JP2005023213A - 熱可塑性樹脂生産におけるmfr推算方法、この方法を利用した熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法及び運転制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】銘柄変更時のように何らかの操作を行ったときの運転条件を正確に決定するとともに、銘柄変更等に要する時間を短縮することのできる熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法を提供する。
【解決手段】MFRの推算を行うための基本回帰式を準備し、熱可塑性樹脂の生産の重合形態が単段重合の場合は、前記基本式からMFRを推算し、多段重合の第二段目以降では、変換式を用いて前記第二段目以降の重合槽の下流側におけるMFRの実測値を線形の状態値に変換し、任意の第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を、第k段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値と、第k−1段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値との差から計算し、逆変換によって得たMFRについて新たな回帰式を求めて、第二段目以降の第k段目における固有のMFRの推算値を得る。
【選択図】 図2
【解決手段】MFRの推算を行うための基本回帰式を準備し、熱可塑性樹脂の生産の重合形態が単段重合の場合は、前記基本式からMFRを推算し、多段重合の第二段目以降では、変換式を用いて前記第二段目以降の重合槽の下流側におけるMFRの実測値を線形の状態値に変換し、任意の第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を、第k段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値と、第k−1段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値との差から計算し、逆変換によって得たMFRについて新たな回帰式を求めて、第二段目以降の第k段目における固有のMFRの推算値を得る。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を生産する際に、生産の過程で何らかの操作が加えられた場合、例えば、今回生産の銘柄から次回生産の銘柄に銘柄変更する場合に、次回生産の銘柄に求められる規定の物性値(MFR)を満足するための運転条件を迅速かつ正確に決定することができ、熱可塑性樹脂の生産の制御を容易にすることのできるMFR推算方法、この推定方法を用いた運転制御方法及び制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の一つであるポリオレフィンは種々の成形方法で成形され、多方面の用途に用いられている。これらの成形方法や用途に応じ、ポリオレフィンとして、所定の物性、すなわち、メルトフロレート(溶融流れ指数。以下MFRと記載する)を有するものが求められている。
【0003】
しかしながら,ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の生産では、使用する触媒の性能等の変動により、運転に再現性がなく、前回と同じ運転条件で運転を行っても、生産される熱可塑性樹脂のMFRが異なる場合が多い。
このような問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている(特許文献1〜5参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3189332号
【特許文献2】
特許第3189333号
【特許文献3】
特許第3189339号
【特許文献4】
特許第3189340号
【特許文献5】
特公平7−25830号公報
【0005】
ところで、銘柄変更時には、次の銘柄の運転条件を正確に推定するのが困難で、変更時に、変更前後の製品のいずれにも属さない格外品が大量に発生しているのが現状である。
さらに、MFRは、リアルタイムに測定することが困難で、次回生産の銘柄の運転条件の設定を誤ると、生産開始後の工程試験でMFRが規格外であることが始めて判明し、その間に生産された製品が全て格外品となり、格外品大量生産の一因になっているという問題がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の装置及び方法では、銘柄変更等の大幅な運転条件の変更時には、十分な推定を行うことができないという問題がある。また、特許文献5に記載の方法では、運転条件が同一であれば製品のMFRも同一であることを前提にしており、運転条件が変更された場合のMFRの推定を行うことはできない。
そのため、上記特許文献に記載の技術によって、上記問題を解決することはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記の問題点にかんがみてなされたもので、触媒性能等の変動を考慮してMFR推算式を導出することで、銘柄変更時のように何らかの操作を行ったときの運転条件を正確に決定するとともに、銘柄変更等に要する時間を短縮することのできる熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法、この方法を利用した熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法及び運転制御システムを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の発明者は、生産している銘柄の目標MFRと運転条件との関係を正確に導き出すことができれば、銘柄変更や触媒ロットの変更等、熱可塑性樹脂の生産において何らかの操作を行っても、迅速かつ適切に運転条件の制御を行うことができることに着目して、本発明に想到した。
【0009】
具体的に、請求項1に記載の発明は、熱可塑性樹脂を生産する工程において、前記熱可塑性樹脂の銘柄変更等の操作を行う際に、操作後のMFRの目標値を得るための運転条件を、所定のMFRの推算式から導出する方法であって、
▲1▼ MFRの推算を行うための基本式として、回帰式 Log(MFR)=F(Xn)を準備するステップと、
▲2▼ 熱可塑性樹脂の生産の重合形態が、単段重合か多段重合かを判断するステップと、
▲3▼ 単段重合の場合又は多段重合の第一段目では、前記基本式からMFRを推算するステップと、
▲4▼ 多段重合の第二段目以降〜第N段目では、前記MFRを加成性が成立する状態値に変換する変換式を準備し、この変換式を用いて前記第二段目〜第N段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値を前記状態値に変換するステップと、
▲5▼ 任意の第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を、第k段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値と、第k−1段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値との差から計算するステップと、
▲6▼ 第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を前記変換式を用いてMFRに変換し、
▲7▼ このMFRについて新たな回帰式Log(MFR)=F(Xn)を作成して、第二段目以降の第k段目における固有のMFRの推算値を得るステップと、
を有する方法としてある。
この方法では、ステップ▲1▼で本発明の基本となる回帰式を準備する。この回帰式は、過去の運転データに基づくもので、特許文献1〜5でも示されている公知のものを用いることができる。
ステップ▲2▼では、重合形態の判断を行う。これは、MFRには加成性が成立せず、単段重合又は多段重合の第一段目と多段重合の二段目以降とで、MFRの推算を区別する必要があるからである。
単段重合又は多段重合の第一段目の場合は、ステップ▲3▼に示すように、基本式を用いることができる。
多段重合の二段目以降では、ステップ▲4▼でMFRを加成性の成立する状態値の式に変換する。前記した状態値としては、例えば、請求項2に記載するように、状態値として極限粘度[η]を挙げることができる。
ステップ▲5▼に示すように、固有のMFRを求めようとする重合槽の上流側と下流側の状態値を実測で求め、その差を逆変換することで、個々の重合槽のMFRを求めることができる。そして、このMFRからステップ▲7▼で新たな回帰式Log(MFR)=F(Xn)を作成することで、重合槽ごとの固有のMFRを推算することが可能になる。
【0010】
本発明では、前記基本式に、MFRの推算値の精度を高めるために銘柄ごとの補正値である第一の補正値E1を加味するようにしてもよい。
この第一の補正値E1は、請求項3に記載するように、単段重合の場合又は多段重合の第一段目と、多段重合の第二段目以降とで分けて求める。
単段重合の場合又は多段重合の第一段目の場合は、定期的又は不定期的に行われる工程試験によって得られた重合槽下流側のMFRの実測値を用い、まず、差分Eを、E=log(MFRの実測値)−F(Xn)から求める。
【0011】
多段重合の第二段目以降では、前記▲7▼のステップで得られた回帰式より推算されたMFR推算値と、前記工程試験によって得られたMFRの実測値に基づき、前記▲5▼,▲6▼及び▲7▼のステップと同様の手順で求めたMFRの計算値とを用いて、
前記差分Eを、log(MFRの実測値の計算値)−log(MFRの推算値)から求める。
そして、この差分Eを、複数回行われた前記工程試験ごとに求め、前記熱可塑性樹脂の同じ銘柄ごとに前記差分Eを平均化して、前記第一の補正値E1を得る。
【0012】
ポリオレフィン等の生産においては、同一種類の触媒であっても、ロットが切り替わると運転条件が変化し、MFRが変化する。そこで、本発明においては、上記の第一の補正値E1の他に、触媒ロットの変更に伴う運転条件の変化を考慮して、さらに推算の精度を高めるための触媒に関する第二の補正値E3を用いている。
