以下、本発明に係る光学ピックアップを図面を参照して説明する。
本発明に係る光学ピックアップ10は、図2及び図3に示すように、光源11と、回折格子24、光分離手段としてのビームスプリッタ13、光分割素子としてのウォラストンプリズム17、コリメータレンズ14、光路折り曲げミラーとしての立ち上げミラー21、光集束手段としての対物レンズ15、マルチレンズ18、光検出器19を備えている。
光源11は例えば半導体レーザ素子であり、レーザ光を出射する。半導体レーザ素子11から出射された光ビームは発散光のまま、回折格子24を介して、光分離手段としての偏光ビームスプリッタ13に照射される。回折格子24は、後述するように、傾斜した平行平板としての平行板ガラス22を収容固定するホルダー23に収容固定され、半導体レーザ素子11から出射された光ビームを回折することで0次回折光、及び±1次回折光の少なくとも3本の回析ビームを発生させる。図面上では簡略化のために1本の光ビームで表している。この分割された3本の光ビームの並ぶ方向は、この場合、図2の紙面に垂直である。また、平行平板22の傾斜支持構造は、後で詳しく述べる。
次に、ビームスプリッタ13には、光磁気信号成分を含む光ビームを分離するために、例えば偏光ビームスプリッタが用いられる。偏光ビームスプリッタ13は、二つのプリズムの傾斜面を合わせた境界面に、光軸に対して45度傾斜した誘電体多層膜13aが形成され、その偏光特性が、例えばS偏光成分の透過率TSが約10パーセント以下、P偏光成分の透過率TPがほぼ63パーセント程度、S偏光成分の反射率RSが90パーセント程度、P偏光成分の反射率RPが35パーセント程度となるように構成する。
また、偏光ビームスプリッタ13は、分割素子としてのウォラストンプリズム17を一体に備えている。ビームスプリッタ13によって透過された光ビームは、コリメータレンズ14により平行光線とされる。この平行光ビームは、光路折り曲げミラーとして、45度に傾斜した反射面を有する立ち上げミラー21によって、その光路を図3に示されているように、90度折り曲げられて、対物レンズ15に入射される。
対物レンズ15に入射した光ビームは、この対物レンズ15によって、ディスク状記録媒体としての光磁気ディスクMOの信号記録面上のある一点に集光される。即ち、信号記録面上のトラック上に0次回折光が、この0次回折光を挟んで前後にそれぞれ+1次回折光及び−1次回折光が照射される。光磁気ディスクMOの信号記録面からの反射光,即ち、戻り光ビームはカー効果に基づいてその偏光面が回転された光磁気信号成分を含んでいる。
ウォラストンプリズム17は、光磁気ディスクMOの信号記録面で反射された戻り光ビームが、再び対物レンズ15及びコリメータレンズ14を介してビームスプリッタ13に入射し、その誘電体多層膜13aにより反射された光が入射する。この光は偏光面に対して45度方向の検波により、光磁気ディスクMOの信号記録面にてカー回転されることによるMO信号を含む光成分と、検波作用を受けない光成分に分けられる。
このウォラストンプリズム17から出射した少なくとも3本の光ビームが入射するマルチレンズ18は、その入射面が例えば円筒表面でなり、入射する光ビームに非点収差を付与する。さらに、マルチレンズ18の出射面は凹状に形成されることにより、マルチレンズ18から出射する光ビームが光検出器19に至る光路長を調整する。
光検出器19の受光素子19cは、その受光面が図3に示すような複数の受光部に分割されている。即ち、受光素子19cは、その中央にて四分割されて形成された受光部A,B,C,Dと、図4においてこれらの上下左右の位置にそれぞれ配置された受光部E,F及びI,Jとから構成されている。これにより、光学ピックアップ10においては、図2のマルチレンズ18により非点収差が与えられた光ビームが図4の中央部の四分割の受光部A,B,C,Dに入射した場合、図2に示す対物レンズ15を、図示しない対物レンズアクチュエータ(二軸アクチュエータ)によって、光軸方向に微動することで、戻り光ビームを合焦状態とすることができる。このフォーカシング制御は、4分割の受光部A,B,C,Dの出力信号に基づいて、(A+C)−(B+D)の演算に基づくフォーカスエラー信号がゼロとなるように、対物レンズ15を微動させることにより行われる。
