JP2005032861A - 超電導マグネット装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱電能材に温度差を生じさせて熱起電力を発生させ、これを電源として超電導コイルに電流を流す超電導マグネット装置において、熱電能材に起因する超電導コイルへの侵入熱を低減してシステム効率を高める。
【解決手段】超電導転移温度以下に冷却された超電導コイル2の両端部間には、熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部5、6が直列に接続されている。これら一対の熱電能部5、6のうち、少なくとも一方は超電導状態の超電導体を有している。一対の熱電能部5、6の接続部分は超電導コイル2の温度より高い温度に設定されており、常電導状態の熱電能部6の両端部に温度差を生じさせる構成を有している。
【選択図】 図1
【解決手段】超電導転移温度以下に冷却された超電導コイル2の両端部間には、熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部5、6が直列に接続されている。これら一対の熱電能部5、6のうち、少なくとも一方は超電導状態の超電導体を有している。一対の熱電能部5、6の接続部分は超電導コイル2の温度より高い温度に設定されており、常電導状態の熱電能部6の両端部に温度差を生じさせる構成を有している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導コイルの電源として熱電素子を利用した冷却励磁型の超電導マグネット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導マグネット装置は、一般に極低温に冷却された超電導コイルと常温空間に配置された電源とこれらを接続する電流リードとから構成されている。通常、超電導コイルはより強力な磁場が必要な際に用いられる。この理由は言うまでもなく、ジュール発熱を伴わずに大電流(100A〜100kA)を流すことができるためであり、常電導コイルを用いたマグネット装置に比べて、より強力な磁場を発生させることができる。
【0003】
このように、従来の超電導マグネット装置は、強力な磁場を発生させることができる反面、電源負荷は抵抗がゼロの超電導コイルではなく、電源や電流リードなどを含めた常温部の電気回路に依存するため、超電導コイルに比べて電源や電流リード(ケーブル)などを大型化する必要がある。また、そのような常温部の電気回路に基づく損失を減らすための設備は、実際に電源がする仕事に比べて非常に大きな装置となる上、電源制御用の半導体素子の冷却や制御のためにさらに電力が必要となるというような欠点を有している。
【0004】
さらに、超電導コイルにはある電流値以上の電流が流せないしきい値(臨界電流)が存在する。例えば、電源制御が失敗した場合、すなわち定格電流以上の電流値を流しつづけた場合、超電導コイルは焼損してしまう。また、定格電流値で運転していた場合であっても、何らかの擾乱で超電導コイルが常電導転移することがある。このような場合もその事態を素早く検出して電流を下げる必要がある。これらの対策として、超電導コイルの異常を検出する装置、例えばクエンチ検出器などを設置し、その信号を元にして電源制御を行うことによって、超電導コイルの焼損を防いでいる。
【0005】
上述したように、従来の超電導マグネット装置は、電源装置やケーブルなどが大型化して不経済である、飛行機や宇宙船などのように重量や容積に制限がある場合には設置することが困難である、超電導コイルがクエンチした際の検出に失敗するとコイルが焼損してしまう、というような欠点を有している。このような点に対して、特許文献1には一対の熱電素子(熱電能が異なる熱電能材の組合せ)を超電導コイルの両端子間に直列に接続し、一対の熱電素子間を接続する接続部(高温部)と超電導コイル(低温部)との温度差を利用して起電力を生じさせ、この小さな起電力で抵抗がゼロの超電導コイルに電流を流すことを可能にした超電導マグネット装置が記載されている。
【0006】
このような超電導マグネット装置によれば、特別な大型電源などを用いることなく超電導マグネットを励磁することができる。すなわち、装置の大幅な小型化を達成することが可能となる。さらに、超電導コイルが常温に戻るか、あるいは熱電素子の接続部(高温部)と超電導コイル(低温部)とが等しい温度になれば、超電導コイルに電流が流れなくなって減磁されるため、非常に単純なシステムを構築することができる。すなわち、超電導コイルがクエンチした際に発生する電圧で自動的に減磁されるため、特別な異常検出装置や安全装置などを必要とせず、この点からも装置の小型化や簡素化を図ることができる。
【0007】
ところで、熱電素子を電源として利用した超電導マグネット装置においては、熱起電力を効率よく得る上で、一対の熱電素子間の接続部を超電導コイルに比べて高温にする必要がある。従って、一対の熱電素子の各高温側端部も同様な温度となる。この熱電素子の高温端と低温端の温度差による伝導熱が超電導コイルへの侵入熱となる。また、抵抗ゼロの超電導コイルに流れる電流は、熱電素子による起電力とその内部抵抗に基づくものであるため、熱電素子自体はその内部抵抗でジュール発熱を生じ、これも超電導コイルへの侵入熱となる。このような超電導コイルへの侵入熱の増加は、冷却効率の低下などをもたらすことになる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−155917号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の熱電素子(熱電対やペルチェ素子など)を電源として使用した超電導マグネット装置は、超電導コイルの冷却システムによって生成される温度差を利用して発電しているため、装置の大幅な小型化が可能であると共に安全性に優れる反面、一対の熱電素子に起因して超電導コイルへの侵入熱が増加するおそれがあり、この熱侵入の点に改良の余地を残している。
【0010】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、特別な電源や異常検出装置などを不要として、装置の小型化を実現すると共に安全性を確保し、さらに超電導コイルへの侵入熱を低減してシステム効率を高めることを可能にした超電導マグネット装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の超電導マグネット装置は、請求項1に記載したように、超電導転移温度以下に冷却された超電導コイルと、前記超電導コイルの両端部間に直列に接続され、かつ熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部と、前記一対の熱電能部間を接続する部分に設けられ、前記超電導コイルの温度より高い温度に設定された熱負荷部とを具備し、前記一対の熱電能部の少なくとも一方が超電導体を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の超電導マグネット装置において、一対の熱電能部の具体的な組合せとしては、例えば請求項2に記載したように、少なくとも一部が超電導状態の超電導体と常電導状態の熱電能材との組合せが挙げられる。また、請求項8に記載したように、臨界温度または組成が異なる2種以上の超電導体の組合せを有し、かつ超電導体の一方または一部が常電導状態とされている構成を適用することも可能である。これらの構成によれば、常電導状態の熱電能材(常電導状態の超電導体を含む)に基づいて熱起電力を発生させることができる。
【0013】
本発明の超電導マグネット装置においては、常電導状態の熱電能部の両端部に超電導コイルと熱負荷部の温度に基づく温度差を生じさせているため、ゼーベック効果によって熱起電力を得ることができる。一対の熱電能部は少なくとも一方もしくは一部が常電導状態とされているため、その部分の抵抗値に基づいて抵抗ゼロの超電導コイルに電流を流すことができる。その上で、一対の熱電能部の少なくとも一方は超電導状態の超電導体を有しているため、この超電導体からなる熱電能部自体で超電導コイルへの熱侵入を低減することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を説明する図である。図1に示す超電導マグネット装置1は、超電導コイル2を有している。超電導コイル2は冷却手段3で超電導転移温度以下の温度に冷却されており、これにより超電導マグネットとしての機能が発揮される。
