JP2005036032A - 表示装置用蛍光体とその製造方法、およびそれを用いた表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】CRT、FEDなどのカラー表示装置に用いられる蛍光体、特に緑色発光の硫化亜鉛蛍光体において、高電流密度下での欠陥による不要な発光を抑え、カラー表示装置の電流特性および色純度を高める。
【解決手段】本発明の表示装置用蛍光体は、一般式:ZnS:Cua,A1b(式中、aおよびbは、蛍光体母体である硫化亜鉛1gに対して、1×10−5≦a≦1×10−3g、1×10−5≦b≦1×10−3gの範囲の量をそれぞれ示す)で実質的に表わされる組成を有し、電子線での励起により発光する緑色発光蛍光体であり、発光のスペクトルにおいて、ピーク波長から60nm短い波長よりさらに短波長の面積を、スペクトル全体の面積に対して1.6%以下とする。この蛍光体は、蛍光体原料から吸着した水分および酸素を除去し、その状態を維持しながら加熱・焼成することで得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の表示装置用蛍光体は、一般式:ZnS:Cua,A1b(式中、aおよびbは、蛍光体母体である硫化亜鉛1gに対して、1×10−5≦a≦1×10−3g、1×10−5≦b≦1×10−3gの範囲の量をそれぞれ示す)で実質的に表わされる組成を有し、電子線での励起により発光する緑色発光蛍光体であり、発光のスペクトルにおいて、ピーク波長から60nm短い波長よりさらに短波長の面積を、スペクトル全体の面積に対して1.6%以下とする。この蛍光体は、蛍光体原料から吸着した水分および酸素を除去し、その状態を維持しながら加熱・焼成することで得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線励起により発光する表示装置用蛍光体とその製造方法、およびそれを用いたカラー表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチメディア時代の到来に伴って、デジタルネットワークのコア機器となるディスプレイ装置には、大画面化や高精細化、コンピュータ等の多様なソースへの対応性などが求められており、陰極線管(CRT)を使用した装置が広く使用されている。CRTに関しては、ハイビジョン用テレビや高精細ディスプレイ管などが開発されており、画像の大画面・高品質化や高精細化などが進められている。
【0003】
また、CRTに代わる薄型のディスプレイ装置として、電界放出型冷陰極などの電子放出素子を用いた電界放出型表示装置(FED)の研究、開発が進められている。FEDは基本的な表示原理がCRTと同じであり、明るさ、コントラスト、色再現性などの基本的な表示性能に加えて、視野角が広い、応答速度が速い、消費電力が小さいなどの特徴を有する。
【0004】
上述したCRTやFEDなどのディスプレイ装置は、フルカラー表示を可能とするために、青色発光、緑色発光および赤色発光の各蛍光体を含む蛍光膜を有している。そして、これらのディスプレイ装置用の青色発光蛍光体や緑色発光蛍光体としては、硫化亜鉛(ZnS)を母体とする蛍光体が用いられている。例えば、青色発光蛍光体としては、ZnSに第1の付活剤としてAgを含有させるとともに、第2の付活剤としてAlやClを含有させた硫化亜鉛蛍光体(例えば、特許文献1参照)が、また緑色発光蛍光体としては、ZnSに第1の付活剤としてCuやAuを含有させるとともに、第2の付活剤としてAlを含有させた硫化亜鉛蛍光体が使用されている。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−95378公報(第1−2頁)
【特許文献2】
特開2002−226847公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された蛍光体では、発光の色純度(色度)および輝度が十分に満足できるものではなく、特に視感度の高い緑色発光蛍光体の色純度を高めつつ輝度向上をはかることが要望されている。
【0007】
また、ディスプレイ装置の高精細化や高品質化などに伴って、より高い電流密度の電子線により蛍光体を励起することが行われている結果、蛍光体の電流特性をよりいっそう改善し、高電流密度での輝度を高めることが求められている。
【0008】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、CRTやFEDなどのカラー表示装置に用いられる緑色発光蛍光体において、発光色度の改善と、高電流密度下での輝度および色純度の向上を目的とする。また、そのような表示装置用蛍光体を用いることによって、表示特性を向上させたカラー表示装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、CRTなどの表示装置に使用される緑色発光蛍光体の電流特性を向上させるために、蛍光体母体(例えば硫化亜鉛)に対する焼成雰囲気などについて検討した結果、焼成材料および焼成材料を収容する耐熱性容器などの内部に残存する酸素と水を除去し、かつそのような残存酸素および水のない状態を維持しながら焼成を行うことにより、色純度および輝度を向上させることができ、特に電流特性の改善が可能であることを見出した。
【0010】
