JP2005049493A - 光学素子用配向膜付フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、液晶を配向させるために形成した凹凸形状を透明基材に転写する方法を用いることにより、透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができ、生産性に優れた光学素子用配向膜付フィルム、およびそれを用いた光学素子を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムを提供する。
【選択図】 無し
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムを提供する。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能な光学素子用配向膜付フィルムおよび光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶ディスプレイ(以下、LCDと称す。)には、光学補償素子が多く利用されている。液晶は、方向によって屈折率が異なるという屈折異方性の物質のため、LCDを斜め方向から見た場合に、暗くなるほど表示品位が落ちてしまう。そのような視野角依存性を改善するために、光学補償が可能な光学補償素子が必要となる(特許文献1、特許文献2)。光学補償素子としては、高分子を1軸に延伸させたもの、または液晶分子を配向させたものが挙げられる。液晶分子を用いた光学補償素子は、高分子のものに比べて異方性が大きいため、1/10の薄さで同じ機能が出せることが特長である。
【0003】
LCDに光学補償素子を用いて視野角依存性を改善する場合、通常は偏光板と互いの光軸(偏光板の場合は吸収軸、光学補償素子の場合は光学軸)をある特定の角度をなすように貼り合わせてLCDに組み込まれる。例えば、特許文献2においては、光学補償素子の光学軸を偏光板の吸収軸と直交させて用いている。
【0004】
ところで、液晶を用いて光学補償素子を作製する際に用いられる基材として、より薄い基材が要求され、フィルム基材が多く利用されてきており、フィルム基材の長尺方向に対してある角度を持たせて液晶を配向させることが要求されている。その理由は、上述したように、LCDに光学補償素子を用いて視野角依存性を改善する場合、偏光板の吸収軸に対して光学補償素子の光学軸が45°や90°等のある特定の角度をなすようにすることが求められる。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。このようなフィルム基材の長尺方向に吸収軸が向いている偏光板と光学補償素子を貼り合わせて、所定の寸法に切断してLCDに組み込むには、光学補償素子の光学軸はその長尺方向に対して45°や90°等の任意の角度をなすように作製しなければならない。
【0005】
液晶を用いた光学補償素子を作製する場合、基材上に液晶を配向させるための配向膜が必要となる。一般的には、ポリイミドなどの高分子を基材上に塗工し、ラビングという擦る作業をすることにより、ラビング方向に沿って液晶を配向させる方法(非特許文献1)、または配向膜に偏光UVを照射し、偏光方向に配向させる方法(非特許文献2、非特許文献3)、さらに一酸化シリコン(SiO)や二酸化チタン(TiO2)等を基材に斜め蒸着し、蒸着方向に因った配向をさせる方法(非特許文献3、非特許文献4)がある。
【0006】
配向方法としてラビング法を用いようとすると、フィルム基材の長尺方向に対してブラシ等で角度をなして連続的にラビングすることにより、フィルム基材の長尺方向に対して横断的な配向方向を持つ長尺のフィルム基材を得ることは困難である。一方、配向方法として、偏光UVを照射する方法やSiO等を斜め蒸着する方法を用いると、フィルム基材の長尺方向以外に角度を持たせた液晶配向の要求を満たすことはできるが、いずれの方法もコストがかかり、フィルム基材を連続的なロールトゥロールプロセスで長時間処理する場合においては、UV偏光や蒸着源と基材との角度や距離を精密に維持し続けることは困難であり、特に斜め蒸着の場合は生産性に乏しいという問題点があった。
【0007】
また、特許文献3には、基材に直接ラビング処理を行わずに液晶分子配列を転写する方法が開示されているが、この方法は樹脂製の平面体からなる鋳型を転写部材に用いた枚葉での処理工程を有しており、長尺の光学素子用配向膜付フィルム等を安定して連続的に製造することは困難である。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−154380号公報
【特許文献2】
特開平11−258605号公報
【特許文献3】
特開平8−313910号公報
【非特許文献1】
「液晶ディスプレイ技術」第2版、産業図書(株)、1997年11月14日、265〜274頁
【非特許文献2】
「液晶配向処理の基礎、応用、実際、技術動向」講演会資料、東京技術情報サービス、2001年9月21日、59〜69頁
【非特許文献3】
「液晶ディスプレイの最先端」第2刷、(株)シグマ出版、1998年7月5日、108〜119頁
【非特許文献4】
「液晶とその応用」第7刷、産業図書(株)、平成元年6月12日、71〜74頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、液晶を配向させるために形成した凹凸形状を透明基材に転写する方法を用いることにより、透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができ、かつ生産性に優れた光学素子用配向膜付フィルム、およびそれを用いた光学素子を提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムを提供する。
【0011】
液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。
【0012】
上記発明においては、上記凹凸形状により配向される液晶の配向方向が、上記透明基材の長尺方向と交差していることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、上記のような光学素子用配向膜付フィルムを用いて光学補償素子を作製する場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0013】
また、上記発明においては、上記配向膜が、硬化された硬化性樹脂からなることが好ましい。硬化性樹脂であれば、液晶を配向させるための凹凸形状の安定性が向上するからである。
【0014】
本発明はまた、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜と、上記配向膜によって配向され、固定化された液晶層とを有する光学素子であって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子を提供する。
【0015】
液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向した光学素子を提供することが可能となる。
【0016】
上記発明においては、上記凹凸形状により配向された液晶の配向方向が、上記透明基材の長尺方向と交差していることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、上記のような光学素子を学補償素子として用いた場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0017】
また、上記発明においては、上記配向膜が、硬化された硬化性樹脂からなることが好ましい。硬化性樹脂であれば、液晶を配向させるための凹凸形状の安定性が向上するからである。
【0018】
本発明はまた、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、
液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、
上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、
上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に上記透明基材を配置する配置工程と、
上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程と
を有することを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を提供する。
【0019】
転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0020】
上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、斜め蒸着により形成されることが好ましい。斜め蒸着法とは、蒸着源の方向(蒸着方向)と基材表面に垂直な方向の角度を変化させることにより、基材上に形成される凹凸構造の形状が変化するため、液晶の配向方向も変化させることができるものである。よって、蒸着方向と転写部材表面に垂直な方向の角度をある特定の角度にすると、転写部材の面に沿って蒸着方向に垂直な方向に凹凸構造が形成される。その凹凸形状を透明基材に転写することにより、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能となるからである。
【0021】
また、上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状がラビングにより形成されることが好ましい。転写部材表面に液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる形状となるようにラビング処理を行うことにより、その凹凸形状を透明基材に転写し、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能となるからである。
【0022】
さらに、上記発明においては、上記転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、上記長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記塗工工程と、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂と上記透明基材とを接触させる上記配置工程と、上記転写工程とが、連続的に行われることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0023】
また、本発明は、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、
上記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、
上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、
上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材を配置する配置工程と、
上記透明基材上の上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程と
を有することを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を提供する。
【0024】
転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0025】
上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、斜め蒸着により形成されることが好ましい。上述したように、斜め蒸着法において、蒸着方向と転写部材表面に垂直な方向の角度をある特定の角度にすると、転写部材の面に沿って蒸着方向に垂直な方向に凹凸構造が形成される。その凹凸形状を透明基材に転写することにより、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に平行配向させることが可能となるからである。
【0026】
また、上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状がラビングにより形成されることが好ましい。上述したように、転写部材表面に液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる形状となるようにラビング処理を行うことにより、その凹凸形状を透明基材に転写し、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に平行配向させることが可能となるからである。
【0027】
さらに、上記発明においては、上記転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、上記長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記塗工工程と、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂と上記転写部材とを接触させる上記配置工程と、上記転写工程とが、連続的に行われることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0028】
本発明はまた、上記発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法により光学素子用配向膜付フィルムを形成する光学素子用配向膜付フィルム形成工程と、
上記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、上記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法を提供する。
【0029】
上述したような利点を有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を用いた光学素子の製造方法であれば、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子を提供することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。本発明は、光学素子用配向膜付フィルム、それを用いた光学素子、およびそれらの製造方法を含むものである。以下、それぞれについて、項を分けて説明する。
【0031】
A.光学素子用配向膜付フィルム
本発明の光学素子用配向膜付フィルムは、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムについて図を用いて説明する。図1に示すように、本発明の光学素子用配向膜付フィルムは、長尺の透明基材1と、上記透明基材1上に形成された配向膜2とを有するものである。
【0033】
本発明によれば、液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。
【0034】
例えば、LCDの視野角を改善するために、液晶を用いた光学補償素子を組み込む場合、偏光板の吸収軸と光学補償素子の光学軸が90°等のある特定の角度をなすように貼り合わされる必要がある。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。従来のラビング法等を用いて作製された光学補償素子では、基材の長尺方向に液晶が配向するため、所定の寸法に切断して偏光板と貼り合わせなければならなかったが、本発明の光学素子用配向膜付フィルムを用いた光学補償素子は、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるため、このような吸収軸が基材の長尺方向に向いた偏光板と、そのまま貼り合わせることができるという利点を有する。
【0035】
なお、本発明において、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるとは、配向された液晶のダイレクターが透明基材の長尺方向と角度を有する(0°ではない)ことを意味するものである。
【0036】
以下、このような光学素子用配向膜付フィルムの各構成について説明する。
【0037】
1.長尺の透明基材
本発明に用いられる長尺の透明基材としては、光学素子に用いられるものであれば特に限定されるものはなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。中でも、可撓性を有する光透過率が80%以上の透明なフレキシブル材が好ましく、特に光学的等方性を有するものが好ましい。このような材料としては、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、およびシクロオレフィン系樹脂等のフィルム、さらにポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、およびポリエーテルスルホン等のフィルムを使用することができる。この中でも、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムが好適である。上記材料からなる市販品としては、ゼネオックス(日本ゼオン(株)製)、アートン(JSR(株)製)、フジタック(富士写真フィルム(株)製)等が挙げられる。
【0038】
本発明においては、後述するように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工し、上記二つの円筒ドラム上で硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂と透明基材とを接触させて、透明基材上の硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂から転写部材を剥離し、硬化性樹脂に転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成されるものであることが好ましい。よって、透明基材が可撓性を有する光透過率が80%以上の透明なフレキシブル材であれば、ロールトゥロールプロセスを経ることにより、上記透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0039】
また、透明基材と配向膜との密着性を向上させるために、透明基材に表面処理行ってもよい。具体的には、グロー放電処理、コロナ放電処理、UV処理、ケン化処理等を用いることができる。また、透明基材上にプライマー層を形成してもよい。さらに、硬化性樹脂から透明基材を保護する目的でプライマー層(バリア層)を設けてもよい。このようなプライマー層としては、例えばシラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0040】
2.配向膜
次に、本発明に用いられる配向膜について説明する。本発明に用いられる配向膜は、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。
【0041】
本発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、転写により形成されることが好ましい。転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となるからである。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有するからである。
【0042】
以下、このような配向膜の各構成について説明する。
【0043】
a.転写部材
まず、本発明に用いられる転写部材について説明する。本発明に用いられる転写部材は、液晶を配向させるための凹凸形状を有することを特徴とするものである。本発明において、転写部材は、例えば図3に示すように、転写部材用基体11と上記転写部材用基体11上に形成された凹凸形状12または13とを有するものである。
【0044】
上記転写部材用基体としては、液晶を配向させるための凹凸形状を形成できる材料であれば特に限定されるものではないが、後述する硬化性樹脂組成物を硬化させる際のエネルギーの照射方法により適宜選択される。すなわち、転写部材側からエネルギーを照射する場合は、透明な材料であることが必要であるが、透明基材側からエネルギーを照射する場合は、特に透明な材料に限定されるものではない。
【0045】
また、上記転写部材用基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス等であってもよい。本発明においては、転写部材は繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有する材料が好適に用いられる。具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。このような材料は、後述する液晶を配向させるための凹凸形状を形成する方法により、適宜選択されるものである。
【0046】
さらに、上記転写部材は、後述する上記硬化性樹脂に転写部材の凹凸形状を転写する際に、転写用円筒ドラムにより移動していることが好ましく、さらには転写部材が転写用円筒ドラムである、すなわち転写用円筒ドラムの表面に液晶を配向させるための凹凸形状が形成されていることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0047】
本発明において、液晶を配向させるための凹凸形状を形成する方法としては、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる凹凸形状を形成することが好ましく、具体的には斜め蒸着法、ラビング法等を挙げることができる。以下、斜め蒸着法、ラビング法について説明する。
【0048】
(斜め蒸着法)
斜め蒸着法とは、蒸着源から蒸発した分子または原子が、基体に対して斜めの方向から入射するように設定し、基体上に蒸着膜を形成することにより、配向膜を形成する方法である。ここで、本発明においては、図3に示すように、蒸着源から蒸発した分子または原子が、転写部材用基体11に対して斜めの方向から入射するように設定し、転写部材用基体11上に蒸着膜12または13を形成することにより、転写部材4とする。図3(a)に示すように、転写部材用基体11を蒸着方向に対して大きく傾けて、蒸着源の方向(蒸着方向)と転写部材用基体11表面に垂直な方向との間の角度θが80〜85°になるように蒸着すると、薄膜となるSiO等の微細な結晶が蒸着源の方向に対して、斜め方向に突き出た柱状の構造となり、液晶分子7はこの柱状構造12の側面に沿って配向するようになる。一方、図3(b)に示すように、転写部材用基体11を傾ける角度θを45〜65°に設定すると、転写部材用基体11の面に沿って蒸着方向に直角な方向に細かな縞状の凹凸構造13が薄膜形成され、液晶分子7はその溝に沿って配向するようになる。(図3(b)では、液晶分子7の長軸は紙面に垂直方向に向いている。)このように、転写部材用基体11表面に対する蒸発源の方向の違いにより、傾斜配向(図3(a))と平行配向(図3(b))とが可能になる。なお、斜め蒸着法に関しては、「液晶ディスプレイの最先端」(初版第2刷、108〜119頁、(株)シグマ出版、1998年)、「液晶の最新技術」(3版、55〜56頁、(株)工業調査会、1984年)、「液晶の世界」(第4刷、74〜77頁、(株)産業図書、平成9年)に詳しい。
