JP2005041340A - 衝撃吸収部材及びその設計方法 - Google Patents

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Taiko Chin
玳▲行▼ 陳
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Abstract

【課題】 二直線硬化則の座屈変形モードから実材料のピーク応力σ1を予測し、衝突時の荷重変動が少なく、要求に応じた衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材を容易に設計する。
【解決手段】 同軸状に配置した外側円筒10,内側円筒20で構成される衝撃吸収部材を自動車,鉄道車輌等の本体30に取り付ける。前方から衝撃力Pが加わったとき、円筒10,20は荷重変動を相互に打ち消すように座屈変形を繰り返すので搭乗者に与える悪影響が少なくなる。各円筒10,20のピーク応力σ1は、二直線硬化則の座屈変形モードと実材料の応力勾配∂σ/∂εとの交点として求められる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車,鉄道車両等の輸送機器に組み込まれ、衝突時の衝撃エネルギーを吸収して乗員の安全を図る衝撃吸収部材及びその設計方法に関する。
自動車,鉄道車両等の輸送機器には、衝撃エネルギーを吸収して衝突時のショックを和らげる衝撃吸収部材が前方に、場合によっては後方にも組み込まれている。衝撃吸収部材には、衝撃エネルギーの吸収を促進させるため衝突時のショックで座屈変形しやすい部分が形成されている。衝撃エネルギーの吸収量を大きくするため、座屈変形しやすい部分で囲まれた空間に弾性体,発泡体,ゲル,粘性流体等を充填した衝撃吸収部材(特許文献1)や、弾性変形及び座屈変形で衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材(特許文献2)も知られている。
特開平11−139341号公報 特開平11−129840号公報
衝撃吸収部材の設計に際し、座屈の最大,最小ピーク荷重や座屈波長等の算出が容易でないため、実験的評価で座屈変形が衝撃エネルギーの吸収に及ぼす影響を求めている。そのため、試行錯誤によるところが多く生産性が低い。汎用解析ソフトを用いて個々の部材ごとに座屈変形パターンとエネルギー吸収量との関係を求める数値解析も一部で採用されているが、解析対象部材の材料変更ごとに再計算を必要とし、座屈変形パターンや吸収エネルギーの予測が容易でない。
しかも、座屈変形で衝撃エネルギーを吸収する方式では、座屈荷重の振幅が必然的に発生する。振幅の加速度が衝撃となって搭乗者に伝えられると、神経系統等の体内器官に与える悪影響が懸念される。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、座屈変形モードを制御した部材を組み合わせて衝撃エネルギーの吸収パターンを制御することにより、ピーク荷重,座屈荷重の変化を少なくし、衝撃が人体に与える悪影響を抑えた衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
本発明の衝撃吸収部材は、その目的を達成するため、m本の筒体が同軸状に配置された衝撃吸収部材であり、軸方向に加えられる衝撃力で各筒体が座屈変形するときの座屈波長を等しく設定し、初期衝突面から各筒体の先端面までの距離を調整して各筒体の座屈周期の間に1/mの位相を付けていることを特徴とする。円筒体,角筒体の何れをも使用できるが、規則的な座屈変形を起こさせる上では円筒体の使用が好ましい。