【0015】
超電導コイル2は、使用した超電導体の超電導転移温度に応じて、例えば単段式もしくは多段式冷凍機の低温側ステージなどの冷却手段3により超電導転移温度以下の温度に冷却される。また、超電導コイル2の冷却は、使用した超電導体の超電導転移温度に応じて、液体ヘリウム、超臨界ヘリウム、液体水素、液体ネオン、液体窒素などの冷媒を用いて実施してもよい。
【0016】
超電導転移温度以下に冷却された超電導コイル2の両端子2a、2b間は、リード部材4により電気的に接続されている。そして、このリード部材4中には、熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部が直列に接続されている。なお、熱電能とはある物質において1Kの温度差で発生する熱起電力(μV)の値を示すものである。
【0017】
ここでは、超電導状態の超電導体からなる第1の熱電能部5と常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6とを直列に接続し、これら第1および第2の熱電能部5、6を介して超電導コイル2の両端子2a、2b間を電気的に接続している。超電導体からなる第1の熱電能部5はその一部を超電導状態として使用することもできる。すなわち、超電導体の一部が常電導状態となっていてもよい。
【0018】
第1の熱電能部5を構成する超電導体としては、例えばYBCO系、Bi−2122系、Bi−2223系などの高温超電導体を適用することが好ましい。これら各高温超電導体には公知の組成を有する超電導体を使用することができる、また、YBCO系、Bi−2122系、Bi−2223系以外の高温超電導体、すなわちYBCO系のYを他の希土類元素に置き換えた系や他の組成系の酸化物超電導体など、液体窒素温度で超電導状態を示す各種高温超電導体を、第1の熱電能部5に適用することが可能である。
【0019】
また、第2の熱電能部6は熱電能が大きい熱電能材、例えば銅、鉄、クロメル、コンスタンタン、ニクロムなどの金属材料、あるいはBi−Te系、Pb−Te系などの熱電半導体を使用することが好ましい。また、超電導コイル2は強磁場を発生するため、磁場中での熱起電力の増加を伴うBi−Sb系熱電半導体などの材料も、第2の熱電能部6の構成材料として有効である。
【0020】
これら第1および第2の熱電能部5、6の一方の端部は、超電導コイル2の両端子2a、2bに接続されており、これら端部は低温端とされている。第1および第2の熱電能部5、6の他方の端部はリード部材4で接続されている。この第1の熱電能部5と第2の熱電能部6とを接続する部分7は、超電導コイル2の温度より高い温度に設定されている。すなわち、第1の熱電能部5と第2の熱電能部6との接続部分7は熱負荷部として機能する。このような熱負荷部7によって、第1および第2の熱電能部5、6の接続側端部は高温端とされている。なお、第1の熱電能部5全体を超電導状態としている場合には、高温端と低温端は第2の熱電能部6のみに生じるものである。
【0021】
熱負荷部7の熱負荷は冷却手段3によって奪われるが、これによって第2の熱電能部6の両端部に(場合によっては第1の熱電能部5の両端部にも)温度差を与えることができる。熱負荷部7は、例えば室温雰囲気中に直接配置したり、また常温部からの伝導熱や輻射熱などによって、超電導コイル2の温度より高い温度に維持することができる。また、熱負荷部7の近傍にジュール発熱を生じるヒータ、熱伝導部材、高温ヒートシンクなどの熱印加部8を配置することによって、熱負荷部7を直接加熱するようにしてもよい。なお、熱印加部8は必要に応じて配置されるものである。
【0022】
例えば、超電導コイル2を液体窒素容器などに収納し、高温超電導体からなる第1の熱電能部5と熱電能が大きい常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6を断熱容器内に配置し、熱負荷部7と第2の熱電能部6の少なくとも高温端を常温壁に接触させることによって、第2の熱電能部6の両端部に温度差を生じさせることができる。この際、熱負荷部7の近傍に熱印加部8を配置して、熱負荷部7を積極的に加熱するようにしてもよい。
【0023】
さらに、超電導コイル2を液体ヘリウム温度まで冷却する場合には、熱負荷部7を液体窒素温度、すなわち高温超電導体からなる第1の熱電能部5を超電導状態とするための温度に保持するようにしてもよい。第2の熱電能部6の両端部の温度は、このような液体ヘリウム温度と液体窒素温度との間の温度差に基づくものであってもよい。後に詳述するように、熱負荷部7の温度、すなわち熱電能部6の高温端の温度を、高温超電導体からなる第1の熱電能部5の超電導転移温度以下に維持した場合においても、超電導コイル2を励磁することができ、さらに超電導マグネット装置1の効率を高めることが可能となる。
【0024】
上述したように、超電導コイル2を冷却するために必要な冷却システムを利用し、常電導状態の第2の熱電能部6の両端部に温度差を生じさせることによって、第1の熱電能部5と第2の熱電能部6との組合せ、第2の熱電能部6の熱電能などに基づいて熱起電力を生じさせることができる。このような数mV〜数10mVの小さな起電力を利用して、特別な電源を用いることなく、抵抗がゼロの超電導コイル2に電流iを流すことが可能となる。すなわち、超電導マグネットとして機能する超電導コイル2を励磁することができる。
【0025】
ここで、熱負荷部7の温度を超電導コイル2の温度より高い温度に設定する場合、超電導コイル2から目的とする磁場方向を得るためには、超電導コイル2の正極となる端子2aに熱電能が小さい熱電能部(ここでは超電導体からなる第1の熱電能部5)を接続し、負極となる端子2bに熱電能が大きい熱電能部(ここでは常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6)を接続する。
【0026】
このように、超電導マグネット装置1は特別な電源を用いることなく励磁することができるため、装置の大幅な小型化および簡素化を図ることが可能となる。さらに、超電導コイル2が常温に戻るか、あるいは熱負荷部7(高温部)と超電導コイル2(低温部)とが等しい温度になれば、超電導コイル2に電流が流れなくなって減磁されるため、非常に単純なシステムを構築することができる。すなわち、超電導コイル2がクエンチした際に発生する電圧で自動的に減磁されるため、特別な異常検出装置や安全装置などを用いることなく、超電導コイル2の焼損などを防止することが可能となる。
【0027】
ここで、Bi−Te系熱電半導体によるN型とP型の組合せで超電導マグネットシステムを構成した場合、室温から液体窒素の温度差で発生する起電力は50mV程度であるが、定常的に超電導コイルに流れる電流は超電導コイルの抵抗が0Ωであるため、熱電半導体(熱電能料)の内部抵抗で決まる。N型およびP型の熱電半導体の長さを2mm、断面積を100mm2とした場合、Bi−Te系熱電半導体の300Kから77Kまでの平均抵抗は100〜200μΩであるため、オームの法則から超電導コイルには定常的に250〜500Aの電流が流れる。
【0028】
上述した実施形態の超電導マグネット装置1においては、一対の熱電能部5、6の一方(第1の熱電能部5)が超電導状態の超電導体とされており、その抵抗はゼロであるため、一対の熱電能部5、6の内部抵抗および熱起電力はN型およびP型の熱電半導体の組合せを使用した場合の半分となる。従って、熱電能部の平均抵抗は50〜100μΩ、室温から液体窒素の温度差で発生する起電力は25mV程度となり、オームの法則から超電導コイルにはN型およびP型の熱電半導体の組合せを使用した場合と同様に250〜500Aの電流が流れる。
【0029】
その上で、一対の熱電能部5、6の一方の熱電能部(第1の熱電能部5)を超電導状態の高温超電導体などで構成しているため、この高温超電導体に基づいて超電導コイル2への熱侵入を低減することができる。すなわち、高温超電導体は熱伝導率が小さいことに加えて、超電導状態とされていればジュール発熱を伴わないため、高温超電導体からなる第1の熱電能部5を通しての熱侵入量を小さくすることが可能となる。
