JP2005041828A - 新規セラミド誘導体とその制がん剤などへの利用 - Google Patents

新規セラミド誘導体とその制がん剤などへの利用 Download PDF

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Abstract

【課題】溶解性および膜透過性を改善した新規セラミド誘導体を提供すること。また、こうして得られたセラミド誘導体を用いて副作用の少ない新規な制がん剤を提供すること。
【解決手段】下記の式(1)〜(4)により表される新規セラミド誘導体。特に、式(1)・(2)のN-ラクチルスフィンゴシンは、がん細胞に対する高い細胞死誘導活性を示し、制がん剤として有用である。また、種々のがん細胞株に対し有効濃度が低く、作用機作がユニークである可能性が示された。

【選択図】なし

Description

本発明は、新規セラミド誘導体(より詳しくは、N-ラクチルスフィンゴシンおよびN-ラクチルジヒドロスフィンゴシン)と、これらの物質を有効成分とする制がん剤などに関するものである。
現在、様々な低分子化合物が制がん剤(抗がん剤)として用いられているが、癌治療薬として使用する際には副作用の問題が避けられず、「生体により優しい」制がん剤の開発が望まれている。
セラミド(N-アシルスフィンゴシン)は細胞膜の構成成分として生体に豊富に存在する脂質であり、皮膚の保湿剤として化粧品の成分としても使われており、生体に対する毒性は非常に低いと考えられる。天然型セラミドの構造は以下に示すとおりであり、炭素数16〜24のアシル鎖長が一般的である。
最近の研究から、セラミドを細胞内に導入するといくつかのがん細胞において細胞死(アポトーシス)を誘導することが明らかにされ、現在セラミドは、スフィンゴ脂質シグナル伝達、特にアポトーシスにおけるセカンドメッセンジャーとして重要な分子と考えられている。他方、4,5-トランス二重結合を欠いたジヒドロセラミドは生理的に不活性であり、このようなアポトーシス誘導活性を持たない。
セラミドは、抗Fas抗体、腫瘍壊死因子α(TNF-α)のような様々な細胞外作用薬や電離放射線のようなストレスなどに応答し、中性もしくは酸性スフィンゴミエリナーゼが関与するスフィンゴミエリンサイクルと呼ばれる経路を介して生成し、細胞をアポトーシスへと誘導する。また、N-アセチル-D-erythro-スフィンゴシン(C2-Cer)やN-オクタノイル-D-erythro-スフィンゴシン(C8-Cer)のようなアシル基を短くして細胞膜透過性を高めた短鎖セラミドを細胞外から与えてもアポトーシスを誘導することが報告されている(後記の非特許文献1参照)。
最近、本発明者は、生理活性をもつ新しいジヒドロセラミドであるシンビオラミド、およびその構造異性体の合成とそれらの抗白血病活性について報告した(後記の非特許文献3参照)。シンビオラミドは、ジヒドロセラミド型でありながらマウス白血病由来L-1210細胞に対してかなりの抗白血病活性を示したが、ヒト白血病由来HL-60細胞に対しては不活性であった。以下に、シンビオラミド(Symbioramide)の化学構造をセラミド(Ceramide)およびジヒドロセラミド(Dihydroceramide)のそれと比較して示す。
Karasavvas, N.; Erukulla, R. K.; Bittman, R.; Lockshin, R, Stereospecific Induction of Apoptosis in U937 Cells by N-octanoyl-sphingosine Stereoisomers and N-octyl-sphingosine. The Ceramide Amide Group is not Required for Apoptosis, Eur. J. Biochem., 1996, 236, 729-737. Azuma, H.; Tamagaki, S; Ogino, K. Stereospecific Total Syntheses of Sphingosine and its Analogs from L-Serine, J. Org. Chem., 2000, 65, 3538-3541. Azuma, H.; Takao, R.; Niiro, H.; Shikata, K.; Tamagaki, S.; Tachibana, T.; Ogino, K. Total Syntheses of Symbioramide Derivatives from L-Serine and Their Antileukemic Activities, J. Org. Chem., 2003, 68, 2790-2797.