本発明の表示装置用蛍光体は、一般式:ZnS:Cua,Alb(式中、aおよびbは、蛍光体母体である硫化亜鉛1gに対して、1×10−5≦a≦1×10−3g、1×10−5≦b≦1×10−3gの範囲の量をそれぞれ示す)で実質的に表わされる組成を有し、電子線での励起により発光する緑色発光蛍光体であり、発光のスペクトルにおいて、最大発光強度が得られる波長(以下、発光ピーク波長と示す。)から60nm短い波長よりさらに短波長の部分の面積を(O)としたとき、前記発光スペクトル全体の面積(M)に対する前記(O)の割合が1.6%以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の表示装置用蛍光体の製造方法は、硫化亜鉛を母体とし付活剤としてCuおよびAlをそれぞれ含有する緑色発光蛍光体の製造方法であり、前記蛍光体母体、および前記付活剤を構成する元素または該元素を含有する化合物をそれぞれ含む蛍光体原料から、吸着した水分および酸素を除去する工程と、前記水分および酸素が除去された状態を維持しながら、前記蛍光体原料を加熱して焼成する工程を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明の表示装置用蛍光体の製造方法において、蛍光体原料を焼成する工程は、1気圧以上の硫化性雰囲気あるいは還元性雰囲気で行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の表示装置は、青色発光蛍光体層と緑色発光蛍光体層と赤色発光蛍光体層とをそれぞれ含む蛍光膜と、前記蛍光膜に電子線を照射して発光させる電子源と、前記電子源と前記蛍光膜を真空封止する外囲器とを具備する表示装置であり、緑色発光蛍光体層は前記した表示装置用蛍光体を含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
本発明の第1の実施形態は、ZnSを母体とし付活剤としてCuおよびAlをそれぞれ含有する、一般式:ZnS:Cu,Alで実質的に表わされる組成を有する緑色発光蛍光体である。
【0016】
この緑色発光蛍光体において、Cuは発光中心を形成する第1の付活剤(主付活剤)であり、蛍光体母体であるZnSの1gに対して、1×10−5〜1×10−3gの範囲で含有させることが好ましい。第1の付活剤であるCuの含有量がZnS1gに対して1×10−5g未満であっても、また1×10−3gを超えても、発光輝度や発光色度が低下する。Cuの含有量は、ZnS1gに対して3×10−5〜8×10−4gの範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは5×10−5〜5×10−4gの範囲である。
【0017】
Alは電子線により直接的に励起される第2の付活剤(共付活剤)であり、このような第2の付活剤の励起エネルギーで第1の付活剤を発光させることによって、硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu蛍光体)の発光輝度を高めることができる。第2の付活剤であるAlの含有量は、蛍光体母体であるZnSの1gに対して、1×10−5〜5×10−3gの範囲で含有させることが好ましい。Alの含有量がZnS1gに対して1×10−5g未満であっても、また5×10−3gを超えても、発光輝度が低下しまた発光色度も劣化する。Alの含有量はZnS1gに対して3×10−5〜3×10−3gの範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは5×10−5〜1×10−3gの範囲である。
【0018】
そして、この緑色発光蛍光体は、電流密度が異なる電子線での励起により、いずれも、以下に示すようなスペクトル特性を有する発光を発する。すなわち、この緑色発光蛍光体を電子線により励起して得られる発光のスペクトルにおいて、発光ピーク波長(Nnmと示す。)から60nm短い波長(N−60)nmよりさらに短波長の部分の面積を(O)としたとき、発光スペクトル全体の面積(M)に対する(O)の割合が1.6%以下となっている。(O)/(M)≦1.6%、
【0019】
なお、実施形態においては、波長(N−70)nmよりさらに短波長の部分の面積(P)の発光スペクトル全体の面積(M)に対する割合が、0.8%以下であることが望ましい。(P)/(M)≦0.8%
【0020】
本発明の実施形態の蛍光体は、以下に示すようにして製造される。まず、蛍光体母体である硫化亜鉛原料に対して、所定量の付活剤原料を添加し、さらに塩化カリウムや塩化マグネシウムなどのフラックス(融剤)を必要に応じて添加し、これらを湿式で混合する。
【0021】
具体的には、イオン交換水に硫化亜鉛原料を分散させてスラリー状とし、これに付活剤原料およびフラックスを添加し、常法により撹拌機で混合する。混合時間は、付活剤が均一に分散するように設定する。次いで、蛍光体原料と付活剤などを含むスラリーを、パットなどの乾燥容器に移し、常法により乾燥機で乾燥させて蛍光体原料とする。付活剤原料としては、例えばCuについては硫酸銅、Alについては硝酸アルミニウムなどが用いられる。なお、これら以外の化合物を用いることも可能である。
【0022】
こうして得られた蛍光体原料を、適当量の硫黄および活性炭素とともに、逆止弁のついた耐熱容器に充填する。このとき、硫黄については、乾燥された蛍光体原料とブレンダなどを使用して例えば30〜180分程度混合し、この混合材料を耐熱容器に充填した後、その表面を硫黄で覆うようにすることが好ましい。さらに、容器全体を加熱しながら吸引・脱気し、容器内に残存する酸素や原料に吸着された水分を除去した後、容器内を、硫化水素雰囲気、硫黄蒸気雰囲気などの硫化性雰囲気中、あるいは還元性雰囲気(例えば3〜5%水素−残部窒素の雰囲気)に保持する。そして、これらの雰囲気中で、容器内の蛍光体原料を焼成する。
【0023】
蛍光体母体であるZnSの結晶構造を制御する上で、焼成条件は重要である。目的とする蛍光体を得るために、焼成温度を800〜1,250℃の範囲とすることが望ましい。焼成温度が800℃未満であると、ZnSの結晶粒を十分に成長させることができない。反対に、焼成温度が1250℃を超えると、粗大粒子が増加し使用に適さない。設定した焼成温度にもよるが、焼成時間は30〜360分とすることが望ましい。
【0024】
次に、得られた焼成物をイオン交換水などで水洗し、これを乾燥した後、さらに必要に応じて粗大粒子を除去するための篩別などを実施することによって、硫化亜鉛蛍光体粉末を得ることができる。
【0025】
こうして製造される実施形態の蛍光体は、発光色度が改善され、特に高電流密度下での発光輝度および色純度が高くなっている。したがって、この蛍光体は、励起源として加速電圧が5〜35kVの範囲の電子線を用いるカラー表示装置、例えばカラーCRTやFEDなどに好適に用いられ、画像の高精細化や高品質化を図ることができる。
