JP2005041120A - 表皮材及びそれを用いた車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】直射あるいはガラスを通した日射による内装材の表面温度上昇の抑制を目的として、可視光を含む日射エネルギーを効果的に反射すること、及び可視光反射率を上げることによる、表皮の窓への映り込みによる乗員視界への悪影響を解決する表皮材及びそれを用いた車両を提供すること。
【解決手段】 再帰反射性を有するシートに角度選択反射材を積層した。また、この表皮材を車両のインストルメントパネル、ドアトリム、リアパーセルシェルフ、ピラーガーニッシュ、ハンドルより選ばれる少なくとも一種に適用した。
【選択図】 図1

Description

本発明は表皮材及びそれを用いた車両に関し、特に炎天下における車室内の温度環境改善に関するものである。
炎天下において、駐車中の自動車の室内が非常な高温になることは周知である。日本国内において夏場の車両内温度測定によれば、炎天下駐車した場合の車両室内温度は約70℃にも達し、内装材においては、インストルメントパネル(以下、インパネ)上面で100℃前後、天井、シート表面で70℃前後もの高温に達することが報告されている。こうした状況で乗車した際の不快感は言うまでもなく、また内装材から長時間に渡り放射熱が発生すること、シート表面に蓄熱されることで乗員がシートから熱伝導によって熱気を受け取ることで不快になるとともに、換気あるいは冷房では室温や内装材温度は容易に下がらないため、冷房による過剰なエネルギー消費も問題となる。
従来、このような炎天下駐車の問題点に関し、内装材表面の過熱を防止する目的として、例えば特許文献1、2に記載の内装材表皮に遠赤外線反射顔料を含有させ、近赤外線を反射する方法が提案されている。
特開2001-114149号公報。 特開2001-122044号公報。
しかしながら、この方法は赤外反射顔料粉末を樹脂にランダムに混入するため、反射方向が乱反射になり、ほとんどの反射光は樹脂層に吸収され熱に変わる。また、太陽光線エネルギーの約半分は可視光であり、加えて近年の自動車用窓ガラスは近赤外を吸収する断熱ガラスが多いことから、内装表面温度上昇の主要因は可視光である。したがって、この方法に代表される近赤外線を反射する方法では大きな効果は期待できない。
本発明は上記の課題に着目してなされたもので、直射あるいはガラスを通した日射による内装材の表面温度上昇を抑制することを目的に、可視光を含む日射エネルギーの効果的な反射を第一の課題とした。
一方、可視光反射率を上げた場合、反射光が窓に映ることによって生じる視界への悪影響、つまり窓映り現象があり、反射率を上げることと窓映りを抑えることは二律背反の関係にある。そこで我々は、反射性能を損なうことなく窓映りを防止することを第二の課題とした。
上記の課題を解決すべく、本発明は、再帰反射性を有する表皮材であって、再帰反射層表面に角度選択透過性を有するシートを積層した。
また、この表皮材を車両のインストルメントパネル、ドアトリム、リアパーセルシェルフ、ピラーガーニッシュ、ハンドルより選ばれる少なくとも一種に用いることとした。
よって、日射を反射することで内装材の表面温度上昇を抑制しつつ、日射の反射によって生じる表皮の窓への映り込みによる乗員視界への悪影響を防止することができる。
以下、本発明における再帰反射表皮材及びそれを用いた車両を実現する実施の形態を説明する。
(実施の形態)
図1に本発明の実施の形態である再帰反射材の構成図を示す(請求項1に対応)。ここで、再帰反射材(特許請求の範囲に記載の表皮材)とは、再帰反射性シート5に角度選択透過性シート3を積層したものをいう。図1の再帰反射材の効果を説明するにあたり、まず再帰反射性シート5単独で車両インパネに用いた場合について説明する。