【0049】
本発明においては、配向された液晶の配向方向が、透明基材の長尺方向に対して交差する方向であることが好ましく、中でも透明基材の長尺方向に対して90°±2°または45°±2°であることが好ましく、特に90°±0.5°または45°±0.5°であることが好ましい。したがって、本発明においては、図3(b)のように、転写部材用基体に垂直な方向と蒸着方向との角度θを45〜65°の範囲内に設定することが好ましい。本発明においては、転写部材の凹凸形状を透明基材上の硬化性樹脂に転写することにより光学素子用配向膜付フィルムが形成される。よって、転写される凹凸形状が上記範囲内に設定して形成されることにより、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるからである。
【0050】
また、蒸着源としては、一酸化シリコン(SiO)、二酸化シリコン(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)等を挙げることができるが、中でもSiO2が好適に用いられる。
【0051】
本発明においては、上述したように斜め蒸着法により転写部材上に液晶を配向させるための凹凸形状を形成することが好ましい。上述したように、斜め蒸着法では、蒸着方向と転写部材用基体表面に垂直な方向の角度を所定の角度に設定することにより、容易に液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるための凹凸形状を形成できるからである。
【0052】
(ラビング法)
ラビング法とは、一般的にはポリイミド等の高分子を基体上に塗布し、基体を布等を巻き付けたローラーでラビングする(擦る)ことにより、ラビング方向に沿って液晶が配向する配向膜を形成する方法である。ここで、本発明においては、転写部材用基体上に液晶を配向させるための凹凸形状を形成することから、転写部材用基体に対してラビング処理を行う。転写部材は、長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができる凹凸形状を有していることが好ましく、また繰り返し用いられることが好ましいことから、本発明においてはラビング法を用いて、例えば以下のように転写部材用基体上に液晶を配向させるための凹凸形状が形成される。
【0053】
すなわち、金属製の転写部材用基体に対して布等を巻き付けたラビングロールを用いてラビング処理を行うことにより、転写部材用基体の表面にラビング痕を形成し、このラビング痕が液晶を配向させるための凹凸形状となり、これをもって転写部材とするといった方法である。
【0054】
長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができる凹凸形状を形成するためには、例えば転写部材が円筒ドラムの形をしている場合は、この円筒ドラムと直交するようにラビングロールを接触させてラビング処理を行えばよい。
【0055】
b.樹脂
次に、本発明に用いられる樹脂について説明する。
【0056】
本発明において、配向膜は液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。また、上述したように、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、透明基材上の樹脂に転写により形成されることが好ましいものである。このような転写された凹凸形状を安定化させるには、上記樹脂は、硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化性樹脂であることが好ましい。
【0057】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物としては、エネルギー線の照射により硬化するエネルギー線硬化性樹脂組成物、または熱により硬化する熱硬化性樹脂組成物を挙げることができる。本発明においては、中でもエネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましい。上記エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線の照射により硬化するUV硬化性樹脂組成物、電子線の照射により硬化する電子線硬化性樹脂組成物等を挙げることができるが、中でもUV硬化性樹脂組成物が好ましい。エネルギー線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、本発明への応用が容易であるからである。
【0058】
上記UV硬化性樹脂組成物としては、紫外線の照射により硬化するものであれば、特に限定されないが、多官能モノマー成分および/またはオリゴマー成分および/またはポリマー成分が光重合して硬化するものであることが好ましい。
【0059】
上記多官能モノマー成分としては、特に限定されるものではないが、多官能アクリレートモノマーが好適に用いられる。具体的には、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0060】
上記オリゴマー成分としては、特に限定されるものではないが、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ポリエン・チオール系等を挙げることができる。
【0061】
また、上記ポリマー成分としては、特に限定されるものではないが、例えば光架橋型ポリマーが挙げられ、具体的には光二量化反応を起こすポリビニルケイ皮酸系樹脂等を使用することができる。
【0062】
さらに、上記UV硬化性樹脂組成物に添加する光重合開始剤としては、紫外光、例えば365nm以下の紫外光で活性化し得る光ラジカル重合開始剤が用いられる。具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
このような光重合開始剤の含有量は、UV硬化性樹脂組成物中に、0.5〜30重量%の範囲内、特に1〜10重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0064】
また、上記UV硬化性樹脂組成物に使用可能な溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−またはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類を例示することができる。また、これらの溶剤の中から1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
本発明においては、UV硬化性樹脂組成物に溶剤を添加せずに塗工する場合もある。よって、このような溶剤の含有量は、UV硬化性樹脂組成物中に、0〜99.9重量%の範囲内、特に0〜80重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0066】
上記光重合開始剤、および溶剤を上記範囲内に設定した理由は、以下の通りである。本発明においては、上記硬化性樹脂組成物を転写部材上に配置し、硬化することにより、転写部材の凹凸形状が転写された硬化性樹脂が得られ、配向膜が形成されるものである。よって、硬化性樹脂組成物は転写部材の凹凸形状、例えば凹凸構造の隙間に入り込むような所定の粘度を有して、転写部材上に配置される。したがって、上記範囲内であることにより、所望の粘度を有することができ、好ましいからである。
【0067】
なお、本発明に用いられる配向膜の形成方法に関しては、後述する「C.光学素子用配向膜付フィルムの製造方法」に記載するため、ここでの説明は省略する。
【0068】
B.光学素子
次に、本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子は、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜と、上記配向膜によって配向され、固定化された液晶層とを有する光学素子であって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。
【0069】
本発明の光学素子について図を用いて説明する。図11に示すように、本発明の光学素子は、長尺の透明基材1と、上記透明基材1上に形成された配向膜2と、上記配向膜2上に形成された液晶層8とを有するものである。
【0070】
本発明の光学素子を光学補償素子として用いる場合、液晶を配向させるための凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能となる。
【0071】
例えば、LCDの視野角を改善するために、液晶を用いた光学補償素子を組み込む場合、偏光板の吸収軸と光学補償素子の光学軸が90°等のある特定の角度をなすように貼り合わされる必要がある。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。従来のラビング法等を用いて作製された光学補償素子では、基材の長尺方向に液晶が配向するため、所定の寸法に切断して偏光板と貼り合わせなければならなかった。本発明の光学補償素子は、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるため、このような吸収軸が基材の長尺方向に向いた偏光板と、そのまま貼り合わせることができ、さらにそのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することが可能となる。
【0072】
本発明の光学素子は、上記光学素子用配向膜付フィルムを有するものであり、長尺の透明基材、配向膜、転写部材等に関しては上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」の欄で記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。以下、このような光学素子のその他の構成について説明する。
【0073】
1.液晶層
まず、本発明に用いられる液晶層について説明する。本発明に用いられる液晶層は、液晶が凹凸形状を利用して配向することを特徴とするものである。さらに、液晶層は、長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向されていることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、本発明の光学素子を光学補償素子として用いた場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0074】
本発明において、液晶層を形成する材料は、液晶材料が用いられる。本発明でいう液晶材料とは、所定の温度で液晶相となり得る材料を示すものであり、液晶材料が所定の液晶規則性を有して硬化することにより、液晶層が形成される。以下、このような液晶層の各構成について説明する。
【0075】
a.液晶材料
本発明でいう液晶材料とは、所定の温度で液晶相となり得る材料を示すものであり、液晶材料が所定の液晶規則性を有して硬化することにより、液晶層が形成される。したがって、上記所定の温度の上限は、透明基材および配向膜がダメージを受けない温度であれば特に限定されるものはない。具体的には、プロセス温度のコントロールの容易性と寸法精度維持の観点から、100℃以下、好ましくは80℃以下の温度で液晶相となる液晶材料が好適に用いられる。一方、液晶相と成り得る温度の下限は、光学素子として用いる場合の温度条件において、液晶材料が配向状態を保持し得る温度であるといえる。
【0076】
ここで、本発明の光学素子を光学補償素子として用いる場合の液晶材料の状態として二つの状態が考えられる。すなわち、後述するように本発明においては、重合性の無い高分子液晶材料を用いてもよく、また重合性の液晶材料を用いても良い。このような液晶材料は、通常、それ自体がネマチック規則性やスメクチック規則性を有するものが用いられる。
【0077】
重合性液晶材料の場合は、光学素子とする際に後述する「2.液晶層の形成方法」の欄で説明するように、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いるものである。したがって、光学素子として用いる場合、液晶材料は既に重合されており、配向状態は固定化される。よって、重合性液晶材料に対しては、液晶相となる温度の下限は特に限定されるものではない。
【0078】
一方、重合性の無い高分子液晶材料を用いる場合は、光学素子として用いる場合、液晶相がガラス状態となった状態である。したがって、保管もしくは使用に際して温度が上昇し、アイソトロピック状態となってしまっては、配向方向が乱れてしまい、光学素子として使用することができなくなる。したがって、本発明において重合性でない高分子液晶材料を用いた場合は、アイソトロピック相となる温度は所定の温度以上であることが好ましいといえるのである。このような場合のアイソトロピック相となる温度の下限は、用途にもよるが、一般的には80℃以上、好ましくは100℃以上であるといえる。
【0079】
重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶高分子のいずれかを用いることが可能である。一方、重合性を有さない高分子液晶材料としては、上述したように配向状態が光学素子の保管もしくは使用温度において一定である必要性があることから、比較的アイソトロピック相となる温度の高い液晶材料が好適に用いられる。
【0080】
本発明においては、中でも重合性液晶材料を用いることが好ましい。このような重合性液晶材料は、後述するように活性照射線の照射等により重合させて配向状態を固定化することが可能であるので、液晶の配向を低温状態で容易に行うことが可能であり、かつ使用に際しては配向状態が固定化されているので、温度等の使用条件にかかわらす使用することができるからである。
【0081】
本発明においては、特に重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子と比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高いことから、容易に配向させることができるからである。
【0082】
このような重合性液晶材料の一例としては、例えば下記に示すような重合性液晶モノマーの例を挙げることができる。
【0083】
すなわち、下記の一般式(1)で表わされる化合物(I)と、下記の一般式(2)で表わされる化合物(II)とで構成されるものを挙げることができる。
【0084】
化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種を混合して使用することができ、同様に、化合物(II)としては、一般式(2)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
【化1】
【0086】
化合物(I)を表わす一般式(1)において、R1およびR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1およびR2は共に水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、aおよびbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくない。
【0087】
化合物(I)は任意の方法で合成することができる。例えば、Xがメチル基である化合物(I)は、1当量のメチルヒドロキノンと2当量の4−(m−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により得ることができる。エステル化反応は、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これとメチルヒドロキノンとを反応させるのが通例である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて、カルボン酸単位とメチルヒドロキノンを直接反応させることもできる。これ以外の方法としては、1当量のメチルヒドロキノンと、2当量の4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応をまず行い、次いで得られたエステルを水素添加反応等により脱ベンジル化した後、分子末端をアクリロイル化する方法によっても、化合物(I)を合成することができる。メチルヒドロキノンと4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応を行うに際しては、メチルヒドロキノンをジアセテートに導入した後、上記の安息香酸と溶融状態で反応させ、直接エステル体を得ることも可能である。一般式(1)のXがメチル基でない場合の化合物(I)も、対応する置換基を有するヒドロキノンを、メチルヒドロキノンの代わりに用いて上と同様の反応を行うことにより得ることができる。
【0088】
【化2】
【0089】
化合物(II)を表わす一般式(2)において、R3は水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR3は水素であることが好ましい。アルキレン基の鎖長を示すcに関して言えば、この値が2〜12である化合物(II)は液晶性を示さない。しかしながら、液晶性を持つ化合物(I)との相溶性を考慮すると、cは4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。化合物(II)も任意の方法で合成可能であり、例えば、1当量の4−シアノフェノールと1当量の4−(n−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により化合物(II)を合成することができる。このエステル化反応は化合物(I)を合成する場合と同様に、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これと4−シアノフェノールとを反応させるのが一般的である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて上記安息香酸と4−シアノフェノールを反応させてもよい。
【0090】
その他、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子等を用いることが可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子としては、従来提案されているものを適宜選択して用いることが可能である。
【0091】
さらに、本発明においては、必要に応じて光重合開始剤を用いてもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
【0092】
本発明において用いることができる光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
【0093】
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で本発明の重合性液晶材料に添加することができる。
【0094】
一方、本発明においては、上述したように重合性を有さない液晶材料も用いることができる。このような液晶材料としては、上述したように光学素子の使用時もしくは保管時に液晶の配向状態が変化しない材料であれば特に限定されるものではないが、一般に高分子材料で形成されたものが、液相もしくは液晶相となる温度との関係で好適に用いられる。このような液晶材料に関しては、液晶相の状態でネマチック相あるいはスメクチック相を形成し得る材料であれば一般的に用いられている材料を用いることができ、主鎖型の液晶高分子であっても側鎖型の液晶高分子であってもよい。
【0095】
具体的には、主鎖型の液晶ポリマーの例としては、例えばポリエステル系やポリアミド系、ポリカーボネート系やポリエステルイミド系などのポリマーが挙げられる。
【0096】
また、側鎖型の液晶ポリマーの例としては、ポリアクリレートやポリメタクリレート、ポリシロキサンやポリマロネート等を主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を必要に応じ介してパラ置換環状化合物等からなる低分子液晶化合物(メソゲン部)を有するもの等を挙げることができる。
【0097】
b.液晶規則性
本発明においては、液晶層は上記重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、重合性液晶高分子、液晶高分子が所定の液晶規則性を有して硬化されてなるものである。
【0098】
ここで、光学素子が光学補償素子である場合は、上記液晶層は、ネマチック規則性もしくはスメクチック規則性を有するものである。
【0099】
上記規則性は、基本的には用いる液晶材料が自ら呈する液晶規則性により決定されるものである。このような液晶規則性は、配向膜上に、上述した液晶材料を塗工し、透明基材に転写された形状に沿って配向させて得られるものである。そして、液晶規則性を有した状態で硬化させて、液晶層とすることができるのである。
【0100】
c.その他
本発明に用いられる液晶層の膜厚は0.2〜10μmの範囲内、特に0.4〜6μmの範囲内であることが好ましい。本発明の光学素子を光学補償素子として用いる場合、液晶層が上記範囲を超えて厚くなると必要以上の光学異方性が生じてしまい、また上記範囲より薄いと所定の光学異方性が得られない場合があるからである。よって、液晶層の膜厚は、必要な光学異方性に準じて決定すればよい。
【0101】
本発明においては、上記液晶層中の液晶の配向角は、透明基材の長尺方向に対して任意の角度に設定できるものである。例えば、透明基材の長尺方向に対して幅方向に液晶を配向させる場合は、上記液晶の配向角は、90°±2°の範囲が好ましく、さらに90°±0.5°の範囲であることが好ましい。また、透明基材の長尺方向に対して45°方向に液晶を配向させる場合は、上記液晶の配向角は、45°±2°の範囲が好ましく、さらに45°±0.5°の範囲であることが好ましい。なお、配向角は位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて測定した値とする。
【0102】
本発明においては、中でも液晶が長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向されていることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、本発明の光学素子を光学補償素子として用いた場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0103】
なお、本発明に用いられる液晶層の形成方法に関しては、後述する「D.光学素子の製造方法」に記載するため、ここでの説明は省略する。
【0104】
2.用途
次に、本発明の光学素子の用途について説明する。
【0105】
本発明の光学素子は、主として光学補償素子に用いられる。例えば、LCDの視野角を改善するために、液晶を用いた光学補償素子を組み込む場合、偏光板の吸収軸と光学補償素子の光学軸が90°等のある特定の角度をなすように貼り合わされる必要がある。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。上述したように、本発明においては、長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることが可能であるため、上記のような吸収軸が透明基材の長尺方向に向いた偏光板と貼り合わせて所定の寸法に切断してLCDに組み込むことが可能となるからである。
