JP2005028407A - 圧延材形状制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の圧延スタンドが連設されている圧延機の任意スタンドiについて、ベンダ10を操作してスタンド出側の板形状を荷重連動制御する際、制御開始時における板クラウン比率変化を目標値に設定し、制御開始後の板クラウン偏差を、ベンダ圧指令演算装置12において、圧延実績(ゲージメータ板厚、圧延荷重、ベンダ圧、クロス角)から計算したスタンド出側の実績板クラウンを用いて算出し、算出された板クラウン偏差をベンダ圧により補償して、板クラウン比率の変化を一定に保持する。
【選択図】 図1
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、圧延材形状制御方法、特に熱間圧延工場の仕上圧延機による圧延に適用して好適な圧延材形状制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の圧延スタンドが連設されている圧延機、即ちタンデム圧延機においては、圧延材の長手方向について幅方向中央部分が伸びる腹伸びと呼ばれる板形状変化が生じている場合、特に熱間圧延の場合板幅中央部に生じた窪みにロール冷却水が溜まったまま、該圧延材が次スタンドに噛み込まれると水蒸気爆発を起こし、その結果、板の中央部分に穴があいてしまうことがある。又、幅方向の板端部分が伸びる耳伸びと呼ばれる板形状変化が生じる場合は、圧延材が蛇行してガイドと干渉することが起こり、その程度が酷い場合には、ロール損傷が発生したり、スタンド間で板破断が発生したりする。
【0003】
圧延材に生じる蛇行や絞りについては、オペレータ(OP)側とドライブ(DR)側にそれぞれ設置されている油圧シリンダの油柱差を調整するレべリングにより抑制するのが通常の操業であるが、板形状が特に悪い場合は、レベリングによる調整代が少なくなり、通板が難しくなってしまう。
【0004】
従来、上記のような形状不良に起因する絞りや破断、穴あきの防止対策としては、対象とする圧延スタンドの前に形状検出器を設置し、その検出値に基づいて前段スタンドに付設されているベンダをフィードバック制御して圧延材の板形状を整えてから、該圧延材を次の当該圧延スタンドに投入する方法が一般に行なわれている。
【0005】
又、仕上圧延機の入側に板プロフィール測定装置を設置し、仕上圧延機の出側における板形状を予測計算して、レベリング、ベンダ、ロールシフトを用いて板形状をフィードフォワード制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
又、スタンド間に設置されているプロフィールメータにより測定した板プロフィールに基づいて形状フィードバック・フィードフォワード制御を実施する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
又、圧延荷重から板クラウンへの影響係数や、ベンダから板クラウンへの影響係数を算出し、荷重変動による板クラウン変動を抑制する、影響係数法と呼ばれるベンダ制御も一般的に行なわれている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭62−68619号公報
【特許文献2】
特開平6−114422号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般的に行なわれている前記のようなベンダによる板クラウン変動の抑制制御は、板厚偏差が発生した場合には、狙った形状を達成できないという問題があった。
【0010】
又、実際の圧延では、圧延状態は時々刻々変化しているので、圧延材をスタンド間移送するのに要する時間分は、形状の伝達に遅れが生じることになり、このような場合には前記特許文献1に開示されているような、仕上圧延機入側に板プロフィール測定装置を設置してフィードフォワード制御する方法では、各スタンドにおいて時々刻々変化する状態を捉え切れないため、適用には問題が残る。
【0011】