【0030】
このように、熱電能部5、6の一方に熱伝導率の非常に小さい高温超電導体を用いることで、通電電流は変えずに、侵入熱をほぼ半減することができる。従って、このような構成を有する超電導マグネット装置1によれば、熱電能部5、6で同様の超電導コイル2の励磁電流を得た上で、一対の熱電能部の両方に常電導状態の熱電能材を用いた場合のほぼ半分の侵入熱にすることができ、システム効率を大幅に高めることが可能となる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態による超電導マグネット装置について、図2を参照して説明する。図2に示す超電導マグネット装置1において、常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6は、第1の熱電能部5と同様な高温超電導体などからなる超電導リード9を介して、超電導コイル2の端子2bに接続されている。超電導リード9は第1の熱電能部5と同様な超電導状態とされているため、第2の熱電能部6からの熱侵入も抑制することができる。
【0032】
すなわち、第2の熱電能部6側においては、それを構成する熱電能材と超電導リード9の熱抵抗の和が超電導コイル2への侵入熱を抑えることになる。ここで、超電導コイル2の温度を20Kとすれば、高温超電導体からなる超電導リード9の高温端がその臨界温度以下の温度までの入熱に対して有効に作用する。なお、常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6が動作する最も効率のよい温度は材質によって異なり、この高温超電導体からなる超電導リード9を利用することで、その動作温度を制御することができる。
【0033】
例えば、上記した高温超電導体からなる超電導リード9を介在させた構成において、高温超電導体の熱抵抗が熱電能材からなる第2の熱電能部6の6倍程度の場合、超電導コイル2の温度を20K、高温超電導体からなる超電導リード9の高温端(第2の熱電能部6の低温端)の温度を80K、第2の熱電能部6の高温端の温度を90Kとした条件を作ることができる。このような温度条件を有する構成においては、第2の熱電能部6に10Kの温度差をつける熱量が超電導コイル2に入ることになる。
【0034】
この第2の実施形態の超電導マグネット装置1においては、第1の熱電能部5側の熱侵入は第1の実施形態と同様に超電導状態の高温超電導体で抑制している。従って、第2の熱電能部6側についても超電導リード9で熱侵入を抑えることによって、第1および第2の熱電能部5、6を通しての熱侵入量を大幅に低減することができ、超電導マグネット装置1としてのシステム効率をより一層高めることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の第3の実施形態による超電導マグネット装置について、図3を参照して説明する。図3に示す超電導マグネット装置1は、システム構成に基づいて熱侵入量をさらに低減する構成を有するものである。すなわち、図3に示す超電導マグネット装置1は図2と同様に、第2の熱電能部6を高温超電導体などからなる超電導リード9を介して超電導コイル2に接続し、さらに第2の熱電能部6と超電導リード9との間に超電導リード9を冷却するための第2の冷却手段10を設けている。
【0036】
超電導リード9を冷却する第2の冷却手段10には、例えば多段式の小型冷凍機の高温側ステージ(1段ステージ:40〜80K)を使用することができる。この場合、小型冷凍機の低温側ステージ(2段ステージ:4〜20K)は、超電導コイル2を冷却する第1の冷却手段3として使用される。このような構成によれば、第2の熱電能部6からの入熱を冷却手段10で取り去ることができる。従って、熱負荷部7をヒータなどの熱印加部8で直接加熱するような場合においても、第2の熱電能部6を通して超電導コイル2に侵入する熱量を大幅に低減することができる。従って、超電導コイル2の冷却効率を向上させることができ、超電導マグネット装置1としてのシステム効率を高めることが可能となる。
【0037】
図4は図3に示す超電導マグネット装置1の変形例を示している。図4に示す超電導マグネット装置1は、例えば使用する冷凍機などの冷却手段が2つの冷却温度を得られない場合の構成例である。このような場合、図4に示すように、超電導コイル2を冷却する冷却手段(第1の冷却ステージ)3と超電導リード9を冷却する第2の冷却ステージ11との間に熱抵抗体12を介在させ、冷却手段3を利用して第2の冷却ステージ11に伝えることによって、第2の熱電能部6を所望の温度に制御することができる。すなわち、第2の熱電能部6を構成する熱電能材の熱抵抗が超電導リード9の熱抵抗に比べてはるかに小さいときでも、第2の熱電能部6に温度差を生じさせることができる。
【0038】
ところで、上述した各実施形態の超電導マグネット装置1において、熱負荷部7の温度、言い換えると第2の熱電能部6の高温端の温度は、超電導コイル2との温度差により発生する熱起電力と、第2の熱電能部6の高温端温度に基づいて超電導コイル2に侵入する熱量とを考慮して設定することが好ましい。すなわち、第2の熱電能部6の高温端温度を高くして大きな熱起電力を発生させても、それによる侵入熱量が増加するとシステムとしての効率が低下する。従って、熱起電力と侵入熱量の双方を考慮して熱電能材6の両端部の温度差を設定することで、超電導マグネット装置1としての効率を高めることができる。
【0039】
具体的には、図5に示すようなZ値に基づいて熱電能材6の両端部の温度差を設定することが好ましい。図5に示すグラフの縦軸は熱電能材6のZ値であり、図5はこのZ値の温度依存性を示している。ここで、Z値とは超電導コイル2に流れる電流、すなわち熱電能材6に流れる電流をI、熱電能材6の低温端への侵入熱をQとしたときのQ/Iの値を示しており、この値が小さいほど超電導マグネット装置1としての効率が高いことになる。従って、熱電能材6の両端部の温度差をZ値が最小値になる温度、もしくはこの温度に対して±100Kの範囲に設定することが好ましい。
【0040】
上述した熱電能材6の素子効率を示すZ値は、
【式2】
(式中、κは前記熱電能材の熱伝導率(W/m K)、ρは前記熱電能材の抵抗率(Ω・m)、αは前記熱電能材のゼーベック係数(V/K)を示す)
により求められる値である。ここで、Tは熱電能材6の高温端温度THと低温端温度TLの平均温度(=((TH+TL)/2)である。
【0041】
例えば、図2および図3に示す超電導マグネット装置1において、熱電能材6の高温端温度THは熱負荷部7側の端部温度である。熱電能材6の低温端温度TLは、図2に示す超電導マグネット装置1では超電導リード9との接触部の温度、図3に示す超電導マグネット装置1では第2の冷却手段10側の端部温度である。図5の横軸はこれら両端の温度TH、TLの平均温度Tを示している。
【0042】
図5において、実線は第1の熱電能部にBi−Te系のP型半導体を用いると共に、第2の熱電能部にBi−Te系のN型半導体を用いた場合のZ値の平均温度T(Bi−Te系P型半導体の高温端温度THと低温端温度TLの平均温度T)に対する依存性を示しており、点線は第1の熱電能部5にYBCO系高温超電導体を用いると共に、第2の熱電能部6にBi−Te系のP型半導体を用いた場合のZ値の平均温度T(Bi−Te系P型半導体の高温端温度THと低温端温度TLの平均温度T)に対する依存性を示している。
【0043】
図5に示したように、Bi−Te系半導体を用いた場合、効率が最もよい温度は120K前後である。従って、Bi−Te系半導体の平均温度Tは120±100Kの範囲に設定することが好ましい。ただし、第1の熱電能部5を構成するYBCO系高温超電導体の臨界温度は87Kであるため、Bi−Te系半導体の高温端温度も87K以下にすることが望ましい。言い換えると、熱負荷部7の温度はYBCO系高温超電導体の臨界温度である87K以下にすることが望ましい。このように、熱負荷部7の温度を第1の熱電能部5を構成する高温超電導体の臨界温度以下に設定した場合においても、超電導コイル2を励磁するのに必要な電流を流すことができる。
