JP2005040977A - 成形型の製造方法、成形型、プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形型の素材に種類によらず、高い表面精度を有する成形型を製造できる成形型の製造方法、成形型、レンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】成形型の成形面に自由曲面形状を形成する(処理S2,S3)。次に、成形面のスムージング及び研磨(処理S6,S7)を行い、さらに、成形面をめっきする(処理S11)。そして、再度、めっきされた成形面のスムージング及び研磨を行う(処理S6,S7)。スムージング及び研磨の際には、回転軸と、この回転軸の先端に設けられた中空ドーム状の弾性体を有する研磨工具により、成形面のスムージング及び研磨を行う。
【選択図】 図2
【解決手段】成形型の成形面に自由曲面形状を形成する(処理S2,S3)。次に、成形面のスムージング及び研磨(処理S6,S7)を行い、さらに、成形面をめっきする(処理S11)。そして、再度、めっきされた成形面のスムージング及び研磨を行う(処理S6,S7)。スムージング及び研磨の際には、回転軸と、この回転軸の先端に設けられた中空ドーム状の弾性体を有する研磨工具により、成形面のスムージング及び研磨を行う。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形型の製造方法、成形型、プラスチックレンズの製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来から、カメラ、携帯電話機器等で使用されるレンズを、射出成形法により製造することが行われている。近年、カメラ、携帯電話機器等で使用されるレンズにおいて、内面又は外面を非回転軸対称の非球面(自由曲面)としたものが普及しており、このようなレンズを射出成形で製造するには、成形型の成形面を自由曲面形状とする必要がある。自由曲面形状とするには、まず、主軸にボールエンドミル等が取り付けられたNC工作機により、成形型の素材を切削加工し、成形面に自由曲面を削りだす。そして、次に、成形面を所定の表面粗さまで、研磨加工する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−166212号公報(第3〜6頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような成形型の製造方法では、成形型の素材の種類によっては、研磨工程で、例えば、10μm程度の大きなピンホールが発生してしまい、成形面の高い表面精度を得ることができないことがある。このような成形型でレンズを製造した場合には、製造されたレンズが所定の外観基準等を満たすことができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、成形型の素材に種類によらず、高い表面精度を有する成形型を製造できる成形型の製造方法、成形型、レンズの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形型の製造方法は、成形面に自由曲面形状を有する成形型の製造方法であって、成形面に自由曲面形状を形成する形状創成工程と、前記成形面にめっき処理を施すめっき工程と、前記めっき工程でめっきされた成形面を、自由曲面形状を崩さずに研磨する研磨工程とを備えることを特徴とする。
このような本発明によれば、形状創成工程で形成された自由曲面形状の成形面にめっき処理を施しているため、形状創成工程のみでは、成形面を平滑化できないような素材を使用した場合であっても、めっき処理により成形面が平滑化されることとなる。そして、研磨工程では、自由曲面形状を崩さずにめっきされた成形面を研磨しているので、成形面をより平滑化することができ、高い表面精度を得ることができる。従って、本発明によれば、成形型の素材の種類によらず、高い表面精度を有する成形型を製造できる。
【0007】
本発明では、前記研磨工程では、回転軸と、この回転軸の端部に設けられ、前記成形面との当接面に研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体とを備えた研磨工具により、前記成形面を研磨することが好ましい。
このような本発明によれば、研磨工具の回転軸の端部には、研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体が設けられている。この弾性体は、成形面に密着し、自由曲面形状に追従して変形することができるので、自由曲面形状を崩さずに研磨することができる。
【0008】
この際、少なくとも何れかの工程の後段には、成形面の形状精度及び/または表面粗さを測定する計測工程と、前記計測工程での計測結果と、設計寸法と比較する比較判別工程とを有し、前記比較判別の結果、設計寸法とのずれが所定値以上の場合に、前段の工程に戻し、再加工することが好ましい。
このような本発明によれば、成形面の形状精度や表面粗さを測定し、設計寸法と比較し、ずれが所定値以上の場合には、前段の工程に戻して再加工しているので、設計寸法に対応した状態で後工程の作業を行うことができる。これにより、高い表面精度、表面粗さを備えた成形型を確実に得ることができ、完成した成形型の部分修正等が不要となる。
【0009】
本発明の成形型は、プラスチックレンズを成形するための成形型であって、上述した何れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする。
このような本発明によれば、成形型は、上述した何れかに記載の製造方法により製造されているため、高い表面精度を備えたものとなる。
【0010】
さらに、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、プラスチックレンズの原料となる熱可塑性樹脂を溶融し、上述した成形型に射出することを特徴とする。
このような本発明によれば、上述した成形型にプラスチックレンズを射出成形しているため、製造されるプラスチックレンズは、所定の外形基準を満たすものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、成形型1を備えた射出成形機2が示されている。
この射出成形機2は、非回転軸対称の非球面(自由曲面)を有するプラスチックレンズを射出成形により製造するためのものであり、原料となる樹脂を可塑化する射出成形機本体(図示略)と、この射出成形機本体の先端に設けられたノズル(図示略)と、移動型11及び固定型12を備える成形型1と、固定型12が固定された固定ダイプレート21と、移動型11が固定された可動ダイプレート22とを備える。
移動型11の成形面(キャビティ面)111及び固定型12の成形面(キャビティ面)121は、自由曲面形状となっており、この成形面111,121には、無電解ニッケル−リンめっきPが施されている。