さらに、戻り光ビームのうち、図2の光源11から出射されて、回折格子24によって分割された3本のビームに基づく2本のサイドビーム(±1次光)は、それぞれ図4に示す受光部EとFとに入射する。光学ピックアップ10では、この受光部EとFとの出力信号に基づいて、(E−F)の演算によるトラッキングエラー信号がゼロになるように、対物レンズ15をトラッキング方向(光磁気ディスクMOの径方向)に微動することにより、トラッキング制御が行われる。
また、戻ってきた0次光のうち、ウォラストンプリズム18により分割された光ビームは、それぞれ図3の受光部I及びJに入射する。光学ピックアップ10では、この受光部I及びJの出力信号の差動をとることにより、光磁気信号の検出がされる。光学ピックアップ10では、上述したように、光磁気ディスクMOに入射する光ビームの非点収差を低減することにより、光検出器19によって検出されるMO信号に有害なジッターが発生することを抑え、且つ光検出器19によって検出されるトラッキングエラー信号を劣化されることなく有効に防止できるものである。
ところで、本発明に係る光学ピックアップ10を用いて情報信号の記録又は再生が行われる光磁気ディスクMOは、ポリカーボネート樹脂等の光透過性を有する合成樹脂を用いて形成したディスク基板を有し、このディスク基板上に金属製の信号記録層が形成されている。また、ディスク基板には、記録トラックに沿って形成された溝であるプリグルーブが形成されている。
ところで、光透過性を有するポリカーボネート樹脂等の合成樹脂により形成されたディスク基板は、この基板を構成する合成樹脂が有する複屈折性によって、以下のように、入射する光ビームに対して非点収差を発生させる。
さらに、ディスク基板に形成されたプリグルーブは、例えばその幅を1.1μm程度、その深さをλ/8程度とする溝として形成されている。なお、光源11から出射される光ビームの波長である。このプリグルーブは、後述するように、入射する光ビームに対して同様に非点収差を発生させることになる。
先ず、ディスク基板を構成する透明樹脂の複屈折性による非点収差を説明すると、この非点収差は、以下のようにして発生する。即ち、図5示すように、光磁気ディスクMOに対する光源からの光ビームの入射位置において、このディスクMOの半径方向をx,接線方向をyとし、さらに垂直方向をzとなるように座標系を設定し、対物レンズから光磁気ディスクMOの入射位置に対して集光する入射光線に関して、入射偏光(電界方向)がx方向の直線偏光とする。さらに、ディスク基板の複屈折率nが、x,y,z方向に関して、それぞれnx,ny,nzとし、nx=ny=1.5(=n),nz=1.5−(5×10−4)でモデル化し、図6における入射光ビームのx方向及びy方向の両端の各光線a,b,c,dに関して、それぞれ焦点位置とその差(非点隔差)を求める。
ここで、ディスク基板内を通る光線(波面法線)に関し、光線c,bは、図7に示すように、偏光方向は異なるが、その屈折率差は小さいと考えられるので、ディスク基板内では、共にθkの角度で進むものとする。
複屈折性を有する異方性媒質中における波面法線方向とエネルギーの流れである光線方向は異なることから、光線c,bについて、光線の角度θsc,θsbを求めると、光線cに関しては、
となり、また光線bに関しては、
となる。これにより、図8に基づいて、ディスク基板の厚さをt(=1.2mm)として、非点隔差ΔZ(空気中に換算)を求めると、
ここで、対物レンズのNAを0.45とすると、θk=17.45度,ΔZ=0.533(μm)となる。さらに、非点収差のRMS(二乗平均)値W22に関しては、波長λを780nmとして、
