JP2005041919A - 熱収縮性ポリエステル系フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ長期間保存した後でも収縮白化を起こさず、十分な溶剤接着性をもつ熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であり、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下であり、非塩素系有機溶剤で接着可能である熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であり、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下であり、非塩素系有機溶剤で接着可能である熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、特に、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。さらに詳しくは、集積包装のラベル用、特に缶詰集積のラベル用であって、輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ収縮時の仕上がりもよく、十分な溶剤接着性をもつ熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性プラスチックフィルムは、加熱によって収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベル等の用途に広く用いられている。なかでも、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等の延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
特に、缶詰等の集積包装用収縮フィルムの分野では、従来からポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられているが、近年、ポリ塩化ビニルについては、廃棄時に燃焼する際の塩素ガス発生の問題、ポリスチレンについては、印刷が困難である問題等あり、熱収縮性ポリエステル系フィルムが注目を集めている。
【0004】
ところが、従来のラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて収縮包装した場合では、輸送時の集積体同士の衝撃や集積体を梱包した箱との摩擦等によりキズが生じやすく、さらにフィルム製膜において一方向へ延伸している性質上、フィルムが主収縮方向に大きく裂け、被包装体を保持できず、商品価値を損なう問題がある。特に低温下においては、従来集積包装用に用いられている柔軟で裂けにくいポリ塩化ビニルを使用しても同様にフィルムが裂けるという問題が発生する。
【0005】
これらの問題に対し、フィルム製膜時に主収縮方向と直交する方向にも配向させ、一方向に裂けるのを防ぐ技術が考えられるが、主収縮方向と直交する方向のバランスが悪いと、
収縮のバランスがとれず、収縮装着の際に仕上がりが悪く、また、環境問題から使用が好ましい非塩素系溶剤を用いてフィルムからチューブを作製する際に十分な溶剤接着性が得られないといった問題が発生する。
【0006】
ところで、熱収縮性フィルムを実際の容器の被覆加工に用いる際には、必要に応じて印刷工程に供した後、ラベル(筒状ラベル)、チューブ、袋等の形態に加工して、これらの加工フィルムを容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着装着させている。
【0007】
スチームトンネルは、熱風トンネルよりも伝熱効率が良く、より均一に加熱収縮させることが可能であり、熱風トンネルに比べると良好な収縮仕上がり外観を得ることができるが、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムや、ポリスチレン系フィルムに比べると、スチームトンネルを通過させた後の収縮仕上がり性があまり良くないという問題があった。
【0008】
また、熱収縮の際に温度斑が生じやすい熱風トンネルを使用するとポリエステル系フィルムでは、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み等が発生し易い。特に、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、30℃以上の高温環境下で保存した場合に、収縮白化が起き易く、製品外観上問題となっていた。さらに、熱風トンネルを通過させた後の収縮仕上がり性においても、ポリ塩化ビニル系フィルムや、ポリスチレン系フィルムよりも劣っているという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの問題点を解決し、輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ長期間保存した後でも収縮白化を起こさず、十分な溶剤接着性をもつ熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、上記特性を有する集積用包装ラベル用、特に缶詰集積用の熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
以下に示す振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であり、
温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下であり、
非塩素系有機溶剤で接着可能であるところに要旨を有する。
【0012】
ここでいう振動試験を以下に説明する。
フィルムをチューブ状に接合加工したものを、直径72mm、高さ55mmの食用絞り缶を高さ方向に3缶集積したもの(総重量660g)に被せ、シュリンクトンネルで収縮包装後、該集積体を縦455mm、横230mm、高さ165mmの段ボール箱に縦6列、横3列、計18パックを入れ封をする。次にこの段ボール梱包体を、縦方向に水平に、振動幅50mm、振動速度180往復/分で60分間振動させた後、フィルムの裂け具合を目視にて評価する。
缶の円周上に30mm以上の裂けを生じたものを不良とし、18パック中の不良パック数の割合を横裂け不良発生率(%)と定義する。
【0013】
本発明の好適な実施態様においては、フィルム縦方向の屈折率Nx、及びフィルム横方向の屈折率Nyが下式(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
1.561<Nx<1.566 (1)
0.040<Ny−Nx<0.070 (2)
【0014】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下を特徴とする。
【0015】
本発明のフィルムは、長期間保存後でも収縮白化を起こしにくいことから、収縮前後のヘーズ差を5%以下と定めた。なお、収縮後のヘーズを測定するときの「熱収縮」は、温度25℃の市販の絞り缶(フリスキー社製フリスキー)を高さ方向に3缶集積したものに、熱収縮性フィルムから作製したラベルを被せ、熱風トンネル装置(協和電気社製のユニバーサルシュリンカー型式:K2000)を使用し、風速10m/秒の熱風を15秒あてることにより行った。
【0016】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、ポリエステルを構成する多価アルコール成分のうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が10モル%以上含まれていることが好ましく、さらに、1,4−ブタンジオール成分が2モル%以上含まれていることが好ましい。これらの多価アルコール成分の使用により、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み、タテヒケ等の発生が一層低減し、特に熱風トンネルでの収縮白化の抑制に有効であり、特に収縮仕上がり外観が美麗となる。
【0017】
本発明の好適な実施態様においては、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上であり、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10〜25%であることを特徴とする。
【0018】
この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは集積包装に用いられるのが好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であることが必要であり、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは0%である。横裂け不良発生率が20%を越える場合、実輸送において、フィルムに多数の裂けが発生し、商品価値を損ねるばかりでなく、集積包装用の目的である商品結束が不可となり、好ましくない。
【0020】
さらに、本発明では、フィルム縦方向の屈折率Nx、及びフィルム横方向の屈折率Nyが下式(1)及び(2)を満足することが好ましい。
1.561<Nx<1.566 (1)
0.040<Ny−Nx<0.070 (2)
屈折率Nxのより好ましい範囲は、1.562〜1.565である。また、値(Ny−Nx)のさらに好ましい範囲は、0.050〜0.060である。屈折率Nxの値が1.561未満である場合には、横裂けに対する強度が不足し、1.566を越える場合は、主収縮方向と直交する方向の収縮率が大きくなり、収縮仕上がり性が悪くなり、好ましくない。さらに、値(Ny−Nx)が0.040未満である場合には、フィルム縦方向と横方向のバランスが悪くなり、収縮斑が発生し、0.070を越える場合には、横裂け不良率が悪化し、好ましくない。
【0021】
また、本発明では、収縮白化を起こし難い熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供するものであり、その目安として、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存した後、この保存前(製造直後)のフィルムのヘーズを基準とし、保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズとの差が5%以下であることを要件とした。このヘーズ差が5%を越えるものは、フィルムの透明性が損なわれ、目視判定で白化と認識されるレベルであり好ましくない。また、より長期間保存した場合に収縮白化を起こし易いため、熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては良品とはいえない。従って、本発明では、ヘーズ差を5%以下と定めた。ヘーズ差は小さければ小さいほど好ましく、より好ましいヘーズ差は3%以下、さらに好ましくは1%以下である。なお、収縮後のフィルムのヘーズは12%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0022】