【0026】
次に、本発明の別の実施形態である電界放出型表示装置(FED)について説明する。
【0027】
図1は、FEDの要部構成を示す断面図である。図において、符号1はフェイスプレートであり、ガラス基板2などの透明基板上に形成された蛍光体層3を有している。この蛍光体層3は、画素に対応させて形成した青色発光蛍光体層、緑色発光蛍光体層および赤色発光蛍光体層を有し、これらの間を黒色導電材から成る光吸収層4により分離した構造となっている。蛍光体層3を構成する各色の蛍光体層のうちで、緑色発光蛍光体層が、前記した実施形態の緑色発光蛍光体から構成されている。青色発光蛍光体層および赤色発光蛍光体層は、それぞれ公知の各種の蛍光体により構成することができる。なお、各色の蛍光体層は、公知のスラリー法あるいは印刷法により形成することができる。
【0028】
上述した青色発光蛍光体層、緑色発光蛍光体層、赤色発光蛍光体層、およびそれらの間を分離する光吸収層4は、それぞれ水平方向に順次繰り返し形成されており、これらの蛍光体層3および光吸収層4が存在する部分が画像表示領域となる。この蛍光体層3と光吸収層4との配置パターンには、ドット状またはストライプ状など、種々のパターンが適用可能である。
【0029】
そして、蛍光体層3上にはメタルバック層5が形成されている。メタルバック層5は、Al膜などの金属膜からなり、蛍光体層3で発生した光のうち、後述するリアプレート方向に進む光を反射して輝度を向上させるものである。
【0030】
また、メタルバック層5は、フェイスプレート1の画像表示領域に導電性を与えて電荷が蓄積されるのを防ぐ機能を有し、リアプレートの電子源に対してアノード電極の役割を果たす。また、メタルバック層5は、フェイスプレート1や真空容器(外囲器)内に残留したガスが電子線で電離して生成するイオンにより蛍光体層3が損傷することを防ぐ機能を有し、さらに、使用時に蛍光体層3から発生したガスが真空容器(外囲器)内に放出されることを防ぎ、真空度の低下を防止するなどの効果も有している。
【0031】
メタルバック層5上には、Baなどからなる蒸発形ゲッタ材により形成されたゲッタ膜6が形成されている。このゲッタ膜6によって、使用時に発生したガスが効率的に吸着される。
【0032】
そして、このようなフェイスプレート1とリアプレート7とが対向配置され、これらの間の空間が支持枠8を介して気密に封止されている。支持枠8は、フェイスプレート1およびリアプレート7に対して、フリットガラス、あるいはInやその合金などからなる接合材9により接合され、これらフェイスプレート1、リアプレート7および支持枠8によって、外囲器としての真空容器が構成されている。
【0033】
リアプレート7は、ガラス基板やセラミックス基板などの絶縁性基板、あるいはSi基板などからなる基板10と、この基板10上に形成された多数の電子放出素子11とを有している。これら電子放出素子11は、例えば電界放出型冷陰極や表面伝導型電子放出素子などを備え、リアプレート7の電子放出素子11の形成面には、図示を省略した配線が施されている。すなわち、多数の電子放出素子11は、各画素の蛍光体に応じてマトリックス状に形成されており、このマトリックス状の電子放出素子11を一行ずつ駆動する、互いに交差する配線(X−Y配線)を有している。なお、支持枠8には図示を省略した信号入力端子および行選択用端子が設けられている。これらの端子は前記したリアプレート7の交差配線(X−Y配線)に対応する。また、平板型のFEDを大型化させる場合、薄い平板状であるためにたわみなどが生じるおそれがある。このようなたわみを防止し、また大気圧に対して強度を付与するために、フェイスプレート1とリアプレート7との間に、補強部材(大気圧支持部材、スペーサ)12を適宜配置してもよい。
【0034】
このカラーFEDにおいては、電子線照射により発光する緑色発光蛍光体層が、実施形態の緑色発光蛍光体から構成されているので、発光輝度や色再現性などの表示特性を向上させることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0036】
実施例1
まず、硫化亜鉛(ZnS)1000gに、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)6.5gと硫酸銅(CuSO4・5H2O)0.68gを適当量の水とともに添加し、十分に混合した後乾燥した。得られた蛍光体原料に、硫黄および活性炭素を適当量添加し、逆止弁のついた耐熱容器に充填した。さらに容器全体を150℃まで加熱して脱気し、これを還元性雰囲気(3〜5%水素−残部窒素の雰囲気)で焼成した。焼成条件は950℃×90分とした。
【0037】
その後、得られた焼成物を十分に水洗および乾燥し、さらに篩別することにより、目的とする緑色発光のZnS:Cu,Al蛍光体を得た。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0038】
実施例2
焼成温度を1050℃とする以外は実施例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0039】
実施例3
焼成温度を1100℃とする以外は実施例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0040】
実施例4
焼成温度を1150℃とする以外は実施例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0041】
比較例1
硫化亜鉛(ZnS)1000gに、硫酸銅(CuSO4・5H2O)0.68gと硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)6.5gを適当量の水とともに添加し、十分に混合した後乾燥した。得られた蛍光体原料に、硫黄および活性炭素を適当量添加して石英るつぼに充填し、これを還元性雰囲気(3〜5%水素−残部窒素の雰囲気)で焼成した。焼成条件は970℃×60分とした。その後、得られた焼成物を十分に水洗および乾燥し、さらに篩別することによって、緑色発光のZnS:Cu,Al蛍光体を得た。こうして得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0042】