これに対して、プリグルーブによる非点収差は、以下のようにして発生する。即ち、プリグルーブは、図9に示すように、対物レンズからの入射光ビームに対して、回折格子として作用することになり、例えば0次光及び±1次光に分割される。そして、これらの0次光及び±1次光が互いに重なり合うことによって、図9の下段に示すような強度分布を示すことになると共に、図10に示すような位相分布を生ずることになる。この位相分布は、非点収差に適宜のデフォーカスを加えた場合の波面収差(図11参照)に非常によく似た形状を有している。従って、この位相分布によって非点収差が発生することになると共に、加えるデフォーカスを変化させることにより、再生信号のジッター値が大きく変動することになる。
光ディスクによる複屈折がないものとして、このジッター値の変動を計算機によりシミュレーションした結果は、図12に示すようになる。この場合、曲線aは、無収差且つイコライザなしの場合、曲線bは、故意に非点収差を付加(ディスク上にて0.75μm)でイコライザなしの場合、曲線cは、故意に非点収差を付加(ディスク上にて0.75μm)でイコライザありの場合、さらに曲線dは、無収差且つイコライザありの場合を示している。なお、上記のシミュレーションで使用される再生信号の波形整形用のイコライザは、EFM信号の3T周期の周波数成分が強調されるように構成されたものである。このシミュレーションによれば、曲線cが、左右対称型になると共に、ジッター値10%となるデフォーカスの幅が広くなることが分かる。
従って、ディスク基板に設けたプリグルーブによる非点収差を打ち消すためには、故意に加える非点収差の量を以下のようにして適宜に設定すればよい。即ち、図10における位相分布が変化する要因は、0次光と±1次光との、瞳の半径で正規化したずれ量に相当する、λ/NAと光磁気ディスクMOのトラックピッチTpの比、そして0次光と、0次光及び±1次光との合成波面との位相差と考えられる。λ/NAを一定にして、トラックピッチTpを変化させると、図13及び図14に示すように、非点収差の量は、
に比例し、また0次光と、0次光及び±1次光との合成波面との位相差ψにも比例すると考えられる。ここで、0次光と、0次光及び±1次光との合成波面との位相差ψは、φをプリグルーブの往復位相深さ,aをグルーブ幅/Tp,Argを偏角(degree)とすると、
従って、プリグルーブにより発生する非点収差は、Kを定数として、
で表されることになる。これに対して、トラックピッチTp及びグルーブの深さ及び幅を変化させて、図12のように計算機によるシミュレーションを行なって、曲線cとなるように、式8との比較を行ない、上記定数Kを求めると、プリグルーブによる非点収差は、Argを偏角(degree)とすると、
なお、図13及び図14は、図6に示す光磁気ディスクのプリグルーブによる0次光及び±1次光のスポットの相互の関係を示し、図13は、0次光及び±1次光のスポットが瞳上で重なり合い、非点収差となる位相分布が発生する状態を示し、図14は、0次光及び±1次光のスポットが瞳上で互いに離間され、非点収差となる位相分布が発生しなくなった状態の一例を示す。
実際に、光磁気ディスクMOであるミニディスク(MD)の記録再生に用いられる光学ピックアップにおいては、その規格から、トラックピッチTp=1.6μm,波長λ=780nm,対物レンズNA=0.45であるので、グルーブ幅及び深さが規格を満たす範囲は、グルーブ幅については、1.0乃至1.2μm,グルーブ深さについては、λ/7乃至λ/9となり、この範囲内における非点収差の値W22は、0.0147乃至0.0270(λrms)となる。
かくして、MD用の光学ピックアップの場合、ディスク基板の透明樹脂の複屈折性による非点収差は、0.0141±0.00118(λrms)となり、またプリグルーブによる非点収差は、0.0209±0.0062(λrms)となるので、全体としての非点収差は、0.0350±0.0074(λrms)となる。本発明では、上述の数8、数9に基づいて、もしくはこれに多少の製造技術上の公差を考慮して補正すべき非点収差の量を求めて、これを打ち消す程度に光集束手段に入射する光軸を傾けたり、あるいは同様にして求めた非点収差の量に基づいて、これを相殺するように非点収差相殺手段を構成する光学素子を形成する。
具体的には、光磁気ディスクの一種であるMD用の光学ピックアップにおける非点収差補正の最適値は、実際には以下のようにして得ることができる。
