JP2005013048A - メタン資化菌を用いたメタノールの製造方法及び装置 - Google Patents

メタン資化菌を用いたメタノールの製造方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】メタン資化菌を用いて効率的にメタノールを製造する方法を提供する。
【解決手段】メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体をリアクター内に充填した状態で、リアクター内にメタンを含む原料ガスを供給して、メタン資化菌によりメタンからメタノールを製造するメタノールの製造方法及びこの方法に使用する装置。担体の含水率は50w/w%を超え70w/w%以下、リアクター内の空隙率は5〜20v/v%であることが好ましい。担体としては織布を好適に使用できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタン資化菌を用いてメタノールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、メタンからのメタノール又はジメチルエーテルなどの液体燃料製造は、工業的にはCO及びHガスを製造した後、高温・高圧下で多段階触媒反応プロセスを経ることにより行われている。しかし、この方法は、高温・高圧を利用するための大規模な設備が必要であるために、中小ガス田には採用し難い。また、高温・高圧を維持するための高エネルギーが必要であるという難点もある。
【0003】
そこで、温和な条件下でのメタノール合成が検討されている。非特許文献1には、比較的熱安定性のよい金属錯体系触媒によるメタンからメタノールの製造が報告されている。このような最新の報告においてもメタンの酸化によるメタノールの製造は百数十℃の温度を要する。
【0004】
一方、メタン資化菌が保有するメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)はこの反応を常温・常圧下で行うことができる。非特許文献2には、MMOを用いてメタンからメタノールを合成する方法が詳細に記載されている。また、特許文献1は、このような生体機能を利用したアルカノールの製造方法を開示している。同公報においては生体機能を利用したアルカノールの製法として微生物学的方法(発酵法)及び酵素学的方法が提案されている。酵素法は、例えばMethylococcus capusulatus BathやMethylosinus tricosporium OB3b等のメタン資化菌からMMOを分離し、それを触媒としてメタノールを製造する方法であり、MMOを酵素触媒とした触媒サイクルによりメタノールの製造を行うことができる。しかし、MMOは完全に単離する方法が複雑であり、また単離後の活性低下が大きく、不安定な酵素である。また特許文献2(米国Amoco社)には単離MMOを用いたメタノール生産方法が記載されている。
【0005】
しかし、これらの研究では微生物として活性の低い常温で生育するOB3b株由来のMMOを使用しており、そのメタノール生成速度は実用レベルに達していない。また、現時点での技術レベルでは、単離されたMMOは著しく不安定で、バアイオリアクターへの応用例は殆どない。従って、メタン資化菌内のMMOは、単離されたMMOに較べてはるかに安定であるため、菌体をそのまま触媒として使用できれば、MMOの長期に亘る活性を利用でき、実用的である。
【0006】
しかし、メタンから生成されたメタノールは、菌体内に存在するメタノールデヒドロゲナーゼ(MDH)により酸化されてギ酸になり、最終的には二酸化炭素にまで酸化されてしまう。特許文献3にはメタン資化菌を用いたn−アルカンからn−アルカノールの合成において、MDHのみ選択的に阻害する方法が開示されている。通常菌体内のMDHが活性を持つためには補酵素であるピロロキノリンキノン(PQQ)が必要である。そこで、MDHの酸化作用によるメタノールの収率低下を抑制するため、PQQの阻害剤であるシクロプロパノールで菌を処理することにより、間接的にMDH活性を阻害し、メタノールの収率を向上させる方法が提案されている。
【0007】
しかし、この方法は、シクロプロパノールが高価であること、菌体の複雑な処理を要することなどの難点を有する。
【0008】
非特許文献3には、これらの問題を解決するため、メタノールの沸点以上で生育する好熱性メタン資化菌を単離し、合成されたメタノールは随時蒸発により系外へ排出されるような気相バイオリアクターが提案されている。また特許文献4には、保水性の担体にメタン資化菌を担持させた状態で気相反応によりメタノールを生産する方法が記載されている。
【0009】
しかし、これらの文献には、具体的な気相バイオリアクターの記載はない。
【0010】
【特許文献1】
USP5,190,870
【0011】
【特許文献2】
USP5,192,672
【0012】
【特許文献3】
特開平3−43090
【0013】
【特許文献4】
特開2002−335984
【0014】
【非特許文献1】
Science Vol.280,24April(1998),560−563
【0015】
【非特許文献2】
J.Biol.Chem.,267(17)10023−10033,1989
【0016】
【非特許文献3】
Bio.Indstry,19,51−56,2002
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、メタン資化菌を用いて効率的にメタノールを製造する方法を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。
▲1▼ リアクター内に充填した吸水性及び通気性を有する担体にメタン資化菌及び培養液を保持させた状態で、リアクター内にメタンを含む原料ガスを供給し、気相反応によりメタン資化菌にメタンからメタノールを製造させることにより、極めて効率良くメタノールを製造することができる。
▲2▼ 担体の含水率を50w/w%を超え70w/w%以下程度となるようにすることにより、メタン資化菌とメタンとの接触効率がよいとともに、メタン資化菌のメタン酸化活性を維持でき、その結果高いメタノール製造速度が得られる。
▲3▼ 担体を、運転時のリアクター内の空隙率が5〜20v/v%程度となるように充填することにより、メタン資化菌を含む培養液と原料ガスとの接触面積が大きくなり、一層高いメタノール製造速度が得られる。
