JP2005049116A - ホール効果測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平板型の永久磁石1a,1bを、対向する内側面を各々N極およびS極となるよう離間してターンテーブル2上に設置し、永久磁石1a,1bの中間に試料4を配置する。試料4の端部4a,4b間に定電流を流し、駆動手段3によってターンテーブル2を回転することにより永久磁石1a,1bを回転させる。その状態で試料4の端部4c,4d間に発生する電圧を測定する。発生する交流電圧は、ホール素子8からの出力信号を参照信号に用いた同期検波によって測定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホール効果測定装置に関し、特に抵抗値の高い試料のホール効果を測定する場合の装置の軽量化、簡略化、省電力化、コスト削減に適用して有用な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体材料等の物性評価の項目としてキャリア密度や移動度は重要な項目であり、これらは抵抗率測定とホール効果測定によって求めることができる。ホール効果は良く知られたように、試料内を流れるキャリア(電子または正孔)が磁場内を移動するとき、ローレンツ力を受けキャリアが曲げられることにより生じる現象である。ローレンツ力によってキャリアのドリフトが起こり、ドリフトしたキャリアはローレンツ力を打ち消す方向に電場を生じる。ドリフトはキャリアがこの電場から受ける力とローレンツ力とが平衡に達するまで続き、最終的には平衡に達する。この時試料内には電流と磁場に垂直な方向に電場が生じている。この電場をホール電場といい、ホール電場(実際にはホール電圧)を測定することによりキャリア密度を求めることができる。さらに試料の抵抗率を測定すれば移動度を求めることも出来る。
【0003】
前記した通り、ホール効果測定は電流が流れている状態で行われる。一部の半導体のようにキャリアの移動度が高い場合には、ホール効果測定は比較的簡単である。所定の電流(定電流)を試料に流し、一定の静磁場(直流磁場)を電流に垂直な方向に印加し、電流と磁場に垂直な方向の試料両端の電圧(直流電圧)を測定すればホール効果による起電力を測定できる(実際には磁場を反転させて同様の測定を行い電極位置の非対称性をキャンセルする)。しかし、移動度が低く高抵抗な材料の場合十分なホール電圧が発生せず、直流測定では十分なSN比(信号ノイズ比)を確保することが困難になる。
【0004】
このような直流測定の問題を解決する手法として、特許文献1には、交流磁場を用いてホール効果を測定する技術が開示されている。交流磁場を試料に印加すれば、ホール効果により発生する起電力は交流となり、ロックインアンプ等を用いた同期検波測定によってSN比を向上することが可能になる。
【0005】
なお、永久磁石を用いたホール測定については特許文献2に開示があり、永久磁石を回転させることによって交番磁場を発生させる技術に関して特許文献3に開示がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−48744号公報
【特許文献2】特開2002−214313号公報
【特許文献3】特開平6−215221号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1の技術には問題がある。すなわち、特許文献1の技術では、交流磁場の発生に電磁石を用いている。前記した高抵抗試料を十分なSN比でホール測定するには十分大きな磁場を発生させる必要があり、これを電磁石で実現するには、必然的に磁石が大きくなる。典型的には1T(テスラ)の磁束密度を発生させるのに200kg程度の電磁石が必要になる。装置の重量化・大型化は装置を設置する場所を制限し、特別な場合には特殊な基礎工事が必要になる場合もある。また、このような大型の電磁石で十分な磁場を発生させるには大きな電流が必要になる。1Tの磁束密度を発生させるには通常50〜100A(アンペア)程度の電流が必要になり、特別な電源設備、受電設備が必要になる場合もある。さらに、大電流を利用することから電磁石にはジュール熱が発生し、電磁石を冷却する必要がある。冷却設備を別に設けなければならない弊害に加え、冷却には通常水冷方式が採用されるため、装置のユーティリティとして循環水等の設備を用意する必要も発生する。
