JP2005041703A - 保持治具 - Google Patents

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Abstract

【課題】非円形の被保持物を確実に保持することができる保持治具を提供すること。
【解決手段】保持治具1は、眼鏡レンズ2Aを保持するものであり、眼鏡レンズ2Aの外周を囲むフレーム11と、このフレーム11に設けられた保持部12とを備える。フレーム11は、弾性を有している。このフレーム11の描く円の一部は切りかかれ、開口が形成されており、円弧形状となっている。保持部12は、フレーム11の眼鏡レンズ2Aとの対向面112に3つ設けられている。保持部12のうち、保持部12Bは、付勢手段13により、保持部12A2側に向かって付勢されている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保持治具に関する。
【0002】
【背景技術】
従来から、眼鏡レンズ等の光学部品には、蒸着法や浸漬法等によりコーティング膜が形成されている。このコーティング膜としては、例えば、光の反射により生じるちらつきやゴースト等を防止するための反射防止膜、耐擦傷性を向上させるためのハードコート膜等があげられる。
このようなコーティング膜を、蒸着法により形成する場合、通常、レンズ(被保持物)を保持した保持治具を蒸着装置の被蒸着物保持部の開口部に装着する。
この保持治具は、レンズを保持する平面略円形形状の第一のリング部材と、蒸着装置に固定される第二のリング部材とを備え、第一のリング部材に設けられた一対のばねを、第二のリング部材の外周面に形成された凹部に係合することにより、これらのリングが一体化されるものである(例えば、特許文献1参照)。
また、コーティング膜を浸漬法等で形成する場合には、平面略円形形状のばねリングと、このばねリング内周面に形成されたレンズ保持部とを備える保持治具が使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3043373号(図3〜図5)
【特許文献2】
特開昭62−70246号公報(図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、レンズの凸面側(外面側)に球面または非軸対称非球面を有し、凹面側(内面側)に、異なる曲率が直交する面、例えば、累進面を有するレンズが普及してきている。このようなレンズを製造する場合には、まず、完成品よりも肉厚が厚い略円形形状のレンズを製造して在庫しておく。そして、この肉厚のレンズをレンズの処方にあわせて加工する。このレンズの内面は、非球面となるため、加工工程において、レンズ全体の厚みを薄くしようとすると、円形形状のレンズの外周縁が切り落とされたり、外周部分の厚みが薄くなったりすることがあり、外形形状が非円形、例えば楕円形となることがある。
加工工程を終えたのち、レンズの表面に前述したコーティング膜を形成することとなるが、従来の保持治具は、円形形状のレンズを保持することを前提としているため、非円形のレンズを保持することができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、非円形の被保持物を確実に保持することができる保持治具を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の保持治具は、板状の被保持物を保持するための保持治具であって、前記被保持物を囲み略円形形状に湾曲したフレームと、このフレームの前記被保持物との対向面に突出して設けられ、前記被保持物を保持する少なくとも3つの保持部とを備え、前記保持部の少なくとも1つは、この保持部を他の保持部側に付勢するとともに弾性変形可能な付勢手段を介して前記対向面に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
ここで、フレームの形状は、完全な円形形状であってもよく、また、完全な円形形状の一部が切りかかれ、開口が形成された円弧形状であってもよい。すなわち、本発明において、略円形形状とは、完全な円形形状に加え、円弧形状も含む概念である。
