以下に、図面を参照にして本発明の液体搬送処理手段の実施例を説明する。
まず、液体搬送手段の基本形を説明する。
図1は、エレクトロウエッテング現象を利用する第1形態の液体搬送手段の原理を説明するための図である。この液体搬送手段では、図1(a)に示すように、基板7と基板8とを平行に対向配置している。その際、基板7と基板8の間には、所定の間隔で隙間9が形成されている。一方の基板7の内面、すなわち基板8側の面には、第2の電極が設けられている。この第2の電極は、共通電極(共通電極膜)2である。この共通電極2には、例えば金のような、化学反応に対して安定で撥水性の材料が用いられる。他方の基板8の内面、すなわち基板7側の面には、第1の電極が設けられている。この第1の電極は、多数の分割電極31 〜36 の集合からなる分割電極群3である。分割電極31 〜36 は、相互に並列配置されている。また、分割電極群3の表面は、アモルファスフッ素樹脂(例:商品名サイトップ(旭ガラス(株)))膜、SiO2 膜のような絶縁膜4で覆われている。よって、所定の間隔とは、正確には、共通電極2から絶縁膜4までの距離ということになる。
前述のように、基板7と基板8の間には、所定の間隔を持つ隙間9が形成されている。この隙間9の間隔は、例えば1μl(マイクロリットル)程度の液滴1が共通電極膜2と絶縁膜4とに接して孤立する程度になっている。ここで、液滴1としては、電解質溶液でも絶縁性の液体でもよい。図1では、液滴1と絶縁膜4が比較的濡れ性良く入っているように描かれている。しかしながら、絶縁膜4の表面エネルギーが低い場合には、液滴1はより球形に近い形で間隔9内に孤立して入る。
共通電極2と分割電極群3の分割電極31 〜36 との間には、電源5が設けられている。電源5は直流電源でも交流電源でもよい。そして、分割電極群3側には、スイッチ群6が接続されている。スイッチ群6のそれぞれスイッチ61 〜66 は、分割電極群3の分割電極31 〜36 と一対一に対応するように接続されている。よって、スイッチ群6の中、例えばスイッチ63 が接続されると、対応する分割電極33 に直流電源5の電圧が印加されるようになっている。また、スイッチ群6のそれぞれのスイッチ61 〜66 は、制御装置10に接続されている。よって、制御装置10により、個々のスイッチの開閉動作が制御できるようになっている。
このような配置で、制御装置10により、スイッチ群6の全てのスイッチ61 〜66 を開放した状態にする。この状態が、図1(a)である。この状態では、隙間9、すなわち共通電極2と絶縁膜4の間に位置する液滴1には、何ら力が加わらない。よって、液滴1は、そのままの位置を保つ。次に、このような状態から、図1(b)に示すように、スイッチ63 、64 、65 を制御装置10により同時に閉じる。
ここで、スイッチ63 は分割電極33 に接続され、スイッチ64 は分割電極34 に接続され、スイッチ65 は分割電極35 に接続されている。また、分割電極33 、34 は液滴1の最初の位置(点線)の右側部分に対応して位置し、分割電極35 は分割電極33 、34 より右側に位置している。よって、スイッチ63 、64 、65 が閉じると、電源5の一方の電極からは、例えばプラスの電圧が共通電極膜2にかかる。そして、そのプラス電圧は、液滴1が電解質の場合は、液滴1を通して絶縁膜4に接する面にプラスイオンを集める。液滴1が絶縁性の場合は、分極を発生させ絶縁膜4に接する面にプラス電荷を集める。一方、直流電源5の他方の電極からは、この場合にマイナスの電荷が、スイッチ63 、64 、65 を通して分割電極33 、34 、35 に流れ込み、絶縁膜4に接する側に集まる。このとき、液滴1の絶縁膜4に集まったプラスの電荷の中心と、分割電極33 、34 、35 の絶縁膜4に接する側に集まったマイナスの電荷の中心とは、プラス側が相対的に図の左に位置し、マイナス側が相対的に図の右に位置する。よって、両者の間にずれが生じ、液滴1には電気的引力が作用し、液滴1は点線の位置から実線の位置へ矢印方向へ移動することになる。
次に、分割電極33 のスイッチ63 を切り、その代わりに、液滴1位置(破線)の右側の分割電極36 のスイッチ66 閉じる。この状態が図1(c)である。分割電極33 は、図1(b)の状態での液滴1の位置(破線)の左側部分に位置にある電極である。一方、分割電極36 は、液滴1の位置(破線)の右側部分に位置にある電極である。よって、図1(b)で液滴1が移動したのと同様の理由で、液滴1は破線の位置から実線の位置へ矢印方向にさらに移動することになる。
このように、本発明の液体搬送手段(液体移動装置)は、共通電極2と、複数の分割電極31 〜36 と、この複数の分割電極31 〜36 の表面(共通電極2側)に設けられた絶縁膜4と、分割電極31 〜36 に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御する制御装置10を備えている。そして、共通電極2と絶縁膜4の隙間は、液滴1が両側で接触するような間隔となっている。そして、制御装置10により液滴1を絶縁膜4に沿って移動させるように、複数の並列配置された分割電極31 〜36 に印加する印加電圧を順次個別にON・OFFするように制御することで、液滴1の液体を所定方向に移動させることができる。
以上の説明では、電源5として直流電源を用いたように説明しているが、交流電源を用いた場合でも同様の説明になり、液滴1はスイッチ群6のスイッチ61 〜66 が順に閉じられる方向に移動する。
ところで、図1の第1形態の液体搬送手段において、液滴1が移動するのは、電圧を左右で非対称に印加すると、エレクトロウエッテング現象により液滴1の左右の裾での絶縁膜4に対する接触角がアンバランスになるためであるので、電圧を印加しない状態では絶縁膜4の表面は可能な限り撥水性が高いことが望ましい。そこで、図2に要部を示すように、絶縁膜4の表面にアモルファスフッ素樹脂(例:商品名サイトップ(旭ガラス(株)))等からなる撥水層11を設けておくと、液滴1の移動がよりスムーズになる。
図3(a)は、エレクトロウエッテング現象を利用する第2形態の液体搬送手段の構成を示す図であり、図1(a)に対応する。この場合には、図1の場合と比較して、共通電極(共通電極膜)2の表面もアモルファスフッ素樹脂膜、SiO2 膜のような絶縁膜4’で覆っている点で異なるのみで、液滴1が搬送される原理も、図1の場合に液滴1が絶縁性の液体である場合と同じに説明でき、図1の場合と同様に、制御装置10によってスイッチ群6のスイッチ61 〜66 を個別に制御して、順次ON・OFFするように制御することで、分割電極31 〜36 に印加する印加電圧を電極毎に個別に順次ON・OFFすることで、液滴1の液体を所定方向に移動させることができる。
この第2形態の液体搬送手段においても、電圧を印加しない状態では絶縁膜4と4’の表面は可能な限り撥水性が高いことが望ましい。そこで、図3(b)に要部を示すように、絶縁膜4、4’の表面にそれぞれアモルファスフッ素樹脂等からなる撥水層11、11’を設けておくことが、液滴1の移動をよりスムーズにする上で好ましい。
図4は、第2形態の変形例の液体搬送手段の構成を示す図であり、図3(a)に対応する。この場合は、基板7に、共通電極(共通電極膜)2の代わりに、分割電極群3と同様に多数の分割電極3’1 〜3’6 の集合からなる分割電極群3’を配置し、その表面を絶縁膜4’で覆い、そして、必要に応じて両側の絶縁膜4、4’の表面に撥水層11、11’を設ける。そして、この分割電極群3’にも、分割電極群3と同様にスイッチ群6’が接続されており、スイッチ群6’のそれぞれスイッチ6’1 〜6’6 は、分割電極群3’の分割電極3’1 〜3’6 と一対一に対応するように接続されている。そして、スイッチ群6’のそれぞれのスイッチ6’1 〜6’6 は、別の制御装置10’に接続されており、制御装置10’により、スイッチ群6’の個々のスイッチ6’1 〜6’6 の開閉動作が制御できるようになっている。
この場合に、制御装置10と制御装置10’とが連携して上下対応する位置のスイッチ6’1 〜6’6 を個別に制御して順次ON・OFFして、分割電極31 〜36 、3’1 〜3’6 間に印加する印加電圧を対応する位置の電極毎に個別に順次ON・OFFすることで、液滴1の液体を所定方向に移動させることができる。
この場合には、液滴1の上下両方でエレクトロウエッテング現象により絶縁膜4に対する液滴1の裾の接触角がアンバランスになるため、液滴1はより移動しやすくなる。
