JP2005015386A - 有機高分子・無機物複合体及びその酵素的製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機高分子と無機物からなる複合体を温和な条件で調整すること。また、有機高分子と無機物からなる均一構造の複合体を提供すること。
【解決手段】有機高分子、金属塩および水性媒体からなる混合物中にて、リン酸イオン、炭酸イオン、炭酸ガス又は硫酸イオンのいずれかを放出する能力のある酵素をその酵素の基質と作用させることを特徴とする有機高分子と無機物からなる複合体の酵素的製造法、並びに、該製造方法によって得られる有機高分子・無機物複合体。
【選択図】図2
【解決手段】有機高分子、金属塩および水性媒体からなる混合物中にて、リン酸イオン、炭酸イオン、炭酸ガス又は硫酸イオンのいずれかを放出する能力のある酵素をその酵素の基質と作用させることを特徴とする有機高分子と無機物からなる複合体の酵素的製造法、並びに、該製造方法によって得られる有機高分子・無機物複合体。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機高分子の存在のもとで無機物を酵素化学的に生成させることによって、有機高分子と無機物からなる複合体を製造する方法に関する。本発明によって得られた複合体は、フィルム、ゲル、スポンジ、繊維、カプセル、表面コート剤などであり、各種産業の製品の製造に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
これまで、有機高分子・無機物複合体の製造について、多様な方法が報告されている。それらは次に代表される。(i)界面活性剤や脂質などの自己組織形成能を有する物質の中で有機高分子物質に無機物を生成させることにより複合化を進める方法(非特許文献1〜非特許文献4等参照)。(ii)擬似体液に有機高分子物質のシート、スポンジ、ゲルなどを漬けて無機物を生成させる方法(非特許文献5〜非特許文献10等参照)。(iii)高分子物質のシートなどをリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液に交互に漬けて無機物を形成させる方法(非特許文献11等参照)。 (iv)塩化カルシウム水溶液などに高分子物質のシートなどを漬けて炭酸ガスを吹き込むことで高分子物質上に炭酸塩の無機物を形成させる方法(非特許文献12等参照)。(v)タンパク質粉末と無機物の混合物を圧縮成型する方法,また,それらを焼結する方法(非特許文献13〜非特許文献15及び特許文献1等参照)。(vi)コラーゲンのシートやゲルをホスビチン(phosvitin)のような多数のリン酸基を有するタンパク存在下でグラフト化してからグリセロ−ル−2−ホスフェート・カルシウム塩の水溶液に加え、ついでアルカリ性フォスファターゼ(リン酸エステル加水分解酵素の1種)を加えることにより、当該の修飾コラーゲン物質にリン酸カルシウムを生成させる方法(非特許文献16及び非特許文献17参照)などである。また(vii) 山内は最近、”有機・無機交互多重積層複合体”(特許文献2参照)において、コラーゲンおよびチオール化コラーゲンから作成した薄膜体をリン酸エステルと無機塩から成る水溶液に浸し、そこにリン酸エステル加水分解酵素を塗布させることによって、コラーゲン層もしくはチオール化コラーゲン層とヒドロキシアパタイトなどの無機層が交互に積層した複合体を製造している。前記報告、先行技術を見ると、無機の薄膜が積層される有機高分子膜の構成(前処理などを含めた)および所望の無機薄膜を結晶や膜厚を制御して形成する方法の開発に試行錯誤がされていることを窺い知ることができる。
【0003】
製造法から従来の方法を顧みれば、方法(i−v)はいずれも酵素を使わない方法である。なかでも、方法(i)は無機物の結晶化を制御するために界面活性剤や高分子イオン物質など第3の物質を使うなどしているので、応用の際、複合体からの除去を要するなど、組成に注意が必要である。概して,方法(i−iv)は無機物の形成に数十時間から数日を要するなど、複合化の速度が速いとはいえない。また、方法(v)は簡単な方法ではあるが、 数ミクロンオーダーの大きさや複雑な形状の複合体の作成には適していないなどの欠点がある。酵素を使う方法(vi)ではコラーゲンゲルやコラーゲンシートをホスビチン(多数のリン酸基を有するタンパク質)で化学修飾してから使っているばかりでなく、そのシートやゲルなどの成型品を作製してから、それらをアルカリ性フォスファターゼ酵素と基質の混合液で処理しているなど、煩雑な操作を要する。方法(vii)による複合体はコラーゲンもしくはチオール化コラーゲンの薄膜と無機物が交互に積層しているものであって、層状の不均一な構造体である。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−182754号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2001−191446号公報
【0006】
【非特許文献1】
M.Breulmann, et al.,Adv. Mater. 2000;12:502−507
【0007】
【非特許文献2】
G.Falini et al., Science 1996;271:67−69
【0008】
【非特許文献3】
A. Firouzi et al., Science 1995;267:1138−1143
【0009】
【非特許文献4】
B.R. Heywood et al., Adv. Mater. 1994;6:9−20
【0010】
【非特許文献5】
K. Sato et al., J. Biomed.Mater. Res. 2000; 50:16−20
【0011】
【非特許文献6】
P. Li et al., J. Biomed Mater Res 1997;34:79−86
【0012】
【非特許文献7】
M. Tanahashi et al., J. Am. Ceram. Soc. 1994;77: 2805−2808
【0013】
【非特許文献8】
S.H. Rhee et al., Biomaterials 1999; 20:2155−2160
【0014】
【非特許文献9】
R. Zhang R et al., J. Biomed. Mater. Res. 1999; 45:285−293
【0015】
【非特許文献10】
W.L.Murphy et al., J. Biomed. Mater. Res. 2000; 50:50−58
【0016】
【非特許文献11】
G. Chen et al., J. Biomed. Mater. Res. 2001; 57:8−14.
【0017】
【非特許文献12】
T. Taguchi , M. Akashi, et al., Biomaterials 2001; 22:53−58
【0018】
【非特許文献13】
K. Hirota, et al., Biomed. Mater. Eng., 3, 147 (1993)
【0019】
【非特許文献14】
Boning Up”, C & EN,August 25 1997, pp. 27−32
【0020】
【非特許文献15】
最新医用材料開発利用便覧;R&Dプランニング社;pp.297−307
【0021】
【非特許文献16】
E.Banks et al., Science,1997;198:1164−1166
【0022】
【非特許文献17】
Y.Doi, et al., J. Biomed. Mater. Res. 1996; 31:43−49
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機高分子と無機物からなる均一構造の複合体を、酵素を利用して温和な条件にて調製することを主な目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として、鋭意検討を行った。その結果、(a)有機高分子と水溶性無機塩の存在下でリン酸イオンを発生させる酵素・基質系、例えば水溶性リン酸エステルから成る水性媒体混合物にリン酸エステル加水分解酵素を組み合わせたものを導入することにより、また、(b)有機高分子と水溶性無機塩の存在下で硫酸イオンを発生させる酵素・基質系、例えば硫酸エステルから成る水性媒体混合物に硫酸エステル加水分解酵素を組み合わせたものを導入することにより、また、(c) 有機高分子と水溶性無機塩の存在下で炭酸ガスや炭酸イオンを酵素的に発生させる系、例えば尿素と尿素加水分解酵素を組み合わせたものを導入することにより、簡単に当該有機高分子と無機物の複合体が製造できる知見を得た。また,これら複合体からフィルム、スポンジ、ゲルやカプセルが得られること、また、プラスチックなどの物質表面を当該複合体でコートすることができることを見出し、鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0025】
即ち、本発明は以下の事項に関する。
【0026】
項1:有機高分子、金属塩および水性媒体からなる混合物中にて、リン酸イオン、炭酸イオン、炭酸ガス又は硫酸イオンのいずれかを放出する能力のある酵素をその酵素の基質と作用させることを特徴とする有機高分子と無機物からなる複合体の酵素的製造法。
【0027】
