JP2005012006A - 表面形状補正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学素子の基板表面の高精度な形状補正を実現することができ、その光学素子を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる表面形状補正方法を提供すること。
【解決手段】この表面形状測定方法においては、ミラー1の基板22表面に形成された多層膜29を削剥することによりミラー1表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、削剥量10aの検知を行いつつミラー1表面の形状補正を行う。
【選択図】 図2
【解決手段】この表面形状測定方法においては、ミラー1の基板22表面に形成された多層膜29を削剥することによりミラー1表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、削剥量10aの検知を行いつつミラー1表面の形状補正を行う。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に多層膜が形成された光学素子の基板表面の形状補正を行う表面形状補正方法に係り、特に、例えばEUV光やF2レーザ光を光源とする光学系に用いられる反射光学素子の表面形状補正方法に関する。より具体的には、感光基板としてのウエハに回路パターンを露光投影することにより、ICやLSI等の半導体デバイス・CCD等の撮像デバイス・液晶パネル等の表示デバイス・磁気ヘッド等の検出デバイスを製造する露光装置の光学系に用いられるミラーに適用可能な表面形状補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路に要求される回路パターンの微細化に伴い、半導体製造装置(露光装置)の次世代を担う露光方式としてEUV光(Extreme Ultra Violet:極短紫外光) を用いる方式(以下、EUV方式という。)が提案されている。EUV方式は、例えば従来の光露光で用いられてきた光の波長の1/10以下である13.4nmという短い波長の光(EUV光)を用いて、露光原版としてのレチクル上の回路パターン像を反射結像光学系により感光基板としてのウェハに露光転写するものである。このEUV方式においては、EUV光の波長が極めて短波長であるため光学部材における光の透過特性が著しく低下する。そのため、透過光学系を用いることが困難となり、一般にミラーを用いた反射光学系が用いられる。
【0003】
しかしながら、EUV光の波長領域においては良好な反射特性を発揮する反射材料があまり多くないため、ミラー表面に反射増加効果を示す多層膜を構成することにより反射率を向上させる場合がある。このような多層膜の構成として知られるものに、Mo/Si多層膜がある。これはMo(モリブデン)層とSi(シリコン)層の2層を1組として複数組積層して多層膜としたもので、例えば、1組の層厚さをEUV光の波長13.4nmの約半分となる7nmとして40〜50組み積層したものがある。各層の境界面で反射されるEUV光が互いに同位相で干渉するように構成されているため、ミラー表面にこのMo/Si多層膜を形成すると高い反射率を得ることができる。
【0004】
ただし、Mo/Si多層膜を表面に形成してもEUV光に対するミラーの反射率は70%程度であるので、光学系内に多数のミラーを構成すると累積的に光の強度が低下してしまう。したがって、EUV光を用いた反射光学系内で使用されるミラー枚数は極力少ないほうが望ましく、その少ない枚数のミラーで要求される結像光学性能を満足する必要がある。
【0005】
現在、EUVを光源とする露光装置の実験機では、3枚または4枚のミラー構成で開口数NA=0.10程度の光学系が用いられているが、6枚のミラー構成で開口数NA=0.25〜0.30程度の光学系の実現が将来的な目標とされている。このような高性能の光学系を少ない枚数のミラーで実現するためには、ミラー表面を高精度に加工・計測し、高精度な表面形状とすることが重要である。
【0006】
しかしながら光源光が短波長であることにより、ミラー等の光学素子の表面形状には一層の高精度が要求される。例えば、光学系の性能を評価するパラメータとして、ストレール強度i(P)(Strehl intensity:無収差光学系における点像の最大強度を1とした場合の相対強度のピーク値を採用すると、M. Born and E. Wolf著,Principles of Optics第6版,Pergamon Press社発行,464頁,の式(24)に示されるように、
【0007】
【数1】
【0008】
と表される。ここで、i(P)はストレール強度、DFPは波面収差のrms値、DFP/λ は波面収差rms値を波長単位としたものを示す。
【0009】
異なる波長で用いられる2つの光学系のストレール強度を同じにするにはこの波長単位の波面収差rms値を等しくする必要があるが、その場合、上式より明らかなように、波長が短いほうが要求される誤差精度の値も小さくなり厳しいものとなる。
【0010】
また、レンズを用いる透過光学系でなく、ミラーを用いる反射光学系であることも、レンズ面に比べてミラー面の形状に一層の高精度が要求される要因となる。すなわち、ミラーの場合は光を反射させるので、光を透過させるレンズの場合に比べてその表面形状誤差が光路長に与える影響が2倍となる。さらに、レンズの場合は雰囲気(例えば空気)の屈折率とレンズ基材の屈折率との差(通常0.5程度)に対応して光の位相に影響を与えるのに対し、ミラーの場合は雰囲気の屈折率そのもの(通常1.0程度)に対応して光の位相に影響を与えるので、表面形状誤差が光の位相すなわち波面収差に与える影響の程度はミラーの場合がレンズの場合の4倍程度も大きい。
【0011】
上記のような事情から、EUV光を光源として反射光学系によって構成されるEUV投影光学系において各ミラー面に許容される面形状誤差は rms値で0.1nm程度であるとされている。この値は、現状の加工・計測技術を考慮してもなお容易に達成可能な値とはいえない。
このような事情に対応すべく、以下のような提案もなされている。例えば、雰囲気の屈折率に近い屈折率の媒質による形状補正膜をミラー表面に別途塗布し、この形状補正膜を加工することにより形状補正を行う方法が開示されたものがある(例えば、特許文献1)。雰囲気と形状補正膜との屈折率差が小さいので、位相補正をするにあたってあまり高い加工精度は必要とされないが、EUV光の波長領域においてはこの形状補正膜による光の吸収が懸念される。
【0012】
また、別の提案として反射特性向上用の膜自体を削剥する方法が開示されたものもある(例えば、非特許文献1参照)。Mo/Si多層膜においてMoの屈折率は0.93であり真空雰囲気(すなわち屈折率は1)との屈折率差があるので、Mo膜を削剥すると位相変化が生じて結果として表面形状補正ができることが示されている。
【0013】
図8は、この従来の表面形状補正方法の例を説明するための図であり、膜厚2.8nmのMo膜と膜厚4.2nmのSi膜とを1組としてSiO2基板上に45組積層形成した多層膜を削剥した場合に、波長13.4nmの光をミラー表面に垂直入射させたときのミラー反射率と反射光の位相とがどのように変化するかを示したものである。なお、ここで用いた各媒質の屈折率はインターネットにおいて公開されたものから引用した(例えば、非特許文献2)。Si膜の屈折率は略1.0であるため、図8に示されるようにSi膜の削剥によっては反射光の位相変化は殆ど生じない。上記非特許文献1には、この性質を利用してSi膜の膜厚分の加工尤度に基づいてMo膜を除去することにより、0.1nmオーダに相当する精度の表面形状補正を可能にする方法が開示されている。この多層膜の一部を削剥するという方法は補正可能な表面形状の量は小さいものの、反射率への影響が小さいという点が好ましい。
【0014】
【特許文献1】
米国特許第5,757,017号明細書
【非特許文献1】
エム・ヤマモト(M. Yamamoto)著,「ヌクレアーインスツルメントアンドメソッドインフィジックスリサーチ(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A), 467−468巻 」,2001年,p.1282−1285,発行元ELSEVIER社<URL:http://www.elsevier.com/>
