JP2005042548A - 木造軸組 - Google Patents

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Abstract

【課題】 金物を一切用いることなく木造軸組の耐震性能を確保する。
【解決手段】 柱頭部間に長押を設けてなる木造軸組において、柱頭部を挟み込む対の長押3の双方を柱頭部に対して相対回転不能な状態で係合させ、かつそれら長押を引独鈷9の車知留めにより互いに引き寄せて柱頭部を締め付け挟持してなる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、金物を用いることなく優れた耐震性能を確保し得る木造軸組に関する。
周知のように、寺社建築に代表される我国の伝統的な木造建築は、柱に貫、長押、地覆その他の部材を組み合わせた木造軸組によるものである。そして、各部材どうしの連結は木組によることを基本としつつ耐震性を確保する必要上、一部に金物を併用することが通常である。
しかし、長年月の間には腐食が不可避である金物を木造軸組において用いることは、木造建築が本来的に備えている優れた耐久性(法隆寺は千年を優に越えている)を損なうことになり、そのため、金物を一切用いることなく木組のみで優れた耐震性を確保することのできる現代的な木造軸組の開発が望まれている。
本発明は、柱頭部間に長押を設けてなる木造軸組において、柱頭部を挟み込む対の長押の双方を柱頭部に対して相対回転不能な状態で係合させ、かつそれら長押を引独鈷の車知留めにより互いに引き寄せて柱頭部を締め付け挟持してなるものである。
本発明の木造軸組は、長押を柱頭部に対して相対回転不能な状態で係合させ、かつ双方の長押を引独鈷の車知留めにより互いに引き寄せて柱頭部を締め付け挟持するような木組としたので、金物を用いることなく従来一般の木組に比較して軸組の耐力を大きく向上させることができ、優れた耐震性能を確保することができる。
図1〜図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1におけるII部、III部、IV部の詳細をそれぞれ図2、図3、図4に示している。本実施形態の木造軸組は、柱1、頭貫2、長押3、地覆4から構成されている。柱1の柱頭部には図2に示す構造の木組により頭貫2が連結されている。すなわち、柱頭部には十字状の溝5が彫り込まれて形成されており、その溝5に、二方向の頭貫2が相欠き状態に交差して落とし込まれて嵌入されている。そして、それらの頭貫2および溝5の双方には、頭貫2の落とし込みにより互いに摺接して柱頭部を径方向内側に締め付けるためのすべり勾配面を有する係合部6が形成されている。従来一般の柱と頭貫との木組(仕口)には殆ど耐力が期待できなかったが、上記のように係合部6どうしの係合による締め付け力により、この木組は金物を一切用いずとも従来の木組に比較して耐力が増強され、耐震性能を大きく向上させることができるものとなっている。
また、頭貫2の直下に設けられている長押3は、図3に示す構造の木組で柱頭部に対して取り付けられている。すなわち、柱頭部には上記の溝5の下部に柱の全周にわたる溝7が形成されてその底部は八角形をなすものとされ、柱1を挟み込む長押3の双方には半円形の切欠部が形成されているとともにその切欠部には上記の溝7に係合する係合部8が形成されていて、その係合部8を溝7に嵌め込むことにより双方の長押3が柱頭部に対して相対回転不能な状態で柱1を挟み込むようになっている。そして、双方の長押3は引独鈷9および車知栓10による車知留めとされることで互いに引き寄せられて強固に連結され、これにより柱頭部は上記の頭貫2による締め付けに加えて長押3によっても締め付けられ、より一層の耐力増強が実現している。
さらに、上記の柱1は図4に示す構造で礎石11上に建て込まれている。すなわち、礎石11の上面には半球状の凸部(丸ダボ)12が形成されているとともに、柱1の底面にはその凸部12に嵌合する半球面状の凹部13が設けられ、それら凸部12と凹部13とを嵌合させた状態で柱1が建て込まれている。そして、柱脚部には通常の木組により地覆4が連結されているが、柱1は礎石11に対しては直接的に連結されてはおらず、したがってこの軸組が水平力を受けた際には(c)に示すように柱1は凸部12に乗り上げるようにしてわずかに傾斜しかつ浮き上がることが許容される状態となっている。このような構造で柱1を建て込むことにより、地震時における柱脚部の損壊が防止されて木造軸組全体で柱1の傾斜に対する復元力が十分に発揮され、耐震性能を大きく向上させることができるものとなっている。
図5〜図10は参考例としての他の木造軸組を示すものである。これは、図1に示した実施形態の木造軸組から長押3を省略するとともに、板壁14を組み込み、かつ斗組15を設けたものであり、図5におけるVI部、VII部、VIII部、IX部、X部の詳細を、それぞれ図6、図7、図8、図9、図10に示している。II部、IV部の構成は上記の実施形態と同様である。