項2:酵素がリン酸エステル加水分解酵素であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子とリン酸塩からなる複合体である項1に記載の複合体の酵素的製造法。
【0028】
項3:酵素が尿素加水分解酵素、カルボニックアンハイドラーゼ及びアミノ酸デカルボキシラーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子と炭酸塩からなる複合体である項1に記載の複合体の酵素的製造法。
【0029】
項4:酵素が硫酸エステル加水分解酵素であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子と硫酸塩からなる複合体である項1に記載の複合体の酵素的製造法。
【0030】
項5:項1〜4のいずれかに記載の酵素的製造法によって得られる有機高分子と無機物からなる複合体。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0032】
本発明は、酵素を活用することにより、有機高分子水溶液中にてリン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機物を生成させる方法を特徴とする有機高分子・無機物の複合体の製造法を提供するものである。
【0033】
有機高分子
有機高分子としては、タンパク質ないしはポリアミノ酸、多糖類、又は合成高分子などが挙げられる。
【0034】
タンパク質ないしはポリアミノ酸としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、カゼイン、グリアチン、大豆タンパク質、ゼイン(zein)、絹フィブロイン、フィブリン、セリシン、ポリグルタミン酸、オカラタンパクなどが挙げられる。
【0035】
多糖類としては、例えば、アルギン酸、デンプン、セルロース、カルボキシメチル化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、イヌリン、マンナン、キチン、キトサン、寒天酸、ポリガラクツロン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0036】
合成高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性の合成高分子が挙げられる。また、水溶性ではないが天然および合成ゴムラテックスに代表される有機高分子の水分散体も使うことができる。
【0037】
これら有機高分子の分子量は特に限定されず、物質の種類、所望の複合体の性質、複合体の用途等に応じて適宜設定される。
【0038】
有機高分子の反応系中における重量濃度は、0.1%―70%程度であるが、反応系の撹拌を可能とする粘度以内、過度の沈殿を生じない荷電状態以内などに調製される。
【0039】
金属塩
金属塩としては、金属イオンがリン酸イオン、炭酸イオン又は硫酸イオンと反応して水に不溶な塩を形成するものであればよく、例えば、カルシウム塩(塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム)、マグネシウム塩(塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム)、チタニウム(III)塩(塩化チタン、臭化チタン、ヨウ化チタン)など水溶性のアルカリ土族の金属塩が挙げられる。
【0040】
水性媒体
酵素反応に用いる媒体は、酵素が活性を発揮できるpH値を有し、かつ、原料の有機高分子が溶解する性質であれば特に限定されない。このような媒体としては、好ましくは、水、あるいは緩衝液が挙げられる。また、エタノールなどの単価アルコールやグリセロールなどの多価アルコールやトリエチルアミン、ジオキサンなどの水溶性の有機化合物を含む水性媒体でもよい。
【0041】
酵素
酵素としては、酵素基質を分解して、リン酸イオン、炭酸イオンや炭酸ガス、硫酸イオンを放出する能力のあるものであれば特に限定されない。
【0042】
リン酸イオンを放出する能力のある酵素としては、たとえば、リン酸エステル加水分解酵素などが挙げられる。リン酸エステル加水分解酵素としては、具体的には、酸性フォスファターゼやアルカリ性フォスファターゼが挙げられる。
【0043】
炭酸イオンや炭酸ガスを放出する能力のある酵素としては、例えば、ウレアーゼ(尿素加水分解酵素)、アミノ酸デカルボキシラーゼ、カルボニックアンハイドラーゼなどが挙げられる。
【0044】
硫酸イオンを放出する能力のある酵素としては、たとえば、スルフェターゼ、サルファ オキシゲナーゼなどが挙げられる。なお、サルファ オキシゲナーゼは基質がイオウと酸素および水であり、亜硫酸イオンを放出するが、これはそのまま金属イオンと反応して当該亜硫酸金属塩となり、これが当該硫酸金属塩に成る場合、および亜硫酸イオンが水と反応して硫酸イオンに変化してから金属イオンと反応して当該硫酸金属塩を生成する場合があるが、本発明では両経路による硫酸金属塩の形成を区別しない。
【0045】
製造原料系における酵素の濃度もしくは活性数(通常ユニット数で表現される)は、通常の酵素反応のように、複合化の処理温度、時間、基質量によって調節される。なお、酵素反応の助けで生成し、原料の有機高分子と複合化される無機物の複合体中における相対量は有機高分子の2%から75%程度であり、これは,表1に例示するように,原料の有機高分子に対して加えられる塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの水溶性無機塩、リン酸イオン源として加えられるリン酸エステル、硫酸イオン源として加えられる硫酸エステルや硫黄、および炭酸ガス源として加えられる尿素などの基質量から一義的に決まる値である。
【0046】
したがって、あらかじめ製造を目指す複合体中の無機物の量を決めれば、反応容器に仕込むべき有機高分子、酵素基質、水溶性無機塩等の量のおおよそが算出され実行される。
【0047】
酵素の基質
酵素の基質としては酵素によって分解されてリン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオンや炭酸ガスを放出できる水溶性化合物なら特に限定されない。
【0048】
たとえばリン酸イオン放出のためにはグリセロール 2―ホスフェート、グリセロール 1−ホスフェート、グルコース 6−ホスフェート、グルコース 1−ホスフェート等のリン酸エステルなどが用いられる。
【0049】
硫酸イオン放出のためにはp−ニトロカテコール サルフェート、フェノールサルフェート等の芳香族硫酸エステルなどが用いられる。サルファ オキシゲナーゼの基質はイオウであり水に不溶であるが、微粉末の水性媒体分散体として使用される。
【0050】
また、炭酸ガス、炭酸イオンの放出のためには次のような酵素−基質系が好ましく用いられる。ウレアーゼ−尿素、カルボニックアンハイドラーゼ−炭酸、オキサレート デカルボキシラーゼ−しゅう酸、アミノ酸デカルボキシラーゼ−アミノ酸などである。
【0051】
また、上記基質は、それらの中性型、酸型、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、チタン塩などであってもよい。
【0052】
なお、上記のリン酸エステルを基質として使用する場合、リン酸エステルが酸型あるいはナトリウム塩、カリウム塩やリチウム塩などで水溶性であるとき、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどに代表される無機イオンの水溶性塩(塩化カルシウムや塩化マグネシウムなど)を反応系に添加しておかねばならない(すなわち、これらの無機イオンがリン酸イオンと結合して溶解度積の小さな無機物としてタンパク質と複合化する)。その際、使用する塩化カルシウムなどの水溶性塩は1種のみである必要は無く、数種類の水溶性無機塩から成る混合物、例えば、塩化カルシウムと塩化マグネシウムの混合物であってもよい。
【0053】
複合体の製造法
本発明製造法の具体的操作の一例を次に示す。温度4−50度にて、適当な濃度に調整した有機高分子水溶液を撹拌しながら、金属塩含有溶液と基質含有液を加え、よく撹拌してから、酵素を適量含む緩衝液を添加する。その後、混合物を同温度で複合体の生成が起こるまで撹拌するが、通常は5分から10時間程度攪拌する。このようにして得られる有機高分子と無機物の複合体の構成比は反応時間に依存するが、酵素反応を完結させた時は計算量にほぼ一致する。
【0054】
なお、上記の例で示した複合体の製造法において当初の反応液が透明である場合とスラリー状態である場合があるが、本発明では両者の場合を同じとして扱っている。
【0055】
複合体
このような有機高分子と無機物の複合化を図1に示している。
【0056】
複合化の機構についてはよく解明できていないが、コラーゲンなど有機高分子に水溶性無機塩から由来するカルシウムイオンなどが分子的にイオン相互作用している状態で、酵素反応で生じるリン酸イオンや炭酸ガスもしくは炭酸イオンが近づいて反応し、溶解度積の小さなリン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどが有機高分子と相互作用しながら核化成長すると考えられる。
【0057】