二直線硬化則モデルを用いた数値解析で座屈変形時のピーク応力を求め、二直線硬化則モデルにおける応力勾配がn乗硬化則における応力勾配に一致したとき二直線硬化則によるピーク応力を実材料のピーク応力と推定する。該推定ピーク応力に従って複数本の筒体を同軸状に配置することにより、衝撃吸収部材が設計される。
二重円筒で衝撃吸収部材を構成する場合(図1a)、外側円筒10の先端面11を初期衝突面F1とすると、内側円筒20の先端面21が初期衝突面F1から後退した二次衝突面F2に位置するように、自動車,鉄道車輌等の本体30に外側円筒10,内側円筒20を取り付けている。衝撃吸収部材に前方から衝撃力Pが加わると、先ず外側円筒10が座屈変形を開始し、衝撃力Pの作用が二次衝突面F2に至ったとき内側円筒20の座屈変形が始まる。
円筒10,20は、材質やサイズに応じて定まる波長で応力が変化するモードで座屈変形する。外側円筒10の座屈変形モードは、荷重−変位曲線(図2)でみると衝撃力Pが初期衝突面F1に達したときから変位が開始され、衝撃荷重に応じて変位が大きくなる。変曲点で1回目の座屈が生じると変位は進行するが荷重が減少する。変位が更に進行すると、荷重が再び立ち上がり、2回目の座屈が生じるまで増加する。以降、座屈変形のたびごとに荷重の増減が繰り返される。
本発明者等の調査・研究によるとき、円筒10,20のサイズや材質から座屈波長,座屈周期を予測できることが判った。座屈波長,座屈周期が予測可能なことは、外側円筒10,内側円筒20の間で座屈変形開始時点をずらせることによって荷重変動を抑制できることを意味する。すなわち、座屈変形中の外側円筒10に加わる荷重が谷間にあるとき、内側円筒20に加わる荷重がピークとなるように円筒10,20の間で座屈周期を位相制御すると、円筒10,20に加わる荷重の合力は変動が抑えられる(図1b)。
座屈周期の位相は、初期衝突面F1から二次衝突面F2までの距離によって調整できる。図1では、外側円筒10,内側円筒20の二本で衝撃吸収部材を構成しているので、円筒10,20それぞれの座屈周期を半周期ずらせている。筒体の本数が二本に限定されないこと,円筒10,20に代えて角筒で衝撃吸収部材を構成できることは勿論であり、m本の筒体で構成した衝撃吸収部材では個々の座屈周期に1/mの位相をつける。
座屈波長,座屈周期が円筒10,20の形状,サイズ,材質等に応じて定まることは、塑性域における加工硬化が一定な二直線硬化則と実材料で生じるn乗硬化則との関係の調査・検討から得られた結果である。調査・検討の過程を次に説明する。
〔二直線硬化則に従ったピーク応力〕
二直線硬化則では、降伏応力をσy,縦弾性係数をE,加工硬化係数をEh,弾性歪みと塑性歪みの和をεとするとき、塑性変形応力σ(>σy)が式(1)で表される。
Figure 2005041340
種々の係数比Eh/Eと無次元化ピーク応力σ1/Eとの関係は解析により求められる結果(図3)から明らかなように、無次元化ピーク応力σ1/Eは、縦弾性係数Eの違いに拘らず加工硬化係数比Eh/Eと一次元的な比例関係にある。したがって、二直線硬化則に従う円筒モデルで無次元化したピーク応力σ1/Eは、円筒の肉厚tと内半径Rとの比t/R及び硬化係数比Eh/Eの関数として式(2)で表され、具体的には肉厚比t/Rに対して直線関係となる(図4)。
Figure 2005041340
〔二直線硬化則からn乗硬化則に従ったピーク応力の予測〕
n乗硬化則に従った実材料では、加工硬化係数をK,加工硬化指数をnとすると式(3)で塑性変形応力σが表される。
Figure 2005041340
n乗硬化則に従う薄肉円筒モデル(肉厚t=1mm,2mm)について、材料パラメータ(n,K)の組合せを変えて肉厚比t/Rと無次元化ピーク応力σ1/Eとの関係を調査した結果、二直線硬化則の場合と同様に、個々の材料パラメータ(n,K)の組合せで同じ肉厚比t/Rに対しほぼ同一のピーク応力σ1/Eをもっていることが判った(図5)。ただし、n乗硬化則では、肉厚比t/Rの増加に応じてピーク応力σ1/Eの値が曲線的に増加する傾向を示す。