セラミドの化学構造が生理活性に重要なことは広く知られているが、構造-活性相関の研究の多くはスフィンゴイド塩基の構造に対してであり、N-アシル基については殆ど研究がなされていない。上記シンビオラミドはユニークなN-アシル鎖をもつことから、本発明者はアシル鎖の構造もセラミドの生理活性に重要なのではないかと推測した。
また、天然型セラミドは、前述のようにアポトーシス誘導効果を示すものの、その高い疎水性のため、溶解性および細胞膜透過性が非常に低く、そのままでは制がん剤として用いることが困難であった。
そこで、本発明は、毒性の低いセラミドの新たな誘導体を設計するに際し特にそのN-アシル基の改良に留意しつつ、その溶解性および膜透過性を改善した新規セラミド誘導体を提供することをその課題とする。また、本発明は、このようにして得られた新規セラミド誘導体の医療上および産業上の用途を提供すること、とりわけ副作用の少ない「生体により優しい」制がん剤を提供することをその課題とする。
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意研究を進めた結果、(1)N-(S)-乳酸、N-(R)-乳酸をそれぞれアシル基にもつ2つの短鎖セラミド(N-ラクチルスフィンゴシン)、およびこれらのジヒドロ体を合成し、各々の活性について検討したところ、これら新規セラミド誘導体のいずれにもヒト白血病由来培養がん細胞に対する細胞死誘導活性が認められ、特に二重結合をもつ前者2つの短鎖セラミドは高い活性を示したこと、(2)DNAの断片化が観察されたことから、これら新規セラミド誘導体によって誘導される細胞死はアポトーシスと考えられること、さらに、(3)計39種類のヒト培養がん細胞に対する薬剤感受性試験を行ったところ、有効濃度が十分に低く、また、各がん細胞に対する感受性パターンが既存のどの抗がん剤とも類似しないため、がん細胞に対して新規作用機作を持つ可能性があること、等を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、医療上および産業上有用な発明として、下記A)〜G)の発明を包含するものである。
A) 下記の式(1)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
B) 下記の式(2)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
C) 下記の式(3)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
D) 下記の式(4)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
E) 上記A)〜D)の何れかに記載の化合物を有効成分とする制がん剤。
F) 上記A)〜D)の何れかに記載の化合物を有効成分とする医薬用組成物。
G) 上記A)〜D)の何れかに記載の化合物を含有する食用組成物。
本発明の新規セラミド誘導体を制がん剤に使用した場合、(1)天然型のセラミドに比べて溶解性および膜透過性が優れており、低濃度で用いることができる、(2)生体膜構成成分であるセラミドの誘導体であるため、副作用の少ない「生体により優しい」制がん剤を提供できる、(3)肺がん、胃がん、大腸がん、卵巣がん、乳がん、脳腫瘍、白血病など各種ガンに対する治療薬としてガン治療一般に広く利用できる、等の効果が期待できる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明者は、前述のように、N-(S)-乳酸(L-乳酸)、N-(R)-乳酸(D-乳酸)をそれぞれアシル基にもつ2つの短鎖セラミド(N-ラクチルスフィンゴシン)、およびこれらのジヒドロ体(N-ラクチルジヒドロスフィンゴシン)を合成した。換言すれば、天然型セラミドおよびそのジヒドロセラミドにおいて、それぞれアミド結合している長鎖脂肪酸の代わりに親水性が高い乳酸基を導入した4種類の短鎖セラミド類縁体を合成した。これら4種類の新規化合物の構造は以下に示すとおりである。
上記式(1)の化合物は天然型セラミドの脂肪酸部位に(S)-乳酸(L-乳酸)を有し、上記式(2)の化合物は同部位に(R)-乳酸(D-乳酸)を有する。また、上記式(3)の化合物はジヒドロセラミドの脂肪酸部位に(S)-乳酸(L-乳酸)を有し、上記式(4)の化合物は同部位に(R)-乳酸(D-乳酸)を有する。そこで以下では便宜上、これら式(1)〜(4)の化合物をそれぞれ、「(S)-Lac-Cer」、「(R)-Lac-Cer」、「(S)-Lac-DHCer」、「(R)-Lac-DHCer」と称する。
