JP2005030918A - 騒音評価支援システム - Google Patents

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Taku Miyata
卓 宮田
Kenichi Itamiya
憲一 板宮
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Abstract

【課題】高精度な騒音評価結果を効率よく得ることのできる騒音評価支援システムを提供すること。
【解決手段】評価対象範囲を含む領域のステレオペア画像から3D−GISを構築し(ステップS1)、評価対象範囲における所定地点で測定された騒音レベルを含む実測値データベースを作成し(ステップS2)、記憶されたステレオペア画像に基づいて評価対象範囲内における各建物の高さを推計するとともに、記憶された騒音レベル測定値と、推計された各建物の高さとに基づいて、各建物の騒音レベルを推計して推計値データベースを作成し(ステップS3)、各建物の騒音レベル推計値に基づく騒音評価結果を出力する(ステップS4)。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、騒音評価支援システムに関するもので、特に、道路交通騒音の評価支援システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
道路交通騒音の評価は一般に、「騒音に係る環境基準の評価マニュアル II.地域評価編(道路に面する地域)」(平成12年4月 環境庁)(以下「環境庁マニュアル」という。)に準拠して行われる。この環境庁マニュアルは、沿道の住居等の立地状況を考慮したいわゆる「面的」な評価方法(地域評価)を指向しており、道路に面する地域の環境基準値を超過する住居等の戸数および割合を算出することで評価する、というものである。この環境庁マニュアルは、沿道地域内のすべての住居等における騒音レベルを測定することは困難であることから、代表地点の騒音レベルの実測値と交通量等の条件とに基づいて沿道地域における面的な騒音レベルを推計することを認めている。
【0003】
そこで、このような推計や評価結果の出力を効率的に行うための支援ツールの実現が望まれている。
【0004】
【非特許文献1】
「騒音に係る環境基準の評価マニュアル II.地域評価編(道路に面する地域)」(平成12年4月 環境庁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の環境庁マニュアルは、建物(群)による遮蔽効果を考慮した推計騒音レベルの補正方法を示している。その方法は、沿道建物の立地密度の疎密により分けて便宜的に行うもので、概ね次のようなものである。
【0006】
(1)沿道建物の立地密度が疎の場合:
建物相互の遮蔽効果が無視できない程度に集合している場合、道路の見通し角によって建物の遮蔽効果を補正する。
(2)沿道建物の立地密度が密の場合:
一定の区間(街区)の建物群立地密度をパラメータとした推定式によって、平均的な「建物群による遮蔽効果」を補正する。
【0007】
しかしながら、この手法では建物の上方を回折してくる騒音がまったく考慮されない。そのため、建物(群)による遮蔽効果を過小に見積もってしまう恐れがあり、その推計精度には問題がある。
【0008】
これまでにも、建物を3次元として扱い、建物の上方を回折する騒音を考慮した騒音予測の検討はなされているものの、建物毎の高さデータを別途調査によって得る必要があり、このような多大な調査は現実には困難であった。
【0009】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたもので、高精度な騒音評価結果を効率よく得ることのできる騒音評価支援システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の一側面によれば、評価対象範囲を含む領域のステレオペア画像を記憶する第1の記憶手段と、前記評価対象範囲における所定地点で測定された騒音レベルを記憶する第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段により記憶されたステレオペア画像に基づいて前記評価対象範囲内における各建物の高さを推計する第1の推計手段と、前記第2の記憶手段により記憶された騒音レベル測定値と、前記第1の推計手段により推計された各建物の高さとに基づいて、各建物の騒音レベルを推計する第2の推計手段と、前記第2の推計手段による各建物の騒音レベル推計値に基づく騒音評価結果を出力する出力手段とを有することを特徴とする騒音評価支援システムが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施形態における道路騒音評価支援システムの構成を示す図である。このシステムは一般的なパーソナルコンピュータやワークステーションで実現することができるもので、図示するように、装置全体の制御を司るCPU1、ブートプログラム等を記憶しているROM2、主記憶装置として機能するRAM3をはじめ、以下の構成を備える。4は各種プログラムやデータを記憶するハードディスク装置(HDD)、5は表示しようとするイメージデータを展開するメモリ(VRAM)であり、ここにイメージデータ等を展開することで6のディスプレイ装置(CRT)に表示させることができる。7および8はそれぞれ、各種設定を行うためのキーボードおよびマウスである。