即ち、再生信号のジッタ(Jitter)値J1及びイコライザをかけた後の信号のジッタ値J2のデフォーカス特性に関して、非点収差補正が少ない場合には、全体の非点収差がマイナスとなるので、光ディスク上で光ビームが形成するスポット形状は、デフォーカスに対して図15の下段に示すようになり、デフォーカスの近い側でのジッタの劣化要因がMTF劣化であるので、イコライザによるジッタ改善が有効である。これに対して、デフォーカスの遠い側での劣化要因は、隣接トラックからのクロストークによるものであるので、イコライザによるジッタ改善効果は殆どない。ここで、実際のMDにおけるジッタ値とデフォーカスとの関係は、図16に示すようになる。
これに対して、非点収差補正が適正である場合には、全体の非点収差がほぼ0となるので、スポット形状は、デフォーカスに対して図17の下段に示すように、対称となり、イコライザによるジッタ改善効果もデフォーカスに対して対称となるので、デフォーカストレランスも最も広くなる。ここで、実際のMDにおけるジッタ値とデフォーカスとの関係は、図18に示すようになる。
また、非点収差補正が過剰である場合には、全体の非点収差がプラスとなるので、スポット形状は、補正不足の場合と逆に、デフォーカスに対して図19の下段に示すようになる。この場合、デフォーカスの遠い側でのジッタの劣化要因がMTF劣化であるので、イコライザによるジッタ改善が有効である。これに対して、デフォーカスの近い側での劣化要因は、隣接トラックからのクロストークによるものであるので、イコライザによるジッタ改善効果は殆どない。ここで、実際のMDにおけるジッタ値とデフォーカスとの関係は、図20に示すようになる。
なお、上述した図16、図18及び図20に示した実際のMDにおけるジッタ値とデフォーカスとの関係は、イコライザとして図21に示す特性のものが使用されている。これにより、非点収差補正は、図17及び図18の場合に、最適値となり、ディスク基板の透明樹脂の複屈折性及びプリグルーブによる非点収差が実質的に排除されることになる。
これに対して、上記非点収差を打ち消すためには、後述する図27に示すように、対物レンズ15に入射する光ビームの光軸に対して平行平板22を傾斜させて配置するようにする。このため、平行平板、例えば平行な板ガラスでなる補正板22は、ホルダー23内で、光軸Lに対して、この光軸Lと平行平板22の入射面とのなす角度θが以下のようになるように位置決め固定される。
先ず、光ディスクによって発生する非点収差が、ディスク基板による複屈折に基づくものだけである場合には、例えば、対物レンズ15の焦点距離f0=3.4で、コリメータレンズ14の焦点距離fc=10.8とすると、平行平板22にとって必要な補正量δは、例えば光ディスクにおいて0.5μmの非点収差が発生するとすると、
ここで、例えば平行平板22の厚さt=0.7(mm),屈折率N=1.5とすれば、次式に代入して、
であり、
θ=約8度(平行平板22の光軸Lに対する傾斜角度)が求められる。
また、上記非点収差を打ち消すように、対物レンズ15に入射する光ビームの光軸を傾ける場合、具体的には、例えば図22に示すように、5μm程度の非点隔差を補正するためには、光軸Lに対して、立ち上げミラー21を角度θ=0.7度だけ傾けるようにしてもよい。
あるいは、同様の非点収差を補正するためには、図23に示すように、コリメータレンズ14を光軸Lに対して角度θ=1.5度だけ傾斜させても、軸外収差で非点収差を補正することができる。
このような光学素子だけでなく、光学系にホログラム素子を回折格子24の代わりに用いる場合には、このホログラム素子をその厚みと屈折率により決まる角度だけ傾斜させてもよい(図示せず)。
また、ホログラム素子は、傾斜させないで、ホログラムパターンの設計により、光ビームに対して、有害な非点収差を打ち消す方向に非点収差を付与するように構成してもよい。
さらに、上述の光学ピックアップと同一の光学系において、コリメータレンズや立ち上げミラーを傾けないで、これらとは別に、曲率半径r=2000mmの円筒レンズを挿入しても、上記と同一の条件の非点収差を補正することができる。この場合、円筒レンズは傾けない。これと同様の機能を発揮する光学素子として、以下のものを利用することもできる。
