JP2005015422A - 非即時型アレルギー疾患治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、カンナビノイドレセプター調節物質、特に末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に選択的な調節物質、特にインバースアゴニストを有効成分とする新規な非即時型アレルギー疾患治療剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明により、カンナビノイドレセプター調節物質、特に末梢細胞型カンナビノイドレセプターに選択的に作用するインバースアゴニスト、具体的にはN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド等、又はその医薬上許容される塩を含んでなる非即時型アレルギー疾患治療剤が提供された。本発明の治療剤は、例えば、喘息、アトピー性皮膚炎等の難治性のアレルギー疾患に対し効果を示す。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明により、カンナビノイドレセプター調節物質、特に末梢細胞型カンナビノイドレセプターに選択的に作用するインバースアゴニスト、具体的にはN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド等、又はその医薬上許容される塩を含んでなる非即時型アレルギー疾患治療剤が提供された。本発明の治療剤は、例えば、喘息、アトピー性皮膚炎等の難治性のアレルギー疾患に対し効果を示す。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カンナビノイドレセプターインバースアゴニストの新規用途に関する。より詳しくは、カンナビノイドレセプター、特に末梢細胞型レセプター(CB2とも言う。)に選択的に作用するインバースアゴニストの非即時型アレルギー疾患治療剤としての用途に関し、また、該インバースアゴニストを用いた非即時型アレルギー疾患治療方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
<大麻及びカンナビノイドについて>
大麻は古代から鎮痛、解熱、催眠等に用いられ、薬として利用されてきた。日本では、1886−1951年まで薬局方に印度大麻として収載され、鎮痛・麻酔剤として使用された。また、アメリカ合衆国では、1850−1942年まで薬局方でリウマチ、喘息、扁桃炎などの薬として大麻のアルコール溶剤が認められていた。
【0003】
一方、大麻あるいはその精神作用発現の主要成分と考えられるΔ9−テトラヒドロカンナビノール(THC)は、視覚・聴覚の異常、時間・空間的認知の異常、被暗示性の増大、思考能力・自発性の低下ならび記憶障害を誘発し、精神機能に著明な変化を起こすことが知られる。その他の薬理作用も極めて多様であり運動失調、被刺激性の増大、体温低下、呼吸抑制、心拍数増大、カタレプシー惹起作用、血圧上昇、血管拡張作用、免疫抑制作用、口渇等が報告されており、現在では、その使用に制限が設けられている。
【0004】
大麻に含まれる一連の幻覚発現物質はカンノビノイドと総称され、現在、THCをはじめと60種以上のカンナビノイドが見出されている。
【0005】
天然のカンナビノイドよりも強力な種々の人工的リガンドが開発され、そのレセプターが探索された。結果、1988年にラット脳の膜成分にカンナビノイドレセプターの存在が示され、その後1991年にはヒトcDNAがクローニングされた。一方、それと44%の相同性を有する蛋白質が、ヒト前骨髄性白血病細胞HL60から見出され、その後、脾臓などの末梢組織で分布することが確認された。1993年、脳の受容体をCB1、末梢組織に見出される受容体をCB2と呼ぶことがMunroらによって提唱され、現在はこの名称が一般に使われている。
【0006】
CB1の体内分布は脳以外に、ヒト精巣、ヒト前立腺・卵巣・子宮・骨髄・胸腺・扁桃・下垂体・副腎・心・肺・胃・大腸・胆管・白血球などの多くの組織で探知されているがそのレベルは脳よりもはるかに低い。これに対しCB2はラット脳には存在せずに脾の辺縁帯の単球に見出された。ヒトの脾・白血球・扁桃・胸腺・膵では、CB2はCB1よりはるかに高いレベルで存在する。
【0007】
受容体の2つのサブタイプ(CB1とCB2)の実体と、アナンダミド、2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)、2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E;2−AGの還元体であって2−AGと同様の作用を示すと考えられる。)等の内因性リガンドの存在が確認され、その生理的役割についての検討がなされた。その結果、CB2がT細胞及びB細胞の増殖を抑えてアポトーシスを誘導し免疫抑制作用を示すこと、CB1欠損のノックアウトマウスではカンナビノイド投与で見られる中枢作用が示されないこと、CB2欠損のノックアウトマウスではカンナビノイドによるヘルパーT細胞活性化抑制がみられないこと等様々な知見が得られつつある。
【0008】
【化21】
【0009】
現在、これらの知見からCB1とCB2の分布と機能の違いを考え、それぞれに特異的なアゴニスト、アンタゴニスト、或いはインバースアゴニストの医薬品への応用が試みられている。CB1と関連してパーキンソン病、アルツハイマー病、記憶障害、老人性痴呆、多発性硬化症、食欲減退、疼痛など、CB2関連として免疫疾患、リウマチ、炎症などが、創薬開発の対象として考えられている。中でも、CB2に選択的に作用する薬剤、すなわち末梢細胞型(末梢型、末梢性とも言う。)カンナビノイドレセプターに選択的な調節物質は、中枢作用を示さない安全な薬剤として期待されている。ここで、カンナビノイドが極めて低濃度でCB1への中枢作用を示すことから、CB2選択的調節物質の中でも、よりCB1作用が少ないことが望まれる。
【0010】
なお、現在、非選択的カンナビノイドレセプターリガンドとして、Δ9−THC、CP55940、WIN55212−2、HU−243、HU−210等が、CB1選択的リガンドとして、SR141716A、LY320135、アラキドノイル−2’−クロロエチルアミド、CP56667等が、CB2選択的リガンドとして、SR144528、AM630、HU−308、JWH−051、L−768242等が知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照。)。
【0011】
<アレルギーについて>
ここで、アレルギー疾患、特にアレルギー性皮膚炎及びアレルギー性喘息について説明をする。
アレルギーとは、抗原抗体反応に基づく生体の過敏性の反応として認識され、単球・マクロファージ・好中球のなどの集積を特徴とする通常の炎症反応とは異なり、アレルギー反応では、好酸球・好塩基球・肥満細胞の寄与するところが大きい。
【0012】
アレルギー反応は、現在、一般的に4つの型に分類され、生体ではこれら4つの反応が互いに独立して起こるのではなく、いくつかの型の反応が同時に起こっていることもある。
【0013】
抗原(アレルゲン)が体内に侵入すると、まずマクロファージ等の抗原提示細胞に取り込まれる。抗原提示細胞は、取り込んだ抗原の情報をT細胞に伝える。さらにT細胞はB細胞に対して抗原特異的IgE抗体を作るように命じる。IgE抗体は肥満細胞と結合し、これにより肥満細胞は感作状態となる。
【0014】
再び抗原が侵入し、肥満細胞上のIgE抗体と抗原とが結合すると、肥満細胞からヒスタミン、好酸球走化因子、ロイコトリエンなどの様々な化学伝達物質やインターロイキンなどのサイトカインが放出される。
【0015】
例えば、化学伝達物質が気管支に作用すれば、気管支平滑筋が収縮し、粘膜の腫れ、痰の分泌などによって気道が狭くなり喘息発作を起こす。皮膚に作用すると炎症や腫れ、痒みが起き、蕁麻疹等の皮膚疾患を起こす。鼻の粘膜に作用すると血管透過性が亢進し、血液中の水分が集まり鼻粘膜が腫れて鼻づまりを起こしたり、神経刺激によってクシャミ、鼻汁が大量に出るアレルギー性鼻炎をもたらす。消化管でこの反応が起こると腸の平滑筋が収縮して腸の動き(蠕動)が異常に高まり、腹痛、嘔吐、下痢などの消化管アレルギーをもたらす。
【0016】
この反応は抗原が侵入して30分以内におこるため、即時型アレルギー反応或いはI型アレルギー反応と言われる。通常、即時型反応は1時間ほどで収まる。代表的な疾患としてはアナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性胃腸症等が挙げられる。
【0017】
しかし、数時間から数日後には肥満細胞から放出された好酸球走化因子やサイトカインに引き寄せられて、毒性の強い化学物質を持つ好酸球がアレルギー反応の部位に集まり、化学物質を放出して組織障害を引き起こす。これを「遅発型アレルギー反応」という。この反応が気管支で起これば粘膜上皮が剥離して、抗原がさらに容易に侵入できるようになり、アレルギー反応が長引き、気道の過敏性が亢進し、喘息が難治化する。これを遅発型喘息反応という。例えば、この遅発型反応は、喘息においては主に4−8時間後であり、アトピー性皮膚炎においては主に12−48時間後に起こる。
【0018】
II型アレルギー反応は細胞溶解型ともいわれ、抗原に結合したIgMまたはIgG抗体に補体が作用し、細胞膜に穴を開けて細胞を溶かす反応である。これとは別に抗体の結合をうけた細胞にマクロファージやキラー細胞が作用して傷害物質を放出し、細胞や組織を破壊する反応もある。代表的な疾患として溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、グッドパスチェア症候群などが挙げられる。
【0019】
III型アレルギー反応は、抗原と抗体(IgG抗体)が結合した抗原抗体複合体が食細胞に処理されきれずに組織に沈着し、そこへ補体やマクロファージ、好中球が集まって炎症を起こし、組織を障害する。代表的な疾患として溶連菌による急性糸球体腎炎、関節リウマチや膠原病、血清病、ウイルス性肝炎、アレルギー性肺胞炎などが挙げられる。
【0020】
IV型アレルギー反応は、1−3型と異なり抗体は関与しない。感作が成立した状態で再度抗原が侵入すると、T細胞はサイトカインを放出して、リンパ球、好中球、マクロファージなどの免疫細胞を遊走し抗原を破壊するが、同時に炎症を起こし組織破壊を引き起こす。侵入した抗原が細胞であれば、キラーT細胞が抗原を破壊する。反応が完了するのには通常1−2日かかり、「遅延型アレルギー反応」とも呼ばれる。ツベルクリン反応、結核病変、臓器移植後の拒絶反応、うるしかぶれ、化粧品かぶれ等の皮膚炎などはIV型アレルギー反応である。
【0021】
アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎などの一般的アレルギー疾患の急性症状は、大部分が即時型反応であるとされてきた。しかし近年、アレルギー性喘息は一過性の即時型過敏症ではなく、慢性炎症に本体があるとの認識がなされてきた。
【0022】
喘息にはアレルゲンにより誘発される「アレルギー性喘息」と、特定アレルゲンによらず、寒冷、運動、等に誘発される非アレルギー性喘息が知られる。
【0023】
「喘息」すなわち「気管支喘息」は、かつて可逆性の気流制限(気道閉塞)と気道の過敏性が特徴とされていたが、喘息の気道には、気道上皮の剥離、基底膜直下の繊維化(基底膜部の肥厚)、好酸球の集簇を特徴とする慢性の炎症が存在することが明らかになり、今日では慢性炎症性疾患と認識されている。気道炎症には、好酸球、T細胞、肥満細胞など多くの炎症細胞が関与すると見られ、即時型反応では肥満細胞、遅発型反応では好酸球、遅延型反応では好酸球及びCD4陽性ヘルパーT細胞の関与が重要と考えられる。
【0024】
抗喘息薬は、可逆的気道閉塞に対する気管支拡張薬中心の治療から、慢性炎症に対する抗炎症薬中心の治療へと移行してきた。発作時の治療としては、その症状に応じ、短時間作用性β2刺激薬、短時間作用性テオフィリン薬、吸入抗コリン薬、注射・経口ステロイド剤等が用いられる。また、長期管理に際しては、吸入・経口ステロイド薬、除放性テオフィリン薬、長期作用性β2刺激薬の他、抗アレルギー剤(メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1拮抗薬、ロイコトリエン拮抗薬、トロンボキサンA2阻害・拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬)が用いられている。しかし、ステロイド剤に見られる副腎機能抑制等の副作用、ステロイド、ロイコトリエン拮抗薬等の効果の低い症状(抵抗性)も知られ、更なる抗喘息薬が期待されている。
【0025】
アトピー性喘息あるいはアトピー性皮膚炎は、家族歴あるいは既往歴でアレルギー疾患を認める症状である。アトピー型の喘息、皮膚炎は小児に多いこともあり、特により副作用の少ない治療薬が望まれる。
【0026】
「『アトピー性皮膚炎』は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
【0027】
アトピー素因:(1)家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、或いは複数の疾患)、または(2)IgE抗体を産生しやすい素因」と定義され、他の炎症性皮膚疾患とは区別される。
【0028】
症状として皮膚の過敏性および乾燥を有し、特徴的な皮疹(紅斑、丘疹、痂皮、鱗屑、苔癬化病変、痒疹等)は、慢性・反復性経過をたどる。また、カポジ水痘用発疹症、ウイルス感染症(単純ヘルペスウイルス感染症等)、膿痂疹、伝染性軟属種(白内障、網膜剥離等)等の合併症を引き起こす。
【0029】
アトピー性皮膚炎でもまた、その病変には、IgE・肥満細胞による即時型・遅発型アレルギー反応に加え、ランゲルハンス細胞・T細胞による遅延型アレルギー反応が係わると考えられる。
【0030】
その治療には、食物・ダニ等の原因・増悪因子の除去、スキンケア(皮膚を清潔に保つ、皮膚の乾燥を防ぐため保湿剤を用いる等)とあわせ、症状に応じて薬物療法が用いられる。
【0031】
掻痒に対しては抗ヒスタミン剤が用いられるが、その効果は蕁麻疹の場合とは異なり顕著ではない。
【0032】
炎症に対しては原則としてプレドニゾロン、吉草酸ベタメサゾン等のステロイド外用剤が用いられる。補助的に抗ヒスタミン剤あるいは抗アレルギー剤の内服薬が用いられるが、それらのみで皮膚炎をコントロールすることは困難とされる。一般的にアトピー性皮膚炎は難治であり、副作用からステロイド剤を忌避する声も多いため、新薬の開発が望まれている。近年、免疫抑制剤のタクロリムス軟膏剤が用いられ効果を上げているものの、これもその副作用が懸念され、使用に制限が設けられている。また、皮膚疾患部の損傷が激しく外用が困難である症状、顔・粘膜等もともと表皮が薄く敏感な箇所におこる症状、表皮の内層部・体の広範囲に及ぶ疾患の治療等のため、取扱いが容易で安全な経口剤の開発も望まれている。
【0033】
本出願人の出願に係る特開2000−256323号(WO00/40562)には、カンナビノイドレセプター調節物質として下記一般式で表される2−オキソキノリン化合物が開示されている。
【0034】
【化22】
【0035】
(式中、各記号は前述の通り。)
また、その例として2−オキソキノリン化合物としてN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(以下、化合物Aという。)等が開示されている。
【0036】
【化23】
【0037】
また、同公報には、カンナビノイドレセプター調節物質の利用について、「末梢細胞型レセプター、例えばマクロファージ上のレセプターの発見(非特許文献6参照)によって、免疫反応を調節することにより、抗炎症作用、抗アレルギー作用を有し、もとより免疫調節作用を併せ持つ、末梢細胞型レセプターのアゴニストの開発が進められている。」こと、「末梢細胞型カンナビノイドレセプターに選択的に作用する薬剤は、副作用となる体温低下、カタレプシー等の中枢作用を示さない、安全な薬剤となり得るため、特に、末梢細胞型レセプター選択的調節剤の開発が期待されている。」こと、及び「カンナビノイドレセプター(特に末梢型カンナビノイドレセプター)調節剤、免疫調節剤、自己免疫疾患治療剤、抗炎症剤及び抗アレルギー剤として有用である。」旨が記載されている。
【0038】
加えて、同公報には、薬理試験として、末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に対する選択的結合試験、カラゲニン誘発足浮腫モデル試験、及び、ラットタウロコール膵炎モデルによる炎症及び出血の抑制試験について記載されている(特許文献1参照。)。
【0039】
しかし、当該公報には抗炎症作用についての具体的な開示が見られるものの、アレルギー疾患に関する具体的な試験例やデータは開示されていない。また、アトピー性皮膚炎・アレルギー性喘息等の特定アレルギー疾患についての具体的教示も見あたらない。
【0040】
また、先行文献には上記化合物A及び下記SR144528がCB2選択的リガンドであること、及び、それらがCB2インバースアゴニストとして作用することが記載されている。詳しくは、CB2発現CHO細胞において、化合物A及び下記SR144528が、アデニル酸シクラーゼ活性化剤であるフォルスコリンの刺激による環状アデノシン一リン酸(cAMP)産生を、増加させること、すなわち、化合物A及びSR144528がCB2インバースアゴニストとして作用することが記載されている。当文献では同試験においてTHCがcAMP産生を低減させるという一般的な知見についても併記している(非特許文献3参照)。
【0041】
【化24】
【0042】
既知のいくつかの特許公報(或いは文献)には、カンナビノイド調節物質の抗アレルギー効果についての記載が見られる。
【0043】
特開昭52−113976号(US4179517号)には、THC誘導体の喘息発作の予防効果について記載されており、適応症として喘息、アレルギー等が記載されている(特許文献2参照)。
【0044】
特表2002−511411号(WO99/52524号)には、カンナビジオール等のカンナビノイドが、喘息等の炎症性疾患の治療に用いられることが示されている。しかし、カンナビジオールはCB1とCB2には結合をしないとする文献が引用されている(特許文献3参照)。
【0045】
WO01/64212号には、カンナビノイド調節物質が、好ましくはCB1アゴニストが、筋疾患、例えば喘息、気管支炎等の治療に用いられることが示されている(特許文献4参照)。
【0046】
WO01/95899号には、アラキドン酸誘発耳浮腫に対するカンナビジオール誘導体の抗炎症作用が記載されている(特許文献5参照)。
【0047】
WO01/89589号には、カンナビノイドを局所投与することにより末梢細胞に存在するCB1レセプターを調節し、咳を改善(ameliorate)する方法が記されている(特許文献6参照)。
【0048】
WO00/16756号には、カンナビノイド調節物質が開示され、適応症として皮膚疾患(アトピー性皮膚炎等)、呼吸器疾患(喘息等)、アレルギー性鼻炎等が述べられている。しかし、該化合物が、CB1選択的であること、末梢細胞に存在するCB1レセプターを調節することが述べられている(特許文献7参照)。
【0049】
特表平8−504195号(WO94/12466号)には、カンナビノイドレセプターに対するリガンドが、抗炎症、抗喘息等に活性を示すことが記載されている(特許文献8参照)。
【0050】
特開平6−73014号(US5624941号)及び特開平7−324076号(US5462960号)には、カンナビノイドレセプターに対するリガンドが、胸腺障害、喘息、免疫調節等の治療に使用され得ることが記載されている(特許文献9及び特許文献10参照)。
【0051】
WO01/98289号には、Δ6テトラヒドロカンナビノールタイプの化合物が、炎症、喘息・慢性閉塞性肺疾患等の肺疾患、自己免疫疾患等の治療に使用され得ることが記載されている。しかし、その作用は、NメチルDアスパラギン酸受容体の遮断と抗酸化活性に加えて、プロスタグランジン合成阻害、腫瘍壊死因子産生阻害、シクロオキゲナーゼ阻害、一酸化窒素産生阻害によるものであることが記載されている(特許文献11参照)。
【0052】
WO02/26702号には、カンナビノイドレセプター調節物質、特にアゴニストが、喘息、アレルギー、皮膚疾患等に有効であることが記載されている(特許文献12参照)。
【0053】
WO01/87297号には、CB1調節物質が、乾癬の様な皮膚壊死等の治療に用いられることが記載されている(特許文献13参照)。
【0054】
WO02/42248号には、カンナビノイドレセプター結合剤、特にCB1アゴニストが、喘息、鼻炎、炎症性皮膚疾患に使用されることが記載されている(特許文献14参照)。
【0055】
WO02/47691号には、カンナビノイドレセプターアゴニストが、炎症等の治療に用いられることが記載されている(特許文献15参照)。
【0056】
しかし、これら化合物が、真にアレルギー疾患の治療効果、特にアトピー性疾患への治療効果を有するか否かは、いまだ実験的に明らかにされていない。
【0057】
また、いくつかの公報にはCB2選択的なカンナビノイド調節物質による薬理作用について記載が見られる。
【0058】
特表11−500411号(WO96/18391号)には、CB2調節物質が、免疫系障害、慢性呼吸器障害(喘息等)等の治療に用いられることが示されている。また、マストセル、非免疫セル(例えば、小脳顆粒、小脳、心臓)にCB2が発現することを見出した旨が記載されている(特許文献16参照)。
【0059】
特表11−501615号(WO96/18600号)には、CB2調節物質が、自己免疫疾患、慢性炎症、呼吸器障害(喘息等)等の治療に用いられることが示されている(特許文献17参照)。
【0060】
特表10−508870号(WO96/25397号)には、CB2調節物質が、肺障害(喘息、慢性気管支炎等)、アレルギー性反応(鼻炎、接触性皮膚炎、結膜炎等)、免疫系障害の治療に用いられることが示されている(特許文献18参照)。
【0061】
特表平11−507937号(US6013648)には、CB2作用薬が開示されており、該作用薬の適応症として、自己免疫疾患、感染性疾患、アレルギー疾患(具体的には、急性過敏症、喘息)が記載されている。しかし、該作用薬はCB2に対し選択性を有するが、フォルスコリン刺激によるcAMP産生を抑制する旨が記載されている(特許文献19参照)。
【0062】
特表2000−502080号(US5925768号)には、CB2受容体への親和性を有する化合物が開示されており、適応症として免疫疾患、例えばアレルギー疾患(即時型過敏症又は喘息)等が記載されている。しかし、該化合物がCB2受容体アンタゴニストであることが記載されている(特許文献20参照)。
【0063】
特表2001−508799号(WO98/31227号)には、CB2調節物質、特にアンタゴニストが、免疫疾患、炎症等の治療に用いられることが示されている(特許文献21参照)。
【0064】
特表2001−516361号(WO98/41519号)には、CB2調節物質、特にアゴニストが、免疫疾患、炎症等の治療に用いられることが示されている(特許文献22参照)。
【0065】
特表2001−515470号(US6262112号)には、カンナビノイドアゴニスト、特にCB1アゴニストが、アレルギー性疾患、喘息、炎症性及び/又は免疫学原因の皮膚疾患等の治療に有効であることが記載されている。また、当該化合物のいくつかはCB2に有効であることが記載されている(特許文献23参照)。
【0066】
WO99/57107号には、CB2選択的調節物質が、抗炎症、免疫調節に用いられることが示されている(特許文献24参照)。
【0067】
特表2002−523395号(WO00/10967号)及び特表2002−523396号(WO00/10968号)には、CB1アゴニスト、CB2アゴニストが、それぞれ皮膚疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献25及び特許文献26参照)。
【0068】
特表2002−539246号(WO00/56303号)には、CB2選択的アゴニストが、免疫疾患の治療に用いられることが示されている(特許文献27参照)。
【0069】
WO01/4083号には、CB2選択的調節物質、特にアゴニストが、炎症、免疫性疾患、例えばアトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、喘息等の治療に用いられることが示されている。しかし、該化はcAMP上昇を抑制する旨が記載されている。(特許文献28参照)。
【0070】
WO01/19807号には、CB2選択的調節物質、特にアゴニストが、抗炎症、免疫抑制作用を有することが記載されており、ヒツジ赤血球誘発遅延型過敏反応モデル実験による試験結果が記載されている。しかし、該化合物はcAMP上昇を抑制する旨が記載されている。(特許文献29参照)。
【0071】
WO01/29007号には、カンナビノイド調製物質が、抗炎症、免疫系の調節等に用いられることが示されている。該化合物のいくつかはアンタゴニストであり、その他がアゴニストであることが記載され、また、バインディングアッセイの結果によりCB2選択的な調節物質も示されている(特許文献30参照)。
【0072】
WO01/28497号には、CB2選択的調節物質、特にアゴニストが、抗炎症作用等を有することが示されている(特許文献31参照)。
【0073】
WO01/32169号には、CB2選択的アゴニストが、抗炎症、自己免疫疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献32参照)。
【0074】
WO01/28329号には、CB2選択的調節物質が、抗炎症、自己免疫疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献33参照)。
【0075】
WO01/28557号には、カンナビノイドレセプター調節物質が、抗炎症、自己免疫疾患等の治療に用いられることが示されており、該化合物のうちいくつかはCB2選択的な調節物質である試験データが開示されている(特許文献34参照)。
【0076】
WO01/32629号には、CB2アンタゴニストが、抗炎症、免疫疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献35参照)。
【0077】
WO01/58869号には、CBアゴニスト、特にCB2アゴニストが、呼吸器疾患特に、喘息、気管支炎等の治療に用いられることが示されている。また、該アゴニストが肺上皮細胞からのムチン産生を抑制することが記載されている(特許文献36参照)。
【0078】
WO01/96330号には、CB2に結合する化合物が開示され、適応症として、呼吸器疾患、例えば喘息・気管支炎等、炎症性疾患等が挙げられている(特許文献37参照)。
【0079】
WO02/10135号には、CB2アゴニストが、喘息、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患等の治療に有効であることが記載されている。また、該化合物がcAMP産生を抑制することをしめす試験結果が示されている(特許文献38参照)。
【0080】
WO02/42269号には、CB2アゴニストが、乾癬等の免疫系疾患、過敏症・喘息・アレルギー性鼻炎、接触性皮膚炎等のアレルギー性疾患、関節炎等の炎症性疾患等の治療に有効であることが記載されている(特許文献39参照)。
【0081】
WO02/58636号には、カンナビ様化合物、特にCB2選択的化合物が、抗炎症、免疫系の調節等に用いられることが記載されている。また、該化合物がcAMP産生を抑制するアゴニストであることが記載されている(特許文献40参照)。
【0082】
WO02/60447号には、CB1選択的調節物質、CB2選択的調節物質が記載されている。また、CB2選択的調節物質、特にアンタゴニストが、抗炎症、免疫系の調節等に用いられることが記載されている(特許文献41参照)。
【0083】
WO02/53543号には、CB2親和性化合物が、抗炎症剤、免疫抑制剤等として用いられることが示されている。また、フォルスコリン刺激によるcAMP生成量を測定し、いくつかの化合物がアゴニスト作用を示すこと、及び、ヒツジ赤血球誘発遅延型過敏反応モデルを用いた試験方法を記載している(特許文献42参照)。
【0084】
WO02/72562号には、CB2親和性化合物、特にアゴニストが、抗炎症剤、免疫抑制剤等として用いられることが示されている。また、フォルスコリン刺激によるcAMP生成量を測定し、いくつかの化合物がアゴニスト作用を示すこと、及び、ヒツジ赤血球誘発遅延型過敏反応モデルを用いた試験方法を記載している(特許文献43参照)。
【0085】
WO02/62750号には、カンナビノイド調節物質、特にCB2に結合する化合物が、アトピー性皮膚炎、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎等の治療に有効であることが記載されている(特許文献44参照)。
【0086】
WO02/85866号には、CB2選択的アゴニストが、痛みの治療に有効であることが記載されている(特許文献45参照)。
【0087】
しかしながら、これら化合物がCB2に選択的に作用することは、依然として実証されておらず、いまだ、これら化合物がアレルギー疾患、特に非即時型アレルギー疾患治療剤として、真に有効であるか否かについて、確かな実験に基づいて、或いは、理論的証拠を持って確認されていない。ましてや、これら化合物が、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、即時型喘息反応、遅発型喘息反応、気道過敏症に有効であるという確証もなされてはいない。また、CB2インバースアゴニスト作用によって治療効果を示すことも示されておらず、それを示唆する記載も見られない。