▲4▼ 吸水性及び通気性を有する担体として、直径0.01〜1mm程度の糸からなる織布を用いることにより、極めて効率よくメタノールを製造することができる。
【0019】
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、下記のメタノールの製造方法及び装置を提供するものである。
【0020】
項1. メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体をリアクター内に充填した状態で、リアクター内にメタンを含む原料ガスを供給し、メタン資化菌によりメタンからメタノールを製造するメタノールの製造方法。
【0021】
項2. 担体が、織布、不織布、繊維、ゼラチン、炭素材料、セラミック材料、ピートモス、多孔性セルロース、水苔、海綿、多孔性ポリエチレン、ウレタンフォームからなる群から選ばれるものである項1に記載の方法。
【0022】
項3. 原料ガス中のメタン濃度が、1〜50v/v%である項1又は2に記載の方法。
【0023】
項4. 原料ガスが、メタンと空気との混合ガス、メタンと酸素富化空気との混合ガス、又は、メタンと酸素との混合ガスを含むガスである項1、2又は3に記載の方法。
【0024】
項5. 原料ガスを10〜100ml/cm/分間の流量でリアクター内に供給する項1〜4のいずれかに記載の方法。
【0025】
項6. 原料ガスが1〜10v/v%のシクロプロパンを含む項1〜5のいずれかに記載の方法。
【0026】
項7. 担体の含水率が50w/w%を超え70w/w%以下である項1〜6のいずれかに記載の方法。
【0027】
項8. メタン資化菌による反応中に、リアクター内に水を補給する項1〜7のいずれかに記載の方法。
【0028】
項9. 原料ガスと水とを気液接触させた状態で、リアクター内に水を補給する項8に記載の方法。
【0029】
項10. 原料ガスとは別に、リアクター内に水を補給する項8に記載の方法。
【0030】
項11. リアクター容量(リットル)当たりの水の補給量を1〜5ml/L/分間とする項8、9又は10に記載の方法。
【0031】
項12. 担体が直径0.01〜1mmの糸からなる織布である項1〜11のいずれかに記載の方法。
【0032】
項13. 織布がガーゼである項12に記載の方法。
【0033】
項14. リアクター内における織布の充填率が、乾燥重量で1〜5w/v%である項12又は13に記載の方法。
【0034】
項15. 担体を、リアクター内に空隙率5〜20v/v%となるように充填する項1〜14のいずれかに記載の方法。
【0035】
項16. さらに、担体に微生物保持剤を保持させる項1〜15のいずれかに記載の方法。
【0036】
項17. メタン資化菌による反応中に、リアクター内に培養液を供給する項1〜16のいずれかに記載の方法。
【0037】
項18. リアクターが、固定層式気相バイオリアクター又は流動層式気相バイオリアクターである項1〜17のいずれかに記載の方法。
【0038】
項19. メタン資化菌が、メチロカルダム属T−025株(Methylocaldum sp.T−025;産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18645として寄託済み)である項1〜18のいずれかに記載の方法。
【0039】
項20. メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体を充填したリアクターと、リアクター内にメタノールを含む原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、リアクターから流出するガスからメタノールを回収するメタノール回収装置とを備えるメタノール製造装置。
【0040】
項21. 担体が、織布、不織布、繊維、ゼラチン、炭素材料、セラミック材料、ピートモス、多孔性セルロース、水苔、海綿、多孔性ポリエチレン、ウレタンフォームからなる群より選ばれるものである項20に記載の装置。
【0041】
項22. 原料ガス供給装置が、濃度1〜50v/v%のメタンを含む原料ガスを供給するものである項20又は21に記載の装置。
【0042】
項23. 原料ガス供給装置が、メタンと空気との混合ガス、メタンと酸素富化空気との混合ガス、又は、メタンと酸素との混合ガスを含むガスを供給するものである項20、21又は22に記載の装置。
【0043】
項24. 原料ガス供給装置が、リアクター内に10〜100ml/cm/分間の流量で原料ガスを供給するものである項20〜23のいずれかに記載の装置。
【0044】
項25. 原料ガス供給装置が、1〜10v/v%のシクロプロパンを含む原料ガスをリアクター内に供給するものである項20〜24のいずれかに記載の装置。
【0045】
項26. 担体の含水率が50w/w%を超え70w/w%以下である項20〜25のいずれかに記載の装置。
【0046】
項27. リアクター内に水を補給する水補給装置を備える項20〜26のいずれかに記載の装置。
【0047】
項28. 水補給装置が、原料ガス供給装置からリアクター内に供給される原料ガスと水とを気液接触させた状態で、リアクター内に水を補給するものである項27に記載の装置。
【0048】
項29. 水補給装置が、リアクター容量(リットル)当たりの水補給量が1〜5ml/L/分間になるようにリアクター内に水を補給するものである項27又は28に記載の装置。
【0049】
項30. 担体が直径0.01〜1mmの糸からなる織布である項20〜29のいずれかに記載の装置。
【0050】
項31. 織布がガーゼである項30に記載の装置。
【0051】
項32. リアクター内における織布の充填率が、乾燥重量で1〜5w/v%である項30又は31に記載の装置。
【0052】
項33. 担体がリアクター内に空隙率5〜20v/v%となるように充填されている項20〜32のいずれかに記載の装置。
【0053】
項34. 担体が微生物保持剤を保持している項20〜33のいずれかに記載の装置。
【0054】
項35. リアクター内に培養液を供給する培養液供給装置を備える項20〜34のいずれかに記載の装置。
【0055】
項36. リアクターが、固定層式気相バイオリアクター又は流動層式気相バイオリアクターである項20〜35のいずれかに記載の装置。
【0056】