上記4種類の新規化合物について、ヒト白血病由来培養がん細胞(HL-60)に対する細胞死誘導活性(換言すれば、抗白血病活性・がん細胞増殖抑制効果)をMTTアッセイにより測定した。その結果、4種類の化合物のいずれにもその活性が認められた(図2参照)。特に、(S)-Lac-Cer、(R)-Lac-CerはN-アセチルスフィンゴシン(C2-セラミド)よりも高い細胞死誘導活性を示し、アミノ基に天然型のL-乳酸を導入した(S)-Lac-Cerは最も強い活性を示した。なお、実験方法など詳細は後述の実施例において説明する。
また、上記4種類の化合物で処理したHL-60細胞ではDNAの断片化が観察されたことから(図3参照)、これら新規セラミド誘導体によって誘導される細胞死はアポトーシスと考えられる。
さらに、HL-60細胞に対して最も細胞死誘導活性が高かった(S)-Lac-Cerについて、肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系、メラノーマ1系の計39種類のヒト培養がん細胞に対する薬剤感受性試験を行った。その結果、(S)-Lac-Cerの有効濃度は十分低かった。また、各がん細胞株に対する感受性パターン(Finger Print)が既存のどの抗がん剤とも類似しないため、がん細胞に対して新規作用機作を持つ可能性が認められた(図4〜図6参照。詳細は後述する)。
このように、本発明者が今回合成した新規セラミド誘導体は、がん細胞に対する細胞死誘導活性を示し、特に(S)-Lac-Cer、(R)-Lac-Cerは高い活性を示したことから、本発明の新規セラミド誘導体(およびその薬理上許容される塩)は、制がん剤(抗がん剤)として医薬品への利用が可能である。なお、医薬品への利用には、本発明の新規セラミド誘導体を医薬品開発過程におけるリード化合物として利用することも含まれる。また、「薬理上許容される塩」の塩としては、フッ化水素酸塩、塩酸塩などのハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、スルホン酸塩、有機酸塩、および、アミノ酸塩を例示することができる。
本発明の新規セラミド誘導体のうち、(S)-Lac-Cerは、肺がん、胃がん、大腸がん、卵巣がん、乳がん、脳腫瘍など各種ガンの抑制効果について広く有効性が認められた。したがって、本発明の新規セラミド誘導体は、各種ガンに対する治療薬としてガン治療一般に広く利用できる可能性がある。また、生体由来物質の誘導体であるため、副作用も少ないと考えられる。
本発明の新規セラミド誘導体の医療上および産業上の用途は、上記制がん剤(抗がん剤)としての用途に限定されるものではない。本発明の新規セラミド誘導体は、例えば、試験研究用の試薬として、化粧品の原材料として、あるいは、がん予防(改善)効果をもった機能性食品(食用組成物)の原材料として使用可能である。また、アポトーシス誘導剤として、制がん剤以外の医薬品(医薬用組成物)にも利用できる可能性がある。さらに、体内にセラミドの蓄積する遺伝病としてファーバー病が知られている。本発明の新規セラミド誘導体は、このファーバー病の診断法・治療法の開発に利用できる可能性がある。
本発明の新規セラミド誘導体を制がん剤などの医薬品(医薬用組成物)に用いる場合の一例について説明する。本発明の新規セラミド誘導体は、これをそのまま、あるいは慣用の医薬製剤担体とともに医薬用組成物となし、ヒト(または動物)に投与することができる。医薬用組成物の剤形としては特に制限されるものではなく必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤、塗布剤等の非経口剤が挙げられる。
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤は、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。これらの製剤中の本セラミド誘導体の配合量は特に限定されるものではなく適宜設定できる。この種の製剤には、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を適宜に使用することができる。
非経口剤の場合、患者の年齢、体重、疾患の程度などに応じて用量を調節し、例えば、静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射などによって投与する。この非経口剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水等を用いることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥処理により水分を除き、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。さらに必要に応じて、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤を加えてもよい。これら製剤中の本セラミド誘導体の配合量は特に限定されるものではなく任意に設定できる。その他の非経口剤の例として、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、これらも常法に従って製造される。
