JP2005040951A - 熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】心線の並びが良好で、寸法精度も高く、そして心線を熱可塑性エラストマーで充分に包囲して接着性を高めてベルト寿命を向上させた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及び歯付ベルトを提供する。
【解決手段】歯部成形部を設けた内型3を外型2の第1層目成形用空所5aに設置して、熱可塑性エラストマーを、ゲート入口8からこれと相対向する位置にあるゲート末端41までゲート体積を変化させたリングゲート14から内型の歯部成形部へ流し込んでベルト歯部層15を形成し、外型2から脱型した内型3のベルト歯部層15の周面に、心線16をスパイラルに巻き付けし、上記内型3を外型の第2層目成形用空所2b内に設置して熱可塑性エラストマーを上記心線16の巻き付け幅を最大ゲート幅とするように設定したフィルムゲート46から心線16の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層17を成形し、内型3からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる。
【選択図】 図7
【解決手段】歯部成形部を設けた内型3を外型2の第1層目成形用空所5aに設置して、熱可塑性エラストマーを、ゲート入口8からこれと相対向する位置にあるゲート末端41までゲート体積を変化させたリングゲート14から内型の歯部成形部へ流し込んでベルト歯部層15を形成し、外型2から脱型した内型3のベルト歯部層15の周面に、心線16をスパイラルに巻き付けし、上記内型3を外型の第2層目成形用空所2b内に設置して熱可塑性エラストマーを上記心線16の巻き付け幅を最大ゲート幅とするように設定したフィルムゲート46から心線16の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層17を成形し、内型3からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルトに係り、詳しくは溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くし、また内型を安定して設置して精度の高い寸法を有する熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタン製歯付ベルトはスリップのない回転を伝える同期伝動方式であるため、一般産業用、精密機器用等の動力伝動用ベルトとして広く使用されている。このポリウレタン製歯付ベルトは通常注型方法によって製造され、具体的には突条のノーズに心線を巻き付けた円筒状内型を外型に入れ、内型と外型で形成されたキャビティーに液状ポリウレタンを注型し硬化した後、内型から脱型した広幅のベルトスリーブを所定幅に切断する方法が取られている。このノーズは心線の中心部とベルト溝底面間の距離であるPLD値を適度に維持し、プーリとの噛み合いを最適なものにしている。
【0003】
他の製造方法である射出成形法では、突条のノーズに心線を巻き付けた円筒状内型を外型に入れた金型装置を射出成形機に装着し、溶融樹脂を射出成形機のノーズからスプルー、放射状ランナー、ゲートを経由して空気抜きをしながらキャビティーに充填した後、内型からベルトスリーブを脱型し、ベルトスリーブを所定幅に切断して歯付ベルトを作製していた。
【0004】
また、他の方法としては、予めコードのような心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを成形し、形成するベルトの幅に切断したものを内型に嵌挿し、この内型を外型に組み合わせた後、熱可塑性樹脂を型内に射出して充填するもので、心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを使用することによって心線の乱れを阻止することが、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ショット成形でノーズを無くした1層目の樹脂層を成形し、この樹脂層の周面に心線をスパイラルに巻き付けた後、2層目の溶融樹脂をキャビティに射出し充満させてベルト背面部に成形する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−237934号公報
【特許文献2】
特開2003−25372号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、心線をノーズに巻き付ける製造方法では、樹脂がキャビティに加圧下のもとで成形硬化するために、収縮応力が内部残留応力として残り、ベルト走行を長期に行うと、ベルト歯元部から亀裂が発生しやすいことがあった。また、ノーズの存在するベルトを走行させると、プーリ上で多角形に折れた状態になり、応力がノーズ位置に集中して心線に疲労を与えていた。そして、これを繰り返すことで、ノーズ位置の心線が屈曲疲労の限界に達して切断してしまうことがあった。しかも、金型のパーティングライン面からの樹脂漏れが発生し、バリ取りの後加工が必要であった。
【0008】
特に、ノーズ位置で露出したガラス繊維コードのような心線は、ベルトスリーブの脱型時に内型と擦れることによって傷つくほか、多角形効果によって動的疲労を受けやすく、このため心線を巻きつける前に内型との接着糊を心線にソーキングしたり、心線を巻きつけた後で接着糊を塗布する方法も提案された。しかし、これらの方法ではベルトスリーブの脱型性を損なうほか、内型の汚染や表面粗度の増大により射出樹脂の充填がショートするなどの弊害を招くことがあった。
【0009】
また、内型に巻き付けた心線の並びが射出圧力の大きさによって乱れ、補強機能を発揮できないことがあった。特許文献1に開示された方法はこれを改善している。しかし、この方法では予めコードのような心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを作製し、この補強シートを成形するベルトの所定幅に切断して内型に嵌挿する方法であるために、工数がかかりすぎて生産性が悪く、また製品コストが高くなることがあった。
【0010】
また、特許文献2では、このような問題を解決するが、心線が巻付け張力により1層目の樹脂層に幾分沈み込む投錨効果を起こし、射出時の強烈な樹脂圧や粘性抵抗を受けた場合であっても心線の乱れが起き難いが、しかし1層目の樹脂層(スリーブ)ごと樹脂流れ方向へ引き伸ばされることもあり、この場合には心線の並びが乱れるという問題があった。
【0011】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、心線の並びが良好で、寸法精度も高く、そして心線を熱可塑性エラストマーで充分に包囲して接着性を高めてベルト寿命を向上させた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成すべく本願請求項1記載の発明は、心線を長手方向に延在させるようにベルト背面部に埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔で歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
長手方向に延在した溝状部と突状部を円周方向に沿って交互に設けた内型を外型に設置し、熱可塑性エラストマーを該内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、
上記外型から取り出した内型のベルト歯部層の表面に心線をスパイラルに巻き付けし、
再度、上記内型を外型に設置した後、熱可塑性エラストマーを心線の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層を成形し、
内型からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる、熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0013】