ここで、ヘーズ測定は以下のように行う。まず、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存する。次いで、このフィルムを用い、溶剤接着法、または、ヒートシール法でフィルムの主収縮方向が円周方向となるようにチューブ状ラベルを作成し、このラベルを温度25℃に調整した市販の絞り缶(フリスキー社製フリスキー)を高さ方向に3缶集積したものに被せて、170℃(風速10m/秒)の熱風を15秒あてて熱収縮させる。熱収縮後のラベル(ラベルサンプル数10)からそれぞれフィルム試料を切り出す。これらのフィルム試料について、JIS K 7136に則ってヘーズを測定し、平均値(ヘーズ▲2▼)を求める。また、製造直後(保存前)のフィルム(サンプル数10)についてもJIS K 7136に則って予めヘーズを測定しておき、平均値(ヘーズ▲1▼)を求めておく。ヘーズ差は、収縮後の試料のヘーズ▲2▼から製造直後の試料のヘーズ▲1▼を引いた値である。なお、熱収縮の前に、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存するのは、このような環境で保存すると、熱収縮性フィルムが白化を起こし易くなることが見出されたためである。
【0023】
白化現象のメカニズムは明白なものとなっていないが、熱風トンネルで熱収縮させた場合や、上記のように30℃以上の雰囲気下で長期間保管した後で熱収縮させた場合に、収縮白化現象が起こり易いことがわかっている。また、熱収縮の際に、フィルム内面側(容器に接触する面)と外面側(容器に接触しない面)とで温度差が発生して収縮斑となり、斑部分のフィルム表面が荒れることにより白化として目視で認識されることもある。すなわち、容器接触部のフィルムは動きが拘束されるのに対し、外面側は熱が伝わり易く、しかも容器に接触しない分、動きが拘束されないため、フィルムの内面側と外面側とで収縮が不均一となって、この不均一さが極端になると白化してしまうと考えられる。収縮白化はラベルの透明性を部分的に低下させるため好ましくない。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上であることが好ましい。フィルムの熱収縮率が50%未満であると、フィルムの熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。熱収縮率は高ければ高いほど好ましく、このため、より好ましい熱収縮率は55%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0025】
また、本発明のフィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10〜25%であることが好ましい。熱収縮率が10%未満の場合には、横裂けに対する強度とのバランスがとれず、好ましくない。25%を越えると、容器装着する収縮ラベルの収縮斑や飛び上がり等の発生により、収縮仕上がり性が劣るため、好ましくない。より好ましい熱収縮率は10〜20%である。
【0026】
ここで、主収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、主収縮方向は、正方形の縦方向または横方向(または斜め方向)の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向(または斜め方向)の長さを測定し、下記式
熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
に従って求めた値である。
【0027】
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、1,3−ジオキソランによる溶剤接着性を有することが好ましい。より好ましくは、テトラヒドロフランによる溶剤接着性を有することが好ましい。
【0028】
次に、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの好ましい組成を説明する。フィルムの耐破れ性、強度や耐熱性等の物理的強度に関する特性を保持するためには、ポリエステル系フィルムに結晶性ユニット(エチレンテレフタレートユニット等)が存在していることが必要であるが、結晶性ユニットのみでは熱収縮率が低く、95℃、10秒温水処理で50%という高い収縮率を発現させることが難しい。また、耐溶剤性が高くなりすぎて、収縮フィルムをチューブ状に加工する際に使用する溶剤接着性を得ることが難しい。そのため、本発明では、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含有することで、ポリエステル系フィルムの組成を調整し、熱収縮性と溶剤接着性を高めているのである。
【0029】
1,4−シクロヘキサンジメタノールは、非晶化度合いを高めて、熱収縮性を発現させる作用を有する。また、1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用によって、収縮仕上がり性が向上し、溶剤接着性も向上する。これらの効果を充分に得るには、多価アルコール成分100%のうち、1,4−シクロヘキサンジメタノールを10モル%以上とすることが好ましい。また、収縮白化現象も1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用によって抑制することができ、得られるフィルムは前記したヘーズの要件を満足するものとなる。1,4−シクロヘキサンジメタノールの量は、12モル%以上がより好ましく、14モル%以上がさらに好ましい。ただし、40モル%を超えて使用すると、フィルムの収縮率が必要以上に高くなりすぎて、熱収縮工程でのラベルの位置ずれや図柄の歪みが発生するおそれがある。また、フィルムの耐溶剤性が低下するため、印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下するため好ましくない。従って、1,4−シクロヘキサンジメタノールは37モル%以下がより好ましく、35モル%以下がさらに好ましい。
【0030】
多価アルコール成分として、1,4−ブタンジオールを用いることも本発明のポリエステルにおいて好ましい実施態様である。1,4−ブタンジオールはポリエステルのTgを下げて低温収縮率の発現に寄与するため、得られるフィルムが比較的低温域であっても優れた収縮仕上がり性を発揮するようになる。また、溶剤接着性も優れたものとなる。これらの効果を得るためには、多価アルコール成分中、1,4−ブタンジオールを2モル%以上使用することが好ましい。より好ましい下限は4モル%、さらに好ましい下限は6モル%である。ただし、1,4−ブタンジオール成分が多すぎると、フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等の特性を担うエチレンテレフタレートユニットが少なくなるため、その上限は35モル%とすることが好ましく、より好ましい上限は30モル%である。
【0031】
また、多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコール成分が2モル%以上含まれていてもよい。ネオペンチルグリコールは、ポリエステルのTgを下げる作用を有しているため、低温域で良好な収縮仕上がり性を得ることができる。このため、ネオペンチルグリコールを適量用いることで、低温から高温までの幅広い温度域で熱収縮力を発揮するフィルムが得られる。より好ましいネオペンチルグリコール量は4モル%以上、さらに好ましくは6モル%以上である。なお、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールの合計量は40モル%以下が好ましい。
【0032】
他の多価アルコール成分としては、エチレンテレフタレートユニットを形成するためのエチレングリコールが用いられる。そのほか、ジエチレングリコール、ダイマージオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール等も併用可能である。
【0033】
多価カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成誘導体、又は脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4―もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0034】
また、ポリエステルは、必ずしも前記多価カルボン酸類100モル%および多価アルコール100モル%とから製造する必要はなく、ラクトン類(ε−カプロラクトン等)の開環重合によってポリエステルユニットを形成してもよい。ラクトン類の併用は、非晶化度を高める働きを有する。なお、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分中の各成分の割合(モル%)を算出する場合、ラクトン類の開環成分は、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分のいずれにも該当するものとして計算する。
【0035】
結晶性のエチレンテレフタレートユニットは、耐破れ性の観点から、ポリエステルを構成するユニットとして50モル%以上含まれていることが好ましいため、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコールを50モル%以上、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸(またはそのエステル)を50モル%以上、使用することが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0036】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、多価カルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、多価カルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.50〜1.30dl/gのものが好ましい。
【0037】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルモニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩 を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
【0038】