このような本発明によれば、保持部の少なくとも1つは、弾性変形可能な付勢手段を介してフレームに取り付けられているので、付勢手段を付勢方向と反対方向に変形させることで、この付勢手段が設けられた保持部と他の保持部との間の距離を調整することができる。これにより、被保持物が非円形であっても、保持することができる。
なお、被保持物が円形の場合には、付勢手段を介して取り付けられている保持部がフレームの円周上に位置するように付勢手段を変形させることで、被保持物を保持することができる。
また、付勢手段が設けられた保持部は、付勢手段により他の保持部側に付勢されているので、この保持部と、他の保持部とで、被保持物を挟持することができ、被保持物を確実に保持することができる。
【0008】
さらに、本発明の保持治具は、保持部を少なくとも3つ備える構成であり、被保持物を少なくとも3点で保持することができるので、被保持物を確実に保持することができる。
また、被保持物を保持治具から取り外す際には、付勢手段を付勢方向と反対方向に変形させて、付勢手段が設けられた保持部と、他の保持部との間の距離を被保持物の長さ寸法よりも大きくする。これにより、容易に被保持物を取り外すことができる。
【0009】
本発明では、前記フレームは、円弧形状であることが好ましい。
フレームを円弧形状、すなわち、円の一部を切り欠き、開口した形状とすることで、被保持物を保持部に取り付ける際、または被保持物を保持部から取り外す際に、フレームの開口部分からフレーム内側に手(指)を入れることができる。
そのため、被保持物の取付け、又は、取り外しの際に、フレームが邪魔にならず、被保持物の取付け及び取り外し作業の作業効率を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明では、前記フレームは、蒸着装置の被蒸着物保持部に形成された開口部に応じた形状であることが好ましい。
通常、蒸着装置の被蒸着物保持部には、保持治具を挿入固定するための略円形の開口部が形成されている。本発明の保持治具は、前記開口部に応じた形状のフレームを備えているため、略円形の開口部に挿入することができる。これにより、本発明の保持治具により保持された被保持物を蒸着することができる。
【0011】
この際、前記フレームは、円弧形状であり、弾性を有することが好ましい。
このような本発明によれば、フレームは円弧形状であり弾性を有しているので、蒸着装置の被蒸着物保持部の開口部に挿入する際に、フレームを撓ませ、前記開口に挿入し、その後フレームの撓みを解除させて、その反力により被蒸着物保持部の開口部に固定することができる。これにより、保持治具を蒸着装置に確実に固定することができる。
なお、以上のような保持治具により保持される被保持物としては、例えば、眼鏡レンズ等が挙げられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、眼鏡レンズの製造工程が示されている。一般に、眼鏡レンズは、一対のガラス型のキャビティ内に眼鏡レンズの原料を注入する原料注入工程(処理S1)、注入された原料を熱硬化や紫外線硬化により硬化させる重合工程(処理S2)、重合した眼鏡レンズを型から取り外す離型工程(処理S3)、眼鏡レンズの外周を切削する外周切削工程(処理S4)、必要に応じて眼鏡レンズを研磨し、所望の度数等の処方に合わせて加工する加工工程(処理S5)、眼鏡レンズを染色する染色工程(処理S6)、眼鏡レンズに耐擦傷性を向上させるためのハードコート膜を形成するハードコート膜形成工程(処理S7)、光の反射により生じるちらつきやゴースト等を防止するための反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程(処理S8)、水やけ防止コート膜形成工程(処理S9)、眼鏡レンズを眼鏡フレームの形状に加工する玉型加工工程(処理S10)の各工程を経て製造される。
【0013】
図2及び図3には、上述した眼鏡レンズの製造工程のうち、反射防止膜形成工程(処理9)で使用される保持治具1が示されている。この保持治具1は、板状の被保持物である眼鏡レンズ2Aを保持するためのものであり、眼鏡レンズ2Aの外周を囲むフレーム11と、このフレーム11に設けられた、例えば、3つの保持部12とを備える。
眼鏡レンズ2Aは、凸面側(外面側)に球面または非軸対称非球面が形成され、凹面側(内面側)に、累進面を有する内面累進レンズである。この眼鏡レンズ2Aの外形形状は略楕円形状となっている。