本発明の構成では、第1層目成形において、溶融樹脂を内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる。
【0014】
本願請求項2記載の発明は、心線を長手方向に延在させるようにベルト背面部に埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔で歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
歯部成形部を設けた内型を外型の一方の空所内に設置して、射出した熱可塑性エラストマーをゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端までゲート体積を変化させるように形成したリングゲートから内型の歯部成形部に沿って流し込んで内型の内面にベルト歯部層を形成し、
外型から脱型した内型のベルト歯部層の周面に、心線をスパイラルに巻き付けし、
上記心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、熱可塑性エラストマーを上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするように設定したフィルムゲートから上記心線の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層を成形し、
内型からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる、熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0015】
第1層目成形において、ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで変化させたリングゲートにし、溶融樹脂をリングゲートから内型の歯部成形部の長手方向に設けた溝状部に沿って流すと、溶融樹脂の先端を内型の全周に渡って同じ速度で流れて、ショートすることなく均一に充填でき、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを設けることによって、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる。
【0016】
本願請求項3記載の発明は、ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで徐々に大きく変化させたリングゲートである熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にあり、溶融樹脂を内型の全周に渡って同じ速度でより均一に流すことができる。
【0017】
本願請求項4記載の発明は、心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを相対向する位置に2箇所設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にあり、第2層目成形においてフィルムゲートを1個所のみとした場合に比べて射出圧力が低下して内型の撓み量が小さくなり、また溶融樹脂の充填性が向上して厚み精度を高める効果がある。
【0018】
本願請求項5記載の発明は、熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0019】
本願請求項6記載の発明は、心線を長手方向に延在させるようにベルト背部層に埋設し、ベルト背部層の少なくとも一方にベルト歯部層を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトであり、ベルト歯部層とベルト背部層において熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致している熱可塑性エラストマー製歯付ベルトにある。
【0020】
特に、本発明の歯付ベルトでは、ベルト歯部層とベルト背部層において熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致しているために、熱可塑性エラストマーが乱流を起こすことなくスムーズに心線間に流れ込んで心線を充分に包囲するために、熱可塑性エラストマーとの接着性が向上してベルト寿命の向上を図ることができ、内部歪みも小さくなって寸法精度の高い熱可塑性エラストマー製歯付ベルトになる。
【0021】
本願請求項7記載の発明は、心線がベルト歯部間の歯底面で露出していない熱可塑性エラストマー製歯付ベルトにあり、ノーズが存在しないためにプーリ上でベルトが多角形に折れた状態がなく、心線の疲労は少なくなる。
【0022】
本願請求項8記載の発明は、熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法を図面にもとづいて詳細に説明する。図1は本発明に係る歯付ベルト成形用金型装置の組み立て図、図2は内型の一部切り欠き正面図、図3は図2の一部拡大図、図4は図3をA−A方向からみた図、図5は内型を外型に設置して第一層目のベルト歯部層を作製している工程の概略図、図6はベルト歯部層の上に心線をスピニングしている工程の概略図、図7は本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第2層目のベルト工程でベルト背面層を作製している工程の概略図、図8は本発明の歯付ベルトの製造工程であって第1層目工程を示し、図9は本発明の歯付ベルトの製造工程であって第2層目工程を示す。
【0024】
本発明で使用する金型装置1では、縦型(竪型)射出成形機30に設置された固定側外型2aと上下方向に移動する可動側外型2bがパーティングライン面4で対面し、このパーティングライン面4でベルト歯部層15を形成する第1層目成形用空所5aとこれより容積の大きいベルト背面層を成形する第2層目成形用空所5bを交差状態に配置し、これらの空所5a、5bに内型3を収容する。即ち、外型2に設けた一方の空所5aに内型3を設置し、キャビティに溶融樹脂を充満してベルト歯部層15を形成する第1層目成形に使用される。空所5aより大きい容積をもつ他方の空所5bが第1層目成形で得られたベルト歯部層15の表面に心線16を巻き付けた内型3を設置しキャビティに溶融樹脂を充満してベルト背面部17を成形する第2層目成形に使用される。
【0025】
上記射出成形機30は、熱可塑性エラストマーをスクリュー32により粘度を低下させた溶融樹脂33を所定量だけシリンダー34内に入れ、ピストン35によって射出し、ノズル31から固定側外型2a内に設けられたスプルー6、ランナー7、そしてゲート入口8を経由して外型2と内型3間のキャビティ9を充填するが、この場合片方のランナー7のみを開放して一方のキャビティ9へ流し込む。
【0026】
内型3は、図2に示すように両端部に支持部10を、中央部にベルトスリーブを成形する歯部成形部11を有し、歯部成形部11では長手方向に延在した溝状部12と突状部13を周方向に沿って交互に配し、歯部成形部11と一方の支持部10の境界部にランナー7に連通するリングゲート14を形成する。
【0027】
上記リングゲート14は、その周面40が溶融樹脂の浸入するゲート入口8側からこれを半周した対角側のゲート末端41へ向って徐々に大きく削られており、言い換えるとリングゲート14の周面40はゲート入口8からゲート末端41に向って曲率半径が徐々に小さくなり、リングゲート14の深さはゲート入口8でD、ゲート末端41でD’となり、ゲート入口8から対角側のゲート末端41へ向って徐々に大きくなり、またリングゲート14の容積Vの増加量も、図4に示すようにゲート入口8からゲート末端41に向って徐々に大きくなっている。
【0028】
上記の深さD’とDの差は0.5〜3.0mmであり、より好ましくは1.0〜2.0mmである。この範囲内であれば、溶融樹脂33は初期流路42としてリングゲート14をゲート入口8からゲート末端41へ向かって充填した後、次期流路43として歯部成形部11の周面を長手方向に配した溝状部12と突状部13に沿って一斉に流れ成形部11の端部までショートせずに均一に充填する。
