JP2005009575A - 含油軸受及び含油軸受の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受を縦置き配置にして使用すると、回転軸と軸受面との間に滲み出た潤滑油が流下して摺動面の一部が給油過剰になったり、流下した潤滑油が外部に流出して潤滑継続時間が短縮されたりするので、この問題を無くした含油軸受を提供する。
【解決手段】内径面(軸孔2の内面)に周方向に連続した溝5を備えさせ、縦置き配置にしたときに内径面を伝って流下する潤滑油を前記溝5に取り込み、内部空孔に吸い込ませて循環させるようにした。溝5は、粉末原料を圧粉成形して得られる成形体の内径面に段差を付け、その段差がなくなるようにサイジングを行って生じさせると好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】内径面(軸孔2の内面)に周方向に連続した溝5を備えさせ、縦置き配置にしたときに内径面を伝って流下する潤滑油を前記溝5に取り込み、内部空孔に吸い込ませて循環させるようにした。溝5は、粉末原料を圧粉成形して得られる成形体の内径面に段差を付け、その段差がなくなるようにサイジングを行って生じさせると好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用ブロアモータや換気用ファンモータなどのように垂直又は傾斜配置にして使用される機器の回転軸を支えるのに好適な含油軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔質焼結体によって形成される含油軸受は、無給油で長時間使用でき、各種機器の回転軸用軸受として広く利用されている。
【0003】
この含油軸受は内部空孔に含浸させた潤滑油が、回転軸の回転によるポンプ作用と摩擦熱による膨張により軸受面となる内径面(軸孔の内面)に滲み出して油膜を形成し、この油膜により軸受と回転軸の摺動面の潤滑がなされる。
【0004】
ところで、下記特許文献1には、内径面に目潰し部を設けた含油軸受が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−106568号公報
【0006】
多孔質焼結体によって形成される含油軸受の内径面には無数の目孔が存在する。そのため、極低温下で軸の回転が停止していると軸の回転時に外部に滲み出ていた潤滑油がその目孔から内部の空孔内に吸い上げられ、軸の回転始動時の潤滑が円滑になされない。
【0007】
上記特許文献1の含油軸受は、その不具合を無くすために、内径面に通気度を低下させた目潰し部を設けて極低温下で軸の回転が停止しているときの潤滑油の吸い上げを防止し、また、軸の回転時には通気性低下により潤滑油が滲み出し難くなった目潰し部に目潰し部以外の箇所(多孔質部)から滲み出た潤滑油を供給して摺動面の潤滑性を保つようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
含油軸受を縦置き配置(垂直又は斜め配置)にして使用する場合、内径面に滲み出た潤滑油が流下して外部に流出することがある。例えば、上記の特許文献1に示される含油軸受は、内径面の目潰し部の両側(軸方向の一端側と他端側)に目潰しをしていない多孔質部を設けているので、これを縦置き配置にして使用すると、目潰し部よりも下側部分の多孔質部から上部にある多孔質部から滲み出た潤滑油が目潰し部の内側に流下してこの部分の給油が過多になり、過剰潤滑油が外部に漏れ出して潤滑持続時間が短縮されるなどの問題が発生する。
【0009】
この発明は、含油軸受を縦置き配置にして使用するときに起こる潤滑油の流下を防止して、一部分の給油過多や、潤滑持続時間の短縮につながる潤滑油の流出が起こらないようにすることを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、垂直又は傾斜配置の回転軸を支える含油軸受を改善の対象とし、この軸受の軸受面となる内径面に円周方向に連続した溝を備えさせた。
【0011】
