JP2005010612A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents
定着装置および画像形成装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005010612A JP2005010612A JP2003176342A JP2003176342A JP2005010612A JP 2005010612 A JP2005010612 A JP 2005010612A JP 2003176342 A JP2003176342 A JP 2003176342A JP 2003176342 A JP2003176342 A JP 2003176342A JP 2005010612 A JP2005010612 A JP 2005010612A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- heat
- roll
- fixing
- belt
- sheet material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Fixing For Electrophotography (AREA)
Abstract
【課題】熱ロール型定着装置の構造の単純化、小型化、コスト低減を可能にし、シート材の剥離性を高め、シート材へのストレスを小さくしてカールの発生や皺発生など排出されるシート材の変形をなくす。
【解決手段】熱定着ロール1と、該熱定着ロール1に押圧する加圧ロール2と、該加圧ロール2の外周に捲着され熱定着ロール1との間に挟持されて移動する耐熱ベルト3と、該耐熱ベルト3を張架するベルト張架部材4とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置又は該定着装置を搭載した画像形成装置において、ベルト張架部材4と加圧ロール2との間で耐熱ベルト3に張力を付与して張架し熱定着ロール1に耐熱ベルト3を巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材8を定着ニップ出口側に近接配設した。
【選択図】 図1
【解決手段】熱定着ロール1と、該熱定着ロール1に押圧する加圧ロール2と、該加圧ロール2の外周に捲着され熱定着ロール1との間に挟持されて移動する耐熱ベルト3と、該耐熱ベルト3を張架するベルト張架部材4とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置又は該定着装置を搭載した画像形成装置において、ベルト張架部材4と加圧ロール2との間で耐熱ベルト3に張力を付与して張架し熱定着ロール1に耐熱ベルト3を巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材8を定着ニップ出口側に近接配設した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され前記熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写材(シート材)上に未定着のトナー像を接触加熱定着する加熱ロール型定着装置では、その定着ニップに未定着トナー像を形成したシート材を通過させて定着すると、シート材は、熱定着ロールの外周に沿って変形するカール習性が付与されて熱定着ロール側に巻き付きやすくなる。そのため、加熱ロール型定着装置のシート材の排出側に、通常、定着ロールからシート材を剥離するために剥離爪や剥離板が設けられる(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
例えば特許文献1は、定着ロール等のシート移送体に対向して、シート剥離爪として、シート状材料で形成されて基部根元に剛性を緩和する手段を設けて突出した可撓性を有する複数の突出部を撓ませて摺擦配設し、シート移送体からシート材を剥離する構造を有するものである。特許文献2は、剥離板として、一対の定着ローラ回転体に対向して、弾性を有する板状部材の基部根元から複数のスリットを形成した遊端部を撓ませて摺擦配設し、回転体からシート材を剥離する構造を有するものである。特許文献3は、剥離板として、2つの回転体により形成するニップ部から排出される記録材に接触して一方の回転体の軸方向に沿って一部を回転体の回転方向上流側に位置させて配置し、剥離板の回転体側の側縁がニップ部から排出される記録材に接触させることで、回転体から記録材を剥離する構造を有するものである。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−61030号公報
【0005】
【特許文献2】
実開昭53−117249号公報
【0006】
【特許文献3】
特開2002−287554号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1、2の剥離爪や剥離板を定着ロール等のシート移送体や定着ローラ回転体に当接させ撓ませてシート材を剥離する構造では、それらの摺擦部において摺擦圧力の如何にかかわらず定着ロール等のシート移送体や定着ローラ回転体の表面に損傷、磨耗、劣化を引き起こしやすいという問題を有している。
【0008】
また、特許文献3の剥離板によりシート材を剥離する構造では、記録材に接触させることで、定着ローラに摺擦させないで剥離を行うようにしているが、定着ローラからの輻射熱により剥離板が昇温して熱膨張し、その膨張量に差異が生じると、定着ローラの近傍において膨張応力によってウエブ状に変形するという問題が生じる。しかも、定着ローラが軸方向に不均一な温度分布を有し、高温部位と低温部位での剥離性の差異に対応して剥離しやすい部位から円滑に剥離を行えるように、軸方向に剥離板の両端部又は中央部が突出した円弧状にするものであるため変形しやすく、定着ローラに一部摺擦したり、逆に記録材に接触させることができなくなるなどの問題を生じる。
【0009】
特に、昨今の画像形成装置においては、高速化に伴い、定着ニップを稼ぐため、定着ローラ回転体を柔らかくし、さらに、表層にトナーの剥離性を良くするために、例えばPFA(ペルオキシ−アルコキシ−フッソ樹脂)の層を設けるものが多くなっている。そのため、表面が傷つきやくなっていることである。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、熱ロール型定着装置の構造の単純化、小型化、コスト低減を可能にし、シート材の剥離性を高め、シート材へのストレスを小さくしてカールの発生や皺発生など排出されるシート材の変形をなくすようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され前記熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置又は該定着装置を搭載した画像形成装置において、前記ベルト張架部材と前記加圧ロールとの間で前記耐熱ベルトに張力を付与して張架し前記熱定着ロールに前記耐熱ベルトを巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材を前記定着ニップ出口側に近接配設したことを特徴とする。
【0012】
前記熱定着ロールは、ロール基材の外周に弾性体を被覆して形成し、前記加圧ロールは、前記熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面を有して構成し、さらに前記弾性体の表層にPFA層を設けたことを特徴とする。
【0013】
前記加圧ロールは、ロール基材の外周に前記熱定着ロールの弾性体より薄い厚みの弾性体を被覆して形成し、前記熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より前記硬質な表面の押圧によって熱定着ロールの弾性層を弾性変形させ前記シート材にカール習性を付与し、ロール基材が前記熱定着ロールのロール基材より外径を小さくし、前記熱定着ロール及び前記前記加圧ロールは、略均一な弾性変形をして前記定着ニップが水平ニップになるようにしたことを特徴とする。
【0014】
前記ベルト張架部材は、前記耐熱ベルトが摺動する摺動部材であり、半月状部材であり、前記熱定着ロールと前記加圧ロールとの押圧部より前記耐熱ベルトの移動方向上流側又は下流側に揺動可能に支持され、前記熱定着ロールの方向に付勢する揺動付勢手段によって揺動付勢されていることを特徴とする。
【0015】
また前記ベルト張架部材は、シート材の非通過時に前記ベルト張架部材と耐熱ベルトとの間にギャップを形成し、シート材の通過時にはベルト張架部材をシート材を介して熱定着ロールに押圧するように構成し、一端又は両端に前記耐熱ベルトの端部を位置規制する位置規制突壁が設けられていることを特徴とする。
【0016】
前記シート材案内部材は、耐熱性プラスチック素材で打ち抜き加工により形成したものであり、前記ベルト張架部材と前記加熱ロールとの間に前記耐熱ベルトの内周面に摺接してクリーニング部材を配置したことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の定着装置の1実施形態を示し、図1(A)は断面図、図1(B)は図1(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図であり、装置の右半分は省略している。図中、1は熱定着ロール、1aはハロゲンランプ、1bはロール基材、1cは弾性体、2は加圧ロール、2aは回転軸、2bはロール基材、2cは弾性体、3は耐熱ベルト、4はベルト張架部材、4aは突壁、5はシート材、5aは未定着トナー像、6はクリーニング部材、7はフレーム、8はシート材案内部材、9はスプリング、Lは押圧部接線を示す。
【0018】
図1において、熱定着ロール1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体1cを被覆して形成し、ロール基材1bの内部に加熱源として1050W、2本の柱状ハロゲンランプ1aを内蔵して回転可能にしたものである。加圧ロール2は、外径25mm程度、あるいは24.8mmと熱定着ロール1のロール基材1bより外径を小さくした、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材2bとして、その外周に厚み0.2〜0.3mm程度の弾性体2cを被覆して形成し、熱定着ロール1の弾性層より硬質に構成する。この加圧ロール2は、熱定着ロール1に対向して配置され、熱定着ロール1と加圧ロール2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成すると共に、図示矢印方向に回転可能にする。そして、加圧ロール2とベルト張架部材4との協動により耐熱ベルト3に張力を付与し、耐熱ベルト3を張架して熱定着ロール1に巻き付け定着ニップを形成して、この定着ニップに未定着トナー像5aを形成したシート材5を通過させて定着する構造になっている。
【0019】
本実施形態においては、熱定着ロール1の内部に2本の加熱源1aを内蔵しており、このハロゲンランプの発熱エレメントを異なった配置に構成して選択的に点灯すると、後述する耐熱ベルト3が熱定着ロール1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材4が熱定着ロール1に摺接する部位のような異なった条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材とのように異なった条件下での温度コントロールを容易に行うことができる。
【0020】
耐熱ベルト3は、熱定着ロール1と加圧ロール2との間に挟持されて加圧ロール2とベルト張架部材4の外周に張架され移動可能になったエンドレスのベルトであり、0.03mm以上の厚みを有するステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、ポリイミドやシリコン等の耐熱樹脂等管で構成される。
【0021】
ベルト張架部材4は、熱定着ロール1と加圧ロール2のニップ部よりもシート材5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロール2の回転軸2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材4は、シート材5が定着ニップを非通過の状態において耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架する構成にしている。シート材が定着ニップに進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材先端に折れた状態で定着される場合があるが、耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架する構成にすると、シート材の進入がスムーズに成される導入口部が形成でき、安定したシート材の進入を可能にする。
【0022】
このベルト張架部材4は、耐熱ベルト3の内周に嵌挿して加圧ロール2と協働して耐熱ベルト3に張力fを付与すると共に、耐熱ベルト3を熱定着ロール1に巻き付けてニップを形成する位置に配置した、略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルト3はベルト張架部材4上を摺動する)である。ベルト張架部材4は、耐熱ベルト3が熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部接線Lより熱定着ロール1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁4aは、ベルト張架部材4の一端または両端に突設され、耐熱ベルト3が一方に寄った場合にこの突壁4aに当接して寄り規制を行うためのものである。ベルト張架部材4は、突壁4aの熱定着ロール1と反対側端部のフレームとの間にスプリング9が配設され、スプリング9により熱定着ロール1に軽押圧され、熱定着ロール1に摺接して位置決めされる。
【0023】
耐熱ベルト3を加圧ロール2とベルト張架部材4により張架して加圧ロール2で安定して駆動するには、加圧ロール2と耐熱ベルト3との摩擦係数をベルト張架部材4と耐熱ベルト3との摩擦係数より大きく設定するとよいが、摩擦係数に関しては異物の侵入や摩耗などによって不安定になる場合がある。これに対し、加圧ロール2と耐熱ベルト3の巻き付け角よりベルト張架部材4と耐熱ベルト3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロール2の径よりベルト張架部材4の径が小さくなるように設定すると、耐熱ベルト3がベルト張架部材4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき耐熱ベルト3を加圧ロールで安定して駆動することができる。
【0024】
クリーニング部材6は、加圧ロール2とベルト張架部材4との間に配置して耐熱ベルト3の内周面に摺接して耐熱ベルト3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものであり、このような異物や摩耗粉等をクリーニングすることで耐熱ベルト3をリフレッシュして不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材4に設けた凹部4fは、この除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0025】
シート材5は、ベルト張架部材4が熱定着ロール1に軽押圧される位置をニップ初期位置として耐熱ベルト3と熱定着ロール1との間を通過することで未定着トナー像5aが定着され、熱定着ロール1に加圧ロール2が押圧する位置をニップ終了位置として押圧部接線Lの方向に排出される。
【0026】
シート材案内部材8は、定着ニップ出口側に熱定着ロール1及び耐熱ベルトとは空隙を有して近接配設され、シート材5の排出を案内するものであり、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、PPS等の耐熱性を有する板状樹脂材8aからなる。
【0027】
図2は定着ニップ出口側に近接配設するシート材案内部材の斜視図である。定着ニップ出口側に近接して、つまり熱定着ロール1と耐熱ベルト3に近接して配設されるシート材案内部材8は、図2に示すようにシート材案内方向に取り付け部8bから延びる複数のスリット8cを有するものであり、打ち抜き加工によって定着ニップ幅と略同等幅で形成し、取り付け基体に耐熱性両面テープなどの結合手段により保持される。上記構成の基にシート材5の巻き付きは基本的にローラ構成で排除していて、定着ニップ出口側に配設したシート材5の排出を案内するシート案内部材8は、定着ニップ幅と略同等幅で形成して熱定着ロール1及び耐熱ベルト3とは空隙を有して配設するので、相対的に摺擦することがなく、熱定着ロール1及び耐熱ベルト3に磨耗あるいは劣化などの表面状態の損傷を引き起こすことはない。
【0028】
一方、シート案内部材8は、定着ニップの出口側、つまり熱定着ロール1及び耐熱ベルト3と近接配置することにより、これらに摺擦しなくても熱定着ロール1等からの輻射熱によって昇温して熱膨張し、その膨張量に差異が生じると、プラスチック素材などの熱膨張率の大きな素材には、膨張応力によってウエブ状に変形する場合がある。しかし、本実施形態のシート案内部材8では、板状の耐熱性樹脂素材に複数のスリット8cを設けているので、膨張応力を開放してウエブ状に変形するのを防止することができ、変形により部分的に摺擦して熱定着ロール1や耐熱ベルト3の表面を磨耗させ、劣化させ、損傷させるような事態を回避することができる。