この場合は、請求項4に記載するように、前記基本式に、MFRの推算値の精度を高めるために第二の補正値E3をさらに加味する場合であって、▲1▼ 前記基本式又は前記基本式に前記第一の補正値E1を加味した式から、定期的又は不定期的に生成MFRを推算し、この生成MFRを積算して、積算MFRを推算し、この推算結果を、時刻データとともに、第二の補正値E3を計算するための積算MFRとして登録するステップと、▲2▼ 今回工程試験が実施された時刻における重合槽ごとの個別のMFRの積算値を、今回工程試験の実測値から計算によって求めるステップと、▲3▼ 今回工程試験が実施された時刻におけるステップ▲1▼で登録した前記積算MFRを読み込むステップと、▲4▼ ステップ▲2▼で求めた実測値に基づく積算MFRの計算値と、ステップ▲3▼で読み込んだ前記積算MFRの推算値との差分E2を求めるステップと、▲5▼ 複数の差分E2を同一の触媒ロットごとに平均化して第二の補正値E3を求めるステップとを有する方法としてもよい
【0013】
正確な積算MFRの推算値は、請求項5に記載するように、上記で得た第二の補正値E3を用い、前記基本式又は前記基本式に前記第一の補正値E1及び/又は前記第二の補正値E3を加味した式から、定期的又は不定期的に生成MFRを推算し、この生成MFRを積算して、積算MFRを推算することで得られる。
なお、この場合、生産を開始して所定時間経過したときの各重合槽のMFRの積算値(積算MFR)を、生成MFRの推算値のみから求めてもよいし、前回工程試験で実測された積算MFRの実測値の計算値に、定期的又は不定期的に推算した生成MFRの推算値を加えて得るようにしてもよい。
このように、本発明のMFR推算方法によれば、生産開始から所定時間経過後のMFRを、リアルタイムで得ることが可能になるうえ、銘柄や触媒ロットの違いによる補正値E1,E3を利用することで、正確なMFRを得ることができる。
【0014】
本発明の運転制御方法では、上記推算方法で得たMFRと運転条件との関係式を用いて、MFR目標値に対する運転条件を決定する。
すなわち、本発明の運転制御方法は、請求項6に記載するように、請求項1〜5のいずれかに記載のMFR推算方法から得られた前記熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応した運転条件とMFRとの関係式を用い、前記熱可塑性樹脂の生産過程で何らかの操作が加えられたときに、生産する前記熱可塑性樹脂の目標MFRから、当該銘柄の前記熱可塑性樹脂の生産に必要な運転条件を決定する方法である。
この運転制御方法は、請求項7に記載するように、銘柄変更のときの運転条件の決定に特に有効である。
【0015】
また、本発明では、MFR目標値により最終的な運転条件が決定されるので、前回生産の銘柄から今回生産の銘柄に変更するまでの過程を比較的自由に設定することが可能である。
例えば、請求項8に記載するように、前回生産銘柄から今回生産銘柄に変更する間に、前記目標MFRに基づいて決定された前記運転条件の少なくとも一部を所定時間過度状態にするようにすることも可能である。
このように、所定の運転条件について過度状態の時間を設けることで、銘柄変更に要する時間を短縮することができる。
【0016】
なお、この場合、前記過度状態を作り出すための時間は、銘柄変更を行っている時間内にMFR推算を一回又は複数回行い、MFR推算値が目標MFRの許容範囲の上限又は下限に達したときに、過度状態の前記運転条件を予め決定された運転条件に変更するようにしてもよいし、請求項9に記載するように、前記MFRの推算方法を用いて、銘柄変更時の前記MFRの推算値が前記目標MFRの許容値の上限又は下限に達するまでの時間を予測し、この時間を、前記過度状態の維持時間としてもよい。
【0017】
請求項1〜5に記載の推算方法を利用して熱可塑性樹脂の生産装置の制御を行う運転制御装置は、請求項10に記載するように、請求項1〜5の推算方法によって得られた熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応した運転条件とMFRとの関係式を、銘柄ごとの第一の補正値及び触媒ロットごとの第二の補正値とともに記憶するデータバンクセンターと、このデータバンクセンターに記憶された運転条件とMFRとの関係式を用いて、生産を行う所定銘柄のMFR目標値から前記運転条件を決定する計算機とを有する構成としてある。
この構成によれば、MFRと運転条件との関係式及び補正値E1,E3から、目標MFRに対する運転条件をただちに決定することができる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、工程試験の結果を、工程試験を行った時刻データとともに記憶するMFR試験データバンクと、請求項1〜5の推算方法によって推算を行うべき基本式と前記第一の補正値E1とを記憶するMFR推算用データベースと、前記第二の補正値E3を記憶する補正値データベースと、前記MFR推算用データベースに記憶された前記基本式及び前記第一の補正値E1に基づいて、MFRの推算を行うMFR推算計算機とを有し、前記MFR試験データバンクに記憶された工程試験の結果と、MFR推算用計算機で計算されたMFR推算値とから、前記第二の補正値の更新値を求め、この更新値を加味した補正値を、新たな第二の補正値E3として前記補正値データベースに記憶させるように構成してある。
この構成によれば、触媒ロットに関する第二の補正値E3が工程試験を行うごとに補正され、常に正確なMFRの推算や運転条件の決定を行うことが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を、詳細に説明する。
本発明では、過去の運転履歴から、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の生産工程における銘柄ごと及び重合槽ごとのMFRの推算式を回帰式から作成し、この推算式から得られたMFRと運転条件との関係式から、目標MFRに対する運転条件を決定することができるようにしているとともに、MFRのリアルタイムの監視を可能にしている。また、実際のMFRと推算によって得られたMFRとの差を補正値によって修正し、さらに、この補正値を随時更新することで、MFR推算の精度を向上させている。
【0020】
[運転制御システムの全体構成]
まず、本発明において銘柄変更時のMFRの推算及びこの推算に基づいて生産装置の運転制御を行う運転制御システムの全体構成を、図1を参照しながら簡単に説明する。
図1は、本発明における運転制御システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の運転制御システムは、ポリオレフィンの生産を行うプラント装置(ポリオレフィン生産装置)1の運転状態の監視と制御とを行うプラント監視・制御装置2と、プラント監視・制御装置2によって収集されたデータを長期間記憶するデータバンクセンター3と、プラント監視・制御装置2によって収集されたデータと、データバンクセンター3に記憶されたデータとに基づいて、プラント装置1の運転に必要な運転条件を求める計算機8とを有している。これらは、通信回線10を介して、各々間でデータの授受が可能である。
【0021】
なお、この運転制御システムは、計算機8を主体とする上位制御系と、プラント監視・制御装置2を主体とする下位制御系の二段階の制御系からなり、上位制御系では、生産計画にしたがったプラント装置1の基本的な運転を制御し、下位制御系では、プラント装置1に含まれる重合槽等の各々の装置の目標値を再構築し、この目標値になるように重合槽等の制御を行う。
【0022】
このプラント装置1では、例えば五分おきにサンプリング(MFRの推算)を行って、プラント装置1を構成する図示しない重合槽の各々のMFRの推算を行うほか、例えば12時間おきに工程試験を行って、MFRの実測値を求めている。
サンプリングによるMFRの推算値とサンプリングの時刻データ、工程試験によるMFR実測値と、工程試験を行った時刻データは、重合槽ごとに時系列でMFR試験結果データバンク4に記憶される。
【0023】
また、MFRの推算を行うための基本式と、後述の手法により得られる第一の補正値E1は、MFR推算用データベース7に記憶される。この実施形態では、後述するように、第一の補正値E1の他に、触媒ロットの補正値である第二の補正値E3を前記の基本式に加味するが、この補正値E3はデータバンクセンター3に記憶され、工程試験を行うたびに更新が行われるようになっている。
銘柄切替時等の何らかの操作を行ったときのMFRの推算は、MFR推算用データベース7に記憶された補正値E1及び基本式と、データバンクセンター3に記憶された最新の補正値E3とを用いて、MFR推算計算機6が行う。
【0024】
次に、上記制御システムにおけるMFR推算の基本式及び補正値E1.E3の算出方法について詳述する。
[本発明の基本式]
本発明において、MFRを求めるための基本式としては、k1,k2,k3・・・を独立変数X1,X2,X3・・・の係数とした回帰式
log(MFR)=k1・X1+k2・X2+k3・X3+・・・(式1)
を用いる。ここで 独立変数X1,X2,X3・・・は運転条件を示し、例えば、
X1=log(気相の水素分圧 / 気相のモノマー分圧)
又はX1=log(気相水素濃度 / 気相モノマー濃度)
X2=(原料供給量)
X3=(重合槽温度)
・・・
である。この回帰式は、例えば、上記した特許文献1(式6)や特許文献5(式I)で公知の手法を用いて、過去の運転履歴から得ることができる。
なお、以下の説明では、式1の右辺の独立変数の項を、簡単に書き換えて、
log(MFR)=F(Xn)と記載する。
【0025】
[MFR,極限粘度[η]間の変換]
単段重合又は多段重合の第一段目の場合は、各重合槽が個別に運転されるため、各重合槽ごとに上記の式1の推算式を用いてMFRを推算することができる。
しかし、多段重合の場合の第二段目以降の重合槽については、上流の重合槽で生成されたポリマーの物性の影響を受けるため、重合槽内で生成するポリマーのMFRを直接測定することができない。
【0026】
つまり、図2に示すように、重合槽がA,B,C・・・と段階的に設けられている場合には、k段目の重合槽kのMFR[k]の実測値と、k−1段目の重合槽(k−1)のMFR[実測値]とから、k段目の重合槽kの固有のMFR[k*]の計算値を得ることができる。
この場合、MFRに加成性が成立しないことから、工程試験時における(k−1)段目の重合槽(k−1)のMFRの実測値と、同一の工程試験時刻における第k段目の重合槽kのMFRの実測値とからMFRの加成性を仮定して、第k段目の重合槽kの固有のMFR[k*]の計算を行う。
例えば、第二段目の重合槽Bの場合は、重合槽BのMFR[B]の実測値(MFR[B]実測値と記載する)と重合槽AのMFRの実測値(MFR[A]実測値と記載する)とから、重合槽B固有のMFR[B*]の計算を行う。