【0044】
なお、図5はBi−Te系のN型およびP型半導体の組合せを一対の熱電能部(熱電素子)に適用した場合のZ値の平均温度Tに対する依存性も併せて示している。この場合はいずれも常電導体であるため、平均温度TはN型およびP型半導体それぞれに温度差を生じさせるものである。ほぼ同等の性能を持つBi−Te系のN型半導体とP型半導体とを組合せた場合には、図5の実線に示すようにZ値が最小値となる温度(120K)を挟むように、高温端温度と低温端温度を設定することが好ましい。このような温度設定を適用することで、例えばBi−Te系のN型およびP型半導体のような熱電素子の組合せを一対の熱電能部に適用した超電導マグネット装置においても、システム効率を高めることができる。
【0045】
次に、本発明の第4の実施形態による超電導マグネット装置について、図6を参照して説明する。図6に示す超電導マグネット装置20は、超電導転移温度以下に冷却された超電導コイル2の両端子2a、2b間に少なくとも一対の熱電能部が直列接続された構成については前述した各実施形態と同様であるが、ここでは一対の熱電能部に臨界温度または組成が異なる2種以上の超電導体の組合せを適用している。すなわち、第1および第2の熱電能部21、22はいずれも超電導体で構成されている。ただし、熱起電力を発生させるために、臨界温度または組成が異なる超電導体の組合せが適用されている。
【0046】
図6に示す超電導マグネット装置20において、第1の熱電能部21は臨界温度が相対的に高いBi−2223系(110K)などの高温超電導体で構成し、第2の熱電能部22は臨界温度が相対的に低いYBCO系(93K)の高温超電導体で構成する。このような臨界温度が異なる超電導体の組合せを適用することによって、一対の熱電能部として機能させることができる。ただし、高温超電導体からなる第1および第2の熱電能部21、22を全て超電導状態としてしまうと、熱起電力を生じさせることができないため、例えば第1および第2の熱電能部21、22の一方は常電導体として使用する。
【0047】
例えば、Bi−2223系などの高温超電導体(第1の熱電能部21)の臨界温度においては、YBCO系高温超電導体(第2の熱電能部22)は臨界温度を超えて常電導状態となる。すなわち、熱負荷部7の温度を第1の熱電能部21は超電導状態を維持し、かつ第2の熱電能部22は常電導状態となる温度に設定することによって、高温超電導体からなる第2の熱電能部22を常電導状態の熱電能材として使用することができる。さらに、超電導コイルに十分な電流が流れた後に、熱負荷部からの入熱を停止して熱電能部5、6全体を超電導状態にすることで、永久電流モードに移行することも可能である。
【0048】
この際、熱負荷部7は超電導コイル2との間で温度差を有しているため、常電導状態の高温超電導体からなる第2の熱電能部22の両端部に温度差を与えることができる。熱負荷部7は前述した実施形態と同様に、例えば常温部からの伝導熱や輻射熱、あるいは熱印加部8による加熱によって、超電導コイル2の温度より高い温度に維持するようにしてもよい。このような構成によれば、常電導状態の高温超電導体の両端部に温度差を発生させることができ、これによって熱起電力を生じさせることが可能となる。
【0049】
上述した小さな起電力を利用することによって、特別な電源を用いることなく、抵抗がゼロの超電導コイル2に電流iを流すことが可能となる。すなわち、超電導マグネットとして機能する超電導コイル2を励磁することができる。このように、超電導マグネット装置20は特別な電源を用いることなく励磁することができるため、装置の大幅な小型化および簡素化を図ることが可能となる。さらに、前述した実施形態と同様に、特別な異常検出装置や安全装置などを用いることなく、超電導コイル2の焼損などを防止することが可能となる。
【0050】
その上で、一対の熱電能部21、22の一方の熱電能部(第1の熱電能部21)を超電導状態の高温超電導体で構成しているため、この高温超電導体に基づいて超電導コイル2への熱侵入を低減することができる。さらに、第2の熱電能部22についても、超電導コイル2側の端部は超電導状態を維持させることができるため、超電導コイル2への熱侵入を抑えることが可能となる。これらによって、熱電能部21、22で超電導コイル2の励磁電流を得た上で、熱電能部21、22から超電導コイル2に侵入する熱量を低減することができ、超電導マグネット装置20としてのシステム効率を高めることが可能となる。
【0051】
また、一対の熱電能部21、22に臨界温度または組成が異なる超電導体の組合せを適用する場合、第2の熱電能部22を常電導状態にする構成に限らず、例えば第1および第2の熱電能部21、22の熱負荷部7側の端部(高温端)をそれぞれ部分的に常電導状態とするようにしてもよい。図7は第1および第2の熱電能部21、22の中間位置に冷却手段23を配置した超電導マグネット装置20を示している。
【0052】
図7に示すような構成を有する超電導マグネット装置20によれば、第1および第2の熱電能部21、22の超電導コイル2側の超電導状態を維持した上で、熱負荷部7側を常電導状態とすることができる。この場合、常電導状態とされた第1および第2の熱電能部21、22それぞれに、熱負荷部7側の高温端に対して冷却手段23側に低温端が生じる。このように、第1および第2の熱電能部21、22の一部を常電導状態とし、これら常電導状態とされた部分に温度差を発生させることによっても熱起電力を得ることができる。
【0053】
なお、上述した各実施形態の超電導マグネット装置において、常電導状態の熱電能材、もしくは少なくとも一部が常電導状態とされた超電導体に高温端と低温端を形成するための構成、すなわち温度差を生じさせるための構成は、本発明の超電導マグネット装置を実現するための一例を示すものであり、各実施形態で適用した構成以外の手段で温度差を生じさせるようにしてもよい。超電導体からなる熱電能部や超電導リードを冷却する手段についても同様である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば特別な電源や異常検出装置などを不要とし、装置の小型化および安全性の確保を実現した上で、超電導コイルへの侵入熱を低減した超電導マグネット装置を提供することができる。このような本発明の超電導マグネット装置によれば、装置の小型化やシステムの単純化とシステム効率の向上とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す超電導マグネット装置の変形例を示す図である。
【図5】超電導マグネット装置における熱電能材のZ値と平均温度Tとの関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図7】図6に示す超電導マグネット装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1,20……超電導マグネット装置、2……超電導コイル、3,10,23……冷却手段、5……超電導状態の超電導体からなる第1の熱電能部、6……常伝導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部、7……熱負荷部、9……超電導リード、21……超電導体からなる第1の熱電能部、22……超電導体からなる第2の熱電能部
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導コイルの電源として熱電素子を利用した冷却励磁型の超電導マグネット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導マグネット装置は、一般に極低温に冷却された超電導コイルと常温空間に配置された電源とこれらを接続する電流リードとから構成されている。通常、超電導コイルはより強力な磁場が必要な際に用いられる。この理由は言うまでもなく、ジュール発熱を伴わずに大電流(100A〜100kA)を流すことができるためであり、常電導コイルを用いたマグネット装置に比べて、より強力な磁場を発生させることができる。
【0003】
