JP2005024398A - 誤差補正機能付エンコーダ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Rθ演算処理手段124によって可動被検出物の変位信号から作成されるリサージュ波形を形成する半径Rと角度θとを算出し、半径微分演算処理手段125によってその半径Rと角度θとからリサージュ波形の半径の変動を示す半径変動値を求め、その半径変動値を変位で微分して算出した微分値の各値に基づく誤差補正値を用いることを特徴とする。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可動被検出物の移動量、位置、角度などの変位量の検出を行うエンコーダに関するものであって、特に、検出された実際の信号と理想的な信号とのズレを補正し、変位量の検出精度を向上させることが可能な誤差補正機能付エンコーダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、可動被検出物の変位量を検出する装置として、磁気式又は光学式のエンコーダが知られている。例えば、磁気式エンコーダの一態様としては、可動被検出物に一定のピッチで着磁された多極着磁層を形成し、この多極着磁層に対向して磁気センサを配設し、この磁気センサに多極着磁のピッチよりも狭いピッチで4個の磁気抵抗素子を配置し、可動被検出物の回転に起因して変化する磁気抵抗素子の抵抗値を検知することによって変位量を検出するものが挙げられる。また、光学式エンコーダの一態様としては、一定のピッチで配設されたメインスケールとインデックススケールとを挟むようにLED等の光源やフォトセンサ等の光検出装置を配置し、スラスト方向にある上述の2枚のスケールに起因して変化する光の干渉を検知することによって変位量を検出するものが挙げられる。
【0003】
ところで、このような従来のエンコーダにおいて、可動被検出物の変位量を検出するに際し、可動被検出物の変位に対応して設けられたA相センサとB相センサから出力される正弦波状のA相信号とB相信号を取得して、両信号の逆正接信号を計算し、その逆正接信号を利用することによって変位量を検出する方法がある。
【0004】
より具体的には、図10(a)〜(c)を用いて以下に説明する。図10(a)は、可動被検出物の1周期の変位を5として2周期分の変位量に対する理想的な正弦波状のA相センサ出力信号と、理想的な正弦波状のB相センサ出力信号と、を示している。そして、図10(b)は、図10(a)に示すA相センサ出力信号(sinθ)及びB相センサ出力信号(cosθ)の逆正接信号を次式によって計算し、その逆正接信号の波形を示している。
【0005】
【数1】
【0006】
図10(b)によれば、理想的な正弦波状のA相センサ出力信号と、理想的な正弦波状のB相センサ出力信号と、からリニアかつ鋸刃形状の信号が得られることがわかる。さらに、図10(b)に示す逆正接信号の信号値(位相)をパラメータとし、A相センサ出力をY値(縦軸)、B相センサ出力をX値(横軸)としてプロットすると、図10(c)に示すような図形(いわゆるリサージュ波形)が得られる。
【0007】
このようにして得られた図10(c)に示すリサージュ波形は、図10(b)に示すA相とB相のセンサ出力を理想的なものと考えているため扁平や歪みのない円形となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際に得られるリサージュ波形は、A相センサとB相センサの感度差に起因して円形とはならない場合がある。
【0009】
すなわち、MRセンサにおいては、例えば磁気抵抗素子の線幅・膜厚・ヒステリシス・磁歪・取付け位置の相違,組立てズレ,回路ゲイン差などにより、光センサにおいては、例えばフォトダイオードの取付け位置の相違,組立てズレ,明暗ピッチズレ,回路ゲイン差などにより、巻線型磁気センサにおいては、例えばコイルの巻数・位置の相違,磁気ヨークの透磁率の相違,組立て誤差などにより、A相センサとB相センサの感度差が異なる場合がある。
【0010】
このようなA相センサとB相センサの感度差に起因する状況説明図を図11に示す。図11においては、理想的なA相センサの出力波形をA’で、実際のA相センサ及びB相センサの出力波形を、それぞれA、Bで示しており、図11(a−2),(b−2),(c−2),(d−2)においては、実際に得られるリサージュ波形を実線で、理想的なリサージュ波形を破線で示している。図11によれば、A相センサ出力とB相センサ出力の振幅が異なることによって(図11(a−1))、リサージュ波形がX軸方向に沿って扁平した円形になったり(図11(a−2))、また、A相センサ出力とB相センサ出力の振幅の中心が異なることによって(図11(b−1))、理想的なリサージュ波形の中心と実際に得られるリサージュ波形の中心との間にズレが生じたり(図11(b−2))、また、A相センサ出力とB相センサ出力の位相が異なることによって(図11(c−1))、リサージュ波形が斜めに扁平した円形になったり(図11(c−2))、さらに、A相センサ出力又はB相センサ出力のいずれか一方の波形が歪むことによって(図11(d−1))、リサージュ波形に歪みが生じることがある(図11(d−2))。
【0011】
このように、実際に得られるリサージュ波形は円形にならない場合があり、かかる場合には、可動被検出物の変位量の検出精度低下を招来することとなる。
【0012】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動被検出物の変位信号から作成されるリサージュ波形を形成する半径と角度から得られる情報を活用し、変位量の検出誤差の補償を精度良く行うことが可能な誤差補正機能付エンコーダを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明は、可動被検出物の変位信号から作成されるリサージュ波形の半径の変動を示す半径変動値を求め、その半径変動値を変位で微分することによって求めた微分値に基づく誤差補正値を用いて誤差補正を行うことを特徴とする。
