JP2005012841A - 不平衡型アンテナ - Google Patents

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Abstract

【課題】 アンテナ特性を維持しながらグランド導体の縮小化を図る。
【解決手段】 グランド導体の相対する放射導体と近傍電磁界分布を形成するための一極としての作用を維持するため、少なくとも放射導体と正対する部分は残す。また、インピーダンス整合を確保するため、縮小したグランド導体のうち給電部より離れた端部近辺の一部を導電率の低い導体で構成する。グランド導体を極端に縮小した場合、必然的にモード不整合が発生するので、給電部に接続された同軸型給電線路の外導体の少なくとも一部を電流吸収体で覆い、漏れ電流を強制的に抑止する。
【選択図】 図10

Description

本発明は、無線LANを始めとする無線通信で使用されるアンテナに係り、特に、放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなる不平衡型アンテナに関する。
さらに詳しくは、本発明は、小型な無線機器に実装することができる不平衡型アンテナに係り、特に、アンテナ特性を維持しながらグランド導体の縮小化を図った不平衡型アンテナに関する。
近年、無線LANシステムの高速化、低価格化に伴い、その需要が著しく増加してきている。特に最近では、人の身の回りに存在する複数の電子機器間で小規模な無線ネットワークを構築して情報通信を行なうために、パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)の導入の検討が行なわれている。例えば、2.4GHz帯や、5GHz帯など、監督官庁の免許が不要な周波数帯域を利用して、異なった無線通信システムが規定されている。
無線LANを始めとする無線通信では、アンテナを介した情報伝送が行なわれる。例えば、さまざまな不平衡型アンテナが実用に供されている。不平衡型アンテナは、基本的には、放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなり、この空隙間に電気信号が供給される。一般に、給電は、グランド導体背面側よりなされることが多く、この場合、グランド導体に穴を穿設して、放射導体を背面側に延長させる構成がよく採用されている。
放射導体の形状としては、図1に示すようなモノポール・アンテナ、図2に示すようなヘリカル・アンテナ、図3に示すような平板モノポール・アンテナ、図4に示すようなモノコニカル・アンテナなどが挙げられる。
平衡型アンテナに対する不平衡型アンテナのメリットとして、一般に、外来ノイズに対して強い耐性を持つ同軸型伝送線路を電気信号の供給線路として直結することができるという点が挙げられる。これは、同軸型ケーブルは基本的に不平衡型ケーブルであり不平衡型アンテナとの相性がよいのに対して、平衡型アンテナだと平衡−不平衡変換器の介在が必要となるという理由に依拠する。また、グランド導体を装置外筐グランド導体と密接あるいは共用することができるので、装置の小型化など実装面でのメリットも大きい。
グランド導体は、一般的には円形平板が用いられ、その直径は概ね半波長以上の大きさが必要とされる。しかしながら、小型の無線機器に実装する場合、この大きさの確保が困難な場合が多々ある。グランド導体の大きさが極端に小さいと、受信特性の劣化など、アンテナの動作そのものに影響を与えかねない。
グランド導体の縮小に伴う不平衡型アンテナの特性劣化について、以下に説明する。ここでは、図5に示すようなディスク・モノポール・アンテナを例にとり、グランド導体を直径半波長の円形平板から極端に大きさを縮小した場合の特性変化について計算してみる。なお、電気信号の給電は、グランド導体背面側より同軸型伝送線路によって行なうように構成する。以下に、計算条件を付記しておく。
(1)放射導体部
…導電率1×107S/mの金属を想定。
直径24.8mm、厚み0.8mm
(2)グランド導体部
…導電率1×107S/mの金属を想定。
直径50mm、厚み0.8mmの円形平板から
24.8×4×0.8mmの長方形板に縮小(面積比で5%に縮小)
(3)給電部
…空隙は0.8mm。
同軸型伝送線路の特性インピーダンスは50Ωを想定。
図6には、グランド導体が直径半波長の円形平板の場合のディスク・モノポール・アンテナの特性の計算結果を示している。同図において、左側にVSWR特性を、真中に3GHzにおける垂直面内・放射指向性を、右側には同じく3GHzにおける表面電流密度分布(濃淡で密度が表されている)を示している。