【非特許文献2】
センターフォーエックスレイオプティクス(Center for X−Ray Optics),[online],[平成15年3月28日検索],インターネット<URL:http://www−cxro.lbl.gov/>
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記文献に開示の両方法ともミラー表面の補正加工に対する要求精度を低減することができるが、その加工に必要な補正量の計測が必要である。しかしながら、上記開示の方法における形状補正膜や反射率向上用多層膜の加工方法、それらの加工を行う際に必要となる補正量(削剥量乃至積層量)の測定方法については開示されていない。
【0016】
削剥や積層といった加工方法には、イオンビームエッチングやDCマグネトロンスパッタリング等の従来から知られている方法を利用することもでき、多層膜を削剥する方法においては、削剥量の測定は以下の点からも重要である。すなわち、この方法は一般に、Si膜を表層に残してMo膜を除去することにより、段階的に位相補正を行おうとするものである。しかし図8に示されるように、Mo膜を表層に残した状態で削剥を停止し、Mo膜の中間部分において反射光の位相が変化する性質を利用することにより、さらに高精度な面形状補正が可能となる。さらに、反射率はMo膜削剥の中間部分で最大となることやSi膜の中間部分においても反射率が異なること等から、少しでも高い反射率を得たい場合にはその削剥量を正確に検知してその検知量に基づいて膜の削剥を行う必要がある。このように、膜厚に比して充分小さいオーダ、すなわちサブミクロンのオーダで削剥量や積層量を測定することは重要である。
【0017】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、光学素子(例えばミラー)の基板表面の高精度な形状補正を実現することができ、その光学素子を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる表面形状補正方法を提供することを例示的目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の例示的目的を達成するために、本発明の一側面としての表面形状補正方法は、光学素子の基板表面に形成された多層膜を削剥することにより光学素子表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、削剥量の検知を行いつつ光学素子表面の形状補正を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、基板の表面形状を補正するための補正膜の積層、または反射率向上用の多層膜の削剥により基板表面の形状補正を行う方法であり、補正量としての積層量・削剥量を検知しつつ表面形状補正を行う方法に係る。ここにおいて、補正量の検知は表面形状補正プロセス(すなわち積層加工・削剥加工)の進行と同時に行われるのが望ましいが、もちろんそれに限られるものではなく、一旦表面形状補正プロセスを停止し、補正量を検知した後に再度表面形状補正プロセスを継続するものであってもよい。また、以下の説明においては主に多層膜の削剥を例としているが、後述する実施の形態4に係る場合を除き、補正膜を多層膜の上にさらに積層して補正する場合にももちろん本発明が適用可能である。
【0021】
【実施の形態1】
本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態1と後述する実施の形態2とに係る表面形状補正方法を説明するための図である。この図は、光学素子としてのミラー1の基板22表面に形成された多層膜29の削剥量とそれに対応するミラー1の反射率および反射光の位相との関係を計算により求めた結果を示している(図2も参照)。このミラー1は、例えば波長13.4nmのEUV光を光源とする露光装置の反射光学系において反射光学素子として用いられる。
【0023】
図2に示す多層膜29は、図8に示したものと同様に、膜厚2.8nmのMo膜20と膜厚4.2nmのSi膜21とを1組としてSiO2基板22上に45組積層形成したものである。この多層膜29は所定の波長光、例えば波長13.4nmのEUV光の反射率向上効果を発揮するためのものであり、図1における反射率および反射光の位相は、上記所定波長とは異なる波長光、例えば波長632.8nmのHe−Neレーザ光(以下、測定光という。)23がミラー1に対して垂直入射した場合のミラー1の反射率と反射光の位相とを示している。なお、Mo層20、Si層21、SiO2基板22の入射光23の波長632.8nmにおける屈折率の値は、E.D. Palik編, 「Handbook of Optical Constants of Solids」, 1985年 ,Academic Press Inc社発行,から引用した。図1中の垂直の点線LはMo層20とSi層21とが交互に繰り返し積層されていることを示している。
【0024】
この実施の形態1においては、波長632.8nmのHe−Neレーザを測定光23として用い、ミラー1の反射率を測定することを特徴としている。それにより、図1に示すようにSi層21の削剥量増加に伴い反射率は向上し、Mo層20の削剥量増加に伴い反射率は低下する。このように、ミラー1の反射率の増減が各層20,21の削剥量に対応しているので、この特性を利用してミラー1の反射率を検知しつつミラー1の表面形状補正加工を行うことにより、多層膜29の削剥量を把握することができる。
【0025】
図1に示すように、反射率の変化は約5%の振幅を有し、測定光23が計測容易な波長のHe−Neレーザ光であることから反射光25の測定を容易に行うことができる。このHe−Neレーザ光の波長においてはミラー1の反射率はあまり大きくなく、Mo/Si多層膜29は波長240nm付近で反射率がピークとなるので、ArレーザやNd:YAGレーザの第2高調波等の紫外光を測定光23として用いてもよい。さらに、測定光23として赤外波長域の光を使用した場合は、Mo層20とSi層21とでの吸収係数が大きく異なるので、反射率の変化の振幅がさらに大きくなることが期待できる。
【0026】
多層膜29がMo層20とSi層21とを交互に積層した周期的構造であるため、反射率も周期的な変化を呈している。そのため、ミラー1の反射率と多層膜29の削剥量とは1対1対応の関係となっていない。その場合、1周期に相当するミラー1の反射率の増減が削剥に伴って何回繰り返されたかを計数することにより削剥量の絶対値の把握が可能となる。このように本発明は、多層膜29の削剥量を距離値として直接測定するのではなく、表面に形成された多層膜29の構造を利用してミラー1からの反射光25の反射率を測定することにより、ミラー1表面の形状補正量を把握することを特徴の1つとしている。
【0027】
一方、測定光として波長13.4nmの光を用いた図8に示す例においても、反射率の変化は約1.5%の振幅を有しており、この反射率の変化の振幅を利用して削剥量を検知することも考えられる。しかし、多重干渉により削剥量の変化に対応する反射率の変化の様子が複雑となっており、Mo層・Si層の層境界と反射率の変化との対応付けが困難であること、および波長13.4nmの測定光を用いた反射率の測定が特に「反射率の測定を行いつつ表面形状補正を行う(in−situ)」という条件において容易ではないこと、等を考慮すると波長13.4nmの光を測定光として用いるのは現実的ではない。
【0028】
図2は本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。ミラー1の基板22としては例えば石英(SiO2)が用いられ、図1に示す反射率や位相の計算においても石英の物性値をパラメータとして用いている。しかしながら、測定光23は殆ど基板22には到達しないため、特に石英に限られる必要はなく、他の材質を用いてもよい。通常、波長13.4nmのEUV光用として用いられるミラー用の基板としてはミラー面での光の吸収による熱膨張の影響を低減するため、低膨張性ガラスがよく用いられる。多層膜29はミラー1の表面形状を補正するため、多層膜29の削剥領域10において削剥されている。その削剥領域10に測定光23を入射し、その反射光25を反射光強度測定装置26により測定することで、削剥量10aを検知することができるようになっている。