【0013】
図2は、HDD4に記憶されるプログラムおよびデータを示す模式図である。図示のように、HDD4には、OS41、騒音レベルの推計および騒音評価マップの作成を行うための騒音評価プログラム42、3次元地理情報システム(3D−GIS)を実現する3D−GISソフトウェア43がインストールされている。さらにこのHDD4には、例えば衛星からのリモートセンシングによって得られたステレオペア画像(詳細は後述する)のデータ44、評価区間毎の騒音レベル実測値データを含む実測値データベース45、ならびに、騒音評価プログラム42による騒音評価に必要なデータを建物毎に収めた推計値データベース46も記憶される。ここで、「評価区間」とは、評価対象の道路を、道路構造、交通条件などから道路交通騒音の影響が概ね一定とみなせる区間で分割した各区間のことをいう。各評価区間において、少なくとも一地点で騒音レベルの測定が行われることになる。
【0014】
次に、実施形態における道路騒音評価支援システムの処理の概要を、図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートに示す処理は、騒音評価プログラム42および3D−GISソフトウェア43の連係によって実現されるもので、両プログラムがRAM3にロードされてCPU1によって実行される。
【0015】
まず、ステップS1で、評価対象範囲(例えば、評価区間の沿道50mの範囲)内の3D−GISを構築する。これは、衛星から得られたステレオペア画像を用いて3次元地図データを作成するとともに、各種のGIS属性データを付与する。GIS属性データは、既存のGIS(都市計画基礎調査GISデータなど)を利用して効率よくデータベースを構築できるように、これらのGISと互換性を有することが好ましい。後述するように、本実施形態の3D−GISによれば、評価対象範囲内にある建物の高さ情報を容易に得ることができる。これは従来のGISでは得られなかった属性データである。この高さデータがあれば、各建物の上方を回折する騒音の影響を考慮した推計を行うことが可能になる。
【0016】
図4は、このステップS1において実行される、評価対象範囲内における各建物の高さデータの算出処理を示すフローチャートである。
【0017】
まず、ステップS301において、人工衛星により撮影された衛星画像データを入力する。このステップS301で入力される衛星画像データは、例えばQuickBird衛星によってリモートセンシングされた画像データであり、放射補正、およびセンサ補正がなされたものである。ここで、放射補正とは、センサ素子間の相対放射反応、非反応検知センサ素子の補填、および絶対放射測定に対する補正を含む。また、センサ補正とは、センサ内部構造、光学ひずみ、走査ひずみなどを考慮した補正を含む。
【0018】
衛星によるリモートセンシングの様子を図5に示す。QuickBird衛星などの撮像衛星は、衛星軌道401上を矢印方向に秒速約8kmの速度で移動しながら、ラインセンサにより地表面402をリモートセンシングする。衛星に搭載されたラインセンサは、地表面402から受信した電磁波をイメージプレーン403に投影してデジタルデータとして保存する。そしてこのデジタルデータに対し、放射補正およびセンサ補正を行ったものがステップS301で入力される。QuickBird衛星の場合、リモートセンシングされた画像データの空間分解能は約61cm(直下点) から72cm(25度オフナディア角)であり、一度に約16.5km四方の地表面の画像を取込むことができる。
【0019】
衛星画像はこのようにして撮影されるが、ステップS301では、少なくとも2種類の画像データ、すなわちステレオペア画像を入力する。ステレオペア画像は、異なる位置にある衛星のセンサ、または、一つの衛星に設けられた異なるセンサから同じ地域をリモートセンシングすることにより得られる画像データである。その関係を図6に示す。501および502が衛星の軌道であり、503が地表面である。504が撮像対象領域である。QuickBird衛星を用いる場合には、1つの衛星で異なる軌道上から同じ地域を撮像することが可能であるが、それぞれ異なる衛星から同じ地域を撮像してもよい。なお、QuickBird衛星は南北に周回する衛星であるから、その軌道は東西にずれたものとなる。また、QuickBird衛星などの商用衛星では、衛星が1つの軌道を北から南に移動する間にセンサの向きを変更し同一の領域をほぼ同時に2方向から撮像しステレオペア画像を取得する機能がある。この機能を利用した場合には、図8の501および502は、同一の軌道上の異なる時間の衛星位置を示すことになる。
