JP2005029427A - 吸音モルタル、吸音層構造及びその形成方法 - Google Patents

吸音モルタル、吸音層構造及びその形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸音効果が優れ、形成された吸音層の強度があり、比較的軽量である吸音モルタル、吸音層構造及び吸音層の形成方法を提供する。
【解決手段】無機質及び有機質の結合材と嵩比重が0.8以下で、吸水量が15重量%以下である球形の軽量骨材と扁平な多孔質充填材とを主成分とするものである。この軽量骨材は、内部が多孔質である殻構造のものであることがこのましく、多孔質充填材は、貝殻に加熱加工をしたものであることがこのましいものである。
また、この吸音モルタルが道路などの車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に5〜50mmの範囲で積層されることが好ましく、この吸音モルタルを路面から高さ方向に1.0m以内に形成されることがより好ましいものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築構造物や土木構造物などの構造物の表面に対して、塗付して容易に吸音層を得ることができる吸音モルタル、吸音層構造及びその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、様々な多く吸音や遮音の方法が提案されている。各種騒音の低減を図るために大重量物の部材により音の透過の遮断する遮音材を用い、騒音対策とすることがある。又、防音性能がある板材を用いて防音壁を構築し、防音効果を容易に得る方法などがある。
【0003】
さらに、特開平11−199299号公報のような方法も提案されている。
【特許文献】特開平11−199299号公報
この公報には、板状の防音材では施工か困難な場所へ施工が容易な吸音材及び吸音材の施工方法が提案されている。
【0004】
この吸音材は、セメント,軽量骨材,水からなるもので吹付けにより施工されるものであり、この吸音材により、幅広い周波数帯域の音を効率よく防音することができ、板状の吸音材や遮音壁などでは、施工が困難な場所においても施工が可能なものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような軽量骨材を主体とする吸音材は、その軽量骨材の割合を多くしなければ十分な吸音効果を期待することが難しく、その割合を多くした場合、形成された吸音材層の結合成分の割合が相対的に少なく、吸音材層を軽量化することができるが、強度が低く、脆い場合がある。
【0006】
さらに、結合材にセメントを用いた場合では、軽量骨材の割合が多くなることで、加水量が多くなり、形成された吸音材層の強度がより低く、脆い傾向を示す場合がる。又、吸音材の混練時に積極的に泡を導入した場合でも、強度が期待することができない。
このように吸音材層の強度が低く、脆い場合では、外力によりカケ,ワレなどが生じ、吸音材層の剥落の原因となることがある。
【0007】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、吸音効果が優れ、形成された吸音層の強度があり、比較的軽量である吸音モルタル、吸音層構造及び吸音層の形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の吸音モルタルは、無機質及び有機質の結合材と嵩比重が0.8以下で、吸水量が15重量%以下である球形の軽量骨材と扁平な多孔質充填材とを主成分とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明の吸音モルタルは、請求項1に記載の発明において、内部が多孔質である殻構造の軽量骨材であるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明の吸音モルタルは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記多孔質充填材が貝殻に加熱加工をしたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明の吸音層構造は、前記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタルが道路などの車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に5〜50mmの範囲で積層されているものである。
