JP2005047214A - ポリイミドラミネート金属板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 金属板の少なくとも一面とポリイミドフィルムとの間にポリアリーレンスルフィドフィルムからなる融着層が介在しているポリイミドラミネート金属板、並びにポリイミドフィルム及びその両面に設けられたポリアリーレンスルフィドフィルムの融着層を介して一対の金属板が一体的に接合されている金属複合板。
【選択図】 なし
Description
本発明のポリイミドラミネート金属板は、金属板の少なくとも一面とポリイミドフィルムとの間にポリアリーレンスルフィドフィルムの融着層が介在したものである。
(1) ポリイミドフィルム
ポリイミド(PI)フィルムは、基本的に芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの脱水縮合反応物である。
ポリアリーレンスルフィド(PAS)フィルムは、下記一般式(2):
−(Ar−S)m − ・・・(2)
[ただし、−Ar−は下記一般式(a)〜(l):
PIフィルム及びPASフィルムは、単一樹脂成分からなるものに限定されず、複数の樹脂成分からなるものでもよい。樹脂成分の組合せとしては、複数のポリイミド樹脂や、複数のポリアリーレンスルフィド樹脂の組合せの他に、一種又は二種以上のポリイミド樹脂や、一種又は二種以上のポリアリーレンスルフィド樹脂に本発明の効果を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂を添加したものが挙げられる。他の熱可塑性樹脂としては、PAS(PI樹脂に添加することができる);PI(PAS樹脂に添加することができる);ポリアミド(PA);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
PIフィルム及びPASフィルムの厚さに特に制限はないが、実用的には約5〜50μmとするのが好適である。PIフィルム及びPASフィルムの厚さを約5μm未満とするのは技術的に困難であり、コスト高になる。またPIフィルム又はPASフィルムの厚さを約50μm超にすると、フィルム価格が高騰するため、得られるポリイミドラミネート金属板の用途が限られる。
PIフィルムには、必要に応じて文字及び/又は図柄を印刷してもよい。PIフィルムに印刷層を設ける場合、予めグラビア印刷、インクジェット印刷等により文字及び/又は図柄を設けておく。印刷層はPIフィルムの片面及び両面のいずれに設けてもよいが、耐擦性の観点から印刷層を金属板と接する側に設けるのが好ましい。
PIフィルムを融着する金属板は特に限定されず、用途に応じて種々選択することができる。例えばフレキシブルプリント板(FPC)を作製する場合、金属板として銅箔、アルミニウム箔を使用するのが好ましい。銅箔としては公知の圧延銅箔又は特殊電解銅箔が好ましい。またOA機器や家電製品等の電気製品を作製する場合、銅板、鋼板又はアルミニウム板等を使用するのが好ましい。さらに電車や乗用車等の車両用のプラスチックラミネート金属板を作製する場合には、鋼板、ステンレススチール板、アルミニウム板等を使用するのが好ましい。さらに食料又は飲料用の缶を作製する場合、鋼板又はアルミニウム板を使用するのが好ましい。金属板(箔)の厚さは用途に応じて適宜選択することができる。
図1は、本発明のポリイミドラミネート金属板を製造するための装置の一例を示す概略側面図である。但し、本発明はこの製造方法に限定されるものではない。
(1) コロナ放電処理
PIフィルム3及びPASフィルム2にコロナ放電処理を施しておけば、金属板への熱圧着強度、融着強度及びフィルム間の融着強度が向上するので好ましい。
PIフィルム3及びPASフィルム2を金属板に予備熱圧着する際に、各層の間に空気が巻き込まれても排出できるように、予めPASフィルム2の全面に微細な貫通孔を形成してもよい。PIフィルム3にも微細な貫通孔を形成して良いが、PIフィルム3の表面性が重要な場合、微細な貫通孔を形成しない。微細孔は0.5〜100μmの平均開口径を有し、かつ分布密度は約500個/cm2以上であるのが好ましい。微細孔の分布密度が約500個/cm2未満であると、空気溜まりの発生防止が不十分である。
PIフィルム3/PASフィルム2/金属板1の予備熱圧着が容易になるように、金属板1を所定の温度に予熱するのが好ましい。金属板1の予熱温度は、PASフィルムの融点に応じて調整するが、一般に140〜280℃であれば良い。例えばPPSフィルムを使用する場合、金属板1の予熱温度は180〜240℃が好ましい。
予備熱圧着温度は、PASフィルムの融点に応じて設定する。具体的には、予備熱圧着温度は、PPSフィルムの場合、融点−60℃〜融点−5℃が好ましく、融点−30℃〜融点−10℃がより好ましい。予備熱圧着温度に保持する時間は通常2〜10分間でよい。
融着工程では、仮圧着体をPASフィルムの融点以上に加熱する。融着温度はPAS樹脂の融点〜融点+100℃が好ましく、融点+20℃〜融点+80℃がより好ましく、融点+40℃〜融点+70℃が特に好ましい。融着温度でPASフィルムは溶融状態になり、金属板及びPIフィルムに融着する。融着時間は通常30秒間〜10分間でよい。なお融着工程中加圧は必要ないが、1〜10 MPa 程度に加圧しても構わない。
