戻り、109はモータ(図示せず)により回転駆動力が伝達される回転軸であり、その回転駆動力は歯車110を介してセカンドピニオン111に伝達される。112は低速ギア、113は高速ギア、114はクラッチディスクであり、クラッチディスク114が図の位置にあるときは低速ギアを介して回転力がスピンドル102に伝達する。
【0031】
一方、チェンジレバー117を回動してクラッチディスク114を高速ギアとスピンドル102とが係合する位置に回動すると、セカンドピニオン111の回転力は高速ギア113を介してスピンドル102に伝達される。従ってチェンジレバー117の回動位置に応じてスピンドル102を低速で回転したり、高速で回転することができる。
【0032】
次に上記の実施例の構造により使用者に伝わる振動、つまり振動ドリル本体の振動が低減する理由について説明する。
【0033】
今、図6の構造をスプリング120の一端に第2ラチェット105が接続され、他端に第2ラチェット以外の振動ドリル本体Mが接続されたモデルとして考えると図9のような単純なモデルとして表わすことができる。第2ラチェット105の振動による変位をZrとし、この変位に起因して本体が振動することによる変位をZbとすると、振動伝達率Tは
T=|Zb/Zr| (1)
で表わされる。
【0034】
更に、第2ラチェット105の振動周波数をf、ドリル本体Mとバネ定数から決まる固有振動数をfcとするとTは次式で表わされる。
T=|Zb/Zr|=1/|1−(f/fc)| (2)
但し第2ラチェット105の振動周波数は第1ラチェット104の回転数をNと、第1及び第2ラチェットの鋸刃状の凸部の数をそれぞれAとするとN×Aで表される。例えばN=36.7rps、A=13とするとfは約480HZになる。
(2)式より第2ラチェット105の振動周波数fとドリル本体Mの固有振動数の比が1より大きいほど、第2ラチェット105の振動がドリル本体Mに伝達され難いことを示している。
【0035】
図10に(2)式を対数グラフにしたものを示す。f/fc=1のときはTが無限大であり共振を起こす危険な領域であるが、(2)式からf/fc=√2であればT=1であり、更にf/fc=√2より大きくなればなるほど振動伝達率Tは小さくなっていくことが分かる。実験から振動伝達率Tが約0.5以下であれば振動低減の効果が十分認められることが分かっており、この条件を満たすためにはf/fcがおよそ2より大きければよい。更にf/fcが3より大きければTは0.1くらいになり効果がより顕著になる。
【0036】
図6の実施例において、ビット118が被削材119に接触しないとき、即ち押し付け力が0のときはスピンドル102と軸受124との間に設けられたスプリング123によってスピンドル102は前方(図の左方向)に移動し、これに伴って第1ラチェット104も前方に移動する。このとき、第2ラチェット105の前方には係止部材125を設けてあり、第2ラチェット105は係止部材125に当接して止まる。一方でスピンドル102と第1ラチェット104はスプリング123の力によって更に前進し、ラチェット同士が係合しない位置まで移動する。押し付け力が0のときは振動を発生させず回転のみが伝わる。係止部材125は肉厚で応力集中がなく、従来技術のように第1ラチェット104との衝突による機械的疲労で壊れることがない。しかしながらこのような構成では、押し付け力が比較的小さいときは第2ラチェット105と係止部材125が衝突してしまい、振動が本体枠部101に伝わることを避けられない。この問題を解決するために、係止部材125をゴムなどの弾性体で構成することが考えられる。ゴムの弾性力と減衰効果によって、振動の伝達を低減できるからである。
(第2実施例)
図11〜14は上記の問題を解決した本発明の別の実施例を示すものであり、第1スプリング120の付勢力に対して逆方向に第2ラチェット105を付勢する第2のスプリング121を設けたものである。
【0037】
なお同図において図6と同じ構成要素には同一の参照符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0038】
今、本体枠部101に加わる押し付け力が0のとき(図11)はスプリング123によりスピンドル102が前方に移動し、従って第1ラチェット104も前方に移動する。第2ラチェット105は第1スプリング120と第2スプリング121の力が釣り合う位置まで前方に移動する。従ってスプリング120、121のバネ定数を適当に選定することにより第1ラチェット104と第2ラチェット105とは離間した状態にすることができる。
【0039】
