JP2005030848A - 表面検査のためのシミュレーション方法及び表面検査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】繰り返し明暗パターン照明を用いた表面検査において、最適なパターン周期・最適な画像解析手法を求めるためのシミュレーション方法を提供すること。
【解決手段】所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、明暗パターンが照明されたフィルム11をCCD10により撮像し、CCD10により撮像された画像を解析することでフィルム11の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、フィルム11の表面に欠陥モデルを設定するステップと、CCD10の撮像位置から出射したと仮定した光線が、フィルム11の表面で反射し、明暗パターンの配置される位置にて形成される光線分布形状を求めるステップと、光線分布形状と明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、重ね合わせ領域の面積に基づいて、明暗パターンの最適なパターン周期を取得するステップとを有する。
【選択図】 図2
【解決手段】所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、明暗パターンが照明されたフィルム11をCCD10により撮像し、CCD10により撮像された画像を解析することでフィルム11の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、フィルム11の表面に欠陥モデルを設定するステップと、CCD10の撮像位置から出射したと仮定した光線が、フィルム11の表面で反射し、明暗パターンの配置される位置にて形成される光線分布形状を求めるステップと、光線分布形状と明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、重ね合わせ領域の面積に基づいて、明暗パターンの最適なパターン周期を取得するステップとを有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法及びシミュレーション結果に基づいて構成された表面検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルム、板状製品、生産財のボディ等の平面や曲面上に存在する微小な凹凸状の表面欠陥を検査する表面検査方法が知られている。例えば、本出願人による特許文献1(特開2002−148195号公報)には、所定の明暗パターンを被検体に対して照明する照明装置(照明手段)と、明暗パターンが照明された被検体を撮像する撮影手段(CCDカメラ)と、撮影手段により撮像された原画像の明暗パターンのゆがみと明部・暗部の明るさの変化の度合いを解析することで表面欠陥を検出する画像解析装置とを備えている。明暗パターンとしては、例えば、チェッカーパターンやストライプパターン等があげられている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−148195号公報(特許請求の範囲、図1、図10等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる表面検査を行う場合に、繰り返し明暗パターンのパターン周期の大きさと、検査対照である被検体の表面欠陥の大きさの間には相関関係があり、パターン周期の大きさによって、検出感度が異なってくる。したがって、被検体表面に明暗パターンを照明する場合には、表面欠陥を確実に検出できるようなパターン周期を設定する必要がある。
【0005】
また、繰り返し明暗パターンのパターン周期を決めて、撮影手段により撮像した画像を取得した場合、種々の画像解析手法の中から最適と思われる手法を選択する必要がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、繰り返し明暗パターン照明を用いた表面検査において、最適なパターン周期・最適な画像解析手法を求めるためのシミュレーション方法を提供することである。 また、そのようなシミュレーションの結果得られた表面検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明に係る表面検査のためのシミュレーション方法は、
所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、
被検体の表面に欠陥モデルを設定するステップと、
前記撮影手段の撮像位置から出射したと仮定した光線が、被検体の表面で反射し、前記明暗パターンのパターン面上に形成される光線分布形状を求めるステップと、
前記光線分布形状と前記明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、前記明暗パターンの最適なパターン周期を判定できるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
このシミュレーションは、繰り返し明暗パターンを被検体に照明して、その明暗パターンを含む表面欠陥の画像を取得・解析することで表面検査を行う場合のシミュレーション方法である。そのため、被検体の表面に欠陥モデルを設定する。これは、実際に想定される欠陥の形状・大きさを考慮してモデル化する。そして、撮影手段の撮像位置から光線を出射させる。現実には、撮影手段から光が出射されることはないが、シミュレーションを行う場合は、撮影手段からの出射光を追跡する方法で行う。この出射光が被検体表面で反射すると、明暗パターンの方向に向う。明暗パターンが配置されている位置(パターン面の位置)での出射光の到達点を求める。これを撮影手段の全撮影領域(あるいは、撮影領域内の所定領域)について行う。これにより、明暗パターンの配置位置における光線到達点の分布が得られる。被検体表面に欠陥がなければ、均一な分布状態となるが、表面欠陥があると、欠陥形状に対応した分布形状となる。そこで、この光線分布形状と明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせる。明暗パターンのパターン周期により、この重なり部分(面積または画素数)が大きくなったり小さくなったりする。この重なり度合いの大小は、検出感度の大きさに影響してくる。そこで、この重なり度合いに基づいて、最適なパターン周期を判断し求めることができる。なおパターン周期を求めるのは、人が行ってもよいしコンピュータが行っても良い。その結果、繰り返し明暗パターン照明を用いた表面検査において、最適なパターン周期を求めるためのシミュレーション方法を提供することができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態として、前記光線分布形状と前記パターン形状を重ね合わせるに際して、前記光線分布形状を明暗パターンのパターン形成方向に沿った相対位置関係を変えながら、前記重なり度合いを求めるステップを有するものがあげられる。
【0009】
光線分布形状とパターン形状とを重ねる場合に、その重ね方によって重なり度合い(重なりの面積または画素数)が異なる。すなわち、 光線分布形状をパターン形状のパターン周期方向に相対的に移動させると、重なり度合いも変化する。パターン周期を変えた場合に、重なり度合いの変化の仕方が変わってくる。この重なり度合いの変化は小さい方が好ましい。そこで、この重なり度合いを求めることで、最適なパターン周期についての判定をすることができる。
【0010】
本発明の別の好適な実施形態として、前記相対位置関係を変えながら前記重なり度合いを求めた場合に、その重なり度合いの最大値と最小値の差を求めるステップを有するものがあげられる。
【0011】
パターン形状と光線分布形状の相対位置関係を買えながら重なり度合いを求めると、重なり度合いの最大値と最小値を得ることができる。この最大値と最小値の差が所定レベル以下となるようなパターン周期を、最適なパターン周期とすることができる。所定レベルについては、表面検査を行う場合の実情に応じて、適宜決めることができる。
【0012】
本発明の更に別の好適な実施形態として、前記パターン形状と前記光線分布形状は、照明軸に対する角度をパラメータとしており、最適なパターン周期を角度で取得できるようにしたものがあげられる。
【0013】
パターン形状と光線分布形状のパラメータとしては長さの単位を選択することもできるが、上記の角度をパラメータとすることが好ましい。照明手段を配置する場合には、被検体表面から所定の距離隔てた所に配置されるが、実際の検査を行う現場によっては、特定の距離にしか置けないことがある。そこで、パラメータを角度にしておき、最適なパターン周期を角度に基づいて求めるようにしておけば、照明手段の距離を変更する場合でも、その角度の値から簡単に明暗パターンの大きさを決めることができる。
