JP2005008835A - 封止用樹脂組成物および半導体封止装置 - Google Patents
封止用樹脂組成物および半導体封止装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】特にハロゲン化合物、金属水和物およびアンチモン、ビスマス、ハイドロタルサイト類など金属化合物を含有しない、難燃性、成形性および信頼性のよい封止用樹脂組成物と半導体封止装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)架橋型ホスファゼン化合物、(D)次式で示される環状化合物
(式中、R′′、R′′′はアルキル基、フェニル基、アーレン基又は水素原子を、αは−S−、−O−又は−CH2 を表す)および(E)無機充填剤を必須成分とし、組成物全体に対して、(C)架橋型ホスファゼン化合物を0.5〜30重量%、(D)環状化合物を0.05〜10重量%、また(E)無機充填剤を40〜95重量%の割合で含有してなる封止用樹脂組成物と半導体封止装置である。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)架橋型ホスファゼン化合物、(D)次式で示される環状化合物
(式中、R′′、R′′′はアルキル基、フェニル基、アーレン基又は水素原子を、αは−S−、−O−又は−CH2 を表す)および(E)無機充填剤を必須成分とし、組成物全体に対して、(C)架橋型ホスファゼン化合物を0.5〜30重量%、(D)環状化合物を0.05〜10重量%、また(E)無機充填剤を40〜95重量%の割合で含有してなる封止用樹脂組成物と半導体封止装置である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に環境対応の観点から、臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン化合物(塩素原子または臭素原子を含む化合物)および三酸化アンチモン等の金属酸化物を添加することなしに優れた難燃性を有し、なおかつ、ゼライトやアンチモン、ビスマス、ハイドロタルサイト類などの金属酸化物を添加することなしにイオン性不純物を捕捉固定することに優れ、また成形性および信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置では、その封止樹脂に難燃性をもたせることが一般的であり、難燃化の処方として、ハロゲン(塩素、臭素)化合物および金属酸化物を単独もしくは併用することで難燃効果を現している。具体的には、封止用樹脂組成物として臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンを組み合わせて用いることが一般的である。また、半導体封止装置を高温多湿下で長時間使用していると故障することがある。これは、封止用樹脂組成物中に浸入した水分と、封止用樹脂組成物の一つであるエポキシ樹脂の製造過程において含まれる微量のナトリウムや塩素等の不純物イオンに要因されるものであって、アルミ配線の腐食やチップの性能低下とによる故障であることがわかっている。この故障防止のためには、封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の向上が重要となり、チップやリードと封止樹脂の界面、さらに封止用樹脂組成物中の充填剤と樹脂の界面に空隙部を作らないように相互の接着力を強化させたり、また、封止用樹脂組成物そのものの高純度化により特性不良を低減させてきた。処方としては、前者の場合は、シラン系の表面処理剤を用いることで金型からの離型性を損なうことなく接着性を向上させてきた。また、後者の場合は、封止用樹脂組成物中の原材料自体の高純度化を行いながら、イオン性不純物を捕捉固定するイオン交換体の添加で腐食を防止してきた。添加するイオン交換体としては、アンチモンやビスマス、ハイドロタルサイト類などを用いた金属化合物が主であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
封止用樹脂組成物の難燃効果を現すためにハロゲン(塩素、臭素)化合物、特に臭素化エポキシ樹脂と、その難燃効果を補助するために金属酸化物、特に三酸化アンチモンを組み合わせて添加することは、臭素イオンによる半導体封止装置の信頼性を低下させるという欠点があった。そればかりか最近では、環境保護の観点からダイオキシン類の問題に関連してハロゲン化樹脂や、劇物に指定されている三酸化アンチモンの環境への悪影響もが指摘され始めている。このため、成形性、信頼性に優れたハロゲン(塩素、臭素)化合物および金属酸化物を含有しない封止用樹脂組成物の開発が強く要望されており、その代替材として、リン系難燃剤および金属水和物の添加による封止用樹脂組成物の難燃化の検討が広く進められている。しかし、リン系難燃剤のうちリン酸に加水分解されるものの使用は、生じたリン酸が上記のナトリウムや塩素等の不純物イオンと同様に半導体封止装置の耐湿信頼性を大きく低下させてしまう恐れがあった。また、金属水和物の使用は、十分な効果を得るために多量の添加が必要となり、これによって十分な成形性が確保できないばかりか、それによる吸湿特性の劣化は、実装時の半導体封止装置の信頼性を著しく低下させてしまうという欠点があった。
【0004】
イオン性不純物を捕捉固定するためにはイオン交換体の添加が必要となり、これにより半導体封止装置の特性が十分に向上しない状況にあった。特にハイドロタルサイト類の添加は、封止用樹脂組成物の吸水率を上げるために表面実装用の半導体封止装置に適用した場合に、急激な温度上昇を伴う実装時の信頼性の低下を招く恐れがある。劇物に指定されているアンチモン化合物や、ビスマスもアンチモンに似た毒性を有するために、同様に環境への悪影響が指摘され始めている。このために、環境への悪影響がなく、また成形性や実装時信頼性の劣化が少なく、ハロゲン(塩素、臭素)化合物や酸化アンチモンを含有しない難燃剤およびイオン性不純物の捕捉固定効果のある添加剤が求められ、それらを原材料とし成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置が強く要望されてきた。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題を解決し、上記要望に応えるためになされたもので、臭素化エポキシ樹脂など含ハロゲン化合物および三酸化アンチモンなど金属酸化物および水酸化マグネシウムなど金属水和物を含有せず、またリン酸に加水分解されない難燃剤の使用により十分な難燃性を付与し、またアンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類など金属化合物系のイオン交換体を含有せずに、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物を捕捉固定し、成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、封止用樹脂組成物に、架橋型ホスファゼン化合物および環状化合物を適当な比率で配合することによって、良好な成形性とともに、十分な難燃性およびイオン性不純物の捕捉固定がなされ、信頼性が向上し、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0007】
即ち、本発明は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)下記構造式で示される環状ホスファゼン化合物(1)及び
【化9】