図2は、再帰反射性シート5をインパネに設置したときに生じる、日射の再帰反射光32と空70の窓映り光路72を表す図である。太陽30から入射した光線31は、再帰反射により再び同じ方向に反射光32を返し、光エネルギーは室外へと放出される。一方、乗員の視点10から窓への視線71は、ウインドシールド1の反射を経て再帰反射を見るが、再帰反射面は視線73を返し、ウインドシールド1を透過して空70を写す。すなわち、乗員はあたかもウインドシールド1に空70が映ったかのような高明度の映りこみを感じ、前方の視界が妨げられる。
これに対し、図1の再帰反射性シート5に角度選択透過性シート3を積層した再帰反射材を車両のインパネに適用した図3においては、角度選択透過シート3により、太陽からの入射光31が通過することで太陽光を反射することができる。一方、乗員からの視線72は遮断し、空70を映す光路73を遮断することにより、反射率を損なうことなく、効果的に窓映りを防止できる。
(再帰反射)
再帰反射とは、ガラスビーズや微細な立体プリズム構造(コーナーキューブ)の光屈折を利用して、光の照射方向に係わらず、入射光を照射方向に反射する性質を言う。因みに、再帰反射材は、一般に道路標識、看板等の視認性向上に用いられ、例えば、住友3M製スコッチライトカプセルレンズ型反射シートや、日本カーバイド工業製ニッカライトカプセルレンズ型高輝度シート、封入レンズ型再帰反射シート等が市販されており、工業的にも入手可能である(請求項1に対応)。
(角度選択透過性シート)
ここで、角度選択透過性シート3とは、先に述べたように、ある角度では光を透過し、別の角度では非透過となる特性を有するシートである。角度選択透過性シート3には様々な形態がある。以下、各種角度選択透過性シート3の形態について述べる。
図4は、透明樹脂フィルム41に不透明の遮光壁(ルーバー)42が規則的に配置されたルーバー構造を持つ角度選択透過性シート3の断面図である。このルーバー構造はシートの機械的強度を確保することが難しいことから、透明な補強フィルム43でラミネートすることもあるが、本発明の効果を損なうものではない(請求項2に対応)。
また、図5のように鋸歯状断面を持つ透明な鋸歯シート48の鋸歯の片面に遮光壁45が設けられる構造、あるいは図示しないが薄いハニカム体のような、セル状の遮光壁45を形成したシートも本発明の角度選択透過性シート3として好適に用いることができる。この場合も適宜補強の目的で透明フィルム43をラミネートして用いることができる。
(ルーバー)
特に遮光壁(ルーバー)42を備えたルーバー型の角度選択透過性シート3は、その製造方法において、透明シート(光線透過部分)と非透明シート(遮光壁(ルーバー)42に相当)の交互積層を繰り返す事により樹脂ブロックを形成し、それを厚み方向にスライスするという、比較的量産性の高い工業的製造方法が確立している。また、ルーバー型は比較的単純な構造であり発明の構成を説明しやすいので、以降、本実施の形態の説明に遮光壁(ルーバー)42を備えたルーバー型の角度選択透過性シート3を用いた例を中心に説明していく。但し、これは本発明をルーバー型に限定するものではない。
角度選択透過性シート3の光線透過部分を成す透明シートとしては、透明性を有する樹脂から任意に選択することが可能で、例えば、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂や、シリコン樹脂などの透明ラバー類を好適に用いることができる。
遮光壁となる非透明シートとしては、前述のような熱可塑性樹脂あるいは透明ラバー類に、カーボン、酸化チタン、酸化亜鉛などの光透過性の無い顔料を分散したシート成形が好適に用いられる。また、光透過性の無い塗料を塗布してなるシートを用いてもよい。あるいは、金属箔や金属蒸着した樹脂シートなども遮光性に優れるために好適に用いることができる(請求項5に対応)。
(ルーバーの有効反射角)