【0012】
請求項5に記載の発明の吸音層構造は、請求項4に記載の発明において、吸音層を形成する面が路面から高さ方向に1.0m以内に形成されるものである。
【0013】
請求項6に記載の発明の吸音層構造の形成方法は、前記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタルを道路などの車両通行路に面したコンクリート表面に凹凸形状に吹付けることである。
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を詳細に説明する。
この発明は、無機質及び有機質の結合材と嵩比重が0.8以下で、吸水量が15重量%以下である球形の軽量骨材と扁平な多孔質充填材とを主成分とするものである。
【0014】
まず、この結合材は、後述する軽量骨材や多孔質充填材などの粒子を結合させ吸音層を形成するものである。又、この吸音層を形成する車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に付着させるためのものでもある。
この結合材には、無機質,有機質のものがあり、その両者を用いることにより、形成された吸音層の強度を向上させ、外力によりカケ,ワレなどが生じ難い強靭な吸音層を形成することができるものである。又、吸音層を形成させる対象物への付着性が良好なものである。
【0015】
無機質の結合材には、粉末状のものや液体状のものがある。粉末状の無機質結合材には、セメントなどを代表とする水硬性結合材、ドロマイトプラスターなどを代表とする気硬性結合材がある。液体状の無機質結合材には、分散媒に水を用いたコロイダルシリカ、アルミナゾルやリチウムシリケートなどがある。
これらの無機質の結合材を1種のみを用いても2種以上の複数種のものを用いることも可能である。又、これらのうち、強度が高い吸音層を得られることや入手が容易なことからセメントが好ましく用いられる。このセメントは、水と反応して水和反応を起こし、硬化を始め、表面エネルギーによる引き合う力により強度が上がり、更に水素結合力による引き合う力も加わり、一層強い強度が得られるものである。
【0016】
このセメントには、単味セメント、混合セメント及び特殊セメントに大きく分けられる。この単味セメントには、ポルトランドセメント,水硬性石灰,ローマンセメント,天然セメント,アルミナセメント及び超速硬セメントがあり、その中のポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,超早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメント,耐硫酸塩ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメントなどがある。
また、混合セメントには、高炉セメント,シリカセメント,ポゾランセメント,フライアッシュセメント,膨張性セメント,メーソンリーセメント及び左官用セメントなどがあり、特殊セメントには、耐酸セメント,歯科用セメント,セメント系固化材,コロイドセメント,油井セメント,地熱セメントなどがある。
【0017】
つぎに、有機質の結合材には、主に合成樹脂が挙げられる。この合成樹脂は、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,飽和カルボン酸のビニルエステル,アクリル酸アルキルエステルなどのアクリル系モノマー,エチレン性不飽和カルボン酸,エチレン,塩化ビニル,スチレン,ダイアセトンアクリルアミドなどから適宜選択されたモノマー混合物を共重合したものなどがある。
【0018】
また、この合成樹脂の形態には、上記合成樹脂を有機溶媒や水に溶解させたもの、エマルションとして水などの分散媒に分散させたものなどのように液状化したものやこの合成樹脂エマルションを噴霧乾燥した粉末型合成樹脂エマルションのような粉末状のものなどがある。
これらの有機質の結合材で、上記無機質の結合材との混合性が良好な、液状又は粉末の合成樹脂エマルションが好ましく用いられる。これらは、分散媒に水を用いるものであったり、水により再乳化するものであることから、この吸音材モルタルを得る場合には、水と混練してスラリー状にすることで、車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に塗付して積層することができる。