同図に示すように、まず、3.5〜9GHzに渡ってVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)2以下が実現されており、超広帯域に渡って良好なインピーダンス整合性が確認できる。また、3GHzの垂直面内・放射指向性は、概ね水平方向にピークを持つ8の字型を形成していることから、ディスク・モノポール・アンテナ本来の特性に近い(下限周波数帯ではダイポール・アンテナと同じ特性を持つ)ことが確認できる。このときの表面電流密度分布を見てみても、同軸型伝送線路の外導体上を流れる不要な漏れ電流が低レベルであり(グランド導体が無限大の広さを持つ場合、背面の給電伝送路の外導体上には漏れ電流は流れない)、この放射指向性の結果は納得できるものである。
一方、図7には、グランド導体を縮小した場合のディスク・モノポール・アンテナの特性についての計算結果を示している。図6と同様に、左側にVSWR特性、真中に垂直面内・放射指向性、右側には表面電流密度分布を示している。
図7に示す特性を図6と比較することにより、まず、インピーダンス整合性の劣化が確認できる。3.5〜9GHzにおけるVSWRは、最大3にまで上昇する。また、3GHzの垂直面内・放射指向性は、極端に下側を向いており、水平方向では−10dBi近くまで落ち込んでしまう。また、このときの表面電流密度分布を見てみると、同軸型伝送線路の外導体上に大きな漏れ電流が流れており、この漏れ電流からの輻射要素が本来の放射指向性に影響を与えていることが判る。すなわち、放射指向性は給電線路の引き回し如何によって変化するということになる。このような放射指向性の乱れは、場合によっては大きな問題となる。
以上を総括すると、不平衡型アンテナを小型な無線機器に実装してグランド導体を縮小してしまうと、アンテナ本来の特性が発揮されないという問題がある。
本発明の目的は、放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなる、優れた不平衡型アンテナを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、アンテナ特性を維持しながらグランド導体の縮小化を図った優れた不平衡型アンテナを提供することにある。
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなる不平衡型アンテナであって、前記グランド導体は、
相対する前記放射導体と近傍電磁界分布を形成する一極として作用する部分と、インピーダンス整合に寄与する部分とを備える、
ことを特徴とする不平衡型アンテナである。
本発明の第1の側面に係る不平衡型アンテナは、前記グランド導体がモード整合に寄与する部分をさらに備えていてもよい。
本発明者らは、不平衡型アンテナのグランド導体の働きを、以下の3点に分けて考えることにした。すなわち、
(a)相対する放射導体と近傍電磁界分布を形成するための一極としての作用
(b)インピーダンス整合に寄与する部分
(c)モード(伝送姿態又は励振姿態)整合に寄与する部分
(a)の作用を維持するためには、少なくとも放射導体と正対する部分は残すべきである。これは最低限の必要条件となる。加えて、グランド導体の縮小に伴うインピーダンスの変化、すなわち給電部における電圧・電流比の変化は、グランド導体に適当な抵抗成分を装荷して補償し得る可能性が十分にある。すなわち、(b)の作用を確保するために、縮小したグランド導体のうち給電部より離れた端部近辺の一部を導電率の低い導体で構成するようにする。
さらに加えて、(c)のモード整合については、同軸型伝送線路による給電を前提として考える。グランド導体を極端に縮小した場合、必然的にモード不整合が発生する。しかしながら、上述した前提に立つと、不要な不平衡成分はすべて同軸型伝送線路の外導体上を流れ(「漏れ電流」と呼ばれるものである)、同軸型伝送線路の内部には入り込まない。したがって、(c)の作用を確保するために、給電部に接続された同軸型給電線路の外導体の少なくとも一部を電流吸収体で覆うなどして、この漏れ電流を強制的に抑止する機構を設ければ、モード不整合を補償し得る可能性が十分にある。
ここで、前記グランド導体は、給電部近辺から端部に向かうに従い導電率が連続的又は段階的に低くなるように構成してもよい。
また、本発明の第2の側面は、放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなる不平衡型アンテナであって、
前記グランド導体を、少なくとも放射導体と略正対する部分は残して縮小し、さらに給電部からの距離に応じて複数に分割して、その分割したグランド導体間を電気抵抗体により接続する、