固定ダイプレート21には、前記ノズルに接続されるスプール23が形成され、固定ダイプレート21と、可動ダイプレート22との間には、スプール23に連通するランナー24と、ゲート25とが形成されている。
【0012】
このような射出成形機2を用いて、プラスチックレンズは次のように製造される。
まず、射出成形機本体に、プラスチックレンズの原料となる熱可塑性樹脂のペレットを投入し、溶融混練して可塑化する。そして、この溶融した熱可塑性樹脂を、射出成形機本体から射出して、前記ノズル、スプール23、ランナー24、ゲート25を介して成形型1のキャビティ内に注入する。
そして、キャビティ内の溶融樹脂を冷却して、成形品であるプラスチックレンズを取り出す。
具体的には、可動ダイプレート22には、イジェクタピン(図示略)が取り付けられており、イジェクタピンに沿って可動ダイプレート22を動かすことで、成形型1内のプラスチックレンズを取り出すことができる。
このようにして、製造されたプラスチックレンズは、例えば、眼科や、眼鏡の小売店等で顧客の視力検査等に使用されるトライアルレンズ、カメラ、携帯電話機器等に搭載されるレンズ等に使用される。
【0013】
以上のような成形型1は、図2に示すような方法で製造される。
なお、ここでは、成形型1のうち、固定型12の製造方法について説明し、移動型11の製造方法については省略するが、移動型11の製造方法も固定型12と同様である。
まず、成形型1の固定型12の素材を加工し、砥石等を用いて、成形面(キャビティ面)となる部分以外の部分を成形する(処理S1)。これにより、固定型12の原形が完成する。
なお、成形型1の固定型12の素材としては、例えば、ステンレス焼入れ焼き戻し鋼や、プリハードン鋼等の機械的強度の高い部材が挙げられる。ここで、ステンレス焼入れ焼き戻し鋼や、プリハードン鋼としては、ウッデホルム(株)社製のSTAVAX(商品名)等が例示できる。
【0014】
次に、固定型12の成形面121に自由曲面形状を形成する(形状創成工程)。
ここで、本実施形態では、形状創成工程は、粗加工工程(処理S2)と、超精密仕上げ工程(処理S3)の2工程から構成されている。
図3(A)にも示すように、粗加工工程では、固定型12を切削して粗加工を行い、固定型12の成形面121(キャビティ面)となる部分に自由曲面形状を形成する。この際、主軸31にボールエンドミル311が取り付けられたNC工作機械3を使用する。NC工作機械3は、4軸制御されるものであり、主軸31を一定方向に回転させて切削加工する。
固定型12は、X軸及びZ軸方向に移動可能なテーブル32の上に設置されており、適宜X軸方向、Y軸方向に沿って固定型12が移動することとなる。ここでは、図示しないが、ボールエンドミル311の先端部分には、切削液が供給される。
なお、本実施形態では、切削により、固定型12の粗加工を行ったが、固定型12の素材によっては、研削盤等を用いて研削により粗加工を行ってもよい。
ここで、粗加工工程の加工条件としては、例えば、ボールエンドミル311の送り速度7000mm/min、切込み20μm、加工時間15min/pass、NC工作機3の分解能(精度)1μm程度とすることができる。
【0015】
さらに、図3(B)に示すように、超精密仕上げ加工工程では、成形面121の超精密仕上げ加工を行う。この際用いられる超精密仕上げ加工機4は、固定型12を保持するとともに、保持した固定型12を回転させる保持手段41と、成形面121を超精密仕上げ加工するディスク型ダイアモンド砥石42と、このディスク型ダイアモンド砥石42が先端に取り付けられる回転軸43と、この回転軸43を回転させるモータ44とを備える。
固定型12を保持手段41により回転させるとともに、ディスク型ダイアモンド砥石42を回転させながら、成形面121に当接させることで、成形面121の超精密仕上げ加工を行う。ここでも、ディスク型ダイアモンド砥石42と、成形面121との間には、研磨液が供給される。
ここで、超精密仕上げ加工の条件としては、例えば、ディスク型ダイアモンド砥石42の送り速度2000mm/min、切込み0.5μm、加工時間52min/pass、超精密仕上げ加工機4の分解能(精度)0.01μm〜0.005μm程度とすることができる。
すなわち、粗加工に対し、超精密仕上げ加工は、例えば、ディスク型ダイアモンド砥石42(成形面121を超精密仕上げ加工する加工部材)の送り速度がボールエンドミル311(成形面121を粗加工する加工部材)の送り速度の約1/3、切込みが約1/40、加工時間が約3.5倍となる。
【0016】
次に、形状創成工程を終えた固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S4)。形状精度は、3次元測定器により測定し、表面精度は表面粗さ測定器により測定する。
そして、測定結果を固定型12の設計寸法と比較し(比較判別工程、処理S5)、設計寸法とのずれが所定値(例えば、公差(設計寸法と許容規格寸法の差)の1/3)以上の場合には、補正値を算出し、この補正値に基づいて、再度、超精密仕上げ加工(処理S3)を行う。ずれが所定値未満となるまで、計測、比較判別と、超精密仕上げ加工とを繰り返す。
【0017】
ずれが所定値未満となった場合、次に、成形面121のスムージングを行う(スムージング工程、処理S6)。
ここで、スムージングとは、形状精度を維持したまま、後段の研磨工程に入るために必要な表面粗さに仕上げることをいう。
図4(A)に示すように、スムージングを行う研磨装置5は、固定型12が固定されるテーブル51と、成形面121を研磨する研磨工具52とを備える。
なお、ここでは、固定型12には、ドーム状のゴムカバー54が取り付けられており、固定型12の側面部分等が保護されている。
【0018】
テーブル51は、Z軸方向及びX軸方向に移動可能とされており、さらに、Y軸方向を回転軸として回転可能とされている。
研磨工具52は、図示しないモータの駆動により回転する回転軸521と、この回転軸521の先端に設けられた中空ドーム状の弾性体522とを備える。
回転軸521は、モータ等により4軸制御されており、Y軸方向、Z軸方向、X軸方向に移動可能とされるとともに、Y軸方向を回転軸として回転可能とされている。従って、このような回転軸521と、テーブル51とを回転させながら、相対的に揺動させることで、回転軸521に設けられた弾性体522とテーブル51上に設置された固定型12とが摺り合わされることとなる。
弾性体522は、その湾曲面が固定型12の成形面121に当接する。そして、この弾性体522は、内部が中空となっているので、内部の空気圧を調整することができ、成形面121にかかる負荷を調整することができる。
【0019】