図4と図5を対比すると、二直線硬化則,n乗硬化則の何れか等の全体的な特性よりも、座屈発生時における局所的な加工硬化特性、換言すれば応力−歪み曲線における座屈時の応力勾配∂σ/∂εにより、軸方向圧潰で座屈したときのピーク応力σ1に及ぼす材料の加工硬化特性の影響を評価できることが判る。かかる前提で、n乗硬化則のピーク応力σ1を応力勾配∂σ/∂εから予測する方法を開発した。
式(1)で表される二直線硬化則において、歪みεに対する応力勾配∂σ/∂εは、加工硬化係数Ehを変数とする関数式(4)で表される。
Figure 2005041340
n乗硬化則に従ったピーク応力σ1と材料パラメータとの関係は硬化係数比Eh/Eの関数式(2)で表されるので、式(5)で示すように初期ピーク応力σ1は応力勾配∂σ/∂εに依存する。
Figure 2005041340
n乗硬化則についても、式(3)から応力勾配∂σ/∂εを求めると、式(6)で表されるように塑性変形応力σの関数として応力勾配∂σ/∂εが表される。したがって、ピーク応力σ1は、加工硬化則全体の特性相違に拘らず座屈発生時の応力勾配∂σ/∂εに依存するといえる。
Figure 2005041340
初期ピーク応力σ1が硬化則の違いに拘らず応力勾配∂σ/∂εに依存するとの前提から、式(4),(6)を用いて硬化係数比Eh/Eに対し式(7)が導出される。すなわち、n乗硬化則に従う弾塑性円筒モデルで生じるピーク応力をσ1,n,ピーク応力σ1,n発生時の応力勾配∂σ/∂εと同じ勾配をもつ二直線硬化則に従うピーク応力をσ1,Bとするとσ1,n=σ1,Bが成り立つので、図6で模式的に示すように、n乗硬化則に従う弾塑性円筒モデルで生じるピーク応力σ1,nを応力勾配∂σ/∂ε(=Eh)をもつ二直線硬化則での応力σ1,Bで評価できる。
Figure 2005041340
以上の結果から、二直線硬化則とn乗硬化則との間に(1)〜(3)の関係が成立していることが理解できる。
(1) 二直線硬化則に従った座屈のピーク応力σ1から実材料が座屈する際のピーク応力σ1を予測できること。
(2) 座屈ピーク応力σ1に及ぼす形状パラメータが肉厚比t/Rの関数として表されること。
(3) 二直線硬化則に従う円筒モデルで無次元化したピーク応力(σ1/E)が肉厚比t/R,硬化係数比Eh/Eの関数として表されること。
(1)〜(3)に従って座屈変形モードを制御した部材を組み合わせると、任意の衝撃エネルギー吸収パターンを適正に制御でき、人体に与える影響を少なくした衝撃吸収部材が得られる。この方式では、円筒モデルの肉厚,直系等の幾何学的形状パラメータや各種材料の特性を考慮した実験,解析等で座屈変形モードを評価する必要がなく、要求される座屈変形モード(ピーク荷重,変形パターン,荷重変化等)をもつ衝撃吸収部材の設計が容易になる。
評価の有効性を検証するため、肉厚t=1mm,内半径R=13mmの薄肉円筒モデルで材料パラメータ(n,K)が(0.5,7.84GPa)及び(0.5,2.48GPa)の軸方向応力σx及び軸方向歪みux/Lを求めたところ、軸方向応力σxと軸方向歪みux/Lとの間に図7の関係(●,黒四角)が成立していた。なお、図7中、式(7)にピーク応力σ1,nの値を代入して求めた硬化係数Eh(=17.59GPa及び5.713GPa)をもつ二直線硬化則に従った軸方向応力σxと軸方向歪みux/Lとの関係(○,□)を併せ示す。
図7から明らかなように、初期ピーク応力σ1を生じるまでの軸方向歪み量ux/Lは硬化則の相違に応じて異なるものの、式(6)に従ってピーク応力σ1発生時の応力勾配∂σ/∂εを揃えることにより、硬化則の相違に拘らず初期ピーク応力σ1がそれぞれほぼ一致している。この結果は、材料パラメータ(n,K)の組合せを変更し、或いは肉厚t(=2mm)が異なる薄肉円筒モデルを用いた場合でも同様である(表1)。