【0008】
電磁石を採用することによる問題は、上記の通り、装置の大型化、冷却設備を備えなければならないことによる装置の複雑化、電源、循環水等のユーティリティ設備の必要性、設置工事、場合によっては基礎工事、等広範囲に及び、これら全ての要素は装置の初期コストおよびランニングコストの増加を招くことになる。さらに、大量の電力の使用、循環水の使用等環境に対しても決して好ましい状態を発生させるものではない。
【0009】
本発明の目的は、高抵抗な試料測定に適用できるホール効果測定装置における装置の小型化、簡略化、省電力化およびコストの削減を実現できる技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のホール効果測定装置は、平板形または薄膜状の試料のホール効果を測定する装置であって、永久磁石または前記試料の何れか一方を他方に対し相対的に回転運動または直線運動させることにより、前記試料に回転磁場または交流磁場を印加する機構と、前記試料の一対の両端に一定電流を流す定電流源と、前記一対の両端を結ぶ線分と交差する方向の前記試料の他の一対の両端に発生する交流電圧を計測する手段と、を有し、前記回転磁場は、前記一対の両端および前記他の一対の両端が属する試料平面に平行な中心線を中心に回転するものであり、前記交流磁場は、前記試料平面に垂直な方向で変化するものであり、前記交流電圧は、前記回転磁場または前記交流磁場の周期に同期した周波数成分の振幅および位相差を計測するものである。
【0011】
本発明によれば、永久磁石によって試料に回転磁場または交流磁場を印加し、この回転磁場または交流磁場を利用して試料の交流ホール測定が可能になる。この結果、高抵抗な試料であっても十分なSN比でホール効果を測定することができ、また、本発明では永久磁石または試料の回転、もしくは直線運動により回転磁場または交流磁場を得るので、装置が小型化され、循環水を無くして装置が簡略化され、磁場を発生するための電流も必要でない。さらにこれら電磁石に必要とされた設備、電力、ユーティリティ等がなくなることで装置の初期コストを削減し、かつ、ランニングコストも極めて低く抑制することが可能になる。
【0012】
前記永久磁石として、一方の永久磁石のN極と他方の永久磁石のS極とを対向させて配置した一対以上の永久磁石が例示でき、前記N極および前記S極の間で発生する平行磁場中に前記試料を配置し、前記平行磁場の磁場方向に垂直な中心線を中心に回転するよう前記一対以上の永久磁石または前記試料を回転させ、前記試料に前記回転磁場を印加することができる。
【0013】
あるいは、前記永久磁石として、異なる磁化方向をもつ複数の領域を組み合わせることによりドーナツ型形状の中心空洞内で中心線に直交する方向に一様な平行磁場を発生させるようにしたドーナツ形状磁石が例示でき、前記中心空洞内に前記試料を配置し、前記中心線を中心に前記ドーナツ形状磁石または前記試料を回転することにより、前記試料に回転磁場を印加することができる。
【0014】
あるいは、前記永久磁石として、円盤形状の外周部分を複数の領域に区切り、隣接領域間で磁化方向が逆になるようその厚さ方向に前記各領域を配置した一対の円盤形状磁石が例示でき、前記一対の円盤形状磁石においては、互いに対向する前記領域の対向面がN極およびS極となるよう前記円盤形状磁石を対向させ、前記円盤形状磁石の前記対向面間に前記試料を配置し、前記一対の円盤形状磁石を回転させることにより、前記試料の交流磁場を印加することができる。
【0015】
あるいは、前記永久磁石として、一方の永久磁石のN極と他方の永久磁石のS極とを対向させて配置した一対以上の永久磁石、または、異なる磁化方向をもつ複数の領域を組み合わせることによりドーナツ型形状の中心空洞内で中心線に直交する方向に一様な平行磁場を発生させるようにしたドーナツ形状磁石が例示でき、前記試料をその表面が前記永久磁石が作る平行磁場と垂直になるように配置し、前記永久磁石または前記試料を直線的に動かすことにより前記試料と前記磁石との距離を変化させ、前記試料に交流磁場を印加することができる。
【0016】