【0020】
なお、ステップS301では、画像データのみならず、画像サポートデータ(ISD)が入力される。画像サポートデータには、少なくともその画像を撮像した衛星の位置および時刻の情報が含まれている。画像サポートデータとしては、例えば、姿勢データ(最初のデータ点の時刻、点数、点間隔と姿勢情報)、衛星軌道暦データ(最初のデータ点の時刻、点数、点間隔と衛星軌道情報)、幾何補正データ(衛星のセンサおよび光学系をモデル化した仮想カメラモデルの写真測量用のパラメータ:焦点距離、中心軸座標など)、画像メタデータ(製品のレベル、画像4隅の座標値(緯度、経度)、地図投影法の情報を含む画像製品などの主要な属性と、画像取得時刻)、RPC(Rapid Positioning Capability Extension Format)データ(空間の4隅の座標値と画像の4隅の座標値とを数学的に対応させるデータ)が挙げられる。
【0021】
ステップS301で入力する衛星画像データは、センサ補正がなされているので、衛星・センサの機構が起因する歪みは補正されているが、センサの移動や地球の自転による歪みが含まれている。そこで、次のステップS302において、そのような歪みを補正する。この補正を狭義の幾何補正と称する。ステップS302では、更に、衛星センサの焦点距離や視野角などの幾何学特性パラメータを用いて、ピクセル座標から衛星座標への変換係数を幾何学的に決定する。
【0022】
図7は、そのような座標変換について説明する図である。ステップS301で入力された衛星画像データは、Aを原点とするX方向(列方向)におけるセンサの撮像素子ごとのデータ、および、Y方向(行方向)におけるラインごとのデータとして表現され、例えばHDD4に格納される(図2を参照。)。ステップS302では、このようにHDD4に格納されている衛星画像データを、Cを原点とするx−y座標に変換する。ここでCは、撮像領域の中心点である。
【0023】
次に、ステップS303において、GCPの設定を行い、ステップS304において、空中三角測量を行う。GCPには、三角点、水準点、もしくは、測量により得られた地点の座標、標高などが用いられる。日本国内の場合、25000分1の地形図が容易に入手できるので、交差点などの緯度経度、およびおよその標高を読み取りその値をGCPとして用いることができる。
【0024】
空中三角測量とは、衛星のラインアレイセンサで撮像された平面画像上の座標と地上座標系との関係を、センサ中心と、画像上のGCPの座標と、地上におけるGCPの位置が一直線上にあるという、共線条件を用いて解析する測量をいう。
【0025】
図8は、空中三角測量について説明する図である。同図において、衛星座標系(x,y,z)は、センサ位置Oを原点とし、センサの撮像方向をz軸とする座標系である。また、地上座標系(X,Y,Z)は、緯度、経度、地上高が共に0の点を原点とし、東をX軸に、北をY軸に、基準地上高面と垂直を成す方向をZ軸にもつ座標系である。なお、測量学では、通常X軸を北、Y軸を東とする座標系を用いているが、図8では、X軸を東、Y軸を北、Z軸を鉛直上方とした右手座標系を用いている。
【0026】
ここで、センサ位置Oを通る地上座標系と平行な座標系を(x’, y’, z’)とすると、座標系(x’, y’, z’)は、衛星座標系をx軸、y軸、z軸まわりに所定角度だけ回転させた座標系なので、それぞれの軸周りの回転角度をそれぞれ(ω、ψ、κ)とすれば、これらの座標系の変換式は、以下の式で表すことができる。
【0027】
【数1】
Figure 2005030918
【0028】
ここで、
【数2】
Figure 2005030918
【0029】
であり、
11=cosψ×cosκ
12=−cosψ×cosκ
13=sinψ
21=cosω×sinκ+sinω×sinψ×cosκ
22=cosω×cosκ−sinω×sinψ×sinκ
23=sinω×cosψ
31=sinω×sinκ−cosω×sinψ×cosκ
32=sinω×cosκ+cosω×sinψ×sinκ
33=cosω×cosψ
である。
従って、衛星座標系と地上座標系のスケール変換率をkとすると、衛星座標系と地上座標系の関係は、
【0030】
【数3】
Figure 2005030918
【0031】
となる。
また、図8において、地表面上の点Pの座標を、地上座標系で(X,Y,Z)とし、点Pを撮像した時点のセンサ位置Oの座標を、地上座標系で(X,Y,Z)とする。更に、点Pの投影点pの、画像データ上の座標を(x,y)とする。画像データ上の原点oは、衛星座標系において、焦点距離fを用いて、(−x,−y,−f)で表すことができるので、点Pの投影点pは、衛星座標系において、(x−x,y−y,−f)と表される。
【0032】
このとき、OとpとPは一直線上に存在するので、
【0033】
【数4】
Figure 2005030918
【0034】