例えば、回折作用により同一の効果を発揮するようにホログラム面を形成したホログラム素子を、この円筒レンズのかわりに用いてもよい。また、このような光学素子として、上述と同一の条件にて非点収差を補正する場合には、例えば図24の(a)(b)(c)にそれぞれ示す各ビームスプリッタを利用することができる。これらのビームスプリッタはキューブ状に構成されており、偏光ビームスプリッタでも無偏光ビームスプリッタでもよい。
図24(a)に示すビームスプリッタ51は、例えば光学系において、図2に示すビームスプリッタ13と同じ位置に配置され、その光分離膜としての例えば誘電体多層膜51a等は同様の構成である。このビームスプリッタ51は、三角柱状の二つのプリズムと、これらの斜面に挟み込まれるように配置された厚みの薄い硝材54とから構成されている。この二つプリズムを構成する硝材52,53は互いに同じ材料もしくは同じ屈折率を備える材料で形成されており、硝材54はこれらと異なる屈折率を有する材料で構成されている。これにより、入射面(図において下面)から入射した光ビームに対して非点収差を付与するようになっており、光ディスク等において生じた有害な非点収差と逆方向の非点収差を光ビームに与えて、これを補正するようになっている。具体的には、例えば、ビームスプリッタ51は、第1の硝材52と第2の硝材53の間に第3の硝材54をはさむようにして貼り合わせて形成されている。これら第1乃至第3の硝材52,53,54はそれぞれ光学的に等方性の材質でできた通常の光学ガラスで形成されている。そして、第1の硝材52と第2の硝材は同一の材料で形成されており、その屈折率n=1.5のものが選定され、第3の硝材54としては、屈折率n=1.7のものが選定される。そして、貼り合わせ面の光軸に対する傾斜角度θ1は45度である。さらに、第3の硝材54の図における厚みt=0.05mmとされている。
また、図24(b)は別のビームスプリッタの構成例を示している。図において、ビームスプリッタ61は三角柱状の硝材62と63との各傾斜面を貼り合わせて形成され、貼り合わせ面には光分離膜61aが形成されている。この硝材62,63は同一の材質で同一の屈折率のもので形成されているが、光分離膜61は、光源11及び光ディスクに対して45度の傾斜角で配置される。この光分離膜61に対して、互いに貼り合わされる三角柱状のプリズムである硝材62,63の端部が光分離膜61との間でなす角度θ2及びθ3に関して、一方が45度であり他方が45度と僅かに異なるように設定されている。これにより、入射面(図において下面)から入射した光ビームに対して非点収差を付与するようになっており、光ディスク等において生じた有害な非点収差と逆方向の非点収差を光ビームに与えて、これを補正するようになっている。この場合、具体的には、硝材62、63は同一の等方性材質で形成されており、その屈折率n=1.5で同じである。しかしながら、硝材62の図示された光分離膜61aに対する角度θ2は45度であるが、硝材63の図示された光分離膜61aに対する角度θ3は45度±2.6度に設定されている。そして、光源11から入射面までの距離lは5mmに設定されている。尚、このビームスプリッタ61も図2に示す光学系における偏光ビームスプリッタ13と同じ位置に配置されるが、グレーティング12はあってもなくてもよい。
図24(c)はさらに別のビームスプリッタの構成例を示している。このビームスプリッタ71は、光学ピックアップの光学系において図24(b)のビームスプリッタ61と同様に配置される。図において、ビームスプリッタ71は三角柱状の二つの硝材72,73の互いの傾斜面を貼り合わせて構成され、二つの硝材72,73の屈折率は僅かに異なるものが選定されている。これにより、入射面(図において下面)から入射した光ビームに対して非点収差を付与するようになっており、光ディスク等において生じた有害な非点収差と逆方向の非点収差を光ビームに与えて、これを補正するようになっている。具体的には、二つの硝材72,73の貼り合わせ面には光分離膜71aが形成されている。この硝材72は等方性材質でなる屈折率n=1.5の材料でなり、硝材73は等方性材質でなる屈折率n=1.5006の材料が選定されている。貼り合わせ面の光軸に対する傾斜角度は45度で、光源11から入射面までの距離lは5mmに設定されている。