【0029】
測定光23は、図示しない光源としてのHe−Neレーザ(波長632.8nm)から発せられ、その一部は反射率Rmが既知である分離ミラー28を透過して入射角θで基板表面の多層膜29における削剥領域10に入射するように構成されている。測定光23の残り部分は分離ミラー28で反射されてモニタ光24としてモニタ用強度測定装置27へと至り、測定光23の強度の安定性を監視するためにそのモニタ光強度Iaが測定されるようになっている。分離ミラー28を透過した測定光23は削剥領域10で反射され、反射光25として反射光強度測定装置26へと至り、その反射光強度Ibが測定されるようになっている。多層膜29の反射率RはR=Rm×Ib/Iaとして求められる。この反射率Rの測定を多層膜29の削剥加工とともに行うことにより、反射率Rに対応する削剥量10aを検知することができるようになっている。
【0030】
次に、この表面形状補正方法の手順を説明する。
【0031】
図示しない加工手段によってミラー1の表面形状の補正加工を行う。その際、削剥領域10における削剥量10aを測定しつつ、基板22の表面に形成された多層膜29を部分的に削剥する。削剥量10aの測定に関しては、まず、図示しないHe−Neレーザから発せられた測定光23を分離ミラー28を介して削剥領域10に入射角θで入射する。分離ミラー28によって反射されたモニタ光24の強度Iaをモニタ用強度測定装置27で測定するとともに、分離ミラー28を透過して削剥領域10で反射された反射光25の強度Ibも反射光強度測定装置26で測定する。
【0032】
分離ミラーの反射率Rmを用いて削剥領域10における多層膜29の反射率R=Rm×Ib/Iaとして求める。その反射率Rは図1に示されるように削剥量10aに対応してMo層20とSi層21の境界で反射率の増減が反転し、略反射率35%〜40%の範囲で増減を繰り返す周期的な波形を呈する。したがって、この反射率Rの値を測定するとともにその増減の繰り返し数を計数することにより削剥量10aを検知することができる。なお、この場合において、削剥領域10でない多層膜29の表面部分にも測定光を同条件で入射し、その反射光をも測定することにより、反射光強度測定装置26における測定結果を較正することができる。
【0033】
上記のように、この実施の形態1によれば削剥領域10における反射光の反射率を測定することにより削剥量10aを検知しつつ削剥加工、すなわちミラー1表面の補正加工を行うので、ミラー1の基板22表面の高精度な形状補正を実現することができ、そのミラー1を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる。
【0034】
したがって、この実施の形態1に係る表面形状補正方法によって表面形状補正されたミラー1を投影光学系に用いた場合は、その投影光学系の光学特性は優れたものとなる。もちろんこのミラー1を用いた投影光学系を、光源からの光によってレチクルの回路パターンをウエハに露光投影する露光装置に用いた場合は、露光装置の光学特性が優れたものとなり、高精度なウエハの製造や、ウエハの製造効率の向上を実現することができる。
【0035】
次に、図6及び図7を参照して、上述の露光装置1を利用したデバイスの製造方法の実施例を説明する。図6は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ101(回路設計)ではデバイスの回路設計を行う。ステップ102(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクレチクルを製作する。ステップ103(ウェハ製造)ではシリコンなどの材料を用いてウェハ(被処理体)を製造する。ステップ104(ウェハプロセス)は前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いてリソグラフィ技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ105(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ104によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ106(検査)では、ステップ105で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ107)される。
【0036】
図7は、ステップ104のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ111(酸化)ではウェハの表面を酸化させる。ステップ112(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ113(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ114(イオン打ち込み)ではウェハにイオンを打ち込む。ステップ115(レジスト処理)ではウェハに感光剤を塗布する。ステップ116(露光)では、露光装置1によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ117(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ118(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ119(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施例の製造方法によれば従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0037】
【実施の形態2】
次に、本発明の実施の形態2に係る表面形状補正方法について説明する。この実施の形態2においては、反射率向上効果を発揮する所定波長光とは異なる波長光における位相変化を利用することを特徴としている。図1に示すように、Mo層20の屈折率とSi層21の屈折率との相違により多少の振れはあるものの、削剥量と反射光の位相とは略直線的な関係となっている。削剥量と反射光の移送とが略1対1の対応関係を有するので、反射光の位相を測定することにより削剥量を検知することができる。
【0038】
図1において反射光の反射率は削剥量の増加に伴って周期的に変化するが、反射光の位相は周期的に変化するのでなく略直線的に変化する。そのため、位相の変化量が±2π(rad.)を超えない範囲では削剥量=0のときの位相値を基準として位相の変化量を測定するのみで削剥量を検知することができる。上記実施の形態1においては反射光の反射率の増減の繰り返し回数を計数したが、本実施の形態2においてはそのような計数は必要ない。なお、Mo層20・Si層21を1組とする10組分の多層膜29を削剥しても、位相の変化量は1.5rad.程度であるので、±2π(rad.)の位相の変化量は充分な測定範囲を確保するものである。
【0039】
図3は本発明の実施の形態2に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。この図においては、図2の場合と同様に基板22の表面に多層膜29が形成されている。所定の波長光とは異なる波長光としての図示しないHe−Neレーザ(波長632.8nm)から発せられた測定光34は図示しないコリメータレンズによって平行光に変換され、ハーフミラー31に入射する。ハーフミラー31で反射され参照平面30へと導かれてその参照平面30にて反射された参照光36と、ハーフミラー31を透過して削剥領域10に垂直に入射し、その削剥領域10で反射された反射光35とに分離される。
【0040】
参照光36がハーフミラー31を透過し、反射光35がハーフミラー31で反射され、両者が合成されて被検光37として光学系32へと導かれてCCD等の撮像素子33へと至る。撮像素子33でこの被検光37を観測する際には、参照光36と反射光35との合成による干渉縞が観測される。公知の干渉計等の測定手段を用いてこの干渉縞を測定することにより、被検光37の位相を測定することができ、その被検光37の位相に基づいて削剥量10aを検知することができる。
【0041】