【0088】
このように、カンナビノイドレセプターへの作用と病理との関係についての知見は様々であり、特にCB2選択的な調節物質の臨床への応用について、アゴニストであるべきか、アンタゴニストであるべきか、或いはインバースアゴニストであるべきかの統一した見解は得られていない。
【0089】
これら事情の下、抗アレルギー剤として用いられるカンナビノイド調節剤、特にインバースアゴニストについては、今だ開発されるに至っていない。
【0090】
なお、本発明者らは、本出願に係る薬理作用を評価するに際し、抗アレルギー効果の判断に有効な病態モデル動物として、アトピー性皮膚炎類似の炎症を誘導させたDNFB誘発アレルギー性皮膚炎マウス(非特許文献4参照。)、(即時相・遅発相・後遅発相)の皮膚炎を惹起させたIgE依存性アレルギー性皮膚炎マウス(非特許文献5参照。)等を使用した。これら病態モデルは抗アレルギー作用、特にアトピー性皮膚炎の薬理作用を評価するのに適したモデルとして用いられている。
【0091】
【特許文献1】
特開2000−256323号(29頁実施例3−5、及び、6頁右42行から7頁左1行、65頁右43行から46行、63頁左16行から65頁左37行)
【0092】
【特許文献2】
特開昭52−113976号(3頁右下1行から4行、8頁右上12行から17行)
【0093】
【特許文献3】
特表2002−511411号(6頁段落番号0005、7頁段落番号0009)
【0094】
【特許文献4】
WO01/64212号(4頁1行から29行)
【0095】
【特許文献5】
WO01/95899号(20頁7行から23頁23行)
【0096】
【特許文献6】
WO01/89589号(2頁15行から4頁2行、図2B、2C)
【0097】
【特許文献7】
WO00/16756号(13頁18行から15頁14行、30頁13行から32頁表、43頁4行から44頁行)
【0098】
【特許文献8】
特表平8−504195号(12頁表II、16頁)
【0099】
【特許文献9】
特開平6−73014号(6頁左28行から50行)
【0100】
【特許文献10】
特開平7−324076号(8頁左4行から34行)
【0101】
【特許文献11】
WO01/98289号(5頁下13行から7頁11行、12頁7行から13行)
【0102】
【特許文献12】
WO02/26702号
【0103】
【特許文献13】
WO01/87297号(3頁9行から15行、10頁7行から13行)
【0104】
【特許文献14】
WO02/42248号(6頁下5行から7頁20行、12頁14行から17行)
【0105】
【特許文献15】
WO02/47691号(2頁段落番号0006、3頁4行から最終行)
【0106】
【特許文献16】
特表11−500411号(9頁12行から11頁12行、65頁22行から67頁6行)
【0107】
【特許文献17】
特表11−501615号(16頁16行から21行、52頁14行から54頁7行)
【0108】
【特許文献18】
特表10−508870号(13頁11行から12行、34頁7行から22行)
【0109】
【特許文献19】
特表平11−507937号(13頁10行から22行、66頁14行から67頁5行)
【0110】
【特許文献20】
特表2000−502080号(42頁19行から44頁2行)
【0111】
【特許文献21】
特表2001−508799号(14頁5行から14行、27頁9行から18行)
【0112】
【特許文献22】
特表2001−516361号(6頁18行7頁2行、14頁17行から18行)
【0113】
【特許文献23】
特表2001−515470号(86頁7行から87頁14行)
【0114】
【特許文献24】
WO99/57107号(1頁1行から2頁13行、22頁表)
【0115】
【特許文献25】
特表2002−523395号(65頁9行から66頁20行)
【0116】
【特許文献26】
特表2002−523396号(78頁下3行から80頁8行)
【0117】
【特許文献27】
特表2002−539246号(53頁5行から54頁23頁、64頁下9行から65頁5行)
【0118】
【特許文献28】
WO01/4083号(50頁9行から56頁12行)
【0119】
【特許文献29】
WO01/19807号(27頁11行から28頁8行、134頁下7行から138頁最終行)
【0120】
【特許文献30】
WO01/29007号(4頁6行から25行、8頁表1)
【0121】
【特許文献31】
WO01/28497号(1頁下4行から3頁6行、9頁21行から26行)
【0122】
【特許文献32】
WO01/32169号(3頁18行から4頁最終行)
【0123】
【特許文献33】
WO01/28329号(2頁1行から3頁14行)
【0124】
【特許文献34】
WO01/28557号(2頁5行から5頁15行、7頁表)
【0125】
【特許文献35】
WO01/32629号
【0126】
【特許文献36】
WO01/58869号(2頁1行から8行、44頁下4行から46頁15行)
【0127】
【特許文献37】
WO01/96330号(7頁27行から8頁9行、56頁9行から29行)
【0128】
【特許文献38】
WO02/10135号(71頁10行から72頁11行)
【0129】
【特許文献39】
WO02/42269号
【0130】
【特許文献40】
WO02/58636号(7頁5行から8頁25行、29頁18行から25行)
【0131】
【特許文献41】
WO02/60447号(6頁1行から7頁2行、8頁7行から17行、9頁表1)
【0132】
【特許文献42】
WO02/53543号(85頁4行から最終行、278頁4行から281頁15行)
【0133】
【特許文献43】
WO02/72562号(29頁22行から30頁18行、120頁5行から123頁19行)
【0134】
【特許文献44】
WO02/62750号(3頁14行から4頁最終行)
【0135】
【特許文献45】
WO02/85866号(1頁4行8行、8頁31行から9頁3行)
【0136】
【非特許文献1】
山本尚三ら著,生物と化学,vol.39,No.5,pp293から300,2001年
【0137】
【非特許文献2】
Expart Opinion on Therapeutic Patents,Vol.12,No.10,1475−1489,2002
【0138】
【非特許文献3】
The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, vol.296, No.2, pp420から425,2001年(422頁表1、423頁表3)
【0139】
【非特許文献4】
Jarnal of Allergy Clinical Immunology, Vol.100, No.6, Part2, pp.39−44,Dec.1997
【0140】
【非特許文献5】
Pharmacology, Vol.60, No.2, pp.97−104, Feb.2000
【0141】
【非特許文献6】
Munroら, Nature, Vol.365,pp.61−65, 1993
【0142】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通りカンナビノイドレセプター調節物質は未だ医薬品として成功を収めておらず、その効果的な用途が模索されている。
従って、本発明は、カンナビノイドレセプター調節物質、特に末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に選択的な調節物質、特にインバースアゴニストを有効成分とする新規な非即時型アレルギー疾患治療剤を提供することを課題とする。
【0143】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、選択的CB2調節物質、特に特にインバースアゴニストがアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びアレルギー性結膜炎等のアレルギー疾患に対して、極めて有効に作用することを初めて実験的に確認するとともに理論付けをすることによって、本発明を完成した。本発明の医薬は、特に、アレルギー性喘息及びアトピー性皮膚炎の治療剤として有効である。この事実、即ち本発明の効果は、先述の特開2000−256323(WO00/40562)から予測不可能なものであり、発明者自身をして驚くべきものであった。
【0144】
より詳しくは下記〔1〕乃至〔19〕に示す通りである。
〔1〕 カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストを有効成分として含有してなる非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔2〕 インバースアゴニストが、2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)及び/又は2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)のアゴニスト作用に拮抗して、インバースアゴニスト作用を示す化合物である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔3〕 インバースアゴニストが、以下の化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528又はその医薬上許容される塩から選ばれる化合物である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
【0145】
【化25】
(化合物A)
【0146】
【化26】
(化合物B)
【0147】
【化27】
(化合物C)
【0148】
【化28】
(化合物D)
【0149】
【化29】
(化合物E)
【0150】
【化30】
(化合物F)
【0151】
【化31】
(化合物G)
【0152】
【化32】
(化合物H)
【0153】
【化33】
(化合物I)
【0154】
【化34】
【0155】
〔4〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎及び/又はアレルギー性結膜炎である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔5〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎である〔4〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔6〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性喘息である〔4〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔7〕 アレルギー性喘息が、遅発型喘息反応、及び/又は、気道過敏症である〔6〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔8〕 非即時型アレルギー疾患が、遅発型アレルギー反応、及び/又は、遅延型アレルギー反応を伴う疾患である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔9〕 カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストが、ロイコトリエン阻害作用を併せ持つ化合物である〔1〕記載のアレルギー疾患治療剤。
〔10〕 非即時型アレルギー疾患が、2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔11〕 非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む。
(a)カンナビノイドレセプター、内因性カンナビノイド、及び、被験化合物を接触させる工程、
(b)カンナビノイドレセプターと内因性カンナビノイドとの結合能を測定する工程、
(c)被験化合物の非存在下と比較し、工程(b)で測定した結合能を低下させる化合物を選択する工程。
〔12〕 カンナビノイドレセプターがCB2であり、内因性カンナビノイドが2−AG又は2−AG−Eである〔11〕記載の方法。
〔13〕 非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む。
(a) CB2に選択的に結合する候補化合物を選定する工程、
(b) 工程(a)で選定された化合物から、CB2インバースアゴニストである化合物を選定する工程、
(c) 工程(b)で選定された化合物の抗アレルギー作用を測定する工程。
〔14〕 非即時型アレルギー疾患を患う患者に、有効量のCB2インバースアゴニストを含む製剤を投与することからなる非即時型アレルギー疾患の治療方法。
〔15〕 インバースアゴニストが、2−AG及び/又は2−AG−Eのアゴニスト作用に拮抗して、インバースアゴニスト作用を示す化合物である〔14〕記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
〔16〕 インバースアゴニストが、以下の化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528又はその医薬上許容される塩から選ばれる化合物である〔14〕記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
【0156】
【化35】
(化合物A)
【0157】
【化36】
(化合物B)
【0158】
【化37】
(化合物C)
【0159】
【化38】
(化合物D)
【0160】
【化39】
(化合物E)
【0161】
【化40】
(化合物F)
【0162】
【化41】
(化合物G)
【0163】
【化42】
(化合物H)
【0164】
【化43】
(化合物I)
【0165】
【化44】
【0166】
〔17〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎又は及びアレルギー性結膜炎から選ばれる疾患である〔14〕記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
〔18〕 カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストを有効成分として含有してなる2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患の治療剤。
〔19〕 2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患が、血液癌、敗血症、及び、循環器疾患から選ばれる疾患である〔18〕記載の治療剤。
【0167】
【発明の実施の形態】
次に、本明細書において使用する語句の説明を行なう。
【0168】
「カンナビノイドレセプター調節物質」及び「カンナビノイドレセプター調節剤」とは、カンナビノイドレセプターの生物活性を調節する物質、若しくはカンナビノイドレセプターの発現を調節する物質であり、前者としては、アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、その他カンナビノイドレセプターの感受性を増強する或は低減する物質が挙げられ、後者としては、カンナビノイドレセプターの遺伝子発現を増強或は抑制する物質等が挙げられる。
【0169】
アゴニストとは受容体を介して細胞内シグナル伝達を引き起こす物質であり、アゴニストに拮抗してその作用を減弱させる物質をアンタゴニストという。
【0170】
インバースアゴニストとは、レセプターのアゴニスト本来の作用とは逆の作用を来すものである。内因性リガンドや薬物に拮抗して逆作動剤として働くものや、内因性リガンドや薬物の影響を受けずに逆作動剤として働くものも見られる。例えば、カンナビノイドレセプターにおいてcAMPレベルの観点からすると、カンナビノイドがその上昇を抑えるのに比し、化合物AはcAMPレベルを上昇させるという知見が得られている。さらに具体的には、内因性カンナビノイドである2−AG又は2−AG−E(非選択的CBアゴニスト)は、フォルスコリン刺激によるhCB2発現CHO細胞においてcAMP産生を抑制するが、ここでcAMP産生を増加させる働きを示すものはインバースアゴニストであると言える。インバースアゴニストして具体的には、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528、AM630が挙げられ、好ましくは化合物A及びSR144528である。
【0171】
カンナビノイドレセプター調節物質として具体的には、特開2000−256323(WO00/40562)に一般式[I]により表される化合物、より具体的にはN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(化合物A)等の2−オキソキノリン化合物等が挙げられ、その他、Δ9−THC、Nabilone(LY−109514)、CP−55940、PRS−211096、PRS−211335、PRS−211359、SR144528、SR141716、Rimonabant(SR141716A)、SR14778、AMG−3、SLV−319、AM−251、AM−281、AM374、AM404、AM630、AM−694、AM2233、AM2230、AM1221等のWO01/28557記載の化合物、AM1703等のWO01/28497記載の化合物、AM1710等のWO01/28329記載の化合物、HU−308等のWO01/32169記載の化合物、HU−310等のWO99/51560記載の化合物、JWH−051、JWH−161、O−1236、O−1057、O−2093、L−759633、L−759656、L−768242、LY320135等のWO96/02248記載の化合物、BAY−38−7271、WO02/24630記載の化合物、WO02/10135記載の化合物、WO01/96330記載の化合物、WO01/85092記載の化合物、WO01/74763記載の化合物、WO01/70700記載の化合物、WO01/64634記載の化合物、WO01/64633記載の化合物、WO01/64632記載の化合物、WO01/58869記載の化合物、WO01/58445記載の化合物、WO01/04083記載の化合物、WO01/32629記載の化合物、WO01/29007記載の化合物、WO01/28588記載の化合物、特表2001−515470号(US6262112号)記載の化合物、特表2002−539246(WO00/56303)記載の化合物、WO00/46209記載の化合物、WO00/32200記載の化合物、WO00/16756記載の化合物、WO00/15609記載の化合物、特表2002−523396(WO00/10968)記載の化合物、特表2002−523395(WO00/10967)記載の化合物、WO99/60987記載の化合物、WO99/57107記載の化合物、WO99/57106記載の化合物、WO99/52524記載の化合物、WO99/26612記載の化合物、WO99/24471記載の化合物、WO99/2499記載の化合物、特表2001−516361(WO98/41519)記載の化合物、WO98/37061記載の化合物、WO98/32441記載の化合物、特表2001−508799(WO98/31227)記載の化合物、WO97/29079記載の化合物、特表2000−502080(WO97/21682)記載の化合物、WO97/19063記載の化合物、特表平11−507937(WO97/860)記載の化合物、WO96/20268記載の化合物、特表10−508870(WO96/25397)記載の化合物、特表11−501615(WO96/18600)記載の化合物、特表11−500411(WO96/18391)記載の化合物、WO94/12466記載の化合物、US6284788記載の化合物、US5939429記載の化合物、US5804592記載の化合物、US5605906記載の化合物、US5624941記載の化合物、US5462960記載の化合物、US5081122記載の化合物、US5013837記載の化合物、DE10015866記載の化合物、DE19837627記載の化合物、DE19837638記載の化合物、WO01/58450記載の化合物、WO01/32663記載の化合物、WO01/28498記載の化合物、WO01/24798記載の化合物、FR2805818記載の化合物、FR2805817記載の化合物、FR2805810記載の化合物、FR279912記載の化合物、FR2789079記載の化合物、FR2789078記載、WO01/89589記載の化合物、WO01/95889記載の化合物、WO01/98289記載の化合物、WO02/19383記載の化合物、WO02/26702記載の化合物、WO02/28346記載の化合物、WO01/87297記載の化合物、WO02/36590記載の化合物、WO02/42269記載の化合物、WO02/42248記載の化合物、WO02/47691記載の化合物、WO02/58636記載の化合物、WO02/60447記載の化合物、WO02/65997記載の化合物、WO02/53543記載の化合物、WO02/72562記載の化合物、WO02/62750記載の化合物、WO02/80903記載の化合物、WO02/85866記載の化合物等が挙げられる。
【0172】
好ましくは、末梢細胞型カンナビノイドレセプターに選択的に作用する調節物質であり、特開2000−256323(WO00/40562)記載の化合物、WO02/10135記載の化合物、SR144528、AM630、AM1221等のWO01/28557記載の化合物、AM1703等のWO01/28497記載の化合物、AM1710等のWO01/28329記載の化合物、HU−308等のWO01/32169記載の化合物、JWH−051、L−759633、L−759656、L−768242、WO01/74763記載の化合物、WO01/32629記載の化合物、WO01/29007記載の化合物、WO01/19807記載の化合物、WO01/4083記載の化合物、特表2002−539246(WO00/56303)記載の化合物、特表2002−523396(WO00/10968)記載の化合物、特表2002−523395(WO00/10967)記載の化合物、WO99/57107記載の化合物、WO99/2499記載の化合物、特表2001−516361(WO98/41519)記載の化合物、特表2001−515470号(US6262112号)記載の化合物、特表2001−508799(WO98/31227)記載の化合物、WO97/29079記載の化合物、特表2000−502080(WO97/21682)記載の化合物、特表平11−507937(WO97/860)記載の化合物、特表10−508870(WO96/25397)記載の化合物、特表11−501615(WO96/18600)記載の化合物、特表11−500411(WO96/18391)記載の化合物、US5605906記載の化合物、WO01/58869記載の化合物、WO01/96330記載の化合物、WO02/10135記載の化合物、WO02/42269記載の化合物、WO02/58636記載の化合物、WO02/60447記載の化合物、WO02/53543記載の化合物、WO02/72562記載の化合物、WO02/62750記載の化合物、WO02/85866記載の化合物であり、更に好ましくは、特開2000−256323(WO00/40562)記載の化合物、SR144528、AM630、AM1221等のWO01/28557記載の化合物、AM1703等のWO01/28497記載の化合物、AM1710等のWO01/28329記載の化合物、HU−308等のWO01/32169記載の化合物、JWH−051、L−759633、L−759656、L−768242、WO01/32629記載の化合物、WO01/29007記載の化合物、WO98/41519記載の化合物であり、特に好ましくは2−オキソキノリン化合物としてN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(化合物A)を挙げることができる。更に好ましくは、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528、AM630であり、更に好ましくは化合物A及びSR144528であり、最も好ましくは化合物Aである。
【0173】
「アレルギー疾患」としては、アナフィラキシー、消化管アレルギー、アレルギー性胃腸症、アレルギー性皮膚炎、うるしかぶれ・化粧品かぶれ等の皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、薬剤アレルギー、血清病、結核病変、臓器移植後の拒絶反応、結核病変、臓器移植後の拒絶反応等が挙げられるがこれに限定されず、アレルギーに関係する疾患であれば、何れにも適用可能である。より好ましくは、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎及びアレルギー性結膜炎を挙げることができる。特に好ましくは、皮膚若しくは呼吸器に関するアレルギー疾患を挙げることができ、より具体的な適応症としては、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息及びアトピー性喘息である。
【0174】
「非即時型アレルギー疾患」としては、遅発型アレルギー反応、及び/又は遅延型アレルギー反応を伴う疾患であり、即時型アレルギー反応を伴ってもよい。例えば、遅延型アレルギー反応のみに係わる疾患、遅発型及び遅延型アレルギー反応に係わる疾患、即時型、遅発型及び遅延型アレルギー反応に係わる疾患等が挙げられる。
【0175】
ここで、即時型アレルギー反応とは、抗原が侵入し30分以内、遅くとも2時間以内に引き起こされるアレルギー反応である。
【0176】
また、遅発型アレルギー反応とは、数時間から数日後、より具体的には2時間より後から2,3日後に引き起こされるアレルギー反応である。
【0177】
また、遅延型アレルギー反応とは、数日後からそれ以降に引き起こされるアレルギー反応である。
【0178】
また、三相性皮膚炎モデルにおいて、即時相、遅発相とは、時間的経過の点から見ると、それぞれ、即時型アレルギー反応、遅発型アレルギー反応の発症時間に相応し、後遅発相とは、4日後以降、好ましくは6日から8日後のアレルギー反応に相応する。
【0179】
非即時型アレルギー疾患として、具体的には、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アトピー性喘息の他、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、グッドパスチェア症候群、溶連菌による急性糸球体腎炎、関節リウマチや膠原病、血清病、ウイルス性肝炎、アレルギー性肺胞炎、ツベルクリン反応、結核病変、臓器移植後の拒絶反応、うるしかぶれ、化粧品かぶれ等の皮膚炎、遅発型喘息などが挙げられ、遅発型及び/又は遅延型アレルギー反応の伴ったアナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性胃腸症、掻痒が挙げられる。特に、治療及び予防が期待される疾患としては、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アトピー性喘息が挙げられる。
【0180】
「アレルギー性皮膚炎」とは、アレルギー反応に関係する皮膚炎を示し、例えばアトピー性皮膚炎を含む。創傷による皮膚炎の様な非アレルギー性皮膚炎と区別される。「アトピー性皮膚炎治療薬」としては、アトピー性皮膚炎のアレルギー反応に作用することにより治療効果を上げるものが好ましい。また、そのアレルギー反応の遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有することが好ましく、更に好ましくは、即時型反応に加え、遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有する治療剤である。
【0181】
「アレルギー性喘息」とは、喘息症状のなかでのアレルギー的側面を示し、例えば混合型喘息、アトピー性喘息を含む。アスピリン喘息等の非アレルギー性喘息とは区別される。「喘息治療薬」としては、喘息のアレルギー反応に作用することにより治療効果を上げるものが好ましい。また、慢性気管支炎又は気道過敏症に対し効果を有することが好ましく、更に好ましくは慢性気管支炎かつ気道過敏症に効果を有する治療剤である。また、そのアレルギー反応の遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有することが好ましく、更に好ましくは、即時型反応に加え、遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有する治療剤である。
【0182】
「2−AG 及び/又は2−AG−Eに関連する疾患」とは、2−AG 及び/又は2−AG−Eが疾患の原因であるものや、症状の増悪に関与するものであり、例えば、上記の非即時型アレルギー疾患が挙げられる。その他、血液癌、敗血症、循環器疾患等が挙げられる。
【0183】