【0014】
フレーム11は、ステンレスや、アルミニウム等の金属製の板材を略円形形状に湾曲させたものであり、弾性を有している。このフレーム11の描く円の一部は切りかかれ、開口が形成されており、フレーム11は円弧形状となっている。
このフレーム11の外周面(眼鏡レンズ2Aとの対向面112と反対側の面)には、外方に突出し、フレーム11の湾曲形状に沿って湾曲する突起111が形成されている。
【0015】
保持部12は、フレーム11の眼鏡レンズ2Aとの対向面112に3つ設けられている。この保持部12のうち、フレーム11に直接固定された2つの保持部12を保持部12Aとし、付勢手段13を介してフレーム11に固定された保持部12を保持部12Bとする。
保持部12Aは、断面略L字型形状となっており、フレーム11に固着される固着部121と、この固着部121に立設された保持片122とを備える。
保持片122の先端には、略V字形状の切込み123が形成されており、この切込み123内に眼鏡レンズ2Aの周縁部分が差し込まれ、これにより、眼鏡レンズ2Aが保持部12Aに保持されることとなる。
【0016】
2つの保持部12Aのうち、一方の保持部12A1は、フレーム11の開口側の端部に固着されている。
他方の保持部12A2は、一方の保持部12A1に隣接して配置されている。フレーム11の円弧の中心部に対して、2つの保持部12A1,12A2がなす角度θは、例えば、60°程度である。
保持部12Bは、付勢手段13の先端に付勢手段13と一体的に設けられたものであり、フレーム11の眼鏡レンズ2Aとの対向面112と対向している。この保持部12Bは、保持部12Aの保持片122と略同様の形状であり、その先端には、略V字形状の切込み124が形成されている。この切込み124には、切込み123と同様に、眼鏡レンズ2Aの周縁部分が差し込まれ、これにより、眼鏡レンズ2Aが保持部12Bに保持されることとなる。このような保持部12Bは、付勢手段13により、保持部12A2側に向かって付勢されており、保持部12B及び保持部12A2間の長さ寸法は、フレーム11の径寸法よりも小さくなっている。
【0017】
付勢手段13は、薄い板状のばね片で構成されており、指等の力により弾性変形する。この付勢手段13の基端部は、フレーム11の対向面112に固着されており、その先端部は、フレーム11の中心部に向かって延びている。フレーム11の円弧の中心部に対して、付勢手段13の基端部と保持部12A1とがなす角度θは、例えば、135°程度である。この付勢手段13は、湾曲しており、付勢手段13の曲率は、フレーム11の曲率と略一致している。
【0018】
以上のような保持治具1に眼鏡レンズ2Aを取り付ける際には、フレーム11の開口部分から、眼鏡レンズ2Aを挿入し、眼鏡レンズ2Aの周縁を保持部12A1,12A2の切込み123に挿入する。次に、付勢手段13を撓ませて、保持部12Bの切込み124に眼鏡レンズ2Aの周縁を挿入する。保持部12Bは、付勢手段13により、保持部12A2側に付勢されているので、眼鏡レンズ2Aが保持部12Bと、保持部12Aと2で挟持されることとなる。
なお、本実施形態では、眼鏡レンズ2Aを外形形状が非円形形状(例えば、略楕円形状)のものとしたが、これに限らず、図4に示すように、円形形状の眼鏡レンズ2Bを保持させてもよい。このような場合には、付勢手段13をフレーム11側に当接させる。これにより、保持部12A1,12A2,12Bがフレーム11の円周上に配置されることとなるので、円形形状の眼鏡レンズ2Bを保持させることができる。
【0019】
眼鏡レンズ2Aを保持した保持治具1は、図5に示すような蒸着装置3に装着される。この蒸着装置3は、眼鏡レンズ2Aにコーティング膜である反射防止膜を形成するためのものであり、予備室31と、この予備室31に隣接する真空蒸着室32と、この真空蒸着室32に隣接する冷却室33と、眼鏡レンズ2Aを保持する被蒸着物保持部34と、この被蒸着物保持部34を各室31〜33間で移動させる搬送装置(図示略)とを備える。
なお、本実施形態では、蒸着法により反射防止膜を形成するとしたが、これには限られず、例えば、水やけ防止コート膜等を形成してもよい。
【0020】
予備室31には、真空ポンプ等の真空装置(図示略)が接続されており、この予備室31は、眼鏡レンズ2Aが置かれた環境を大気圧から真空へ変えるための部屋となっている。