【0106】
また、本発明の光学素子は、セキュリティ部材にも使用することができる。例えば、プリペイドカード、IDカード、コンピューターソフト、音楽ソフト等の偽造や複製を防止するために、本発明の光学素子を用いる。この場合、プリペイドカード、音楽ソフト等の一部に光学素子を付属させて用いることとなる。光学素子は、偏光板を通してまたは偏光を照射して観察することにより、特定の方向の直線偏光のみを認識できる。よって、自然光の下で観察したときには、光学素子が付属している部分は認識できないものであるため、偽造や複製を防ぐためのセキュリティ部材として用いることができる。
【0107】
C.光学素子用配向膜付フィルムの製造方法
次に、本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法について説明する。
【0108】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法において、後述する硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程により2つの実施態様がある。以下、各実施態様について分けて説明する。
【0109】
1.第1実施態様
本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の第1実施態様は、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に上記透明基材を配置する配置工程と、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程とを有することを特徴とするものである。
【0110】
転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0111】
本実施態様について図面を用いて説明する。図2は、本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の一例を示すものである。まず、図2(a)に示すように液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工する塗工工程を行う。次に、図2(b)に示すようにエネルギー6を照射することにより上記硬化性樹脂組成物3を硬化させて、硬化性樹脂5とする硬化工程を行う。さらに、この硬化性樹脂5の表面に長尺の透明基材1を配置し(図2(c)、配置工程)、この硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図2(d))、硬化性樹脂5に転写部材4の凹凸形状を転写する(図2(e))転写工程が行われる。
【0112】
以下、上述した例に示されるような本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法について、各工程にわけて説明する。
【0113】
a.塗工工程
本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムを製造するに際しては、まず液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程が行われる。
【0114】
硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法(ダイコート法)等が挙げられる。
【0115】
塗工された硬化性樹脂組成物の膜厚としては、1〜30μmの範囲内、特に1〜15μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲内より薄い場合は、硬化性樹脂組成物を硬化して、転写部材の凹凸形状を硬化性樹脂に転写する際に、転写部材の凹凸形状の転写が十分に行われない可能性があるからである。また、膜厚が上記範囲より厚い場合は、本発明の光学素子用配向膜付フィルムを例えばLCDの光学補償素子に用いる場合、LCDが厚くなってしまう可能性があるからである。また、透明基材がフィルムである場合、塗工面がカールしやすくなるという不具合が生じる可能性があるからである。
【0116】
また、上記硬化性樹脂組成物が所望の膜厚となるように、塗工量を制御して上述した方法により塗工してもよく、塗工した後に余剰な硬化性樹脂組成物を取り除いてもよい。余剰な硬化性樹脂組成物を取り除く方法としては、ローラーを用いて取り除く方法、ドクターを用いて掻き取る方法等が挙げられる。また、このような余剰な硬化性樹脂組成物を取り除く工程は、硬化性樹脂組成物を塗工した後でもよく、後述するように硬化性樹脂組成物の表面に透明基材を配置した後でもよい。
【0117】
なお、本発明に用いられる硬化性樹脂組成物、および転写部材に関しては、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」の配向膜の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
b.硬化工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程が行われる。
【0119】
硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、エネルギー線を照射する方法、熱をかける方法等を挙げることができるが、本実施態様においてはエネルギー線を照射する方法が好ましい。本実施態様でいうエネルギー線とは、硬化性樹脂組成物に含まれるモノマーおよびポリマーに対して重合を起こさせる能力があるエネルギー線をいい、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」の欄で説明したように、必要であれば硬化性樹脂組成物中に重合開始剤が含まれていてもよい。
【0120】
エネルギー線としては、硬化性樹脂組成物を重合せさることが可能なエネルギー線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
【0121】
本実施態様においては、紫外線(UV)をエネルギー線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
【0122】
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。
【0123】
照射強度は、硬化性樹脂組成物の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
【0124】
また、硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化性樹脂の膜厚としては、0.5〜30μmの範囲内、特に1〜15μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より厚い場合は、本発明の光学素子用配向膜付フィルムを例えばLCDの光学補償素子に用いる場合、LCDが重厚となる可能性があるからである。また、膜厚が上記範囲より薄い場合は、強靭性に劣るからである。
【0125】
本実施態様において、硬化工程は、上記塗工工程、配置工程および転写工程のどの工程の後に行ってもよいものである。すなわち、転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工した後に硬化させる場合(塗工工程後)、硬化性樹脂組成物の表面に透明基材を配置した後に硬化させる場合(配置工程後)、転写部材を硬化性樹脂組成物から剥離した後に硬化させる場合(転写工程後)、のどの場合で行ってもよいものである。以下、3つの態様にわけて説明する。
【0126】
(i)第1の態様
本実施態様において、硬化工程の第1の態様は、図2に示すように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図2(a))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図2(b))、硬化して得られる硬化性樹脂5の表面に透明基材1を配置し(図2(c))、上記硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図2(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図2(e))。
【0127】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、転写部材側からでもよく、硬化性樹脂組成物側からでもよい。ただし、転写部材側から照射する場合は、転写部材が透明材料である必要がある。
【0128】
また、硬化性樹脂組成物を硬化した後に、硬化して得られる硬化性樹脂の表面に転写部材を配置し、転写部材の凹凸形状を転写することから、硬化後も硬化性樹脂は所定の粘度を有している必要がある。よって、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させないことが好ましく、硬化性樹脂の表面に透明基材を配置した後、または硬化性樹脂から転写部材を剥離した後に、再度硬化させてもよいものである。
【0129】
(ii)第2の態様
本実施態様において、硬化工程の第2の態様は、図4に示すように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図4(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に透明基材1を配置し(図4(b))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図4(c))、硬化して得られる硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図4(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図4(e))。
【0130】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、転写部材側からでもよく、透明基材側からでもよい。ただし、転写部材側から照射する場合は、転写部材が透明材料である必要がある。
【0131】
(iii)第3の態様
本実施態様において、硬化工程の第3の態様は、図5に示すように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図5(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に透明基材1を配置し(図5(b))、上記硬化性樹脂組成物3から転写部材4を剥離し(図5(c))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図5(d))、硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図5(e))。
【0132】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、硬化性樹脂組成物側からでもよく、透明基材側からでもよい。
【0133】
また、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離した後に、転写部材の凹凸形状が転写された硬化性樹脂組成物を硬化させることから、硬化性樹脂組成物は転写部材を剥離した後も転写部材の凹凸形状を保持したままでいる必要がある。よって、硬化性樹脂組成物が所定の粘度を有するように、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離する前に、予め半硬化状態とさせてもよいものである。
【0134】
c.配置工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂の表面に透明基材を配置する配置工程が行われる。
【0135】
硬化性樹脂組成物および硬化性樹脂の表面に透明基材を配置する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と透明基材とが接するように配置されれば、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と透明基材とが密着するように配置されることが好ましい。硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂は、転写部材上から透明基材上に移動するため、透明基材と密着することが必要であるからである。
【0136】
したがって、透明基材と硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂との密着性を向上させるために、透明基材に表面処理行うことが好ましい。具体的には、グロー放電処理、コロナ放電処理、UV処理、ケン化処理等を用いることができる。また、透明基材上にプライマー層を形成してもよい。さらに、硬化性樹脂から透明基材を保護する目的でプライマー層(バリア層)を設けてもよい。このようなプライマー層としては、例えばシラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0137】
なお、本発明に用いられる長尺の透明基材に関しては、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0138】
d.転写工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂から転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程が行われる。
【0139】
硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂から転写部材を剥離する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂が転写部材上から透明基材上に移動し、かつ転写部材の凹凸形状が硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂に転写されていれば、特に限定されるものではない。
【0140】
また、本実施態様においては、転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工し、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂と上記透明基材とを接触させて、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、上記配向膜が形成されるものであることが好ましい。さらに、上記転写部材が、転写用円筒ドラムであることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0141】
上述したロールトゥロールプロセスについて図を用いて説明する。図6に、本実施態様における配向膜の形成方法の例を示す。図6に示すように、転写部材4は転写用円筒ドラムであり、長尺の透明基材1は供給ロール23から供給され、基材用円筒ドラム21を通って図示略の巻き取りロールにより巻き取られている。転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し、上記二つの円筒ドラム21および4上で上記硬化性樹脂組成物3と上記透明基材1とを接触させ、上記硬化性樹脂組成物3を上記転写部材4から剥離し、光源22からエネルギーを照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化して硬化性樹脂5として、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成される。
【0142】
2.第2実施態様
次に、本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の第2実施態様について説明する。
【0143】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の第2実施態様は、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、上記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材を配置する配置工程と、上記透明基材上の上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程とを有することを特徴とするものである。
【0144】
本発明においては、転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0145】
本実施態様について図面を用いて説明する。図7は、本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の例を示すものである。まず、図7(a)に示すように透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工する塗工工程を行う。次に、図7(b)に示すようにエネルギー6を照射することにより上記硬化性樹脂組成物3を硬化させて、硬化性樹脂5とする硬化工程を行う。さらに、この硬化性樹脂5の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4を配置し(図7(c)、配置工程)、この硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図7(d))、硬化性樹脂5に転写部材4の形状を転写する(図7(e))転写工程を行う。
【0146】
以下、上述した例に示されるような本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法について、各工程に詳細に説明する。
【0147】
a.塗工工程
本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムを製造するに際しては、まず長尺の透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程が行われる。
【0148】
なお、本発明に用いられる透明基材、硬化性樹脂組成物に関しては、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」に記載したものと同様であり、また、硬化性樹脂組成物の塗工方法等に関しては、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0149】
b.硬化工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程が行われる。
【0150】
本実施態様において、硬化工程は、上記塗工工程、配置工程、および転写工程のどの工程の後に行ってもよいものである。すなわち、透明基材上に硬化性樹脂を塗工した後に硬化させる場合(塗工工程後)、硬化性樹脂組成物の表面に転写部材を配置した後に硬化させる場合(配置工程後)、転写部材を硬化性樹脂組成物から剥離した後に硬化させる場合(転写工程後)、のどの場合で行ってもよいものである。以下、3つの態様にわけて説明する。
【0151】
(i)第1の態様
本実施態様において、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程の第1の態様は、図7に示すように、透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図7(a))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図7(b))、硬化して得られる硬化性樹脂5の表面に転写部材4を配置し(図7(c))、上記硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図7(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図7(e))。
【0152】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、透明基材側からでもよく、硬化性樹脂組成物側からでもよい。
【0153】
また、硬化性樹脂組成物を硬化した後に、硬化して得られる硬化性樹脂の表面に転写部材を配置し、転写部材の凹凸形状を転写することから、硬化後も硬化性樹脂は所定の粘度を有している必要がある。よって、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させないことが好ましく、硬化性樹脂の表面に転写部材を配置した後、または硬化性樹脂から転写部材を剥離した後に、再度硬化させてもよいものである。
【0154】
(ii)第2の態様
本実施態様において、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程の第2の態様は、図8に示すように、透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図8(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に転写部材4を配置し(図8(b))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図8(c))、硬化して得られる硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図8(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図8(e))。
【0155】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、転写部材側からでもよく、透明基材側からでもよい。ただし、転写部材側から照射する場合は、転写部材が透明材料である必要がある。
【0156】
(iii)第3の態様
本実施態様において、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程の第3の態様は、図9に示すように、透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図9(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に転写部材4を配置し(図9(b))、上記硬化性樹脂組成物3から転写部材4を剥離し(図9(c))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図9(d))、硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図9(e))。
【0157】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、硬化性樹脂組成物側からでもよく、透明基材側からでもよい。
