JP2005041838A - バイオフィルム除去剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 バイオフィルムの抑制率及び破壊率を向上すること。
【解決手段】 歯周病の原因菌により形成されるバイオフィルムを除去するマクロライド系抗生物質を含有するバイオフィルム除去剤において、前記マクロライド系抗生物質が15員環のアジスロマイシン類であるバイオフィルム除去剤。
【選択図】 図1

Description

本発明は、歯周病性菌により作られたバイオフィルムを破壊し、薬効剤の浸透を促進するバイオフィルム除去剤に属する。
歯周病は、歯周病性菌から出される酵素、毒性物質及びそれにともなって歯周組織側で起こる炎症反応との相互作用の中で結合組織である歯根膜の破壊及び歯槽骨の吸収が進行する疾患と考えられている。
歯周病の病態は、最初、歯肉の炎症が観察され、歯肉に歯周ポケットが形成されていく。その後、歯槽骨の吸収が進行し、歯牙の脱落が起こるという経緯をたどる。
歯周病では、まずプラークが形成され、このプラークの形成にともなって起こる歯周病原因菌の定着化が問題である。
プラークは、グラム陽性菌により歯肉縁上に形成され蓄積していく。その蓄積の過程においてプラークの下層部においては酸素が消費され無酸素状態となり、歯周病原因菌と位置づけられているグラム陰性菌(Phorphyromonas gingivalis)が増殖するのに都合のよい環境が形成されていく。
歯肉縁下では歯周病原因菌が集合体を作り、組織破壊が起こり病態の悪化が進む事となる。この様に、歯肉縁下ではグラム陰性菌を主体に歯肉縁上のグラム陽性菌と、グラム陰性菌同士で複雑な細菌の集団が形成されている。グラム陰性菌の中には粘性物質を分泌していると考えられる菌も有り、その増殖の過程で粘性物質が層状となったバイオフィルム(Biofilm)の集合体を形成していくと考えられる。
バイオフィルム感染症の臨床的な共通点は、難治性であるといわれている。口腔内では、歯周ポケット内でバイオフィルムから放出された歯周組織に病原性を示す浮遊細菌の集合体が歯周組織に付着し、歯周組織に侵入し障害を与える。大量のバイオフィルムが蓄積され、歯周組織の抵抗性が弱まったときには、歯周病の発症や進行に関与する。
歯肉縁下にみられるバイオフィルムについては、歯科医院で物理的な処置によって除去する他に、歯周病原因菌の除去を薬物によって行っている。
歯肉縁下のプラークはバイオフィルムを形成しており、薬剤が到達しにくくなっている。したがって、バイオフィルムへ薬剤を作用させるためには、高濃度の薬剤を一定期間歯周ポケット内に滞留する必要がある。
歯周病の治療における薬物療法では、局所に投与した薬剤の動態を制御して行う薬物局所配送療法(LDDS;Local Drug Delivery System)が効果的な方法である。
歯周病の治療におけるLDDSは、歯周ポケット内に直接投与した薬剤を徐々に放出させることにより有効濃度を維持し、歯周ポケット内の歯周病原因菌を制御しようとするものである。
LDDSの利点は、全身に対する副作用が少ない状態で、全身投与では得られないような、はるかに高濃度の薬剤が一定期間維持されることである。
歯周組織で起こる炎症の原因菌であるテトラサイクリン(Tetracyicline)耐性のスタフィロコカシ(Sraphylococci)を除去するための薬剤としては、テトラサイクリン系の塩酸ミノサイクリン(Minocycline)が知られている。ミノサイクリンは、バイオフィルムから放出された浮遊菌に対して、抗菌活性を示す。
また、歯周ポケット内に形成されるバイオフィルムを破壊するための薬剤としては、マクロライド(Macrolide)系抗生物質が知られている。マクロライド系抗生物質は、バイオフィルムの形成を予防するためにも有効である。
マクロライド系抗生物質としては、ラクトン環を構成する原子の数により14員環〜16員環のものがあり、エリスロマイシン類、16員環マクロライドのジョサマイシン類、クラリスロマイシン類などがある。これらの中でも特に、14員環マクロライド系抗生物質は、バイオフィルムの形成を予防することや除去するのに有用であることが知られている。
特開平11−292767号公報(第1−3頁) 特開平7−267868号公報(第1−3頁)
テトラサイクリン系の塩酸ミノサイクリンは、歯周ポケット内でバイオフィルムから放出された浮遊菌に対してのみ抗菌効果を期待するものである。しかし、バイオフィルムは、ミノサイクリンに対して抵抗性を示す。
また、マクロライド系抗生物質はバイオフィルムに対して、ある程度の抑制率や破壊率を期待できるが、さらに高い抑制率や高い破壊率もって長期に安全に投薬できる薬剤が臨まれている。
それ故に、本発明の課題は、バイオフィルムの形成を高い抑制率で抑制でき、さらにバイオフィルムの除去を高い破壊率をもって長期に安全に投薬できるバイオフィルム除去剤を提供することにある。
本発明によれば、歯周病原因菌により形成されるバイオフィルムを除去するマクロライド系抗生物質を含有するバイオフィルム除去剤において、前記マクロライド系抗生物質が15員環のアジスロマイシン類であることを特徴とするバイオフィルム破壊剤が得られる。
本願発明に採用したアジスロマイシンは、歯周病原因菌がつくるバイオフィルムの形成を抑制する抑制率やバイオフィルムを破壊する破壊率が高いので、種々の薬効剤を直接に患部へ浸透、作用させることができる。
また、本願発明によれば、アジスロマイシンがバイオバイオフィルムを抑制・破壊し、有効に薬剤を患部に浸透・作用させることができるので、有効なセルフケアの手段として使用する事が出来る。