上記重合触媒以外の金属イオンの総量が生成ポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを越えるとポリエステルの着色が顕著になるのみならず、ポリエステルの耐熱性及び耐加水分解性も著しく低下するため好ましくない。このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、総P量(P)と総金属イオン量(M)との質量比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。質量比(P/M)が0.4未満または1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
【0039】
上記金属イオン及びリン酸およびその誘導体の添加時期は特に限定しないが、一般的には金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子を添加してもよく、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤等を添加することもできる。
【0040】
ポリエステルフィルムは、後述する公知の方法で得ることができるが、熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、複数の成分をフィルム中に含有させる手段としては、共重合を行ってこの共重合ポリエステルを単独使用する方式と、異なる種類のホモポリエステルあるいは共重合ポリエステルをブレンドする方式がある。
【0041】
共重合ポリエステルを単独使用する方式では、上記特定成分の多価アルコール成分と、テレフタル酸および他の多価カルボン酸成分とから得られる共重合ポリエステルを用いればよい。一方、異なる組成のポリエステルをブレンドする方式では、ブレンド比率を変更するだけでフィルムの特性を容易に変更でき、多品種のフィルムの工業生産にも対応できるため、好ましく採用することができる。
【0042】
ブレンド法では、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。例えば、2種類のポリエステルをブレンドする場合は、テレフタル酸を必須的に含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとからなる共重合ポリエステルと、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコール成分がエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルとのブレンド系;ポリエチレンテレフタレート(PET)と、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルとのブレンド系;ポリブチレンテレフタレート(PBT)と、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルとのブレンド系等が挙げられる。もちろん、上記例示以外の多価アルコールを併用してもよく、テレフタル酸以外の多価カルボン酸を併用してもよい。
【0043】
3種の混合系においては、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルと、PETと、PBTとのブレンド系;多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステルと、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルと、PETのブレンド系;多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステルと、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルと、PBTのブレンド系等が挙げられる。もちろん、上記例示以外の多価アルコールを併用してもよく、テレフタル酸以外の多価カルボン酸を併用してもよい。なお、4種以上のポリエステルをブレンドしてもよい。
【0044】
具体的なフィルムの製造方法としては、原料ポリエステルチップをホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、又は真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を用いて200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出す。このとき、使用する複数種のポリマーチップの形状を合わせてホッパー内での原料偏析の現象を抑止することが好ましい。ポリエステルチップは、通常、底面を楕円形とする円筒状の形状であるが、楕円状底面の長径、短径および円筒状の高さのそれぞれの平均サイズが、最も使用比率の高い原料種のチップサイズ±15%以内の範囲である異種の原料チップを用いることが好ましく、前記サイズが±10%以内の範囲内であることがより好ましい。
【0045】
また、フィルムを構成するポリマーの組成変動を低減するために、使用する原料チップの削れ等により発生する微粉体の比率を低減することが好ましい。前記微粉体が原料偏析の発生を助長するので、工程内で発生する微粉体を除去して含まれる微粉体の比率を低減することが好ましい。含まれる微粉体の比率は、原料チップが押出し機に入るまでの全工程を通じて1質量%以内に制御することが好ましく、0.5質量%以内に制御することがさらに好ましい。
【0046】
押出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存のどの方法を採用しても構わない。ただし、ホッパー内での原料偏析を低減する手段として、使用するホッパーの容量及び形状を適正化することが好ましい。使用するホッパーの適正な容量としては、2種以上の複数種の原料を混合後より押出し機に原料を供給するまでの工程でのホッパー容量が、(押出し機の1時間当たりの吐出量)×0.05から(押出し機の1時間当たりの吐出量)×1.2までの範囲内にあることが好ましく、(押出し機の1時間当たりの吐出量)×0.1から(押出し機の1時間当たりの吐出量)×1.0までの範囲内がより好ましい。ホッパーの適正な形状としてはホッパー内の原料を排出する際に、マスフロー又はそれに近い状態となるような範囲にホッパー底部の角度を設計したものを使用することが好ましい。前述のポリエステル原料チップを例にとると、ホッパー底部の角度が70度以上であることが好ましく、75度以上であればさらに好ましい。
【0047】
複数種の原料を混合する方法としては、押出し機直上のホッパーにて各原料を連続的に定量供給しつつ混合する方法が最も好ましいが、複数種の原料チップサイズを前述の範囲内に制御したものを混合後、複数の中間ホッパーを通じて押出し機に導くこともできる。複数種の原料を混合する際には、原料チップを連続的に定量供給する装置よりホッパー内に複数種の原料を定量的に供給しつつ混合する方法あるいは、ブレンダー等を使用して事前に混合する方法等があるが、後者の場合には混合後排出時に原料偏析が発生しないよう設備及び原料チップサイズ等に留意することが好ましい。
【0048】
押出し後は、キャスティングロール等を用いて急冷して未延伸フィルムを得る。なお、この「未延伸フィルム」には、フィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれるものとする。この未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。延伸処理は、上記キャスティングロール等による冷却後、連続して行ってもよいし、冷却後、一旦ロール状に巻き取って、その後行ってもよい。
【0049】
主収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、主収縮方向が横方向である場合の製膜法の例を示す。なお、主収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90度変える等、通常の操作に準じて製膜することができる。
【0050】
熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分布を均一化させることに着目すれば、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って実施される予備加熱工程を行うことが好ましく、この予備加熱工程では、熱伝導係数が0.00544J/cm2・sec・℃以下となるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内の所定温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
【0051】
横方向の延伸はTg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍延伸する。しかる後、60℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要により、さらに40℃〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理を行うとよい。
【0052】
延伸工程においては、フィルム表面温度の変動を小さくすることのできる設備を使用することが好ましい。
【0053】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍以下、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施すことができる。該2軸延伸では、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程等においてある定位置において測定されるフィルム表面温度の変動が、本発明のフィルムロールのフィルム巻き長に相当する流れ方向の距離の範囲内において(平均温度)±1℃以内であることが好ましく、(平均温度)±0.5℃以内であればさらに好ましい。延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制し、巾方向のフィルム温度斑を小さくする点に着目すれば、延伸工程の熱伝達係数は0.0037J/cm2・sec・℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.00544〜0.00837J/cm2・sec・℃の条件がよい。
【0054】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用収縮フィルムとして10〜200μmが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0055】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、通常、円周方向が主収縮方向となるように筒状ラベルに加工して用いられる。筒状にするには、フィルムの端部同士を重ねて接着すればよく、接着方法としては、超音波、ヒートシール法、溶剤接着法、いずれも採用可能である。溶剤接着法に用いることのできる溶剤としては、環境に与える影響を配慮すれば、非塩素系有機溶剤が好ましい。前記した好ましい実施態様のフィルムは溶剤接着性に優れているため、毒性の強い非塩素系有機溶剤でなくても、強い接着部を形成する。