なお、図4の場合は、図の面内で左右に移動することを想定しているが、例えば分割電極31 〜36 、3’1 〜3’6 を長尺で平行な電極とし、下側の分割電極31 〜36 の長手方向と上側の分割電極3’1 〜3’6 の長手方向とを直角に設定して、液晶表示装置で用いる単純マトリックス駆動の電極構造を採用することにより、XY2次元方向に液滴1を移動できるようになる(後記の実施例参照)。
図5は、誘電泳動現象を利用して進行波回転電界により液滴を搬送する第3形態の液体搬送手段の原理を説明するための図である。この液体搬送手段では、図5に示すように、基板8の面に多数の分割電極31 〜36 の集合からなる分割電極群3を設け、その分割電極群3の表面を絶縁膜4で覆い、必要に応じてその絶縁膜4の表面に撥水層11を設ける。その撥水層11上に液滴1を滴下する。
一方、電源として3相交流電源15を用意し、その3相交流電源15からの3本の電線171 〜173 はスイッチ機能を兼ねる位相制御回路(スイッチ・位相制御回路)16を経て、分割電極群3の分割電極31 〜36 に接続されているが、3個毎の分割電極31 と34 、32 と35 、33 と36 はそれぞれ同じ電線171 〜173 に接続されており、図の場合、例えば、電線171 に印加される交流電圧の位相は、スイッチ・位相制御回路16により位相が120°進んだ状態あるいは遅れた状態に制御され、電線172 に印加される交流電圧の位相は進みも遅れもなく保たれ、電線171 に印加される交流電圧の位相は120°遅れた状態あるいは進んだ状態に制御される。
このような状態で、スイッチ・位相制御回路16により位相を制御して、電線172 (分割電極32 、35 )に印加する交流電圧に対して、電線171 (分割電極31 、34 )に位相が120°進んだ交流電圧を、電線173 (分割電極33 、36 )に位相が120°遅れた交流電圧をそれぞれ印加すると、撥水層11の表面側には、実線矢印で示す進行波回転電界が生じ、誘電泳動現象により液滴1には実線矢印方向の力が加わって図の右方向に移動する。それとは逆に、電線172 (分割電極32 、35 )に印加する交流電圧に対して、電線171 (分割電極31 、34 )に位相が120°遅れた交流電圧を、電線173 (分割電極33 、36 )に位相が120°進んだ交流電圧をそれぞれ印加すると、撥水層11の表面側には、点線矢印で示す進行波回転電界が生じ、誘電泳動現象により液滴1には点線矢印方向の力が加わって図の左方向に移動する。
次に、以上のような第1〜第3形態の液体搬送手段の何れかを採用した場合の流路の形状の例について説明する。図6は、流路の断面形状をV溝形状にした例の透視斜視図(a)と部分断面図(b)である。この構成では、基板8に液滴1をガイドするV溝20が設けられ、そのV溝20の底面に分割電極群3とそれを覆う絶縁膜4とが設けられている。そして、第1〜第2形態の場合は、V溝20が形成された基板8上に基板7を重ね合わせて一体化されるが、基板8と基板7の間のV溝20の上には、共通電極2あるいは分割電極群3’(第2形態の変形例)が配置される。第2形態の場合には、共通電極2又は分割電極群3’の液滴1に接する表面は絶縁膜4’で覆われる。なお、第3形態の場合は、基板7と共通電極2あるいは分割電極群3’は省かれる。
図7は、流路の断面形状を矩形溝形状にした例の透視斜視図(a)と部分断面図(b)である。この例は、図6のV溝20の代わりに矩形溝21を設けた点のみで異なり、その他は同じであるので、これ以上の説明は省く。
図8は、第1形態の流路の例であり、流路の断面形状を矩形溝形状にし、かつ、共通電極を線状のものにした例の透視斜視図(a)と部分断面図(b)である。この例においては、基板8に液滴1をガイドする矩形溝21が設けられ、その矩形溝21の底面に分割電極群3とそれを覆う絶縁膜4とが設けられている。図では、この分割電極群3に接続される配線を符号22で示してある。矩形溝21の上あるいは中にその溝21に沿って共通電極を構成する線状電極2’が配置されており、矩形溝21の上は開放されてなるものである。なお、線状電極2’を省いて第3形態の流路とすることもできる。
図9も、第1形態の流路の例であり、流路を平面状にし、かつ、共通電極を線状のものにした例の透視斜視図(a)と部分断面図(b)である。この例においては、基板8には最早液滴1をガイドする溝等を設けずに平面とし、ガイド部分に分割電極群3とそれを覆う絶縁膜4とを設ける。分割電極群3の各電極には接続配線22が接続されている。その分割電極群3の上にそれに沿って共通電極を構成する線状電極2’配置されており、流路は上に開放されているものである。なお、この場合も線状電極2’を省いて第3形態の流路とすることもできる。
次に、以上のような流路に沿って設ける分割電極群3と共通電極の線状電極2’の具体的な形の例をいくつか説明する。
図10は、図9の流路に設ける分割電極群3と線状電極2’の配置を示す平面図(a)と断面図(b)である。分割電極群3は、流路の方向へ間隔をおいて基板8上配置された多数の矩形状の分割電極31 〜38 からなり、絶縁膜4がその分割電極群3を覆っている。分割電極群3の上にそれに沿って共通電極を構成する線状電極2’が配置されている。
図11は、図10の配置において、分割電極群3を流路に沿って左右に2分し、2分された分割電極31 〜38 それぞれを基板8内に埋め込んだ接続線23で接続し、一方、線状電極2’をこの2分された分割電極31 〜38 間であって絶縁膜4の下に配置して構成したものであり、第2形態の液体搬送手段を平面型に構成している。ただし、2分された分割電極31 〜38 間に配置した線状電極2’上を絶縁膜4で覆わないようにしてもよく、この場合は、平面型の第1形態の液体搬送手段となる。この図11の形態は平面型であるので、その平面を円筒に丸めて円筒状の液体搬送手段を構成できる。
図12は、図10の配置において、分割電極群3の分割電極31 〜38 それぞれを中心で折って流路を形成するV溝20の底に沿うように配置した例であり、図8の矩形溝21の代わりにV溝20としたものに相当する。この構成の場合、分割電極群3の液滴1に隣接する面積が大きくなるので、搬送にかかる引力がより強くなる。
図13は、分割電極群3の形状の変形例を示す平面図である。図13の(a)、(b)はそれぞれ図10、図11に対応する流路の分割電極群3と共通電極の線状電極2’の配置を示す平面図であり、何れも液滴1を矢印方向に移動させるのに適した分割電極31 〜38 の形状を示す。これらの分割電極群3は、矢印方向、すなわち図の左から右へ、液滴1を移動させるのに適している。図13(a)、(b)の分割電極31 〜38 は、何れも平面図で“〉”の形状をしている。そのため、球形の液滴1が左から右へ移動するときには、“〉”形の分割電極31 〜38 の何れかと最初に接するのは、点P1 とP2 の2点となり、逆に、図の右から左へ移動するときには、“〉”形の分割電極31 〜38 の何れかと最初に接するのは、その中心先端の1点となり、1点で右から左へ引っ張るするよりは、2点で矢印方向の左から右へ引っ張る力が強くなる。このような構成により、液滴1の矢印方向への搬送をよりスムーズに行うことができる。
次に、図14に、図11の平面型の形態を円筒に丸めて円筒状の液体搬送手段とした例の透視斜視図を示す。この例の場合は、中空の円筒体(パイプ)24の内面に、分割電極群3を構成する分割電極31 〜37 が設けられている。各分割電極31 〜37 は、円筒体24の軸方向に分割されている。そして、内周方向に弧状に延びる形状となっている。弧状の分割電極31 〜37 の端部間には、配線のための領域25が設けられている。この領域25には、共通電極の線状電極2’と、各分割電極31 〜37 への接続配線22が設けられている。そして、円筒体24の内面上(領域25)を通る配線22を介して、各分割電極31 〜37 が、スイッチ群6のそれぞれスイッチ61 〜67 に接続されている。そして、図示を省いてあるが、円筒体24の内面全面であって、これら分割電極31 〜37 とそれらを結ぶ配線22と線状電極2’とが絶縁膜4で覆われている。共通電極の線状電極2’は電源5の一方の極に接続されている。同様に、分割電極群3は、接続配線22及びスイッチ群6を介して、電源5の他方の極に接続されている。そして、スイッチ群6のそれぞれのスイッチ61 〜67 は、制御装置10により、個々に開閉動作が制御されるようになっている。