【0014】
上記課題を解決するため本発明に係る別のシミュレーション方法は、
所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、
被検体の表面に欠陥モデルを設定するステップと、
前記撮影手段の撮像位置から出射したと仮定した光線が、被検体の表面で反射し、前記明暗パターンのパターン面上に形成される光線分布形状を求めるステップと、
前記光線分布形状と前記明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、表面欠陥の検出可否を判定できるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この構成によると、光線分布形状と明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせて、重ね合わせの度合いに基づいて、表面欠陥の検出可否を判断することができる。すなわち、 表面欠陥の大きさに比べて、パターン形状のパターン周期が大きすぎると、パターンの中に表面欠陥が埋もれてしまい検出が難しくなる。これは、光線分布形状とパターン形状の相対位置関係を変えながら重なり度合いの変化を求めていくことで、判断することができる。そこで、上記重なり度合いを予め求めておくことで表面欠陥の検出が可能か否かを判定することができる。なお検出可否の判定は、人が行ってもよいし、コンピュータが行っても良い。
【0016】
本発明の別の好適な実施形態として、前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、表面欠陥の検出を行うための画像解析方法を決定するステップを有するものがあげられる。
【0017】
被検体の画像を撮影して画像解析を行う場合に、撮影される画像の性質により好ましい画像解析方法があると考えられる。例えば、繰り返し明暗パターンの画像にぼけが生じる場合、画像にぼけはほとんど生じないがひずみが生じる場合、画像のパターンの暗部に輝度の反転が生じる場合等に応じて、好ましい画像解析方法が異なる。本願発明者は、重ね合わせにより得られた重なり度合いに基づいて、最適な画像解析方法を選択する指針を見出すことができた(詳細は後述)。
【0018】
本発明の更に別の好適な実施形態として、前記光線分布形状と前記パターン形状を重ね合わせるに際して、前記明暗パターンのパターン面の被検体表面に対する面角度関係を変えながら、前記重なり度合いを求めるステップを有するものがあげられる。
【0019】
明暗パターンを被検体表面に対して配置する場合に、そのパターン面の角度配置に関しても最適な設定があると考えられる。すなわち、 被検体表面に対してパターン面を平行に配置するのか、傾斜させた状態に配置するのかという点である。これについても、パターン面の角度を変えながら重なり度合いを求めていくことで、最適なパターン面を取得できることを見出すことができた。
【0020】
なお、本発明に係る各ステップは、コンピュータにインストールされたプログラム(ソフトウェア)により実行することができる。
【0021】
上記課題を解決するため本発明に係る表面検査装置は、
所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明する照明手段と、
前記明暗パターンが照明された被検体を撮像する撮像手段と、
この撮影手段により撮像された画像を解析することにより、被検体の表面欠陥を検出する画像解析手段とを備えた表面検査装置であって、
前記明暗パターンのパターン面を被検体表面に対して平行、又は、ほぼ平行に配置してあることを特徴とするものである。
【0022】
先ほど説明したように、明暗パターンのパターン面の被検体表面に対する面角度関係を変えながら、前記重なり度合いを求めることで最適なパターン面配置角度を取得することができることを本願発明者は見出した。そして、明暗パターンのパターン面を被検体表面に対して平行に配置することが最適であることが判明した。実際は、被検体に対して照明手段だけでなく、撮影手段も対向配置させなければならない。したがって、配置上の制約から、被検体表面に平行になるように対向配置させることが難しい場合は、平行に近い角度で対向配置するようにしても良い。これにより、表面欠陥の検出を行うに際して検出感度を高めることができ、欠陥検出の精度も高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る表面検査のためのシミュレーション方法の好適な実施形態を図面を用いて説明する。 まずは、実際の表面検査装置の構成を図1の概念図により説明する。
【0024】
図1(a)において、この表面検査装置は、被検体1に対して微細ストライプパターン(所定の繰り返し明暗パターンの1例である)の照明を行う照明装置2(照明手段)と、ストライプパターンが照明された被検体1を撮像するCCDセンサー3(ラインセンサーやエリアセンサー等であり、撮影手段に相当する。)と、CCDセンサー3により取り込まれた画像を解析する画像解析装置4と、画像を映し出すためのTVモニター5とを備えている。もちろん、照明装置2として、ストライプパターン以外にチェッカーパターン等を用いても良い。
【0025】
照明装置2のストライプパターンは図1(b)に示される。このストライプパターンは明部2aと暗部2bとが交互に繰り返して配置されており、寸法比(デューティー比)は、Xb:Xw=1:1である。
【0026】
CCDセンサー3により明暗パターンが照明された被検体1の画像を取得し、画像解析装置4により画像の解析を行う。画像の解析方法としては、明暗パターンの明部2aと暗部2bの境界のぼけ具合に基づいて表面欠陥を検出する方法や、明暗パターンのゆがみ(ひずみ)を検出する方法等がある。画像解析装置4には、そのための画像処理プログラムが格納されている。また、画像解析を行う場合に、表面欠陥を確実に検出することができるようにする必要がある。そのために、照明装置2の明暗パターンのパターン周期や、明暗パターンの配置を被検体1の表面欠陥に合わせて適切に設定しなければならない。そこで、最適な明暗パターンのパターン周期や明暗パターンの配置をシミュレーション方法により求める。シミュレーションを行うためのシミュレーションプログラムも画像解析装置4に格納されている。
【0027】
<シミュレーション解析方法>
図2、 図3は、シミュレーションを行うにあたり用いた光学系の配置構成を示す模式図である。撮影手段としてCCDラインセンサーを使用し、図2はラインセンサーの素子並び方向から見た配置構成図である。図3はラインセンサーの素子面に垂直な方向から見た配置構成図である。
【0028】
図2において、xyz座標系は、CCDラインセンサー10を基準に設定している。x軸(紙面に垂直な方向)にラインセンサー10の素子が並んでいる。x’y’z’座標系は、フィルム面(被検体に相当)を基準に設定した座標系である。フィルム面はx’y’平面に沿って存在する。ちなみにx’軸は、図2の紙面に垂直な方向である。また、xyz座標系の原点とx’y’z’座標系の原点とは、距離L1だけ離れている(図3参照)。
【0029】
ラインセンサー10とフィルム面11との間には、結像レンズ13が配置される。結像レンズ13は、後述のパターン照明のパターン面がラインセンサー10の素子面に結像できるように配置されている。
【0030】
x”y”z”座標系は、パターン照明12を基準に設定されている。x”y”z”座標系の原点はx’y’z’座標系の原点と同じ位置にある。x”軸は、図2の紙面に垂直な方向に設定されている。シミュレーションを行うにあたり、x’y’z’座標系はx’軸周りに回転可能な設定とした。すなわち、 フィルム面11はx’軸周りに回転可能に設定した。また、x”y”z”座標系は照明軸(z”)と観測軸(z)とがフィルム面に対して正反対の関係になるようにx”軸周りに回転可能とした。図2において、z軸とz’軸とは角度αだけ傾いた状態、z’軸とz”軸とは角度θだけ傾いた状態に設定しており、α=θが保持される。
【0031】
以後、角度による違いを評価する際(図7)には、これらの角度を可変として解析を行った。また、それ以外ではこれらの角度を固定して、照明パターン及び欠陥形状を変化させて欠陥検出の評価を行った。このときα=θ=0(照明、観測とも垂直:同軸落射照明という)の場合の評価結果を用いている。
【0032】
図3において、ラインセンサー10の素子はx軸上に沿って配置されている。パターン照明12には、ストライプパターンによりパターン照明が形成され、明部12aと暗部12bが交互に形成されている。パターンの並び方向(パターンが変化する方向)は、x軸方向に沿っている。シミュレーションに使用したパラメータは、以下の通りである。