この測定において、削剥領域10でない多層膜29の表面部分にも測定光34を入射し、その反射光35aと参照光36とが合成された光の位相をも測定することにより、削剥領域10からの被検光37の位相と削剥のない表面部分からの光の位相との差異を求めることができる。その位相の差異、すなわち位相の変化量は削剥量10aの絶対値に対応しているので、これら2つの光の位相差を測定することにより削剥量10aの絶対値を検知することができる。
【0042】
上記の削剥量10aの検知とともにミラー1の表面形状補正を行うことにより、ミラー1の基板22表面の高精度な形状補正を実現することができ、そのミラー1を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる。なお、この実施の形態2に係る表面形状補正方法は、削剥領域10aからの反射光と削剥領域10aでない表面部分からの反射光との光路差を利用して削剥量10aの検知を行っているので、基板22表面に多層膜29でなく単層膜が形成されている場合であっても、基板22表面に膜が形成されていない場合であっても適用可能である。
【0043】
【実施の形態3】
図4は本発明の実施の形態3に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。この実施の形態3においては、図示しないX線源から発せられた入射X線40を基板22表面に形成された多層膜29の削剥領域10に入射している。
【0044】
入射X線40が削剥領域10に入射されると、反射X線41とは別に、表層の物質に特有の波長を有する蛍光X線42が散乱される。この蛍光X線42の波長を波長測定装置43で測定することにより、削剥領域10の表層の物質を特定することができる。例えば本実施の形態3においては、蛍光X線42の波長を測定することにより、削剥領域10の表層が、Mo層20であるかSi層21であるかを検知することができる。多層膜29の表層の物質が特定されれば、その特定結果に基づいて削剥量10aを検知することが可能となる。本実施の形態3においては、表層物質を特定することにより削剥量10aを検知するので、削剥量10aを高精度に検知することは困難である。したがって、削剥量10aを高精度に検知するためには、実施の形態1,2のいずれかの方法と組合わせて本実施の形態3に係る表層物質の特定を行うのが望ましい。
【0045】
本実施の形態3のように、数nmオーダーの厚さの多層膜29において蛍光X線42の波長測定を行う場合には、図4に示すように、入射X線40の入射角を略90°とするのが好ましい。入射角が小さければ入射X線40が多層膜29を透過してその深部に到達してしまい、表層の物質のみの測定が困難となってしまうためである。入射X線40の多層膜29における透過が1nm程度である場合は、透過量が多層膜29の各膜厚と比較して小さすぎ、各層(Mo層20、Si層21)の削剥開始時には削剥量10aを検知することが困難となってしまう。したがって、多層膜29において2〜3層程度入射X線40が透過するように入射角を設定することが望ましい。
【0046】
【実施の形態4】
図5は本発明の実施の形態4に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。この実施の形態4においては、削剥領域10が、イオンビーム50によって削剥され、ミラー1の表面形状補正が行われる。イオンビーム50削剥領域10の表層の物質51が除去され、その物質51が雰囲気中に飛散する。飛散した物質51を不図示の試料導入口から質量分析計52に導入して質量分析を行うことにより、削剥領域10において表層となっている物質51を特定することができる。
【0047】
なお、Mo/Si多層膜29において、Moが原子量95.94、Siが原子量28.09であるので、物質51の原子量を測定することにより物質51がMo・Siのいずれであるかを特定することができる。多層膜29の表層の物質51が特定されれば、その特定結果に基づいて削剥量10aを検知することが可能となる。本実施の形態4においては、表層物質51を特定することにより削剥量10aを検知するので、削剥量10aを高精度に検知することは困難である。したがって、削剥量10aを高精度に検知するためには、実施の形態1,2のいずれかの方法と組合せて実施の形態4に係る質量分析を行うことが望ましい。例えば、所定の加工装置によって、Mo層20・Si層21それぞれの層の削剥に要する時間を予め計測しておき、単位時間当たりの各層(20,21)の削剥量を求めておいて、加工時間を測定しつつその加工時間に基づいて削剥量を検知する表面形状補正方法にこの実施の形態4に係る質量分析を適用すれば、別途特別な測定装置等を要しないので好適である。
なお、本発明における実施の形態1〜4に係る表面形状補正方法や削剥量の検知方法は、互いに組合わせて使用することができる。その補正方法の種類や環境に応じて種々組合わせることにより、削剥量の検知精度がさらに向上するため、安定した表面形状補正を行うことができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば光学素子の基板表面の形状を0.1nmのオーダで検知することができるので、より高精度な表面形状補正が可能になることに加えて、光学素子がミラーの場合はより反射率の高いミラーを得ることが可能となる。したがって、その光学素子を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1,2に係る表面形状補正方法を説明するための図であり、ミラーの基板表面に形成された多層膜の削剥量とそれに対応するミラーの反射率および反射光の位相との関係を計算により求めた結果を示したものである。
【図2】本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法によって表面形状が補正されたミラーを投影光学系に用いた露光装置による露光工程を有するデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6に示すステップ104の詳細なフローチャートである。
【図8】従来の表面形状補正方法の例を説明するための図であり、膜厚2.8nmのMo膜と膜厚4.2nmのSi膜とを1組としてSiO2基板上に45組積層形成した多層膜を削剥した場合に、波長13.4nmの光をミラー表面に垂直入射させたときのミラー反射率と反射光の位相とがどのように変化するかを示した図である。
【符号の説明】
Ia:モニタ光強度
Ib:反射光強度
R:多層膜の反射率
1:ミラー(光学素子)
10a:削剥量
22:基板
23,34:測定光(波長632.8nmのHe−Neレーザ光)
25,35,35a:反射光
10a:削剥量
29:多層膜
37:被検光
40:入射X線
41:反射X線
42:蛍光X線
51:表層の物質
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に多層膜が形成された光学素子の基板表面の形状補正を行う表面形状補正方法に係り、特に、例えばEUV光やF2レーザ光を光源とする光学系に用いられる反射光学素子の表面形状補正方法に関する。より具体的には、感光基板としてのウエハに回路パターンを露光投影することにより、ICやLSI等の半導体デバイス・CCD等の撮像デバイス・液晶パネル等の表示デバイス・磁気ヘッド等の検出デバイスを製造する露光装置の光学系に用いられるミラーに適用可能な表面形状補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路に要求される回路パターンの微細化に伴い、半導体製造装置(露光装置)の次世代を担う露光方式としてEUV光(Extreme Ultra Violet:極短紫外光) を用いる方式(以下、EUV方式という。)が提案されている。EUV方式は、例えば従来の光露光で用いられてきた光の波長の1/10以下である13.4nmという短い波長の光(EUV光)を用いて、露光原版としてのレチクル上の回路パターン像を反射結像光学系により感光基板としてのウェハに露光転写するものである。このEUV方式においては、EUV光の波長が極めて短波長であるため光学部材における光の透過特性が著しく低下する。そのため、透過光学系を用いることが困難となり、一般にミラーを用いた反射光学系が用いられる。
【0003】