ルーバー型の角度選択透過材は、その製造方法において、交互に積層する透明シートと非透明シートの厚みによって遮光壁(ルーバー)42のピッチを調整し、スライスの厚さによって遮光壁(ルーバー)42の高さを調整し、スライスの角度によって遮光壁(ルーバー)42の傾斜角度を調整する。このように、角度選択透過特性の設計が容易に可能なことから、本発明に一層好適に用いられる。
ここで、本実施の形態における角度選択反射材の反射特性について、遮光壁(ルーバー)42の設計要件との関係を説明する。
図6は角度選択反射材における有効反射角aを表す図である。遮光壁(ルーバー)42間の中心と遮光壁(ルーバー)42両上端を結ぶ線が成す角の内側が有効反射角aとなり、外側が非反射角bとなる。したがって、遮光壁(ルーバー)42のピッチが大きければ有効反射角aが大きく、遮光壁(ルーバー)42の高さが高ければ有効反射角aが小さくなる。また、遮光壁(ルーバー)42の角度については後に述べる実施の形態において、遮光壁(ルーバー)42表面の反射の工夫によって、有効反射角aの方向を調整することができる。このように、遮光壁(ルーバー)42の高さ、角度、表面の工夫により有効反射角aの方向を調整することができるものを、角度選択反射材と呼ぶことにする。
いずれにせよ、本実施の形態においては、角度選択反射材の設置される位置と、乗員視点10の位置及び日射の入射方向とを考慮して、これら遮光壁(ルーバー)42の設計パラメータを適宜調整して、より高い効果を発揮することができる。つまり、乗員の視線方向に対して非反射特性を損なわない範囲で有効反射角aを広げる様に設計することができる(請求項1,6に対応)。
(ルーバー面の光学性状)
本実施の形態を更に効果あるものとするために、ルーバー表面に関し表裏それぞれの光学特性を考慮することが重要である。
図7は、遮光壁(ルーバー)42の乗員側に向く面を光吸収性表面54に、車外側に向く面を光反射性表面55として角度選択反射材を構成した場合の構造を表す図である(請求項3に対応)。
まず、角度選択反射材の乗員側に面する遮光壁(ルーバー)42の片面は、図8に示すように視線12を経てウインドシールド1へ映り込む。したがって、その面が明る過ぎると乗員の視界の妨げになるため、低い明度であることが好ましい。また、その片面はインパネへの直接視線11により乗員が直接目にする面でもあり、内装材の意匠を決定する。そこで、映り込み防止と意匠上の自由度を考慮すると、上限の明度をマンセル明度で5.0以下程度に抑えつつ、室内のデザインに合わせて任意の色調に設定することができる(請求項4に対応)。
一方、車外側に面するルーバー面の表面を光反射性表面55とすることにより、より大きな有効反射角が得られる。つまり、図9に示すように、有効反射角aがルーバー反射性表面に拠る拡大分cだけ前方(車外方向)に拡大する。cはルーバー上端と隣接ルーバーの中央を結ぶ直線により規定され、c領域から入射する光はルーバー反射性表面を介して再帰反射面に到達し、再帰反射により全く同一光路を逆方向にたどって系外に放出される。
有効反射角度が拡大すると、反射機能を発揮する角度が広がるばかりでなく、遮光壁(ルーバー)42の陰になる部分の面積が減る分だけ反射率も向上するため、発明の目的である温度上昇防止に大きな効果がある。
また、図10のように遮光壁(ルーバー)42角を設けることにより、有効反射角度を更に前方にルーバー角による拡大分dだけ傾けることが可能になる。これにより、乗員側への非反射性能を保ちながら、より広範な太陽位置へからの日射を反射することができる(請求項6に対応)。尚、この遮光壁角については、車両のタイプ等にもよるが、前傾角度が5〜30°の範囲で設定されるのが望ましい。
(ルーバーの反射特性)
ここで光反射性表面55というのは、鏡のような正反射特性を持つ表面を指す。このような表面を形成する手法は、アルミ箔のような金属箔や、金属を蒸着あるいはスパッタリングした光輝フィルム(金属スパッタ膜)、金属泊を分散した塗膜、あるいはそれらを樹脂フィルムに付着させた反射フィルムから好適に用いることができる。また、同様の効果を持つものとして、アルミ顔料を用いた塗料を用いることもできる(請求項5に対応)。