【0033】
CCD:5000画素のラインセンサー、素子寸法=7μm
レンズ:f=55mm、絞り=F4、ΔH(像側主点と物体側主点の距離差)=1mm
光学配置:L1=800.6mm、L2=100.0mm
明暗パターン:明部と暗部とも同一幅寸法のストライプパターン
撮像視野:500mm(空間分解能は0.1mm/ピクセル)
欠陥モデル:凹欠陥
なお、欠陥モデルは凹欠陥だけでなく、凸欠陥や凹凸欠陥、ディンプル、ブツ等の種々が考えられるが、シミュレーションでは代表として凹または凸欠陥を選択したが、他のタイプの欠陥でシミュレーションを行うようにしてもよい。
【0034】
そこで、まず表面欠陥をモデル化する。表面欠陥として、次式のガウス型関数で定義される凸欠陥を用いた。その形状を図4に示す。
【0035】
【数1】
Aは、欠陥の高さ方向の変位を示し、Aの符号が+のときは凸欠陥となり、Aの符号が−のときは凹欠陥となる。σは欠陥の平面寸法を表わし、上式の定義では、高さ方向の変位がピークの1/e2 となる半径としている。なお、図4はA=−5μm、σ=0.25の例を示している。
【0036】
次に欠陥検出の原理を図5により説明する。図5(a)は、欠陥のないフラットなフィルム面11の場合であり、(b)は凸欠陥がある場合である。(a)のように、欠陥が存在しない場合には、フィルム面で反射した光線は、均等にパターン面に到達する。(b)のように欠陥があると、光線方向はある範囲に分布する。この分布状況を解析することで欠陥の有無や欠陥の程度を求めることが可能である。
【0037】
次に、シミュレーションの具体的な方法を説明する。ラインセンサー10の特定のCCD素子(撮影手段の撮像位置に相当)から光が出射したと仮定して、この出射光がフィルム面で反射して、パターン面のどの点に到達するかを光線追跡する。すなわち、 図3にPiで示す素子から出射した光線Aはレンズ13内の点Qで屈折し、光線Bとなる。この光線Bは、フィルム面11上で反射して光線Cとなり、パターン面へ到達する。このパターン面上での到達位置を求める。この到達位置は、パターン面のx軸に沿った長さで求めるのではなく、角度(z”軸に対する角度)により求めるようにする。なお、図2と図3には、素子Piから出射した光は、1本のみが示されているが、実際は素子Piを点光源と考えて、あらゆる方向に均等に光が出射しているものとして演算した。ただし、光線追跡を行うのは、レンズ13内を通過する光のみであることは言うまでもない。また、Piからあらゆる光を出射させる場合、どの程度の密度(光束)で出射させるかはプログラム上で適宜設定できるものである。光線密度を大きくすれば、シミュレーションの精度はよくなるが、演算時間は長くなる。したがって、精度と演算時間の両方を考慮しながら、設定すればよい。
【0038】
以上、ラインセンサー上の1つの素子Piについての光線追跡を説明したが、ラインセンサー10は5000画素分の素子があるので、全部で5000画素分についても同じように光線追跡を行う。
【0039】
<シミュレーション結果>
次に光線追跡のシミュレーションを行った結果の1例を図6(a)に示す。なお、欠陥モデルのパラメータであるが、σ=2000μm、A=−20μmの凹欠陥としている。また、θ=0゜である。図6において、φはストライプパターンが変化する方向に対応し、ψはφ方向に直交した方向に対応している。いずれも角度単位で表わしている。また、高さ方向の座標(H軸)は、度数を表わしている。つまり、山の高さが高いほど反射光線が集中していることを示す。
【0040】
また、ストライプパターンとラインセンサーとを組み合わせた光学系の場合、ψ方向の光線分布は、パターンの変化に寄与しない。そこで、図6(b)に示すようにψ方向の分布をH−φ座標平面に投影する。これはψ方向の度数(光線本数)を積算することで得られる曲線であり、横軸はφ(゜)であり縦軸はH(度数)である。これにより得られた曲線を影響領域曲線(光線分布形状に相当)と定義し、光線の反射の分布範囲を影響領域(光線分布範囲)と定義する。
【0041】
次に、影響領域曲線と照明パターンの関係を解析する。図8は、影響領域曲線と照明パターンとを重ね合わせた状態を示す図である。図8において、Rが影響領域曲線を示し、Pが照明パターンのパターン曲線を示す。横軸はφ(゜)で表わしており、照明パターンのパターン幅も長さではなく、角度で表わしている。影響領域曲線Rの縦軸は、既に説明したように度数であるが、パターン曲線Pについては、縦軸の実際の単位は光強度である。ただし、パターン曲線の縦軸の絶対値は、CCDカメラで撮影することを考えれば、それほど重要ではなく、むしろ分布形状が重要である。そこで、パターン曲線の縦軸を0.0〜1.0に正規化して表示させている。具体的には、明部が1.0であり暗部が0.0のパルス曲線状に正規化されている。
【0042】
図8に示すように、パターン曲線Pと影響領域曲線Rとを重ね合わせると、Sで示す領域に重なりが生じる。この重なり度合いを解析することにより、明暗パターンの最適ピッチや適切な欠陥解析方法の選択についての指針が得られるものと考えられる。例えば、影響領域が照明パターンのパターン周期に比べて小さい場合は、欠陥の検出が困難であると考えられる。また、図8に示すように、影響領域曲線Rとパターン曲線Pとがある程度以上の重なり領域を有する場合は、欠陥の検出が可能であると考えられる。そこで、影響領域曲線をR(φ)とし、照明パターンのパターン曲線をP(φ)とすると、重なり領域Sの大きさ(面積)は、次式により求められる。
【0043】
S=∫R(φ)・P(φ)dφ
影響領域曲線Rの内側領域を1とし外側を0とする。パターン曲線Pの内側(明部)を1とし外側(暗部)を0とし、両者の積により領域Sの大きさを求められる。
【0044】
図9は、パターン周期を種々変えた場合の重なり領域Sの大きさの変化を示す。パターン周期φ=1゜、 2゜、 3゜の場合について、影響領域曲線とパターン曲線を重ねた図を示している。なお、φ=0の時にパターン曲線の暗部の幅方向の中心位置が来るように、パターン曲線を座標軸上に設定している。図9において2つの曲線が示されており、(a)はσ=500μm、A=−5μmであり、(b)はσ=2000μm、A=−20μmである。図9の横軸はストライプパターンの周期(゜)であり、縦軸はS(度数=面積)を表わしている。なお(周期=暗部の幅+明部の幅)である。この図から分かるように、周期を小さくすればするほど、面積Sが大きくなっていることが分かる。面積Sが大きいほど、欠陥検出を行いやすくなる。
【0045】
図10は、図9の演算結果において縦軸をS/φとしたものである。(a)(b)については図9と同じである。S/φは検出感度を表わす指標として考えることができる。検出感度S/φは、パターン周期が短くなるほど高くなる傾向にある。
【0046】
次に、影響領域の大きさとパターン周期との大きさが同程度の場合、パターンと欠陥との位置関係(φ方向の相対位置関係)が検出感度に関係すると考えられる。具体的には、図11の(A)(B)(C)に示している。(A)は影響領域曲線が暗部の間に位置しているケース、(B)は影響領域曲線が明部と暗部の境界に位置しているケース、(C)は影響領域曲線が明部の間に位置しているケースである。図からもすぐ理解されるように、(C)の場合が最も重なり度合いが大きいので、検出感度も高くなるが、(A)の場合はほとんど重なりがないために欠陥を検出できないことになる。(B)は(A)と(C)の中間程度の検出感度であるといえる。
【0047】
図11のグラフは、パターン周期を1.0゜〜4.0゜まで0.5゜ピッチで変化させた7通りの照明パターンについて、シミュレーション演算を行った。横軸は、ストライプパターンに対する欠陥の相対位置を示している。欠陥モデルは、σ=500μm、A=−5.0μmの凹欠陥である。
【0048】
図11に示すように、相対位置を変えていくと、重なりの面積Sは正弦曲線状に変化する。この正弦状曲線を影響量曲線と定義する。この影響量曲線の極大値と極小値の差(p−p:peak to peak)が大きくなると、欠陥の位置と明暗パターンの相対位置関係によって、欠陥を検出できたりできなかったりするので、不安定になる。図11に示すように、パターン周期が大きいほどp−p値が大きくなる。逆にパターン周期が小さくなるほどp−p値は小さくなり、安定して欠陥検出を行うことができる。したがって、実際の検査を行うにあたり、p−p値が所定値以下になるようなパターン周期を選択することが好ましい。
【0049】
次に、図11に示す影響量曲線Qに基づいて適切な照明方法(パターン周期)と欠陥検出方法を選択するための指針について検討する。そのために、まず欠陥の見え方について、 次の3つに分類する。