【0029】
本実施形態によれば、熱定着ロール1および加圧ロール2の外径を25mm程度の小径に構成しているため、定着後のシート材5が熱定着ロール1または耐熱ベルト3に巻き付くこともなく、シート材5を強制的に剥がすための剥離爪や剥離板などの手段を不要にしている。さらに、熱定着ロール1の弾性体1cの表層に約30μmのPFA(ペルオキシ−アルコキシ−フッソ樹脂)層を設ければ、その分だけ剛性が向上すると共にトナーの剥離性をよくすることができる。
【0030】
本来、定着ニップに未定着トナー像5aを形成したシート材5を通過させて定着すると、シート材5は、熱定着ロール1の外周に沿って変形するカール習性が付与されて熱定着ロール1側に巻き付きやすくなるものである。しかし、上記のように熱定着ロール1および加圧ロール2の外径を小径に構成し、熱定着ロール1の弾性体1cの表層にPFA層を設ければ、その分だけ剛性が向上してシート材5の剥離性をよくすることができる。また、弾性体1c、2cの厚みは異なっても、略均一な弾性変形をして所謂水平ニップを形成させて熱定着ロール1の周速に対して耐熱ベルト3またはシート材5の搬送速度に差異が生じることもなくし、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0031】
さらに、熱定着ロール1および加圧ロール2の外径を小径に構成すると共に、加圧ロール2を熱定着ロール1の表面に被覆した弾性層よりも硬質な表面を有して構成すると、定着ニップを通過したシート材5は、自らの復帰力(通称これをシート材の腰と称す)と、熱定着ロール1の表面に被覆した弾性層よりも硬質な加圧ロール2の押圧によって熱定着ロール1の弾性層をシート材5が熱定着ロール1から離れる方向に弾性変形させてシート材5にカール習性を付与することができる。そのことにより、定着後のシート材5が熱定着ロール1に巻き付くこともなくなるようにし、強制的に剥がすための手段をなくすことができる。
【0032】
一方、耐熱ベルト3方向に関しては、加圧ロール2と熱定着ロール1の硬質度バランスと押圧力によって、シート材5に付与される、熱定着ロール1から離れる方向のカール習性量は容易に調整可能である。したがって、定着後のシート材5が耐熱ベルト3に巻き付くこともないので、強制的に剥がすための手段が不要になるが、シート材5は、吸湿やシート繊維状態又は構成素材などで予期せぬ特質ももたらすことがあり、また、シート材ジャムなどの予期せぬ対応として強制的に剥がすための手段としてまでは機能発揮を要しないが、安全性を考慮して排出経路を定めておくとトラブルレスな構成に有効である。
【0033】
上記のように熱定着ロール1の弾性層をシート材5が熱定着ロール1から離れる方向に弾性変形させてシート材5にカール習性を付与して、定着後のシート材5が熱定着ロール1に巻き付くことを防止する目的からすると、加圧ロール2の表面に硬質な弾性層を被覆せずに、ロール基材のままであってもよく、安価な加圧ロール2で機能達成できる。
【0034】
次に、加圧ロール2とベルト張架部材4の支持構造について説明する。加圧ロール2の両端の回転軸2aは、図1(B)に示すように左右のフレーム7に軸受7aを介して回転自在に支持されている。加圧ロール2の回転軸2aの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。これにより、ベルト張架部材4は、スプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢され耐熱ベルト3に張力fが付与される構造になっている。
【0035】
本実施形態においては、ベルト張架部材4として、耐熱ベルト3を摺動させる非回転部材として使用し、回転部材ではないので軸受等が不要であり、支持構造が簡単になる。加えてベルト張架部材4を略半月状とすることにより、加圧ロール2側にその半月欠方向を向けて配置し、加圧ロール2に対して極限まで接近した配置が可能になる。このことによりまた、耐熱ベルト3の周長を短縮して構成することが可能になる。したがって、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にすることができる。
【0036】
また、耐熱ベルト3が必要最小限の経路で移動するので、耐熱ベルト3は、加熱源を内蔵して回転可能な熱定着ロール1とのニップ部で加熱され、所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができると共に、周長が短いので、自然放熱による温度低下も少なく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0037】
また、耐熱ベルト3は、加圧ロール2とベルト張架部材4の協働によって張力が付与されて熱定着ロール1に巻き付けて定着ニップを形成しているので、容易にニップ長を長く構成することができ、構造が簡単になり小型で安価にすることができる。
【0038】
また、シート材5の上に形成した未定着トナー像を安定して定着するには、未定着トナー像を十分に溶融して定着することが必須であり、所望の温度と溶融時間を必要とするが、本実施形態による構成では、ニップ長を長く構成するために熱定着ロールの表面に被覆した弾性体を大きく歪ませてニップ長を長くするような手段は必要ないので、弾性体の厚みは薄く構成可能である。しかも、弾性体を歪ませるために加圧ロール2の圧接圧力を大きく設定する必要もなく、未定着トナー像を担持したシート材5が熱定着ロール1と耐熱ベルト3の間を通過するときに通過するシート材5へのストレスが小さいので、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材5に皺発生などのシート材5の変形が抑制される。
【0039】
したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロール1の薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルト3を加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロール2も同様に薄肉厚化が可能であり、熱容量を小さく構成できるので、耐熱ベルト3からの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0040】
図3〜図6は、図1の詳細構造を示し、図3は図1(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図、図4は、図1(A)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図、図5は図4で耐熱ベルト3を装着した図、図6は図5でシート材の通過時の状態を示す図である。
【0041】
図3および図4において、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1に摺接面4gで摺接し位置決めされている。ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設け、押圧面4hは定着ロール1と同心円状に形成されている。具体的には、ギャップは110μm程度の段差で構成し、耐熱ベルト3は80μm程度の厚みで構成し、これにより30μm程度の空隙を確保し、60μm程度の厚みを有するシート材でも安定した定着を可能にしている。
【0042】
図5は耐熱ベルト3を装着した図であり、耐熱ベルト3は、熱定着ロール1と加圧ロール2間のニップ部に圧接されると共に、その上流側で熱定着ロール1に巻き付けてニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧している。
【0043】
定着工程の前工程でシート材上に未定着トナー像を形成するプロセス工程の速度と、定着工程の速度を完全に一致させることは、量産上の種々の部品寸法のバラツキを考慮すると現実的ではない。そこで、このバラツキを考慮してシート材上に未定着トナー像を形成するプロセス工程の速度に比較して定着工程の速度を早くするか遅くするか、いずれか一方側に設定して前後工程の速度バランスを構築するが、定着ニップにシート材が進入する初期位置でシート材を確実にグリップしてシート材の進入速度を明確にする必要があり、上記のように構成すると、この目的が達成される。
【0044】
また、ロールの弾性体表面と耐熱ベルト表面は同一の周速度で移動してシート材上に形成した未定着トナー像を定着するものであるが、耐熱ベルト表面がウエーブ状になっていたりシート材先端部がウエーブ状になっていたりすると、定着開始状態が不安定になる場合がある。そこで、ニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧する構成にすると、双方の合流状態が安定するので、極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になる。
【0045】
そして、本実施形態においては、シート材5が非通過のこの状態では、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間にギャップGが形成されている。従って、ウオーミングアップ時には、前記ギャップGの空隙が断熱層となって熱定着ロール1から耐熱ベルト3を介して奪い取る熱量が小さくなるので、熱ロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。
【0046】
一方、シート材5が定着ニップを通過する時は、図6に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1から離間され、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間のギャップGはなくなって、シート材5は定着ニップ部において耐熱ベルト3に押圧され、熱定着ロール1に押圧されるので、この押圧力をスプリング9(図1)により所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0047】
また、ギャップGの存在のため、ベルト張架部材4が熱定着ロール1から加熱されて蓄熱する熱量が少ないので、シート材5が定着ニップに進入したときにシート材5上に形成された未定着トナー像5aの反対側の面は、熱容量の小さな耐熱ベルト3を冷却するが、ベルト張架部材4側から加熱される熱量は少ない構成となっている。そのため、シート材5上の第1面に形成した未定着トナー像を定着した後に再び反対側の第2面に未定着トナー像を定着する両面画像定着の場合には、第2面を定着するときに先に定着した第1面の画像を必要以上に加熱して画像を乱すことがない。
【0048】
本実施形態においては、図1(A)に示すように、揺動付勢手段としてアシストするスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向上流側に配置している。熱定着ロール1または加圧ロール2の一方を駆動すると耐熱ベルト3が駆動され、この駆動力と耐熱ベルト3とベルト張架部材4の摺動摩擦力によってベルト張架部材4は熱定着ロール1方向に揺動するが、この揺動移動力のみではシート材5上に形成した未定着トナー像を定着する定着圧力が不足する場合がある。そこで、この揺動移動力をアシストして所望の定着圧力に設定すると極めて安定した未定着トナー像の定着が可能となる。
【0049】
図7は、本実施形態の特徴を説明するための図であり、図7(A)は断面図、図7(B)はニップ通過位置における定着圧力を示す図である。本実施形態においては、揺動付勢手段であるスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向上流側に配置しているため、テコのメカニズムにより図7(B)に示すように、ニップ初期位置から熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部に向かって連続的に加圧力を高めることが可能であり、シート材に変曲点のあるストレスを付与しないので、定着画像に定着ムラ等が発生せず、極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になるばかりでなく、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形を抑制することができる。
【0050】
このとき、ニップ初期位置での押圧力をP1、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力をP3、ニップ初期位置と押圧部位との間での押圧力をP2としたとき、P1<P2<P3の関係となり、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力P3が最高圧になる。例えばシート材の表面に凹凸があったり、OHPシートなどのように表面が極めて平滑で気密性に富んだ材質で溶融したトナー像が浸透しにくい場合には、シート材がニップを通過する最後の段階で溶融したトナーに対して溶融段階より高い圧力を付与するので、溶融したトナーの表面をより平滑にならしめるとともに、シート材への浸透作用を促進して定着画像をさらに安定させることができる。
【0051】
図8は、図1の定着装置の変形例を示し、図8(A)は断面図、図8(B)は図8(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。なお、以下の説明において、前述の実施形態と同一の構成については同一番号を付して説明を省略する。
【0052】
本例が図1の実施形態と比較して相違する点は、図1の実施形態においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aと共通の軸で所定の角度分、揺動可能に構成しているのに対して、本例においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aとは異なる軸7bで所定の角度分、揺動可能に構成している点である。
【0053】
すなわち、回転軸2aの軸心とは異なる位置に配置した軸7bの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。これにより、ベルト張架部材4は、スプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢され耐熱ベルト3に張力fが付与される構造になっている。
【0054】
これにより、ベルト張架部材4に作用する回転モーメントを変化させることができ(図8の例では回転モーメントを大きくさせる)、軸7bの位置により耐熱ベルト3と熱定着ロール1の圧接する圧接力を調整することができる。なお、本例においても、図3に示すように、ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設けている。
【0055】
図9は、図1の定着装置の変形例を示す断面図である。本例においては、ベルト張架部材4をロール状の非回転部材としている。なお、本例においても、図3に示すように、ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設けている。
【0056】
図10〜図11は、本発明の定着装置の他の実施形態を示し、図10(A)は断面図、図10(B)は図10(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図、図11はシート材非通過時の状態を示し、図11(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図11(B)は図11(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図、図12はシート材通過時の状態を示し、図12(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図12(B)は図12(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。なお、前記実施形態と同一の構成については同一番号を付けて説明を省略する。
【0057】
前記実施形態がベルト張架部材4を熱定着ロール1と加圧ロール2の押圧部よりもシート材5搬送方向上流側に配設したのに対して、本実施形態は、図10に示すように、ベルト張架部材4は、熱定着ロール1と加圧ロール2の押圧部よりもシート材5搬送方向下流側に配設され、加圧ロール2の回転軸2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。このベルト張架部材4は、耐熱ベルト3の内周に嵌挿して加圧ロール2と協働して耐熱ベルト3に張力fを付与すると共に、耐熱ベルト3を熱定着ロール1に巻き付けてニップを形成する位置に配置した、半月状のベルト摺動部材である。ベルト張架部材4は、耐熱ベルト3を熱定着ロール1に巻き付けてニップを形成するニップ終了位置で熱定着ロール1の接線Lに接する位置に配置される。
【0058】
シート材5は、ベルト張架部材4が熱定着ロール1に圧接する位置をニップ初期位置として耐熱ベルト3と熱定着ロール1との間を通過することで未定着トナー像5aが定着され、ニップ終了位置で押圧部接線Lの方向に排出される。