なお、以下の説明では、説明の便宜のため、第一段目の重合槽Aと第二段目の重合槽Bとを例に挙げて説明する。
【0027】
ここで、極限粘度[η]と、MFRとの関係は、
[η]=a・MFR^b・・・(式2)
で表される。これをMFRに逆変換するには、
MFR=([η]/a)^1/b・・・(式3)
とすればよい。なお、式2及び式3において、a,bは、経験的に求められた係数である。
【0028】
重合槽Aと重合槽Bの極限粘度[η]の関係は、以下の式で表すことができる。
F[A]・[η[A]]+F[B]・[η[B*]]=(F[A]+F[B])[η[B]]・・・(式4)
ここで、[η[B*]]は、重合槽Bで生成している固有のMFR[B*]の変換値である。また、F[A],F[B]は、それぞれ、重合槽A,Bのモノマー流量を示し、それぞれの重合量に等しいと仮定している。
【0029】
式4のF[A]・[η[A]]と(F[A]+F[B])[η[B]]は、第一段目の重合槽AのMFR[A]実測値と、第二段目の重合槽BのMFR[B]実測値を[η]に変換して求めることができるから、重合槽Bで生成される固有のMFRの計算値(MFR[B*])は、式4から得た、
[η[B*]]={(F[A]+F[B])・[η[B]]−F[A]・[η[A]]}/FB[B]・・・(式5)
を、式3を使って逆変換することにより求めることができる。
【0030】
このように、式5より得た重合槽Bの固有のMFR[B*]を従属変数とし、重合槽Bの運転状態を、式1と同様にX1,X2・・・として、新たに回帰式を作成すると
log(MFR[B*])=F(Xn)′・・・(式1′)
となる。
なお、以下の説明では、説明の便宜のため、多段重合の場合と、単段重合及び多段重合の第一段目の重合とを区別するために、多段重合の場合は「′」を付して表すことがある。
上記した式1及び式1′から、重合槽がA,B,C・・・と段階的に設けられている場合においても、各重合槽A,B,C・・・で個別に生成されるポリマーのMFRを推算することが可能になる。
なお、上記の式では、第一段目の重合槽AのMFRの実測値(MFR[A]実測値)を用いているが、このMFR[A]実測値の代わりに、式1を用いた重合槽AのMFRの推算値(MFR[A]推算値)を用いることもできる。
【0031】
[推算式の精度を高めるための補正値E1の加味]
同一触媒を用いた定常運転中においては、上記の式1及び式1′を使って、例えば5分おきにサンプリング(推算)を行い、MFRが規格内に入っているかどうかを監視する。また、例えば12時間おきに工程試験を行い、MFRの実測を行う。この場合、MFRの実測値と、MFRの推算値に差が生じる場合があるため、推算式の精度を高めるための補正値E1を銘柄ごとに設ける。
すなわち、基本式(式1)及び(式1′)に、補正値E1,E1′とを加味して
log(MFR)=F(Xn)+E1
log(MFR*)=F(Xn)′+E1′
により、MFRの推算を行うわけである。
【0032】
[補正値E1,E1′の算出]
補正値E1,E1′の算出は以下の手順で行う。
▲1▼ 単段重合又は多段重合の第一段目の場合
補正値E1は、工程試験を行って時刻におけるMFRの実測値と推算値との差、つまり、
E1=log(MFRの実測値)−F(Xn)で求めることができる。
なお、この実施形態では、補正値E1の精度を向上させるために、工程試験を行うたびに上記の式を使って複数の差分Eを求め、銘柄ごとの差分Eの平均をとって、第一の補正値E1としている。
すなわち、
E=log(MFRの実測値)−F(Xn)・・・(式6)
とし、複数得た差分Eの中から同一銘柄にかかる差分Eを取り出し、そのサンプル数で除して、
E1=ΣE/n n:同一銘柄における差分Eのサンプル数
よって、この補正値E1を加味して、上記(式1)は、
log(MFR)=F(Xn)+E1 (式7)
となる。
【0033】
▲2▼ 多段重合の第二段目以降の場合
二段目以降の重合槽B,C・・・それぞれの固有のMFRは、前述したように計測ができない。そのため、例えば第二段目の重合槽Bにおいては、第一段目の重合槽Aの下流側のMFRの工程試験における実測値と、第二段目の重合槽Bの下流側のMFRの工程試験における実測値とを[η]に変換して差分を求め、これを逆変換してMFR[B*]計算値を得る。
この実測値に基づくMFR[B*]計算値と、式1′を使って得たMFR[B*]推算値との差から、工程試験ごとに複数の差分E′を求め、同一銘柄にかかる差分Eをそのサンプル数で除して、平均値をE1′とすればよい。すなわち、
E′=log(MFR*計算値)−F(Xn)′・・・(式6′)
E1′=ΣE′/n n:同一銘柄における差分E′のサンプル数
よって、式1′は、
log(MFR*)=F(Xn)′+E1′・・・(式7′)
となる。
【0034】
[補正値E3の算出]
熱可塑性樹脂の生産においては、他の運転条件が同じでも触媒ロットの変更により推算値が変化することがある。そこで、この実施形態では、触媒ロットの変更にともなう第二の補正値E3を上記の推算式に加味する。
補正値E3は、基本的には、式7、式7′から得た推算値と、MFRの実測値との差分E2に基づいて決定される。また、この実施形態では、補正値E3の精度をさらに高めるために、工程試験を行うたびに補正値E3の更新を行う。
【0035】
具体的に、E3の算出は以下の手順で行う。
▲1▼ 単段重合又は多段重合の第一段目の場合
補正値E3の計算にあたっては、まず、同一触媒ロットを使用している期間に行った工程試験により得られた、(i)今回の工程試験時の積算MFRの実測値と、(ii)サンプリング時に推算した生成MFRを積算して得られた今回の工程試験時における積算MFRの推算値とを利用し、今回工程試験時の積算MFRの実測値(上記(i))と、同時刻の積算MFRの推算値(同(ii))との差分E2を求める。すなわち、差分E2は、
E2=log(積算MFRの実測値)−log(積算MFRの推算値)・・・(式8)
により求める。
【0036】
なお、式8の右辺の積算MFRは、触媒にかかる要素を取り除くために、補正値E3を含まない式7:log(MFR)=F(Xn)+E1を用いる。そして、この式7を使って得たMFRを一旦極限粘度[η]に変換し、
[η]積算値の更新値=[η]今回生成値+{[η]積算値の前回計算値−[η]今回生成値}exp[−t/滞留時間]・・・(式10)
から[η]積算値の更新値を求める。
そして、[η]積算値の更新値から、式3により今回の積算MFRに逆変換することで得られる。
上記式10を用いて得た積算MFRの推算値と実測値の計算値とから、その差分E2を求め、同一触媒ロットにおける差分E2の平均をとって、第二の補正値E3を得る。
これを、上記式1に代入して、
log(MFR)=F(Xn)+E1+E3・・・・・・(式9)
を得る。
【0037】
▲2▼ 多段重合の第二段目以降の場合
差分E2の計算は上記と同様で、
E2=log(積算MFRの実測値の計算値)−log(積算MFRの推算値)・・・(式8′)
により求める。
【0038】
なお、積算MFRは、式7′で得たMFRを用い、
[η]積算値の更新値=[η]今回変動値+{[η]積算値の前回計算値−[η]今回変動値}exp[−t/滞留時間]・・・(式12)
から[η]積算値の更新値を求めて、この[η]積算値の更新値を、式3によりMFR*に逆変換して得る。
よって、
log(MFR*)=F(Xn)′+E1′+E3′・・・・・・(式9′)
を得る。
【0039】
次に、補正値E3を更新する手順について説明する。
図3は、補正値E3の更新を行うための手順を示すフローチャートである。
まず、データバンクセンター3のサンプリング時刻データを参照し(ステップS1)、サンプリング時刻になっているときは、次に、工程試験によってMFR試験値の更新が行われたかどうかを、MFR試験データバンクの時刻データに基づいて判断する(ステップS2)。
【0040】
工程試験によってMFR試験値の更新が行われていない場合には、まず、現在運転中の銘柄、重合形態、運転状態をデータバンクセンター3から読み込む。次に、MFR積算用データベース7から運転中の銘柄の重合形態、各重合槽用の推算式の補正値E1,E1′を、また、データバンクセンター3から最新の補正値E3,E3′を読み込む。そして、現在運転中の銘柄の重合形態から、各重合槽の推算式(式9又は式9′)を用いて、各重合槽で現在生成している生成MFRを推算する(ステップS3a)。
【0041】
この後、これまでのサンプリングで得た積算MFRの推算値に、今回のサンプリング時の生成MFRの推算値を加えて、新たに積算MFRの推算値を得る(ステップS4a)。このようにして得られた積算MFRの推算値は、通信回線Nを介してデータバンクセンター3に登録される(ステップS5a)。
また、これと並行して、補正値E3,E3′を更新するためのデータを収集し、データバンクセンター3に登録する(ステップ3b〜ステップ5b)。前述したように、補正値E3の更新にあたっては、ステップ3a〜ステップ5bと同様の処理を、補正値E3を取り除いた状態で行う。すなわち、基本式に第一の補正値E1,E1′を加えた式を用いて生成MFRの推算を行い(ステップS3b)、この生成MFRの推算値を用いてMFRの積算を行い(ステップS4b)、これを、補正値E3,E3′の更新用としてデータバンクセンター3に登録する(ステップS5b)わけである。
なお、ステップ3b〜ステップ5bの処理は、ステップS3a〜S5aの処理と別々に行ってもよいし、ステップS3a〜S5aの処理を行う過程で行ってもよい。また、MFRの積算にあたっては、MFRは加成性がないため、式3を使って極限粘度[η]に変換して積算を行うことは言うまでもない。
【0042】
ステップS2で工程試験によりMFR試験値の更新が行われていると判断した場合には、補正値E3の更新を行う。この更新は、まず、データバンクセンター3から、ステップS3b〜S5bによって予め記憶された補正値E3更新用の積算MFRの推算値を読み出す(ステップS6)。
【0043】
次に、今回工程試験時の積算MFRを実測値から計算し(ステップS7)、差分E2を計算する(ステップS8)。この差分E2の計算は上記したとおりである。このようにして得られた差分E2を、過去のE2の履歴データに加え、この履歴データに登録された同一触媒ロットにおける差分E2の総和をサンプル数で除して平均化し、新たな補正値E3を得る(ステップS9)。そして、この新たな補正値E3を、最新のものとしてデータバンクセンター3に記憶させる(ステップS10)。