【0019】
この吸音モルタルを構成する主成分の1つである軽量骨材は、球形であり、その嵩比重が0.8以下で、吸水量が15重量%以下であるものを用いる。
軽量骨材の形状が球形であることにより、この軽量骨材を含有したスラリー状の吸音モルタルの流動性が向上し、特に吹付けによる塗付作業を容易に行うことができる。又、この流動性も骨材形状が角張ったものと比較して、少ない加水量により得ることができる。
【0020】
また、軽量骨材の吸水量が15重量%以下であることにより、スラリー状の吸音モルタルへの加水量を少なくすることができ、吸音層を緻密に形成することができ、強度が高いものを得ることができる。又、無機質系結合材にセメントを用いた場合には、水セメント比を比較的小さくすることができ、強度の高い吸音層を得ることができる。
この軽量骨材の吸水量は、JIS−A1134に準じて測定することができ、この吸水量が少ないほど好ましいものではあるが、全く吸水しないものであった場合、軽量骨材と結合材との密着性が悪い場合があり、好ましくは、この吸水量が1.0〜9.0重量%の範囲であり、この範囲内であれば、軽量骨材と結合材との密着性が良く、加水量を少なくすることができる。
【0021】
さらに、軽量骨材の嵩比重が0.8以下であることにより、形成される吸音層を軽量化することができる。この吸音層を軽量化することにより、道路などの車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に積層することができ、この積層箇所が既存構造物であっても、それら構造物に負荷を掛けることが少なく、剥落が少ない吸音層を形成することができる。
この軽量骨材の嵩比重は、低いほど良いが、低すぎる場合では、軽量骨材中にある空隙が占める体積が大きく、骨材自体の強度が低いものが多い。この嵩比重が0.2〜0.6の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、軽量骨材自体の強度があるので、吸音層の強度を高くすることや十分に軽量化することができる。
【0022】
また、この吸音層が軽量なことから、その層の厚みを厚くすることもできるが、好ましくは、その吸音モルタル層が5〜50mmの範囲とするのが良い。この範囲内であれば、十分な吸音効果を得ることができる比較的軽量な吸音層となる。又、この範囲内であることから、既存構造物への吸音層の積層する場合、その層を厚くなりすぎることがなく、吸音効果を付与することができる。
上記のように、この軽量骨材は、スラリー状の吸音モルタルの流動性の向上とそれにより形成される吸音層の軽量化を発現させるものである。
【0023】
この軽量化骨材は、内部が多孔質である殻構造のものであることが好ましい。このような構造形態をとることで、軽量骨材自体の強度が高くなり、吸音層の強度を向上させることができる。又、軽量骨材表面が内部と比べ、緻密なものであることから軽量骨材への吸水量が少ないものでもある。更に、後述する多孔質充填材と共に含有することにより、より一層吸音効果の優れた吸音モルタルを得ることができる。
この軽量骨材自体の強度は、点荷重強度が0.5〜7.0kgfの範囲のものが用いられ、この範囲内であれば、吸音層の十分な強度が得ることができる。
【0024】
このような軽量骨材には、膨張けつ岩などの鉱物やガラスの粉砕物を原料とし、その原料を造粒し、1000℃程度で焼成したものがある。これらの軽量骨材は、その焼成工程で、原材料中の気化物質がなくなり、原料の内部が多孔質となり、原料の表面は、原料が溶け比較的緻密な殻を形成し、内部が多孔質である殻構造の軽量骨材を得ることができる。
【0025】
この軽量骨材の含有量は、吸音モルタル全量を100重量部とした場合、15〜40重量部の範囲が好ましい。15重量部より少ない場合では、スラリー状の吸音モルタルの流動性の向上が少なく、得られる吸音層が軽量でないものとなる。又、40重量部より多い場合では、吸音モルタル中の結合材が少なく吸音層の強度が低くなることがある。
この軽量骨材の粒子径は、0.1〜3.0mmの範囲のものが好ましく用いられる。この範囲内であればスラリー状の吸音モルタルでの流動性に優れ、十分な強度の吸音層を得ることができる。
【0026】
もう1つの主成分である多孔質充填材は、扁平な形状であるものを用いる。この多孔質充填材は、前記軽量骨材と組合わせることにより、その充填材に多くある孔とあいまって、音を吸収させるものである。