【0059】
図11に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1に摺接面4gで摺接し位置決めされている。ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設け、押圧面4hは定着ロール1と同心円状に形成されている。具体的には、ギャップは110μm程度の段差で構成し、耐熱ベルト3は80μm程度の厚みで構成し、これにより30μm程度の空隙を確保し、60μm程度の厚みを有するシート材でも安定した定着を可能にしている。
【0060】
耐熱ベルト3は、熱定着ロール1と加圧ロール2間のニップ部に圧接されるとともに、その下流側で熱定着ロール1に巻き付けてニップ終了位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧している。
【0061】
そして、本実施形態においては、シート材5が非通過のこの状態では、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間にギャップGが形成されている。従って、ウオーミングアップ時には、前記ギャップGの空隙が断熱層となって熱定着ロール1から耐熱ベルト3を介して奪い取る熱量が小さくなるので、熱ロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。
【0062】
一方、シート材5が定着ニップを通過する時は、図12に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1から離間され、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間のギャップGはなくなって、シート材5は定着ニップ部において耐熱ベルト3に押圧され、熱定着ロール1に押圧されるので、この押圧力をスプリング9(図1)により所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0063】
また、ギャップGの存在のため、ベルト張架部材4が熱定着ロール1から加熱されて蓄熱する熱量が少ないので、シート材5が定着ニップに進入したときにシート材5上に形成された未定着トナー像5aの反対側の面は、熱容量の小さな耐熱ベルト3を冷却するが、ベルト張架部材4側から加熱される熱量は少ない構成となっている。そのため、シート材5上の第1面に形成した未定着トナー像を定着した後に再び反対側の第2面に未定着トナー像を定着する両面画像定着の場合には、第2面を定着するときに先に定着した第1面の画像を必要以上に加熱して画像を乱すことがない。
【0064】
熱定着ロール1または加圧ロール2の一方を駆動すると耐熱ベルト3が駆動され、この駆動力と耐熱ベルト3とベルト張架部材4の摺動摩擦力によってベルト張架部材4は熱定着ロール1から離れる方向に揺動移動するが、この揺動移動力に打ち勝ってベルト張架部材4を所望の付勢力で熱定着ロール1方向に付勢して、所望の定着圧力を設定すると極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になる。
【0065】
そこで、本実施形態においては、揺動付勢手段としてアシストするスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向下流側に配置している。
【0066】
図13はベルト張架部材4の揺動移動力をアシストした場合の定着圧力を示している。本実施形態においては、スプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向下流側に配置しているため、テコのメカニズムにより図13に示すように、熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部位から連続的に加圧力を低減して付与することが可能であり、シート材に変曲点のあるストレスを付与しないので、定着画像に定着ムラ等が発生せず、極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になるばかりでなく、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形を抑制することができる。
【0067】
このとき、ニップ終了位置での押圧力をP1’、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力をP3、前記ニップ終了位置と押圧部位との間での押圧力をP2としたとき、P1’<P2<P3の関係となり、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力P3が最高圧になる。
【0068】
図14は、図10の実施形態の変形例を示し、図14(A)は断面図、図14(B)は図14(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【0069】
本実施形態が図10の実施形態と比較して相違する点は、前記実施形態においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aと共通の軸で所定の角度分、揺動可能に構成しているのに対して、本実施形態においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aとは異なる軸7bで所定の角度分、揺動可能に構成している点である。
【0070】
すなわち、回転軸2aの軸心とは異なる位置に配置した軸7bの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。これにより、ベルト張架部材4は、スプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢され耐熱ベルト3に張力fが付与される構造になっている。
【0071】
これにより、ベルト張架部材4に作用する回転モーメントを変化させることができ(図14の例では回転モーメントを大きくさせる)、耐熱ベルト3と熱定着ロール1の圧接する圧接力を調整することができる。
【0072】
本発明においては、熱定着ロールまたは加圧ロールが駆動ロールとなるが、この場合、安定な駆動を実現するには、硬い方のロールを駆動側とし、柔らかい方のロールを従動側とするのが好適である。加圧ロール2は、その外周に耐熱ベルト3を捲着して熱定着ロール1の表面に被覆した弾性体1cに対して耐熱ベルト3を圧接して駆動し、熱定着ロール1は従動する構成となる。加圧ロール2は、耐熱ベルト3、即ち、未定着トナー像5aを担持したシート材5の搬送スピードを決定付けるので、少なくとも熱定着ロール1の表面に被覆した弾性体1cより硬質な表面を有した構成とする。このことにより変形することなく搬送スピードを安定して駆動することができる。
【0073】
本発明においては、上記した構造に加えて、回転速度の選択を組み合わせることもできる。その駆動速度の制御について説明する。駆動手段は、熱定着ロール1及び加圧ロール2を駆動するために2つの回転速度を有し、シート材特性に応じて熱定着ロール1及び加圧ロール2を第1の回転速度とそれより遅い第2の回転速度で選択駆動する。この回転速度は、シート材特性を検知する検知手段を配置すると共に、予めシート材特性に応じた回転速度などの選択情報を設定する設定手段を設け、未定着トナー像5aを担持したシート材6の進行過程でシート材特性を検知すると、未定着トナー像5aを担持したシート材5の定着指令過程でシート材特性に応じた設定をして、その設定内容に応じ回転速度が選択され駆動される。設定手段としては、定着指令に先立って熱ロール型定着装置に連動する部位をマニュアル操作したり、電気的な信号等によって遠隔操作してもよい。
【0074】
未定着トナー像5aを担持したシート材5は、紙等の一般的なシート材、熱容量の大きな厚めのシート材、透明なシート材(OHPシート材)等の多様な用途への適用が必須である。一般的なシート材に比べて、特に、熱容量の大きな厚めのシート材や封筒等の積層されたシート材、透明なシート材(OHPシート材)等においては、未定着トナー像5aを十分溶融してシート材に定着するために、所望の溶融時間を要する。このような場合、シート材特性に応じて熱定着ロール1及び加圧ロール2を第1の回転速度とそれより遅い第2の回転速度で選択駆動することにより、未定着トナー像5aの溶融が適正化され、所望の定着が達成できる。
【0075】
そして、第1の回転速度または第2の回転速度で選択的に駆動しても、未定着トナー像5aを担持したシート材5が熱定着ロール1と耐熱ベルト3の間を通過するときに通過するシート材5へのストレスには変化がなくて小さいので、未定着トナー像5aの定着後に排出されるシート材5に対し皺発生などのシート材変形が抑制される。したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロール薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルトを加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロール2も同様に薄肉厚化が可能であり、熱容量が小さく達成できるので、耐熱ベルト3からの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。なお、選択的に駆動する選択手段としては、例えば駆動モータの回転数を選択的に可変する等の手段が好適である。
【0076】
図15は、本発明の画像形成装置の1実施形態を示す全体構成の模式的断面図である。図中、10は画像形成装置、10aはハウジング、10bは扉体、11は紙搬送ユニット、15はクリーニング手段、17は像担持体、18は画像転写搬送手段、20は現像手段、21はスキャナ手段、30は給紙ユニット、40は定着手段、Wは露光ユニット、Dは画像形成ユニットを示す。
【0077】
図15において、画像形成装置10は、ハウジング10aと、ハウジング10aの上部に形成された排紙トレイ10cと、ハウジング10aの前面に開閉自在に装着された扉体10bを有し、ハウジング10a内には、露光ユニット(露光手段)W、画像形成ユニットD、画像転写搬送手段18を有する転写ベルトユニット29、給紙ユニット30が配設され、扉体10b内には紙搬送ユニット11が配設されている。各ユニットは、本体に対して着脱可能な構成であり、メンテナンス時等には一体的に取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0078】
画像形成ユニットDは、複数(本実施形態では4つ)の異なる色の画像を形成する画像形成ステーションY(イェロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備えている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kには、それぞれ、感光ドラムからなる像担持体17と、像担持体17の周囲に配設された、コロナ帯電手段からなる帯電手段19および現像手段20を有する。これら各画像形成ステーションY,M,C,Kは、転写ベルトユニット29の下側に斜めアーチ状のラインに沿って像担持体17が上向きになるように並列配置されている。なお、各画像形成ステーションY,M,C,Kの配置順序は任意である。
【0079】
転写ベルトユニット29は、ハウジング10aの下側に配設され図示しない駆動源により回転駆動される駆動ロール12と、駆動ロール12の斜め上方に配設される従動ロール13と、テンションロール14と、これら3本、少なくとも2本のロール間に張架されて図示矢印方向へ循環駆動される中間転写ベルトからなる画像転写搬送手段18と、画像転写搬送手段18の表面に当接するクリーニング手段15とを備えている。従動ロール13、テンションロール14および画像転写搬送手段18は、駆動ロール12に対して図で左側に傾斜する方向に配設され、これにより画像転写搬送手段18駆動時のベルト搬送方向が下向きになるベルト面18aが下方に位置し、搬送方向が上向きになるベルト面18bが上方に位置するようにされている。
【0080】
したがって、各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図で左側に傾斜する方向に配設されることになる。そして、像担持体17は、アーチ状のラインに沿って画像転写搬送手段18の搬送方向下向きのベルト面18aに接触され、図示矢印に示すように画像転写搬送手段18の搬送方向に回転駆動される。可撓性を有する無端スリーブ状の画像転写搬送手段18は、像担持体17に対して上側から被せるように略同一の巻き付け角度で接触させるため、像担持体17と画像転写搬送手段18との間の接触圧やニップ幅は、テンションロール14により画像転写搬送手段18に付与される張力、像担持体17の配置間隔、巻き付け角度(アーチの曲率)などを制御することにより調整することができる。
【0081】
駆動ロール12は、2次転写ロール39のバックアップロールを兼ねている。駆動ロール12の周面には、例えば厚さ3mm程度、体積抵抗率が105 Ω・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、2次転写ロール39を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ロール12に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、2次転写部へシート材が進入する際の衝撃が画像転写搬送手段18に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。また、駆動ロール12は、その径を従動ロール13、バックアップロール14の径より小さくすることにより、2次転写後のシート材がシート材自身の弾性力で剥離し易くすることができる。また、従動ロール13を後述するクリーニング手段15のバックアップロールとして兼用させている。
【0082】
なお、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して図で右側に傾斜する方向に配設し、これに対応して各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図で右側に傾斜する方向に斜めアーチ状に沿って配設してもよい。
【0083】
クリーニング手段15は、搬送方向下向きのベルト面18a側に設けられ、二次転写後に画像転写搬送手段18の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード15aと、回収したトナーを搬送するトナー搬送部材15bを備えている。クリーニングブレード15aは、従動ロール13への画像転写搬送手段18の巻きかけ部において画像転写搬送手段18に当接されている。また、画像転写搬送手段18の裏面には、後述する各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に対向して1次転写部材16が当接され、1次転写部材16には転写バイアスが印加されている。
【0084】
露光手段Wは、斜め方向に配設された画像形成ユニットDの斜め下方に形成された空間に配設されている。また、露光手段Wの下部でハウジング10aの底部には給紙ユニット30が配設されている。露光手段Wは、全体がケースに収納され、ケースは、搬送方向下向きのベルト面の斜め下方に形成される空間に配設されている。ケースの底部には、ポリゴンミラーモータ21a、ポリゴンミラー(回転多面鏡)21bからなる単一のスキャナ手段21を水平に配設されるとともに、各色の画像信号により変調される複数のレーザ光源23からのレーザビームをポリゴンミラー21bで反射させ各像担持体上に偏向走査する光学系Bには、単一のf−θレンズ22および各色の走査光路が像担持体17にそれぞれ非平行になって折り返すように複数の反射ミラー24が配設されている。
【0085】
上記構成からなる露光手段Wにおいては、ポリゴンミラー21bから各色に対応した画像信号が、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成されたレーザビームで射出され、f−θレンズ22、反射ミラー24を経て、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に照射され、潜像が形成される。反射ミラー24を設けることにより走査光路を屈曲させ、ケースの高さを低くすることが可能となり光学系のコンパクト化が可能となる。しかも、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17への走査光路長は同一の長さになるように反射ミラー24が配置されている。このように各画像形成ユニットDに対する露光手段Wのポリゴンミラー21bから像担持体17までの光路の長さ(光路長)が略同一の長さになるように構成することにより、各光路で走査された光ビームの走査幅も略同一になり、画像信号の形成にも特別な構成を必要としない。したがって、レーザ光源は、それぞれ異なる画像信号によってそれぞれ異なった色の画像に対応して変調されるにも関わらず、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成可能であり、共通の反射面を用いるため副走査方向の相対差から生じる色ずれを防止し、構造が簡単で安価なカラー画像形成装置を構成できる。