融着した積層体を急冷することにより、PASフィルムの非晶質化を達成する。非晶質化を確実にするために、急冷工程をほぼ融着温度からPAS樹脂のガラス転移温度未満の温度まで3秒以内に行うのが好ましく、1秒以内に行うのがより好ましい。PASフィルムは融着温度から急冷しないと結晶化し、金属板及びPIフィルムに対する接着性を失う。急冷は種々の手段で行うことができるが、水等の冷媒中に投入するのが、簡便で好ましい。その他に、十分に低温の冷気を吹き当てたり、冷却ロールに接触させたりしても良い。例えば図1に示す水浴47の場合、水の温度を20℃以下とするのが好ましく、氷水浴とするのがより好ましい。
本発明の金属複合板は、PIフィルム及びその両面に設けられたPASフィルムを介して一対の金属板が一体的に融着された構造を有するが、金属板/PASフィルム/PIフィルムの融着状態はポリイミドラミネート金属板と同じである。従って、ポリイミドラミネート金属板と異なる事項についてのみ、以下詳述する。特に説明のないものについては、ポリイミドラミネート金属板と同じ良い。なお本発明の金属複合板は一対の金属板を有するが、金属複合板を積層することにより三枚以上の金属板を有する金属複合板にしても良い。
ポリフェニレンスルフィドフィルム:二軸延伸PPSフィルム[厚さ:25μm、融点:285℃、ガラス転移温度:90℃、商品名:「トレリナ」(東レ(株)製)]。
ポリイミドフィルム:二軸延伸PIフィルム[厚さ:12μm、融点:なし、ガラス転移温度:280℃以上、商品名:「カプトンH」(東レ・デュボン(株)製)]。
(1) PPSフィルムは融着後の急冷により非晶質化すると透明となり、かつアルミニウム板及びPIフィルムに強固に接着する。
(2) PPSフィルムをアルミニウム板及びPIフィルムに対して予備熱圧着した後に融着するので、PPSフィルムは融着・急冷によりほとんど熱収縮(熱変形)しない。
(3) PPSフィルムをアルミニウム板及びPIフィルムに対して予備熱圧着した後に融着するので、これらの界面への空気の巻き込みがない。
融着した積層体をほぼ融着温度のまま電気オーブンから取り出した後に室温まで放冷した以外は実施例1と同様にして、ポリイミドラミネートアルミニウム板を作製した。PPSフィルムは若干白濁しており、非晶質化していないことが分かる。また実施例1と同じポリイミドラミネートアルミニウム板の破壊試験をしたところ、破壊部においてPPSフィルム層のアルミニウム板からの剥離が生じた。これから、融着後に急冷しないと、PPSフィルムがアルミニウム板に強固に接着しないことが分かる。
融着した積層体をほぼ融着温度のまま電気オーブンから取り出した後、100℃の熱水に浸漬した以外は実施例1と同様にして、ポリイミドラミネートアルミニウム板を作製した。得られたポリイミドラミネートアルミニウム板を実施例1と同様にして破壊したところ、破壊部においてPPSフィルム層のアルミニウム板からの剥離が生じた。これから、融着後の冷却速度も遅いと、PPSフィルムが十分にアルミニウム板に融着しないことが分かる。
電気オーブンの設定温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして、ポリイミドラミネートアルミニウム板を作製した。得られたポリイミドラミネートアルミニウム板を実施例1と同様にして破壊したところ、破壊部においてPPSフィルム層のアルミニウム板からの剥離が生じた。これから、PPSフィルムの融点以上に加熱しないと、PPSフィルムはアルミニウム板に融着しないことが分かる。
予備熱圧着をせずに、PPSフィルム及びPIフィルムを直接アルミニウム板上に載置した状態で融着処理を行った以外は実施例1と同様にして、ポリイミドラミネートアルミニウム板を作製した。得られたポリイミドラミネートアルミニウム板のPPSフィルム層は著しく熱収縮しており、PPSフィルム上の格子模様も著しく変形していた。その上、PPSフィルムは部分的にアルミニウム板に融着していなかった。これから、融着工程前に予備熱圧着を行わないと、熱変形なく均一にPPSフィルムをアルミニウム板に融着させることはできないことが分かる。
11・・・仮圧着体
12・・・融着された積層体
13・・・ポリイミドラミネート金属板を巻いたリール
2・・・PAS(PPS)フィルム
20・・・PAS(PPS)フィルムを巻いたリール
3・・・PIフィルム
30・・・PIフィルムを巻いたリール
40, 40', 45, 45'・・・ヒーター
41, 42, 43, 44・・・加熱ロール
46, 48・・・ガイドロール
47・・・水浴
49・・・乾燥器
Claims (24)
- 金属板の少なくとも一面とポリイミドフィルムとの間にポリアリーレンスルフィドフィルムからなる融着層が介在していることを特徴とするポリイミドラミネート金属板。
- 請求項1に記載のポリイミドラミネート金属板において、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムがポリフェニレンスルフィドフィルムであることを特徴とするポリイミドラミネート金属板。
- 請求項1又は2に記載のポリイミドラミネート金属板において、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムが実質的に非晶質であることを特徴とするポリイミドラミネート金属板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドラミネート金属板において、融着された前記ポリアリーレンスルフィドフィルムの熱変形率が2%以下であることを特徴とするポリイミドラミネート金属板。
- ポリイミドラミネート金属板を製造する方法であって、(1) 金属板の少なくとも一面に順にポリアリーレンスルフィドフィルム及びポリイミドフィルムを重ねて、前記ポリアリーレンスルフィドの融点−60℃〜融点−5℃の温度で予備熱圧着し、(2) 得られた仮圧着体を前記ポリアリーレンスルフィドの融点以上の温度に加熱することにより、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムを前記金属板及び前記ポリイミドフィルムの両方に融着させ、次いで(3) 急冷することを特徴とする方法。