この充填材の形状が扁平であることにより、その1個の充填材に存在する孔の長さや大きさが球状の充填材に比較して、その種類や数を多くすることができることから、幅広い音域の音を吸音することができる。又、球状に比べ、扁平な形状であれば同じ体積であっても、その表面積は、扁平な形状のものの方が大きくなり、更に、扁平な形状であることで、その縦,横,高さの長さが異なることで、音を減衰させる効果が生じるものと推定される。
【0027】
このような多孔質充填材としては、多孔質である貝殻を粉砕して、それに加熱加工をしたものを好ましく用いられる。この貝殻を粉砕した場合、その貝殻は、不規則な鱗片状の形状に割れることから容易に扁平な形状の多孔質充填材を得ることができる。その多孔質充填材に加熱加工を施すことにより、貝殻に付着している付着物を簡単に取除くことができる。
この場合の加熱加工は、50℃以上で加熱されることであり、加熱方法としては、熱風による加熱や温水による加熱などが行われ、温水による加熱加工が好ましく行われる。この温水による加熱加工を行う場合、貝殻を粉砕して得られた多孔質に付着している付着物を洗い流すことができ容易に取除くことができる。又貝殻から発生する臭いなども取除くことができる。
【0028】
さらに、上記加熱加工を150〜500℃の範囲内で焼成することがより好ましいものである。粉砕した貝殻を焼成することにより、貝殻に付いている不純物を焼失させることができ、より多孔質の度合いを上げることができる。又、焼成する過程で、粉砕した貝殻の角張った部分が取れ、比較的丸まった多孔質充填材を得ることができる。
この焼成の温度範囲より低い場合では、十分に不純物を焼失させることが難しいことがあり、この温度範囲より高い場合では、この多孔質充填材が脆くなり、吸音層の十分な強度を得ることができ無い場合がある。この範囲で焼成することにより、多孔質の度合いを向上させ、より吸音効果の良いものとなり、多孔質骨材の強度を低下させにくく、吸音層の強度を低下させることが少ないものとなる。
【0029】
この扁平な形状の多孔質充填材の大きさ、厚さ0.1〜2.0mm、最長径部の幅が1.0〜5.0mmの範囲であり、粒子扁平率(最長径部/厚さ)が0.02〜2.5の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、吸音モルタルの流動性を阻害することなく、吸音層を容易に形成することができる。又、吸音効果や吸音層の強度が十分なものである。
【0030】
この発明は、上記のような結合材と軽量骨材と多孔質充填材とを主成分とするものであり、多孔質充填材の他に軽量骨材のうち内部が多孔質である殻構造のものを用いることで、より吸音効果の優れた吸音モルタルを得ることができる。又、その他の成分として顔料,染料などの着色剤や添加剤などを添加することもできる。
この添加剤には、スラリー状とした吸音モルタルの作業性をコントロールする増粘剤などの粘性調整剤、泡をコントロールする消泡剤などや水との混練性を向上させるための分散剤、湿潤剤などがあり、塗膜の割れを防止するための繊維、ベントナイトは、好ましく用いられる。
また、無機質結合材にセメントを用いた場合には、混練する水の量を少なくする減水剤やAE剤、硬化を速くするための硬化促進剤、逆に遅くするための遅延剤などがある。
上記のような成分によりこの発明の吸音モルタルは、構成され、その形態としては、この吸音モルタルを構成する成分の全てが粉末状である場合では、その成分を1つにまとめ粉体状の吸音モルタルとすることができ、使用前に水と混練して、スラリー状の吸音モルタルとして用いられる。
【0031】
また、吸音モルタルを構成する成分のうち1つでも液状のものがある場合では、粉体成分と液状成分の2材型とし、その使用前に粉体成分と液状成分及び必要に応じて水を加え混練し、スラリー状の吸音モルタルとして用いられる。
このようにして得られたスラリー状の吸音モルタルは、吸音効果が必要な部位に塗布し、吸音モルタル層が形成される。この吸音モルタルの塗布方法としては、スプレーガンによる吹付塗装,塗装用ローラーによるローラー塗装,左官用の鏝を用いた鏝塗塗装などの一般的な塗装方法により行うことができる。この塗装方法のうち塗装された吸音モルタル層が凹凸形状に塗装することが好ましい。凹凸形状に塗装し、表面が凹凸形状な吸音層を形成することにより、その吸音モルタル層の表面積が大きくなり、吸音効果に優れたものとなる。
【0032】