このように、従来の超電導マグネット装置は、強力な磁場を発生させることができる反面、電源負荷は抵抗がゼロの超電導コイルではなく、電源や電流リードなどを含めた常温部の電気回路に依存するため、超電導コイルに比べて電源や電流リード(ケーブル)などを大型化する必要がある。また、そのような常温部の電気回路に基づく損失を減らすための設備は、実際に電源がする仕事に比べて非常に大きな装置となる上、電源制御用の半導体素子の冷却や制御のためにさらに電力が必要となるというような欠点を有している。
【0004】
さらに、超電導コイルにはある電流値以上の電流が流せないしきい値(臨界電流)が存在する。例えば、電源制御が失敗した場合、すなわち定格電流以上の電流値を流しつづけた場合、超電導コイルは焼損してしまう。また、定格電流値で運転していた場合であっても、何らかの擾乱で超電導コイルが常電導転移することがある。このような場合もその事態を素早く検出して電流を下げる必要がある。これらの対策として、超電導コイルの異常を検出する装置、例えばクエンチ検出器などを設置し、その信号を元にして電源制御を行うことによって、超電導コイルの焼損を防いでいる。
【0005】
上述したように、従来の超電導マグネット装置は、電源装置やケーブルなどが大型化して不経済である、飛行機や宇宙船などのように重量や容積に制限がある場合には設置することが困難である、超電導コイルがクエンチした際の検出に失敗するとコイルが焼損してしまう、というような欠点を有している。このような点に対して、特許文献1には一対の熱電素子(熱電能が異なる熱電能材の組合せ)を超電導コイルの両端子間に直列に接続し、一対の熱電素子間を接続する接続部(高温部)と超電導コイル(低温部)との温度差を利用して起電力を生じさせ、この小さな起電力で抵抗がゼロの超電導コイルに電流を流すことを可能にした超電導マグネット装置が記載されている。
【0006】
このような超電導マグネット装置によれば、特別な大型電源などを用いることなく超電導マグネットを励磁することができる。すなわち、装置の大幅な小型化を達成することが可能となる。さらに、超電導コイルが常温に戻るか、あるいは熱電素子の接続部(高温部)と超電導コイル(低温部)とが等しい温度になれば、超電導コイルに電流が流れなくなって減磁されるため、非常に単純なシステムを構築することができる。すなわち、超電導コイルがクエンチした際に発生する電圧で自動的に減磁されるため、特別な異常検出装置や安全装置などを必要とせず、この点からも装置の小型化や簡素化を図ることができる。
【0007】
ところで、熱電素子を電源として利用した超電導マグネット装置においては、熱起電力を効率よく得る上で、一対の熱電素子間の接続部を超電導コイルに比べて高温にする必要がある。従って、一対の熱電素子の各高温側端部も同様な温度となる。この熱電素子の高温端と低温端の温度差による伝導熱が超電導コイルへの侵入熱となる。また、抵抗ゼロの超電導コイルに流れる電流は、熱電素子による起電力とその内部抵抗に基づくものであるため、熱電素子自体はその内部抵抗でジュール発熱を生じ、これも超電導コイルへの侵入熱となる。このような超電導コイルへの侵入熱の増加は、冷却効率の低下などをもたらすことになる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−155917号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の熱電素子(熱電対やペルチェ素子など)を電源として使用した超電導マグネット装置は、超電導コイルの冷却システムによって生成される温度差を利用して発電しているため、装置の大幅な小型化が可能であると共に安全性に優れる反面、一対の熱電素子に起因して超電導コイルへの侵入熱が増加するおそれがあり、この熱侵入の点に改良の余地を残している。
【0010】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、特別な電源や異常検出装置などを不要として、装置の小型化を実現すると共に安全性を確保し、さらに超電導コイルへの侵入熱を低減してシステム効率を高めることを可能にした超電導マグネット装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の超電導マグネット装置は、請求項1に記載したように、超電導転移温度以下に冷却された超電導コイルと、前記超電導コイルの両端部間に直列に接続され、かつ熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部と、前記一対の熱電能部間を接続する部分に設けられ、前記超電導コイルの温度より高い温度に設定された熱負荷部とを具備し、前記一対の熱電能部の少なくとも一方が超電導体を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の超電導マグネット装置において、一対の熱電能部の具体的な組合せとしては、例えば請求項2に記載したように、少なくとも一部が超電導状態の超電導体と常電導状態の熱電能材との組合せが挙げられる。また、請求項8に記載したように、臨界温度または組成が異なる2種以上の超電導体の組合せを有し、かつ超電導体の一方または一部が常電導状態とされている構成を適用することも可能である。これらの構成によれば、常電導状態の熱電能材(常電導状態の超電導体を含む)に基づいて熱起電力を発生させることができる。
【0013】
本発明の超電導マグネット装置においては、常電導状態の熱電能部の両端部に超電導コイルと熱負荷部の温度に基づく温度差を生じさせているため、ゼーベック効果によって熱起電力を得ることができる。一対の熱電能部は少なくとも一方もしくは一部が常電導状態とされているため、その部分の抵抗値に基づいて抵抗ゼロの超電導コイルに電流を流すことができる。その上で、一対の熱電能部の少なくとも一方は超電導状態の超電導体を有しているため、この超電導体からなる熱電能部自体で超電導コイルへの熱侵入を低減することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を説明する図である。図1に示す超電導マグネット装置1は、超電導コイル2を有している。超電導コイル2は冷却手段3で超電導転移温度以下の温度に冷却されており、これにより超電導マグネットとしての機能が発揮される。
【0015】
超電導コイル2は、使用した超電導体の超電導転移温度に応じて、例えば単段式もしくは多段式冷凍機の低温側ステージなどの冷却手段3により超電導転移温度以下の温度に冷却される。また、超電導コイル2の冷却は、使用した超電導体の超電導転移温度に応じて、液体ヘリウム、超臨界ヘリウム、液体水素、液体ネオン、液体窒素などの冷媒を用いて実施してもよい。
【0016】
超電導転移温度以下に冷却された超電導コイル2の両端子2a、2b間は、リード部材4により電気的に接続されている。そして、このリード部材4中には、熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部が直列に接続されている。なお、熱電能とはある物質において1Kの温度差で発生する熱起電力(μV)の値を示すものである。
【0017】
ここでは、超電導状態の超電導体からなる第1の熱電能部5と常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6とを直列に接続し、これら第1および第2の熱電能部5、6を介して超電導コイル2の両端子2a、2b間を電気的に接続している。超電導体からなる第1の熱電能部5はその一部を超電導状態として使用することもできる。すなわち、超電導体の一部が常電導状態となっていてもよい。
【0018】
第1の熱電能部5を構成する超電導体としては、例えばYBCO系、Bi−2122系、Bi−2223系などの高温超電導体を適用することが好ましい。これら各高温超電導体には公知の組成を有する超電導体を使用することができる、また、YBCO系、Bi−2122系、Bi−2223系以外の高温超電導体、すなわちYBCO系のYを他の希土類元素に置き換えた系や他の組成系の酸化物超電導体など、液体窒素温度で超電導状態を示す各種高温超電導体を、第1の熱電能部5に適用することが可能である。
【0019】