【0050】
(A)第1に、影響量曲線の勾配とp−p値が共に小さな場合である。この場合は、欠陥の照明パターンに対する相対位置に関係なく、欠陥の影響領域と明暗パターンとは重なりを有している。従って、ラインセンサーにより撮影した画像には、パターンのぼけが検出される。この具体的な例を図12(a)に示す。欠陥モデルのパラメータは、σ=2000μm、A=100μmの凸欠陥であり、明暗パターンのピッチは2.0゜である。図12(a)の左上には、パターン曲線と影響領域曲線との関係を示している。左下は、影響量曲線の変化を示している。右側の画像は、シミュレーションにより生成した観測画像である。
【0051】
(B)第2に、影響量曲線の勾配が中程度の場合である。勾配が大きくなり、p−p値が大きくなるにつれて、パターンのぼけの具合が小さくなり、やがてパターンの歪のみが観測されるようになる。この具体的な例を図12(b)(c)に示す。図12(b)は、凸欠陥でありσ=5000μmであり、A=50μmである。明暗パターンのパターン周期は2.0゜である。図12(c)は、凸欠陥であり、σ=5000μm、A=20μmである。図12(b)のシミュレーション観測結果では、パターンの若干のぼけと歪の両方が観測されている。また、図12(c)では、ぼけはほとんど観測されず、パターンの歪のみが観測されている。
【0052】
(C)第3は、影響量曲線の勾配が大きい場合である。この場合、欠陥が明部及び暗部の中央(境界)に位置するときは、影響領域と明暗パターンの重なり面積は比較的小さい。そのためパターンのぼけはあまり観測されない。また、欠陥が暗部にあるときは、欠陥部が明るく見える。また、欠陥が明部にあるときは暗く観測される。このように、輝度が反転される様子が観測される。この具体的な例を図13(d)(e)に示す。図13(d)は、凸欠陥であり、σ=8000μm、A=50μmである。明暗パターンのパターン周期は6.0゜である。図13(e)は、凹欠陥であり、σ=500μm、A=−30μmである。パターン周期は6.0゜である。観測画像においてどの程度の輝度の反転が生じるかは、影響量曲線のp−p値によって決まる。図13(d)に示すように、p−p値が小さい方が輝度の反転の度合いが大きくなることが分かる。
【0053】
従来、繰り返し明暗パターンによる照明により撮影された画像に基づいて、表面欠陥を解析する方法としては、大別して次の3つの解析方法があった。すなわち、 (1)明暗の輝度の反転を利用する方法、(2)明暗パターンのパターン歪を利用する方法、(3)パターンのぼけを利用する方法(例えば、先にあげた特許文献1)がある。しかし、検査対象となる欠陥に対して適切な解析方法の選択については、明確な根拠が存在していない。そこで、本発明によるシミュレーション評価方法によれば、欠陥が前述の(A)(B)(C)のいずれの特徴を持って検出されるかを予め推測することにより、適切な解析方法を選択することが可能にある。したがって、解析方法の選択が容易になる。
【0054】
次に、照明パターンとフィルム面の相対角度関係について説明する。これまで説明してきたのは、照明パターンとフィルム面とが互いに平行に設定された状態でシミュレーションを行ってきた。すなわち、 図2においてθ=0と設定してシミュレーションを行ってきた。実際には、θが変化すると影響領域曲線も変化してくると考えられる。また、実際の現場においては、スペース等の関係でθ=0では機械器具を設置できないこともありうる。そこでθを変化させた場合に、重なりの面積Sがどのようになるかを演算したのが、図7の曲線である。図7において、横軸はθ(゜)である。縦軸は、面積(度数)である。このシミュレーション結果からも分かるように、θ=0の時が最も面積が大きくなる。したがって、明暗パターンはフィルム面にできるだけ平行に向かい合うように設定することが好ましい。なお、図7のシミュレーションにおいて用いた欠陥モデルは、σ=2000μm 、A=−20μmの凹欠陥であり、パターン周期は2゜のときの解析結果である。
【0055】
また、現場において、照明装置を実際に配置する場合には、フィルム面と明暗パターンとの距離L2(図2,3参照)を自由に選択できないことが多い。これは周囲のスペース等により制限を受けるからである。また、照明装置自身がラインセンサーによる撮影範囲を遮らないようにする必要もある。一方、シミュレーション演算を距離L2を変えながら行うとその分演算時間も多くなる。
【0056】
本シミュレーション方法によれば、適切なパターン周期を角度により得ることができる。パターン周期と距離L2とから、実際のパターン周期(長さで測った寸法)を求めることができる。したがって、距離L2をパラメータとしなくても最適な照明パターンのパターン周期を長さで求めることが可能である。したがって、シミュレーションも効率良く行うことができる。
【0057】
<別実施形態>
繰り返し明暗パターンについては、ストライプパターン、チェッカーパターンなど種々のパターン照明が考えられる。本発明は、特定の形態の明暗パターンに限定されるものではない。検査対象である被検体もフィルムに限定されるものではなく、フィルム以外のものについても適用できる。
【0058】
影響領域の計算(図6の分布を求める)において、これまでの実施例では、欠陥面で反射した光線が照明面へ向う方向とz”軸とのなす角度で表わしてきた。このとき、本シミュレーションではレンズの開口の大きさも考慮しているため、観測点(各CCD)からレンズの有効開口内へ向う光線を考えた場合、レンズの絞りの状態によっては無視できない拡がりを持つことになる。そこで、欠陥面から照明面へ向かう光線の拡がりを求める際に、z”とのなす角ではなく、フィルム面が平面の場合に同位置から照明面へ向う光線と、欠陥が存在する場合に同位置から照明面に向かう光線とのなす角を求めることにより、レンズの開口の影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面検査装置の構成を示す模式図
【図2】ラインセンサーの素子並び方向から見た光学系の配置構成図
【図3】ラインセンサーの素子面に垂直な方向から見た光学系の配置構成図
【図4】欠陥モデルを示す図
【図5】欠陥検出の原理を説明する図
【図6】影響領域曲線と照明パターンとを重ね合わせた状態を示す図
【図7】明暗パターンとフィルム面の相対角度と重なり度合いのとの関係を示す図
【図8】影響領域曲線とパターン曲線との重なりを示す図
【図9】パターン周期を種々変えた場合の重なり領域の大きさの変化を示す図
【図10】パターン周期を種々変えた場合の検出感度の大きさの変化を示す図
【図11】影響量曲線を示す図
【図12】シミュレーション観測結果の例を示す図(a)(b)(c)
【図13】シミュレーション観測結果の例を示す図(d)(e)
【符号の説明】
10 CCDラインセンサー
11 フィルム面
12 パターン照明
12a 明部
12b 暗部
13 結像レンズ
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法及びシミュレーション結果に基づいて構成された表面検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルム、板状製品、生産財のボディ等の平面や曲面上に存在する微小な凹凸状の表面欠陥を検査する表面検査方法が知られている。例えば、本出願人による特許文献1(特開2002−148195号公報)には、所定の明暗パターンを被検体に対して照明する照明装置(照明手段)と、明暗パターンが照明された被検体を撮像する撮影手段(CCDカメラ)と、撮影手段により撮像された原画像の明暗パターンのゆがみと明部・暗部の明るさの変化の度合いを解析することで表面欠陥を検出する画像解析装置とを備えている。明暗パターンとしては、例えば、チェッカーパターンやストライプパターン等があげられている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−148195号公報(特許請求の範囲、図1、図10等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる表面検査を行う場合に、繰り返し明暗パターンのパターン周期の大きさと、検査対照である被検体の表面欠陥の大きさの間には相関関係があり、パターン周期の大きさによって、検出感度が異なってくる。したがって、被検体表面に明暗パターンを照明する場合には、表面欠陥を確実に検出できるようなパターン周期を設定する必要がある。
【0005】
