JP2005042813A - 静圧案内装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 工作機械における支持体の案内面と移動体の滑動面との間に加圧した油を供給してそれらを無接触状態にして移動体を案内支持する静圧案内装置において、手仕上げする必要がなく、部品精度を低くしても剛性を高く維持して所望の性能とすることのできる静圧案内装置を提供する。
【解決手段】 静圧案内装置1に、支持体2に形成された案内面4と、移動体5に形成された滑動面6と、滑動面6に備え加圧した油が供給される静圧ポケット7と、静圧ポケット7の外周縁を形成するランド部8とを備え、静圧ポケット7に加圧した油を供給して案内面4と滑動面6とを無接触状態とすると共に、ランド部8の幅と長さを所定の条件として案内面4とランド部8との間を流通する油の流れを制御して、静圧案内装置1を所望の性能とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、工作機械などに用いられる移動体の案内装置に関し、特に移動体の滑動面と支持体の案内面との間に加圧した油を供給して滑動面と案内面とを無接触状態として、支持体により移動体を案内支持する静圧案内装置に関するものである。
工作機械のベッドなどの支持体に案内支持される、テーブル、コラム、サドルなどの移動体には、支持体に形成された案内面と対向する位置に滑動面が形成されており、この滑動面には、凹状の静圧ポケットが備えられている。この静圧ポケットには、供給路を介して加圧された油が供給されるようになっており、この加圧された油により案内面と滑動面とが無接触状態、すなわち、支持体に対して移動体が浮上した状態となり、この状態で移動体は、支持体に案内支持される静圧案内装置が知られている。
この静圧案内装置は、静圧ポケットの外周にランド部が備えられており、静圧ポケットに供給さる加圧された油により、静圧ポケット内の圧力が上昇し、その圧力によって移動体を浮上させるもので、案内面と滑動面とを無接触状態で案内支持することにより、所要送り力が小さくなると共に、位置決め精度を高めることができるものである。
本出願人は、本出願時において、以上の従来技術が記載されている文献として、以下のものを知見している。
特開平11−277350号
図4は、従来の静圧案内装置における剛性とクリアランスとの関係を示しており、この静圧案内装置の場合、静圧ポケットやランド部などの部品精度が、例えば、15μmの公差で設計されている。そして、この静圧案内装置の性能として、剛性の定格を例えば、約900N/μmとすると、この定格900N/μm以上となるクリアランスの値は、最小値が約8μm、最大値が約19μmであり、その差が約11μmであることが判る。このことから、静圧案内装置の性能を900N/μm以上とすると、クリアランスの許容差(許容クリアランス)が11μmということになり、実際の部品の公差15μmよりも高い精度が要求されることになる。また、部品精度が15μmの公差で作られているので、組み付けなどの誤差により、部分的に精度が30μmとなってしまった場合、その部分の剛性が、400N/μm以下となってしまい、設計性能のおよそ1/3ぐらいになってしまうことが判る。
このように、従来の静圧案内装置では、その性能すなわち剛性を高くするために、部品精度の高いものが要求されていた。この理由として、本願出願人および発明者は、加圧された油を静圧ポケット内に供給して移動体を浮上させると、支持体の案内面と移動体の滑動面との間に、所定の隙間(クリアランス)が形成されて、その隙間により静圧ポケット内の油が絞られて外部に流出する。この時の絞り効果も、移動体の浮上量や、剛性などに影響を及ぼしており、静圧ポケットやランド部の形状誤差、案内面と滑動面の表面粗度や平面度などの僅かな違いにより、案内面とランド部との油の流れが変化してしまい、それにより絞り効果が変わり、静圧案内装置の性能が大きく変化することを知見した。そのため、従来の静圧案内装置では、案内面や滑動面に対して、手作業によるキサゲ作業により高精度の精密仕上げを行っており、熟練工を必要としたり、作業が長期化したりして、コストの増加を招いていた。
また、従来の静圧案内装置を、例えば、マシニングセンタなどの大型の工作機械に適用しようとした場合、非常に大きな機械に対して、案内面や滑動面などを数μmのオーダーで真直度などを仕上げなければならず、加工上でも、コスト的にも困難であった。