本法により得られる有機高分子・無機物複合体は、機械的強度が大きく、かつ、原料の有機高分子が水溶性であるにもかかわらず耐水性を示し、水中でも膨潤が極めて抑制される。このような特徴は有機高分子と無機物の単純混合物では得られない。本発明の複合体の物性例を表2〜5に示している。
【0058】
また、生化学的特性としては、骨芽細胞等の細胞培養基質として有用であることが示唆された。なお、一般のタンパク質製品で見受けられるように、複合体から作られたフィルム等についても、機械的性質(強度、ヤング率など)は、大気の湿度や温度の影響を受けるが、グリセリンやソルビトールなどを可塑剤として加えることで改善することができた。
【0059】
本発明によって得られた有機高分子・無機物複合体は公知の製膜法,成型法により種々のシート、フィルム、スポンジ、ゲル、繊維、カプセル等に成形される。また、公知の製法に従い、物質表面のコート剤としても利用される。
【0060】
応用分野は医療材料、化粧品、食品、繊維材料、製紙分野などである。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本明細書において、Mはモル濃度を意味する。また、撹拌は定速撹拌モータを使用して行った。
【0062】
[実施例1]コラーゲン・リン酸カルシウム複合体の製造
温度15度にて0.25重量%のコラーゲン水溶液(120ml)を撹拌しながら、0.02M グリセロリン酸カルシウム水溶液(ICN社,製品番号102914,40 ml)を加え、よく撹拌してから、アルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号P7640)を10mg(約230ユニット)を含むトリス緩衝液(pH9,1 ml)を添加した。混合物を同温度で6時間撹拌した。このようにして得られるコラーゲンとリン酸カルシウムの複合体(水分散物)の構成比は反応時間に依存するが、酵素反応を完結させた時は計算量にほぼ一致した。本例では約4:1重量比であった。なお、複合体での無機物は、コラーゲナーゼでコラーゲン部を分解し、得られるリン酸カルシウムを遠心分離して秤量することで求めた。
【0063】
[実施例2]コラーゲン・炭酸カルシウム複合体の製造
温度15度にて0.25重量%のコラーゲン水溶液(200 ml)を撹拌しながら、1M 尿素水溶液(1 ml)と1 M塩化カルシウム水溶液(1 ml)を加えよく撹拌した。その後、ウレアーゼ(シグマ社,製品番号U−1500)を約300ユニット溶かしたトリス緩衝液(pH 7,1 ml)を添加した。混合物を同温度で5時間撹拌した。得られるコラーゲンと炭酸カルシウムの複合体(水分散物)の構成比は反応時間によるが、酵素反応を完結させた時は計算量にほぼ一致し、本例では約6:1重量比であった。なお、複合体中の無機物の量は、コラーゲナーゼでコラーゲン部を分解し、得られる炭酸カルシウムを遠心分離して秤量することで求めた。
【0064】
[実施例3]コラーゲン・ヒドロキシアパタイトフイルムの作成
実施例1のようにしてコラーゲン溶液(0.25重量%;120 ml)にアルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号 P 7640; 230ユニット)のpH8.9/0.1 Mトリス緩衝液を加えて4℃で30分間撹拌した。次いで、pH8.9/0.1Mトリス緩衝液に溶かした20 mM グリセロリン酸カルシウム溶液(40 ml)を徐々に加えて15℃で6時間撹拌した。pHが8〜9になっていない場合は、1M 水酸化ナトリウム水溶液で調整した。脱気後、得られた反応物はわずかに白濁状であり、これをポリエチレンテレフタレート(PET)板にキャストして室温(約20℃)で乾燥させた。乾燥したフィルムをメタノールに小時間浸してから乾燥して半透明のフィルムを得た。コラーゲン・ヒドロキシアパタイト複合体中の重量組成比(実験値)は81:19となった。
【0065】
同上の製造操作において,コラーゲン量、酵素量は同じくして、仕込む基質量のみを変化させたところ、いろいろなコラーゲン対カルシウムアパタイト比を持つ複合体(重量比(実験値)94:6, 86:14, 70:30)が得られた。仕込んだコラーゲン量と重量比(実験値)の関係は表1に示す。
【0066】
[実施例4]コラーゲン・ヒドロキシアパタイト複合フィルム中のヒドロキシアパタイトの定量
(1)実施例3のようにして作成したフィルムの重量を測り(片面面積,4cm2; 厚さ,約30ミクロン;重さ,約15mg)、エッペンドルフチューブに入れた。
(2)エッペンドルフチューブに0.02 mg/ml(44ユニット)の濃度のコラゲナーゼ(pH 7.6/トリス緩衝液の溶液)3 mlを加えて2時間以上36℃にて処理した。
(3)容器ごと15000rpm、10分間、15℃で遠心し、上澄みを除いた。沈殿物に水を加え撹拌後、遠心し、沈殿を洗った。この洗浄操作を数度繰り返した。
(4)沈殿物を減圧乾燥し、重量を測定し、使用したフィルム重量から当該無機物の割合を計算した。コラーゲンとリン酸カルシウムの組成をいろいろ変化させてみた場合の理論比と実験値を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例5]複合体中でのリン酸カルシウムの同定
(1)リン酸カルシウムに特異的に発色するフォン・コッサ染色法を実施例1で示す方法で得た複合体および実施例2で示す方法で得た無機物に適用したところ、赤褐色に染色されリン酸カルシウムの存在を示した。
(2)実施例4で得られた無機物、より具体的には実施例1の方法に従って作成したコラーゲン:ヒドロキシアパタイトの重量比(実験値)81:19の複合体から実施例4に従って分離した無機物について,赤外スペクトル、元素分析(ESCA)、X線回折スペクトル(XRD)に関する測定を行い、比較として市販品のヒドロキシアパタイト結晶(シグマ社;製品コードH−0252)を用いて、データを比較した。その結果、当該無機物は結晶性がやや低い状態のヒドロキシアパタイトと同定された。代表的なスペクトルを図2−4に示す。
【0069】
図2は赤外スペクトル(KBr法)の測定結果を示す図面であり、 (a)は市販品のヒドロキシアパタイト結晶、 (b)は実施例4で分離した無機物、 (c)は実施例1に記載の方法でコラーゲン無しの条件で生成したリン酸カルシウムに関するものである。スペクトル(b)はスペクトル(a)に似ていて、ヒドロキシアパタイト特有の565,605,1030cm−1にピークを示している。しかし、スペクトル(b)はブロードであり、結晶性が(a)に比べ低いことがわかる。コラーゲンが存在しないと、スペクトル(c)に示されるように、ヒドロキシアパタイトではない他のリン酸カルシウムが生成する。
【0070】
図3は元素分析の測定結果を示す図面であり、 (a)はコラーゲンフィルム、 (b)は実施例1にしたがって製造した複合体から分離した無機物に関するものである。スペクトル(a)よりコラーゲンはO,N,C元素のみであることがわかるが、スペクトル(b)にはヒドロキシアパタイトによるO,Ca,Pのピークがある。CとNはわずかである。
【0071】
図4は、X線回折スペクトル(XRD)の測定結果を示す図面であり、 (a)は 実施例1にしたがって製造した複合体から分離した無機物、(b)は 市販のヒドロキシアパタイト結晶に関するものである。この場合もスペクトル(a)はスペクトル(b)に似ているがブロードであり、結晶性は市販品のヒドロキシアパタイト結晶に比べ低いことがわかる。
【0072】
[実施例6]物性(引張破断強度,伸度,ヤング率,膨潤度)の測定
実施例3で得られた種々の重量比のフィルムを試験片(1cm x 5cm)とし、デジタル荷重計(今田製作所、SV−55型)に装着し、引張速度20mm/min、相対湿度65±5%、温度25度にて応力・歪曲線を求め、引張破断強度,伸度,ヤング率を得た。結果を表2に示す。なお、表2には、比較のために、コラーゲン:ヒドロキシアパタイトの重量比が100:0のコラーゲンフィルムの物性も示した。
【0073】
【表2】
【0074】
また、試験片を常温水に1時間浸し、試料片のサイズの変化と重量から元の値に対する100分率を計算し、膨潤度を求めた。コラーゲン・ヒドロキシアパタイト(重量比(実験値)=81:19)複合体から作成したフィルムの膨潤度を表3に示す。表3には、比較のために、化学的(非酵素的)方法により得られた複合体(コラーゲン・ヒドロキシアパタイトの重量比(実験値)=80:20)の物性及びコラーゲンフィルムの物性も示した。化学的方法により得られた複合体は、有機高分子溶液にCaCl2溶液とNaH2PO4溶液を加える方法により得られた複合体である。またコラーゲンフィルムは,市販のコラーゲン溶液(0.3重量%;高研社;セルゲン;製品コードIP−C)を水で希釈してからキャスト(溶液を水平な容器枠に展開してそのまま乾燥すること)した後、メタノールに漬けて脱水処理したものである。
【0075】
【表3】
【0076】
[実施例7] ポリアクリル酸・ヒドロキシアパタイト複合体の作成
市販のポリアクリル酸ナトリウム塩の水溶液(25重量%;50 ml)にアルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号 P 7640; 1000ユニット)のpH8.9/0.1 Mトリス緩衝液(5ml)を添加してよく攪拌した。ついで塩化カルシウム水溶液(5重量%;80ml)とpH8.9/0.1Mトリス緩衝液に溶かした1M グリセロリン酸二ナトリウム溶液(45 ml)と同時に少しずつ2時間かけて滴下した。液の温度は25℃,pHは8−9に調節し反応液を5時間撹拌続けた(合計約7時間)。脱気後、得られた反応物をポリエチレンテレフタレート(PET)板にキャストして約50℃で乾燥した。フィルムをメタノールに小時間浸して、そのまま乾燥して半透明のフィルムを作成した。