【0029】
また、溶融樹脂33はリングゲート14からそれぞれの溝状部12と突状部13に沿って長手方向に流れるために、キャビティ9を完全に充填し、また外型2a、2bのパーティングライン面4からの漏れの発生なく、バリ取り等の後加工が不要になる。
【0030】
上記の金型装置1を用いて歯付ベルトを作製する場合、最初に図5に示すように外型2に設けた空所5aに内型3を設置し、空所5aと内型3間に形成されるキャビティ9に溶融樹脂を充満して歯部成形部11を形成する第1層目成形が行われる。
【0031】
第1層目成形では、図5と図7に示すように、内型3を可動側外型2bの空所5aに設置した後、内型3の支持部10の設けた貫通穴に突き出しピンを嵌入して固定する。射出成形機30のノズルから溶融樹脂33をスプルー6、ランナー7を経由してリングゲート14のゲート入口8から対角側のゲート末端41へ向かって充填した後、続いて歯部成形部11の周面を長手方向に配した溝状部12と突状部13に沿って一斉に流し、溝状部12を充填するとともに突状部13の表面にフィルム層25を設けた歯部成形部11の端部までを均一に充填してベルト歯部層15を形成する。このため、ベルト歯部層15の不良率の発生は少なくなる。
【0032】
この場合の内型3と外型2a、2bの金型温度は、30〜90°Cが好ましい。突状部13と外型2a、2b間の間隔はベルトのPLDを確保する肉厚部であり、ベルトのサイズによって設計変更される。
【0033】
ここで用いられる溶融樹脂33である熱可塑性エラストマーは、例えばエステル系熱可塑性エラストマー(例えば、東洋紡績社製:商品名ペルプレン、デュポン社製:商品名ハイトレル)、オレフィン系系熱可塑性エラストマー(例えば、エー・イー・エス・ジャパン社製:商品名サントプレーン)、動的架橋系熱可塑性エラストマー(例えば、理研ビニル工業社製:アクティマー)、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等があり、伝動ベルトの用途を考慮すると、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0034】
第1層目成形を終えると、可動側外型2bを固定側外型2aから分離するように昇降手段の動作によって下方へ移動し、ベルト歯部層15を装着した内型3を取り出して次工程のスピニング工程へ移す。スピニング工程では、図6に示すように該内型3を心線のスピニング装置(図示せず)の回転軸に装着し、スピニング装置のテンションロ−ルを介してガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、スチールコードからなる低伸度、高強力のコードからなる心線16を所定のスピニングピッチで螺旋状に巻き付ける。スピニングテンションは30〜70Nであり、心線16がベルト歯部層15に食い込む程度である。
【0035】
このスピニング工程において、心線16をベルト歯部層15の表面に巻き始めるときの心線16の末端固定方法は、例えばリングゲート14から形成された肉厚の端部の表面に切り溝を設け、この中に心線16の端部を入れて固定することができる。心線16は摩擦係数の大きくフラットなベルト歯部層15上に巻かれ、更にテンションにより0.05〜0.1mm程度沈み込んで投錨効果により、ベルト歯部層15上で確実に固定する。
【0036】
続いて、図7と図9に示すように、心線16を巻き付けた内型3を再度可動側外型2bの他方の空所5bへ設置し、内型3の支持部10の設けた貫通穴に突き出しピン45を嵌入して固定する。その後、可動側外型2bを昇降手段の動作により移動させて固定側外型2aと合体させる。外型2a、2bのパーティングライン面4には、2つに分岐したランナー7,7が心線16の巻き付け幅にほほ等しい幅の末端ランナー7aに結合して配置し、更に各末端ランナー7aにはこれと同じ幅で0.1〜2mm厚のフィルムゲート46を有している。溶融樹脂33は末端ランナー7aからフィルムゲート46を経由して巻き付け幅にほほ等しい幅で心線16の巻き付け方向へ流れ込む。フィルムゲート46の幅が心線16の巻き付け幅より狭くなると、溶融樹脂33がフィルムゲート46から一斉に流れず、端部では中央部に較べて流れが悪くなる不具合が発生する。
【0037】
即ち、上記フィルムゲート46は、キャビティ内における溶融樹脂の流動方向を、ゲートからの流入方向に対して平行にするために効果的である。このフィルムゲート46による整流効果をさらに上げるためには、フィルムゲート46のゲート幅全体において充填する溶融樹脂の体積が均等であることが必要である。もし、分岐したランナー7に直接フィルムゲート46を設置した場合、フィルムゲート46全幅における充填する溶融樹脂体積は傾斜分布する(フィルムゲート46の中央から両端に掛けて充填体積が異なる)などの原因で、キャビティ内の流動ベクトルも流入方向からズレて、平行ではなくなってしまう。この現象はフィルムゲート46内の流動ベクトルに差異が発生するものである。またこれは溶融樹脂の粘度が高いほど顕著に現れるものであると言える。この現象を抑制するためには、溶融樹脂をランナー末端7bに予めゲート幅方向の全域に渡って充填させておく工夫が必要になる。溶融樹脂を流し込むための末端ランナー7bは、分岐したランナー7から流れ出た溶融樹脂を直接フィルムゲート46内に流さずに、まず末端ランナー7b内のフィルムゲート46幅全域に渡って充填されることを狙って、設置されるものである。
【0038】
そして、溶融樹脂33を射出して、2つに分岐したランナー7から末端ランナー7bへ流し込み、フィルムゲート46から心線16の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層17を成形し、これによって溶融樹脂の流れを良好にして心線16の並びの乱れを無くすことができる。
【0039】
可動側外型2bを固定側外型2aから分離した後、内型3を突き出しピン45により持ち上げることで、可動側外型2bから容易に取り出すことができる。そして、ベルトスリーブ18を内型3から脱型する。本発明の場合、内型3の上にじかに心線16を巻き付けることがないため、予め内型3に離型剤を積極的に塗布できるためベルトスリーブ18の脱型性において全く問題がない。
【0040】
その後、ベルトスリーブ18をカット機(図示せず)の2つのロールに懸架して回転させながら、カッターにより所定幅に切断し、図10に示す歯付ベルト20を形成することができる。
【0041】
この歯付ベルト20は、心線16を長手方向に延在するようにベルト背部層17に完全に埋設して歯部21間の歯底22面で露出しておらず、ベルト背部層17の下側に所定間隔で歯部21をもつベルト歯部層19を有している。心線16は配列の乱れがなく、ノーズがないために脱型時に内型との擦れによる損傷も起っていない。また、心線16が埋設しているため動的疲労を受けにくくなり、ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0042】
しかも、ベルト歯部層19とベルト背部層17における熱可塑性エラストマーの流れ方向(図中a,b矢印方向)が交差しており、かつベルト背部層17においては熱可塑性エラストマーの流れ方向(図中b矢印方向)が心線16の巻き付け方向と一致している。このため、熱可塑性エラストマーが乱流を起こすことなくスムーズに心線16間に流れ込んで心線16を充分に包囲するために、熱可塑性エラストマーとの接着性が向上してベルト寿命の向上を図ることができ、また内部歪みも少なくなって寸法精度の高い熱可塑性エラストマー製歯付ベルトになる。
【0043】
むろん、第1層目成形と第2層目成形で使用する熱可塑性エラストマーの硬度差を設けることもでき、例えば歯部19は変形の少ない硬い樹脂、ベルト背面部17は屈曲性の良いしなやかな樹脂を使用することによってベルトの寿命を向上させることもできる。また、ベルト背面部17にも歯部を形成できる。
【0044】
【実施例】
次に、本発明に係る歯付ベルトの製造方法の具体的実施例を以下に示す。
実施例1