比較例2
焼成温度を1050℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0043】
比較例3
焼成温度を1075℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0044】
比較例4
焼成温度を1100℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0045】
比較例5
焼成温度を1150℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0046】
次に、実施例1〜4および比較例1〜5でそれぞれ得られた緑色発光蛍光体を用いて、それぞれ蛍光体膜を形成した。蛍光体膜は、ポリビニルアルコールを含む水溶液中に各緑色発光蛍光体を分散させてスラリーとし、これらのスラリーを回転塗布機でガラス基板上に塗布することにより形成した。回転塗布機の回転数とスラリー粘度を調整することによって、各蛍光体膜の膜厚を3×10−3mg/mm3(3mg/cm3)とした。
【0047】
そして、得られた各蛍光体膜の発光輝度と発光色度をそれぞれ調べた。発光輝度は、各蛍光体膜に加速電圧10kV、電流密度1μA/mm2の電子線を照射して測定した。各輝度は、比較例1の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜の輝度を100としたときの相対値として求めた。発光輝度、発光色度および発光スペクトルは、測定機器としてトプコン社製SR−3を使用して測定した。
【0048】
また、測定された発光スペクトルの全面積に対する、欠陥などに起因する短波長側の発光面積の割合を求めた。すなわち、図2に示す発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長(Nnm)から60nm短い波長(N−60)nmよりさらに短波長の部分の面積を(O)、波長(N−70)nmよりさらに短波長の部分の面積を(P)としたとき、発光スペクトル全体の面積(M)に対する(O)および(P)の割合(O/MおよびP/M)をそれぞれ求めた。
【0049】
これらの測定結果を表1に示す。
【表1】
【0050】
表1に示す結果から、図3で示すグラフが得られた。そして、実施例1〜4の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜の発光色度のx値とy値との間には、y=0.520x+0.468の関係が成り立ち、比較例1〜5の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜の発光色度のx値とy値との間には、y=0.585x+0.443の関係が成り立っていることがわかった。そして、実施例1〜4の緑色蛍光体が比較例1〜5の緑色蛍光体に比べて色純度に優れていることがわかった。
【0051】
次に、蛍光体膜に照射する電子線の電流密度を変化させ、発光特性の変化を測定、評価した。すなわち、実施例1〜4および比較例1〜5の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜について、電子線の電流密度を1μA/mm2から50μA/mm2に変えた場合の発光輝度および発光色度を同様にして測定した。そして、電流密度を変化させた前後での色度(x,y)の変化量を、色ずれとして、以下の式を用いて計算した。
【0052】
色ずれ量= √(Δx2+Δy2)
【0053】
さらに、電流輝度特性であるγ特性(値)を求めた。すなわち、図4に示すように、電流密度の変化に応じた輝度変化のグラフを、輝度=A(電流密度)Bの式で近似し、Bの値をγ特性として計算した。
【0054】
これらの結果を表2に示す。
【表2】
【0055】
表2に示す結果から、実施例1〜4の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜は、比較例1〜5の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜に比べて色ずれ量が小さく、発光特性に優れていることがわかった。また、γ特性についても、実施例1〜4で形成された蛍光体膜は、比較例1〜5で形成された蛍光体膜に比べて、特に高い電流密度で高い値を示し、輝度が良好であることがわかった。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の表示装置用蛍光体によれば、高電流密度では遷移確率の高い短波長側の発光そのものを抑制することにより、緑色発光の効率を上げることができ、その結果緑色蛍光体としての色純度を上げることができる。したがって、このような蛍光体を緑色発光蛍光体として用いたCRT、FEDなどのカラー表示装置によれば、高輝度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての電界放出型表示装置(FED)の一構成例を示す断面図。
【図2】本発明の実施例および比較例で得られた蛍光体膜の発光スペクトルを示すグラフ。
【図3】本発明の実施例および比較例で得られた蛍光体膜において、発光色度のx値とy値との間の関係を表すグラフ。