【0077】
[実施例8] ケラチン・ヒドロキシアパタイト複合体の製造
既知の方法(特許第2946491号;K.Yamauchi, et al., J. Biomed. Mat. Res.,31; 439(1966))で調製したケラチン水溶液(2.5重量%;100 ml)にアルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号 P 7640; 200ユニット)のpH8.9/0.1 Mトリス緩衝液(5ml)を添加した。ついでpH8.9/0.1Mトリス緩衝液に溶かした1M グリセロリン酸二ナトリウム溶液(2.1 ml)と塩化カルシウム水溶液(5重量%;7.7 ml)を同時に徐々に添加後、さらに反応液を5時間撹拌した。温度は30℃に保ち、pHが8〜9になっていない場合は1M 水酸化ナトリウム水溶液と1M塩酸で微調整した。脱気後、得られた反応物をポリエチレンテレフタレート(PET)板にキャストして約50℃で乾燥した。フィルムをメタノールに小時間浸して、そのまま乾燥して半透明のフィルムを作成した。
【0078】
[実施例9] ゼラチン・ヒドロキシアパタイト複合体の製造
ゼラチン水溶液(15重量%;30 ml)に酸性フォスファターゼ(シグマ社p−3627; 10 U)の水溶液(3 ml) を徐々に添加した。ついで、塩化カルシウム二水和物 (0.25 g)の水溶液(10 ml)を加えた。 約30分後、グルコース 6−ホスフェート二ナトリウム塩l (0.53 g) の水溶液 (10 ml) を少しずつ加えた。35℃で5時間攪拌続けた。この間、溶液のpHは約5.3−5.5に調製した。 脱気後、PET板上で40℃で乾燥し、ついでメタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。表4にそのようにして作製したフィルムの物性の例を示す。膨潤度は実施例6に記載の方法と同様の方法で測定した。表4には、比較のために、化学的(非酵素的)方法により得られた複合体(ゼラチン・ヒドロキシアパタイトの重量比(実験値)=95:5)の物性及びゼラチンフィルムの物性も示した。化学的方法により得られた複合体は、有機高分子溶液にCaCl2溶液とNaH2PO4溶液を加える方法により得られた複合体である。また、ゼラチンフィルムは,市販のゼラチン(シグマ社、製品コードG−2500)を水に溶かしてからその20重量%溶液をキャスト(溶液を水平な容器枠に展開してそのまま乾燥すること)した後、メタノールに漬けて脱水処理して作製したものである。
【0079】
【表4】
【0080】
[実施例10] ゼラチン・ヒドロキシアパタイト複合体の製造
実施例8で製造された液にゼラチンに対して5wt%に相当する量のグリセリンを加え攪拌した。この混合液をPET板上で60℃で乾燥したところ柔軟なフィルムを得た。
【0081】
[実施例11] コラーゲン・炭酸カルシウム複合体の製造
コラーゲン水溶液(0.25 wt%;100ml)に尿素水溶液(10重量%,0.6 ml),塩化カルシウム(10重量%,1.1 ml)を加えて20℃で1時間攪拌した。溶液のPHを8に調製してから、ウレアーゼ(300ユニット)を加えた。5時間後、溶液を脱気し、PET板上で室温で乾燥し、ついでメタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。
【0082】
[実施例12] アルギン酸・炭酸カルシウム複合体の製造
アルギン酸水溶液(1.5 重量%;100 ml)にウレアーゼ(1000ユニット)を加えた。ついで、尿素(30 mM)と塩化カルシウム(30 mM)を徐々に加えてpH 7、20℃で1時間攪拌した(括弧内はできあがった溶液中での最終濃度である)。約10時間後、溶液を脱気し、PET板上で室温で乾燥し、ついでメタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。
【0083】
[実施例13]ポリアクリル酸・炭酸カルシウム複合体の製造
ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(15 重量%; 135 ml)にウレアーゼ(300ユニット)を加えた。尿素(0.20 g/水10 ml)と塩化カルシウム(0.21 g/水10 ml)を同時に少しずつ加えて30℃で6時間攪拌した。その後、溶液を脱気し、PET板上で室温で乾燥し、ついでエタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。
【0084】
表5にそのようにして作製したフィルムの物性の例を示す。最大引張破断強度、膨潤度は実施例6に記載の方法と同様の方法で測定した。
【0085】
【表5】
【0086】
[実施例14]コラーゲン・ヒロドキシアパタイト複合フィルムを細胞培養基質とする骨芽細胞の培養
細胞培養用ディッシュ(3.5cm径)に0.1%コラーゲン・ヒドロキシアパタイト(8:2 重量%)混合液(2 ml)を加え、常温にて乾燥した。乾燥後70%工タノールにより滅菌し、さらにPBS(−)で洗浄し細胞培養に供した。10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン、ストレプトマイシン添加MEM‐α培地に懸濁した前骨芽細胞株MC3T3−Eを1.0x104細胞/cm2となるようディッシュに播種した。コラーゲン・ヒドロキシアパタイトコートディッシュでの細胞の増殖と骨芽細胞への分化マーカーであるアルカリ性フォスファターゼ活性を市販細胞培養用ディッシュと比較した。アルカリ性フォスフェターゼ活性は細胞を溶解後、蛍光基質である5−methyl umbelliferyl phosphateを用い定量した。その結果、両ディッシュ間で細胞の接着と増殖において差は見られず、培養後3日目でほぼ単層を形成した。しかし,培養7日目の細胞のアルカリ性フォスフェターゼ活性はコラーゲン・ヒドロキシアパタイトコートディッシュで有意に高く骨芽細胞への分化が促進されていることが示された。
【0087】
【発明の効果】
本発明は酵素的に有機高分子と無機物の複合体を製造することに特徴がある。本発明の効果は本方法によって得られた複合体の成形物、例えばフィルム、が耐水性を有し、またその機械的強度も高いことによく示されている。その特性を表2―5に例示している。それに対して非酵素的製造法で得られた複合体、例えば、有機高分子と無機物の機械的混合物から製造された複合体, あるいは有機高分子溶液にて化学反応(例えば塩化カルシウムとリン酸ナトリウムを反応させる方法)で製造した有機高分子と無機物の複合体では、本発明によって得られた複合体と同じ組成であっても、常温水中での膨潤度は大きく、そのままの形状で30−110%に膨潤するかフラグメントに分解してしまう。このように本発明の酵素的製法により得られた複合体は、これまでにない優れた特性を有している。
【0088】
また、図2−4のスペクトルは本発明により生成したリン酸カルシウムが低結晶性のヒドロキシアパタイトであることを証明しているが、この例のように、酵素法で作られた複合体中の無機物は魚鱗や貝殻など天然複合体での無機物の組成(ヒドロキシアパタイト、バテライト・カルサイトなど)に似ていることも大きな特徴である。このような効果は非酵素的製造法では達成がむずかしいのが通常である。
【0089】
本発明によって得られる有機高分子・無機物複合体は、このように優れた性質を有していることから、種々のシート、フィルム、スポンジ、ゲル、繊維、カプセル等の成形体として、また、物質表面のコート剤として、有用に利用することができ、医療材料、化粧品、食品、繊維材料、製紙分野等の種々の分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、有機高分子と金属イオンの存在下で、酵素が基質に作用してリン酸イオンなどを生成し、有機高分子と無機物からなる複合体を形成する工程を示した模式図である。
【図2】図2は次の物質のFTIR スペクトル( KBr法)である。 (a) 市販のhydroxyapatite crystals, (b) 実施例4で分離した無機物、 (c) 実施例1でコラーゲン無しの条件で生成したリン酸カルシウム。
【図3】図3は次の物質のXPS スペクトルである。 (a)コラーゲンフィルム、 (b) 実施例1にしたがって製造した複合体におけるヒドロキシアパタイト。
【図4】図4は次の物質のXRD スペクトルである。 (a) 実施例1にしたがって製造した複合体におけるヒドロキシアパタイト、 (b) 市販のhydroxyapatite crystals。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機高分子の存在のもとで無機物を酵素化学的に生成させることによって、有機高分子と無機物からなる複合体を製造する方法に関する。本発明によって得られた複合体は、フィルム、ゲル、スポンジ、繊維、カプセル、表面コート剤などであり、各種産業の製品の製造に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
