JP2005038694A - 高分子電解質型燃料電池用meaの検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層の形成状態を、目視によって連続的に判別すると、検査品質のバラツキや目視疲労による作業能率の低下等の問題があり、X線を用いる場合には、X線が外部に漏れないよう厳重な放射線対策が必要になるという問題があった。
【解決手段】 水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら前記水素イオン伝導性高分子電解質膜に光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光を基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定する。
【選択図】図1
【解決手段】 水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら前記水素イオン伝導性高分子電解質膜に光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光を基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定する。
【選択図】図1
Description
本発明は、高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法に関する。
水素イオン伝導性高分子電解質型燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させるものである。燃料電池の発電部における主要な構造は、水素イオンを選択的に輸送する水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に、白金系の貴金属触媒を担持したカーボン粉末を触媒粉末とし、これに水素イオン伝導性高分子電解質を混合したものからなる触媒層があり、さらにこの触媒層の外面にガス拡散層を形成して得られるものである。
一般に、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成する方法としては、触媒粉末と、エタノールなどのアルコール系溶媒に水素イオン伝導性高分子電解質を溶解させた水素イオン伝導性高分子電解質溶液とを混合し、これにイソプロピルアルコールまたはブチルアルコールなどの比較的高沸点の有機溶媒を添加することでインク化し、このインクをダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗工法、ドクターブレード法またはロールコーター法などを用いて基材に塗布、乾燥させて触媒層を得、その後、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に熱転写する方法等がある。
また、あらかじめ水素イオン伝導性高分子電解質溶液と触媒粉末との混合物を、混合後一度蒸発により乾固させ、得られた固形物をイソプロピルアルコールやブチルアルコールなどの比較的高沸点の有機溶媒に再溶解させて高粘度のインクを調製し、このインクを用いて水素イオン伝導性高分子電解質膜上に塗布、乾燥する方法で触媒層を形成する方法もある。
このようにして得られた水素イオン伝導性高分子電解質膜上の触媒層の形成状態の良否判別には、欠陥部分の発見を目的として単純に目視による方法や、触媒層の塗工表面の粗さを判別するために、特許文献1に示すように、触媒層の光沢度を測定する方法がある。
また、貴金属を担持した炭素担体をフッ素樹脂で結着した電極触媒膜を炭素基材上に支持してなる電極内の微量触媒金属量を分析することを目的に、特許文献2に示すように、X線を照射して蛍光X線分析によって判別する方法もある。
高分子電解質型燃料電池の反応性を高めるためには、燃料電池作製時に水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層の欠陥や、触媒層における水素イオン伝導性高分子電解質濃度分布の不揃いのものを判別し、除外して使用することが重要である。
しかし、目視による判別方法では、触媒層において水素イオン伝導性高分子電解質の濃度が均一でない場合の判別は困難であった。その結果、形成された触媒層の面方向における水素イオン伝導性高分子電解質濃度が均一でないものを除外できないため、燃料電池を長時間運転した場合に触媒層中で水の分布に偏りが生じ、発電に必要な燃料ガスおよび酸化剤ガスの通気性が阻害されて燃料電池の反応性を低下させる原因となっていた。
また、目視で判別できる触媒層の欠陥サイズには限度があり、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した際の、触媒インクの塗布不良に起因する触媒層の欠陥部位や、印刷された触媒インクの蒸発に起因するひび割れや、熱転写時の転写不良に起因する触媒層の欠陥部位を有したものを除外できない可能性があった。
この触媒層の欠陥部位を有した燃料電池を長時間使用すると、触媒層の欠陥部位は周囲の触媒層形成部位と比較し撥水性が異なるために、水が溜まりやすくなり、発電に必要な燃料ガスおよび酸化剤ガスの通気性が阻害されて燃料電池の反応性を低下させる原因となっていた。
さらに、目視による判別方法では、目視疲労による作業能率の悪化、分析に時間がかかること、作業者確保の困難、作業者教育時間の増大、作業者による精度のバラツキ等の問題があった。
また、光沢度の測定においては、触媒構成成分の面内濃度分布の分析が困難であるとともに、可視光を利用するために、外界の影響を受けないよう観測部の遮光を厳密にする必要があるといった問題があった。さらに、X線を用いる方法は、貴金属の分析は可能であるが、有機物の分析は困難である。
そのため、触媒層形成面における水素イオン伝導性高分子電解質の濃度分布の分析は困難であった。またX線を使用するため、分析により試料にダメージを与える可能性があった。また装置が大掛かりなことや、X線が外部に漏れないよう厳重な放射線対策が必要になるという問題があった。