図2に示す内型(S3M210、成形部長さ100mm)を用意した。また、リングゲートはゲート入口の深さDで1.5mm、対角側のゲート末端の深さD’で3.0mmと大きくなるように外周の曲率半径を徐々に小さくした。
【0045】
(第1層目成形)
この内型を図1に示す可動側外型の一方の空所に設置した後、可動側外型を移動させてパーティングライン面上で固定側外型に合体させ、型温を70°Cに調節した後、エステル系熱可塑性エラストマーのペレット(東洋紡績社製:商品名ペルプレンP47CHFX、数平均分子量30,000)をCO2アシスト装置付き射出成形機に投入し、溶融樹脂をスプルー、ランナー、そしてリングゲートから内型の長手方向に流してベルト歯部層を形成し、第1層目成形を終えた。内型の突状部と外型間の間隔dは0.25mmであった。
【0046】
可動側外型を移動させた後、可動側外型からベルト歯部層付の内型を取り出した。ベルト歯部層は外型の歯部成形部の端部まで充填して途中で切れることがなく、またベルト歯部層の表面ではパーティングライン面から漏れが見られずバリ取りの後加工は不要であった。
【0047】
(スピニング工程)
内型をスピニング装置の回転軸に装着した後、アラミド繊維コード(400D/2)をベルト歯部層の端部に結び付けた後、スピニングテンション50N/本で巻き付け、巻き終わり部もベルト歯部層の端部に巻き付けて固定した。
【0048】
(第2層目成形)
心線を巻き付けた内型を図1に示す可動側外型の他方の空所に設置した後、同様にして可動側外型を移動させてパーティングライ面で固定側外型に合体し、型温を70°Cに調節した後、第1層目成形と同材質のエステル系熱可塑性エラストマーを用い、シリンダー内に加圧力12MPaでCO2を圧入し、温度220°Cに調節した溶融樹脂を射出して2分岐したランナーから相対向する位置に設けたフィルムゲートに流し込み、厚さe0.6mmのベルト背面部を成形した。この結果、第2層目成形では心線の乱れはなかった。
【0049】
(歯付ベルトに仕上げ工程)
可動側外型を移動させた後、固定側外型からベルトスリーブ付の内型を取り出し、内型からベルトスリーブを脱型した。ベルトスリーブの表面ではパーティングライン面から漏れが見られずバリ取りの後加工は不要であった。ベルトスリーブをカット機に取り付けて、幅6mmの歯付ベルトを得た。歯付ベルトは歯型(STPD)、ベルトピッチ長さ210mm、歯部ピッチ3mm、歯数70であり、心線の配列の乱れはなく、そのピッチが正常であった。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法では、第1層目成形において、溶融樹脂を内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる。
【0051】
また、第1層目成形において、ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで変化させたリングゲートにし、溶融樹脂をリングゲートから内型の歯部成形部の長手方向に設けた溝状部に沿って流すと、溶融樹脂の先端を内型の全周に渡って同じ速度で流れて、ショートすることなく均一に充填でき、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを設けることによって、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる効果がある。
【0052】
また、本願請求項記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトでは、ベルト歯部層とベルト背部層における熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致しているために、可塑性エラストマーが乱流を起こすことなくスムーズに心線間に流れ込んで心線を充分に包囲するために、熱可塑性エラストマーとの接着性が向上してベルト寿命の向上を図ることができ、また内部歪みも少なくなって寸法精度も高くなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルト成形用金型装置の組み立て図である。
【図2】本発明で使用する内型の一部切り欠き正面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図3をA−A方向から見た図である。
【図5】内型を外型に設置して第1層目のベルト歯部層を作製している工程の概略図である。
【図6】ベルト歯部層の上に心線をスピニングしている工程の概略図である。
【図7】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第2層目のベルト工程でベルト背面層を作製している工程の概略図である。
【図8】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第1層目工程を示す。
【図9】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第2層目工程を示す。
【図10】本発明の方法によって得られた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの一部断面斜視図である。
【符号の説明】
1 金型装置
2a 固定側外型
2b 可動側外型
3 内型
4 パーティングライン面
5a 第1層目成形用空所
5b 第2層目成形用空所
7 ランナー
8 ゲート入口
14 リングゲート
15 ベルト歯部層
16 心線
17 ベルト背面部
18 ベルトスリーブ
41 ゲート末端
46 フィルムゲート
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルトに係り、詳しくは溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くし、また内型を安定して設置して精度の高い寸法を有する熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタン製歯付ベルトはスリップのない回転を伝える同期伝動方式であるため、一般産業用、精密機器用等の動力伝動用ベルトとして広く使用されている。このポリウレタン製歯付ベルトは通常注型方法によって製造され、具体的には突条のノーズに心線を巻き付けた円筒状内型を外型に入れ、内型と外型で形成されたキャビティーに液状ポリウレタンを注型し硬化した後、内型から脱型した広幅のベルトスリーブを所定幅に切断する方法が取られている。このノーズは心線の中心部とベルト溝底面間の距離であるPLD値を適度に維持し、プーリとの噛み合いを最適なものにしている。
【0003】
他の製造方法である射出成形法では、突条のノーズに心線を巻き付けた円筒状内型を外型に入れた金型装置を射出成形機に装着し、溶融樹脂を射出成形機のノーズからスプルー、放射状ランナー、ゲートを経由して空気抜きをしながらキャビティーに充填した後、内型からベルトスリーブを脱型し、ベルトスリーブを所定幅に切断して歯付ベルトを作製していた。
【0004】
また、他の方法としては、予めコードのような心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを成形し、形成するベルトの幅に切断したものを内型に嵌挿し、この内型を外型に組み合わせた後、熱可塑性樹脂を型内に射出して充填するもので、心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを使用することによって心線の乱れを阻止することが、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ショット成形でノーズを無くした1層目の樹脂層を成形し、この樹脂層の周面に心線をスパイラルに巻き付けた後、2層目の溶融樹脂をキャビティに射出し充満させてベルト背面部に成形する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−237934号公報
【特許文献2】