図14の構成においては、制御装置10によりスイッチ61 〜67 の開閉を順に制御することにより、分割電極群3に印加する印加電圧を制御(ON・OFF)することができる。例えば、上の分割電極から下の分割電極へ、順に電圧の印加状態を変化させる。このようにすると、円筒体24の孔内に入れられた液滴1を、下方へ移動させるようにすることができる。
なお、図14の配置においても、図11の場合と同様に、領域25中の線状電極2’のみを絶縁膜4で覆わないようにしてもよい。
次に、図1の場合と同様に、上下の基板7と基板8の間に流路を形成する場合に、基板7、8の面に沿って2次元の任意の方向に液滴1を自由に移動させるための分割電極群3、3’の例を説明する。
図15は、図4の第2形態の変形例を2次元搬送形にした場合の分解斜視図であり、分割電極群3、3’の表面に配置する絶縁膜4、4’を省いて図示してある。基板8側に配置する分割電極群3の各分割電極31 〜36 を基板8の表面のX方向に伸びる長尺で相互に平行な電極とし、基板7側に配置する分割電極群3’の分割電極3’1 〜3’6 を基板7の表面のY方向に伸びる長尺で相互に平行な電極として構成配置し、液晶表示装置で用いる単純マトリックス駆動の電極構造とする。このような分割電極群3、3’の構成により、分割電極群3中の選択して電圧印加した分割電極と、分割電極群3’中の選択して電圧印加した分割電極との交差点位置に電場が加わり、その選択した交差点の順に沿って基板7と基板8の間の流路中を液滴1が移動する。
図16は、図1の第1形態、図3の第2形態を2次元搬送形にした場合の分解斜視図であり、少なくとも分割電極群3の表面に配置する絶縁膜4を省いて図示してある。この場合は、基板7の内面全面には共通電極2が配置され、基板8側に配置する分割電極群3はX方向、Y方向に2次元分割されて碁盤の目状に配置された分割電極311、312、・・・・316、321、・・・・361、・・・・366の集合からなる。このような分割電極群3と共通電極2の構成により、分割電極群3中の選択して電圧印加した分割電極の順に沿って基板7と基板8の間の流路中を液滴1が移動する。
図17に、図16の構成において、基板8上に2次元分割されて碁盤の目状に配置された分割電極群3の個々の分割電極311〜366へ配線を接続する構成を示す透視斜視図(a)とその(a)図の直線A−A’に沿った断面図(b)とを示す。基板8上には、分割電極311〜366各々に接続される配線22がパターニングされ、その上に絶縁膜26を配置し、その絶縁膜26を通して分割電極311〜366個々に別々の対応する配線22が接続されており、配線22はまとめて基板8の端部から外へ引き出される。絶縁膜26の上には分割電極311〜366が碁盤の目状に相互に分離されるようにパターニングされ、その分割電極群3の表面に絶縁膜4が設けられる。
図18は、図1の第1形態を2次元搬送形であって共通電極の線状電極2’を分割電極群3と同じ基板8の表面上に配置して、流路を平面状で上に開放された構成とした場合の分解斜視図(a)とその(a)図の直線A−A’に沿った断面図(b)である。この液体搬送手段においては、図17の場合と同様、基板8上には、まず、分割電極311〜366各々に接続される配線22が1層としてパターニングされ、その上に絶縁膜26を配置し、その絶縁膜26を通して分割電極311〜366個々に別々の対応する配線22が接続されており、配線22はまとめて基板8の端部から外へ引き出される。絶縁膜26の上には、X方向、Y方向に2次元分割されて碁盤の目状に配置された分割電極311、312、・・・・316、321、・・・・361、・・・・366の集合からなる分割電極群3がパターニングされて設けられ、その分割電極群3の表面は絶縁膜4で覆われている。そして、絶縁膜4の上のY方向に伸びる分割電極311と321、312と322、・・・、316と326の間の分割電極間のブランク部上に共通電極の線状電極2’が固定配置されて構成されている。このように、配線22と分割電極群3と共通電極の線状電極2’とが3層構成となっている。この例は、液滴1の下面のみで共通電極2’と分割電極311、312、・・・・316、321、・・・・361、・・・・366との対向配置が行われており、液滴1の上面は何らの部材にも接触していないで開放型になっている例の1つである。
図19は、図18と同様の流路が平面状で上に開放された第1形態の2次元搬送形の例の平面図であるが、この例では、分割電極群3の分割電極311〜31m、321〜32m、・・・・、3n1〜3nm個々が矩形でなく三角形で構成され、図示のように、2次元分割されて2次元平面を埋めるように配置されるている。その分割電極群3上の全面を、図示しない絶縁膜4で覆っている。さらに、その上に、共通に接続された平行な線状あるいは櫛歯状の共通電極2’が絶縁膜4に露出して設けられている。このような基板上に、液滴1を置いて、分割電極311〜31m、321〜32m、・・・・、3n1〜3nmに印加する電圧を順に連続的に変更(ON・OFF)することにより、液滴1を2次元の任意の方向へ移動させることができる。
なお、図18、図19の場合も、図11の場合と同様に、露出して設けられている共通電極2’の上を絶縁膜で覆うようにして第2形態の液体搬送手段として構成することもできる。
さて、以上のような流路が線状あるいは面状の液体搬送手段を用いて液体に各種の処理(制御)を行う実施例について説明する。なお、特にことわらない限り、図1〜図19の何れの形態の液体搬送手段も適用可能であることが分かる。
最初に、液体処理(制御)として混合と攪拌の例について説明する。
図20の例は、線状流路を途中で合流させて2液を混合させる場合の模式図であり、この場合は2本の流路31a、31bを途中の並行領域(合流領域)32を経て1本の流路31cに合流させており、それぞれの流路31a、31bの分割電極3a1〜3a7、分割電極3b1〜3b7へ印加する印加電圧を電極毎に順に制御して、それら流路31a、31bに沿って矢印方向へ搬送される液滴1a、1bを並行領域32で並走させて接触させ、合流した流路31cでは分割電極3c1〜3c4へ印加する印加電圧を電極毎に順に制御して、液滴1aと液滴1bが合わさって混合された液滴1cがその流路31cに沿って矢印方向へ搬送される。
図21は、このような混合のための液体搬送処理手段を、図6の流路がV溝で形成された密閉型の液体搬送手段で構成した場合の1例を示す模式的な透視斜視図である。詳細は図示しなくても、その構成作用は以上の説明から明らかであろう。
図22は、図20の変形例を示す模式図であり、この場合は一方の液体を搬送する流路を2本の流路31a1 、31a2 にし、その2本の流路31a1 、31a2 が他方の液体搬送する流路31bを両側から挟んで1本の流路31cに合流するようにしている。すなわち、3本の流路31a1 、31b、31a2 を途中の並行領域32を経て1本の流路31cに合流させており、両側の流路31a1 、31a2 に沿って矢印方向へ同じ液体からなる液滴1a1 、1a2 を搬送させ、真中の流路31bに沿って矢印方向へ別の液体からなる液滴1bを搬送させ、並行領域32で液滴1bに両側から液滴1a1 と液滴1a2 が接触するようにして接触面積を広げ、合流した流路31cに沿って矢印方向へ両液体がサンドウィッチ状になって混合がより進む液滴1cを搬送させている。この例では、両液体の接触面積を広げて2液混合をより促進させるようにしている。
図23は、図22の方式の液体混合を図16、図18等の密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路で行わせるようにした例を示す模式的斜視図であり、平面状の流路33の1点に1つの液体の液滴1bを滴下し、その両側に離して別々に同じ液体からなる2つの液滴1a1 、1a2 を滴下し、これら3の液滴1a1 、1b、1a2 を平面状の流路33の別の1点に向かって集まるように移動させて接触させて混合し、混合した液滴1cを別の方向へ搬送させる。
図24は、図14のような構成の円筒状の流路34を利用して2つの液滴1a、1bを1つの液滴1cに混合させる構成と作用を示す模式図である。円筒状の流路34は両端以外からは空気の出入りができないので、流路34を形成するパイプ24の中間に空気の出入りを許す通気孔27を設けておく。そして、図24(a)に示すように、分割電極31 〜37 へ印加する印加電圧を電極毎に順に制御して、流路34の両端側から相互に対向するように向かう矢印方向に液滴1aと液滴1bを搬送させ、図24(b)に示すように、通気孔27の位置で液滴1aと液滴1bを接触(衝突)させる。このとき、液滴1aと液滴1bの間の余分な空気は通気孔27から自動的に排出される。液滴1aと液滴1bとはその接触後、図24(c)に示すように、一体の液滴1cになり、その後、図24(d)に示すように、所定方向に搬送される。