これまで、有機高分子・無機物複合体の製造について、多様な方法が報告されている。それらは次に代表される。(i)界面活性剤や脂質などの自己組織形成能を有する物質の中で有機高分子物質に無機物を生成させることにより複合化を進める方法(非特許文献1〜非特許文献4等参照)。(ii)擬似体液に有機高分子物質のシート、スポンジ、ゲルなどを漬けて無機物を生成させる方法(非特許文献5〜非特許文献10等参照)。(iii)高分子物質のシートなどをリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液に交互に漬けて無機物を形成させる方法(非特許文献11等参照)。 (iv)塩化カルシウム水溶液などに高分子物質のシートなどを漬けて炭酸ガスを吹き込むことで高分子物質上に炭酸塩の無機物を形成させる方法(非特許文献12等参照)。(v)タンパク質粉末と無機物の混合物を圧縮成型する方法,また,それらを焼結する方法(非特許文献13〜非特許文献15及び特許文献1等参照)。(vi)コラーゲンのシートやゲルをホスビチン(phosvitin)のような多数のリン酸基を有するタンパク存在下でグラフト化してからグリセロ−ル−2−ホスフェート・カルシウム塩の水溶液に加え、ついでアルカリ性フォスファターゼ(リン酸エステル加水分解酵素の1種)を加えることにより、当該の修飾コラーゲン物質にリン酸カルシウムを生成させる方法(非特許文献16及び非特許文献17参照)などである。また(vii) 山内は最近、”有機・無機交互多重積層複合体”(特許文献2参照)において、コラーゲンおよびチオール化コラーゲンから作成した薄膜体をリン酸エステルと無機塩から成る水溶液に浸し、そこにリン酸エステル加水分解酵素を塗布させることによって、コラーゲン層もしくはチオール化コラーゲン層とヒドロキシアパタイトなどの無機層が交互に積層した複合体を製造している。前記報告、先行技術を見ると、無機の薄膜が積層される有機高分子膜の構成(前処理などを含めた)および所望の無機薄膜を結晶や膜厚を制御して形成する方法の開発に試行錯誤がされていることを窺い知ることができる。
【0003】
製造法から従来の方法を顧みれば、方法(i−v)はいずれも酵素を使わない方法である。なかでも、方法(i)は無機物の結晶化を制御するために界面活性剤や高分子イオン物質など第3の物質を使うなどしているので、応用の際、複合体からの除去を要するなど、組成に注意が必要である。概して,方法(i−iv)は無機物の形成に数十時間から数日を要するなど、複合化の速度が速いとはいえない。また、方法(v)は簡単な方法ではあるが、 数ミクロンオーダーの大きさや複雑な形状の複合体の作成には適していないなどの欠点がある。酵素を使う方法(vi)ではコラーゲンゲルやコラーゲンシートをホスビチン(多数のリン酸基を有するタンパク質)で化学修飾してから使っているばかりでなく、そのシートやゲルなどの成型品を作製してから、それらをアルカリ性フォスファターゼ酵素と基質の混合液で処理しているなど、煩雑な操作を要する。方法(vii)による複合体はコラーゲンもしくはチオール化コラーゲンの薄膜と無機物が交互に積層しているものであって、層状の不均一な構造体である。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−182754号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2001−191446号公報
【0006】
【非特許文献1】
M.Breulmann, et al.,Adv. Mater. 2000;12:502−507
【0007】
【非特許文献2】
G.Falini et al., Science 1996;271:67−69
【0008】
【非特許文献3】
A. Firouzi et al., Science 1995;267:1138−1143
【0009】
【非特許文献4】
B.R. Heywood et al., Adv. Mater. 1994;6:9−20
【0010】
【非特許文献5】
K. Sato et al., J. Biomed.Mater. Res. 2000; 50:16−20
【0011】
【非特許文献6】
P. Li et al., J. Biomed Mater Res 1997;34:79−86
【0012】
【非特許文献7】
M. Tanahashi et al., J. Am. Ceram. Soc. 1994;77: 2805−2808
【0013】
【非特許文献8】
S.H. Rhee et al., Biomaterials 1999; 20:2155−2160
【0014】
【非特許文献9】
R. Zhang R et al., J. Biomed. Mater. Res. 1999; 45:285−293
【0015】
【非特許文献10】
W.L.Murphy et al., J. Biomed. Mater. Res. 2000; 50:50−58
【0016】
【非特許文献11】
G. Chen et al., J. Biomed. Mater. Res. 2001; 57:8−14.
【0017】
【非特許文献12】
T. Taguchi , M. Akashi, et al., Biomaterials 2001; 22:53−58
【0018】
【非特許文献13】
K. Hirota, et al., Biomed. Mater. Eng., 3, 147 (1993)
【0019】
【非特許文献14】
Boning Up”, C & EN,August 25 1997, pp. 27−32
【0020】
【非特許文献15】
最新医用材料開発利用便覧;R&Dプランニング社;pp.297−307
【0021】
【非特許文献16】
E.Banks et al., Science,1997;198:1164−1166
【0022】
【非特許文献17】
Y.Doi, et al., J. Biomed. Mater. Res. 1996; 31:43−49
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機高分子と無機物からなる均一構造の複合体を、酵素を利用して温和な条件にて調製することを主な目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として、鋭意検討を行った。その結果、(a)有機高分子と水溶性無機塩の存在下でリン酸イオンを発生させる酵素・基質系、例えば水溶性リン酸エステルから成る水性媒体混合物にリン酸エステル加水分解酵素を組み合わせたものを導入することにより、また、(b)有機高分子と水溶性無機塩の存在下で硫酸イオンを発生させる酵素・基質系、例えば硫酸エステルから成る水性媒体混合物に硫酸エステル加水分解酵素を組み合わせたものを導入することにより、また、(c) 有機高分子と水溶性無機塩の存在下で炭酸ガスや炭酸イオンを酵素的に発生させる系、例えば尿素と尿素加水分解酵素を組み合わせたものを導入することにより、簡単に当該有機高分子と無機物の複合体が製造できる知見を得た。また,これら複合体からフィルム、スポンジ、ゲルやカプセルが得られること、また、プラスチックなどの物質表面を当該複合体でコートすることができることを見出し、鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0025】
即ち、本発明は以下の事項に関する。
【0026】
項1:有機高分子、金属塩および水性媒体からなる混合物中にて、リン酸イオン、炭酸イオン、炭酸ガス又は硫酸イオンのいずれかを放出する能力のある酵素をその酵素の基質と作用させることを特徴とする有機高分子と無機物からなる複合体の酵素的製造法。
【0027】
項2:酵素がリン酸エステル加水分解酵素であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子とリン酸塩からなる複合体である項1に記載の複合体の酵素的製造法。
【0028】
項3:酵素が尿素加水分解酵素、カルボニックアンハイドラーゼ及びアミノ酸デカルボキシラーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子と炭酸塩からなる複合体である項1に記載の複合体の酵素的製造法。
【0029】
項4:酵素が硫酸エステル加水分解酵素であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子と硫酸塩からなる複合体である項1に記載の複合体の酵素的製造法。
【0030】
項5:項1〜4のいずれかに記載の酵素的製造法によって得られる有機高分子と無機物からなる複合体。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0032】
本発明は、酵素を活用することにより、有機高分子水溶液中にてリン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機物を生成させる方法を特徴とする有機高分子・無機物の複合体の製造法を提供するものである。
【0033】
有機高分子
有機高分子としては、タンパク質ないしはポリアミノ酸、多糖類、又は合成高分子などが挙げられる。
【0034】