なお、前記磁場の影響領域に磁場検出素子を配置し、前記磁場検出素子によって前記試料平面に垂直な方向成分の磁場変化に比例する信号を取得し、前記信号を前記同期に用いることができる。磁場検出素子には、ホール素子またはコイルを例示できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態であるホール効果測定装置の一例を示した試料配置部分の側面図および機能ブロック図である。本実施の形態のホール効果測定装置は、一対の永久磁石1a,1bと、この永久磁石を保持するターンテーブル2と、ターンテーブル2を回転駆動する駆動手段3と、永久磁石1a,1bの間に設置される試料4の端部4a,4bに接続される定電流源5と、試料4の端部4c,4dに発生する電圧を高インピーダンスで受けるためのバッファアンプ6a,6bと、バッファアンプ6a,6bの出力を差動入力して同期検波するロックインアンプ7と、ロックインアンプ7への参照信号を出力するホール素子8と、ホール素子8の信号を増幅するオペアンプ6cと、を有する。ホール素子を駆動するためには定電流源が必要だが、図では省略した。
【0018】
永久磁石1a,1bは、たとえば、ネオジウム・鉄・ボロン磁石等、強磁性体からなる永久磁石である。永久磁石1a,1bの表面磁束密度を例示すれば、たとえば0.5T(テスラ)である。永久磁石1a,1bは、平らな直方体形状の外形を有し、図1では永久磁石1a,1bを側方から見た様子を示している。永久磁石1a,1bは、図示するように、互いに離間してターンテーブル2上に配置される。永久磁石1bに対向する永久磁石1aの面(内側)はN極に磁化され、従って反対面(外側)はS極になる。永久磁石1aに対向する永久磁石1bの面(内側)はS極に磁化され、従って反対面(外側)はN極になる。永久磁石1a,1bの内側には平行磁場が形成される。
【0019】
ターンテーブル2を回転駆動する駆動手段3が駆動を開始すると、ターンテーブル2に設置された永久磁石1a,1bも回転を開始し、永久磁石1a,1b間の平行磁場も回転を開始して回転磁場を生成する。図示するように試料4は回転磁場が生成されている領域に配置されることとなる。なお、試料4と回転磁場の関係については後に説明する。駆動手段3としては、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ等各種のモータを例示できる。回転の精度は測定の精度に影響を与えるので、水晶振動子などを用いて回転速度の制御を精密に行うことが望ましい。
【0020】
定電流源5は、試料4の抵抗値に関わらず、端部4a,4b間に一定電流値の電流を流しつづける。試料の抵抗が非常に高く、定電流源が発生することのできる最大の電圧をもってしても設定電流を流せないことが予想される場合には、定電流源と直列に電流計を接続し、実際に流れている電流を測定することが必要である。
【0021】
バッファアンプ6a,6bは、端部4c,4d間に発生する電圧を高インピーダンスで受け、低インピーダンスで同じ電圧を出力する。試料が高抵抗であることを考慮すると、バッファアンプ6a,6bの入力インピーダンスはできるだけ高いほうが好ましい。入力段にFET(Field Effect Transistor)を用いたオペアンプや、ガード出力機能を持ったエレクトロメータ等を適用できる。エレクトロメータでは入力インピーダンスが200T(テラ)Ωと非常に高いものが市販されている。本実施の形態ではケースレー社製エレクトロメータ6514型を用いた。
【0022】
本実施の形態では、ロックインアンプ7はEG&Gプリンストンアプライドリサーチ社製5210型を用いた。ロックインアンプの差動入力端子にバッファアンプ6a,6bの出力を接続し、オペアンプ6cで増幅されたホール素子8の磁場検出信号を参照信号として入力し、端部4c,4d間に発生する交流電圧の振幅および位相を測定した。本実施の形態の場合、試料の端部4c,4d間に発生するホール電圧は磁場の回転周期と同じ周期を持つはずであるから、得られた値(電圧振幅)が回転磁場の強度におけるホール電圧となり、キャリア密度を求めることが可能になる。また位相からはキャリアタイプの判定ができる。
【0023】