このように吸音モルタルを容易に凹凸形状に塗装する方法として、スプレーガンによる吹き付け塗装が好ましく行われる。又、スラリー状の吸音モルタルは、上記球形の軽量骨材を含有されていることから流動性が優れたものであるため、その吹付け作業性に優れ、効率よく吹付け塗装を行うことができる。
この吸音モルタルを適用する吸音効果が必要な部分としては、車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面などが挙げられ、その部分にこの吸音モルタルを積層することが好ましく行われる。
【0033】
この車両通行路は、道路,軌道などのことであり、これらに面したところは、その車両通行路を通行する車両からの騒音などが発生し、その騒音を車両通行路内で吸音し、外部に広がる音を減少させるためにこの吸音モルタルを積層するものである。
この車両通行路に面したところでは、そこを通行する車両からの震動や車両からの落下物など衝撃が発生することがある。又、外気に曝されている部分が多いため、雨や雪など気象条件により吸音層を傷めることが多くある。そのため吸音層の強度が十分にあることが必要であり、強度が十分であることにより、震動,衝撃などの外力に十分耐え、それらにより発生する吸音層のカケ,ワレなどが少なくなり、その吸音材層の剥落を少なくすることができるものである。
【0034】
また、有機質の結合材を主成分の1つとしていることから、ある程度の柔軟性を備えた吸音層を形成するものであることから、震動などを吸収し、更に下地の動きに追従し、吸音層のワレが少ないものである。
この車両通行路に面したところのなかでも、その吸音層を積層する部分がコンクリート又は鉄部を下地として、その表面に積層することが望ましく、コンクリート又は鉄部は、新設もののであっても既存のものであっても良い。この吸音層は、比較的薄くすることができ、軽量であることから、既存のコンクリート又は鉄部に掛かる負荷を少なく、積層することができるものである。
【0035】
この吸音モルタルは、無機質の結合材を主成分の1つとしていることからコンクリート,鉄部などの表面への付着性に優れているものである。
この吸音層を形成する車両通行路に面したところでも、この吸音層を形成する部分としては、吸音層に衝撃が掛かることが多い車両の高さ程度である路面から高さ方向に5.0m以内にこの強度のある吸音層を形成されることが望ましいものであるが、騒音の発生源の1つである車両のタイヤなどの車輪に近い部分で、路面から高さ方向に1.0m以内にこの吸音層を形成されることがより望ましい。
【0036】
以上のように、この実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 無機質及び有機質の結合材と嵩比重が0.8以下で、吸水量が15重量%以下である球形の軽量骨材と扁平な多孔質充填材とを主成分とするものであることにより、吸音効果が優れ、形成された吸音層の強度があり、比較的軽量であるものを得ることができる。
【0037】
・ 内部が多孔質である殻構造の軽量骨材であることにより、軽量骨材自体の強度が高くなり、吸音層の強度を向上させることができる。又、軽量骨材表面が内部と比べ、緻密なものであることから軽量骨材への吸水量が少ないものでもある。又、多孔質充填材と共に含有することにより、より一層吸音効果の優れた吸音モルタルを得ることができる。
・ 前記多孔質充填材が貝殻に加熱加工をしたものであることにより、不規則な鱗片状の形状に割れることから容易に扁平な形状の多孔質充填材を得ることができ、その貝殻に付着している付着物を簡単に取除くことができる。
【0038】
・ 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタルが道路などの車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に5〜50mmの範囲で積層されているものであることにより、十分な吸音効果を得ることができる比較的軽量な吸音層となる。又、既存構造物への吸音層の積層する場合、その層を厚くなりすぎることがなく、吸音効果を付与することができる。
・ 吸音層を形成する面が路面から高さ方向に5.0m以内に形成されるものであり、より望ましくは、1.0m以内であることにより、吸音層に衝撃が掛かることが多い車両の高さ程度であり、更に騒音の発生源の近くであることで、この発明の効果を十分に発揮することができるものである。
【0039】