項37. メタン資化菌が、メチロカルダム属T−025株(Methylocaldum sp.T−025;産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18645として寄託済み)である項20〜36のいずれかに記載の装置。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I) メタノールの製造方法
基本的構成
本発明のメタノールの製造方法は、メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体をリアクター内に充填した状態で、リアクター内にメタンを含む原料ガスを供給し、メタン資化菌によりメタンからメタノールを製造する方法である。
担体
担体は、吸水性及び通気性を有するものであればよく、特に限定されない。本発明方法では、担体が通気性を有することにより、メタン資化菌とメタンとの接触効率が極めて良好であり、その結果気相反応により効率よくメタンからメタノールを製造することができる。
【0058】
このような担体として、例えば織布、不織布、繊維、ゼラチン、炭素材料、セラミック材料、ピートモス、多孔性セルロース、水苔、海綿、多孔性ポリエチレン、ウレタンフォーム等が挙げられる。特に、繊維、織布、ゼラチン、セラミック材料、多孔性セルロース、水苔、多孔性ポリエチレン、ウレタンフォーム等が好ましく;吸水性及び通気性に優れる点で、繊維、織布がより好ましく;織布がさらにより好ましい。
<ゼラチン、炭素材料、セラミック材料>
ゼラチンは、粒状又は多孔性の形状のゲル状のものを使用できる。炭素材料の種類はそれには限定されないが、例えば粒状ないしは粉末状の活性炭又はグラファイト、炭素繊維等を例示できる。セラミック材料としては、それには限定されないが、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、チタニア等が挙げられ、これらは粒状、粉末状又は繊維状のものを使用できる。
<織布、不織布、繊維>
繊維の材質は特に限定されず、綿、毛、絹のような天然繊維;レーヨン、キュプラのような再生繊維;アセテートのような半合成繊維;ポリエステル、ナイロン、アクリルのような合成繊維;ガラス、炭素、セラミックのような無機繊維等の公知の繊維を制限なく使用できる。メタン資化菌との親和性が高くこれを保持し易い点で天然繊維が好ましく、綿繊維がより好ましい。繊維は、長繊維又は短繊維のいずれであってもよい。
【0059】
また、織布及び不織布を構成する繊維についても上記と同様であり、例えば上記のような公知の長繊維又は短繊維からなるものを使用でき、特に天然繊維からなるもの、さらに特に綿繊維からなるものを好ましく使用できる。
【0060】
織布の組織は特に限定されず、平織り、あや織り、朱子織り等の公知の組織を採用できる。特に、原料メタンと接触できる表面積が大きく、かつメタン資化菌を保持し易い点で、平織りが好ましい。
【0061】
織布を構成する糸は、紡績糸又はフィラメント糸のいずれであってもよいが、吸水性の点で紡績糸の方が好ましい。織布を構成する糸の直径は、特に0.01〜1mm程度、さらに特に0.03〜0.5mm程度が好ましい。上記範囲であれば、メタン資化菌の菌液と原料ガスとの接触面積が十分に大きくなり、効率よくメタノールを製造することができる。
【0062】
本発明では、織布として特にガーゼを用いることが好ましい。本発明におけるガーゼは、日本薬局方において規定されているガーゼであり、即ち、40番手の純綿糸を用いた平織りの原布を脱脂し、漂白したものである。また、1cm当たりの条数は通常経8〜12±1本程度、横8〜12±1本程度である。
【0063】
担体として織布(特にガーゼ)を用いる場合は、リアクター内の織布の充填率は、布の乾燥重量で1〜5w/v%程度、特に2〜4w/v%程度とすることが好ましい。上記範囲であれば、十分な通気性を確保できるとともに、十分な菌の容積効率が得られる。
【0064】
不織布は、どのような製法で作製されたものであってもよいが、通気性を確保するために接着剤を使用しない方法で作製されたものであることが好ましい。
<担体の充填状態>
本発明方法では、担体の種類にもよるが、固定層式気相バイオリアクター又は流動層式気相バイオリアクターのいずれのリアクターも採用できる。特に、通気性の点で、固定層式が好ましい。
【0065】
固定層式にするためには、リアクター内への担体の充填の程度は、リアクター内の空隙率が特に5〜20v/v%程度、さらに特に7〜15v/v%程度となるようにすることが好ましい。上記範囲であれば、十分な通気性を確保できるとともに、十分な菌の容積効率が得られる。本発明において、リアクター内の空隙率は、担体に培養液及びメタン資化菌を保持させた状態での空隙率である。
メタン資化菌
メタン資化菌の種類は特に限定されず、公知のものを使用できる。公知のメタン資化菌としては、例えばメチロコッカス(Methylococcus)属、メチロモナス(Methylomonas)属、メチロバクター(Methylobacter)属、メチロシスティス(Methylocystis)属、メチロサイナス(Methylosinus)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、メチロカルダム(Methylocaldum)属、メチロサーマス(Methylothermus)属等が挙げられる。
【0066】
メタノールの沸点(64.1℃)付近又はそれ以上の温度で反応させる場合は、メタノールが気相中に生産されるため、その後のメタノールの分離回収が容易である。従って、メタノールの沸点付近又はそれ以上の温度下で生存できる好熱性メタン資化菌を用いることが好ましい。また、好熱性菌はメタン酸化活性が高くかつ安定である点でも好ましい。具体的には、55℃以上の温度下で生存できるメチロカルダム属、メチロサーマス属等の好熱性メタン資化菌を用いることが好ましい。中でもメチルカルダム属が好ましい。特に好ましい好熱性メタン資化菌として、メチロカルダム属T−025株(Methylocaldum sp.T−025;産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18645として寄託済み)が挙げられる。また、公知のメタン資化菌を突然変異誘発剤で処理することにより、55℃以上の温度下で生存できるようになった変異株を使用することも好ましい。