なお、公知のDDSを利用し、例えば、本セラミド誘導体をリポソームなどの運搬体に封入して体内投与してもよい。このときガン細胞を特異的に認識する運搬体などを利用すれば、標的部位(病変部位)に本セラミド誘導体を効率よく運ぶことができ効果的である。
本発明のセラミド誘導体を食品(食用組成物)に用いる場合は、各種飲料や各種加工食品の原材料として本セラミド誘導体を飲食品に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦形剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や保健食品等として利用できる。
本発明のセラミド誘導体の合成方法(製造方法)については、後述の実施例において詳しく説明するが、本発明のセラミド誘導体はこの製造方法に限定されるものではなく、例えば、この製造方法に適宜改変・改良を加えてもよいし、さらに別工程を付加してもよい。
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
〔実施例1:N-ラクチルスフィンゴシンおよびN-ラクチルジヒドロスフィンゴシンの合成〕
N-ラクチルスフィンゴシン(下記(1),(2)の(S)-Lac-Cerと(R)-Lac-Cer)およびN-ラクチルジヒドロスフィンゴシン(下記(3),(4)の(S)-Lac-DHCerと(R)-Lac-DHCer)の計4種類のセラミド誘導体を次のようにして合成した。
図1は、上記4種類のセラミド誘導体の合成方法を説明する図である。
出発物質1は、前記の非特許文献2に記載の方法で合成した。出発物質1から化合物2(ジヒドロスフィンゴシンアセトニド)の合成は、前記の非特許文献3に記載の方法で調製した。化合物5(スフィンゴシンアセトニド)の合成も同様の合成方法で行った。但し、出発物質3は本発明者が用いた合成方法ではシス型が若干含まれるため、まず化合物5のイソプロピリデン部分を脱保護し、再結晶で精製して化合物4(N-Boc-D-erythro-スフィンゴシン)を得た。詳細には、非特許文献2に記載の方法で調製した出発物質3(3.85 g, 8.76 mmol)をメタノール(20 mL)に溶解し、p-トルエンスルホン酸一水和物(230 mg, 1.34 mmol, 東京化成)を加え室温で2時間撹拌した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム : メタノール = 20 : 1)で精製し、得られた粗結晶をヘキサン-酢酸エチルより再結晶した(3 g, 7.51 mmol, 86%)。
上記方法により得られた化合物4を脱保護し、生じたスフィンゴシンのジオール基を保護して化合物5を得た(出発物質3からの収率65%)。詳細には、化合物4(1.68 g, 4.2 mmol)をトリフルオロ酢酸 : 水 = 20 : 1の混合溶媒(20 mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。溶媒を濃縮し、飽和NaHCO3水溶液でアルカリ性にしてクロロホルムで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮後、ベンゼン(20 mL)に溶解し、2,2-ジメトキシプロパン(16 mL, 和光)、ピリジニウム p-トルエンスルホナート(1.06 g, 4.2 mmol, 東京化成)を加え、一晩還流した。反応液を冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。最後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 3)で化合物5を精製した(1.07 g, 3.15 mmol, 75%)。