【0014】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0015】
(1) 可動被検出物の変位に対応してA相センサから出力される正弦波状のA相信号と、この可動被検出物の変位に対応してB相センサから出力される正弦波状のB相信号と、を解析することによって可動被検出物の変位信号を出力するエンコーダにおいて、可動被検出物の一の変位位置において、前記A相信号の出力をX値、前記B相信号の出力をY値とし、この可動被検出物の変位範囲における当該X値と当該Y値とから作成されるXY波形を形成する半径Rと角度θとを算出するRθ演算処理手段と、前記Rθ演算処理手段によって算出された前記角度θの変位に対する前記半径Rの半径変動値を求め、この半径変動値を変位で微分することによって微分値を算出する機能を有する微分演算処理手段と、を備え、前記微分演算処理手段によって算出された微分値に基づく誤差補正値を用いて誤差補正をすることを特徴とする誤差補正機能付エンコーダ。
【0016】
本発明によれば、可動被検出物の変位信号を出力するエンコーダにおいて、Rθ演算処理手段によって、可動被検出物の変位に対応してA相センサとB相センサから出力されるA相信号とB相信号をそれぞれX値、Y値とし、可動被検出物の変位範囲における当該X値及び当該Y値から作成されるXY波形(リサージュ波形)を形成することが可能な半径Rと角度θとを算出し、微分演算処理手段によって、この角度θの変位に対するこの半径Rの半径変動値を求めるとともに、この半径変動値を変位で微分することによって微分値を算出し、その微分値に基づく誤差補正値を用いて誤差補正をすることにしたから、リサージュ波形の半径の変動値をそのまま誤差補正に直接反映させることができる。
【0017】
従って、A相センサ出力とB相センサ出力の振幅,振幅中心,位相が相違した場合、或いはA相センサ出力又はB相センサ出力のいずれか一方又は双方の波形に歪みが生じた場合であっても、またそれらが同時に複合した場合であっても、適切かつ正確に誤差補償を行うことができ、ひいては検出精度の良好な誤差補正機能付エンコーダを提供することができる。
【0018】
(2) 前記微分演算処理手段は、フーリエ級数を用いて前記微分値を算出することを特徴とする誤差補正機能付エンコーダ。
【0019】
本発明によれば、微分演算処理手段は、フーリエ級数を用いることによって微分値を算出することとしたので、誤差補正処理負担の軽減を図ることができる。
【0020】
すなわち、半径変動値自体は一般的に周期関数であり、急激な変動がある関数ではないため、フーリエ級数を用いることによって微分値を算出する処理が簡素化され、ひいては誤差補正処理の負担軽減を図ることができる。
【0021】
また、フーリエ級数を用いることによって各周波数成分を求めることができるため、各周波数成分の寄与率を変更して最適な微分値を得るなど、微分値を加工することが容易となり、ひいては誤差補正処理の精度を向上させることができる。
【0022】
(3) 前記Rθ演算処理手段は、前記A相信号の出力及び前記B相信号の出力に基づいて前記角度θを算出することを特徴とする誤差補正機能付エンコーダ。
【0023】
本発明によれば、Rθ演算処理手段によって、可動被検出物の変位に対応したA相信号及びB相信号の出力自身から角度θが算出できるため、角度θを算出するための別途の構成、例えば基準スケール等を必要とせず、エンコーダの構成を簡素化して誤差補正をすることができる。
【0024】
(4) 前記Rθ演算処理手段は、基準スケールに基づいて前記角度θを算出することを特徴とする誤差補正機能付エンコーダ。
【0025】
本発明によれば、誤差補正の基準となる基準スケールに基づいて角度θを算出しているため、基準スケールによって測定される可動被検出物の絶対変位に対する半径変動値の算出が可能となり、精度の高い微分値が得られることとなり、誤差補正の精度を上げることができる。また、例えばエンコーダの出荷時において、基準スケールをもとに誤差補正に用いる微分値を予め算出しておき、エンコーダの使用時に同一の微分値に基づく誤差補正値を使用することで、エンコーダ使用時における誤差補正処理の手間が省け、ひいては適切かつ迅速に誤差補正を行うことができる。
【0026】
(5) 可動被検出物の変位検出中において、前記Rθ演算処理手段によってRθ演算処理を行い、前記微分演算処理手段によって微分演算処理を行うことによって、前記誤差補正値が更新されることを特徴とする誤差補正機能付エンコーダ。
【0027】
本発明によれば、可動被検出物の変位を検出している最中において、Rθ演算処理手段が、A相信号とB相信号とから得られた逆正接信号の信号値(位相)をパラメータとするX値及びY値とから作成されるXY波形を形成する半径Rと角度θとを算出するというRθ演算処理を行い、微分演算処理手段が、角度θの変位に対する半径Rの半径変動値を求め、この半径変動値を変位で微分することによって微分値を算出するという微分演算処理を行い、その結果、その微分値に基づく誤差補正値が随時更新されることとしたから、例えば、本発明に係る誤差補正機能付エンコーダを備えた装置の出荷時、或いは運転開始時といった初期設定として誤差補正を行うときのみならず、当該装置の運転中においても常時誤差補正を行うことが可能となり、ひいては信頼性の高い位置検出を行うことが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
[概略構造]
図1は、本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダの検出部の概略構造を示す図である。
【0030】