【0056】
使用可能な具体的な溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;フェノール等のフェノール類;テトラヒドロフラン等のフラン類;1,3−ジオキソラン等のオキソラン類等の有機溶剤が挙げられ、なかでも、安全性の観点から、テトラヒドロフランや1,3−ジオキソランを使用することが望ましい。
【0057】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0058】
(1)チップまたはフィルム組成
チップまたはフィルムを、クロロホルムD(ユーソリップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーソリップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調整し、NMR(「GEMINI−200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定によるプロトンのピーク強度に基づいて、試料を構成するモノマーの構成比率を算出した。
【0059】
(2)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。最も収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0060】
(3)ヘーズ
保存前(製造直後)のフィルムヘーズ(保存なし)、この保存前のフィルムの熱収縮後のヘーズ、そして、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存した後、さらに熱収縮させたもののヘーズをJIS K 7136に則って測定した。熱収縮は、フィルムをセンターシールマシンで1,3−ジオキソランを用いて用材接着して主収縮方向が円周方向となるようにチューブを作り、さらに切断してラベルを作製し(折り径122mm、ピッチ170ミリ)、このラベルを、温度25℃の市販の絞り缶(フリスキー社製フリスキー)を高さ方向に3缶集積したものに被せ、熱風トンネル装置(協和電気社製のユニバーサルシュリンカー型式:K2000)を使用し、風速10m/秒の熱風を15秒あてることにより行った。それぞれサンプル数10個の平均値を表に示した。
【0061】
(4)溶剤接着性
(3)と同様にして1,3−ジオキソラン、およびテトラヒドロフランを用いてフィルム(保存なし)をチューブ状に接合加工し、温度23℃、相対湿度65%の環境下に24時間放置した後、チューブを加工時の流れ方向と直行方向に15mm幅に切断してサンプルとし、接合部分を上記方向について、JIS K 6854に準じ、T型剥離試験を行った。試験片数は20とし、試験片長さ60mm、チャック間20mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行った。
【0062】
溶剤接着性を以下の基準に基づいて評価した。
剥離接着強度3N/15mm以上: ○
剥離接着強度1N/15mm以上: △
剥離接着強度1N/15mm未満: ○
【0063】
(5)屈折率
Abbeの屈折計を使用し、フィルム(保存前)の縦、横、厚み方向の屈折率を測定した。
【0064】
(6)収縮仕上がり性
(3)と同様にして収縮仕上げを行い、仕上がり性を以下の基準に基づいて評価した。
○:外観欠点がないもの
×:シワ、収縮不足、飛び上がりがあるもの
【0065】
(7)振動試験
(3)と同様にしてフィルムをチューブ状に接合加工したものを、直径72mm、高さ55mmの食用絞り缶を高さ方向に3缶集積したもの(総重量660g)に被せ、シュリンクトンネルで収縮包装後、該集積体を縦455mm、横230mm、高さ165mmの段ボール箱に縦6列、横3列、計18パックを入れ封をした。次にこの段ボール梱包体を、縦方向に水平に、振動幅50mm、振動速度180往復/分で60分間振動させた後、フィルムの裂け具合を目視にて評価した。缶の円周上に30mm以上の裂けを生じたものを不良とし、18パック中の不良パック数の割合を横裂け不良発生率(%)とした。
【0066】
(8)実輸送試験
前記「振動試験」の項に記載の段ボール梱包体を3ケース陸送し、54パック中の不良パック数の割合を不良率(%)と定義し、不良率20%以下を「○」、20%を越える場合を「×」とした。
【0067】
(ポリエステルの合成)
(合成例1)
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブにジカルボン酸成分として、ジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分として、エチレングリコール(EG)100モル%を多価アルコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。280℃で26.7Paの減圧条件の下で重縮合反応を行い、続いてチップ化した。
固有粘度0.75dl/gのポリエステルAを得た。得られたチップの組成を表1に示した。
【0068】
(合成例2〜4)
合成例1と同様な方法により、表1に示すポリエステル(B)〜(D)を得た。なお、表中、CHDMが1,4−シクロヘキサンジメタノール、NPGがネオペンチルグリコール、BDが1,4−ブタンジオールである。それぞれのポリエステルの固有粘度は、(B):0.72dl/g、(C):0.80dl/g、(D):1.20dl/gであった。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例1)
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表1に示したように、チップAを6質量%、チップBを14質量%、チップCを60質量%、チップDを20質量%の割合で押出し機直上のホッパーに定量スクリューフィーダーをにてそれぞれ連続的に別供給しつつホッパー内で混合し、280℃で単軸式押出し機にて溶融押出しし、その後急冷して、厚さ185μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度80℃)で、1.2倍延伸した後、テンターでフィルム温度74℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで85℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ41μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0071】
(実施例2)
表1に示したように、チップAを6質量%、チップBを37質量%、チップCを37質量%、チップDを20質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度79℃)で、1.2倍延伸した後、テンターでフィルム温度73℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで85℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0072】
(比較例1)
表1に示したように、チップAを6質量%、チップBを60質量%、チップCを14質量%、チップDを20質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ175μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度79℃)で1.2倍延伸した後、テンターでフィルム温度72℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで82℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ42μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0073】
(比較例2)
表1に示したように、チップAを35質量%、チップBを55質量%、チップDを10質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ190μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度80℃)で、1.5倍延伸した後、テンターでフィルム温度77℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで84℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0074】
(比較例3)
表1に示したように、チップAを35質量%、チップBを55質量%、チップDを10質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ175μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、テンターでフィルム温度74℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで83℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ長期間保存した後でも収縮白化を起こさず、溶剤接着性に優れており、集積包装のラベル用、特に缶詰集積等の用途に好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、特に、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。さらに詳しくは、集積包装のラベル用、特に缶詰集積のラベル用であって、輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ収縮時の仕上がりもよく、十分な溶剤接着性をもつ熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性プラスチックフィルムは、加熱によって収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベル等の用途に広く用いられている。なかでも、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等の延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
特に、缶詰等の集積包装用収縮フィルムの分野では、従来からポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられているが、近年、ポリ塩化ビニルについては、廃棄時に燃焼する際の塩素ガス発生の問題、ポリスチレンについては、印刷が困難である問題等あり、熱収縮性ポリエステル系フィルムが注目を集めている。
【0004】