そこで、本発明は上述のような検査方法の問題点に鑑みてなされたものであり、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層が反射する光に着目し、水素イオン伝導性高分子電解質膜上の触媒層の欠陥の有無および、触媒構成成分の面内濃度分布の判別を連続的に行う有用な方法を提供するものである。
以上の課題を解決するため、本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の触媒層と、前記触媒層の外側に設けられた一対のガス拡散層とを有する高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法であって、
水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光と基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法を提供する。
水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光と基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法を提供する。
前記基準反射光が、水素イオン伝導性高分子電解質膜の反射光、または良好な形成状態の触媒層の反射光であることが好ましい。もちろん、この基準反射光は予め測定しておいて記憶させておいてもよく、また、検査方法の実施中に水素イオン伝導性高分子電解質膜の部分を測定することにより得てもよい。
また、前記照射光または前記反射光を分光器によって分光し、特定の波長の反射光のみを測定することが好ましい。
また、前記照射光または前記反射光を分光器によって分光し、特定の波長の反射光のみを測定することが好ましい。
また、前記照射光が赤外光であることが好ましい。
また、前記反射光を、複数の受光素子を含む受光部で測定し、前記受光素子が、前記触媒層の移動方向に対して垂直でかつ前記触媒層の面方向に水平な方向に一列に並んでいることが好ましい。
また、前記反射光を、複数の受光素子を含む受光部で測定し、前記受光素子が、前記触媒層の移動方向に対して垂直でかつ前記触媒層の面方向に水平な方向に一列に並んでいることが好ましい。
本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層において、触媒層が欠けて水素イオン伝導性高分子電解質が剥き出しになっている部分を、簡単な装置を用い、分析による試料へのダメージがなく、簡単な操作により、連続的に、確実に判別することが可能である。
本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の触媒層と、前記触媒層の外側に設けられた一対のガス拡散層とを有する高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法であって、
水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら前記水素イオン伝導性高分子電解質膜に光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光と基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法に関する。
水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら前記水素イオン伝導性高分子電解質膜に光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光と基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法に関する。
ここで、図1は、本発明に係る高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法を説明するための概念図である。
図1は、触媒層12が形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜11を上から見た図である。この触媒層12が形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜11は、光源13およびプリズムなどの分光器14の下を連続的に移動し、触媒層12上で反射した光を、複数の受光素子が直線で並ぶことで構成される受光部15で受光することで、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に形成された触媒層12の良否を判別する。
図1は、触媒層12が形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜11を上から見た図である。この触媒層12が形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜11は、光源13およびプリズムなどの分光器14の下を連続的に移動し、触媒層12上で反射した光を、複数の受光素子が直線で並ぶことで構成される受光部15で受光することで、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に形成された触媒層12の良否を判別する。
光源13から照射された光は分光器14で分光され、特定の波長の光16のみが触媒層12が形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に照射される。照射された特定の波長の光16が、触媒層12または触媒層が欠けて水素イオン伝導性高分子電解質膜12が剥き出しになっている部位17に到達すると、一部は触媒層12および水素イオン伝導性高分子電解質膜11の構成成分により吸収され、一部は反射光18として受光部15に到達し、光の強度が観測される。