真空蒸着室32は、眼鏡レンズ2Aの表面に反射防止膜を蒸着する部屋であり、蒸着源321が配置されている。この蒸着源321には、酸化シリコン、酸化ジルコニウム等の蒸着物質が注入されており、図示しない加熱手段により蒸着物質を過熱して溶融させ、真空雰囲気中で蒸着物質を飛ばして、眼鏡レンズ2Aの表面に成膜する。
冷却室33は、反射防止膜が形成された眼鏡レンズ2Aを冷却するための部屋である。
【0021】
被蒸着物保持部34は、図6に示すように略半球形状のドーム341と、このドーム341の上部に設けられ、ドーム341を回転させるモータ342とを備える。
ドーム341には、眼鏡レンズ2Aを保持した保持治具1が挿入される複数の開口部341Aが形成されている。この開口部341Aは、円形形状であり、ドーム341の最も外周縁側に形成された開口部341Aの径寸法は、保持治具1のフレーム11の径寸法と略等しい。すなわち、フレーム11は、ドーム341の最も外周縁側に形成された開口部341Aに応じた形状となっている。従って、保持治具1は、ドーム341の外周縁側の開口部341Aに装着されることとなる。
なお、様々な大きさ寸法の眼鏡レンズを一度に蒸着することができるように、開口部341Aは、ドーム341の外周縁側から中心部に向かって径が徐々に小さくなっている。従って、ドーム341の内側部分の開口部341Aには、各開口部341Aの径に応じた径寸法のフレームを有する保持治具を装着すればよい。
【0022】
このような蒸着装置3を用いた眼鏡レンズ2Aへの蒸着方法について説明する。
まず、ドーム341の開口部341Aに眼鏡レンズ2Aを保持した保持治具1を挿入する。この際、保持治具1のフレーム11を撓ませて、その外形寸法を開口部341Aの外形寸法よりも小さくする。そして、開口部341Aに保持治具1を挿入し、フレーム11の撓みを解除する。フレーム11は、開口部341Aの内周面に当接し、開口部341A内で保持されることとなる。
次に、保持治具1が装着されたドーム341を搬送装置により予備室31内に入れる。そして予備室31内を大気圧から真空にし、眼鏡レンズ2Aを真空雰囲気下におく。
さらに、ドーム341を真空蒸着室32に搬送する。そして、真空蒸着室32内で眼鏡レンズ2Aを加熱し、眼鏡レンズ2Aが所定の温度以上となった場合に、蒸着物質を飛ばして、眼鏡レンズ2Aの一方の面に反射防止膜を形成する。
そして、反射防止膜が形成された眼鏡レンズ2Aは、ドーム341に保持されたまま、真空状態の冷却室33に搬送され、冷却される。そして、冷却室33を大気圧に戻し、ドーム341から保持治具1を取り出す。
【0023】
次に、取り出された保持治具1を反転させ、再度、ドーム341の開口部341Aに装着し、同様の作業を行う。これにより、眼鏡レンズ2Aの両面に反射防止膜を形成することができる。
最後に、保持治具1から眼鏡レンズ2Aを取り外す。この際、付勢手段13を撓ませて、保持部12B及び保持部12A間の距離を眼鏡レンズ2Aの距離よりも長くする。これにより、保持部12Bの切込み124及び、保持部12Aの切込み123から眼鏡レンズ2Aの周縁が外れることとなり、眼鏡レンズ2Aを取り外すことができる。
【0024】
このような本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1−1)3つの保持部12のうち、保持部12Bは、弾性変形可能な付勢手段13を介してフレーム11に取り付けられているので、付勢手段13を付勢方向と反対方向に変形させることで、保持部12Bと、他の保持部12である保持部12A1間の距離を調整することができる。これにより、眼鏡レンズ2Aの外形形状が非円形、例えば楕円形状であっても、保持することができる。
また、付勢手段13の曲率は、フレーム11の曲率と略一致しているので、眼鏡レンズ2Bのように外形形状が円形の場合には、付勢手段13をフレーム11側に当接させて、保持部12Bがフレーム11の円周上に位置するようにする。
これにより3つの保持部12A1,12A2,12Bが円周上に配置されることとなるので、円形状の眼鏡レンズ2Bも保持することができる。
このように、本実施形態の保持治具1は、眼鏡レンズの外形形状が円形形状であっても、また、非円形形状であっても確実に保持することができる。