ところが、従来のラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて収縮包装した場合では、輸送時の集積体同士の衝撃や集積体を梱包した箱との摩擦等によりキズが生じやすく、さらにフィルム製膜において一方向へ延伸している性質上、フィルムが主収縮方向に大きく裂け、被包装体を保持できず、商品価値を損なう問題がある。特に低温下においては、従来集積包装用に用いられている柔軟で裂けにくいポリ塩化ビニルを使用しても同様にフィルムが裂けるという問題が発生する。
【0005】
これらの問題に対し、フィルム製膜時に主収縮方向と直交する方向にも配向させ、一方向に裂けるのを防ぐ技術が考えられるが、主収縮方向と直交する方向のバランスが悪いと、
収縮のバランスがとれず、収縮装着の際に仕上がりが悪く、また、環境問題から使用が好ましい非塩素系溶剤を用いてフィルムからチューブを作製する際に十分な溶剤接着性が得られないといった問題が発生する。
【0006】
ところで、熱収縮性フィルムを実際の容器の被覆加工に用いる際には、必要に応じて印刷工程に供した後、ラベル(筒状ラベル)、チューブ、袋等の形態に加工して、これらの加工フィルムを容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着装着させている。
【0007】
スチームトンネルは、熱風トンネルよりも伝熱効率が良く、より均一に加熱収縮させることが可能であり、熱風トンネルに比べると良好な収縮仕上がり外観を得ることができるが、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムや、ポリスチレン系フィルムに比べると、スチームトンネルを通過させた後の収縮仕上がり性があまり良くないという問題があった。
【0008】
また、熱収縮の際に温度斑が生じやすい熱風トンネルを使用するとポリエステル系フィルムでは、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み等が発生し易い。特に、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、30℃以上の高温環境下で保存した場合に、収縮白化が起き易く、製品外観上問題となっていた。さらに、熱風トンネルを通過させた後の収縮仕上がり性においても、ポリ塩化ビニル系フィルムや、ポリスチレン系フィルムよりも劣っているという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの問題点を解決し、輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ長期間保存した後でも収縮白化を起こさず、十分な溶剤接着性をもつ熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、上記特性を有する集積用包装ラベル用、特に缶詰集積用の熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
以下に示す振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であり、
温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下であり、
非塩素系有機溶剤で接着可能であるところに要旨を有する。
【0012】
ここでいう振動試験を以下に説明する。
フィルムをチューブ状に接合加工したものを、直径72mm、高さ55mmの食用絞り缶を高さ方向に3缶集積したもの(総重量660g)に被せ、シュリンクトンネルで収縮包装後、該集積体を縦455mm、横230mm、高さ165mmの段ボール箱に縦6列、横3列、計18パックを入れ封をする。次にこの段ボール梱包体を、縦方向に水平に、振動幅50mm、振動速度180往復/分で60分間振動させた後、フィルムの裂け具合を目視にて評価する。
缶の円周上に30mm以上の裂けを生じたものを不良とし、18パック中の不良パック数の割合を横裂け不良発生率(%)と定義する。
【0013】
本発明の好適な実施態様においては、フィルム縦方向の屈折率Nx、及びフィルム横方向の屈折率Nyが下式(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
1.561<Nx<1.566 (1)
0.040<Ny−Nx<0.070 (2)
【0014】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下を特徴とする。
【0015】
本発明のフィルムは、長期間保存後でも収縮白化を起こしにくいことから、収縮前後のヘーズ差を5%以下と定めた。なお、収縮後のヘーズを測定するときの「熱収縮」は、温度25℃の市販の絞り缶(フリスキー社製フリスキー)を高さ方向に3缶集積したものに、熱収縮性フィルムから作製したラベルを被せ、熱風トンネル装置(協和電気社製のユニバーサルシュリンカー型式:K2000)を使用し、風速10m/秒の熱風を15秒あてることにより行った。
【0016】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、ポリエステルを構成する多価アルコール成分のうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が10モル%以上含まれていることが好ましく、さらに、1,4−ブタンジオール成分が2モル%以上含まれていることが好ましい。これらの多価アルコール成分の使用により、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み、タテヒケ等の発生が一層低減し、特に熱風トンネルでの収縮白化の抑制に有効であり、特に収縮仕上がり外観が美麗となる。
【0017】
本発明の好適な実施態様においては、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上であり、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10〜25%であることを特徴とする。
【0018】
この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは集積包装に用いられるのが好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であることが必要であり、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは0%である。横裂け不良発生率が20%を越える場合、実輸送において、フィルムに多数の裂けが発生し、商品価値を損ねるばかりでなく、集積包装用の目的である商品結束が不可となり、好ましくない。
【0020】
さらに、本発明では、フィルム縦方向の屈折率Nx、及びフィルム横方向の屈折率Nyが下式(1)及び(2)を満足することが好ましい。
1.561<Nx<1.566 (1)
0.040<Ny−Nx<0.070 (2)
屈折率Nxのより好ましい範囲は、1.562〜1.565である。また、値(Ny−Nx)のさらに好ましい範囲は、0.050〜0.060である。屈折率Nxの値が1.561未満である場合には、横裂けに対する強度が不足し、1.566を越える場合は、主収縮方向と直交する方向の収縮率が大きくなり、収縮仕上がり性が悪くなり、好ましくない。さらに、値(Ny−Nx)が0.040未満である場合には、フィルム縦方向と横方向のバランスが悪くなり、収縮斑が発生し、0.070を越える場合には、横裂け不良率が悪化し、好ましくない。
【0021】
また、本発明では、収縮白化を起こし難い熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供するものであり、その目安として、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存した後、この保存前(製造直後)のフィルムのヘーズを基準とし、保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズとの差が5%以下であることを要件とした。このヘーズ差が5%を越えるものは、フィルムの透明性が損なわれ、目視判定で白化と認識されるレベルであり好ましくない。また、より長期間保存した場合に収縮白化を起こし易いため、熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては良品とはいえない。従って、本発明では、ヘーズ差を5%以下と定めた。ヘーズ差は小さければ小さいほど好ましく、より好ましいヘーズ差は3%以下、さらに好ましくは1%以下である。なお、収縮後のフィルムのヘーズは12%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0022】
ここで、ヘーズ測定は以下のように行う。まず、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存する。次いで、このフィルムを用い、溶剤接着法、または、ヒートシール法でフィルムの主収縮方向が円周方向となるようにチューブ状ラベルを作成し、このラベルを温度25℃に調整した市販の絞り缶(フリスキー社製フリスキー)を高さ方向に3缶集積したものに被せて、170℃(風速10m/秒)の熱風を15秒あてて熱収縮させる。熱収縮後のラベル(ラベルサンプル数10)からそれぞれフィルム試料を切り出す。これらのフィルム試料について、JIS K 7136に則ってヘーズを測定し、平均値(ヘーズ▲2▼)を求める。また、製造直後(保存前)のフィルム(サンプル数10)についてもJIS K 7136に則って予めヘーズを測定しておき、平均値(ヘーズ▲1▼)を求めておく。ヘーズ差は、収縮後の試料のヘーズ▲2▼から製造直後の試料のヘーズ▲1▼を引いた値である。なお、熱収縮の前に、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存するのは、このような環境で保存すると、熱収縮性フィルムが白化を起こし易くなることが見出されたためである。
【0023】
白化現象のメカニズムは明白なものとなっていないが、熱風トンネルで熱収縮させた場合や、上記のように30℃以上の雰囲気下で長期間保管した後で熱収縮させた場合に、収縮白化現象が起こり易いことがわかっている。また、熱収縮の際に、フィルム内面側(容器に接触する面)と外面側(容器に接触しない面)とで温度差が発生して収縮斑となり、斑部分のフィルム表面が荒れることにより白化として目視で認識されることもある。すなわち、容器接触部のフィルムは動きが拘束されるのに対し、外面側は熱が伝わり易く、しかも容器に接触しない分、動きが拘束されないため、フィルムの内面側と外面側とで収縮が不均一となって、この不均一さが極端になると白化してしまうと考えられる。収縮白化はラベルの透明性を部分的に低下させるため好ましくない。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上であることが好ましい。フィルムの熱収縮率が50%未満であると、フィルムの熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。熱収縮率は高ければ高いほど好ましく、このため、より好ましい熱収縮率は55%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0025】