ことを特徴とする不平衡型アンテナである。
ここで、前記不平衡型アンテナの給電部に接続された同軸型伝送線路の外導体の一部分を電流吸収体で覆うようにしてもよい。
また、分割した各グランド導体間に最適な抵抗率の電気抵抗体をそれぞれ与えるようにしてもよい。このような場合、給電部近辺では抵抗率を低に、端部では抵抗率を高とすれば、インピーダンス整合を確保することができる。
また、モノポール・アンテナのような比較的狭帯域の不平衡型アンテナに本発明を適用する場合、給電部に接続された同軸型伝送線路の外導体上には、電流吸収体に代えて、限定的な周波数特性を持つ阻止陶管(シュペルトップ管)又はこれに類する電流阻止機構を配設するようにしてもよい。
また、本発明の第3の側面は、上下2層の電極面を有する単層型誘電体基板と、
前記単層型誘電体基板の一方の面上に形成された、平板型の放射電極と、前記放射電極に接続される伝送線路電極と、
前記単層型誘電体基板の他方の面上の前記伝送線路電極と対向する部位近辺に形成されたグランド電極と、
前記グランド電極に隣接して配置された1以上の副グランド電極と、
前記グランド電極及び前記副グランド電極間を接続する電気抵抗体と、
前記伝送線路電極と前記グランド電極間に形成された電気信号の給電路と、
を具備することを特徴とする不平衡型アンテナである。
また、本発明の第4の側面は、上下2層の電極面を有する単層型誘電体基板と、
前記単層型誘電体基板の一方の面上に形成された、平板型の放射電極と、前記放射電極に接続される伝送線路電極と、
前記放射電極及び伝送線路電極と同一面上に、前記伝送線路電極を挟んで分割して形成されたグランド電極と、
前記グランド電極に隣接して配置された1以上の副グランド電極と、
前記グランド電極及び前記副グランド電極間を接続する電気抵抗体と、
前記伝送線路電極と前記グランド電極間に形成された電気信号の給電路と、
を具備することを特徴とする不平衡型アンテナである。
また、本発明の第5の側面は、上中下3層の電極面を有する積層型誘電体基板と、
前記積層型誘電体基板の中層面に形成された、平板型の放射電極と、前記放射電極に接続されている伝送線路電極と、
前記積層型誘電体基板の下層面上の前記伝送線路電極と対向する部位近辺に形成されたグランド電極と、
前記グランド電極と隣接して配設された1以上の副グランド電極と、
前記グランド電極及び前記副グランド電極間を接続する電気抵抗体と、
前記積層型誘電体基板の上層面上の前記伝送線路電極と対向する部位近辺に形成された対向グランド電極と、
前記グランド電極と前記対向グランド電極間を電気的に接続する2以上のグランド電極間接続部と、
前記伝送線路電極と前記グランド電極間、及び/又は、前記伝送線路電極と前記対向グランド電極間に形成された電気信号の給電路と、
を具備することを特徴とする不平衡型アンテナである。ここで、前記の各グランド電極間接続部は、前記積層型誘電体基板の中層面上に配設される前記伝送線路電極を挟むようにしてその両側に配置されているものとする。
本発明の第3乃至第5の各側面に係る不平衡型アンテナは、グランド電極と伝送線路電極とにより、いわゆるマイクロ・ストリップ線路あるいはコプレーナー線路またあるいはストリップ線路を形成するものである。本発明の第1の側面に係る不平衡型アンテナの場合と同様に、グランド導体が縮小されているのも拘わらず、良好なインピーダンス整合性を確保するという本発明の効果を奏することができる。
ここで、副グランド電極をも含めたグランド電極全体の横幅は、放射電極の横幅と概ね等しくなるように設定して、放射電極の対向極としての機能を保持するようにしてもよい。
また、前記電気抵抗体はチップ型の抵抗により構成することができる。
また、前記副グランド電極は、お互いが隣接するようにして縦列配置的に多数配設してもよい。
また、本発明の第5の側面に係る不平衡型アンテナにおいて、前記グランド電極及び前記対向グランド電極の周囲の一部を覆う電流吸収体をさらに備えることにより、モード(伝送姿態又は励振姿態)整合を向上させることができる。
また、本発明の第6の側面は、対向する端面を持つ絶縁体と、
前記絶縁体の一端面に形設された略錐状の窪みの表面又は窪み全体に充填するように形成された放射電極と、
前記放射電極を前記窪みの略頂点部位より延長させて、前記絶縁体の一端面と対向する他端面にまで到達させる放射電極延長部と、
前記放射電極延長部を囲むようにして、前記絶縁体の他端面上に形成されたグランド電極と、
前記グランド電極の一部を周状に剥離した1以上の周状剥離部と、
前記周状剥離部に埋設された電気抵抗体と、
前記放射電極延長部と前記グランド電極間に配設された電気信号の給電部と、