さらに、弾性体522の固定型12の成形面121との対向面522Aには、図5に示すような研磨部材である研磨紙53が貼り付けられる。この研磨紙53には、弾性体522の対向面522Aの曲面形状になじむように、径方向に沿って複数の切込み531が形成されている。ここで、このような研磨紙53としては、例えば、1500番の耐水研磨紙等を挙げることができる。
ここで、以上のような研磨装置5を用いたスムージングの条件としては、例えば、研磨紙を1500番の耐水研磨紙とし、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.8kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード700mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとすることができる。
【0020】
次に、固定型12の成形面121の研磨を行う(研磨工程、処理S7)。
研磨は、前述したスムージング工程で使用した研磨装置5を用いて行う。スムージングの際には、弾性体522の対向面522Aに研磨紙53を貼り付けていたが、研磨を行う場合には、研磨部材として研磨布、例えば、起毛パッド55を弾性体522の対向面522Aに貼り付ける。
ここで、研磨を行う条件としては、例えば、研磨剤として、ポリプラ103A(粒径1μm)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.8kg、研磨工具52の弾性体522の回転数680rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード300mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとすることができる。
【0021】
次に、再度、固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S8)。
そして、測定結果を固定型12の設計寸法と比較し(比較判別工程、処理S9)、設計寸法とのずれが所定値(例えば、公差(設計寸法と許容規格寸法の差)の1/3)以上の場合には、補正値を算出し、この補正値に基づいて、処理S3〜処理S9までの処理を繰り返す。
ずれが所定値未満となった場合には、成形面121にめっきが施されているか否かを判別する(処理S10)。そして、成形面121にめっきが施されていない場合には、めっき処理を行う(めっき工程、処理S11)。ここで、めっきは、例えば、無電解ニッケル−リンめっきであり、その膜厚は、例えば、100μm程度である。
【0022】
次に、再度、固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S12)。
さらに、めっき処理を行った後に、めっきの厚みの計測を行う(めっき厚計測工程、処理S13)。次に、めっき厚が所定値以上であるか否かの判別を行う(めっき厚比較判別工程、処理S14)。めっきの厚みの所定値とは例えば、100μm程度である。めっきの厚みが所定値未満の場合は、薬品等でめっきを剥がし(めっき剥離工程、処理S15)、その後めっき処理工程(処理S11)で再めっきを行う。そして、再度めっき厚の計測(処理S13)及び比較判別(処理S14)を行い、めっき厚が所定値以上となるまで、この作業を繰り返す。
一方、めっき厚が所定値以上であった場合には、計測工程(処理S12)における測定結果を固定型12の設計寸法と比較する(比較判別工程、処理S16)。
設計寸法とのずれが所定値以上の場合には、補正値を算出し(補正値算出工程、処理S17)、該補正値が所定値以上であるか否かを判別する(補正値比較判別工程、処理S18)。該補正値が所定値以上である場合は、薬品等でめっきを剥がし(処理S15)、その後めっき処理工程(処理S11)で再めっきを行う。ここで言う所定値とは、形状創成工程(超精密仕上げ加工工程)の加工取りしろを確保できる値のことで、例えば数μmから数十μm位であり、この値以上の補正値の場合は切削による形状出しに時間を要するため、再めっき処理を行う。
該補正値が所定値未満である場合は再度、この補正値に基づいて超精密仕上げ加工が施される(処理S3)。そして、計測及び比較判別(処理S4,S5)が行われ、ここで、ずれ量が所定値未満となると、めっきが施された成形面121のスムージングが行われる(処理S6)。
なお、比較判別工程の処理S16で、設計寸法とのずれが所定値未満である場合には、超精密仕上げ加工は行われず、めっきが施された成形面121のスムージングが行われる(スムージング工程、処理S6)。
【0023】
スムージングは、めっき処理前のスムージングと同様の研磨装置5を用いて同様の方法で行われる。研磨条件は、例えば、以下のようである。
研磨紙53としては、厚さ9μmの研磨紙(3M,262L、3mil、INPERIAL MICROFINISHING Film AG5)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.0kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード300mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとすることができる。また、このようなスムージングの1回の時間を60秒とし、スムージングを2回行う。
【0024】
次に、スムージングを行った成形面121の研磨を行う(研磨工程、処理S7)。ここでの研磨工程は、第1研磨工程と、第2研磨工程との2工程で行われる。なお、第1研磨工程及び第2研磨工程では、前述した研磨装置5が使用される。
第1研磨工程の研磨条件は、例えば、以下のようである。
研磨布としては、起毛パッド55を使用し、研磨剤として、ポリプラ103A(粒径1μm)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.0kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード150mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとする。また、1回の研磨時間を60秒とし、これを3回繰り返す。
なお、ここでは、固定型12の成形面121に前記研磨剤を含有する研磨液を筆で塗布することにより、前記研磨剤を供給する。
【0025】
第2研磨工程の条件は、例えば、以下のようになる。
研磨布としては、起毛パッド55を使用し、研磨剤として、コロイダルシリカ(粒径72nm、商品名コンポール80)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.0kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード150mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとする。ここでは、固定型12の揺動スピードを弾性体522の回転数に比べ極端に遅くすることが好ましい。