図25は、図22の場合のように、1つの液体の1つの液滴1bに両側から別の液体の2つの液滴1a1 と液滴1a2 を接触させて混合させる場合の流路全体を模式的に示す図であり、基板8上には、1つの液体の液滴1bを外部から滴下して溜める液溜め(液体供給部)35bと、別の液体の液滴1aを外部から滴下して溜める液溜め(液体供給部)35aとが配置されており、液溜め35bからは1本の流路31bが合流領域32まで延びており、液溜め35aからは2本の略同じ長さの流路31a1 、31a2 が液溜め35bと流路31bを両側から挟むように合流領域32まで延びており、合流領域32からは混合された液滴1cを搬送排出する1本の流路31cが流路31a1 、31a2 、31bから離れるように出ている。
ここで、両側から接触される液滴1bの液体を溜める液溜め35bとその流路31bとを両側から挟んで囲むように、両側から接触する液滴1a1 、1a2 の液体を溜める液溜め35aとそのための流路31a1 、31a2 を配置する理由は、平面上で液滴を搬送するとき、立体交差ができないためである。また、液溜め35aから合流領域32に至る2本の流路31a1 、31a2 を略同じ長さに構成すると、同じ速度で液溜め35aから液滴1a1 、1a2 を送り出すと、合流領域32に同時に達するため、両側からの接触タイミングが合わせやすくなる。
次に、攪拌の例について説明する。攪拌を必要とするのは、上記のように2種類以上の液体を混合した後が多いが、必ずしも液体の混合の後とは限らない。
図26(a)は、流路31dと流路31eの間に攪拌部36を設けた1例の分割電極パターンを示している。流路31d、31eの分割電極群は、それぞれ流路の方向へ間隔をおいて配置された多数の矩形状の分割電極3d1〜3d7、3e1〜3e7からなるが、その間の攪拌部36においては、その中に入った液滴1が図中の矢印方向に回転可能にするために、例えば図示のように、円周方向に4分割してそれぞれの分割領域内で平行で領域間で直交する方向に向いている分割電極3f1〜3f6、3f7〜3f12 、3f13 〜3f18 、3f19 〜3f24 を配置する。このような分割電極の配置により、分割電極3f1〜3f24 へ印加する印加電圧を電極毎に順に制御することにより、図26(a)中の矢印方向へ液滴1を回転させてその液滴1に引き伸ばしや収縮の変形を与えて攪拌することができ、例えば2液混合を促進させることができる。また、図26(b)に矢印を示したように、回転方向を順次切り換えて往復回転を可能にする制御を行うことにより、より混合を促進させることができる。なお、この変形例として、攪拌部36の中心から放射方向に伸びる扇状の多数の分割電極を配置するようにしても、液滴1を攪拌部36内で回転処理することができる。
図27は、流路31dと流路31eの間に攪拌部36を設けた別の分割電極パターンを示している。流路31d、31eの分割電極群は、それぞれ流路の方向へ間隔をおいて配置された多数の矩形状の分割電極3d1〜3d6、3e1〜3e6からなるが、その間の攪拌部36においては、その中に入った液滴1が図中の交差する両矢符方向へ交互に引き伸ばされるように、例えば図示のように、円周方向に4分割してそれぞれの分割領域内で平行で領域間で直交する方向に向いている(図26(a)の場合とは各領域で分割電極の向きが90°異なる。)分割電極3f1〜3f4、3g1〜3g4、3h1〜3h6、3i1〜3i6を配置する。このような分割電極の配置により、最初は分割電極3f1〜3f4と分割電極3g1〜3g4に電圧を印加して、1個の液滴1を2分割して液滴1fと1gになるように引き伸ばし(必ずしも2分割する必要はなく、ラクビーボール状に引き伸ばすだけでもよい。)、次に、電圧を切るなりあるいは分割された液滴1fと1gを相互に押し付けるようにして元の1個の液滴1に戻し、次いで、分割電極3h1〜3h6と分割電極3i1〜3i6に電圧を印加して、それと直交する方向に2分割して液滴1hと1iになるように伸ばす(この場合も、必ずしも2分割する必要はなく、ラクビーボール状に引き伸ばすだけでもよい。)。このようにして、液滴1の引き伸ばしと収縮あるいは分割混合を繰り返すことにより、攪拌を行う。
図28は、滴滴1を1本の流路31中を往復動させて滴滴1を流路31中で転がすることにより攪拌を促進させる単純な例である。なお、この図では分割電極を指す符号は省く。
図29は、流路31dと流路31eの間にそれらの流路の幅より広い幅広流路31fを設け、かつ、幅広流路31fから流路31dへ移る部分、及び、幅広流路31fから流路31eへ移る部分に、幅の狭い流路31d、31eから広い流路31fに移動するときには邪魔をしないが、広い流路31fから狭い流路31d、31eへ移動するときには邪魔をして液滴1中に食い込んで乱流を起こす逆止突起37を設けて、流路31dと流路31eの間を両矢符方向へ往復移動を繰り返させ、液滴1中に乱流を起こして攪拌を速める構成を示す模式図である。
図30は、流路31dと流路31eの間にそれらの流路の幅より広い幅広流路31fを設け、かつ、幅広流路31fから流路31dへ移る部分、及び、幅広流路31fから流路31eへ移る部分には、この例の場合、引っ掛かるような部分でなく滑らかに移り行く傾斜部38を設けて、流路31dと流路31eの間を両矢符方向へ往復移動を繰り返させ、液滴1に伸縮を与えることにより攪拌させる構成を示す模式図である。
なお、図29、図30の例では、流路31d、31e、31fは開放型であっても密閉型であってもよいが、液滴を流路を形成する溝中を搬送するのではなく、平面状の流路中を搬送する場合に、上記のような幅関係の流路31d、31e、31fを電極パターンのみで構成するようにしても、電極パターン外が撥水性となっていれば、上記の説明のように作用することになる。
次に、図31は、基板8中に溝を設けて流路31を形成した場合に、その途中の流路にジグザグを入れる突起群39を配置して、その突起間を流れる液滴1に引き伸ばしと収縮の変形を与えて攪拌を促進する構成の模式的斜視図である。
図32は、基板8中に溝を設けて流路31を形成した場合に、その途中の流路に流路を一旦狭める門部40を配置して、その門部40を通って流れる液滴1に圧縮(収縮)と膨張(引き伸ばし)を与えて攪拌を促進する構成の模式的斜視図である。
図33(a)、(b)はそれぞれ密閉された線状流路31、開放された平面状の流路33の液滴1進行方向に親水領域41と撥水(疎水)領域42とを交互に設け、その方向に液滴1を移動させるか往復動させることにより、液滴1に引き伸ばしと収縮の変形を与えて攪拌を促進する場合を示す模式図である。何れの場合も、親水領域41と撥水領域42の繰り返し数は1以上であればよい。なお、図33(a)のような密閉型の線状流路31(図6、図7、図14〜図16等)の場合は、液滴1の一方の側にみでなく、その反対側にも親水領域41と撥水領域42を交互に互い違いに設けることが望ましい。
図34は、図27の方式の液体攪拌を図16、図18等の密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路で行わせるようにした例を示す模式的平面図であり、平面状の流路33の異なる2点に滴下した2つの液体の液滴1a、1bを平面状の流路33の別の1点に向かって集まるように移動させて接触させて液滴1cに混合し、混合した液滴1cを別の方向へ搬送させ、その位置の分割電極3a1、3a2と分割電極3b1、3b2とに交互に電圧を印加して、液滴1cを上下左右方向への伸びと縮みを繰り返すことにより攪拌を行うものである。
図35は、図28の方式の液体攪拌を上記のような密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路で行わせるようにした例を示す模式的平面図であり、平面状の流路33の異なる2点に滴下した2つの液体の液滴1a、1bを平面状の流路33の別の1点に向かって集まるように移動させて接触させて液滴1cに混合し、混合した液滴1cを別の方向へ搬送させ、その位置の分割電極3b1、3b2→分割電極3a1、3a2→分割電極3c1、3c2へ、その逆へとに順に電圧を印加して、液滴1cを図の上下方向へ往復動させて滴滴1cを流路33上で転がすることにより攪拌を促進させる例である。
