JP2005041120A - 表皮材及びそれを用いた車両 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 再帰反射性を有するシートに角度選択反射材を積層した。また、この表皮材を車両のインストルメントパネル、ドアトリム、リアパーセルシェルフ、ピラーガーニッシュ、ハンドルより選ばれる少なくとも一種に適用した。
【選択図】 図1
Description
図1に本発明の実施の形態である再帰反射材の構成図を示す(請求項1に対応)。ここで、再帰反射材(特許請求の範囲に記載の表皮材)とは、再帰反射性シート5に角度選択透過性シート3を積層したものをいう。図1の再帰反射材の効果を説明するにあたり、まず再帰反射性シート5単独で車両インパネに用いた場合について説明する。
再帰反射とは、ガラスビーズや微細な立体プリズム構造(コーナーキューブ)の光屈折を利用して、光の照射方向に係わらず、入射光を照射方向に反射する性質を言う。因みに、再帰反射材は、一般に道路標識、看板等の視認性向上に用いられ、例えば、住友3M製スコッチライトカプセルレンズ型反射シートや、日本カーバイド工業製ニッカライトカプセルレンズ型高輝度シート、封入レンズ型再帰反射シート等が市販されており、工業的にも入手可能である(請求項1に対応)。
ここで、角度選択透過性シート3とは、先に述べたように、ある角度では光を透過し、別の角度では非透過となる特性を有するシートである。角度選択透過性シート3には様々な形態がある。以下、各種角度選択透過性シート3の形態について述べる。
特に遮光壁(ルーバー)42を備えたルーバー型の角度選択透過性シート3は、その製造方法において、透明シート(光線透過部分)と非透明シート(遮光壁(ルーバー)42に相当)の交互積層を繰り返す事により樹脂ブロックを形成し、それを厚み方向にスライスするという、比較的量産性の高い工業的製造方法が確立している。また、ルーバー型は比較的単純な構造であり発明の構成を説明しやすいので、以降、本実施の形態の説明に遮光壁(ルーバー)42を備えたルーバー型の角度選択透過性シート3を用いた例を中心に説明していく。但し、これは本発明をルーバー型に限定するものではない。
ルーバー型の角度選択透過材は、その製造方法において、交互に積層する透明シートと非透明シートの厚みによって遮光壁(ルーバー)42のピッチを調整し、スライスの厚さによって遮光壁(ルーバー)42の高さを調整し、スライスの角度によって遮光壁(ルーバー)42の傾斜角度を調整する。このように、角度選択透過特性の設計が容易に可能なことから、本発明に一層好適に用いられる。
図6は角度選択反射材における有効反射角aを表す図である。遮光壁(ルーバー)42間の中心と遮光壁(ルーバー)42両上端を結ぶ線が成す角の内側が有効反射角aとなり、外側が非反射角bとなる。したがって、遮光壁(ルーバー)42のピッチが大きければ有効反射角aが大きく、遮光壁(ルーバー)42の高さが高ければ有効反射角aが小さくなる。また、遮光壁(ルーバー)42の角度については後に述べる実施の形態において、遮光壁(ルーバー)42表面の反射の工夫によって、有効反射角aの方向を調整することができる。このように、遮光壁(ルーバー)42の高さ、角度、表面の工夫により有効反射角aの方向を調整することができるものを、角度選択反射材と呼ぶことにする。
本実施の形態を更に効果あるものとするために、ルーバー表面に関し表裏それぞれの光学特性を考慮することが重要である。
ここで光反射性表面55というのは、鏡のような正反射特性を持つ表面を指す。このような表面を形成する手法は、アルミ箔のような金属箔や、金属を蒸着あるいはスパッタリングした光輝フィルム(金属スパッタ膜)、金属泊を分散した塗膜、あるいはそれらを樹脂フィルムに付着させた反射フィルムから好適に用いることができる。また、同様の効果を持つものとして、アルミ顔料を用いた塗料を用いることもできる(請求項5に対応)。
本発明の角度選択性反射材を内装材表面に適用するにあたって、最表面のつやがあまりにも大きい場合、例えば太陽が低い位置にあって角度選択反射材表面で正反射した光が強いときは、視界の妨げになる。