又、前記特許文献2に開示されている手法には、スタンド間にプロフィールメータを設置する必要があり、なお且つ正確に形状を測定する必要があるため、設備投資・環境対策への負担が大きくなってしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、板厚偏差が発生した場合でも、圧延材の板形状変化を容易且つ確実に抑制することができる圧延材形状制御方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の圧延スタンドが連設されている圧延機において、任意の圧延スタンド出側の板形状を荷重連動制御する際に、板クラウン比率の変化を一定となるようにベンダ圧調整値を決定することにより、前記課題を解決したものである。
【0014】
その際、前記ベンダ圧調整値を、次式
(i,i−1:スタンド番号、ΔFWBi:ベンダ圧調整値、gFi:調整ゲイン、∂Cmi/∂Pi:圧延荷重からメカニカルクラウンへの影響計数、∂Cmi/∂FWBi:ベンダ圧からメカニカルクラウンへの影響計数、ΔPi:圧延荷重の変化、ΔFb:ベンダ圧補償成分、α:転写率、∂Cm/∂Fb:ベンダ圧からメカニカルクラウンへの影響係数、D:制御始時の板クラウン比率変化、Δh:板厚変化、Cr:出側板クラウン、h:出側板厚、LCK:制御開始時の値を表す添字)により設定することができる。
【0015】
又、本発明は、前記ベンダ圧調整値を、圧延実績から計算した板クラウンを用いて算出するようにしてもよい。
【0016】
その際、圧延実績から計算した板クラウンを、次式
【0017】
【数2】
(i−1,i−2:スタンド番号、P:圧延荷重、θ:ロールクロス角、∂Cm/∂P:圧延荷重からメカニカルクラウンへの影響係数、∂Cm/∂θ:ロールクロス角からメカニカルクラウンへの影響係数、SET:設定値を表わす添字、L:制御開始時を表す添字、二重下線:制御開始時からの偏差を表すシンボル)により設定することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る実施の形態を具体的に説明する前に、本発明の技術的な背景について説明する。
【0020】
圧延材の平坦度不良(板形状不良)は、圧延による長手方向(圧延方向)伸びの板幅内での不均一分布によって生じる。板形状の表記方法として、急峻度λが用いられる。この急峻度λは、図3に概念図を示すように、波高さδを、ピッチ(板中央長さ)lで割ったもので、次式
λ=δ/l …(1)
により表わされる。
【0021】
この平坦度不良には、耳伸びと腹伸びと呼ばれるものがある。耳伸びは、板幅方向の端部の波打ちで、急峻度λは正の数値を、腹伸びは、板幅方向中心(中央)の波打ちで、急峻度λは負の数値をとる。因みに、図3はエッジ部分が波打っている耳伸びの場合(Δl>0)の例である。
【0022】
次に、圧延材の歪みを表わす、伸び差率を定義する。この伸び差率をΔεとすると、これは板幅中央の長さ(l)と板端の長さ(l+Δl)の差を、一定長さ(区間:l)で割ったもので、次式
Δε=Δl/l …(2)
により表わされる。
【0023】
又、この伸び差率Δεは、圧延材の耳伸びや腹伸びの伸びを正弦波で近似すると、
により表わされる。
【0024】
一方、圧延材の板クラウン比率を図4のとおり定義する。但し、便宜上、圧延スタンドにおける圧延方向を太い矢印で示すと共に、該スタンドの左右に、圧延前と後の板を、圧延方向を紙面に垂直な方向に一致させた断面でそれぞれ示してある。即ち、この図4には、1つの圧延スタンドの入側における圧延材の長手方向に垂直な断面形状を模式的に示すように、板幅方向の中央の板厚をhc、板端の板厚をheとすると、入側(添字1)の板クラウンCr1、出側(添字2)の板クラウンCr2は、それぞれ
Cr1=hc1−he1 (4A)
Cr2=hc2−he2 (4B)
により表わされると共に、各板クラウン比率γ1、γ2は、それぞれ
γ1=(hc1−he1)/hc1 …(5A)
γ2=(hc2−he2)/hc2 …(5B)
により表わされる。
【0025】
従って、伸び差率は
Δε=(γ2−γ1)/(1−γ2)≒γ2−γ1=Δγ …(6)
と表わすことができるので、
上記(3)式と(6)式の二式より
λ=±(2/π)√|Δγ| …(7)
となり、板形状を表す急峻度の大きさは、板クラウン比率の変動(変化)に比例することが分かる。
【0026】
よって、(4A)、(4B)式による板クラウン計算、(5A)、(5B)式による板クラウン比率計算、(6)式による伸び差率計算、(7)式による急峻度計算の順に実施することにより、板形状(変化)の計算が可能となる。
【0027】
