JP2005021020A - 乾燥ナチュラルチーズ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】全窒素に対する水溶性窒素の比率が30%以上であるナチュラルチーズを任意の形状に裁断して凍結乾燥する。
Description
【産業上の利用分野】
本発明は凍結乾燥による乾燥チーズ類の製造方法に関する。特に本発明は、使用するナチュラルチーズ原料の水溶性窒素に留意することにより得られる、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い凍結乾燥ナチュラルチーズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナチュラルチーズは、使用する乳酸菌や酵素あるいは熟成温度や熟成期間等の製造条件によって、風味や食感の異なるものが得られることが知られているが、保存性の向上や用途の拡大等を意図してチーズを乾燥する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、原料ナチュラルチーズの一種類もしくは複数種類を組み合わせたものに水を加え、この原料ナチュラルチーズと水が全体に均一状態に混り合っているが未だ乳化状態に至らない程度に混合し、これを凍結乾燥する乾燥ナチュラルチーズの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、加熱溶融処理した乳化チーズ類を主原料とする含水原料を溶融温度より低温でブロック状物乃至粒状物が視認されない程度まで撹伴し、賦形状態で乾燥する乾燥チーズの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、チーズ類を低速度で撹伴しながら加熱し、これに気体を通気して含気させたチーズ類を真空下で発泡させ、つづいて凍結乾燥する乾燥チーズの製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
そして、繊維状組織を有し、水分を約40〜45%含有するチーズを凍結乾燥することにより、水分含有量が10〜30%重量%になるように調整する繊維状組織を有する乾燥チーズの製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−135542号公報
【特許文献2】
特開昭63−160548号公報
【特許文献3】
特開平5−276865号公報
【特許文献4】
特開平9−248131号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1には、同文献記載の方法によって製造されたものは、オイルオフがなく、トッピング材として用いることができるものであることが示されている。トッピング材として用いるためには湯戻り復元性が必要であり、水の添加を必須とし、乾燥前のチーズの水分値を一定範囲に調整する必要がある。また、加熱溶融工程を持たないことから、チーズの流動性が乏しく、また、乳化状態まで至らないような不完全なチーズと水との混合状態が記載されているが、その判定は非常に困難であり、混合が弱ければチョッパーで粉砕したナチュラルチーズ粒が残り、部分的に湯戻り不良となったり、混合が強すぎるのは良くないなど、その混合状態の終点の判断は極めて困難であり、安定な混合状態とするのは難しい。
【0009】
特許文献2には、同文献記載の方法によって製造されたものは、湯戻り時にオイルオフが生じにくく、トッピング材として用いることができるものであることが示されている。湯戻り復元性を付与するために水の添加を必須とし、乾燥前のチーズの水分値を一定範囲に調整する必要がある。また、加熱溶融処理したチーズ類と水を混合し、ブロック状物ないし粒状物が視認されない程度まで撹拌するというものであり、特許文献1記載の方法と同様に、どこまで撹拌するのか、撹拌工程の終了判断が極めて難しく、多大な手間を要する。
【0010】
特許文献3には、同文献記載の方法によって製造されたものは、湯戻り復元性に優れ、トッピング材として用いることができるものであることが示されている。そのために、凍結乾燥に先立って含気させておくことによって多孔質な組織とし、水分の浸透を早めることが記載されている。その結果得られたものは、糸引き性を有しており、トッピング材としては適していても、チーズそのものとして食するには適さない。
【0011】
特許文献4に記載された方法は、水分含有量を10〜30重量%に調整しなければならず、また、繊維状組織を有する特殊なチーズしか得られない。
【0012】
さらに、一般に、ナチュラルチーズを凍結乾燥した場合 、硬くて、きしみがあり、そのまま食べるには不適当な食感の乾燥チーズになる。