さらに、従来の静圧案内装置では、滑動面に備えられたランド部の幅が、およそ5mm前後に設定されていたが、このランド部の角部には、約0.5mmの糸面取りが加工されており、この面取りによりランド部の幅は実質4mm前後となり、設計上のランド部の幅が5mmに対して約20%減少した値となってしまう。また、面取りの加工精度誤差によりさらに実質のランド部の幅が狭くなってしまい、静圧案内装置における設計上の性能が得られない問題があった。
そこで、本発明は上記の実状に鑑み、工作機械における支持体の案内面と移動体の滑動面との間に加圧した油を供給して案内面と滑動面とを無接触状態として支持体により移動体を案内支持する静圧案内装置において、手仕上げする必要がなく、部品精度を低くしても剛性を高く維持して所望の性能とすることのできる静圧案内装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明に係る静圧案内装置は、「支持体に形成された案内面と、該案内面と対向するように移動体に形成された滑動面とを有し、前記案内面と前記滑動面との間に供給路を介して加圧した油を供給して前記案内面と前記滑動面とを無接触状態とすると共に、前記支持体により前記移動体を案内支持する静圧案内装置において、前記滑動面には、加圧した油を供給する静圧ポケットと、該静圧ポケットの外周縁を形成する所定幅のランド部とを備え、該ランド部の長さおよび幅を所定の条件とすることで、前記案内面と前記ランド部との間を流通する油の流れを制御して、前記静圧案内装置を所望の性能とする」構成とするものである。
ここで、静圧案内装置の「性能」としては、具体的な構成を何ら限定するものではないが、「移動体の浮上に伴う歪などに抗する強さや、硬さなどの剛性」、「移動体に加えられた振動に対する減衰性」などを例示することができる。なお、剛性とクリアランスとの関係において、静圧案内装置の特性をグラフで現した場合、剛性の定格以上となるクリアランスの最大値と最小値との差(許容クリアランス)が大きいほど、部品精度の公差を大きくしても良いことが判る。そこで、許容クリアランスが大きくなるような特性を持った静圧案内装置が望ましく、本願では、許容クリアランスを大きくして部品精度の影響を少なくすると共に剛性を維持することを「ロバスト」と称することとする。
このロバスト性を変える方法として、本願出願人および発明者が研究を重ねた結果、静圧ポケットの外形形状を変える、ランド部の長さを変える、ランド部の幅を変える、静圧ポケットに供給される油の圧力を絞りなどの圧力調整手段により変える、などの方法によりロバスト性が変化することを知見した。また、各方法を単独で用いる以外に、それらの各方法を組み合わせて用いることで複合的な効果が得られることも知見した。
本発明によると、滑動面に備えられた静圧ポケットの外周縁に形成されたランド部の長さや幅を所定の条件とすることで、静圧案内装置における剛性などの性能を所望の性能とすることができる。詳述すると、ランド部の長さを長くしたり、ランド部の幅を広くしたり、それらを組み合わせたりすることで、許容クリアランスを大きくしてロバスト性を高めることができるので、部品精度を機械加工による精度でも許容範囲とすることができ、キサゲ作業などの熟練工による手作業を必要とせず、工期を短縮することができると共に、コストを抑制することができる。なお、静圧ポケットの外形形状を変えることで、ランド部の長さなどを変えるようにしても良い。
また、本発明によると、部品精度によって静圧案内装置の性能が左右され難いので、例えば、マシニングセンタなどの大型の工作機械にも適用することができ、大型の工作機械に対して、低コストで、所要送り力を小さくすることができると共に、位置決め精度を高めることができる。
本発明に係る静圧案内装置は、上記の構成に加えて、「前記ランド部の幅は、10mm≦ランド部の幅≦20mm、である」構成とすることもできる。ここで、「ランド部の幅」の下限値を10mm以上としたのは、「ランド部の幅」を10mmよりも狭くすると許容クリアランスが小さくなり(例えば、18μm以下)、手作業による精密仕上げが必要となったり、ランド部の角部に施される面取りの加工精度誤差の影響を受け易くなり静圧案内装置における設計上の性能が得られない恐れがある。一方、「ランド部の幅」の上限値を20mm以下としたのは、これ以上「ランド部の幅」を広くすると静圧ポケットが相対的に小さくなるなどの要因により許容クリアランスが小さくなってしまい、ロバスト性の向上が見込めないことによる。
本発明によると、ランド部の幅を10mm以上、20mm以下とするもので、これにより、上記の効果に加えて、ランド部の角部に施される面取り加工の加工精度誤差の影響を少なくすることができるので、静圧案内装置を所望(設計上)の性能とすることができる。