以後、ステップS3aに戻り、新たな補正値E3を使って生成MFRの推算値及び積算MFRの推算値を求め(ステップS3a,S4a)、得られた積算MFRの推算値をデータバンクセンター3に登録する(ステップS5a)。
なお、上記の説明では、ステップS3a〜ステップS5aにおいて、生成MFRの推算値を積算して積算MFRを求めているが、前回工程試験時に実測した積算MFRの実測値の計算値を用い、これに、前回工程試験時以後のサンプリング時の生成MFRを積算して、積算MFRを得るようにすることもできる。
【0044】
上記の手順で得られた式9,式9′は、銘柄ごと,重合槽ごと及び現在使用している触媒性能に対するMFRと運転条件との関係式に他ならない。
そのため、式9及び式9′を使って得られたMFR(MFR推算値)が、生産しようとするポリオレフィンの銘柄ごとのMFRの目標値になるように、運転条件(F(Xn),F(Xn)′の各独立項)を決定することができる。
【0045】
次に、上記した関係式を用い、図1に示した制御システムで運転条件を設定する場合の手順について説明する。
[制御システムの作用]
図4は、図1の制御システムによる銘柄切替時の切替手順を説明するフローチャートである。
銘柄切替開始(ステップS11)と同時に、次回銘柄の生産が単段重合で行われるのか、多段重合で行われるのかを判断する(ステップS12)。
その結果、単段重合の場合又は多段重合の第一段目の場合は、式9を読み出す(ステップS13)とともに、この銘柄に応じた補正値E1をMFR生産用データベース7から、また、データバンクセンター3から使用する触媒に応じた補正値E3を読み出して(ステップS14)、MFRの推算を行う(ステップS17)。
【0046】
多段重合の第二段目以降の場合は、式9′を読み出す(ステップS15)とともに、この銘柄に応じた補正値E1′をMFR生産用データベース7から読み出し、また、データバンクセンター3から使用する触媒に応じた補正値E3′を読み出して(ステップS16)、MFRの推算を行う(ステップS17)。
そして、ステップS17の推算で求められたMFRが、次回生産の銘柄のMFRの規格内、つまり目標MFRになるように、気相水素濃度と気相モノマー濃度との比(以下、[H2]/[MON]と記載する。)やH2(水素)供給量などの運転条件を決定して(ステップS18)、銘柄変更の操作を開始する(ステップS19)。
【0047】
[MFRのリアルタイム監視]
本発明においては、上記の推算式(式9及び式9′)を用いた制御システムにより、MFRのリアルタイムな監視が可能になる。すなわち、例えば五分おきに運転条件を式9及び式9′に代入することで、リアルタイムかつ高精度でMFRを推算することができ、触媒のロット変更等の何らかの操作が加えられた場合にも、触媒のロット変更の影響を予め推算することができ、かつ、触媒ロットの変更があっても、格外品を生産しないように運転条件をただちに変更することができる。
また、目標MFRに対する運転条件が予め正確に決定することができるので、例えば、銘柄変更時の運転条件の切替操作も比較的自由に設定することが可能である。
【0048】
図5は、銘柄切替時におけるMFRの推算結果と、運転条件の一要素(この場合は、MFRに最も大きな影響を与える[H2]/[MON]比と水素供給量とを挙げている)との関係を示すグラフである。
図5のグラフ中の状態Aで、次回生産銘柄のMFRの目標値と式9及び式9′とから、次回生産銘柄の運転条件を決定する。
状態Bでは、水素供給量を急激に最大値まで高め、[H2]/[MON]比を早期に変化させるようにする。例えば、図5に示すように、水素供給量を最大(MAX)にして、[H2]/[MON]比の変化速度が最大になるようにする。
状態Cでは、MFRの目標値に短時間で到達するように、決定された運転条件よりも大きい過剰状態、図5に示す例ではMAX状態で[H2]/[MON]比を推移させる。
そして、状態Dで予め決定された運転条件の値に戻し、MFRを目標値に到達させる。
【0049】
なお、状態Aと状態Dとの間のMFRは、この間の運転条件と式9,9′とにより推定することができるので、適宜にサンプリング(推算)を行ってMFRの値が所定値(例えば、目標MFRの許容範囲の下限値)になったときに、状態Cから状態Dに移行するように運転条件を制御することができる。
また、MFRの値が所定値(例えば、目標MFRの許容範囲の下限値)になる時間Tを予測しておき、この時間経過後に予め決定された運転条件の値に戻すようにしてもよい。
【0050】
本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態によりなんら限定されるものではなく、本発明の適用範囲内で種々に変更することが可能である。
例えば、上記の説明では、熱可塑性樹脂の一例としてポリオレフィンを例に挙げて説明したが、本発明はポリエチレン等、他の熱可塑性樹脂の生産にも適用が可能である。
また、運転条件の変更が必要になる操作として、銘柄切替や触媒ロットの変更を例に挙げたが、目標MFRに対して運転条件の制御が必要になる操作であればこれ以外にも本発明の適用が可能である。
さらに、図5においては、次回生産銘柄の目標MFRが今回生産銘柄の目標MFRよりも高い場合を例に挙げるが、次回生産銘柄の目標MFRが今回生産銘柄の目標MFRよりも低い場合も同様である。この場合は、上記の制御とは逆になり、例えば、[H2]/[MON]比の「下限値」を「上限値」とし、水素の供給量の「最大値」を「0(ゼロ)」とし、必要に応じて、重合槽の気相部分から排気を行い、気相部分の水素濃度の低下を促進させるようにしてもよい。
また、
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒性能等の変動をも考慮したMFRの推算式から、高い精度で運転条件とMFRとの関係式を得ることができ、銘柄切替や触媒ロットの変動等、何らかの操作が熱可塑性樹脂の生産工程に加えられた場合にも、目標MFRに応じた運転条件を予め求めることができ、銘柄変更等にかかる時間を大幅に短縮することができるほか、格外品の生産を最小限に抑制することができる。
また、リアルタイムでMFRの監視を行うことができ、何らかの異常が発生した場合に、その結果をMFRの推算でただちに知ることができ、これによっても格外品の生産を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における運転制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】重合槽が多段設けられている場合に、二段目以降の固有のMFR(MFR*)を計算する概念を示す図である。
【図3】補正値E3の更新を行うための手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の制御システムによる銘柄切替時の切替手順を説明するフローチャートである。
【図5】銘柄切替時におけるMFRの推算結果と、運転条件の一要素([H2]/[MON]比と水素供給量)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 プラント装置(ポリオレフィン生産装置)
2 プラント監視・制御装置
3 データバンクセンター(補正値データベース)
4 MFR試験値データバンク
6 MFR推算計算機
7 MFR推算用データベース
8 計算機
10 通信回線
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を生産する際に、生産の過程で何らかの操作が加えられた場合、例えば、今回生産の銘柄から次回生産の銘柄に銘柄変更する場合に、次回生産の銘柄に求められる規定の物性値(MFR)を満足するための運転条件を迅速かつ正確に決定することができ、熱可塑性樹脂の生産の制御を容易にすることのできるMFR推算方法、この推定方法を用いた運転制御方法及び制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の一つであるポリオレフィンは種々の成形方法で成形され、多方面の用途に用いられている。これらの成形方法や用途に応じ、ポリオレフィンとして、所定の物性、すなわち、メルトフロレート(溶融流れ指数。以下MFRと記載する)を有するものが求められている。
【0003】
しかしながら,ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の生産では、使用する触媒の性能等の変動により、運転に再現性がなく、前回と同じ運転条件で運転を行っても、生産される熱可塑性樹脂のMFRが異なる場合が多い。
このような問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている(特許文献1〜5参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3189332号
【特許文献2】
特許第3189333号
【特許文献3】
特許第3189339号
【特許文献4】
特許第3189340号
【特許文献5】
特公平7−25830号公報
【0005】
ところで、銘柄変更時には、次の銘柄の運転条件を正確に推定するのが困難で、変更時に、変更前後の製品のいずれにも属さない格外品が大量に発生しているのが現状である。
さらに、MFRは、リアルタイムに測定することが困難で、次回生産の銘柄の運転条件の設定を誤ると、生産開始後の工程試験でMFRが規格外であることが始めて判明し、その間に生産された製品が全て格外品となり、格外品大量生産の一因になっているという問題がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の装置及び方法では、銘柄変更等の大幅な運転条件の変更時には、十分な推定を行うことができないという問題がある。また、特許文献5に記載の方法では、運転条件が同一であれば製品のMFRも同一であることを前提にしており、運転条件が変更された場合のMFRの推定を行うことはできない。
そのため、上記特許文献に記載の技術によって、上記問題を解決することはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記の問題点にかんがみてなされたもので、触媒性能等の変動を考慮してMFR推算式を導出することで、銘柄変更時のように何らかの操作を行ったときの運転条件を正確に決定するとともに、銘柄変更等に要する時間を短縮することのできる熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法、この方法を利用した熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法及び運転制御システムを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の発明者は、生産している銘柄の目標MFRと運転条件との関係を正確に導き出すことができれば、銘柄変更や触媒ロットの変更等、熱可塑性樹脂の生産において何らかの操作を行っても、迅速かつ適切に運転条件の制御を行うことができることに着目して、本発明に想到した。