【0013】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素量に留意することにより、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い凍結乾燥ナチュラルチーズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素の比率が30%以上であるナチュラルチーズを任意の形状に裁断して凍結乾燥することにより、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズを得るものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、ナチュラルチーズを任意の形状にカットして凍結乾燥を行うことにより、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズを得ることを目的とする。通常、ナチュラルチーズを単にカットして凍結乾燥した場合、硬くて、きしみが多く、そのまま食べるには不適当な食感のチーズとなる。しかし、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素量の比率の高いナチュラルチーズを任意の形状にカットして凍結乾燥した場合に、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズを得られることを見いだした。
【0016】
具体的には、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素量の比率の異なる硬質チーズであるチェダーチーズまたはゴーダチーズを短冊状にカットして凍結乾燥することにより得られた乾燥チーズについて、官能検査を行った結果、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素の比率が30%以上であるナチュラルチーズは、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズとなることを見いだした。
【0017】
さらに具体的には、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素量の比率が17%、22%、24%、35%、56%であるチェダーチーズを、8mm×8mm×30mmの短冊状にカットし、その物を凍結乾燥することにより得られた乾燥チーズについて、16人の熟練パネラーによる官能検査を行った。その結果、全窒素に対する水溶性窒素量の比率が20%前後であるチェダーチーズの凍結乾燥チーズは、硬くて、きしみがあり、そのまま食べるには不適当な食感の乾燥チーズであるが、全窒素に対する水溶性窒素量が多くなるほど風味が良好となり、きしみも少なくなる傾向がみられた(表1参照)。特に、全窒素に対する水溶性窒素量の比率が30%以上60%未満のチェダーチーズの乾燥チーズは、風味が良好で、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズとなる。
【0018】
【表1】
風味の評価基準は、
5:非常においしい、4:おいしい、3:普通、2:まずい、1:非常にまずい
食感の評価基準は、
5:非常によい、4:よい、3:普通、2:ややきしむ、1:非常にきしむ
【0019】
上記の水溶性窒素量の測定は以下の通り行った。原料チーズ10gに0.013M CaCl2を30ml加え、ホモジナイザーで3分間ホモゲナイズした。0.1N NaOHでpH7.5に調製し、100 mlに定容し、3000rpm、20分間遠心分離し脱脂した。得られた上清中の窒素量を粗蛋白含有率測定装置(TECATOR社)により測定した。全窒素量は粗蛋白含有率測定装置により測定した。得られた数値から下記の式を用いて、全窒素量に対する水溶性窒素量の比率を求めた。
全窒素量に対する水溶性窒素量の比率(%)=水溶性窒素量/全窒素量×100
【0020】
また、上記の凍結乾燥は以下の通り行った。ナチュラルチーズを、8mm×8mm×30mmの短冊状にカットして、−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製のもの)を用いて、真空度2.0Pa、凍結乾燥機のテーブル温度20℃の条件で、24時間乾燥してチーズ中の水分を除去した。なお、テーブル温度とは、凍結乾燥機内の加熱板の温度をいう。また、凍結乾燥は、水分とともに凍結させた原料を減圧状態にして水分を昇華させることにより乾燥させる操作であり、凍結温度はその乾燥処理が問題なく遂行される温度であればよい。
【0021】
また、クリープメーターで破断強度を測定したところ、全窒素に対する水溶性窒素量の比率が35%以上であるチェダーチーズの乾燥チーズは、急激に破断強度が減少するという結果が得られた(表2参照)。すなわち、ナチュラルチーズの熟成の指標である全窒素に対する水溶性窒素の比率が30%以上であるチェダーチーズの凍結乾燥チーズは、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズとなる。
【0022】
【表2】
【0023】
上記の破断荷重の測定は以下の通り行った。破断荷重は、7×20×40mmの凍結乾燥チーズ片を、応力測定機(レオナー、ヤマデン社製)により楔形プランジャーを用いて、試料台上昇速度0.5mm/secで破断することにより測定した。この破断荷重(gf)を硬さの指標である破断強度とした。
【0024】