しかしながら、EUV光の波長領域においては良好な反射特性を発揮する反射材料があまり多くないため、ミラー表面に反射増加効果を示す多層膜を構成することにより反射率を向上させる場合がある。このような多層膜の構成として知られるものに、Mo/Si多層膜がある。これはMo(モリブデン)層とSi(シリコン)層の2層を1組として複数組積層して多層膜としたもので、例えば、1組の層厚さをEUV光の波長13.4nmの約半分となる7nmとして40〜50組み積層したものがある。各層の境界面で反射されるEUV光が互いに同位相で干渉するように構成されているため、ミラー表面にこのMo/Si多層膜を形成すると高い反射率を得ることができる。
【0004】
ただし、Mo/Si多層膜を表面に形成してもEUV光に対するミラーの反射率は70%程度であるので、光学系内に多数のミラーを構成すると累積的に光の強度が低下してしまう。したがって、EUV光を用いた反射光学系内で使用されるミラー枚数は極力少ないほうが望ましく、その少ない枚数のミラーで要求される結像光学性能を満足する必要がある。
【0005】
現在、EUVを光源とする露光装置の実験機では、3枚または4枚のミラー構成で開口数NA=0.10程度の光学系が用いられているが、6枚のミラー構成で開口数NA=0.25〜0.30程度の光学系の実現が将来的な目標とされている。このような高性能の光学系を少ない枚数のミラーで実現するためには、ミラー表面を高精度に加工・計測し、高精度な表面形状とすることが重要である。
【0006】
しかしながら光源光が短波長であることにより、ミラー等の光学素子の表面形状には一層の高精度が要求される。例えば、光学系の性能を評価するパラメータとして、ストレール強度i(P)(Strehl intensity:無収差光学系における点像の最大強度を1とした場合の相対強度のピーク値を採用すると、M. Born and E. Wolf著,Principles of Optics第6版,Pergamon Press社発行,464頁,の式(24)に示されるように、
【0007】
【数1】
【0008】
と表される。ここで、i(P)はストレール強度、DFPは波面収差のrms値、DFP/λ は波面収差rms値を波長単位としたものを示す。
【0009】
異なる波長で用いられる2つの光学系のストレール強度を同じにするにはこの波長単位の波面収差rms値を等しくする必要があるが、その場合、上式より明らかなように、波長が短いほうが要求される誤差精度の値も小さくなり厳しいものとなる。
【0010】
また、レンズを用いる透過光学系でなく、ミラーを用いる反射光学系であることも、レンズ面に比べてミラー面の形状に一層の高精度が要求される要因となる。すなわち、ミラーの場合は光を反射させるので、光を透過させるレンズの場合に比べてその表面形状誤差が光路長に与える影響が2倍となる。さらに、レンズの場合は雰囲気(例えば空気)の屈折率とレンズ基材の屈折率との差(通常0.5程度)に対応して光の位相に影響を与えるのに対し、ミラーの場合は雰囲気の屈折率そのもの(通常1.0程度)に対応して光の位相に影響を与えるので、表面形状誤差が光の位相すなわち波面収差に与える影響の程度はミラーの場合がレンズの場合の4倍程度も大きい。
【0011】
上記のような事情から、EUV光を光源として反射光学系によって構成されるEUV投影光学系において各ミラー面に許容される面形状誤差は rms値で0.1nm程度であるとされている。この値は、現状の加工・計測技術を考慮してもなお容易に達成可能な値とはいえない。
このような事情に対応すべく、以下のような提案もなされている。例えば、雰囲気の屈折率に近い屈折率の媒質による形状補正膜をミラー表面に別途塗布し、この形状補正膜を加工することにより形状補正を行う方法が開示されたものがある(例えば、特許文献1)。雰囲気と形状補正膜との屈折率差が小さいので、位相補正をするにあたってあまり高い加工精度は必要とされないが、EUV光の波長領域においてはこの形状補正膜による光の吸収が懸念される。
【0012】
また、別の提案として反射特性向上用の膜自体を削剥する方法が開示されたものもある(例えば、非特許文献1参照)。Mo/Si多層膜においてMoの屈折率は0.93であり真空雰囲気(すなわち屈折率は1)との屈折率差があるので、Mo膜を削剥すると位相変化が生じて結果として表面形状補正ができることが示されている。
【0013】
図8は、この従来の表面形状補正方法の例を説明するための図であり、膜厚2.8nmのMo膜と膜厚4.2nmのSi膜とを1組としてSiO2基板上に45組積層形成した多層膜を削剥した場合に、波長13.4nmの光をミラー表面に垂直入射させたときのミラー反射率と反射光の位相とがどのように変化するかを示したものである。なお、ここで用いた各媒質の屈折率はインターネットにおいて公開されたものから引用した(例えば、非特許文献2)。Si膜の屈折率は略1.0であるため、図8に示されるようにSi膜の削剥によっては反射光の位相変化は殆ど生じない。上記非特許文献1には、この性質を利用してSi膜の膜厚分の加工尤度に基づいてMo膜を除去することにより、0.1nmオーダに相当する精度の表面形状補正を可能にする方法が開示されている。この多層膜の一部を削剥するという方法は補正可能な表面形状の量は小さいものの、反射率への影響が小さいという点が好ましい。
【0014】
【特許文献1】
米国特許第5,757,017号明細書
【非特許文献1】
エム・ヤマモト(M. Yamamoto)著,「ヌクレアーインスツルメントアンドメソッドインフィジックスリサーチ(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A), 467−468巻 」,2001年,p.1282−1285,発行元ELSEVIER社<URL:http://www.elsevier.com/>
【非特許文献2】
センターフォーエックスレイオプティクス(Center for X−Ray Optics),[online],[平成15年3月28日検索],インターネット<URL:http://www−cxro.lbl.gov/>
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記文献に開示の両方法ともミラー表面の補正加工に対する要求精度を低減することができるが、その加工に必要な補正量の計測が必要である。しかしながら、上記開示の方法における形状補正膜や反射率向上用多層膜の加工方法、それらの加工を行う際に必要となる補正量(削剥量乃至積層量)の測定方法については開示されていない。
【0016】
削剥や積層といった加工方法には、イオンビームエッチングやDCマグネトロンスパッタリング等の従来から知られている方法を利用することもでき、多層膜を削剥する方法においては、削剥量の測定は以下の点からも重要である。すなわち、この方法は一般に、Si膜を表層に残してMo膜を除去することにより、段階的に位相補正を行おうとするものである。しかし図8に示されるように、Mo膜を表層に残した状態で削剥を停止し、Mo膜の中間部分において反射光の位相が変化する性質を利用することにより、さらに高精度な面形状補正が可能となる。さらに、反射率はMo膜削剥の中間部分で最大となることやSi膜の中間部分においても反射率が異なること等から、少しでも高い反射率を得たい場合にはその削剥量を正確に検知してその検知量に基づいて膜の削剥を行う必要がある。このように、膜厚に比して充分小さいオーダ、すなわちサブミクロンのオーダで削剥量や積層量を測定することは重要である。
【0017】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、光学素子(例えばミラー)の基板表面の高精度な形状補正を実現することができ、その光学素子を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる表面形状補正方法を提供することを例示的目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の例示的目的を達成するために、本発明の一側面としての表面形状補正方法は、光学素子の基板表面に形成された多層膜を削剥することにより光学素子表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、削剥量の検知を行いつつ光学素子表面の形状補正を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、基板の表面形状を補正するための補正膜の積層、または反射率向上用の多層膜の削剥により基板表面の形状補正を行う方法であり、補正量としての積層量・削剥量を検知しつつ表面形状補正を行う方法に係る。ここにおいて、補正量の検知は表面形状補正プロセス(すなわち積層加工・削剥加工)の進行と同時に行われるのが望ましいが、もちろんそれに限られるものではなく、一旦表面形状補正プロセスを停止し、補正量を検知した後に再度表面形状補正プロセスを継続するものであってもよい。また、以下の説明においては主に多層膜の削剥を例としているが、後述する実施の形態4に係る場合を除き、補正膜を多層膜の上にさらに積層して補正する場合にももちろん本発明が適用可能である。