また、繰り返し明暗パターンのパターン周期を決めて、撮影手段により撮像した画像を取得した場合、種々の画像解析手法の中から最適と思われる手法を選択する必要がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、繰り返し明暗パターン照明を用いた表面検査において、最適なパターン周期・最適な画像解析手法を求めるためのシミュレーション方法を提供することである。 また、そのようなシミュレーションの結果得られた表面検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明に係る表面検査のためのシミュレーション方法は、
所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、
被検体の表面に欠陥モデルを設定するステップと、
前記撮影手段の撮像位置から出射したと仮定した光線が、被検体の表面で反射し、前記明暗パターンのパターン面上に形成される光線分布形状を求めるステップと、
前記光線分布形状と前記明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、前記明暗パターンの最適なパターン周期を判定できるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
このシミュレーションは、繰り返し明暗パターンを被検体に照明して、その明暗パターンを含む表面欠陥の画像を取得・解析することで表面検査を行う場合のシミュレーション方法である。そのため、被検体の表面に欠陥モデルを設定する。これは、実際に想定される欠陥の形状・大きさを考慮してモデル化する。そして、撮影手段の撮像位置から光線を出射させる。現実には、撮影手段から光が出射されることはないが、シミュレーションを行う場合は、撮影手段からの出射光を追跡する方法で行う。この出射光が被検体表面で反射すると、明暗パターンの方向に向う。明暗パターンが配置されている位置(パターン面の位置)での出射光の到達点を求める。これを撮影手段の全撮影領域(あるいは、撮影領域内の所定領域)について行う。これにより、明暗パターンの配置位置における光線到達点の分布が得られる。被検体表面に欠陥がなければ、均一な分布状態となるが、表面欠陥があると、欠陥形状に対応した分布形状となる。そこで、この光線分布形状と明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせる。明暗パターンのパターン周期により、この重なり部分(面積または画素数)が大きくなったり小さくなったりする。この重なり度合いの大小は、検出感度の大きさに影響してくる。そこで、この重なり度合いに基づいて、最適なパターン周期を判断し求めることができる。なおパターン周期を求めるのは、人が行ってもよいしコンピュータが行っても良い。その結果、繰り返し明暗パターン照明を用いた表面検査において、最適なパターン周期を求めるためのシミュレーション方法を提供することができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態として、前記光線分布形状と前記パターン形状を重ね合わせるに際して、前記光線分布形状を明暗パターンのパターン形成方向に沿った相対位置関係を変えながら、前記重なり度合いを求めるステップを有するものがあげられる。
【0009】
光線分布形状とパターン形状とを重ねる場合に、その重ね方によって重なり度合い(重なりの面積または画素数)が異なる。すなわち、 光線分布形状をパターン形状のパターン周期方向に相対的に移動させると、重なり度合いも変化する。パターン周期を変えた場合に、重なり度合いの変化の仕方が変わってくる。この重なり度合いの変化は小さい方が好ましい。そこで、この重なり度合いを求めることで、最適なパターン周期についての判定をすることができる。
【0010】
本発明の別の好適な実施形態として、前記相対位置関係を変えながら前記重なり度合いを求めた場合に、その重なり度合いの最大値と最小値の差を求めるステップを有するものがあげられる。
【0011】
パターン形状と光線分布形状の相対位置関係を買えながら重なり度合いを求めると、重なり度合いの最大値と最小値を得ることができる。この最大値と最小値の差が所定レベル以下となるようなパターン周期を、最適なパターン周期とすることができる。所定レベルについては、表面検査を行う場合の実情に応じて、適宜決めることができる。
【0012】
本発明の更に別の好適な実施形態として、前記パターン形状と前記光線分布形状は、照明軸に対する角度をパラメータとしており、最適なパターン周期を角度で取得できるようにしたものがあげられる。
【0013】
パターン形状と光線分布形状のパラメータとしては長さの単位を選択することもできるが、上記の角度をパラメータとすることが好ましい。照明手段を配置する場合には、被検体表面から所定の距離隔てた所に配置されるが、実際の検査を行う現場によっては、特定の距離にしか置けないことがある。そこで、パラメータを角度にしておき、最適なパターン周期を角度に基づいて求めるようにしておけば、照明手段の距離を変更する場合でも、その角度の値から簡単に明暗パターンの大きさを決めることができる。
【0014】
上記課題を解決するため本発明に係る別のシミュレーション方法は、
所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、
被検体の表面に欠陥モデルを設定するステップと、
前記撮影手段の撮像位置から出射したと仮定した光線が、被検体の表面で反射し、前記明暗パターンのパターン面上に形成される光線分布形状を求めるステップと、
前記光線分布形状と前記明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、表面欠陥の検出可否を判定できるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この構成によると、光線分布形状と明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせて、重ね合わせの度合いに基づいて、表面欠陥の検出可否を判断することができる。すなわち、 表面欠陥の大きさに比べて、パターン形状のパターン周期が大きすぎると、パターンの中に表面欠陥が埋もれてしまい検出が難しくなる。これは、光線分布形状とパターン形状の相対位置関係を変えながら重なり度合いの変化を求めていくことで、判断することができる。そこで、上記重なり度合いを予め求めておくことで表面欠陥の検出が可能か否かを判定することができる。なお検出可否の判定は、人が行ってもよいし、コンピュータが行っても良い。
【0016】
本発明の別の好適な実施形態として、前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、表面欠陥の検出を行うための画像解析方法を決定するステップを有するものがあげられる。
【0017】
被検体の画像を撮影して画像解析を行う場合に、撮影される画像の性質により好ましい画像解析方法があると考えられる。例えば、繰り返し明暗パターンの画像にぼけが生じる場合、画像にぼけはほとんど生じないがひずみが生じる場合、画像のパターンの暗部に輝度の反転が生じる場合等に応じて、好ましい画像解析方法が異なる。本願発明者は、重ね合わせにより得られた重なり度合いに基づいて、最適な画像解析方法を選択する指針を見出すことができた(詳細は後述)。
【0018】
本発明の更に別の好適な実施形態として、前記光線分布形状と前記パターン形状を重ね合わせるに際して、前記明暗パターンのパターン面の被検体表面に対する面角度関係を変えながら、前記重なり度合いを求めるステップを有するものがあげられる。
【0019】
明暗パターンを被検体表面に対して配置する場合に、そのパターン面の角度配置に関しても最適な設定があると考えられる。すなわち、 被検体表面に対してパターン面を平行に配置するのか、傾斜させた状態に配置するのかという点である。これについても、パターン面の角度を変えながら重なり度合いを求めていくことで、最適なパターン面を取得できることを見出すことができた。
【0020】
なお、本発明に係る各ステップは、コンピュータにインストールされたプログラム(ソフトウェア)により実行することができる。
【0021】
上記課題を解決するため本発明に係る表面検査装置は、
所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明する照明手段と、
前記明暗パターンが照明された被検体を撮像する撮像手段と、
この撮影手段により撮像された画像を解析することにより、被検体の表面欠陥を検出する画像解析手段とを備えた表面検査装置であって、
前記明暗パターンのパターン面を被検体表面に対して平行、又は、ほぼ平行に配置してあることを特徴とするものである。
【0022】