【0067】
メタン資化菌の使用量は、培養条件によっても異なるが、リアクターの容量(リットル)当たり通常0.01〜15(g−乾燥重量)程度、特に0.02〜10(g−乾燥重量)程度とすることが好ましい。上記範囲であれば、メタン酸化活性及び容積効率の双方が実用上十分なものとなる。
培養液
メタン資化菌を生存させるための培養液は、メタン資化菌用の公知の培養液を使用すればよい。このような培養液として例えば後述する表1に組成を示すような培養液が挙げられる。
【0068】
培養液の使用量は、担体中の培養液の含水率、すなわち担体及び培養液の全量に対する水分含有率が50w/w%を超え70w/w以下程度、特に50w/w%を超え66w/w以下程度になるような量にすることが好ましい。上記範囲であれば、吸水性及び通気性を有する担体を使用する本発明方法において、菌液と原料ガスとの接触面積が十分になるとともに、メタン資化菌のメタン酸化活性を十分に維持することができ、その結果高いメタノール製造速度が得られる。
微生物保持剤
また、担体には、培養液及びメタン資化菌とともに微生物保持剤を保持させることが好ましい。微生物保持剤は、担体及びメタン資化菌の双方と親和性がよいものであればよく特に限定されないが、例えば寒天又は炭素粒子等が挙げられる。
【0069】
寒天は、培養液中に含ませて使用すればよく、これにより担体表面に又は細い担体では担体に沿ってメタン資化菌を保持した寒天培地が形成された状態となり、リアクター内の培地の流通によるメタン資化菌の流出が抑制される。寒天の使用量は、終濃度が通常0.2〜1w/v%程度になるようにすればよい。
【0070】
炭素粒子は菌液に添加して又は別途懸濁液の状態で担体に含浸させることにより担体に保持させればよい。炭素粒子の使用量は、担体の表面積(m)当たり通常1〜20g程度とすればよい。
原料ガス
原料ガスとしてはメタンを含むガスを用いる。メタン資化菌は偏性好気性菌であるため、原料ガス中には酸素を含ませればよい。また原料ガス中には、メタン資化菌の生存を妨げない範囲で窒素、二酸化炭素などが含まれていてもよい。具体的には、原料ガスとしては、メタンと空気との混合ガス、メタンと酸素富化空気との混合ガス、メタンと酸素との混合ガス等を用いることができる。
【0071】
原料ガス中に含まれるメタンの比率は、通常1〜50v/v%程度、特に5〜30v/v%程度とすることが好ましい。メタンの比率が高すぎると酸素分圧が低くなりすぎてメタン資化菌のメタン酸化活性が低くなり、メタンの比率が低すぎると基質濃度が低くなりすぎて基質律速になり、いずれにしてもメタノール製造速度が低下するが、上記範囲であればこのような問題は生じない。
【0072】
本発明方法は、バッチ式又は連続式のいずれの方式で行ってもよいが、メタン資化菌はメタノールにより被毒されるためメタノールをリアクター内から速やかに除去できる連続式で行うことが好ましい。また生産効率の点からも連続式が好ましい。メタノールによるメタン資化菌の被毒を抑制し、メタノール生産能力を維持するために、原料ガス流量は、通常10ml/cm/分間以上、特に20ml/cm/分間以上となるようにすることが好ましい。原料ガス流量の上限は通常100ml/cm/分間程度である。これを超えると未反応メタン量が多くなるため、原料ガスを循環させて使用することが好ましい。
【0073】
生成したメタノールがメタン資化菌が有する酵素メタノールデヒドロゲナーゼにより酸化されてホルムアルデヒドになるのを防止するために、原料ガス中にシクロプロパンを含ませることが好ましい。メタンからメタノールへの酸化を触媒するメタンモノオキシゲナーゼは、基質特異性が比較的低いため、原料ガス中のシクロプロパンを酸化してシクロプロパノールを生成する。このシクロプロパノールはメタノールデヒドロゲナーゼの作用を阻害してメタノールを効率的に生産できるようになる。シクロプロパンの使用量は、原料ガス全量に対して通常1〜10v/v%程度、特に2〜5v/v%程度とすることが好ましい。
リアクター
リアクターの形状、サイズは特に限定されないが、リアクター内におけるガス流の均一性を確保するために、リアクターのガス流方向の長さに対してリアクターの径(ガス流と垂直な面における径)はなるべく小さいことが好ましい。
操作
本発明方法は、それには限定されないが、連続式で行う場合は、例えば次の操作により実施できる。好ましくは増殖期のメタン資化菌を培養液に懸濁し、この懸濁液を菌液の状態で担体にしみ込ませた後、圧搾により担体の含水率を調整し、これをリアクター内に充填すればよい。又は、担体をリアクター内に充填した後に菌液を担体に吸収させてもよい。
【0074】
微生物保持剤として寒天を使用する場合は、少量の加温した培養液に寒天を添加してこれを溶解させ、溶解寒天液をメタン資化菌の培養液に添加して寒天入り菌液を調製した後、寒天入り菌液を担体に含浸させ、圧搾により担体の含水率を調整した後、これをリアクター内に充填すればよい。また、微生物保持剤として炭素粒子を使用する場合は、菌液を担体に吸収させる前、同時又はその後に、炭素粒子の懸濁液を担体に吸収させればよい。
【0075】
このリアクターをメタン資化菌の生存可能温度、好ましくは生存至適温度に保ちつつ、リアクター内に原料ガスを供給する。リアクターの運転温度は通常40〜60℃程度にすればよい。高い耐熱性を有する好熱性メタン資化菌を用いて気相中にメタノールを回収する場合は、55℃以上、特に64℃以上の温度でリアクターを運転することが好ましい。
【0076】
さらにリアクターから流出するガスを氷冷したコールドトラップに導き、メタノールを含む液化ガスを回収すればよい。またコールドトラップから排出されるガス中には未反応のメタンが含まれている場合があるため、これを再度原料ガスとして循環させて用いることもできる。この場合は、コールドトラップにトラップされなかったメタノールによりメタン資化菌が被毒されるのを回避するため、排出ガスを活性炭等を通して原料ガス中に戻すことが望ましい。
【0077】
なお、培養液中にメタノールが生産される場合は、反応後の培養液から蒸留などによりメタノールを回収すればよい。
【0078】
また、原料ガスの供給により担体中の水分が蒸発して含水率が低下し過ぎるのを回避するため、反応中にリアクター内に水を補給することが好ましい。水を補給することにより、担体の含水率が好ましくは50w/w%を超え70w/w%以下となるように調整すればよい。水は液体又は水蒸気のいずれの形で補給してもよい。また、水は原料ガスとともに気液接触させた状態で補給してもよく、又は、別々に補給してもよい。