【0021】
【実施の形態1】
本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態1と後述する実施の形態2とに係る表面形状補正方法を説明するための図である。この図は、光学素子としてのミラー1の基板22表面に形成された多層膜29の削剥量とそれに対応するミラー1の反射率および反射光の位相との関係を計算により求めた結果を示している(図2も参照)。このミラー1は、例えば波長13.4nmのEUV光を光源とする露光装置の反射光学系において反射光学素子として用いられる。
【0023】
図2に示す多層膜29は、図8に示したものと同様に、膜厚2.8nmのMo膜20と膜厚4.2nmのSi膜21とを1組としてSiO2基板22上に45組積層形成したものである。この多層膜29は所定の波長光、例えば波長13.4nmのEUV光の反射率向上効果を発揮するためのものであり、図1における反射率および反射光の位相は、上記所定波長とは異なる波長光、例えば波長632.8nmのHe−Neレーザ光(以下、測定光という。)23がミラー1に対して垂直入射した場合のミラー1の反射率と反射光の位相とを示している。なお、Mo層20、Si層21、SiO2基板22の入射光23の波長632.8nmにおける屈折率の値は、E.D. Palik編, 「Handbook of Optical Constants of Solids」, 1985年 ,Academic Press Inc社発行,から引用した。図1中の垂直の点線LはMo層20とSi層21とが交互に繰り返し積層されていることを示している。
【0024】
この実施の形態1においては、波長632.8nmのHe−Neレーザを測定光23として用い、ミラー1の反射率を測定することを特徴としている。それにより、図1に示すようにSi層21の削剥量増加に伴い反射率は向上し、Mo層20の削剥量増加に伴い反射率は低下する。このように、ミラー1の反射率の増減が各層20,21の削剥量に対応しているので、この特性を利用してミラー1の反射率を検知しつつミラー1の表面形状補正加工を行うことにより、多層膜29の削剥量を把握することができる。
【0025】
図1に示すように、反射率の変化は約5%の振幅を有し、測定光23が計測容易な波長のHe−Neレーザ光であることから反射光25の測定を容易に行うことができる。このHe−Neレーザ光の波長においてはミラー1の反射率はあまり大きくなく、Mo/Si多層膜29は波長240nm付近で反射率がピークとなるので、ArレーザやNd:YAGレーザの第2高調波等の紫外光を測定光23として用いてもよい。さらに、測定光23として赤外波長域の光を使用した場合は、Mo層20とSi層21とでの吸収係数が大きく異なるので、反射率の変化の振幅がさらに大きくなることが期待できる。
【0026】
多層膜29がMo層20とSi層21とを交互に積層した周期的構造であるため、反射率も周期的な変化を呈している。そのため、ミラー1の反射率と多層膜29の削剥量とは1対1対応の関係となっていない。その場合、1周期に相当するミラー1の反射率の増減が削剥に伴って何回繰り返されたかを計数することにより削剥量の絶対値の把握が可能となる。このように本発明は、多層膜29の削剥量を距離値として直接測定するのではなく、表面に形成された多層膜29の構造を利用してミラー1からの反射光25の反射率を測定することにより、ミラー1表面の形状補正量を把握することを特徴の1つとしている。
【0027】
一方、測定光として波長13.4nmの光を用いた図8に示す例においても、反射率の変化は約1.5%の振幅を有しており、この反射率の変化の振幅を利用して削剥量を検知することも考えられる。しかし、多重干渉により削剥量の変化に対応する反射率の変化の様子が複雑となっており、Mo層・Si層の層境界と反射率の変化との対応付けが困難であること、および波長13.4nmの測定光を用いた反射率の測定が特に「反射率の測定を行いつつ表面形状補正を行う(in−situ)」という条件において容易ではないこと、等を考慮すると波長13.4nmの光を測定光として用いるのは現実的ではない。
【0028】
図2は本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。ミラー1の基板22としては例えば石英(SiO2)が用いられ、図1に示す反射率や位相の計算においても石英の物性値をパラメータとして用いている。しかしながら、測定光23は殆ど基板22には到達しないため、特に石英に限られる必要はなく、他の材質を用いてもよい。通常、波長13.4nmのEUV光用として用いられるミラー用の基板としてはミラー面での光の吸収による熱膨張の影響を低減するため、低膨張性ガラスがよく用いられる。多層膜29はミラー1の表面形状を補正するため、多層膜29の削剥領域10において削剥されている。その削剥領域10に測定光23を入射し、その反射光25を反射光強度測定装置26により測定することで、削剥量10aを検知することができるようになっている。
【0029】
測定光23は、図示しない光源としてのHe−Neレーザ(波長632.8nm)から発せられ、その一部は反射率Rmが既知である分離ミラー28を透過して入射角θで基板表面の多層膜29における削剥領域10に入射するように構成されている。測定光23の残り部分は分離ミラー28で反射されてモニタ光24としてモニタ用強度測定装置27へと至り、測定光23の強度の安定性を監視するためにそのモニタ光強度Iaが測定されるようになっている。分離ミラー28を透過した測定光23は削剥領域10で反射され、反射光25として反射光強度測定装置26へと至り、その反射光強度Ibが測定されるようになっている。多層膜29の反射率RはR=Rm×Ib/Iaとして求められる。この反射率Rの測定を多層膜29の削剥加工とともに行うことにより、反射率Rに対応する削剥量10aを検知することができるようになっている。
【0030】
次に、この表面形状補正方法の手順を説明する。
【0031】
図示しない加工手段によってミラー1の表面形状の補正加工を行う。その際、削剥領域10における削剥量10aを測定しつつ、基板22の表面に形成された多層膜29を部分的に削剥する。削剥量10aの測定に関しては、まず、図示しないHe−Neレーザから発せられた測定光23を分離ミラー28を介して削剥領域10に入射角θで入射する。分離ミラー28によって反射されたモニタ光24の強度Iaをモニタ用強度測定装置27で測定するとともに、分離ミラー28を透過して削剥領域10で反射された反射光25の強度Ibも反射光強度測定装置26で測定する。
【0032】
分離ミラーの反射率Rmを用いて削剥領域10における多層膜29の反射率R=Rm×Ib/Iaとして求める。その反射率Rは図1に示されるように削剥量10aに対応してMo層20とSi層21の境界で反射率の増減が反転し、略反射率35%〜40%の範囲で増減を繰り返す周期的な波形を呈する。したがって、この反射率Rの値を測定するとともにその増減の繰り返し数を計数することにより削剥量10aを検知することができる。なお、この場合において、削剥領域10でない多層膜29の表面部分にも測定光を同条件で入射し、その反射光をも測定することにより、反射光強度測定装置26における測定結果を較正することができる。
【0033】
上記のように、この実施の形態1によれば削剥領域10における反射光の反射率を測定することにより削剥量10aを検知しつつ削剥加工、すなわちミラー1表面の補正加工を行うので、ミラー1の基板22表面の高精度な形状補正を実現することができ、そのミラー1を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる。