「鎮痒作用」とは、痒みを低減させる或いは痒みを取り除くことにより、掻痒反応を減少させ、痒みからの精神的ストレスを低減させる効果をいう。中枢作用ではなく、例えば抗ヒスタミン作用、抗サブスタンスP作用の様に、痛みの原因を取り除くことが好ましい。また、上記のアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎に対し、鎮痒作用を有することが好ましい。
【0184】
本発明の「カンノビノイドレセプター調節物質」、「カンノビノイドレセプターインバースアゴニスト」、「カンノビノイドレセプターアンタゴニスト」は、ステロイド剤、免疫抑制剤の様な「副作用となる免疫抑制作用」を持たない安全な薬剤となり得る。「副作用となる免疫抑制作用」としては、腎臓・脾臓の機能障害による、高カリウム血症、白血球・血小板減少等が挙げられ、例えば、脾臓重量の減少がその指標となるが、本発明の「カンノビノイドレセプターインバースアゴニスト」には、これら副作用は見られなかった。
【0185】
著しい副作用が認められないことで「経口投与が可能」な薬剤であれば、軟膏剤、注射剤等に比べ取扱いが容易となる。
【0186】
ここで、アレルギー疾患の「治療」とは、アレルギー反応を抑制すること或いはアレルギー疾患の症状を改善することを意味し、起こり得るアレルギー反応或いはアレルギー疾患を予防すること、その増悪を予防することも含む。
【0187】
「製薬上許容されるその塩」とは、化合物と無毒の塩を形成するものであればいかなる塩でもよく、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;又はシュウ酸、マロン酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メチルスルホン酸、ベンジルスルホン酸等の有機酸;又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム等の無機塩基;又はメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、グアニジン、コリン、シンコニン等の有機塩基;又はリジン、アルギニン、アラニン等のアミノ酸と反応させることにより得ることができる。また、化合物の含水物或るいは水和物及び溶媒和物も包含される。
【0188】
また本発明は、非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む方法を提供する。
(a)カンナビノイドレセプター、内因性カンナビノイド、及び、被験化合物を接触させる工程、
(b)カンナビノイドレセプターと内因性カンナビノイドとの結合能を測定する工程、
(c)被験化合物の非存在下と比較し、工程(b)で測定した結合能を低下させる化合物を選択する工程。
【0189】
上記工程(b)の結合能の測定は、当業者においては、一般的な方法、例えば、Bindingアッセイを行なう、cAMP濃度を測定する等の方法によって適宜実施することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方法によって、前記結合能を測定することができる。
【0190】
また被検化合物としては、特に制限はなく、例えば、種々の天然・人工化合物やタンパク質あるいはファージ・ディスプレイ法などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分なども本発明の方法に供することができる。その他、生体組織抽出物、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物などが挙げられるが、これらに特に制限されない。
【0191】
上記方法におけるカンナビノイドレセプターは好ましくはCB2であり、内因性カンナビノイドは好ましくは2−AG又は2−AG−Eであるが、これらに特に制限されない。
【0192】
さらに本発明は、非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む方法を提供する。
(a) CB2に選択的に結合する候補化合物を選定する工程、
(b) 工程(a)で選定された化合物から、CB2インバースアゴニストである化合物を選定する工程、
(c) 工程(b)で選定された化合物の抗アレルギー作用を測定する工程。
【0193】
上記工程(c)において、化合物の抗アレルギー作用は、当業者においては、アレルギーの種類に応じて、適宜測定することが可能である。
【0194】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0195】
1)、2)、3)及び4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0196】
1)、2)、3)の全量及び30gの4)を水で連合し、真空乾燥後、製粒を行なう。この製粒粉末に14gの4)及び5)を混同し、打錠機で打錠する。1錠あたり化合物Aを30mg含有する錠剤1000錠を得る。
【0197】
本発明における化合物を医薬組成物として使用する場合には、化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば必要に応じて上記製剤例1(カプセル剤)および2(錠剤)以外に、マイクロカプセル剤、軟・硬カプセル剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、点眼剤、点耳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、TTS剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤として経口的あるいは非経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁・乳濁状溶液を注射剤の形で非経口的に使用できる。非経口投与のためのその他の形態としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤、ペッサリー、乳剤性発泡剤などが含まれる。また、例えば薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。
【0198】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0199】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。
【0200】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0201】
投与量は、疾患の種類及び程度、投与する化合物並びに投与経路、患者の年齢、性別、体重等により変わり得る。経口投与の場合、通常、成人1日当たり化合物A 0.1〜1000mg、好ましくは1〜300mgを、1〜数回にわけて投与する。
【0202】
なお、本発明化合物は動物用医薬としても適応することができる。
【0203】
薬理試験
1)アレルギー性皮膚炎モデル動物を用いた治療効果
アトピー性皮膚炎はI型及びIV型アレルギー反応が複雑に絡み合ったものと考えられており、I型及びIV型が単独若しくは複合的に発症するモデルが有用である。
【0204】
1.マウスDNFB誘発アレルギー性皮膚炎に対する効果
本モデルは、マウスを抗原によって感作後、誘発を繰り返すことにより、IgE抗体価の上昇を伴う接触性皮膚炎、すなわちアトピー性皮膚炎類似の炎症を誘導させたモデルである(J. Allergy Clin. Immunol., 100(6Pt2), 39−44, Dec. 1997)。本モデルは、T細胞による遅延型アレルギー反応及び肥満細胞による遅発型アレルギー反応により炎症を起こすと考えられる。また、本試験において同時に、試験化合物の全身性免疫抑制作用を検討するため脾臓重量を測定した。
【0205】
試験方法
・試験化合物の調製
溶媒の調製:メチルセルロース(以下MC)を蒸留水で溶解し、0.5%(w/v)MC水溶液とした。
試験化合物の調製:特開2000−256323号の実施例3−5に従い化合物を合成した。所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、1mg/mL懸濁液とした。さらに希釈により、0.1mg/mL、0.01 mg/mL懸濁液に調製した。また、陽性対照薬としてプレドニゾロン(Sigma)を同様に0.5mg/mL、0.2mg/mL、0.1mg/mLに調製した。プレドニゾロンはアトピー性皮膚炎の治療に有効とされる副腎皮質ステロイド剤のひとつである。
【0206】
・抗原の調製及び塗布
抗原の調製:DNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)をアセトンとオリーブオイルの混液(3:1、v/v)にて、0.15%(w/v)になるように用時調製した。
抗原塗布:9週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)の両耳介の表裏に、上記抗原を25μLずつ、1週間に1回の割合で計5回塗布した。
【0207】
・試験化合物の投与
3回目に抗原塗布した翌日より5回目に抗原塗布した翌日までの間、1日に1回の割合で合計15回上記試験化合物を10mL/kg投与した。なお、抗原塗布日には抗原塗布の1時間前に、抗原塗布翌日には抗原塗布の23時間後に投与した。
【0208】
・耳介腫脹の測定
抗原塗布前及び24時間後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、その差を腫脹の指標とした。4回目抗原塗布及び5回目抗原塗布の際の測定結果を陽性対照の結果と合わせ図1及び図2に示す。
【0209】
・脾臓重量の測定
5回目抗原塗布24時間後に、エーテル麻酔し放血させたマウスより脾臓を摘出し、湿重量を測定した。測定結果を図3に示す。
【0210】
・結果
永井らは本モデルにおいて、5回目の抗原塗布後には、遅発型反応(I型アレルギー反応)及び遅延型反応(IV型アレルギー反応)が複合した耳介の腫脹が発現することを報告している。
化合物Aは、本アレルギー性皮膚炎モデルにおいて、耳介の腫脹を有意に抑制した。また、3回目の抗原塗布後の投与開始において、その効果を示した。その際プレドニゾロンに認められる脾臓重量の低下は示さなかった。
【0211】
2.マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応に対する効果
本モデルは、マウスをIgEで受動感作した後、抗原による誘発を繰り返すことにより、三相性(即時相・遅発相・後遅発相)の皮膚炎を惹起させたモデルである(Pharmacology, 60(2), 97−104, Feb. 2000)。それら反応は、肥満細胞及びT細胞の関与、炎症局所での好酸球の浸潤が確認されていることから、アトピー性皮膚炎症状の一部を反映した反応と考えられる。
【0212】
試験方法
・試験化合物の調製
溶媒の調製:MCを蒸留水で溶解し、0.5%MC水溶液とした。
試験化合物の調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、1mg/mL懸濁液とした。
また、陽性対照薬として上記と同様にフマル酸ケトチフェン(Sigma)1mg/mL及びプランルカスト水和物(商標名オノン錠(小野薬品工業)より抽出。)3mg/mLを調製した。プランルカスト水和物はロイコトリエン阻害剤として、喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤として用いられており、フマル酸ケトチフェンはケミカルメディエーター遊離抑制剤として、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、皮膚掻痒症、アレルギー性結膜炎に用いられている。
【0213】
・受動感作
anti−DNP IgE(DNPに対する抗体、ヤマサ醤油)を生理食塩液で15μg/mLに調製し、9週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)に0.2mL尾静脈内より投与した。
【0214】
・抗原の調製及び塗布
抗原の調製:DNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)をアセトンとオリーブオイルの混液(3:1、v/v)にて、0.15%(w/v)になるように用時調製した。
抗原塗布:上記anti−DNP IgEの投与より24時間後に、両耳介の表裏に、上記抗原を25μLずつ塗布した。
【0215】
・試験化合物の投与
抗原塗布日より抗原塗布後8日目まで計9回、1日に1回の割合で10ml/kgを経口投与した。また他のマウスには抗原塗布1日後より抗原塗布後8日目まで計8、1日に1回の割合で10ml/kgを経口投与した。他のマウスにも同様に、抗原塗布2、4、6日後より抗原塗布後8日目までそれぞれ計7、5、3回、1日に1回の割合で10ml/kgを経口投与した。抗原塗布日より試験化合物の投与開始までの期間は、試験化合物に代えて溶媒のみ10ml/kgを1日に1回の割合で経口投与した。なお、抗原塗布日には抗原塗布の1時間前に、抗原塗布後8日目には耳介の厚さを測定する1時間前に投与した。
【0216】
・耳介腫脹の測定
抗原塗布前、1時間後、24時間後及び8日後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、抗原塗布前の値と各時間の値との差を腫脹の指標とした。それぞれの測定結果を図4乃至図6に示す。また、抗原塗布8日後の腫脹抑制効果に対する塗布開始時期の影響を図7に示す。
【0217】
・結果
化合物Aは、本IgE依存性皮膚炎モデルにおける即時相(塗布1時間後)、遅発相(塗布24時間後)、後遅発相(塗布8日後)に対して、いずれも有意に耳介の腫脹を抑制した。また、後遅発相における化合物Aの効果は、遅発相が惹起した後より投薬を開始した場合においても認められた。
【0218】
2)喘息モデルを用いた治療効果
モルモットにおける抗原誘発即時型喘息、遅発型喘息、気道過敏性に対する効果
試験方法
・試験化合物の調製
所定量の化合物Aを、0.5%MC水溶液に懸濁し、60mg/mLとした。試験化合物はさらに希釈し、20、6、2mg/mLに用時調製した。同様に、陽性対照として、プランルカスト水和物(商標名オノン錠(小野薬品工業)より抽出。)及びプレドニゾロン(Sigma)を6mg/mL調製した。
【0219】
・能動感作及び抗原誘発
感作:超音波ネブライザー(NE−U12、オムロン社)を用い、6週齢雄性Hartley系モルモット(九動(株))に1%OVA(ovalbumin、Sigma)含有生理食塩液を1日に10分間、連続8日間吸入させた。
抗原誘発:最終感作の1週間後、同様に2%OVAを5分間吸入させた。OVA誘発24時間前及び1時間前にmetyrapone含有生理食塩液(Aldrich、10mg/kg)を静脈内に、OVA誘発30分前にpyrilamine含有生理食塩液(Sigma、10mg/kg)を腹腔内に投与した。
【0220】
・試験化合物の投与
感作開始から抗原誘発まで15日間、1日1回5mL/kg経口投与した。感作の8日間は、感作1時間前に、抗原誘発の日は誘発1時間前に投与した。溶媒対照として、OVA誘発及び生理食塩液誘発への投与も同様に行なった。
陽性対照としてプランルカスト水和物は誘発1時間前に、プレドニゾロンは誘発16時間前及び2時間前に投与した。なお、動物は経口投与16〜18時間前から絶食状態とした。
【0221】
・気道抵抗性の測定
総合呼吸機能解析システム(Pulmos−I,M.I.P.S.社)を用い,pre値を測定した後、OVA誘発1分後、2、4、5、6、7および8時間後、更に22〜26時間後に1回、それぞれ100呼吸分の気道抵抗(specific airway resistance、以下sRaw)を測定し、その平均値を各測定時間のsRawとした。sRawの増加率の計算式は以下に示す。
sRawの増加率(%)=((各測定時間のsRaw − 誘発前のsRaw)/(誘発前のsRaw))× 100
OVA誘発1分後のsRawの増加率を図8に、誘発4乃至8時間後におけるsRawの増加率(曲線下面積:AUC4−8hr)を図9に示す。
【0222】
・気道反応性の測定
抗原誘発22〜26時間後、生理食塩液及びアセチルコリン(以下ACh)の0.0625、0.125、0.25、0.5、1及び2mg/mL溶液を順次各1分間ずつ吸入させ、sRawがbaseline sRaw (生理食塩液吸入後のsRaw)の2倍以上になるまで続けた。ACh濃度とsRawの濃度−抵抗曲線から、sRawが baseline sRawから100%上昇するのに必要なAChの濃度PC100AChを求めた。測定結果を図10に示す。
【0223】
・結果
本モデルにおいて、化合物Aは、抗原誘発即時型喘息反応(抗原誘発直後のsRaw)、遅発型喘息反応(抗原誘発4から8時間後のsRaw)、気道過敏性の何れをも抑制した。陽性対照のプランルカスト水和物及びプレドニゾロンもまた、抗原誘発即時型喘息、遅発型喘息、気道過敏性の何れをも抑制した。
【0224】
3)ロイコトリエン産生に対する作用
ロイコトリエン(以下LTs)は好塩基球および肥満細胞等より産生し、アレルギー疾患、特にアレルギー性気管支喘息において増悪に関与していることが知られている。
【0225】
1.ヒト好塩基球からのロイコトリエン産生に対する作用
・試験化合物の調製
所定量の化合物AをDMSO(Dimethyl Sulfoxide)で0.01mMとした後、タイロード液(Sigma)にて希釈し、100μMから0.1μMまで調製した(1%DMSO溶液)。細胞に作用するときは更に希釈され、10μMから0.01μM(0.1%DMSO溶液)となった。
【0226】
・好塩基球の高純度化
ヒト血液より3.8%クエン酸ナトリウム液を入れたシリンジを用いて100mLの血液を得た。
10×HBSS(−)(10倍 Hank’s Balanced Salt Solution、GIBCO)、percoll(Amersham)、ミリQ水にて調製した1.070g/mL、1.079g/mL、1.088g/mL Precoll−HBSS(−)を重層し、上記血液を重層した。300×gで25分間遠心し、1.070g/mL Percoll−HBSS(−)層と1.079g/mL Percoll−HBSS(−)層の間に存在した細胞画分を回収した。回収した細胞懸濁液に対して3倍量のHBSS(−)を添加し、300×gで4℃にて7分間遠心した。遠心後、上清を除去し、細胞をHBSS(−)で1回洗浄した。以上より得られた細胞群を好塩基球と見なした。
【0227】
・プレインキュベーション
上記好塩基球をタイロード液で2.5×106cells/mLに調製し、10μg/mL recombinant human IL−3(Genzyme/Techne)にて最終濃度100ng/mLとなるように添加した。直ちに丸底96穴プレートに80μL/well(2.0×105cells/well)播種し、37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。
【0228】
・試験化合物及の添加
プレインキュベーションの後、上記試験化合物10μL/wellを添加し、37℃、5%CO2で10分間インキュベートした。溶媒対照群には1%DMSOを含むタイロード液を10μL/well加えた。
【0229】
・抗ヒトIgE抗体の添加
タイロード液で1、3、10、30、100μg/mLに希釈した抗ヒトIgE抗体を10μL/well添加し、37℃、5% CO2で30分間インキュベートした(最終濃度はそれぞれ0.1、0.3、1、3、10μg/mL)。
【0230】
・LTsの定量
刺激から30分後、3000rpm、5min、4℃で遠心し、上清を80μL/well回収した。上清のLTs 量をLTs EIA Kit (Amersham pharmacia)のメーカープロトコールに従って測定した。サンプルはタイロード液で3倍および24倍希釈し測定した。測定結果を図11に示す。
【0231】
・結果
本試験において、化合物Aは、ヒト好塩基球からのロイコトリエン(C4/D4/E4)産生に対して抑制作用を示した。
【0232】
2.ラット肥満細胞株からのロイコトリエン産生に対する作用
・試験化合物の調製
所定量の化合物AをDMSOにて希釈し、3、1、0.3、0.1mMに調節した(100%DMSO溶液)。さらに、E−MEM(EAGLE−MEM、日研生物研究所)培地にて希釈し、それぞれ100から1μMに調節した(1%DMSO溶液)。細胞に作用するときは更に希釈され、10μMから0.1μM(0.1%DMSO溶液)となった。
【0233】
・PIPES Bufferの調製
1mM PIPES(同仁化学研究所)、14mM NaCl、0.5mM KCl、0.06mM MgCl2、0.1mM CaCl2、0.55mM Glucose、0.1%BSA(Bovine Serum Albumin、Sigma)を精製水で調製し、NaOHでpH 7.4とした。
【0234】
・anti−DNP IgEの調製
1mg/mL anti−DNP IgE(モノクローナルマウス抗DNP−IgE、Yamasa)を上記PIPES Bufferで1000倍希釈することにより1μg/mL溶液に調製した。
【0235】
・DNP−BSAの調製
10mg/mL DNP−BSAを上記PIPES Bufferで10μg/mLの濃度に希釈した。
【0236】
・ラット肥満細胞株の培養方法
培地:非働化済10%FCS(Fetal Calf Serum、Morgate Biotech)、100units/mL Penicillin, 100μg/mL Streptomycin(Penicillin/Streptomycinとして、GIBCO)を含むE−MEM培地。
【0237】
・細胞の調製
ラット肥満細胞株RBL−2H3(ヒューマンサイエンス 1x106cells/mL/tube)を上記培地で遠心洗浄後、同培地で再懸濁し、75cm2フラスコ(Falcon 353136)で3日間培養した。継代後、さらに225cm2フラスコ(CORNING 431082)で2日間培養した。セミコンフルエント(confluency 60−70%)な状態を確認し、HBSSでリンス後、Trypsin−EDTAではがした。細胞を回収後、上記培地で遠心洗浄し、同培地で再懸濁した。2×105cells/mLに調製し、250μL/wellで96well flat bottom culture plate(Falcon 3072)に播種し、5%CO2、37℃で20時間培養した。
【0238】
・抗原感作
plateの培地を除きHBSSで洗浄後、上記培地に溶解した 150ng/mLのanti−DNP IgEを100μL/well添加し、37℃で30分間インキュベートし、細胞を感作した。
【0239】
・試験化合物の添加
plateの培地を除きHBSSで洗浄後、上記培地を80μL/well添加し、さらに、上記培地で1、3、10、30、100μMに希釈した化合物Aを10μL/well添加し、37℃で10分間インキュベートした(最終濃度はそれぞれ 0.1、0.3、1、3、10μM、最終DMSO濃度0.1%)。
【0240】
・抗原刺激
上記培地で150、500、1500、5000ng/mLに希釈したDNP−BSAを10μL/well添加し(最終濃度はそれぞれ 15、50、150、500ng/mL)、37℃で30分間インキュベートした。
【0241】
・LTsの定量
抗原刺激から30分後、上清を20μL/well回収し、LTs 量をLTs EIA Kit (Amersham Pharmacia)のメーカープロトコールに従って測定した。測定結果を図12に示す。
【0242】
・結果
本試験において、化合物Aは、ラット肥満細胞株からのロイコトリエン(C4/D4/E4)産生に対して抑制作用を示した。
【0243】
4)カンナビノイドレセプターに対するBinding Assay
化合物Aは、末梢細胞型カンナビノイドレセプター選択的な調節物質(CB1に対するIC50が3436nM、CB2に対するIC50が0.087nM)であることが公知である(特開2000−256323号記載の薬理試験結果、表33、実施例番号3−5)。
【0244】
3.マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応に対するCB2インバースアゴニストおよびCB2アゴニストの作用
マウスをIgEで受動感作した後抗原により誘発される三相性皮膚炎モデルを用いて、CB2インバースアゴニストおよびCB2アゴニストの作用を検討した。
【0245】
試験方法
・動物:8〜10週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)を用いた。
【0246】
・試験化合物の調製
溶媒の調製:MCを蒸留水で溶解し、0.5%MC水溶液とした。
試験化合物の調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、0.01, 0.1および1 mg/mL懸濁液を調整した。
また、陽性対照薬としてプレドニゾロン(Sigma)の0.5mg/mLを、比較対照薬としてCB2特異的なアゴニストであるHU−308の1, 5 mg/mLおよびCB2特異的なインバースアゴニストであるSR144528の0.01, 0.1および1 mg/mLを上記と同様MC懸濁液として調製した。
【0247】
・受動感作
Anti−DNP IgE(DNPに対する抗体、ヤマサ醤油)を生理食塩液で15μg/mLに調製し、マウスにその0.2mLを尾静脈内より投与した。
【0248】
・抗原の調製及び塗布
抗原の調製:DNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)をアセトンとオリーブオイルの混液(3:1、v/v)にて、0.15%(w/v)になるように用時調製した。
抗原塗布:上記anti−DNP IgEの投与より24時間後に、両耳介の表裏に、上記抗原を25μLずつ塗布した。
【0249】
・試験化合物の投与
抗原塗布日より抗原塗布後8日目まで計9回、1日に1回10 mL/kgで経口投与した。なお、抗原塗布日には抗原塗布の1時間前に、抗原塗布後8日目には耳介の厚さを測定する1時間前に投与した。
【0250】
・耳介腫脹の測定
抗原塗布前及び8日後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、抗原塗布前の値と各時間の値との差を腫脹の指標とした。測定結果を図13に示す。
【0251】
・臓器重量の測定
耳介腫脹を測定した後脾臓と胸腺を取り出し、それらの湿重量を測定した。それぞれの測定結果を図14および図15に示す。
【0252】
・結果
化合物Aは、後遅発相(塗布8日後)において、0.1, 1, 10 mg/kgのいずれの用量とも有意に耳介の腫脹を抑制した。また、CB2インバースアゴニストであるSR144528も0.1 mg/kgから有意な効果を示した。それに対して、CB2アゴニストであるHU−308は10および50 mg/kgのいずれにおいて薬効は認められなかった。脾臓および胸腺の重量を測定した結果は、プレドニゾロンが両臓器重量を有意に抑制したのに対し、化合物AおよびSR144528では明らかな変化は認められなかった。HU−308を投与した動物では脾臓重量の有意な減少が認められた。
【0253】
4.CB2アゴニストによって誘発される耳介腫脹と化合物Aの作用
CB2インバースアゴニストがIgE依存性アレルギー性皮膚炎モデルにおいて有効性を示したことから、内因性リガンド候補の2−アラキドノイルグリセロールの安定体である2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)および特異的CB2アゴニストであるHU−308が直接耳介腫脹を誘発するかどうかを検討し、アラキドン酸(AA)によって誘発される耳介腫脹と比較した。また、CB2アゴニストの耳介への影響に対する化合物Aの作用についても検討した。
【0254】
試験方法
・動物:8〜10週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)を用いた。
【0255】
・試験物質の調製及び塗布
合成した2−AG−EおよびHU−308は、それぞれ1, 10 %(w/v)および10 %(w/v)に、AA(Sigma)は1.25 %(w/v)になるようにアセトンにて用時調製し、左耳介の表裏に各々10μLずつ塗布した。
【0256】
・溶媒および化合物Aの調製
溶媒の調製:MCを蒸留水で溶解し、0.5%MC水溶液とした。
化合物Aの調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、0.001, 0.01, 0.1および1 mg/mL懸濁液を調整した。
【0257】
・化合物Aの投与
溶媒または化合物Aを10 mL/kgで経口投与し、その1時間後に10 %(w/v)の2−AG−Eを左耳介の表裏に各々10μLずつ塗布した。
【0258】
・耳介腫脹の測定
試験物質の塗布前、塗布後1、2、3、6、9、24時間後及び2、3、8日後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、塗布前の値と各時間の値との差を腫脹の指標とした。化合物Aの評価には、2−AG−E塗布後8日目までの耳介腫脹の経時変化から得られる曲線下面積を算出した値を用いた。それぞれの測定結果を図16および図17に示す。
【0259】
・結果
2−AG−Eを塗布することにより、2−AG−E濃度に依存した1時間から2時間をピークとする耳介の腫脹が認められ(即時相)、その後24時間後の遅発相・後遅発相に相応する持続的な腫脹が認められた。HU−308も同様の持続的な耳介の腫脹を誘発した。一方、AAは塗布1時間後をピークに10% 2−AG−Eと同程度の腫脹を示したが、2日後にはもとのレベルまで回復した。