【0086】
また、本実施形態においては、装置下方に走査光学系を配置することにより、画像形成手段の駆動系が装置を支持するフレームへ与える振動による走査光学系の振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。とくに、スキャナ手段21をケースの底部に配置することにより、ポリゴンモータ21a自身がケース全体に与える振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。また、振動源であるポリゴンモータ21aの数を一つにすることによりケース全体に与える振動を最小限にすることができる。
【0087】
給紙ユニット30は、シート材が積層保持されている給紙カセット35と、給紙カセット35からシート材を一枚ずつ給送するピックアップロール36を備えている。紙搬送ユニット11は、二次転写部へのシート材の給紙タイミングを規定するゲートロール対37(一方のロールはハウジング10a側に設けられている)と、駆動ロール12および画像転写搬送手段18に圧接される二次転写手段としての二次転写ロール39と、主記録媒体搬送路38と、定着手段40と、排紙ロール対41と、両面プリント用搬送路42を備えている。
【0088】
シート材に2次転写された2次画像(未定着トナー像)は、定着手段40の形成するニップ部で所定の温度で定着される。本例においては、転写ベルトの搬送方向上向きのベルト面18bの斜め上方に形成される空間、換言すれば、転写ベルトに対して画像形成ステーションと反対側の空間に定着手段40を配設することが可能になり、露光手段W、画像転写搬送手段18、画像形成手段への熱伝達を低減することができ、各色の色ずれ補正動作を行う頻度を少なくすることができる。特に、露光手段Wは、定着手段40から最も離れた位置にあり、走査光学系部品の熱による変位を最小限にすることができ、色ズレを防ぐことができる。
【0089】
本実施形態においては、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して傾斜する方向に配設しているため、図で右側空間に広いスペースが生じその空間に定着手段40を配設することができ、コンパクト化を実現することができると共に、定着手段40で発生する熱が、左側に位置する露光ユニットW、画像転写搬送手段18および各画像形成ステーションY,M,C,Kへ伝達されるのを防止することができる。また、画像形成ユニットDの左側下部の空間に露光ユニットWを配置することができるため、画像形成手段の駆動系がハウジング10aへ与える振動による、露光ユニットWの走査光学系の振動を最小限に抑えることができ、画質の劣化を防止することができる。
【0090】
また、クリーニング手段を設置しないことに伴い、帯電手段としてはコロナ帯電手段19を採用している。帯電手段がロールである場合は、微量ではあるが像担持体17上に存在する1次転写残りトナーがロール上に堆積して帯電不良が発生するが、非接触帯電手段であるコロナ帯電手段19はトナーが付着しにくく、帯電不良の発生を防ぐことができる。
【0091】
また、本実施形態では、中間転写ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としたが、表面にシート材を吸着して搬送移動し、該シート材の表面にトナー像を順次重ねて転写して画像を形成搬送するシート材搬送ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としてもよい。この場合、画像転写搬送手段18であるシート材搬送ベルトのベルト搬送方向が像担持体17に接触する下面で逆方向の上向きになる。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば実施の形態では、各色の現像器をロータリーフレームに搭載したロータリー式のカラー画像形成装置により説明したが、各色の現像器を並べて配置したタンデム式のカラー画像形成装置、白黒、モノカラーの画像形成装置においても同様に適用できることはいうまでもない。
【0093】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置において、ベルト張架部材と加圧ロールとの間で耐熱ベルトに張力を付与して張架し熱定着ロールに耐熱ベルトを巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材を定着ニップ出口側に近接配設したので、熱定着ロールおよび加圧ロールの外径を小径に構成することができると共に、定着ニップを長くすることができる。したがって、充分な長さの定着ニップでの画像定着を実現し、定着後のシート材が熱定着ロールまたは耐熱ベルトに巻き付かないようにすることができ、シート材を強制的に剥がすための剥離爪や剥離板などの手段を省くことができる。また、シート材案内部材は、複数のスリットを設けて定着ニップの出口側、つまり熱定着ロール及び耐熱ベルトと近接配置することにより、熱定着ロールなどからの輻射熱により膨張してウエブ状に変形するのを防止することができ、相対的に摺擦することがなく、熱定着ロールや耐熱ベルトに磨耗あるいは劣化などの表面状態の損傷を引き起こすのを防止することができる。
【0094】
熱定着ロールは、ロール基材の外周に弾性体を被覆して形成し、加圧ロールは、熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面を有して構成し、さらに弾性体の表層にPFA層を設けたことにより、弾性体の厚みは異なっても、略均一な弾性変形をして所謂水平ニップを形成させることができ、熱定着ロールの周速に対して耐熱ベルトまたはシート材の搬送速度に差異が生じることもなく、極めて安定した画像定着が可能となる。また、剛性を向上させると共にトナーの剥離性をよくすることができる。
【0095】
加圧ロールは、ロール基材の外周に熱定着ロールの弾性体より薄い厚みの弾性体を被覆して形成し、熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面の押圧によって熱定着ロールの弾性層を弾性変形させシート材にカール習性を付与し、ロール基材が熱定着ロールのロール基材より外径を小さくすることにより、熱定着ロールの弾性層をシート材が熱定着ロールから離れる方向に弾性変形させてシート材にカール習性を付与することができ、そのことにより、定着後のシート材が熱定着ロールに巻き付かないようにすることができる。
【0096】
また、ベルト張架部材として、耐熱ベルト摺動部材を使用することにより、軸受等が不要になり、支持構造が簡単になる。加えてベルト張架部材を半月状とすることにより、加圧ロール側にその半月欠方向を向けて配置し、加圧ロールに対して極限まで接近した配置が可能になる。このことによりまた、耐熱ベルトの周長を短縮して構成することが可能になり、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にすることができる。さらに、耐熱ベルトが必要最小限の経路で移動するので、加熱源を内蔵して回転可能な熱定着ロールとのニップ部で加熱された耐熱ベルトは、所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができると共に、周長が短いので、自然放熱による温度低下も少なく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミング時間の短縮が可能である。
【0097】
シート材の非通過時にベルト張架部材と耐熱ベルトとの間にギャップを形成し、シート材の通過時にはベルト張架部材をシート材を介して熱定着ロールに押圧するように構成するので、シート材が非通過の状態では、耐熱ベルトとベルト張架部材との間にギャップが形成されるため、ウオーミングアップ時には、ギャップの空隙が断熱層となって熱定着ロールから耐熱ベルトを介して奪い取る熱量が小さくなり、熱ロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。一方、シート材が定着ニップを通過する時は、耐熱ベルトとベルト張架部材との間のギャップGはなくなって、シート材は定着ニップ部において耐熱ベルトに押圧され、熱定着ロールに押圧されるので、安定した定着が可能となる。このとき、押圧力を揺動付勢手段により所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0098】
また、シート材の上に形成した未定着トナー像を安定して定着するには、未定着トナー像を十分に溶融して定着することが必須であり、所望の温度と溶融時間を必要とするが、本発明による構成では、ニップ長を長く構成するために熱定着ロールの表面に被覆した弾性体を大きく歪ませてニップ長を長くするような手段は必要ないので、弾性体の厚みは薄く構成可能である。しかも、弾性体を歪ませるために加圧ロールの圧接圧力を大きく設定する必要もなく、未定着トナー像を担持したシート材が熱定着ロールと耐熱ベルトの間を通過するときに通過するシート材へのストレスが小さいので、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形が抑制される。
【0099】
したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロールの薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルトを加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロールも同様に薄肉厚化が可能であり、熱容量を小さく構成できるので、耐熱ベルトからの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0100】
また、耐熱ベルトと加圧ロールの巻き付き角より耐熱ベルトとベルト張架部材の巻き付き角を小さくし、また、加圧ロールの径よりベルト張架部材の径を小さくすることにより、耐熱ベルトと加圧ロールの巻き付き長さより耐熱ベルトとベルト張架部材の巻き付き長さを短くし、耐熱ベルトの周長を短縮して構成し、耐熱ベルトを必要最小限の経路で移動する構成にするので、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にし、熱定着ロールとのニップ部で加熱された耐熱ベルトが所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができ、自然放熱による温度低下も少なく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミング時間の短縮が可能になるなど、多くの効果が期待できる。
【0101】
また、シート材特性に応じて熱定着ロール及び加圧ロールを第1の回転速度とそれより遅い第2の回転速度で選択駆動することにより、未定着トナー像の溶融が適正化され、所望の定着が達成できる。そして、第1の回転速度または第2の回転速度で選択的に駆動しても、未定着トナー像を担持したシート材が熱定着ロールと耐熱ベルトの間を通過するときに通過するシート材へのストレスには変化がなくて小さいので、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形が抑制される。したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロール薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルトを加熱する加熱速度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着装置の1実施形態を示し、図1(A)は断面図、図1(B)は図1(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図2】定着ニップ出口側に近接配設するシート材案内部材の斜視図である。
【図3】図1の詳細構造を示し、図1(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図4】図1(A)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図である。
【図5】図4で耐熱ベルト3を装着した図である。
【図6】図5でシート材の通過時の状態を示す図である。
【図7】ニップ通過位置に応じ変化する定着圧力の例を示す図である。
【図8】図1の定着装置の変形例を示し、図8(A)は断面図、図8(B)は図8(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図9】図1の定着装置の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の定着装置の他の実施形態を示し、図10(A)は断面図、図10(B)は図10(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図11】図10においてシート材非通過時の状態を示し、図11(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図11(B)は図11(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図12】図10においてシート材通過時の状態を示し、図12(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図12(B)は図12(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図13】図12においてニップ通過位置に応じて変化する定着圧力の例を示す図である。
【図14】図10の実施形態の変形例を示し、図14(A)は断面図、図14(B)は図14(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図15】本発明の画像形成装置の1実施の形態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1…熱定着ロール、1a…ハロゲンランプ、1b…ロール基材、1c…弾性体、2…加圧ロール、2a…回転軸、2b…ロール基材、2c…弾性体、3…耐熱ベルト、4…ベルト張架部材、4a…突壁、5…シート材、5a…未定着トナー像、6…クリーニング部材、7…フレーム、8…シート材案内部材、9…スプリング、L…押圧部接線
【産業上の利用分野】
本発明は、熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され前記熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写材(シート材)上に未定着のトナー像を接触加熱定着する加熱ロール型定着装置では、その定着ニップに未定着トナー像を形成したシート材を通過させて定着すると、シート材は、熱定着ロールの外周に沿って変形するカール習性が付与されて熱定着ロール側に巻き付きやすくなる。そのため、加熱ロール型定着装置のシート材の排出側に、通常、定着ロールからシート材を剥離するために剥離爪や剥離板が設けられる(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
例えば特許文献1は、定着ロール等のシート移送体に対向して、シート剥離爪として、シート状材料で形成されて基部根元に剛性を緩和する手段を設けて突出した可撓性を有する複数の突出部を撓ませて摺擦配設し、シート移送体からシート材を剥離する構造を有するものである。特許文献2は、剥離板として、一対の定着ローラ回転体に対向して、弾性を有する板状部材の基部根元から複数のスリットを形成した遊端部を撓ませて摺擦配設し、回転体からシート材を剥離する構造を有するものである。特許文献3は、剥離板として、2つの回転体により形成するニップ部から排出される記録材に接触して一方の回転体の軸方向に沿って一部を回転体の回転方向上流側に位置させて配置し、剥離板の回転体側の側縁がニップ部から排出される記録材に接触させることで、回転体から記録材を剥離する構造を有するものである。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−61030号公報
【0005】
【特許文献2】
実開昭53−117249号公報
【0006】
【特許文献3】
特開2002−287554号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1、2の剥離爪や剥離板を定着ロール等のシート移送体や定着ローラ回転体に当接させ撓ませてシート材を剥離する構造では、それらの摺擦部において摺擦圧力の如何にかかわらず定着ロール等のシート移送体や定着ローラ回転体の表面に損傷、磨耗、劣化を引き起こしやすいという問題を有している。
【0008】
また、特許文献3の剥離板によりシート材を剥離する構造では、記録材に接触させることで、定着ローラに摺擦させないで剥離を行うようにしているが、定着ローラからの輻射熱により剥離板が昇温して熱膨張し、その膨張量に差異が生じると、定着ローラの近傍において膨張応力によってウエブ状に変形するという問題が生じる。しかも、定着ローラが軸方向に不均一な温度分布を有し、高温部位と低温部位での剥離性の差異に対応して剥離しやすい部位から円滑に剥離を行えるように、軸方向に剥離板の両端部又は中央部が突出した円弧状にするものであるため変形しやすく、定着ローラに一部摺擦したり、逆に記録材に接触させることができなくなるなどの問題を生じる。