但し、反射特性は正反射に限らずとも入射エネルギーを反射することができる。例えば、二酸化チタンや酸化亜鉛などの白色顔料を含有する高明度の塗料を塗布することで、散乱反射性表面を形成することができる。本発明ではこのような散乱反射を用いることを妨げないが、再帰反射の原理が入射光と同じ光路をたどるという特徴を有することを考えると、光路が拡散する散乱反射は正反射に比べてロスが大きい。
(反射防止層)
本発明の角度選択性反射材を内装材表面に適用するにあたって、最表面のつやがあまりにも大きい場合、例えば太陽が低い位置にあって角度選択反射材表面で正反射した光が強いときは、視界の妨げになる。
図11は、図9の構成における角度選択性反射材の最表面に反射防止層9を接着した場合の構成を表す。表面の反射特性は内装部品形状や表面の「しぼ」などによって変わるため、一概に反射率だけで性能規定することはできないが、経験上JIS Z 8741 光沢度測定方法に定める60°鏡面光沢度において鏡面光沢度が30%以下程度で設定される場合が多い。したがって、本発明においてもこの範囲で設定することが望ましい。
反射防止処理にはいくつかの方法があるが、意匠性と量産性の観点から表面に微細な凹凸加工いわゆる「しぼ」を形成するのが好ましい。しぼの形成方法は通常既知のロールによる型押しやスラッシュ成型による型転写が用いられる。また、最表面にシリカ微粉末などを分散したつや消し塗料などを塗布することにより形成してもよい(請求項7に対応)。
(車両への搭載)
このようにして得られる角度選択反射材は、自動車の内装部品の表皮として用いられる場合に効果を発揮する。但し、この事は、本発明を同様の目的から、家具や住宅内装などに適用することを妨げるものではない。
本発明が好適に用いられる自動車用内装部品としては、日射を受ける部位に設置され、かつ、乗員の視界に入るような部品、即ち、インパネや、ドアトリムの上部、あるいはピラー、リアパーセルシェルフなどが挙げられる。特にインパネは、室内で最も温度が上がり、また面積も大きい部品であることから、本発明が最も効果的に用いられる対象部品の一つである(請求項8に対応)。
次に本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
(再帰反射性シート)
再帰反射性シートである住友3M社製スコッチライトカプセルレンズ型反射シートを用いた。
(角度選択透過性シートの調整)
透明シートとしては厚さ300μmの透明シリコン樹脂のシートを用いた。遮光性の遮光壁(ルーバー)42の材料としては25μmの透明アクリルシートにアルミニウムを蒸着したシートを用い、その蒸着面に黒色つや消し塗料を約10μmの厚さで塗布し、片面を光吸収性の表面に調整した。このルーバー材シートのアクリルシート側にアクリルウレタン系接着剤を薄く塗布しながら、これら2種類のシートを熱ロールに通してラミネートした。
上記の手順により得られるラミシートを500mm角のシートに裁断して多数のカットシートを作成し、その片面に先の接着剤を塗布し、20シート程度重ねて熱プレスにより圧着し、厚さ10mm弱の多層シートを得た。更に、この多層シートを約60層前後積み重ねて圧着し、厚さ約500mmのブロックを形成した。このブロックを、スライサーを用いて、積み重ねた厚み方向に厚さ300μmのシートにスライスし、片面にアルミ蒸着による光反射性表面55、もう片面に黒色の光吸収性表面54を有する、ルーバー角0°のルーバー型角度選択透過材を得た。
(再帰反射性シートの調整)
上記の方法によって得られた角度選択透過材に、再帰反射性シート5を積層接着し、積層表皮を得た。
(内装試験片の調整)
上記の積層表皮を、5.0mmtのウレタン発泡体シートと、1.2mmtの30%タルク含有ポリプロピレン板を、常温乾燥型ゴム系接着剤で張り合わせ積層体とし、自動車内装を模した試験片とした。