このとき、水素イオン伝導性高分子電解質膜11と触媒層12では、それぞれ含有している構成成分の割合が異なることから、光の吸収量が異なり、触媒層12が欠けている部位を判別することが可能である。また、水素イオン伝導性高分子電解質膜11が矢印19の方向に連続的に移動することで、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に形成された触媒層12の良否判別を連続して分析することが可能である。
光の観測を透過光でなく反射光で行うのは、燃料電池においては水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に触媒層を形成するため、分析を行う触媒層と反対側に既に対極の触媒層が塗布されている場合には透過光が観測できないためである。反射光を用いることで水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に触媒層が形成された場合でも分析を行うことが可能である。
照射する光は、水素イオン伝導性高分子電解質膜11が剥き出しになっている部位および触媒層12の部位で吸収率が大きく異なるものであることが望ましい。これらの部位の構成成分には有機化合物が含まれていることから、赤外線をあてることで触媒層の有無を明確に判別できるだけでなく、触媒層中の形成成分に偏りがないかを調べることも可能である。
また、赤外光を用いることで、可視光の場合と異なり外乱による影響が少なく、光学装置を簡略化できるとともに、X線のように強力な光を照射しないことで、分析時に試料へのダメージがなく、外部の光の漏えいを遮断する必要もない。光源としては、赤外ランプ、赤外LED、赤外レーザーなどを用いることができる。
さらに、分光器を用いることで、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に形成された触媒層12に照射する光の波長を選択することが可能である。また、触媒層12上への照射前でなく、反射後の光を分光しても同様の効果が得られる。さらに、短時間の間に波長をかえたり、パルス状のレーザー光を照射して、フーリエ変換することで、赤外吸収スペクトルを測定することも可能である。分光器としては、回折格子、KBrプリズムなどを用いることができる。
また、触媒層12の構成成分の面内分布を分析するには、受光部15がひとつの場合には、受光部15を水素イオン伝導性高分子電解質膜11の移動方向に対して垂直にスキャンさせる必要があるが、複数の受光部15を触媒層12と同じ幅に一列に並べると受光部15を移動させる必要がなくなるため、分析時間を短縮することが可能である。
前記受光部15には受光素子が含まれるが、用いる受光素子は、受光素子が大きくなれば、受光素子に到達する反射光量が多くなり感度が高くなる半面、微小な触媒層の欠陥を検知することが困難になる。一方、受光素子が小さければ、反射光量が少なくなり強度が弱くなる半面、微小な触媒層の欠陥を検知することが可能となる。受光素子の大きさは、16μm〜1mmの範囲であるのが望ましい。
前記受光素子としては、種々のものを使用することができるが、例えばフォトダイオード、フォトダイオードアレイ、赤外センサ、CCDセンサ、コンタクト・イメージ・センサなどを用いることができる。
図2に、後述する実施例において作製した水素イオン伝導性高分子電解質膜11上の良好な触媒層12の表面(A)と、水素イオン伝導性高分子電解質膜11の表面(B)に、波数680〜4000cm-1までの赤外光を照射し、反射光を観測することで測定した赤外吸収スペクトルの一例を示した。
水素イオン伝導性高分子電解質膜の構成成分としては、一般式:
で示されるように、ポリフッ化エチレンからなる骨格にスルホン酸基が導入されて構成される構造を有している。ただし、一般式(1)において、m、n、xおよびyは、水素イオン伝導性高分子電解質膜の種類によって異なり、m≧1、n=2、x=5〜13.5、y=1000の場合や、m=0、1、n=1〜5の場合などがある。
一方、触媒層には、白金などの貴金属を担持した炭素材料と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜と同じ成分で構成される水素イオン伝導性高分子電解質とで構成されている。前記炭素材料としては、一般的に様々な種類のものが使用されており、当該炭素材料における炭素−炭素間の結合状態も様々である。
前記水素イオン伝導性高分子電解質膜は、水素イオン伝導性高分子電解質と同じ成分を含有している。また、反射スペクトルは、含有成分の増減に伴って種々の強度を示すため、強度の差として観測できる。そのため、水素イオン伝導性高分子電解質膜が剥き出しになっている部分には、水素イオン伝導性高分子電解質に由来する吸収が強く現れ、触媒層との判別が可能である。
東京科学同人の「有機化合物のスペクトルによる同定法−MS、IR、NMR、UVの併用」によれば、1350cm-1または1150cm-1付近の吸収は、スルホン酸基の吸収を示している。この2つの吸収は、図2の(A)および(B)に示すように、スペクトルの形状において顕著な差を生じるため、触媒層の形成状態の良否判定に利用することが可能である。また、680cm-1付近の吸収はCF3−基の吸収に相当し、同様に、吸収の差が顕著である。
良好な触媒層に光を照射した場合と比較して、水素イオン伝導性高分子電解質膜の表面に光を照射した場合には、これら3つの波数における吸収が大きくなる。これは、水素イオン伝導性高分子電解質において、これら3つの波数の光を吸収する成分の濃度が、触媒層よりも高いためである。これら3つの波数の中で、どの波数の赤外光を単色光として用いても、吸収強度の違いから触媒層の欠陥部位を検知することが可能である。
また、触媒層の面方向において、触媒層を構成する成分の濃度分布を分析する場合も、例えば1350cm-1の単色光を照射し、吸収強度の違いから分析することが可能である。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