10% 2−AG−E塗布による耳介の腫脹に対し、化合物Aは投与量に依存して腫脹を抑制し、1および10 mg/kgで有意な効果を示した。
この結果よりCBアゴニストであるHU−308、及び、内因性のCBアゴニストである2−AG−E(2−AGのエーテル体であって、2−AGと同様の作用と考えられる)は、動物モデルにおいて皮膚炎を引き起こした。かつ、CB結合能を示さないAAと比較して、その皮膚炎症状は持続的であり、遅発相及び後遅発相に相応すると考えられる強い皮膚炎を発症させた。
さらに、CB2インバースアゴニストである化合物Aが、用量依存的にアレルギーに起因する炎症の抑制作用を示した。
これら結果は、CB2インバースアゴニストがCBアゴニストに起因する疾患の治療に用いられることを示す。
副作用の懸念される、ステロイド化合物及び免疫抑制剤と同等、若しくはそれ以上の効果を示したことは、CB2インバースアゴニストが安全な薬剤となり得ることを支持する結果である。
【0260】
5.NC系マウスの自発的掻痒反応に対する効果
痒みは、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、接触性皮膚炎などの皮膚科領域における疾患の主要な症状の一つである。しかしながら、その発生機序については未だ不明な点が多く、痒みを劇的に抑制しかつ副作用の少ない薬物は開発されていない。
現在、アトピー性皮膚炎の動物モデルとしてNC系マウスが用いられている。空気中の微生物の制御を行っている環境下(SPF環境下)で飼育しても、皮膚炎や掻き動作は観察されない。しかし、通常の環境下(conventional環境下)で飼育すると8週目頃から皮膚炎の発症と共に掻き動作が観察されるようになり、その症状は慢性化することが知られる(J. Dermatol. Sci., 25, 20−28, 2001)。
【0261】
試験方法
・試験化合物の調製
溶媒の調製:MCを水道水で溶解し、0.5%(w/v)MC水溶液とした。
試験化合物の調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、1mg/mL、0.1mg/mL懸濁液に調製した。また、陽性対照薬として吉草酸ベタメサゾン(Sigma)及びタクロリムス水和物(プログラフ(藤沢薬品)より抽出。)を同様に1mg/mLに調製した。吉草酸ベタメタゾンはアトピー性皮膚炎の治療に有効とされる副腎皮質ステロイド剤のひとつであり、タクロリムス水和物は上記の様に免疫抑制剤として知られるアトピー性皮膚炎治療剤である。
【0262】
・動物飼育及び選択方法
4週齢雄性NC/Jic系マウス(日本クレア)をrodent mite(Myobia musculi)に感染した重度の皮膚病変を発症したマウス(A)と同じ飼育ケージで12日間飼育し、その後、飼育ケージからマウス(A)を除き16週齢で使用した。
飼育条件:温度 22±2℃、湿度 55±10%、照明時間 8:00−20:00、飼料 固型飼料CA−1(日本クレア)を自由摂餌、飲料水 水道水を自由摂水。
実験開始10日前から2日間もしくは3日間に渡り、マウスの後肢による掻き動作の回数(20分間、1日1回)を目視により数え、測定した複数マウスの中から、掻き動作数回数が1日当たりの平均で50回以上のマウスを選択し使用した。
【0263】
・試験化合物の投与
上記マウスに3週間に渡り1日1回、10mL/kgにて経口投与した。
【0264】
・試験方法
無人環境下で上記マウスの行動をビデオカメラに撮影し、1時間中の後肢による掻き動作を数えた。マウスは通常約1秒間に数回の掻き動作を示すが、この一連の動作を一回の掻き動作として、掻き部位の区別なく全て数えた。測定は投与開始日、1、3、6、10、13、17、20日後に行なった。陽性対照とあわせ結果を図18に記載する。
【0265】
・結果
本掻痒反応モデルにおいて、溶媒のみを投与した対照と比較し、化合物Aは掻き動作の回数を抑制した。また、陽性対照のタクロリムス水和物及び吉草酸ベタメタゾンも掻き動作の回数を抑制した。
【0266】
6.cAMP産生における化合物の作用
The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, vol.296, No.2,pp420から425,2001年(非特許文献3)と同様にして、フォルスコリンで刺激したhCB2発現CHO細胞でのcAMP産生における化合物の影響を検討した。測定結果を表1に示す。
【0267】
・結果
【0268】
【表1】
【0269】
上記化合物Aから化合物Iは、CB2インバースアゴニストであることが判明し、WIN55212−2及び2−AG−Eはアゴニストであることが確認された。
また、本試験において、2−AG−Eと化合物Aの共存下、化合物Aは2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制することが判明した。このことは、CB2インバースアゴニストが、CB2を介して2−AG或いは2−AG−E等のCB2アゴニストと拮抗することを示す。
【0270】
7.CB2欠損マウスにおけるIgE依存性耳介腫脹
CB2欠損マウスにおいて、野生型マウスと同様なアレルギー症状が誘発されるかどうかを試験した。
【0271】
方法
・動物
動物は、雌性CB2欠損(CB2−KO)マウスおよび雌性野生型(WT)マウス(C57BL/6J系)を使用した。(Laboratory of Molecular Neurobiology, Department of Psychiatry, University of Bonn Medical School、 Professor. A. Zimmerより入手;Europ.J.Pharmacol., 396, 141−149, 2000)。
【0272】
・抗原の塗布
実験初日にanti−DNP IgE(5μg/mL生理食塩液、ヤマサ醤油)を、1匹あたり0.2mLずつ尾静脈内より投与して動物を感作し、24時間後にアセトンとオリーブオイルの混液(3:1, volume/volume)にて0.15% (weight/volume)になるように用時調製した抗原(DNFB (2,4−dinitrofluorobenzene; ナカライテスク))を、右耳介の表裏に25μLずつ塗布した。
【0273】
・耳介腫脹の測定
耳介の腫脹は、抗原塗布前および塗布後より経時的にダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて測定した。成績は、抗原塗布前の値と抗原塗布後の値との差を耳介の腫脹として、平均値±標準誤差 (S.E.)で表示した。統計処理はStudent t−testを用いて行い、危険率が5%未満をもって有意であるとした。測定結果を図19に示す。
【0274】
・結果
野生型マウスが三相性(即時相、遅発相、後遅発相)の皮膚炎を示すのに比べ、CB2欠損マウスでは顕著な皮膚炎を示さなかった。特に、後遅発相においては、CB2欠損マウスでは皮膚炎は見られず、野生型マウスとCB2欠損マウスでは明らかな差が見られた。
この結果は、CB2が、三相性のアレルギー症状、得に遅発相及び後遅発相におけるアレルギー症状に深く係わることを示す。すなわち、CB2アンタゴニスト或いはインバースアゴニストを有効成分とする薬剤が、非即時性アレルギー疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療剤となることを裏付ける試験結果である。
【0275】
8.CB2欠損マウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹
内因性のCBアゴニストであると考えられる2−AG−E(2−AGの還元体であって2−AGと同様の作用を示すと考えられる。)を用いて、CB2欠損マウスでアレルギー反応が誘発されるかどうかを試験した。
【0276】
方法
・動物
動物は、上記試験「7.CB2 欠損マウスにおけるIgE依存性耳介腫脹」と同様の雌性CB2−KOマウスおよび雌性WTマウスを使用した。
【0277】
・抗原の塗布
実験初日に2−AG−E(100 mg/mL acetone)を、マウス左耳介の表裏に10μLずつ塗布した。
【0278】
・耳介腫脹の測定
耳介の腫脹は、2−AG−Eの塗布前および塗布後より経時的にダイヤルシックネスゲージを用いて測定した。成績は、抗原塗布前の値と抗原塗布後の値との差を耳介の腫脹として、また、耳介腫脹の経時変化からAUC(area under the curve, 耳介腫脹×時間)を算出し、平均値±標準誤差 (S.E.)で表示した。統計処理はStudent t−testを用いて行い、危険率が5%未満をもって有意であるとした。測定結果を図20、21に示す。
【0279】
・結果
野生型マウスは即時相、遅発相に加え後遅発相での皮膚炎を示した。一方、CB2欠損マウスでは、即時相においては皮膚炎を示したものの、遅発相においては野生型に比べその炎症の程度は弱く、後遅発相においては顕著な炎症は示さなかった。
この結果は、複数知られる内因性アゴニストの中で、少なくとも2−AG及び2−AG−Eが、CB2を介してアレルギー症状に深く係わることを示し、特に、遅発相及び後遅発相でその影響が大きいことを示す。したがって、2−AG及び2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制するアンタゴニスト又はインバースアゴニストは、非即時型アレルギー疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療剤となることを裏付ける試験結果である。
【0280】
9.肥満細胞欠損マウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹
アレルギー反応への寄与が大きいと考えられる肥満細胞の欠損マウス(一部欠損)におけるアレルギー症状の程度を比較した。
【0281】
方法
・動物
動物は、雌性WBB6F1−+/+(正常マウス)および雌性WBB6F1−W/Wv(肥満細胞欠損マウス)系マウスを日本SLC株式会社より入手し使用した。
【0282】
・抗原の塗布
実験初日に2−AG−E(100 mg/mL acetone)を、マウス左耳介の表裏に10μLずつ塗布した。
【0283】
・耳介腫脹の測定
耳介の腫脹は、2−AG−Eの塗布前および塗布後より経時的にダイヤルシックネスゲージを用いて測定した。成績は、抗原塗布前の値と抗原塗布後の値との差を耳介の腫脹として、また、耳介腫脹の経時変化からAUCを算出し、平均値±標準誤差 (S.E.)で表示した。統計処理はStudent t−testを用いて行い、危険率が5%未満をもって有意であるとした。測定結果を図22、23に示す。
【0284】
・結果
野生型マウス及び肥満細胞欠損マウスの両者に皮膚炎がみられたものの、その程度差は歴然であり、野生型マウスの皮膚炎がより重症であった。さらに、即時相と比べ、特に、遅発相および後遅発相において炎症の程度に差が見られた。
この結果は、アレルギー症状、特に、遅発相および後遅発相において、2−AG及び2−AG−Eと肥満細胞との関連を示すものであり、アレルギー反応における肥満細胞の寄与には、内因性アゴニストである2−AG又は2−AG−Eが深く係わることが判明した。したがって、この結果もまた、2−AG及び2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制するアンタゴニスト又はインバースアゴニストが、非即時型アレルギー疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療剤となることを裏付ける。
【0285】
以上の結果より、末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)選択的インバースアゴニストは、アレルギー疾患の治療剤として有効であることが認められた。
【0286】
特に、非即時型アレルギー疾患、例えば、即時型・遅発型・遅延型アレルギー反応が複合しておこる喘息及びアトピー性皮膚炎の治療に有効であった。また、遅発相及び後遅発相においてアレルギー性皮膚炎を抑制する効果は、慢性化した皮膚炎に有効であることが期待される。また、CB2選択的インバースアゴニストは、現在、ステロイド剤及び免疫抑制剤タクロリムス水和物でしか著しい効果の認められない難治性のアレルギー性皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎にも有効であると考えられる。
【0287】
また、アレルギー性喘息においては抗原誘発即時型喘息、遅発型喘息、気道過敏性の何れの症状をも軽減する抗喘息剤として有効であることが認められ、難治性の喘息にも有効であると考えられる。
【0288】
また、CB2選択的インバースアゴニストは、マウス掻痒反応試験において、アレルギー反応に起因すると考えられる掻き動作を減少させることが認められた。よって、アレルギー疾患に伴う掻痒治療剤としても有効であると考えられる。
【0289】
更に、全身性免疫抑制を示さない安全な薬剤となり得、経口剤としての利用可能性も示された。
【0290】
化合物A及びSR144528は、CB2選択的インバースアゴニストであることが知られる。CB2選択的アゴニストHU−308、及び、非選択的CBアゴニスト2−AG−Eでは、抗アレルギー作用が見られないばかりか、逆に、2−AG−Eによりアレルギー反応が誘発されることが判明した。かつ、2−AG−Eにより誘発されるそのアレルギー反応を、化合物Aが抑制することも判明した。これら結果は、CB2選択的インバースアゴニストが抗アレルギー剤として有用であることを直接的に実証する試験結果である。
【0291】
また、CB2欠損マウスを用いたアレルギー反応試験で、遅発相、後遅発相において皮膚炎が見られなかったことは、CB2とアレルギーの関与を裏付け、CB2アンタゴニスト或いはインバースアゴニストを有効成分とする薬剤が、非即時性アレルギー疾患治療剤となることを裏付ける試験結果である。
【0292】
同じくCB2欠損マウスを用いたアレルギー反応試験で、2−AG−Eが、CB2を介してアレルギー症状に深く係わることが示されたことは、2−AG及び2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制するアンタゴニスト或いはインバースアゴニストが、非即時型アレルギー疾患治療剤となることを裏付ける試験結果である。
肥満細胞欠損マウスを用いたアレルギー反応試験の結果もまた、肥満細胞、2−AG及び2−AG−E、CB2との強い関係を支持するものであり、CB2アンタゴニスト又はインバースアゴニストが、非即時型アレルギー疾患治療剤となることを支持する。
【0293】
よって、化合物A及びSR144528等の非即時型アレルギー疾患治療効果は、CB2の作用によるものと考えられ、特に、既存のアレルギー疾患治療剤とは異なる作用機序を有する薬剤として、例えば、既存の薬剤に耐性を示す症状にも有効であると考えられる。また、化合物Aのロイコトリエン阻害作用が、それらの治療効果を増強している可能性も認められた。
【0294】
化学構造的な特徴を異にする化合物AからH、化合物I、及び、SR144528は、その薬理作用においてはCB2選択的インバースアゴニストという共通点を持ち、これらの事実はCB2選択的インバースアゴニストがアレルギー疾患治療剤として有効であることを支持するものである。
【0295】
また、CB2と2−AG及び2−AG−Eの相互作用から、CB2アンタゴニスト又はCB2インバースアゴニストは、非即時型アレルギー疾患以外の2−AG又は2−AG−Eに関連する疾患に対し治療及び予防効果を期待できる。
【0296】
【発明の効果】
カンナビノイドレセプターインバースアゴニストは、喘息及びアトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患治療剤として有効である。特に、末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に選択的に作用するインバースアゴニストは、既存のアレルギー疾患治療剤では効果の低い、慢性・難治性のアレルギー疾患、非即時型アレルギー疾患に有効であり、かつ安全な薬剤となり得る。
【0297】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、マウスDNFB誘発アレルギー性皮膚炎における4回目抗原塗布後の試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として1、2、5mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図2】図2は、マウスDNFB誘発アレルギー性皮膚炎における5回目抗原塗布後の試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として1、2、5mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図3】図3は、DNFB誘発アレルギー性皮膚炎モデルにおける試験化合物の脾臓湿重量への影響を示す図である。縦軸は、脾臓湿重量(mg)を表す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として1、2、5mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図4】図4は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における即時相(抗原塗布1時間後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、フマル酸ケトチフェン(陽性対照として10mg/kgを経口投与。)、プランルカスト水和物(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図5】図5は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における遅発相(抗原塗布24時間後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、フマル酸ケトチフェン(陽性対照として10mg/kgを経口投与。)、プランルカスト水和物(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図6】図6は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、フマル酸ケトチフェン(陽性対照として10mg/kgを経口投与。)、プランルカスト水和物(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図7】図7は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における試験化合物の投与期間の影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。0−8は、抗原塗布日から8日後までの投与期間を示す。左からそれぞれ溶媒(溶媒のみ10mL/kgを9日間経口投与。)、化合物A(10mg/kgを9、8、7、5、3日間経口投与。)の結果を示す。
【図8】図8は、モルモット抗原誘発喘息における即時型喘息(抗原誘発1分後)での試験化合物の呼吸抵抗への影響を示す図である。縦軸は気道抵抗(sRaw)の増加率(%)を示す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、化合物A(10、30、100mg/kgを経口投与。)、プランルカスト(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図9】図9は、モルモット抗原誘発喘息における遅発型喘息(抗原誘発4〜8時間後)での試験化合物の呼吸抵抗への影響を示す図である。縦軸はAUC4−8hr(%・hr)を示す。AUC4−8hrとは、抗原誘発4乃至8時間後の気道抵抗(sRaw)の増加率(曲線下面積比)である。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、化合物A(10、30、100mg/kgを経口投与。)、プランルカスト(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図10】図10は、モルモット気道反応における試験化合物の影響を示す図である。縦軸はPC100ACh(mg/ml)を示す。PC100AChとは、アセチルコリン吸入後の気道抵抗(sRaw)が生理食塩液吸入後のsRawから100%上昇するのに必要なアセチルコリン濃度である。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、化合物A(10、30、100mg/kgを経口投与。)、プランルカスト(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図11】図11は、ヒト好塩基球からのロイコトリエン産生に対する試験化合物の影響を示す図である。
縦軸にロイコトリエン(C4/D4/E4)量(pg/mL)、横軸には抗IgE抗体量(μg/mL)を示す。
【図12】図12は、ラット肥満細胞からのロイコトリエン産生に対する試験化合物の影響を示す図である。
縦軸にロイコトリエン(C4/D4/E4)量(pg/mL)、横軸にはDNP−BSA量(ng/mL)を示す。
【図13】図13は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の肥厚(×10−2mm)」を表す。上図の左からそれぞれ、非感作群、感作群、HU−308(10、50mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。下図の左からそれぞれ、非感作群、感作群、SR144528(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、**:p<0.01, ***:p<0.001 (vs 感作群 Dunnett test), ###:p<0.001 (vs 感作群 Student−t test), $$$:p<0.001 (vs 非感作群 Student−t test)
【図14】図14は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の脾臓および胸腺湿重量への影響を示す図である。上図の縦軸は、脾臓湿重量(mg)を表す。下図の縦軸は、胸腺湿重量(mg)を表す。左からそれぞれ非感作群、感作群、HU−308(10、50mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、*:p<0.05, ***:p<0.001 (vs 感作群 Dunnett test), ##:p<0.01, ###:p<0.001 (vs 感作群 Student−t test), $$:p<0.01 (vs 非感作群 Student−t test)
【図15】図15は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の脾臓および胸腺湿重量への影響を示す図である。上図の縦軸は、脾臓湿重量(mg)を表す。下図の縦軸は、胸腺湿重量(mg)を表す。左からそれぞれ非感作群、感作群、SR144528(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、###:p<0.001 (vs感作群 Student−t test)
【図16】図16は、2−AG等によって誘発される耳介腫脹の経時変化を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の肥厚(×10−2mm)」を表す。左から、化合物塗布後の時間を表わす。平均値 ± 標準誤差、(n=6)
【図17】図17は、2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)によって誘発される耳介浮腫に対する化合物Aの効果を示す図である。縦軸はAUC(0乃至8日目)を表わす。左からそれぞれ、偽処置、溶媒(溶媒のみ10mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.01、0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、**:p<0.01, ***:p<0.001 (vs 溶媒群 Dunnett test), $$$:p<0.001 (vs 偽処置群 Student−t test)
【図18】図18は、NC系マウスの自発的掻痒反応に対する試験化合物の効果を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの引っ掻き回数(回/時間)を表わす。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ経口投与。)、化合物A(1、10mL/kgを経口投与。)、タクロリムス水和物(1mg/kgを経口投与。)、吉草酸ベタメサゾン(1mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図19】野生型およびCB2ノックアウトマウスにおけるIgE依存性三相性耳介腫脹を示す図である。縦軸は縦軸は耳介厚みの増加(10−2mm)を表す。横軸は試験後の時間を表す。各ポイントはマウス8匹における標準± 標準誤差を示す。*:p<0.05, **:p<0.01, ***:p<0.001 (vs 野生型Student t−test)、##:p<0.01, ###:p<0.001, (vs non−sens Student t−test)。
【図20】野生型およびCB2ノックアウトマウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。縦軸は耳介厚みの増加(10−2mm)を表す。横軸は2−AG−E処理後の時間を表す。耳介腫脹は、右耳の両側に10μL/部位の2−AG−E(100mg/mL)を局所塗布して誘導した。各ポイントはマウス8匹における平均±標準誤差を示す。**:p<0.01、NS:有意差なし(vs野生型マウス Student t−test)。
【図21】野生型およびCB2ノックアウトマウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。上段の図が処理後0−24時間、下段の図が1−8日の結果を示す。縦軸はAUC(時間x10−2mm)を表す。左から野生型、CB2ノックアウトマウスの結果を示す。**:p<0.01、NS:有意差なし(vs野生型マウス Student t−test)。
【図22】野生型および肥満細胞欠損マウス(WBB6F1−W/Wv)における2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。縦軸は縦軸は耳介厚みの増加(10−2mm)を表す。横軸は2−AG−E処理後の時間を表す。耳介腫脹は、右耳の両側に10μL/部位の2−AG−E (100mg/mL) を局所塗布して誘導した。各ポイントはマウス8匹における標準± 標準誤差を示す。*:p<0.05, **:p<0.01, ***:p<0.001 (vs WBB6F1−+/+ マウスStudent t−test)。
【図23】正常マウスおよび肥満細胞欠損マウス(WBB6F1−W/Wv)における2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。上段の図が処理後0−24時間、下段の図が1−8日の結果を示す。縦軸はAUC(時間x10−2mm)を表す。左からWBB6F1−+/+(アセトン、2−AG−E)、WBB6F1−W/Wv(アセトン、2−AG−E)の結果を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、カンナビノイドレセプターインバースアゴニストの新規用途に関する。より詳しくは、カンナビノイドレセプター、特に末梢細胞型レセプター(CB2とも言う。)に選択的に作用するインバースアゴニストの非即時型アレルギー疾患治療剤としての用途に関し、また、該インバースアゴニストを用いた非即時型アレルギー疾患治療方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
<大麻及びカンナビノイドについて>
大麻は古代から鎮痛、解熱、催眠等に用いられ、薬として利用されてきた。日本では、1886−1951年まで薬局方に印度大麻として収載され、鎮痛・麻酔剤として使用された。また、アメリカ合衆国では、1850−1942年まで薬局方でリウマチ、喘息、扁桃炎などの薬として大麻のアルコール溶剤が認められていた。
【0003】
一方、大麻あるいはその精神作用発現の主要成分と考えられるΔ9−テトラヒドロカンナビノール(THC)は、視覚・聴覚の異常、時間・空間的認知の異常、被暗示性の増大、思考能力・自発性の低下ならび記憶障害を誘発し、精神機能に著明な変化を起こすことが知られる。その他の薬理作用も極めて多様であり運動失調、被刺激性の増大、体温低下、呼吸抑制、心拍数増大、カタレプシー惹起作用、血圧上昇、血管拡張作用、免疫抑制作用、口渇等が報告されており、現在では、その使用に制限が設けられている。
【0004】
大麻に含まれる一連の幻覚発現物質はカンノビノイドと総称され、現在、THCをはじめと60種以上のカンナビノイドが見出されている。
【0005】