次に、ゴーダチーズを用いて凍結乾燥した場合、全窒素量に対する水溶性窒素量の比率が30%であるゴーダチーズの凍結乾燥チーズは、ややきしみが感じられ、全窒素量に対する水溶性窒素量の比率が49%であるゴーダチーズの凍結乾燥チーズはきしみが感じられなくなる。しかし、ゴーダチーズの場合は、水溶性窒素量の比率が増加するにつれて、その乾燥チーズの苦味が強くなる傾向にある。従って、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良いゴーダチーズの凍結乾燥チーズを得るには、全窒素量に対する水溶性窒素量の比率が40%以上50%未満であるゴーダチーズを選定する必要がある(表3参照)。また、クリープメーターで破断強度を測定した結果、全窒素に対する水溶性窒素量の比率が49%であるゴーダチーズの乾燥チーズの破断強度は著しく減少する結果が得られた(表4参照)。すなわち、ナチュラルチーズの水溶性窒素の比率が増加すれば、食感が軽い乾燥チーズとなる。
【0025】
【表3】
食感の評価基準は、
5:非常によい、4:よい、3:普通、2:ややきしむ、1:非常にきしむ
【0026】
【表4】
【0027】
【実施例1】
全窒素に対する水溶性窒素の比率が35%であるチェダーチーズを、8mm×8mm×30mmの短冊状にカットし、−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製のもの)を用いて、真空度2.0Pa、凍結乾燥機のテーブル温度20℃の条件で、24時間乾燥してチーズ中の水分を除去した。得られた乾燥チーズは、16人の熟練パネラーに食してもらい、食感を評価してもらったところ、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズであった。
【0028】
【実施例2】
全窒素に対する水溶性窒素の比率が40%であるゴーダチーズを、8mm×8mm×30mmの短冊状にカットし、−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製のもの)を用いて、真空度2.0Pa、凍結乾燥機のテーブル温度20℃の条件で、24時間乾燥してチーズ中の水分を除去した。得られた乾燥チーズは、16人の熟練パネラーに食してもらい、食感を評価してもらったところ、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い乾燥チーズであった。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、原料となるナチュラルチーズの水溶性窒素量に留意するだけで、風味が良好で、食感が軽く、きしみのない歯触りの良い凍結乾燥ナチュラルチーズを製造することが出来る。
Claims (4)
- 全窒素に対する水溶性窒素量の比率が30%以上であるナチュラルチーズを任意の形状にカットして凍結乾燥を行う乾燥ナチュラルチーズの製造方法。
- 全窒素に対する水溶性窒素量の比率が30%〜60%であるナチュラルチーズを任意の形状にカットして凍結乾燥を行う乾燥ナチュラルチーズの製造方法。
- 全窒素に対する水溶性窒素量の比率が30%以上であるナチュラルチーズを任意の形状にカットして凍結乾燥を行う乾燥ナチュラルチーズ。
- 全窒素に対する水溶性窒素量の比率が30%〜60%であるナチュラルチーズを任意の形状にカットして凍結乾燥を行う乾燥ナチュラルチーズ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003187518A JP2005021020A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | 乾燥ナチュラルチーズ及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003187518A JP2005021020A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | 乾燥ナチュラルチーズ及びその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2005021020A true JP2005021020A (ja) | 2005-01-27 |
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JP (1) | JP2005021020A (ja) |
Cited By (1)
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WO2015050231A1 (ja) * | 2013-10-03 | 2015-04-09 | 株式会社明治 | 乾燥チーズの製造方法 |
-
2003
- 2003-06-30 JP JP2003187518A patent/JP2005021020A/ja active Pending
Cited By (3)
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WO2015050231A1 (ja) * | 2013-10-03 | 2015-04-09 | 株式会社明治 | 乾燥チーズの製造方法 |
JPWO2015050231A1 (ja) * | 2013-10-03 | 2017-03-09 | 株式会社明治 | 乾燥チーズの製造方法 |
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