【図4】本発明の実施例および比較例で得られた蛍光体膜において、電流密度の変化に応じた輝度の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1……フェイスプレート、2……ガラス基板、3……蛍光体層、4……光吸収層、5……メタルバック層、6……ゲッタ膜、7……リアプレート、8……支持枠、11……電子放出素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線励起により発光する表示装置用蛍光体とその製造方法、およびそれを用いたカラー表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチメディア時代の到来に伴って、デジタルネットワークのコア機器となるディスプレイ装置には、大画面化や高精細化、コンピュータ等の多様なソースへの対応性などが求められており、陰極線管(CRT)を使用した装置が広く使用されている。CRTに関しては、ハイビジョン用テレビや高精細ディスプレイ管などが開発されており、画像の大画面・高品質化や高精細化などが進められている。
【0003】
また、CRTに代わる薄型のディスプレイ装置として、電界放出型冷陰極などの電子放出素子を用いた電界放出型表示装置(FED)の研究、開発が進められている。FEDは基本的な表示原理がCRTと同じであり、明るさ、コントラスト、色再現性などの基本的な表示性能に加えて、視野角が広い、応答速度が速い、消費電力が小さいなどの特徴を有する。
【0004】
上述したCRTやFEDなどのディスプレイ装置は、フルカラー表示を可能とするために、青色発光、緑色発光および赤色発光の各蛍光体を含む蛍光膜を有している。そして、これらのディスプレイ装置用の青色発光蛍光体や緑色発光蛍光体としては、硫化亜鉛(ZnS)を母体とする蛍光体が用いられている。例えば、青色発光蛍光体としては、ZnSに第1の付活剤としてAgを含有させるとともに、第2の付活剤としてAlやClを含有させた硫化亜鉛蛍光体(例えば、特許文献1参照)が、また緑色発光蛍光体としては、ZnSに第1の付活剤としてCuやAuを含有させるとともに、第2の付活剤としてAlを含有させた硫化亜鉛蛍光体が使用されている。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−95378公報(第1−2頁)
【特許文献2】
特開2002−226847公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された蛍光体では、発光の色純度(色度)および輝度が十分に満足できるものではなく、特に視感度の高い緑色発光蛍光体の色純度を高めつつ輝度向上をはかることが要望されている。
【0007】
また、ディスプレイ装置の高精細化や高品質化などに伴って、より高い電流密度の電子線により蛍光体を励起することが行われている結果、蛍光体の電流特性をよりいっそう改善し、高電流密度での輝度を高めることが求められている。
【0008】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、CRTやFEDなどのカラー表示装置に用いられる緑色発光蛍光体において、発光色度の改善と、高電流密度下での輝度および色純度の向上を目的とする。また、そのような表示装置用蛍光体を用いることによって、表示特性を向上させたカラー表示装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、CRTなどの表示装置に使用される緑色発光蛍光体の電流特性を向上させるために、蛍光体母体(例えば硫化亜鉛)に対する焼成雰囲気などについて検討した結果、焼成材料および焼成材料を収容する耐熱性容器などの内部に残存する酸素と水を除去し、かつそのような残存酸素および水のない状態を維持しながら焼成を行うことにより、色純度および輝度を向上させることができ、特に電流特性の改善が可能であることを見出した。
【0010】
本発明の表示装置用蛍光体は、一般式:ZnS:Cua,Alb(式中、aおよびbは、蛍光体母体である硫化亜鉛1gに対して、1×10−5≦a≦1×10−3g、1×10−5≦b≦1×10−3gの範囲の量をそれぞれ示す)で実質的に表わされる組成を有し、電子線での励起により発光する緑色発光蛍光体であり、発光のスペクトルにおいて、最大発光強度が得られる波長(以下、発光ピーク波長と示す。)から60nm短い波長よりさらに短波長の部分の面積を(O)としたとき、前記発光スペクトル全体の面積(M)に対する前記(O)の割合が1.6%以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の表示装置用蛍光体の製造方法は、硫化亜鉛を母体とし付活剤としてCuおよびAlをそれぞれ含有する緑色発光蛍光体の製造方法であり、前記蛍光体母体、および前記付活剤を構成する元素または該元素を含有する化合物をそれぞれ含む蛍光体原料から、吸着した水分および酸素を除去する工程と、前記水分および酸素が除去された状態を維持しながら、前記蛍光体原料を加熱して焼成する工程を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明の表示装置用蛍光体の製造方法において、蛍光体原料を焼成する工程は、1気圧以上の硫化性雰囲気あるいは還元性雰囲気で行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の表示装置は、青色発光蛍光体層と緑色発光蛍光体層と赤色発光蛍光体層とをそれぞれ含む蛍光膜と、前記蛍光膜に電子線を照射して発光させる電子源と、前記電子源と前記蛍光膜を真空封止する外囲器とを具備する表示装置であり、緑色発光蛍光体層は前記した表示装置用蛍光体を含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
本発明の第1の実施形態は、ZnSを母体とし付活剤としてCuおよびAlをそれぞれ含有する、一般式:ZnS:Cu,Alで実質的に表わされる組成を有する緑色発光蛍光体である。
【0016】
この緑色発光蛍光体において、Cuは発光中心を形成する第1の付活剤(主付活剤)であり、蛍光体母体であるZnSの1gに対して、1×10−5〜1×10−3gの範囲で含有させることが好ましい。第1の付活剤であるCuの含有量がZnS1gに対して1×10−5g未満であっても、また1×10−3gを超えても、発光輝度や発光色度が低下する。Cuの含有量は、ZnS1gに対して3×10−5〜8×10−4gの範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは5×10−5〜5×10−4gの範囲である。