を具備することを特徴とする不平衡型アンテナである。
ここで、前記グランド電極の大きさは窪みの底面の大きさと略等しく形成することがより好ましい。
また、前記グランド電極は、前記周状剥離部を境として段差を有することにより、基板への実装を容易とすることができる。
本発明によれば、あらゆる不平衡型アンテナにおいて、インピーダンス整合性や放射指向性の大幅な劣化を抑制しつつ、グランド導体の大胆な縮小が可能となる。さらに、本発明によれば、かなり小型な無線機器に不平衡型アンテナを実装した場合であっても、概ね本来の性能を発揮させることができる。
また、本発明は、非常に広帯域な不平衡型アンテナに対しても有効に適用することができるので、例えば、ウルトラ・ワイド・バンド通信システムのアンテナの小型化方法としても有用である。
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
本発明者らは、不平衡型アンテナのグランド導体の働きを、以下の3点に分けて考えることにした。すなわち、
(a)相対する放射導体と近傍電磁界分布を形成するための一極としての作用
(b)インピーダンス整合に寄与する部分
(c)モード(伝送姿態又は励振姿態)整合に寄与する部分
一般的な不平衡型アンテナにおいては、グランド導体の作用はすべて(a)に集約されるはずである。しかしながら、放射指向性に寄与する電磁界成分に限定して(a)の作用を考え、(b)並びに(c)の作用と敢えて分離して捉えることにした。(a)の作用をより直接的に表現するならば、「放射導体上の電流分布をほぼ正規に(無限グランド時の本来の分布)形成する作用」となる。
(a)の作用を維持するためには、少なくとも放射導体と正対する部分は残すべきである。これは最低限の必要条件となる。加えて、グランド導体の縮小に伴うインピーダンスの変化、すなわち給電部における電圧・電流比の変化は、グランド導体に適当な抵抗成分を装荷して補償し得る可能性が十分にある。すなわち、(b)の作用を確保するために、縮小したグランド導体のうち給電部より離れた端部近辺の一部を導電率の低い導体で構成するようにする。
さらに加えて、(c)のモード整合については、同軸型伝送線路による給電を前提として考える。グランド導体を極端に縮小した場合、必然的にモード不整合が発生する。しかしながら、上述した前提に立つと、不要な不平衡成分はすべて同軸型伝送線路の外導体上を流れ(「漏れ電流」と呼ばれるものである)、同軸型伝送線路の内部には入り込まない。したがって、(c)の作用を確保するために、給電部に接続された同軸型給電線路の外導体の少なくとも一部を電流吸収体で覆うなどして、この漏れ電流を強制的に抑止する機構を設ければ、モード不整合を補償し得る可能性が十分にある。
図7に示したグランド導体の縮小に伴う不平衡型アンテナの特性劣化と比較しながら説明すれば、抵抗成分の装荷は、同図左のVSWR特性を補償するものとなる。そして、漏れ電流抑止機構は、同図中央の放射指向性の乱れを抑制するものとなる。
このような論理を背景として、以下では図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
図8には、本発明の一実施形態に係る不平衡型アンテナの構成を模式的に示している。同図では、不平衡型アンテナの一題材としてディスク・モノポール・アンテナを採り上げている。
図8に示すディスク・モノポール・アンテナは、円板状の放射導体と長方形板状のグランド導体とが任意の空隙を介して配設されている。ここで、グランド導体の大きさは、放射導体と略正対する部分のみの大きさとする。また、グランド導体のうち給電部より離れた端部近辺は、導電率のより低い導体で構成する。また、電気信号の給電は、グランド導体背面側より同軸型伝送線路により行なう構成とし、最終的には空隙間に結線されている。
図9には、図8に示した構成のモノポール・アンテナにおけるアンテナ特性の計算結果を示している。同図の左側にはインピーダンスの整合性を現すVSWR特性を、同図中央には3GHzにおける垂直面内・放射指向性を、同図右側には同じく3GHzにおける表面電流密度分布(濃淡で密度が表されている)を示している。放射導体やグランド導体の寸法は、図5(右側)の場合と同様である。
(1)放射導体部
…導電率1×107S/mの金属を想定。
直径24.8mm、厚み0.8mm
(2)グランド導体部
…導電率1×107S/mの金属を想定。
24.8×4×0.8mmの長方形板
(3)給電部
…空隙は0.8mm。
同軸型伝送線路の特性インピーダンスは50Ωを想定。
上記に加えて、グランド導体のうち両側端部より6.4mmまでの部分の導電率を8S/mと設定している。