図2は、永久磁石1a,1bと試料4との位置関係、および、ターンテーブル2の回転に従った永久磁石1a,1bの回転の様子を示した図である。図2は、永久磁石1a,1bおよび試料4を上方から見た様子を示す。図示するように、ターンテーブル2が矢印Aの方向に回転すると、磁束密度Bで示す平行磁場が回転する。よってこの回転する磁場を利用して交流ホール測定が可能になる。なお、試料4はターンテーブル2の回転によっては回転しない。破線は、実線で示した永久磁石1a,1bがA方向にθだけ回転した状態を示したものである。
【0024】
ここで、図2右下に示すように座標をとり、図1の試料4の部分を参照すると、電流がx軸の正方向に流れ、θ=90度の場合を除き、磁場がz軸方向の成分を有することとなるので、磁束密度のz成分(Bz)に比例した電圧がy軸方向に発生することとなる。図1に示すように端部4c、4dは、y軸方向に配置されているので、端部4c、4dの両端にはBzに比例したホール効果による起電力が発生する。図3に示すように、Bzは角度によって変化し、一定速度でターンテーブル2を回転すると、Bzは時間的に正弦波で変動する交流磁場と同じになる。よって、図示するような配置で試料4を回転する磁場の中に設置すると端部4c、4dの両端にはターンテーブル2の回転周期と同じ周期の電圧が発生する。Bz=|B|cosθ、(ただし|B|は平行磁場の磁束密度、θは回転角)、で表されるから、端部4c、4dの両端に発生する電圧は正弦波である。周波数はターンテーブル2の1秒当たりの回転数であり、たとえば30rpmで回転させた場合には0.5Hzになる。ターンテーブルの回転周波数は磁石を回転させることによる振動、高抵抗試料の電圧測定時のセットリングタイムなどを考慮し、1Hz以下が望ましい。なお、交流測定のメリットはノイズを除去できることにあるから、ノイズとして観測され易い商用電源周波数(60Hzまたは50Hz)とその高調波はフィルタリングにより取り除くべきである。その他適当なバンドパスフィルタやローパスフィルタを組み合わせ、目的の周波数以外の周波数を持つ信号を除去することにより、より大きなSN比を得ることが可能である。
【0025】
本実施の形態のホール効果測定装置を用いた測定は、たとえば以下のように行える。まず試料4を用意する。試料4の表面の端部4a,4b,4c,4dに、たとえば真空蒸着法やスパッタ法を用いて金属薄膜電極を形成する。電極は試料と良好なオーミック接触をとることが望ましく、試料の材質ごとに適切な元素を選ぶ。形成した電極に接触子(プローブ)を接触させ、図1に示すように配線を行う。オーミック接触をとることが容易な場合には、端部4a,4b,4c,4dに相当する位置に接触子を備えた治具を用意しておき、この接触子を直接試料4に接触させるようにしてもよい。試料4のセットが完了すると、駆動手段3でターンテーブル2を回転し、回転磁場を生成する。ターンテーブル2の回転が安定するのを待って、ロックインアンプ7からホール電圧の振幅および位相を読み取る。
【0026】
ロックインアンプ7から読み取った電圧振幅をVhとすると、キャリア密度nは次式で与えられる。
n=IB/(eVht)
ここでeは素電荷、tは試料の厚さ、Iはx方向の電流、Bは磁束密度である。また、電流を流す端部、電圧測定端部を切り替えることにより抵抗率の測定も行うことができる。この方法はVan Der Pauw法としてよく知られている。この際にはロックインアンプ7の代わりにデジタルマルチメータを用いて電圧測定を行う。抵抗率ρが求まれば、次式で与えられる関係によりキャリアの移動度μを求めることができる。
μ=1/(enρ)
なお、本実施の形態では端部4a、4b間に定電流を流し、端部4c、4d間の電圧を測定する場合を説明したが、端部4c、4d間に定電流を流し、端部4a、4b間の電圧を測定しても良い。また端部4a、4b間を結ぶ直線、あるいは、端部4c、4d間を結ぶ直線は必ずしも座標軸に平行である必要はない。
【0027】
上記したとおり、本実施の形態のホール効果測定装置では、電磁石を用いることなく、永久磁石の回転によって回転磁場を生成し、この回転磁場を交流ホール測定に利用する。このため、装置を小型化することが可能である。電磁石を用いた従来の装置では、交流磁場発生用のコイルは200kg程度の重量になるのに対し、本実施の形態では、回転磁場発生装置は10kg程度に軽量化することができる。また、電磁石を用いないので水冷等の冷却設備は必要でなく、装置を簡略化することができる。また、磁場の生成に電力を使用することはない。従来技術に比較して回転駆動手段が付加されるため、この付加部分に係る電力が使用されるが電磁石による磁場生成に使用される電力に比較すると格段に省電力化が図られる。典型的には従来1〜2kW程度の電力を消費していたのに比較して10〜20W程度に抑制することが可能である。さらに、付帯設備を特に設ける必要が無いこと、電磁石に係る製造コストを削減できることから、初期コストを低減することが可能となり、消費電力の低減、冷却水の不使用によるランニングコストの低減を図ることが可能である。