本実施例では、まず、ケッチェンブラックECに白金を担持させた触媒体(白金50重量%、田中貴金属工業(株)製のTEC10E50E)10gと、水素イオン伝導性高分子電解質として、9重量%濃度のパーフルオロカーボンスルホン酸(旭硝子(株)製のFSS-1)を含むエタノール溶液44.4gとを、容器内で混合し、その後、超音波攪拌を行った。その後、溶媒を除去し、水素イオン伝導性高分子電解質と炭素との乾燥重量比が0.8である試料粉末Aを得た。
また、これとは別に、前記試料粉末Aと同様にして、10gのTEC10E50Eと、88.8gのFSS-1とを混合し、超音波攪拌を行い、その後、溶媒を除去することによって、試料粉末Bを得た。このとき、試料粉末B中の水素イオン伝導性高分子電解質と炭素との乾燥重量比は1.6であった。
さらに、これとは別に、前記試料粉末Aと同様にして、10gのTEC10E50Eと22.2gのFSS-1とを混合し、超音波攪拌を行い、その後、溶媒を除去することによって、試料粉末Cを得た。このとき、試料粉末C中の水素イオン伝導性高分子電解質と炭素との乾燥重量比は0.4であった。
つぎに、10gの試料粉末A、BまたはCと、10gの蒸留水と、12gのエチレングリコールとを混合し、それぞれ、触媒層用のペースト状インクA、BおよびCを調製した。その後、外寸が14cm×54cmの水素イオン伝導性高分子電解質膜(ジャパンゴアテックス(株)製のGore-Select、厚さ30μm)上に、図3に示すように、水素イオン伝導性高分子電解質膜の端部31から9cmずつ間隔をあけて、6cm×6cmの3つの範囲部分に3つの触媒層32、33および34を形成した。
この際、触媒層は、それぞれ図4および5に示す版(マスク)AおよびBを用い、スクリーン印刷法により形成した。版Aには、6cm×6cmのメッシュ部41を形成するとともに、水素イオン伝導性高分子電解質膜上の塗布面に、1cm×1cmの非塗布面を形成するためのカバー部42を形成した。また、逆に、版Bは、版Aによって形成される非塗布面に触媒層を形成できるように、版Aのカバー部42に相当するメッシュ部43(1cm×1cm)を形成した。
触媒層32の水素イオン伝導性高分子電解質膜11上への形成は、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に版Aを配置し、メッシュ部41に触媒層用のペースト状インクAを塗布し、自然乾燥させることによって行った。このとき、版Aで触媒層を塗工できないカバー部42に相当する部分には、周囲と異なり、触媒層を形成することができなかった。
また、触媒層33の水素イオン伝導性高分子電解質膜11上への形成は、まず、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に版Aを配置し、メッシュ部41に触媒層用のペースト状インクAを塗布し、自然乾燥させ、その後、版Bを配置し、メッシュ部43から、版Aで塗布されなかった部分にのみ触媒層用のペースト状インクBを塗布し、自然乾燥させて触媒層を形成した。
さらに、触媒層34の水素イオン伝導性高分子電解質膜11上への形成は、触媒層33と同様に、まず、水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に版Aを配置し、メッシュ部41に触媒層用のペースト状インクAを塗布し、自然乾燥させ、その後、版Bを配置し、メッシュ部43から、版Aで塗布されなかった部分にのみ触媒層用のペースト状インクCを塗布し、自然乾燥させて触媒層を形成した。
このとき、得られた触媒層32、33および34の厚みは平均10μmであり、各触媒層中の単位面積当たりの白金重量は、触媒層32で版Aのカバー部42によって塗布できなかった部分を除き、0.5mg/cm2であった。
これとは別に、外寸が14cm×54cmの水素イオン伝導性高分子電解質膜(ジャパンゴアテックス(株)製のGore-Select、厚さ30μm)上に、図3と同じ位置に版Aを置き、前記試料粉末Aから同様に調製した触媒層用のペースト状インクを用いて、3箇所に触媒層C1、C2およびC3を形成した。その後、版Aを置いた位置と同じ位置に版Bを用いて、前記試料粉末Aから同様に調製した触媒層用のペースト状インクを塗布し、版Aと版Bで形成される触媒層が全て同じになるものを作製した。
この時、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された3つの触媒層の平均厚みは10μmであり、各触媒層中の単位面積当たりの白金重量は、0.5mg/cm2であった。
この時、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された3つの触媒層の平均厚みは10μmであり、各触媒層中の単位面積当たりの白金重量は、0.5mg/cm2であった。
これらの触媒層を、図1を用いて説明した方法を用い、図3において示したように、水素イオン伝導性高分子電解質膜11の一方の端部31から、他方の端部35まで、連続して毎秒1cmの速度で光源13の下を通過するように、水素イオン伝導性高分子電解質膜11を移動させた。光源13には赤外光を用い、分光器14としてKBrプリズムを用い、1350cm-1の波数の赤外光のみが選択的に照射されるように調整し、形成された触媒層からの反射光を1mmの受光素子を複数個直線上に並べたフォトダイオードアレイからなる受光部15を用い、線分析を行った。
このとき、図3に示す線X(分析開始端36〜分析終了端37)および線Y(分析開始端38〜分析終了端39)上に照射された1350cm-1の波数の反射光を観測し、経過時間と、相対強度として表した反射光強度との関係を、図6および7のグラフに示した。線Xにおける分析結果を図6に示し、線Yにおける分析結果を図7に示した。