【0009】
特に、昨今の画像形成装置においては、高速化に伴い、定着ニップを稼ぐため、定着ローラ回転体を柔らかくし、さらに、表層にトナーの剥離性を良くするために、例えばPFA(ペルオキシ−アルコキシ−フッソ樹脂)の層を設けるものが多くなっている。そのため、表面が傷つきやくなっていることである。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、熱ロール型定着装置の構造の単純化、小型化、コスト低減を可能にし、シート材の剥離性を高め、シート材へのストレスを小さくしてカールの発生や皺発生など排出されるシート材の変形をなくすようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され前記熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置又は該定着装置を搭載した画像形成装置において、前記ベルト張架部材と前記加圧ロールとの間で前記耐熱ベルトに張力を付与して張架し前記熱定着ロールに前記耐熱ベルトを巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材を前記定着ニップ出口側に近接配設したことを特徴とする。
【0012】
前記熱定着ロールは、ロール基材の外周に弾性体を被覆して形成し、前記加圧ロールは、前記熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面を有して構成し、さらに前記弾性体の表層にPFA層を設けたことを特徴とする。
【0013】
前記加圧ロールは、ロール基材の外周に前記熱定着ロールの弾性体より薄い厚みの弾性体を被覆して形成し、前記熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より前記硬質な表面の押圧によって熱定着ロールの弾性層を弾性変形させ前記シート材にカール習性を付与し、ロール基材が前記熱定着ロールのロール基材より外径を小さくし、前記熱定着ロール及び前記前記加圧ロールは、略均一な弾性変形をして前記定着ニップが水平ニップになるようにしたことを特徴とする。
【0014】
前記ベルト張架部材は、前記耐熱ベルトが摺動する摺動部材であり、半月状部材であり、前記熱定着ロールと前記加圧ロールとの押圧部より前記耐熱ベルトの移動方向上流側又は下流側に揺動可能に支持され、前記熱定着ロールの方向に付勢する揺動付勢手段によって揺動付勢されていることを特徴とする。
【0015】
また前記ベルト張架部材は、シート材の非通過時に前記ベルト張架部材と耐熱ベルトとの間にギャップを形成し、シート材の通過時にはベルト張架部材をシート材を介して熱定着ロールに押圧するように構成し、一端又は両端に前記耐熱ベルトの端部を位置規制する位置規制突壁が設けられていることを特徴とする。
【0016】
前記シート材案内部材は、耐熱性プラスチック素材で打ち抜き加工により形成したものであり、前記ベルト張架部材と前記加熱ロールとの間に前記耐熱ベルトの内周面に摺接してクリーニング部材を配置したことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の定着装置の1実施形態を示し、図1(A)は断面図、図1(B)は図1(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図であり、装置の右半分は省略している。図中、1は熱定着ロール、1aはハロゲンランプ、1bはロール基材、1cは弾性体、2は加圧ロール、2aは回転軸、2bはロール基材、2cは弾性体、3は耐熱ベルト、4はベルト張架部材、4aは突壁、5はシート材、5aは未定着トナー像、6はクリーニング部材、7はフレーム、8はシート材案内部材、9はスプリング、Lは押圧部接線を示す。
【0018】
図1において、熱定着ロール1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体1cを被覆して形成し、ロール基材1bの内部に加熱源として1050W、2本の柱状ハロゲンランプ1aを内蔵して回転可能にしたものである。加圧ロール2は、外径25mm程度、あるいは24.8mmと熱定着ロール1のロール基材1bより外径を小さくした、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材2bとして、その外周に厚み0.2〜0.3mm程度の弾性体2cを被覆して形成し、熱定着ロール1の弾性層より硬質に構成する。この加圧ロール2は、熱定着ロール1に対向して配置され、熱定着ロール1と加圧ロール2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成すると共に、図示矢印方向に回転可能にする。そして、加圧ロール2とベルト張架部材4との協動により耐熱ベルト3に張力を付与し、耐熱ベルト3を張架して熱定着ロール1に巻き付け定着ニップを形成して、この定着ニップに未定着トナー像5aを形成したシート材5を通過させて定着する構造になっている。
【0019】
本実施形態においては、熱定着ロール1の内部に2本の加熱源1aを内蔵しており、このハロゲンランプの発熱エレメントを異なった配置に構成して選択的に点灯すると、後述する耐熱ベルト3が熱定着ロール1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材4が熱定着ロール1に摺接する部位のような異なった条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材とのように異なった条件下での温度コントロールを容易に行うことができる。
【0020】
耐熱ベルト3は、熱定着ロール1と加圧ロール2との間に挟持されて加圧ロール2とベルト張架部材4の外周に張架され移動可能になったエンドレスのベルトであり、0.03mm以上の厚みを有するステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、ポリイミドやシリコン等の耐熱樹脂等管で構成される。
【0021】
ベルト張架部材4は、熱定着ロール1と加圧ロール2のニップ部よりもシート材5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロール2の回転軸2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材4は、シート材5が定着ニップを非通過の状態において耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架する構成にしている。シート材が定着ニップに進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材先端に折れた状態で定着される場合があるが、耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架する構成にすると、シート材の進入がスムーズに成される導入口部が形成でき、安定したシート材の進入を可能にする。
【0022】
このベルト張架部材4は、耐熱ベルト3の内周に嵌挿して加圧ロール2と協働して耐熱ベルト3に張力fを付与すると共に、耐熱ベルト3を熱定着ロール1に巻き付けてニップを形成する位置に配置した、略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルト3はベルト張架部材4上を摺動する)である。ベルト張架部材4は、耐熱ベルト3が熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部接線Lより熱定着ロール1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁4aは、ベルト張架部材4の一端または両端に突設され、耐熱ベルト3が一方に寄った場合にこの突壁4aに当接して寄り規制を行うためのものである。ベルト張架部材4は、突壁4aの熱定着ロール1と反対側端部のフレームとの間にスプリング9が配設され、スプリング9により熱定着ロール1に軽押圧され、熱定着ロール1に摺接して位置決めされる。
【0023】
耐熱ベルト3を加圧ロール2とベルト張架部材4により張架して加圧ロール2で安定して駆動するには、加圧ロール2と耐熱ベルト3との摩擦係数をベルト張架部材4と耐熱ベルト3との摩擦係数より大きく設定するとよいが、摩擦係数に関しては異物の侵入や摩耗などによって不安定になる場合がある。これに対し、加圧ロール2と耐熱ベルト3の巻き付け角よりベルト張架部材4と耐熱ベルト3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロール2の径よりベルト張架部材4の径が小さくなるように設定すると、耐熱ベルト3がベルト張架部材4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき耐熱ベルト3を加圧ロールで安定して駆動することができる。
【0024】
クリーニング部材6は、加圧ロール2とベルト張架部材4との間に配置して耐熱ベルト3の内周面に摺接して耐熱ベルト3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものであり、このような異物や摩耗粉等をクリーニングすることで耐熱ベルト3をリフレッシュして不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材4に設けた凹部4fは、この除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0025】
シート材5は、ベルト張架部材4が熱定着ロール1に軽押圧される位置をニップ初期位置として耐熱ベルト3と熱定着ロール1との間を通過することで未定着トナー像5aが定着され、熱定着ロール1に加圧ロール2が押圧する位置をニップ終了位置として押圧部接線Lの方向に排出される。
【0026】
シート材案内部材8は、定着ニップ出口側に熱定着ロール1及び耐熱ベルトとは空隙を有して近接配設され、シート材5の排出を案内するものであり、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、PPS等の耐熱性を有する板状樹脂材8aからなる。
【0027】
図2は定着ニップ出口側に近接配設するシート材案内部材の斜視図である。定着ニップ出口側に近接して、つまり熱定着ロール1と耐熱ベルト3に近接して配設されるシート材案内部材8は、図2に示すようにシート材案内方向に取り付け部8bから延びる複数のスリット8cを有するものであり、打ち抜き加工によって定着ニップ幅と略同等幅で形成し、取り付け基体に耐熱性両面テープなどの結合手段により保持される。上記構成の基にシート材5の巻き付きは基本的にローラ構成で排除していて、定着ニップ出口側に配設したシート材5の排出を案内するシート案内部材8は、定着ニップ幅と略同等幅で形成して熱定着ロール1及び耐熱ベルト3とは空隙を有して配設するので、相対的に摺擦することがなく、熱定着ロール1及び耐熱ベルト3に磨耗あるいは劣化などの表面状態の損傷を引き起こすことはない。
【0028】
一方、シート案内部材8は、定着ニップの出口側、つまり熱定着ロール1及び耐熱ベルト3と近接配置することにより、これらに摺擦しなくても熱定着ロール1等からの輻射熱によって昇温して熱膨張し、その膨張量に差異が生じると、プラスチック素材などの熱膨張率の大きな素材には、膨張応力によってウエブ状に変形する場合がある。しかし、本実施形態のシート案内部材8では、板状の耐熱性樹脂素材に複数のスリット8cを設けているので、膨張応力を開放してウエブ状に変形するのを防止することができ、変形により部分的に摺擦して熱定着ロール1や耐熱ベルト3の表面を磨耗させ、劣化させ、損傷させるような事態を回避することができる。
【0029】
本実施形態によれば、熱定着ロール1および加圧ロール2の外径を25mm程度の小径に構成しているため、定着後のシート材5が熱定着ロール1または耐熱ベルト3に巻き付くこともなく、シート材5を強制的に剥がすための剥離爪や剥離板などの手段を不要にしている。さらに、熱定着ロール1の弾性体1cの表層に約30μmのPFA(ペルオキシ−アルコキシ−フッソ樹脂)層を設ければ、その分だけ剛性が向上すると共にトナーの剥離性をよくすることができる。
【0030】
本来、定着ニップに未定着トナー像5aを形成したシート材5を通過させて定着すると、シート材5は、熱定着ロール1の外周に沿って変形するカール習性が付与されて熱定着ロール1側に巻き付きやすくなるものである。しかし、上記のように熱定着ロール1および加圧ロール2の外径を小径に構成し、熱定着ロール1の弾性体1cの表層にPFA層を設ければ、その分だけ剛性が向上してシート材5の剥離性をよくすることができる。また、弾性体1c、2cの厚みは異なっても、略均一な弾性変形をして所謂水平ニップを形成させて熱定着ロール1の周速に対して耐熱ベルト3またはシート材5の搬送速度に差異が生じることもなくし、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0031】
さらに、熱定着ロール1および加圧ロール2の外径を小径に構成すると共に、加圧ロール2を熱定着ロール1の表面に被覆した弾性層よりも硬質な表面を有して構成すると、定着ニップを通過したシート材5は、自らの復帰力(通称これをシート材の腰と称す)と、熱定着ロール1の表面に被覆した弾性層よりも硬質な加圧ロール2の押圧によって熱定着ロール1の弾性層をシート材5が熱定着ロール1から離れる方向に弾性変形させてシート材5にカール習性を付与することができる。そのことにより、定着後のシート材5が熱定着ロール1に巻き付くこともなくなるようにし、強制的に剥がすための手段をなくすことができる。
【0032】
一方、耐熱ベルト3方向に関しては、加圧ロール2と熱定着ロール1の硬質度バランスと押圧力によって、シート材5に付与される、熱定着ロール1から離れる方向のカール習性量は容易に調整可能である。したがって、定着後のシート材5が耐熱ベルト3に巻き付くこともないので、強制的に剥がすための手段が不要になるが、シート材5は、吸湿やシート繊維状態又は構成素材などで予期せぬ特質ももたらすことがあり、また、シート材ジャムなどの予期せぬ対応として強制的に剥がすための手段としてまでは機能発揮を要しないが、安全性を考慮して排出経路を定めておくとトラブルレスな構成に有効である。
【0033】
上記のように熱定着ロール1の弾性層をシート材5が熱定着ロール1から離れる方向に弾性変形させてシート材5にカール習性を付与して、定着後のシート材5が熱定着ロール1に巻き付くことを防止する目的からすると、加圧ロール2の表面に硬質な弾性層を被覆せずに、ロール基材のままであってもよく、安価な加圧ロール2で機能達成できる。
【0034】
次に、加圧ロール2とベルト張架部材4の支持構造について説明する。加圧ロール2の両端の回転軸2aは、図1(B)に示すように左右のフレーム7に軸受7aを介して回転自在に支持されている。加圧ロール2の回転軸2aの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。これにより、ベルト張架部材4は、スプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢され耐熱ベルト3に張力fが付与される構造になっている。
【0035】
本実施形態においては、ベルト張架部材4として、耐熱ベルト3を摺動させる非回転部材として使用し、回転部材ではないので軸受等が不要であり、支持構造が簡単になる。加えてベルト張架部材4を略半月状とすることにより、加圧ロール2側にその半月欠方向を向けて配置し、加圧ロール2に対して極限まで接近した配置が可能になる。このことによりまた、耐熱ベルト3の周長を短縮して構成することが可能になる。したがって、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にすることができる。
【0036】
また、耐熱ベルト3が必要最小限の経路で移動するので、耐熱ベルト3は、加熱源を内蔵して回転可能な熱定着ロール1とのニップ部で加熱され、所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができると共に、周長が短いので、自然放熱による温度低下も少なく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0037】
また、耐熱ベルト3は、加圧ロール2とベルト張架部材4の協働によって張力が付与されて熱定着ロール1に巻き付けて定着ニップを形成しているので、容易にニップ長を長く構成することができ、構造が簡単になり小型で安価にすることができる。
【0038】
また、シート材5の上に形成した未定着トナー像を安定して定着するには、未定着トナー像を十分に溶融して定着することが必須であり、所望の温度と溶融時間を必要とするが、本実施形態による構成では、ニップ長を長く構成するために熱定着ロールの表面に被覆した弾性体を大きく歪ませてニップ長を長くするような手段は必要ないので、弾性体の厚みは薄く構成可能である。しかも、弾性体を歪ませるために加圧ロール2の圧接圧力を大きく設定する必要もなく、未定着トナー像を担持したシート材5が熱定着ロール1と耐熱ベルト3の間を通過するときに通過するシート材5へのストレスが小さいので、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材5に皺発生などのシート材5の変形が抑制される。