タンパク質ないしはポリアミノ酸としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、カゼイン、グリアチン、大豆タンパク質、ゼイン(zein)、絹フィブロイン、フィブリン、セリシン、ポリグルタミン酸、オカラタンパクなどが挙げられる。
【0035】
多糖類としては、例えば、アルギン酸、デンプン、セルロース、カルボキシメチル化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、イヌリン、マンナン、キチン、キトサン、寒天酸、ポリガラクツロン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0036】
合成高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性の合成高分子が挙げられる。また、水溶性ではないが天然および合成ゴムラテックスに代表される有機高分子の水分散体も使うことができる。
【0037】
これら有機高分子の分子量は特に限定されず、物質の種類、所望の複合体の性質、複合体の用途等に応じて適宜設定される。
【0038】
有機高分子の反応系中における重量濃度は、0.1%―70%程度であるが、反応系の撹拌を可能とする粘度以内、過度の沈殿を生じない荷電状態以内などに調製される。
【0039】
金属塩
金属塩としては、金属イオンがリン酸イオン、炭酸イオン又は硫酸イオンと反応して水に不溶な塩を形成するものであればよく、例えば、カルシウム塩(塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム)、マグネシウム塩(塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム)、チタニウム(III)塩(塩化チタン、臭化チタン、ヨウ化チタン)など水溶性のアルカリ土族の金属塩が挙げられる。
【0040】
水性媒体
酵素反応に用いる媒体は、酵素が活性を発揮できるpH値を有し、かつ、原料の有機高分子が溶解する性質であれば特に限定されない。このような媒体としては、好ましくは、水、あるいは緩衝液が挙げられる。また、エタノールなどの単価アルコールやグリセロールなどの多価アルコールやトリエチルアミン、ジオキサンなどの水溶性の有機化合物を含む水性媒体でもよい。
【0041】
酵素
酵素としては、酵素基質を分解して、リン酸イオン、炭酸イオンや炭酸ガス、硫酸イオンを放出する能力のあるものであれば特に限定されない。
【0042】
リン酸イオンを放出する能力のある酵素としては、たとえば、リン酸エステル加水分解酵素などが挙げられる。リン酸エステル加水分解酵素としては、具体的には、酸性フォスファターゼやアルカリ性フォスファターゼが挙げられる。
【0043】
炭酸イオンや炭酸ガスを放出する能力のある酵素としては、例えば、ウレアーゼ(尿素加水分解酵素)、アミノ酸デカルボキシラーゼ、カルボニックアンハイドラーゼなどが挙げられる。
【0044】
硫酸イオンを放出する能力のある酵素としては、たとえば、スルフェターゼ、サルファ オキシゲナーゼなどが挙げられる。なお、サルファ オキシゲナーゼは基質がイオウと酸素および水であり、亜硫酸イオンを放出するが、これはそのまま金属イオンと反応して当該亜硫酸金属塩となり、これが当該硫酸金属塩に成る場合、および亜硫酸イオンが水と反応して硫酸イオンに変化してから金属イオンと反応して当該硫酸金属塩を生成する場合があるが、本発明では両経路による硫酸金属塩の形成を区別しない。
【0045】
製造原料系における酵素の濃度もしくは活性数(通常ユニット数で表現される)は、通常の酵素反応のように、複合化の処理温度、時間、基質量によって調節される。なお、酵素反応の助けで生成し、原料の有機高分子と複合化される無機物の複合体中における相対量は有機高分子の2%から75%程度であり、これは,表1に例示するように,原料の有機高分子に対して加えられる塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの水溶性無機塩、リン酸イオン源として加えられるリン酸エステル、硫酸イオン源として加えられる硫酸エステルや硫黄、および炭酸ガス源として加えられる尿素などの基質量から一義的に決まる値である。
【0046】
したがって、あらかじめ製造を目指す複合体中の無機物の量を決めれば、反応容器に仕込むべき有機高分子、酵素基質、水溶性無機塩等の量のおおよそが算出され実行される。
【0047】
酵素の基質
酵素の基質としては酵素によって分解されてリン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオンや炭酸ガスを放出できる水溶性化合物なら特に限定されない。
【0048】
たとえばリン酸イオン放出のためにはグリセロール 2―ホスフェート、グリセロール 1−ホスフェート、グルコース 6−ホスフェート、グルコース 1−ホスフェート等のリン酸エステルなどが用いられる。
【0049】
硫酸イオン放出のためにはp−ニトロカテコール サルフェート、フェノールサルフェート等の芳香族硫酸エステルなどが用いられる。サルファ オキシゲナーゼの基質はイオウであり水に不溶であるが、微粉末の水性媒体分散体として使用される。
【0050】
また、炭酸ガス、炭酸イオンの放出のためには次のような酵素−基質系が好ましく用いられる。ウレアーゼ−尿素、カルボニックアンハイドラーゼ−炭酸、オキサレート デカルボキシラーゼ−しゅう酸、アミノ酸デカルボキシラーゼ−アミノ酸などである。
【0051】
また、上記基質は、それらの中性型、酸型、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、チタン塩などであってもよい。
【0052】
なお、上記のリン酸エステルを基質として使用する場合、リン酸エステルが酸型あるいはナトリウム塩、カリウム塩やリチウム塩などで水溶性であるとき、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどに代表される無機イオンの水溶性塩(塩化カルシウムや塩化マグネシウムなど)を反応系に添加しておかねばならない(すなわち、これらの無機イオンがリン酸イオンと結合して溶解度積の小さな無機物としてタンパク質と複合化する)。その際、使用する塩化カルシウムなどの水溶性塩は1種のみである必要は無く、数種類の水溶性無機塩から成る混合物、例えば、塩化カルシウムと塩化マグネシウムの混合物であってもよい。
【0053】
複合体の製造法
本発明製造法の具体的操作の一例を次に示す。温度4−50度にて、適当な濃度に調整した有機高分子水溶液を撹拌しながら、金属塩含有溶液と基質含有液を加え、よく撹拌してから、酵素を適量含む緩衝液を添加する。その後、混合物を同温度で複合体の生成が起こるまで撹拌するが、通常は5分から10時間程度攪拌する。このようにして得られる有機高分子と無機物の複合体の構成比は反応時間に依存するが、酵素反応を完結させた時は計算量にほぼ一致する。
【0054】
なお、上記の例で示した複合体の製造法において当初の反応液が透明である場合とスラリー状態である場合があるが、本発明では両者の場合を同じとして扱っている。
【0055】
複合体
このような有機高分子と無機物の複合化を図1に示している。
【0056】
複合化の機構についてはよく解明できていないが、コラーゲンなど有機高分子に水溶性無機塩から由来するカルシウムイオンなどが分子的にイオン相互作用している状態で、酵素反応で生じるリン酸イオンや炭酸ガスもしくは炭酸イオンが近づいて反応し、溶解度積の小さなリン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどが有機高分子と相互作用しながら核化成長すると考えられる。
【0057】
本法により得られる有機高分子・無機物複合体は、機械的強度が大きく、かつ、原料の有機高分子が水溶性であるにもかかわらず耐水性を示し、水中でも膨潤が極めて抑制される。このような特徴は有機高分子と無機物の単純混合物では得られない。本発明の複合体の物性例を表2〜5に示している。
【0058】
また、生化学的特性としては、骨芽細胞等の細胞培養基質として有用であることが示唆された。なお、一般のタンパク質製品で見受けられるように、複合体から作られたフィルム等についても、機械的性質(強度、ヤング率など)は、大気の湿度や温度の影響を受けるが、グリセリンやソルビトールなどを可塑剤として加えることで改善することができた。
【0059】
本発明によって得られた有機高分子・無機物複合体は公知の製膜法,成型法により種々のシート、フィルム、スポンジ、ゲル、繊維、カプセル等に成形される。また、公知の製法に従い、物質表面のコート剤としても利用される。
【0060】
応用分野は医療材料、化粧品、食品、繊維材料、製紙分野などである。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本明細書において、Mはモル濃度を意味する。また、撹拌は定速撹拌モータを使用して行った。
【0062】
[実施例1]コラーゲン・リン酸カルシウム複合体の製造