Figure 2005041340
以上の結果から、初期ピーク応力σ1に対する材料特性の影響は、式(8)で表されるように、加工硬化則の相違に拘らずピーク応力σ1における応力勾配(∂σ/∂ε)σ=σ1/Eの関数として整理できる。
Figure 2005041340
表1の結果は、座屈発生時の応力勾配∂σ/∂εを合わせるとき、二直線硬化則,n乗硬化則でピーク応力σ1との間に最大でも9.1%程度の差が生じているに過ぎず、工学的観点からは二直線硬化則のピーク応力σ1,Bにn乗硬化則のピーク応力σ1,nが一致しているといえる。したがって、二直線近似した加工硬化則に従う材料におけるピーク応力σ1,B/Eの結果から実材料のn乗硬化則に従うピーク応力σ1,n/Eを予測できる。
更に、図3の結果を用いてn乗硬化則に従ったピーク応力σ1を評価するため、マスターカーブを図8に示す。図8中、二直線硬化則に従った表1の結果を直線で示す。二本の曲線は、材料パラメータ(n,K)=(0.5,7.84GPa),(0.5,2.48GPa)を式(7)に代入して求められる。図8に示した加工硬化係数比Eh/Eとピーク応力σ1/Eの関係から、表1に掲げたピーク応力σ1,Bの値は、図8の交点(A,B)と評価できる。すなわち、任意のn乗硬化則に従う材料のピーク応力σ1は、二直線硬化則に従う材料から求められたマスターカーブから評価できる。
以上の結果は、加工硬化特性の相違に拘らず簡単に二直線硬化則に従ったピーク応力σ1の結果からn乗硬化則に沿った実材料のピーク応力σ1が予測可能なことを示し、個々の材料に対して複雑な解析を必要とせず衝撃吸収部材を設計可能なことを意味する。したがって、面倒な試行錯誤や材料ごとの解析作業を要せず、設計者の要求に応じた任意の衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材の設計が容易になる。
〔圧縮ピーク応力σxの設定〕
薄肉円筒モデルでは、円筒長さLが大きくなると局部座屈でなく長柱型の全体座屈(オイラー座屈)を生じる場合もあるが、局部座屈が必要な衝撃吸収部材を対象にしているので、円筒長さLをL=159mm一定とし、肉厚tを1,2,3mm、内半径Rを13,26,39mmの間で設定した。
先ず、肉厚t,内半径Rの薄肉円筒モデルについて、圧縮ピーク応力σ1が肉厚比t/Rで整理できると推論した。初期ピーク応力σ1は、図9の解析結果に示すように、円筒長さLに無関係でほぼ一定値をとった。また、平均内半径Rに比較して円筒長さLが十分大きいため、長柱型のオイラー座屈が生じなかった。
加工硬化係数比Eh/E=20で肉厚比t/Rを0.077に固定した薄肉円筒モデルは、軸方向応力σxと軸方向歪み量ux/Lの間に図10の関係が成立しており、肉厚tの変動に拘らず肉厚比t/Rが同じ値のときピーク応力σ1はほぼ一致する。また、各円筒モデルの肉厚比t/Rとピーク応力σ1の関係を示した図11から、初期ピーク応力σ1は、肉厚比t/Rが同じ円筒でほぼ同一の値になり、肉厚比t/Rに比例して増加しているといえる。
したがって、初期ピーク応力σ1に及ぼす形状パラメータの影響を整理すると、式(9)で示すように主として肉厚比t/Rの関数として初期ピーク応力σ1を表すことができる。
Figure 2005041340
座屈波長に関しても、ピーク応力σ1と同様に円筒10,20の幾何学形状(肉厚t,半径R,長さL)や材料特性(加工硬化特性)が及ぼす影響を数値解析することにより求められる。すなわち、ピーク応力σ1に対応した幾何学形状,材料が決まれば、数値解析等によって座屈波長が容易に求められる。たとえば、座屈波長に対し,ピーク応力σ1での式(9)に相当する定性的な特徴を数値解析や実験により明らかにし、幾何学形状や材料特性の調整によって円筒10,20の座屈波長を揃えられる。