図6において、分析開始からの経過時間0秒過ぎから9秒までの間、水素イオン伝導性高分子電解質膜11に1350cm-1の波数の光が照射されると、水素イオン伝導性高分子電解質膜11中のスルホン酸基が光の一部を吸収し、残りの光が反射光として受光部15で観測された。
その後、9秒過ぎ〜15秒までの間、触媒層32に光が照射されると、反射光強度(相対強度)は100%増加した。これは、水素イオン伝導性高分子電解質膜と触媒層とでは、含有されるスルホン酸基の量が異なることに起因するものと考えられた。すなわち、触媒層中の水素イオン伝導性高分子電解質に由来するスルホン酸基の量は、水素イオン伝導性高分子電解質膜中のものと比較して少ないため、その結果、受光部15で観測される反射光強度(相対強度)が増加したものと考えられた。
その後、15秒過ぎ〜24秒までの間は、光の照射される部位が触媒層32から再度水素イオン伝導性高分子電解質膜になるため、反射光強度は0秒過ぎから9秒までの場合の値と同じ値に戻った。これ以降、それぞれ触媒層33および34に光が照射している24秒過ぎ〜30秒および39秒過ぎ〜45秒までの間は、触媒層32に光が照射された9秒過ぎ〜15秒までの間の場合と同じ反射光強度になった。
また、水素イオン伝導性高分子電解質膜に光が照射されている状態の30秒過ぎ〜39秒までの間、および45秒過ぎ〜54秒までの間の場合は、0秒過ぎ〜9秒までの間および15秒過ぎ〜24秒までの間の場合と同じ反射光強度を観測した。
これに対し、図7では、図6の場合と比較して、触媒層32、33および34のそれぞれにおいて、版Aで塗布できない部分を観測する13秒過ぎ〜14秒までの間、28秒過ぎ〜29秒までの間、および43秒過ぎ〜44秒までの間で、相対強度の変化が観測された。
13秒過ぎ〜14秒までの間に観測された反射光強度は、0秒過ぎ〜9秒までの間に観測された反射光強度と同じになった。これは、触媒層32の版Aで塗布できなかった部位において、水素イオン伝導性高分子電解質が剥き出しになっているため、1350cm-1の波数の光の吸収が増加したためと考えられる。
また、28秒過ぎ〜29秒までの間に観測された反射光強度は、24秒過ぎ〜28秒までの間に観測された反射光強度に対して20%減少した。これは、触媒層33の版Bで塗布した部位の触媒層における水素イオン伝導性高分子電解質の量が、版Aで塗布した触媒層33の2倍であるため、1350cm-1の波数の光の吸収が増加したためと考えられる。
また、43秒過ぎ〜44秒までの間に観測された反射光強度は、39秒過ぎ〜43秒までの間に観測された反射光強度に対して20%増加した。これは、触媒層34の版Bで塗布した部位の触媒層における水素イオン伝導性高分子電解質の量が、版Aで塗布した触媒層34の半分であるため、1350cm-1の波数の光の吸収が減少したためと考えられる。
なお、図6および7で一定の反射光強度を示す時間帯における反射光強度の変化幅は、±0.1%以内であった。
さらに、フォトダイオードアレイを用いて観測した線XおよびY上に相当する他の部分についても、図6および7と同等の結果が得られた。
さらに、フォトダイオードアレイを用いて観測した線XおよびY上に相当する他の部分についても、図6および7と同等の結果が得られた。
次に、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に、水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が全て0.8のもので形成された3つの触媒層のものでも、同様に図3に示す線Xおよび線Y上に1350cm-1の波数の赤外光を照射し、同様に反射光を測定した。その結果、線Xおよび線Yいずれの場合も、図6に示す分析結果が得られた。さらにフォトダイオードアレイを用いて観測した場合でも同様の結果が得られた。
次に、上記で得られた3つの触媒層C1、C2およびC3である触媒層32、33および34を有する水素イオン伝導性高分子電解質膜とは反対の側に、6cm×6cmの範囲に版Aと版Bを用いて、試料粉末Aから同様に調製された触媒層用ペースト状インクを塗布し、版Aと版Bで形成される触媒層が全て同じになるものを作製した。この時、形成された各触媒層の平均厚さは10μmであり、各触媒層中の単位面積当たりの白金重量は、0.5mg/cm2であった。
その後、水素イオン伝導性高分子膜の両面に形成された触媒層を中心に、外寸が12cmの正方形の大きさとなるように水素イオン伝導性高分子電解質膜を切断し、両面の触媒層中の水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が0.8だけで、欠陥なく構成されているもの、触媒層32を含むもの、触媒層32を含むもの、触媒層33を含むものに分離した。この時得られたものを、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜A、B、CおよびDとした。
次に、ここで得られた両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜A、B、CおよびDを燃料電池にして評価するため、電極の拡散層となるカーボンペーパーを撥水処理した。外寸6cm×6cm、厚み360μmの導電性カーボン粒子のカーボン不織布(東レ(株)製、TGP―H―120)を、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製、ネオフロンND1)に含浸した後、これを乾燥し、400℃で30分加熱することで、撥水性を与えた。さらに、このカーボン不織布の一方の面に、導電性カーボン粉末とPTFE微粉末を分散させた水溶液とを混合したインクを、スクリーン印刷法を用いて塗布することで撥水層を形成した。このとき、撥水層の一部を、カーボン不織布の中に埋め込んだ。
さらに、カーボンペーパーを撥水層の塗布した面が触媒層の側に接するようにホットプレスで接合し、これを電解質膜電極接合体(MEA)とした。さらに、同時に、作製したMEAの水素イオン伝導性高分子電解質膜の外周部にゴム製のガスケット板を接合し、冷却水と燃料ガス及び酸化剤ガス流通用のマニホールド穴を形成した