図1において、磁性体または金属から形成された細長状の可動被検出物1は、被検出体としてその長手方向の両方向(図1の左右方向)に往復変位可能に設けられている。なお、図1においては、誤差補正機能付エンコーダの検出部として巻線型磁気センサを採用しているが、その他MRセンサや光センサを採用するものであってもよい。
【0031】
可動被検出物1の外周側部分には、この可動被検出物1の変位方向に沿って、円環状に巻回された一対の検出コイル2aと3aとから構成されるコイル組5aと、円環状に巻回された一対の検出コイル2bと3bとからら構成されるコイル組5bと、の2組のコイル組が配置されている。
【0032】
なお、本発明の実施の形態では、円環状に検出コイルが巻回されているが必ずしも円環状に巻回されている必要はない。また、上記検出コイル2a,3a,2b,3bはそれぞれ長手方向にほぼ同じ長さで形成されている。また、後述するドライバ7(励磁電源)から励磁電流がコイル組5aの検出コイル2a,3aに供給されることによって、コイル組5aの周囲に検出磁界Φが形成される。すなわち、可動被検出物1は、コイル組5a,5bに励磁電流が供給されることによって形成される検出磁界Φの中を変位するように配置されている。
【0033】
可動被検出物1は、材質が異なる可動被検出部1aと1bとが一対になって変位方向(長手方向)に向かって交互に組み合わされて構成されている。可動被検出部1aと1bは、ほぼ同じ長さで形成されるとともに、検出コイル2a,3a,2b,3bも、ほぼ同じ長さで形成されている。すなわち、可動被検出物1は、一対の検出コイル2a又は3a(2b又は3b)の端面と、可動被検出部1aと1bの境界とが一致したとき、一対の検出コイル2aと3a(2bと3b)の各々に対応して材質が異なる一対の可動被検出部1aと1bが変位方向に向かって複数連なって構成されている。この一対の可動被検出部1a,1bにより、コイル組5a又は5bに対する一周期分の変位に相当する移動距離(波長)λが構成されている。
【0034】
また、可動被検出物1は、変位方向(図1の左右方向)に向かって円形断面を有する細長状の棒形状に形成されるとともに、変位方向でその円形断面の半径が同一のストレート形状すなわち円柱形状に形成されている。可動被検出物1は、円形断面を有する細長状の棒形状に形成されているため、円環状に巻回されたコイル組5(5a,5b)の内周側でこのコイル組5に対して回転可能になっている。
【0035】
可動被検出物1の変位方向に沿って配置されたコイル組5a,5bからは、後述するように、いわゆるA相,B相のコイル組検出信号S1(S1a,S1b)が得られるようになっている。具体的には、コイル組5aと5bは、一対の可動被検出部1a,1bにより構成される一周期分に相当する後述の移動距離(波長)λに対して、λ+(1/4)λだけ位置ズレした状態、すなわちλ+(1/4)λピッチで配置されている。従って、コイル組5aから出力されるコイル組検出信号S1aと、コイル組5bから出力されるコイル組検出信号S1bと、は位相が(1/4)λだけ位置ズレした状態となっている。すなわち、例えば、A相のコイル組検出信号S1aの波形がsinθで表される場合には、B相のコイル組検出信号S1bの波形はsin(θ+π/2)で表されるようになり、A相信号と90°の位相差を有するB相信号が得られることとなる。
【0036】
[電気的構成]
図2は、本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダの電気的構成を示す電気回路図である。
【0037】
図2において、可動被検出物1の変位を検出する検出コイル2aと検出コイル3aの接続点には、この検出コイル2a,3aに励磁電流を供給する励磁電源であるドライバ7aが接続されている。同様に、可動被検出物1の変位を検出する検出コイル2bと検出コイル3bの接続点には、この検出コイル2b,3bに励磁電流を供給する励磁電源であるドライバ7bが接続されている。そして、これらのドライバ7a,7bには、励磁信号を与える発振器6が接続されている。
【0038】
一方、可動被検出物1の変位を検出する検出コイル2a,3a,2b,3bには、それぞれプリアンプ8a,8b,8c,8d、整流回路9a,9b,9c,9d、及びローパスフィルタ(LPF)10a,10b,10c,10dが接続されている。そして、LPF10a及びLPF10bは差動増幅アンプ11aに接続され、LPF10c及び10dは差動アンプ11bに接続されている。また、差動増幅アンプ11a及び差動増幅アンプ11bは、誤差補正機能を有する誤差補正処理ユニット12を介し、CPUをはじめ4逓倍回路やアップダウンカウンタ等の位置検出回路を多数備えた位置検出手段13に接続されている。
【0039】
なお、図2においては、説明の便宜のため、位置検出手段13から独立した誤差補正処理ユニット12に誤差補正機能をもたせているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、誤差補正処理ユニット12が位置検出手段13の内部に組み込まれたものであっても構わない。
【0040】
以下、差動増幅アンプ11aの出力であって、誤差補正の対象となるコイル組検出信号S1aが生成される過程を説明する。なお、差動増幅アンプ11bの出力であって、誤差補正の対象となるコイル組検出信号S1bが生成される過程については、コイル組検出信号S1aの場合と同様であるのでその説明を省略する。
【0041】
まず、発振器6からは、一対の検出コイル2a,3aに励磁電流を供給するドライバ7aに励磁信号が与えられる。この励磁信号により、ドライバ7aから検出コイル2a,3aに励磁電流が供給され、一対の検出コイル2a,3aから構成されるコイル組5aの周囲には検出磁界Φが形成される。検出磁界Φの中を可動被検出物1が変位する際の検出コイル2a,3aのインダクタンスの変化がそれぞれ検出コイル出力信号S2a,S2bとして出力される。出力された検出コイル出力信号S2a,S2bは、それぞれプリアンプ8a,8b、整流回路9a,9b、LPF10a,10bを介して差動増幅アンプ11aに入力される。作動増幅アンプ11aでは、入力された検出コイル出力信号S2aと検出コイル出力信号S2bとの差動出力信号がA相のコイル組検出信号S1aとして出力される。