天然のカンナビノイドよりも強力な種々の人工的リガンドが開発され、そのレセプターが探索された。結果、1988年にラット脳の膜成分にカンナビノイドレセプターの存在が示され、その後1991年にはヒトcDNAがクローニングされた。一方、それと44%の相同性を有する蛋白質が、ヒト前骨髄性白血病細胞HL60から見出され、その後、脾臓などの末梢組織で分布することが確認された。1993年、脳の受容体をCB1、末梢組織に見出される受容体をCB2と呼ぶことがMunroらによって提唱され、現在はこの名称が一般に使われている。
【0006】
CB1の体内分布は脳以外に、ヒト精巣、ヒト前立腺・卵巣・子宮・骨髄・胸腺・扁桃・下垂体・副腎・心・肺・胃・大腸・胆管・白血球などの多くの組織で探知されているがそのレベルは脳よりもはるかに低い。これに対しCB2はラット脳には存在せずに脾の辺縁帯の単球に見出された。ヒトの脾・白血球・扁桃・胸腺・膵では、CB2はCB1よりはるかに高いレベルで存在する。
【0007】
受容体の2つのサブタイプ(CB1とCB2)の実体と、アナンダミド、2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)、2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E;2−AGの還元体であって2−AGと同様の作用を示すと考えられる。)等の内因性リガンドの存在が確認され、その生理的役割についての検討がなされた。その結果、CB2がT細胞及びB細胞の増殖を抑えてアポトーシスを誘導し免疫抑制作用を示すこと、CB1欠損のノックアウトマウスではカンナビノイド投与で見られる中枢作用が示されないこと、CB2欠損のノックアウトマウスではカンナビノイドによるヘルパーT細胞活性化抑制がみられないこと等様々な知見が得られつつある。
【0008】
【化21】
【0009】
現在、これらの知見からCB1とCB2の分布と機能の違いを考え、それぞれに特異的なアゴニスト、アンタゴニスト、或いはインバースアゴニストの医薬品への応用が試みられている。CB1と関連してパーキンソン病、アルツハイマー病、記憶障害、老人性痴呆、多発性硬化症、食欲減退、疼痛など、CB2関連として免疫疾患、リウマチ、炎症などが、創薬開発の対象として考えられている。中でも、CB2に選択的に作用する薬剤、すなわち末梢細胞型(末梢型、末梢性とも言う。)カンナビノイドレセプターに選択的な調節物質は、中枢作用を示さない安全な薬剤として期待されている。ここで、カンナビノイドが極めて低濃度でCB1への中枢作用を示すことから、CB2選択的調節物質の中でも、よりCB1作用が少ないことが望まれる。
【0010】
なお、現在、非選択的カンナビノイドレセプターリガンドとして、Δ9−THC、CP55940、WIN55212−2、HU−243、HU−210等が、CB1選択的リガンドとして、SR141716A、LY320135、アラキドノイル−2’−クロロエチルアミド、CP56667等が、CB2選択的リガンドとして、SR144528、AM630、HU−308、JWH−051、L−768242等が知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照。)。
【0011】
<アレルギーについて>
ここで、アレルギー疾患、特にアレルギー性皮膚炎及びアレルギー性喘息について説明をする。
アレルギーとは、抗原抗体反応に基づく生体の過敏性の反応として認識され、単球・マクロファージ・好中球のなどの集積を特徴とする通常の炎症反応とは異なり、アレルギー反応では、好酸球・好塩基球・肥満細胞の寄与するところが大きい。
【0012】
アレルギー反応は、現在、一般的に4つの型に分類され、生体ではこれら4つの反応が互いに独立して起こるのではなく、いくつかの型の反応が同時に起こっていることもある。
【0013】
抗原(アレルゲン)が体内に侵入すると、まずマクロファージ等の抗原提示細胞に取り込まれる。抗原提示細胞は、取り込んだ抗原の情報をT細胞に伝える。さらにT細胞はB細胞に対して抗原特異的IgE抗体を作るように命じる。IgE抗体は肥満細胞と結合し、これにより肥満細胞は感作状態となる。
【0014】
再び抗原が侵入し、肥満細胞上のIgE抗体と抗原とが結合すると、肥満細胞からヒスタミン、好酸球走化因子、ロイコトリエンなどの様々な化学伝達物質やインターロイキンなどのサイトカインが放出される。
【0015】
例えば、化学伝達物質が気管支に作用すれば、気管支平滑筋が収縮し、粘膜の腫れ、痰の分泌などによって気道が狭くなり喘息発作を起こす。皮膚に作用すると炎症や腫れ、痒みが起き、蕁麻疹等の皮膚疾患を起こす。鼻の粘膜に作用すると血管透過性が亢進し、血液中の水分が集まり鼻粘膜が腫れて鼻づまりを起こしたり、神経刺激によってクシャミ、鼻汁が大量に出るアレルギー性鼻炎をもたらす。消化管でこの反応が起こると腸の平滑筋が収縮して腸の動き(蠕動)が異常に高まり、腹痛、嘔吐、下痢などの消化管アレルギーをもたらす。
【0016】
この反応は抗原が侵入して30分以内におこるため、即時型アレルギー反応或いはI型アレルギー反応と言われる。通常、即時型反応は1時間ほどで収まる。代表的な疾患としてはアナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性胃腸症等が挙げられる。
【0017】
しかし、数時間から数日後には肥満細胞から放出された好酸球走化因子やサイトカインに引き寄せられて、毒性の強い化学物質を持つ好酸球がアレルギー反応の部位に集まり、化学物質を放出して組織障害を引き起こす。これを「遅発型アレルギー反応」という。この反応が気管支で起これば粘膜上皮が剥離して、抗原がさらに容易に侵入できるようになり、アレルギー反応が長引き、気道の過敏性が亢進し、喘息が難治化する。これを遅発型喘息反応という。例えば、この遅発型反応は、喘息においては主に4−8時間後であり、アトピー性皮膚炎においては主に12−48時間後に起こる。
【0018】
II型アレルギー反応は細胞溶解型ともいわれ、抗原に結合したIgMまたはIgG抗体に補体が作用し、細胞膜に穴を開けて細胞を溶かす反応である。これとは別に抗体の結合をうけた細胞にマクロファージやキラー細胞が作用して傷害物質を放出し、細胞や組織を破壊する反応もある。代表的な疾患として溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、グッドパスチェア症候群などが挙げられる。
【0019】
III型アレルギー反応は、抗原と抗体(IgG抗体)が結合した抗原抗体複合体が食細胞に処理されきれずに組織に沈着し、そこへ補体やマクロファージ、好中球が集まって炎症を起こし、組織を障害する。代表的な疾患として溶連菌による急性糸球体腎炎、関節リウマチや膠原病、血清病、ウイルス性肝炎、アレルギー性肺胞炎などが挙げられる。
【0020】
IV型アレルギー反応は、1−3型と異なり抗体は関与しない。感作が成立した状態で再度抗原が侵入すると、T細胞はサイトカインを放出して、リンパ球、好中球、マクロファージなどの免疫細胞を遊走し抗原を破壊するが、同時に炎症を起こし組織破壊を引き起こす。侵入した抗原が細胞であれば、キラーT細胞が抗原を破壊する。反応が完了するのには通常1−2日かかり、「遅延型アレルギー反応」とも呼ばれる。ツベルクリン反応、結核病変、臓器移植後の拒絶反応、うるしかぶれ、化粧品かぶれ等の皮膚炎などはIV型アレルギー反応である。
【0021】
アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎などの一般的アレルギー疾患の急性症状は、大部分が即時型反応であるとされてきた。しかし近年、アレルギー性喘息は一過性の即時型過敏症ではなく、慢性炎症に本体があるとの認識がなされてきた。
【0022】
喘息にはアレルゲンにより誘発される「アレルギー性喘息」と、特定アレルゲンによらず、寒冷、運動、等に誘発される非アレルギー性喘息が知られる。
【0023】
「喘息」すなわち「気管支喘息」は、かつて可逆性の気流制限(気道閉塞)と気道の過敏性が特徴とされていたが、喘息の気道には、気道上皮の剥離、基底膜直下の繊維化(基底膜部の肥厚)、好酸球の集簇を特徴とする慢性の炎症が存在することが明らかになり、今日では慢性炎症性疾患と認識されている。気道炎症には、好酸球、T細胞、肥満細胞など多くの炎症細胞が関与すると見られ、即時型反応では肥満細胞、遅発型反応では好酸球、遅延型反応では好酸球及びCD4陽性ヘルパーT細胞の関与が重要と考えられる。
【0024】
抗喘息薬は、可逆的気道閉塞に対する気管支拡張薬中心の治療から、慢性炎症に対する抗炎症薬中心の治療へと移行してきた。発作時の治療としては、その症状に応じ、短時間作用性β2刺激薬、短時間作用性テオフィリン薬、吸入抗コリン薬、注射・経口ステロイド剤等が用いられる。また、長期管理に際しては、吸入・経口ステロイド薬、除放性テオフィリン薬、長期作用性β2刺激薬の他、抗アレルギー剤(メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1拮抗薬、ロイコトリエン拮抗薬、トロンボキサンA2阻害・拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬)が用いられている。しかし、ステロイド剤に見られる副腎機能抑制等の副作用、ステロイド、ロイコトリエン拮抗薬等の効果の低い症状(抵抗性)も知られ、更なる抗喘息薬が期待されている。
【0025】
アトピー性喘息あるいはアトピー性皮膚炎は、家族歴あるいは既往歴でアレルギー疾患を認める症状である。アトピー型の喘息、皮膚炎は小児に多いこともあり、特により副作用の少ない治療薬が望まれる。
【0026】
「『アトピー性皮膚炎』は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
【0027】
アトピー素因:(1)家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、或いは複数の疾患)、または(2)IgE抗体を産生しやすい素因」と定義され、他の炎症性皮膚疾患とは区別される。
【0028】
症状として皮膚の過敏性および乾燥を有し、特徴的な皮疹(紅斑、丘疹、痂皮、鱗屑、苔癬化病変、痒疹等)は、慢性・反復性経過をたどる。また、カポジ水痘用発疹症、ウイルス感染症(単純ヘルペスウイルス感染症等)、膿痂疹、伝染性軟属種(白内障、網膜剥離等)等の合併症を引き起こす。
【0029】
アトピー性皮膚炎でもまた、その病変には、IgE・肥満細胞による即時型・遅発型アレルギー反応に加え、ランゲルハンス細胞・T細胞による遅延型アレルギー反応が係わると考えられる。
【0030】
その治療には、食物・ダニ等の原因・増悪因子の除去、スキンケア(皮膚を清潔に保つ、皮膚の乾燥を防ぐため保湿剤を用いる等)とあわせ、症状に応じて薬物療法が用いられる。
【0031】
掻痒に対しては抗ヒスタミン剤が用いられるが、その効果は蕁麻疹の場合とは異なり顕著ではない。
【0032】
炎症に対しては原則としてプレドニゾロン、吉草酸ベタメサゾン等のステロイド外用剤が用いられる。補助的に抗ヒスタミン剤あるいは抗アレルギー剤の内服薬が用いられるが、それらのみで皮膚炎をコントロールすることは困難とされる。一般的にアトピー性皮膚炎は難治であり、副作用からステロイド剤を忌避する声も多いため、新薬の開発が望まれている。近年、免疫抑制剤のタクロリムス軟膏剤が用いられ効果を上げているものの、これもその副作用が懸念され、使用に制限が設けられている。また、皮膚疾患部の損傷が激しく外用が困難である症状、顔・粘膜等もともと表皮が薄く敏感な箇所におこる症状、表皮の内層部・体の広範囲に及ぶ疾患の治療等のため、取扱いが容易で安全な経口剤の開発も望まれている。
【0033】
本出願人の出願に係る特開2000−256323号(WO00/40562)には、カンナビノイドレセプター調節物質として下記一般式で表される2−オキソキノリン化合物が開示されている。
【0034】
【化22】
【0035】
(式中、各記号は前述の通り。)
また、その例として2−オキソキノリン化合物としてN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(以下、化合物Aという。)等が開示されている。
【0036】
【化23】
【0037】
また、同公報には、カンナビノイドレセプター調節物質の利用について、「末梢細胞型レセプター、例えばマクロファージ上のレセプターの発見(非特許文献6参照)によって、免疫反応を調節することにより、抗炎症作用、抗アレルギー作用を有し、もとより免疫調節作用を併せ持つ、末梢細胞型レセプターのアゴニストの開発が進められている。」こと、「末梢細胞型カンナビノイドレセプターに選択的に作用する薬剤は、副作用となる体温低下、カタレプシー等の中枢作用を示さない、安全な薬剤となり得るため、特に、末梢細胞型レセプター選択的調節剤の開発が期待されている。」こと、及び「カンナビノイドレセプター(特に末梢型カンナビノイドレセプター)調節剤、免疫調節剤、自己免疫疾患治療剤、抗炎症剤及び抗アレルギー剤として有用である。」旨が記載されている。
【0038】
加えて、同公報には、薬理試験として、末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に対する選択的結合試験、カラゲニン誘発足浮腫モデル試験、及び、ラットタウロコール膵炎モデルによる炎症及び出血の抑制試験について記載されている(特許文献1参照。)。
【0039】
しかし、当該公報には抗炎症作用についての具体的な開示が見られるものの、アレルギー疾患に関する具体的な試験例やデータは開示されていない。また、アトピー性皮膚炎・アレルギー性喘息等の特定アレルギー疾患についての具体的教示も見あたらない。
【0040】
また、先行文献には上記化合物A及び下記SR144528がCB2選択的リガンドであること、及び、それらがCB2インバースアゴニストとして作用することが記載されている。詳しくは、CB2発現CHO細胞において、化合物A及び下記SR144528が、アデニル酸シクラーゼ活性化剤であるフォルスコリンの刺激による環状アデノシン一リン酸(cAMP)産生を、増加させること、すなわち、化合物A及びSR144528がCB2インバースアゴニストとして作用することが記載されている。当文献では同試験においてTHCがcAMP産生を低減させるという一般的な知見についても併記している(非特許文献3参照)。
【0041】
【化24】
【0042】
既知のいくつかの特許公報(或いは文献)には、カンナビノイド調節物質の抗アレルギー効果についての記載が見られる。
【0043】
特開昭52−113976号(US4179517号)には、THC誘導体の喘息発作の予防効果について記載されており、適応症として喘息、アレルギー等が記載されている(特許文献2参照)。
【0044】
特表2002−511411号(WO99/52524号)には、カンナビジオール等のカンナビノイドが、喘息等の炎症性疾患の治療に用いられることが示されている。しかし、カンナビジオールはCB1とCB2には結合をしないとする文献が引用されている(特許文献3参照)。
【0045】
WO01/64212号には、カンナビノイド調節物質が、好ましくはCB1アゴニストが、筋疾患、例えば喘息、気管支炎等の治療に用いられることが示されている(特許文献4参照)。
【0046】
WO01/95899号には、アラキドン酸誘発耳浮腫に対するカンナビジオール誘導体の抗炎症作用が記載されている(特許文献5参照)。
【0047】
WO01/89589号には、カンナビノイドを局所投与することにより末梢細胞に存在するCB1レセプターを調節し、咳を改善(ameliorate)する方法が記されている(特許文献6参照)。
【0048】
WO00/16756号には、カンナビノイド調節物質が開示され、適応症として皮膚疾患(アトピー性皮膚炎等)、呼吸器疾患(喘息等)、アレルギー性鼻炎等が述べられている。しかし、該化合物が、CB1選択的であること、末梢細胞に存在するCB1レセプターを調節することが述べられている(特許文献7参照)。
【0049】
特表平8−504195号(WO94/12466号)には、カンナビノイドレセプターに対するリガンドが、抗炎症、抗喘息等に活性を示すことが記載されている(特許文献8参照)。
【0050】
特開平6−73014号(US5624941号)及び特開平7−324076号(US5462960号)には、カンナビノイドレセプターに対するリガンドが、胸腺障害、喘息、免疫調節等の治療に使用され得ることが記載されている(特許文献9及び特許文献10参照)。
【0051】
WO01/98289号には、Δ6テトラヒドロカンナビノールタイプの化合物が、炎症、喘息・慢性閉塞性肺疾患等の肺疾患、自己免疫疾患等の治療に使用され得ることが記載されている。しかし、その作用は、NメチルDアスパラギン酸受容体の遮断と抗酸化活性に加えて、プロスタグランジン合成阻害、腫瘍壊死因子産生阻害、シクロオキゲナーゼ阻害、一酸化窒素産生阻害によるものであることが記載されている(特許文献11参照)。
【0052】
WO02/26702号には、カンナビノイドレセプター調節物質、特にアゴニストが、喘息、アレルギー、皮膚疾患等に有効であることが記載されている(特許文献12参照)。
【0053】
WO01/87297号には、CB1調節物質が、乾癬の様な皮膚壊死等の治療に用いられることが記載されている(特許文献13参照)。
【0054】
WO02/42248号には、カンナビノイドレセプター結合剤、特にCB1アゴニストが、喘息、鼻炎、炎症性皮膚疾患に使用されることが記載されている(特許文献14参照)。
【0055】
WO02/47691号には、カンナビノイドレセプターアゴニストが、炎症等の治療に用いられることが記載されている(特許文献15参照)。
【0056】
しかし、これら化合物が、真にアレルギー疾患の治療効果、特にアトピー性疾患への治療効果を有するか否かは、いまだ実験的に明らかにされていない。
【0057】
また、いくつかの公報にはCB2選択的なカンナビノイド調節物質による薬理作用について記載が見られる。
【0058】
特表11−500411号(WO96/18391号)には、CB2調節物質が、免疫系障害、慢性呼吸器障害(喘息等)等の治療に用いられることが示されている。また、マストセル、非免疫セル(例えば、小脳顆粒、小脳、心臓)にCB2が発現することを見出した旨が記載されている(特許文献16参照)。
【0059】
特表11−501615号(WO96/18600号)には、CB2調節物質が、自己免疫疾患、慢性炎症、呼吸器障害(喘息等)等の治療に用いられることが示されている(特許文献17参照)。
【0060】
特表10−508870号(WO96/25397号)には、CB2調節物質が、肺障害(喘息、慢性気管支炎等)、アレルギー性反応(鼻炎、接触性皮膚炎、結膜炎等)、免疫系障害の治療に用いられることが示されている(特許文献18参照)。
【0061】
特表平11−507937号(US6013648)には、CB2作用薬が開示されており、該作用薬の適応症として、自己免疫疾患、感染性疾患、アレルギー疾患(具体的には、急性過敏症、喘息)が記載されている。しかし、該作用薬はCB2に対し選択性を有するが、フォルスコリン刺激によるcAMP産生を抑制する旨が記載されている(特許文献19参照)。
【0062】
特表2000−502080号(US5925768号)には、CB2受容体への親和性を有する化合物が開示されており、適応症として免疫疾患、例えばアレルギー疾患(即時型過敏症又は喘息)等が記載されている。しかし、該化合物がCB2受容体アンタゴニストであることが記載されている(特許文献20参照)。
【0063】
特表2001−508799号(WO98/31227号)には、CB2調節物質、特にアンタゴニストが、免疫疾患、炎症等の治療に用いられることが示されている(特許文献21参照)。
【0064】
特表2001−516361号(WO98/41519号)には、CB2調節物質、特にアゴニストが、免疫疾患、炎症等の治療に用いられることが示されている(特許文献22参照)。
【0065】
特表2001−515470号(US6262112号)には、カンナビノイドアゴニスト、特にCB1アゴニストが、アレルギー性疾患、喘息、炎症性及び/又は免疫学原因の皮膚疾患等の治療に有効であることが記載されている。また、当該化合物のいくつかはCB2に有効であることが記載されている(特許文献23参照)。
【0066】
WO99/57107号には、CB2選択的調節物質が、抗炎症、免疫調節に用いられることが示されている(特許文献24参照)。
【0067】
特表2002−523395号(WO00/10967号)及び特表2002−523396号(WO00/10968号)には、CB1アゴニスト、CB2アゴニストが、それぞれ皮膚疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献25及び特許文献26参照)。
【0068】
特表2002−539246号(WO00/56303号)には、CB2選択的アゴニストが、免疫疾患の治療に用いられることが示されている(特許文献27参照)。
【0069】
WO01/4083号には、CB2選択的調節物質、特にアゴニストが、炎症、免疫性疾患、例えばアトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、喘息等の治療に用いられることが示されている。しかし、該化はcAMP上昇を抑制する旨が記載されている。(特許文献28参照)。
【0070】
WO01/19807号には、CB2選択的調節物質、特にアゴニストが、抗炎症、免疫抑制作用を有することが記載されており、ヒツジ赤血球誘発遅延型過敏反応モデル実験による試験結果が記載されている。しかし、該化合物はcAMP上昇を抑制する旨が記載されている。(特許文献29参照)。
【0071】
WO01/29007号には、カンナビノイド調製物質が、抗炎症、免疫系の調節等に用いられることが示されている。該化合物のいくつかはアンタゴニストであり、その他がアゴニストであることが記載され、また、バインディングアッセイの結果によりCB2選択的な調節物質も示されている(特許文献30参照)。
【0072】
WO01/28497号には、CB2選択的調節物質、特にアゴニストが、抗炎症作用等を有することが示されている(特許文献31参照)。
【0073】
WO01/32169号には、CB2選択的アゴニストが、抗炎症、自己免疫疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献32参照)。
【0074】
WO01/28329号には、CB2選択的調節物質が、抗炎症、自己免疫疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献33参照)。
【0075】
WO01/28557号には、カンナビノイドレセプター調節物質が、抗炎症、自己免疫疾患等の治療に用いられることが示されており、該化合物のうちいくつかはCB2選択的な調節物質である試験データが開示されている(特許文献34参照)。
【0076】
WO01/32629号には、CB2アンタゴニストが、抗炎症、免疫疾患等の治療に用いられることが示されている(特許文献35参照)。
【0077】
WO01/58869号には、CBアゴニスト、特にCB2アゴニストが、呼吸器疾患特に、喘息、気管支炎等の治療に用いられることが示されている。また、該アゴニストが肺上皮細胞からのムチン産生を抑制することが記載されている(特許文献36参照)。
【0078】
WO01/96330号には、CB2に結合する化合物が開示され、適応症として、呼吸器疾患、例えば喘息・気管支炎等、炎症性疾患等が挙げられている(特許文献37参照)。
【0079】
WO02/10135号には、CB2アゴニストが、喘息、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患等の治療に有効であることが記載されている。また、該化合物がcAMP産生を抑制することをしめす試験結果が示されている(特許文献38参照)。
【0080】
WO02/42269号には、CB2アゴニストが、乾癬等の免疫系疾患、過敏症・喘息・アレルギー性鼻炎、接触性皮膚炎等のアレルギー性疾患、関節炎等の炎症性疾患等の治療に有効であることが記載されている(特許文献39参照)。
【0081】
WO02/58636号には、カンナビ様化合物、特にCB2選択的化合物が、抗炎症、免疫系の調節等に用いられることが記載されている。また、該化合物がcAMP産生を抑制するアゴニストであることが記載されている(特許文献40参照)。
【0082】
WO02/60447号には、CB1選択的調節物質、CB2選択的調節物質が記載されている。また、CB2選択的調節物質、特にアンタゴニストが、抗炎症、免疫系の調節等に用いられることが記載されている(特許文献41参照)。
【0083】
WO02/53543号には、CB2親和性化合物が、抗炎症剤、免疫抑制剤等として用いられることが示されている。また、フォルスコリン刺激によるcAMP生成量を測定し、いくつかの化合物がアゴニスト作用を示すこと、及び、ヒツジ赤血球誘発遅延型過敏反応モデルを用いた試験方法を記載している(特許文献42参照)。
【0084】
WO02/72562号には、CB2親和性化合物、特にアゴニストが、抗炎症剤、免疫抑制剤等として用いられることが示されている。また、フォルスコリン刺激によるcAMP生成量を測定し、いくつかの化合物がアゴニスト作用を示すこと、及び、ヒツジ赤血球誘発遅延型過敏反応モデルを用いた試験方法を記載している(特許文献43参照)。
【0085】
WO02/62750号には、カンナビノイド調節物質、特にCB2に結合する化合物が、アトピー性皮膚炎、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎等の治療に有効であることが記載されている(特許文献44参照)。
【0086】
WO02/85866号には、CB2選択的アゴニストが、痛みの治療に有効であることが記載されている(特許文献45参照)。
【0087】
しかしながら、これら化合物がCB2に選択的に作用することは、依然として実証されておらず、いまだ、これら化合物がアレルギー疾患、特に非即時型アレルギー疾患治療剤として、真に有効であるか否かについて、確かな実験に基づいて、或いは、理論的証拠を持って確認されていない。ましてや、これら化合物が、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、即時型喘息反応、遅発型喘息反応、気道過敏症に有効であるという確証もなされてはいない。また、CB2インバースアゴニスト作用によって治療効果を示すことも示されておらず、それを示唆する記載も見られない。
【0088】
このように、カンナビノイドレセプターへの作用と病理との関係についての知見は様々であり、特にCB2選択的な調節物質の臨床への応用について、アゴニストであるべきか、アンタゴニストであるべきか、或いはインバースアゴニストであるべきかの統一した見解は得られていない。
【0089】
これら事情の下、抗アレルギー剤として用いられるカンナビノイド調節剤、特にインバースアゴニストについては、今だ開発されるに至っていない。
【0090】
なお、本発明者らは、本出願に係る薬理作用を評価するに際し、抗アレルギー効果の判断に有効な病態モデル動物として、アトピー性皮膚炎類似の炎症を誘導させたDNFB誘発アレルギー性皮膚炎マウス(非特許文献4参照。)、(即時相・遅発相・後遅発相)の皮膚炎を惹起させたIgE依存性アレルギー性皮膚炎マウス(非特許文献5参照。)等を使用した。これら病態モデルは抗アレルギー作用、特にアトピー性皮膚炎の薬理作用を評価するのに適したモデルとして用いられている。
【0091】
【特許文献1】
特開2000−256323号(29頁実施例3−5、及び、6頁右42行から7頁左1行、65頁右43行から46行、63頁左16行から65頁左37行)
【0092】
【特許文献2】
特開昭52−113976号(3頁右下1行から4行、8頁右上12行から17行)
【0093】
【特許文献3】
特表2002−511411号(6頁段落番号0005、7頁段落番号0009)
【0094】
【特許文献4】
WO01/64212号(4頁1行から29行)
【0095】
【特許文献5】
WO01/95899号(20頁7行から23頁23行)
【0096】
【特許文献6】
WO01/89589号(2頁15行から4頁2行、図2B、2C)
【0097】
【特許文献7】
WO00/16756号(13頁18行から15頁14行、30頁13行から32頁表、43頁4行から44頁行)
【0098】
【特許文献8】
特表平8−504195号(12頁表II、16頁)
【0099】
【特許文献9】
特開平6−73014号(6頁左28行から50行)
【0100】
【特許文献10】
特開平7−324076号(8頁左4行から34行)
【0101】
【特許文献11】
WO01/98289号(5頁下13行から7頁11行、12頁7行から13行)
【0102】
【特許文献12】
WO02/26702号
【0103】
【特許文献13】
WO01/87297号(3頁9行から15行、10頁7行から13行)
【0104】
【特許文献14】
WO02/42248号(6頁下5行から7頁20行、12頁14行から17行)
【0105】
【特許文献15】
WO02/47691号(2頁段落番号0006、3頁4行から最終行)
【0106】
【特許文献16】
特表11−500411号(9頁12行から11頁12行、65頁22行から67頁6行)
【0107】
【特許文献17】
特表11−501615号(16頁16行から21行、52頁14行から54頁7行)
【0108】
【特許文献18】
特表10−508870号(13頁11行から12行、34頁7行から22行)
【0109】
【特許文献19】