ここまでの説明では、「材料は幅方向に逃げず、板厚方向の歪みは全て長手方向の歪みとして表われる」としている。但し、実際の圧延中には、幅方向へのメタルフローも存在するため、板クラウン比率の変化Δγが、(7)式によって急峻度λへ100%影響するわけではない。又、張力が存在する圧延定常部においては、後述する張力フィードバックの考え方から、同様に、急峻度への影響は小さくなる。
【0028】
そこで、従来より、急峻度に対する影響の出方を「形状変化係数」として考慮することが行なわれている。
【0029】
まずは、圧延材の幅方向へのメタルフローである、ラテラルフローを考える。実際、任意スタンドによる圧延前後での実質的な板クラウン比率の変化Δγは、ラテラルフローの大小によって決まる。そこで、次式により与えられる形状変化係数
ξi=−Δεl/Δεh …(8)
(ここで、Δεl:長手方向の歪み、Δεh:板厚方向の歪み)
を導入する。なお、iは圧延スタンドの番号である。
【0030】
形状変化係数ξiが1の場合、板厚方向の歪み(板厚偏差)と長手方向の歪み(板形状)の絶対値が同一となる。これは薄板で板幅の広い場合がこれに相当する。幅方向に材料は流れないために、板厚偏差は、全て板形状に出る。熱間仕上圧延時の後段スタンドが該当する。
【0031】
形状変化係数ξiが0の場合、板圧偏差が長手方向の歪み(板形状)に出ない。厚板で板幅が狭い場合がこれに相当する。幅方向に全ての材料が流れて、平坦度は全く変化しないために、板クラウンを任意に変更できる。熱間仕上圧延時の前段スタンドが該当する。
【0032】
続いて、張力フィードバックの考え方を簡単に説明する。圧延中に、幅方向の一点について張力増加により荷重が減少した場合、まずは板厚が薄くなる。その結果として、原因である張力増加分はキャンセルされてしまい、板クラウン比率の変動Δγは抑制される。これが張力フィードバックであり、制御を入れなくとも、材料自体に、もともと安定的な挙動を示す性質があるということを表わしている。
【0033】
これらの条件を考慮して、形状変化係数としては、等分布荷重との板幅方向圧延荷重分布の差による表面扁平量の差をモデル化したものを使用するケースがある。
【0034】
現在、「荷重連動制御」と呼ばれるベンダによるクラウン制御が用いられている。図5は、この制御が適用されている熱間仕上圧延機における任意の第iスタンドFiと1段上流の第i−1スタンドFi−1とを代表させて示したものであり、ベンダ10に対しては各スタンド毎に測定された圧延荷重から算出されたベンダ圧指令値が、該当する演算装置12からそれぞれ入力されるようになっている。図中符号Sは、矢印方向に搬送される圧延材である。
【0035】
この荷重連動制御は、板クラウンを保持する制御であり、対象スタンドによる圧延の前後で板厚偏差が無ければ、前記(5A)式、(5B)式から板クラウン比率は一定、即ちΔγ=0である。よって、前記(7)式より板形状は不変となり、通常に圧延している限り、形状破綻には至らない。
【0036】
第iスタンドにおいて、圧延荷重とベンダ圧がスタンド出側の板クラウンに及ぼす影響は、以下の式
により表現できる。
【0037】
なお、以降では添字iをもつクラウンは、特に断らない限りiスタンド出側の板クラウンをさす。又、ベンダ圧及びベンダ圧の関係する影響計数は、1チョックあたりの値をさす。
【0038】
荷重連動制御は、ベンダ圧を調整することにより、上記(9)式の左辺である板クラウン偏差ΔCriを抑制する方法である。板クラウン偏差の無い状態では、上式(9)の、左辺=0とし、次式
ΔFWBi=−gFi・{(∂Cmi/∂Pi)/(∂Cmi/∂FWBi)}・ΔPi…(10)
(ここで、gFi:調整ゲインであり、gFi=1のときに、ΔCri=0である。)
のようになる。
【0039】
この荷重連動制御は、板クラウンを一定に保持し、ΔCri=0の状態を維持する機能であり、板形状の面から言うと、板厚は板厚制御により一定となることを前提に、上記(10)式の関係のイメージを図6に示すように、図中ロックオン値から圧延荷重が上昇(変動)した場合、上昇した荷重変動ΔPによる板クラウン偏差をベンダ圧調整値ΔFWBiにより補償し、両者の関係を板クラウン一定の曲線上に一致させることにより、板形状を安定化しようとするものである。しかし、荷重連動制御では、前述した圧延の前後で板厚偏差が発生すると、板クラウン比率を保持できない。
【0040】
