JP2005049257A - 耐試験液性確認評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】単純浸せき試験では良好ではあっても、実機試験に合格し得るものであるか否かを、簡便にして比較的短時間で判別し得るゴムステンレス鋼積層板の耐試験液性確認評価方法を提供する。
【解決手段】ゴムステンレス鋼積層板と水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属とを試験液中に浸せきし、その際頂部付近は液面より上部に位置するように半浸せき状態として、浸せき液露出部分同士を直接または導線を介して接触させ、液中では互いに接触しない状態で所定時間浸せきした後、積層板について特性値の低下状態の測定または評価を行う。水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属としては、好ましくはアルミニウム板が用いられ、ゴムステンレス鋼積層板と水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属の板状体、例えばアルミニウム板とは逆V字型で直接接触する状態などで浸せきが行われる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐試験液性確認評価方法に関する。さらに詳しくは、ゴムステンレス鋼積層板についての耐試験液性確認評価方法に関する。
ゴム金属積層板の耐水性や耐LLC(ロングライフクーラント)性の確認方法は、積層板を単純に試験液中に浸せきし、その後高温条件下に放置することによって、その特性値の低下状態を確認している。試験液の沸点を超える温度で試験する場合には、金属製の圧力容器を使用する必要があり、またこの方法では、耐水接着性の優劣を判断するのに500時間程度の長時間を要するという問題もみられる。
単純浸せき試験方法では、高温、長時間といった試験条件下でも接着剥れを生じないようなゴムステンレス鋼積層板を用いてエンジンシリンダヘッドガスケットを作製し、これをエンジン試験に供した場合には、水やLLC等の冷却液に接する面にブリスタや剥れが生じるので、単純な浸せき試験方法ではエンジン試験を再現することができない。
本発明の目的は、単純浸せき試験では良好ではあっても、実機試験に合格し得るものであるか否かを、簡便にして比較的短時間で判別し得るゴムステンレス鋼積層板の耐試験液性確認評価方法を提供することにある。
かかる本発明の目的は、ゴムステンレス鋼積層板と水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属とを試験液中に浸せきし、その際頂部付近は液面より上部に位置するように半浸せき状態として、浸せき液露出部分同士を直接または導線を介して接触させ、液中では互いに接触しない状態で所定時間浸せきした後、積層板について特性値の低下状態の測定または評価を行う耐試験液性確認評価方法によって達成される。水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属としては、好ましくはアルミニウム板が用いられ、ゴムステンレス鋼積層板と水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属の板状体、例えばアルミニウム板とは逆V字型で直接接触する状態などで浸せきが行われる。
ゴムステンレス鋼積層板を水や不凍液等の電解質溶液に接触させた状態で使用する場合、電解質溶液中にアルミニウム、鉄等の腐食し易い金属が存在すると、積層板との間に電位が発生し、これらの腐食し易い金属が腐食反応(アノード反応)を起すと共に、積層板のステンレス鋼表面でカソード反応が起り、このカソード反応により発生する水素ガスと表面近傍の水素イオン濃度の低下によるpHの上昇により、接着剥れが発生するという知見を、本発明者等は新たに見出した。
これの顕著な例として、アルミニウム製エンジンシリンダのヘッドガスケットとしてNBRステンレス鋼積層板を使用すると、同じような温度条件下で単純浸せき試験に合格したものでも、短時間でブリスタの発生や接着剥れ現象が発生するものもあるが、このような実機試験での現象を忠実に実験室的に再現できる手法が、本発明方法によって提供される。
すなわち、ゴムステンレス鋼積層板を試験液中に一定時間浸せきすることにより発生する接着性の低下は、積層板を形成するステンレス鋼と異種金属との間または表面状態の異なる同種金属間に発生する電位差により加速されることを見出し、このことから常に各積層板に一定の電位が発生するような浸せき方法を考えれば、耐水性などの耐試験液性の確認評価において、試験時間の短縮やデーターのバラツキが抑えられるばかりではなく、実機試験での現象を実験室的に再現することを可能とする。
水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属としては、例えばAl、Fe、Zn、Mg等の板状体が挙げられ、好ましくはアルミニウム板が用いられる。ゴムステンレス積層板とアルミニウム板等とは、浸せき液露出部分同士を直接または導線を介して接触させ、液中ではこれらの板状体が互いに接触しない状態で所定時間浸せきした後、積層板について特性値の低下状態の測定または評価が行われる。