【0009】
具体的に、請求項1に記載の発明は、熱可塑性樹脂を生産する工程において、前記熱可塑性樹脂の銘柄変更等の操作を行う際に、操作後のMFRの目標値を得るための運転条件を、所定のMFRの推算式から導出する方法であって、
▲1▼ MFRの推算を行うための基本式として、回帰式 Log(MFR)=F(Xn)を準備するステップと、
▲2▼ 熱可塑性樹脂の生産の重合形態が、単段重合か多段重合かを判断するステップと、
▲3▼ 単段重合の場合又は多段重合の第一段目では、前記基本式からMFRを推算するステップと、
▲4▼ 多段重合の第二段目以降〜第N段目では、前記MFRを加成性が成立する状態値に変換する変換式を準備し、この変換式を用いて前記第二段目〜第N段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値を前記状態値に変換するステップと、
▲5▼ 任意の第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を、第k段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値と、第k−1段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値との差から計算するステップと、
▲6▼ 第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を前記変換式を用いてMFRに変換し、
▲7▼ このMFRについて新たな回帰式Log(MFR)=F(Xn)を作成して、第二段目以降の第k段目における固有のMFRの推算値を得るステップと、
を有する方法としてある。
この方法では、ステップ▲1▼で本発明の基本となる回帰式を準備する。この回帰式は、過去の運転データに基づくもので、特許文献1〜5でも示されている公知のものを用いることができる。
ステップ▲2▼では、重合形態の判断を行う。これは、MFRには加成性が成立せず、単段重合又は多段重合の第一段目と多段重合の二段目以降とで、MFRの推算を区別する必要があるからである。
単段重合又は多段重合の第一段目の場合は、ステップ▲3▼に示すように、基本式を用いることができる。
多段重合の二段目以降では、ステップ▲4▼でMFRを加成性の成立する状態値の式に変換する。前記した状態値としては、例えば、請求項2に記載するように、状態値として極限粘度[η]を挙げることができる。
ステップ▲5▼に示すように、固有のMFRを求めようとする重合槽の上流側と下流側の状態値を実測で求め、その差を逆変換することで、個々の重合槽のMFRを求めることができる。そして、このMFRからステップ▲7▼で新たな回帰式Log(MFR)=F(Xn)を作成することで、重合槽ごとの固有のMFRを推算することが可能になる。
【0010】
本発明では、前記基本式に、MFRの推算値の精度を高めるために銘柄ごとの補正値である第一の補正値E1を加味するようにしてもよい。
この第一の補正値E1は、請求項3に記載するように、単段重合の場合又は多段重合の第一段目と、多段重合の第二段目以降とで分けて求める。
単段重合の場合又は多段重合の第一段目の場合は、定期的又は不定期的に行われる工程試験によって得られた重合槽下流側のMFRの実測値を用い、まず、差分Eを、E=log(MFRの実測値)−F(Xn)から求める。
【0011】
多段重合の第二段目以降では、前記▲7▼のステップで得られた回帰式より推算されたMFR推算値と、前記工程試験によって得られたMFRの実測値に基づき、前記▲5▼,▲6▼及び▲7▼のステップと同様の手順で求めたMFRの計算値とを用いて、
前記差分Eを、log(MFRの実測値の計算値)−log(MFRの推算値)から求める。
そして、この差分Eを、複数回行われた前記工程試験ごとに求め、前記熱可塑性樹脂の同じ銘柄ごとに前記差分Eを平均化して、前記第一の補正値E1を得る。
【0012】
ポリオレフィン等の生産においては、同一種類の触媒であっても、ロットが切り替わると運転条件が変化し、MFRが変化する。そこで、本発明においては、上記の第一の補正値E1の他に、触媒ロットの変更に伴う運転条件の変化を考慮して、さらに推算の精度を高めるための触媒に関する第二の補正値E3を用いている。
この場合は、請求項4に記載するように、前記基本式に、MFRの推算値の精度を高めるために第二の補正値E3をさらに加味する場合であって、▲1▼ 前記基本式又は前記基本式に前記第一の補正値E1を加味した式から、定期的又は不定期的に生成MFRを推算し、この生成MFRを積算して、積算MFRを推算し、この推算結果を、時刻データとともに、第二の補正値E3を計算するための積算MFRとして登録するステップと、▲2▼ 今回工程試験が実施された時刻における重合槽ごとの個別のMFRの積算値を、今回工程試験の実測値から計算によって求めるステップと、▲3▼ 今回工程試験が実施された時刻におけるステップ▲1▼で登録した前記積算MFRを読み込むステップと、▲4▼ ステップ▲2▼で求めた実測値に基づく積算MFRの計算値と、ステップ▲3▼で読み込んだ前記積算MFRの推算値との差分E2を求めるステップと、▲5▼ 複数の差分E2を同一の触媒ロットごとに平均化して第二の補正値E3を求めるステップとを有する方法としてもよい
【0013】
正確な積算MFRの推算値は、請求項5に記載するように、上記で得た第二の補正値E3を用い、前記基本式又は前記基本式に前記第一の補正値E1及び/又は前記第二の補正値E3を加味した式から、定期的又は不定期的に生成MFRを推算し、この生成MFRを積算して、積算MFRを推算することで得られる。
なお、この場合、生産を開始して所定時間経過したときの各重合槽のMFRの積算値(積算MFR)を、生成MFRの推算値のみから求めてもよいし、前回工程試験で実測された積算MFRの実測値の計算値に、定期的又は不定期的に推算した生成MFRの推算値を加えて得るようにしてもよい。
このように、本発明のMFR推算方法によれば、生産開始から所定時間経過後のMFRを、リアルタイムで得ることが可能になるうえ、銘柄や触媒ロットの違いによる補正値E1,E3を利用することで、正確なMFRを得ることができる。
【0014】
本発明の運転制御方法では、上記推算方法で得たMFRと運転条件との関係式を用いて、MFR目標値に対する運転条件を決定する。
すなわち、本発明の運転制御方法は、請求項6に記載するように、請求項1〜5のいずれかに記載のMFR推算方法から得られた前記熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応した運転条件とMFRとの関係式を用い、前記熱可塑性樹脂の生産過程で何らかの操作が加えられたときに、生産する前記熱可塑性樹脂の目標MFRから、当該銘柄の前記熱可塑性樹脂の生産に必要な運転条件を決定する方法である。
この運転制御方法は、請求項7に記載するように、銘柄変更のときの運転条件の決定に特に有効である。
【0015】
また、本発明では、MFR目標値により最終的な運転条件が決定されるので、前回生産の銘柄から今回生産の銘柄に変更するまでの過程を比較的自由に設定することが可能である。
例えば、請求項8に記載するように、前回生産銘柄から今回生産銘柄に変更する間に、前記目標MFRに基づいて決定された前記運転条件の少なくとも一部を所定時間過度状態にするようにすることも可能である。
このように、所定の運転条件について過度状態の時間を設けることで、銘柄変更に要する時間を短縮することができる。
【0016】
なお、この場合、前記過度状態を作り出すための時間は、銘柄変更を行っている時間内にMFR推算を一回又は複数回行い、MFR推算値が目標MFRの許容範囲の上限又は下限に達したときに、過度状態の前記運転条件を予め決定された運転条件に変更するようにしてもよいし、請求項9に記載するように、前記MFRの推算方法を用いて、銘柄変更時の前記MFRの推算値が前記目標MFRの許容値の上限又は下限に達するまでの時間を予測し、この時間を、前記過度状態の維持時間としてもよい。
【0017】
請求項1〜5に記載の推算方法を利用して熱可塑性樹脂の生産装置の制御を行う運転制御装置は、請求項10に記載するように、請求項1〜5の推算方法によって得られた熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応した運転条件とMFRとの関係式を、銘柄ごとの第一の補正値及び触媒ロットごとの第二の補正値とともに記憶するデータバンクセンターと、このデータバンクセンターに記憶された運転条件とMFRとの関係式を用いて、生産を行う所定銘柄のMFR目標値から前記運転条件を決定する計算機とを有する構成としてある。
この構成によれば、MFRと運転条件との関係式及び補正値E1,E3から、目標MFRに対する運転条件をただちに決定することができる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、工程試験の結果を、工程試験を行った時刻データとともに記憶するMFR試験データバンクと、請求項1〜5の推算方法によって推算を行うべき基本式と前記第一の補正値E1とを記憶するMFR推算用データベースと、前記第二の補正値E3を記憶する補正値データベースと、前記MFR推算用データベースに記憶された前記基本式及び前記第一の補正値E1に基づいて、MFRの推算を行うMFR推算計算機とを有し、前記MFR試験データバンクに記憶された工程試験の結果と、MFR推算用計算機で計算されたMFR推算値とから、前記第二の補正値の更新値を求め、この更新値を加味した補正値を、新たな第二の補正値E3として前記補正値データベースに記憶させるように構成してある。
この構成によれば、触媒ロットに関する第二の補正値E3が工程試験を行うごとに補正され、常に正確なMFRの推算や運転条件の決定を行うことが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を、詳細に説明する。
