JP2005052119A - 新規微生物およびそれを用いる芳香族化合物の分解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価な処理コストにより芳香族化合物の排水処理等を有効なものとする芳香族化合物分解能力を有する微生物およびそれを用いた芳香族化合物の分解方法を提供する。
【解決手段】芳香族化合物を炭素源として分解資化し得るミコバクテリウム属微生物(ミコバクテリウム sp. X32;FERM P-18553)。この微生物を芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させることによってキシレン、トルエン、フェノール等の芳香族化合物の分解が行われる。

Description

本発明は、新規微生物およびそれを用いる芳香族化合物の分解方法に関するものである。
芳香族化合物は、一般に染料、顔料、香料、可塑剤、医薬品、農薬、合成樹脂、界面活性剤など様々な化合物の合成原料としてあるいは溶剤として広く用いられているが、その一方で自然界に排出されると分解されにくく、動植物に対して有害性を示したり、悪臭を放つ化合物が多く、その排水処理が重要な問題となってきている。特にベンゼンやフェノールは水質汚濁防止法によって、またトルエンやキシレンは悪臭防止法によって、それぞれ使用が規制されているため、自然界への排出を未然に防ぐための様々な処理がなされている。しかるに、従来の有機性廃水処理方法の内、物理的処理や化学的処理はコストがかかり、生物的方法はコスト的には安価であるものの、難分解性の芳香族化合物に対しては処理能力が低く、処理しきれない化合物を後工程で取り除かなくてはならないといった問題がある。
本発明の目的は、安価な処理コストにより芳香族化合物の排水処理等を有効なものとする芳香族化合物分解能力を有する微生物およびそれを用いた芳香族化合物の分解方法を提供することにある。
本発明によって芳香族化合物を炭素源として分解資化し得るミコバクテリウム属微生物が提供され、この微生物を芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させることによって芳香族化合物の分解が行われる。
芳香族化合物を炭素源として分解資化し得るミコバクテリウム属微生物、殊にMycobacterium sp. X32(FERM P-18553)を用い、これを芳香族化合物またはこれを含有する廃水等の溶液と接触させることにより、芳香族化合物の処理速度の向上ならびに処理コストの低減を可能とするばかりではなく、それのほぼ完全な分解さえも達成することができ、即ち芳香族化合物含有排水の工業的にすぐれた生物的処理方法がここに提供される。
芳香族化合物を炭素源として分解資化し得るミコバクテリウム属微生物としては、ミコバクテリウム(Mycobacterium) sp. X32(FERM P-18553)などが用いられる。この微生物は、神奈川県藤沢市の活性汚泥中から採取、分離されたものであり、その培養は好気性細菌に用いられる一般的な培地を用いることにより行われる。具体例を挙げると、例えばL-ブイヨン(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、殺菌前のpH7.0)3mlを試験管に入れ、これにMycobacterium sp. X32を加え、37℃で24時間振とう培養することによって培養が行われる。
Mycobacterium sp. X32は、下記の如き菌学的性質を有する。
(1)コロニーの色調 黄
(2)細胞の形 桿菌
(3)酸素に対する態度 通性嫌気性
(4)グラム染色性 陽性
(5)胞子形成能 陰性
(6)オキシダーゼ活性 −
(7)カタラーゼ活性 +
(8)抗酸性 +
(9)GC含量 69.1%
(10)細胞壁ジアミノ酸組成 メソジアミノピメリン酸
(11)生育条件
10℃ −
20℃ +
40℃ +
45℃ −
5%NaCl +
(12)唯一の炭素源としての生育
シュウ酸ナトリウム −
クエン酸ナトリウム −
マンニトール +
(13)ヒドロキシルアミン塩酸(500μg/ml) −
(14)マッコンキー寒天培地 −
(15)マラカイトグリーン(0.01%) +
以上の菌学的性質に基づいて、この菌を BARGEYS MANUAL OF SYSTEMATIC BACTERIOLOGYにより検索した結果、グラム陽性、桿菌で抗酸性を示すことからミコバクテリウム属に属する新規な菌であることを確認した。
Mycobacterium sp. X32を用いての芳香族化合物の分解は、その微生物を芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させることによって行われる。接触方法としては、Mycobacterium sp. X32の芳香族化合物分解能力が失われない限りどのような方法であってもよいが、微生物を芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させる方法としては、直接接触させる方法以外に、ミコバクテリウム属微生物のけん濁液を芳香族化合物を含む培地に直接添加して培養する方法、微生物を多孔質担体に担持したものを芳香族化合物を含む溶液から気化させた芳香族化合物と接触させる方法等が挙げられる。また、培養して得られた培養菌体またはそれの菌体処理物を、芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させることによっても分解は行われる。ここで、菌体処理物とは菌体を加工したものをいい、例えば菌体破砕抽出物、菌体の凍結乾燥物またはそれらをペレット状に固めた物、あるいは菌体を多孔質担体に担持したもの等が挙げられる。
この接触処理時のpHは5〜10、好ましくは7.0付近であり、また温度は20〜35℃、好ましくは35℃付近である。
処理対象となる芳香族化合物としては、トルエン、キシレンまたはフェノール等が挙げられる。
なお、分解処理に関しては、Mycobacterium sp. X32を単独で用いてもよいが、必要に応じて他の微生物と併用することもできる。また、処理時の炭素化合物としては芳香族化合物を唯一の炭素源としてとしても分解処理可能であるが、必要に応じてこれら以外の有機物を加えても良い。さらに窒素化合物や他の無機物、微量栄養物質も適宜添加されて用いられる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1
前記方法で培養されたMycobacterium sp. X32のけん濁液0.5mlを、
(NH4)2SO4 1.2g
KH2PO4 0.1g
K2HPO4 0.2g
MgSO4・7H2O 0.1g
FeSO4・7H2O 0.002g
CaCl・2H2O 0.1g
酵母エキス 3.0g
水 1200ml
よりなり、pHを7.0に調整した本培養培地4.5mlに添加し、さらにo-体、m-体およびp-体を等量ずつ混合したキシレン2μlを添加したものを、栓付試験管に入れた後密栓し、30℃の恒温水槽中で24時間振とう培養した。培養終了後、当該試験管に酢酸エチルを添加してキシレンを抽出し、ガスクロマトグラフィーにてキシレンを定量したところ、m-キシレンおよびp-キシレンは検出されなかった。なお、o-キシレンの減少はみられなかった。
実施例2
実施例1において、キシレン2μlの代わりにトルエン0.5μlを用い、同様に培養を行った後、酢酸エチルを添加してトルエンを抽出し、ガスクロマトグラフィーにてトルエンを定量したところ、トルエンは40%減少していた。

Claims (6)

  1. 芳香族化合物を炭素源として分解資化し得るミコバクテリウム属微生物。
  2. ミコバクテリウム(Mycobacterium) sp. X32(FERM P-18553)である請求項1記載の微生物。
  3. 炭素源となる芳香族化合物がキシレンまたはトルエンである請求項1または2記載の微生物。
  4. 請求項1または2記載のミコバクテリウム属微生物を芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させることを特徴とする芳香族化合物の分解方法。
  5. 請求項1または2記載のミコバクテリウム属微生物を培養して得られた培養菌体またはその菌体処理物を芳香族化合物またはそれを含有する溶液と接触させることを特徴とする芳香族化合物の分解方法。
  6. 芳香族化合物がキシレンまたはトルエンである請求項4または5記載の芳香族化合物の分解方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110372103A (zh) * 2019-05-10 2019-10-25 金华市呗力水产养殖技术有限公司 多功能养殖水体改良剂

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