4種類のセラミド誘導体のうち、最初に、天然に存在し安価な(S)-乳酸をN-アシル基にもつ(S)-Lac-DHCerおよび(S)-Lac-Cerの合成を行った。(S)-Lac-DHCerについては、化合物2から化合物7を経て合成した。化合物2から化合物7への合成は次のように行った。O-アセチル-L-乳酸(60 mg, 0.457 mmol, 東京化成)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(94 mg, 0.457 mmol, 東京化成)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(62 mg, 0.457 mmol, 東京化成)を乾燥ジクロロメタン(10 mL)に溶解した。化合物2(130 mg, 0.381 mmol)を乾燥ジクロロメタン(2 mL)に溶解したものを滴下し、室温で一晩撹拌した。沈殿を濾別した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)で化合物7を精製した(90 mg, 0.198 mmol, 52%)。
(S)-Lac-Cerについては、化合物5から化合物8を経て合成した。化合物5から化合物8への合成は上記と同様の方法を用い、O-アセチル-L-乳酸と化合物5(310mg, 0.91mmol)をDCCおよびHOBtを用いて縮合させ、56%の収率で化合物8を得た(230 mg, 0.51 mmol)。
化合物7から(S)-Lac-DHCerへの合成は次のように行った。化合物7(70 mg, 0.154 mmol)をメタノール : 水 = 4 : 1の混合溶媒(5 mL)に溶解し、無水炭酸カリウム(32 mg, 1.5 eq, 和光)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、水で希釈し、クロロホルムで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を濃縮した後、ジクロロメタン : メタノール = 1 : 1の混合溶媒(5 mL)に溶解し、p-トルエンスルホン酸一水和物(5 mg, 0.03 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)で精製し、得られた粗結晶をヘキサン-酢酸エチルより再結晶し、(S)-Lac-DHCerを得た(38 mg, 0.102 mmol, 67%)。
化合物8から(S)-Lac-Cerへの合成についても上記と同様の方法で行い、化合物8(200 mg, 0.441 mmol)のアセチル基を加水分解した後、アセトニド保護を脱保護して(S)-Lac-Cerを合成した(100 mg, 0.269 mmol, 61%)。
(R)-乳酸は非常に高価なため、(R)-Lac-Cerおよび(R)-Lac-DHCerの合成には比較的安価な(R)-乳酸メチルエステルを用いた。このエステルの二級水酸基をジイソプロピルエチルアミン存在下でメトキシメチルクロリド(MOMCl)を用いて保護した後、メチルエステルを加水分解し、化合物6を62%の収率で得た。詳細には、(R)-乳酸メチルエステル(5 g, 48 mmol, 東京化成)を乾燥ジクロロメタン(20 mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(18.6 g, 3 eq, 東京化成)、クロロメトキシ メチルエーテル(7.42 g, 2 eq, 東京化成)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を冷水へ注ぎ、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)で精製し、(R)-O-メトキシメチル-乳酸メチルエステル(5.75 g, 38.8 mmol, 81%)を得た。次に、得られた化合物(500 mg, 3.37 mmol)をメタノール(10 mL)に溶解し、水酸化リチウム一水和物(170 mg, 1.2 eq, 和光)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、1M 塩酸を加えクロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を濃縮して化合物6を得た(350 mg, 2.61 mmol, 77%)。
(R)-Lac-DHCerについては、化合物6と化合物2を縮合させ、化合物9を合成した後、エタンチオール中、BF3-Et2Oを用いてこの化合物9の脱保護を行うことにより、76%の収率で(R)-Lac-DHCerを得た。化合物2から化合物9への合成は、O-アセチル-L-乳酸の代わりに化合物6を使用した以外は、上記化合物2から化合物7への合成方法と同様の方法で行い、化合物2(200 mg, 0.586 mmol)から化合物9を得た(225 mg, 0.492 mmol, 84%)。
化合物9から(R) -Lac-DHCerへの合成は次のように行った。化合物9(200 mg, 0.437 mmol)をエタンチオール(10 mL)に溶解し、ボロントリフルオリド エーテルコンプレックス(東京化成)を数滴加え、室温で45分撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム : メタノール = 10 : 1)で精製し、得られた粗結晶をヘキサン-酢酸エチルより再結晶し、(R) -Lac-DHCerを得た(124 mg, 0.332 mmol, 76%)。