このようにして得られる角度選択反射材は、自動車の内装部品の表皮として用いられる場合に効果を発揮する。但し、この事は、本発明を同様の目的から、家具や住宅内装などに適用することを妨げるものではない。
(実施例1)
再帰反射性シートである住友3M社製スコッチライトカプセルレンズ型反射シートを用いた。
透明シートとしては厚さ300μmの透明シリコン樹脂のシートを用いた。遮光性の遮光壁(ルーバー)42の材料としては25μmの透明アクリルシートにアルミニウムを蒸着したシートを用い、その蒸着面に黒色つや消し塗料を約10μmの厚さで塗布し、片面を光吸収性の表面に調整した。このルーバー材シートのアクリルシート側にアクリルウレタン系接着剤を薄く塗布しながら、これら2種類のシートを熱ロールに通してラミネートした。
上記の方法によって得られた角度選択透過材に、再帰反射性シート5を積層接着し、積層表皮を得た。
上記の積層表皮を、5.0mmtのウレタン発泡体シートと、1.2mmtの30%タルク含有ポリプロピレン板を、常温乾燥型ゴム系接着剤で張り合わせ積層体とし、自動車内装を模した試験片とした。
(実施例2)
(角度選択透過性シートの調整)
遮光性のルーバー材としては25μmの透明アクリルシートにアルミニウムを蒸着したシートを用い、その両面に黒色つや消し塗料を約10μmの厚さで塗布し、両面を光吸収性の表面に調整した。このルーバー材シートの片側にアクリルウレタン系接着剤を薄く塗布しながら、これら2種類のシートを熱ロールに通してラミネートした。以降、実施例1と同様の操作で、両面に黒色の光吸収性面を有するルーバー型の角度選択透過材を得た。
更に、以降も実施例1と同様の操作で、500mm角の角度選択反射材及び試験片を得た。
(実施例3)
(角度選択透過性シートの調整)
実施例1と同様の方法にて、透明シートと遮光壁(ルーバー)42を調整し、更に同様の方法でそれらの交互積層ブロックを形成した。このブロックを、席双方向に対して20°の角度で予備切断をし、その切断面をスライサーを用いて300μmのシートにスライスした。これにより、片面にアルミ蒸着による光反射性面、もう片面に黒色の光吸収性面を有するルーバー角20°のルーバー型角度選択透過材を得た。
再帰反射シートに、先の方法によって得られた角度選択透過材を、反射面が再帰反射シート側に傾斜する方向で積層接着し、積層表皮を得た。
更に、以降も実施例1と同様の操作で、500mm角の角度選択反射材及び試験片を得た。
現行の車両に用いられる軟質塩化ビニル製の黒色、皮しぼ付きのインパネ用表皮を500mm角に裁断して用いた。以降、実施例1と同様の操作により、試験片を得た。
実施例1に用いた再帰反射性シート5をそのまま表皮として用い、以降、実施例1と同様の操作で、試験片を得た。
(性能評価)
得られた試験片について、表面温度上昇防止の性能を評価するための人工日射試験と、視界を評価する官能評価を行った。
図12に示す断熱箱25に300mm角に切り出した再帰反射表皮材試料24を設置し、更に窓ガラスを模した自動車用グリーンガラス3.5mmt(日射透過率60%,JIS R3106による)22を試験片から約100mmの距離に設置し、車室内の温度上昇も模擬した。試験片の設置に関しては、インパネ前方からの夏季南中日射を想定し、20°傾けて、遮光壁(ルーバー)42の反射面を光源方向に向けて設置した。積層体の表面には熱伝対23を設置して試験片の温度変化を計測できるようにした。熱負荷は500W人工太陽照明灯4灯からなるソーラシミュレータ(セリック株式会社製)21を試料上方に設置し、ガラス表面における照射エネルギーを767W/m2になるように調整した。測定は25℃に調整された室内で、試料への光照射開始後60分後、試料表面の温度上昇がほぼ平衡に達した時点で行った。
図12に示す実験装置を用い、20°入射のときと同様、断熱箱25に300mm角に切り出した再帰反射表皮材試料24を設置し、更に窓ガラスを模した自動車用グリーンガラス3.5mmt(日射透過率60%,JIS R3106による)22を試験片から約100mmの距離に設置し、車室内の温度上昇も模擬した。試験片の設置に関しては、夏季午前9時あるいは午後3時前後の、インパネ前方からのやや斜めの日射を想定し、45°傾けて設置した。あとは20°の試験と同様に温度計測を実施した。