図36は、図27の方式の液体攪拌を上記のような密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路で行わせるようにした例を示す模式的平面図であり、図の分割電極3a1、3a2と分割電極3b1、3b2とに交互に電圧を印加して、液滴1を液滴1を上下左右方向へ伸びと縮みあるいは分割と混合を繰り返すことにより攪拌を行う例である。
図37(a)は、図26の方式の液体攪拌を上記のような密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路で行わせるようにした例を示す模式的平面図であり、図の分割電極3a1、3a2→分割電極3b1、3b2→分割電極3c1、3c2→分割電極3d1、3d2へとに順に電圧を印加して、液滴1を図中の矢印方向に回転させてその液滴1を攪拌する。また、図37(b)に矢印を示したように、回転方向を順次切り換えて往復回転させることにより混合攪拌を促進させることができる。
以上、混合と攪拌の実施例について説明したが、特に粘性の高い液体同士を混合攪拌するとき、その混合を促進するには、カオス混合が可能な例えば図27、図29、図31〜図33、図36のような非線形な引き延ばしと折り畳みを行う方式が望ましい。
次に、流路中に液体を搬送しなら液体の量を測ったり(定量)、一定量の液体を分けて取り出す(分取)のための構成例を説明する。この場合は、流路中で搬送される液体を液滴1の代わりに液体50として示す。
図38(a)は、1つの定量又は分取のための例を模式的に示す平面図であり、線状の流路31の途中に定量カップあるいは定量升に相当する定量引き込み路51a〜51eが接続されている。各定量引き込み路51a〜51eは行き止まりの形状をしており、その突き当たり部にそれらの中への空気の出入りを許す通気孔52が設けられており(密閉型の場合のみ)、定量引き込み路51a〜51e中に溜められる液体の量は、例えばそれぞれ1単位、3単位、5単位、7単位、9単位となっているが、その容量の振り分けは任意に設定できる。流路31及び定量引き込み路51a〜51eに設けられる分割電極は矩形で図示してあるが、分割電極を指す符号はこの図では省いてある。
このような構成において、図38(b)に示すように、流路31の左端から液体50を矢印方向へ送り(図中、ハッチを付した分割電極には電圧が印加され、液体50の移動に寄与していることを示している。)、図38(c)に示すように、例えば1単位を測る定量引き込み路51aの入口まで搬送する。その状態で、図38(d)に示すように、定量引き込み路51a中の分割電極に電圧を印加して液体50の先端部を定量引き込み路51a内に導入する。その後、図38(e)に示すように、定量引き込み路51a外の分割電極に印加する電圧を制御して液体50の定量引き込み路51a内に導入された分50aを残して、液体50を元の位置まで後退させる。つまり、所定の量の液体50aが分けられたことになる。次いで、図38(f)に示すように、定量引き込み路51a中の分割電極と定量引き込み路51aの入口の分割電極に印加する電圧を制御して、分かられた一定量の液体50aが定量引き込み路51aから引き出され(図38(g))、その後、後退させられた液体50の位置する端とは反対の流路31の端方向へその分取された液体50aが搬送される。
他の定量引き込み路51b〜51eについても同様にして、各定量引き込み路51b〜51eの固有の容量の液体が分取され、定量される。
図39は、図38のような分取方法を利用して、一定時間経過毎に液体50から一定量の液体50aを取り出し、その時間経過による変化等を見る例を示す模式図であり、線状の主流路31は図39(a)の矢印のように循環流路を形成しており、その途中に行き止まりの定量引き込み路51aが接続されている。そして、図39(b)に示すように、この循環流路31中と循環している過程で定量引き込み路51a中に所定量の液体50aを残して、本体の液体50は循環させ、本体の液体50が定量引き込み路51aから離れている位置で、図39(c)に示すように、分けられた液体50aを循環流路31から分岐してその流路外に取り出し、変化等を測定するのに用いる。
図40は、1本の線状の流路31のみを利用して、液体50から所定量の液体50aを分取するための例の動作を模式的に示す平面図であり、その流路31の途中に空気の出入りを許す通気孔52が設けられている(密閉型の場合のみ)。そして、流路31に設けられる分割電極は矩形で図示してあるが、分割電極を指す符号はこの図では省いてある。ただし、そのような矩形の分割電極において、電圧が印加されて液体50、50aの移動に寄与している分割電極にはハッチを付して示してある。まず、図40(a)に示すように流路31の左端の通気孔52から左に位置する分割電極に電圧を印加して液体50を左端から導入し、図40(b)に示すように、通気孔52から右側の所定位置までの分割電極に電圧を印加する。ここで、通気孔52の位置から右側の電圧が印加される分割電極の数(長さ)で分取される液体50aの量が定まるので、分取しようとする液体50aの量に応じて通気孔52の位置から右側の電圧が印加される分割電極の数(長さ)が決められる。その後、図40(c)に示すように、電圧が印加された分割電極の右端まで液体50が移動(導入)され、その時点で、図40(d)に示すように、通気孔52の位置に対応する1又は複数の分割電極に電圧を印加することを止めると、その電圧を印加することを止めた分割電極の位置で、流路31の左端から導入した液体50と分取しようとする液体50aとが別れ初め、通気孔52から入った空気53がそれを促進する。その後、図40(e)に示すように、流路31の左端から導入した液体50を後退させ、その状態で、図40(f)に示すように、分けられた所定量の液体50aを流路31の右端方向へ移動させて取り出すことができる。
図41は、図14のような構成の円筒状の流路34を利用して、図40と同様に、液体50から所定量の液体50aを分取するための例の構成と作用を示す模式図であり、この場合は流路34の途中に、空気の出入りを許す通気孔27が設けられている。この場合も、図40と同様に、分割電極は矩形で図示してあるが、分割電極を指す符号はこの図では省いてあり、電圧が印加されて液体50、50aの移動に寄与している分割電極にはハッチを付して示してある。まず、図41(a)に示すように流路34の通気孔27から上に位置する分割電極に電圧を印加して通気孔27の位置まで液体50を流路34の上端から導入し、次に、図41(b)に示すように、通気孔27から下側の所定位置までの分割電極に電圧を印加して、通気孔27の位置から下側の電圧が印加される分割電極の数(長さ)で分取される液体の量を定めてその位置まで液体50を移動(導入)させ、その時点で、通気孔27の位置に対応する1又は複数の分割電極に電圧を印加することを止め、その分割電極の位置で通気孔27から空気53が入り、液体50が上下に別れ初め、その後、図41(c)に示すように、流路34の上端から導入した液体50と分取しようとする液体50aとが別れ、その後、図41(d)に示すように、流路34の上端から導入した上側の液体50を後退させ、また、分けられた所定量の下側液体50aを流路34の下端方向へ移動させて取り出すことができる。
図42は、所定量の液体50aの分取を、図16、図18等の密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路33で行わせるようにした例を示す模式的平面図である。この場合も、分割電極は矩形で図示してあるが、分割電極を指す符号はこの図では省いてあり、電圧が印加されて液体50、50aの移動に寄与している分割電極にはハッチを付して示してある。まず、図42(a)に示すように、平面状の流路33の一辺から液体50を導入するが、この場合に、電圧を印加した分割電極の集合の先端に所定数、この場合は1個の分割電極だけ出っ張るように選び、その位置に導入された液体50の突起部50’を生成させる。そして、出っ張り部に対応する位置から電圧を印加する分割電極を順に矢印方向へ移動させてその突起部50’の液体を本体の液体50から分けて、出っ張り部の分割電極の数に対応する量の液体50aを分取する。