つぎに、外寸が12cm×12cm、厚みが1.3mm、ガス流路および冷却水流路の深さが0.5mmの樹脂含浸黒鉛板から構成したセパレータを準備し、セパレータ2枚を用い、MEAシートの一方の面に酸化剤ガス流路が形成されたセパレータを、裏面に燃料ガス流路が形成されたセパレータを重ね合わせ、これを単電池とした。この時、燃料ガス流路が形成されたセパレータ側には、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜A、B、C、Dの全てのものにおいて、6cm×6cmの触媒層中の水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が0.8だけで構成されている触媒層の側が接触するようにした。
この単電池を2セル積層した後、冷却水路溝を形成したセパレータでこの2セル積層電池を挟み込み、このパターンを繰り返して100セル積層の電池スタックを作製した。このとき、電池スタックの両端部には、ステンレス製の集電板と電気絶縁材料の絶縁板、さらに端板と締結ロッドで固定した。このときの締結圧はセパレータの面積あたり15kgf/cm2とした。
このように作製した本実施例の高分子電解質型燃料電池を、70℃に保持し、燃料極、空気極側に65℃の露点となるよう加湿・加温した水素ガスと空気ガスを供給した。その結果、電流を外部に出力しない無負荷時には、98Vの電池開放電圧を得た。
この電池を燃料利用率70%、酸素利用率40%、電極反応面積を36cm2として電流密度0.7A/cm2の条件で連続発電試験を行い、出力特性の時間変化を測定した。その結果、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜A、B、C、Dから作製した燃料電池は、1000時間以上にわたってそれぞれ、A約1.51kW(60V−25.2A)B約1.26kW(50V−25.2A)、C約1.31kW(52V−25.2A)、D約1.38kW(55V−25.2A)の電池出力を維持することを確認した。
両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜B、C、Dから作製した電池が、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜Aから作製した電池よりも特性が低いのは、以下の理由によるものと思われる。Bにおいては、触媒層が形成されていない場所があるために、その部分では発電されていないことと、さらに触媒層が形成されていない箇所と形成されている場所では撥水性が異なるために、長時間の燃料電池の運転に伴い、触媒層が形成されていない場所に水がたまり、触媒層内全体への反応ガスの通気性が妨げられるため、電極反応が抑制されるためと考えられる。
また、Cにおいては、触媒層中に含まれている水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が異なる部分が存在するために、触媒層内における撥水性が異なっている。水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が0.8よりも多い部位では、その部位にある水素イオン伝導性高分子電解質が水を保水し、触媒層内全体への反応ガスの通気性を妨げる結果、燃料電池の反応性が抑制されるためと考えられる。
また、Dにおいても、同様の理由によるものと考えられる。触媒層内全体の撥水性が均一でないために、Cよりも電池性能がよいのは、水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が0.8よりも少ない部位はCの1.6の部位よりも水の保水性は低下するため、反応ガスの通気性に悪い影響を及ぼす効果が低減されているためと考えられる。
また、Aよりも電池性能が悪いのは、触媒層内全体における撥水性が均一でないために、撥水性の低いところでは逆に水が溜まる結果となり、触媒層全体で考えた場合の水の排出効果が抑制されて、触媒層中に水が溜まることで反応ガスの通気性が抑制されて電池性能が低下しているためと考えられる。
以上のことから、本実施例で行った検査方法により、燃料電池として特性が低下するレベルの水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層中の水素イオン伝導性高分子電解濃度分布の不揃いを判別することができた。
以上の結果から、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層の水素イオン伝導性高分子電解質の面内濃度分布の違いを観測することができた。また、触媒層の欠陥部位も1%以上相対強度が変化することで判別することができ、これにより、触媒層の形成状態の良否を判断することができた。
なお、本実施例においては触媒層で反射する前の照射光を分光器で分光したが、触媒層で反射した反射光を分光しても同様の結果が得られた。
本実施例では、実施例1と同様にして図3に示すように水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に触媒層32、33および34を形成した後、受光部15(図1参照)としてフォトダイオードアレイの代わりに1mm角のフォトダイオードを用い、毎秒1cmの速度で移動する水素イオン伝導性高分子電解質膜11の移動方向19に対して、垂直に毎秒280cm/秒の速度で何度も往復するように移動させた。
さらに、実施例1で作製した、外寸が14cm×54cmの水素イオン伝導性高分子膜(ジャパンゴアテックス(株)製のGore-Select、厚さ30μm)上に、図3と同じ位置に版Aと、前記試料粉末Aから同様に調製した触媒層用のペースト状インクを用いて、触媒層を形成した後、版Aを置いた位置と同じ位置に版Bを用いて、前記試料粉末Aから同様に調製した触媒層用のペースト状インクを塗布し、版Aと版Bで形成される触媒層が全て同じであり、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された3つの触媒層の平均厚みは10μmであり、各触媒層中の単位面積当たりの白金重量が、0.5mg/cm2であるものも、同様のことを行った。