内径面の通気度を低下させた目潰し部とこの目潰し部よりも通気度の高い多孔質部が軸方向に位置を変えて設けられ、その目潰し部と多孔質部が軸受面を構成している含油軸受については、目潰し部と多孔質部との間に前記溝を設けるとよい。
【0012】
また、その溝の深さは0.02〜0.1mm、より好ましくは0.02〜0.05mm、幅は0.1〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.3mmにするのがよい。
【0013】
さらに、この溝は切削加工した溝ではなく、以下の方法で形成されるものが好ましい。
【0014】
その好ましい方法とは、原料粉末混合、成形、焼結、サイジング、浸油の各工程を経る含油軸受の製造方法において、原料粉末を成形して得られる成形体の内径に半径0.03〜0.2mmの段差を付け、その成形体を焼結して得られる焼結体の内径孔をサイジングして軸受面となる内径面に円周方向に連続した溝を生じさせる方法である。
【0015】
この方法によって形成される溝は、軸直角方向を向く第1の面とその第1の面に向かって溝深さを大きくする方向に傾いたテーパ状の第2の面とで構成されたものになる。また、内径小部側のサイジング代が内径大部側のサイジング代よりも大きくなるため、第1の面側の密度が第2の面側の密度よりも大きくなり、潤滑油の流下防止に関してより好ましい形態の溝になる。
【0016】
なお、この方法で内径面に溝を形成する含油軸受は、成形工程における成形体の平均密度を、
Fe系原料使用時には5.8〜6.8g/cm3 、より好ましくは6.0〜6.4g/cm3 、
Fe−Cu系原料使用時には6.0〜7.0g/cm3 、より好ましくは6.2〜6.6g/cm3 、
Cu−Sn系原料使用時には6.4〜7.4g/cm3 、より好ましくは6.6〜7.0g/cm3 にするのがよい。
【0017】
また、焼結体の内径サイジング代を、内径大部側で0.5〜2%にするのも好ましい。
【0018】
【作用】
軸受面になる内径面に周方向に連続した溝を設けると、上側から流下してきた潤滑油が溝内に取り込まれて再度軸受の内部空孔に吸い込まれる。従って、この溝よりも下側で給油が過剰になったり、過剰油が外部に流出したりすることがなくなる。
【0019】
また、成形体の内径面に段差を設けてサイジングを行い、これによって内径面に溝を生じさせるこの発明の方法によれば、溝を切削加工して設ける場合に不可避の問題、即ち、▲1▼加工部にバリが発生する。▲2▼軸受の孔と溝との間に芯ずれが生じる。▲3▼加工コストが上昇する。の問題が発生しない。
【0020】
なお、数値限定の理由等については次項で説明する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図に基づいて説明する。
【0022】
図1、図2は、この発明の含油軸受の一例である。この含油軸受1は、原料粉末の混合工程→成形工程→焼結工程→サイジング工程→浸油工程を経て作られている。この含油軸受1の内径面、即ち軸孔2の内面は、目孔が塞がれて表面の通気度が小さくなった目潰し部3の面と、目潰し部3よりも通気度の高い多孔質部4の面で構成されており、目潰し部3と多孔質部4の境界部に、図2に拡大して示す環状の溝5が形成されている。
【0023】
例示の含油軸受1の原料としては、Fe系粉末、Fe−Cu系粉末、Cu−Sn系粉末などが用いられる。必要な原料粉末を所定の割合で混合し、この混合粉末を成形装置で圧粉成形して図3に示すような形状の成形体6を得る。このとき、目潰し部となる部分の内径d1 を多孔質部となる部分の内径d2 よりも所定寸法小さくして内径面に(d2 −d1 )/2の段差Sを生じさせる。
【0024】
成形体6の内径面に付すその段差Sが、0.03mm以下であると溝の形成が不確実になり、一方、その段差Sが0.2mmよりも大きいとサイジング時に形成される溝部(図1、図2の溝5)に亀裂が生じ易くなる。
【0025】