【0079】
また原料ガスの流通と共に、リアクター内に新しい培養液を0.01〜2ml/分間程度、特に0.1〜1ml程度の流量で流通させることが好ましい。上記範囲であればメタン資化菌のメタン酸化活性を十分に保つことができる程度にリアクター内の培養液成分を置換することができるとともに、菌が流出してしまうことがない。
【0080】
この程度の流量で培養液を流通させることより、好ましくは、担体の含水率を50w/w%を超え70w/w%程度以下に保てばよい。また、培養液の流通により担体の含水率を維持する場合は、リアクター内への水の補給は必ずしも要さない。また、リアクターから排出された培養液を回収して全部又は一部をリアクター内に再循環させることもでき、これにより培養液内にメタノールを蓄積させることができる。
【0081】
(II) メタノール製造装置
本発明のメタノール製造装置は、メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体を充填したリアクターと、リアクター内にメタノールを含む原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、リアクターから流出するガスからメタノールを回収するメタノール回収装置とを備える装置である。
【0082】
担体、メタン資化菌、培養液、微生物保持剤を備えていてよい点、リアクターについては、上記説明した本発明のメタノール製造方法と同様である。
【0083】
メタノール供給装置は、リアクターへ原料ガスを供給するものであり、ガスリザーバーとエアポンプとガス流路とを含むものが挙げられる。原料ガスの成分及び流量については上記説明した通りである。
【0084】
メタノール回収装置としては、リアクターから流出するガス中のメタノールを液化するコールドトラップとガス流路とを含むものが挙げられる。また、未回収ガスを原料ガスとして循環・再使用する場合は、コールドトラップを通過した未回収ガス中のメタノール等を吸着するためのガス吸着部と、未回収ガスを原料ガスリザーバーに返送する機構とを備えることが好ましい。またメタノールが気化しないような温度下でリアクターを運転する場合は、メタノール回収装置は、メタノールを含む培養液を回収して例えば蒸留によりメタノールを分別するものであればよい。
【0085】
本発明のメタノール製造装置は、リアクターに培養液を供給する培養液供給装置を備えることが好ましい。培養液の供給量は上記説明した通りである。培養液供給装置は、リアクターに新しい培養液を供給し、さらにリアクターから流出する古い培養液を廃棄するものとすることができる。又は、リアクターに新しい培養液を供給し、全部又は一部を再度リアクター内に供給することにより培養液を循環させるものであってもよい。
【0086】
本発明のメタノール製造装置は、リアクター内に水を補給する水補給装置を備えることができる。補給される水の状態及び補給量は上記説明した通りである。培養液供給装置を備える場合は、水補給装置は必ずしも要さない。
【0087】
その他の構成は、メタノール製造方法について説明した通りである。
【0088】
【実施例】
以下に実施例及び試験例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0089】
以下の実施例1〜3においては、図1に概略構成を示す装置を用いた。図1の装置は、原料ガスを溜めておくガスパック1と、ガスパック1からリアクターに一定速度で原料ガスを供給するためのエアポンプ2と、恒温槽3内に置かれたリアクター4と、リアクター4から排出されるガスを液化するコールドトラップ5と、コールドトラップ5を通過する未回収ガス中のメタノールを吸着除去するための活性炭カラム6と、ガス流量計7とを備える。ガスパック1、エアポンプ2、リアクター4、コールドトラップ5、活性炭カラム6、ガス流量計7は、ガスチューブにより連通した状態でこの順で配設されており、この流路内をガスが循環できるようになっている。また、リアクター4の両端はチューブにより培養液リザーバー8と接続されており、リザーバー8からリアクター内に新しい培養液を供給できるとともに、リアクター内の培養液を回収してリザーバー8に戻すことができるようになっている。
実施例1(培養液の環流なし/微生物保持剤なし)
メタン資化菌の調製
55℃で生育できる好熱性メタン資化菌メチロカルダム属T−025株(産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18645として寄託済み)を、500mlコニカルフラスコ内に入れたNMS+VCR液体培地(以下の表1に組成を示す)の100mlに接種し、フラスコ上部気相をメタン:酸素=1:1として48℃で2日間震盪培養した。
【0090】
【表1】
Figure 2005013048
【0091】
担体へのメタン資化菌の担持
担体として、日本薬局方に収載のガーゼ(6cm×125cm)4枚を用いた。このガーゼは、40番手の純綿糸を使用しており、1cm当たりの条数は縦横ともに8〜12本である。
【0092】
上記のようにして得られたメタン資化菌培養液1000ml(菌密度:0.002mg乾燥重量/ml)を12600×gで10分間遠心した。沈殿をNMS+VCR液体培地15.6mlに懸濁し、これに0.1Mギ酸ナトリウム溶液3.2mlを加えて菌懸濁液とした。この菌懸濁液を4枚のガーゼに全て吸収させた。ガーゼの含水率は66w/w%である。
リアクターの作製
内径5mm、外径9mm、長さ125cmのシリコーンチューブ4本の中に、菌を保持させた4枚のガーゼをそれぞれ充填し、4本のチューブを連結して長さ5mのチューブリアクターを得た。リアクター内の空隙率は10v/v%であり、ガーゼの充填率は、乾燥重量で4w/v%である。
運転
チューブリアクターを55℃の温水中に浸漬することにより同温度に保持しつつ、30v/v%メタン及び70v/v%空気からなる原料ガスを、50リットルガスパックからエアーポンプ(IWAKI PST−550)を用いて、150ml/分間の流量でリアクター内に供給した。
【0093】
チューブから排出されるガスを氷冷したメタノールトラップを通し、コールドトラップ内で液化したメタノール溶液を回収した。また、メタノールトラップを通過したガスを活性炭カラムを通すことによりメタノールを略完全に除去し、原料ガスパックに戻した。