本発明に係るバイオフィルム除去剤は、マクロライド系抗生物質を含有しているものであり、マクロライド系抗生物質が15員環のアジスロマイシン類である。
以下に、本発明に係るバイオフィルム除去剤の1実施例を説明する。
バイオフィルム破壊剤は、歯周病原因菌により形成されるバイオフィルムを破壊するマクロライド系抗生物質を含有している。このマクロライド系抗生物質は、15員環のアジスロマイシン(Azithromycin)類である。
試験例1
ガラス容器内には、歯周病原因菌を投入して24時間放置した後、歯周病原因菌によってバイオフィルムを形成した。そして、ガラス容器内には、蒸留水100ml中に薬剤としてのアジスロマイシンを1mgを含有するバイオフィルム除去剤の溶液を投入した。そして、24時間放置した後、歯周病原因菌によって形成されたバイオフィルムの破壊率を検証した。
また、本発明のアジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤によるバイオフィルム破壊率を比較するために、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンのそれぞれについて、ガラス容器内に蒸留水とともに投入した溶液を24時間放置した後、歯周病原因菌によって形成されたバイオフィルム破壊率を検証した。
なお、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、蒸留水における各量は、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤と同じ量として比較した。
図1は、アジスロマイシン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンにおけるバイオフィルムの破壊率(グラム陰性菌の破壊率)を示している。なお、図1におけるバイオフィルム破壊率の比較では、歯周病原因菌、蒸留水のみの溶液に収容されたバイオフィルムを100%とした場合のアジスロマイシン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンによるバイオフィルム破壊率を示した。
図1によって明らかなように、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤によるバイオフィルム破壊率は約60%の破壊率を示した。ミノサイクリンによるバイオフィルム破壊率は約10%であった。エリスロマイシンによるバイオフィルム破壊率は約35%であった。ジョサマイシンによるバイオフィルム破壊率は約25%であった。
したがって、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤によるバイオフィルム破壊率は、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンのバイオフィルム破壊率よりも高い破壊率を示すことが検証された。
試験例2
ガラス容器内には、歯周病原因菌とともに、蒸留水100ml中に薬剤としてのアジスロマイシンを1mgを含有するバイオフィルム除去剤の溶液を投入した。そして、24時間放置した後、歯周病原因菌によって形成されるバイオフィルムの抑制率を検証した。
また、本発明のアジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤によるバイオフィルム抑制率を比較するために、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンのそれぞれについて、ガラス容器内に歯周病原因菌、蒸留水とともに投入した溶液を24時間放置した後、歯周病原因菌によって形成されるバイオフィルム抑制率を検証した。
なお、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、蒸留水における量は、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤と同じ量として比較した。
図2は、アジスロマイシン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンにおけるバイオフィルムの形成を抑制する抑制率(グラム陰性菌の付着率)を示している。なお、図2におけるバイオフィルム抑制率の比較では、歯周病原因菌および蒸留水のみにより形成されたバイオフィルムを100%とした場合のアジスロマイシン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンによるバイオフィルム抑制率を示した。
図2によって明らかなように、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤による抑制率は約45%のバイオフィルム形成抑制率を示した。ミノサイクリンによるバイオフィルム抑制率は約23%であった。エリスロマイシンによるバイオフィルム抑制率は約40%であった。ジョサマイシンによるバイオフィルム抑制率は約35%であった。
したがって、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤によるバイオフィルム抑制率は、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンのバイオフィルム抑制率よりも高い抑制率を示すことが検証された。
図1及び図2によって検証したように、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンよりも、アジスロマイシンによるバイオフィルム抑制率・破壊率のいずれもが顕著な効果をもたらすものであり、バイオフィルムに対してアジスロマイシンが他の薬剤に比べ、バイオフィルムの破壊・抑制に優れた作用を有することが判明した。
アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤は、組織移行性、特に、感染組織への移行が優れている。さらに、アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤は、血清中濃度半減期及び組織内濃度半減期が60〜80時間と長いため1日1回3日の間の投与で十分な臨床効果が得られる。
アジスロマイシンは、グラム陰性菌に対する抗菌力に優れており、耐誘導性については14員環のマクロライド系抗生物質と同様である。また、胃酸に対しては14員環のマクロライド系抗生物質に比べてかなり安定している。消化器系副作用については、14員環のマクロライド系抗生物質と同程度ある。肝代謝酵素の活性化は14員環のマクロライド系抗生物質に比較して極めて少ない。
アジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤の投与方法としては、例えば歯周ポケット内に直接投与して徐々に放出させるように、軟膏剤やフィルムに含有させてもよい。また、投与の方法としては、洗口剤のように液剤の中に含有させてもよい。
これらのマクロライド系抗生物質の投与量は、その投与形態や疾病の程度によっても異なるが0.5〜10mg/日程度が好ましく、1〜5mg/日がより好ましい。これらの投与量は一般的な殺菌を目的とした投与量よりも低濃度であり、副作用等の安全性面でも何等問題はない。
本発明のバイオフィルム除去剤を液状の洗口剤として用いるには、アジスロマイシン5重量%、エタノール65重量%、精製水30重量%として、アジスロマイシンをエタノールに溶解し、精製水を加えることによって得られる。
本発明のバイオフィルム除去剤を液状の軟膏として用いるには、アジスロマイシン2重量%、ヒドロキシエチルセルロース3重量%、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーRS2重量%、トリアセチン10重量%、濃グリセリン83重量%とし、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロースを練合し、非水ゲルを作成する。そこにアジスロマイシン、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーRS、トリアセチンを加え、所望の徐放性を有した軟膏を得る。歯周ポケット内に投与できるよう改良されたシリンジに充填し、患部ポケット内に注入し使用する。
本発明のバイオフイル除去剤を液状のフィルムとして用いるには、アジスロマイシン2重量%、カルボキシビニルポリマー20重量%、ポリビニル酢酸50重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 30重量%、クエン酸ナトリウム1.5重量%、ポリビニル酢酸 100重量%、薬物層としてカルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニル酢酸を水に膨潤させストックゲルとする。これらを適量取りエタノールに溶解させたアジスロマイシンを加えて混合する。
得られたゲルを伸展、乾燥した後(75℃、10分)、切断する。これとは別に支持層としてポリビニル酢酸のメタノール溶液を剥離紙上に伸展し、乾燥した後(75℃,8分)、切断する。薬物層と支持層をアイロンで熱圧着し(110℃、30秒)、適当なサイズに切断し所望のフィルムを得る。
本発明に係るバイオフィルム除去剤は、液状の洗口剤を口腔内に注入して使用する。また、軟膏は歯周ポケット内に投与できるようにシリンジに充填し、患部ポケット内に注入し使用する。フィルムは、歯肉に貼付するか、患者の歯周ポケット内に挿入して使用する。
本発明に係るアジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンにおけるバイオフィルムの除去率の比較を示すグラフである。 本発明に係るアジスロマイシンを含有するバイオフィルム除去剤、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ジョサマイシンにおいてバイオフィルムの形成を抑制する抑制率の比較を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 歯周病原因菌により形成されるバイオフィルムを破壊するために用いるマクロライド系抗生物質を含有するバイオフィルム除去剤において、前記マクロライド系抗生物質が15員環のアジスロマイシン類であることを特徴とするバイオフィルム除去剤。
  2. 請求項1記載のバイオフィルム除去剤において、エタノール及び精製水を含むことを特徴とするバイオフィルム除去剤。
  3. 請求項1記載のバイオフィルム除去剤において、ヒドロキシエチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーRS、トリアセチン、グリセリンを含むことを特徴とするバイオフィルム除去剤。
  4. 請求項1記載のバイオフィルム除去剤において、カルボキシビニルポリマー、ポリビニル酢酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸ナトリウムを含むことを特徴とするバイオフィルム除去剤。

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