【0028】
以上、本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0029】
たとえば、図4に示すようなドーナツ型の永久磁石10を用いて平行磁場を得て、このドーナツ型永久磁石10をA方向に回転することにより回転磁場を得ても良い。ドーナツ型永久磁石10は、図示するように10a〜10hのように複数の領域により構成される。各領域は矢印で示す方向に磁化されており、このような構成をとることによりドーナツの中心領域にほぼ一様な平行磁場を形成することが可能である。この形状の永久磁石では特に高い磁束密度を得ることが可能であり、2Tの磁束密度をもつものが市販されている。
【0030】
また、図5に示すように、2枚の円盤状永久磁石11a,11bを対向して配置し、その間に試料4を設置し、円盤状永久磁石11a,11bを、中心線12を中心に回転させるような構成を採用してもよい。円盤状永久磁石11a(円盤状永久磁石11bも同様)はその周辺領域に円盤の厚さ方向(z方向)に磁化される領域を有し、各領域は隣接する領域とは反対方向に磁化されている。このような2枚の円盤状永久磁石11a,11bを対向して配置する構成では、試料4を設置する領域で、磁場がz方向に発生し、円盤状永久磁石11a,11bの回転に従って、磁場の方向が正負交互に繰り返される(つまり交流磁場)こととなる。よって、前記と同様にこの交流磁場を用いて交流ホール測定が可能である。ただし、この場合、交流磁場は時間的に正弦波で変化するとは限らない。
【0031】
また、前記した実施の形態では、永久磁石を回転運動させることにより回転磁場または交流磁場を得る構成について例示した。しかし、図6に示すように、平行磁場を生成する一対の永久磁石13a,13bをx方向に平行移動(往復運動)させることにより試料4に交流磁場を印加するようにしても良い。
【0032】
また、前記した実施の形態では、永久磁石を運動させる構成について説明したが、試料を運動させてもよい。要するに磁石と試料との相対的な位置関係が変化するよう、何れか一方(または両方でもいい)を運動させればよい。図2や図4の構成の場合、磁石を静止させ、中心軸を中心に試料4を回転させればよい。図5の構成の場合、円盤状永久磁石11a,11bを静止させ、円盤状永久磁石11a,11b間の外周部分を試料4が周回するよう運動させればよい。図6の構成の場合、図7に示すように、静止した一対の永久磁石13a,13bの間を試料4がx方向に往復運動させればよい。
【0033】
また、試料と磁石とが相対的直線的に運動する場合、図8に示すようにN極とS極とが反転する隣接領域を持った永久磁石14a,14bを対向して配置し、永久磁石14a,14bの間を試料4が往復運動するように構成してもよい。この場合、限られた空間内で確実に磁場が反転し、短いストロークで試料4に交流磁場を印加できる。
【0034】
また、前記した実施の形態では、バッファアンプ6a,6bの出力電圧をロックインアンプ7に差動入力し、参照信号と同期検波することによりホール効果に起因する交流電圧を測定する例を説明したが、たとえば、バッファアンプ6a,6bの出力電圧をディジタル化して取得し、取得した信号データにディジタルフィルタ等のディジタル処理を施してノイズを除去したり、高速フーリエ変換処理を施し目的の周波数成分の信号強度を検出するようにしても良い。
【0035】
また、前記した実施の形態では、同期の参照信号としてオペアンプ6cで増幅されたホール素子8からの出力信号を用いた例を示したが、駆動手段3として交流モータを用い、この交流モータへの供給電源を参照信号に用いても良い。
【0036】
【発明の効果】