また、1回の研磨時間を60秒とし、1回だけ行う。研磨剤の供給は研磨剤を含有した研磨液を容器から200mg程度滴下する方法で行う。
【0026】
以上のような研磨工程を終えた固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S8)。
そして、測定結果を固定型12の設計寸法と比較し(処理S9)、設計寸法とのずれが所定値以上の場合には、補正値を算出し、この補正値に基づいて、再度、S3〜S9の処理を繰り返す。
そして、研磨後の計測結果と、設計寸法とのずれが所定値未満となった時点で、固定型12が完成する。
【0027】
従って、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)形状創成工程で形成された自由曲面形状の成形面121にめっき処理を施しているため、本実施形態のように成形型1の素材として、めっき処理前の研磨後にピンホールが発生してしまうような素材であるステンレス焼入れ焼き戻し鋼や、プリハードン鋼等を使用した場合であっても、成形面121が平滑化されることとなる。
そして、研磨工程では、自由曲面形状を崩さずにめっきされた成形面121を研磨しているので、成形面121をより平滑化することができ、高い表面精度を得ることができる。
【0028】
(2)さらに、スムージング及び研磨の際に用いる研磨装置5の研磨工具52の回転軸521の端部には、研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体522が設けられている。この弾性体522は、成形面121に密着し、自由曲面形状に追従して変形することができるので、自由曲面形状を崩さずに成形面121をスムージング及び研磨することができる。
(3)また、弾性体522は、中空となっているため、内部の空気圧を調整することができ、成形型1の素材等に応じて、成形面121にかかる圧力を調整することができる。これにより、自由曲面を崩さずに、確実に成形面121をスムージング及び研磨することができる。
さらに、めっき後の研磨工程の第2研磨工程において、固定型12の揺動スピードを弾性体522の回転数に比べ極端に遅くしているので、これによっても自由曲面形状を崩さずに成形面121を確実に研磨することができる。
【0029】
(4)以上のように自由曲面を崩さずに、成形面121が研磨された成形型1を製造することができるので、この成形型1を使用して製造されるプラスチックレンズは、所定の外形基準を満たすものとなる。
また、自由曲面を有した成形型1を製造することができるので、射出成形により自由曲面を有するプラスチックレンズを製造することができ、プラスチックレンズの製造コストを低減させることが可能となる。
(5)さらに、本実施形態では、超精密仕上げ加工工程、研磨工程、めっき工程の各工程の後段で、成形面121の形状精度や表面粗さを測定し、設計寸法と比較し、ずれが所定値以上の場合には、前工程に戻して加工しているので、設計寸法に対応した状態で後工程の作業を行うことができる。これにより、高い表面精度、表面粗さを備えた成形型1を確実に得ることができ、完成した成形型1の部分修正等が不要となる。
【0030】
(6)また、めっき工程の前に、成形面121のスムージング及び研磨を行っており、成形面121の表面を鏡面に近い状態としてから、めっきを施している。
このようにすることで、成形面121に形成されたピンホール等を除いてからめっきを行うことができ、めっき後の成形面121をより平滑化することができる。
(7)さらに、本実施形態では、スムージング工程、研磨工程では、研磨装置5を用いてスムージング又は研磨を行っている。機械を用いて研磨、スムージングを行うことができるので、手作業で研磨、スムージングを行う場合に比べ、作業効率を向上させることができる。
【0031】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、めっき工程の前に、スムージング及び研磨を行っていたが、めっき工程の前のスムージング及び研磨はなくてもよい。例えば、超精密仕上げ加工工程において、成形面がある程度平滑化できるような素材を用いて成形型を成形する場合には、めっき工程の前のスムージング及び研磨は不要となる。これにより、成形型の製造工程の工程数を削減でき、製造にかかる手間を省くことができる。
【0032】
さらに、前記実施形態では、超精密仕上げ加工工程、研磨工程、めっき工程の各工程の後段で、成形面121の形状精度及び表面粗さの双方を測定し(計測工程)、設計寸法と比較した(比較判別工程)が、例えば、超精密仕上げ加工工程、研磨工程の後段では、成形面121の形状精度のみを測定し、設計寸法との比較を行い、めっき工程の後段で、成形面121の表面粗さのみを測定して、設計寸法との比較を行ってもよい。このようにすることで、成形型1の製造効率を高めることができる。
また、計測工程及び比較判別工程はなくてもよい。例えば、めっき処理が安定して行えるような場合には、めっき処理後の計測工程、比較判別工程を省いてもよい。
前記実施形態では、形状創成工程では、機械加工により、固定型12の成形面121の形成を行ったが、これに限らず、例えば、レーザ加工、放電加工等により成形面121の形状創成を行ってもよい。
さらに、前記実施形態では、成形面121を研磨、スムージングする際に、回転軸521と、この回転軸521の先端に設けられた中空ドーム状の弾性体522とを備えた研磨工具52を使用したが、研磨工具はこのようなものに限らず、成形面121の自由曲面形状を崩さずに、成形面121を研磨できるようなものであれば、任意である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる成形型を示す模式図。
【図2】前記成形型の製造方法を示すフローチャート。
【図3】前記製造方法の形状創成工程におけるNC工作機械及び超精密仕上げ加工機を示す模式図。
【図4】スムージング工程及び研磨工程における研磨装置を示す模式図。
【図5】研磨装置に取り付けられる研磨紙を示す平面図。
【符号の説明】
1…成形型、2…射出成形機、3…NC工作機械、4…超精密仕上げ加工機、5…研磨装置、11…移動型、12…固定型、21…固定ダイプレート、22…可動ダイプレート、23…スプール、24…ランナー、25…ゲート、31…主軸、32…テーブル、41…保持手段、42…ディスク型ダイアモンド砥石、43…回転軸、44…モータ、51…テーブル、52…研磨工具、53…研磨紙、54…ゴムカバー、55…起毛パッド、121…成形面、311…ボールエンドミル、521…回転軸、522…弾性体、522A…対向面