内径面の段差Sを付けた成形体6を、1000℃程度の温度で10〜30分程度の時間をかけて焼結し、その後、図4に示すようなサイジング装置10で焼結体7にサイジングを施す。サイジング装置10は、ダイ11、上パンチ12、下パンチ13、コアロッド14から成る既知の装置である。図4(a)、(b)に示すように、焼結体7を上パンチ12でダイ11の内部に押し込み、ダイ11の内部に待機したコアロッド14を軸孔2に通す。コアロッド14の外径Dcは、多孔質部となる部分の内径d2 よりも大きく、(Dc−d2 )/2の式で求まる数値が多孔質部となる部分のサイジング代になる。
【0026】
このサイジングを実施すると、内径d1 部の圧縮量が内径d2 部の圧縮量よりも大きくなり、図1の目潰し部3が生じる。また、圧縮量が小さい部分は図1の多孔質部4となり、さらに、圧縮量の差により面の一部が窪んで目潰し部3と多孔質部4との間に図1、図2に示す溝5が形成される。
【0027】
この溝5は、軸直角方向を向く第1の面5aと、その第1の面5aに向かって溝深さを大きくする方向に傾いたテーパ状の第2の面5bとで構成され、第1の面5a側の密度が第2の面5b側の密度よりも大きくなる。そのため、溝5の中に取り込まれた潤滑油は過剰給油となり易い目潰し部3側にはさほど供給されず、専ら多孔質部4側の空孔に吸い込まれて循環する。
【0028】
この溝5は、深さ(図2のa)を0.02〜0.1mm、より好ましくは0.02〜0.05mm、幅(図2のb)を0.1〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.3mmにするのがよい。その深さが0.02mm以下、幅が0.1mm以下では溝設置の効果が十分に発揮されない。また、深さが0.1mm以上、幅が0.5mm以上では溝に溜まる潤滑油の量が多くなり、内部空孔への再吸い込み→滲み出しの循環が不十分になって軸回転時に潤滑油の供給不足が起こる。
【0029】
また、この発明の含油軸受は、成形体6の平均密度が低すぎると要求強度の確保が困難になる。その問題を回避するために、成形体6の平均密度の下限を、Fe系原料使用時には5.8g/cm3 、Fe−Cu系原料使用時には6.0g/cm3 、Cu−Sn系原料使用時には6.4g/cm3 に設定するのがよく、また、その平均密度が高すぎると含油率が低下し、寿命が短くなり、サイジングによる精度確保が困難になるので、平均密度の上限は、Fe系原料使用時には6.8g/cm3 、Fe−Cu系原料使用時には7.0g/cm3 、Cu−Sn系原料使用時には7.4g/cm3 に設定するのがよい。
【0030】
さらに、焼結体の内径大部側でのサイジング代が0.5%以下では寸法精度が高まらず、また、その内径大部側のサイジング代が2%以上ではサイジング代が過大になって軸受の含油量が小さくなるほか、サイジングにも悪影響が出る。
【0031】
以下に、より詳細な実施例を挙げる。
【0032】
粉末原料をFe−50Cu体積%−潤滑材0.8の組成となるように混合し、これを6.45g/cm3 の密度になるように成形して図3に示す形状の、段差Sが0.15mmの成形体6を得た。その後、この成形体6をN2 雰囲気(H2 、Co+CO2 等も可)の真空焼結炉に入れて1000℃、15分の条件で焼結し、得られた焼結体をサイジング処理して図1に示す形状の含油軸受1を作製した。この含油軸受1の寸法は、外径D=φ18mm、内径d=φ8mm、長さL=17mmである。
【0033】
サイジング工程におけるサイジング代は、内径大部側で1%(直径10mm当たり100μm)にした。
【0034】
その結果、得られた含油軸受1の内径面には、通気度の小さい表面を有する目潰し部3とその目潰し部3よりも通気度の大きい表面を有する多孔質部4が形成され、さらに、目潰し部3と多孔質部4との境界部に、深さa=0.5mm、幅b=0.1mmの図2に示す形状の溝5が形成されていた。
【0035】
この含油軸受1を、目潰し部3が多孔質部4の下側に配置される向きにして使用すると、多孔質部4と回転軸との摺動面に滲み出て流下しようとする潤滑油が溝5に流入して再度多孔質部4の空孔に吸い込まれる。そのために、過剰供給された潤滑油が外部に流出して潤滑持続時間が短縮されることがなくなる。
【0036】