【0034】
したがって、この実施の形態1に係る表面形状補正方法によって表面形状補正されたミラー1を投影光学系に用いた場合は、その投影光学系の光学特性は優れたものとなる。もちろんこのミラー1を用いた投影光学系を、光源からの光によってレチクルの回路パターンをウエハに露光投影する露光装置に用いた場合は、露光装置の光学特性が優れたものとなり、高精度なウエハの製造や、ウエハの製造効率の向上を実現することができる。
【0035】
次に、図6及び図7を参照して、上述の露光装置1を利用したデバイスの製造方法の実施例を説明する。図6は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ101(回路設計)ではデバイスの回路設計を行う。ステップ102(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクレチクルを製作する。ステップ103(ウェハ製造)ではシリコンなどの材料を用いてウェハ(被処理体)を製造する。ステップ104(ウェハプロセス)は前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いてリソグラフィ技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ105(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ104によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ106(検査)では、ステップ105で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ107)される。
【0036】
図7は、ステップ104のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ111(酸化)ではウェハの表面を酸化させる。ステップ112(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ113(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ114(イオン打ち込み)ではウェハにイオンを打ち込む。ステップ115(レジスト処理)ではウェハに感光剤を塗布する。ステップ116(露光)では、露光装置1によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ117(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ118(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ119(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施例の製造方法によれば従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0037】
【実施の形態2】
次に、本発明の実施の形態2に係る表面形状補正方法について説明する。この実施の形態2においては、反射率向上効果を発揮する所定波長光とは異なる波長光における位相変化を利用することを特徴としている。図1に示すように、Mo層20の屈折率とSi層21の屈折率との相違により多少の振れはあるものの、削剥量と反射光の位相とは略直線的な関係となっている。削剥量と反射光の移送とが略1対1の対応関係を有するので、反射光の位相を測定することにより削剥量を検知することができる。
【0038】
図1において反射光の反射率は削剥量の増加に伴って周期的に変化するが、反射光の位相は周期的に変化するのでなく略直線的に変化する。そのため、位相の変化量が±2π(rad.)を超えない範囲では削剥量=0のときの位相値を基準として位相の変化量を測定するのみで削剥量を検知することができる。上記実施の形態1においては反射光の反射率の増減の繰り返し回数を計数したが、本実施の形態2においてはそのような計数は必要ない。なお、Mo層20・Si層21を1組とする10組分の多層膜29を削剥しても、位相の変化量は1.5rad.程度であるので、±2π(rad.)の位相の変化量は充分な測定範囲を確保するものである。
【0039】
図3は本発明の実施の形態2に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。この図においては、図2の場合と同様に基板22の表面に多層膜29が形成されている。所定の波長光とは異なる波長光としての図示しないHe−Neレーザ(波長632.8nm)から発せられた測定光34は図示しないコリメータレンズによって平行光に変換され、ハーフミラー31に入射する。ハーフミラー31で反射され参照平面30へと導かれてその参照平面30にて反射された参照光36と、ハーフミラー31を透過して削剥領域10に垂直に入射し、その削剥領域10で反射された反射光35とに分離される。
【0040】
参照光36がハーフミラー31を透過し、反射光35がハーフミラー31で反射され、両者が合成されて被検光37として光学系32へと導かれてCCD等の撮像素子33へと至る。撮像素子33でこの被検光37を観測する際には、参照光36と反射光35との合成による干渉縞が観測される。公知の干渉計等の測定手段を用いてこの干渉縞を測定することにより、被検光37の位相を測定することができ、その被検光37の位相に基づいて削剥量10aを検知することができる。
【0041】
この測定において、削剥領域10でない多層膜29の表面部分にも測定光34を入射し、その反射光35aと参照光36とが合成された光の位相をも測定することにより、削剥領域10からの被検光37の位相と削剥のない表面部分からの光の位相との差異を求めることができる。その位相の差異、すなわち位相の変化量は削剥量10aの絶対値に対応しているので、これら2つの光の位相差を測定することにより削剥量10aの絶対値を検知することができる。
【0042】
上記の削剥量10aの検知とともにミラー1の表面形状補正を行うことにより、ミラー1の基板22表面の高精度な形状補正を実現することができ、そのミラー1を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる。なお、この実施の形態2に係る表面形状補正方法は、削剥領域10aからの反射光と削剥領域10aでない表面部分からの反射光との光路差を利用して削剥量10aの検知を行っているので、基板22表面に多層膜29でなく単層膜が形成されている場合であっても、基板22表面に膜が形成されていない場合であっても適用可能である。
【0043】
【実施の形態3】
図4は本発明の実施の形態3に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。この実施の形態3においては、図示しないX線源から発せられた入射X線40を基板22表面に形成された多層膜29の削剥領域10に入射している。
【0044】
入射X線40が削剥領域10に入射されると、反射X線41とは別に、表層の物質に特有の波長を有する蛍光X線42が散乱される。この蛍光X線42の波長を波長測定装置43で測定することにより、削剥領域10の表層の物質を特定することができる。例えば本実施の形態3においては、蛍光X線42の波長を測定することにより、削剥領域10の表層が、Mo層20であるかSi層21であるかを検知することができる。多層膜29の表層の物質が特定されれば、その特定結果に基づいて削剥量10aを検知することが可能となる。本実施の形態3においては、表層物質を特定することにより削剥量10aを検知するので、削剥量10aを高精度に検知することは困難である。したがって、削剥量10aを高精度に検知するためには、実施の形態1,2のいずれかの方法と組合わせて本実施の形態3に係る表層物質の特定を行うのが望ましい。
【0045】