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形型の製造方法、成形型、プラスチックレンズの製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来から、カメラ、携帯電話機器等で使用されるレンズを、射出成形法により製造することが行われている。近年、カメラ、携帯電話機器等で使用されるレンズにおいて、内面又は外面を非回転軸対称の非球面(自由曲面)としたものが普及しており、このようなレンズを射出成形で製造するには、成形型の成形面を自由曲面形状とする必要がある。自由曲面形状とするには、まず、主軸にボールエンドミル等が取り付けられたNC工作機により、成形型の素材を切削加工し、成形面に自由曲面を削りだす。そして、次に、成形面を所定の表面粗さまで、研磨加工する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−166212号公報(第3〜6頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような成形型の製造方法では、成形型の素材の種類によっては、研磨工程で、例えば、10μm程度の大きなピンホールが発生してしまい、成形面の高い表面精度を得ることができないことがある。このような成形型でレンズを製造した場合には、製造されたレンズが所定の外観基準等を満たすことができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、成形型の素材に種類によらず、高い表面精度を有する成形型を製造できる成形型の製造方法、成形型、レンズの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形型の製造方法は、成形面に自由曲面形状を有する成形型の製造方法であって、成形面に自由曲面形状を形成する形状創成工程と、前記成形面にめっき処理を施すめっき工程と、前記めっき工程でめっきされた成形面を、自由曲面形状を崩さずに研磨する研磨工程とを備えることを特徴とする。
このような本発明によれば、形状創成工程で形成された自由曲面形状の成形面にめっき処理を施しているため、形状創成工程のみでは、成形面を平滑化できないような素材を使用した場合であっても、めっき処理により成形面が平滑化されることとなる。そして、研磨工程では、自由曲面形状を崩さずにめっきされた成形面を研磨しているので、成形面をより平滑化することができ、高い表面精度を得ることができる。従って、本発明によれば、成形型の素材の種類によらず、高い表面精度を有する成形型を製造できる。
【0007】
本発明では、前記研磨工程では、回転軸と、この回転軸の端部に設けられ、前記成形面との当接面に研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体とを備えた研磨工具により、前記成形面を研磨することが好ましい。
このような本発明によれば、研磨工具の回転軸の端部には、研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体が設けられている。この弾性体は、成形面に密着し、自由曲面形状に追従して変形することができるので、自由曲面形状を崩さずに研磨することができる。
【0008】
この際、少なくとも何れかの工程の後段には、成形面の形状精度及び/または表面粗さを測定する計測工程と、前記計測工程での計測結果と、設計寸法と比較する比較判別工程とを有し、前記比較判別の結果、設計寸法とのずれが所定値以上の場合に、前段の工程に戻し、再加工することが好ましい。
このような本発明によれば、成形面の形状精度や表面粗さを測定し、設計寸法と比較し、ずれが所定値以上の場合には、前段の工程に戻して再加工しているので、設計寸法に対応した状態で後工程の作業を行うことができる。これにより、高い表面精度、表面粗さを備えた成形型を確実に得ることができ、完成した成形型の部分修正等が不要となる。
【0009】
本発明の成形型は、プラスチックレンズを成形するための成形型であって、上述した何れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする。
このような本発明によれば、成形型は、上述した何れかに記載の製造方法により製造されているため、高い表面精度を備えたものとなる。
【0010】
さらに、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、プラスチックレンズの原料となる熱可塑性樹脂を溶融し、上述した成形型に射出することを特徴とする。
このような本発明によれば、上述した成形型にプラスチックレンズを射出成形しているため、製造されるプラスチックレンズは、所定の外形基準を満たすものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、成形型1を備えた射出成形機2が示されている。
この射出成形機2は、非回転軸対称の非球面(自由曲面)を有するプラスチックレンズを射出成形により製造するためのものであり、原料となる樹脂を可塑化する射出成形機本体(図示略)と、この射出成形機本体の先端に設けられたノズル(図示略)と、移動型11及び固定型12を備える成形型1と、固定型12が固定された固定ダイプレート21と、移動型11が固定された可動ダイプレート22とを備える。
移動型11の成形面(キャビティ面)111及び固定型12の成形面(キャビティ面)121は、自由曲面形状となっており、この成形面111,121には、無電解ニッケル−リンめっきPが施されている。
固定ダイプレート21には、前記ノズルに接続されるスプール23が形成され、固定ダイプレート21と、可動ダイプレート22との間には、スプール23に連通するランナー24と、ゲート25とが形成されている。
【0012】
このような射出成形機2を用いて、プラスチックレンズは次のように製造される。
まず、射出成形機本体に、プラスチックレンズの原料となる熱可塑性樹脂のペレットを投入し、溶融混練して可塑化する。そして、この溶融した熱可塑性樹脂を、射出成形機本体から射出して、前記ノズル、スプール23、ランナー24、ゲート25を介して成形型1のキャビティ内に注入する。
そして、キャビティ内の溶融樹脂を冷却して、成形品であるプラスチックレンズを取り出す。
具体的には、可動ダイプレート22には、イジェクタピン(図示略)が取り付けられており、イジェクタピンに沿って可動ダイプレート22を動かすことで、成形型1内のプラスチックレンズを取り出すことができる。
このようにして、製造されたプラスチックレンズは、例えば、眼科や、眼鏡の小売店等で顧客の視力検査等に使用されるトライアルレンズ、カメラ、携帯電話機器等に搭載されるレンズ等に使用される。
【0013】
以上のような成形型1は、図2に示すような方法で製造される。
なお、ここでは、成形型1のうち、固定型12の製造方法について説明し、移動型11の製造方法については省略するが、移動型11の製造方法も固定型12と同様である。