【0017】
Alは電子線により直接的に励起される第2の付活剤(共付活剤)であり、このような第2の付活剤の励起エネルギーで第1の付活剤を発光させることによって、硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu蛍光体)の発光輝度を高めることができる。第2の付活剤であるAlの含有量は、蛍光体母体であるZnSの1gに対して、1×10−5〜5×10−3gの範囲で含有させることが好ましい。Alの含有量がZnS1gに対して1×10−5g未満であっても、また5×10−3gを超えても、発光輝度が低下しまた発光色度も劣化する。Alの含有量はZnS1gに対して3×10−5〜3×10−3gの範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは5×10−5〜1×10−3gの範囲である。
【0018】
そして、この緑色発光蛍光体は、電流密度が異なる電子線での励起により、いずれも、以下に示すようなスペクトル特性を有する発光を発する。すなわち、この緑色発光蛍光体を電子線により励起して得られる発光のスペクトルにおいて、発光ピーク波長(Nnmと示す。)から60nm短い波長(N−60)nmよりさらに短波長の部分の面積を(O)としたとき、発光スペクトル全体の面積(M)に対する(O)の割合が1.6%以下となっている。(O)/(M)≦1.6%、
【0019】
なお、実施形態においては、波長(N−70)nmよりさらに短波長の部分の面積(P)の発光スペクトル全体の面積(M)に対する割合が、0.8%以下であることが望ましい。(P)/(M)≦0.8%
【0020】
本発明の実施形態の蛍光体は、以下に示すようにして製造される。まず、蛍光体母体である硫化亜鉛原料に対して、所定量の付活剤原料を添加し、さらに塩化カリウムや塩化マグネシウムなどのフラックス(融剤)を必要に応じて添加し、これらを湿式で混合する。
【0021】
具体的には、イオン交換水に硫化亜鉛原料を分散させてスラリー状とし、これに付活剤原料およびフラックスを添加し、常法により撹拌機で混合する。混合時間は、付活剤が均一に分散するように設定する。次いで、蛍光体原料と付活剤などを含むスラリーを、パットなどの乾燥容器に移し、常法により乾燥機で乾燥させて蛍光体原料とする。付活剤原料としては、例えばCuについては硫酸銅、Alについては硝酸アルミニウムなどが用いられる。なお、これら以外の化合物を用いることも可能である。
【0022】
こうして得られた蛍光体原料を、適当量の硫黄および活性炭素とともに、逆止弁のついた耐熱容器に充填する。このとき、硫黄については、乾燥された蛍光体原料とブレンダなどを使用して例えば30〜180分程度混合し、この混合材料を耐熱容器に充填した後、その表面を硫黄で覆うようにすることが好ましい。さらに、容器全体を加熱しながら吸引・脱気し、容器内に残存する酸素や原料に吸着された水分を除去した後、容器内を、硫化水素雰囲気、硫黄蒸気雰囲気などの硫化性雰囲気中、あるいは還元性雰囲気(例えば3〜5%水素−残部窒素の雰囲気)に保持する。そして、これらの雰囲気中で、容器内の蛍光体原料を焼成する。
【0023】
蛍光体母体であるZnSの結晶構造を制御する上で、焼成条件は重要である。目的とする蛍光体を得るために、焼成温度を800〜1,250℃の範囲とすることが望ましい。焼成温度が800℃未満であると、ZnSの結晶粒を十分に成長させることができない。反対に、焼成温度が1250℃を超えると、粗大粒子が増加し使用に適さない。設定した焼成温度にもよるが、焼成時間は30〜360分とすることが望ましい。
【0024】
次に、得られた焼成物をイオン交換水などで水洗し、これを乾燥した後、さらに必要に応じて粗大粒子を除去するための篩別などを実施することによって、硫化亜鉛蛍光体粉末を得ることができる。
【0025】
こうして製造される実施形態の蛍光体は、発光色度が改善され、特に高電流密度下での発光輝度および色純度が高くなっている。したがって、この蛍光体は、励起源として加速電圧が5〜35kVの範囲の電子線を用いるカラー表示装置、例えばカラーCRTやFEDなどに好適に用いられ、画像の高精細化や高品質化を図ることができる。
【0026】
次に、本発明の別の実施形態である電界放出型表示装置(FED)について説明する。
【0027】
図1は、FEDの要部構成を示す断面図である。図において、符号1はフェイスプレートであり、ガラス基板2などの透明基板上に形成された蛍光体層3を有している。この蛍光体層3は、画素に対応させて形成した青色発光蛍光体層、緑色発光蛍光体層および赤色発光蛍光体層を有し、これらの間を黒色導電材から成る光吸収層4により分離した構造となっている。蛍光体層3を構成する各色の蛍光体層のうちで、緑色発光蛍光体層が、前記した実施形態の緑色発光蛍光体から構成されている。青色発光蛍光体層および赤色発光蛍光体層は、それぞれ公知の各種の蛍光体により構成することができる。なお、各色の蛍光体層は、公知のスラリー法あるいは印刷法により形成することができる。
【0028】
上述した青色発光蛍光体層、緑色発光蛍光体層、赤色発光蛍光体層、およびそれらの間を分離する光吸収層4は、それぞれ水平方向に順次繰り返し形成されており、これらの蛍光体層3および光吸収層4が存在する部分が画像表示領域となる。この蛍光体層3と光吸収層4との配置パターンには、ドット状またはストライプ状など、種々のパターンが適用可能である。
【0029】
そして、蛍光体層3上にはメタルバック層5が形成されている。メタルバック層5は、Al膜などの金属膜からなり、蛍光体層3で発生した光のうち、後述するリアプレート方向に進む光を反射して輝度を向上させるものである。
【0030】