特開2003−25372号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、心線をノーズに巻き付ける製造方法では、樹脂がキャビティに加圧下のもとで成形硬化するために、収縮応力が内部残留応力として残り、ベルト走行を長期に行うと、ベルト歯元部から亀裂が発生しやすいことがあった。また、ノーズの存在するベルトを走行させると、プーリ上で多角形に折れた状態になり、応力がノーズ位置に集中して心線に疲労を与えていた。そして、これを繰り返すことで、ノーズ位置の心線が屈曲疲労の限界に達して切断してしまうことがあった。しかも、金型のパーティングライン面からの樹脂漏れが発生し、バリ取りの後加工が必要であった。
【0008】
特に、ノーズ位置で露出したガラス繊維コードのような心線は、ベルトスリーブの脱型時に内型と擦れることによって傷つくほか、多角形効果によって動的疲労を受けやすく、このため心線を巻きつける前に内型との接着糊を心線にソーキングしたり、心線を巻きつけた後で接着糊を塗布する方法も提案された。しかし、これらの方法ではベルトスリーブの脱型性を損なうほか、内型の汚染や表面粗度の増大により射出樹脂の充填がショートするなどの弊害を招くことがあった。
【0009】
また、内型に巻き付けた心線の並びが射出圧力の大きさによって乱れ、補強機能を発揮できないことがあった。特許文献1に開示された方法はこれを改善している。しかし、この方法では予めコードのような心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを作製し、この補強シートを成形するベルトの所定幅に切断して内型に嵌挿する方法であるために、工数がかかりすぎて生産性が悪く、また製品コストが高くなることがあった。
【0010】
また、特許文献2では、このような問題を解決するが、心線が巻付け張力により1層目の樹脂層に幾分沈み込む投錨効果を起こし、射出時の強烈な樹脂圧や粘性抵抗を受けた場合であっても心線の乱れが起き難いが、しかし1層目の樹脂層(スリーブ)ごと樹脂流れ方向へ引き伸ばされることもあり、この場合には心線の並びが乱れるという問題があった。
【0011】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、心線の並びが良好で、寸法精度も高く、そして心線を熱可塑性エラストマーで充分に包囲して接着性を高めてベルト寿命を向上させた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成すべく本願請求項1記載の発明は、心線を長手方向に延在させるようにベルト背面部に埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔で歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
長手方向に延在した溝状部と突状部を円周方向に沿って交互に設けた内型を外型に設置し、熱可塑性エラストマーを該内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、
上記外型から取り出した内型のベルト歯部層の表面に心線をスパイラルに巻き付けし、
再度、上記内型を外型に設置した後、熱可塑性エラストマーを心線の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層を成形し、
内型からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる、熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0013】
本発明の構成では、第1層目成形において、溶融樹脂を内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる。
【0014】
本願請求項2記載の発明は、心線を長手方向に延在させるようにベルト背面部に埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔で歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
歯部成形部を設けた内型を外型の一方の空所内に設置して、射出した熱可塑性エラストマーをゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端までゲート体積を変化させるように形成したリングゲートから内型の歯部成形部に沿って流し込んで内型の内面にベルト歯部層を形成し、
外型から脱型した内型のベルト歯部層の周面に、心線をスパイラルに巻き付けし、
上記心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、熱可塑性エラストマーを上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするように設定したフィルムゲートから上記心線の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層を成形し、
内型からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる、熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0015】
第1層目成形において、ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで変化させたリングゲートにし、溶融樹脂をリングゲートから内型の歯部成形部の長手方向に設けた溝状部に沿って流すと、溶融樹脂の先端を内型の全周に渡って同じ速度で流れて、ショートすることなく均一に充填でき、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを設けることによって、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる。
【0016】
本願請求項3記載の発明は、ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで徐々に大きく変化させたリングゲートである熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にあり、溶融樹脂を内型の全周に渡って同じ速度でより均一に流すことができる。
【0017】
本願請求項4記載の発明は、心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを相対向する位置に2箇所設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にあり、第2層目成形においてフィルムゲートを1個所のみとした場合に比べて射出圧力が低下して内型の撓み量が小さくなり、また溶融樹脂の充填性が向上して厚み精度を高める効果がある。
【0018】
本願請求項5記載の発明は、熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0019】
本願請求項6記載の発明は、心線を長手方向に延在させるようにベルト背部層に埋設し、ベルト背部層の少なくとも一方にベルト歯部層を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトであり、ベルト歯部層とベルト背部層において熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致している熱可塑性エラストマー製歯付ベルトにある。
【0020】
特に、本発明の歯付ベルトでは、ベルト歯部層とベルト背部層において熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致しているために、熱可塑性エラストマーが乱流を起こすことなくスムーズに心線間に流れ込んで心線を充分に包囲するために、熱可塑性エラストマーとの接着性が向上してベルト寿命の向上を図ることができ、内部歪みも小さくなって寸法精度の高い熱可塑性エラストマー製歯付ベルトになる。
【0021】