本発明に係る静圧案内装置は、上記の構成に加えて、「前記ランド部の長さと幅との関係は、0.009≦ランド部の幅/ランド部の長さ≦0.021、である」構成とすることもできる。ここで、本出願人および発明者は、ロバスト化として、ランド部の幅と、ランド部の長さに着目して研究した結果、図3に示すような、「許容クリアランス」と「ランド部の幅/ランド部の長さ」との関係が明らかとなった。そして、本発明では、キサゲ作業など、手作業による精密仕上げを無くすることから、「許容クリアランス」を18μm以上とすることとし、これに基づいて、「ランド部の幅/ランド部の長さ」の下限値を0.009、「ランド部の幅/ランド部の長さ」の上限値を0.021、としたもので、これら下限値および上限値を、下回るおよび上回ることで、「許容クリアランス」が18μm未満となり、手作業による精密仕上げが必要となり、コストの増加を招くことになる。
また、ランド部の長さとは、静圧ポケットの外周に形成されたランド部の周長を含み、この周長としては、ランド部の幅に対して、ランド部の内周長、外周長、或いは、ランド部の幅の範囲内における任意の位置の周長とすることができる。
本発明によると、「ランド部の幅/ランド部の長さ」を、0.009≦ランド部の幅/ランド部の長さ≦0.021、としたもので、これにより、静圧案内装置の許容クリアランスを18μm以上とすることができ、熟練工などによるキサゲ作業などの手作業による高精度の精密仕上げ加工を行う必要がなくなり、機械加工による仕上げ加工でも静圧案内装置を所望の性能とすることができるので、加工時間を短縮することができると共に、コストを抑えることができる。
本発明に係る静圧案内装置は、上記の構成に加えて、「前記静圧ポケットの外形形状により前記静圧案内装置を所望の性能とする」構成とすることができる。ここで、静圧ポケットの外形形状としては、具体的な構成を限定するものではないが、矩形形状、台形形状、円或いは楕円形状、などの他、種々の形状とすることができる。また、その大きさを変えてもよい。
本発明によると、静圧ポケットの外形形状により静圧案内装置を所望の性能とするもので、詳述すると、例えば、所定の大きさの滑動面に対して、大きな静圧ポケットを備えた場合と、小さな静圧ポケットを備えた場合とでは、静圧ポケットの外周縁に形成されるランド部の幅や、周長が異なるものとなる。つまり、静圧ポケットの外形形状によって、ランド部の幅や周長を設定することができ、これにより、静圧案内装置を所望の性能とすることができる。
本発明に係る静圧案内装置は、上記の構成に加えて、「前記静圧ポケットに加圧した油を供給する前記供給路に、加圧した油を減圧する絞りを備え、該絞りの減圧量により前記静圧案内装置を所望の性能とする」構成とすることができる。ここで、絞りを備える位置としては、供給路中のいずれの位置でも良いが、静圧ポケットの近傍位置に備えることが望ましい。これにより、絞りを容易に取り付けることができる。また、絞りによる静圧ポケット内のダンピング効果を高めることができ、移動体の上下動による静圧ポケットの容積変化に対して抵抗を与えて移動体の上下動を抑制することができる。
また、絞りの減圧量としては、具体的な構成を何ら限定するものではないが、例えば、絞り長さを10mmとした場合、絞り径を、0.4mm〜0.7mmとすることができ、これと同等の減圧量が得られるように絞りの長さと径とを適宜選択することができる。
ところで、絞りの減圧量と剛性や許容クリアランスの関係は、例えば、絞りの孔を小さくして減圧量を大きくすると、最大剛性が高くなる反面許容クリアランスが小さくなる。また、絞りの孔が小さくなることでその孔が目詰まりし易くなり不具合の原因となる。一方、絞りの孔を大きくして減圧量を小さくすると、最大剛性が下がる反面許容クリアランスが大きくなる傾向がある。
本発明によると、静圧ポケットに加圧した油を供給する供給路に絞りを備えて、その絞りによる減圧量により静圧案内装置を所望の性能とするもので、絞りの減圧量を適正なものとすることで、静圧案内装置を所望の性能とすることができ、手作業による精密仕上げを行う必要がなくなり、コストを抑制することができる。なお、ランド部の幅、長さ、静圧ポケットの外形形状などと組み合わせ適用してもよく、この場合においても、上記と同様の効果を奏することができる。
本発明に係る静圧案内装置は、上記の構成に加えて、「前記滑動面には、複数の前記静圧ポケットを具備し、各該静圧ポケットに対して、前記ランド部の長さ、前記ランド部の幅、前記静圧ポケットの外形形状、前記絞り、のうち少なくとも一つを異なるものとして前記静圧ポケットの特性を異ならせ、特性の異なる該静圧ポケットを組み合わせることで前記静圧案内装置を所望の性能とする」構成とすることもできる。