本発明では、過去の運転履歴から、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の生産工程における銘柄ごと及び重合槽ごとのMFRの推算式を回帰式から作成し、この推算式から得られたMFRと運転条件との関係式から、目標MFRに対する運転条件を決定することができるようにしているとともに、MFRのリアルタイムの監視を可能にしている。また、実際のMFRと推算によって得られたMFRとの差を補正値によって修正し、さらに、この補正値を随時更新することで、MFR推算の精度を向上させている。
【0020】
[運転制御システムの全体構成]
まず、本発明において銘柄変更時のMFRの推算及びこの推算に基づいて生産装置の運転制御を行う運転制御システムの全体構成を、図1を参照しながら簡単に説明する。
図1は、本発明における運転制御システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の運転制御システムは、ポリオレフィンの生産を行うプラント装置(ポリオレフィン生産装置)1の運転状態の監視と制御とを行うプラント監視・制御装置2と、プラント監視・制御装置2によって収集されたデータを長期間記憶するデータバンクセンター3と、プラント監視・制御装置2によって収集されたデータと、データバンクセンター3に記憶されたデータとに基づいて、プラント装置1の運転に必要な運転条件を求める計算機8とを有している。これらは、通信回線10を介して、各々間でデータの授受が可能である。
【0021】
なお、この運転制御システムは、計算機8を主体とする上位制御系と、プラント監視・制御装置2を主体とする下位制御系の二段階の制御系からなり、上位制御系では、生産計画にしたがったプラント装置1の基本的な運転を制御し、下位制御系では、プラント装置1に含まれる重合槽等の各々の装置の目標値を再構築し、この目標値になるように重合槽等の制御を行う。
【0022】
このプラント装置1では、例えば五分おきにサンプリング(MFRの推算)を行って、プラント装置1を構成する図示しない重合槽の各々のMFRの推算を行うほか、例えば12時間おきに工程試験を行って、MFRの実測値を求めている。
サンプリングによるMFRの推算値とサンプリングの時刻データ、工程試験によるMFR実測値と、工程試験を行った時刻データは、重合槽ごとに時系列でMFR試験結果データバンク4に記憶される。
【0023】
また、MFRの推算を行うための基本式と、後述の手法により得られる第一の補正値E1は、MFR推算用データベース7に記憶される。この実施形態では、後述するように、第一の補正値E1の他に、触媒ロットの補正値である第二の補正値E3を前記の基本式に加味するが、この補正値E3はデータバンクセンター3に記憶され、工程試験を行うたびに更新が行われるようになっている。
銘柄切替時等の何らかの操作を行ったときのMFRの推算は、MFR推算用データベース7に記憶された補正値E1及び基本式と、データバンクセンター3に記憶された最新の補正値E3とを用いて、MFR推算計算機6が行う。
【0024】
次に、上記制御システムにおけるMFR推算の基本式及び補正値E1.E3の算出方法について詳述する。
[本発明の基本式]
本発明において、MFRを求めるための基本式としては、k1,k2,k3・・・を独立変数X1,X2,X3・・・の係数とした回帰式
log(MFR)=k1・X1+k2・X2+k3・X3+・・・(式1)
を用いる。ここで 独立変数X1,X2,X3・・・は運転条件を示し、例えば、
X1=log(気相の水素分圧 / 気相のモノマー分圧)
又はX1=log(気相水素濃度 / 気相モノマー濃度)
X2=(原料供給量)
X3=(重合槽温度)
・・・
である。この回帰式は、例えば、上記した特許文献1(式6)や特許文献5(式I)で公知の手法を用いて、過去の運転履歴から得ることができる。
なお、以下の説明では、式1の右辺の独立変数の項を、簡単に書き換えて、
log(MFR)=F(Xn)と記載する。
【0025】
[MFR,極限粘度[η]間の変換]
単段重合又は多段重合の第一段目の場合は、各重合槽が個別に運転されるため、各重合槽ごとに上記の式1の推算式を用いてMFRを推算することができる。
しかし、多段重合の場合の第二段目以降の重合槽については、上流の重合槽で生成されたポリマーの物性の影響を受けるため、重合槽内で生成するポリマーのMFRを直接測定することができない。
【0026】
つまり、図2に示すように、重合槽がA,B,C・・・と段階的に設けられている場合には、k段目の重合槽kのMFR[k]の実測値と、k−1段目の重合槽(k−1)のMFR[実測値]とから、k段目の重合槽kの固有のMFR[k*]の計算値を得ることができる。
この場合、MFRに加成性が成立しないことから、工程試験時における(k−1)段目の重合槽(k−1)のMFRの実測値と、同一の工程試験時刻における第k段目の重合槽kのMFRの実測値とからMFRの加成性を仮定して、第k段目の重合槽kの固有のMFR[k*]の計算を行う。
例えば、第二段目の重合槽Bの場合は、重合槽BのMFR[B]の実測値(MFR[B]実測値と記載する)と重合槽AのMFRの実測値(MFR[A]実測値と記載する)とから、重合槽B固有のMFR[B*]の計算を行う。
なお、以下の説明では、説明の便宜のため、第一段目の重合槽Aと第二段目の重合槽Bとを例に挙げて説明する。
【0027】
ここで、極限粘度[η]と、MFRとの関係は、
[η]=a・MFR^b・・・(式2)
で表される。これをMFRに逆変換するには、
MFR=([η]/a)^1/b・・・(式3)
とすればよい。なお、式2及び式3において、a,bは、経験的に求められた係数である。
【0028】
重合槽Aと重合槽Bの極限粘度[η]の関係は、以下の式で表すことができる。
F[A]・[η[A]]+F[B]・[η[B*]]=(F[A]+F[B])[η[B]]・・・(式4)
ここで、[η[B*]]は、重合槽Bで生成している固有のMFR[B*]の変換値である。また、F[A],F[B]は、それぞれ、重合槽A,Bのモノマー流量を示し、それぞれの重合量に等しいと仮定している。
【0029】
式4のF[A]・[η[A]]と(F[A]+F[B])[η[B]]は、第一段目の重合槽AのMFR[A]実測値と、第二段目の重合槽BのMFR[B]実測値を[η]に変換して求めることができるから、重合槽Bで生成される固有のMFRの計算値(MFR[B*])は、式4から得た、
[η[B*]]={(F[A]+F[B])・[η[B]]−F[A]・[η[A]]}/FB[B]・・・(式5)
を、式3を使って逆変換することにより求めることができる。
【0030】
このように、式5より得た重合槽Bの固有のMFR[B*]を従属変数とし、重合槽Bの運転状態を、式1と同様にX1,X2・・・として、新たに回帰式を作成すると
log(MFR[B*])=F(Xn)′・・・(式1′)
となる。
なお、以下の説明では、説明の便宜のため、多段重合の場合と、単段重合及び多段重合の第一段目の重合とを区別するために、多段重合の場合は「′」を付して表すことがある。
上記した式1及び式1′から、重合槽がA,B,C・・・と段階的に設けられている場合においても、各重合槽A,B,C・・・で個別に生成されるポリマーのMFRを推算することが可能になる。
なお、上記の式では、第一段目の重合槽AのMFRの実測値(MFR[A]実測値)を用いているが、このMFR[A]実測値の代わりに、式1を用いた重合槽AのMFRの推算値(MFR[A]推算値)を用いることもできる。
【0031】
[推算式の精度を高めるための補正値E1の加味]
同一触媒を用いた定常運転中においては、上記の式1及び式1′を使って、例えば5分おきにサンプリング(推算)を行い、MFRが規格内に入っているかどうかを監視する。また、例えば12時間おきに工程試験を行い、MFRの実測を行う。この場合、MFRの実測値と、MFRの推算値に差が生じる場合があるため、推算式の精度を高めるための補正値E1を銘柄ごとに設ける。
すなわち、基本式(式1)及び(式1′)に、補正値E1,E1′とを加味して
log(MFR)=F(Xn)+E1
log(MFR*)=F(Xn)′+E1′
により、MFRの推算を行うわけである。
【0032】
[補正値E1,E1′の算出]
補正値E1,E1′の算出は以下の手順で行う。
▲1▼ 単段重合又は多段重合の第一段目の場合
補正値E1は、工程試験を行って時刻におけるMFRの実測値と推算値との差、つまり、
E1=log(MFRの実測値)−F(Xn)で求めることができる。
なお、この実施形態では、補正値E1の精度を向上させるために、工程試験を行うたびに上記の式を使って複数の差分Eを求め、銘柄ごとの差分Eの平均をとって、第一の補正値E1としている。
すなわち、
E=log(MFRの実測値)−F(Xn)・・・(式6)
とし、複数得た差分Eの中から同一銘柄にかかる差分Eを取り出し、そのサンプル数で除して、
E1=ΣE/n n:同一銘柄における差分Eのサンプル数
よって、この補正値E1を加味して、上記(式1)は、
log(MFR)=F(Xn)+E1 (式7)
となる。
【0033】
▲2▼ 多段重合の第二段目以降の場合
二段目以降の重合槽B,C・・・それぞれの固有のMFRは、前述したように計測ができない。そのため、例えば第二段目の重合槽Bにおいては、第一段目の重合槽Aの下流側のMFRの工程試験における実測値と、第二段目の重合槽Bの下流側のMFRの工程試験における実測値とを[η]に変換して差分を求め、これを逆変換してMFR[B*]計算値を得る。
この実測値に基づくMFR[B*]計算値と、式1′を使って得たMFR[B*]推算値との差から、工程試験ごとに複数の差分E′を求め、同一銘柄にかかる差分Eをそのサンプル数で除して、平均値をE1′とすればよい。すなわち、
E′=log(MFR*計算値)−F(Xn)′・・・(式6′)
E1′=ΣE′/n n:同一銘柄における差分E′のサンプル数
よって、式1′は、
log(MFR*)=F(Xn)′+E1′・・・(式7′)
となる。
【0034】
[補正値E3の算出]
熱可塑性樹脂の生産においては、他の運転条件が同じでも触媒ロットの変更により推算値が変化することがある。そこで、この実施形態では、触媒ロットの変更にともなう第二の補正値E3を上記の推算式に加味する。
補正値E3は、基本的には、式7、式7′から得た推算値と、MFRの実測値との差分E2に基づいて決定される。また、この実施形態では、補正値E3の精度をさらに高めるために、工程試験を行うたびに補正値E3の更新を行う。
【0035】
具体的に、E3の算出は以下の手順で行う。
▲1▼ 単段重合又は多段重合の第一段目の場合