【0042】
ここで、検出コイル出力信号S2a,S2b,S2c,S2d、コイル組検出信号S1a,S1bの信号波形について、図3を用いて概略的に説明する。図3(a)及び図3(b)は、可動被検出物1の変位量に対する検出コイル出力信号の信号波形を示す概略図である。また、図3(c)は、可動被検出物1の変位量に対するコイル組検出信号の信号波形を示す概略図である。
【0043】
まず、検出コイル2aから出力される検出コイル出力信号S2aは、図3(a)に示すように、所定の振幅値を有する波長λの正弦波の波形をしている。この波長λは、一対の可動被検出部1a,1b分の移動距離に相当する。また、可動被検出物1は、一対の検出コイル2aと3aの各々に対応して材質が異なる一対の可動被検出部1aと1bとが複数連なって構成されているため、検出コイル2aと一対をなす検出コイル3aからは、検出コイル出力信号S2aとは逆位相の検出コイル出力信号S2bが出力される(図3(b)参照)。なお、検出コイル2b,3bから出力される検出コイル出力信号S2c,S2dの信号波形は、上述のとおりコイル組5aと5bとがλ+(1/4)λだけ位置ズレした状態で配置されていることから、検出コイル出力信号S2a,S2bと比べて位相がπ/2遅れた信号波形となっている(図3(a)及び(b)参照)。
【0044】
そして、A相のコイル組検出信号S1aは、検出コイル出力信号S2aとS2bとは逆位相であることから、図3(c)に示されるような正弦波状で出力される。また、B相のコイル組検出信号S1bは、検出コイル出力信号S2cとS2dとが逆位相であり、かつ、コイル組5aと5bとがλ+(1/4)λだけ位置ズレした状態で配置されていることから、A相のコイル組検出信号S1Aと位相が(1/4)λだけ遅れた信号波形となっている。
【0045】
このように、図2の電気的構成において、誤差補正処理ユニット12の入力として差動増幅アンプ11a,11bの出力たる差動出力信号を用いることとしたのは、ノイズ等の外乱の影響で検出コイル出力信号S2a,S2bの双方に変動が生じた場合であってもその悪影響を軽減するためである。また、逆位相である検出コイル出力信号S2a,S2bの差動を出力信号とすることで、エンコーダの温度特性の改善を図るためである。
【0046】
[誤差補正処理]
図4は、本発明の実施の形態に係る誤差補正付エンコーダの誤差補正処理を行う誤差補正処理ユニット12の電気的構成を示すブロック図である。
【0047】
図4において、誤差補正処理ユニット12は、誤差補正制御に関して総合的な制御を司るCPU121と、コイル組検出信号S1a,S1bをA/D変換し、この離散化されたコイル組検出信号をCPU121に入力する入力手段122と、誤差補正後のコイル組検出信号を位置検出手段13(図2参照)に対して出力する出力手段123と、コイル組検出信号S1aとコイル組検出信号S1bの逆正接信号の信号値(位相)をパラメータとして作成されたXY波形を形成する半径Rと角度θとを算出するRθ演算処理手段124と、角度θの変位に対する半径Rの半径変動値を求め、この半径変動値を変位で微分することによって微分値を算出する機能を有する微分演算処理手段125と、逆正接信号を求める際に用いる参照テーブルや誤差補正値を記憶したり、CPU121のワーキングエリアとして機能する記憶手段126と、主要信号経路となるシステムバス127と、から構成されている。
【0048】
なお、図4においては、説明の便宜のため、Rθ演算処理手段124と微分演算処理手段125とをCPU121から独立した手段として記載しているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、これらの手段がCPU121の一機能として実現されるものであっても構わない。
【0049】
Rθ演算処理手段124は、コイル組検出信号S1aをY値、コイル組検出信号S1bをX値に設定し、XY波形を作成する。また、このXY波形は、CPU121の指令に基づき算出されたコイル組検出信号S1aとコイル組検出信号S1bの逆正接信号の信号値(位相)をパラメータとして描かれる。なお、実際には、磁気センサの取付け位置の相違、磁気ヨークの透磁率の相違等の要因によってA相センサとB相センサの感度が異なることから、X軸方向、Y軸方向、或いは斜め方向に扁平した波形となったり、歪みが生じた波形となる。また、Rθ演算処理手段124は、コイル組検出信号S1aをX値、コイル組検出信号S1bをY値に設定し、XY波形を作成してもよい。なお、Rθ演算処理手段124は、上述のとおり、XY波形を形成する半径Rと角度θを算出する手段であるが、XY波形(リサージュ波形)が何らかの表示手段により表示されることを必ずしも必要とするものではない。
【0050】
図5(a)は、差動増幅アンプ11aと差動増幅アンプ11bとから出力されるコイル組検出信号S1aとコイル組検出信号S1bの信号波形の一例を示している。図5(a)において、A相センサとB相センサの感度が異なることに起因して、コイル組検出信号S1aの振幅がコイル組検出信号S1bの振幅の約0.6倍になっている。すなわち、可動被検出物1の原点位置(図示せず)からの変位をxとし、変位xにおけるコイル組検出信号S1aの出力をA(x)、変位xにおけるコイル組検出信号S1bの出力をB(x)とすると、A(x)及びB(x)はそれぞれ次式で表すことができる。なお、θはxの関数であり、0<x<λの範囲で連続的に変化するものとする。
【0051】
【数2】
【0052】