図42(b)は、電圧を印加した分割電極の集合の先端に、図42(a)の場合の2倍、具体的には2個の分割電極だけ出っ張るように選んで、その出っ張り部の分割電極の数に対応する量の液体50aを分取する図42(a)と同様の図であるが、液体の表面張力等により、図42(b)の分割電極の電圧印加制御により分取される液体50aの量は、図42(a)の場合の2倍より多くなる可能性が高い。そこで、図42(a)の場合の確実に2倍の量の液体を分取するには、図42(c)に示すように、平面状の流路33の一辺から液体50を導入し、その場合に、電圧を印加した分割電極の集合の先端に離れて2個の分割電極だけ出っ張るように選び、それらの位置に導入された液体50の2つの突起部501 ’、502 ’を生成させる。そして、出っ張り部に対応する位置から電圧を印加する分割電極を順に矢印方向へ移動させてそれらの突起部501 ’、502 ’の液体を本体の液体50から分けて、出っ張り部の分割電極の数である2つの液体50a1 、50a1 を分割し、その後、図に矢印で示すように、2つの液体50a1 、50a1 を1点に向かって集まるように移動させて混合させて確実に2倍の量の液体50aを取り出すことができる。
図43は、図16、図18等の密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路33で、図39と同様に、一定時間経過毎に液体50から一定量の液体50aを取り出し、その時間経過による変化等を見る例を示す模式図であり、この場合は、図43(a)に示すように、平面状の流路33の一辺から矢印のように液体50を導入して、図43(b)に矢印で示すような循環流路を形成するようにしておく。そして、液体50が流路33を通過した後所定量の液体50aが残るように、流路33中の所定数の分割電極に電圧を印加し続ける。液体50が流路33を通過した後、図43(c)に示すように、電圧を印加し続けた分割電極の上に残って分けられた液体50aを循環流路から分岐して矢印で示すようにその循環流路外に取り出し、一定時間経過毎の液体の変化等を測定するのに用いる。
次に、以上のような何れの液体搬送処理手段においても、特定の液体を処理(制御)した後、その流路を洗浄しないと、次の液体を搬送処理(制御)するときに流路に残った前の液体が混ざり汚染を引き起こしてしまう。そこで、以下の流路の洗浄の構成例を説明する。
線状、面状何れの液体搬送手段においても、簡単には水等の洗浄液を流路に沿って一方向あるいは往復方向に搬送させれば流路の洗浄が可能となる。図44に密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路33を洗浄する例を模式的に示す。流路33中に流路全体に広がる量の洗浄液55を導入し、その洗浄液55を、図44(a)に矢印で示したように、一方向に移動させることによって、あるいは、図44(b)に両矢符で示したように、往復方向に移動させることによって流路33全体を洗浄することができる。
図45は、洗浄液を用いるのではなく、流路の汚染される部分を交換する例を模式的に示す図であり、この場合は、開放型の2次元平面状の流路33を綺麗に保つ構成例である。この場合は、撥水性の絶縁材料からなる薄いフィルム56を用い、このフィルム56を開放型の2次元平面状の流路33上に密着した状態で、そのフィルム56上を液滴1あるいは液体50を搬送処理(制御)するものであり、そのような液滴1あるいは液体50の搬送処理後に、別の種類の液体の液滴1あるいは液体50を搬送処理する場合に、フィルム56を流路33から剥がして供給ローラ57から巻き取りローラ58へ流路33の長さ以上の長さだけ送り出し、汚染されたフィルム56を除去して新しいフィルム56と交換して同様に使用する例である。
図46は、複数の液滴を順次搬送する場合に、液滴間に洗浄液の液滴を介在させることにより流路を順次洗浄して液滴間で汚染が起こらないようにした例であり、この構成は線状、面状何れの液体搬送手段にも適用できるが、密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路33に適用した例を模式的に示す。流路33上には搬送処理される複数の液滴1が相互に間隔をおいて順次矢印方向へ搬送されるが、その隣接する液滴1間に洗浄液の1つ以上の液滴55を介在させて液滴1と同時に同じ矢印方向へ送ることにより、前の液滴1で汚染された流路33を洗浄して次の液滴1を搬送する例である。
次に、以上のような何れの液体搬送処理手段においても、液滴1の位置や移動をモニターする必要がある。密閉型であっても開放型であっても、また、流路が線状であっても面状であっても、液滴1の位置が外から観察可能な場合は、適当な照明を行い、流路をカメラの撮像素子上に結像することで、液滴1の位置やその移動をモニターすることができる。図47に、1例として、密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路33に照明光源61からの照明光を当て、カメラ60でその流路33の全面を撮像することにより、液滴1が符号1の位置から符号1’の位置へ移動したことをモニターする構成を模式的に示す。図47(a)の場合は、照明光源61を平面状の流路33の略真上に配置し、その照明光源61に並列して結像面に撮像素子を備えたカメラ60を配置し、照明光源61からの照明光で流路33を略真上から照明し(落射照明)、カメラ60で流路33を撮像すると、液滴1が散乱光で強く輝くので、その位置及び移動をモニターすることができる。また、図47(b)の場合は、照明光源61を平面状の流路33の斜め上方向に配置し(図の場合は、2つの照明光源61を相互に反対側の斜め上方に配置している。)、流路33の略真上に撮像素子を備えたカメラ60を配置し、照明光源61からの照明光で流路を斜め上方から照明し(暗視野照明)、カメラ60で流路33を撮像すると、液滴1が散乱光で強く輝くので、その位置及び移動をモニターすることができる。
図47の場合はいわば反射照明による液滴1の位置等のモニターであったが、流路が密閉型、開放型何れであっても、また、その形状が線状、面状何れであっても、流路が透明な場合には透過照明によっても液滴1の位置等をモニターすることができる。図48は、その例として図1の液体搬送手段で搬送される液滴1の位置をモニターする構成例を示す図であり、ここでは、1次元方向の任意の位置へ搬送可能な液体搬送手段として、液滴1の位置をモニターする機構を示す。図48(a)の断面図において、図1の液体搬送手段の基板8の外側には、凸レンズ形状をした液滴1の集光面近傍であって基板8と平行に、アレイ状に配置されたCCD等の受光素子群63が基板62上に設けられている。
このような構成において、図1の液体搬送手段の共通電極膜2を設けた基板7側から全面に例えば平行光64を照射すると、液滴1が存在する位置では、その位置に入射する平行光64の成分は、対応する位置の受光素子に集光される。例えば、液滴1が図48(a)の破線位置1にあるときは、受光素子群63からは図48(b)に破線で示すような受光強度と位置関係の信号が得られる。一方、液滴1が図48(a)の実線位置(符号1’)にあるときは、受光素子群63からは図48(b)に実線で示すような受光強度と位置関係の信号が得られる。このように、その信号のピーク位置で、液滴1の位置がモニターできる。したがって、そのモニター信号を制御装置10(図1)へフィードバックすることにより、液滴1のより正確な位置制御が可能になる。あるいは、このような信号のピーク位置を表示装置上に表示することにより、微小な液滴1の位置を明確に表示することができる。なお、受光素子群63を2次元のアレイ状に配置したものとして構成することにより、液滴1の2次元位置をモニターすることができる。
図49は、図48の配置で、液滴1に対応する受光強度信号のピーク位置があまり大きくなく受光強度のコントラストが低い場合に、そのコントラストを高めて高精度で液滴1の位置を検出できるように空間周波数フィルタリングの手法を導入した場合の断面図である。この場合は、図1の液体搬送手段と基板62上の受光素子群63との間に相互に共焦点の2枚の正レンズ67、68を配置し、図1の液体搬送手段を正レンズ67の前側焦点面に、受光素子群63を正レンズ68の後側焦点面に配置し、正レンズ67と正レンズ68の共焦点位置に遮光体69を配置して構成される。なお、この場合の図1の液体搬送手段を照明する平行光64は、コリメートレンズ66の前側焦点位置に配置された点光源65からの照明光をコリメートレンズ66で平行にすることにより得ている。