本発明方法の一実施態様が、図1に示されている。ゴムステンレス鋼積層板1は、アルミニウム板2と逆V字形で接するようにクリップ3等で挟み付けて固定した状態で、ガラス製または樹脂製容器4中の水、LLC水溶液等の試験液5中に浸せきされ、その際頂部付近は液面より上部に位置するように半浸せき状態として一定時間浸せきする。
積層板1がステンレス鋼板6の両面にゴム層7を形成させたものである場合には、アルミニウム板2との接触部分8の積層板1はゴム層をその部分だけ削り取り、ステンレス鋼板部分6がアルミニウム板2と直接接触するような状態で浸せきが行われる。なお、符号9はスペーサである。
この浸せき試験に使用される容器は、積層体との間に電位差を発生しないガラス製や樹脂製のものであれば任意のものを使用することができ、好ましくはガラス製容器が用いられる。この容器には、積層板とアルミニウム板とが試験液中で接触しないように、仕切りが設けられていなければならない。仕切りがなく、積層板とアルミニウム板とが試験液中で接触していると、水中での電位が発生せず、接着性低下の加速とはならない。
アルミニウム板については、特に形状や組成(合金)などが限定されないが、浸せき前に脱脂して用いることが好ましい。積層板とアルミニウム板との間に逆V字形を形成させるためにはクリップ等が用いられ、クリップは樹脂製であってもよいが、好ましくは電気伝導性の良い金属製のものが使用される。アルミニウム板と接触する積層板は、そのステンレス鋼板部分が直接アルミニウム板と接触するように、両面ゴム層形成積層板の場合にはその接触部分のゴム層および接着剤層を削り取った上で用いられる。
浸せき液となる試験液は、水でも構わないが、炭酸水素ナトリウム水溶液の如く導電性が良好な溶液程加速試験となり得る。また、水酸化ナトリウム水溶液の如く、アルミニウムの腐食反応が促進されるような試験液を用いても加速試験となり得る。さらに、LLC溶液を含む不凍液等も試験液として用いられる。
ゴムステンレス鋼積層板のステンレス鋼板としては、SUS304、430、301、301H等であって、ガスケット用途の場合には、その厚さが約0.05〜1.0mm程度のものが一般に用いられる。ステンレス鋼板は、脱脂しただけで表面処理を施さないものも用いられるが、好ましくは表面処理を施したものが用いられる。表面処理剤としては、3価Cr系、有機樹脂系、有機無機複合系、シランカップリング剤系、Zr系、Ti系等6価Crフリーの表面処理剤であれば任意のものを用いることができるが、特に好ましくはアミノ基含有アルコキシシランとビニル基含有アルコキシシランとの共重合オリゴマーが用いられる。
これらのステンレス鋼板の片面側または両面側には、接着剤層を介して加硫ゴム層が形成される。ゴム層は、NBR、水素化NBR、フッ素ゴム、EPDM等から形成され、ガスケット用途、特にシリンダヘッドガスケット用途の場合にはNBRが好んで用いられる。また、接着剤としては、用いられるゴムの種類に応じたものが用いられる。
浸せきは、所定の温度で所要時間、例えば室温乃至約100℃で約20〜200時間程度行われ、その後積層板について特定値の低下状態、例えば接着性の低下状態の測定または評価が行われ、これによって実機試験での耐試験液性の確認評価を行うことができる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1
仕切りを有するスライドガラス(10枚)用ガラス製染色バット(43×95×92mmサイズ)中に、サンプルA〜D(25×60mmサイズ)と同じサイズのアルミニウム板(厚さ1.6mm)とを、クリップでとめて逆V字形で接するように4組水中に浸せきし、その際各頂部付近は液面より上部に位置するように半浸せき状態として、また底部では互いに接触しないようにして、80℃の恒温槽中に70時間、140時間および300時間浸せき放置した後、JIS K5600-5-6塗膜の付着性(クロスカット法)試験方法によるゴバン目テープ剥離試験を実施し、その評点で各サンプルの接着性の低下度合いを比較した。
サンプルA:塗布型クロメート処理を施したSUS301鋼板(厚さ0.2mm)の両面に、接着剤(ロームアンドハース社製品シクソン715)を塗布し、室温乾燥した後、210℃で5分間の焼付け処理を行った。この接着剤層上に、下記配合例のゴムコンパウンド25重量部、メチルエチルケトン7.5重量部およびトルエン67.5重量部より調製したNBR溶液(固形分濃度25重量%)を塗布し、60℃で15分間乾燥させて片面厚さ20μmの未加硫ゴム層を形成させた後、180℃、60kgf/cm2、10分間の条件下で加圧加硫して、ゴムステンレス鋼積層板を作製した。
NBR(JSR製品N235S) 100部
SRFカーボンブラック 80部
炭酸カルシウム 80部
シリカ 20部
亜鉛華 5部
老化防止剤(大内新興化学製品ノクラック224) 2部
トリアリルイソシアヌレート 2部
1,3-ビス(第3ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン 2.5部
可塑剤(バイエル社製品ブカノールOT) 5部
サンプルB:サンプルAにおいて、塗布型クロメート処理鋼板の代りに、脱脂後シラン系カップリング剤プライマー(ロードファーイースト社製品AP-133)を塗布し、室温乾燥した後、190℃で5分間焼付け処理されたSUS301鋼板が用いられた。