図13に示すように、自動車窓用グリーンガラス3.5mmt(日射透過率60% ,JIS R3106による)の未成型平板(500mm×500mm)22を黒色ラシャ紙27上に水平から30°の角度に設置し、自動車のフロントガラスを模した。次に、約2mの高さに、屋外における空を想定して白色板28を設置し、500Wソーラシミュレータ(セリック株式会社製)212を照射し、白色板位置での照度を6000ルクスに調整した。
インパネ上面平坦部を300mm×300mmの大きさで、表皮と発泡ウレタン層を剥離し、実施例1で調整した角度選択反射表皮と発泡ウレタンシートの積層体を同サイズに切り出し、常温乾燥型のゴム系接着剤を用いて、インパネの剥離部分に接着した。その車両を図14のような、赤外ランプ及び送風/空調装置を有する環境試験室に設置し、以下の条件で環境を設定し60分間ソークした後、熱電対23にてインパネの表面温度を測定した。
日射強度:767 W/m2
気温:35 ℃
湿度:70 %RH
風速:0.8 m/sec
表1に評価結果を示した。
試料を20°に設置した人工日射試験においては、現行のインパネ表皮(比較例1)の温度が約88℃になる環境において、実施例1から3はいずれも温度上昇を抑えることができた。特に、実施例1と3は遮光壁(ルーバー)42の片面に再帰反射効率を向上させる反射面を用いているため、温度低下の効果は20℃以上と大きい。実施例2では、遮光壁(ルーバー)42の両面が光吸収性表面54となるため、反射に寄与する面積をあまり大きく取ることができないために、温度低下は16℃程度となった。更に、比較例2では、再帰反射性能がルーバーにより妨げられることがなかったため、温度低下効果が約26℃と非常に高い効果が得られた。
3 角度選択透過性シート
5 再帰反射性シート
10 乗員視点
11 インストルメントパネルへの直接視線
12 ルーバーへの窓映り視線
21 ソーラシミュレータ
212 人工太陽灯
213 ソーラシミュレータ
22 自動車用板ガラス
23 熱電対
24 再帰反射表皮材試料
25 断熱箱
26 視点
27 黒ラシャ紙
30 太陽
31 日射入射光
32 日射再帰反射光
41 透明樹脂フィルム
42 遮光壁(ルーバー)
43 補強フィルム
44 鋸歯シート
45 遮光壁
54 光吸収性表面
55 光反射性表面
a 有効反射角
b 非反射角
c ルーバー反射性表面に拠る拡大分
d ルーバー角に拠る拡大分
Claims (8)
- 再帰反射性を有する表皮材であって、再帰反射層表面に角度選択透過性を有するシートを積層したことを特徴とする表皮材。
- 請求項1に記載の表皮材において、
前記角度選択透過性を有するシートが、透明樹脂中に遮光壁が設置されてなるシートであることを特徴とする表皮材。 - 請求項2に記載の表皮材において、
前記遮光壁の片側の面が光吸収性表面とし、その反対面が光反射性表面としたことを特徴とする表皮材。 - 請求項3に記載の表皮材において、
前記遮光壁の光吸収性表面が、マンセル明度で5.0以下に着色されてなることを特徴とする表皮材。 - 請求項3または4に記載の表皮材において、
前記遮光壁の光反射性表面が、金属蒸着膜、金属スパッタ膜、金属箔、金属箔を分散した塗膜、あるいはそれらを樹脂フィルムに付着させた反射フィルムから選ばれる少なくとも1種からなる正反射性表面であることを特徴とする表皮材。 - 請求項3ないし5に記載の角度選択反射表皮材において、
前記遮光壁の前傾角度が5〜30°の範囲にあることを特徴とする表皮材。 - 請求項1ないし9項記載の表皮材において、
表面に反射防止層を設けたことを特徴とする表皮材。 - 請求項1ないし10に記載の表皮材を、インストルメントパネル、ドアトリム、リアパーセルシェルフ、ピラーガーニッシュ、ハンドルより選ばれる少なくとも一種に用いることを特徴とする車両。
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