先ほど説明したように、明暗パターンのパターン面の被検体表面に対する面角度関係を変えながら、前記重なり度合いを求めることで最適なパターン面配置角度を取得することができることを本願発明者は見出した。そして、明暗パターンのパターン面を被検体表面に対して平行に配置することが最適であることが判明した。実際は、被検体に対して照明手段だけでなく、撮影手段も対向配置させなければならない。したがって、配置上の制約から、被検体表面に平行になるように対向配置させることが難しい場合は、平行に近い角度で対向配置するようにしても良い。これにより、表面欠陥の検出を行うに際して検出感度を高めることができ、欠陥検出の精度も高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る表面検査のためのシミュレーション方法の好適な実施形態を図面を用いて説明する。 まずは、実際の表面検査装置の構成を図1の概念図により説明する。
【0024】
図1(a)において、この表面検査装置は、被検体1に対して微細ストライプパターン(所定の繰り返し明暗パターンの1例である)の照明を行う照明装置2(照明手段)と、ストライプパターンが照明された被検体1を撮像するCCDセンサー3(ラインセンサーやエリアセンサー等であり、撮影手段に相当する。)と、CCDセンサー3により取り込まれた画像を解析する画像解析装置4と、画像を映し出すためのTVモニター5とを備えている。もちろん、照明装置2として、ストライプパターン以外にチェッカーパターン等を用いても良い。
【0025】
照明装置2のストライプパターンは図1(b)に示される。このストライプパターンは明部2aと暗部2bとが交互に繰り返して配置されており、寸法比(デューティー比)は、Xb:Xw=1:1である。
【0026】
CCDセンサー3により明暗パターンが照明された被検体1の画像を取得し、画像解析装置4により画像の解析を行う。画像の解析方法としては、明暗パターンの明部2aと暗部2bの境界のぼけ具合に基づいて表面欠陥を検出する方法や、明暗パターンのゆがみ(ひずみ)を検出する方法等がある。画像解析装置4には、そのための画像処理プログラムが格納されている。また、画像解析を行う場合に、表面欠陥を確実に検出することができるようにする必要がある。そのために、照明装置2の明暗パターンのパターン周期や、明暗パターンの配置を被検体1の表面欠陥に合わせて適切に設定しなければならない。そこで、最適な明暗パターンのパターン周期や明暗パターンの配置をシミュレーション方法により求める。シミュレーションを行うためのシミュレーションプログラムも画像解析装置4に格納されている。
【0027】
<シミュレーション解析方法>
図2、 図3は、シミュレーションを行うにあたり用いた光学系の配置構成を示す模式図である。撮影手段としてCCDラインセンサーを使用し、図2はラインセンサーの素子並び方向から見た配置構成図である。図3はラインセンサーの素子面に垂直な方向から見た配置構成図である。
【0028】
図2において、xyz座標系は、CCDラインセンサー10を基準に設定している。x軸(紙面に垂直な方向)にラインセンサー10の素子が並んでいる。x’y’z’座標系は、フィルム面(被検体に相当)を基準に設定した座標系である。フィルム面はx’y’平面に沿って存在する。ちなみにx’軸は、図2の紙面に垂直な方向である。また、xyz座標系の原点とx’y’z’座標系の原点とは、距離L1だけ離れている(図3参照)。
【0029】
ラインセンサー10とフィルム面11との間には、結像レンズ13が配置される。結像レンズ13は、後述のパターン照明のパターン面がラインセンサー10の素子面に結像できるように配置されている。
【0030】
x”y”z”座標系は、パターン照明12を基準に設定されている。x”y”z”座標系の原点はx’y’z’座標系の原点と同じ位置にある。x”軸は、図2の紙面に垂直な方向に設定されている。シミュレーションを行うにあたり、x’y’z’座標系はx’軸周りに回転可能な設定とした。すなわち、 フィルム面11はx’軸周りに回転可能に設定した。また、x”y”z”座標系は照明軸(z”)と観測軸(z)とがフィルム面に対して正反対の関係になるようにx”軸周りに回転可能とした。図2において、z軸とz’軸とは角度αだけ傾いた状態、z’軸とz”軸とは角度θだけ傾いた状態に設定しており、α=θが保持される。
【0031】
以後、角度による違いを評価する際(図7)には、これらの角度を可変として解析を行った。また、それ以外ではこれらの角度を固定して、照明パターン及び欠陥形状を変化させて欠陥検出の評価を行った。このときα=θ=0(照明、観測とも垂直:同軸落射照明という)の場合の評価結果を用いている。
【0032】
図3において、ラインセンサー10の素子はx軸上に沿って配置されている。パターン照明12には、ストライプパターンによりパターン照明が形成され、明部12aと暗部12bが交互に形成されている。パターンの並び方向(パターンが変化する方向)は、x軸方向に沿っている。シミュレーションに使用したパラメータは、以下の通りである。
【0033】
CCD:5000画素のラインセンサー、素子寸法=7μm
レンズ:f=55mm、絞り=F4、ΔH(像側主点と物体側主点の距離差)=1mm
光学配置:L1=800.6mm、L2=100.0mm
明暗パターン:明部と暗部とも同一幅寸法のストライプパターン
撮像視野:500mm(空間分解能は0.1mm/ピクセル)
欠陥モデル:凹欠陥
なお、欠陥モデルは凹欠陥だけでなく、凸欠陥や凹凸欠陥、ディンプル、ブツ等の種々が考えられるが、シミュレーションでは代表として凹または凸欠陥を選択したが、他のタイプの欠陥でシミュレーションを行うようにしてもよい。
【0034】
そこで、まず表面欠陥をモデル化する。表面欠陥として、次式のガウス型関数で定義される凸欠陥を用いた。その形状を図4に示す。
【0035】
【数1】
Aは、欠陥の高さ方向の変位を示し、Aの符号が+のときは凸欠陥となり、Aの符号が−のときは凹欠陥となる。σは欠陥の平面寸法を表わし、上式の定義では、高さ方向の変位がピークの1/e2 となる半径としている。なお、図4はA=−5μm、σ=0.25の例を示している。
【0036】
次に欠陥検出の原理を図5により説明する。図5(a)は、欠陥のないフラットなフィルム面11の場合であり、(b)は凸欠陥がある場合である。(a)のように、欠陥が存在しない場合には、フィルム面で反射した光線は、均等にパターン面に到達する。(b)のように欠陥があると、光線方向はある範囲に分布する。この分布状況を解析することで欠陥の有無や欠陥の程度を求めることが可能である。
【0037】
次に、シミュレーションの具体的な方法を説明する。ラインセンサー10の特定のCCD素子(撮影手段の撮像位置に相当)から光が出射したと仮定して、この出射光がフィルム面で反射して、パターン面のどの点に到達するかを光線追跡する。すなわち、 図3にPiで示す素子から出射した光線Aはレンズ13内の点Qで屈折し、光線Bとなる。この光線Bは、フィルム面11上で反射して光線Cとなり、パターン面へ到達する。このパターン面上での到達位置を求める。この到達位置は、パターン面のx軸に沿った長さで求めるのではなく、角度(z”軸に対する角度)により求めるようにする。なお、図2と図3には、素子Piから出射した光は、1本のみが示されているが、実際は素子Piを点光源と考えて、あらゆる方向に均等に光が出射しているものとして演算した。ただし、光線追跡を行うのは、レンズ13内を通過する光のみであることは言うまでもない。また、Piからあらゆる光を出射させる場合、どの程度の密度(光束)で出射させるかはプログラム上で適宜設定できるものである。光線密度を大きくすれば、シミュレーションの精度はよくなるが、演算時間は長くなる。したがって、精度と演算時間の両方を考慮しながら、設定すればよい。
【0038】
以上、ラインセンサー上の1つの素子Piについての光線追跡を説明したが、ラインセンサー10は5000画素分の素子があるので、全部で5000画素分についても同じように光線追跡を行う。
【0039】
<シミュレーション結果>
次に光線追跡のシミュレーションを行った結果の1例を図6(a)に示す。なお、欠陥モデルのパラメータであるが、σ=2000μm、A=−20μmの凹欠陥としている。また、θ=0゜である。図6において、φはストライプパターンが変化する方向に対応し、ψはφ方向に直交した方向に対応している。いずれも角度単位で表わしている。また、高さ方向の座標(H軸)は、度数を表わしている。つまり、山の高さが高いほど反射光線が集中していることを示す。
【0040】
また、ストライプパターンとラインセンサーとを組み合わせた光学系の場合、ψ方向の光線分布は、パターンの変化に寄与しない。そこで、図6(b)に示すようにψ方向の分布をH−φ座標平面に投影する。これはψ方向の度数(光線本数)を積算することで得られる曲線であり、横軸はφ(゜)であり縦軸はH(度数)である。これにより得られた曲線を影響領域曲線(光線分布形状に相当)と定義し、光線の反射の分布範囲を影響領域(光線分布範囲)と定義する。