温度15度にて0.25重量%のコラーゲン水溶液(120ml)を撹拌しながら、0.02M グリセロリン酸カルシウム水溶液(ICN社,製品番号102914,40 ml)を加え、よく撹拌してから、アルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号P7640)を10mg(約230ユニット)を含むトリス緩衝液(pH9,1 ml)を添加した。混合物を同温度で6時間撹拌した。このようにして得られるコラーゲンとリン酸カルシウムの複合体(水分散物)の構成比は反応時間に依存するが、酵素反応を完結させた時は計算量にほぼ一致した。本例では約4:1重量比であった。なお、複合体での無機物は、コラーゲナーゼでコラーゲン部を分解し、得られるリン酸カルシウムを遠心分離して秤量することで求めた。
【0063】
[実施例2]コラーゲン・炭酸カルシウム複合体の製造
温度15度にて0.25重量%のコラーゲン水溶液(200 ml)を撹拌しながら、1M 尿素水溶液(1 ml)と1 M塩化カルシウム水溶液(1 ml)を加えよく撹拌した。その後、ウレアーゼ(シグマ社,製品番号U−1500)を約300ユニット溶かしたトリス緩衝液(pH 7,1 ml)を添加した。混合物を同温度で5時間撹拌した。得られるコラーゲンと炭酸カルシウムの複合体(水分散物)の構成比は反応時間によるが、酵素反応を完結させた時は計算量にほぼ一致し、本例では約6:1重量比であった。なお、複合体中の無機物の量は、コラーゲナーゼでコラーゲン部を分解し、得られる炭酸カルシウムを遠心分離して秤量することで求めた。
【0064】
[実施例3]コラーゲン・ヒドロキシアパタイトフイルムの作成
実施例1のようにしてコラーゲン溶液(0.25重量%;120 ml)にアルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号 P 7640; 230ユニット)のpH8.9/0.1 Mトリス緩衝液を加えて4℃で30分間撹拌した。次いで、pH8.9/0.1Mトリス緩衝液に溶かした20 mM グリセロリン酸カルシウム溶液(40 ml)を徐々に加えて15℃で6時間撹拌した。pHが8〜9になっていない場合は、1M 水酸化ナトリウム水溶液で調整した。脱気後、得られた反応物はわずかに白濁状であり、これをポリエチレンテレフタレート(PET)板にキャストして室温(約20℃)で乾燥させた。乾燥したフィルムをメタノールに小時間浸してから乾燥して半透明のフィルムを得た。コラーゲン・ヒドロキシアパタイト複合体中の重量組成比(実験値)は81:19となった。
【0065】
同上の製造操作において,コラーゲン量、酵素量は同じくして、仕込む基質量のみを変化させたところ、いろいろなコラーゲン対カルシウムアパタイト比を持つ複合体(重量比(実験値)94:6, 86:14, 70:30)が得られた。仕込んだコラーゲン量と重量比(実験値)の関係は表1に示す。
【0066】
[実施例4]コラーゲン・ヒドロキシアパタイト複合フィルム中のヒドロキシアパタイトの定量
(1)実施例3のようにして作成したフィルムの重量を測り(片面面積,4cm2; 厚さ,約30ミクロン;重さ,約15mg)、エッペンドルフチューブに入れた。
(2)エッペンドルフチューブに0.02 mg/ml(44ユニット)の濃度のコラゲナーゼ(pH 7.6/トリス緩衝液の溶液)3 mlを加えて2時間以上36℃にて処理した。
(3)容器ごと15000rpm、10分間、15℃で遠心し、上澄みを除いた。沈殿物に水を加え撹拌後、遠心し、沈殿を洗った。この洗浄操作を数度繰り返した。
(4)沈殿物を減圧乾燥し、重量を測定し、使用したフィルム重量から当該無機物の割合を計算した。コラーゲンとリン酸カルシウムの組成をいろいろ変化させてみた場合の理論比と実験値を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例5]複合体中でのリン酸カルシウムの同定
(1)リン酸カルシウムに特異的に発色するフォン・コッサ染色法を実施例1で示す方法で得た複合体および実施例2で示す方法で得た無機物に適用したところ、赤褐色に染色されリン酸カルシウムの存在を示した。
(2)実施例4で得られた無機物、より具体的には実施例1の方法に従って作成したコラーゲン:ヒドロキシアパタイトの重量比(実験値)81:19の複合体から実施例4に従って分離した無機物について,赤外スペクトル、元素分析(ESCA)、X線回折スペクトル(XRD)に関する測定を行い、比較として市販品のヒドロキシアパタイト結晶(シグマ社;製品コードH−0252)を用いて、データを比較した。その結果、当該無機物は結晶性がやや低い状態のヒドロキシアパタイトと同定された。代表的なスペクトルを図2−4に示す。
【0069】
図2は赤外スペクトル(KBr法)の測定結果を示す図面であり、 (a)は市販品のヒドロキシアパタイト結晶、 (b)は実施例4で分離した無機物、 (c)は実施例1に記載の方法でコラーゲン無しの条件で生成したリン酸カルシウムに関するものである。スペクトル(b)はスペクトル(a)に似ていて、ヒドロキシアパタイト特有の565,605,1030cm−1にピークを示している。しかし、スペクトル(b)はブロードであり、結晶性が(a)に比べ低いことがわかる。コラーゲンが存在しないと、スペクトル(c)に示されるように、ヒドロキシアパタイトではない他のリン酸カルシウムが生成する。
【0070】
図3は元素分析の測定結果を示す図面であり、 (a)はコラーゲンフィルム、 (b)は実施例1にしたがって製造した複合体から分離した無機物に関するものである。スペクトル(a)よりコラーゲンはO,N,C元素のみであることがわかるが、スペクトル(b)にはヒドロキシアパタイトによるO,Ca,Pのピークがある。CとNはわずかである。
【0071】
図4は、X線回折スペクトル(XRD)の測定結果を示す図面であり、 (a)は 実施例1にしたがって製造した複合体から分離した無機物、(b)は 市販のヒドロキシアパタイト結晶に関するものである。この場合もスペクトル(a)はスペクトル(b)に似ているがブロードであり、結晶性は市販品のヒドロキシアパタイト結晶に比べ低いことがわかる。
【0072】
[実施例6]物性(引張破断強度,伸度,ヤング率,膨潤度)の測定
実施例3で得られた種々の重量比のフィルムを試験片(1cm x 5cm)とし、デジタル荷重計(今田製作所、SV−55型)に装着し、引張速度20mm/min、相対湿度65±5%、温度25度にて応力・歪曲線を求め、引張破断強度,伸度,ヤング率を得た。結果を表2に示す。なお、表2には、比較のために、コラーゲン:ヒドロキシアパタイトの重量比が100:0のコラーゲンフィルムの物性も示した。
【0073】
【表2】
【0074】
また、試験片を常温水に1時間浸し、試料片のサイズの変化と重量から元の値に対する100分率を計算し、膨潤度を求めた。コラーゲン・ヒドロキシアパタイト(重量比(実験値)=81:19)複合体から作成したフィルムの膨潤度を表3に示す。表3には、比較のために、化学的(非酵素的)方法により得られた複合体(コラーゲン・ヒドロキシアパタイトの重量比(実験値)=80:20)の物性及びコラーゲンフィルムの物性も示した。化学的方法により得られた複合体は、有機高分子溶液にCaCl2溶液とNaH2PO4溶液を加える方法により得られた複合体である。またコラーゲンフィルムは,市販のコラーゲン溶液(0.3重量%;高研社;セルゲン;製品コードIP−C)を水で希釈してからキャスト(溶液を水平な容器枠に展開してそのまま乾燥すること)した後、メタノールに漬けて脱水処理したものである。
【0075】
【表3】
【0076】
[実施例7] ポリアクリル酸・ヒドロキシアパタイト複合体の作成
市販のポリアクリル酸ナトリウム塩の水溶液(25重量%;50 ml)にアルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号 P 7640; 1000ユニット)のpH8.9/0.1 Mトリス緩衝液(5ml)を添加してよく攪拌した。ついで塩化カルシウム水溶液(5重量%;80ml)とpH8.9/0.1Mトリス緩衝液に溶かした1M グリセロリン酸二ナトリウム溶液(45 ml)と同時に少しずつ2時間かけて滴下した。液の温度は25℃,pHは8−9に調節し反応液を5時間撹拌続けた(合計約7時間)。脱気後、得られた反応物をポリエチレンテレフタレート(PET)板にキャストして約50℃で乾燥した。フィルムをメタノールに小時間浸して、そのまま乾燥して半透明のフィルムを作成した。
【0077】
[実施例8] ケラチン・ヒドロキシアパタイト複合体の製造
既知の方法(特許第2946491号;K.Yamauchi, et al., J. Biomed. Mat. Res.,31; 439(1966))で調製したケラチン水溶液(2.5重量%;100 ml)にアルカリ性フォスファターゼ(シグマ社,製品番号 P 7640; 200ユニット)のpH8.9/0.1 Mトリス緩衝液(5ml)を添加した。ついでpH8.9/0.1Mトリス緩衝液に溶かした1M グリセロリン酸二ナトリウム溶液(2.1 ml)と塩化カルシウム水溶液(5重量%;7.7 ml)を同時に徐々に添加後、さらに反応液を5時間撹拌した。温度は30℃に保ち、pHが8〜9になっていない場合は1M 水酸化ナトリウム水溶液と1M塩酸で微調整した。脱気後、得られた反応物をポリエチレンテレフタレート(PET)板にキャストして約50℃で乾燥した。フィルムをメタノールに小時間浸して、そのまま乾燥して半透明のフィルムを作成した。
【0078】
[実施例9] ゼラチン・ヒドロキシアパタイト複合体の製造