結果
メタノールトラップに回収されたメタノール溶液、リアクターに供給される直前の原料ガス、リアクター出口から排出された直後のガスについて、それぞれメタノール濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーは、ULBON HR−20Mキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーシステム(SHIMADZU GC−14B;株式会社島津製作所)により行った。
【0094】
その結果、リアクター運転中のリアクターから排出された直後のガスのメタノール濃度は、反応開始76分後に最大の420μg/リットルに達した。原料ガス流量が150ml/分間であるため、このときのメタノール生産速度は、原料ガス1リットル当たり1日当たりで0.45g/リットル/日と計算された。
【0095】
メタノール生産速度はその後低下し、反応開始300分間後には最高時の約1/2になり、500分間後には約1/4以下になった。500分間の反応中のメタノール生成速度の変遷を図2に示す。
【0096】
また、500分間の反応後に、コールドトラップには合計11mlのメタノール溶液が回収された。メタノール溶液中のメタノール濃度は約4mg/mlであり、500分間の反応により0.045gのメタノールが生産された。
実施例2(培養液の環流なし/炭素粉末使用)
メタン資化菌の調製
実施例1と同様にして行った。
担体へのメタン資化菌の担持
上記のようにして得られたメタン資化菌培養液138ml(菌密度:0.02mg乾燥重量/ml)を12600×gで10分間遠心した。沈殿を、17mMギ酸ナトリウムを含むNMS+VCR液体培地50mlに懸濁し、菌懸濁液とした。
【0097】
担体として、実施例1と同様の日本薬局方に収載のガーゼ(6cm×125cm)1枚を用い、このガーゼを、炭素粉末(ダルコ G−60、和光純薬株式会社製)を2.5w/v%となるようにNMS+VCR液体培地に懸濁した懸濁液に浸漬し、炭素粉末をガーゼに保持させた。炭素粉末の保持量は、0.78gであり、担体全量に対して約24w/w%である。
【0098】
ガーゼをシリンジを用いて圧搾により脱水した後、上記菌懸濁液を吸収させ、さらに圧搾により脱水してメタン資化菌をガーゼに保持させた。さらに、ガーゼを17mMギ酸ナトリウムを含むNMS+VCR液体培地で3回洗浄した。ガーゼの含水率は65w/w%である。
リアクターの作製
内径5mm、外径9mm、長さ125cmのシリコーンチューブ1本の中に、菌を保持させたガーゼを充填し、チューブリアクターを得た。リアクター内の空隙率は10v/v%であり、ガーゼの充填率は、乾燥重量で4w/v%である。
運転
チューブリアクターを55℃の温水中に浸漬することにより同温度に保持しつつ、30v/v%メタン及び70v/v%空気からなる原料ガスを、50リットルガスパックからエアーポンプ(IWAKI PST−550)を用いて、600ml/分間の流量でリアクター内に供給した。
【0099】
チューブから排出されるガスを氷冷したメタノールトラップを通し、コールドトラップ内で液化したメタノール溶液を回収した。また、メタノールトラップを通過したガスを活性炭カラムを通すことによりメタノールを略完全に除去し、原料ガスパックに戻した。
結果
メタノールトラップに回収されたメタノール溶液、リアクターに供給される直前の原料ガス、リアクター出口から排出された直後のガスについて、それぞれメタノール濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーは、ULBON HR−20Mキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーシステム(SHIMADZU GC−14B;株式会社島津製作所)により行った。
【0100】
その結果、リアクター運転中のリアクターから排出された直後のガスのメタノール濃度は、反応開始89分後に最大の356mg/リットルに達した。原料ガス流量が600ml/分間であることから、このときのメタノール生産速度は6.42g/リットル/日間と計算された。
【0101】
メタノール生産速度はその後低下し、反応開始235分間後には最高時の約1/10になった。この間の反応中のメタノール生成速度の変遷を図3に示す。
【0102】
また、235分間の反応後に、コールドトラップには合計9.5mlのメタノール溶液が回収された。メタノール溶液中のメタノール濃度は約2.3mg/mlであり、235分間の反応により0.022gのメタノールが生産された。
実施例3(培養液の環流あり/寒天使用)
メタン資化菌の調製
実施例1と同様にして行った。
担体へのメタン資化菌の担持
上記のようにして得られたメタン資化菌培養液150ml(菌密度:0.0026mg乾燥重量/ml)を12600×gで10分間遠心した。沈殿を、NMS+VCR液体培地10.8ml及び0.1Mギ酸ナトリウム水溶液2.2mlに懸濁し、菌懸濁液とした。
【0103】
この菌懸濁液に加温して溶解した0.4w/v%寒天を含むNMS+VCR液体培地を2.2ml添加して、培養液中の寒天の終濃度を0.2w/v%とした。寒天入り菌懸濁液を全て日本薬局方に収載のガーゼ(12cm×16cm)18枚に吸収させ、室温で放置して寒天を固めた。寒天の保持量は、担体全量に対して約0.077w/w%である。
リアクターの作製
ジャケットつきカラム(内径3cm、長さ30cm)に上記ガーゼ18枚を互いに密着させないようにして充填した。カラムリアクター内の空隙率は10v/v%であり、ガーゼの充填率は、乾燥重量で4w/v%である。
運転
カラムリアクターを55℃の温水中に浸漬することにより同温度に保持しつつ、30v/v%メタン及び70v/v%空気からなる原料ガスを、50リットルガスパックからエアーポンプ(IWAKI PST−550)を用いて、75ml/分間の流量でカラムリアクター内に供給した。また、培養液を1ml/分間の流量でこのカラムの上部から供給し、カラムリアクター底部から同速度で吸引により排出させた。排出させた培養液は培養液リザーバーに戻した。
【0104】
カラムリアクターから排出されるガスを氷冷したメタノールトラップを通し、コールドトラップ内で液化したメタノール溶液を回収した。また、メタノールトラップを通過したガスを活性炭カラムを通すことによりメタノールを略完全に除去し、原料ガスパックに戻した。