このような配置であるので、点光源65からの照明光がコリメートレンズ6で平行光64にされ、その平行光64で図1の液体搬送手段の共通電極膜2を設けた基板7側から全面を照射すると、液滴1の存在しない位置では平行光のままその液体搬送手段を透過して正レンズ67でその後側焦点位置に集光され、遮光体69で遮断される。一方、液滴1の輪郭では入射する平行光64が屈折により方向が曲げられて液体搬送手段を透過して正レンズ67でその後側焦点位置以外の位置に向かうように進み、遮光体69に当たらずに別の正レンズ68に入射し、その正レンズ68の後側焦点面に液滴1の輪郭の像70を結像する。その液滴1の輪郭の像70を受光素子群63で検出することにより、高精度で液滴1の位置を検出することができる。
次に、2次元平面状の流路33上に複数の液滴を並べて配置し、その中の特定の液滴を選択的に取り出したり、並べ替えることが必要になる場合がある。このような液滴の並べ変え、取り出しをソートと呼ぶ。線状の流路を網の目状に接続しておいてソートを可能にすることができるが、より自由度を高くソートを可能にするには2次元平面状の流路33を用いる。図50はその1例を示す斜視図(a)を平面図(b)であり、密閉型あるいは開放型の2次元平面状の流路33を用い、この平面状の流路33には、X方向、Y方向に2次元分割されて碁盤の目状に配置された分割電極31,1 、31,2 、・・・・31,10、・・・・、32,1 、32,2 、・・・・32,10、・・・・、33,1 、33,2 、・・・・33,10、・・・・・37,1 、37,2 、・・・・37,10、・・・・の集合が配置されている。ここで、3m,n をm行n列の分割電極とする。
そして、この例の場合、液滴111、112、113、114、115は2行目の分割電極の4つの分割電極毎にそれぞれ滴下されており、液滴121、122、123、124、125は6行目の分割電極の4つの分割電極毎に、液滴111、112、113、114、115と列方向に整列してそれぞれ滴下されており、同様に、液滴131、132、133、134、135は10行目の分割電極の4つの分割電極毎にそれぞれ滴下されている。すなわち、行間でも列間でも間に3つの分割電極を介してX方向、Y方向に整列して液滴111、112、113、114、115、液滴121、122、123、124、125、液滴131、132、133、134、135が並列配置されている。
このような状態で、例えば2行2列の分割電極32,2 位置の液滴111を液滴111、112、113、114、115と液滴121、122、123、124、125の間の経路を矢印方向へ辿って移動させることによりソートする場合、図50(b)の矢印が接する分割電極33,2 →34,2 →34,3 →34,4 →34,5 →34,6 →34,7 →34,8 →34,9 →34,10と順に電圧を印加して液滴111を移動させる。
仮に、整列配置された液滴間の行間又は列間において、3つ以上の分割電極を介さない場合は、行間又は列間の分割電極に電圧を印加して特定の液滴を移動させようとすると、その液滴だけでなく、本来移動させたくない液滴も移動してしまうで、所望のソートが行えない。
このように、2次元平面状の流路33上に複数の液滴を2次元方向に並べて配置し、その並列配置した液滴間の流路を通って特定の液滴を選択的に取り出したり並べ替えるには、2次元平面状の流路33を構成する2次元分割された分割電極あるいは単純マトリックス駆動の電極構造の場合は2次元配置の電極交差部(図15)(各分割電極又は各電極交差部をセグメントと言う。)が並列配置された液滴間で少なくとも3つのセグメントが介在するように、複数の液滴を並列配置しなければならない。
さて、以上のような液体の各種処理(制御)を行う部分をユニット化して、目的毎に異なるユニットを複数連結してシステム化するようにすることも可能である。その例を以下に示す。図51は、処理ユニットの例を示す模式的斜視図である。図51(a)は、図20等で例示した2液を混合させる処理ユニット71であり、流路を反対に用いることにより、液体を2つに分岐することにも用いられる。この場合は、2つの液溜め35aと35bが処理ユニット71上に設けられ、それらの液溜め35a、35bからそれぞれ流路31a、31bが合流領域32まで延びており、合流領域32からは混合された液体を搬送する1本の流路31cが液溜め35a、35bと反対側の処理ユニット71の端部まで伸びている。
図51(b)は、流路31dと流路31eの間、及び、流路31eと流路31gの間に図26等で例示した攪拌部36が設けられ、途中の流路31eは蛇行流路として加熱部あるいは冷却部あるいはその双方74、75が設けられた処理ユニット72であり、流路31dと流路31gは相互に反対側の端部まで伸びている。
図51(c)は、一端から他端へ伸びる流路31hの途中の分岐部76で流路31に分岐させ、その流路31の端に液溜めあるいは液取り出し口77を設けて液体の一部を取り出す処理ユニット73であり、流路を反対方向に用いることにより、液体を途中で加える処理ユニットとしても用いることができる。
図52は、液体の処理(制御)目的に合わせて、以上のような処理ユニット71〜73等を任意に組み合わせて種々の処理を行わせることができることを示す模式的斜視図であり、図52(a)はこのような処理ユニット71〜73等を単線的に組み合わせた場合、図52(b)は立体的かつ並列的に組み合わせて並列処理を行う場合をそれぞれ示す。図52(a)においては、処理ユニット71と、処理ユニット72を2つ72aと72bと、処理ユニット73を2つ73aと73bと用いて、処理ユニット71→処理ユニット72a→処理ユニット73a→処理ユニット72b→処理ユニット73bと繋いでなるものである。
図52(b)においては、処理ユニット71を2つ71aと71bと、処理ユニット72を3つ72aと72bと72cと、処理ユニット73を4つ73aと73bと73cと73dと、他の処理ユニット79a、79b、80と用いて、上側の単線処理は図52(a)と同様に組み合わせ、一方、図52(a)の処理ユニット73aの液溜めあるいは液取り出し口77から取り出された液体は、流路78を経て下側の単線処理列に送られる。この下側の単線処理列は、処理ユニット71b→処理ユニット79a→処理ユニット79b→処理ユニット73c→処理ユニット72c→処理ユニット73d→処理ユニット80と繋いでなるものである。なお、ここで、処理ユニット79a、79bは流路を曲げる曲線流路のみを持つ単純な処理ユニットであり、また、処理ユニット80は液溜めを有する処理ユニットである。
なお、図52はあくまで図51(a)〜(c)の処理ユニット71〜73等を任意に選んで単線的あるいは並列的に連結することにより、種々の液体の処理(制御)の用途に供することができることを示すための図であり、詳細な説明は省く。
図53は、処理ユニット81として円形の循環流路81iを設け、その流路81iに液溜め35aと35bを分岐して繋ぎ、循環流路81iの途中に例えばヒータを備えた加熱器82と光学的な測定器83を設け、この循環流路81i中で循環させる液的1又は液体50の加熱等の処理後の経時変化を測定できるようにしたものである。なお、加熱器82の代わりに、混合、分離等の各種の処理部を設け、また、光学的な測定器83の代わりに、液体50の各種特性を検出する測定器を設けるようにしてもよい。
なお、以上の処理ユニット71〜73、79a、79b、80、81等においては、それぞれの液体処理は単一であったが、同じ処理ユニット上に同じ処理をする流路を複数並列配置して、処理ユニット単体での単位面積当たりの処理量を上げるようにすることもできる。
さて、以上のような処理ユニットに限らず、流路途中での液体の処理(制御)としては、上記のような混合、攪拌、分岐、定量、分取、洗浄、ソート、検出、加熱、冷却、循環に限定されず、種々の処理が可能である。
さらに、図1〜図4のような液体搬送手段を用いるとき、共通電極2と分割電極群3の間、あるいは、分割電極群3と分割電極群3’の間に駆動電圧を印加する電源5として交流を用いると、液滴1あるいは液体50が加熱される傾向になる。そこで、特に、流路中の加熱領域や混合・攪拌領域の駆動電源5として交流電源を積極的に用い、流路中の他の領域には直流電源を用いるようにしてもよい。
また、液体搬送処理手段の流路の幅(線状の流路の場合はその幅、面状の流路の場合は分割電極の幅)は、特に液的1あるいは液体50が血液等の細胞を含むものの場合、20μm以上、好ましくは50μm以上であることが望ましい。その幅以下であると、細胞を含む液的1あるいは液体50を詰まりなくスムーズに移動させることが容易でなくなる。
また、本発明の液体搬送処理手段は、温度センサーを基板に設け、搬送処理される液的1あるいは液体50の温度をモニターもできるようにすることが望ましい。そして、その液体搬送処理手段を設置している雰囲気の温度のモニターできるように周囲の雰囲気にも温度センサーを設けるようにすることが望ましい。これは、特にバイオテクノロジーにおけるDNA等を含む液体を加熱処理しその後に雰囲気の温度に戻す必要がある場合等に望ましい形態である。