本願請求項7記載の発明は、心線がベルト歯部間の歯底面で露出していない熱可塑性エラストマー製歯付ベルトにあり、ノーズが存在しないためにプーリ上でベルトが多角形に折れた状態がなく、心線の疲労は少なくなる。
【0022】
本願請求項8記載の発明は、熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法を図面にもとづいて詳細に説明する。図1は本発明に係る歯付ベルト成形用金型装置の組み立て図、図2は内型の一部切り欠き正面図、図3は図2の一部拡大図、図4は図3をA−A方向からみた図、図5は内型を外型に設置して第一層目のベルト歯部層を作製している工程の概略図、図6はベルト歯部層の上に心線をスピニングしている工程の概略図、図7は本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第2層目のベルト工程でベルト背面層を作製している工程の概略図、図8は本発明の歯付ベルトの製造工程であって第1層目工程を示し、図9は本発明の歯付ベルトの製造工程であって第2層目工程を示す。
【0024】
本発明で使用する金型装置1では、縦型(竪型)射出成形機30に設置された固定側外型2aと上下方向に移動する可動側外型2bがパーティングライン面4で対面し、このパーティングライン面4でベルト歯部層15を形成する第1層目成形用空所5aとこれより容積の大きいベルト背面層を成形する第2層目成形用空所5bを交差状態に配置し、これらの空所5a、5bに内型3を収容する。即ち、外型2に設けた一方の空所5aに内型3を設置し、キャビティに溶融樹脂を充満してベルト歯部層15を形成する第1層目成形に使用される。空所5aより大きい容積をもつ他方の空所5bが第1層目成形で得られたベルト歯部層15の表面に心線16を巻き付けた内型3を設置しキャビティに溶融樹脂を充満してベルト背面部17を成形する第2層目成形に使用される。
【0025】
上記射出成形機30は、熱可塑性エラストマーをスクリュー32により粘度を低下させた溶融樹脂33を所定量だけシリンダー34内に入れ、ピストン35によって射出し、ノズル31から固定側外型2a内に設けられたスプルー6、ランナー7、そしてゲート入口8を経由して外型2と内型3間のキャビティ9を充填するが、この場合片方のランナー7のみを開放して一方のキャビティ9へ流し込む。
【0026】
内型3は、図2に示すように両端部に支持部10を、中央部にベルトスリーブを成形する歯部成形部11を有し、歯部成形部11では長手方向に延在した溝状部12と突状部13を周方向に沿って交互に配し、歯部成形部11と一方の支持部10の境界部にランナー7に連通するリングゲート14を形成する。
【0027】
上記リングゲート14は、その周面40が溶融樹脂の浸入するゲート入口8側からこれを半周した対角側のゲート末端41へ向って徐々に大きく削られており、言い換えるとリングゲート14の周面40はゲート入口8からゲート末端41に向って曲率半径が徐々に小さくなり、リングゲート14の深さはゲート入口8でD、ゲート末端41でD’となり、ゲート入口8から対角側のゲート末端41へ向って徐々に大きくなり、またリングゲート14の容積Vの増加量も、図4に示すようにゲート入口8からゲート末端41に向って徐々に大きくなっている。
【0028】
上記の深さD’とDの差は0.5〜3.0mmであり、より好ましくは1.0〜2.0mmである。この範囲内であれば、溶融樹脂33は初期流路42としてリングゲート14をゲート入口8からゲート末端41へ向かって充填した後、次期流路43として歯部成形部11の周面を長手方向に配した溝状部12と突状部13に沿って一斉に流れ成形部11の端部までショートせずに均一に充填する。
【0029】
また、溶融樹脂33はリングゲート14からそれぞれの溝状部12と突状部13に沿って長手方向に流れるために、キャビティ9を完全に充填し、また外型2a、2bのパーティングライン面4からの漏れの発生なく、バリ取り等の後加工が不要になる。
【0030】
上記の金型装置1を用いて歯付ベルトを作製する場合、最初に図5に示すように外型2に設けた空所5aに内型3を設置し、空所5aと内型3間に形成されるキャビティ9に溶融樹脂を充満して歯部成形部11を形成する第1層目成形が行われる。
【0031】
第1層目成形では、図5と図7に示すように、内型3を可動側外型2bの空所5aに設置した後、内型3の支持部10の設けた貫通穴に突き出しピンを嵌入して固定する。射出成形機30のノズルから溶融樹脂33をスプルー6、ランナー7を経由してリングゲート14のゲート入口8から対角側のゲート末端41へ向かって充填した後、続いて歯部成形部11の周面を長手方向に配した溝状部12と突状部13に沿って一斉に流し、溝状部12を充填するとともに突状部13の表面にフィルム層25を設けた歯部成形部11の端部までを均一に充填してベルト歯部層15を形成する。このため、ベルト歯部層15の不良率の発生は少なくなる。
【0032】
この場合の内型3と外型2a、2bの金型温度は、30〜90°Cが好ましい。突状部13と外型2a、2b間の間隔はベルトのPLDを確保する肉厚部であり、ベルトのサイズによって設計変更される。
【0033】
ここで用いられる溶融樹脂33である熱可塑性エラストマーは、例えばエステル系熱可塑性エラストマー(例えば、東洋紡績社製:商品名ペルプレン、デュポン社製:商品名ハイトレル)、オレフィン系系熱可塑性エラストマー(例えば、エー・イー・エス・ジャパン社製:商品名サントプレーン)、動的架橋系熱可塑性エラストマー(例えば、理研ビニル工業社製:アクティマー)、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等があり、伝動ベルトの用途を考慮すると、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0034】
第1層目成形を終えると、可動側外型2bを固定側外型2aから分離するように昇降手段の動作によって下方へ移動し、ベルト歯部層15を装着した内型3を取り出して次工程のスピニング工程へ移す。スピニング工程では、図6に示すように該内型3を心線のスピニング装置(図示せず)の回転軸に装着し、スピニング装置のテンションロ−ルを介してガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、スチールコードからなる低伸度、高強力のコードからなる心線16を所定のスピニングピッチで螺旋状に巻き付ける。スピニングテンションは30〜70Nであり、心線16がベルト歯部層15に食い込む程度である。
【0035】
このスピニング工程において、心線16をベルト歯部層15の表面に巻き始めるときの心線16の末端固定方法は、例えばリングゲート14から形成された肉厚の端部の表面に切り溝を設け、この中に心線16の端部を入れて固定することができる。心線16は摩擦係数の大きくフラットなベルト歯部層15上に巻かれ、更にテンションにより0.05〜0.1mm程度沈み込んで投錨効果により、ベルト歯部層15上で確実に固定する。
【0036】
続いて、図7と図9に示すように、心線16を巻き付けた内型3を再度可動側外型2bの他方の空所5bへ設置し、内型3の支持部10の設けた貫通穴に突き出しピン45を嵌入して固定する。その後、可動側外型2bを昇降手段の動作により移動させて固定側外型2aと合体させる。外型2a、2bのパーティングライン面4には、2つに分岐したランナー7,7が心線16の巻き付け幅にほほ等しい幅の末端ランナー7aに結合して配置し、更に各末端ランナー7aにはこれと同じ幅で0.1〜2mm厚のフィルムゲート46を有している。溶融樹脂33は末端ランナー7aからフィルムゲート46を経由して巻き付け幅にほほ等しい幅で心線16の巻き付け方向へ流れ込む。フィルムゲート46の幅が心線16の巻き付け幅より狭くなると、溶融樹脂33がフィルムゲート46から一斉に流れず、端部では中央部に較べて流れが悪くなる不具合が発生する。
【0037】