補正値E3の計算にあたっては、まず、同一触媒ロットを使用している期間に行った工程試験により得られた、(i)今回の工程試験時の積算MFRの実測値と、(ii)サンプリング時に推算した生成MFRを積算して得られた今回の工程試験時における積算MFRの推算値とを利用し、今回工程試験時の積算MFRの実測値(上記(i))と、同時刻の積算MFRの推算値(同(ii))との差分E2を求める。すなわち、差分E2は、
E2=log(積算MFRの実測値)−log(積算MFRの推算値)・・・(式8)
により求める。
【0036】
なお、式8の右辺の積算MFRは、触媒にかかる要素を取り除くために、補正値E3を含まない式7:log(MFR)=F(Xn)+E1を用いる。そして、この式7を使って得たMFRを一旦極限粘度[η]に変換し、
[η]積算値の更新値=[η]今回生成値+{[η]積算値の前回計算値−[η]今回生成値}exp[−t/滞留時間]・・・(式10)
から[η]積算値の更新値を求める。
そして、[η]積算値の更新値から、式3により今回の積算MFRに逆変換することで得られる。
上記式10を用いて得た積算MFRの推算値と実測値の計算値とから、その差分E2を求め、同一触媒ロットにおける差分E2の平均をとって、第二の補正値E3を得る。
これを、上記式1に代入して、
log(MFR)=F(Xn)+E1+E3・・・・・・(式9)
を得る。
【0037】
▲2▼ 多段重合の第二段目以降の場合
差分E2の計算は上記と同様で、
E2=log(積算MFRの実測値の計算値)−log(積算MFRの推算値)・・・(式8′)
により求める。
【0038】
なお、積算MFRは、式7′で得たMFRを用い、
[η]積算値の更新値=[η]今回変動値+{[η]積算値の前回計算値−[η]今回変動値}exp[−t/滞留時間]・・・(式12)
から[η]積算値の更新値を求めて、この[η]積算値の更新値を、式3によりMFR*に逆変換して得る。
よって、
log(MFR*)=F(Xn)′+E1′+E3′・・・・・・(式9′)
を得る。
【0039】
次に、補正値E3を更新する手順について説明する。
図3は、補正値E3の更新を行うための手順を示すフローチャートである。
まず、データバンクセンター3のサンプリング時刻データを参照し(ステップS1)、サンプリング時刻になっているときは、次に、工程試験によってMFR試験値の更新が行われたかどうかを、MFR試験データバンクの時刻データに基づいて判断する(ステップS2)。
【0040】
工程試験によってMFR試験値の更新が行われていない場合には、まず、現在運転中の銘柄、重合形態、運転状態をデータバンクセンター3から読み込む。次に、MFR積算用データベース7から運転中の銘柄の重合形態、各重合槽用の推算式の補正値E1,E1′を、また、データバンクセンター3から最新の補正値E3,E3′を読み込む。そして、現在運転中の銘柄の重合形態から、各重合槽の推算式(式9又は式9′)を用いて、各重合槽で現在生成している生成MFRを推算する(ステップS3a)。
【0041】
この後、これまでのサンプリングで得た積算MFRの推算値に、今回のサンプリング時の生成MFRの推算値を加えて、新たに積算MFRの推算値を得る(ステップS4a)。このようにして得られた積算MFRの推算値は、通信回線Nを介してデータバンクセンター3に登録される(ステップS5a)。
また、これと並行して、補正値E3,E3′を更新するためのデータを収集し、データバンクセンター3に登録する(ステップ3b〜ステップ5b)。前述したように、補正値E3の更新にあたっては、ステップ3a〜ステップ5bと同様の処理を、補正値E3を取り除いた状態で行う。すなわち、基本式に第一の補正値E1,E1′を加えた式を用いて生成MFRの推算を行い(ステップS3b)、この生成MFRの推算値を用いてMFRの積算を行い(ステップS4b)、これを、補正値E3,E3′の更新用としてデータバンクセンター3に登録する(ステップS5b)わけである。
なお、ステップ3b〜ステップ5bの処理は、ステップS3a〜S5aの処理と別々に行ってもよいし、ステップS3a〜S5aの処理を行う過程で行ってもよい。また、MFRの積算にあたっては、MFRは加成性がないため、式3を使って極限粘度[η]に変換して積算を行うことは言うまでもない。
【0042】
ステップS2で工程試験によりMFR試験値の更新が行われていると判断した場合には、補正値E3の更新を行う。この更新は、まず、データバンクセンター3から、ステップS3b〜S5bによって予め記憶された補正値E3更新用の積算MFRの推算値を読み出す(ステップS6)。
【0043】
次に、今回工程試験時の積算MFRを実測値から計算し(ステップS7)、差分E2を計算する(ステップS8)。この差分E2の計算は上記したとおりである。このようにして得られた差分E2を、過去のE2の履歴データに加え、この履歴データに登録された同一触媒ロットにおける差分E2の総和をサンプル数で除して平均化し、新たな補正値E3を得る(ステップS9)。そして、この新たな補正値E3を、最新のものとしてデータバンクセンター3に記憶させる(ステップS10)。
以後、ステップS3aに戻り、新たな補正値E3を使って生成MFRの推算値及び積算MFRの推算値を求め(ステップS3a,S4a)、得られた積算MFRの推算値をデータバンクセンター3に登録する(ステップS5a)。
なお、上記の説明では、ステップS3a〜ステップS5aにおいて、生成MFRの推算値を積算して積算MFRを求めているが、前回工程試験時に実測した積算MFRの実測値の計算値を用い、これに、前回工程試験時以後のサンプリング時の生成MFRを積算して、積算MFRを得るようにすることもできる。
【0044】
上記の手順で得られた式9,式9′は、銘柄ごと,重合槽ごと及び現在使用している触媒性能に対するMFRと運転条件との関係式に他ならない。
そのため、式9及び式9′を使って得られたMFR(MFR推算値)が、生産しようとするポリオレフィンの銘柄ごとのMFRの目標値になるように、運転条件(F(Xn),F(Xn)′の各独立項)を決定することができる。
【0045】
次に、上記した関係式を用い、図1に示した制御システムで運転条件を設定する場合の手順について説明する。
[制御システムの作用]
図4は、図1の制御システムによる銘柄切替時の切替手順を説明するフローチャートである。
銘柄切替開始(ステップS11)と同時に、次回銘柄の生産が単段重合で行われるのか、多段重合で行われるのかを判断する(ステップS12)。
その結果、単段重合の場合又は多段重合の第一段目の場合は、式9を読み出す(ステップS13)とともに、この銘柄に応じた補正値E1をMFR生産用データベース7から、また、データバンクセンター3から使用する触媒に応じた補正値E3を読み出して(ステップS14)、MFRの推算を行う(ステップS17)。
【0046】
多段重合の第二段目以降の場合は、式9′を読み出す(ステップS15)とともに、この銘柄に応じた補正値E1′をMFR生産用データベース7から読み出し、また、データバンクセンター3から使用する触媒に応じた補正値E3′を読み出して(ステップS16)、MFRの推算を行う(ステップS17)。
そして、ステップS17の推算で求められたMFRが、次回生産の銘柄のMFRの規格内、つまり目標MFRになるように、気相水素濃度と気相モノマー濃度との比(以下、[H2]/[MON]と記載する。)やH2(水素)供給量などの運転条件を決定して(ステップS18)、銘柄変更の操作を開始する(ステップS19)。
【0047】
[MFRのリアルタイム監視]
本発明においては、上記の推算式(式9及び式9′)を用いた制御システムにより、MFRのリアルタイムな監視が可能になる。すなわち、例えば五分おきに運転条件を式9及び式9′に代入することで、リアルタイムかつ高精度でMFRを推算することができ、触媒のロット変更等の何らかの操作が加えられた場合にも、触媒のロット変更の影響を予め推算することができ、かつ、触媒ロットの変更があっても、格外品を生産しないように運転条件をただちに変更することができる。
また、目標MFRに対する運転条件が予め正確に決定することができるので、例えば、銘柄変更時の運転条件の切替操作も比較的自由に設定することが可能である。
【0048】
図5は、銘柄切替時におけるMFRの推算結果と、運転条件の一要素(この場合は、MFRに最も大きな影響を与える[H2]/[MON]比と水素供給量とを挙げている)との関係を示すグラフである。
図5のグラフ中の状態Aで、次回生産銘柄のMFRの目標値と式9及び式9′とから、次回生産銘柄の運転条件を決定する。
状態Bでは、水素供給量を急激に最大値まで高め、[H2]/[MON]比を早期に変化させるようにする。例えば、図5に示すように、水素供給量を最大(MAX)にして、[H2]/[MON]比の変化速度が最大になるようにする。
状態Cでは、MFRの目標値に短時間で到達するように、決定された運転条件よりも大きい過剰状態、図5に示す例ではMAX状態で[H2]/[MON]比を推移させる。
そして、状態Dで予め決定された運転条件の値に戻し、MFRを目標値に到達させる。
【0049】
なお、状態Aと状態Dとの間のMFRは、この間の運転条件と式9,9′とにより推定することができるので、適宜にサンプリング(推算)を行ってMFRの値が所定値(例えば、目標MFRの許容範囲の下限値)になったときに、状態Cから状態Dに移行するように運転条件を制御することができる。
また、MFRの値が所定値(例えば、目標MFRの許容範囲の下限値)になる時間Tを予測しておき、この時間経過後に予め決定された運転条件の値に戻すようにしてもよい。
【0050】
本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態によりなんら限定されるものではなく、本発明の適用範囲内で種々に変更することが可能である。
例えば、上記の説明では、熱可塑性樹脂の一例としてポリオレフィンを例に挙げて説明したが、本発明はポリエチレン等、他の熱可塑性樹脂の生産にも適用が可能である。
また、運転条件の変更が必要になる操作として、銘柄切替や触媒ロットの変更を例に挙げたが、目標MFRに対して運転条件の制御が必要になる操作であればこれ以外にも本発明の適用が可能である。
さらに、図5においては、次回生産銘柄の目標MFRが今回生産銘柄の目標MFRよりも高い場合を例に挙げるが、次回生産銘柄の目標MFRが今回生産銘柄の目標MFRよりも低い場合も同様である。この場合は、上記の制御とは逆になり、例えば、[H2]/[MON]比の「下限値」を「上限値」とし、水素の供給量の「最大値」を「0(ゼロ)」とし、必要に応じて、重合槽の気相部分から排気を行い、気相部分の水素濃度の低下を促進させるようにしてもよい。
また、