そして、A(x)をX値(横軸)、B(x)をY値(縦軸)に設定し、XY波形を作成すると、図5(b)に示すXY波形C(x)が得られる。このXY波形C(x)は、可動被検出物1の変位xによって、A(x)は−1から1の範囲で変動し、B(x)は−0.6から0.6までの範囲で変動することから、X軸方向に扁平した円の波形となる(図5(B)参照)。なお、説明の便宜のため、A相センサとB相センサの感度が全く同一であると仮定し、そのときの理想的なXY波形(真円)を破線で示している(図5(b)参照)。
【0053】
ここで、図5(b)に示すXY波形C(x)から、可動被検出物1の絶対位置の検出に用いられるインクリメンタル出力が得られる。より具体的には、インクリメンタル出力をD(x)とすると、D(x)は次式で算出される。
【0054】
【数3】
【0055】
この式より得られたインクリメンタル出力D(x)を図5(c)の実線で示す。また、説明の便宜のため、A相センサとB相センサの感度が全く同一であると仮定し、そのときの理想的なインクリメンタル出力を図5(c)の破線で示す。
【0056】
図5(c)において、実線の波形は、破線のリニアな波形と比べて波打つような波形となっている。これは、図5(b)のXY波形C(x)が真円ではなく、X軸方向に扁平していることに起因している。すなわち、図5(c)で示す領域Q1における実線の波形の変動は、破線の波形の変動に比べて緩やかとなっているが、これは、可動被検出物1が、図5(c)に示す領域Q1に対応する変位だけ変動した場合であっても、図5(b)に示すXY波形C(x)の位相が領域P1に対応する位相しか変化しないためである。また、図5(c)で示す領域Q2における実線の波形の変動は、破線の波形の変動に比べて急になっているが、これは、可動被検出物1が、図5(c)に示す領域Q2に対応する変位だけ変動した場合には、図5(b)に示すXY波形C(x)の位相が領域P2に対応する位相(>領域P1に対応する位相)だけ変化するためである。さらに、図5(c)で示す領域Q3における実線の波形の変動は、破線の波形の変動に比べて再び緩やかとなっているが、これは、可動被検出物1が、図5(c)に示す領域Q3に対応する変位だけ変動した場合であっても、図5(b)に示すXY波形C(x)の位相が領域P3に対応する位相(<領域P2に対応する位相)しか変化しないためである。
【0057】
このように、図5(c)に実線で示す実際のインクリメンタル出力D(x)は、図5(c)に破線で示す理想的なインクリメンタル出力と比べて波打つような波形となるが、かかる現象に起因して検出誤差が生じる。すなわち、例えばインクリメンタル出力D(x)=D1の場合における可動被検出物1の変位を求めようとしたとき、検出誤差が全く生じていなければ、破線上のD(x)=D1となる変位x1が解となるはずである。ところが、実際は、インクリメンタル出力D(x)は誤差を含んで実線の波形となることから、インクリメンタル出力D(x)=D1の場合における可動被検出物1の変位は、変位x2がその解となる。従って、かかる場合には、可動被検出物の真の変位x1と、実際に誤差を含んで算出された可動被検出物の偽の変位x2と、の差であるx2−x1が検出誤差となる。
【0058】
同様に、例えばインクリメンタル出力D(x)=D2の場合における可動被検出物1の変位を求めようとしたとき、検出誤差が全く生じていなければ、破線上のD(x)=D2となる変位x4が解となるはずである。ところが、実際は、インクリメンタル出力D(x)は誤差を含んで実線の波形となることから、インクリメンタル出力D(x)=D2の場合における可動被検出物1の変位は、変位x3がその解となる。従って、かかる場合には、可動被検出物の真の変位x4と、実際に誤差を含んで算出された可動被検出物の偽の変位x3、の差であるx4−x3が検出誤差となる。
【0059】
以上より、補正によって検出誤差をなくすためには、図5(c)における実線の波形が破線の波形のように直線(リニア)となればよいことがわかる。すなわち、図5(c)において、実線の波形の各波形値から破線の波形の各波形値を減算すると図6(a)に示すような誤差波形が得られるが、この誤差波形を打ち消すことができる波形(この誤差波形と酷似した波形)をソフト的に生成し、その波形を用いて図5(c)における実線の波形をリニア化することによって、誤差補正を実現することが可能となる。
【0060】
ここで、図5(b)に示すXY波形C(x)の変位xにおける半径R(x)と、検出誤差の関連性について詳述する。XY波形C(x)の変位xにおける半径R(x)は、次式に基づき、微分演算処理手段125によって算出される。
【0061】
【数4】
【0062】
図5(b)に示すXY波形C(x)は、上述のとおりX軸方向に扁平した円の波形となっていることから、その半径R(x)は、図5(b)に示す理想的なXY波形に対して変動することとなる。図6(b)は、図5(b)に示す理想的なXY波形に対して、図5(b)に示す実際のXY波形C(x)の半径R(x)の変動分(半径変動値)を示す図である。なお、図6(b)では、一周期λにおける半径変動値ΔR(x)を示している。
【0063】
図6(b)によれば、半径変動値ΔR(x)の波形は、可動被検出物1が1周期λ変位する間に3つの極値をもつ波形となる。これは、図5(b)の第一象限においては、破線で示す理想的なXY波形と実線で示す実際のXY波形C(x)との差(半径R(x)の変動分)は次第に大きくなり、図5(b)の第二象限においては、破線で示す理想的なXY波形と実線で示す実際のXY波形C(x)との差(半径R(x)の変動分)は次第に小さくなり、図5(b)の第三象限においては、破線で示す理想的なXY波形と実線で示す実際のXY波形C(x)との差(半径R(x)の変動分)は次第に大きくなり、図5(b)の第四象限においては、破線で示す理想的なXY波形と実線で示す実際のXY波形C(x)との差(半径R(x)の変動分)は次第に小さくなることによるものである。従って、この半径変動値ΔR(x)を変位で微分すると、図6(c)に示すような微分値dΔR(x)/dxが得られる。