【0158】
また、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離した後に、転写部材の凹凸形状が転写された硬化性樹脂組成物を硬化させることから、硬化性樹脂組成物は転写部材を剥離した後も転写部材の凹凸形状を保持したままでいる必要がある。よって、硬化性樹脂組成物が所定の粘度を有するように、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離する前に、予め半硬化状態とさせてもよいものである。
【0159】
なお、硬化性樹脂組成物の硬化方法、硬化する際に用いるエネルギー等に関しては、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0160】
c.配置工程
本実施態様においては、透明基材上の硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂の表面に転写部材を配置する配置工程が行われる。
【0161】
硬化性樹脂組成物および硬化性樹脂の表面に転写部材を配置する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と転写部材とが接するように配置されれば、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と転写部材とが密着するように配置されることが好ましい。硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂の表面に転写部材の凹凸形状を写し取るため、転写部材と密着することが必要であるからである。
【0162】
なお、本発明に用いられる転写部材に関しては、「A.光学素子用配向膜付フィルム」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0163】
d.転写工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂から転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程が行われる。
【0164】
透明基材上の硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂から転写部材を剥離する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂が透明基材上から剥がれず、かつ転写部材の凹凸形状が硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂に転写されていれば、特に限定されるものではない。
【0165】
したがって、透明基材と硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂との密着性を向上させるために、透明基材に表面処理行うことが好ましい。具体的には、グロー放電処理、コロナ放電処理、UV処理、ケン化処理等を用いることができる。また、透明基材上にプライマー層を形成してもよい。さらに、硬化性樹脂から透明基材を保護する目的でプライマー層(バリア層)を設けてもよい。このようなプライマー層としては、例えばシラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0166】
また、本実施態様においては、転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工し、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂と上記転写部材とを接触させて、上記透明基材上の上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成されるものであることが好ましい。さらに、上記転写部材が、転写用円筒ドラムであることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0167】
上述したロールトゥロールプロセスについて図を用いて説明する。図10に、本実施態様における配向膜の形成方法の例を示す。図10に示すように、転写部材4は転写用円筒ドラムであり、長尺の透明基材1は供給ロール23から供給され、基材用円筒ドラム21を通って図示略の巻き取りロールにより巻き取られている。透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し、上記二つの円筒ドラム21および4上で上記硬化性樹脂組成物3と上記転写部材4とを接触させ、上記透明基材1上の上記硬化性樹脂組成物3から上記転写部材4を剥離し、光源22からエネルギーを照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化して硬化性樹脂5として、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成される。
【0168】
D.光学素子の製造方法
次に、本発明に光学素子の製造方法について説明する。
【0169】
本発明の光学素子の製造方法は、上記発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法により光学素子用配向膜付フィルムを形成する光学素子用配向膜付フィルム形成工程と、上記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、上記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0170】
上記光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を用いた光学素子の製造方法であれば、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子を提供することが可能となる。また、転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させた光学素子用を大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0171】
なお、本発明に用いられる光学素子用配向膜付フィルムの製造方法に関しては、上述した「C.光学素子用配向膜付フィルムの製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0172】
以下、本発明の光学素子の製造方法における液晶層形成工程について説明する。
【0173】
1.液晶層形成工程
本発明の光学素子の製造方法においては、上記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、上記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程が行われる。
【0174】
本発明においては、図11に示すように、液晶層8は配向膜2上に形成されるものである。本発明における液晶層とは、上述した「B.光学素子」に記載した液晶材料で形成されたものであり、液晶規則性を有するものである。
【0175】
このような液晶層を形成する方法としては、液晶材料を含む液晶層形成用組成物を配向膜上に塗工し、液晶層形成用層を形成する。この液晶材料を転写された凹凸形状に沿って配向させ、液晶規則性を有した状態で硬化させて、液晶の配向が固定化した液晶層とすることができるのである。以下、液晶層の形成方法の各工程について説明する。
【0176】
a.液晶層形成用層形成工程
本発明において、液晶層形成用層を形成する方法としては、例えばドライフィルム等を予め形成してこれを液晶層形成用層としこれを配向膜上に積層する方法や、液晶層形成用組成物を融解させて、これを配向膜上に塗工する方法等をとることも可能であるが、本発明においては、液晶層形成用組成物を溶媒に溶解し、これを配向膜上に塗工し、溶媒を除去することにより液晶層形成用層を形成することが好ましい。これは、他の方法と比較して工程上簡便であるからである。
【0177】
液晶層形成用組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法(ダイコート法)、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法等が挙げられる。
【0178】
このように液晶層形成用塗工液を塗工した後、溶媒を除去するのであるが、この溶媒の除去方法としては、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。溶媒が除去されることにより、液晶層形成用層が形成される。
【0179】
本発明においては、このようにして形成された液晶層形成用層の層内の液晶材料を、配向膜表面に転写された形状により、液晶規則性を有する状態とする。これは、通常はN−I転移点以下で熱処理する方法等の方法により行われる。なお、ここで、N−I転移点とは、液晶相から等方相へ転移する温度を示すものである。
【0180】
この液晶層形成用塗工液に用いられる液晶材料および光重合開始剤に関しては、上記「B.光学素子」の液晶層の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、この液晶層形成用塗工液に用いられる溶媒、およびその他の添加剤について説明する。
【0181】
(溶媒)
上記液晶層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、液晶材料等を溶解することが可能な溶媒であり、かつ配向膜の配向能を阻害しない溶媒であれば特に限定されるものではない。
【0182】
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種または2種以上が使用可能である。
【0183】
単一種の溶媒を使用しただけでは、液晶材料等の溶解性が不充分であったり、上述したように配向能を有する配向膜が侵食される場合がある。しかし2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール類との混合系である。溶液の濃度は、液晶性組成物の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定できないが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲で調整される。
【0184】
(その他の添加剤)
本発明に用いられる液晶層形成用塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。本発明の液晶性組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、本発明の液晶性組成物の40重量%以下、20重量%以下である。これらの化合物の添加により、本発明における液晶材料の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
【0185】
また、上記液晶層形成用塗工液には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることができる。添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0186】
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、さらには溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる液晶性組成物の10重量ppm〜10重量%、好ましくは100重量ppm〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲にある。
【0187】
b.配向固定化工程
本発明においては、上述した液晶層形成用層に対して、液晶の配向を固定化するための配向固定化工程が行われる。
【0188】
本発明において、配向固定化工程は、用いられる液晶材料により異なる方法により行われる。具体的には、液晶材料が重合性の材料である場合と、重合性を有さない高分子材料である場合とに分かれる。以下、液晶材料が重合性材料である場合と、重合性を有さない高分子材料である場合とに分けて説明する。
【0189】
(重合性液晶材料)
本発明においては、上述したように液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶高分子といった重合性液晶材料を用いることが好ましい。
【0190】
このような重合性液晶材料を用いた場合の配向固定化工程は、配向能を有する基材上に形成された重合性液晶材料からなる液晶層形成用層に対して、重合を活性化する活性放射線を照射する工程となる。
【0191】
本発明でいう活性放射線とは、重合性の材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいい、必要であれば重合性材料内に重合開始剤が含まれていてもよい。
【0192】
活性放射線としては、重合性液晶材料を重合せさることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
【0193】
本発明においては、重合開始剤が紫外線(UV)でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線(UV)を活性放射線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
【0194】
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。
【0195】
照射強度は、液晶層を形成している重合性液晶材料の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
【0196】
このような活性照射線の照射による配向固定化工程は、上述した液晶層形成用層形成工程における処理温度、すなわち重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
【0197】
なお、重合材料としては、上述したように液晶性を有さない通常の重合性材料を用いる場合もあるが、このような場合も同様にして配向固定化工程を行うことができる。
【0198】
(重合性を有さない高分子材料)
重合性を有さない高分子材料を用いた場合の配向固定化工程は、温度を液晶相となる温度から、固相となる温度に低下させる工程である。上記液晶層形成用層形成工程において、液晶高分子は、配向膜の転写された形状に沿ったネマチック規則性あるいはスメクチック規則性を有する液晶相となる。そして、この状態で温度をガラス状態となる温度とすることにより、液晶層とすることができるのである。
【0199】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0200】
【実施例】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0201】
[実施例1]
(転写部材の作製)
転写部材用基体としてガラス板、蒸着源としてSiO2を用い、蒸着方向とガラス板の垂直方向の角度θを60°に設定して、斜め蒸着法によりガラス基板上に液晶を配向させるための凹凸形状を形成し、転写部材を得た。
【0202】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
上記転写部材上にUV硬化性樹脂組成物を塗工し、このUV硬化性樹脂組成物の表面にプライマー層を設けたTACフィルムを接触させ、ローラーを用いて余剰のUV硬化性樹脂組成物を取り除いた。次に、TACフィルム側から紫外線を400mJ/cm2照射して、UV硬化性樹脂組成物を硬化し、転写部材を剥離した。上記一連の操作により、光学素子用配向膜付フィルムを得た。
【0203】
(光学素子の作製)
上記光学素子用配向膜付フィルム上に、トルエンを溶媒としたUV硬化性ネマチック液晶(希釈濃度36%ww)を塗布した。80℃で1分間乾燥した後、UV照射することによりネマチック液晶を硬化させ、液晶層を形成した。上記一連の操作により光学素子を得た。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、89.8°であり、TACフィルムの幅方向に液晶分子が配向していた。
【0204】
[実施例2]
(転写部材の作製)
銅製の円筒ドラムとレーヨン製のラビングロールを互いに直交するように接触させてラビング処理を行い、銅製の円筒ドラムの幅方向に沿ってラビング痕を形成し、転写部材を得た。
【0205】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
上記転写部材の表面にUV硬化性樹脂組成物を部分的に浸漬させた後、表面の余剰なUV硬化性樹脂組成物をドクターにより掻き取った。その後、UV硬化性樹脂組成物の表面にTACフィルムを接触させて、UV照射することにより硬化させ、UV硬化性樹脂にラビング痕を転写させた。上記一連の操作により光学素子用配向膜付フィルムを得た。
【0206】
(光学素子の作製)
上記光学素子用配向膜付フィルム上に、トルエンを溶媒としたUV硬化性ネマチック液晶(希釈濃度36%ww)を塗布した。80℃で1分間乾燥した後、UV照射することによりネマチック液晶を硬化させ、液晶層を形成した。上記一連の操作により光学素子を得た。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、89.8°であり、TACフィルムの幅方向に液晶分子が配向していた。
【0207】
[実施例3]
(転写部材の作製)
転写部材は、実施例2と同様にして作製した。
【0208】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
TACフィルムにプライマー層を設けた後、UV硬化性樹脂組成物を8μmの厚さにコーティングした。その後、上記転写部材の表面にUV硬化性樹脂組成物付きTACフィルムを連続的に接触させて、UV照射することにより硬化させ、UV硬化性樹脂にラビング痕を転写させた。上記一連の操作により光学素子用配向膜付フィルムを得た。
【0209】
(光学素子の作製)
光学素子は、実施例2と同様にして作製した。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、89.8°であり、TACフィルムの幅方向に液晶分子が配向していた。
【0210】
[実施例4]
(転写部材の作製)
銅製の円筒ドラムとレーヨン製のラビングロールを円筒ドラムの流れ方向に対して45°傾けた角度に接触させてラビング処理を行い、ラビング痕を形成し、転写部材を得た。
【0211】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
光学素子用配向膜付フィルムは、実施例2と同様にして作製した。
【0212】
(光学素子の作製)
光学素子は、実施例2と同様にして作製した。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、44.8°であり、TACフィルムの長尺方向に対して約45°に液晶分子が配向していた。
【0213】
【発明の効果】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムは、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなるものであるので、液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】斜め蒸着法を説明するための概略断面図である。
【図4】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図5】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図6】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図8】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図9】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図10】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図11】本発明の光学素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 長尺の透明基材
2 … 配向膜
3 … 硬化性樹脂組成物
4 … 転写部材
5 … 硬化性樹脂
8 … 液晶層
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能な光学素子用配向膜付フィルムおよび光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶ディスプレイ(以下、LCDと称す。)には、光学補償素子が多く利用されている。液晶は、方向によって屈折率が異なるという屈折異方性の物質のため、LCDを斜め方向から見た場合に、暗くなるほど表示品位が落ちてしまう。そのような視野角依存性を改善するために、光学補償が可能な光学補償素子が必要となる(特許文献1、特許文献2)。光学補償素子としては、高分子を1軸に延伸させたもの、または液晶分子を配向させたものが挙げられる。液晶分子を用いた光学補償素子は、高分子のものに比べて異方性が大きいため、1/10の薄さで同じ機能が出せることが特長である。
【0003】
LCDに光学補償素子を用いて視野角依存性を改善する場合、通常は偏光板と互いの光軸(偏光板の場合は吸収軸、光学補償素子の場合は光学軸)をある特定の角度をなすように貼り合わせてLCDに組み込まれる。例えば、特許文献2においては、光学補償素子の光学軸を偏光板の吸収軸と直交させて用いている。
【0004】
ところで、液晶を用いて光学補償素子を作製する際に用いられる基材として、より薄い基材が要求され、フィルム基材が多く利用されてきており、フィルム基材の長尺方向に対してある角度を持たせて液晶を配向させることが要求されている。その理由は、上述したように、LCDに光学補償素子を用いて視野角依存性を改善する場合、偏光板の吸収軸に対して光学補償素子の光学軸が45°や90°等のある特定の角度をなすようにすることが求められる。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。このようなフィルム基材の長尺方向に吸収軸が向いている偏光板と光学補償素子を貼り合わせて、所定の寸法に切断してLCDに組み込むには、光学補償素子の光学軸はその長尺方向に対して45°や90°等の任意の角度をなすように作製しなければならない。
【0005】
液晶を用いた光学補償素子を作製する場合、基材上に液晶を配向させるための配向膜が必要となる。一般的には、ポリイミドなどの高分子を基材上に塗工し、ラビングという擦る作業をすることにより、ラビング方向に沿って液晶を配向させる方法(非特許文献1)、または配向膜に偏光UVを照射し、偏光方向に配向させる方法(非特許文献2、非特許文献3)、さらに一酸化シリコン(SiO)や二酸化チタン(TiO2)等を基材に斜め蒸着し、蒸着方向に因った配向をさせる方法(非特許文献3、非特許文献4)がある。
【0006】