なお、内径面に形成する溝は一つに制限されない。成形体6を図5に示すような形状にして焼結後にサイジングすると、図6に示すように目潰し部3を間に挟んで両側に多孔質部4が形成され、一端側の多孔質部4と目潰し部3との間及び他端側の多孔質部4と目潰し部3との間にそれぞれ溝5が生じた含油軸受ができる。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の含油軸受は、内径面に、その内径面を伝って流下する潤滑油を取り込んで内部空孔に戻す溝を設けたので、縦向き配置の使用によって一部分に対する給油が過剰になったり、潤滑油が外部に流出したりすることがなくなり、優れた潤滑性能を長時間持続することが可能になる。
【0038】
また、成形体の内径面に段差を設けてサイジングを行うこの発明の製造方法によれば、軸受の内径面に目潰し部と多孔質部を形成するのと同時に上記の溝を切削加工せずに作り出すことができ、切削加工で問題になる加工部のバリ発生、芯ずれ、加工コスト上昇などを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の含油軸受の実施形態を示す断面図
【図2】図1の含油軸受の内径面に形成された溝の拡大図
【図3】図1の軸受を構成する成形体の断面図
【図4】(a)この発明の方法による成形体のサイジング前の状況を示す図
(b)この発明の方法による成形体のサイジング状況を示す図
【図5】形状の異なる成形体の断面図
【図6】図5の成形体を焼結後にサイジングしてできる含油軸受の断面図
【符号の説明】
1 含油軸受
2 軸孔
3 目潰し部
4 多孔質部
5 溝
5a 第1の面
5b 第2の面
6 成形体
7 焼結体
10 サイジング装置
11 ダイ
12 上パンチ
13 下パンチ
14 コアロッド
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用ブロアモータや換気用ファンモータなどのように垂直又は傾斜配置にして使用される機器の回転軸を支えるのに好適な含油軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔質焼結体によって形成される含油軸受は、無給油で長時間使用でき、各種機器の回転軸用軸受として広く利用されている。
【0003】
この含油軸受は内部空孔に含浸させた潤滑油が、回転軸の回転によるポンプ作用と摩擦熱による膨張により軸受面となる内径面(軸孔の内面)に滲み出して油膜を形成し、この油膜により軸受と回転軸の摺動面の潤滑がなされる。
【0004】
ところで、下記特許文献1には、内径面に目潰し部を設けた含油軸受が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−106568号公報
【0006】
多孔質焼結体によって形成される含油軸受の内径面には無数の目孔が存在する。そのため、極低温下で軸の回転が停止していると軸の回転時に外部に滲み出ていた潤滑油がその目孔から内部の空孔内に吸い上げられ、軸の回転始動時の潤滑が円滑になされない。
【0007】
上記特許文献1の含油軸受は、その不具合を無くすために、内径面に通気度を低下させた目潰し部を設けて極低温下で軸の回転が停止しているときの潤滑油の吸い上げを防止し、また、軸の回転時には通気性低下により潤滑油が滲み出し難くなった目潰し部に目潰し部以外の箇所(多孔質部)から滲み出た潤滑油を供給して摺動面の潤滑性を保つようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
含油軸受を縦置き配置(垂直又は斜め配置)にして使用する場合、内径面に滲み出た潤滑油が流下して外部に流出することがある。例えば、上記の特許文献1に示される含油軸受は、内径面の目潰し部の両側(軸方向の一端側と他端側)に目潰しをしていない多孔質部を設けているので、これを縦置き配置にして使用すると、目潰し部よりも下側部分の多孔質部から上部にある多孔質部から滲み出た潤滑油が目潰し部の内側に流下してこの部分の給油が過多になり、過剰潤滑油が外部に漏れ出して潤滑持続時間が短縮されるなどの問題が発生する。
【0009】