【0064】
図6(c)によれば、この微分値dΔR(x)/dxが示す波形は、図6(a)に示す誤差波形と酷似した波形となっているのがわかる。従って、図6(c)に示す微分値dΔR(x)/dxが示す波形は、上述した図6(a)に示す誤差波形を打ち消すことができる波形となる。
【0065】
このような微分値dΔR(x)/dxをソフト的に生成することが可能な微分演算処理手段125について、以下に説明する。
【0066】
微分演算処理手段125は、Rθ演算処理手段124によって作成されたXY波形を形成する半径Rと角度θよりの半径変動値ΔR(x)を求め、当該半径変動値ΔR(x)を変位で微分するものである。より具体的には、まず、図5(b)に示すXY波形C(x)の変位xにおける半径R(x)の変動値から半径変動値ΔR(x)を求めるが、この半径変動値ΔR(x)については上述のとおりである(図6(b)参照)。図6(b)に示す半径変動値ΔR(x)をソフト的に微分する手法について、本発明においてはその種類の如何を問わない。例えば、FFT(高速フーリエ変換)を用いた微分手法が挙げられる。半径変動値R(x)のフーリエ変換は、次式で定義される。なお、フーリエ級数には、複素形フーリエ級数と実数形フーリエ級数の両方が含まれる。
【0067】
【数5】
【0068】
ここで、このフーリエ変換によって遷移するk空間における情報量と、フーリエ変換する前のx空間における情報量とは全く同じであるため、上式示すフーリエ変換と、次式に示す逆フーリエ変換とによって、x空間とk空間とを相互に行き来することが可能となる(フーリエ変換の双対性)。
【0069】
【数6】
【0070】
また、フーリエ変換には、次式に示すように、x空間におけるΔR(x)の微分演算が、k空間においてF(k)に(ik)を乗じることと等価になる、という性質がある。
【0071】
【数7】
【0072】
微分演算処理手段125は、まず半径変動値ΔR(x)に離散的なフーリエ変換(複素形フーリエ級数展開)を施し、得られた離散データ(複素数)のデータ列に対してikを乗じてフーリエ係数の入れ替え・シフトを行い、その後、離散的な逆フーリエ変換を施すことによって微分値dΔR(x)/dxを計算する。なお、ここでは離散的なフーリエ変換(複素形フーリエ級数展開)の双対性及び性質を利用したが、基本的には、上述した連続的なデータに対するフーリエ変換の双対性(数式6)及び性質(数式7)と同様であるのでその説明を省略する。
【0073】
なお、上記説明においては複素形フーリエ級数展開を用いて微分値を算出することとしたが、実数形フーリエ級数を用いて微分値を算出することもできる。半径変動値ΔR(x)のフーリエ級数は、次式で表される。
【0074】
【数8】
【0075】
ここで、an及びbnはフーリエ係数を示す。数式8に基づき、半径変動値ΔR(x)の微分値dΔR(x)/dxは次式で表すことができる。
【0076】
【数9】
【0077】
従って、半径変動値R(x)の微分値は、フーリエ級数を用いて迅速に算出することができる。なお、各周波数成分の寄与率(フーリエ係数an又はbn)を変更することで実質的に微分値を加工し、その加工された微分値を誤差補正値としてもよい。
【0078】
最後に、微分演算処理手段125によって計算された微分値dΔR(x)/dxの各値は、記憶手段126の一部であるROMに記憶され、本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダを使用するたびにCPU121の指令によって適宜読み出され、誤差補正処理が実行される。
【0079】
以上説明したように、Rθ演算処理手段124と微分演算処理手段125とが、CPU121の指令に基づき有機的に機能することによって誤差補正処理を実現することができる。すなわち、まず、Rθ演算処理手段124は、図5(a)に示すコイル組検出信号S1a,S1bの信号波形A(x),B(x)から作成された図5(b)に示すXY波形C(x)を形成する半径と角度を計算する。そして、微分演算処理手段125は、図5(b)に示すXY波形C(x)を形成する半径と角度から図6(b)に示す半径変動値ΔR(x)を求めるとともに、この半径変動値ΔR(x)を変位で微分した図6(c)に示す微分値dΔR(x)/dxを算出する。また、この微分値dΔR(x)/dxの各値は、CPU121の指令によって記憶手段126に記憶される。
【0080】
このようにすることで、本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダを使用する際、CPU121は、記憶手段126から微分値dΔR(x)/dxの各値を読み出し、図6(a)に示す誤差波形から、この微分値dΔR(x)/dxそのものを誤差補正値として減算することによって、或いはこの微分値dΔR(x)/dxに加工を施した値を誤差補正値として減算することによって、図5(c)に実線で示すインクリメンタル出力D(x)を線形(リニア)な波形にすることができ、ひいては可動被検出物1の変位量の検出誤差の補償を精度良く行う誤差補正処理を実現することができる。
【0081】
また、上記説明においては、誤差補正機能付エンコーダの出荷時などにおいて一旦誤差補正処理を行い、その誤差補正値を記憶手段126のROMに記憶し、使用時に毎回同じ誤差補正値を使用することとしたが、本発明はこれに限られず、例えば、運転を開始するたびに誤差補正処理を行い、使用時に毎回変わる誤差補正値を使用するものであってもよい。これより、使用時の温度環境が変化した場合や磁気抵抗素子が経時変化した場合であっても、その環境やスペックに適した誤差補正値を使用することができ、ひいては可動被検出物1の変位量の検出誤差の補償精度を更に高めることができる。
【0082】