一方、(R)-Lac-Cerの場合は、化合物6と化合物5を縮合させ、化合物10を合成した後、この化合物10から(R)-Lac-Cerを得た。化合物5から化合物10への合成は、O-アセチル-L-乳酸の代わりに化合物6、化合物2の代わりに化合物5を使用した以外は、上記化合物2から化合物7への合成方法と同様の方法で行い、化合物5(200 mg, 0.59 mmol)から化合物10を得た(230 mg, 0.505 mmol, 86%)。
化合物10から(R) -Lac-Cerへの合成は次のように行った。化合物10(50 mg, 0.11 mmol)をモレキュラーシーブ 4A(アルドリッチ)を含む乾燥ジクロロメタン(5 mL)に溶解し、-30℃に冷却した。ブロモトリメチルシラン(58μL, 4 eq, 東京化成)を滴下し、-30℃で1時間撹拌した。更に室温で3時間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム : メタノール = 10 : 1)で精製し、得られた粗結晶をヘキサン-酢酸エチルより再結晶し、(R) -Lac-Cerを得た(32 mg, 0.086 mmol, 78%)。
〔実施例2:ヒト白血病白血球由来HL-60細胞に対する細胞死誘導活性〕
上記の方法により合成した4種類のセラミド誘導体((S)-Lac-Cer・(R)-Lac-Cer・ (S)-Lac-DHCer・(R)-Lac-DHCer)について、ヒト白血病由来培養がん細胞であるHL-60細胞に対する細胞死誘導活性(換言すれば、抗白血病活性)の有無を調査した。
実験では、HL-60細胞を各セラミド誘導体20μMで6時間処理し、MTT法により細胞死(Cell Death)の割合を測定することによって各セラミド誘導体の細胞死誘導活性を評価した。比較のため、C2-Cer(ポジティブコントロール)およびC2-DHCer(ネガティブコントロール)についても同様に抗白血病活性を測定した。その結果を図2に示す。同図に示すように、二重結合をもつセラミドはすべて高い抗白血病活性を示したが、(R)-Lac-Cerおよび(S)-Lac-Cerは、HL-60細胞に対して高いアポトーシス誘導効果をもつことで知られるC2-Cerよりも高い活性を示した。
興味深いことに、天然に存在する(S)-乳酸をアシル基にもつ(S)-Lac-Cerの方がその(R)-体のものよりも高い抗白血病活性を示した。またC2-DHCerは不活性にもかかわらず、同じジヒドロセラミド型の(R)-Lac-DHCerおよび(S)-Lac-DHCerは弱いながらも抗白血病活性を示した。活性の順は次のとおりである:(S)-Lac-Cer > (R)-Lac-Cer > C2-Cer > (R)-Lac-DHCer = (S)-Lac-DHCer > C2-DHCer。
次に、各セラミド誘導体20μMで8時間処理したHL-60細胞でDNAの断片化が起きているかどうかを調べた。その結果を図3に示す。同図に示すように、(S)-Lac-Cerおよび(R)-Lac-Cerで処理した細胞において、C2-Cerの場合と同様のかなりの量のDNA断片化が確認された。一方、(S)-Lac-DHCerおよび(R)-Lac-DHCerでも少しではあるがDNA断片化が確認された。これらの結果から、4種類のセラミド誘導体によって誘導される細胞死はアポトーシスであり、これらセラミド誘導体はアポトーシス誘導活性を有するものと考えられる。
〔実施例3:ヒト培養がん細胞パネルによるスクリーニング〕
上記4種類のセラミド誘導体のうち、HL-60細胞に対して最も細胞死誘導活性が高かった(S)-Lac-Cerについて、肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系、メラノーマ1系の計39種類のヒト培養がん細胞に対するin vitro薬剤感受性試験を行った。試験は、各がん細胞株を96ウェルプレートにまき込み、翌日、様々な濃度の(S)-Lac-Cerを含む溶液を添加、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定し、(S)-Lac-Cerのがん細胞抑制効果を評価するというものである(下記参考文献参照)。
参考文献:矢守隆夫、安藤俊夫、上原至雅、小野眞弓、河野通明、済木育夫、内藤幹彦、早川洋一、鶴尾 隆、吉田 稔、杉本芳一、清宮啓之、馬島哲夫、制がん剤の分子標的スクリーニング成績・第9報, 癌と化学療法. 29 Suppl II, 2002.