特表平11−507937号(13頁10行から22行、66頁14行から67頁5行)
【0110】
【特許文献20】
特表2000−502080号(42頁19行から44頁2行)
【0111】
【特許文献21】
特表2001−508799号(14頁5行から14行、27頁9行から18行)
【0112】
【特許文献22】
特表2001−516361号(6頁18行7頁2行、14頁17行から18行)
【0113】
【特許文献23】
特表2001−515470号(86頁7行から87頁14行)
【0114】
【特許文献24】
WO99/57107号(1頁1行から2頁13行、22頁表)
【0115】
【特許文献25】
特表2002−523395号(65頁9行から66頁20行)
【0116】
【特許文献26】
特表2002−523396号(78頁下3行から80頁8行)
【0117】
【特許文献27】
特表2002−539246号(53頁5行から54頁23頁、64頁下9行から65頁5行)
【0118】
【特許文献28】
WO01/4083号(50頁9行から56頁12行)
【0119】
【特許文献29】
WO01/19807号(27頁11行から28頁8行、134頁下7行から138頁最終行)
【0120】
【特許文献30】
WO01/29007号(4頁6行から25行、8頁表1)
【0121】
【特許文献31】
WO01/28497号(1頁下4行から3頁6行、9頁21行から26行)
【0122】
【特許文献32】
WO01/32169号(3頁18行から4頁最終行)
【0123】
【特許文献33】
WO01/28329号(2頁1行から3頁14行)
【0124】
【特許文献34】
WO01/28557号(2頁5行から5頁15行、7頁表)
【0125】
【特許文献35】
WO01/32629号
【0126】
【特許文献36】
WO01/58869号(2頁1行から8行、44頁下4行から46頁15行)
【0127】
【特許文献37】
WO01/96330号(7頁27行から8頁9行、56頁9行から29行)
【0128】
【特許文献38】
WO02/10135号(71頁10行から72頁11行)
【0129】
【特許文献39】
WO02/42269号
【0130】
【特許文献40】
WO02/58636号(7頁5行から8頁25行、29頁18行から25行)
【0131】
【特許文献41】
WO02/60447号(6頁1行から7頁2行、8頁7行から17行、9頁表1)
【0132】
【特許文献42】
WO02/53543号(85頁4行から最終行、278頁4行から281頁15行)
【0133】
【特許文献43】
WO02/72562号(29頁22行から30頁18行、120頁5行から123頁19行)
【0134】
【特許文献44】
WO02/62750号(3頁14行から4頁最終行)
【0135】
【特許文献45】
WO02/85866号(1頁4行8行、8頁31行から9頁3行)
【0136】
【非特許文献1】
山本尚三ら著,生物と化学,vol.39,No.5,pp293から300,2001年
【0137】
【非特許文献2】
Expart Opinion on Therapeutic Patents,Vol.12,No.10,1475−1489,2002
【0138】
【非特許文献3】
The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, vol.296, No.2, pp420から425,2001年(422頁表1、423頁表3)
【0139】
【非特許文献4】
Jarnal of Allergy Clinical Immunology, Vol.100, No.6, Part2, pp.39−44,Dec.1997
【0140】
【非特許文献5】
Pharmacology, Vol.60, No.2, pp.97−104, Feb.2000
【0141】
【非特許文献6】
Munroら, Nature, Vol.365,pp.61−65, 1993
【0142】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通りカンナビノイドレセプター調節物質は未だ医薬品として成功を収めておらず、その効果的な用途が模索されている。
従って、本発明は、カンナビノイドレセプター調節物質、特に末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に選択的な調節物質、特にインバースアゴニストを有効成分とする新規な非即時型アレルギー疾患治療剤を提供することを課題とする。
【0143】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、選択的CB2調節物質、特に特にインバースアゴニストがアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びアレルギー性結膜炎等のアレルギー疾患に対して、極めて有効に作用することを初めて実験的に確認するとともに理論付けをすることによって、本発明を完成した。本発明の医薬は、特に、アレルギー性喘息及びアトピー性皮膚炎の治療剤として有効である。この事実、即ち本発明の効果は、先述の特開2000−256323(WO00/40562)から予測不可能なものであり、発明者自身をして驚くべきものであった。
【0144】
より詳しくは下記〔1〕乃至〔19〕に示す通りである。
〔1〕 カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストを有効成分として含有してなる非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔2〕 インバースアゴニストが、2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)及び/又は2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)のアゴニスト作用に拮抗して、インバースアゴニスト作用を示す化合物である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔3〕 インバースアゴニストが、以下の化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528又はその医薬上許容される塩から選ばれる化合物である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
【0145】
【化25】
(化合物A)
【0146】
【化26】
(化合物B)
【0147】
【化27】
(化合物C)
【0148】
【化28】
(化合物D)
【0149】
【化29】
(化合物E)
【0150】
【化30】
(化合物F)
【0151】
【化31】
(化合物G)
【0152】
【化32】
(化合物H)
【0153】
【化33】
(化合物I)
【0154】
【化34】
【0155】
〔4〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎及び/又はアレルギー性結膜炎である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔5〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎である〔4〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔6〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性喘息である〔4〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔7〕 アレルギー性喘息が、遅発型喘息反応、及び/又は、気道過敏症である〔6〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔8〕 非即時型アレルギー疾患が、遅発型アレルギー反応、及び/又は、遅延型アレルギー反応を伴う疾患である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔9〕 カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストが、ロイコトリエン阻害作用を併せ持つ化合物である〔1〕記載のアレルギー疾患治療剤。
〔10〕 非即時型アレルギー疾患が、2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患である〔1〕記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
〔11〕 非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む。
(a)カンナビノイドレセプター、内因性カンナビノイド、及び、被験化合物を接触させる工程、
(b)カンナビノイドレセプターと内因性カンナビノイドとの結合能を測定する工程、
(c)被験化合物の非存在下と比較し、工程(b)で測定した結合能を低下させる化合物を選択する工程。
〔12〕 カンナビノイドレセプターがCB2であり、内因性カンナビノイドが2−AG又は2−AG−Eである〔11〕記載の方法。
〔13〕 非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む。
(a) CB2に選択的に結合する候補化合物を選定する工程、
(b) 工程(a)で選定された化合物から、CB2インバースアゴニストである化合物を選定する工程、
(c) 工程(b)で選定された化合物の抗アレルギー作用を測定する工程。
〔14〕 非即時型アレルギー疾患を患う患者に、有効量のCB2インバースアゴニストを含む製剤を投与することからなる非即時型アレルギー疾患の治療方法。
〔15〕 インバースアゴニストが、2−AG及び/又は2−AG−Eのアゴニスト作用に拮抗して、インバースアゴニスト作用を示す化合物である〔14〕記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
〔16〕 インバースアゴニストが、以下の化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528又はその医薬上許容される塩から選ばれる化合物である〔14〕記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
【0156】
【化35】
(化合物A)
【0157】
【化36】
(化合物B)
【0158】
【化37】
(化合物C)
【0159】
【化38】
(化合物D)
【0160】
【化39】
(化合物E)
【0161】
【化40】
(化合物F)
【0162】
【化41】
(化合物G)
【0163】
【化42】
(化合物H)
【0164】
【化43】
(化合物I)
【0165】
【化44】
【0166】
〔17〕 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎又は及びアレルギー性結膜炎から選ばれる疾患である〔14〕記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
〔18〕 カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストを有効成分として含有してなる2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患の治療剤。
〔19〕 2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患が、血液癌、敗血症、及び、循環器疾患から選ばれる疾患である〔18〕記載の治療剤。
【0167】
【発明の実施の形態】
次に、本明細書において使用する語句の説明を行なう。
【0168】
「カンナビノイドレセプター調節物質」及び「カンナビノイドレセプター調節剤」とは、カンナビノイドレセプターの生物活性を調節する物質、若しくはカンナビノイドレセプターの発現を調節する物質であり、前者としては、アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、その他カンナビノイドレセプターの感受性を増強する或は低減する物質が挙げられ、後者としては、カンナビノイドレセプターの遺伝子発現を増強或は抑制する物質等が挙げられる。
【0169】
アゴニストとは受容体を介して細胞内シグナル伝達を引き起こす物質であり、アゴニストに拮抗してその作用を減弱させる物質をアンタゴニストという。
【0170】
インバースアゴニストとは、レセプターのアゴニスト本来の作用とは逆の作用を来すものである。内因性リガンドや薬物に拮抗して逆作動剤として働くものや、内因性リガンドや薬物の影響を受けずに逆作動剤として働くものも見られる。例えば、カンナビノイドレセプターにおいてcAMPレベルの観点からすると、カンナビノイドがその上昇を抑えるのに比し、化合物AはcAMPレベルを上昇させるという知見が得られている。さらに具体的には、内因性カンナビノイドである2−AG又は2−AG−E(非選択的CBアゴニスト)は、フォルスコリン刺激によるhCB2発現CHO細胞においてcAMP産生を抑制するが、ここでcAMP産生を増加させる働きを示すものはインバースアゴニストであると言える。インバースアゴニストして具体的には、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528、AM630が挙げられ、好ましくは化合物A及びSR144528である。
【0171】
カンナビノイドレセプター調節物質として具体的には、特開2000−256323(WO00/40562)に一般式[I]により表される化合物、より具体的にはN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(化合物A)等の2−オキソキノリン化合物等が挙げられ、その他、Δ9−THC、Nabilone(LY−109514)、CP−55940、PRS−211096、PRS−211335、PRS−211359、SR144528、SR141716、Rimonabant(SR141716A)、SR14778、AMG−3、SLV−319、AM−251、AM−281、AM374、AM404、AM630、AM−694、AM2233、AM2230、AM1221等のWO01/28557記載の化合物、AM1703等のWO01/28497記載の化合物、AM1710等のWO01/28329記載の化合物、HU−308等のWO01/32169記載の化合物、HU−310等のWO99/51560記載の化合物、JWH−051、JWH−161、O−1236、O−1057、O−2093、L−759633、L−759656、L−768242、LY320135等のWO96/02248記載の化合物、BAY−38−7271、WO02/24630記載の化合物、WO02/10135記載の化合物、WO01/96330記載の化合物、WO01/85092記載の化合物、WO01/74763記載の化合物、WO01/70700記載の化合物、WO01/64634記載の化合物、WO01/64633記載の化合物、WO01/64632記載の化合物、WO01/58869記載の化合物、WO01/58445記載の化合物、WO01/04083記載の化合物、WO01/32629記載の化合物、WO01/29007記載の化合物、WO01/28588記載の化合物、特表2001−515470号(US6262112号)記載の化合物、特表2002−539246(WO00/56303)記載の化合物、WO00/46209記載の化合物、WO00/32200記載の化合物、WO00/16756記載の化合物、WO00/15609記載の化合物、特表2002−523396(WO00/10968)記載の化合物、特表2002−523395(WO00/10967)記載の化合物、WO99/60987記載の化合物、WO99/57107記載の化合物、WO99/57106記載の化合物、WO99/52524記載の化合物、WO99/26612記載の化合物、WO99/24471記載の化合物、WO99/2499記載の化合物、特表2001−516361(WO98/41519)記載の化合物、WO98/37061記載の化合物、WO98/32441記載の化合物、特表2001−508799(WO98/31227)記載の化合物、WO97/29079記載の化合物、特表2000−502080(WO97/21682)記載の化合物、WO97/19063記載の化合物、特表平11−507937(WO97/860)記載の化合物、WO96/20268記載の化合物、特表10−508870(WO96/25397)記載の化合物、特表11−501615(WO96/18600)記載の化合物、特表11−500411(WO96/18391)記載の化合物、WO94/12466記載の化合物、US6284788記載の化合物、US5939429記載の化合物、US5804592記載の化合物、US5605906記載の化合物、US5624941記載の化合物、US5462960記載の化合物、US5081122記載の化合物、US5013837記載の化合物、DE10015866記載の化合物、DE19837627記載の化合物、DE19837638記載の化合物、WO01/58450記載の化合物、WO01/32663記載の化合物、WO01/28498記載の化合物、WO01/24798記載の化合物、FR2805818記載の化合物、FR2805817記載の化合物、FR2805810記載の化合物、FR279912記載の化合物、FR2789079記載の化合物、FR2789078記載、WO01/89589記載の化合物、WO01/95889記載の化合物、WO01/98289記載の化合物、WO02/19383記載の化合物、WO02/26702記載の化合物、WO02/28346記載の化合物、WO01/87297記載の化合物、WO02/36590記載の化合物、WO02/42269記載の化合物、WO02/42248記載の化合物、WO02/47691記載の化合物、WO02/58636記載の化合物、WO02/60447記載の化合物、WO02/65997記載の化合物、WO02/53543記載の化合物、WO02/72562記載の化合物、WO02/62750記載の化合物、WO02/80903記載の化合物、WO02/85866記載の化合物等が挙げられる。
【0172】
好ましくは、末梢細胞型カンナビノイドレセプターに選択的に作用する調節物質であり、特開2000−256323(WO00/40562)記載の化合物、WO02/10135記載の化合物、SR144528、AM630、AM1221等のWO01/28557記載の化合物、AM1703等のWO01/28497記載の化合物、AM1710等のWO01/28329記載の化合物、HU−308等のWO01/32169記載の化合物、JWH−051、L−759633、L−759656、L−768242、WO01/74763記載の化合物、WO01/32629記載の化合物、WO01/29007記載の化合物、WO01/19807記載の化合物、WO01/4083記載の化合物、特表2002−539246(WO00/56303)記載の化合物、特表2002−523396(WO00/10968)記載の化合物、特表2002−523395(WO00/10967)記載の化合物、WO99/57107記載の化合物、WO99/2499記載の化合物、特表2001−516361(WO98/41519)記載の化合物、特表2001−515470号(US6262112号)記載の化合物、特表2001−508799(WO98/31227)記載の化合物、WO97/29079記載の化合物、特表2000−502080(WO97/21682)記載の化合物、特表平11−507937(WO97/860)記載の化合物、特表10−508870(WO96/25397)記載の化合物、特表11−501615(WO96/18600)記載の化合物、特表11−500411(WO96/18391)記載の化合物、US5605906記載の化合物、WO01/58869記載の化合物、WO01/96330記載の化合物、WO02/10135記載の化合物、WO02/42269記載の化合物、WO02/58636記載の化合物、WO02/60447記載の化合物、WO02/53543記載の化合物、WO02/72562記載の化合物、WO02/62750記載の化合物、WO02/85866記載の化合物であり、更に好ましくは、特開2000−256323(WO00/40562)記載の化合物、SR144528、AM630、AM1221等のWO01/28557記載の化合物、AM1703等のWO01/28497記載の化合物、AM1710等のWO01/28329記載の化合物、HU−308等のWO01/32169記載の化合物、JWH−051、L−759633、L−759656、L−768242、WO01/32629記載の化合物、WO01/29007記載の化合物、WO98/41519記載の化合物であり、特に好ましくは2−オキソキノリン化合物としてN−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−7−メトキシ−2−オキソ−8−ペンチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(化合物A)を挙げることができる。更に好ましくは、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、化合物F、化合物G、化合物H、化合物I、SR144528、AM630であり、更に好ましくは化合物A及びSR144528であり、最も好ましくは化合物Aである。
【0173】
「アレルギー疾患」としては、アナフィラキシー、消化管アレルギー、アレルギー性胃腸症、アレルギー性皮膚炎、うるしかぶれ・化粧品かぶれ等の皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、薬剤アレルギー、血清病、結核病変、臓器移植後の拒絶反応、結核病変、臓器移植後の拒絶反応等が挙げられるがこれに限定されず、アレルギーに関係する疾患であれば、何れにも適用可能である。より好ましくは、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎及びアレルギー性結膜炎を挙げることができる。特に好ましくは、皮膚若しくは呼吸器に関するアレルギー疾患を挙げることができ、より具体的な適応症としては、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息及びアトピー性喘息である。
【0174】
「非即時型アレルギー疾患」としては、遅発型アレルギー反応、及び/又は遅延型アレルギー反応を伴う疾患であり、即時型アレルギー反応を伴ってもよい。例えば、遅延型アレルギー反応のみに係わる疾患、遅発型及び遅延型アレルギー反応に係わる疾患、即時型、遅発型及び遅延型アレルギー反応に係わる疾患等が挙げられる。
【0175】
ここで、即時型アレルギー反応とは、抗原が侵入し30分以内、遅くとも2時間以内に引き起こされるアレルギー反応である。
【0176】
また、遅発型アレルギー反応とは、数時間から数日後、より具体的には2時間より後から2,3日後に引き起こされるアレルギー反応である。
【0177】
また、遅延型アレルギー反応とは、数日後からそれ以降に引き起こされるアレルギー反応である。
【0178】
また、三相性皮膚炎モデルにおいて、即時相、遅発相とは、時間的経過の点から見ると、それぞれ、即時型アレルギー反応、遅発型アレルギー反応の発症時間に相応し、後遅発相とは、4日後以降、好ましくは6日から8日後のアレルギー反応に相応する。
【0179】
非即時型アレルギー疾患として、具体的には、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アトピー性喘息の他、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、グッドパスチェア症候群、溶連菌による急性糸球体腎炎、関節リウマチや膠原病、血清病、ウイルス性肝炎、アレルギー性肺胞炎、ツベルクリン反応、結核病変、臓器移植後の拒絶反応、うるしかぶれ、化粧品かぶれ等の皮膚炎、遅発型喘息などが挙げられ、遅発型及び/又は遅延型アレルギー反応の伴ったアナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性胃腸症、掻痒が挙げられる。特に、治療及び予防が期待される疾患としては、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アトピー性喘息が挙げられる。
【0180】
「アレルギー性皮膚炎」とは、アレルギー反応に関係する皮膚炎を示し、例えばアトピー性皮膚炎を含む。創傷による皮膚炎の様な非アレルギー性皮膚炎と区別される。「アトピー性皮膚炎治療薬」としては、アトピー性皮膚炎のアレルギー反応に作用することにより治療効果を上げるものが好ましい。また、そのアレルギー反応の遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有することが好ましく、更に好ましくは、即時型反応に加え、遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有する治療剤である。
【0181】
「アレルギー性喘息」とは、喘息症状のなかでのアレルギー的側面を示し、例えば混合型喘息、アトピー性喘息を含む。アスピリン喘息等の非アレルギー性喘息とは区別される。「喘息治療薬」としては、喘息のアレルギー反応に作用することにより治療効果を上げるものが好ましい。また、慢性気管支炎又は気道過敏症に対し効果を有することが好ましく、更に好ましくは慢性気管支炎かつ気道過敏症に効果を有する治療剤である。また、そのアレルギー反応の遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有することが好ましく、更に好ましくは、即時型反応に加え、遅発型反応、遅延型反応、若しくは、遅発型反応かつ遅延型反応に効果を有する治療剤である。
【0182】
「2−AG 及び/又は2−AG−Eに関連する疾患」とは、2−AG 及び/又は2−AG−Eが疾患の原因であるものや、症状の増悪に関与するものであり、例えば、上記の非即時型アレルギー疾患が挙げられる。その他、血液癌、敗血症、循環器疾患等が挙げられる。
【0183】
「鎮痒作用」とは、痒みを低減させる或いは痒みを取り除くことにより、掻痒反応を減少させ、痒みからの精神的ストレスを低減させる効果をいう。中枢作用ではなく、例えば抗ヒスタミン作用、抗サブスタンスP作用の様に、痛みの原因を取り除くことが好ましい。また、上記のアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎に対し、鎮痒作用を有することが好ましい。
【0184】
本発明の「カンノビノイドレセプター調節物質」、「カンノビノイドレセプターインバースアゴニスト」、「カンノビノイドレセプターアンタゴニスト」は、ステロイド剤、免疫抑制剤の様な「副作用となる免疫抑制作用」を持たない安全な薬剤となり得る。「副作用となる免疫抑制作用」としては、腎臓・脾臓の機能障害による、高カリウム血症、白血球・血小板減少等が挙げられ、例えば、脾臓重量の減少がその指標となるが、本発明の「カンノビノイドレセプターインバースアゴニスト」には、これら副作用は見られなかった。
【0185】
著しい副作用が認められないことで「経口投与が可能」な薬剤であれば、軟膏剤、注射剤等に比べ取扱いが容易となる。
【0186】
ここで、アレルギー疾患の「治療」とは、アレルギー反応を抑制すること或いはアレルギー疾患の症状を改善することを意味し、起こり得るアレルギー反応或いはアレルギー疾患を予防すること、その増悪を予防することも含む。
【0187】
「製薬上許容されるその塩」とは、化合物と無毒の塩を形成するものであればいかなる塩でもよく、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;又はシュウ酸、マロン酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メチルスルホン酸、ベンジルスルホン酸等の有機酸;又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム等の無機塩基;又はメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、グアニジン、コリン、シンコニン等の有機塩基;又はリジン、アルギニン、アラニン等のアミノ酸と反応させることにより得ることができる。また、化合物の含水物或るいは水和物及び溶媒和物も包含される。
【0188】
また本発明は、非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む方法を提供する。
(a)カンナビノイドレセプター、内因性カンナビノイド、及び、被験化合物を接触させる工程、
(b)カンナビノイドレセプターと内因性カンナビノイドとの結合能を測定する工程、
(c)被験化合物の非存在下と比較し、工程(b)で測定した結合能を低下させる化合物を選択する工程。
【0189】
上記工程(b)の結合能の測定は、当業者においては、一般的な方法、例えば、Bindingアッセイを行なう、cAMP濃度を測定する等の方法によって適宜実施することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方法によって、前記結合能を測定することができる。
【0190】