まず、成形型1の固定型12の素材を加工し、砥石等を用いて、成形面(キャビティ面)となる部分以外の部分を成形する(処理S1)。これにより、固定型12の原形が完成する。
なお、成形型1の固定型12の素材としては、例えば、ステンレス焼入れ焼き戻し鋼や、プリハードン鋼等の機械的強度の高い部材が挙げられる。ここで、ステンレス焼入れ焼き戻し鋼や、プリハードン鋼としては、ウッデホルム(株)社製のSTAVAX(商品名)等が例示できる。
【0014】
次に、固定型12の成形面121に自由曲面形状を形成する(形状創成工程)。
ここで、本実施形態では、形状創成工程は、粗加工工程(処理S2)と、超精密仕上げ工程(処理S3)の2工程から構成されている。
図3(A)にも示すように、粗加工工程では、固定型12を切削して粗加工を行い、固定型12の成形面121(キャビティ面)となる部分に自由曲面形状を形成する。この際、主軸31にボールエンドミル311が取り付けられたNC工作機械3を使用する。NC工作機械3は、4軸制御されるものであり、主軸31を一定方向に回転させて切削加工する。
固定型12は、X軸及びZ軸方向に移動可能なテーブル32の上に設置されており、適宜X軸方向、Y軸方向に沿って固定型12が移動することとなる。ここでは、図示しないが、ボールエンドミル311の先端部分には、切削液が供給される。
なお、本実施形態では、切削により、固定型12の粗加工を行ったが、固定型12の素材によっては、研削盤等を用いて研削により粗加工を行ってもよい。
ここで、粗加工工程の加工条件としては、例えば、ボールエンドミル311の送り速度7000mm/min、切込み20μm、加工時間15min/pass、NC工作機3の分解能(精度)1μm程度とすることができる。
【0015】
さらに、図3(B)に示すように、超精密仕上げ加工工程では、成形面121の超精密仕上げ加工を行う。この際用いられる超精密仕上げ加工機4は、固定型12を保持するとともに、保持した固定型12を回転させる保持手段41と、成形面121を超精密仕上げ加工するディスク型ダイアモンド砥石42と、このディスク型ダイアモンド砥石42が先端に取り付けられる回転軸43と、この回転軸43を回転させるモータ44とを備える。
固定型12を保持手段41により回転させるとともに、ディスク型ダイアモンド砥石42を回転させながら、成形面121に当接させることで、成形面121の超精密仕上げ加工を行う。ここでも、ディスク型ダイアモンド砥石42と、成形面121との間には、研磨液が供給される。
ここで、超精密仕上げ加工の条件としては、例えば、ディスク型ダイアモンド砥石42の送り速度2000mm/min、切込み0.5μm、加工時間52min/pass、超精密仕上げ加工機4の分解能(精度)0.01μm〜0.005μm程度とすることができる。
すなわち、粗加工に対し、超精密仕上げ加工は、例えば、ディスク型ダイアモンド砥石42(成形面121を超精密仕上げ加工する加工部材)の送り速度がボールエンドミル311(成形面121を粗加工する加工部材)の送り速度の約1/3、切込みが約1/40、加工時間が約3.5倍となる。
【0016】
次に、形状創成工程を終えた固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S4)。形状精度は、3次元測定器により測定し、表面精度は表面粗さ測定器により測定する。
そして、測定結果を固定型12の設計寸法と比較し(比較判別工程、処理S5)、設計寸法とのずれが所定値(例えば、公差(設計寸法と許容規格寸法の差)の1/3)以上の場合には、補正値を算出し、この補正値に基づいて、再度、超精密仕上げ加工(処理S3)を行う。ずれが所定値未満となるまで、計測、比較判別と、超精密仕上げ加工とを繰り返す。
【0017】
ずれが所定値未満となった場合、次に、成形面121のスムージングを行う(スムージング工程、処理S6)。
ここで、スムージングとは、形状精度を維持したまま、後段の研磨工程に入るために必要な表面粗さに仕上げることをいう。
図4(A)に示すように、スムージングを行う研磨装置5は、固定型12が固定されるテーブル51と、成形面121を研磨する研磨工具52とを備える。
なお、ここでは、固定型12には、ドーム状のゴムカバー54が取り付けられており、固定型12の側面部分等が保護されている。
【0018】
テーブル51は、Z軸方向及びX軸方向に移動可能とされており、さらに、Y軸方向を回転軸として回転可能とされている。
研磨工具52は、図示しないモータの駆動により回転する回転軸521と、この回転軸521の先端に設けられた中空ドーム状の弾性体522とを備える。
回転軸521は、モータ等により4軸制御されており、Y軸方向、Z軸方向、X軸方向に移動可能とされるとともに、Y軸方向を回転軸として回転可能とされている。従って、このような回転軸521と、テーブル51とを回転させながら、相対的に揺動させることで、回転軸521に設けられた弾性体522とテーブル51上に設置された固定型12とが摺り合わされることとなる。
弾性体522は、その湾曲面が固定型12の成形面121に当接する。そして、この弾性体522は、内部が中空となっているので、内部の空気圧を調整することができ、成形面121にかかる負荷を調整することができる。
【0019】
さらに、弾性体522の固定型12の成形面121との対向面522Aには、図5に示すような研磨部材である研磨紙53が貼り付けられる。この研磨紙53には、弾性体522の対向面522Aの曲面形状になじむように、径方向に沿って複数の切込み531が形成されている。ここで、このような研磨紙53としては、例えば、1500番の耐水研磨紙等を挙げることができる。
ここで、以上のような研磨装置5を用いたスムージングの条件としては、例えば、研磨紙を1500番の耐水研磨紙とし、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.8kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード700mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとすることができる。
【0020】
次に、固定型12の成形面121の研磨を行う(研磨工程、処理S7)。
研磨は、前述したスムージング工程で使用した研磨装置5を用いて行う。スムージングの際には、弾性体522の対向面522Aに研磨紙53を貼り付けていたが、研磨を行う場合には、研磨部材として研磨布、例えば、起毛パッド55を弾性体522の対向面522Aに貼り付ける。
ここで、研磨を行う条件としては、例えば、研磨剤として、ポリプラ103A(粒径1μm)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.8kg、研磨工具52の弾性体522の回転数680rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード300mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとすることができる。