【0039】
したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロール1の薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルト3を加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロール2も同様に薄肉厚化が可能であり、熱容量を小さく構成できるので、耐熱ベルト3からの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0040】
図3〜図6は、図1の詳細構造を示し、図3は図1(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図、図4は、図1(A)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図、図5は図4で耐熱ベルト3を装着した図、図6は図5でシート材の通過時の状態を示す図である。
【0041】
図3および図4において、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1に摺接面4gで摺接し位置決めされている。ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設け、押圧面4hは定着ロール1と同心円状に形成されている。具体的には、ギャップは110μm程度の段差で構成し、耐熱ベルト3は80μm程度の厚みで構成し、これにより30μm程度の空隙を確保し、60μm程度の厚みを有するシート材でも安定した定着を可能にしている。
【0042】
図5は耐熱ベルト3を装着した図であり、耐熱ベルト3は、熱定着ロール1と加圧ロール2間のニップ部に圧接されると共に、その上流側で熱定着ロール1に巻き付けてニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧している。
【0043】
定着工程の前工程でシート材上に未定着トナー像を形成するプロセス工程の速度と、定着工程の速度を完全に一致させることは、量産上の種々の部品寸法のバラツキを考慮すると現実的ではない。そこで、このバラツキを考慮してシート材上に未定着トナー像を形成するプロセス工程の速度に比較して定着工程の速度を早くするか遅くするか、いずれか一方側に設定して前後工程の速度バランスを構築するが、定着ニップにシート材が進入する初期位置でシート材を確実にグリップしてシート材の進入速度を明確にする必要があり、上記のように構成すると、この目的が達成される。
【0044】
また、ロールの弾性体表面と耐熱ベルト表面は同一の周速度で移動してシート材上に形成した未定着トナー像を定着するものであるが、耐熱ベルト表面がウエーブ状になっていたりシート材先端部がウエーブ状になっていたりすると、定着開始状態が不安定になる場合がある。そこで、ニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧する構成にすると、双方の合流状態が安定するので、極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になる。
【0045】
そして、本実施形態においては、シート材5が非通過のこの状態では、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間にギャップGが形成されている。従って、ウオーミングアップ時には、前記ギャップGの空隙が断熱層となって熱定着ロール1から耐熱ベルト3を介して奪い取る熱量が小さくなるので、熱ロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。
【0046】
一方、シート材5が定着ニップを通過する時は、図6に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1から離間され、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間のギャップGはなくなって、シート材5は定着ニップ部において耐熱ベルト3に押圧され、熱定着ロール1に押圧されるので、この押圧力をスプリング9(図1)により所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0047】
また、ギャップGの存在のため、ベルト張架部材4が熱定着ロール1から加熱されて蓄熱する熱量が少ないので、シート材5が定着ニップに進入したときにシート材5上に形成された未定着トナー像5aの反対側の面は、熱容量の小さな耐熱ベルト3を冷却するが、ベルト張架部材4側から加熱される熱量は少ない構成となっている。そのため、シート材5上の第1面に形成した未定着トナー像を定着した後に再び反対側の第2面に未定着トナー像を定着する両面画像定着の場合には、第2面を定着するときに先に定着した第1面の画像を必要以上に加熱して画像を乱すことがない。
【0048】
本実施形態においては、図1(A)に示すように、揺動付勢手段としてアシストするスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向上流側に配置している。熱定着ロール1または加圧ロール2の一方を駆動すると耐熱ベルト3が駆動され、この駆動力と耐熱ベルト3とベルト張架部材4の摺動摩擦力によってベルト張架部材4は熱定着ロール1方向に揺動するが、この揺動移動力のみではシート材5上に形成した未定着トナー像を定着する定着圧力が不足する場合がある。そこで、この揺動移動力をアシストして所望の定着圧力に設定すると極めて安定した未定着トナー像の定着が可能となる。
【0049】
図7は、本実施形態の特徴を説明するための図であり、図7(A)は断面図、図7(B)はニップ通過位置における定着圧力を示す図である。本実施形態においては、揺動付勢手段であるスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向上流側に配置しているため、テコのメカニズムにより図7(B)に示すように、ニップ初期位置から熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部に向かって連続的に加圧力を高めることが可能であり、シート材に変曲点のあるストレスを付与しないので、定着画像に定着ムラ等が発生せず、極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になるばかりでなく、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形を抑制することができる。
【0050】
このとき、ニップ初期位置での押圧力をP1、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力をP3、ニップ初期位置と押圧部位との間での押圧力をP2としたとき、P1<P2<P3の関係となり、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力P3が最高圧になる。例えばシート材の表面に凹凸があったり、OHPシートなどのように表面が極めて平滑で気密性に富んだ材質で溶融したトナー像が浸透しにくい場合には、シート材がニップを通過する最後の段階で溶融したトナーに対して溶融段階より高い圧力を付与するので、溶融したトナーの表面をより平滑にならしめるとともに、シート材への浸透作用を促進して定着画像をさらに安定させることができる。
【0051】
図8は、図1の定着装置の変形例を示し、図8(A)は断面図、図8(B)は図8(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。なお、以下の説明において、前述の実施形態と同一の構成については同一番号を付して説明を省略する。
【0052】
本例が図1の実施形態と比較して相違する点は、図1の実施形態においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aと共通の軸で所定の角度分、揺動可能に構成しているのに対して、本例においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aとは異なる軸7bで所定の角度分、揺動可能に構成している点である。
【0053】
すなわち、回転軸2aの軸心とは異なる位置に配置した軸7bの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。これにより、ベルト張架部材4は、スプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢され耐熱ベルト3に張力fが付与される構造になっている。
【0054】
これにより、ベルト張架部材4に作用する回転モーメントを変化させることができ(図8の例では回転モーメントを大きくさせる)、軸7bの位置により耐熱ベルト3と熱定着ロール1の圧接する圧接力を調整することができる。なお、本例においても、図3に示すように、ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設けている。
【0055】
図9は、図1の定着装置の変形例を示す断面図である。本例においては、ベルト張架部材4をロール状の非回転部材としている。なお、本例においても、図3に示すように、ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設けている。
【0056】
図10〜図11は、本発明の定着装置の他の実施形態を示し、図10(A)は断面図、図10(B)は図10(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図、図11はシート材非通過時の状態を示し、図11(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図11(B)は図11(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図、図12はシート材通過時の状態を示し、図12(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図12(B)は図12(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。なお、前記実施形態と同一の構成については同一番号を付けて説明を省略する。
【0057】
前記実施形態がベルト張架部材4を熱定着ロール1と加圧ロール2の押圧部よりもシート材5搬送方向上流側に配設したのに対して、本実施形態は、図10に示すように、ベルト張架部材4は、熱定着ロール1と加圧ロール2の押圧部よりもシート材5搬送方向下流側に配設され、加圧ロール2の回転軸2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。このベルト張架部材4は、耐熱ベルト3の内周に嵌挿して加圧ロール2と協働して耐熱ベルト3に張力fを付与すると共に、耐熱ベルト3を熱定着ロール1に巻き付けてニップを形成する位置に配置した、半月状のベルト摺動部材である。ベルト張架部材4は、耐熱ベルト3を熱定着ロール1に巻き付けてニップを形成するニップ終了位置で熱定着ロール1の接線Lに接する位置に配置される。
【0058】
シート材5は、ベルト張架部材4が熱定着ロール1に圧接する位置をニップ初期位置として耐熱ベルト3と熱定着ロール1との間を通過することで未定着トナー像5aが定着され、ニップ終了位置で押圧部接線Lの方向に排出される。
【0059】
図11に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1に摺接面4gで摺接し位置決めされている。ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設け、押圧面4hは定着ロール1と同心円状に形成されている。具体的には、ギャップは110μm程度の段差で構成し、耐熱ベルト3は80μm程度の厚みで構成し、これにより30μm程度の空隙を確保し、60μm程度の厚みを有するシート材でも安定した定着を可能にしている。
【0060】
耐熱ベルト3は、熱定着ロール1と加圧ロール2間のニップ部に圧接されるとともに、その下流側で熱定着ロール1に巻き付けてニップ終了位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧している。
【0061】
そして、本実施形態においては、シート材5が非通過のこの状態では、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間にギャップGが形成されている。従って、ウオーミングアップ時には、前記ギャップGの空隙が断熱層となって熱定着ロール1から耐熱ベルト3を介して奪い取る熱量が小さくなるので、熱ロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。
【0062】
一方、シート材5が定着ニップを通過する時は、図12に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1から離間され、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間のギャップGはなくなって、シート材5は定着ニップ部において耐熱ベルト3に押圧され、熱定着ロール1に押圧されるので、この押圧力をスプリング9(図1)により所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0063】
また、ギャップGの存在のため、ベルト張架部材4が熱定着ロール1から加熱されて蓄熱する熱量が少ないので、シート材5が定着ニップに進入したときにシート材5上に形成された未定着トナー像5aの反対側の面は、熱容量の小さな耐熱ベルト3を冷却するが、ベルト張架部材4側から加熱される熱量は少ない構成となっている。そのため、シート材5上の第1面に形成した未定着トナー像を定着した後に再び反対側の第2面に未定着トナー像を定着する両面画像定着の場合には、第2面を定着するときに先に定着した第1面の画像を必要以上に加熱して画像を乱すことがない。
【0064】
熱定着ロール1または加圧ロール2の一方を駆動すると耐熱ベルト3が駆動され、この駆動力と耐熱ベルト3とベルト張架部材4の摺動摩擦力によってベルト張架部材4は熱定着ロール1から離れる方向に揺動移動するが、この揺動移動力に打ち勝ってベルト張架部材4を所望の付勢力で熱定着ロール1方向に付勢して、所望の定着圧力を設定すると極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になる。
【0065】
そこで、本実施形態においては、揺動付勢手段としてアシストするスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向下流側に配置している。
【0066】
図13はベルト張架部材4の揺動移動力をアシストした場合の定着圧力を示している。本実施形態においては、スプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向下流側に配置しているため、テコのメカニズムにより図13に示すように、熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部位から連続的に加圧力を低減して付与することが可能であり、シート材に変曲点のあるストレスを付与しないので、定着画像に定着ムラ等が発生せず、極めて安定した未定着トナー像の定着が可能になるばかりでなく、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形を抑制することができる。
【0067】
このとき、ニップ終了位置での押圧力をP1’、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力をP3、前記ニップ終了位置と押圧部位との間での押圧力をP2としたとき、P1’<P2<P3の関係となり、加圧ロール2が熱定着ロール1を押圧する押圧部位での押圧力P3が最高圧になる。
【0068】
図14は、図10の実施形態の変形例を示し、図14(A)は断面図、図14(B)は図14(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【0069】
本実施形態が図10の実施形態と比較して相違する点は、前記実施形態においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aと共通の軸で所定の角度分、揺動可能に構成しているのに対して、本実施形態においては、ベルト張架部材4を加圧ロール2の回転軸2aとは異なる軸7bで所定の角度分、揺動可能に構成している点である。
【0070】
すなわち、回転軸2aの軸心とは異なる位置に配置した軸7bの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。これにより、ベルト張架部材4は、スプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢され耐熱ベルト3に張力fが付与される構造になっている。
【0071】
これにより、ベルト張架部材4に作用する回転モーメントを変化させることができ(図14の例では回転モーメントを大きくさせる)、耐熱ベルト3と熱定着ロール1の圧接する圧接力を調整することができる。