このような各ビームスプリッタ51,61,71を利用することにより、図2に示す光学ピックアップにおいて、図22、図23の場合と同様の条件において、非点収差を補正することができる。
上述のような構成を備えた本発明に係る光学ピックアップ10は、光源11から出射した光ビームは、回折格子24によって、図2の紙面に垂直な方向に3本の光ビームに分割されて、偏光ビームスプリッタ13に入射する。この光ビームのうち、例えばP偏光の成分は、その略60パーセント以上が誘電体多層膜13aを透過してコリメータレンズ14に入射し、平行な光ビームにされたあと、対物レンズ15に入射する。対物レンズ15では、この光ビームを光磁気ディスク16の信号記録面に合焦するようにし、この信号記録面では、メインビームと、このメインビームを挟んで前後に1/4トラック分ずつずれた2本のサイドビームがスポットを形成する。
光磁気ディスクMOの信号記録面に照射された光ビームは、カー効果をうけてその偏光面が回転され、このような光磁気信号を含む反射光は、戻り光として再び対物レンズ15及びコリメータレンズ14を通って、偏光ビームスピリッタ13に入射する。ここで、誘電体多層膜13aにより、戻り光の光磁気信号を含む成分の大部分と、それ以外の光成分の例えば35パーセント程度は、反射され図2の左の方向に向かって反射される。さらに、偏光ビームスプリッタ13から出射した戻り光は、ウォラストンプリズム17により分割され、マルチレンズ18に入射して非点収差が与えられて、光検出器19に入射する。
そして、本発明に係る光学ピックアップ10においては、平行平板である補正板22が、光軸Lに対してθだけ傾斜して配置されている。これにより、光磁気ディスクMOに入射する光が、ディスク基板の透明樹脂の複屈折性及びプリグルーブによって非点収差が与えられても、この非点収差は打ち消されることになる。このため、従来のように光磁気信号等に、許容範囲以上のジッターが発生することがなく、正確な信号検出,サーボ制御を行うことができる。
次に、この光学ピックアップ10に好適に使用される回折素子用ホルダーについて、図25乃至図29を参照して説明する。図25は、回折格子24を支持した光学素子用ホルダー23の平面図、図26はその底面図、図27は回折格子24を支持した光学素子用ホルダー23の中央縦断面図、図28は側断面図である。ここで、図29は、光学ピックアップ10のスライドベース31を示しており、例えばアルミダイキャスト製の長い枠体32に、対物レンズを微動するための対物レンズアクチュエータを収容する部分33と、光学ピックアップ10を収容する部分を備えている。このスライドベース31は、平行な二本の軸A1,A2に支持されて、矢印方向に摺動することでシーク動作を行うようになっている。
この枠体32の光学ピックアップ10を構成する光学素子を収容する部分は、図において紙面の背後の方向に向かって、各光学素子を挿入して固定するようにそれぞれ開口が形成されている。枠体32の光学素子を挿入固定する挿入孔34は、図示されているように、下部の横長の部分と、上部のこれより横方向が短い部分とを備えるように、その開口の外形が曲折して設けられている。これにより、光学素子である回折格子24を支持した光学素子用ホルダー23を誤って逆さに装着することがないようになっているとともに、図29の紙面手前から差し込むだけで、光学素子用ホルダー23の位置決めが行える。
図27に示すように、回折格子24を支持する光学素子用ホルダー23(以下、単に、ホルダー23という。)は、横方向に長い鍔状の第1の部分25と、これより横方向の寸法の短い第2の部分26とが、合成樹脂により一体に成形されて構成されている。ホルダー23の中心部は、図27において上下の方向に、光学ピックアップ10の光軸Lに沿って光ビームが通過し得る連続した貫通孔25a,26aが設けられている。