また、本発明のフィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10〜25%であることが好ましい。熱収縮率が10%未満の場合には、横裂けに対する強度とのバランスがとれず、好ましくない。25%を越えると、容器装着する収縮ラベルの収縮斑や飛び上がり等の発生により、収縮仕上がり性が劣るため、好ましくない。より好ましい熱収縮率は10〜20%である。
【0026】
ここで、主収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、主収縮方向は、正方形の縦方向または横方向(または斜め方向)の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向(または斜め方向)の長さを測定し、下記式
熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
に従って求めた値である。
【0027】
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、1,3−ジオキソランによる溶剤接着性を有することが好ましい。より好ましくは、テトラヒドロフランによる溶剤接着性を有することが好ましい。
【0028】
次に、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの好ましい組成を説明する。フィルムの耐破れ性、強度や耐熱性等の物理的強度に関する特性を保持するためには、ポリエステル系フィルムに結晶性ユニット(エチレンテレフタレートユニット等)が存在していることが必要であるが、結晶性ユニットのみでは熱収縮率が低く、95℃、10秒温水処理で50%という高い収縮率を発現させることが難しい。また、耐溶剤性が高くなりすぎて、収縮フィルムをチューブ状に加工する際に使用する溶剤接着性を得ることが難しい。そのため、本発明では、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含有することで、ポリエステル系フィルムの組成を調整し、熱収縮性と溶剤接着性を高めているのである。
【0029】
1,4−シクロヘキサンジメタノールは、非晶化度合いを高めて、熱収縮性を発現させる作用を有する。また、1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用によって、収縮仕上がり性が向上し、溶剤接着性も向上する。これらの効果を充分に得るには、多価アルコール成分100%のうち、1,4−シクロヘキサンジメタノールを10モル%以上とすることが好ましい。また、収縮白化現象も1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用によって抑制することができ、得られるフィルムは前記したヘーズの要件を満足するものとなる。1,4−シクロヘキサンジメタノールの量は、12モル%以上がより好ましく、14モル%以上がさらに好ましい。ただし、40モル%を超えて使用すると、フィルムの収縮率が必要以上に高くなりすぎて、熱収縮工程でのラベルの位置ずれや図柄の歪みが発生するおそれがある。また、フィルムの耐溶剤性が低下するため、印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下するため好ましくない。従って、1,4−シクロヘキサンジメタノールは37モル%以下がより好ましく、35モル%以下がさらに好ましい。
【0030】
多価アルコール成分として、1,4−ブタンジオールを用いることも本発明のポリエステルにおいて好ましい実施態様である。1,4−ブタンジオールはポリエステルのTgを下げて低温収縮率の発現に寄与するため、得られるフィルムが比較的低温域であっても優れた収縮仕上がり性を発揮するようになる。また、溶剤接着性も優れたものとなる。これらの効果を得るためには、多価アルコール成分中、1,4−ブタンジオールを2モル%以上使用することが好ましい。より好ましい下限は4モル%、さらに好ましい下限は6モル%である。ただし、1,4−ブタンジオール成分が多すぎると、フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等の特性を担うエチレンテレフタレートユニットが少なくなるため、その上限は35モル%とすることが好ましく、より好ましい上限は30モル%である。
【0031】
また、多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコール成分が2モル%以上含まれていてもよい。ネオペンチルグリコールは、ポリエステルのTgを下げる作用を有しているため、低温域で良好な収縮仕上がり性を得ることができる。このため、ネオペンチルグリコールを適量用いることで、低温から高温までの幅広い温度域で熱収縮力を発揮するフィルムが得られる。より好ましいネオペンチルグリコール量は4モル%以上、さらに好ましくは6モル%以上である。なお、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールの合計量は40モル%以下が好ましい。
【0032】
他の多価アルコール成分としては、エチレンテレフタレートユニットを形成するためのエチレングリコールが用いられる。そのほか、ジエチレングリコール、ダイマージオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール等も併用可能である。
【0033】
多価カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成誘導体、又は脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4―もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0034】
また、ポリエステルは、必ずしも前記多価カルボン酸類100モル%および多価アルコール100モル%とから製造する必要はなく、ラクトン類(ε−カプロラクトン等)の開環重合によってポリエステルユニットを形成してもよい。ラクトン類の併用は、非晶化度を高める働きを有する。なお、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分中の各成分の割合(モル%)を算出する場合、ラクトン類の開環成分は、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分のいずれにも該当するものとして計算する。
【0035】
結晶性のエチレンテレフタレートユニットは、耐破れ性の観点から、ポリエステルを構成するユニットとして50モル%以上含まれていることが好ましいため、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコールを50モル%以上、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸(またはそのエステル)を50モル%以上、使用することが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0036】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、多価カルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、多価カルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.50〜1.30dl/gのものが好ましい。
【0037】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルモニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩 を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
【0038】
上記重合触媒以外の金属イオンの総量が生成ポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを越えるとポリエステルの着色が顕著になるのみならず、ポリエステルの耐熱性及び耐加水分解性も著しく低下するため好ましくない。このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、総P量(P)と総金属イオン量(M)との質量比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。質量比(P/M)が0.4未満または1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
【0039】
上記金属イオン及びリン酸およびその誘導体の添加時期は特に限定しないが、一般的には金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子を添加してもよく、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤等を添加することもできる。
【0040】
ポリエステルフィルムは、後述する公知の方法で得ることができるが、熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、複数の成分をフィルム中に含有させる手段としては、共重合を行ってこの共重合ポリエステルを単独使用する方式と、異なる種類のホモポリエステルあるいは共重合ポリエステルをブレンドする方式がある。
【0041】
共重合ポリエステルを単独使用する方式では、上記特定成分の多価アルコール成分と、テレフタル酸および他の多価カルボン酸成分とから得られる共重合ポリエステルを用いればよい。一方、異なる組成のポリエステルをブレンドする方式では、ブレンド比率を変更するだけでフィルムの特性を容易に変更でき、多品種のフィルムの工業生産にも対応できるため、好ましく採用することができる。
【0042】
ブレンド法では、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。例えば、2種類のポリエステルをブレンドする場合は、テレフタル酸を必須的に含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとからなる共重合ポリエステルと、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコール成分がエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルとのブレンド系;ポリエチレンテレフタレート(PET)と、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルとのブレンド系;ポリブチレンテレフタレート(PBT)と、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルとのブレンド系等が挙げられる。もちろん、上記例示以外の多価アルコールを併用してもよく、テレフタル酸以外の多価カルボン酸を併用してもよい。