触媒層の検査を行った後、実施例1と同様の方法で両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜A、B、C、Dを作製した。そして、その後実施例1と同様に電池スタックを作製し同様に評価を行った。その結果、実施例1と同じ結果が得られた。
この移動にともなって、形成された触媒層の反射光の強度による分析を、水素イオン伝導性高分子電解質膜の移動方向とフォトダイオードアレイの配列方向との関係から、図3の36-37および38-39の点線上の分析として行った。その結果、実施例1の場合と同様の結果が得られた。
以上のことから、本実施例で行った検査方法により、燃料電池として特性が低下するレベルの水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層中の水素イオン伝導性高分子電解濃度分布の不揃いを判別することができた。
本実施例では、実施例1と同様にして図3に示すように水素イオン伝導性高分子電解質膜11上に触媒層32、33および34を形成した後、光源13(図1参照)として赤外光の代わりに白色光を用いること、および分光器14は使用しないこと以外は実施例1と同様にして分析を行った。図3の線X上の分析結果を図8に示し、線Y上の分析結果を図9に示した。
さらに、実施例1で作製した、外寸が14cm×54cmの水素イオン伝導性高分子膜(ジャパンゴアテックス(株)製のGore-Select、厚さ30μm)上に、図3と同じ位置に版Aと、前記試料粉末Aから同様に調製した触媒層用のペースト状インクを用いて、触媒層を形成した後、版Aを置いた位置と同じ位置に版Bを用いて、前記試料粉末Aから同様に調製した触媒層用のペースト状インクを塗布し、版Aと版Bで形成される触媒層が全て同じであり、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された3つの触媒層の平均厚みは10μmであり、各触媒層中の単位面積当たりの白金重量が、0.5mg/cm2であるものも、同様のことを行った。図3の線X上および線Y上の分析結果は、いずれも触媒層32、33、34の線X上の結果と同じであった。その結果を図8に示す。
図8において、分析開始の0秒過ぎ〜9秒までの間、水素イオン伝導性高分子電解質膜11に白色光が照射されることで、水素イオン伝導性高分子電解質膜11の表面での反射光が受光部15で観測された。その後、9秒過ぎ〜15秒までの間、触媒層32に光が照射されると、反射光強度は50%減少した。これは、水素イオン伝導性高分子電解質膜11と異なり、触媒層が構成成分として白色光を強く吸収する炭素を含み、白色光を水素イオン伝導性高分子電解質膜より強く吸収するため、白色光の反射が少なくなったからであると考えられる。
その後、15秒過ぎ〜24秒までの間は、光の照射される部位が、触媒層32から再度水素イオン伝導性高分子電解質膜上になるため、反射光強度は0秒過ぎ〜9秒までの間に観測された値と同じ値に戻った。
これ以後、触媒層33および34に光が照射されている24秒過ぎ〜30秒および39秒過ぎ〜45秒までの間は、触媒層32に白色光が照射された9秒過ぎ〜15秒までの間に観測された反射光強度と同じ反射光強度になった。
また、水素イオン伝導性高分子電解質膜に光が照射されている状態の30秒過ぎ〜39秒までの間および45秒過ぎ〜54秒まで間のは、0秒過ぎ〜9秒までの間および15秒過ぎ〜24秒までの間に観測された反射光強度と同じ反射光強度を観測した。
これに対し、図9では、図8の場合と比較して、触媒層32の版Aで塗布できない部位を観測する13秒過ぎ〜14秒までの間で、反射光強度の増加が観測された。これは、版Aで塗布できなかった触媒層32の部位において、水素イオン伝導性高分子電解質膜が剥き出しになっているため、白色光の吸収が減少したためと考えられる。
触媒層の検査を行った後、実施例1と同様の方法で両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜A、Bを作製した。そして、その後実施例1と同様に電池スタックを作製し同様に評価を行った。その結果、実施例1と同じ結果が得られた。
次に実施例1で作製した両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜B、C、Dから作製した電池を実施例1と同様の条件で連続発電試験を行い、出力特性の時間変化を測定した。その結果、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜B、C、Dから作製した燃料電池は、1000時間以上にわたってそれぞれ、B約1.26kW(50V−25.2A)、C約1.31kW(52V−25.2A)、D約1.38kW(55V−25.2A)の電池出力を維持することを確認した。
次に実施例2で得られた両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜B、C、Dから作製した電池を実施例1と同様の条件で連続発電試験を行い、出力特性の時間変化を測定した。その結果、比較例1と同様の結果が得られた。
次に実施例3で得られた両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜B、C、Dから作製した電池を実施例1と同様の条件で連続発電試験を行い、出力特性の時間変化を測定した。その結果、比較例1と同様の結果が得られた。
実施例1、2、3および比較例1、2を通して、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜B、C、Dから作製した電池が、両面触媒層形成水素イオン伝導性高分子電解質膜Aから作製した電池よりも特性が低いのは、以下の理由によるものと思われる。