また被検化合物としては、特に制限はなく、例えば、種々の天然・人工化合物やタンパク質あるいはファージ・ディスプレイ法などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分なども本発明の方法に供することができる。その他、生体組織抽出物、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物などが挙げられるが、これらに特に制限されない。
【0191】
上記方法におけるカンナビノイドレセプターは好ましくはCB2であり、内因性カンナビノイドは好ましくは2−AG又は2−AG−Eであるが、これらに特に制限されない。
【0192】
さらに本発明は、非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む方法を提供する。
(a) CB2に選択的に結合する候補化合物を選定する工程、
(b) 工程(a)で選定された化合物から、CB2インバースアゴニストである化合物を選定する工程、
(c) 工程(b)で選定された化合物の抗アレルギー作用を測定する工程。
【0193】
上記工程(c)において、化合物の抗アレルギー作用は、当業者においては、アレルギーの種類に応じて、適宜測定することが可能である。
【0194】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0195】
1)、2)、3)及び4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0196】
1)、2)、3)の全量及び30gの4)を水で連合し、真空乾燥後、製粒を行なう。この製粒粉末に14gの4)及び5)を混同し、打錠機で打錠する。1錠あたり化合物Aを30mg含有する錠剤1000錠を得る。
【0197】
本発明における化合物を医薬組成物として使用する場合には、化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば必要に応じて上記製剤例1(カプセル剤)および2(錠剤)以外に、マイクロカプセル剤、軟・硬カプセル剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、点眼剤、点耳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、TTS剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤として経口的あるいは非経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁・乳濁状溶液を注射剤の形で非経口的に使用できる。非経口投与のためのその他の形態としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤、ペッサリー、乳剤性発泡剤などが含まれる。また、例えば薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。
【0198】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0199】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。
【0200】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0201】
投与量は、疾患の種類及び程度、投与する化合物並びに投与経路、患者の年齢、性別、体重等により変わり得る。経口投与の場合、通常、成人1日当たり化合物A 0.1〜1000mg、好ましくは1〜300mgを、1〜数回にわけて投与する。
【0202】
なお、本発明化合物は動物用医薬としても適応することができる。
【0203】
薬理試験
1)アレルギー性皮膚炎モデル動物を用いた治療効果
アトピー性皮膚炎はI型及びIV型アレルギー反応が複雑に絡み合ったものと考えられており、I型及びIV型が単独若しくは複合的に発症するモデルが有用である。
【0204】
1.マウスDNFB誘発アレルギー性皮膚炎に対する効果
本モデルは、マウスを抗原によって感作後、誘発を繰り返すことにより、IgE抗体価の上昇を伴う接触性皮膚炎、すなわちアトピー性皮膚炎類似の炎症を誘導させたモデルである(J. Allergy Clin. Immunol., 100(6Pt2), 39−44, Dec. 1997)。本モデルは、T細胞による遅延型アレルギー反応及び肥満細胞による遅発型アレルギー反応により炎症を起こすと考えられる。また、本試験において同時に、試験化合物の全身性免疫抑制作用を検討するため脾臓重量を測定した。
【0205】
試験方法
・試験化合物の調製
溶媒の調製:メチルセルロース(以下MC)を蒸留水で溶解し、0.5%(w/v)MC水溶液とした。
試験化合物の調製:特開2000−256323号の実施例3−5に従い化合物を合成した。所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、1mg/mL懸濁液とした。さらに希釈により、0.1mg/mL、0.01 mg/mL懸濁液に調製した。また、陽性対照薬としてプレドニゾロン(Sigma)を同様に0.5mg/mL、0.2mg/mL、0.1mg/mLに調製した。プレドニゾロンはアトピー性皮膚炎の治療に有効とされる副腎皮質ステロイド剤のひとつである。
【0206】
・抗原の調製及び塗布
抗原の調製:DNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)をアセトンとオリーブオイルの混液(3:1、v/v)にて、0.15%(w/v)になるように用時調製した。
抗原塗布:9週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)の両耳介の表裏に、上記抗原を25μLずつ、1週間に1回の割合で計5回塗布した。
【0207】
・試験化合物の投与
3回目に抗原塗布した翌日より5回目に抗原塗布した翌日までの間、1日に1回の割合で合計15回上記試験化合物を10mL/kg投与した。なお、抗原塗布日には抗原塗布の1時間前に、抗原塗布翌日には抗原塗布の23時間後に投与した。
【0208】
・耳介腫脹の測定
抗原塗布前及び24時間後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、その差を腫脹の指標とした。4回目抗原塗布及び5回目抗原塗布の際の測定結果を陽性対照の結果と合わせ図1及び図2に示す。
【0209】
・脾臓重量の測定
5回目抗原塗布24時間後に、エーテル麻酔し放血させたマウスより脾臓を摘出し、湿重量を測定した。測定結果を図3に示す。
【0210】
・結果
永井らは本モデルにおいて、5回目の抗原塗布後には、遅発型反応(I型アレルギー反応)及び遅延型反応(IV型アレルギー反応)が複合した耳介の腫脹が発現することを報告している。
化合物Aは、本アレルギー性皮膚炎モデルにおいて、耳介の腫脹を有意に抑制した。また、3回目の抗原塗布後の投与開始において、その効果を示した。その際プレドニゾロンに認められる脾臓重量の低下は示さなかった。
【0211】
2.マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応に対する効果
本モデルは、マウスをIgEで受動感作した後、抗原による誘発を繰り返すことにより、三相性(即時相・遅発相・後遅発相)の皮膚炎を惹起させたモデルである(Pharmacology, 60(2), 97−104, Feb. 2000)。それら反応は、肥満細胞及びT細胞の関与、炎症局所での好酸球の浸潤が確認されていることから、アトピー性皮膚炎症状の一部を反映した反応と考えられる。
【0212】
試験方法
・試験化合物の調製
溶媒の調製:MCを蒸留水で溶解し、0.5%MC水溶液とした。
試験化合物の調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、1mg/mL懸濁液とした。
また、陽性対照薬として上記と同様にフマル酸ケトチフェン(Sigma)1mg/mL及びプランルカスト水和物(商標名オノン錠(小野薬品工業)より抽出。)3mg/mLを調製した。プランルカスト水和物はロイコトリエン阻害剤として、喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤として用いられており、フマル酸ケトチフェンはケミカルメディエーター遊離抑制剤として、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、皮膚掻痒症、アレルギー性結膜炎に用いられている。
【0213】
・受動感作
anti−DNP IgE(DNPに対する抗体、ヤマサ醤油)を生理食塩液で15μg/mLに調製し、9週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)に0.2mL尾静脈内より投与した。
【0214】
・抗原の調製及び塗布
抗原の調製:DNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)をアセトンとオリーブオイルの混液(3:1、v/v)にて、0.15%(w/v)になるように用時調製した。
抗原塗布:上記anti−DNP IgEの投与より24時間後に、両耳介の表裏に、上記抗原を25μLずつ塗布した。
【0215】
・試験化合物の投与
抗原塗布日より抗原塗布後8日目まで計9回、1日に1回の割合で10ml/kgを経口投与した。また他のマウスには抗原塗布1日後より抗原塗布後8日目まで計8、1日に1回の割合で10ml/kgを経口投与した。他のマウスにも同様に、抗原塗布2、4、6日後より抗原塗布後8日目までそれぞれ計7、5、3回、1日に1回の割合で10ml/kgを経口投与した。抗原塗布日より試験化合物の投与開始までの期間は、試験化合物に代えて溶媒のみ10ml/kgを1日に1回の割合で経口投与した。なお、抗原塗布日には抗原塗布の1時間前に、抗原塗布後8日目には耳介の厚さを測定する1時間前に投与した。
【0216】
・耳介腫脹の測定
抗原塗布前、1時間後、24時間後及び8日後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、抗原塗布前の値と各時間の値との差を腫脹の指標とした。それぞれの測定結果を図4乃至図6に示す。また、抗原塗布8日後の腫脹抑制効果に対する塗布開始時期の影響を図7に示す。
【0217】
・結果
化合物Aは、本IgE依存性皮膚炎モデルにおける即時相(塗布1時間後)、遅発相(塗布24時間後)、後遅発相(塗布8日後)に対して、いずれも有意に耳介の腫脹を抑制した。また、後遅発相における化合物Aの効果は、遅発相が惹起した後より投薬を開始した場合においても認められた。
【0218】
2)喘息モデルを用いた治療効果
モルモットにおける抗原誘発即時型喘息、遅発型喘息、気道過敏性に対する効果
試験方法
・試験化合物の調製
所定量の化合物Aを、0.5%MC水溶液に懸濁し、60mg/mLとした。試験化合物はさらに希釈し、20、6、2mg/mLに用時調製した。同様に、陽性対照として、プランルカスト水和物(商標名オノン錠(小野薬品工業)より抽出。)及びプレドニゾロン(Sigma)を6mg/mL調製した。
【0219】
・能動感作及び抗原誘発
感作:超音波ネブライザー(NE−U12、オムロン社)を用い、6週齢雄性Hartley系モルモット(九動(株))に1%OVA(ovalbumin、Sigma)含有生理食塩液を1日に10分間、連続8日間吸入させた。
抗原誘発:最終感作の1週間後、同様に2%OVAを5分間吸入させた。OVA誘発24時間前及び1時間前にmetyrapone含有生理食塩液(Aldrich、10mg/kg)を静脈内に、OVA誘発30分前にpyrilamine含有生理食塩液(Sigma、10mg/kg)を腹腔内に投与した。
【0220】
・試験化合物の投与
感作開始から抗原誘発まで15日間、1日1回5mL/kg経口投与した。感作の8日間は、感作1時間前に、抗原誘発の日は誘発1時間前に投与した。溶媒対照として、OVA誘発及び生理食塩液誘発への投与も同様に行なった。
陽性対照としてプランルカスト水和物は誘発1時間前に、プレドニゾロンは誘発16時間前及び2時間前に投与した。なお、動物は経口投与16〜18時間前から絶食状態とした。
【0221】
・気道抵抗性の測定
総合呼吸機能解析システム(Pulmos−I,M.I.P.S.社)を用い,pre値を測定した後、OVA誘発1分後、2、4、5、6、7および8時間後、更に22〜26時間後に1回、それぞれ100呼吸分の気道抵抗(specific airway resistance、以下sRaw)を測定し、その平均値を各測定時間のsRawとした。sRawの増加率の計算式は以下に示す。
sRawの増加率(%)=((各測定時間のsRaw − 誘発前のsRaw)/(誘発前のsRaw))× 100
OVA誘発1分後のsRawの増加率を図8に、誘発4乃至8時間後におけるsRawの増加率(曲線下面積:AUC4−8hr)を図9に示す。
【0222】
・気道反応性の測定
抗原誘発22〜26時間後、生理食塩液及びアセチルコリン(以下ACh)の0.0625、0.125、0.25、0.5、1及び2mg/mL溶液を順次各1分間ずつ吸入させ、sRawがbaseline sRaw (生理食塩液吸入後のsRaw)の2倍以上になるまで続けた。ACh濃度とsRawの濃度−抵抗曲線から、sRawが baseline sRawから100%上昇するのに必要なAChの濃度PC100AChを求めた。測定結果を図10に示す。
【0223】
・結果
本モデルにおいて、化合物Aは、抗原誘発即時型喘息反応(抗原誘発直後のsRaw)、遅発型喘息反応(抗原誘発4から8時間後のsRaw)、気道過敏性の何れをも抑制した。陽性対照のプランルカスト水和物及びプレドニゾロンもまた、抗原誘発即時型喘息、遅発型喘息、気道過敏性の何れをも抑制した。
【0224】
3)ロイコトリエン産生に対する作用
ロイコトリエン(以下LTs)は好塩基球および肥満細胞等より産生し、アレルギー疾患、特にアレルギー性気管支喘息において増悪に関与していることが知られている。
【0225】
1.ヒト好塩基球からのロイコトリエン産生に対する作用
・試験化合物の調製
所定量の化合物AをDMSO(Dimethyl Sulfoxide)で0.01mMとした後、タイロード液(Sigma)にて希釈し、100μMから0.1μMまで調製した(1%DMSO溶液)。細胞に作用するときは更に希釈され、10μMから0.01μM(0.1%DMSO溶液)となった。
【0226】
・好塩基球の高純度化
ヒト血液より3.8%クエン酸ナトリウム液を入れたシリンジを用いて100mLの血液を得た。
10×HBSS(−)(10倍 Hank’s Balanced Salt Solution、GIBCO)、percoll(Amersham)、ミリQ水にて調製した1.070g/mL、1.079g/mL、1.088g/mL Precoll−HBSS(−)を重層し、上記血液を重層した。300×gで25分間遠心し、1.070g/mL Percoll−HBSS(−)層と1.079g/mL Percoll−HBSS(−)層の間に存在した細胞画分を回収した。回収した細胞懸濁液に対して3倍量のHBSS(−)を添加し、300×gで4℃にて7分間遠心した。遠心後、上清を除去し、細胞をHBSS(−)で1回洗浄した。以上より得られた細胞群を好塩基球と見なした。
【0227】
・プレインキュベーション
上記好塩基球をタイロード液で2.5×106cells/mLに調製し、10μg/mL recombinant human IL−3(Genzyme/Techne)にて最終濃度100ng/mLとなるように添加した。直ちに丸底96穴プレートに80μL/well(2.0×105cells/well)播種し、37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。
【0228】
・試験化合物及の添加
プレインキュベーションの後、上記試験化合物10μL/wellを添加し、37℃、5%CO2で10分間インキュベートした。溶媒対照群には1%DMSOを含むタイロード液を10μL/well加えた。
【0229】
・抗ヒトIgE抗体の添加
タイロード液で1、3、10、30、100μg/mLに希釈した抗ヒトIgE抗体を10μL/well添加し、37℃、5% CO2で30分間インキュベートした(最終濃度はそれぞれ0.1、0.3、1、3、10μg/mL)。
【0230】
・LTsの定量
刺激から30分後、3000rpm、5min、4℃で遠心し、上清を80μL/well回収した。上清のLTs 量をLTs EIA Kit (Amersham pharmacia)のメーカープロトコールに従って測定した。サンプルはタイロード液で3倍および24倍希釈し測定した。測定結果を図11に示す。
【0231】
・結果
本試験において、化合物Aは、ヒト好塩基球からのロイコトリエン(C4/D4/E4)産生に対して抑制作用を示した。
【0232】
2.ラット肥満細胞株からのロイコトリエン産生に対する作用
・試験化合物の調製
所定量の化合物AをDMSOにて希釈し、3、1、0.3、0.1mMに調節した(100%DMSO溶液)。さらに、E−MEM(EAGLE−MEM、日研生物研究所)培地にて希釈し、それぞれ100から1μMに調節した(1%DMSO溶液)。細胞に作用するときは更に希釈され、10μMから0.1μM(0.1%DMSO溶液)となった。
【0233】
・PIPES Bufferの調製
1mM PIPES(同仁化学研究所)、14mM NaCl、0.5mM KCl、0.06mM MgCl2、0.1mM CaCl2、0.55mM Glucose、0.1%BSA(Bovine Serum Albumin、Sigma)を精製水で調製し、NaOHでpH 7.4とした。
【0234】
・anti−DNP IgEの調製
1mg/mL anti−DNP IgE(モノクローナルマウス抗DNP−IgE、Yamasa)を上記PIPES Bufferで1000倍希釈することにより1μg/mL溶液に調製した。
【0235】
・DNP−BSAの調製
10mg/mL DNP−BSAを上記PIPES Bufferで10μg/mLの濃度に希釈した。
【0236】
・ラット肥満細胞株の培養方法
培地:非働化済10%FCS(Fetal Calf Serum、Morgate Biotech)、100units/mL Penicillin, 100μg/mL Streptomycin(Penicillin/Streptomycinとして、GIBCO)を含むE−MEM培地。
【0237】
・細胞の調製
ラット肥満細胞株RBL−2H3(ヒューマンサイエンス 1x106cells/mL/tube)を上記培地で遠心洗浄後、同培地で再懸濁し、75cm2フラスコ(Falcon 353136)で3日間培養した。継代後、さらに225cm2フラスコ(CORNING 431082)で2日間培養した。セミコンフルエント(confluency 60−70%)な状態を確認し、HBSSでリンス後、Trypsin−EDTAではがした。細胞を回収後、上記培地で遠心洗浄し、同培地で再懸濁した。2×105cells/mLに調製し、250μL/wellで96well flat bottom culture plate(Falcon 3072)に播種し、5%CO2、37℃で20時間培養した。
【0238】
・抗原感作
plateの培地を除きHBSSで洗浄後、上記培地に溶解した 150ng/mLのanti−DNP IgEを100μL/well添加し、37℃で30分間インキュベートし、細胞を感作した。
【0239】
・試験化合物の添加
plateの培地を除きHBSSで洗浄後、上記培地を80μL/well添加し、さらに、上記培地で1、3、10、30、100μMに希釈した化合物Aを10μL/well添加し、37℃で10分間インキュベートした(最終濃度はそれぞれ 0.1、0.3、1、3、10μM、最終DMSO濃度0.1%)。
【0240】
・抗原刺激
上記培地で150、500、1500、5000ng/mLに希釈したDNP−BSAを10μL/well添加し(最終濃度はそれぞれ 15、50、150、500ng/mL)、37℃で30分間インキュベートした。
【0241】
・LTsの定量
抗原刺激から30分後、上清を20μL/well回収し、LTs 量をLTs EIA Kit (Amersham Pharmacia)のメーカープロトコールに従って測定した。測定結果を図12に示す。
【0242】
・結果
本試験において、化合物Aは、ラット肥満細胞株からのロイコトリエン(C4/D4/E4)産生に対して抑制作用を示した。
【0243】
4)カンナビノイドレセプターに対するBinding Assay
化合物Aは、末梢細胞型カンナビノイドレセプター選択的な調節物質(CB1に対するIC50が3436nM、CB2に対するIC50が0.087nM)であることが公知である(特開2000−256323号記載の薬理試験結果、表33、実施例番号3−5)。
【0244】
3.マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応に対するCB2インバースアゴニストおよびCB2アゴニストの作用
マウスをIgEで受動感作した後抗原により誘発される三相性皮膚炎モデルを用いて、CB2インバースアゴニストおよびCB2アゴニストの作用を検討した。
【0245】
試験方法
・動物:8〜10週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)を用いた。
【0246】
・試験化合物の調製
溶媒の調製:MCを蒸留水で溶解し、0.5%MC水溶液とした。
試験化合物の調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、0.01, 0.1および1 mg/mL懸濁液を調整した。
また、陽性対照薬としてプレドニゾロン(Sigma)の0.5mg/mLを、比較対照薬としてCB2特異的なアゴニストであるHU−308の1, 5 mg/mLおよびCB2特異的なインバースアゴニストであるSR144528の0.01, 0.1および1 mg/mLを上記と同様MC懸濁液として調製した。
【0247】
・受動感作
Anti−DNP IgE(DNPに対する抗体、ヤマサ醤油)を生理食塩液で15μg/mLに調製し、マウスにその0.2mLを尾静脈内より投与した。
【0248】
・抗原の調製及び塗布
抗原の調製:DNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)をアセトンとオリーブオイルの混液(3:1、v/v)にて、0.15%(w/v)になるように用時調製した。
抗原塗布:上記anti−DNP IgEの投与より24時間後に、両耳介の表裏に、上記抗原を25μLずつ塗布した。
【0249】
・試験化合物の投与
抗原塗布日より抗原塗布後8日目まで計9回、1日に1回10 mL/kgで経口投与した。なお、抗原塗布日には抗原塗布の1時間前に、抗原塗布後8日目には耳介の厚さを測定する1時間前に投与した。
【0250】
・耳介腫脹の測定
抗原塗布前及び8日後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、抗原塗布前の値と各時間の値との差を腫脹の指標とした。測定結果を図13に示す。
【0251】
・臓器重量の測定
耳介腫脹を測定した後脾臓と胸腺を取り出し、それらの湿重量を測定した。それぞれの測定結果を図14および図15に示す。
【0252】
・結果
化合物Aは、後遅発相(塗布8日後)において、0.1, 1, 10 mg/kgのいずれの用量とも有意に耳介の腫脹を抑制した。また、CB2インバースアゴニストであるSR144528も0.1 mg/kgから有意な効果を示した。それに対して、CB2アゴニストであるHU−308は10および50 mg/kgのいずれにおいて薬効は認められなかった。脾臓および胸腺の重量を測定した結果は、プレドニゾロンが両臓器重量を有意に抑制したのに対し、化合物AおよびSR144528では明らかな変化は認められなかった。HU−308を投与した動物では脾臓重量の有意な減少が認められた。
【0253】
4.CB2アゴニストによって誘発される耳介腫脹と化合物Aの作用
CB2インバースアゴニストがIgE依存性アレルギー性皮膚炎モデルにおいて有効性を示したことから、内因性リガンド候補の2−アラキドノイルグリセロールの安定体である2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)および特異的CB2アゴニストであるHU−308が直接耳介腫脹を誘発するかどうかを検討し、アラキドン酸(AA)によって誘発される耳介腫脹と比較した。また、CB2アゴニストの耳介への影響に対する化合物Aの作用についても検討した。
【0254】
試験方法
・動物:8〜10週齢雌性BALB/c系マウス(日本SLC株式会社)を用いた。
【0255】
・試験物質の調製及び塗布
合成した2−AG−EおよびHU−308は、それぞれ1, 10 %(w/v)および10 %(w/v)に、AA(Sigma)は1.25 %(w/v)になるようにアセトンにて用時調製し、左耳介の表裏に各々10μLずつ塗布した。
【0256】
・溶媒および化合物Aの調製
溶媒の調製:MCを蒸留水で溶解し、0.5%MC水溶液とした。
化合物Aの調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、0.001, 0.01, 0.1および1 mg/mL懸濁液を調整した。
【0257】
・化合物Aの投与
溶媒または化合物Aを10 mL/kgで経口投与し、その1時間後に10 %(w/v)の2−AG−Eを左耳介の表裏に各々10μLずつ塗布した。
【0258】
・耳介腫脹の測定
試験物質の塗布前、塗布後1、2、3、6、9、24時間後及び2、3、8日後に、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて耳介の厚みを測定し、塗布前の値と各時間の値との差を腫脹の指標とした。化合物Aの評価には、2−AG−E塗布後8日目までの耳介腫脹の経時変化から得られる曲線下面積を算出した値を用いた。それぞれの測定結果を図16および図17に示す。
【0259】
・結果
2−AG−Eを塗布することにより、2−AG−E濃度に依存した1時間から2時間をピークとする耳介の腫脹が認められ(即時相)、その後24時間後の遅発相・後遅発相に相応する持続的な腫脹が認められた。HU−308も同様の持続的な耳介の腫脹を誘発した。一方、AAは塗布1時間後をピークに10% 2−AG−Eと同程度の腫脹を示したが、2日後にはもとのレベルまで回復した。
10% 2−AG−E塗布による耳介の腫脹に対し、化合物Aは投与量に依存して腫脹を抑制し、1および10 mg/kgで有意な効果を示した。
この結果よりCBアゴニストであるHU−308、及び、内因性のCBアゴニストである2−AG−E(2−AGのエーテル体であって、2−AGと同様の作用と考えられる)は、動物モデルにおいて皮膚炎を引き起こした。かつ、CB結合能を示さないAAと比較して、その皮膚炎症状は持続的であり、遅発相及び後遅発相に相応すると考えられる強い皮膚炎を発症させた。
さらに、CB2インバースアゴニストである化合物Aが、用量依存的にアレルギーに起因する炎症の抑制作用を示した。
これら結果は、CB2インバースアゴニストがCBアゴニストに起因する疾患の治療に用いられることを示す。
副作用の懸念される、ステロイド化合物及び免疫抑制剤と同等、若しくはそれ以上の効果を示したことは、CB2インバースアゴニストが安全な薬剤となり得ることを支持する結果である。
【0260】
5.NC系マウスの自発的掻痒反応に対する効果
痒みは、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、接触性皮膚炎などの皮膚科領域における疾患の主要な症状の一つである。しかしながら、その発生機序については未だ不明な点が多く、痒みを劇的に抑制しかつ副作用の少ない薬物は開発されていない。
現在、アトピー性皮膚炎の動物モデルとしてNC系マウスが用いられている。空気中の微生物の制御を行っている環境下(SPF環境下)で飼育しても、皮膚炎や掻き動作は観察されない。しかし、通常の環境下(conventional環境下)で飼育すると8週目頃から皮膚炎の発症と共に掻き動作が観察されるようになり、その症状は慢性化することが知られる(J. Dermatol. Sci., 25, 20−28, 2001)。
【0261】
試験方法
・試験化合物の調製
溶媒の調製:MCを水道水で溶解し、0.5%(w/v)MC水溶液とした。
試験化合物の調製:所定量の化合物Aを上記溶媒により懸濁し、1mg/mL、0.1mg/mL懸濁液に調製した。また、陽性対照薬として吉草酸ベタメサゾン(Sigma)及びタクロリムス水和物(プログラフ(藤沢薬品)より抽出。)を同様に1mg/mLに調製した。吉草酸ベタメタゾンはアトピー性皮膚炎の治療に有効とされる副腎皮質ステロイド剤のひとつであり、タクロリムス水和物は上記の様に免疫抑制剤として知られるアトピー性皮膚炎治療剤である。
【0262】
・動物飼育及び選択方法
4週齢雄性NC/Jic系マウス(日本クレア)をrodent mite(Myobia musculi)に感染した重度の皮膚病変を発症したマウス(A)と同じ飼育ケージで12日間飼育し、その後、飼育ケージからマウス(A)を除き16週齢で使用した。
飼育条件:温度 22±2℃、湿度 55±10%、照明時間 8:00−20:00、飼料 固型飼料CA−1(日本クレア)を自由摂餌、飲料水 水道水を自由摂水。