という関係式を得ることができる。
この式を展開すると、以下の共線条件式が得られる。
【0035】
【数5】
Figure 2005030918
【0036】
この式は、任意の地上の点Pについて成り立つが、GCPを対象物とした場合、(X,Y,Z)と、(x,y)は既知であり、更に、焦点距離fも既知であるため、センサ位置(X,Y,Z)及びセンサの撮像方向(ω、ψ、κ)並びに、(x,y)の関係が得られることになる。
【0037】
ところで、QuickBird衛星などのセンサ位置(X,Y,Z)及びセンサの撮像方向(ω、ψ、κ)(これらをまとめて評定要素と称する)は、上述の画像サポートデータとして、ある程度まで提供されている。例えば、QuickBird衛星の場合、20μsecごとの評定要素が提供されている。20μsecは、約200スキャンラインに対応するため、各スキャンラインの評定要素は、提供された評定要素から補間する必要がある。衛星の軌道は時間によって変化するが安定しているので、評定要素の変化は小さくまたスムーズである。各スキャンラインの評定要素は、以下のような3次の多項式を用いて表すことができる。
【0038】
(t)=a+at+a+a
(t)=b+bt+b+b
(t)=c+ct+c+c
ω(t)=d+dt+d+d
ψ(t)=e+et+e+e
κ(t)=f+ft+f+f
【0039】
ここでa、a、a、aなどの全ての係数は、画像サポートデータとして提供される評定要素から解析的に算出できる。また、点Pの画像pを取得した時刻tも画像サポートデータから導くことができる。これにより、先の共線条件式の右辺が一意に定まり、1つのGCPのデータから、(x,y)が求まることになる。上述したように、上記共線条件式は地表面上の任意の点について成り立つので、ステップS301で入力した衛星画像データにおいて、対象物の画像の座標(x,y)が分かれば、経度Xと緯度Yと地上高Zの関係を示す一次関係式が2つ求まることになる。
【0040】
なお、複数のGCPについて、上述の共線条件式を適用した場合、評定要素や、GCPの計測に含まれる誤差により、右辺と左辺がわずかではあるが一致していない場合がある。その場合、両辺の残差を0に近づけるように逐次緩和法を用いて各係数を調整することで、係数の精度を上げることができる。
【0041】
次に、ステップS305において、タイポイントの設定およびステレオマッチングを行う。タイポイントとは、複数の衛星画像データにおいて同一の地上の対象物(交差点、特徴的な建造物など)を表した対応点のことをいう。また、ステレオマッチングとは、2つの衛星画像データ(ステレオペア画像)において、タイポイントの座標比較を行う処理である。
【0042】
ここでは、評価対象範囲内における各建物がタイポイントとして設定されることになる。タイポイントはプログラムにより自動的に設定されるようにしてもよいし、2枚の画像を見比べることによりオペレータが設定するようにしてもよい。タイポイントを設定することにより、2つの画像データを対応付けることができる。
【0043】
ステレオマッチングにより2つの画像データにおける同じタイポイントの座標が導き出されると、その位置のずれからタイポイントとして設定された建物の高さを算出することができる。
【0044】
図9を用いて、ステレオペア画像から建物の高さデータを導き出す方法について詳しく説明する。図9は、異なる位置のセンサO1,O2から同一の対象建物(タイポイント)Aを撮像したときの衛星画像上の点a1,a2とタイポイントの経度X、緯度Y、地上高Zの関係を示す図である。
【0045】
センサO1の位置を地上座標系で(XO1,YO1,ZO1)とし、センサO2の位置を地上座標系で(XO2,YO2,ZO2)とする。センサO1で撮像した画像平面801上のタイポイントa1の座標を(xa1,ya1)とし、センサO2で撮像した画像平面802上の座標をタイポイントa2の座標を(xa2,ya2)とすると、共線条件式として以下の式を得ることができる。
【0046】
【数6】
Figure 2005030918
【0047】
つまり、タイポイント1点に対して4つの方程式が得られる。上述したように、画像サポートデータより、m11〜m33,m’11〜m’33,(XO1,YO1,ZO1),(XO2,YO2,ZO2)の値を導き出すことができ、GCPについて得られる値を代入すれば、センサ位置における(xo1,yo1),(xo2,yo2)を導き出すことができるため、未知数の個数は、地上座標系でのタイポイントの座標(X,Y,Z)の3個のみとなる。このため、1の冗長性を有しながら、これらの連立方程式の解として、各タイポイントの経度X、緯度Y及び高さZが求まる。ステップS305では、全てのタイポイント(すなわち、評価対象範囲内における全ての建物)について、緯度、経度及び高さを求める。
【0048】
以上のようにして、評価対象範囲内における各建物の高さデータを求めることができる。
【0049】
説明を図3のフローチャートに戻す。
【0050】