また、第2の熱電能部6は熱電能が大きい熱電能材、例えば銅、鉄、クロメル、コンスタンタン、ニクロムなどの金属材料、あるいはBi−Te系、Pb−Te系などの熱電半導体を使用することが好ましい。また、超電導コイル2は強磁場を発生するため、磁場中での熱起電力の増加を伴うBi−Sb系熱電半導体などの材料も、第2の熱電能部6の構成材料として有効である。
【0020】
これら第1および第2の熱電能部5、6の一方の端部は、超電導コイル2の両端子2a、2bに接続されており、これら端部は低温端とされている。第1および第2の熱電能部5、6の他方の端部はリード部材4で接続されている。この第1の熱電能部5と第2の熱電能部6とを接続する部分7は、超電導コイル2の温度より高い温度に設定されている。すなわち、第1の熱電能部5と第2の熱電能部6との接続部分7は熱負荷部として機能する。このような熱負荷部7によって、第1および第2の熱電能部5、6の接続側端部は高温端とされている。なお、第1の熱電能部5全体を超電導状態としている場合には、高温端と低温端は第2の熱電能部6のみに生じるものである。
【0021】
熱負荷部7の熱負荷は冷却手段3によって奪われるが、これによって第2の熱電能部6の両端部に(場合によっては第1の熱電能部5の両端部にも)温度差を与えることができる。熱負荷部7は、例えば室温雰囲気中に直接配置したり、また常温部からの伝導熱や輻射熱などによって、超電導コイル2の温度より高い温度に維持することができる。また、熱負荷部7の近傍にジュール発熱を生じるヒータ、熱伝導部材、高温ヒートシンクなどの熱印加部8を配置することによって、熱負荷部7を直接加熱するようにしてもよい。なお、熱印加部8は必要に応じて配置されるものである。
【0022】
例えば、超電導コイル2を液体窒素容器などに収納し、高温超電導体からなる第1の熱電能部5と熱電能が大きい常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6を断熱容器内に配置し、熱負荷部7と第2の熱電能部6の少なくとも高温端を常温壁に接触させることによって、第2の熱電能部6の両端部に温度差を生じさせることができる。この際、熱負荷部7の近傍に熱印加部8を配置して、熱負荷部7を積極的に加熱するようにしてもよい。
【0023】
さらに、超電導コイル2を液体ヘリウム温度まで冷却する場合には、熱負荷部7を液体窒素温度、すなわち高温超電導体からなる第1の熱電能部5を超電導状態とするための温度に保持するようにしてもよい。第2の熱電能部6の両端部の温度は、このような液体ヘリウム温度と液体窒素温度との間の温度差に基づくものであってもよい。後に詳述するように、熱負荷部7の温度、すなわち熱電能部6の高温端の温度を、高温超電導体からなる第1の熱電能部5の超電導転移温度以下に維持した場合においても、超電導コイル2を励磁することができ、さらに超電導マグネット装置1の効率を高めることが可能となる。
【0024】
上述したように、超電導コイル2を冷却するために必要な冷却システムを利用し、常電導状態の第2の熱電能部6の両端部に温度差を生じさせることによって、第1の熱電能部5と第2の熱電能部6との組合せ、第2の熱電能部6の熱電能などに基づいて熱起電力を生じさせることができる。このような数mV〜数10mVの小さな起電力を利用して、特別な電源を用いることなく、抵抗がゼロの超電導コイル2に電流iを流すことが可能となる。すなわち、超電導マグネットとして機能する超電導コイル2を励磁することができる。
【0025】
ここで、熱負荷部7の温度を超電導コイル2の温度より高い温度に設定する場合、超電導コイル2から目的とする磁場方向を得るためには、超電導コイル2の正極となる端子2aに熱電能が小さい熱電能部(ここでは超電導体からなる第1の熱電能部5)を接続し、負極となる端子2bに熱電能が大きい熱電能部(ここでは常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6)を接続する。
【0026】
このように、超電導マグネット装置1は特別な電源を用いることなく励磁することができるため、装置の大幅な小型化および簡素化を図ることが可能となる。さらに、超電導コイル2が常温に戻るか、あるいは熱負荷部7(高温部)と超電導コイル2(低温部)とが等しい温度になれば、超電導コイル2に電流が流れなくなって減磁されるため、非常に単純なシステムを構築することができる。すなわち、超電導コイル2がクエンチした際に発生する電圧で自動的に減磁されるため、特別な異常検出装置や安全装置などを用いることなく、超電導コイル2の焼損などを防止することが可能となる。
【0027】
ここで、Bi−Te系熱電半導体によるN型とP型の組合せで超電導マグネットシステムを構成した場合、室温から液体窒素の温度差で発生する起電力は50mV程度であるが、定常的に超電導コイルに流れる電流は超電導コイルの抵抗が0Ωであるため、熱電半導体(熱電能料)の内部抵抗で決まる。N型およびP型の熱電半導体の長さを2mm、断面積を100mm2とした場合、Bi−Te系熱電半導体の300Kから77Kまでの平均抵抗は100〜200μΩであるため、オームの法則から超電導コイルには定常的に250〜500Aの電流が流れる。
【0028】
上述した実施形態の超電導マグネット装置1においては、一対の熱電能部5、6の一方(第1の熱電能部5)が超電導状態の超電導体とされており、その抵抗はゼロであるため、一対の熱電能部5、6の内部抵抗および熱起電力はN型およびP型の熱電半導体の組合せを使用した場合の半分となる。従って、熱電能部の平均抵抗は50〜100μΩ、室温から液体窒素の温度差で発生する起電力は25mV程度となり、オームの法則から超電導コイルにはN型およびP型の熱電半導体の組合せを使用した場合と同様に250〜500Aの電流が流れる。
【0029】
その上で、一対の熱電能部5、6の一方の熱電能部(第1の熱電能部5)を超電導状態の高温超電導体などで構成しているため、この高温超電導体に基づいて超電導コイル2への熱侵入を低減することができる。すなわち、高温超電導体は熱伝導率が小さいことに加えて、超電導状態とされていればジュール発熱を伴わないため、高温超電導体からなる第1の熱電能部5を通しての熱侵入量を小さくすることが可能となる。
【0030】
このように、熱電能部5、6の一方に熱伝導率の非常に小さい高温超電導体を用いることで、通電電流は変えずに、侵入熱をほぼ半減することができる。従って、このような構成を有する超電導マグネット装置1によれば、熱電能部5、6で同様の超電導コイル2の励磁電流を得た上で、一対の熱電能部の両方に常電導状態の熱電能材を用いた場合のほぼ半分の侵入熱にすることができ、システム効率を大幅に高めることが可能となる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態による超電導マグネット装置について、図2を参照して説明する。図2に示す超電導マグネット装置1において、常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6は、第1の熱電能部5と同様な高温超電導体などからなる超電導リード9を介して、超電導コイル2の端子2bに接続されている。超電導リード9は第1の熱電能部5と同様な超電導状態とされているため、第2の熱電能部6からの熱侵入も抑制することができる。
【0032】
すなわち、第2の熱電能部6側においては、それを構成する熱電能材と超電導リード9の熱抵抗の和が超電導コイル2への侵入熱を抑えることになる。ここで、超電導コイル2の温度を20Kとすれば、高温超電導体からなる超電導リード9の高温端がその臨界温度以下の温度までの入熱に対して有効に作用する。なお、常電導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部6が動作する最も効率のよい温度は材質によって異なり、この高温超電導体からなる超電導リード9を利用することで、その動作温度を制御することができる。
【0033】
例えば、上記した高温超電導体からなる超電導リード9を介在させた構成において、高温超電導体の熱抵抗が熱電能材からなる第2の熱電能部6の6倍程度の場合、超電導コイル2の温度を20K、高温超電導体からなる超電導リード9の高温端(第2の熱電能部6の低温端)の温度を80K、第2の熱電能部6の高温端の温度を90Kとした条件を作ることができる。このような温度条件を有する構成においては、第2の熱電能部6に10Kの温度差をつける熱量が超電導コイル2に入ることになる。