本発明によると、滑動面に複数の静圧ポケットを備えた静圧案内装置において、各静圧ポケットにおける、ランド部の長さや幅、静圧ポケットの外形形状、絞りなどを異ならせて特性の異なる静圧ポケットとして、一つの滑動面において特性の異なる静圧ポケットを適宜組み合わせることにより、ロバスト性を高めて静圧案内装置を所望の特性とすることができ、この構成においても、手作業による精密仕上げを行う必要がなくなり、コストを抑制することができる。
また、本発明によると、移動体に偏荷重がかかるような場合でも、その偏荷重のかかり方によって、滑動面の位置ごとに静圧ポケットの特性を異なるものとすることもできるので、偏荷重による案内面と滑動面との部分的なクリアランスの変化(沈み込み)を抑制することができるので、例えば、移動体としてコラムなどの偏荷重がかかり易いものの静圧案内装置としても適用することができる。
上記のように、本発明によると、工作機械における支持体の案内面と移動体の滑動面との間に加圧した油を供給して案内面と滑動面とを無接触状態として支持体により移動体を案内支持する静圧案内装置において、手仕上げする必要がなく、部品精度を低くしても剛性を高く維持して所望の性能とすることのできる静圧案内装置を提供することができる。
以下、本発明の一実施の形態のうち最良の形態である静圧案内装置について、図1および図2に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態である静圧案内装置を送り方向に対して直角方向に切断した断面図である。図2は、(A)は静圧案内装置を送り方向に切断し要部を拡大して示す要部拡大断面図であり、(B)は静圧案内装置の滑動面を示す平面図であり、(C)は滑動面に設けられた静圧ポットの一つを拡大して示す拡大平面図である。
図1に示すように、本実施の形態の静圧案内装置1の構成は、工作機械におけるテーブルなどの支持体2と、支持体2から所定間隔隔てて上方に突出する一対の案内部3と、案内部3の上面に形成された案内面4と、支持体2によって案内支持されるベッド、サドル、コラムなどの移動体5と、移動体5の下面において、支持体2の案内面4と対向する位置に形成された滑動面6と、滑動面6に備えられた静圧ポケット7と、静圧ポケット7の外周縁を形成するランド部8と、静圧ポケット7に加圧した油を供給する供給路9とを備えている。
支持体2に設けられた一対の案内部3は、それらの上部において互いに離反する方向に突出した逆L字形状をしており、その上面が案内面4とされている。また、互いに離反して突出している部分の側面(図中左右方向の外側端面)は、側部案内面10とされており、また、案内部3の突出した部分の下方に向いた面は、裏部案内面11とされている。
支持体2に案内支持される移動体5の下面には、支持体2の案内面4に対向した位置に滑動面6が形成されており、この滑動面6よりも図中左右方向外側且つ、案内部3よりも左右方向外側に延びだした位置に側部材12が下方に延びるように移動体5の下面に設けられており、さらに、この側部材12の下端面には、案内部3の裏部案内面11の下側へ延びだすように裏部材13が設けられている。この側部材12において案内部3の側部案内面10と対向する面には側部滑動面14が設けられている。また、裏部材13における案内部3の裏部案内面11と対向する面には、裏部滑動面15が設けられており、これら、側部案内面10と側部滑動面14、および、裏部案内面11と裏部滑動面15は、夫々所定距離の隙間が形成されている。これら、側部材12、裏部材13、および、移動体5により、一対の案内部3が左右方向外側からコ字状に囲まれた構成となっており、これにより、移動体5は、その送り方向(紙面上表裏方向)に対して直角方向(図中左右および上下方向)の移動が規制されるようになっている。
また、移動体5の下面には、図中左右方向中央付近に下方へ突出するナット保持部16が設けられ、このナット保持部16はボールねじ17と螺合するボールねじナット18を保持しており、ボールねじ17は、紙面上表裏方向に延びると共に、その一端側に図示しない駆動手段が設けられており、この駆動手段によりボールねじ17を回転駆動させることによって、ボールねじナット18を介してナット保持部16、すなわち、移動体5が移動するようになっている。