次に、ステップS2で、実測値データベース45を作成する。実測値データベース45は例えば、図10に示すようなフィールド構成の評価区間毎のデータで構成される。ユーザが各フィールドの値を適宜入力および変更していくことにより、このデータベースを構築することが可能である。フィールドNo.4の道路種別には、例えば、高速自動車国道、一般国道、都道府県道などがある。また、フィールドNo.5の「道路構造」には、平面、盛土、高架などの別を示す情報が入力される。フィールドNo.7の「道路中心距離」とは、道路中心(センター)から実測地点までの距離のことである。そして、フィールドNo.8に、実測地点における騒音レベル測定値として、実測地点(道路端)における基準時間帯(例えば、6〜22時)の等価騒音レベルが入力される。等価騒音レベルは、例えば前述の環境庁マニュアルに従って測定されたものである。
【0051】
次に、ステップS3で、推計値データベース46を作成する。推計値データベース46は例えば、図11に示すようなフィールド構成の建物毎のデータで構成される。そして、ユーザが各フィールドの値を適宜入力および変更していくことにより、このデータベースを構築することが可能である。ここで、フィールドNo.1には建物を特定するためのIDが入力され、フィールドNo.2には、その建物が属する評価区間のIDが入力される。また、フィールドNo.3〜10にはその建物の各種属性データが入力される。フィールドNo.10および11はそれぞれ、建物の面積および高さを示すデータが入る。先述したとおり、とりわけ建物の高さを示すデータは従来のGISにはない属性データである。これらフィールドNo.10および11は計算により自動的に入力される。
【0052】
また、フィールドNo.12には、例えば、対応する評価区間の道路種別、道路構造、車線数、道路中心距離(実測値データベース45から取得できる。図10を参照。)、および、図11のフィールドNo.6の地域類型(住居地域、商業地域、工業地域など)から計算される、その建物の立地位置における環境基準値(騒音レベル基準値)が入力される。
【0053】
これらの建物の高さデータを含む各種データが適正に入力されると、建物の上方および側方を回折して到達する騒音を考慮した騒音レベル値が推計され、フィールドNo.13にその結果が入力される。具体的な推計手法は例えば、日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会,「道路交通騒音の予測モデル“ASJ Model 1998”」(日本音響学会誌,1999年,第55巻,第4号,P.357−401)に詳しく記載されている。
【0054】
フィールドNo.13に推計値が入ると、その推計値がフィールドNo.12に入力された環境基準値を超えているかどうかが判定され、フィールドNo.14にその判定結果が自動的に入力される。
【0055】
そして、次のステップS4では、実測値データベース45および推計値データベース46に基づき騒音評価マップを作成し、CRT6に表示し、または図示しない印刷装置を用いて印刷出力する。
【0056】
図12は、ステップS4で作成される騒音評価マップの一例を示す図である。この騒音評価マップの生成手順は例えば次のようなものである。
【0057】
まず、上述のステップS301(図4)において入力したステレオペア画像のうちのいずれかの画像に対しオルソ幾何変換を施した画像を表示する。ここで、オルソ幾何変換とは、中心投影画像を鉛直平行投影画像に変換する処理である。このオルソ幾何変換を施された画像が騒音評価マップのベース画像となる。次に、評価対象範囲の境界が明瞭に分かるように、図示の如く、破線をベース画像に重畳表示する。また、実測地点を表示することも可能である(同図A,B)。そして、建物毎に、推計値データベース46における対応する基準超過判定結果(図11、フィールドNo.14)を参照して、図示のように、騒音レベルが環境基準を超える建物を黒などで着色する。
【0058】
このようにして作成された騒音評価マップによれば、建物毎の環境基準の達成状況が一目瞭然に判るようになる。
【0059】
もちろん、例えば、街区別に、環境基準を達成している戸数(騒音レベルが環境基準を下回っている戸数)をその街区の全体戸数で除すことによって環境基準達成度合を算出し、その度合に応じた色別表示を行えるようにしてもよい。
【0060】
以上説明した実施形態によれば、衛星等により撮影されたステレオペア画像を用いて評価対象範囲内における各建物の高さデータを算出するようにしたので、容易に建物毎の環境基準の達成状況を把握可能な騒音評価マップを提供することが可能になる。
【0061】
衛星により撮影される画像データは約60cmの空間分解能を有するので、高精度に建物の高さを推定することができる利点があるが、本発明は衛星を用いることに限定するものではないことを付記しておく。一定の空間分解能を実現できる限り、別の手段で撮影されたステレオペア画像、および、航空機搭載のレーザプロファイラにより取得された高さ情報などを利用することも可能である。