(実施例2)
(角度選択透過性シートの調整)
遮光性のルーバー材としては25μmの透明アクリルシートにアルミニウムを蒸着したシートを用い、その両面に黒色つや消し塗料を約10μmの厚さで塗布し、両面を光吸収性の表面に調整した。このルーバー材シートの片側にアクリルウレタン系接着剤を薄く塗布しながら、これら2種類のシートを熱ロールに通してラミネートした。以降、実施例1と同様の操作で、両面に黒色の光吸収性面を有するルーバー型の角度選択透過材を得た。
(再帰反射材表皮及び内装試験片の調整)
更に、以降も実施例1と同様の操作で、500mm角の角度選択反射材及び試験片を得た。
(実施例3)
(角度選択透過性シートの調整)
実施例1と同様の方法にて、透明シートと遮光壁(ルーバー)42を調整し、更に同様の方法でそれらの交互積層ブロックを形成した。このブロックを、席双方向に対して20°の角度で予備切断をし、その切断面をスライサーを用いて300μmのシートにスライスした。これにより、片面にアルミ蒸着による光反射性面、もう片面に黒色の光吸収性面を有するルーバー角20°のルーバー型角度選択透過材を得た。
(再帰反射表皮の調整)
再帰反射シートに、先の方法によって得られた角度選択透過材を、反射面が再帰反射シート側に傾斜する方向で積層接着し、積層表皮を得た。
(内装試験片の調整)
更に、以降も実施例1と同様の操作で、500mm角の角度選択反射材及び試験片を得た。
(比較例1)
現行の車両に用いられる軟質塩化ビニル製の黒色、皮しぼ付きのインパネ用表皮を500mm角に裁断して用いた。以降、実施例1と同様の操作により、試験片を得た。
(比較例2)
実施例1に用いた再帰反射性シート5をそのまま表皮として用い、以降、実施例1と同様の操作で、試験片を得た。
(測定及び評価方法)
(性能評価)
得られた試験片について、表面温度上昇防止の性能を評価するための人工日射試験と、視界を評価する官能評価を行った。
また、実車における効果の検証のため、実際に自動車のインパネ上部の塩化ビニル樹脂表皮と発泡ウレタン層を500mm×500mmの大きさで除去し、露出した基材表面に実施例1で得られる表皮材を、常温乾燥型ゴム系接着剤にて張り込み、環境試験室にて現行部品と比較評価した。
(人工日射試験(20°入射))
図12に示す断熱箱25に300mm角に切り出した再帰反射表皮材試料24を設置し、更に窓ガラスを模した自動車用グリーンガラス3.5mmt(日射透過率60%,JIS R3106による)22を試験片から約100mmの距離に設置し、車室内の温度上昇も模擬した。試験片の設置に関しては、インパネ前方からの夏季南中日射を想定し、20°傾けて、遮光壁(ルーバー)42の反射面を光源方向に向けて設置した。積層体の表面には熱伝対23を設置して試験片の温度変化を計測できるようにした。熱負荷は500W人工太陽照明灯4灯からなるソーラシミュレータ(セリック株式会社製)21を試料上方に設置し、ガラス表面における照射エネルギーを767W/m2になるように調整した。測定は25℃に調整された室内で、試料への光照射開始後60分後、試料表面の温度上昇がほぼ平衡に達した時点で行った。
(人工日射試験(45°入射))
図12に示す実験装置を用い、20°入射のときと同様、断熱箱25に300mm角に切り出した再帰反射表皮材試料24を設置し、更に窓ガラスを模した自動車用グリーンガラス3.5mmt(日射透過率60%,JIS R3106による)22を試験片から約100mmの距離に設置し、車室内の温度上昇も模擬した。試験片の設置に関しては、夏季午前9時あるいは午後3時前後の、インパネ前方からのやや斜めの日射を想定し、45°傾けて設置した。あとは20°の試験と同様に温度計測を実施した。
(窓映り官能評価)