また、メタルバック層5は、フェイスプレート1の画像表示領域に導電性を与えて電荷が蓄積されるのを防ぐ機能を有し、リアプレートの電子源に対してアノード電極の役割を果たす。また、メタルバック層5は、フェイスプレート1や真空容器(外囲器)内に残留したガスが電子線で電離して生成するイオンにより蛍光体層3が損傷することを防ぐ機能を有し、さらに、使用時に蛍光体層3から発生したガスが真空容器(外囲器)内に放出されることを防ぎ、真空度の低下を防止するなどの効果も有している。
【0031】
メタルバック層5上には、Baなどからなる蒸発形ゲッタ材により形成されたゲッタ膜6が形成されている。このゲッタ膜6によって、使用時に発生したガスが効率的に吸着される。
【0032】
そして、このようなフェイスプレート1とリアプレート7とが対向配置され、これらの間の空間が支持枠8を介して気密に封止されている。支持枠8は、フェイスプレート1およびリアプレート7に対して、フリットガラス、あるいはInやその合金などからなる接合材9により接合され、これらフェイスプレート1、リアプレート7および支持枠8によって、外囲器としての真空容器が構成されている。
【0033】
リアプレート7は、ガラス基板やセラミックス基板などの絶縁性基板、あるいはSi基板などからなる基板10と、この基板10上に形成された多数の電子放出素子11とを有している。これら電子放出素子11は、例えば電界放出型冷陰極や表面伝導型電子放出素子などを備え、リアプレート7の電子放出素子11の形成面には、図示を省略した配線が施されている。すなわち、多数の電子放出素子11は、各画素の蛍光体に応じてマトリックス状に形成されており、このマトリックス状の電子放出素子11を一行ずつ駆動する、互いに交差する配線(X−Y配線)を有している。なお、支持枠8には図示を省略した信号入力端子および行選択用端子が設けられている。これらの端子は前記したリアプレート7の交差配線(X−Y配線)に対応する。また、平板型のFEDを大型化させる場合、薄い平板状であるためにたわみなどが生じるおそれがある。このようなたわみを防止し、また大気圧に対して強度を付与するために、フェイスプレート1とリアプレート7との間に、補強部材(大気圧支持部材、スペーサ)12を適宜配置してもよい。
【0034】
このカラーFEDにおいては、電子線照射により発光する緑色発光蛍光体層が、実施形態の緑色発光蛍光体から構成されているので、発光輝度や色再現性などの表示特性を向上させることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0036】
実施例1
まず、硫化亜鉛(ZnS)1000gに、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)6.5gと硫酸銅(CuSO4・5H2O)0.68gを適当量の水とともに添加し、十分に混合した後乾燥した。得られた蛍光体原料に、硫黄および活性炭素を適当量添加し、逆止弁のついた耐熱容器に充填した。さらに容器全体を150℃まで加熱して脱気し、これを還元性雰囲気(3〜5%水素−残部窒素の雰囲気)で焼成した。焼成条件は950℃×90分とした。
【0037】
その後、得られた焼成物を十分に水洗および乾燥し、さらに篩別することにより、目的とする緑色発光のZnS:Cu,Al蛍光体を得た。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0038】
実施例2
焼成温度を1050℃とする以外は実施例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0039】
実施例3
焼成温度を1100℃とする以外は実施例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0040】
実施例4
焼成温度を1150℃とする以外は実施例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0041】
比較例1
硫化亜鉛(ZnS)1000gに、硫酸銅(CuSO4・5H2O)0.68gと硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)6.5gを適当量の水とともに添加し、十分に混合した後乾燥した。得られた蛍光体原料に、硫黄および活性炭素を適当量添加して石英るつぼに充填し、これを還元性雰囲気(3〜5%水素−残部窒素の雰囲気)で焼成した。焼成条件は970℃×60分とした。その後、得られた焼成物を十分に水洗および乾燥し、さらに篩別することによって、緑色発光のZnS:Cu,Al蛍光体を得た。こうして得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0042】
比較例2
焼成温度を1050℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0043】
比較例3
焼成温度を1075℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0044】
比較例4
焼成温度を1100℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0045】
比較例5
焼成温度を1150℃とする以外は比較例1と同様にして、ZnS:Cu,Al蛍光体を作製した。得られた蛍光体を後述する特性評価に供した。
【0046】
次に、実施例1〜4および比較例1〜5でそれぞれ得られた緑色発光蛍光体を用いて、それぞれ蛍光体膜を形成した。蛍光体膜は、ポリビニルアルコールを含む水溶液中に各緑色発光蛍光体を分散させてスラリーとし、これらのスラリーを回転塗布機でガラス基板上に塗布することにより形成した。回転塗布機の回転数とスラリー粘度を調整することによって、各蛍光体膜の膜厚を3×10−3mg/mm3(3mg/cm3)とした。
【0047】
そして、得られた各蛍光体膜の発光輝度と発光色度をそれぞれ調べた。発光輝度は、各蛍光体膜に加速電圧10kV、電流密度1μA/mm2の電子線を照射して測定した。各輝度は、比較例1の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜の輝度を100としたときの相対値として求めた。発光輝度、発光色度および発光スペクトルは、測定機器としてトプコン社製SR−3を使用して測定した。