移動体5の下面に形成された滑動面6には、図2に示すように、移動体5の送り方向に沿って複数(本例では3つ)の静圧ポケット7が備えられており、一つの静圧ポケット7は、所定の幅および所定の深さの溝19によりその外形が構成されており、この溝19を含み溝19に囲まれた範囲(図2(C)中、斜線で示す範囲)が静圧ポケット7とされている。この静圧ポケット7の外形形状は、図中左右方向に長い矩形形状とされており、その左右方向中央には、上下方向に延びる溝19が静圧ポケット7の外形形状に沿った溝19と連通するように形成されている。この静圧ポケット7における中央の溝19の上下方向中央付近には、静圧ポケット7に加圧した油を供給するための供給路9の一端が開口しており、その開口は供給口20とされている。この供給口20近傍の供給路9中に所定減圧量の絞り21が設けられている。なお、図2中符号hは、移動体5の浮上量(クリアランス)の高さを示すものである。
供給路9の他方の端部には、図示しない油圧ポンプからの配管が接続されており、油圧ポンプにより加圧した油を、供給路9を介して静圧ポケット7に供給することで、その油の圧力により移動体5が浮上して、案内面4と滑動面6とが無接触状態となり、この状態で図示しない駆動手段によってボールねじ17を回転駆動させることで、移動体5が静圧案内装置1の送り方向に移動するようになっている。
なお、本実施の形態の静圧案内装置1では、所望の性能(剛性)を約900N/μmとし、油圧ポンプからの油の供給圧を約0.7MPa、ランド部8の幅tを20mm、ランド部8の長さと幅の比(ランド部の幅/ランド部の長さ)を0.012〜0.019の間、また、絞り21の孔の径を0.6mm、長さを10mmとして、許容クリアランスが23μmとなっている。
また、静圧ポケット7における溝19以外の部分の面の高さと、ランド部8の面の高さとを略同じ高さとしており、溝19に囲まれた部分も削って溝の底と同じ高さとすることもできるが、溝19に囲まれた範囲内では、油の圧力は略同じ圧力になることから、削らずに残すことで、加工工数を削減している。また、削らずに残すことで、静圧ポケットの容積を小さくして、移動体が振動した際の減衰効果を高めることができるようになっている。
次に、本実施の形態における静圧案内装置1の作用について説明する。この静圧案内装置1は、図示しない油圧ポンプにより加圧された油が、供給路9を流通し、絞り21において所定の圧力に減圧されて、静圧ポケット7における中央の溝19の底部に開口する供給口20から静圧ポケット7内へと供給される。そして、静圧ポケット7内に供給された油は、静圧ポケット7内を満たした後に、その圧力によって移動体5に対して上方へ押し上げる力を作用させ、その力が移動体5の荷重を上回ることにより移動体5が浮上し、支持体2の案内面4と移動体5の滑動面6とが無接触状態となる。
一方、移動体5が浮上することで、静圧ポケット7の外周縁に備えられたランド部8と案内面4との間に油が流れ込むと共に、油がランド部8より外側に流出する。これにより、静圧ポケット7内の油の圧力が減少し、移動体5の浮上量が減少するが、ランド部8と案内面4との隙間も減少して外側に流出する油も減少するので、静圧ポケット7内の油の圧力が上昇する。また、静圧ポケット7内には所定圧力で油が常に供給されているので、移動体5は、それらのバランスの取れた浮上量(クリアランス)で静止する。
ところで、本例ではランド部8の幅と長さとを所定の条件として、ランド部8と案内面4との間を流れる油に所定の抵抗を付与するようにしている。図4は、本例および従来の静圧案内装置における剛性とクリアランスとの関係を比較して示したもので、本例の静圧案内装置1におけるランド部8の幅は20mmとなっているのに対して、従来品のランド部の幅は5mmとなっている。図示するように、本例の静圧案内装置1は、従来品と比べると最大剛性が若干減少しているものの、グラフの形状がクリアランスの値で約25μmを最大としてなだらかに広がった形状で現れているのに対して、従来品では、その形状が約15μmを最大に急激に下がった形状となっている。
そして、図から判るように、静圧案内装置の所望の性能(剛性)を定格として約900N/μmとした場合、本例品では、その定格以上となるクリアランスの幅(許容クリアランス)が、約23μmであるのに対して、従来品では、許容クリアランスが約11μmと、本例品の方が従来品に対して約2倍の許容クリアランスとなっている。このことから、本例の静圧案内装置1は、従来品と同じ性能でありながら、許容クリアランスが約2倍と大きくなっているので、静圧案内装置1を構成する各部品の精度を従来品のものより、その精度を下げても性能(剛性)に影響を与えないことが判り、部品精度を下げることができる。