【0025】
(1−2)また、前述したように、眼鏡レンズ2Aを取り付ける場合には、付勢手段13を付勢方向と反対方向に変形させて保持部12Bと保持部12A2との間の距離を調整することで眼鏡レンズ2Aを取り付けている。また、眼鏡レンズ2Aを取り外す場合には、付勢手段13を付勢方向と反対方向に変形させて、付勢手段13が設けられた保持部12Bと保持部12A2との間の距離を眼鏡レンズ2Aの長さ寸法よりも大きくして、眼鏡レンズ2A等を取り外している。このように、眼鏡レンズ2A等を取り付ける際、または、眼鏡レンズ2A等を取り外す際には、付勢手段13を付勢方向と反対方向に弾性変形させるだけでよく、眼鏡レンズ2A等の取り付け作業や、取り外し作業の作業性を向上させることができる。
(1−3)保持部12Bは、付勢手段13により保持部12A2側に付勢されているので、この保持部12Bと保持部12A2とで、眼鏡レンズ2A等の被保持物を挟持することができ、被保持物を確実に保持することができる。
(1−4)また、保持治具1は、3つの保持部12を備えており、眼鏡レンズ2A等の被保持物を3点で保持することができるので、被保持物を確実に保持することができる。
(1−5)以上のように、確実に眼鏡レンズ2A等を保持できるので、蒸着時に保持治具1を反転させる場合において、眼鏡レンズ2A等が保持治具1から落下してしまうことを防止できる。
【0026】
(1−6)さらに、付勢手段13は、その先端がフレーム11の中心部に向かって延びているため、保持部12Bは、フレーム11の中心部近傍に位置することとなる。従って、このような保持治具1で略楕円形状の眼鏡レンズ2Aを保持した場合には、眼鏡レンズ2Aとフレーム11との間には隙間が形成される。そのため、蒸着時において、眼鏡レンズ2Aの周縁部分にも蒸着膜を確実に形成することができる。
(1−7)保持治具1のフレーム11を円弧形状とすることで、眼鏡レンズ2A等を保持部12A1,12A2,12Bに取り付ける際、または眼鏡レンズ2A等を保持部12A1,12A2,12Bから取り外す際に、フレーム11の開口部分からフレーム11内側に手(指)を入れることができる。そのため、眼鏡レンズ2A等の取り付け、又は、取り外しの際に、フレーム11が邪魔にならず、眼鏡レンズ2A等の取り付け及び取り外し作業の作業効率を向上させることができる。
これに加え、フレーム11の端部に保持部12A1が設けられているので、保持部12A1に眼鏡レンズ2A等を取り付ける際、または取り外す際に、フレーム11の端部がじゃまにならず、眼鏡レンズ2A等の取り付け、取り外しをより容易に行うことができる。
【0027】
(1−8)保持治具1のフレーム11は、蒸着装置3の被蒸着物保持部34のドーム341の円形形状の開口部341Aに応じた円弧形状となっているので、円形形状の開口部341Aに装着することができる。
また、フレーム11は、円弧形状であり、弾性を有しているので、蒸着装置3の被蒸着物保持部34の開口部341Aに挿入する際に、フレーム11を撓ませ、開口部341Aに挿入し、その後フレーム11の撓みを解除させて、その反力により被蒸着物保持部34の開口部341Aに固定することができる。これにより、保持治具1を蒸着装置3の開口部341A内に確実に固定することができる。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図7及び図8には、本実施形態にかかる保持治具5が示されている。
前記実施形態の保持治具1は、蒸着装置3に装着され、蒸着法により眼鏡レンズ2Aにコーティング膜を形成する際に使用されるものであったが、本実施形態の保持治具5は、浸漬法により、眼鏡レンズ2Aにコーティング膜を形成する場合(例えば、ハードコート膜形成工程)に用いられるものである。
この保持治具5は、搬送治具6に吊り下げられて使用され、フレーム11に引っ掛け部51が設けられている点で、保持治具1と異なっている。すなわち、保持治具5は、フレーム11と、このフレーム11に設けられた保持部12(12A1,12A2,12B)と、付勢手段13と、フレーム11に設けられた引っ掛け部51とを備えている。
【0029】