・ 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタルを道路などの車両通行路に面したコンクリート表面に凹凸形状に吹付けることであることにより、凹凸形状に塗装し、表面が凹凸形状な吸音層を形成することにより、その吸音モルタル層の表面積が大きくなり、吸音効果に優れたものとなる。又、スラリー状の吸音モルタルは、上記球形の軽量骨材を含有されていることから流動性が優れたものであるため、その吹付け作業性に優れ、効率よく吹付け塗装を行うことができる。
【0040】
・ 無機質の結合材がセメントであることにより、強度が高い吸音層を得られることや入手が容易なものである。
・ 有機質の結合材が液状又は粉末の合成樹脂エマルションであることにより、無機質の結合材との混合性が良好なものである。
・ 軽量骨材の強度が点荷重強度で、0.5〜7.0kgfの範囲のものであることにより、吸音層の十分な強度が得ることができる。
【0041】
・ 軽量骨材の含有量が吸音モルタル全量を100重量部とした場合、15〜40重量部の範囲であることにより、スラリー状の吸音モルタルの流動性を向上させることができ、得られる吸音層が軽量でないものとなる。又、吸音モルタル中の結合材が少なくなることがなく、吸音層の強度が高いものである。
・ 軽量骨材の粒子径が0.1〜3.0mmの範囲のものであることにより、スラリー状の吸音モルタルでの流動性に優れ、十分な強度の吸音層を得ることができる。
【0042】
・ 加熱加工を150〜500℃の範囲内で焼成することにより、貝殻に付いている不純物を焼失させることができ、より多孔質の度合いを上げることができ、より吸音効果の良いものとなり、多孔質骨材の強度を低下させにくく、吸音層の強度を低下させることが少ないものとなる。又、焼成することで、粉砕した貝殻の角張った部分が取れ、比較的丸まった多孔質充填材を得ることができる。
・ 扁平な形状の多孔質充填材の大きさが、厚さ0.1〜2.0mm、最長径部の幅が1.0〜5.0mmの範囲であり、粒子扁平率(最長径部/厚さ)が0.02〜2.5の範囲であることにより、スラリー状の吸音モルタルの流動性を阻害することなく、吸音層を容易に形成することができる。又、吸音効果や吸音層の強度が十分なものである。
【0043】
【実施例】
さらに、この発明を実施例に基づいて、より詳細に説明する。
この実施例に用いられた軽量骨材は、ガラスの粉砕物を原料とし、1000℃程度で焼成した内部が多孔質で、表面が比較的緻密な殻を形成した球形のものを用いた。
【0044】
この軽量骨材は、嵩比重が0.4で、吸水量がJIS−A1134に準じて測定した値が9重量%以下であり、その軽量骨材の点荷重強度が4.0kgfであった。又、その粒子径は、1.2〜0.1mm程度のものを用いた
扁平な多孔質充填材としては、貝殻を500℃で焼成したものを用いた。この多孔質充填材の最長径部の幅が3〜4mm程度で、厚さが0.5〜1.0mm程度のものを用いた。
【0045】
実施例1の吸音モルタルの配合として、無機系の結合材が普通ポルトランドセメントを用いその配合割合を29.0重量部とし、上記軽量骨材を24.0重量部、多孔質充填材を44.0重量部、更に添加剤を0.1重量部混合した粉体成分に対して、有機系の結合材が液状の合成樹脂エマルションを固形分で、2.9重量部を混練し、更に水を加え、スラリー状の吸音モルタルを得た。このスラリー状の吸音モルタルは、固形分換算の合計で100.0重量部である。
【0046】
実施例2の吸音モルタルの配合として、無機系の結合材が普通ポルトランドセメントを用い、その配合割合を24.0重量部とし、有機系の結合材が粉末の合成樹脂エマルションを用い、その配合割合を7.9重量部とし、軽量骨材を19.0重量部、多孔質充填材を49.0重量部、更に添加剤を0.1重量部混合したものに対して、水を加え、スラリー状の吸音モルタルを得た。このスラリー状の吸音モルタルは、固形分換算で100.0重量部である。
【0047】
実施例3の吸音モルタルの配合として、無機系の結合材が早強ポルトランドセメントを用い、その配合割合を34.0重量部とし、軽量骨材を29.0重量部、多孔質充填材を30.0重量部、更に添加剤を0.1重量部混合した粉体成分に対して、有機系の結合材が液状の合成樹脂エマルションを固形分で、6.9重量部を混練し、更に水を加え、スラリー状の吸音モルタルを得た。このスラリー状の吸音モルタルは、固形分換算の合計で100.0重量部である。
【0048】