なお、上述の実施の形態では、コイル組検出信号S1aの出力A(x)およびコイル組検出信号S1bの出力B(x)に基づいて角度θを算出しているが、例えば、出荷検査時等において可動被検出物1の絶対位置の検出が可能な基準スケールが準備できる場合には基準スケールに基づいて角度θを算出してもよい。この場合は、基準スケールから求められる可動被検出物1の変位を角度に換算することで、角度θを算出することができる。上述の実施の形態では、例えば、λの変位は角度θに換算すると2πとなる。
【0083】
このように基準スケールに基づいて角度θを算出する場合には、基準スケールによって測定される可動被検出物の絶対変位に対する半径変動値の算出が可能となり、ひいては精度の高い微分値が得られることとなる。従って、精度の高い誤差補正処理を実現することができる。また、例えばエンコーダの出荷時において、基準スケールをもとに誤差補正に用いる微分値を予め算出しておき、エンコーダの使用時に同一の微分値に基づく誤差補正値を使用することで、エンコーダ使用時における誤差補正処理の手間が省け、ひいては適切かつ迅速に誤差補償を行うことができる。
【0084】
[動作フロー]
図7は、本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダによる誤差補正処理の処理動作を示すフロー図である。なお、ここでは複素形フーリエ級数展開を用いて微分値を算出する。
【0085】
図7において、まず、コイル組検出信号の入力処理が行われる(ステップS71)。より具体的には、差動増幅アンプ11a,11bから出力されたコイル組検出信号S1a,S1bが誤差補正処理ユニット12に入力される。
【0086】
次いで、入力信号の離散化処理が行われる(ステップS72)。より具体的には、誤差補正処理ユニット12内の入力手段122は、A/D変換を行いコイル組検出信号のデジタル波形を生成する。
【0087】
次いで、Rθ演算処理が行われる(ステップS73)。より具体的には、誤差補正処理ユニット12内のRθ演算処理手段124は、コイル組検出信号S1aをY値、コイル組検出信号S1bをX値に設定した上で作成されたXY波形を形成する半径Rと角度θとを計算する。
【0088】
次いで、半径変動値が求められる(ステップS74)。より具体的には、誤差補正処理ユニット12内の微分演算処理手段125は、ステップS73によって得られたXY波形を形成する半径Rと角度θから半径変動値を求める。
【0089】
次いで、データ点数の変換処理が行われる(ステップS75)。より具体的には、CPU121は、ステップS74で得られたXY波形の半径変動値を内挿計算等によって等間隔のデータ列に近似する。それと共に、次の処理ステップで行われるFFTを適切に行うべくデータ点数を2のn乗に変換する。
【0090】
次いで、FFT(高速フーリエ変換)が行われる(ステップS76)。より具体的には、微分演算処理手段125は、ステップS75で得られた2のn乗の等間隔離散データ列に対し、離散的な高速フーリエ変換を施す。なお、この離散的な高速フーリエ変換は、離散的なフーリエ変換(複素形フーリエ級数展開)の対称性に着目し、その演算量を大幅に減らして高速に変換するものである。
【0091】
次いで、フーリエ係数操作が行われる(ステップS77)。より具体的には、微分演算処理手段125は、ステップS76によって得られた複素形フーリエ級数の離散データのデータ列に対しフーリエ係数の入れ替えやシフトを行う。
【0092】
次いで、IFFT(逆高速フーリエ変換)が行われる(ステップS78)。より具体的には、微分演算処理手段125は、ステップS77のフーリエ係数操作を行った後のデータ列に対し、離散的な逆高速フーリエ変換を施す。これにより、ステップS74で得られたXY波形の半径変動値の微分値を得ることができる。
【0093】
最後に、誤差補正処理が行われる(ステップS79)。A相センサとB相センサの感度差・位相ズレ・振幅中心ズレ・歪み等が異なることに起因してインクリメンタル出力を計算した場合に生じる誤差波形を、上述のステップS78によって得られた誤差補正値としての微分値を用いて打ち消すことによって誤差補正を実現する。
【0094】
なお、ここでは誤差波形から微分値を単純に減算することによって誤差補正を実現することとしたが、上述のとおり、微分値に一定の加工を施した微分値に基づく誤差補正値を用いて誤差補正を行ってもよい。
【0095】
また、上記説明においては、誤差補正機能付エンコーダの出荷時・運転開始時に誤差補正を行うこととしたが、本発明はこれに限られることなく、例えば、使用途中において継続的に補正を行うこととしてもよい。すなわち、CPU121,Rθ演算処理手段124,微分演算処理手段125による上述の誤差補正処理が行われる度に、計算された誤差補正値を記憶手段126の一部であるRAM等のメモリを上書きし、この誤差補正値を更新しながら継続的に補正を行ってもよい。これより、実際の使用時において、可動被検出物の微小変位が測定できる場合には常時補正が可能となり、運転期間中に環境温度変化や磁気抵抗素子の経時変化があったとしても補正が可能であることから、可動被検出物1の変位量の検出誤差の補償精度を更に高め、誤差補正機能に対する信頼性を向上させることができる。
【0096】
さらに、常時補正する場合には、絶対位置が分からないので測定位置(変位検出開始位置)を基準とし、その微分値を得ることで十分に無視できる程度まで補償値を得ることができる。さらに精度を上げるために、1回目で得られた補償値で誤差を含む1回目測定値を補償し、その値で再度補償値を算出することで高精度の補償値を得ることができる。かかる処理を補償値が収束するまで数回繰り返すことによって、より高精度の補償値を得ることができる。
【0097】