さらに、本発明の液体搬送処理手段を設置して用いる雰囲気に湿度センサーと加湿器と除湿器を設けることが望ましい場合がある。特に、開放型の液体搬送処理手段を用いる場合に、雰囲気の湿度が低すぎると、液滴1あるいは液体50の水分等が蒸発したり、雰囲気の湿度が高すぎると、結露して、液滴1あるいは液体50の性質が変化してしまう恐れがあるため、周囲の雰囲気に湿度センサーと加湿器と除湿器を設けてこのようなことが発生しないようにすることが望ましい。
さらに、本発明の何れの液体搬送処理手段においても、流路31、33を設ける基板8として可撓性のあるフレキシブル基板を用いて液体搬送処理手段をフレキシブルなものとして形成するようにすることもできる。
また、本発明の液体搬送処理手段において対象とする液体としては、限定的ではないが、例えば、バイオ技術におけるDNA等を含む溶液、生化学における液体、血液等がある。
以上の本発明の液体搬送処理方法及び液体搬送処理手段は、例えば次のように構成することができる。
〔1〕 液体の搬送を電気的に制御する流路上を搬送される液体の一定量を分けて取り出すことにより、液体の定量あるいは分取を行うことを特徴とする液体搬送処理方法。
〔2〕 前記流路が1本の線状流路からなり、その線状流路の途中に接続され溜められる液体量が予め定められた引き込み流路へ前記線状流路上を搬送される液体を引き込み、その後、前記引き込み流路へ溜められた液体を独立に前記線状流路を経て搬送することを特徴とする上記1記載の液体搬送処理方法。
〔3〕 前記線状流路が循環流路からなり、前記引き込み流路が前記線状流路の何れかの位置に接続されていることを特徴とする上記2記載の液体搬送処理方法。
〔4〕 前記流路が1本の線状流路からなり、その線状流路の途中に分割点が定められて、液体の先端が前記分割点を通過し、前記液体の後端が前記分割点に達しないように、前記線状流路の一端から前記液体を導入し、その後に前記分割点で前記液体を2つに分割し、前記液体の先端から前記分割点までの液体を独立に前記線状流路を経て搬送することを特徴とする上記1記載の液体搬送処理方法。
〔5〕 前記線状流路が密閉型の流路からなり、前記分割点近傍に通気孔が設けられていることを特徴とする上記4記載の液体搬送処理方法。
〔6〕 前記流路が平面状でその面上で液体を任意の方向に搬送可能な流路からなり、前記平面状流路の何れかの方向から、液体の先端が所定幅で所定長さの突起部を形成するように導入し、その突起部の液体を導入された前記液体の本体から分けて独立に前記平面状流路を経て搬送することを特徴とする上記1記載の液体搬送処理方法。
〔7〕 前記液体の先端に幅と長さが同じ突起部を複数形成するように前記液体を導入し、それら複数の突起部の液体を導入された前記液体の本体から分けて前記平面状流路上を搬送させて合流点においてそれら複数の突起部の液体を1つに混合後に、混合された液体を前記平面状流路を経て搬送することを特徴とする上記6記載の液体搬送処理方法。
〔8〕 前記平面状流路が循環流路からなることを特徴とする上記6又は7記載の液体搬送処理方法。
〔9〕 前記流路が、液体に対して絶縁層を介して複数の並列配置された第1電極と、前記液体と接触する第2電極と、前記第2電極に対して前記複数の並列配置された第1電極に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記液体を前記絶縁層に沿って移動させるように、前記複数の並列配置された第1電極に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御可能に構成されている流路からなることを特徴とする上記1から8の何れか1項記載の液体搬送処理方法。
〔10〕 前記流路が、液体に対して絶縁層を介して複数の並列配置された第1電極と、前記液体に対して絶縁層を介して配置された第2電極と、前記第2電極に対して前記複数の並列配置された第1電極に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記液体を前記絶縁層に沿って移動させるように、前記複数の並列配置された第1電極に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御可能に構成されている流路からなることを特徴とする上記1から8の何れか1項記載の液体搬送処理方法。
〔11〕 前記流路を構成する前記第2電極が、前記第1電極が配置される基板上であって、前記第1電極の複数の並列配置された電極間、又は、前記第1電極の少なくとも1つの電極に設けた隙間に配置されていることを特徴とする上記9又は10記載の液体搬送処理方法。
〔12〕 前記流路を構成する前記第1電極が2次元に並列配置されていることを特徴とする上記9から11の何れか1項記載の液体搬送処理方法。
〔13〕 前記流路を構成する前記第2電極が複数の並列配置された電極からなることを特徴とする上記10記載の液体搬送処理方法。
〔14〕 前記第1電極と前記第2電極の並列配置方向が相互に交差した方向であることを特徴とする上記13記載の液体搬送処理方法。
〔15〕 前記流路が、液体に対して絶縁層を介して複数の並列配置された電極を備え、前記複数の並列配置された電極は、液体搬送方向に交互に周期的に配置された3つ以上の電極群からなり、前記3つ以上の電極群に対して印加する交流電圧の位相を電極群毎に個別に制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記液体を前記絶縁層に沿って移動させるように、前記3つ以上の電極群に対して印加する交流電圧の位相を電極群毎に個別に制御可能に構成されている流路からなることを特徴とする上記1から8の何れか1項記載の液体搬送処理方法。
〔16〕 液体に接触する絶縁層の上に撥水層は設けられていることを特徴とする上記9から15の何れか1項記載の液体搬送処理方法。
〔17〕 液体の搬送が電気的に制御可能な線状流路に搬送される液体の一定量を分けて取り出す定量部又は分取部が設けられていることを特徴とする液体搬送処理手段。
〔18〕 前記定量部又は分取部が、前記線状流路の途中に接続され溜められる液体量が予め定まっている1つ以上の定量引き込み流路からなることを特徴とする上記17記載の液体搬送処理手段。
〔19〕 前記線状流路が密閉型の流路からなり、前記線状流路の途中に通気孔が設けられ、その通気孔近傍において液体を一方向へ連続搬送させその後前記通気孔近傍で分割搬送させることにより所定量の液体が分取可能になっていることを特徴とする上記17記載の液体搬送処理手段。
〔20〕 前記線状流路が循環流路を形成していることを特徴とする上記18又は19記載の液体搬送処理手段。
〔21〕 前記線状流路が、液体に対して絶縁層を介して複数の並列配置された第1電極と、前記液体と接触するか、絶縁層を介して配置された第2電極と、前記第2電極に対して前記複数の並列配置された第1電極に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記液体を前記絶縁層に沿って移動させるように、前記複数の並列配置された第1電極に印加する印加電圧を電極毎に個別に制御可能に構成されていることを特徴とする上記17から20の何れか1項記載の液体搬送処理手段。
〔22〕 前記流路を構成する前記第2電極が、前記第1電極が配置される基板上であって、前記第1電極の複数の並列配置された電極間、又は、前記第1電極の少なくとも1つの電極に設けた隙間に配置されていることを特徴とする上記21記載の液体搬送処理手段。
〔23〕 前記線状流路が、液体に対して絶縁層を介して複数の並列配置された電極を備え、前記複数の並列配置された電極は、液体搬送方向に交互に周期的に配置された3つ以上の電極群からなり、前記3つ以上の電極群に対して印加する交流電圧の位相を電極群毎に個別に制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記液体を前記絶縁層に沿って移動させるように、前記3つ以上の電極群に対して印加する交流電圧の位相を電極群毎に個別に制御可能に構成されている流路からなることを特徴とする上記17から20の何れか1項記載の液体搬送処理手段。
〔24〕 液体に接触する絶縁層の上に撥水層は設けられていることを特徴とする上記17から23の何れか1項記載の液体搬送処理手段。