【0034】
この第2の実施形態の超電導マグネット装置1においては、第1の熱電能部5側の熱侵入は第1の実施形態と同様に超電導状態の高温超電導体で抑制している。従って、第2の熱電能部6側についても超電導リード9で熱侵入を抑えることによって、第1および第2の熱電能部5、6を通しての熱侵入量を大幅に低減することができ、超電導マグネット装置1としてのシステム効率をより一層高めることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の第3の実施形態による超電導マグネット装置について、図3を参照して説明する。図3に示す超電導マグネット装置1は、システム構成に基づいて熱侵入量をさらに低減する構成を有するものである。すなわち、図3に示す超電導マグネット装置1は図2と同様に、第2の熱電能部6を高温超電導体などからなる超電導リード9を介して超電導コイル2に接続し、さらに第2の熱電能部6と超電導リード9との間に超電導リード9を冷却するための第2の冷却手段10を設けている。
【0036】
超電導リード9を冷却する第2の冷却手段10には、例えば多段式の小型冷凍機の高温側ステージ(1段ステージ:40〜80K)を使用することができる。この場合、小型冷凍機の低温側ステージ(2段ステージ:4〜20K)は、超電導コイル2を冷却する第1の冷却手段3として使用される。このような構成によれば、第2の熱電能部6からの入熱を冷却手段10で取り去ることができる。従って、熱負荷部7をヒータなどの熱印加部8で直接加熱するような場合においても、第2の熱電能部6を通して超電導コイル2に侵入する熱量を大幅に低減することができる。従って、超電導コイル2の冷却効率を向上させることができ、超電導マグネット装置1としてのシステム効率を高めることが可能となる。
【0037】
図4は図3に示す超電導マグネット装置1の変形例を示している。図4に示す超電導マグネット装置1は、例えば使用する冷凍機などの冷却手段が2つの冷却温度を得られない場合の構成例である。このような場合、図4に示すように、超電導コイル2を冷却する冷却手段(第1の冷却ステージ)3と超電導リード9を冷却する第2の冷却ステージ11との間に熱抵抗体12を介在させ、冷却手段3を利用して第2の冷却ステージ11に伝えることによって、第2の熱電能部6を所望の温度に制御することができる。すなわち、第2の熱電能部6を構成する熱電能材の熱抵抗が超電導リード9の熱抵抗に比べてはるかに小さいときでも、第2の熱電能部6に温度差を生じさせることができる。
【0038】
ところで、上述した各実施形態の超電導マグネット装置1において、熱負荷部7の温度、言い換えると第2の熱電能部6の高温端の温度は、超電導コイル2との温度差により発生する熱起電力と、第2の熱電能部6の高温端温度に基づいて超電導コイル2に侵入する熱量とを考慮して設定することが好ましい。すなわち、第2の熱電能部6の高温端温度を高くして大きな熱起電力を発生させても、それによる侵入熱量が増加するとシステムとしての効率が低下する。従って、熱起電力と侵入熱量の双方を考慮して熱電能材6の両端部の温度差を設定することで、超電導マグネット装置1としての効率を高めることができる。
【0039】
具体的には、図5に示すようなZ値に基づいて熱電能材6の両端部の温度差を設定することが好ましい。図5に示すグラフの縦軸は熱電能材6のZ値であり、図5はこのZ値の温度依存性を示している。ここで、Z値とは超電導コイル2に流れる電流、すなわち熱電能材6に流れる電流をI、熱電能材6の低温端への侵入熱をQとしたときのQ/Iの値を示しており、この値が小さいほど超電導マグネット装置1としての効率が高いことになる。従って、熱電能材6の両端部の温度差をZ値が最小値になる温度、もしくはこの温度に対して±100Kの範囲に設定することが好ましい。
【0040】
上述した熱電能材6の素子効率を示すZ値は、
【式2】
(式中、κは前記熱電能材の熱伝導率(W/m K)、ρは前記熱電能材の抵抗率(Ω・m)、αは前記熱電能材のゼーベック係数(V/K)を示す)
により求められる値である。ここで、Tは熱電能材6の高温端温度THと低温端温度TLの平均温度(=((TH+TL)/2)である。
【0041】
例えば、図2および図3に示す超電導マグネット装置1において、熱電能材6の高温端温度THは熱負荷部7側の端部温度である。熱電能材6の低温端温度TLは、図2に示す超電導マグネット装置1では超電導リード9との接触部の温度、図3に示す超電導マグネット装置1では第2の冷却手段10側の端部温度である。図5の横軸はこれら両端の温度TH、TLの平均温度Tを示している。
【0042】
図5において、実線は第1の熱電能部にBi−Te系のP型半導体を用いると共に、第2の熱電能部にBi−Te系のN型半導体を用いた場合のZ値の平均温度T(Bi−Te系P型半導体の高温端温度THと低温端温度TLの平均温度T)に対する依存性を示しており、点線は第1の熱電能部5にYBCO系高温超電導体を用いると共に、第2の熱電能部6にBi−Te系のP型半導体を用いた場合のZ値の平均温度T(Bi−Te系P型半導体の高温端温度THと低温端温度TLの平均温度T)に対する依存性を示している。
【0043】
図5に示したように、Bi−Te系半導体を用いた場合、効率が最もよい温度は120K前後である。従って、Bi−Te系半導体の平均温度Tは120±100Kの範囲に設定することが好ましい。ただし、第1の熱電能部5を構成するYBCO系高温超電導体の臨界温度は87Kであるため、Bi−Te系半導体の高温端温度も87K以下にすることが望ましい。言い換えると、熱負荷部7の温度はYBCO系高温超電導体の臨界温度である87K以下にすることが望ましい。このように、熱負荷部7の温度を第1の熱電能部5を構成する高温超電導体の臨界温度以下に設定した場合においても、超電導コイル2を励磁するのに必要な電流を流すことができる。
【0044】
なお、図5はBi−Te系のN型およびP型半導体の組合せを一対の熱電能部(熱電素子)に適用した場合のZ値の平均温度Tに対する依存性も併せて示している。この場合はいずれも常電導体であるため、平均温度TはN型およびP型半導体それぞれに温度差を生じさせるものである。ほぼ同等の性能を持つBi−Te系のN型半導体とP型半導体とを組合せた場合には、図5の実線に示すようにZ値が最小値となる温度(120K)を挟むように、高温端温度と低温端温度を設定することが好ましい。このような温度設定を適用することで、例えばBi−Te系のN型およびP型半導体のような熱電素子の組合せを一対の熱電能部に適用した超電導マグネット装置においても、システム効率を高めることができる。
【0045】
次に、本発明の第4の実施形態による超電導マグネット装置について、図6を参照して説明する。図6に示す超電導マグネット装置20は、超電導転移温度以下に冷却された超電導コイル2の両端子2a、2b間に少なくとも一対の熱電能部が直列接続された構成については前述した各実施形態と同様であるが、ここでは一対の熱電能部に臨界温度または組成が異なる2種以上の超電導体の組合せを適用している。すなわち、第1および第2の熱電能部21、22はいずれも超電導体で構成されている。ただし、熱起電力を発生させるために、臨界温度または組成が異なる超電導体の組合せが適用されている。
【0046】
図6に示す超電導マグネット装置20において、第1の熱電能部21は臨界温度が相対的に高いBi−2223系(110K)などの高温超電導体で構成し、第2の熱電能部22は臨界温度が相対的に低いYBCO系(93K)の高温超電導体で構成する。このような臨界温度が異なる超電導体の組合せを適用することによって、一対の熱電能部として機能させることができる。ただし、高温超電導体からなる第1および第2の熱電能部21、22を全て超電導状態としてしまうと、熱起電力を生じさせることができないため、例えば第1および第2の熱電能部21、22の一方は常電導体として使用する。
【0047】