【0043】
3種の混合系においては、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルと、PETと、PBTとのブレンド系;多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステルと、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルと、PETのブレンド系;多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールとネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステルと、多価カルボン酸成分がテレフタル酸で、多価アルコールがエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルと、PBTのブレンド系等が挙げられる。もちろん、上記例示以外の多価アルコールを併用してもよく、テレフタル酸以外の多価カルボン酸を併用してもよい。なお、4種以上のポリエステルをブレンドしてもよい。
【0044】
具体的なフィルムの製造方法としては、原料ポリエステルチップをホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、又は真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を用いて200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出す。このとき、使用する複数種のポリマーチップの形状を合わせてホッパー内での原料偏析の現象を抑止することが好ましい。ポリエステルチップは、通常、底面を楕円形とする円筒状の形状であるが、楕円状底面の長径、短径および円筒状の高さのそれぞれの平均サイズが、最も使用比率の高い原料種のチップサイズ±15%以内の範囲である異種の原料チップを用いることが好ましく、前記サイズが±10%以内の範囲内であることがより好ましい。
【0045】
また、フィルムを構成するポリマーの組成変動を低減するために、使用する原料チップの削れ等により発生する微粉体の比率を低減することが好ましい。前記微粉体が原料偏析の発生を助長するので、工程内で発生する微粉体を除去して含まれる微粉体の比率を低減することが好ましい。含まれる微粉体の比率は、原料チップが押出し機に入るまでの全工程を通じて1質量%以内に制御することが好ましく、0.5質量%以内に制御することがさらに好ましい。
【0046】
押出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存のどの方法を採用しても構わない。ただし、ホッパー内での原料偏析を低減する手段として、使用するホッパーの容量及び形状を適正化することが好ましい。使用するホッパーの適正な容量としては、2種以上の複数種の原料を混合後より押出し機に原料を供給するまでの工程でのホッパー容量が、(押出し機の1時間当たりの吐出量)×0.05から(押出し機の1時間当たりの吐出量)×1.2までの範囲内にあることが好ましく、(押出し機の1時間当たりの吐出量)×0.1から(押出し機の1時間当たりの吐出量)×1.0までの範囲内がより好ましい。ホッパーの適正な形状としてはホッパー内の原料を排出する際に、マスフロー又はそれに近い状態となるような範囲にホッパー底部の角度を設計したものを使用することが好ましい。前述のポリエステル原料チップを例にとると、ホッパー底部の角度が70度以上であることが好ましく、75度以上であればさらに好ましい。
【0047】
複数種の原料を混合する方法としては、押出し機直上のホッパーにて各原料を連続的に定量供給しつつ混合する方法が最も好ましいが、複数種の原料チップサイズを前述の範囲内に制御したものを混合後、複数の中間ホッパーを通じて押出し機に導くこともできる。複数種の原料を混合する際には、原料チップを連続的に定量供給する装置よりホッパー内に複数種の原料を定量的に供給しつつ混合する方法あるいは、ブレンダー等を使用して事前に混合する方法等があるが、後者の場合には混合後排出時に原料偏析が発生しないよう設備及び原料チップサイズ等に留意することが好ましい。
【0048】
押出し後は、キャスティングロール等を用いて急冷して未延伸フィルムを得る。なお、この「未延伸フィルム」には、フィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれるものとする。この未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。延伸処理は、上記キャスティングロール等による冷却後、連続して行ってもよいし、冷却後、一旦ロール状に巻き取って、その後行ってもよい。
【0049】
主収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、主収縮方向が横方向である場合の製膜法の例を示す。なお、主収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90度変える等、通常の操作に準じて製膜することができる。
【0050】
熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分布を均一化させることに着目すれば、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って実施される予備加熱工程を行うことが好ましく、この予備加熱工程では、熱伝導係数が0.00544J/cm2・sec・℃以下となるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内の所定温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
【0051】
横方向の延伸はTg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍延伸する。しかる後、60℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要により、さらに40℃〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理を行うとよい。
【0052】
延伸工程においては、フィルム表面温度の変動を小さくすることのできる設備を使用することが好ましい。
【0053】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍以下、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施すことができる。該2軸延伸では、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程等においてある定位置において測定されるフィルム表面温度の変動が、本発明のフィルムロールのフィルム巻き長に相当する流れ方向の距離の範囲内において(平均温度)±1℃以内であることが好ましく、(平均温度)±0.5℃以内であればさらに好ましい。延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制し、巾方向のフィルム温度斑を小さくする点に着目すれば、延伸工程の熱伝達係数は0.0037J/cm2・sec・℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.00544〜0.00837J/cm2・sec・℃の条件がよい。
【0054】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用収縮フィルムとして10〜200μmが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0055】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、通常、円周方向が主収縮方向となるように筒状ラベルに加工して用いられる。筒状にするには、フィルムの端部同士を重ねて接着すればよく、接着方法としては、超音波、ヒートシール法、溶剤接着法、いずれも採用可能である。溶剤接着法に用いることのできる溶剤としては、環境に与える影響を配慮すれば、非塩素系有機溶剤が好ましい。前記した好ましい実施態様のフィルムは溶剤接着性に優れているため、毒性の強い非塩素系有機溶剤でなくても、強い接着部を形成する。
【0056】
使用可能な具体的な溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;フェノール等のフェノール類;テトラヒドロフラン等のフラン類;1,3−ジオキソラン等のオキソラン類等の有機溶剤が挙げられ、なかでも、安全性の観点から、テトラヒドロフランや1,3−ジオキソランを使用することが望ましい。
【0057】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0058】
(1)チップまたはフィルム組成
チップまたはフィルムを、クロロホルムD(ユーソリップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーソリップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調整し、NMR(「GEMINI−200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定によるプロトンのピーク強度に基づいて、試料を構成するモノマーの構成比率を算出した。
【0059】
(2)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。最も収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0060】
(3)ヘーズ
保存前(製造直後)のフィルムヘーズ(保存なし)、この保存前のフィルムの熱収縮後のヘーズ、そして、温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存した後、さらに熱収縮させたもののヘーズをJIS K 7136に則って測定した。熱収縮は、フィルムをセンターシールマシンで1,3−ジオキソランを用いて用材接着して主収縮方向が円周方向となるようにチューブを作り、さらに切断してラベルを作製し(折り径122mm、ピッチ170ミリ)、このラベルを、温度25℃の市販の絞り缶(フリスキー社製フリスキー)を高さ方向に3缶集積したものに被せ、熱風トンネル装置(協和電気社製のユニバーサルシュリンカー型式:K2000)を使用し、風速10m/秒の熱風を15秒あてることにより行った。それぞれサンプル数10個の平均値を表に示した。