引っ掛け部51は、断面略L字型形状であり、フレーム11の保持部12A1が設けられた一方の端部と対向する他方の端部の内面(対向面112)にその基端部が固定されている。また、この引っ掛け部51の先端部は、鉤状に屈曲されており、この先端部を搬送治具6の釣棒64(後述)に引っ掛けることで、保持治具5が搬送治具6に吊り下げられることとなる。
なお、このような保持治具5においては、図8に示すように、眼鏡レンズ2Aを保持し、搬送治具6に吊り下げた際、保持部12A1の保持片122及び保持部12Bは、略水平に配置されることとなる。また、搬送治具6に吊り下げた際、眼鏡レンズ2Aの下方側に配置される保持部12A2の保持片122は、略鉛直方向に延びることとなる。
【0030】
搬送治具6は、主軸61と、この主軸61の両端部に設けられた平面略矩形形状の位置合わせ板62と、主軸61の位置合わせ板62が設けられた部分よりも内側部分に主軸61を下方から挟むように配置された受け渡し板63と、この受け渡し板63の下面に取り付けられたコ字形の釣棒64とを備える。
位置合わせ板62は、図示しない搬送装置に装着される部分であり、搬送装置に形成された凹部にはめ込まれる。
釣棒64は、受け渡し板63から下方に延びる一対の縦棒641と、縦棒641間に跨って配置され、主軸61と略平行に延びる横棒642とを備える。
横棒642には、図示しないが複数の凹部が形成されており、この複数の凹部には、それぞれ保持治具5の引っ掛け部51の先端がはめ込まれる。従って、この横棒642には、複数の保持治具5が吊り下げられるため、複数の保持治具5を搬送することができる。
【0031】
次に、保持治具5に保持された眼鏡レンズ2Aへのコーティング膜、例えば、ハードコート膜の形成方法について説明する。
なお、ここでは、コーティング膜としてハードコート膜を例示したが、これに限らず、プライマー膜、反射防止膜等としてもよい。
また、この保持治具は、レンズを染色する際の保持治具に用いてもよい。
また、保持治具5への眼鏡レンズ2Aの取り付け、取り外し作業は、前記実施形態と同様であるため、省略する。
まず、保持治具5に眼鏡レンズ2Aを保持させ、さらに保持治具5を搬送治具6に吊り下げる。そして、搬送治具6を搬送装置に取り付ける。
眼鏡レンズ2Aには、浸漬法によるコーティング膜の形成の前に、眼鏡レンズ2Aとコーティング膜の密着性を向上させる目的で、アルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、また、超純水による洗浄等が行われる。
次に、ハードコート液で満たされたハードコート槽内に搬送治具6ごと眼鏡レンズ2Aを浸漬する。所定時間経過した後、搬送治具6をハードコート槽から引き上げ、乾燥させ、ハードコート膜の乾燥と硬化が行われ、ハードコート膜が眼鏡レンズ2Aの表面に形成される。
【0032】
このような本実施形態によれば、第1実施形態の(1−1)〜(1−4)、(1−6)、(1−7)と略同様の効果を奏することができるうえ、以下の効果を奏することができる。
(2−1)保持治具5のフレーム11は、円弧形状であり、開口が形成されているので、外形形状が円形のフレームに比べ、その表面積が小さなものとなっている。従って、フレーム11に付着するハードコート液の量を少なくすることができる。
(2−2)保持部12には、略V字型形状の切込み123,124が形成されており、この切込み123,124に眼鏡レンズ2Aの周縁が当接している。このように、眼鏡レンズ2Aの周縁との接触面積が非常に小さくなっているので、眼鏡レンズ2A周縁においてハードコート膜が形成されない部分を略なくすことができる。
(2−3)また、眼鏡レンズ2Aを保持した保持治具5を搬送治具6に吊り下げた際、保持部12A1の保持片122及び保持部12Bは、略水平に配置されることとなる。そのため、眼鏡レンズ2Aをハードコート槽から引き上げた際に、保持部12A1の保持片122、保持部12Bから、鉛直方向にハードコート液が垂れ落ちてしまうことを防止できる。これにより、均一な厚さのハードコート膜を形成することができる。
なお、保持治具5を搬送治具6に吊り下げた際に、眼鏡レンズ2Aの下方に配置される保持部12A2の保持片122は、略鉛直方向に延びているので、保持部12A2からのハードコート液も眼鏡レンズ2Aに垂れることはない。
【0033】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、保持治具1,5のフレーム11は、弾性を有するものとしたが、これに限らず、フレーム11は弾性を有していなくてもよい。