【0041】
次に、影響領域曲線と照明パターンの関係を解析する。図8は、影響領域曲線と照明パターンとを重ね合わせた状態を示す図である。図8において、Rが影響領域曲線を示し、Pが照明パターンのパターン曲線を示す。横軸はφ(゜)で表わしており、照明パターンのパターン幅も長さではなく、角度で表わしている。影響領域曲線Rの縦軸は、既に説明したように度数であるが、パターン曲線Pについては、縦軸の実際の単位は光強度である。ただし、パターン曲線の縦軸の絶対値は、CCDカメラで撮影することを考えれば、それほど重要ではなく、むしろ分布形状が重要である。そこで、パターン曲線の縦軸を0.0〜1.0に正規化して表示させている。具体的には、明部が1.0であり暗部が0.0のパルス曲線状に正規化されている。
【0042】
図8に示すように、パターン曲線Pと影響領域曲線Rとを重ね合わせると、Sで示す領域に重なりが生じる。この重なり度合いを解析することにより、明暗パターンの最適ピッチや適切な欠陥解析方法の選択についての指針が得られるものと考えられる。例えば、影響領域が照明パターンのパターン周期に比べて小さい場合は、欠陥の検出が困難であると考えられる。また、図8に示すように、影響領域曲線Rとパターン曲線Pとがある程度以上の重なり領域を有する場合は、欠陥の検出が可能であると考えられる。そこで、影響領域曲線をR(φ)とし、照明パターンのパターン曲線をP(φ)とすると、重なり領域Sの大きさ(面積)は、次式により求められる。
【0043】
S=∫R(φ)・P(φ)dφ
影響領域曲線Rの内側領域を1とし外側を0とする。パターン曲線Pの内側(明部)を1とし外側(暗部)を0とし、両者の積により領域Sの大きさを求められる。
【0044】
図9は、パターン周期を種々変えた場合の重なり領域Sの大きさの変化を示す。パターン周期φ=1゜、 2゜、 3゜の場合について、影響領域曲線とパターン曲線を重ねた図を示している。なお、φ=0の時にパターン曲線の暗部の幅方向の中心位置が来るように、パターン曲線を座標軸上に設定している。図9において2つの曲線が示されており、(a)はσ=500μm、A=−5μmであり、(b)はσ=2000μm、A=−20μmである。図9の横軸はストライプパターンの周期(゜)であり、縦軸はS(度数=面積)を表わしている。なお(周期=暗部の幅+明部の幅)である。この図から分かるように、周期を小さくすればするほど、面積Sが大きくなっていることが分かる。面積Sが大きいほど、欠陥検出を行いやすくなる。
【0045】
図10は、図9の演算結果において縦軸をS/φとしたものである。(a)(b)については図9と同じである。S/φは検出感度を表わす指標として考えることができる。検出感度S/φは、パターン周期が短くなるほど高くなる傾向にある。
【0046】
次に、影響領域の大きさとパターン周期との大きさが同程度の場合、パターンと欠陥との位置関係(φ方向の相対位置関係)が検出感度に関係すると考えられる。具体的には、図11の(A)(B)(C)に示している。(A)は影響領域曲線が暗部の間に位置しているケース、(B)は影響領域曲線が明部と暗部の境界に位置しているケース、(C)は影響領域曲線が明部の間に位置しているケースである。図からもすぐ理解されるように、(C)の場合が最も重なり度合いが大きいので、検出感度も高くなるが、(A)の場合はほとんど重なりがないために欠陥を検出できないことになる。(B)は(A)と(C)の中間程度の検出感度であるといえる。
【0047】
図11のグラフは、パターン周期を1.0゜〜4.0゜まで0.5゜ピッチで変化させた7通りの照明パターンについて、シミュレーション演算を行った。横軸は、ストライプパターンに対する欠陥の相対位置を示している。欠陥モデルは、σ=500μm、A=−5.0μmの凹欠陥である。
【0048】
図11に示すように、相対位置を変えていくと、重なりの面積Sは正弦曲線状に変化する。この正弦状曲線を影響量曲線と定義する。この影響量曲線の極大値と極小値の差(p−p:peak to peak)が大きくなると、欠陥の位置と明暗パターンの相対位置関係によって、欠陥を検出できたりできなかったりするので、不安定になる。図11に示すように、パターン周期が大きいほどp−p値が大きくなる。逆にパターン周期が小さくなるほどp−p値は小さくなり、安定して欠陥検出を行うことができる。したがって、実際の検査を行うにあたり、p−p値が所定値以下になるようなパターン周期を選択することが好ましい。
【0049】
次に、図11に示す影響量曲線Qに基づいて適切な照明方法(パターン周期)と欠陥検出方法を選択するための指針について検討する。そのために、まず欠陥の見え方について、 次の3つに分類する。
【0050】
(A)第1に、影響量曲線の勾配とp−p値が共に小さな場合である。この場合は、欠陥の照明パターンに対する相対位置に関係なく、欠陥の影響領域と明暗パターンとは重なりを有している。従って、ラインセンサーにより撮影した画像には、パターンのぼけが検出される。この具体的な例を図12(a)に示す。欠陥モデルのパラメータは、σ=2000μm、A=100μmの凸欠陥であり、明暗パターンのピッチは2.0゜である。図12(a)の左上には、パターン曲線と影響領域曲線との関係を示している。左下は、影響量曲線の変化を示している。右側の画像は、シミュレーションにより生成した観測画像である。
【0051】
(B)第2に、影響量曲線の勾配が中程度の場合である。勾配が大きくなり、p−p値が大きくなるにつれて、パターンのぼけの具合が小さくなり、やがてパターンの歪のみが観測されるようになる。この具体的な例を図12(b)(c)に示す。図12(b)は、凸欠陥でありσ=5000μmであり、A=50μmである。明暗パターンのパターン周期は2.0゜である。図12(c)は、凸欠陥であり、σ=5000μm、A=20μmである。図12(b)のシミュレーション観測結果では、パターンの若干のぼけと歪の両方が観測されている。また、図12(c)では、ぼけはほとんど観測されず、パターンの歪のみが観測されている。
【0052】
(C)第3は、影響量曲線の勾配が大きい場合である。この場合、欠陥が明部及び暗部の中央(境界)に位置するときは、影響領域と明暗パターンの重なり面積は比較的小さい。そのためパターンのぼけはあまり観測されない。また、欠陥が暗部にあるときは、欠陥部が明るく見える。また、欠陥が明部にあるときは暗く観測される。このように、輝度が反転される様子が観測される。この具体的な例を図13(d)(e)に示す。図13(d)は、凸欠陥であり、σ=8000μm、A=50μmである。明暗パターンのパターン周期は6.0゜である。図13(e)は、凹欠陥であり、σ=500μm、A=−30μmである。パターン周期は6.0゜である。観測画像においてどの程度の輝度の反転が生じるかは、影響量曲線のp−p値によって決まる。図13(d)に示すように、p−p値が小さい方が輝度の反転の度合いが大きくなることが分かる。
【0053】
従来、繰り返し明暗パターンによる照明により撮影された画像に基づいて、表面欠陥を解析する方法としては、大別して次の3つの解析方法があった。すなわち、 (1)明暗の輝度の反転を利用する方法、(2)明暗パターンのパターン歪を利用する方法、(3)パターンのぼけを利用する方法(例えば、先にあげた特許文献1)がある。しかし、検査対象となる欠陥に対して適切な解析方法の選択については、明確な根拠が存在していない。そこで、本発明によるシミュレーション評価方法によれば、欠陥が前述の(A)(B)(C)のいずれの特徴を持って検出されるかを予め推測することにより、適切な解析方法を選択することが可能にある。したがって、解析方法の選択が容易になる。
【0054】
次に、照明パターンとフィルム面の相対角度関係について説明する。これまで説明してきたのは、照明パターンとフィルム面とが互いに平行に設定された状態でシミュレーションを行ってきた。すなわち、 図2においてθ=0と設定してシミュレーションを行ってきた。実際には、θが変化すると影響領域曲線も変化してくると考えられる。また、実際の現場においては、スペース等の関係でθ=0では機械器具を設置できないこともありうる。そこでθを変化させた場合に、重なりの面積Sがどのようになるかを演算したのが、図7の曲線である。図7において、横軸はθ(゜)である。縦軸は、面積(度数)である。このシミュレーション結果からも分かるように、θ=0の時が最も面積が大きくなる。したがって、明暗パターンはフィルム面にできるだけ平行に向かい合うように設定することが好ましい。なお、図7のシミュレーションにおいて用いた欠陥モデルは、σ=2000μm 、A=−20μmの凹欠陥であり、パターン周期は2゜のときの解析結果である。