そこで、対象の第iスタンド前後で板厚偏差が発生した時でも、板クラウン比率を保持できる本発明によるベンダ制御方法を提案する。
【0041】
図1は、本発明に係る一実施形態の制御方法が適用される前記図5に相当する隣り合う2スタンド分における制御系の概要を示すブロック図である。以下、対象が第iスタンドであるとして説明するが、ここでは、例えば全7スタンドのタンデム圧延機の場合であれば、i=2〜7に対応しているとする。
【0042】
対象の第iスタンドの制御装置には、圧延実績(第iスタンドに関する圧延荷重、ベンダ圧及び板厚hi、第i−1スタンドに関する板厚hi−1及び出側板クラウンCri−1)から計算した指令値をベンダ10に出力するベンダ指令演算装置12と、圧延実績(第iスタンドに関する圧延荷重、ベンダ圧及び油圧シリンダCYLの油柱実績)から、いわゆるゲージメータ式により計算した板厚hiを出力する板厚演算装置14と、圧延実績(第iスタンドに関する圧延荷重、ベンダ圧、板厚hi、クロス角及び第i−1スタンドの出側板クラウンCri−1)から出側板クラウンCriを計算するクラウン計算装置16とを備えている。図示されている1段上流の第i−1スタンドFi−1の制御装置も実質的に同一の機能を有している。
【0043】
本発明方法の基本思想は、急峻度λを一定とすることにより、板形状を保持することにある。但し、実際の板形状(急峻度)の式は複雑であるため、前記(6)式で表わされる伸び差率Δεを扱うこととする。
【0044】
基本ロジックは、前記(7)式に示したように、急峻度は板クラウン比率の変化に従属することから、板クラウン比率の変化を一定に保つ方向、即ち伸び差率Δεを一定に保つ方向に、ベンダを操作する。但し、ここでは、制御の目標値を制御開始時の板クラウン比率の変化として、制御開始(ロックオン)後の板クラウン偏差を補償するロックオン方式の制御を採用する。
【0045】
又、その際に、必要となる前段の第i−1スタンド出側の板クラウンと板厚はトラッキングで得る。このトラッキングは、前記図1に示したように、第i−1スタンドに設置されている板厚演算装置14とクラウン計算装置16から出力される各計算値を用いて行なう。具体的には、例えば板厚の場合であれば、ミル(スタンド)直下のゲージメータ板厚から、各瞬間のミル間板厚を計算すると共に、その計算位置を、ミル間を仮想的に微細に区切った各区間に板の搬送速度を対応付ける計算により求める。板クラウンの場合も同様である。
【0046】
次いで、制御ロジックを説明する。本発明は、荷重連動制御の一形態であり、板形状を荷重連動制御におけるベンダ圧調整値により制御する。
【0047】
本発明では荷重連動制御の一般的な制御式である前記(10)式に補正項であるベンダ圧補償成分を付加した、下記の制御式(11)を用いる。式(11)の第2項がベンダ圧補償成分である。
【0048】
(∂Cmi/∂FWBi:ベンダ圧からメカニカルクラウンへの影響計数、D:制御開始時の伸び差率(板クラウン比率変化)、Δhi:板厚変動、ΔEi:第i−1スタンド出側の板クラウン比率の制御開始時からの変化に対する補償量)
【0049】
本実施形態では、前記図1に示した第iスタンドに設置されている前記ベンダ圧指令演算装置12により、上式(11)の演算を実行してベンダ圧調整値を求め、該調整値を基に同スタンドのベンダ10を操作して板形状を保持する制御を行なう。以下、この(11)式について説明する。
【0050】
上式(11)において、右辺第1項は、従来と同様の荷重連動制御の機能を表わす。右辺第2項は、今回追加した形状保持制御の機能のためのベンダ圧補償成分を表わしている。
【0051】
但し、右辺第2項に含まれるΔEiは、制御開始時(ロックオンタイミング)における値に添字LCKを付けて表わすと次式
ΔEi=(Cri−1/hi−1)・hi−(CrLCK i−1/hLCK i−1)・hLCK i−1…(12)
である。
【0052】
この(12)式の導出は、以下のようにして行なうことができる。
【0053】
(i)制御開始時は、式(2)〜(6)の議論に基づき、伸び差率の値を
CrLCK i/hLCK i−CrLCK i−1/hLCK i−1=const.=D …(13)
とおくことができる。
【0054】
(ii)制御開始後は、(13)式の添字LCKを削除して、次式
Cri=(D+Cri−1/hi−1)・hi …(14)
が伸び差率となる。