ゼラチン水溶液(15重量%;30 ml)に酸性フォスファターゼ(シグマ社p−3627; 10 U)の水溶液(3 ml) を徐々に添加した。ついで、塩化カルシウム二水和物 (0.25 g)の水溶液(10 ml)を加えた。 約30分後、グルコース 6−ホスフェート二ナトリウム塩l (0.53 g) の水溶液 (10 ml) を少しずつ加えた。35℃で5時間攪拌続けた。この間、溶液のpHは約5.3−5.5に調製した。 脱気後、PET板上で40℃で乾燥し、ついでメタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。表4にそのようにして作製したフィルムの物性の例を示す。膨潤度は実施例6に記載の方法と同様の方法で測定した。表4には、比較のために、化学的(非酵素的)方法により得られた複合体(ゼラチン・ヒドロキシアパタイトの重量比(実験値)=95:5)の物性及びゼラチンフィルムの物性も示した。化学的方法により得られた複合体は、有機高分子溶液にCaCl2溶液とNaH2PO4溶液を加える方法により得られた複合体である。また、ゼラチンフィルムは,市販のゼラチン(シグマ社、製品コードG−2500)を水に溶かしてからその20重量%溶液をキャスト(溶液を水平な容器枠に展開してそのまま乾燥すること)した後、メタノールに漬けて脱水処理して作製したものである。
【0079】
【表4】
【0080】
[実施例10] ゼラチン・ヒドロキシアパタイト複合体の製造
実施例8で製造された液にゼラチンに対して5wt%に相当する量のグリセリンを加え攪拌した。この混合液をPET板上で60℃で乾燥したところ柔軟なフィルムを得た。
【0081】
[実施例11] コラーゲン・炭酸カルシウム複合体の製造
コラーゲン水溶液(0.25 wt%;100ml)に尿素水溶液(10重量%,0.6 ml),塩化カルシウム(10重量%,1.1 ml)を加えて20℃で1時間攪拌した。溶液のPHを8に調製してから、ウレアーゼ(300ユニット)を加えた。5時間後、溶液を脱気し、PET板上で室温で乾燥し、ついでメタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。
【0082】
[実施例12] アルギン酸・炭酸カルシウム複合体の製造
アルギン酸水溶液(1.5 重量%;100 ml)にウレアーゼ(1000ユニット)を加えた。ついで、尿素(30 mM)と塩化カルシウム(30 mM)を徐々に加えてpH 7、20℃で1時間攪拌した(括弧内はできあがった溶液中での最終濃度である)。約10時間後、溶液を脱気し、PET板上で室温で乾燥し、ついでメタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。
【0083】
[実施例13]ポリアクリル酸・炭酸カルシウム複合体の製造
ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(15 重量%; 135 ml)にウレアーゼ(300ユニット)を加えた。尿素(0.20 g/水10 ml)と塩化カルシウム(0.21 g/水10 ml)を同時に少しずつ加えて30℃で6時間攪拌した。その後、溶液を脱気し、PET板上で室温で乾燥し、ついでエタノールに1時間浸し、再び乾燥することによって、透明度の高いフィルムを得た。
【0084】
表5にそのようにして作製したフィルムの物性の例を示す。最大引張破断強度、膨潤度は実施例6に記載の方法と同様の方法で測定した。
【0085】
【表5】
【0086】
[実施例14]コラーゲン・ヒロドキシアパタイト複合フィルムを細胞培養基質とする骨芽細胞の培養
細胞培養用ディッシュ(3.5cm径)に0.1%コラーゲン・ヒドロキシアパタイト(8:2 重量%)混合液(2 ml)を加え、常温にて乾燥した。乾燥後70%工タノールにより滅菌し、さらにPBS(−)で洗浄し細胞培養に供した。10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン、ストレプトマイシン添加MEM‐α培地に懸濁した前骨芽細胞株MC3T3−Eを1.0x104細胞/cm2となるようディッシュに播種した。コラーゲン・ヒドロキシアパタイトコートディッシュでの細胞の増殖と骨芽細胞への分化マーカーであるアルカリ性フォスファターゼ活性を市販細胞培養用ディッシュと比較した。アルカリ性フォスフェターゼ活性は細胞を溶解後、蛍光基質である5−methyl umbelliferyl phosphateを用い定量した。その結果、両ディッシュ間で細胞の接着と増殖において差は見られず、培養後3日目でほぼ単層を形成した。しかし,培養7日目の細胞のアルカリ性フォスフェターゼ活性はコラーゲン・ヒドロキシアパタイトコートディッシュで有意に高く骨芽細胞への分化が促進されていることが示された。
【0087】
【発明の効果】
本発明は酵素的に有機高分子と無機物の複合体を製造することに特徴がある。本発明の効果は本方法によって得られた複合体の成形物、例えばフィルム、が耐水性を有し、またその機械的強度も高いことによく示されている。その特性を表2―5に例示している。それに対して非酵素的製造法で得られた複合体、例えば、有機高分子と無機物の機械的混合物から製造された複合体, あるいは有機高分子溶液にて化学反応(例えば塩化カルシウムとリン酸ナトリウムを反応させる方法)で製造した有機高分子と無機物の複合体では、本発明によって得られた複合体と同じ組成であっても、常温水中での膨潤度は大きく、そのままの形状で30−110%に膨潤するかフラグメントに分解してしまう。このように本発明の酵素的製法により得られた複合体は、これまでにない優れた特性を有している。
【0088】
また、図2−4のスペクトルは本発明により生成したリン酸カルシウムが低結晶性のヒドロキシアパタイトであることを証明しているが、この例のように、酵素法で作られた複合体中の無機物は魚鱗や貝殻など天然複合体での無機物の組成(ヒドロキシアパタイト、バテライト・カルサイトなど)に似ていることも大きな特徴である。このような効果は非酵素的製造法では達成がむずかしいのが通常である。
【0089】
本発明によって得られる有機高分子・無機物複合体は、このように優れた性質を有していることから、種々のシート、フィルム、スポンジ、ゲル、繊維、カプセル等の成形体として、また、物質表面のコート剤として、有用に利用することができ、医療材料、化粧品、食品、繊維材料、製紙分野等の種々の分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、有機高分子と金属イオンの存在下で、酵素が基質に作用してリン酸イオンなどを生成し、有機高分子と無機物からなる複合体を形成する工程を示した模式図である。
【図2】図2は次の物質のFTIR スペクトル( KBr法)である。 (a) 市販のhydroxyapatite crystals, (b) 実施例4で分離した無機物、 (c) 実施例1でコラーゲン無しの条件で生成したリン酸カルシウム。
【図3】図3は次の物質のXPS スペクトルである。 (a)コラーゲンフィルム、 (b) 実施例1にしたがって製造した複合体におけるヒドロキシアパタイト。
【図4】図4は次の物質のXRD スペクトルである。 (a) 実施例1にしたがって製造した複合体におけるヒドロキシアパタイト、 (b) 市販のhydroxyapatite crystals。
Claims (5)
- 有機高分子、金属塩および水性媒体からなる混合物中にて、リン酸イオン、炭酸イオン、炭酸ガス又は硫酸イオンのいずれかを放出する能力のある酵素をその酵素の基質と作用させることを特徴とする有機高分子と無機物からなる複合体の酵素的製造法。
- 酵素がリン酸エステル加水分解酵素であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子とリン酸塩からなる複合体である、請求項1に記載の複合体の酵素的製造法。
- 酵素が尿素加水分解酵素、カルボニックアンハイドラーゼ及びアミノ酸デカルボキシラーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子と炭酸塩からなる複合体である、請求項1に記載の複合体の酵素的製造法。
- 酵素が硫酸エステル加水分解酵素であって、有機高分子と無機物からなる複合体が有機高分子と硫酸塩からなる複合体である、請求項1に記載の複合体の酵素的製造法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の酵素的製造法によって得られる有機高分子と無機物からなる複合体。
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JP2003182197A JP2005015386A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 有機高分子・無機物複合体及びその酵素的製造法 |
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JP2011157700A (ja) * | 2010-01-29 | 2011-08-18 | Ehime Univ | 地盤改良方法 |
-
2003
- 2003-06-26 JP JP2003182197A patent/JP2005015386A/ja active Pending
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