〔衝撃エネルギー吸収パターンの設定〕
材質,幾何学形状が異なる外側円筒10,内側円筒20を組み合わせた衝撃吸収部材を座屈変形させ(図12)、座屈のピーク荷重,波長を測定することにより荷重−変位曲線(図13)が得られる。図13に示すように、荷重の波長,振幅は外側円筒10,内側円筒20で異なっており、衝撃吸収部材全体の荷重変動は円筒10,20の荷重変動を合計した値である。したがって、座屈変形の振動が円筒10,20の間で互いに打ち消されるように材料パラメータ(n,K)を設計(図1b)すると、衝撃吸収部材全体の荷重の振幅を小さくでき、衝突時に人体に与える衝撃が少なくなる。
外側円筒10,内側円筒20で衝撃吸収部材(図1)を設計する場合、先ず円筒10,20の幾何学形状,材料特性の違いによる座屈波長(座屈周期),振幅の大きさへの影響を明らかにしておく。そして、短い内側円筒20に長い外側円筒10を嵌挿した構造を考え、外側円筒10と内側円筒20の長さの差を、外側円筒10を押し潰したときの座屈周期から半周期ずれた座屈波長となるように設計する。
外側円筒10は初期衝突面F1に物体が衝突したとき変形を開始し、内側円筒20は二次衝突面F2に物体が衝突したとき変形を開始するため、変形開始時間が円筒10,20の間で座屈周期が互いに半周期ずれる。そのため、外側円筒10が座屈変形する際の応力勾配∂σ/∂εが内側円筒20の変形で打ち消され、結果として荷重変動の振幅が抑えられると共に、高いエネルギー吸収特性をもつ衝撃吸収部材が得られる。
肉厚:2mm,半径:26mm,長さ:160mmのA6061アルミニウム合金製円筒に軸方向の圧縮荷重を加える圧潰試験により、圧縮荷重−変位の関係を求めた。圧縮荷重−変位の関係からアルミニウム合金製円筒が座屈変形する際のピーク荷重を求め、得られた値から断面積当りのピーク応力σ1を算出した。
アルミニウム合金製円筒が最初に座屈変形するときのピーク応力σ1,expは316.2MPa(実測値)であった。使用したアルミニウム合金製円筒は一軸引張試験で得られた応力歪み曲線から求められた縦弾性係数Eが75.7GPaであったので、ピーク応力値σ1,exp/E=316.2/(75.7×1000)=0.00418と算出される。該ピーク応力値σ1,exp/E=0.00418を図14に点線で示す。
一軸引張試験で得られた応力歪み曲線から応力勾配∂σ/∂εを求め、関数式(8)に従って算出されたピーク応力σ1をプロットして図14に実測値として示し、二直線硬化則に従ったピーク応力σ1を表す近似直線(計算値)と比較した。実材料の応力ひずみ曲線から求めた実測値曲線と二直線硬化則を用いた近似曲線の交点Aが本発明で予測されたピーク座屈応力になる。該予測結果は、円筒の圧潰実験で求めた破線と交点Aとの比較からも一致性が高いことが判る。
座屈波長(座屈周期):16mmは、本例では実態評価により求められた値であるが、数値解析等によって事前に座屈波長を求めることもできる。或いは、幾何学形状,材質に対応した座屈変形モードのマップを多数用意しておき、幾何学形状,材料特性の何れかを設定した後で必要とする座屈波長をもつ座屈変形モードを特定し、該座屈変形モードに対応する材料特性又は幾何学形状を求める。
半径:26mmのアルミニウム合金製円筒を外側円筒10とし、外側円筒10に対して座屈波長が半周期ずれた内側円筒20を次のように設計した。
内側円筒20としても同材質のアルミニウム合金製円筒を使用し、座屈変形モードを参照しながら肉厚,半径の調整によって座屈周期を外側円筒10に等しく設定した。内側円筒20のピーク応力σ1も、同様な方法で外側円筒10に対応する値に設定した。