例えば、図8の概略フロー図に示すような処理動作が行われることによってより高精度な補償値を得ることができる。すなわち、図8において、まず、コイル組検出信号S1a,S1bが誤差補正処理ユニット12内に取り込まれる。(ステップS81)。そして、Rθ演算処理手段124によってXY波形を形成する半径Rと角度θとを算出した後に、微分演算処理手段125は、XY波形の半径変動値を求め(ステップS82)、その半径変動値に対して微分処理を施す(ステップS83)。最後に、CPU121は、ステップS83より得られた微分値を用いて誤差補正処理を行った後に(ステップS84)、収束判定処理を行う(ステップS85)。このステップS85における収束判定処理について、より具体的には、CPU121は、ステップS84の誤差補正処理を行った後の補償値を用いて測定値を補償し、その補償値が一定の値に収束したか否かを判断する。一定の値に収束していないと判定した場合には、処理をステップS82に戻し、上述の処理(ステップS82〜ステップS84)を行った後に再び収束判定処理を行う。一方で、一定の値に収束したと判定した場合には、誤差補正が完了し、より高精度な補償値が得られることとなる。
【0098】
図9は、本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダによって得られた誤差波形と微分波形を示す図である。
【0099】
図9において、波形1は、補正前の誤差波形を示しており、波形2は、微分演算処理手段125によって得られた微分波形を示している。そして、この微分波形の各値を微分値として、波形1から減算することにより補正後の誤差波形3が得られる。図9によれば、補正前は最大約11.8μmあった検出誤差が、補正後は最大約3.15μmと、大幅に改善されていることが分かる。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、微分演算処理手段が、Rθ演算処理手段によって算出されるXY波形の半径と角度に基づき、その半径の変動を示す半径変動値を求め、この半径変動値を微分した微分値に基づく誤差補正値を使用することによって、可動被検出物の変位量の検出誤差の補償を精度良く行うことが可能な誤差補正機能付エンコーダを提供することができる。
【0101】
また、本発明によれば、誤差補正機能付エンコーダの運転期間中における常時補正も可能となり、可動被検出物の変位量の検出誤差の補償精度を更に高め、誤差補正機能に対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダの検出部の概略構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダの電気的構成を示す電気回路図である。
【図3】検出コイル出力信号とコイル組検出信号の信号波形について説明するための概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る誤差補正付エンコーダの誤差補正処理を行う誤差補正処理ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】A相センサとB相センサの出力を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例に係る誤差補正機能付エンコーダによって得られた誤差波形と微分波形を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダによる誤差補正処理の処理動作を示すフロー図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る誤差補正機能付エンコーダにおいて、収束判定を含めた誤差補正を行う際の処理動作の概略を示す概略フロー図である。
【図9】本発明の実施例に係る誤差補正機能付エンコーダによって得られた誤差波形と微分波形を示す図である。
【図10】理想的な正弦波状のA相センサ出力信号とB相センサ出力信号を説明するための図である。
【図11】A相センサ出力とB相センサ出力の違い、それに伴うリサージュ波形を示す図である。
【符号の説明】
12 誤差補正処理ユニット
121 CPU
122 入力手段
123 出力手段
124 Rθ演算処理手段
125 微分演算処理手段
126 記憶手段
127 システムバス
Claims (5)
- 可動被検出物の変位に対応してA相センサから出力される正弦波状のA相信号と、この可動被検出物の変位に対応してB相センサから出力される正弦波状のB相信号と、を解析することによって可動被検出物の変位信号を出力するエンコーダにおいて、
可動被検出物の一の変位位置において、前記A相信号の出力をX値、前記B相信号の出力をY値とし、この可動被検出物の変位範囲における当該X値と当該Y値とから作成されるXY波形を形成する半径Rと角度θとを算出するRθ演算処理手段と、
前記Rθ演算処理手段によって算出された前記角度θの変位に対する前記半径Rの半径変動値を求め、この半径変動値を変位で微分することによって微分値を算出する機能を有する微分演算処理手段と、を備え、
前記微分演算処理手段によって算出された微分値に基づく誤差補正値を用いて誤差補正をすることを特徴とする誤差補正機能付エンコーダ。 - 前記微分演算処理手段は、フーリエ級数を用いて前記微分値を算出することを特徴とする請求項1記載の誤差補正機能付エンコーダ。
- 前記Rθ演算処理手段は、前記A相信号の出力及び前記B相信号の出力に基づいて前記角度θを算出することを特徴とする請求項1記載の誤差補正機能付エンコーダ。
- 前記Rθ演算処理手段は、基準スケールに基づいて前記角度θを算出することを特徴とする請求項1記載の誤差補正機能付エンコーダ。
- 可動被検出物の変位検出中において、前記Rθ演算処理手段によってRθ演算処理を行い、前記微分演算処理手段によって微分演算処理を行うことによって、前記誤差補正値が更新されることを特徴とする請求項1記載の誤差補正機能付エンコーダ。
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