【0055】
(iii)制御開始時(ロックオンタイミング)からの第iスタンド出側の板クラウン偏差を補償するために、板クラウンの絶対値を表わす上式(14)を変形し、
ΔCri=D・Δhi+ΔEi …(15)
ΔEi=(Cri−1/hi−1)・hi−(CrLCK i−1/hLCK i−1)・hLCK i−1 …(12)
とする。上式(15)の右辺第1項が、第iスタンド出側の板厚変動(変化)に対する補償項。同第2項、即ち再掲した前記(12)式が前段の第i−1スタンド出側の板クラウン比率の制御開始時からの変化に対する補償項となる。
【0056】
(iv)実際のアクチュエータはベンダであるため、(10)式に相当する一般式
ΔFbi=(1/αi)・{1/(∂Cmi/∂Fbi)}・ΔCri…(16)
に、上式(15)を代入して、
(ここで、∂Cmi/∂Fbi:ベンダ圧からメカニカルクラウンへの影響係数[mm]、ΔFbi:ベンダ圧補償成分[kN])
となる。この(17)式が前記ベンダ圧補償成分であり、今回提案する形状保持制御の基本式である。
【0057】
即ち、本実施形態においては、前記(10)式による荷重連動制御を基本として行なうと共に、ロックオン方式を採用する上式(17)により、(13)式に示す制御開始時の伸び差率(板クラウン比率変化)Dを一定に保持する制御を行なう。このようにして、制御開始時には板厚制御が入っているので、Δhiの板厚変動が発生していた場合には、その時点の板厚を目標板厚として保持するベンダ制御が可能となる。
【0058】
この制御式(17)を圧延機に実装する上では、前段スタンド出側板の板クラウンCri−1のトラッキングについて、以下に述べる取扱をするとよい。これは、板クラウンの計算式
Cri−1=αi−1・Cmi−1+(1−αi−1)・(hi−1/hi−2)・Cri−2 …(18)
で、左辺の板クラウンを求めるためには、右辺第2項がi−1段よりも更に前の第i−2スタンド出側における板厚と板クラウンについての実績を必要とするためである。これらの値を第1スタンドF1から順に常時トラッキングすることは、効率的ではなく、又、プロセスコンピュータ内部のトラッキング用メモリを膨大に消費することになる。そこで、以下のように、式を変形して実装に適した形とするとよい。
【0059】
本発明の制御では、ロックオン方式を採用しているため、板クラウンの絶対値に対する誤差が与える影響は少ない。そこで、板クラウンを、次式
【0060】
【数3】
で表現し、具体的には以下に説明する方法で、圧延実績(圧延荷重、ベンダ圧、ロールクロス角、各設定値、各ロックオン値)から計算する。ここで、右辺第1項は予め設定する板クラウン設定値であり、二重下線を付した第2項のCri−1(以下、本文中では、式中の二重下線を付したパラメータを“二重下線付Cri−1”の如く表記する)は、通常の荷重連動制御を開始する時にロックオンされた後の偏差である。前記(18)式により板クラウンの絶対値を計算で求めると、定常偏差が出る可能性があるので、板クラウンを“設定値”+“荷重連動制御開始時からの板クラウン偏差(計算値)”として設定している。
【0061】
この(19)式、第2項の板クラウン偏差は、下式で表わされる形をとる。但し、θはクロス圧延機のロールクロス角である。
【0062】
【数4】
この(20)式は、前記(18)式の右辺第1項に、次式
を代入して、変形することにより得られる。いずれも肩に添字SETが付いているシンボルが設定値、二重下線のシンボルが、荷重連動制御(板噛み込み直後)でロックオンした値(添字Lを付した)からの偏差である。ロックオン値を表わす添字を前記(12)式等のLCKと区別したのは、上式(20)は通常の荷重連動制御によるためであり、Lの添字を持つ設定値を先に設定するという制約はあるが、別々に設定可能であることによる。
【0063】
この(20)式のとおりに変形することにより、前記図1において、第i−1→第iスタンドへトラッキングを行なうのは、二重下線付Cri−1とhi−1のみで実現可能となる。トラッキング方法は、各スタンドについて、前述した出側板厚のトラッキングと同様の仕組みで、計算板厚(いわゆるゲージメータ板厚)、圧延荷重、ベンダ圧、ロールクロス角を用いて行なうことができる。
【0064】