結果
メタノールトラップに回収されたメタノール溶液、リアクターに供給される直前の原料ガス、リアクター出口から排出された直後のガスについて、それぞれメタノール濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーは、ULBON HR−20Mキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーシステム(SHIMADZU GC−14B;株式会社島津製作所)により行った。
【0105】
その結果、リアクター運転中のリアクターから排出された直後のガスのメタノール濃度は、徐々に増大し、反応開始44時間後に772mg/リットルに達した。原料ガスの供給量が75ml/分間であることから、このときのメタノール生産速度は0.42g/リットル/日と計算された。この間の反応中のメタノール生成速度の変遷を図4に示す。
【0106】
また、44時間の反応後に、コールドトラップには合計8.2mlのメタノール溶液が回収された。メタノール溶液中のメタノール濃度は約3.7mg/mlであり、44時間の反応により0.030gのメタノールがコールドトラップに回収された。循環させている培養液中のメタノール濃度は、約1mg/mlであり、培養液リザーバー中には0.255gのメタノールが生産された。
実施例4(バッチ式/シクロプロパン使用)
メタン資化菌の調製
実施例1と同様にして行った。
担体へのメタン資化菌の担持、リアクターの作製
上記のようにして得られたメタン資化菌培養液2ml(菌密度:0.0032mg乾燥重量/ml)を12600×gで10分間遠心した。沈殿を、10mMリン酸及び17mMギ酸ナトリウムを含む600μlの緩衝液(pH7)に懸濁し、菌懸濁液とした。
【0107】
この菌懸濁液全量を、10ml容のガラスバイアル内に入れた日本薬局方に収載のガーゼ(8cm×12cm)1枚に吸収させた。
【0108】
リアクター内の空隙率は10v/v%であり、ガーゼの充填率は、乾燥重量で4w/v%である。
運転
チューブリアクターを55℃でプレインキュベーションした後、バイアル上部気相から3mlの空気を引き抜き、これに代えてメタンガス又はメタン/シクロプロパン混合ガスを3ml封入し、同温度で30分間反応させた。
結果
各シクロプロパノール濃度について、バイアル上部気相中のメタン酸化活性を後述する方法で測定した。
【0109】
原料ガス中のシクロプロパン濃度とメタン酸化活性との関係を図5に示す。図5から明らかなように、原料ガスとしてシクロプロパンを加えないメタンガスを用いた場合のメタン酸化活性は、約60μmol/min/g−dry cellであった。これに対して原料ガス中のシクロプロパン濃度を5v/v%とすると、メタン酸化活性は約107μmol/min/g−dry cellとなり、約30%活性が向上した。また、シクロプロパノール濃度を10%にまで増大させると、メタン酸化活性はやや低下した。
【0110】
これは、シクロプロパンがメタン資化菌により酸化されて、シクロプロパノールが生成した結果、メタン資化菌内のメタンモノオキシゲナーゼが阻害され、メタノールの見掛け生成量が向上したためと考えられる。また、シクロプロパンの適性使用量は、1〜10v/v%であることが分かる。
<気相中でのメタン酸化活性>
気相反応におけるメタン資化菌のメタン酸化活性は、メタン資化菌をガーゼに保持させた状態でプロピレンの酸化反応により生成するプロピレンオキサイドを定量することにより評価した。
【0111】
日本薬局方に規定されるガーゼ(33g/m、8cm×12cm)を10ml容のガラスバイアルに入れ、メタン資化菌0.2〜10mg(乾燥重量)を含む10mMリン酸−17mMギ酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)600μlに懸濁し、ガーゼに吸収させた。このときの含水率は65w/w%である。このバイアルを55℃で5分間プレインキュベートした後、上部気相の3mlを3mlのプロピレンオキサイドガスに置き換え、55℃で2分間反応させた。
【0112】
気相中のプロピレンオキサイドを、ULBON HR−20Mキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーシステム(SHIMADZU GC−14B;株式会社島津製作所)により定量した。プロピレン酸化比活性を、単位菌体重量あたり生成したプロピレンオキサイド量(μmol/min/g−dry cell)で表した。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、メタン資化菌を用いて効率的にメタノールを製造する方法が提供された。
【0114】
さらにいえば、本発明方法は、微生物を用いてメタノールの沸点付近の比較的低い温度下でかつ常圧下で行えるため、従来の触媒を用いた合成反応のような大規模な設備を要さない。またそれにより、メタン生産規模の小さい中小ガス田からのメタンを有効利用できる。
【0115】
また本発明によれば、メタン資化菌をメタノールにより死滅させることなく、連続して効率的にメタノールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例であるメタノール製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1におけるメタノール生産速度の変遷を示すグラフである。
【図3】実施例2におけるメタノール生産速度の変遷を示すグラフである。
【図4】実施例3におけるメタノール生産速度の変遷を示すグラフである。
【図5】実施例4における、原料ガス中のシクロプロパノール濃度とメタン酸化活性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ガスパック
2 エアポンプ
3 恒温槽
4 リアクター
5 コールドトラップ
6 活性炭カラム
7 ガス流量計
8 培養液リザーバー

Claims (37)

  1. メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体をリアクター内に充填した状態で、リアクター内にメタンを含む原料ガスを供給し、メタン資化菌によりメタンからメタノールを製造するメタノールの製造方法。