上記試験の結果、得られたデータを図4〜図6に示す。また試験結果をまとめたものを下記の表1に示す。
表1において、GI50はControlに比べ増殖を50%に抑制する濃度、TGIはTime Zeroと同じ細胞数に増殖を抑制する濃度(見かけ上細胞数の増減がない濃度)、LC50はTime Zeroの50%に細胞数を減少させる濃度をそれぞれ意味する。また、MG-MIDは検定したすべての細胞株について求めたLog GI50、Log TGI、Log LC50の各平均値、DeltaはLog GI50、Log TGI、Log LC50のそれぞれについて(S)-Lac-Cerに対して最も感受性が高かった株の値と各平均値との差、RangeはLog GI50、Log TGI、Log LC50のそれぞれについて(S)-Lac-Cerに対して最も感受性が高かった株と最も感受性が低かった株との差、を示す。
図4には、今回検定した計39種類のヒト培養がん細胞(それぞれ左側に記号で表示される)について得られた各データの詳細、算出したGI50、TGI、LC50の各値が示される。図5は、各ヒト培養がん細胞に対する(S)-Lac-Cerの増殖抑制効果を示すグラフであり、各グラフの横軸は(S)-Lac-Cerの濃度(M)、縦軸はPercent Growth(PG%)を示す。図6は、Log GI50、Log TGI、Log LC50のそれぞれについて各平均値を中心(目盛0)として、各株の値を左右に棒グラフで描いた感受性パターン(Finger Print)であり、(S)-Lac-Cerに対する感受性が高い株ほど右側に長い棒が伸びる。
表1に示すように、GI50のMG-MIDは「-5.43」という低い値をとり、(S)-Lac-Cerの有効濃度は十分低く、がん細胞に対する増殖阻害能は強いものであった。また、(S)-Lac-Cerについて得られた感受性パターン(Finger Print)をもとにデータベース中の既存の抗がん剤すべてと比較した結果を下記表2に示す。
表2においては、比較の結果、(S)-Lac-CerのFinger Printと最も類似度が高かった3種類の抗がん剤が示される。rは相関係数であり、この値が低いほど相関性・類似度は低いものとなる。今回の結果、最も類似度が高かった抗がん剤PSC833においても、そのr値は「0.572」と低い値であり、(S)-Lac-Cerは既存のどの抗がん剤ともあまり類似しておらず、この結果から本発明のセラミド誘導体(S)-Lac-Cerはがん細胞に対して新規作用機作を持つ可能性が認められた。
以上のように、本発明は、新規セラミド誘導体に関するものであり、前述したとおり、新たな制がん剤(抗がん剤)として利用できるほか、食品材料への利用など産業上幅広く利用できるものである。
本発明のセラミド誘導体の合成方法を説明する図である。 本発明のセラミド誘導体のヒト培養がん細胞に対する細胞死誘導活性を調べた結果を示すグラフである。 本発明のセラミド誘導体によるDNA断片化の有無をアガロースゲル電気泳動により調べた結果を示す図である。 計39種類のヒト培養がん細胞に対する、本発明のセラミド誘導体の増殖抑制活性を調べた結果を示す図である。 計39種類のヒト培養がん細胞に対する、本発明のセラミド誘導体の増殖抑制活性を調べた結果を示すグラフである。 本発明のセラミド誘導体に対する各がん細胞株の薬剤感受性を視覚化した感受性パターン(Finger Print)を示す図である。

Claims (7)

  1. 下記の式(1)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
  2. 下記の式(2)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
  3. 下記の式(3)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
  4. 下記の式(4)により表される化合物、又はその薬理上許容される塩。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の化合物を有効成分とする制がん剤。
  6. 請求項1〜4の何れか1項に記載の化合物を有効成分とする医薬用組成物。
  7. 請求項1〜4の何れか1項に記載の化合物を含有する食用組成物。

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