サンプルC:サンプルAにおいて、塗布型クロメート処理鋼板の代りに、Zr系表面処理剤(日本パーカライジング製品パルコート3762)で表面処理したSUS鋼板が用いられた。
サンプルD:サンプルAにおいて、塗布型クロメート処理をせず、脱脂しただけのSUS鋼板が用いられた。
これらの各サンプルは、鋼板の両面側にゴム層が形成されているので、アルミニウム板と接触するサンプル部分は、ゴム層および接着剤層を紙やすりで削り、ステンレス鋼板部分を露出させて用いた。
実施例2
実施例1において、試験温度を95℃に変更した。
実施例3
実施例2において、浸せき液を0.1重量%炭酸水素ナトリウム水溶液に変更した。
比較例1
実施例1において、アルミニウム板を用いずに、各サンプルのみを浸せきした。
比較例2
ステンレス鋼製オートクレーブ中に水を入れ、各サンプルが完全に浸せきした状態で、120℃の恒温槽中に放置した。
比較例3
比較例2において、試験温度を150℃に変更した。
以上の各実施例および比較例でのゴバン目テープ剥離試験での評価結果は、次の表に示される。

試験条件 サンプルA サンプルB サンプルC サンプルD
実施例1 70時間 0 1 1 2
140時間 0 2 2 3
300時間 0 3 3 3
実施例2 70時間 0 2 1 4
140時間 0 3 3 5
300時間 0 4 5 5
実施例3 70時間 0 3 3 5
140時間 0 5 5 5
300時間 0 5 5 5
比較例1 70時間 0 0 0 0
140時間 0 0 0 0
300時間 0 0 0 0
比較例2 70時間 0 0 0 1
140時間 0 0 0 1
300時間 0 0 0 2
比較例3 70時間 0 0 0 0
140時間 0 0 0 2
300時間 0 1 0 2
また、各サンプルを、エンジンシリンダガスケット形状に打ち抜き、エンジン試験に供した。試験は、20℃(90秒間)⇔120℃(35秒間)のくり返しサイクルで270サイクル(合計338時間)実施し、冷却水には水を使用した。試験後のガスケットについて、水との接触部におけるブリスタの有無を目視で確認すると、サンプルAについてはブリスタなし、またサンプルB〜Dについてはブリスタありという結果が得られた。
これらの結果に示される如く、単純浸せき試験においては300時間迄良好な結果が得られる素材を使用しても、実機試験をクリヤすることができていないことが分る。これに対して、本発明方法の試験方法では、短時間において実機試験の結果が反映されている。
本発明方法は、シリンダヘッドガスケットによって代表されるガスケット、シール部品、防振ゴム製品、バルブ等のゴム製品等にゴムステンレス鋼積層板が適用されるに際し、これら用途への実機試験に代る適合可能性の判別試験法として有効に用いられる。
本発明方法の一実施態様を示す概略図である。
符号の説明
1 ゴムステンレス鋼積層板
2 アルミニウム板
3 クリップ
4 容器
5 試験液
6 ステンレス鋼板
7 ゴム層
8 接触部分
9 スペーサ

Claims (7)

  1. ゴムステンレス鋼積層板と水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属とを試験液中に浸せきし、その際頂部付近は液面より上部に位置するように半浸せき状態として、浸せき液露出部分同士を直接または導線を介して接触させ、液中では互いに接触しない状態で所定時間浸せきした後、積層板について特性値の低下状態の測定または評価を行うことを特徴とする耐試験液性確認評価方法。
  2. 水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属がアルミニウム板である請求項1記載の耐試験液性確認評価方法。
  3. ゴムステンレス鋼積層板と水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属の板状体とを逆V字型で接するように試験液中に浸せきした請求項1または2記載の耐試験液性確認評価方法。
  4. ゴムステンレス鋼積層板がステンレス鋼板の両面にゴム層を形成させた積層板の場合、水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属の板状体との接触部分の積層板はゴム層をその部分だけ削り取り、ステンレス鋼板部分が水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属の板状体と直接接触する状態で浸せきが行われる請求項2または3記載の耐試験液性確認評価方法。
  5. 特性値の低下状態の測定が積層板の接着性の低下度合いについて行われる請求項1、2または3記載の耐試験液性確認評価方法。
  6. 試験液が水、導電性水溶液、水素よりもイオン化エネルギーの小さい金属腐食性水溶液または不凍液である請求項1、2、3または5記載の耐試験液性確認評価方法。
  7. ゴムステンレス鋼積層板がガスケット素材である請求項1、2、3または5記載の耐試験液性確認評価方法。
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