【0072】
本発明においては、熱定着ロールまたは加圧ロールが駆動ロールとなるが、この場合、安定な駆動を実現するには、硬い方のロールを駆動側とし、柔らかい方のロールを従動側とするのが好適である。加圧ロール2は、その外周に耐熱ベルト3を捲着して熱定着ロール1の表面に被覆した弾性体1cに対して耐熱ベルト3を圧接して駆動し、熱定着ロール1は従動する構成となる。加圧ロール2は、耐熱ベルト3、即ち、未定着トナー像5aを担持したシート材5の搬送スピードを決定付けるので、少なくとも熱定着ロール1の表面に被覆した弾性体1cより硬質な表面を有した構成とする。このことにより変形することなく搬送スピードを安定して駆動することができる。
【0073】
本発明においては、上記した構造に加えて、回転速度の選択を組み合わせることもできる。その駆動速度の制御について説明する。駆動手段は、熱定着ロール1及び加圧ロール2を駆動するために2つの回転速度を有し、シート材特性に応じて熱定着ロール1及び加圧ロール2を第1の回転速度とそれより遅い第2の回転速度で選択駆動する。この回転速度は、シート材特性を検知する検知手段を配置すると共に、予めシート材特性に応じた回転速度などの選択情報を設定する設定手段を設け、未定着トナー像5aを担持したシート材6の進行過程でシート材特性を検知すると、未定着トナー像5aを担持したシート材5の定着指令過程でシート材特性に応じた設定をして、その設定内容に応じ回転速度が選択され駆動される。設定手段としては、定着指令に先立って熱ロール型定着装置に連動する部位をマニュアル操作したり、電気的な信号等によって遠隔操作してもよい。
【0074】
未定着トナー像5aを担持したシート材5は、紙等の一般的なシート材、熱容量の大きな厚めのシート材、透明なシート材(OHPシート材)等の多様な用途への適用が必須である。一般的なシート材に比べて、特に、熱容量の大きな厚めのシート材や封筒等の積層されたシート材、透明なシート材(OHPシート材)等においては、未定着トナー像5aを十分溶融してシート材に定着するために、所望の溶融時間を要する。このような場合、シート材特性に応じて熱定着ロール1及び加圧ロール2を第1の回転速度とそれより遅い第2の回転速度で選択駆動することにより、未定着トナー像5aの溶融が適正化され、所望の定着が達成できる。
【0075】
そして、第1の回転速度または第2の回転速度で選択的に駆動しても、未定着トナー像5aを担持したシート材5が熱定着ロール1と耐熱ベルト3の間を通過するときに通過するシート材5へのストレスには変化がなくて小さいので、未定着トナー像5aの定着後に排出されるシート材5に対し皺発生などのシート材変形が抑制される。したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロール薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルトを加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロール2も同様に薄肉厚化が可能であり、熱容量が小さく達成できるので、耐熱ベルト3からの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。なお、選択的に駆動する選択手段としては、例えば駆動モータの回転数を選択的に可変する等の手段が好適である。
【0076】
図15は、本発明の画像形成装置の1実施形態を示す全体構成の模式的断面図である。図中、10は画像形成装置、10aはハウジング、10bは扉体、11は紙搬送ユニット、15はクリーニング手段、17は像担持体、18は画像転写搬送手段、20は現像手段、21はスキャナ手段、30は給紙ユニット、40は定着手段、Wは露光ユニット、Dは画像形成ユニットを示す。
【0077】
図15において、画像形成装置10は、ハウジング10aと、ハウジング10aの上部に形成された排紙トレイ10cと、ハウジング10aの前面に開閉自在に装着された扉体10bを有し、ハウジング10a内には、露光ユニット(露光手段)W、画像形成ユニットD、画像転写搬送手段18を有する転写ベルトユニット29、給紙ユニット30が配設され、扉体10b内には紙搬送ユニット11が配設されている。各ユニットは、本体に対して着脱可能な構成であり、メンテナンス時等には一体的に取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0078】
画像形成ユニットDは、複数(本実施形態では4つ)の異なる色の画像を形成する画像形成ステーションY(イェロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備えている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kには、それぞれ、感光ドラムからなる像担持体17と、像担持体17の周囲に配設された、コロナ帯電手段からなる帯電手段19および現像手段20を有する。これら各画像形成ステーションY,M,C,Kは、転写ベルトユニット29の下側に斜めアーチ状のラインに沿って像担持体17が上向きになるように並列配置されている。なお、各画像形成ステーションY,M,C,Kの配置順序は任意である。
【0079】
転写ベルトユニット29は、ハウジング10aの下側に配設され図示しない駆動源により回転駆動される駆動ロール12と、駆動ロール12の斜め上方に配設される従動ロール13と、テンションロール14と、これら3本、少なくとも2本のロール間に張架されて図示矢印方向へ循環駆動される中間転写ベルトからなる画像転写搬送手段18と、画像転写搬送手段18の表面に当接するクリーニング手段15とを備えている。従動ロール13、テンションロール14および画像転写搬送手段18は、駆動ロール12に対して図で左側に傾斜する方向に配設され、これにより画像転写搬送手段18駆動時のベルト搬送方向が下向きになるベルト面18aが下方に位置し、搬送方向が上向きになるベルト面18bが上方に位置するようにされている。
【0080】
したがって、各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図で左側に傾斜する方向に配設されることになる。そして、像担持体17は、アーチ状のラインに沿って画像転写搬送手段18の搬送方向下向きのベルト面18aに接触され、図示矢印に示すように画像転写搬送手段18の搬送方向に回転駆動される。可撓性を有する無端スリーブ状の画像転写搬送手段18は、像担持体17に対して上側から被せるように略同一の巻き付け角度で接触させるため、像担持体17と画像転写搬送手段18との間の接触圧やニップ幅は、テンションロール14により画像転写搬送手段18に付与される張力、像担持体17の配置間隔、巻き付け角度(アーチの曲率)などを制御することにより調整することができる。
【0081】
駆動ロール12は、2次転写ロール39のバックアップロールを兼ねている。駆動ロール12の周面には、例えば厚さ3mm程度、体積抵抗率が105 Ω・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、2次転写ロール39を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ロール12に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、2次転写部へシート材が進入する際の衝撃が画像転写搬送手段18に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。また、駆動ロール12は、その径を従動ロール13、バックアップロール14の径より小さくすることにより、2次転写後のシート材がシート材自身の弾性力で剥離し易くすることができる。また、従動ロール13を後述するクリーニング手段15のバックアップロールとして兼用させている。
【0082】
なお、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して図で右側に傾斜する方向に配設し、これに対応して各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図で右側に傾斜する方向に斜めアーチ状に沿って配設してもよい。
【0083】
クリーニング手段15は、搬送方向下向きのベルト面18a側に設けられ、二次転写後に画像転写搬送手段18の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード15aと、回収したトナーを搬送するトナー搬送部材15bを備えている。クリーニングブレード15aは、従動ロール13への画像転写搬送手段18の巻きかけ部において画像転写搬送手段18に当接されている。また、画像転写搬送手段18の裏面には、後述する各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に対向して1次転写部材16が当接され、1次転写部材16には転写バイアスが印加されている。
【0084】
露光手段Wは、斜め方向に配設された画像形成ユニットDの斜め下方に形成された空間に配設されている。また、露光手段Wの下部でハウジング10aの底部には給紙ユニット30が配設されている。露光手段Wは、全体がケースに収納され、ケースは、搬送方向下向きのベルト面の斜め下方に形成される空間に配設されている。ケースの底部には、ポリゴンミラーモータ21a、ポリゴンミラー(回転多面鏡)21bからなる単一のスキャナ手段21を水平に配設されるとともに、各色の画像信号により変調される複数のレーザ光源23からのレーザビームをポリゴンミラー21bで反射させ各像担持体上に偏向走査する光学系Bには、単一のf−θレンズ22および各色の走査光路が像担持体17にそれぞれ非平行になって折り返すように複数の反射ミラー24が配設されている。
【0085】
上記構成からなる露光手段Wにおいては、ポリゴンミラー21bから各色に対応した画像信号が、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成されたレーザビームで射出され、f−θレンズ22、反射ミラー24を経て、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に照射され、潜像が形成される。反射ミラー24を設けることにより走査光路を屈曲させ、ケースの高さを低くすることが可能となり光学系のコンパクト化が可能となる。しかも、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17への走査光路長は同一の長さになるように反射ミラー24が配置されている。このように各画像形成ユニットDに対する露光手段Wのポリゴンミラー21bから像担持体17までの光路の長さ(光路長)が略同一の長さになるように構成することにより、各光路で走査された光ビームの走査幅も略同一になり、画像信号の形成にも特別な構成を必要としない。したがって、レーザ光源は、それぞれ異なる画像信号によってそれぞれ異なった色の画像に対応して変調されるにも関わらず、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成可能であり、共通の反射面を用いるため副走査方向の相対差から生じる色ずれを防止し、構造が簡単で安価なカラー画像形成装置を構成できる。
【0086】
また、本実施形態においては、装置下方に走査光学系を配置することにより、画像形成手段の駆動系が装置を支持するフレームへ与える振動による走査光学系の振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。とくに、スキャナ手段21をケースの底部に配置することにより、ポリゴンモータ21a自身がケース全体に与える振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。また、振動源であるポリゴンモータ21aの数を一つにすることによりケース全体に与える振動を最小限にすることができる。
【0087】
給紙ユニット30は、シート材が積層保持されている給紙カセット35と、給紙カセット35からシート材を一枚ずつ給送するピックアップロール36を備えている。紙搬送ユニット11は、二次転写部へのシート材の給紙タイミングを規定するゲートロール対37(一方のロールはハウジング10a側に設けられている)と、駆動ロール12および画像転写搬送手段18に圧接される二次転写手段としての二次転写ロール39と、主記録媒体搬送路38と、定着手段40と、排紙ロール対41と、両面プリント用搬送路42を備えている。
【0088】
シート材に2次転写された2次画像(未定着トナー像)は、定着手段40の形成するニップ部で所定の温度で定着される。本例においては、転写ベルトの搬送方向上向きのベルト面18bの斜め上方に形成される空間、換言すれば、転写ベルトに対して画像形成ステーションと反対側の空間に定着手段40を配設することが可能になり、露光手段W、画像転写搬送手段18、画像形成手段への熱伝達を低減することができ、各色の色ずれ補正動作を行う頻度を少なくすることができる。特に、露光手段Wは、定着手段40から最も離れた位置にあり、走査光学系部品の熱による変位を最小限にすることができ、色ズレを防ぐことができる。
【0089】
本実施形態においては、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して傾斜する方向に配設しているため、図で右側空間に広いスペースが生じその空間に定着手段40を配設することができ、コンパクト化を実現することができると共に、定着手段40で発生する熱が、左側に位置する露光ユニットW、画像転写搬送手段18および各画像形成ステーションY,M,C,Kへ伝達されるのを防止することができる。また、画像形成ユニットDの左側下部の空間に露光ユニットWを配置することができるため、画像形成手段の駆動系がハウジング10aへ与える振動による、露光ユニットWの走査光学系の振動を最小限に抑えることができ、画質の劣化を防止することができる。
【0090】
また、クリーニング手段を設置しないことに伴い、帯電手段としてはコロナ帯電手段19を採用している。帯電手段がロールである場合は、微量ではあるが像担持体17上に存在する1次転写残りトナーがロール上に堆積して帯電不良が発生するが、非接触帯電手段であるコロナ帯電手段19はトナーが付着しにくく、帯電不良の発生を防ぐことができる。
【0091】
また、本実施形態では、中間転写ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としたが、表面にシート材を吸着して搬送移動し、該シート材の表面にトナー像を順次重ねて転写して画像を形成搬送するシート材搬送ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としてもよい。この場合、画像転写搬送手段18であるシート材搬送ベルトのベルト搬送方向が像担持体17に接触する下面で逆方向の上向きになる。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば実施の形態では、各色の現像器をロータリーフレームに搭載したロータリー式のカラー画像形成装置により説明したが、各色の現像器を並べて配置したタンデム式のカラー画像形成装置、白黒、モノカラーの画像形成装置においても同様に適用できることはいうまでもない。
【0093】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置において、ベルト張架部材と加圧ロールとの間で耐熱ベルトに張力を付与して張架し熱定着ロールに耐熱ベルトを巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材を定着ニップ出口側に近接配設したので、熱定着ロールおよび加圧ロールの外径を小径に構成することができると共に、定着ニップを長くすることができる。したがって、充分な長さの定着ニップでの画像定着を実現し、定着後のシート材が熱定着ロールまたは耐熱ベルトに巻き付かないようにすることができ、シート材を強制的に剥がすための剥離爪や剥離板などの手段を省くことができる。また、シート材案内部材は、複数のスリットを設けて定着ニップの出口側、つまり熱定着ロール及び耐熱ベルトと近接配置することにより、熱定着ロールなどからの輻射熱により膨張してウエブ状に変形するのを防止することができ、相対的に摺擦することがなく、熱定着ロールや耐熱ベルトに磨耗あるいは劣化などの表面状態の損傷を引き起こすのを防止することができる。
【0094】
熱定着ロールは、ロール基材の外周に弾性体を被覆して形成し、加圧ロールは、熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面を有して構成し、さらに弾性体の表層にPFA層を設けたことにより、弾性体の厚みは異なっても、略均一な弾性変形をして所謂水平ニップを形成させることができ、熱定着ロールの周速に対して耐熱ベルトまたはシート材の搬送速度に差異が生じることもなく、極めて安定した画像定着が可能となる。また、剛性を向上させると共にトナーの剥離性をよくすることができる。
【0095】