配向方法としてラビング法を用いようとすると、フィルム基材の長尺方向に対してブラシ等で角度をなして連続的にラビングすることにより、フィルム基材の長尺方向に対して横断的な配向方向を持つ長尺のフィルム基材を得ることは困難である。一方、配向方法として、偏光UVを照射する方法やSiO等を斜め蒸着する方法を用いると、フィルム基材の長尺方向以外に角度を持たせた液晶配向の要求を満たすことはできるが、いずれの方法もコストがかかり、フィルム基材を連続的なロールトゥロールプロセスで長時間処理する場合においては、UV偏光や蒸着源と基材との角度や距離を精密に維持し続けることは困難であり、特に斜め蒸着の場合は生産性に乏しいという問題点があった。
【0007】
また、特許文献3には、基材に直接ラビング処理を行わずに液晶分子配列を転写する方法が開示されているが、この方法は樹脂製の平面体からなる鋳型を転写部材に用いた枚葉での処理工程を有しており、長尺の光学素子用配向膜付フィルム等を安定して連続的に製造することは困難である。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−154380号公報
【特許文献2】
特開平11−258605号公報
【特許文献3】
特開平8−313910号公報
【非特許文献1】
「液晶ディスプレイ技術」第2版、産業図書(株)、1997年11月14日、265〜274頁
【非特許文献2】
「液晶配向処理の基礎、応用、実際、技術動向」講演会資料、東京技術情報サービス、2001年9月21日、59〜69頁
【非特許文献3】
「液晶ディスプレイの最先端」第2刷、(株)シグマ出版、1998年7月5日、108〜119頁
【非特許文献4】
「液晶とその応用」第7刷、産業図書(株)、平成元年6月12日、71〜74頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、液晶を配向させるために形成した凹凸形状を透明基材に転写する方法を用いることにより、透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができ、かつ生産性に優れた光学素子用配向膜付フィルム、およびそれを用いた光学素子を提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムを提供する。
【0011】
液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。
【0012】
上記発明においては、上記凹凸形状により配向される液晶の配向方向が、上記透明基材の長尺方向と交差していることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、上記のような光学素子用配向膜付フィルムを用いて光学補償素子を作製する場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0013】
また、上記発明においては、上記配向膜が、硬化された硬化性樹脂からなることが好ましい。硬化性樹脂であれば、液晶を配向させるための凹凸形状の安定性が向上するからである。
【0014】
本発明はまた、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜と、上記配向膜によって配向され、固定化された液晶層とを有する光学素子であって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子を提供する。
【0015】
液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向した光学素子を提供することが可能となる。
【0016】
上記発明においては、上記凹凸形状により配向された液晶の配向方向が、上記透明基材の長尺方向と交差していることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、上記のような光学素子を学補償素子として用いた場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0017】
また、上記発明においては、上記配向膜が、硬化された硬化性樹脂からなることが好ましい。硬化性樹脂であれば、液晶を配向させるための凹凸形状の安定性が向上するからである。
【0018】
本発明はまた、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、
液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、
上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、
上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に上記透明基材を配置する配置工程と、
上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程と
を有することを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を提供する。
【0019】
転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0020】
上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、斜め蒸着により形成されることが好ましい。斜め蒸着法とは、蒸着源の方向(蒸着方向)と基材表面に垂直な方向の角度を変化させることにより、基材上に形成される凹凸構造の形状が変化するため、液晶の配向方向も変化させることができるものである。よって、蒸着方向と転写部材表面に垂直な方向の角度をある特定の角度にすると、転写部材の面に沿って蒸着方向に垂直な方向に凹凸構造が形成される。その凹凸形状を透明基材に転写することにより、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能となるからである。
【0021】
また、上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状がラビングにより形成されることが好ましい。転写部材表面に液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる形状となるようにラビング処理を行うことにより、その凹凸形状を透明基材に転写し、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能となるからである。
【0022】
さらに、上記発明においては、上記転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、上記長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記塗工工程と、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂と上記透明基材とを接触させる上記配置工程と、上記転写工程とが、連続的に行われることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0023】
また、本発明は、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、
上記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、
上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、
上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材を配置する配置工程と、
上記透明基材上の上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程と
を有することを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を提供する。
【0024】
転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0025】
上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、斜め蒸着により形成されることが好ましい。上述したように、斜め蒸着法において、蒸着方向と転写部材表面に垂直な方向の角度をある特定の角度にすると、転写部材の面に沿って蒸着方向に垂直な方向に凹凸構造が形成される。その凹凸形状を透明基材に転写することにより、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に平行配向させることが可能となるからである。
【0026】
また、上記発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状がラビングにより形成されることが好ましい。上述したように、転写部材表面に液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる形状となるようにラビング処理を行うことにより、その凹凸形状を透明基材に転写し、液晶を転写した凹凸形状に沿って透明基材の長尺方向に対して交差する方向に平行配向させることが可能となるからである。
【0027】
さらに、上記発明においては、上記転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、上記長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記塗工工程と、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂と上記転写部材とを接触させる上記配置工程と、上記転写工程とが、連続的に行われることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0028】
本発明はまた、上記発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法により光学素子用配向膜付フィルムを形成する光学素子用配向膜付フィルム形成工程と、
上記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、上記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法を提供する。
【0029】
上述したような利点を有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を用いた光学素子の製造方法であれば、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子を提供することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。本発明は、光学素子用配向膜付フィルム、それを用いた光学素子、およびそれらの製造方法を含むものである。以下、それぞれについて、項を分けて説明する。
【0031】
A.光学素子用配向膜付フィルム
本発明の光学素子用配向膜付フィルムは、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムについて図を用いて説明する。図1に示すように、本発明の光学素子用配向膜付フィルムは、長尺の透明基材1と、上記透明基材1上に形成された配向膜2とを有するものである。
【0033】
本発明によれば、液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。
【0034】
例えば、LCDの視野角を改善するために、液晶を用いた光学補償素子を組み込む場合、偏光板の吸収軸と光学補償素子の光学軸が90°等のある特定の角度をなすように貼り合わされる必要がある。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。従来のラビング法等を用いて作製された光学補償素子では、基材の長尺方向に液晶が配向するため、所定の寸法に切断して偏光板と貼り合わせなければならなかったが、本発明の光学素子用配向膜付フィルムを用いた光学補償素子は、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるため、このような吸収軸が基材の長尺方向に向いた偏光板と、そのまま貼り合わせることができるという利点を有する。
【0035】
なお、本発明において、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるとは、配向された液晶のダイレクターが透明基材の長尺方向と角度を有する(0°ではない)ことを意味するものである。
【0036】
以下、このような光学素子用配向膜付フィルムの各構成について説明する。
【0037】
1.長尺の透明基材
本発明に用いられる長尺の透明基材としては、光学素子に用いられるものであれば特に限定されるものはなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。中でも、可撓性を有する光透過率が80%以上の透明なフレキシブル材が好ましく、特に光学的等方性を有するものが好ましい。このような材料としては、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、およびシクロオレフィン系樹脂等のフィルム、さらにポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、およびポリエーテルスルホン等のフィルムを使用することができる。この中でも、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムが好適である。上記材料からなる市販品としては、ゼネオックス(日本ゼオン(株)製)、アートン(JSR(株)製)、フジタック(富士写真フィルム(株)製)等が挙げられる。
【0038】
本発明においては、後述するように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工し、上記二つの円筒ドラム上で硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂と透明基材とを接触させて、透明基材上の硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂から転写部材を剥離し、硬化性樹脂に転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成されるものであることが好ましい。よって、透明基材が可撓性を有する光透過率が80%以上の透明なフレキシブル材であれば、ロールトゥロールプロセスを経ることにより、上記透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0039】
また、透明基材と配向膜との密着性を向上させるために、透明基材に表面処理行ってもよい。具体的には、グロー放電処理、コロナ放電処理、UV処理、ケン化処理等を用いることができる。また、透明基材上にプライマー層を形成してもよい。さらに、硬化性樹脂から透明基材を保護する目的でプライマー層(バリア層)を設けてもよい。このようなプライマー層としては、例えばシラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0040】
2.配向膜
次に、本発明に用いられる配向膜について説明する。本発明に用いられる配向膜は、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。
【0041】
本発明においては、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、転写により形成されることが好ましい。転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となるからである。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有するからである。
【0042】
以下、このような配向膜の各構成について説明する。
【0043】
a.転写部材
まず、本発明に用いられる転写部材について説明する。本発明に用いられる転写部材は、液晶を配向させるための凹凸形状を有することを特徴とするものである。本発明において、転写部材は、例えば図3に示すように、転写部材用基体11と上記転写部材用基体11上に形成された凹凸形状12または13とを有するものである。
【0044】
上記転写部材用基体としては、液晶を配向させるための凹凸形状を形成できる材料であれば特に限定されるものではないが、後述する硬化性樹脂組成物を硬化させる際のエネルギーの照射方法により適宜選択される。すなわち、転写部材側からエネルギーを照射する場合は、透明な材料であることが必要であるが、透明基材側からエネルギーを照射する場合は、特に透明な材料に限定されるものではない。
【0045】
また、上記転写部材用基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス等であってもよい。本発明においては、転写部材は繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有する材料が好適に用いられる。具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。このような材料は、後述する液晶を配向させるための凹凸形状を形成する方法により、適宜選択されるものである。
【0046】
さらに、上記転写部材は、後述する上記硬化性樹脂に転写部材の凹凸形状を転写する際に、転写用円筒ドラムにより移動していることが好ましく、さらには転写部材が転写用円筒ドラムである、すなわち転写用円筒ドラムの表面に液晶を配向させるための凹凸形状が形成されていることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0047】
本発明において、液晶を配向させるための凹凸形状を形成する方法としては、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させる凹凸形状を形成することが好ましく、具体的には斜め蒸着法、ラビング法等を挙げることができる。以下、斜め蒸着法、ラビング法について説明する。
【0048】
(斜め蒸着法)
斜め蒸着法とは、蒸着源から蒸発した分子または原子が、基体に対して斜めの方向から入射するように設定し、基体上に蒸着膜を形成することにより、配向膜を形成する方法である。ここで、本発明においては、図3に示すように、蒸着源から蒸発した分子または原子が、転写部材用基体11に対して斜めの方向から入射するように設定し、転写部材用基体11上に蒸着膜12または13を形成することにより、転写部材4とする。図3(a)に示すように、転写部材用基体11を蒸着方向に対して大きく傾けて、蒸着源の方向(蒸着方向)と転写部材用基体11表面に垂直な方向との間の角度θが80〜85°になるように蒸着すると、薄膜となるSiO等の微細な結晶が蒸着源の方向に対して、斜め方向に突き出た柱状の構造となり、液晶分子7はこの柱状構造12の側面に沿って配向するようになる。一方、図3(b)に示すように、転写部材用基体11を傾ける角度θを45〜65°に設定すると、転写部材用基体11の面に沿って蒸着方向に直角な方向に細かな縞状の凹凸構造13が薄膜形成され、液晶分子7はその溝に沿って配向するようになる。(図3(b)では、液晶分子7の長軸は紙面に垂直方向に向いている。)このように、転写部材用基体11表面に対する蒸発源の方向の違いにより、傾斜配向(図3(a))と平行配向(図3(b))とが可能になる。なお、斜め蒸着法に関しては、「液晶ディスプレイの最先端」(初版第2刷、108〜119頁、(株)シグマ出版、1998年)、「液晶の最新技術」(3版、55〜56頁、(株)工業調査会、1984年)、「液晶の世界」(第4刷、74〜77頁、(株)産業図書、平成9年)に詳しい。
【0049】
本発明においては、配向された液晶の配向方向が、透明基材の長尺方向に対して交差する方向であることが好ましく、中でも透明基材の長尺方向に対して90°±2°または45°±2°であることが好ましく、特に90°±0.5°または45°±0.5°であることが好ましい。したがって、本発明においては、図3(b)のように、転写部材用基体に垂直な方向と蒸着方向との角度θを45〜65°の範囲内に設定することが好ましい。本発明においては、転写部材の凹凸形状を透明基材上の硬化性樹脂に転写することにより光学素子用配向膜付フィルムが形成される。よって、転写される凹凸形状が上記範囲内に設定して形成されることにより、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるからである。
【0050】
また、蒸着源としては、一酸化シリコン(SiO)、二酸化シリコン(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)等を挙げることができるが、中でもSiO2が好適に用いられる。
【0051】
本発明においては、上述したように斜め蒸着法により転写部材上に液晶を配向させるための凹凸形状を形成することが好ましい。上述したように、斜め蒸着法では、蒸着方向と転写部材用基体表面に垂直な方向の角度を所定の角度に設定することにより、容易に液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるための凹凸形状を形成できるからである。
【0052】
(ラビング法)
ラビング法とは、一般的にはポリイミド等の高分子を基体上に塗布し、基体を布等を巻き付けたローラーでラビングする(擦る)ことにより、ラビング方向に沿って液晶が配向する配向膜を形成する方法である。ここで、本発明においては、転写部材用基体上に液晶を配向させるための凹凸形状を形成することから、転写部材用基体に対してラビング処理を行う。転写部材は、長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができる凹凸形状を有していることが好ましく、また繰り返し用いられることが好ましいことから、本発明においてはラビング法を用いて、例えば以下のように転写部材用基体上に液晶を配向させるための凹凸形状が形成される。
【0053】
すなわち、金属製の転写部材用基体に対して布等を巻き付けたラビングロールを用いてラビング処理を行うことにより、転写部材用基体の表面にラビング痕を形成し、このラビング痕が液晶を配向させるための凹凸形状となり、これをもって転写部材とするといった方法である。
【0054】
長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることができる凹凸形状を形成するためには、例えば転写部材が円筒ドラムの形をしている場合は、この円筒ドラムと直交するようにラビングロールを接触させてラビング処理を行えばよい。
【0055】
b.樹脂
次に、本発明に用いられる樹脂について説明する。
【0056】
本発明において、配向膜は液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。また、上述したように、上記液晶を配向させるための凹凸形状が、透明基材上の樹脂に転写により形成されることが好ましいものである。このような転写された凹凸形状を安定化させるには、上記樹脂は、硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化性樹脂であることが好ましい。