即ち、上記フィルムゲート46は、キャビティ内における溶融樹脂の流動方向を、ゲートからの流入方向に対して平行にするために効果的である。このフィルムゲート46による整流効果をさらに上げるためには、フィルムゲート46のゲート幅全体において充填する溶融樹脂の体積が均等であることが必要である。もし、分岐したランナー7に直接フィルムゲート46を設置した場合、フィルムゲート46全幅における充填する溶融樹脂体積は傾斜分布する(フィルムゲート46の中央から両端に掛けて充填体積が異なる)などの原因で、キャビティ内の流動ベクトルも流入方向からズレて、平行ではなくなってしまう。この現象はフィルムゲート46内の流動ベクトルに差異が発生するものである。またこれは溶融樹脂の粘度が高いほど顕著に現れるものであると言える。この現象を抑制するためには、溶融樹脂をランナー末端7bに予めゲート幅方向の全域に渡って充填させておく工夫が必要になる。溶融樹脂を流し込むための末端ランナー7bは、分岐したランナー7から流れ出た溶融樹脂を直接フィルムゲート46内に流さずに、まず末端ランナー7b内のフィルムゲート46幅全域に渡って充填されることを狙って、設置されるものである。
【0038】
そして、溶融樹脂33を射出して、2つに分岐したランナー7から末端ランナー7bへ流し込み、フィルムゲート46から心線16の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層17を成形し、これによって溶融樹脂の流れを良好にして心線16の並びの乱れを無くすことができる。
【0039】
可動側外型2bを固定側外型2aから分離した後、内型3を突き出しピン45により持ち上げることで、可動側外型2bから容易に取り出すことができる。そして、ベルトスリーブ18を内型3から脱型する。本発明の場合、内型3の上にじかに心線16を巻き付けることがないため、予め内型3に離型剤を積極的に塗布できるためベルトスリーブ18の脱型性において全く問題がない。
【0040】
その後、ベルトスリーブ18をカット機(図示せず)の2つのロールに懸架して回転させながら、カッターにより所定幅に切断し、図10に示す歯付ベルト20を形成することができる。
【0041】
この歯付ベルト20は、心線16を長手方向に延在するようにベルト背部層17に完全に埋設して歯部21間の歯底22面で露出しておらず、ベルト背部層17の下側に所定間隔で歯部21をもつベルト歯部層19を有している。心線16は配列の乱れがなく、ノーズがないために脱型時に内型との擦れによる損傷も起っていない。また、心線16が埋設しているため動的疲労を受けにくくなり、ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0042】
しかも、ベルト歯部層19とベルト背部層17における熱可塑性エラストマーの流れ方向(図中a,b矢印方向)が交差しており、かつベルト背部層17においては熱可塑性エラストマーの流れ方向(図中b矢印方向)が心線16の巻き付け方向と一致している。このため、熱可塑性エラストマーが乱流を起こすことなくスムーズに心線16間に流れ込んで心線16を充分に包囲するために、熱可塑性エラストマーとの接着性が向上してベルト寿命の向上を図ることができ、また内部歪みも少なくなって寸法精度の高い熱可塑性エラストマー製歯付ベルトになる。
【0043】
むろん、第1層目成形と第2層目成形で使用する熱可塑性エラストマーの硬度差を設けることもでき、例えば歯部19は変形の少ない硬い樹脂、ベルト背面部17は屈曲性の良いしなやかな樹脂を使用することによってベルトの寿命を向上させることもできる。また、ベルト背面部17にも歯部を形成できる。
【0044】
【実施例】
次に、本発明に係る歯付ベルトの製造方法の具体的実施例を以下に示す。
実施例1
図2に示す内型(S3M210、成形部長さ100mm)を用意した。また、リングゲートはゲート入口の深さDで1.5mm、対角側のゲート末端の深さD’で3.0mmと大きくなるように外周の曲率半径を徐々に小さくした。
【0045】
(第1層目成形)
この内型を図1に示す可動側外型の一方の空所に設置した後、可動側外型を移動させてパーティングライン面上で固定側外型に合体させ、型温を70°Cに調節した後、エステル系熱可塑性エラストマーのペレット(東洋紡績社製:商品名ペルプレンP47CHFX、数平均分子量30,000)をCO2アシスト装置付き射出成形機に投入し、溶融樹脂をスプルー、ランナー、そしてリングゲートから内型の長手方向に流してベルト歯部層を形成し、第1層目成形を終えた。内型の突状部と外型間の間隔dは0.25mmであった。
【0046】
可動側外型を移動させた後、可動側外型からベルト歯部層付の内型を取り出した。ベルト歯部層は外型の歯部成形部の端部まで充填して途中で切れることがなく、またベルト歯部層の表面ではパーティングライン面から漏れが見られずバリ取りの後加工は不要であった。
【0047】
(スピニング工程)
内型をスピニング装置の回転軸に装着した後、アラミド繊維コード(400D/2)をベルト歯部層の端部に結び付けた後、スピニングテンション50N/本で巻き付け、巻き終わり部もベルト歯部層の端部に巻き付けて固定した。
【0048】
(第2層目成形)
心線を巻き付けた内型を図1に示す可動側外型の他方の空所に設置した後、同様にして可動側外型を移動させてパーティングライ面で固定側外型に合体し、型温を70°Cに調節した後、第1層目成形と同材質のエステル系熱可塑性エラストマーを用い、シリンダー内に加圧力12MPaでCO2を圧入し、温度220°Cに調節した溶融樹脂を射出して2分岐したランナーから相対向する位置に設けたフィルムゲートに流し込み、厚さe0.6mmのベルト背面部を成形した。この結果、第2層目成形では心線の乱れはなかった。
【0049】
(歯付ベルトに仕上げ工程)
可動側外型を移動させた後、固定側外型からベルトスリーブ付の内型を取り出し、内型からベルトスリーブを脱型した。ベルトスリーブの表面ではパーティングライン面から漏れが見られずバリ取りの後加工は不要であった。ベルトスリーブをカット機に取り付けて、幅6mmの歯付ベルトを得た。歯付ベルトは歯型(STPD)、ベルトピッチ長さ210mm、歯部ピッチ3mm、歯数70であり、心線の配列の乱れはなく、そのピッチが正常であった。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法では、第1層目成形において、溶融樹脂を内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる。
【0051】
また、第1層目成形において、ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで変化させたリングゲートにし、溶融樹脂をリングゲートから内型の歯部成形部の長手方向に設けた溝状部に沿って流すと、溶融樹脂の先端を内型の全周に渡って同じ速度で流れて、ショートすることなく均一に充填でき、また第2層目成形において、心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを設けることによって、溶融樹脂を心線の巻き方向へ流すことができて溶融樹脂の流れを良好にして心線の並びの乱れを無くすことができる効果がある。
【0052】
また、本願請求項記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトでは、ベルト歯部層とベルト背部層における熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致しているために、可塑性エラストマーが乱流を起こすことなくスムーズに心線間に流れ込んで心線を充分に包囲するために、熱可塑性エラストマーとの接着性が向上してベルト寿命の向上を図ることができ、また内部歪みも少なくなって寸法精度も高くなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルト成形用金型装置の組み立て図である。
【図2】本発明で使用する内型の一部切り欠き正面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図3をA−A方向から見た図である。
【図5】内型を外型に設置して第1層目のベルト歯部層を作製している工程の概略図である。
【図6】ベルト歯部層の上に心線をスピニングしている工程の概略図である。