- 請求項5に記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記急冷工程を前記ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度未満の温度まで行うことを特徴とする方法。
- 請求項5又は6に記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムとしてポリフェニレンスルフィドフィルムを使用することを特徴とする方法。
- 請求項5〜7のいずれかに記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記融着温度を前記ポリアリーレンスルフィドの融点〜融点+100℃の範囲内とすることを特徴とする方法。
- 請求項5〜8のいずれかに記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記融着温度から前記ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度未満の温度まで3秒以内に急冷することを特徴とする方法。
- 請求項9に記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、融着により得られたポリイミドラミネート金属板を水中に投入することにより急冷することを特徴とする方法。
- 請求項5〜10のいずれかに記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記予備熱圧着工程の前に前記金属板を140〜280℃に予熱することを特徴とする方法。
- 請求項5〜11のいずれかに記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記金属板と前記ポリアリーレンスルフィドフィルムと前記ポリイミドフィルムとを一対の加熱加圧ロールの間に通すことにより、各界面に空気が巻き込まれるのを防止しつつ予備熱圧着を行うことを特徴とする方法。
- 請求項5〜12のいずれかに記載のポリイミドラミネート金属板の製造方法において、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムとして多数の微細な貫通孔を有するポリアリーレンスルフィドフィルムを使用することを特徴とする方法。
- ポリイミドフィルム及びその両面に設けられたポリアリーレンスルフィドフィルムの融着層を介して一対の金属板が一体的に接合されていることを特徴とする金属複合板。
- 請求項14に記載の金属複合板において、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムがポリフェニレンスルフィドフィルムであることを特徴とする金属複合板。
- 請求項14又は15に記載の金属複合板において、前記ポリアリーレンスルフィドフィルムが実質的に非晶質であることを特徴とする金属複合板。
- 請求項14〜16のいずれかに記載の金属複合板において、融着した前記ポリアリーレンスルフィドフィルムの熱変形率が2%以下であることを特徴とする金属複合板。
- 請求項14〜17のいずれかに記載の金属複合板を製造する方法において、(1) 一対の金属板の間にポリアリーレンスルフィドフィルム、ポリイミドフィルム及びポリアリーレンスルフィドフィルムを介在させ、(2) 得られた積層体を前記ポリアリーレンスルフィドの融点−60℃〜融点−5℃の温度で予備熱圧着し、(3) 得られた仮圧着体を前記ポリアリーレンスルフィドの融点以上の温度に加熱することにより、前記ポリアリーレンスルフィドの各々を前記ポリイミドフィルム及び前記金属板に融着させ、次いで(4) 急冷することを特徴とする方法。
- 請求項18に記載の金属複合板の製造方法において、前記急冷工程を前記ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度未満の温度まで行うことを特徴とする方法。
- 請求項18又は19に記載の金属複合板の製造方法において、前記融着温度を前記ポリアリーレンスルフィドの融点〜融点+100℃の範囲内とすることを特徴とする方法。
- 請求項18〜20のいずれかに記載の金属複合板の製造方法において、前記融着温度から前記ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度未満の温度まで3秒以内に急冷することを特徴とする方法。
- 請求項21に記載の金属複合板の製造方法において、融着により得られた複合板を水中に投入することにより急冷することを特徴とする方法。
- 請求項18〜22のいずれかに記載の金属複合板の製造方法において、前記予備熱圧着工程の前に前記金属板を140〜280℃に予熱することを特徴とする方法。
- 請求項18〜23のいずれかに記載の金属複合板の製造方法において、金属板、ポリアリーレンスルフィドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリーレンスルフィドフィルム及び金属板を一対の加熱加圧ロールの間に通すことにより、各界面に空気が巻き込まれるのを防止しつつ予備熱圧着を行うことを特徴とする方法。
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