このように、本発明の静圧案内装置1は、滑動面6に備えられた静圧ポケット7の外周縁に形成されたランド部8の長さや幅を所定の条件とすることで、静圧案内装置1における剛性などの性能を所望の性能とすることができると共に、許容クリアランスを大きくしてロバスト性を高めることができるので、部品精度を機械加工による精度でも許容範囲とすることができ、キサゲ作業などの熟練工による手作業を必要とせず、工期を短縮することができると共に、コストを抑制することができる。
また、本発明の静圧案内装置1によると、部品精度によって静圧案内装置1の性能が左右され難いので、例えば、マシニングセンタなどの大型の工作機械にも適用することができ、それにより、低コストで、所要送り力が小さく、且つ、位置決め精度の高い大型の工作機械を提供することができるようになる。
さらに、本発明の静圧案内装置1は、滑動面8に形成されたランド部8の幅tを20mmとしており、これにより、ランド部8の角部に施される糸面取りの加工精度が多少悪くても、ランド部8の幅を広くしているので、面取りの誤差の影響を少なくすることができ、実際の静圧案内装置1を設計上の性能と変わらない性能とすることができる。
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
すなわち、本実施の形態では、移動体5の滑動面6に形成されたランド部8の幅を20mmとしたものを示したが、ランド部8の幅は、この寸法に限定されるものではなく、ランド部の幅は、10mm以上、20mm以下の範囲内であれば、適宜選択することができる。上記の範囲内においてランド幅を選択することにより、ロバスト性を出して、静圧案内装置を所望の性能とすると共に、許容クリアランスを大きくして、キサゲ作業など手作業による精密仕上げをなくすことができ、静圧案内装置のコストを低くすることができる他、ランド部の角部に施される面取りの加工誤差の影響を少なくすることができるので、実際の静圧案内装置の性能を設計性能に可及的に近づけることができる。
また、本実施の形態では、移動体5の滑動面6に形成されたランド部8の長さと幅の比(ランド部の幅/ランド部の長さ)を0.012〜0.019の間のものを示したが、この間に限定するものではなく、「ランド部の幅/ランド部の長さ」を0.009以上、0.021以下の範囲内であればよく、この範囲内に収まるようにランド部の幅と、ランド部の長さとを適宜選択することができる。これにより、許容クリアランスを18μm以上とすることができ、手作業による精密仕上げをなくすことができる。
さらに、本実施の形態では、移動体5の滑動面6に備えた静圧ポケット7の外形形状が、横長の矩形形状のものを示したが、静圧ポケット7の外形形状をこの形状に限定するものではなく、例えば、静圧ポケットの外形形状を、台形形状、円形状、楕円形状などとすることもできる他、静圧ポケットの大きさを変えてもよい。これにより、静圧ポケットの外形形状によって、その外周縁に形成されたランド部の幅や長さを変化させて、ロバスト性を出し、静圧案内装置を所望の性能とすると共に、許容クリアランスを大きくして、キサゲ作業など手作業による精密仕上げをなくすることができる。
また、本実施の形態においては、静圧ポケット7に加圧した油を供給する供給路9中に、その絞り径が0.5mmで長さが10mmの絞り21を設けたものを示したが、この減圧量の絞り21に限定するものではなく、例えば、絞り長さを10mmとした場合、絞り径を、0.4mm〜0.7mmとすることができ、これと同等の減圧量が得られるように絞りの長さと径とを適宜選択することができる。これによっても、上記の効果と同様の効果を奏することができる他、移動体の偏荷重や移動に対して絞りの減圧量を変えることで静圧ポケットに供給する油の圧力を変更して、偏荷重や移動による移動体の傾きを抑制することができる。
また、本実施の形態においては、移動体5の滑動面6に備えた静圧ポケット7を、移動体5の送り方向に同じ静圧ポケット7を3つ備えたものを示したが、これに限定するものではなく、静圧ポケット7の数は、移動体の大きさによってその数を適宜選択することができる。また、同じ静圧ポケット7を備えたものとしているが、これを、夫々の静圧ポケットに対して、その静圧ポケットの外形形状(大きさも含む)、ランド部の幅、ランド部の長さ、絞りの減圧量などを異ならせて、静圧ポケットごとに特性の異なるものとすることもできる。例えば、移動体に偏荷重がかかる場合は、その偏荷重のかかり方によって、滑動面の位置ごとに静圧ポケットの特性を異なるものとして、偏荷重による案内面と滑動面との部分的なクリアランスの変化を抑制することができる。或いは、各静圧ポケットごとに特性を異ならせることで相乗効果を発揮させて、ロバスト性をより高めることもできる。例えば、一つの静圧ポケットの絞りの径を0.5mmとし、他の静圧ポケットの絞り径を0.6mmとすることで、相乗効果により許容クリアランスが0.5mmのものと0.6mmのものとを合わせた大きさとなり、より許容クリアランスが大きくなり、部品精度をより低くすることができる。