上記第2の部分26は、図25に示すように、一方の面である上面に開口26cが形成され、この開口26cは、回折格子24を収容し得る深さを有し、貫通孔26aと連通している。そして、開口26aは、略平行四辺形状に形成され、その一辺が図示されているように、図において、水平な方向に対して角度Cだけ傾斜している。即ち、言い換えれば、開口26aは、図1の光学ピックアップ10の光軸の方向に対して直交する平面内で、角度Cだけ回転させて形成されている。
さらに、図27に示されているように、貫通孔26aの内径をこの開口26cの内径より小さくすることで、傾斜面26eと段部26dを形成している。この段部26dに回折格子24を載置し、その側面と、傾斜面26eとの間に接着剤24aを充填することで、この回折格子24を所定の角度Cにて簡単に位置決めし、固定することができるようになっている。このように、回折格子24を角度Cだけ回転させたのは、回折格子24により分割された二本のプラスマイナス1次回折光が、光磁気ディスクMOの記録面上で、メインビームのスポットに対して前後に、正確に、1/4トラックづつずれた位置に、サイドスポットを形成するためである。これにより、トラッキングエラー信号を最大レベルで得ることができるように、適切に位置決めされ、困難な調整をできるだけ少なくするようになっている。
さらに、ホルダー23の第1の部分25の裏面には、開口25cが形成されている。この開口25cは、平行平板としての平行板ガラス22が収容し得る大きさと深さでなっており、図26の左右には隙間27,27を有している。また、開口25cは、貫通孔25aと連通しており、貫通孔25aの内径をこの開口25cの内径より小さくすることで、傾斜面25dと傾斜段部25bを形成している。ここで、傾斜段部25bの傾斜角度θは、上述した光磁気ディスクで発生する光ビームの非点収差を打ち消すことができる光軸Lに対する角度θと一致している。
かくして、平行板ガラス22を図27にて下方から挿入するだけで、この平行板ガラス22は適切な角度θに位置決めされるので、傾斜面25dと平行板ガラス22の側面に、隙間27,27からそれぞれ接着剤22aを充填するだけで、位置決め固定がなされる。
このように、回折格子24と平行板ガラス22を固定した状態で、ホルダー23を図29の枠体32の開口12に挿入し、接着剤を適用することで、回折格子24と平行板ガラス22とを図2に示す光学ピックアップ10の光軸に位置決め固定することができる。したがって、このようなホルダー23がない場合に、枠体32に回折格子24と平行板ガラス22とを位置決めして固定する場合に比較して、極めて簡単に光学ピックアップ10を組み立てることができる。
さらに、ホルダー23では、図26に示すように、回折格子24と平行板ガラス22とにより構成される内部空間Sと連通された貫通孔25fを備えている。これにより、外部環境の温度変化等で、密閉された空気が膨張,収縮することで、回折格子24が破壊されないようになっている。
本発明は、以上の実施の形態に限られない。図2では、光磁気検出用の光学ピックアップを示しているが、本発明はピット信号を検出するコンパクトディスク等の光学ピックアップにも適用できる。この場合、偏光ビームスプリッタは偏光性を有しないビームスプリッタを用いてもよい。また、ウォラストンプリズムを省略してもよい。また、図2ではウォラストンプリズムを使用しているが、光分割素子として、例えばホログラム素子や1/4波長板と他のビームスプリッタの組み合わせ等の他の素子を利用してもよい。さらに、場合によって、コリータレンズ14を使用しない発散光学系により、光学ピックアップを構成してもよい。
さらに、上述の実施形態では、平行平板やコリメータレンズ、立ち上げミラーを傾けて、対物レンズに入射する光ビームを光軸に対して傾斜させているが、他の光学素子を傾けたり、他の光学素子について、非点収差を補正する構成とする等の手段をとってもよい。
10 光学ピックアップ、 11 レーザー光源、 13 偏光ビームスプリッタ、 14 コリメータレンズ、 15 対物レンズ、 MO 光磁気ディスク、 19 光検出器、 22 平行平板、 23 光学素子用ホルダー、 24 回折格子