この発明は、含油軸受を縦置き配置にして使用するときに起こる潤滑油の流下を防止して、一部分の給油過多や、潤滑持続時間の短縮につながる潤滑油の流出が起こらないようにすることを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、垂直又は傾斜配置の回転軸を支える含油軸受を改善の対象とし、この軸受の軸受面となる内径面に円周方向に連続した溝を備えさせた。
【0011】
内径面の通気度を低下させた目潰し部とこの目潰し部よりも通気度の高い多孔質部が軸方向に位置を変えて設けられ、その目潰し部と多孔質部が軸受面を構成している含油軸受については、目潰し部と多孔質部との間に前記溝を設けるとよい。
【0012】
また、その溝の深さは0.02〜0.1mm、より好ましくは0.02〜0.05mm、幅は0.1〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.3mmにするのがよい。
【0013】
さらに、この溝は切削加工した溝ではなく、以下の方法で形成されるものが好ましい。
【0014】
その好ましい方法とは、原料粉末混合、成形、焼結、サイジング、浸油の各工程を経る含油軸受の製造方法において、原料粉末を成形して得られる成形体の内径に半径0.03〜0.2mmの段差を付け、その成形体を焼結して得られる焼結体の内径孔をサイジングして軸受面となる内径面に円周方向に連続した溝を生じさせる方法である。
【0015】
この方法によって形成される溝は、軸直角方向を向く第1の面とその第1の面に向かって溝深さを大きくする方向に傾いたテーパ状の第2の面とで構成されたものになる。また、内径小部側のサイジング代が内径大部側のサイジング代よりも大きくなるため、第1の面側の密度が第2の面側の密度よりも大きくなり、潤滑油の流下防止に関してより好ましい形態の溝になる。
【0016】
なお、この方法で内径面に溝を形成する含油軸受は、成形工程における成形体の平均密度を、
Fe系原料使用時には5.8〜6.8g/cm3 、より好ましくは6.0〜6.4g/cm3 、
Fe−Cu系原料使用時には6.0〜7.0g/cm3 、より好ましくは6.2〜6.6g/cm3 、
Cu−Sn系原料使用時には6.4〜7.4g/cm3 、より好ましくは6.6〜7.0g/cm3 にするのがよい。
【0017】
また、焼結体の内径サイジング代を、内径大部側で0.5〜2%にするのも好ましい。
【0018】
【作用】
軸受面になる内径面に周方向に連続した溝を設けると、上側から流下してきた潤滑油が溝内に取り込まれて再度軸受の内部空孔に吸い込まれる。従って、この溝よりも下側で給油が過剰になったり、過剰油が外部に流出したりすることがなくなる。
【0019】
また、成形体の内径面に段差を設けてサイジングを行い、これによって内径面に溝を生じさせるこの発明の方法によれば、溝を切削加工して設ける場合に不可避の問題、即ち、▲1▼加工部にバリが発生する。▲2▼軸受の孔と溝との間に芯ずれが生じる。▲3▼加工コストが上昇する。の問題が発生しない。
【0020】
なお、数値限定の理由等については次項で説明する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図に基づいて説明する。
【0022】
図1、図2は、この発明の含油軸受の一例である。この含油軸受1は、原料粉末の混合工程→成形工程→焼結工程→サイジング工程→浸油工程を経て作られている。この含油軸受1の内径面、即ち軸孔2の内面は、目孔が塞がれて表面の通気度が小さくなった目潰し部3の面と、目潰し部3よりも通気度の高い多孔質部4の面で構成されており、目潰し部3と多孔質部4の境界部に、図2に拡大して示す環状の溝5が形成されている。
【0023】
例示の含油軸受1の原料としては、Fe系粉末、Fe−Cu系粉末、Cu−Sn系粉末などが用いられる。必要な原料粉末を所定の割合で混合し、この混合粉末を成形装置で圧粉成形して図3に示すような形状の成形体6を得る。このとき、目潰し部となる部分の内径d1 を多孔質部となる部分の内径d2 よりも所定寸法小さくして内径面に(d2 −d1 )/2の段差Sを生じさせる。
【0024】