【図7】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第2層目のベルト工程でベルト背面層を作製している工程の概略図である。
【図8】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第1層目工程を示す。
【図9】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、第2層目工程を示す。
【図10】本発明の方法によって得られた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの一部断面斜視図である。
【符号の説明】
1 金型装置
2a 固定側外型
2b 可動側外型
3 内型
4 パーティングライン面
5a 第1層目成形用空所
5b 第2層目成形用空所
7 ランナー
8 ゲート入口
14 リングゲート
15 ベルト歯部層
16 心線
17 ベルト背面部
18 ベルトスリーブ
41 ゲート末端
46 フィルムゲート
Claims (8)
- 心線を長手方向に延在させるようにベルト背面部に埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔で歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
長手方向に延在した溝状部と突状部を円周方向に沿って交互に設けた内型を外型に設置し、熱可塑性エラストマーを該内型の溝状部の長手方向に沿って流し込んで溝状部を充填するとともに突状部の表面にフィルム層を設けたベルト歯部層を形成し、
上記外型から取り出した内型のベルト歯部層の表面に心線をスパイラルに巻き付けし、
再度、上記内型を外型に設置した後、熱可塑性エラストマーを心線の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層を成形し、
内型からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる、ことを特徴とする熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。 - 心線を長手方向に延在させるようにベルト背面部に埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔で歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
歯部成形部を設けた内型を外型の一方の空所内に設置して、射出した熱可塑性エラストマーをゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端までゲート体積を変化させるように形成したリングゲートから内型の歯部成形部に沿って流し込んで内型の内面にベルト歯部層を形成し、
外型から脱型した内型のベルト歯部層の周面に、心線をスパイラルに巻き付けし、
上記心線を巻き付けた内型を外型の他の空所内に設置して、熱可塑性エラストマーを上記心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするように設定したフィルムゲートから上記心線の巻き付け方向へ流し込んでベルト背面層を成形し、
内型からベルトスリーブを脱型し、該ベルトスリーブから歯付ベルトに仕上げる、ことを特徴とする熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。 - ゲート体積をゲート入口からこれと相対向する位置にあるゲート末端まで徐々に大きく変化させたリングゲートである請求項2記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
- 心線の巻き付け幅を最大ゲート幅とするフィルムゲートを相対向する位置に2箇所設けた請求項2記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
- 熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
- 心線を長手方向に延在させるようにベルト背部層に埋設し、ベルト背部層の少なくとも一方にベルト歯部層を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトであり、ベルト歯部層とベルト背部層において熱可塑性エラストマーの流れ方向が交差し、かつベルト背部層においては熱可塑性エラストマーの流れ方向が心線の巻き付け方向と一致していることを特徴とする熱可塑性エラストマー製歯付ベルト。
- 心線がベルト歯部間の歯底面で露出していない請求項6記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルト。
- 熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そして動的架橋系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である請求項6または7記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルト。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003166240A JP2005040951A (ja) | 2003-05-23 | 2003-06-11 | 熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルト |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003145808 | 2003-05-23 | ||
JP2003166240A JP2005040951A (ja) | 2003-05-23 | 2003-06-11 | 熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルト |
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Publication Number | Publication Date |
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ID=34277120
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003166240A Pending JP2005040951A (ja) | 2003-05-23 | 2003-06-11 | 熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法及びこの方法で得られた歯付ベルト |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005040951A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3235620A1 (de) * | 2016-04-22 | 2017-10-25 | Arntz Beteiligungs GmbH & Co. KG | Verfahren zur herstellung eines endlosen treibriemens |
-
2003
- 2003-06-11 JP JP2003166240A patent/JP2005040951A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP3235620A1 (de) * | 2016-04-22 | 2017-10-25 | Arntz Beteiligungs GmbH & Co. KG | Verfahren zur herstellung eines endlosen treibriemens |
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