実験開始10日前から2日間もしくは3日間に渡り、マウスの後肢による掻き動作の回数(20分間、1日1回)を目視により数え、測定した複数マウスの中から、掻き動作数回数が1日当たりの平均で50回以上のマウスを選択し使用した。
【0263】
・試験化合物の投与
上記マウスに3週間に渡り1日1回、10mL/kgにて経口投与した。
【0264】
・試験方法
無人環境下で上記マウスの行動をビデオカメラに撮影し、1時間中の後肢による掻き動作を数えた。マウスは通常約1秒間に数回の掻き動作を示すが、この一連の動作を一回の掻き動作として、掻き部位の区別なく全て数えた。測定は投与開始日、1、3、6、10、13、17、20日後に行なった。陽性対照とあわせ結果を図18に記載する。
【0265】
・結果
本掻痒反応モデルにおいて、溶媒のみを投与した対照と比較し、化合物Aは掻き動作の回数を抑制した。また、陽性対照のタクロリムス水和物及び吉草酸ベタメタゾンも掻き動作の回数を抑制した。
【0266】
6.cAMP産生における化合物の作用
The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, vol.296, No.2,pp420から425,2001年(非特許文献3)と同様にして、フォルスコリンで刺激したhCB2発現CHO細胞でのcAMP産生における化合物の影響を検討した。測定結果を表1に示す。
【0267】
・結果
【0268】
【表1】
【0269】
上記化合物Aから化合物Iは、CB2インバースアゴニストであることが判明し、WIN55212−2及び2−AG−Eはアゴニストであることが確認された。
また、本試験において、2−AG−Eと化合物Aの共存下、化合物Aは2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制することが判明した。このことは、CB2インバースアゴニストが、CB2を介して2−AG或いは2−AG−E等のCB2アゴニストと拮抗することを示す。
【0270】
7.CB2欠損マウスにおけるIgE依存性耳介腫脹
CB2欠損マウスにおいて、野生型マウスと同様なアレルギー症状が誘発されるかどうかを試験した。
【0271】
方法
・動物
動物は、雌性CB2欠損(CB2−KO)マウスおよび雌性野生型(WT)マウス(C57BL/6J系)を使用した。(Laboratory of Molecular Neurobiology, Department of Psychiatry, University of Bonn Medical School、 Professor. A. Zimmerより入手;Europ.J.Pharmacol., 396, 141−149, 2000)。
【0272】
・抗原の塗布
実験初日にanti−DNP IgE(5μg/mL生理食塩液、ヤマサ醤油)を、1匹あたり0.2mLずつ尾静脈内より投与して動物を感作し、24時間後にアセトンとオリーブオイルの混液(3:1, volume/volume)にて0.15% (weight/volume)になるように用時調製した抗原(DNFB (2,4−dinitrofluorobenzene; ナカライテスク))を、右耳介の表裏に25μLずつ塗布した。
【0273】
・耳介腫脹の測定
耳介の腫脹は、抗原塗布前および塗布後より経時的にダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて測定した。成績は、抗原塗布前の値と抗原塗布後の値との差を耳介の腫脹として、平均値±標準誤差 (S.E.)で表示した。統計処理はStudent t−testを用いて行い、危険率が5%未満をもって有意であるとした。測定結果を図19に示す。
【0274】
・結果
野生型マウスが三相性(即時相、遅発相、後遅発相)の皮膚炎を示すのに比べ、CB2欠損マウスでは顕著な皮膚炎を示さなかった。特に、後遅発相においては、CB2欠損マウスでは皮膚炎は見られず、野生型マウスとCB2欠損マウスでは明らかな差が見られた。
この結果は、CB2が、三相性のアレルギー症状、得に遅発相及び後遅発相におけるアレルギー症状に深く係わることを示す。すなわち、CB2アンタゴニスト或いはインバースアゴニストを有効成分とする薬剤が、非即時性アレルギー疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療剤となることを裏付ける試験結果である。
【0275】
8.CB2欠損マウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹
内因性のCBアゴニストであると考えられる2−AG−E(2−AGの還元体であって2−AGと同様の作用を示すと考えられる。)を用いて、CB2欠損マウスでアレルギー反応が誘発されるかどうかを試験した。
【0276】
方法
・動物
動物は、上記試験「7.CB2 欠損マウスにおけるIgE依存性耳介腫脹」と同様の雌性CB2−KOマウスおよび雌性WTマウスを使用した。
【0277】
・抗原の塗布
実験初日に2−AG−E(100 mg/mL acetone)を、マウス左耳介の表裏に10μLずつ塗布した。
【0278】
・耳介腫脹の測定
耳介の腫脹は、2−AG−Eの塗布前および塗布後より経時的にダイヤルシックネスゲージを用いて測定した。成績は、抗原塗布前の値と抗原塗布後の値との差を耳介の腫脹として、また、耳介腫脹の経時変化からAUC(area under the curve, 耳介腫脹×時間)を算出し、平均値±標準誤差 (S.E.)で表示した。統計処理はStudent t−testを用いて行い、危険率が5%未満をもって有意であるとした。測定結果を図20、21に示す。
【0279】
・結果
野生型マウスは即時相、遅発相に加え後遅発相での皮膚炎を示した。一方、CB2欠損マウスでは、即時相においては皮膚炎を示したものの、遅発相においては野生型に比べその炎症の程度は弱く、後遅発相においては顕著な炎症は示さなかった。
この結果は、複数知られる内因性アゴニストの中で、少なくとも2−AG及び2−AG−Eが、CB2を介してアレルギー症状に深く係わることを示し、特に、遅発相及び後遅発相でその影響が大きいことを示す。したがって、2−AG及び2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制するアンタゴニスト又はインバースアゴニストは、非即時型アレルギー疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療剤となることを裏付ける試験結果である。
【0280】
9.肥満細胞欠損マウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹
アレルギー反応への寄与が大きいと考えられる肥満細胞の欠損マウス(一部欠損)におけるアレルギー症状の程度を比較した。
【0281】
方法
・動物
動物は、雌性WBB6F1−+/+(正常マウス)および雌性WBB6F1−W/Wv(肥満細胞欠損マウス)系マウスを日本SLC株式会社より入手し使用した。
【0282】
・抗原の塗布
実験初日に2−AG−E(100 mg/mL acetone)を、マウス左耳介の表裏に10μLずつ塗布した。
【0283】
・耳介腫脹の測定
耳介の腫脹は、2−AG−Eの塗布前および塗布後より経時的にダイヤルシックネスゲージを用いて測定した。成績は、抗原塗布前の値と抗原塗布後の値との差を耳介の腫脹として、また、耳介腫脹の経時変化からAUCを算出し、平均値±標準誤差 (S.E.)で表示した。統計処理はStudent t−testを用いて行い、危険率が5%未満をもって有意であるとした。測定結果を図22、23に示す。
【0284】
・結果
野生型マウス及び肥満細胞欠損マウスの両者に皮膚炎がみられたものの、その程度差は歴然であり、野生型マウスの皮膚炎がより重症であった。さらに、即時相と比べ、特に、遅発相および後遅発相において炎症の程度に差が見られた。
この結果は、アレルギー症状、特に、遅発相および後遅発相において、2−AG及び2−AG−Eと肥満細胞との関連を示すものであり、アレルギー反応における肥満細胞の寄与には、内因性アゴニストである2−AG又は2−AG−Eが深く係わることが判明した。したがって、この結果もまた、2−AG及び2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制するアンタゴニスト又はインバースアゴニストが、非即時型アレルギー疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療剤となることを裏付ける。
【0285】
以上の結果より、末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)選択的インバースアゴニストは、アレルギー疾患の治療剤として有効であることが認められた。
【0286】
特に、非即時型アレルギー疾患、例えば、即時型・遅発型・遅延型アレルギー反応が複合しておこる喘息及びアトピー性皮膚炎の治療に有効であった。また、遅発相及び後遅発相においてアレルギー性皮膚炎を抑制する効果は、慢性化した皮膚炎に有効であることが期待される。また、CB2選択的インバースアゴニストは、現在、ステロイド剤及び免疫抑制剤タクロリムス水和物でしか著しい効果の認められない難治性のアレルギー性皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎にも有効であると考えられる。
【0287】
また、アレルギー性喘息においては抗原誘発即時型喘息、遅発型喘息、気道過敏性の何れの症状をも軽減する抗喘息剤として有効であることが認められ、難治性の喘息にも有効であると考えられる。
【0288】
また、CB2選択的インバースアゴニストは、マウス掻痒反応試験において、アレルギー反応に起因すると考えられる掻き動作を減少させることが認められた。よって、アレルギー疾患に伴う掻痒治療剤としても有効であると考えられる。
【0289】
更に、全身性免疫抑制を示さない安全な薬剤となり得、経口剤としての利用可能性も示された。
【0290】
化合物A及びSR144528は、CB2選択的インバースアゴニストであることが知られる。CB2選択的アゴニストHU−308、及び、非選択的CBアゴニスト2−AG−Eでは、抗アレルギー作用が見られないばかりか、逆に、2−AG−Eによりアレルギー反応が誘発されることが判明した。かつ、2−AG−Eにより誘発されるそのアレルギー反応を、化合物Aが抑制することも判明した。これら結果は、CB2選択的インバースアゴニストが抗アレルギー剤として有用であることを直接的に実証する試験結果である。
【0291】
また、CB2欠損マウスを用いたアレルギー反応試験で、遅発相、後遅発相において皮膚炎が見られなかったことは、CB2とアレルギーの関与を裏付け、CB2アンタゴニスト或いはインバースアゴニストを有効成分とする薬剤が、非即時性アレルギー疾患治療剤となることを裏付ける試験結果である。
【0292】
同じくCB2欠損マウスを用いたアレルギー反応試験で、2−AG−Eが、CB2を介してアレルギー症状に深く係わることが示されたことは、2−AG及び2−AG−Eのアゴニスト作用を抑制するアンタゴニスト或いはインバースアゴニストが、非即時型アレルギー疾患治療剤となることを裏付ける試験結果である。
肥満細胞欠損マウスを用いたアレルギー反応試験の結果もまた、肥満細胞、2−AG及び2−AG−E、CB2との強い関係を支持するものであり、CB2アンタゴニスト又はインバースアゴニストが、非即時型アレルギー疾患治療剤となることを支持する。
【0293】
よって、化合物A及びSR144528等の非即時型アレルギー疾患治療効果は、CB2の作用によるものと考えられ、特に、既存のアレルギー疾患治療剤とは異なる作用機序を有する薬剤として、例えば、既存の薬剤に耐性を示す症状にも有効であると考えられる。また、化合物Aのロイコトリエン阻害作用が、それらの治療効果を増強している可能性も認められた。
【0294】
化学構造的な特徴を異にする化合物AからH、化合物I、及び、SR144528は、その薬理作用においてはCB2選択的インバースアゴニストという共通点を持ち、これらの事実はCB2選択的インバースアゴニストがアレルギー疾患治療剤として有効であることを支持するものである。
【0295】
また、CB2と2−AG及び2−AG−Eの相互作用から、CB2アンタゴニスト又はCB2インバースアゴニストは、非即時型アレルギー疾患以外の2−AG又は2−AG−Eに関連する疾患に対し治療及び予防効果を期待できる。
【0296】
【発明の効果】
カンナビノイドレセプターインバースアゴニストは、喘息及びアトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患治療剤として有効である。特に、末梢細胞型カンナビノイドレセプター(CB2)に選択的に作用するインバースアゴニストは、既存のアレルギー疾患治療剤では効果の低い、慢性・難治性のアレルギー疾患、非即時型アレルギー疾患に有効であり、かつ安全な薬剤となり得る。
【0297】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、マウスDNFB誘発アレルギー性皮膚炎における4回目抗原塗布後の試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として1、2、5mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図2】図2は、マウスDNFB誘発アレルギー性皮膚炎における5回目抗原塗布後の試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として1、2、5mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図3】図3は、DNFB誘発アレルギー性皮膚炎モデルにおける試験化合物の脾臓湿重量への影響を示す図である。縦軸は、脾臓湿重量(mg)を表す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として1、2、5mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図4】図4は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における即時相(抗原塗布1時間後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、フマル酸ケトチフェン(陽性対照として10mg/kgを経口投与。)、プランルカスト水和物(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図5】図5は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における遅発相(抗原塗布24時間後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、フマル酸ケトチフェン(陽性対照として10mg/kgを経口投与。)、プランルカスト水和物(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図6】図6は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、フマル酸ケトチフェン(陽性対照として10mg/kgを経口投与。)、プランルカスト水和物(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図7】図7は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における試験化合物の投与期間の影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の厚みの増加(×10−2mm)」を表す。0−8は、抗原塗布日から8日後までの投与期間を示す。左からそれぞれ溶媒(溶媒のみ10mL/kgを9日間経口投与。)、化合物A(10mg/kgを9、8、7、5、3日間経口投与。)の結果を示す。
【図8】図8は、モルモット抗原誘発喘息における即時型喘息(抗原誘発1分後)での試験化合物の呼吸抵抗への影響を示す図である。縦軸は気道抵抗(sRaw)の増加率(%)を示す。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、化合物A(10、30、100mg/kgを経口投与。)、プランルカスト(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図9】図9は、モルモット抗原誘発喘息における遅発型喘息(抗原誘発4〜8時間後)での試験化合物の呼吸抵抗への影響を示す図である。縦軸はAUC4−8hr(%・hr)を示す。AUC4−8hrとは、抗原誘発4乃至8時間後の気道抵抗(sRaw)の増加率(曲線下面積比)である。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、化合物A(10、30、100mg/kgを経口投与。)、プランルカスト(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図10】図10は、モルモット気道反応における試験化合物の影響を示す図である。縦軸はPC100ACh(mg/ml)を示す。PC100AChとは、アセチルコリン吸入後の気道抵抗(sRaw)が生理食塩液吸入後のsRawから100%上昇するのに必要なアセチルコリン濃度である。左からそれぞれ偽処置、溶媒(溶媒のみ10mL/kgを経口投与。)、化合物A(10、30、100mg/kgを経口投与。)、プランルカスト(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として30mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図11】図11は、ヒト好塩基球からのロイコトリエン産生に対する試験化合物の影響を示す図である。
縦軸にロイコトリエン(C4/D4/E4)量(pg/mL)、横軸には抗IgE抗体量(μg/mL)を示す。
【図12】図12は、ラット肥満細胞からのロイコトリエン産生に対する試験化合物の影響を示す図である。
縦軸にロイコトリエン(C4/D4/E4)量(pg/mL)、横軸にはDNP−BSA量(ng/mL)を示す。
【図13】図13は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の耳介腫脹への影響を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の肥厚(×10−2mm)」を表す。上図の左からそれぞれ、非感作群、感作群、HU−308(10、50mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。下図の左からそれぞれ、非感作群、感作群、SR144528(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(陽性対照として5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、**:p<0.01, ***:p<0.001 (vs 感作群 Dunnett test), ###:p<0.001 (vs 感作群 Student−t test), $$$:p<0.001 (vs 非感作群 Student−t test)
【図14】図14は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の脾臓および胸腺湿重量への影響を示す図である。上図の縦軸は、脾臓湿重量(mg)を表す。下図の縦軸は、胸腺湿重量(mg)を表す。左からそれぞれ非感作群、感作群、HU−308(10、50mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、*:p<0.05, ***:p<0.001 (vs 感作群 Dunnett test), ##:p<0.01, ###:p<0.001 (vs 感作群 Student−t test), $$:p<0.01 (vs 非感作群 Student−t test)
【図15】図15は、マウスIgE依存性アレルギー性皮膚炎反応における後遅発相(抗原塗布8日後)での試験化合物の脾臓および胸腺湿重量への影響を示す図である。上図の縦軸は、脾臓湿重量(mg)を表す。下図の縦軸は、胸腺湿重量(mg)を表す。左からそれぞれ非感作群、感作群、SR144528(0.1、1、10mg/kgを経口投与。)、化合物A(10mg/kgを経口投与。)、プレドニゾロン(5mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、###:p<0.001 (vs感作群 Student−t test)
【図16】図16は、2−AG等によって誘発される耳介腫脹の経時変化を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの「耳介の肥厚(×10−2mm)」を表す。左から、化合物塗布後の時間を表わす。平均値 ± 標準誤差、(n=6)
【図17】図17は、2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)によって誘発される耳介浮腫に対する化合物Aの効果を示す図である。縦軸はAUC(0乃至8日目)を表わす。左からそれぞれ、偽処置、溶媒(溶媒のみ10mg/kgを経口投与。)、化合物A(0.01、0.1、1、10mg/kgを経口投与。)の結果を示す。平均値 ± 標準誤差 (n=8)、**:p<0.01, ***:p<0.001 (vs 溶媒群 Dunnett test), $$$:p<0.001 (vs 偽処置群 Student−t test)
【図18】図18は、NC系マウスの自発的掻痒反応に対する試験化合物の効果を示す図である。縦軸は、試験化合物投与前後におけるマウスの引っ掻き回数(回/時間)を表わす。左からそれぞれ、溶媒(溶媒のみ経口投与。)、化合物A(1、10mL/kgを経口投与。)、タクロリムス水和物(1mg/kgを経口投与。)、吉草酸ベタメサゾン(1mg/kgを経口投与。)の結果を示す。
【図19】野生型およびCB2ノックアウトマウスにおけるIgE依存性三相性耳介腫脹を示す図である。縦軸は縦軸は耳介厚みの増加(10−2mm)を表す。横軸は試験後の時間を表す。各ポイントはマウス8匹における標準± 標準誤差を示す。*:p<0.05, **:p<0.01, ***:p<0.001 (vs 野生型Student t−test)、##:p<0.01, ###:p<0.001, (vs non−sens Student t−test)。
【図20】野生型およびCB2ノックアウトマウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。縦軸は耳介厚みの増加(10−2mm)を表す。横軸は2−AG−E処理後の時間を表す。耳介腫脹は、右耳の両側に10μL/部位の2−AG−E(100mg/mL)を局所塗布して誘導した。各ポイントはマウス8匹における平均±標準誤差を示す。**:p<0.01、NS:有意差なし(vs野生型マウス Student t−test)。
【図21】野生型およびCB2ノックアウトマウスにおける2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。上段の図が処理後0−24時間、下段の図が1−8日の結果を示す。縦軸はAUC(時間x10−2mm)を表す。左から野生型、CB2ノックアウトマウスの結果を示す。**:p<0.01、NS:有意差なし(vs野生型マウス Student t−test)。
【図22】野生型および肥満細胞欠損マウス(WBB6F1−W/Wv)における2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。縦軸は縦軸は耳介厚みの増加(10−2mm)を表す。横軸は2−AG−E処理後の時間を表す。耳介腫脹は、右耳の両側に10μL/部位の2−AG−E (100mg/mL) を局所塗布して誘導した。各ポイントはマウス8匹における標準± 標準誤差を示す。*:p<0.05, **:p<0.01, ***:p<0.001 (vs WBB6F1−+/+ マウスStudent t−test)。
【図23】正常マウスおよび肥満細胞欠損マウス(WBB6F1−W/Wv)における2−AG−E誘発耳介腫脹を示す図である。上段の図が処理後0−24時間、下段の図が1−8日の結果を示す。縦軸はAUC(時間x10−2mm)を表す。左からWBB6F1−+/+(アセトン、2−AG−E)、WBB6F1−W/Wv(アセトン、2−AG−E)の結果を示す。
Claims (19)
- カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストを有効成分として含有してなる非即時型アレルギー疾患治療剤。
- インバースアゴニストが、2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)及び/又は2−アラキドノイルグリセロールエーテル(2−AG−E)のアゴニスト作用に拮抗して、インバースアゴニスト作用を示す化合物である請求項1記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎及び/又はアレルギー性結膜炎である請求項1記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎である請求項4記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性喘息である請求項4記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- アレルギー性喘息が、遅発型喘息反応、及び/又は、気道過敏症である請求項6記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- 非即時型アレルギー疾患が、遅発型アレルギー反応、及び/又は、遅延型アレルギー反応を伴う疾患である請求項1記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストが、ロイコトリエン阻害作用を併せ持つ化合物である請求項1記載のアレルギー疾患治療剤。
- 非即時型アレルギー疾患が、2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患である請求項1記載の非即時型アレルギー疾患治療剤。
- 非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む。
(a)カンナビノイドレセプター、内因性カンナビノイド、及び、被験化合物を接触させる工程、
(b)カンナビノイドレセプターと内因性カンナビノイドとの結合能を測定する工程、
(c)被験化合物の非存在下と比較し、工程(b)で測定した結合能を低下させる化合物を選択する工程。 - カンナビノイドレセプターがCB2であり、内因性カンナビノイドが2−AG又は2−AG−Eである請求項11記載の方法。
- 非即時型アレルギー疾患治療剤の候補化合物を同定する方法であって、以下の工程(a)から(c)を含む。
(a) CB2に選択的に結合する候補化合物を選定する工程、
(b) 工程(a)で選定された化合物から、CB2インバースアゴニストである化合物を選定する工程、
(c) 工程(b)で選定された化合物の抗アレルギー作用を測定する工程。 - 非即時型アレルギー疾患を患う患者に、有効量のCB2インバースアゴニストを含む製剤を投与することからなる非即時型アレルギー疾患の治療方法。
- インバースアゴニストが、2−AG及び/又は2−AG−Eのアゴニスト作用に拮抗して、インバースアゴニスト作用を示す化合物である請求項14記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
- 非即時型アレルギー疾患が、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎又は及びアレルギー性結膜炎から選ばれる疾患である請求項14記載の非即時型アレルギー疾患の治療方法。
- カンナビノイド末梢細胞型レセプターインバースアゴニストを有効成分として含有してなる2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患の治療剤。
- 2−AG及び/又は2−AG−Eに関連する疾患が、血液癌、敗血症、及び、循環器疾患から選ばれる疾患である請求項18記載の治療剤。
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JP2003184496A JP2005015422A (ja) | 2003-06-27 | 2003-06-27 | 非即時型アレルギー疾患治療剤 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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RU2699546C2 (ru) * | 2012-04-13 | 2019-09-06 | Эпизайм, Инк. | Комбинированная терапия для лечения рака |
-
2003
- 2003-06-27 JP JP2003184496A patent/JP2005015422A/ja active Pending
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