【0057】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物としては、エネルギー線の照射により硬化するエネルギー線硬化性樹脂組成物、または熱により硬化する熱硬化性樹脂組成物を挙げることができる。本発明においては、中でもエネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましい。上記エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線の照射により硬化するUV硬化性樹脂組成物、電子線の照射により硬化する電子線硬化性樹脂組成物等を挙げることができるが、中でもUV硬化性樹脂組成物が好ましい。エネルギー線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、本発明への応用が容易であるからである。
【0058】
上記UV硬化性樹脂組成物としては、紫外線の照射により硬化するものであれば、特に限定されないが、多官能モノマー成分および/またはオリゴマー成分および/またはポリマー成分が光重合して硬化するものであることが好ましい。
【0059】
上記多官能モノマー成分としては、特に限定されるものではないが、多官能アクリレートモノマーが好適に用いられる。具体的には、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0060】
上記オリゴマー成分としては、特に限定されるものではないが、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ポリエン・チオール系等を挙げることができる。
【0061】
また、上記ポリマー成分としては、特に限定されるものではないが、例えば光架橋型ポリマーが挙げられ、具体的には光二量化反応を起こすポリビニルケイ皮酸系樹脂等を使用することができる。
【0062】
さらに、上記UV硬化性樹脂組成物に添加する光重合開始剤としては、紫外光、例えば365nm以下の紫外光で活性化し得る光ラジカル重合開始剤が用いられる。具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
このような光重合開始剤の含有量は、UV硬化性樹脂組成物中に、0.5〜30重量%の範囲内、特に1〜10重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0064】
また、上記UV硬化性樹脂組成物に使用可能な溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−またはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類を例示することができる。また、これらの溶剤の中から1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
本発明においては、UV硬化性樹脂組成物に溶剤を添加せずに塗工する場合もある。よって、このような溶剤の含有量は、UV硬化性樹脂組成物中に、0〜99.9重量%の範囲内、特に0〜80重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0066】
上記光重合開始剤、および溶剤を上記範囲内に設定した理由は、以下の通りである。本発明においては、上記硬化性樹脂組成物を転写部材上に配置し、硬化することにより、転写部材の凹凸形状が転写された硬化性樹脂が得られ、配向膜が形成されるものである。よって、硬化性樹脂組成物は転写部材の凹凸形状、例えば凹凸構造の隙間に入り込むような所定の粘度を有して、転写部材上に配置される。したがって、上記範囲内であることにより、所望の粘度を有することができ、好ましいからである。
【0067】
なお、本発明に用いられる配向膜の形成方法に関しては、後述する「C.光学素子用配向膜付フィルムの製造方法」に記載するため、ここでの説明は省略する。
【0068】
B.光学素子
次に、本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子は、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜と、上記配向膜によって配向され、固定化された液晶層とを有する光学素子であって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とするものである。
【0069】
本発明の光学素子について図を用いて説明する。図11に示すように、本発明の光学素子は、長尺の透明基材1と、上記透明基材1上に形成された配向膜2と、上記配向膜2上に形成された液晶層8とを有するものである。
【0070】
本発明の光学素子を光学補償素子として用いる場合、液晶を配向させるための凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることが可能となる。
【0071】
例えば、LCDの視野角を改善するために、液晶を用いた光学補償素子を組み込む場合、偏光板の吸収軸と光学補償素子の光学軸が90°等のある特定の角度をなすように貼り合わされる必要がある。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。従来のラビング法等を用いて作製された光学補償素子では、基材の長尺方向に液晶が配向するため、所定の寸法に切断して偏光板と貼り合わせなければならなかった。本発明の光学補償素子は、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるため、このような吸収軸が基材の長尺方向に向いた偏光板と、そのまま貼り合わせることができ、さらにそのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することが可能となる。
【0072】
本発明の光学素子は、上記光学素子用配向膜付フィルムを有するものであり、長尺の透明基材、配向膜、転写部材等に関しては上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」の欄で記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。以下、このような光学素子のその他の構成について説明する。
【0073】
1.液晶層
まず、本発明に用いられる液晶層について説明する。本発明に用いられる液晶層は、液晶が凹凸形状を利用して配向することを特徴とするものである。さらに、液晶層は、長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向されていることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、本発明の光学素子を光学補償素子として用いた場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0074】
本発明において、液晶層を形成する材料は、液晶材料が用いられる。本発明でいう液晶材料とは、所定の温度で液晶相となり得る材料を示すものであり、液晶材料が所定の液晶規則性を有して硬化することにより、液晶層が形成される。以下、このような液晶層の各構成について説明する。
【0075】
a.液晶材料
本発明でいう液晶材料とは、所定の温度で液晶相となり得る材料を示すものであり、液晶材料が所定の液晶規則性を有して硬化することにより、液晶層が形成される。したがって、上記所定の温度の上限は、透明基材および配向膜がダメージを受けない温度であれば特に限定されるものはない。具体的には、プロセス温度のコントロールの容易性と寸法精度維持の観点から、100℃以下、好ましくは80℃以下の温度で液晶相となる液晶材料が好適に用いられる。一方、液晶相と成り得る温度の下限は、光学素子として用いる場合の温度条件において、液晶材料が配向状態を保持し得る温度であるといえる。
【0076】
ここで、本発明の光学素子を光学補償素子として用いる場合の液晶材料の状態として二つの状態が考えられる。すなわち、後述するように本発明においては、重合性の無い高分子液晶材料を用いてもよく、また重合性の液晶材料を用いても良い。このような液晶材料は、通常、それ自体がネマチック規則性やスメクチック規則性を有するものが用いられる。
【0077】
重合性液晶材料の場合は、光学素子とする際に後述する「2.液晶層の形成方法」の欄で説明するように、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いるものである。したがって、光学素子として用いる場合、液晶材料は既に重合されており、配向状態は固定化される。よって、重合性液晶材料に対しては、液晶相となる温度の下限は特に限定されるものではない。
【0078】
一方、重合性の無い高分子液晶材料を用いる場合は、光学素子として用いる場合、液晶相がガラス状態となった状態である。したがって、保管もしくは使用に際して温度が上昇し、アイソトロピック状態となってしまっては、配向方向が乱れてしまい、光学素子として使用することができなくなる。したがって、本発明において重合性でない高分子液晶材料を用いた場合は、アイソトロピック相となる温度は所定の温度以上であることが好ましいといえるのである。このような場合のアイソトロピック相となる温度の下限は、用途にもよるが、一般的には80℃以上、好ましくは100℃以上であるといえる。
【0079】
重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶高分子のいずれかを用いることが可能である。一方、重合性を有さない高分子液晶材料としては、上述したように配向状態が光学素子の保管もしくは使用温度において一定である必要性があることから、比較的アイソトロピック相となる温度の高い液晶材料が好適に用いられる。
【0080】
本発明においては、中でも重合性液晶材料を用いることが好ましい。このような重合性液晶材料は、後述するように活性照射線の照射等により重合させて配向状態を固定化することが可能であるので、液晶の配向を低温状態で容易に行うことが可能であり、かつ使用に際しては配向状態が固定化されているので、温度等の使用条件にかかわらす使用することができるからである。
【0081】
本発明においては、特に重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子と比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高いことから、容易に配向させることができるからである。
【0082】
このような重合性液晶材料の一例としては、例えば下記に示すような重合性液晶モノマーの例を挙げることができる。
【0083】
すなわち、下記の一般式(1)で表わされる化合物(I)と、下記の一般式(2)で表わされる化合物(II)とで構成されるものを挙げることができる。
【0084】
化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種を混合して使用することができ、同様に、化合物(II)としては、一般式(2)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
【化1】
【0086】
化合物(I)を表わす一般式(1)において、R1およびR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1およびR2は共に水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、aおよびbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくない。
【0087】
化合物(I)は任意の方法で合成することができる。例えば、Xがメチル基である化合物(I)は、1当量のメチルヒドロキノンと2当量の4−(m−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により得ることができる。エステル化反応は、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これとメチルヒドロキノンとを反応させるのが通例である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて、カルボン酸単位とメチルヒドロキノンを直接反応させることもできる。これ以外の方法としては、1当量のメチルヒドロキノンと、2当量の4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応をまず行い、次いで得られたエステルを水素添加反応等により脱ベンジル化した後、分子末端をアクリロイル化する方法によっても、化合物(I)を合成することができる。メチルヒドロキノンと4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応を行うに際しては、メチルヒドロキノンをジアセテートに導入した後、上記の安息香酸と溶融状態で反応させ、直接エステル体を得ることも可能である。一般式(1)のXがメチル基でない場合の化合物(I)も、対応する置換基を有するヒドロキノンを、メチルヒドロキノンの代わりに用いて上と同様の反応を行うことにより得ることができる。
【0088】
【化2】
【0089】
化合物(II)を表わす一般式(2)において、R3は水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR3は水素であることが好ましい。アルキレン基の鎖長を示すcに関して言えば、この値が2〜12である化合物(II)は液晶性を示さない。しかしながら、液晶性を持つ化合物(I)との相溶性を考慮すると、cは4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。化合物(II)も任意の方法で合成可能であり、例えば、1当量の4−シアノフェノールと1当量の4−(n−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により化合物(II)を合成することができる。このエステル化反応は化合物(I)を合成する場合と同様に、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これと4−シアノフェノールとを反応させるのが一般的である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて上記安息香酸と4−シアノフェノールを反応させてもよい。
【0090】
その他、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子等を用いることが可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子としては、従来提案されているものを適宜選択して用いることが可能である。
【0091】
さらに、本発明においては、必要に応じて光重合開始剤を用いてもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
【0092】
本発明において用いることができる光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
【0093】
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で本発明の重合性液晶材料に添加することができる。
【0094】
一方、本発明においては、上述したように重合性を有さない液晶材料も用いることができる。このような液晶材料としては、上述したように光学素子の使用時もしくは保管時に液晶の配向状態が変化しない材料であれば特に限定されるものではないが、一般に高分子材料で形成されたものが、液相もしくは液晶相となる温度との関係で好適に用いられる。このような液晶材料に関しては、液晶相の状態でネマチック相あるいはスメクチック相を形成し得る材料であれば一般的に用いられている材料を用いることができ、主鎖型の液晶高分子であっても側鎖型の液晶高分子であってもよい。
【0095】
具体的には、主鎖型の液晶ポリマーの例としては、例えばポリエステル系やポリアミド系、ポリカーボネート系やポリエステルイミド系などのポリマーが挙げられる。
【0096】
また、側鎖型の液晶ポリマーの例としては、ポリアクリレートやポリメタクリレート、ポリシロキサンやポリマロネート等を主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を必要に応じ介してパラ置換環状化合物等からなる低分子液晶化合物(メソゲン部)を有するもの等を挙げることができる。
【0097】
b.液晶規則性
本発明においては、液晶層は上記重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、重合性液晶高分子、液晶高分子が所定の液晶規則性を有して硬化されてなるものである。
【0098】
ここで、光学素子が光学補償素子である場合は、上記液晶層は、ネマチック規則性もしくはスメクチック規則性を有するものである。
【0099】
上記規則性は、基本的には用いる液晶材料が自ら呈する液晶規則性により決定されるものである。このような液晶規則性は、配向膜上に、上述した液晶材料を塗工し、透明基材に転写された形状に沿って配向させて得られるものである。そして、液晶規則性を有した状態で硬化させて、液晶層とすることができるのである。
【0100】
c.その他
本発明に用いられる液晶層の膜厚は0.2〜10μmの範囲内、特に0.4〜6μmの範囲内であることが好ましい。本発明の光学素子を光学補償素子として用いる場合、液晶層が上記範囲を超えて厚くなると必要以上の光学異方性が生じてしまい、また上記範囲より薄いと所定の光学異方性が得られない場合があるからである。よって、液晶層の膜厚は、必要な光学異方性に準じて決定すればよい。
【0101】
本発明においては、上記液晶層中の液晶の配向角は、透明基材の長尺方向に対して任意の角度に設定できるものである。例えば、透明基材の長尺方向に対して幅方向に液晶を配向させる場合は、上記液晶の配向角は、90°±2°の範囲が好ましく、さらに90°±0.5°の範囲であることが好ましい。また、透明基材の長尺方向に対して45°方向に液晶を配向させる場合は、上記液晶の配向角は、45°±2°の範囲が好ましく、さらに45°±0.5°の範囲であることが好ましい。なお、配向角は位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて測定した値とする。
【0102】
本発明においては、中でも液晶が長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向されていることが好ましい。例えば、LCDの視野角依存性を改善するために、本発明の光学素子を光学補償素子として用いた場合、長尺の透明基材の長尺方向に吸収軸が向いた偏光板と貼り合わせて所定寸法に切断してLCDに組み込むことができるとともに、そのような所望の光学特性の光学補償素子を容易に安価に提供することができるからである。
【0103】
なお、本発明に用いられる液晶層の形成方法に関しては、後述する「D.光学素子の製造方法」に記載するため、ここでの説明は省略する。
【0104】
2.用途
次に、本発明の光学素子の用途について説明する。
【0105】
本発明の光学素子は、主として光学補償素子に用いられる。例えば、LCDの視野角を改善するために、液晶を用いた光学補償素子を組み込む場合、偏光板の吸収軸と光学補償素子の光学軸が90°等のある特定の角度をなすように貼り合わされる必要がある。偏光板は、通常高分子フィルムを長尺方向に延伸して作製されるため、その吸収軸はフィルム基材の長尺方向を向いている。上述したように、本発明においては、長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に液晶を配向させることが可能であるため、上記のような吸収軸が透明基材の長尺方向に向いた偏光板と貼り合わせて所定の寸法に切断してLCDに組み込むことが可能となるからである。
【0106】
また、本発明の光学素子は、セキュリティ部材にも使用することができる。例えば、プリペイドカード、IDカード、コンピューターソフト、音楽ソフト等の偽造や複製を防止するために、本発明の光学素子を用いる。この場合、プリペイドカード、音楽ソフト等の一部に光学素子を付属させて用いることとなる。光学素子は、偏光板を通してまたは偏光を照射して観察することにより、特定の方向の直線偏光のみを認識できる。よって、自然光の下で観察したときには、光学素子が付属している部分は認識できないものであるため、偽造や複製を防ぐためのセキュリティ部材として用いることができる。
【0107】
C.光学素子用配向膜付フィルムの製造方法
次に、本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法について説明する。
【0108】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法において、後述する硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程により2つの実施態様がある。以下、各実施態様について分けて説明する。
【0109】
1.第1実施態様
本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の第1実施態様は、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に上記透明基材を配置する配置工程と、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程とを有することを特徴とするものである。
【0110】
転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0111】
本実施態様について図面を用いて説明する。図2は、本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の一例を示すものである。まず、図2(a)に示すように液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工する塗工工程を行う。次に、図2(b)に示すようにエネルギー6を照射することにより上記硬化性樹脂組成物3を硬化させて、硬化性樹脂5とする硬化工程を行う。さらに、この硬化性樹脂5の表面に長尺の透明基材1を配置し(図2(c)、配置工程)、この硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図2(d))、硬化性樹脂5に転写部材4の凹凸形状を転写する(図2(e))転写工程が行われる。
【0112】
以下、上述した例に示されるような本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法について、各工程にわけて説明する。
【0113】
a.塗工工程
本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムを製造するに際しては、まず液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程が行われる。