図7に示したVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)特性と比べて、図8に示した実施形態では明らかにインピーダンス整合性が改善されている。3.5〜9GHzに渡って概ねVSWR2以下が実現されており、ディスク・モノポール・アンテナ本来の特性であるところの図6と遜色ないレベルにまで回復している。これにより、整合損失が低減され、なお且つ反射波に伴う信号歪みも低減されるという効果が得られる。
一方、図9中央に示した計算結果では、3GHzの垂直面内・放射指向性は、図7と比較して改善されている様子はない。しかしながら、給電線路の引き回しを工夫すれば、このような放射指向性の乱れを軽微とする構成は可能である。例えば、給電線路を放射導体と直交するように(又は水平に)配置する。漏れ電流よりの寄与はすべて水平偏波成分に転換され、放射導体に因る垂直偏波成分とは混ざり合わない。すなわち、放射電力は分散するものの、垂直偏波の放射指向性の形状は本来のものとすることができる。
また、図10には、本発明の他の実施形態に係る不平衡型アンテナの構成を模式的に示している。同図においても、不平衡型アンテナの一題材としてディスク・モノポール・アンテナを採り上げている。
図示のディスク・モノポール・アンテナは、円板状の放射導体と長方形板状のグランド導体とが任意の空隙を介して配設されている。ここで、グランド導体の大きさは、放射導体と略正対する部分のみの大きさとする。また、グランド導体のうち給電部より離れた端部近辺は、導電率のより低い導体で構成する。また、電気信号の給電は、グランド導体背面側より同軸型伝送線路により行なう構成とし、最終的には空隙間に結線されている。
この実施形態では、さらに同軸型伝送線路の外導体の一部を電流吸収体で覆う構成としている。電流吸収体としては、導電体が適度に含有された絶縁体、すなわち電気抵抗体を用いる。透磁率の高い電気抵抗体とすれば、覆う長さや厚みを節約することができるので、小型な構成を実現するには好適である。なお、覆う位置としては、給電部側(空隙側)に極近い部位が望ましい。
図11には、図10に示した構成のディスク・モノポール・アンテナにおけるアンテナ特性の計算結果を示している。同図の左側にはインピーダンスの整合性を現すVSWR特性を、同図中央には垂直面内・放射指向性を、同図右側には表面電流密度分布(濃淡で密度が表されている)を示している。計算条件は、図9に示した計算例と同一である。加えて、導電率0.1S/m、比透磁率400の電気的定数を持つ電流吸収体を、グランド導体直下から長さ3.2mm、厚み1.6mmで覆う設定としている。
図11に示す例においては、インピーダンス整合性の改善とともに、放射指向性の乱れまでが改善されている。放射電力はやや減殺されるものの、水平方向にピークを持つ本来の8の字型特性が発揮されている。このときの表面電流密度分布を見てみても、同軸型伝送線路の外導体上を流れる不要な漏れ電流が低レベルであり、この放射指向性の結果は納得できるものである。すなわち、図10に示した実施形態に係る不平衡型アンテナによれば、給電線路の引き回し如何に関わらず、本来の安定した放射指向性を期待することができる。
図8並びに図10に示してきた各実施形態において、さらに図12に示すように、グランド導体全体を導電率分布型、すなわち給電部近辺の導電率を高に、端部の導電率を低として、連続的あるいは段階的に変化させるように構成してもよい。
図13には、本発明のさらに他の実施形態に係る不平衡型アンテナの構成を示している。同図に示す例では、グランド導体の一部を低導電率とする代わりに、グランド導体を、放射導体と略正対する部分のみを残して縮小し、さらに給電部からの距離に応じて複数に分割して、その分割したグランド導体間を電気抵抗体により接続している。この実施形態においても、図8を参照しながら説明した実施形態に係る不平衡型アンテナと同等の効果を得ることができる。
また、図14に示すように、この不平衡型アンテナの給電部に接続された同軸型伝送線路の外導体の一部分を電流吸収体で覆うように構成してもよい。この場合、図10に示した実施形態と同様に、給電線路の引き回しの如何に拘わらず、放射指向性の正規の特性を期待することができる。
また、図13並びに図14に示してきた各実施形態において、さらに図15に示すように、グランド導体を、放射導体と略正対する部分のみを残して縮小し、さらに給電部からの距離に応じて複数に分割するとともに、分割した各グランド導体間に最適な抵抗率の電気抵抗体をそれぞれ与える(例えば、給電部近辺では抵抗率を低に、端部では抵抗率を高とする)構成としても良い。