【0048】
また、測定された発光スペクトルの全面積に対する、欠陥などに起因する短波長側の発光面積の割合を求めた。すなわち、図2に示す発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長(Nnm)から60nm短い波長(N−60)nmよりさらに短波長の部分の面積を(O)、波長(N−70)nmよりさらに短波長の部分の面積を(P)としたとき、発光スペクトル全体の面積(M)に対する(O)および(P)の割合(O/MおよびP/M)をそれぞれ求めた。
【0049】
これらの測定結果を表1に示す。
【表1】
【0050】
表1に示す結果から、図3で示すグラフが得られた。そして、実施例1〜4の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜の発光色度のx値とy値との間には、y=0.520x+0.468の関係が成り立ち、比較例1〜5の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜の発光色度のx値とy値との間には、y=0.585x+0.443の関係が成り立っていることがわかった。そして、実施例1〜4の緑色蛍光体が比較例1〜5の緑色蛍光体に比べて色純度に優れていることがわかった。
【0051】
次に、蛍光体膜に照射する電子線の電流密度を変化させ、発光特性の変化を測定、評価した。すなわち、実施例1〜4および比較例1〜5の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜について、電子線の電流密度を1μA/mm2から50μA/mm2に変えた場合の発光輝度および発光色度を同様にして測定した。そして、電流密度を変化させた前後での色度(x,y)の変化量を、色ずれとして、以下の式を用いて計算した。
【0052】
色ずれ量= √(Δx2+Δy2)
【0053】
さらに、電流輝度特性であるγ特性(値)を求めた。すなわち、図4に示すように、電流密度の変化に応じた輝度変化のグラフを、輝度=A(電流密度)Bの式で近似し、Bの値をγ特性として計算した。
【0054】
これらの結果を表2に示す。
【表2】
【0055】
表2に示す結果から、実施例1〜4の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜は、比較例1〜5の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜に比べて色ずれ量が小さく、発光特性に優れていることがわかった。また、γ特性についても、実施例1〜4で形成された蛍光体膜は、比較例1〜5で形成された蛍光体膜に比べて、特に高い電流密度で高い値を示し、輝度が良好であることがわかった。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の表示装置用蛍光体によれば、高電流密度では遷移確率の高い短波長側の発光そのものを抑制することにより、緑色発光の効率を上げることができ、その結果緑色蛍光体としての色純度を上げることができる。したがって、このような蛍光体を緑色発光蛍光体として用いたCRT、FEDなどのカラー表示装置によれば、高輝度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての電界放出型表示装置(FED)の一構成例を示す断面図。
【図2】本発明の実施例および比較例で得られた蛍光体膜の発光スペクトルを示すグラフ。
【図3】本発明の実施例および比較例で得られた蛍光体膜において、発光色度のx値とy値との間の関係を表すグラフ。
【図4】本発明の実施例および比較例で得られた蛍光体膜において、電流密度の変化に応じた輝度の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1……フェイスプレート、2……ガラス基板、3……蛍光体層、4……光吸収層、5……メタルバック層、6……ゲッタ膜、7……リアプレート、8……支持枠、11……電子放出素子
Claims (4)
- 一般式:ZnS:Cua,Alb(式中、aおよびbは、蛍光体母体である硫化亜鉛1gに対して、1×10−5≦a≦1×10−3g、1×10−5≦b≦1×10−3gの範囲の量をそれぞれ示す)で実質的に表わされる組成を有し、電子線での励起により発光する緑色発光蛍光体であり、
発光のスペクトルにおいて、最大発光強度が得られる波長から60nm短い波長よりさらに短波長の部分の面積を(O)としたとき、前記発光スペクトル全体の面積(M)に対する前記(O)の割合が1.6%以下であることを特徴とする表示装置用蛍光体。 - 硫化亜鉛を母体とし付活剤としてCuおよびAlをそれぞれ含有する緑色発光蛍光体の製造方法であり、
前記蛍光体母体、および前記付活剤を構成する元素または該元素を含有する化合物をそれぞれ含む蛍光体原料から、吸着した水分および酸素を除去する工程と、前記水分および酸素が除去された状態を維持しながら、前記蛍光体原料を加熱して焼成する工程を具備することを特徴とする表示装置用蛍光体の製造方法。 - 前記蛍光体原料を焼成する工程は、1気圧以上の硫化性雰囲気あるいは還元性雰囲気で行うことを特徴とする請求項2記載の表示装置用蛍光体の製造方法。
- 青色発光蛍光体層と緑色発光蛍光体層と赤色発光蛍光体層とをそれぞれ含む蛍光膜と、前記蛍光膜に電子線を照射して発光させる電子源と、前記電子源と前記蛍光膜を真空封止する外囲器とを具備する表示装置であり、
前記緑色発光蛍光体層は請求項1記載の表示装置用蛍光体を含むことを特徴とする表示装置。
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JP2016040418A (ja) * | 2014-08-12 | 2016-03-24 | 株式会社ニデック | 染色装置 |
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