成形体6の内径面に付すその段差Sが、0.03mm以下であると溝の形成が不確実になり、一方、その段差Sが0.2mmよりも大きいとサイジング時に形成される溝部(図1、図2の溝5)に亀裂が生じ易くなる。
【0025】
内径面の段差Sを付けた成形体6を、1000℃程度の温度で10〜30分程度の時間をかけて焼結し、その後、図4に示すようなサイジング装置10で焼結体7にサイジングを施す。サイジング装置10は、ダイ11、上パンチ12、下パンチ13、コアロッド14から成る既知の装置である。図4(a)、(b)に示すように、焼結体7を上パンチ12でダイ11の内部に押し込み、ダイ11の内部に待機したコアロッド14を軸孔2に通す。コアロッド14の外径Dcは、多孔質部となる部分の内径d2 よりも大きく、(Dc−d2 )/2の式で求まる数値が多孔質部となる部分のサイジング代になる。
【0026】
このサイジングを実施すると、内径d1 部の圧縮量が内径d2 部の圧縮量よりも大きくなり、図1の目潰し部3が生じる。また、圧縮量が小さい部分は図1の多孔質部4となり、さらに、圧縮量の差により面の一部が窪んで目潰し部3と多孔質部4との間に図1、図2に示す溝5が形成される。
【0027】
この溝5は、軸直角方向を向く第1の面5aと、その第1の面5aに向かって溝深さを大きくする方向に傾いたテーパ状の第2の面5bとで構成され、第1の面5a側の密度が第2の面5b側の密度よりも大きくなる。そのため、溝5の中に取り込まれた潤滑油は過剰給油となり易い目潰し部3側にはさほど供給されず、専ら多孔質部4側の空孔に吸い込まれて循環する。
【0028】
この溝5は、深さ(図2のa)を0.02〜0.1mm、より好ましくは0.02〜0.05mm、幅(図2のb)を0.1〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.3mmにするのがよい。その深さが0.02mm以下、幅が0.1mm以下では溝設置の効果が十分に発揮されない。また、深さが0.1mm以上、幅が0.5mm以上では溝に溜まる潤滑油の量が多くなり、内部空孔への再吸い込み→滲み出しの循環が不十分になって軸回転時に潤滑油の供給不足が起こる。
【0029】
また、この発明の含油軸受は、成形体6の平均密度が低すぎると要求強度の確保が困難になる。その問題を回避するために、成形体6の平均密度の下限を、Fe系原料使用時には5.8g/cm3 、Fe−Cu系原料使用時には6.0g/cm3 、Cu−Sn系原料使用時には6.4g/cm3 に設定するのがよく、また、その平均密度が高すぎると含油率が低下し、寿命が短くなり、サイジングによる精度確保が困難になるので、平均密度の上限は、Fe系原料使用時には6.8g/cm3 、Fe−Cu系原料使用時には7.0g/cm3 、Cu−Sn系原料使用時には7.4g/cm3 に設定するのがよい。
【0030】
さらに、焼結体の内径大部側でのサイジング代が0.5%以下では寸法精度が高まらず、また、その内径大部側のサイジング代が2%以上ではサイジング代が過大になって軸受の含油量が小さくなるほか、サイジングにも悪影響が出る。
【0031】
以下に、より詳細な実施例を挙げる。
【0032】
粉末原料をFe−50Cu体積%−潤滑材0.8の組成となるように混合し、これを6.45g/cm3 の密度になるように成形して図3に示す形状の、段差Sが0.15mmの成形体6を得た。その後、この成形体6をN2 雰囲気(H2 、Co+CO2 等も可)の真空焼結炉に入れて1000℃、15分の条件で焼結し、得られた焼結体をサイジング処理して図1に示す形状の含油軸受1を作製した。この含油軸受1の寸法は、外径D=φ18mm、内径d=φ8mm、長さL=17mmである。
【0033】
サイジング工程におけるサイジング代は、内径大部側で1%(直径10mm当たり100μm)にした。
【0034】
その結果、得られた含油軸受1の内径面には、通気度の小さい表面を有する目潰し部3とその目潰し部3よりも通気度の大きい表面を有する多孔質部4が形成され、さらに、目潰し部3と多孔質部4との境界部に、深さa=0.5mm、幅b=0.1mmの図2に示す形状の溝5が形成されていた。