本体枠部101を軽く押し付けた場合は、極く軽い押し付け力がスピンドル102に作用し、図12のように第1ラチェット104と第2ラチェット105が軽く係合する状態になる。この場合は第2スプリング121の端部に取り付けられたワッシャ128とハウジングの突き当て部101aとが離れており、第2ラチェット105は振動ドリル本体から完全に浮いた状態になる。従って第2ラチェット105の振動はハウジング101に伝達され難いため使用者に伝わる振動は小さい。またハウジング101の変動が少ないために被削材119の穴開け位置が定まり易い。
【0040】
本体枠部101をもう少し強く押しつけると、図13に示すようにワッシャ128とハウジングの突き当て部101aとが接触する。しかし本体枠部101に与える衝撃については、第2ラチェット105による衝突と比べるとワッシャ128の部品の重量が非常に軽いこと、そして第2スプリングの押圧力は本体枠部101の内力であり本体枠部101を動かす力にはならないことから、問題にならないレベルであり、これは実験でも確認済みである。
【0041】
一方、本体枠部101を強く押し付けた場合はスピンドル102及び第1ラチェット104が後方(図の右方向)に移動し、第2スプリング121に設けられたワッシャ128が突きあて部101aに接触する。図14に示すようにこの状態から更に第1ラチェット104が後方に移動すると、第2ラチェット105と噛合ったまま一緒に後方に移動する。しかし第1実施例と同様に通常の人間の押し付け力である15〜25kgfでは第2ラチェット105と側壁部122との間に隙間ができる程度の大きさに第1スプリング120のバネ定数が選定されているため第2ラチェット105は浮いた状態となる。従って第2ラチェット105の振動は本体枠部101に伝わり難く、使用者に不快感を与えることもない。
【0042】
なお、上記の実施例では押し付け力が0のときに、第1スプリング120と第2スプリング121の力が釣り合う位置で第2ラチェット105が保持されるように設定したが、(図15に示すように)ワッシャ128が突きあて部101aに接触した状態で保持されるように設定してもかまわない。このようにすれば第2ラチェット105の静止位置を正確に決めることができる。このようにしても振動に与える影響は上述のように問題にならないレベルである。
(第3実施例)
図16は本発明振動ドリルの別の実施例を示し、図6及び11と同じ構成要素には同一の参照符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0043】
この実施例では本体枠部101の中央部に凹部があり、その底部に穴があいている。一方、第2ラチェット105の外筒部105bにも凹部が形成され、前述の本体枠部101の穴からチェンジボール129が上記外筒部105bの凹部に出し入れできるように構成されている。チェンジボール129の上部には磁石のついたチェンジレバー126が設けられている。
【0044】
今、チェンジレバー126の磁石を励磁してチェンジボール129を吸引すると、該チェンジボール129は第2ラチェット105の外筒部105bの凹部から外れ、図17のような状態になる。
【0045】
従ってスピンドル102が回転すると第1ラチェット104及び第2ラチェット105の両方が回転し、振動ドリルはドリルモードで動作する。
【0046】
一方、チェンジレバー126の磁石を非励磁とするとチェンジボール129は外筒部105bの凹部と係合し、図18のような状態となる。従ってシリンダ102が回転すると、第1ラチェット104は回転するものの第2ラチェット105は回転しないから、第1及び第2ラチェット間の鋸歯状の凹凸面により打撃力が発生し、振動ドリルは振動ドリルモードで動作する。この実施例ではドリルモードで動作するときも第2ラチェット105はフローティング状態となる。また第1及び第2ラチェット104及び105により発振する振動は本体枠部に伝達され難いため使用者に伝わる振動も少なくなる。
【0047】
また、第2ラチェット105と外筒部105bとの間に働く摩擦力がボール129の転がりにより小さくなるため、摩擦ロスを小さくすることができる。
(第4実施例)
図19は本発明振動ドリルの別の実施例を示し、図6、11、16と同じ構成要素には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0048】
この実施例では第2ラチェット105の外円筒部105bの外周に、該ラチェット105の周り止め部品であるラチェットホルダ130が形成され、該ラチェットホルダ130と本体枠部101との間に弾性体131が設けられている。
【0049】