次に、実際に、厚さ1.4mm、幅1223mmの中炭鋼材について、圧延は6連設した圧延スタンドを用い、入側から数えて6番目のスタンド出側の板クラウン(Cr6)の目標を50μmとして制御した結果を説明する。具体的には、前記(19)式、(20)式により圧延実績から各スタンド出側の板クラウンを計算すると共に、計算して得られた板クラウンを用いて、前記(15)式で与えられる制御開始後の板クラウン偏差を求め、該板クラウン偏差を前記(17)式により補償する制御を、前記(11)式に従ってベンダ圧を操作して行なった。
【0065】
図2には、以上の制御により、仕上圧延機の第3スタンド(F3)から第6スタンド(F6)について得られた出側板形状(急峻度)の計算結果をそれぞれ示した。太線は本発明による結果を、細線は通常の荷重連動制御(比較例)による結果である。又、図中Aを付した縦方向の実線は、板の圧延方向同一位置を示し、第3スタンドから第6スタンドに向って時間が大きくなる方向に移動する。
【0066】
なお、前記したように急峻度の大きさは、板形状の変化の指標である板クラウン比率の変化に比例する。図2を参照すると、第3スタンドでは、本発明と比較例で急峻度の大きさに差はないものの、第5スタンドや第6スタンドといった最終的な板形状を決定するスタンドでは、本発明の急峻度が小さいことが分かる。即ち、本発明では板クラウン比率の変化が小さく板形状の変化は抑制されているのである。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば、複数の圧延スタンドが連設されているホットストリップ仕上圧延機のベンダを用いた形状制御において、板クラウン計が設置されていない場合でも、圧延実績を用いて各スタンド出側の板クラウンを計算できるようにしたので、制御開始後の板クラウン偏差をベンダ圧により補償することにより、板クラウン比率の変化を一定に保つことが可能となり、板形状の変化を抑制することができた。又、計算された板クラウンを用いることにより、スタンド間に板プロフィールメータを設置することなく、形状変化を抑制することができた。
【0068】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0069】
例えば、前記実施形態では、圧延実績から各スタンド出側の板クラウンを計算により求めるようにし、従って各スタンド間には板厚計や板プロフィール(板クラウン)計はなくともよい場合を説明したが、これに限定されず、便宜上図1に併記したように、スタンド間に板厚計18を設置し、計算によるゲージメータ板厚ではなく、実測板厚を用いてもよく、同様にスタンド間に設置した板プロフィール計による実測値を用いるようにしてもよい。このように実測値を用いる場合には、制御精度を更に向上することができる。
【0070】
又、このように実測値を用いる場合には、前段スタンドの実績値を使用する必要がないので、任意の単独スタンドに対して適用することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、板厚偏差が発生した場合でも、圧延材の板形状変化を容易且つ確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態に適用される熱間仕上圧延機の制御系の要部を示すブロック図
【図2】本発明の効果を示す線図
【図3】急峻度及び伸び差率の概念の説明に使用する線図
【図4】板クラウン及び板クラウン比率を示す説明図
【図5】従来の形状制御方法に適用される熱間仕上圧延機の制御系の要部を示すブロック図
【図6】荷重連動制御の原理のイメージを示す線図
【符号の説明】
10…ベンダ
12…ベンダ圧指令演算装置
14…板圧演算装置
16…板クラウン計算装置
18…板厚計
Claims (4)
- 複数の圧延スタンドが連設されている圧延機において、任意の圧延スタンド出側の板形状を荷重連動制御する際に、
板クラウン比率の変化を一定となるようにベンダ圧調整値を決定することを特徴とする圧延材形状制御方法。 - 前記ベンダ圧調整値を、圧延実績から計算した板クラウンを用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の圧延材形状制御方法。
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---|---|---|---|
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