【0114】
硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法(ダイコート法)等が挙げられる。
【0115】
塗工された硬化性樹脂組成物の膜厚としては、1〜30μmの範囲内、特に1〜15μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲内より薄い場合は、硬化性樹脂組成物を硬化して、転写部材の凹凸形状を硬化性樹脂に転写する際に、転写部材の凹凸形状の転写が十分に行われない可能性があるからである。また、膜厚が上記範囲より厚い場合は、本発明の光学素子用配向膜付フィルムを例えばLCDの光学補償素子に用いる場合、LCDが厚くなってしまう可能性があるからである。また、透明基材がフィルムである場合、塗工面がカールしやすくなるという不具合が生じる可能性があるからである。
【0116】
また、上記硬化性樹脂組成物が所望の膜厚となるように、塗工量を制御して上述した方法により塗工してもよく、塗工した後に余剰な硬化性樹脂組成物を取り除いてもよい。余剰な硬化性樹脂組成物を取り除く方法としては、ローラーを用いて取り除く方法、ドクターを用いて掻き取る方法等が挙げられる。また、このような余剰な硬化性樹脂組成物を取り除く工程は、硬化性樹脂組成物を塗工した後でもよく、後述するように硬化性樹脂組成物の表面に透明基材を配置した後でもよい。
【0117】
なお、本発明に用いられる硬化性樹脂組成物、および転写部材に関しては、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」の配向膜の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
b.硬化工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程が行われる。
【0119】
硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、エネルギー線を照射する方法、熱をかける方法等を挙げることができるが、本実施態様においてはエネルギー線を照射する方法が好ましい。本実施態様でいうエネルギー線とは、硬化性樹脂組成物に含まれるモノマーおよびポリマーに対して重合を起こさせる能力があるエネルギー線をいい、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」の欄で説明したように、必要であれば硬化性樹脂組成物中に重合開始剤が含まれていてもよい。
【0120】
エネルギー線としては、硬化性樹脂組成物を重合せさることが可能なエネルギー線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
【0121】
本実施態様においては、紫外線(UV)をエネルギー線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
【0122】
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。
【0123】
照射強度は、硬化性樹脂組成物の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
【0124】
また、硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化性樹脂の膜厚としては、0.5〜30μmの範囲内、特に1〜15μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より厚い場合は、本発明の光学素子用配向膜付フィルムを例えばLCDの光学補償素子に用いる場合、LCDが重厚となる可能性があるからである。また、膜厚が上記範囲より薄い場合は、強靭性に劣るからである。
【0125】
本実施態様において、硬化工程は、上記塗工工程、配置工程および転写工程のどの工程の後に行ってもよいものである。すなわち、転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工した後に硬化させる場合(塗工工程後)、硬化性樹脂組成物の表面に透明基材を配置した後に硬化させる場合(配置工程後)、転写部材を硬化性樹脂組成物から剥離した後に硬化させる場合(転写工程後)、のどの場合で行ってもよいものである。以下、3つの態様にわけて説明する。
【0126】
(i)第1の態様
本実施態様において、硬化工程の第1の態様は、図2に示すように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図2(a))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図2(b))、硬化して得られる硬化性樹脂5の表面に透明基材1を配置し(図2(c))、上記硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図2(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図2(e))。
【0127】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、転写部材側からでもよく、硬化性樹脂組成物側からでもよい。ただし、転写部材側から照射する場合は、転写部材が透明材料である必要がある。
【0128】
また、硬化性樹脂組成物を硬化した後に、硬化して得られる硬化性樹脂の表面に転写部材を配置し、転写部材の凹凸形状を転写することから、硬化後も硬化性樹脂は所定の粘度を有している必要がある。よって、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させないことが好ましく、硬化性樹脂の表面に透明基材を配置した後、または硬化性樹脂から転写部材を剥離した後に、再度硬化させてもよいものである。
【0129】
(ii)第2の態様
本実施態様において、硬化工程の第2の態様は、図4に示すように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図4(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に透明基材1を配置し(図4(b))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図4(c))、硬化して得られる硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図4(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図4(e))。
【0130】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、転写部材側からでもよく、透明基材側からでもよい。ただし、転写部材側から照射する場合は、転写部材が透明材料である必要がある。
【0131】
(iii)第3の態様
本実施態様において、硬化工程の第3の態様は、図5に示すように、液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図5(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に透明基材1を配置し(図5(b))、上記硬化性樹脂組成物3から転写部材4を剥離し(図5(c))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図5(d))、硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図5(e))。
【0132】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、硬化性樹脂組成物側からでもよく、透明基材側からでもよい。
【0133】
また、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離した後に、転写部材の凹凸形状が転写された硬化性樹脂組成物を硬化させることから、硬化性樹脂組成物は転写部材を剥離した後も転写部材の凹凸形状を保持したままでいる必要がある。よって、硬化性樹脂組成物が所定の粘度を有するように、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離する前に、予め半硬化状態とさせてもよいものである。
【0134】
c.配置工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂の表面に透明基材を配置する配置工程が行われる。
【0135】
硬化性樹脂組成物および硬化性樹脂の表面に透明基材を配置する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と透明基材とが接するように配置されれば、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と透明基材とが密着するように配置されることが好ましい。硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂は、転写部材上から透明基材上に移動するため、透明基材と密着することが必要であるからである。
【0136】
したがって、透明基材と硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂との密着性を向上させるために、透明基材に表面処理行うことが好ましい。具体的には、グロー放電処理、コロナ放電処理、UV処理、ケン化処理等を用いることができる。また、透明基材上にプライマー層を形成してもよい。さらに、硬化性樹脂から透明基材を保護する目的でプライマー層(バリア層)を設けてもよい。このようなプライマー層としては、例えばシラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0137】
なお、本発明に用いられる長尺の透明基材に関しては、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0138】
d.転写工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂から転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程が行われる。
【0139】
硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂から転写部材を剥離する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂が転写部材上から透明基材上に移動し、かつ転写部材の凹凸形状が硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂に転写されていれば、特に限定されるものではない。
【0140】
また、本実施態様においては、転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工し、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂と上記透明基材とを接触させて、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、上記配向膜が形成されるものであることが好ましい。さらに、上記転写部材が、転写用円筒ドラムであることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0141】
上述したロールトゥロールプロセスについて図を用いて説明する。図6に、本実施態様における配向膜の形成方法の例を示す。図6に示すように、転写部材4は転写用円筒ドラムであり、長尺の透明基材1は供給ロール23から供給され、基材用円筒ドラム21を通って図示略の巻き取りロールにより巻き取られている。転写部材4上に硬化性樹脂組成物3を塗工し、上記二つの円筒ドラム21および4上で上記硬化性樹脂組成物3と上記透明基材1とを接触させ、上記硬化性樹脂組成物3を上記転写部材4から剥離し、光源22からエネルギーを照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化して硬化性樹脂5として、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成される。
【0142】
2.第2実施態様
次に、本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の第2実施態様について説明する。
【0143】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の第2実施態様は、連続的に移動可能な長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、上記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、上記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材を配置する配置工程と、上記透明基材上の上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程とを有することを特徴とするものである。
【0144】
本発明においては、転写部材の凹凸形状を、液晶を長尺の透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させるような形状にすることにより、転写された凹凸形状を利用して液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを提供することが可能となる。また、このような転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子用配向膜付フィルムを大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0145】
本実施態様について図面を用いて説明する。図7は、本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の例を示すものである。まず、図7(a)に示すように透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工する塗工工程を行う。次に、図7(b)に示すようにエネルギー6を照射することにより上記硬化性樹脂組成物3を硬化させて、硬化性樹脂5とする硬化工程を行う。さらに、この硬化性樹脂5の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材4を配置し(図7(c)、配置工程)、この硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図7(d))、硬化性樹脂5に転写部材4の形状を転写する(図7(e))転写工程を行う。
【0146】
以下、上述した例に示されるような本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法について、各工程に詳細に説明する。
【0147】
a.塗工工程
本実施態様の光学素子用配向膜付フィルムを製造するに際しては、まず長尺の透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程が行われる。
【0148】
なお、本発明に用いられる透明基材、硬化性樹脂組成物に関しては、上述した「A.光学素子用配向膜付フィルム」に記載したものと同様であり、また、硬化性樹脂組成物の塗工方法等に関しては、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0149】
b.硬化工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程が行われる。
【0150】
本実施態様において、硬化工程は、上記塗工工程、配置工程、および転写工程のどの工程の後に行ってもよいものである。すなわち、透明基材上に硬化性樹脂を塗工した後に硬化させる場合(塗工工程後)、硬化性樹脂組成物の表面に転写部材を配置した後に硬化させる場合(配置工程後)、転写部材を硬化性樹脂組成物から剥離した後に硬化させる場合(転写工程後)、のどの場合で行ってもよいものである。以下、3つの態様にわけて説明する。
【0151】
(i)第1の態様
本実施態様において、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程の第1の態様は、図7に示すように、透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図7(a))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図7(b))、硬化して得られる硬化性樹脂5の表面に転写部材4を配置し(図7(c))、上記硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図7(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図7(e))。
【0152】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、透明基材側からでもよく、硬化性樹脂組成物側からでもよい。
【0153】
また、硬化性樹脂組成物を硬化した後に、硬化して得られる硬化性樹脂の表面に転写部材を配置し、転写部材の凹凸形状を転写することから、硬化後も硬化性樹脂は所定の粘度を有している必要がある。よって、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させないことが好ましく、硬化性樹脂の表面に転写部材を配置した後、または硬化性樹脂から転写部材を剥離した後に、再度硬化させてもよいものである。
【0154】
(ii)第2の態様
本実施態様において、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程の第2の態様は、図8に示すように、透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図8(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に転写部材4を配置し(図8(b))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図8(c))、硬化して得られる硬化性樹脂5から転写部材4を剥離し(図8(d))、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図8(e))。
【0155】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、転写部材側からでもよく、透明基材側からでもよい。ただし、転写部材側から照射する場合は、転写部材が透明材料である必要がある。
【0156】
(iii)第3の態様
本実施態様において、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程の第3の態様は、図9に示すように、透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し(図9(a))、上記硬化性樹脂組成物3の表面に転写部材4を配置し(図9(b))、上記硬化性樹脂組成物3から転写部材4を剥離し(図9(c))、エネルギー6を照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化し(図9(d))、硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を転写するものである(図9(e))。
【0157】
この際、上記硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線の照射方向としては、硬化性樹脂組成物側からでもよく、透明基材側からでもよい。
【0158】
また、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離した後に、転写部材の凹凸形状が転写された硬化性樹脂組成物を硬化させることから、硬化性樹脂組成物は転写部材を剥離した後も転写部材の凹凸形状を保持したままでいる必要がある。よって、硬化性樹脂組成物が所定の粘度を有するように、硬化性樹脂組成物から転写部材を剥離する前に、予め半硬化状態とさせてもよいものである。
【0159】
なお、硬化性樹脂組成物の硬化方法、硬化する際に用いるエネルギー等に関しては、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0160】
c.配置工程
本実施態様においては、透明基材上の硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂の表面に転写部材を配置する配置工程が行われる。
【0161】
硬化性樹脂組成物および硬化性樹脂の表面に転写部材を配置する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と転写部材とが接するように配置されれば、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂と転写部材とが密着するように配置されることが好ましい。硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂の表面に転写部材の凹凸形状を写し取るため、転写部材と密着することが必要であるからである。
【0162】
なお、本発明に用いられる転写部材に関しては、「A.光学素子用配向膜付フィルム」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0163】
d.転写工程
本実施態様においては、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂から転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程が行われる。
【0164】
透明基材上の硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂から転写部材を剥離する方法としては、硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂が透明基材上から剥がれず、かつ転写部材の凹凸形状が硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂に転写されていれば、特に限定されるものではない。
【0165】
したがって、透明基材と硬化性樹脂組成物もしくは硬化性樹脂との密着性を向上させるために、透明基材に表面処理行うことが好ましい。具体的には、グロー放電処理、コロナ放電処理、UV処理、ケン化処理等を用いることができる。また、透明基材上にプライマー層を形成してもよい。さらに、硬化性樹脂から透明基材を保護する目的でプライマー層(バリア層)を設けてもよい。このようなプライマー層としては、例えばシラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0166】