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒性能等の変動をも考慮したMFRの推算式から、高い精度で運転条件とMFRとの関係式を得ることができ、銘柄切替や触媒ロットの変動等、何らかの操作が熱可塑性樹脂の生産工程に加えられた場合にも、目標MFRに応じた運転条件を予め求めることができ、銘柄変更等にかかる時間を大幅に短縮することができるほか、格外品の生産を最小限に抑制することができる。
また、リアルタイムでMFRの監視を行うことができ、何らかの異常が発生した場合に、その結果をMFRの推算でただちに知ることができ、これによっても格外品の生産を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における運転制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】重合槽が多段設けられている場合に、二段目以降の固有のMFR(MFR*)を計算する概念を示す図である。
【図3】補正値E3の更新を行うための手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の制御システムによる銘柄切替時の切替手順を説明するフローチャートである。
【図5】銘柄切替時におけるMFRの推算結果と、運転条件の一要素([H2]/[MON]比と水素供給量)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 プラント装置(ポリオレフィン生産装置)
2 プラント監視・制御装置
3 データバンクセンター(補正値データベース)
4 MFR試験値データバンク
6 MFR推算計算機
7 MFR推算用データベース
8 計算機
10 通信回線
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂を生産する工程において、前記熱可塑性樹脂の銘柄変更等の操作を行う際に、操作後のMFRの目標値を得るための運転条件を、所定のMFRの推算式から導出する方法であって、
▲1▼ MFRの推算を行うための基本式として、回帰式 Log(MFR)=F(Xn)を準備するステップと、
▲2▼ 熱可塑性樹脂の生産の重合形態が、単段重合か多段重合かを判断するステップと、
▲3▼ 単段重合の場合又は多段重合の第一段目では、前記基本式からMFRを推算するステップと、
▲4▼ 多段重合の第二段目以降〜第N段目では、前記MFRを加成性が成立する状態値に変換する変換式を準備し、この変換式を用いて前記第二段目〜第N段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値を前記状態値に変換するステップと、
▲5▼ 任意の第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を、第k段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値と、第k−1段目の重合槽の下流側におけるMFRの実測値から変換した状態値との差から計算するステップと、
▲6▼ 第k段目(N≧k>1)の重合槽の固有の状態値を、前記変換式を用いてMFRに変換し、
▲7▼ このMFRについて新たな回帰式log(MFR)=F(Xn)を作成して、第二段目以降の第k段目における固有のMFRの推算値を得るステップと、
を有することを特徴とする熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法。 - 前記状態値が極限粘度[η]で、
変換式 [η]=a・MFR^b (a,bは係数)によりMFRと[η]との間の変換を行うことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法。 - 前記基本式に、MFRの推算値の精度を高めるために銘柄ごとの補正値である第一の補正値E1を加味する場合において、
この第一の補正値E1は、単段重合の場合又は多段重合の第一段目で、定期的又は不定期的に行われる工程試験によって得られた重合槽下流側のMFRの実測値を用い、差分Eを、
E=log(MFRの実測値)−F(Xn) から求め、
多段重合の第二段目以降では、前記▲7▼のステップで得られた回帰式より推算されたMFR推算値と、前記工程試験によって得られたMFRの実測値に基き、前記▲5▼,▲6▼及び▲7▼のステップと同様の手順で求めたMFRの計算値とを用いて、
前記差分Eを、
E=log(MFRの実測値の計算値)−F(Xn) から求め、
この差分Eに関するデータを、複数回行われた前記工程試験ごとに求め、前記熱可塑性樹脂の同じ銘柄ごとに前記差分Eを平均化して、前記第一の補正値E1を得ること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法。 - 前記基本式に、MFRの推算値の精度を高めるために第二の補正値E3をさらに加味する場合であって、
▲1▼ 前記基本式又は前記基本式に前記第一の補正値E1を加味した式から、定期的又は不定期的に生成MFRを推算し、この生成MFRを積算して、積算MFRを推算し、この推算結果を、時刻データとともに、第二の補正値E3を計算するための積算MFRとして登録するステップと、
▲2▼ 今回工程試験が実施された時刻における重合槽ごとの個別のMFRの積算値を、今回工程試験の実測値から計算によって求めるステップと、
▲3▼ 今回工程試験が実施された時刻におけるステップ▲1▼で登録した前記積算MFRを読み込むステップと、
▲4▼ ステップ▲2▼で求めた実測値に基づく積算MFRの計算値と、ステップ▲3▼で読み込んだ前記積算MFRの推算値との差分E2を求めるステップと、
▲5▼ 複数の差分E2を同一の触媒ロットごとに平均化して第二の補正値E3を求めるステップと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法。 - 前記基本式又は前記基本式に前記第一の補正値E1及び/又は前記第二の補正値E3を加味した式から、定期的又は不定期的に生成MFRを推算し、この生成MFRを積算して、積算MFRを推算することを特徴とする請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂生産におけるMFR推算方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のMFR推算方法から得られた前記熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応する運転条件とMFRとの関係式を用い、前記熱可塑性樹脂の生産過程で何らかの操作が加えられたときに、生産する前記熱可塑性樹脂の目標MFRから、当該銘柄の前記熱可塑性樹脂の生産に必要な運転条件を決定することを特徴とする熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のMFR推算方法から得られた前記熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応する運転条件とMFRとの関係式を用い、銘柄変更時に、次回生産銘柄の目標MFRから、次回生産銘柄の前記熱可塑性樹脂の生産に必要な運転条件を決定することを特徴とする熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法。
- 前回生産銘柄から今回生産銘柄に変更する間に、前記目標MFRに基づいて決定された前記運転条件の少なくとも一部を所定時間過度状態にすることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法。
- 請求項8に記載の熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法において、前記MFRの推算方法を用いて、銘柄変更時の前記MFRの推算値が前記目標MFRの許容値の上限又は下限に達するまでの時間を予測し、この時間を、前記過度状態の維持時間としたことを特徴とする熱可塑性樹脂生産のための運転制御方法。
- 請求項1〜5の推算方法によって得られた熱可塑性樹脂の銘柄ごと、重合槽ごと、現在使用されている触媒性能に対応する運転条件とMFRとの関係式を、銘柄ごとの第一の補正値及び触媒ロットごとの第二の補正値とともに記憶するデータバンクセンターと、
このデータバンクセンターに記憶された運転条件とMFRとの関係式を用いて、生産を行う所定銘柄のMFR目標値から前記運転条件を決定する計算機と、
を有することを特徴とする熱可塑性樹脂生産のための運転制御システム。 - 工程試験の結果を、工程試験を行った時刻データとともに記憶するMFR試験データバンクと、請求項1〜5の推算方法によって推算を行うべき基本式と前記第一の補正値E1とを記憶するMFR推算用データベースと、前記第二の補正値E3を記憶する補正値データベースと、前記MFR推算用データベースに記憶された前記基本式及び前記第一の補正値E1に基づいて、MFRの推算を行うMFR推算計算機とを有し、
前記MFR試験データバンクに記憶された工程試験の結果と、MFR推算用計算機で計算された積算MFRの推算値とから、前記第二の補正値の更新値を求め、この更新値を加味した補正値を、新たな第二の補正値E3として前記補正値データベースに記憶させることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂生産のための運転制御システム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008542497A (ja) * | 2005-06-03 | 2008-11-27 | ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー | 反応移行の間のオフグレード製品の生産を減らす方法 |
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2003
- 2003-07-03 JP JP2003190894A patent/JP2005023213A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008542497A (ja) * | 2005-06-03 | 2008-11-27 | ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー | 反応移行の間のオフグレード製品の生産を減らす方法 |
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