例えば、Bi−2223系などの高温超電導体(第1の熱電能部21)の臨界温度においては、YBCO系高温超電導体(第2の熱電能部22)は臨界温度を超えて常電導状態となる。すなわち、熱負荷部7の温度を第1の熱電能部21は超電導状態を維持し、かつ第2の熱電能部22は常電導状態となる温度に設定することによって、高温超電導体からなる第2の熱電能部22を常電導状態の熱電能材として使用することができる。さらに、超電導コイルに十分な電流が流れた後に、熱負荷部からの入熱を停止して熱電能部5、6全体を超電導状態にすることで、永久電流モードに移行することも可能である。
【0048】
この際、熱負荷部7は超電導コイル2との間で温度差を有しているため、常電導状態の高温超電導体からなる第2の熱電能部22の両端部に温度差を与えることができる。熱負荷部7は前述した実施形態と同様に、例えば常温部からの伝導熱や輻射熱、あるいは熱印加部8による加熱によって、超電導コイル2の温度より高い温度に維持するようにしてもよい。このような構成によれば、常電導状態の高温超電導体の両端部に温度差を発生させることができ、これによって熱起電力を生じさせることが可能となる。
【0049】
上述した小さな起電力を利用することによって、特別な電源を用いることなく、抵抗がゼロの超電導コイル2に電流iを流すことが可能となる。すなわち、超電導マグネットとして機能する超電導コイル2を励磁することができる。このように、超電導マグネット装置20は特別な電源を用いることなく励磁することができるため、装置の大幅な小型化および簡素化を図ることが可能となる。さらに、前述した実施形態と同様に、特別な異常検出装置や安全装置などを用いることなく、超電導コイル2の焼損などを防止することが可能となる。
【0050】
その上で、一対の熱電能部21、22の一方の熱電能部(第1の熱電能部21)を超電導状態の高温超電導体で構成しているため、この高温超電導体に基づいて超電導コイル2への熱侵入を低減することができる。さらに、第2の熱電能部22についても、超電導コイル2側の端部は超電導状態を維持させることができるため、超電導コイル2への熱侵入を抑えることが可能となる。これらによって、熱電能部21、22で超電導コイル2の励磁電流を得た上で、熱電能部21、22から超電導コイル2に侵入する熱量を低減することができ、超電導マグネット装置20としてのシステム効率を高めることが可能となる。
【0051】
また、一対の熱電能部21、22に臨界温度または組成が異なる超電導体の組合せを適用する場合、第2の熱電能部22を常電導状態にする構成に限らず、例えば第1および第2の熱電能部21、22の熱負荷部7側の端部(高温端)をそれぞれ部分的に常電導状態とするようにしてもよい。図7は第1および第2の熱電能部21、22の中間位置に冷却手段23を配置した超電導マグネット装置20を示している。
【0052】
図7に示すような構成を有する超電導マグネット装置20によれば、第1および第2の熱電能部21、22の超電導コイル2側の超電導状態を維持した上で、熱負荷部7側を常電導状態とすることができる。この場合、常電導状態とされた第1および第2の熱電能部21、22それぞれに、熱負荷部7側の高温端に対して冷却手段23側に低温端が生じる。このように、第1および第2の熱電能部21、22の一部を常電導状態とし、これら常電導状態とされた部分に温度差を発生させることによっても熱起電力を得ることができる。
【0053】
なお、上述した各実施形態の超電導マグネット装置において、常電導状態の熱電能材、もしくは少なくとも一部が常電導状態とされた超電導体に高温端と低温端を形成するための構成、すなわち温度差を生じさせるための構成は、本発明の超電導マグネット装置を実現するための一例を示すものであり、各実施形態で適用した構成以外の手段で温度差を生じさせるようにしてもよい。超電導体からなる熱電能部や超電導リードを冷却する手段についても同様である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば特別な電源や異常検出装置などを不要とし、装置の小型化および安全性の確保を実現した上で、超電導コイルへの侵入熱を低減した超電導マグネット装置を提供することができる。このような本発明の超電導マグネット装置によれば、装置の小型化やシステムの単純化とシステム効率の向上とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す超電導マグネット装置の変形例を示す図である。
【図5】超電導マグネット装置における熱電能材のZ値と平均温度Tとの関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による超電導マグネット装置の概略構成を示す図である。
【図7】図6に示す超電導マグネット装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1,20……超電導マグネット装置、2……超電導コイル、3,10,23……冷却手段、5……超電導状態の超電導体からなる第1の熱電能部、6……常伝導状態の熱電能材からなる第2の熱電能部、7……熱負荷部、9……超電導リード、21……超電導体からなる第1の熱電能部、22……超電導体からなる第2の熱電能部
Claims (9)
- 超電導転移温度以下に冷却された超電導コイルと、
前記超電導コイルの両端部間に直列に接続され、かつ熱電能が異なる2種以上の物質からなる少なくとも一対の熱電能部と、
前記一対の熱電能部間を接続する部分に設けられ、前記超電導コイルの温度より高い温度に設定された熱負荷部とを具備し、
前記一対の熱電能部の少なくとも一方が超電導体を有することを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項1記載の超電導マグネット装置において、
前記一対の熱電能部は、少なくとも一部が超電導状態の超電導体と常電導状態の熱電能材との組合せを有することを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項2記載の超電導マグネット装置において、
前記超電導体は高温超電導材料からなり、かつ前記熱電能材は熱電半導体からなることを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項2または請求項3記載の超電導マグネット装置において、
前記常電導状態の熱電能材からなる熱電能部は、超電導リードを介して前記超電導コイルに接続されていることを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項4記載の超電導マグネット装置において、
前記熱電能部と前記超電導リードとの間に、前記超電導リードを冷却する冷却手段が設けられていることを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項2ないし請求項6のいずれか1項記載の超電導マグネット装置において、
前記熱負荷部の温度が前記超電導体の臨界温度以下の温度に設定されていることを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項1記載の超電導マグネット装置において、
前記一対の熱電能部は、臨界温度または組成が異なる2種以上の超電導体の組合せを有し、かつ前記超電導体の一方または一部が常電導状態とされていることを特徴とする超電導マグネット装置。 - 請求項8記載の超電導マグネット装置において、
前記超電導体は少なくとも前記熱負荷部側の端部が常電導状態とされていることを特徴とする超電導マグネット装置。
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JP2008283803A (ja) * | 2007-05-11 | 2008-11-20 | Railway Technical Res Inst | 磁気浮上式鉄道車両用超電導磁石 |
WO2019146271A1 (ja) * | 2018-01-23 | 2019-08-01 | 住友電気工業株式会社 | 超電導ケーブル |
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-
2003
- 2003-07-09 JP JP2003194255A patent/JP2005032861A/ja active Pending
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