さらに、前記各実施形態では、フレーム11は、円弧形状であるとしたが、これに限らず、円形形状としてもよい。このようにすることで、フレーム11の剛性を高めることができる。さらに、フレーム11を円形形状とした場合には、インクジェット方法でハードコート膜を製造する際のインクジェット用の装置に搭載させることが可能となる。インクジェット方法は、ハードコート液をインクジェットヘッドの約10〜100μm径の微小なノズルから液滴として吐出し、成膜する方法である。このインクジェット用の装置に、円形形状のレンズを嵌め込み固定するための固定部材を搭載すれば、フレームを円形形状とした場合には、この固定部材に円形形状の保持治具をはめ込むことができる。
【0034】
また、前記各実施形態では、保持治具1,5は3つの保持部12を有するものとしたが、これに限らず、4つ以上の保持部を有する構成としてもよい。ただし、眼鏡レンズの加工度合い等によっては、外周縁が同一平面上にない場合もあるため、保持部の数を増やせば増やすほど、眼鏡レンズの外周縁に当接しない保持部が発生する可能性がある。これに対し、前記各実施形態では、保持部12を3つとしているので、すべての保持部12を眼鏡レンズの外周縁に当接させることができる可能性が高く、コストの観点及び眼鏡レンズの保持の確実性の観点から見て最も好ましい。
さらに、前記各実施形態では、3つの保持部12のうち、一つの保持部12Bのみが、付勢手段13を介してフレーム11に取り付けられていたが、例えば、保持部12A1を付勢手段を介してフレーム11に取り付けてもよい。
また、第2実施形態では、保持治具5の引っ掛け部51の形状を断面略L字型形状としたが、これには限られず、搬送治具6に引っ掛けられるような形状であれば、任意である。
さらに、前記各実施形態では、保持治具1,5により眼鏡レンズ2A等を保持するとしたが、眼鏡レンズに限らず、光学機器等、例えば、カメラ等に使用されレンズ等であってもよい。また、被保持物は、レンズに限らず、板状の部材であれば任意である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における眼鏡レンズの製造工程を示すフローチャート。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる保持治具を示す斜視図。
【図3】前記保持治具を示す平面図。
【図4】前記保持治具により円形形状のレンズが保持された状態を示す平面図。
【図5】前記保持治具が装着される蒸着装置を示す模式図。
【図6】前記蒸着装置のドームを示す斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる保持治具及び搬送治具を示す斜視図。
【図8】前記保持治具の平面図。
【符号の説明】
1,5…保持治具、2A,2B…眼鏡レンズ、3…蒸着装置、11…フレーム
12,12A(12A1,12A2),12B…保持部、13…付勢手段、112…対向面、341…被蒸着物保持部、341A…開口部

Claims (5)

  1. 板状の被保持物を保持するための保持治具であって、
    前記被保持物を囲み略円形形状に湾曲したフレームと、このフレームの前記被保持物との対向面に突出して設けられ、前記被保持物を保持する少なくとも3つの保持部とを備え、
    前記保持部の少なくとも1つは、この保持部を他の保持部側に付勢するとともに弾性変形可能な付勢手段を介して前記対向面に取り付けられていることを特徴とする保持治具。
  2. 請求項1に記載の保持治具において、
    前記フレームは、円弧形状であることを特徴とする保持治具。
  3. 請求項1または2に記載の保持治具において、
    前記フレームは、蒸着装置の被蒸着物保持部に形成された開口部に応じた形状であることを特徴とする保持治具。
  4. 請求項3に記載の保持治具において、
    前記フレームは、円弧形状であり、弾性を有することを特徴とする保持治具。
  5. 請求項1から4の何れかに記載の保持治具において、
    前記被保持物は、眼鏡レンズであることを特徴とする保持治具。
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