図13に示すように、自動車窓用グリーンガラス3.5mmt(日射透過率60% ,JIS R3106による)の未成型平板(500mm×500mm)22を黒色ラシャ紙27上に水平から30°の角度に設置し、自動車のフロントガラスを模した。次に、約2mの高さに、屋外における空を想定して白色板28を設置し、500Wソーラシミュレータ(セリック株式会社製)212を照射し、白色板位置での照度を6000ルクスに調整した。
上記評価装置のラシャ紙上に角度選択反射材試験片24を設置し、窓映りの程度を目視評価した。従来例と全く遜色無いレベルを○、多少映り込むがその程度はわずかであり、さほど気にならないレベルを△、明らかに白色の映り込みが視界を損ねているものを×と判定した。
(車両搭載状態による評価)
インパネ上面平坦部を300mm×300mmの大きさで、表皮と発泡ウレタン層を剥離し、実施例1で調整した角度選択反射表皮と発泡ウレタンシートの積層体を同サイズに切り出し、常温乾燥型のゴム系接着剤を用いて、インパネの剥離部分に接着した。その車両を図14のような、赤外ランプ及び送風/空調装置を有する環境試験室に設置し、以下の条件で環境を設定し60分間ソークした後、熱電対23にてインパネの表面温度を測定した。
比較としては同車両インパネの未剥離部、つまり現行表皮の部分の温度を、同時に計測した。
日射強度:767 W/m2
気温:35 ℃
湿度:70 %RH
風速:0.8 m/sec
Figure 2005041120
表1に評価結果を示した。
(表1挿入部)
試料を20°に設置した人工日射試験においては、現行のインパネ表皮(比較例1)の温度が約88℃になる環境において、実施例1から3はいずれも温度上昇を抑えることができた。特に、実施例1と3は遮光壁(ルーバー)42の片面に再帰反射効率を向上させる反射面を用いているため、温度低下の効果は20℃以上と大きい。実施例2では、遮光壁(ルーバー)42の両面が光吸収性表面54となるため、反射に寄与する面積をあまり大きく取ることができないために、温度低下は16℃程度となった。更に、比較例2では、再帰反射性能がルーバーにより妨げられることがなかったため、温度低下効果が約26℃と非常に高い効果が得られた。
試料を45°に設置した人工日射試験においては、現行のインパネ表皮の温度はやや低下し、約82℃の環境となった(比較例1)。この角度の試験においては、有効反射角aが小さい実施例2においては温度低下効果が得られなかった。また、実施例1も、太陽の位置が低い場合に有効な実施形態ではないので、温度低下効果は4℃程度であった。一方、遮光壁(ルーバー)42を20°前方に傾けた実施例3においては、前方に対する有効反射角度が大きいため、温度低下効果は約9℃と実施例1よりも大きな温度低下効果が得られた。また、この試験条件においても比較例2では、再帰反射性能がルーバーにより妨げられることがなかったため、温度低下効果は約22℃と非常に高い効果が得られた。
窓映り官能評価試験では、実施例1、2共にわずかに再帰反射面が見え、上方に設置した白色板が映り込んだが、視界を妨げるほどではなかった。一方、実施例3では窓映りが抑えられ、良好な視界が得られた。比較例2では、白色板が鮮明に映り込み、著しく前方視界を妨げた。
実車評価においては、先の試験片による実験の結果と同じく約20℃ほどの温度低下効果が得られた。このことから、本発明が実車においても効果を発揮するものであることが明らかになった。
以上のように本発明は、自動車用内装材の放熱促進表皮材として、再帰反射層表面に角度選択透過性を有するシートを積層した再帰反射材を用いることとした。また、角度選択透過性シートの遮光壁の片側を光吸収性表面、その反対側の面を光反射性表面とし、光吸収性表面が乗員側に、光反射性表面が車外側に向くように設置した。
すなわち、角度選択透過性シートにおいて、遮光壁の車外側の面を光反射性表面としているため、時刻や車両の向きによって異なる日射角度に関し、できる限り広い範囲の日射を反射することが可能となる。よって、日射を反射することで内装材の表面温度上昇を抑制しつつ、日射の反射によって生じる表皮の窓への映り込みによる乗員視界への悪影響を防止し、内装材の表面温度上昇を抑制することができる。