【0061】
(4)溶剤接着性
(3)と同様にして1,3−ジオキソラン、およびテトラヒドロフランを用いてフィルム(保存なし)をチューブ状に接合加工し、温度23℃、相対湿度65%の環境下に24時間放置した後、チューブを加工時の流れ方向と直行方向に15mm幅に切断してサンプルとし、接合部分を上記方向について、JIS K 6854に準じ、T型剥離試験を行った。試験片数は20とし、試験片長さ60mm、チャック間20mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行った。
【0062】
溶剤接着性を以下の基準に基づいて評価した。
剥離接着強度3N/15mm以上: ○
剥離接着強度1N/15mm以上: △
剥離接着強度1N/15mm未満: ○
【0063】
(5)屈折率
Abbeの屈折計を使用し、フィルム(保存前)の縦、横、厚み方向の屈折率を測定した。
【0064】
(6)収縮仕上がり性
(3)と同様にして収縮仕上げを行い、仕上がり性を以下の基準に基づいて評価した。
○:外観欠点がないもの
×:シワ、収縮不足、飛び上がりがあるもの
【0065】
(7)振動試験
(3)と同様にしてフィルムをチューブ状に接合加工したものを、直径72mm、高さ55mmの食用絞り缶を高さ方向に3缶集積したもの(総重量660g)に被せ、シュリンクトンネルで収縮包装後、該集積体を縦455mm、横230mm、高さ165mmの段ボール箱に縦6列、横3列、計18パックを入れ封をした。次にこの段ボール梱包体を、縦方向に水平に、振動幅50mm、振動速度180往復/分で60分間振動させた後、フィルムの裂け具合を目視にて評価した。缶の円周上に30mm以上の裂けを生じたものを不良とし、18パック中の不良パック数の割合を横裂け不良発生率(%)とした。
【0066】
(8)実輸送試験
前記「振動試験」の項に記載の段ボール梱包体を3ケース陸送し、54パック中の不良パック数の割合を不良率(%)と定義し、不良率20%以下を「○」、20%を越える場合を「×」とした。
【0067】
(ポリエステルの合成)
(合成例1)
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブにジカルボン酸成分として、ジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分として、エチレングリコール(EG)100モル%を多価アルコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。280℃で26.7Paの減圧条件の下で重縮合反応を行い、続いてチップ化した。
固有粘度0.75dl/gのポリエステルAを得た。得られたチップの組成を表1に示した。
【0068】
(合成例2〜4)
合成例1と同様な方法により、表1に示すポリエステル(B)〜(D)を得た。なお、表中、CHDMが1,4−シクロヘキサンジメタノール、NPGがネオペンチルグリコール、BDが1,4−ブタンジオールである。それぞれのポリエステルの固有粘度は、(B):0.72dl/g、(C):0.80dl/g、(D):1.20dl/gであった。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例1)
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表1に示したように、チップAを6質量%、チップBを14質量%、チップCを60質量%、チップDを20質量%の割合で押出し機直上のホッパーに定量スクリューフィーダーをにてそれぞれ連続的に別供給しつつホッパー内で混合し、280℃で単軸式押出し機にて溶融押出しし、その後急冷して、厚さ185μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度80℃)で、1.2倍延伸した後、テンターでフィルム温度74℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで85℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ41μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0071】
(実施例2)
表1に示したように、チップAを6質量%、チップBを37質量%、チップCを37質量%、チップDを20質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度79℃)で、1.2倍延伸した後、テンターでフィルム温度73℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで85℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0072】
(比較例1)
表1に示したように、チップAを6質量%、チップBを60質量%、チップCを14質量%、チップDを20質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ175μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度79℃)で1.2倍延伸した後、テンターでフィルム温度72℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで82℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ42μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0073】
(比較例2)
表1に示したように、チップAを35質量%、チップBを55質量%、チップDを10質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ190μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、多連ロール式縦型延伸機(ロール温度80℃)で、1.5倍延伸した後、テンターでフィルム温度77℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで84℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0074】
(比較例3)
表1に示したように、チップAを35質量%、チップBを55質量%、チップDを10質量%用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ175μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、テンターでフィルム温度74℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで83℃にて14秒間熱処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、輸送時、特に低温下での耐衝撃性に優れ、かつ長期間保存した後でも収縮白化を起こさず、溶剤接着性に優れており、集積包装のラベル用、特に缶詰集積等の用途に好適に用いることができる。
Claims (6)
- 熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、
以下(a)に示す振動試験において、横裂け不良発生率が20%以下であり、
温度30℃、相対湿度85%の環境下で熱収縮性ポリエステル系フィルムを4週間保存し、この保存後のフィルムを所定条件で熱収縮させた後のフィルムのヘーズと、保存前のフィルムのヘーズとの差が5%以下であり、非塩素系有機溶剤で接着可能であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(a)フィルムをチューブ状に接合加工したものを、直径72mm、高さ55mmの食用絞り缶を高さ方向に3缶集積したもの(総重量660g)に被せ、シュリンクトンネルで収縮包装後、該集積体を縦455mm、横230mm、高さ165mmの段ボール箱に縦6列、横3列、計18パックを入れ封をする。次にこの段ボール梱包体を、縦方向に水平に、振動幅50mm、振動速度180往復/分で60分間振動させた後、フィルムの裂け具合を目視にて評価する。缶の円周上に30mm以上の裂けを生じたものを不良とし、18パック中の不良パック数の割合を横裂け不良発生率(%)と定義する。 - 請求項1に記載の熱収縮性ポリエステルフィルムであって、フィルム縦方向の屈折率Nx、及びフィルム横方向の屈折率Nyが下式(1)及び(2)を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステルフィルム。
1.561<Nx<1.566 (1)
0.040<Ny−Nx<0.070 (2) - 請求項1に記載の熱収縮性ポリエステルフィルムであって、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を95℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上であり、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10〜25%であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 請求項1に記載の熱収縮性ポリエステルフィルムであって、熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成する多価アルコール成分100モル%のうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が10モル%以上含まれていることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 請求項4に記載の熱収縮性ポリエステルフィルムであって、上記多価アルコール成分には、さらに、1,4−ブタンジオール成分が2モル%以上含まれていることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、集積包装に用いられることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
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- 2003-07-23 JP JP2003200362A patent/JP2005041919A/ja active Pending
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