本実施の形態3のように、数nmオーダーの厚さの多層膜29において蛍光X線42の波長測定を行う場合には、図4に示すように、入射X線40の入射角を略90°とするのが好ましい。入射角が小さければ入射X線40が多層膜29を透過してその深部に到達してしまい、表層の物質のみの測定が困難となってしまうためである。入射X線40の多層膜29における透過が1nm程度である場合は、透過量が多層膜29の各膜厚と比較して小さすぎ、各層(Mo層20、Si層21)の削剥開始時には削剥量10aを検知することが困難となってしまう。したがって、多層膜29において2〜3層程度入射X線40が透過するように入射角を設定することが望ましい。
【0046】
【実施の形態4】
図5は本発明の実施の形態4に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示したものである。この実施の形態4においては、削剥領域10が、イオンビーム50によって削剥され、ミラー1の表面形状補正が行われる。イオンビーム50削剥領域10の表層の物質51が除去され、その物質51が雰囲気中に飛散する。飛散した物質51を不図示の試料導入口から質量分析計52に導入して質量分析を行うことにより、削剥領域10において表層となっている物質51を特定することができる。
【0047】
なお、Mo/Si多層膜29において、Moが原子量95.94、Siが原子量28.09であるので、物質51の原子量を測定することにより物質51がMo・Siのいずれであるかを特定することができる。多層膜29の表層の物質51が特定されれば、その特定結果に基づいて削剥量10aを検知することが可能となる。本実施の形態4においては、表層物質51を特定することにより削剥量10aを検知するので、削剥量10aを高精度に検知することは困難である。したがって、削剥量10aを高精度に検知するためには、実施の形態1,2のいずれかの方法と組合せて実施の形態4に係る質量分析を行うことが望ましい。例えば、所定の加工装置によって、Mo層20・Si層21それぞれの層の削剥に要する時間を予め計測しておき、単位時間当たりの各層(20,21)の削剥量を求めておいて、加工時間を測定しつつその加工時間に基づいて削剥量を検知する表面形状補正方法にこの実施の形態4に係る質量分析を適用すれば、別途特別な測定装置等を要しないので好適である。
なお、本発明における実施の形態1〜4に係る表面形状補正方法や削剥量の検知方法は、互いに組合わせて使用することができる。その補正方法の種類や環境に応じて種々組合わせることにより、削剥量の検知精度がさらに向上するため、安定した表面形状補正を行うことができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば光学素子の基板表面の形状を0.1nmのオーダで検知することができるので、より高精度な表面形状補正が可能になることに加えて、光学素子がミラーの場合はより反射率の高いミラーを得ることが可能となる。したがって、その光学素子を用いた光学系の光学特性を向上させることができ、ひいてはその光学系を用いた露光装置等の光学機器の光学特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1,2に係る表面形状補正方法を説明するための図であり、ミラーの基板表面に形成された多層膜の削剥量とそれに対応するミラーの反射率および反射光の位相との関係を計算により求めた結果を示したものである。
【図2】本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係る表面形状補正方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示した図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る表面形状補正方法によって表面形状が補正されたミラーを投影光学系に用いた露光装置による露光工程を有するデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6に示すステップ104の詳細なフローチャートである。
【図8】従来の表面形状補正方法の例を説明するための図であり、膜厚2.8nmのMo膜と膜厚4.2nmのSi膜とを1組としてSiO2基板上に45組積層形成した多層膜を削剥した場合に、波長13.4nmの光をミラー表面に垂直入射させたときのミラー反射率と反射光の位相とがどのように変化するかを示した図である。
【符号の説明】
Ia:モニタ光強度
Ib:反射光強度
R:多層膜の反射率
1:ミラー(光学素子)
10a:削剥量
22:基板
23,34:測定光(波長632.8nmのHe−Neレーザ光)
25,35,35a:反射光
10a:削剥量
29:多層膜
37:被検光
40:入射X線
41:反射X線
42:蛍光X線
51:表層の物質
Claims (16)
- 光学素子の基板表面に形成された多層膜を削剥することにより該光学素子表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、
前記削剥量の検知を行いつつ該光学素子表面の形状補正を行うことを特徴とする表面形状補正方法。 - 多層膜が形成された光学素子の基板表面に対して補正膜を積層することにより該光学素子表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、
前記積層量の検知を行いつつ該光学素子表面の形状補正を行うことを特徴とする表面形状補正方法。 - 前記光学素子がミラーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面形状補正方法。
- 前記多層膜が、所定の波長光に対する前記光学素子の反射率を向上させるために、少なくとも2以上の異なる層を周期的に繰り返し積層したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面形状補正方法。
- 前記所定の波長光と異なる波長光に対する前記光学素子の反射率を測定することにより前記削剥量又は前記積層量の検知を行うことを特徴とする請求項4に記載の表面形状補正方法。
- 前記多層膜の削剥又は前記補正膜の積層に伴う前記所定の波長光と異なる波長光に対する前記光学素子の反射率の増減の繰り返し数を計数することを特徴とする請求項5に記載の表面形状補正方法。
- 前記光学素子で反射された前記所定の波長光と異なる波長光の位相を測定することにより前記削剥量又は前記積層量の検知を行うことを特徴とする請求項4に記載の表面形状補正方法。
- 前記多層膜を構成する各層の単位時間当たりの削剥量を予め求めておき、削剥に要した時間と前記単位時間当たりの削剥量とに基づいて前記多層膜の削剥量を検知することを特徴とする実施態様1に記載の表面形状補正方法。
- 少なくとも2以上の異なる物質が積層されて構成された前記多層膜の表層にX線を入射して散乱される蛍光X線に基づいて前記多層膜の表層の物質を特定することにより前記削剥量の検知を行うことを特徴とする請求項1に記載の表面形状補正方法。
- 少なくとも2以上の異なる物質が積層されて構成された前記多層膜の表層物質の質量分析を行うことにより前記削剥量の検知を行うことを特徴とする請求項1に記載の表面形状補正方法。
- 光学素子の基板表面に形成された多層膜を削剥することにより該光学素子表面の形状補正を行う表面形状補正方法であって、
前記削剥量の検知を行うステップと、
該光学素子表面の形状補正を行うステップとを特徴とする表面形状補正方法。 - 所定の波長光に対する光学素子の反射率を向上させるために、該光学素子の基板表面に少なくとも2以上の異なる層を周期的に繰り返し積層して形成された多層膜の削剥量を検知することにより該光学素子表面の形状測定を行う表面形状測定方法であって、
前記所定の波長光と異なる波長光に対する前記光学素子の反射率を測定することにより前記削剥量の検知を行うことを特徴とする表面形状測定方法。 - 請求項1に記載の表面形状補正方法によって表面形状が補正されたミラー。
- 請求項1に記載の表面形状補正方法によって表面形状が補正された前記光学素子を有して構成される投影光学系。
- 照明光源と、請求項14に記載の投影光学系とを有して構成され、レチクル上の回路パターンをウエハに投影する露光装置。
- 請求項15に記載の露光装置によって被処理体を投影露光する工程と、前記投影露光された被処理体に所定のプロセスを行う工程とを有するデバイスの製造方法。
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