また、図10、図12、図14、並びに図15を参照しながら説明した各実施形態では、導電体が適度に含有された絶縁体すなわち電気抵抗体からなる電流吸収体によって同軸型伝送線路の外導体を覆うことによってモード不整合を補償するようにしている。この代替的な構成として、図16に示すように、電流吸収体ではなく、阻止陶管(シュペルトップ管)に類する電流阻止機構を設けても良い。特に、モノポール・アンテナのような比較的狭帯域の不平衡型アンテナに対して給電部からの距離に応じて複数に分割したグランド導体を適用する際には、電流吸収体のような広帯域な阻止機構である必然性はない。しかるに、阻止陶管のような限定的な周波数特性を持つ分布定数型の電流阻止機構を適用しても、本発明の本質的な効果を同様に得ることができる。もちろん、ディスク・モノポール・アンテナのような広帯域な不平衡型アンテナにおいても、特定の周波数における放射指向性の矯正機構として有効である。
なお、ここまで示してきた実施形態においては、ディスク・モノポール・アンテナあるいはモノポール・アンテナを一題材として採り挙げ説明してきたが、勿論、他の形態の不平衡型アンテナにも本発明を適用可能であることを改めて明言しておく。
図17には、図8に示した不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示している。図示の実施形態では、ごく一般に流通している誘電体基板を用いて不平衡型アンテナを構成している。
図示の例では、両面銅張りのいわゆる単層型誘電体基板を使用する。この誘電体基板の一方の面上に、平板型の放射電極と、この放射電極に接続されているストリップ状(細長い板状)の伝送線路電極とを設ける。放射電極は、例えば図示の如く、半円と直角2等辺3角形が合体された形状を採用する。
自由空間上で構成するディスク・モノポール・アンテナでは、給電空隙を微調するだけで容易にインピーダンス整合をとることができる。これに対し、本発明者らは、いわゆる誘電体基板上の電極で形成する場合、真円のままでは整合調整に限界があることを判明し得た。そして、最も一般的に流通しているガラエポ基板(比誘電率εが4〜5)の場合、上述した通りの半円と直角2等辺3角形が合体された形状が好適であることを解明した。
また、単層型誘電体基板の他方の面上には、伝送線路電極と対向する部位近辺にグランド電極を設ける。このグランド電極と伝送線路電極とにより、いわゆるマイクロ・ストリップ線路を形成するものである。
さらに、このグランド電極に隣接するようにしてその両側に2つの副グランド電極を設ける。副グランド電極をも含めたグランド電極全体の横幅は、放射電極の横幅と概ね等しくなるように設定し、放射電極の対向極としての機能を保持する。
そして、グランド電極と副グランド電極間を、電気抵抗体により接続する。電気抵抗体としては、例えば、チップ型の抵抗が用いられる。電気信号の給電は、伝送線路電極とグランド電極間に成される構成となる。
図17に示すような形態で単層型誘電体基板上に構成された不平衡型アンテナにおいても、図8に示したものと同様に、グランド導体が縮小されているのも拘わらず、良好なインピーダンス整合性を確保することができる。
また、図18には、図8に示した不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示している。図示の実施形態でも、ごく一般に流通している誘電体基板を用いて不平衡型アンテナを構成している。
図18に示した実施形態と図17との相違は、前者がすべての電極を単層型誘電体基板の一方の面に集中させている点にある。したがって、図示の通り、グランド電極は、伝送線路導体を挟んで左右に分割されており、この両グランド電極と伝送線路電極とから、いわゆるコプレーナー線路を形成するものである。
さらに、このグランド電極に隣接するようにしてその両側に2つの副グランド電極を設ける。副グランド電極をも含めたグランド電極全体の横幅は、放射電極の横幅と概ね等しくなるように設定し、放射電極の対向極としての機能を保持する。
そして、グランド電極と副グランド電極間を、電気抵抗体により接続する。電気抵抗体としては、例えば、チップ型の抵抗が用いられる。電気信号の給電は、伝送線路電極とグランド電極間に成される構成となる。
図18に示すような形態で単層型誘電体基板上の一面上に電極を集中して構成された不平衡型アンテナにおいても、図8に示したものと同様に、グランド導体が縮小されているのも拘わらず、良好なインピーダンス整合性を確保することができる。