  2. 担体が、織布、不織布、繊維、ゼラチン、炭素材料、セラミック材料、ピートモス、多孔性セルロース、水苔、海綿、多孔性ポリエチレン、ウレタンフォームからなる群から選ばれるものである請求項1に記載の方法。
  3. 原料ガス中のメタン濃度が、1〜50v/v%である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 原料ガスが、メタンと空気との混合ガス、メタンと酸素富化空気との混合ガス、又は、メタンと酸素との混合ガスを含むガスである請求項1、2又は3に記載の方法。
  5. 原料ガスを10〜100ml/cm/分間の流量でリアクター内に供給する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 原料ガスが1〜10v/v%のシクロプロパンを含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 担体の含水率が50w/w%を超え70w/w%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. メタン資化菌による反応中に、リアクター内に水を補給する請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 原料ガスと水とを気液接触させた状態で、リアクター内に水を補給する請求項8に記載の方法。
  10. 原料ガスとは別に、リアクター内に水を補給する請求項8に記載の方法。
  11. リアクター容量(リットル)当たりの水の補給量を1〜5ml/L/分間とする請求項8、9又は10に記載の方法。
  12. 担体が直径0.01〜1mmの糸からなる織布である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 織布がガーゼである請求項12に記載の方法。
  14. リアクター内における織布の充填率が、乾燥重量で1〜5w/v%である請求項12又は13に記載の方法。
  15. 担体を、リアクター内に空隙率5〜20v/v%となるように充填する請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. さらに、担体に微生物保持剤を保持させる請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. メタン資化菌による反応中に、リアクター内に培養液を供給する請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
  18. リアクターが、固定層式気相バイオリアクター又は流動層式気相バイオリアクターである請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  19. メタン資化菌が、メチロカルダム属T−025株(Methylocaldum sp.T−025;産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18645として寄託済み)である請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. メタン資化菌及び培養液を保持させた、吸水性及び通気性を有する担体を充填したリアクターと、リアクター内にメタノールを含む原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、リアクターから流出するガスからメタノールを回収するメタノール回収装置とを備えるメタノール製造装置。
  21. 担体が、織布、不織布、繊維、ゼラチン、炭素材料、セラミック材料、ピートモス、多孔性セルロース、水苔、海綿、多孔性ポリエチレン、ウレタンフォームからなる群より選ばれるものである請求項20に記載の装置。
  22. 原料ガス供給装置が、濃度1〜50v/v%のメタンを含む原料ガスを供給するものである請求項20又は21に記載の装置。
  23. 原料ガス供給装置が、メタンと空気との混合ガス、メタンと酸素富化空気との混合ガス、又は、メタンと酸素との混合ガスを含むガスを供給するものである請求項20、21又は22に記載の装置。
  24. 原料ガス供給装置が、リアクター内に10〜100ml/cm/分間の流量で原料ガスを供給するものである請求項20〜23のいずれかに記載の装置。
  25. 原料ガス供給装置が、1〜10v/v%のシクロプロパンを含む原料ガスをリアクター内に供給するものである請求項20〜24のいずれかに記載の装置。
  26. 担体の含水率が50w/w%を超え70w/w%以下である請求項20〜25のいずれかに記載の装置。
  27. リアクター内に水を補給する水補給装置を備える請求項20〜26のいずれかに記載の装置。
  28. 水補給装置が、原料ガス供給装置からリアクター内に供給される原料ガスと水とを気液接触させた状態で、リアクター内に水を補給するものである請求項27に記載の装置。
  29. 水補給装置が、リアクター容量(リットル)当たりの水補給量が1〜5ml/L/分間になるようにリアクター内に水を補給するものである請求項27又は28に記載の装置。
  30. 担体が直径0.01〜1mmの糸からなる織布である請求項20〜29のいずれかに記載の装置。
  31. 織布がガーゼである請求項30に記載の装置。
  32. リアクター内における織布の充填率が、乾燥重量で1〜5w/v%である請求項30又は31に記載の装置。
  33. 担体がリアクター内に空隙率5〜20v/v%となるように充填されている請求項20〜32のいずれかに記載の装置。
  34. 担体が微生物保持剤を保持している請求項20〜33のいずれかに記載の装置。
  35. リアクター内に培養液を供給する培養液供給装置を備える請求項20〜34のいずれかに記載の装置。
  36. リアクターが、固定層式気相バイオリアクター又は流動層式気相バイオリアクターである請求項20〜35のいずれかに記載の装置。
  37. メタン資化菌が、メチロカルダム属T−025株(Methylocaldum sp.T−025;産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18645として寄託済み)である請求項20〜36のいずれかに記載の装置。
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