【0035】
この含油軸受1を、目潰し部3が多孔質部4の下側に配置される向きにして使用すると、多孔質部4と回転軸との摺動面に滲み出て流下しようとする潤滑油が溝5に流入して再度多孔質部4の空孔に吸い込まれる。そのために、過剰供給された潤滑油が外部に流出して潤滑持続時間が短縮されることがなくなる。
【0036】
なお、内径面に形成する溝は一つに制限されない。成形体6を図5に示すような形状にして焼結後にサイジングすると、図6に示すように目潰し部3を間に挟んで両側に多孔質部4が形成され、一端側の多孔質部4と目潰し部3との間及び他端側の多孔質部4と目潰し部3との間にそれぞれ溝5が生じた含油軸受ができる。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の含油軸受は、内径面に、その内径面を伝って流下する潤滑油を取り込んで内部空孔に戻す溝を設けたので、縦向き配置の使用によって一部分に対する給油が過剰になったり、潤滑油が外部に流出したりすることがなくなり、優れた潤滑性能を長時間持続することが可能になる。
【0038】
また、成形体の内径面に段差を設けてサイジングを行うこの発明の製造方法によれば、軸受の内径面に目潰し部と多孔質部を形成するのと同時に上記の溝を切削加工せずに作り出すことができ、切削加工で問題になる加工部のバリ発生、芯ずれ、加工コスト上昇などを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の含油軸受の実施形態を示す断面図
【図2】図1の含油軸受の内径面に形成された溝の拡大図
【図3】図1の軸受を構成する成形体の断面図
【図4】(a)この発明の方法による成形体のサイジング前の状況を示す図
(b)この発明の方法による成形体のサイジング状況を示す図
【図5】形状の異なる成形体の断面図
【図6】図5の成形体を焼結後にサイジングしてできる含油軸受の断面図
【符号の説明】
1 含油軸受
2 軸孔
3 目潰し部
4 多孔質部
5 溝
5a 第1の面
5b 第2の面
6 成形体
7 焼結体
10 サイジング装置
11 ダイ
12 上パンチ
13 下パンチ
14 コアロッド
Claims (7)
- 垂直又は傾斜配置の回転軸を支える含油軸受であって、軸受面となる内径面に円周方向に連続した溝を備える含油軸受。
- 内径面の通気度を低下させた目潰し部と、この目潰し部よりも通気度の高い多孔質部が軸方向に位置を変えて設けられ、この目潰し部と多孔質部との間に前記溝が設けられ、目潰し部と多孔質部が軸受面を構成している請求項1に記載の含油軸受。
- 前記溝の深さを0.02〜0.1mm、幅を0.1〜0.5mmにした請求項1又は2に記載の含油軸受。
- 前記溝が、軸直角方向を向く第1の面とその第1の面に向かって溝深さを大きくする方向に傾いたテーパ状の第2の面とで構成され、第1の面側の密度が第2の面側の密度よりも大きくなっている請求項1乃至3のいずれかに記載の含油軸受。
- 原料粉末混合、成形、焼結、サイジング、浸油の各工程を経る含油軸受の製造方法であって、原料粉末を成形して得られる成形体の内径に半径0.03〜0.2mmの段差を付け、その成形体を焼結して得られる焼結体の軸孔をサイジングして軸受面となる内径面に円周方向に連続した溝を生じさせることを特徴とする含油軸受の製造方法。
- 成形工程における成形体の平均密度を、Fe系原料使用時には5.8〜6.8g/cm3 、Fe−Cu系原料使用時には6.0〜7.0g/cm3 、Cu−Sn系原料使用時には6.4〜7.4g/cm3 となす請求項5に記載の含油軸受の製造方法。
- 焼結体の内径サイジング代を、内径大部側で0.5〜2%にしてサイジングを行う請求項5又は6に記載の含油軸受の製造方法。
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- 2003-06-19 JP JP2003174217A patent/JP2005009575A/ja active Pending
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