本願発明によれば、高抵抗な試料測定に適用できるホール効果測定装置における装置の小型化、簡略化、省電力化およびコストの削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるホール効果測定装置の一例を示した試料配置部分の側面図および機能ブロック図である。
【図2】永久磁石1a,1bおよび試料4を上方から見た様子を示す上面図である。
【図3】磁束密度のz成分Bzがターンテーブル2の回転角度によって変化する様子を示した図である。
【図4】永久磁石の他の例を示した上面図である
【図5】永久磁石のさらに他の例を示した斜視図である。
【図6】本実施の形態の他の例を示した永久磁石と試料の部分図面である。
【図7】本実施の形態のさらに他の例を示した永久磁石と試料の部分図面である。
【図8】本実施の形態のさらに他の例を示した永久磁石と試料の部分図面である。
【符号の説明】
1a…永久磁石、1b…永久磁石、2…ターンテーブル、3…駆動手段、4…試料、4a,4b,4c,4d…試料の端部、5…定電流源、6…増幅器、7…ロックインアンプ、8…ホール素子、10…ドーナツ型永久磁石、11a,11b…円盤状永久磁石、12…中心線、13a,13b,14a,14b…永久磁石。
Claims (7)
- 平板形または薄膜状の試料のホール効果を測定する装置であって、
永久磁石または前記試料の何れか一方を他方に対し相対的に回転運動または直線運動させることにより、前記試料に回転磁場または交流磁場を印加する機構と、
前記試料の一対の両端に一定電流を流す定電流源と、
前記一対の両端を結ぶ線分と交差する方向の前記試料の他の一対の両端に発生する交流電圧を計測する手段と、を有し、
前記回転磁場は、前記一対の両端および前記他の一対の両端が属する試料平面に平行な中心線を中心に回転するものであり、前記交流磁場は、前記試料平面に垂直な方向で変化するものであり、
前記交流電圧は、前記回転磁場または前記交流磁場の周期に同期した周波数成分の振幅および位相差を計測するものであるホール効果測定装置。 - 前記永久磁石は、一方の永久磁石のN極と他方の永久磁石のS極とを対向させて配置した一対以上の永久磁石であり、
前記N極および前記S極の間で発生する平行磁場中に前記試料を配置し、前記平行磁場の磁場方向に垂直な中心線を中心に回転するよう前記一対以上の永久磁石または前記試料を回転させ、前記試料に前記回転磁場を印加する請求項1記載のホール効果測定装置。 - 前記永久磁石は、異なる磁化方向をもつ複数の領域を組み合わせることによりドーナツ型形状の中心空洞内で中心線に直交する方向に一様な平行磁場を発生させるようにしたドーナツ形状磁石であり、
前記中心空洞内に前記試料を配置し、前記中心線を中心に前記ドーナツ形状磁石または前記試料を回転することにより、前記試料に回転磁場を印加する請求項1記載のホール効果測定装置。 - 前記永久磁石は、円盤形状の外周部分を複数の領域に区切り、隣接領域間で磁化方向が逆になるようその厚さ方向に前記各領域を配置した一対の円盤形状磁石であり、前記一対の円盤形状磁石においては、互いに対向する前記領域の対向面がN極およびS極となるよう前記円盤形状磁石を対向させ、
前記円盤形状磁石の前記対向面間に前記試料を配置し、前記一対の円盤形状磁石を回転させることにより、前記試料に交流磁場を印加する請求項1記載のホール効果測定装置。 - 前記永久磁石は、一方の永久磁石のN極と他方の永久磁石のS極とを対向させて配置した一対以上の永久磁石、または、異なる磁化方向をもつ複数の領域を組み合わせることによりドーナツ型形状の中心空洞内で中心線に直交する方向に一様な平行磁場を発生させるようにしたドーナツ形状磁石であり、
前記試料をその表面が前記永久磁石が作る平行磁場と垂直になるように配置し、前記永久磁石または前記試料を直線的に動かすことにより前記試料と前記磁石との距離を変化させ、前記試料に交流磁場を印加する請求項1記載のホール効果測定装置。 - 前記磁場の影響領域に磁場検出素子を配置し、前記磁場検出素子によって前記試料平面に垂直な方向成分の磁場変化に比例する信号を取得し、前記信号を前記同期に用いる請求項1〜5の何れか一項に記載のホール効果測定装置。
- 前記磁場検出素子は、ホール素子またはコイルである請求項6記載のホール効果測定装置。
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