【0055】
また、現場において、照明装置を実際に配置する場合には、フィルム面と明暗パターンとの距離L2(図2,3参照)を自由に選択できないことが多い。これは周囲のスペース等により制限を受けるからである。また、照明装置自身がラインセンサーによる撮影範囲を遮らないようにする必要もある。一方、シミュレーション演算を距離L2を変えながら行うとその分演算時間も多くなる。
【0056】
本シミュレーション方法によれば、適切なパターン周期を角度により得ることができる。パターン周期と距離L2とから、実際のパターン周期(長さで測った寸法)を求めることができる。したがって、距離L2をパラメータとしなくても最適な照明パターンのパターン周期を長さで求めることが可能である。したがって、シミュレーションも効率良く行うことができる。
【0057】
<別実施形態>
繰り返し明暗パターンについては、ストライプパターン、チェッカーパターンなど種々のパターン照明が考えられる。本発明は、特定の形態の明暗パターンに限定されるものではない。検査対象である被検体もフィルムに限定されるものではなく、フィルム以外のものについても適用できる。
【0058】
影響領域の計算(図6の分布を求める)において、これまでの実施例では、欠陥面で反射した光線が照明面へ向う方向とz”軸とのなす角度で表わしてきた。このとき、本シミュレーションではレンズの開口の大きさも考慮しているため、観測点(各CCD)からレンズの有効開口内へ向う光線を考えた場合、レンズの絞りの状態によっては無視できない拡がりを持つことになる。そこで、欠陥面から照明面へ向かう光線の拡がりを求める際に、z”とのなす角ではなく、フィルム面が平面の場合に同位置から照明面へ向う光線と、欠陥が存在する場合に同位置から照明面に向かう光線とのなす角を求めることにより、レンズの開口の影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面検査装置の構成を示す模式図
【図2】ラインセンサーの素子並び方向から見た光学系の配置構成図
【図3】ラインセンサーの素子面に垂直な方向から見た光学系の配置構成図
【図4】欠陥モデルを示す図
【図5】欠陥検出の原理を説明する図
【図6】影響領域曲線と照明パターンとを重ね合わせた状態を示す図
【図7】明暗パターンとフィルム面の相対角度と重なり度合いのとの関係を示す図
【図8】影響領域曲線とパターン曲線との重なりを示す図
【図9】パターン周期を種々変えた場合の重なり領域の大きさの変化を示す図
【図10】パターン周期を種々変えた場合の検出感度の大きさの変化を示す図
【図11】影響量曲線を示す図
【図12】シミュレーション観測結果の例を示す図(a)(b)(c)
【図13】シミュレーション観測結果の例を示す図(d)(e)
【符号の説明】
10 CCDラインセンサー
11 フィルム面
12 パターン照明
12a 明部
12b 暗部
13 結像レンズ
Claims (8)
- 所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、
被検体の表面に欠陥モデルを設定するステップと、
前記撮影手段の撮像位置から出射したと仮定した光線が、被検体の表面で反射し、前記明暗パターンのパターン面上に形成される光線分布形状を求めるステップと、
前記光線分布形状と前記明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、前記明暗パターンの最適なパターン周期を判定できるようにした表面検査のためのシミュレーション方法。 - 前記光線分布形状と前記パターン形状を重ね合わせるに際して、前記光線分布形状を明暗パターンのパターン形成方向に沿った相対位置関係を変えながら、前記重なり度合いを求めるステップを有することを特徴とする請求項1に記載の表面検査のためのシミュレーション方法。
- 前記相対位置関係を変えながら前記重なり度合いを求めた場合に、その重なり度合いの最大値と最小値の差を求めるステップを有することを特徴とする請求項2に記載の表面検査のためのシミュレーション方法。
- 前記パターン形状と前記光線分布形状は、照明軸に対する角度をパラメータとしており、最適なパターン周期を角度で取得できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面検査のためのシミュレーション方法。
- 所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明し、前記明暗パターンが照明された被検体を撮影手段により撮像し、この撮影手段により撮像された画像を解析することで被検体の表面欠陥を検出する表面検査を行うにあたり、最適な繰り返し明暗パターンを求めるためのシミュレーション方法であって、
被検体の表面に欠陥モデルを設定するステップと、
前記撮影手段の撮像位置から出射したと仮定した光線が、被検体の表面で反射し、前記明暗パターンのパターン面上に形成される光線分布形状を求めるステップと、
前記光線分布形状と前記明暗パターンのパターン形状とを重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、表面欠陥の検出可否を判定できるようにした表面検査のためのシミュレーション方法。 - 前記重ね合わせの重なり度合いに基づいて、表面欠陥の検出を行うための画像解析方法を決定するステップを有する請求項5に記載の表面検査のためのシミュレーション方法。
- 前記光線分布形状と前記パターン形状を重ね合わせるに際して、前記明暗パターンのパターン面の被検体表面に対する面角度関係を変えながら、前記重なり度合いを求めるステップを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面検査のためのシミュレーション方法。
- 所定の繰り返し明暗パターンを被検体に対して照明する照明手段と、
前記明暗パターンが照明された被検体を撮像する撮像手段と、
この撮影手段により撮像された画像を解析することにより、被検体の表面欠陥を検出する画像解析手段とを備えた表面検査装置であって、
前記明暗パターンのパターン面を被検体表面に対して平行、又は、ほぼ平行に配置してあることを特徴とする表面検査装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003194894A JP2005030848A (ja) | 2003-07-10 | 2003-07-10 | 表面検査のためのシミュレーション方法及び表面検査装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2005030848A true JP2005030848A (ja) | 2005-02-03 |
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ID=34205899
Family Applications (1)
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JP2003194894A Pending JP2005030848A (ja) | 2003-07-10 | 2003-07-10 | 表面検査のためのシミュレーション方法及び表面検査装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007114071A (ja) * | 2005-10-20 | 2007-05-10 | Omron Corp | 三次元形状計測装置、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び三次元形状計測方法 |
JP2011043504A (ja) * | 2009-08-20 | 2011-03-03 | Carl Zeiss Oim Gmbh | 対象物の表面を光学検査するための装置および方法 |
WO2018225406A1 (ja) * | 2017-06-08 | 2018-12-13 | コニカミノルタ株式会社 | 表面欠陥検査装置の配置決定方法、該装置、該プログラムおよび記録媒体 |
CN113196040A (zh) * | 2018-11-30 | 2021-07-30 | 杰富意钢铁株式会社 | 表面缺陷检测方法、表面缺陷检测装置、钢材的制造方法、钢材的品质管理方法、钢材的制造设备、表面缺陷判定模型的生成方法及表面缺陷判定模型 |
-
2003
- 2003-07-10 JP JP2003194894A patent/JP2005030848A/ja active Pending
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