つぎに、比較例1として、無機系の結合材が普通ポルトランドセメントを用いその配合割合を29.0重量部とし、軽量骨材を68.0重量部、添加剤を0.1重量部混合した粉体成分に対して、有機系の結合材が液状の合成樹脂エマルションを固形分で、2.9重量部を混練し、更に水を加え、スラリー状のモルタルを比較例1とした。
【0049】
比較例2として、無機系の結合材が普通ポルトランドセメントを用いその配合割合を29.0重量部とし、多孔質充填材を68.0重量部、添加剤を0.1重量部混合した粉体成分に対して、有機系の結合材が液状の合成樹脂エマルションを固形分で、2.9重量部を混練し、更に水を加え、スラリー状のモルタルを比較例2とした。
【0050】
比較例3として、無機系の結合材の普通ポルトランドセメントを31.9重量部、軽量骨材を19.0重量部、多孔質充填材を49.0重量部、添加剤を0.1重量部混合したものに対して、水を加え、スラリー状の吸音モルタルを得た。
比較例4として、有機系の結合材の粉末合成樹脂エマルションを31.9重量部、軽量骨材を19.0重量部、多孔質充填材を49.0重量部、添加剤を0.1重量部混合したものに対して、水を加え、スラリー状の吸音モルタルを得た。
さらに、上記実施例1の配合で使用されている軽量骨材を球状のパーライトに変更したものを比較例5とした。
【0051】
この実施例及び比較例の吸音測定の結果を表1及び表2に示す
【表1】
Figure 2005029427
【表2】
Figure 2005029427
上記測定結果より実施例1〜3の吸音モルタルと比較例1〜5の吸音効果について比較する。吸音特性の測定方法は、それぞれの吸音モルタルをスラリー状とした後、厚みが40mmになるように成形し、硬化した吸音モルタルを試験体とした。この試験体を用いて、JIS−A1405定在波法に準じて吸音特性を測定した。
この結果は、実施例1〜3の吸音モルタルでは、周波数帯が500〜1000Hzの音に対しての吸音率が0.45〜0.90であった。
【0052】
一方比較例1のモルタルは、多孔質充填材を含有していないことから、この周波数帯の吸音率が0.35〜0.45となり、実施例1〜3の吸音モルタルより吸音効果が劣るものであった。同様に、比較例2のモルタルは、実施例1〜3の吸音モルタルと比較して、多孔質充填材を含んではいるが、吸音率が0.40〜0.60程度と多少劣るものであった。又、比較例3,4のモルタルでは、実施例1〜3の吸音モルタルと同程度であった。更に、比較例5のモルタルは、実施例1〜3の吸音モルタルと比較して、吸音率が若干劣る0.35〜0.60であった。これは、多孔質充填材の構造及び形状が異なるものを用いたことによるものである。
【0053】
つぎに、この実施例1〜3の吸音モルタルと比較例1〜5のモルタルの作業性について比較する。
実施例1〜3のスラリー状の吸音モルタル及び比較例1,3,4は、流動性が良好で、スプレーガンを用いた吹付けが容易に行うことができた。一方比較例2,5は、それと比較して流動性が劣り、特に比較例5のものでは、多孔質充填材の吸水が激しく、経時的に流動性の変化が大きいものであった。
【0054】
また、吸音モルタルの表面強度及び耐久性について比較した場合、実施例1〜3及び比較例1,2のものは、その表面強度及び耐久性が良好であった。比較例3のものの表面強度は、実施例1〜3のものと比べ良いものであったが、長期の耐久性が劣り、ひび割れの発生が見られた。これは、有機系結合材が配合されないため、硬化したモルタルが硬いことからである。
【0055】
比較例4のものは、長期的なひび割れは見られなく、比較的に耐久性の良いものではあるが、無機系結合材が配合されていないことから表面強度の弱いものである。
比較例5のものは、吸水率が大きく、充填材の強度が劣るパーライトを用いていることで、加水量が多くなり、表面強度及び耐久性が劣るものである。
【0056】
この実施例及び比較例から実施例1〜3の吸音モルタルは、吸音効果が優れ、特に周波数帯が500〜1000Hzの音に対しての吸音率に優れ、作業性が良好な、更に形成された吸音層の強度及び長期的な耐久性に優れたものであることがわかる。
【0057】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 吸音モルタル全量を100重量部とした場合、軽量骨材が19〜29重量部の範囲であり、多孔質充填材が30〜49重量部の範囲であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタル。