本参考例の木造軸組では、柱1間の上部および下部にそれぞれ内法貫16および足固貫17が渡されているとともに、それらの間に複数(図示例では3本)の貫18が渡され、かつ、頭貫2、内法貫16、各貫18、足固貫17、地覆4の間を複数(図示例では6枚)の力板19により塞いで板壁14を構成している。内法貫16および足固貫17と柱1との木組はたとえば図6および図7に示すような通常の構造のものであるが、各貫18および各力板19は図8に示す構造で柱1に対して取り付けられている。すなわち、貫18の端部は柱1に対して下げ鎌により留められ、力板19の端部は柱1に形成されている縦溝20内に上下方向に変位可能に差し込まれている。そして、各貫18と各力板19とはそれらの長さ方向に相対変位可能に連設されており、それらの間には木製のダボ21が所定間隔(たとえば300mm程度)で介装せしめられている。このような構造の板壁14を備えた木造軸組では、地震時に水平力を受けた際に各力板19が柱1に対して上下方向にずれようとし、かつ力板19と貫18とが水平方向にずれようとするが、そのようなずれはダボ21により拘束されるので優れた水平耐力を発揮し、しかもダボ21の微小変形や柱1、貫18、力板19間の摩擦力による振動減衰効果も期待できる。つまり、上記の板壁14はあたかも近代建築におけるダンパー組込形の耐震壁のように挙動するものとなり、このような板壁14の採用により木造軸組の耐震性能を大きく向上させることができる。
また、本参考例における斗組15は、図9および図10に示すように互いにダボ22により連結された大斗23、肘木24、巻斗25よりなる組物26を柱頭に設け、組物26どうしを通し肘木27により連結し、通し肘木27と頭貫の間に間斗束28を立て、組物26と頭貫2と通し肘木27に囲まれる範囲に小壁としての琵琶板29を取り付けた構成とされている。琵琶板29は通常のようにその上縁部が通し肘木27の下面に形成された溝30に嵌め込まれ、琵琶板29の下縁部は頭貫2の上面に形成された溝31に嵌め込まれているが、本参考例では琵琶板29の上縁部および下縁部とそれらが嵌め込まれる溝30,31の双方に琵琶板29の水平方向の変位を規制するための段差状の係合部32を設けている。このような構造により、地震時の水平力によって軸組が変形しようとした際には琵琶板29がそれを拘束し、これによりそのような機能を琵琶板には期待していない従来一般の軸組に比較して耐震性能を向上させることができる。
以上で本発明の実施形態および参考例を説明したが、本発明の木造軸組は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、図3に示した長押3の木組を基本として、それに上記実施形態および上述の参考例における各構成要素、すなわち、図2に示した柱1と頭貫2の木組、図4に示した柱1の建て込み構造、図8に示した板壁14の構造、図9および図10に示した琵琶板29の取り付け構造のいずれかを単独であるいは任意に組み合わせて備えた木造軸組とすれば良く、いずれにしても金物を一切用いることなく従来一般の木造軸組に比較して優れた耐震性能を確保することができる。
なお、本発明は、社寺等の木造建物を新築する場合に適用するのみならず、歴史的価値のある既存木造建物を保存するに当たってその補修や耐震補強を行う場合に適用することも好適である。その場合も外観上は伝統的な木造建物における軸組と何等変わるものではないから全く違和感がない。
本発明の一実施形態である木造軸組を示す立面図である。 図1におけるII部の詳細図である。 図1におけるIII部の詳細図である。 図1におけるIV部の詳細図である。 参考例としての木造軸組を示す立面図である。 図5におけるVI部の詳細図である。 図5におけるVII部の詳細図である。 図5におけるVIII部の詳細図である。 図5におけるIX部の詳細図である。 図5におけるX部の詳細図である。
符号の説明
1 柱
2 頭貫
3 長押
7 溝
8 係合部
9 引独鈷
10 車知栓

Claims (1)

  1. 柱頭部間に長押を設けてなる木造軸組において、
    柱頭部を挟み込む対の長押の双方を柱頭部に対して相対回転不能な状態で係合させ、かつそれら長押を引独鈷の車知留めにより互いに引き寄せて柱頭部を締め付け挟持してなることを特徴とする木造軸組。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011144621A (ja) * 2009-12-18 2011-07-28 Shimizu Corp 木造建物の耐震板壁構造

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