【0062】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、上述の通り、本発明は一般的なコンピュータシステムで実現できるものであった。したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためにそのコンピュータシステムにインストールされるプログラム自体、またはそのプログラムを格納した記録媒体も本発明の範疇にある。
【0063】
プログラムを供給するための記録媒体としては、ハードディスク、光磁気ディスク、メモリカードなどがあるが、その他に、プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して供給を受けることも可能である。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、高精度な騒音評価結果を効率よく得ることのできる騒音評価支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における道路騒音評価支援システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態における道路騒音評価支援システムのハードディスク装置に記憶されるプログラムおよびデータを示す模式図である。
【図3】実施形態における道路騒音評価支援システムの処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】評価対象範囲内における各建物の高さデータの算出処理を示すフローチャートである。
【図5】衛星によるリモートセンシングについて説明する図である。
【図6】異なる位置にあるセンサからの複数画像の撮像について説明する図である。
【図7】入力した画像データに対する座標の割り当てを説明する図である。
【図8】空中三角測量について説明する図である。
【図9】ステレオペア画像から建物の高さデータを導き出す方法について説明する図である。
【図10】実測値データベースにおける評価区間毎のデータの構造例を示す図である。
【図11】推計値データベースにおける建物毎のデータの構造例を示す図である。
【図12】騒音評価マップの一例を示す図である。

Claims (5)

  1. 評価対象範囲を含む領域のステレオペア画像を記憶する第1の記憶手段と、
    前記評価対象範囲における所定地点で測定された騒音レベルを記憶する第2の記憶手段と、
    前記第1の記憶手段により記憶されたステレオペア画像に基づいて前記評価対象範囲内における各建物の高さを推計する第1の推計手段と、
    前記第2の記憶手段により記憶された騒音レベル測定値と、前記第1の推計手段により推計された各建物の高さとに基づいて、各建物の騒音レベルを推計する第2の推計手段と、
    前記第2の推計手段による各建物の騒音レベル推計値に基づく騒音評価結果を出力する出力手段と、
    を有することを特徴とする騒音評価支援システム。
  2. 前記ステレオペア画像は、衛星からのステレオ撮影により取得されたものであることを特徴とする請求項1に記載の騒音評価支援システム。
  3. 前記出力手段は、前記第2の推計手段による各建物の騒音レベル推計値と、あらかじめ設定されている環境基準値とを比較することにより得られる環境基準の達成状況を表示する騒音評価マップを、前記騒音評価結果として出力することを特徴とする請求項1または2に記載の騒音評価支援システム。
  4. コンピュータシステムを利用して騒音評価を支援する方法であって、
    評価対象範囲を含む領域のステレオペア画像をメモリに記憶するステップと、
    前記評価対象範囲における所定地点で測定された騒音レベルをメモリに記憶するステップと、
    前記メモリに記憶されたステレオペア画像に基づいて前記評価対象範囲内における各建物の高さを推計するステップと、
    前記メモリに記憶された騒音レベル測定値と、推計された各建物の高さとに基づいて、各建物の騒音レベルを推計するステップと、
    各建物の騒音レベル推計値に基づく騒音評価結果を出力するステップと、
    を有することを特徴とする方法。
  5. コンピュータに、
    評価対象範囲を含む領域のステレオペア画像をメモリに記憶するステップ、
    前記評価対象範囲における所定地点で測定された騒音レベルをメモリに記憶するステップ、
    前記メモリに記憶されたステレオペア画像に基づいて前記評価対象範囲内における各建物の高さを推計するステップ、
    前記メモリに記憶された騒音レベル測定値と、推計された各建物の高さとに基づいて、各建物の騒音レベルを推計するステップ、
    各建物の騒音レベル推計値に基づく騒音評価結果を出力するステップ、
    を実行させるためのプログラム。
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