加圧ロールは、ロール基材の外周に熱定着ロールの弾性体より薄い厚みの弾性体を被覆して形成し、熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面の押圧によって熱定着ロールの弾性層を弾性変形させシート材にカール習性を付与し、ロール基材が熱定着ロールのロール基材より外径を小さくすることにより、熱定着ロールの弾性層をシート材が熱定着ロールから離れる方向に弾性変形させてシート材にカール習性を付与することができ、そのことにより、定着後のシート材が熱定着ロールに巻き付かないようにすることができる。
【0096】
また、ベルト張架部材として、耐熱ベルト摺動部材を使用することにより、軸受等が不要になり、支持構造が簡単になる。加えてベルト張架部材を半月状とすることにより、加圧ロール側にその半月欠方向を向けて配置し、加圧ロールに対して極限まで接近した配置が可能になる。このことによりまた、耐熱ベルトの周長を短縮して構成することが可能になり、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にすることができる。さらに、耐熱ベルトが必要最小限の経路で移動するので、加熱源を内蔵して回転可能な熱定着ロールとのニップ部で加熱された耐熱ベルトは、所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができると共に、周長が短いので、自然放熱による温度低下も少なく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミング時間の短縮が可能である。
【0097】
シート材の非通過時にベルト張架部材と耐熱ベルトとの間にギャップを形成し、シート材の通過時にはベルト張架部材をシート材を介して熱定着ロールに押圧するように構成するので、シート材が非通過の状態では、耐熱ベルトとベルト張架部材との間にギャップが形成されるため、ウオーミングアップ時には、ギャップの空隙が断熱層となって熱定着ロールから耐熱ベルトを介して奪い取る熱量が小さくなり、熱ロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。一方、シート材が定着ニップを通過する時は、耐熱ベルトとベルト張架部材との間のギャップGはなくなって、シート材は定着ニップ部において耐熱ベルトに押圧され、熱定着ロールに押圧されるので、安定した定着が可能となる。このとき、押圧力を揺動付勢手段により所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0098】
また、シート材の上に形成した未定着トナー像を安定して定着するには、未定着トナー像を十分に溶融して定着することが必須であり、所望の温度と溶融時間を必要とするが、本発明による構成では、ニップ長を長く構成するために熱定着ロールの表面に被覆した弾性体を大きく歪ませてニップ長を長くするような手段は必要ないので、弾性体の厚みは薄く構成可能である。しかも、弾性体を歪ませるために加圧ロールの圧接圧力を大きく設定する必要もなく、未定着トナー像を担持したシート材が熱定着ロールと耐熱ベルトの間を通過するときに通過するシート材へのストレスが小さいので、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形が抑制される。
【0099】
したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロールの薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルトを加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロールも同様に薄肉厚化が可能であり、熱容量を小さく構成できるので、耐熱ベルトからの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0100】
また、耐熱ベルトと加圧ロールの巻き付き角より耐熱ベルトとベルト張架部材の巻き付き角を小さくし、また、加圧ロールの径よりベルト張架部材の径を小さくすることにより、耐熱ベルトと加圧ロールの巻き付き長さより耐熱ベルトとベルト張架部材の巻き付き長さを短くし、耐熱ベルトの周長を短縮して構成し、耐熱ベルトを必要最小限の経路で移動する構成にするので、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にし、熱定着ロールとのニップ部で加熱された耐熱ベルトが所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができ、自然放熱による温度低下も少なく、電源オン時から所望の温度に到達して定着可能になるまでの所謂ウォーミング時間の短縮が可能になるなど、多くの効果が期待できる。
【0101】
また、シート材特性に応じて熱定着ロール及び加圧ロールを第1の回転速度とそれより遅い第2の回転速度で選択駆動することにより、未定着トナー像の溶融が適正化され、所望の定着が達成できる。そして、第1の回転速度または第2の回転速度で選択的に駆動しても、未定着トナー像を担持したシート材が熱定着ロールと耐熱ベルトの間を通過するときに通過するシート材へのストレスには変化がなくて小さいので、未定着トナー像の定着後に排出されるシート材に皺発生などのシート材変形が抑制される。したがって、熱ロール型定着装置の機械的剛性アップは不要であるばかりでなく、熱定着ロール薄肉厚化が可能であり、加熱源から耐熱ベルトを加熱する加熱速度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着装置の1実施形態を示し、図1(A)は断面図、図1(B)は図1(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図2】定着ニップ出口側に近接配設するシート材案内部材の斜視図である。
【図3】図1の詳細構造を示し、図1(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図4】図1(A)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図である。
【図5】図4で耐熱ベルト3を装着した図である。
【図6】図5でシート材の通過時の状態を示す図である。
【図7】ニップ通過位置に応じ変化する定着圧力の例を示す図である。
【図8】図1の定着装置の変形例を示し、図8(A)は断面図、図8(B)は図8(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図9】図1の定着装置の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の定着装置の他の実施形態を示し、図10(A)は断面図、図10(B)は図10(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図11】図10においてシート材非通過時の状態を示し、図11(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図11(B)は図11(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図12】図10においてシート材通過時の状態を示し、図12(A)は図10(A)の一部拡大断面図、図12(B)は図12(A)のX−X線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図13】図12においてニップ通過位置に応じて変化する定着圧力の例を示す図である。
【図14】図10の実施形態の変形例を示し、図14(A)は断面図、図14(B)は図14(A)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図15】本発明の画像形成装置の1実施の形態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1…熱定着ロール、1a…ハロゲンランプ、1b…ロール基材、1c…弾性体、2…加圧ロール、2a…回転軸、2b…ロール基材、2c…弾性体、3…耐熱ベルト、4…ベルト張架部材、4a…突壁、5…シート材、5a…未定着トナー像、6…クリーニング部材、7…フレーム、8…シート材案内部材、9…スプリング、L…押圧部接線
Claims (17)
- 熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され前記熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材上に形成した未定着トナー像を定着する定着装置において、前記ベルト張架部材と前記加圧ロールとの間で前記耐熱ベルトに張力を付与して張架し前記熱定着ロールに前記耐熱ベルトを巻き付けて定着ニップを形成し、板状樹脂材からなりシート材案内方向に複数のスリットを有するシート材案内部材を前記定着ニップ出口側に近接配設したことを特徴とする定着装置。
- 前記熱定着ロールは、ロール基材の外周に弾性体を被覆して形成し、前記加圧ロールは、前記熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より硬質な表面を有して構成したことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記熱定着ロールは、前記弾性体の表層にPFA層を設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の定着装置。
- 前記加圧ロールは、ロール基材の外周に前記熱定着ロールの弾性体より薄い厚みの弾性体を被覆して形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置。
- 前記加圧ロールは、前記熱定着ロールの表面に被覆した弾性体より前記硬質な表面の押圧によって熱定着ロールの弾性層を弾性変形させ前記シート材にカール習性を付与することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の定着装置。
- 前記加圧ロールは、ロール基材が前記熱定着ロールのロール基材より外径を小さくしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定着装置。
- 前記熱定着ロール及び前記前記加圧ロールは、略均一な弾性変形をして前記定着ニップが水平ニップになるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6記載のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、前記耐熱ベルトが摺動する摺動部材であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、半月状部材であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、前記熱定着ロールと前記加圧ロールとの押圧部より前記耐熱ベルトの移動方向上流側に揺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、前記熱定着ロールと前記加圧ロールとの押圧部より前記耐熱ベルトの移動方向下流側に揺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、前記熱定着ロールの方向に付勢する揺動付勢手段によって揺動付勢されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、シート材の非通過時に前記ベルト張架部材と耐熱ベルトとの間にギャップを形成し、シート材の通過時にはベルト張架部材をシート材を介して熱定着ロールに押圧するように構成したことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材は、一端又は両端に前記耐熱ベルトの端部を位置規制する位置規制突壁が設けられていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の定着装置。
- 前記シート材案内部材は、耐熱性プラスチック素材で打ち抜き加工により形成したものであることを特徴とする請求項1乃至14記載のいずれかに記載の定着装置。
- 前記ベルト張架部材と前記加熱ロールとの間に前記耐熱ベルトの内周面に摺接してクリーニング部材を配置したことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の定着装置。
- 請求項1乃至16のいずれかに記載の定着装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003176342A JP2005010612A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 定着装置および画像形成装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003176342A JP2005010612A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 定着装置および画像形成装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005010612A true JP2005010612A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=34099246
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003176342A Pending JP2005010612A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 定着装置および画像形成装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005010612A (ja) |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003176342A patent/JP2005010612A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2005010609A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP4332716B2 (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2004069968A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005017664A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005010612A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2006189632A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2006317772A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP4362701B2 (ja) | 定着装置 | |
JP2006189628A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP4110379B2 (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP4078531B2 (ja) | 定着装置及び画像形成装置 | |
JP2005156671A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005115027A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP4362707B2 (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP4078532B2 (ja) | 定着装置及び画像形成装置 | |
JP2005010611A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005156669A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005258108A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005017663A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005156670A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2005115024A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2006317769A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2006317773A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2006317771A (ja) | 定着装置および画像形成装置 | |
JP2006154176A (ja) | 定着装置および画像形成装置 |