また、図19には、誘電体基板を用いて不平衡型アンテナを構成した他の実装形態を示している。図示の実施形態では、図17及び図18を参照しながら上述した実装形態とは相違し、積層型誘電体基板を用いて不平衡型アンテナを構成している。図示の例では、特に上中下の3層の電極を有する積層型誘電体基板を使用する。
図19に示す例では、中層面及び下層面においては、図17に示した単層型誘電体基板を使用した具体例と同様に構成される。すなわち、中層面上に、平板型の放射電極と、この放射電極に接続されているストリップ状(細長い板状)の伝送線路電極とを設ける。放射電極は、例えば図示の如く、半円と直角2等辺3角形が合体された形状を採用する。
また、下層面上には、伝送線路電極と対向する部位近辺にグランド電極を設ける。さらに、このグランド電極に隣接するようにしてその両側に2つの副グランド電極を設ける。副グランド電極をも含めたグランド電極全体の横幅は、放射電極の横幅と概ね等しくなるように設定し、放射電極の対向極としての機能を保持する。そして、グランド電極と副グランド電極間を、電気抵抗体により接続する。電気抵抗体としては、例えば、チップ型の抵抗が用いられる。
また、上層面上には、伝送線路電極と対向する部位近辺に対向グランド電極を設ける。さらに、全通のビアホールを中層面上の伝送線路電極を挟むようにしてその両側に複数配置し、下層面上のグランド電極と上層面上の対向グランド電極間を電気的に接続する。この両グランド電極と伝送線路電極とにより、いわゆるストリップ線路を形成するものである。
電気信号の給電は、伝送線路電極とグランド電極間、若しくは伝送線路電極と対向グランド電極間に成される。
図19に示した実装形態においても、図8に示したものと同様に、グランド導体が縮小されているのも拘わらず、良好なインピーダンス整合性を確保することができる。
また、図20には、上中下の3層の電極を有する積層型誘電体基板を用いて不平衡型アンテナを構成した他の実装形態を示している。図示の実施形態では、図19に示した実装形態に対して、グランド電極と対向グランド電極の周囲の一部を覆う電流吸収体をさらに付加した構成となっている。電流吸収体は、より好ましくは、グランド電極と対向グランド電極の周囲の一部に密着するように覆っている。
図20に示した実装形態においても、図8に示した本発明の実施形態と同様に、グランド導体が縮小されているのも拘わらず、良好なインピーダンス整合性を確保することができる。また、図10に示した本発明の実施形態と同様に、給電線路の引き回し如何に関わらず、不平衡型アンテナ本来の安定した放射指向性を期待することができる。
以上、図17〜図20を参照しながら誘電体基板を用いて本発明に係る不平衡型アンテナを構成する具体例について説明してきたが、本発明の要旨は図示の形状に限定されるものではない。また、副グランド電極は、お互いが隣接するようにして縦列配置的に多数設けても、勿論よい。
また、図21には、ごく一般に流通しているエンジニアリング・プラスチックなどの絶縁体塊を用いて本発明に係る不平衡型アンテナを構成した具体的な実装形態を図解している。
まず、絶縁体の一端面に円錐状の窪みを形設し、その窪み内部の表面にメッキ工法等で放射電極を形成する。あるいは、窪み全体を充填するように放射電極を形成しても良い。
次いで、その放射電極を、窪みの頂点部位より延長して、絶縁体の一端面と対向する他端面にまで到達させておく。そして、その延長された放射電極を囲むようにして、グランド電極を他端面上に設ける。グランド電極の大きさは、窪みの底面の大きさと略等しくなるように設定し、放射電極の対向極としての機能を保持する。
さらに、グランド電極の一部を周状に剥離し、露呈した絶縁体を一部掘削する。その掘削部に電気抵抗体を埋め込む。電気抵抗体としては、導電体が適度に含有されたゴムあるいはエラストマーなどが適当である。電気信号の給電は、延長された放射電極とグランド電極間に成される構成となる。
図21に示した実装形態においても、図8に示したものと同様に、グランド導体が縮小されているのも拘わらず、良好なインピーダンス整合性を確保することができる。
なお、絶縁体塊に形設される窪みの形状としては、図21に示すような円錐形状に拘るものではない。例えば、楕円錐あるいは角錐でも良い。また、絶縁体塊の外形についても特に拘るものではない。基本的には、円柱・角柱など、対向する2つの端面を持つ形状であれば何であろうと良い。
また、底面のグランド電極に形成される周状の剥離・掘削部は、1つとは限らない。基本的に複数であっても良い。さらに、図示するように、グランド電極面に故意に段差を設け、基板への実装を容易とする構成としても良い。
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