また、本実施態様においては、転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、上記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工し、上記二つの円筒ドラム上で上記硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂と上記転写部材とを接触させて、上記透明基材上の上記硬化性樹脂組成物または上記硬化性樹脂から上記転写部材を剥離し、上記硬化性樹脂に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成されるものであることが好ましい。さらに、上記転写部材が、転写用円筒ドラムであることが好ましい。ロールトゥロールプロセスを経ることにより、透明基材上に形状転写を連続的に行うことができ、生産性が向上するからである。
【0167】
上述したロールトゥロールプロセスについて図を用いて説明する。図10に、本実施態様における配向膜の形成方法の例を示す。図10に示すように、転写部材4は転写用円筒ドラムであり、長尺の透明基材1は供給ロール23から供給され、基材用円筒ドラム21を通って図示略の巻き取りロールにより巻き取られている。透明基材1上に硬化性樹脂組成物3を塗工し、上記二つの円筒ドラム21および4上で上記硬化性樹脂組成物3と上記転写部材4とを接触させ、上記透明基材1上の上記硬化性樹脂組成物3から上記転写部材4を剥離し、光源22からエネルギーを照射して上記硬化性樹脂組成物3を硬化して硬化性樹脂5として、上記硬化性樹脂5に上記転写部材の凹凸形状を連続的に転写させることにより、配向膜が形成される。
【0168】
D.光学素子の製造方法
次に、本発明に光学素子の製造方法について説明する。
【0169】
本発明の光学素子の製造方法は、上記発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法により光学素子用配向膜付フィルムを形成する光学素子用配向膜付フィルム形成工程と、上記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、上記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0170】
上記光学素子用配向膜付フィルムの製造方法を用いた光学素子の製造方法であれば、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができる光学素子を提供することが可能となる。また、転写部材の原版を一度作製するだけで、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させた光学素子用を大量に製造できるため、生産性の向上という利点も有する。
【0171】
なお、本発明に用いられる光学素子用配向膜付フィルムの製造方法に関しては、上述した「C.光学素子用配向膜付フィルムの製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0172】
以下、本発明の光学素子の製造方法における液晶層形成工程について説明する。
【0173】
1.液晶層形成工程
本発明の光学素子の製造方法においては、上記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、上記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程が行われる。
【0174】
本発明においては、図11に示すように、液晶層8は配向膜2上に形成されるものである。本発明における液晶層とは、上述した「B.光学素子」に記載した液晶材料で形成されたものであり、液晶規則性を有するものである。
【0175】
このような液晶層を形成する方法としては、液晶材料を含む液晶層形成用組成物を配向膜上に塗工し、液晶層形成用層を形成する。この液晶材料を転写された凹凸形状に沿って配向させ、液晶規則性を有した状態で硬化させて、液晶の配向が固定化した液晶層とすることができるのである。以下、液晶層の形成方法の各工程について説明する。
【0176】
a.液晶層形成用層形成工程
本発明において、液晶層形成用層を形成する方法としては、例えばドライフィルム等を予め形成してこれを液晶層形成用層としこれを配向膜上に積層する方法や、液晶層形成用組成物を融解させて、これを配向膜上に塗工する方法等をとることも可能であるが、本発明においては、液晶層形成用組成物を溶媒に溶解し、これを配向膜上に塗工し、溶媒を除去することにより液晶層形成用層を形成することが好ましい。これは、他の方法と比較して工程上簡便であるからである。
【0177】
液晶層形成用組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法(ダイコート法)、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法等が挙げられる。
【0178】
このように液晶層形成用塗工液を塗工した後、溶媒を除去するのであるが、この溶媒の除去方法としては、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。溶媒が除去されることにより、液晶層形成用層が形成される。
【0179】
本発明においては、このようにして形成された液晶層形成用層の層内の液晶材料を、配向膜表面に転写された形状により、液晶規則性を有する状態とする。これは、通常はN−I転移点以下で熱処理する方法等の方法により行われる。なお、ここで、N−I転移点とは、液晶相から等方相へ転移する温度を示すものである。
【0180】
この液晶層形成用塗工液に用いられる液晶材料および光重合開始剤に関しては、上記「B.光学素子」の液晶層の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、この液晶層形成用塗工液に用いられる溶媒、およびその他の添加剤について説明する。
【0181】
(溶媒)
上記液晶層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、液晶材料等を溶解することが可能な溶媒であり、かつ配向膜の配向能を阻害しない溶媒であれば特に限定されるものではない。
【0182】
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種または2種以上が使用可能である。
【0183】
単一種の溶媒を使用しただけでは、液晶材料等の溶解性が不充分であったり、上述したように配向能を有する配向膜が侵食される場合がある。しかし2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール類との混合系である。溶液の濃度は、液晶性組成物の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定できないが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲で調整される。
【0184】
(その他の添加剤)
本発明に用いられる液晶層形成用塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。本発明の液晶性組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、本発明の液晶性組成物の40重量%以下、20重量%以下である。これらの化合物の添加により、本発明における液晶材料の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
【0185】
また、上記液晶層形成用塗工液には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることができる。添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0186】
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、さらには溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる液晶性組成物の10重量ppm〜10重量%、好ましくは100重量ppm〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲にある。
【0187】
b.配向固定化工程
本発明においては、上述した液晶層形成用層に対して、液晶の配向を固定化するための配向固定化工程が行われる。
【0188】
本発明において、配向固定化工程は、用いられる液晶材料により異なる方法により行われる。具体的には、液晶材料が重合性の材料である場合と、重合性を有さない高分子材料である場合とに分かれる。以下、液晶材料が重合性材料である場合と、重合性を有さない高分子材料である場合とに分けて説明する。
【0189】
(重合性液晶材料)
本発明においては、上述したように液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶高分子といった重合性液晶材料を用いることが好ましい。
【0190】
このような重合性液晶材料を用いた場合の配向固定化工程は、配向能を有する基材上に形成された重合性液晶材料からなる液晶層形成用層に対して、重合を活性化する活性放射線を照射する工程となる。
【0191】
本発明でいう活性放射線とは、重合性の材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいい、必要であれば重合性材料内に重合開始剤が含まれていてもよい。
【0192】
活性放射線としては、重合性液晶材料を重合せさることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
【0193】
本発明においては、重合開始剤が紫外線(UV)でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線(UV)を活性放射線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
【0194】
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。
【0195】
照射強度は、液晶層を形成している重合性液晶材料の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
【0196】
このような活性照射線の照射による配向固定化工程は、上述した液晶層形成用層形成工程における処理温度、すなわち重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
【0197】
なお、重合材料としては、上述したように液晶性を有さない通常の重合性材料を用いる場合もあるが、このような場合も同様にして配向固定化工程を行うことができる。
【0198】
(重合性を有さない高分子材料)
重合性を有さない高分子材料を用いた場合の配向固定化工程は、温度を液晶相となる温度から、固相となる温度に低下させる工程である。上記液晶層形成用層形成工程において、液晶高分子は、配向膜の転写された形状に沿ったネマチック規則性あるいはスメクチック規則性を有する液晶相となる。そして、この状態で温度をガラス状態となる温度とすることにより、液晶層とすることができるのである。
【0199】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0200】
【実施例】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0201】
[実施例1]
(転写部材の作製)
転写部材用基体としてガラス板、蒸着源としてSiO2を用い、蒸着方向とガラス板の垂直方向の角度θを60°に設定して、斜め蒸着法によりガラス基板上に液晶を配向させるための凹凸形状を形成し、転写部材を得た。
【0202】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
上記転写部材上にUV硬化性樹脂組成物を塗工し、このUV硬化性樹脂組成物の表面にプライマー層を設けたTACフィルムを接触させ、ローラーを用いて余剰のUV硬化性樹脂組成物を取り除いた。次に、TACフィルム側から紫外線を400mJ/cm2照射して、UV硬化性樹脂組成物を硬化し、転写部材を剥離した。上記一連の操作により、光学素子用配向膜付フィルムを得た。
【0203】
(光学素子の作製)
上記光学素子用配向膜付フィルム上に、トルエンを溶媒としたUV硬化性ネマチック液晶(希釈濃度36%ww)を塗布した。80℃で1分間乾燥した後、UV照射することによりネマチック液晶を硬化させ、液晶層を形成した。上記一連の操作により光学素子を得た。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、89.8°であり、TACフィルムの幅方向に液晶分子が配向していた。
【0204】
[実施例2]
(転写部材の作製)
銅製の円筒ドラムとレーヨン製のラビングロールを互いに直交するように接触させてラビング処理を行い、銅製の円筒ドラムの幅方向に沿ってラビング痕を形成し、転写部材を得た。
【0205】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
上記転写部材の表面にUV硬化性樹脂組成物を部分的に浸漬させた後、表面の余剰なUV硬化性樹脂組成物をドクターにより掻き取った。その後、UV硬化性樹脂組成物の表面にTACフィルムを接触させて、UV照射することにより硬化させ、UV硬化性樹脂にラビング痕を転写させた。上記一連の操作により光学素子用配向膜付フィルムを得た。
【0206】
(光学素子の作製)
上記光学素子用配向膜付フィルム上に、トルエンを溶媒としたUV硬化性ネマチック液晶(希釈濃度36%ww)を塗布した。80℃で1分間乾燥した後、UV照射することによりネマチック液晶を硬化させ、液晶層を形成した。上記一連の操作により光学素子を得た。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、89.8°であり、TACフィルムの幅方向に液晶分子が配向していた。
【0207】
[実施例3]
(転写部材の作製)
転写部材は、実施例2と同様にして作製した。
【0208】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
TACフィルムにプライマー層を設けた後、UV硬化性樹脂組成物を8μmの厚さにコーティングした。その後、上記転写部材の表面にUV硬化性樹脂組成物付きTACフィルムを連続的に接触させて、UV照射することにより硬化させ、UV硬化性樹脂にラビング痕を転写させた。上記一連の操作により光学素子用配向膜付フィルムを得た。
【0209】
(光学素子の作製)
光学素子は、実施例2と同様にして作製した。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、89.8°であり、TACフィルムの幅方向に液晶分子が配向していた。
【0210】
[実施例4]
(転写部材の作製)
銅製の円筒ドラムとレーヨン製のラビングロールを円筒ドラムの流れ方向に対して45°傾けた角度に接触させてラビング処理を行い、ラビング痕を形成し、転写部材を得た。
【0211】
(光学素子用配向膜付フィルムの作製)
光学素子用配向膜付フィルムは、実施例2と同様にして作製した。
【0212】
(光学素子の作製)
光学素子は、実施例2と同様にして作製した。得られた光学素子の液晶層の液晶を位相差測定装置(王子計測機社製、商品名KOBRA)を用いて配向角を測定したところ、44.8°であり、TACフィルムの長尺方向に対して約45°に液晶分子が配向していた。
【0213】
【発明の効果】
本発明の光学素子用配向膜付フィルムは、長尺の透明基材と、上記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、上記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなるものであるので、液晶を配向させるための凹凸形状を調整することにより、液晶を透明基材の長尺方向に対して交差する方向に配向させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】斜め蒸着法を説明するための概略断面図である。
【図4】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図5】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図6】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図8】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図9】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図10】本発明の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図11】本発明の光学素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 長尺の透明基材
2 … 配向膜
3 … 硬化性樹脂組成物
4 … 転写部材
5 … 硬化性樹脂
8 … 液晶層
Claims (15)
- 長尺の透明基材と、前記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムであって、前記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子用配向膜付フィルム。
- 前記凹凸形状により配向される液晶の配向方向が、前記透明基材の長尺方向と交差していることを特徴とする請求項1に記載の光学素子用配向膜付フィルム。
- 前記配向膜が、硬化された硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子用配向膜付フィルム。
- 長尺の透明基材と、前記透明基材上に形成された配向膜と、前記配向膜によって配向され、固定化された液晶層とを有する光学素子であって、前記配向膜が、液晶を配向させるための凹凸形状を有する樹脂からなることを特徴とする光学素子。
- 前記凹凸形状により配向された液晶の配向方向が、前記透明基材の長尺方向と交差していることを特徴とする請求項4に記載の光学素子。
- 前記配向膜が、硬化された硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光学素子。
- 連続的に移動可能な長尺の透明基材と、前記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、
液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、
前記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、
前記硬化性樹脂組成物または前記硬化性樹脂の表面に前記透明基材を配置する配置工程と、
前記硬化性樹脂組成物または前記硬化性樹脂から前記転写部材を剥離し、前記硬化性樹脂に前記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程と
を有することを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。 - 前記液晶を配向させるための凹凸形状が、斜め蒸着により形成されることを特徴とする請求項7に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。
- 前記液晶を配向させるための凹凸形状が、ラビングにより形成されることを特徴とする請求項7に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。
- 前記転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、前記長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、
前記塗工工程と、上記二つの円筒ドラム上で前記硬化性樹脂組成物または前記硬化性樹脂と前記透明基材とを接触させる前記配置工程と、前記転写工程とが、連続的に行われることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれかの請求項に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。 - 連続的に移動可能な長尺の透明基材と、前記透明基材上に形成された配向膜とを有する光学素子用配向膜付フィルムの製造方法であって、
前記透明基材上に硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、
前記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化性樹脂とする硬化工程と、
前記硬化性樹脂組成物または前記硬化性樹脂の表面に液晶を配向させるための凹凸形状を有する転写部材を配置する配置工程と、
前記透明基材上の前記硬化性樹脂組成物または前記硬化性樹脂から前記転写部材を剥離し、前記硬化性樹脂に前記転写部材の凹凸形状を転写する転写工程と
を有することを特徴とする光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。 - 前記液晶を配向させるための凹凸形状が、斜め蒸着により形成されることを特徴とする請求項11に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。
- 前記液晶を配向させるための凹凸形状が、ラビングにより形成されることを特徴とする請求項11に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。
- 前記転写部材が転写用円筒ドラムにより移動し、前記長尺の透明基材が基材用円筒ドラムにより移動しており、
前記塗工工程と上記二つの円筒ドラム上で前記硬化性樹脂組成物または前記硬化性樹脂と前記転写部材とを接触させる前記配置工程と、前記転写工程とが、連続的に行われることを特徴とする請求項11から請求項13までのいずれかの請求項に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法。 - 請求項7から請求項14までのいずれかの請求項に記載の光学素子用配向膜付フィルムの製造方法により光学素子用配向膜付フィルムを形成する光学素子用配向膜付フィルム形成工程と、
前記光学素子用配向膜付フィルムの配向膜上に液晶を塗工し、配向処理を行い、前記液晶の配向を固定化する液晶層形成工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
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