このことにより、吸音効果が優れ、特に周波数帯が500〜1000Hzの音に対しての吸音率に優れ、作業性が良好な、更に形成された吸音層の強度及び長期的な耐久性に優れたものである
【0058】
・ 多孔質充填材が貝殻であり、その貝殻を150〜500℃の範囲内で焼成したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタル。
このことにより、より多孔質の度合いを上げることができ、より吸音効果の良いものとなり、多孔質骨材の強度を低下させにくく、吸音層の強度を低下させることが少ないものとなる。又、焼成することで、粉砕した貝殻の角張った部分が取れ、比較的丸まった多孔質充填材を得ることができる。
【0059】
・ 軽量骨材の強度が点荷重強度で、0.5〜7.0kgfの範囲のものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタル。
このことにより、吸音層の十分な強度が得ることができる。
【0060】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の吸音モルタルによれば、吸音効果が優れ、形成された吸音層の強度があり、比較的軽量であるものを得ることができる。
【0061】
請求項2に記載の発明の吸音モルタルによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、軽量骨材自体の強度が高くなり、吸音層の強度を向上させることができる。又、軽量骨材表面が内部と比べ、緻密なものであることから軽量骨材への吸水量が少ないものでもある。又、多孔質充填材と共に含有することにより、より一層吸音効果の優れた吸音モルタルを得ることができる。
【0062】
請求項3に記載の発明の吸音モルタルによれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、不規則な鱗片状の形状に割れることから容易に扁平な形状の多孔質充填材を得ることができ、その貝殻に付着している付着物を簡単に取除くことができる。
【0063】
請求項4に記載の発明の吸音層構造によれば、十分な吸音効果を得ることができる比較的軽量な吸音層となる。又、既存構造物への吸音層の積層する場合、その層を厚くなりすぎることがなく、吸音効果を付与することができる。
【0064】
請求項5に記載の発明の吸音層構造によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、吸音層に衝撃が掛かることが多い車両の高さ程度であり、更に騒音の発生源の近くであることで、この発明の効果を十分に発揮することができるものである。
【0065】
請求項6に記載の発明の吸音層構造の形成方法によれば、凹凸形状に塗装し、表面が凹凸形状な吸音層を形成することにより、その吸音モルタル層の表面積が大きくなり、吸音効果に優れたものとなる。又、スラリー状の吸音モルタルは、上記球形の軽量骨材を含有されていることから流動性が優れたものであるため、その吹付け作業性に優れ、効率よく吹付け塗装を行うことができる。

Claims (6)

  1. 無機質及び有機質の結合材と
    嵩比重が0.8以下で、吸水量が15重量%以下である球形の軽量骨材と
    扁平な多孔質充填材とを主成分とすることを特徴とする吸音モルタル。
  2. 内部が多孔質である殻構造の軽量骨材であることを特徴とする請求項1に記載の吸音モルタル。
  3. 前記多孔質充填材が貝殻に加熱加工をしたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸音モルタル。
  4. 前記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタルが道路などの車両通行路に面したコンクリート又は鉄部の表面に5〜50mmの範囲で積層されていることを特徴とする吸音層構造。
  5. 吸音層を形成する面が路面から高さ方向に1.0m以内に形成されることを特徴とする請求項4に記載の吸音層構造。
  6. 前記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音モルタルを道路などの車両通行路に面したコンクリート表面に凹凸形状に吹付けることを特徴とする吸音層構造の形成方法。
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