放射導体の形状の一例を示した図である。 放射導体の形状の一例を示した図である。 放射導体の形状の一例を示した図である。 放射導体の形状の一例を示した図である。 ディスク・モノポール・アンテナの構成を示した図である。 グランド導体が直径半波長の円形平板の場合のディスク・モノポール・アンテナの特性の計算結果を示した図である。 グランド導体を縮小した場合のディスク・モノポール・アンテナの特性についての計算結果を示した図である。 本発明の一実施形態に係る不平衡型アンテナの構成を模式的に示した図である。 図8に示した構成のディスク・モノポール・アンテナにおけるアンテナ特性の計算結果を示した図である。 本発明の他の実施形態に係る不平衡型アンテナの構成を模式的に示した図である。 図10に示した構成のディスク・モノポール・アンテナにおけるアンテナ特性の計算結果を示した図である。 本発明の他の実施形態に係る不平衡型アンテナの構成を模式的に示した図である。 グランド導体の一部を低導電率とする代わりに、グランド導体を複数に分割して、その分割したグランド導体間を電気抵抗体により接続した実施形態を示した図である。 図13に示した不平衡型アンテナの給電部に接続された同軸型伝送線路の外導体の一部分を電流吸収体で覆うように構成した例を示した図である。 グランド導体を多数に分割して、分割したグランド導体間に最適な抵抗率の電気抵抗体をそれぞれ与えるように構成した不平衡型アンテナの構成例を示した図である。 電流吸収体の代わりに阻止陶管(シュペルトップ管)に類する電流阻止機構を設けて構成された不平衡型アンテナの構成例を示した図である。 誘電体基板を用いて構成された不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示した図である。 誘電体基板を用いて構成された不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示した図である。 誘電体基板を用いて構成された不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示した図である。 誘電体基板を用いて構成された不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示した図である。 絶縁体塊を用いて構成された不平衡型アンテナの具体的な実装形態を示した図である。

Claims (8)

  1. 放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなる不平衡型アンテナであって、
    少なくとも放射導体と略正対する部分は残してグランド導体を縮小するとともに、
    前記グランド導体のうち給電部より離れた端部近辺の一部を導電率の低い導体で構成する、
    ことを特徴とする不平衡型アンテナ。
  2. 略同軸型の伝送線路により給電を受け、
    給電部に接続された略同軸型の給電線路の外導体の少なくとも一部を電流吸収体で覆う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡型アンテナ。
  3. 前記グランド導体は、給電部近辺から端部に向かうに従い導電率が連続的又は段階的に低くなるように構成されている、
    ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の不平衡型アンテナ。
  4. 放射導体とグランド導体とが任意の空隙を介して配置されてなる不平衡型アンテナであって、
    前記グランド導体を、少なくとも放射導体と略相対する部分は残して縮小し、さらに給電部からの距離に応じて複数に分割して、その分割したグランド導体間を電気抵抗体により接続する、
    ことを特徴とする不平衡型アンテナ。
  5. 前記不平衡型アンテナの給電部に接続された略同軸型の伝送線路の外導体の一部分を電流吸収体で覆う、
    ことを特徴とする請求項4に記載の不平衡型アンテナ。
  6. 分割した各グランド導体間に最適な抵抗率の電気抵抗体をそれぞれ与える、
    ことを特徴とする請求項4に記載の不平衡型アンテナ。
  7. 給電部近辺での電気抵抗体の抵抗率を低に、端部では抵抗率を高とする、
    ことを特徴とする請求項6に記載の不平衡型アンテナ。
  8. 前記不平衡型アンテナの給電部に接続された略同軸型の伝送線路の外導体上に阻止陶管(シュペルトップ管)又はこれに類する電流阻止機構を配設する、
    ことを特徴とする請求項1又は4のいずれかに記載の不平衡型アンテナ。
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