また、外側円筒10の座屈周期に対して内側円筒20の座屈周期が半周期ずれるように、内側円筒20の長さを160−8=152mmに調節し、初期衝突面F1から二次衝突面F2までの距離を座屈波長(16mm)の半分に設定した(図1)。
外側円筒10,内側円筒20を同軸状に配置した衝撃吸収部材を本体30に固着し、本体前方から軸方向に1トンの重錘を速度5.4m/秒で衝撃吸収部材に加え、荷重−変位の関係を調査した。その結果、重錘の衝突と同時に外側円筒10の変形が始まり、約0.0015秒後にピーク応力σ1:270MPaに達した。外側円筒10がピーク応力σ1に達した時点で内側円筒20の変形が始まり、外側円筒10の座屈変形との間で半周期ずれて座屈変形した。衝撃吸収部材全体としての荷重変動の振幅は5MPaに抑えられており、衝撃エネルギーの吸収量も7000J(外側円筒10で4300J,内側円筒20で2700J)と大きな値であった。
以上に説明したように、二直線硬化則からn乗硬化則の圧縮ピーク応力σ1を予測できるため,試行錯誤的な実験や材料変更ごとの解析を要せず、目標とする衝撃エネルギーの吸収パターンをもつ衝撃吸収部材を設計できる。また、座屈変形の振動を互いに打ち消す座屈変形モードをもつ部材を組み合わせて衝撃吸収部材とするとき、座屈変形時の荷重変動が抑えられる。このようにして設計された衝撃吸収部材を自動車,鉄道車両等に組み込むと、衝突時の衝撃エネルギーが効果的に吸収され、人体の安全が図られる。荷重変動の抑制により、人体の内部器官にたいする悪影響もなくなる。
本発明に従った衝撃吸収部材の構造(a)及び機能を説明するグラフ(b) 軸方向の圧縮荷重により円筒体が座屈変形を繰り返すときの荷重−変位曲線を説明するグラフ 二直線硬化則に従う無次元化ピーク応力σ1/Eが加工硬化係数比Eh/Eに比例することを示すグラフ 二直線硬化則に従う無次元化ピーク応力σ1/Eが肉厚比t/Rと直線関係にあることを示すグラフ n乗硬化則に従う肉厚比t/Rと無次元化ピーク応力σ1/Eとの関係を示すグラフ 二直線硬化則のピーク応力σ1からn乗硬化則に従うピーク応力σ1が予測可能なことを示すグラフ 薄肉円筒モデルにおける軸方向歪みux/Lと軸方向応力σxとの関係を示すグラフ 薄肉円筒モデルを圧潰した際のピーク応力σ1と二直線硬化則の加工硬化係数比Eh/Eとの関係を示すグラフ 初期ピーク応力σ1に及ぼす円筒長さLの影響を示すグラフ 薄肉円筒モデルの軸方向歪みux/Lと軸方向応力σxとの関係を示すグラフ 薄肉円筒モデルの肉厚比t/Rとピーク応力σ1の関係を示すグラフ 材料パラメータ(n,K)が異なる部材を組み合わせて座屈変形モードを制御したモデル 同モデルの荷重−変位曲線を示すグラフ 実施例で使用したアルミニウム合金製円筒のピーク応力の予測値(交点A)が実測値(σ1,exp)に精度良く一致していることを示すグラフ
符号の説明
10:内側円筒 20:外側円筒 11,21:円筒10,20の先端面
P:衝撃力 F1:初期衝突面 F2:二次衝突面
L:円筒モデルの長さ t:円筒モデルの肉厚

Claims (2)

  1. m本の筒体が同軸状に配置された衝撃吸収部材であり、軸方向に加えられる衝撃力で各筒体が座屈変形するときの座屈波長を等しく設定し、初期衝突面から各筒体の先端面までの距離を調整して各筒体の座屈周期の間に1/mの位相を付けていることを特徴とする衝撃吸収部材。
  2. 二直線硬化則モデルを用いた数値解析で座屈変形時のピーク応力を求め、二直線硬化則モデルにおける応力勾配がn乗硬化則における応力勾配に一致したとき二直線硬化則によるピーク応力を実材料のピーク応力と推定し、該推定ピーク応力に従って複数本の筒体を同軸状に配置することを特徴とする衝撃吸収部材の設計方法。
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