このように構成した場合は第1スプリング120により第2ラチェット105の振動が本体に伝わりにくくなるだけでなく、たとえ振動が伝達しても弾性体131により緩衝されるため使用者に伝わる振動は一層小さくなる。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明にかかる振動ドリルは第2ラチェットに対する上記第1ラチェットの相対回転に伴い、第2ラチェットが上記第1ラチェットに対し接触及び離間する反復移動を生じさせることにより、上記スピンドルに軸方向の振動を与える振動ドリルにおいて、第2ラチェットと振動ドリル本体の一部との間に第1のスプリングを設け、第2ラチェットの反復移動が上記第1部材に衝突しない範囲で行なわれるようにすると共に、ボールを第2ラチェットの凹部に出し入れすることにより第2ラチェットの回転の許容及び抑止を切替える手段を有し、第2ラチェットの回転を許容するときはスピンドルに回転力のみを付与し、第2ラチェットの回転を抑止するときはスピンドルに振動と回転力を付与するようにしたので、ドリルモード及び振動ドリルモードの両方において振動の伝達し難い振動ドリルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の振動ドリルの一例を示す断面図。
【図2】振動ドリルのドリルモードの説明図。
【図3】振動ドリルの振動ドリルモードの説明図。
【図4】振動ドリルの振動ドリルモードの説明図。
【図5】従来の振動ドリルの他の例を示す一部構成図。
【図6】本発明にかかる振動ドリルの第1実施例を示す断面図。
【図7】第1実施例を示す図6において押し付け力が小さいときの説明図。
【図8】第1実施例を示す図6において押し付け力が大きいときの説明図。
【図9】本発明にかかる振動ドリルにおける振動の伝達のメカニズムの説明図。
【図10】本発明振動ドリルの振動伝達の特性図。
【図11】本発明にかかる振動ドリルの第2実施例を示す断面図。
【図12】第2実施例を示す図11において押し付け力が小さいときの説明図。
【図13】第2実施例を示す図11において押し付け力が中程度の場合の説明図。
【図14】第2実施例を示す図11において押し付け力が大きいときの説明図。
【図15】第2実施例において押し付け力が0のときの説明図。
【図16】本発明にかかる振動ドリルの第3実施例を示す断面図。
【図17】図16のA−A´断面図。
【図18】図16のA−A´断面図。
【図19】本発明にかかる振動ドリルの第4実施例を示す断面図。
【符号の説明】
101:本体枠部
102:スピンドル
103:チャック
104:第1ラチェット
105:第2ラチェット
109:回転軸
110:歯車
111:セカンドピニオン
112:低速ギア
113:高速ギア
114:クラッチディスク
117:チェンジレバー
118:ビット
119:被削材
120:第1スプリング
121:第2スプリング
122:側壁部
123:スプリング
124:軸受
125:係止部材
126:チェンジレバー
128:ワッシャ
129:チェンジボール
130:ラチェットホルダ
131:弾性体

Claims (3)

  1. モータにより回転すると共に軸方向に移動可能なスピンドルと、該スピンドルと共に回転及び軸方向移動が可能な第1ラチェットと、該第1ラチェットと対向する位置に設けられ、スピンドルの軸方向に移動可能な第2ラチェットとを有し、上記第2ラチェットに対する上記第1ラチェットの相対回転に伴い、上記第2ラチェットが上記第1ラチェットに対し接触及び離間する反復移動を生じさせることにより、上記スピンドルに軸方向の振動を与える振動ドリルにおいて、本体枠部の一部に設けられた穴から第2ラチェットの円筒状部材に設けられた凹部に、ボールを出し入れすることにより上記第2ラチェットの回転の許容及び抑止を切替える手段を有し、第2ラチェットの回転を許容するときはスピンドルに回転力のみを付与し、第2ラチェットの回転を抑止するときはスピンドルに振動と回転力を付与することを特徴とする振動ドリル。
  2. 請求項1において第2ラチェットの後部と本体枠部との間に第1のスプリングを有し、該スプリングは、上記第2ラチェットの反復移動が上記本体枠部に衝突しない範囲で行われるようなバネ定数であることを特徴とする振動ドリル。
  3. 請求項1において、上記ボールに近接した本体枠部に磁性体を有するチェンジレバーを設け、該チェンジレバーの磁性体の励磁、非励磁を制御してボールを凹部に出し入れすることを特徴とする振動ドリル。
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