さらに、本実施の形態においては、移動体5の上下および左右方向への移動を規制するものとして、移動体5に側部滑動面14、裏部滑動面15を設け、それらを案内部3の側部案内面10、裏部案内面11に夫々当接させるものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、側部滑動面、裏部滑動面に、夫々静圧ポケットを設けて、その静圧ポケット内に加圧した油を供給するように構成することもできるし、側部滑動面、裏部滑動面に、夫々ころがり支承手段を設けると共に、そのころがり支承手段の転動部を所定の付勢力で側部案内面、裏部案内面に夫々接触させた構成とすることもでき、いずれの構成においても、移動体5の上下および左右方向への移動を規制することができると共に、移動体5を送り方向に円滑に送ることができる。
本発明の一実施の形態である静圧案内装置を送り方向に対して直角方向に切断した断面図である。 (A)は静圧案内装置を送り方向に切断し要部を拡大して示す要部拡大断面図であり、(B)は静圧案内装置の滑動面を示す平面図であり、(C)は滑動面に設けられた静圧ポットの一つを拡大して示す拡大平面図である。 静圧案内装置における許容クリアランスとランド部の幅/ランド部の長さの関係をグラフで示す説明図である。 本発明および従来の静圧案内装置における剛性とクリアランスとの関係を比較して示す説明図である。
符号の説明
1 静圧案内装置
2 支持体
4 案内面
5 移動体
6 滑動面
7 静圧ポケット
8 ランド部
9 供給路
21 絞り

Claims (6)

  1. 支持体に形成された案内面と、該案内面と対向するように移動体に形成された滑動面とを有し、前記案内面と前記滑動面との間に供給路を介して加圧した油を供給して前記案内面と前記滑動面とを無接触状態とすると共に、前記支持体により前記移動体を案内支持する静圧案内装置において、
    前記滑動面には、
    加圧した油を供給する静圧ポケットと、
    該静圧ポケットの外周縁を形成する所定幅のランド部とを備え、
    該ランド部の長さおよび幅を所定の条件とすることで、前記案内面と前記ランド部との間を流通する油の流れを制御して、前記静圧案内装置を所望の性能とすることを特徴とする静圧案内装置。
  2. 前記ランド部の幅は、10mm≦ランド部の幅≦20mm、であることを特徴とする請求項1に記載の静圧案内装置。
  3. 前記ランド部の長さと幅との関係は、0.009≦ランド部の幅/ランド部の長さ≦0.021、であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静圧案内装置。
  4. 前記静圧ポケットの外形形状により前記静圧案内装置を所望の性能とすることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の静圧案内装置。
  5. 前記静圧ポケットに加圧した油を供給する前記供給路に、加圧した油を減圧する絞りを備え、該絞りの減圧量により前記静圧案内装置を所望の性能とすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の静圧案内装置。
  6. 前記滑動面には、複数の前記静圧ポケットを具備し、各該静圧ポケットに対して、前記ランド部の長さ、前記ランド部の幅、前記静圧ポケットの外形形状、前記絞り、のうち少なくとも一つを異なるものとして前記静圧ポケットの特性を異ならせ、特性の異なる該静圧ポケットを組み合わせることで前記静圧案内装置を所望の性能とすることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一つに記載の静圧案内装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105114459A (zh) * 2015-10-14 2015-12-02 中国人民解放军国防科学技术大学 一种基于光学材料的高精度高刚度气体静压导轨

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