【0021】
次に、再度、固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S8)。
そして、測定結果を固定型12の設計寸法と比較し(比較判別工程、処理S9)、設計寸法とのずれが所定値(例えば、公差(設計寸法と許容規格寸法の差)の1/3)以上の場合には、補正値を算出し、この補正値に基づいて、処理S3〜処理S9までの処理を繰り返す。
ずれが所定値未満となった場合には、成形面121にめっきが施されているか否かを判別する(処理S10)。そして、成形面121にめっきが施されていない場合には、めっき処理を行う(めっき工程、処理S11)。ここで、めっきは、例えば、無電解ニッケル−リンめっきであり、その膜厚は、例えば、100μm程度である。
【0022】
次に、再度、固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S12)。
さらに、めっき処理を行った後に、めっきの厚みの計測を行う(めっき厚計測工程、処理S13)。次に、めっき厚が所定値以上であるか否かの判別を行う(めっき厚比較判別工程、処理S14)。めっきの厚みの所定値とは例えば、100μm程度である。めっきの厚みが所定値未満の場合は、薬品等でめっきを剥がし(めっき剥離工程、処理S15)、その後めっき処理工程(処理S11)で再めっきを行う。そして、再度めっき厚の計測(処理S13)及び比較判別(処理S14)を行い、めっき厚が所定値以上となるまで、この作業を繰り返す。
一方、めっき厚が所定値以上であった場合には、計測工程(処理S12)における測定結果を固定型12の設計寸法と比較する(比較判別工程、処理S16)。
設計寸法とのずれが所定値以上の場合には、補正値を算出し(補正値算出工程、処理S17)、該補正値が所定値以上であるか否かを判別する(補正値比較判別工程、処理S18)。該補正値が所定値以上である場合は、薬品等でめっきを剥がし(処理S15)、その後めっき処理工程(処理S11)で再めっきを行う。ここで言う所定値とは、形状創成工程(超精密仕上げ加工工程)の加工取りしろを確保できる値のことで、例えば数μmから数十μm位であり、この値以上の補正値の場合は切削による形状出しに時間を要するため、再めっき処理を行う。
該補正値が所定値未満である場合は再度、この補正値に基づいて超精密仕上げ加工が施される(処理S3)。そして、計測及び比較判別(処理S4,S5)が行われ、ここで、ずれ量が所定値未満となると、めっきが施された成形面121のスムージングが行われる(処理S6)。
なお、比較判別工程の処理S16で、設計寸法とのずれが所定値未満である場合には、超精密仕上げ加工は行われず、めっきが施された成形面121のスムージングが行われる(スムージング工程、処理S6)。
【0023】
スムージングは、めっき処理前のスムージングと同様の研磨装置5を用いて同様の方法で行われる。研磨条件は、例えば、以下のようである。
研磨紙53としては、厚さ9μmの研磨紙(3M,262L、3mil、INPERIAL MICROFINISHING Film AG5)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.0kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード300mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとすることができる。また、このようなスムージングの1回の時間を60秒とし、スムージングを2回行う。
【0024】
次に、スムージングを行った成形面121の研磨を行う(研磨工程、処理S7)。ここでの研磨工程は、第1研磨工程と、第2研磨工程との2工程で行われる。なお、第1研磨工程及び第2研磨工程では、前述した研磨装置5が使用される。
第1研磨工程の研磨条件は、例えば、以下のようである。
研磨布としては、起毛パッド55を使用し、研磨剤として、ポリプラ103A(粒径1μm)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.0kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード150mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとする。また、1回の研磨時間を60秒とし、これを3回繰り返す。
なお、ここでは、固定型12の成形面121に前記研磨剤を含有する研磨液を筆で塗布することにより、前記研磨剤を供給する。
【0025】
第2研磨工程の条件は、例えば、以下のようになる。
研磨布としては、起毛パッド55を使用し、研磨剤として、コロイダルシリカ(粒径72nm、商品名コンポール80)を使用し、研磨工具52から固定型12にかかる荷重3.0kg、研磨工具52の弾性体522の回転数140rpm、テーブル51上に設置された固定型12の揺動スピード150mm/min、テーブル51上に設置された固定型12の回転数50rpmとする。ここでは、固定型12の揺動スピードを弾性体522の回転数に比べ極端に遅くすることが好ましい。
また、1回の研磨時間を60秒とし、1回だけ行う。研磨剤の供給は研磨剤を含有した研磨液を容器から200mg程度滴下する方法で行う。
【0026】
以上のような研磨工程を終えた固定型12の成形面121の形状精度と表面精度(表面粗さ)計測を行う(計測工程、処理S8)。
そして、測定結果を固定型12の設計寸法と比較し(処理S9)、設計寸法とのずれが所定値以上の場合には、補正値を算出し、この補正値に基づいて、再度、S3〜S9の処理を繰り返す。
そして、研磨後の計測結果と、設計寸法とのずれが所定値未満となった時点で、固定型12が完成する。
【0027】
従って、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)形状創成工程で形成された自由曲面形状の成形面121にめっき処理を施しているため、本実施形態のように成形型1の素材として、めっき処理前の研磨後にピンホールが発生してしまうような素材であるステンレス焼入れ焼き戻し鋼や、プリハードン鋼等を使用した場合であっても、成形面121が平滑化されることとなる。
そして、研磨工程では、自由曲面形状を崩さずにめっきされた成形面121を研磨しているので、成形面121をより平滑化することができ、高い表面精度を得ることができる。
【0028】
(2)さらに、スムージング及び研磨の際に用いる研磨装置5の研磨工具52の回転軸521の端部には、研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体522が設けられている。この弾性体522は、成形面121に密着し、自由曲面形状に追従して変形することができるので、自由曲面形状を崩さずに成形面121をスムージング及び研磨することができる。