本発明の実施の形態における再帰反射性シートに角度選択透過性シートを積層した再帰反射材の構造を表す図である。 実施の形態における、再帰反射性シートをインストルメントパネルに設置したときに生じる日射の再帰反射と空の窓映り光路を表す図である。 実施の形態における、インストルメントパネルに設置したときに生じる日射の再帰反射光路と空の窓映り光路の遮断を表す図である。 実施の形態における、遮光壁(ルーバー)型の角度選択透過性シートの構造を表す図である。 実施の形態における、鋸歯状断面の透明シートの鋸歯の片面に遮光壁を設けた構造を表す図である。 実施の形態における、角度選択反射材における有効反射角を表す図である。 実施の形態における、遮光壁(ルーバー)の乗員側の面を光吸収性表面に、車外側の面を光反射性表面とした角度選択反射材の構造を表す図である。 実施の形態における、角度選択反射材における直視線と窓映り視線を表す図である。 実施の形態における角度選択反射材において、車外側の面の表面を光反射性表面とした場合の反射角の拡大を示す図である。 実施の形態における角度選択反射材において、ルーバー角を設けた場合の有効反射角の拡大を示す図である。 図9の角度選択反射材において、最表面に反射防止層を設けた構造を表す図である。 実施の形態における、人工日射試験の実験装置を表す図である。 実施の形態における、窓映り官能評価の実験装置を表す図である。 実施の形態における、車両搭載状態評価を行う実験装置を表す図である。
符号の説明
1 ウインドシールド
3 角度選択透過性シート
5 再帰反射性シート
10 乗員視点
11 インストルメントパネルへの直接視線
12 ルーバーへの窓映り視線
21 ソーラシミュレータ
212 人工太陽灯
213 ソーラシミュレータ
22 自動車用板ガラス
23 熱電対
24 再帰反射表皮材試料
25 断熱箱
26 視点
27 黒ラシャ紙
30 太陽
31 日射入射光
32 日射再帰反射光
41 透明樹脂フィルム
42 遮光壁(ルーバー)
43 補強フィルム
44 鋸歯シート
45 遮光壁
54 光吸収性表面
55 光反射性表面
a 有効反射角
b 非反射角
c ルーバー反射性表面に拠る拡大分
d ルーバー角に拠る拡大分

Claims (8)

  1. 再帰反射性を有する表皮材であって、再帰反射層表面に角度選択透過性を有するシートを積層したことを特徴とする表皮材。
  2. 請求項1に記載の表皮材において、
    前記角度選択透過性を有するシートが、透明樹脂中に遮光壁が設置されてなるシートであることを特徴とする表皮材。
  3. 請求項2に記載の表皮材において、
    前記遮光壁の片側の面が光吸収性表面とし、その反対面が光反射性表面としたことを特徴とする表皮材。
  4. 請求項3に記載の表皮材において、
    前記遮光壁の光吸収性表面が、マンセル明度で5.0以下に着色されてなることを特徴とする表皮材。
  5. 請求項3または4に記載の表皮材において、
    前記遮光壁の光反射性表面が、金属蒸着膜、金属スパッタ膜、金属箔、金属箔を分散した塗膜、あるいはそれらを樹脂フィルムに付着させた反射フィルムから選ばれる少なくとも1種からなる正反射性表面であることを特徴とする表皮材。
  6. 請求項3ないし5に記載の角度選択反射表皮材において、
    前記遮光壁の前傾角度が5〜30°の範囲にあることを特徴とする表皮材。
  7. 請求項1ないし9項記載の表皮材において、
    表面に反射防止層を設けたことを特徴とする表皮材。
  8. 請求項1ないし10に記載の表皮材を、インストルメントパネル、ドアトリム、リアパーセルシェルフ、ピラーガーニッシュ、ハンドルより選ばれる少なくとも一種に用いることを特徴とする車両。
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