Bにおいては、触媒層が形成されていない場所があるために、その部分では発電されていないことと、さらに触媒層が形成されていない箇所と形成されている場所では撥水性が異なるために、長時間の燃料電池の運転に伴い、触媒層が形成されていない場所に水がたまり、触媒層内全体への反応ガスの通気性が妨げられるため、電極反応が抑制されるためと考えられる。
また、Cにおいては、触媒層中に含まれている水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が異なる部分が存在するために、触媒層内における撥水性が異なっている。水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が0.8よりも多い部位では、その部位にある水素イオン伝導性高分子電解質が水を保水し、触媒層内全体への反応ガスの通気性を妨げる結果、燃料電池の反応性が抑制されるためと考えられる。
また、Dにおいても、同様の理由によるものと考えられる。に触媒層内全体の撥水性が均一でないために、Cよりも電池性能がよいのは、水素イオン伝導性高分子電解質と炭素の重量比が0.8よりも少ない部位はCの1.6の部位よりも水の保水性は低下するため、反応ガスの通気性に悪い影響を及ぼす効果が低減されているためと考えられる。
またAよりも電池性能が悪いのは、触媒層内全体における撥水性が均一でないために、撥水性の低いところでは逆に水が溜まる結果となり、触媒層全体で考えた場合の水の排出効果が抑制されて、触媒層中に水が溜まることで反応ガスの通気性が抑制されて電池性能が低下しているためと考えられる。
以上のことから、本実施例1、2で行った検査方法により、燃料電池として特性が低下するレベルの水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層中の水素イオン伝導性高分子電解濃度分布の不揃いを判別することができた。
また、本実施例3で行った検査方法により、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層の面方向における水素イオン伝導性高分子電解質濃度の均一でない部分の判別はできなかったが、触媒層の欠陥を判別することができた。以上の結果より燃料電池として特性が低下するレベルの水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層の欠陥を判別することができた。
以上の結果、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層の面方向における水素イオン伝導性高分子電解質濃度の均一でない部分の判別はできなかったが、触媒層の欠陥を判別することができた。以上の結果により、水素イオン伝導性高分子電解質膜上の触媒層の形成状態の良否を判別することが可能となった。
以上のように、本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜上に形成された触媒層において、触媒層が欠けて水素イオン伝導性高分子電解質が剥き出しになっている部分を、簡単な装置を用い、分析による試料へのダメージがなく、簡単な操作により、連続的に、確実に判別することが可能である。
11 水素イオン伝導性高分子電解質膜
12 触媒層
13 光源
14 分光器
15 受光部
16 照射光
17 剥き出し部分
18 反射光
19 移動方向
31 端部
32 触媒層
33 触媒層
34 触媒層
35 端部
36 分析開始端
37 分析終了端
38 分析開始端
39 分析終了端
41 メッシュ部
42 カバー部
43 メッシュ部
12 触媒層
13 光源
14 分光器
15 受光部
16 照射光
17 剥き出し部分
18 反射光
19 移動方向
31 端部
32 触媒層
33 触媒層
34 触媒層
35 端部
36 分析開始端
37 分析終了端
38 分析開始端
39 分析終了端
41 メッシュ部
42 カバー部
43 メッシュ部
Claims (5)
- 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の触媒層と、前記触媒層の外側に設けられた一対のガス拡散層とを有する高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法であって、
水素イオン伝導性高分子電解質膜上に触媒層を形成した後、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を面方向に移動させながら光を照射し、少なくとも前記触媒層からの反射光を測定し、前記反射光と基準反射光とを比較して前記触媒層の形成状態の良否を判定することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法。 - 前記基準反射光が、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の反射光であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法。
- 前記基準反射光が、良好な形成状態の触媒層の反射光であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法。
- 前記照射光または前記反射光を分光器によって分光し、特定の波長の反射光のみを測定することを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法。
- 前記反射光を、複数の受光素子を含む受光部で測定し、前記受光素子が、前記触媒層の移動方向に対して垂直でかつ前記触媒層の面方向に水平な方向に一列に並んでいることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池用MEAの検査方法。
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