(3)また、弾性体522は、中空となっているため、内部の空気圧を調整することができ、成形型1の素材等に応じて、成形面121にかかる圧力を調整することができる。これにより、自由曲面を崩さずに、確実に成形面121をスムージング及び研磨することができる。
さらに、めっき後の研磨工程の第2研磨工程において、固定型12の揺動スピードを弾性体522の回転数に比べ極端に遅くしているので、これによっても自由曲面形状を崩さずに成形面121を確実に研磨することができる。
【0029】
(4)以上のように自由曲面を崩さずに、成形面121が研磨された成形型1を製造することができるので、この成形型1を使用して製造されるプラスチックレンズは、所定の外形基準を満たすものとなる。
また、自由曲面を有した成形型1を製造することができるので、射出成形により自由曲面を有するプラスチックレンズを製造することができ、プラスチックレンズの製造コストを低減させることが可能となる。
(5)さらに、本実施形態では、超精密仕上げ加工工程、研磨工程、めっき工程の各工程の後段で、成形面121の形状精度や表面粗さを測定し、設計寸法と比較し、ずれが所定値以上の場合には、前工程に戻して加工しているので、設計寸法に対応した状態で後工程の作業を行うことができる。これにより、高い表面精度、表面粗さを備えた成形型1を確実に得ることができ、完成した成形型1の部分修正等が不要となる。
【0030】
(6)また、めっき工程の前に、成形面121のスムージング及び研磨を行っており、成形面121の表面を鏡面に近い状態としてから、めっきを施している。
このようにすることで、成形面121に形成されたピンホール等を除いてからめっきを行うことができ、めっき後の成形面121をより平滑化することができる。
(7)さらに、本実施形態では、スムージング工程、研磨工程では、研磨装置5を用いてスムージング又は研磨を行っている。機械を用いて研磨、スムージングを行うことができるので、手作業で研磨、スムージングを行う場合に比べ、作業効率を向上させることができる。
【0031】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、めっき工程の前に、スムージング及び研磨を行っていたが、めっき工程の前のスムージング及び研磨はなくてもよい。例えば、超精密仕上げ加工工程において、成形面がある程度平滑化できるような素材を用いて成形型を成形する場合には、めっき工程の前のスムージング及び研磨は不要となる。これにより、成形型の製造工程の工程数を削減でき、製造にかかる手間を省くことができる。
【0032】
さらに、前記実施形態では、超精密仕上げ加工工程、研磨工程、めっき工程の各工程の後段で、成形面121の形状精度及び表面粗さの双方を測定し(計測工程)、設計寸法と比較した(比較判別工程)が、例えば、超精密仕上げ加工工程、研磨工程の後段では、成形面121の形状精度のみを測定し、設計寸法との比較を行い、めっき工程の後段で、成形面121の表面粗さのみを測定して、設計寸法との比較を行ってもよい。このようにすることで、成形型1の製造効率を高めることができる。
また、計測工程及び比較判別工程はなくてもよい。例えば、めっき処理が安定して行えるような場合には、めっき処理後の計測工程、比較判別工程を省いてもよい。
前記実施形態では、形状創成工程では、機械加工により、固定型12の成形面121の形成を行ったが、これに限らず、例えば、レーザ加工、放電加工等により成形面121の形状創成を行ってもよい。
さらに、前記実施形態では、成形面121を研磨、スムージングする際に、回転軸521と、この回転軸521の先端に設けられた中空ドーム状の弾性体522とを備えた研磨工具52を使用したが、研磨工具はこのようなものに限らず、成形面121の自由曲面形状を崩さずに、成形面121を研磨できるようなものであれば、任意である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる成形型を示す模式図。
【図2】前記成形型の製造方法を示すフローチャート。
【図3】前記製造方法の形状創成工程におけるNC工作機械及び超精密仕上げ加工機を示す模式図。
【図4】スムージング工程及び研磨工程における研磨装置を示す模式図。
【図5】研磨装置に取り付けられる研磨紙を示す平面図。
【符号の説明】
1…成形型、2…射出成形機、3…NC工作機械、4…超精密仕上げ加工機、5…研磨装置、11…移動型、12…固定型、21…固定ダイプレート、22…可動ダイプレート、23…スプール、24…ランナー、25…ゲート、31…主軸、32…テーブル、41…保持手段、42…ディスク型ダイアモンド砥石、43…回転軸、44…モータ、51…テーブル、52…研磨工具、53…研磨紙、54…ゴムカバー、55…起毛パッド、121…成形面、311…ボールエンドミル、521…回転軸、522…弾性体、522A…対向面
Claims (5)
- 成形面に自由曲面形状を有する成形型の製造方法であって、
成形面に自由曲面形状を形成する形状創成工程と、
前記成形面にめっき処理を施すめっき工程と、
前記めっき工程でめっきされた成形面を、自由曲面形状を崩さずに研磨する研磨工程とを備えることを特徴とする成形型の製造方法。 - 請求項1に記載の成形型の製造方法において、
前記研磨工程では、回転軸と、この回転軸の端部に設けられ、前記成形面との当接面に研磨部材が取り付けられた中空ドーム状の弾性体とを備えた研磨工具により、前記成形面を研磨することを特徴とする成形型の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の成形型の製造方法において、
少なくとも何れかの工程の後段には、成形面の形状精度及び/または表面粗さを測定する計測工程と、前記計測工程での計測結果と、設計寸法と比較する比較判別工程とを有し、
前記比較判別の結果、設計寸法とのずれが所定値以上の場合に、前段の工程に戻し、再加工することを特徴とする成形型の製造方法。 - プラスチックレンズを成形するための成形型であって、
請求項1から3の何れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする成形型。 - プラスチックレンズの原料となる熱可塑性樹脂を溶融し、請求項4に記載の成形型に射出することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
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Legal Events
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20061003 |