(式中、R,R′はフェニル基又はアルキル基を、mは3〜25の整数をそれぞれ表す)
下記構造式で示される直鎖状ホスファゼン化合物(2)
【化10】
(式中、R,R′はフェニル基又はアルキル基を、Xは基−N=P(OC6 H5 )3 又は基−N=P(O)OC6 H5 を、Yは基−P(OC6 H5 )4 又は基−P(O)(C6 H5 )2 を、nは3〜10000の整数をそれぞれ表す)
から選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基および下記構造式で表されるビスフェニレン基
【化11】
(式中、Zは−C(CH3 )2 −、−SO2 −、−S−又は−O−を、aは0又は1をそれぞれ表す)
から選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されてなる化合物であって、(a)該架橋基はホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、(b)架橋されてなる化合物におけるフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、かつ(c)分子内にフリーの水酸基を有しない、架橋型ホスファゼン化合物、
(D)下記構造式で示される環状化合物および
【化12】
(式中、R′′,R′′′はアルキル基、フェニル基、アーレン基又は水素原子を、αは−S−、−O−又は−CH2 −を、lは4〜7の整数をそれぞれ表す)
(E)無機充填剤
を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)の架橋型ホスファゼン化合物を0.5〜30重量%、前記(D)の環状化合物を0.05〜10重量%、また前記(E)無機充填剤を40〜95重量%の割合で、それぞれ含有してなることを特徴とする封止用樹脂組成物である。また、この封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなることを特徴とする半導体封止装置である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造および分子量など特に制限なく、一般に封止用材料として使用されるものを広く包含することができる。例えば、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビフェニル型、ビスフェノール型、ジシクロペンタジエン型、スチルベン型、ナフタレン型、トリフェノールメタン型等の芳香族系、シクロヘキサン誘導体等脂肪族系等のエポキシ樹脂であり、また次の各一般式で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
【化13】
(式中、nは1以上の整数を表す)
これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0011】
本発明に用いる(B)フェノール樹脂としては、前記(A)のエポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。具体的な化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノール類、カテコール、レゾルシン、ナフトール類や、ジシクロペンタジエン変性、テルペン変性等のフェノール類であり、また、次の各一般式に示されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0012】
【化14】
(式中、nは0または1以上の整数を表す)
【化15】
(式中、nは0または1以上の整数を表す)
これらのフェノール樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0013】
(B)フェノール樹脂の配合割合は、前述したエポキシ樹脂のエポキシ基(a)とフェノール樹脂のフェノール性水酸基(b)との当量比(a)/(b)の値が0.1〜10の範囲内であることが望ましい。当量比が0.1未満あるいは10を超えると、耐熱性、成形作業性および硬化物の電気特性が悪くなり、いずれの場合も好ましくない。従って上記の範囲内に限定するのがよい。
【0014】
本発明に用いる(C)の架橋型ホスファゼン化合物としては、下記構造式で示される環状ホスファゼン化合物(1)及び
【化16】
(式中、R,R′はフェニル基またはアルキル基を、mは3〜25の整数をそれぞれ表す)
下記構造式で示される直鎖状ホスファゼン化合物(2)
【化17】
(式中、R,R′はフェニル基又はアルキル基を、Xは基−N=P(OC6 H5 )3 又は基−N=P(O)OC6 H5 を、Yは基−P(OC6 H5 )4 又は基−P(O)(C6 H5 )2 を、nは3〜10000の整数をそれぞれ表す)
から選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基および下記構造式で表されるビスフェニレン基
【化18】
(式中、Zは−C(CH3 )2 −、−SO2 −、−S−又は−O−を、aは0又は1をそれぞれ表す)
から選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されてなる化合物であって、(a)該架橋基はホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、(b)架橋されてなる化合物におけるフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、かつ(c)分子内にフリーの水酸基を有しない、架橋型ホスファゼン化合物である。これら上記の架橋型ホスファゼン化合物の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して0.5〜30重量%含有することが望ましい。この割合が0.5重量%未満では、難燃性の効果が十分に得られず、また30重量%を超えると封止樹脂の硬化等に悪影響を与え、実用に適さず好ましくない。
【0015】
本発明に用いる(D)環状化合物としては、次の構造式に示されるものである。
【0016】
【化19】
(式中、R′′,R′′′はアルキル基、フェニル基、アーレン基又は水素原子を、αは−S−、−O−又は−CH2 −を、lは4〜7の整数をそれぞれ表す)上記の環状化合物の配合割合は、樹脂組成物全体に対して0.05〜10重量%含有することが望ましい。この割合が0.05重量%未満では、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定効果が十分に得られず、また、10重量%を超えると封止用樹脂組成物の硬化等に悪影響を与え、実用に適さず好ましくない。
【0017】
本発明に用いる(E)無機充填剤としては、シリカ粉末、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、酸化チタン、窒化珪素、炭化珪素、ガラス繊維等が挙げられ、これらは、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。これらのなかでも特にシリカ粉末やアルミナ粉末が好ましく、これらはよく使用される。
【0018】
(E)無機充填剤の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して40〜95重量%の割合で含有することが望ましい。その割合が40重量%未満では、耐熱性、耐湿性、半田耐熱性、機械的特性および成形性が悪くなり、また、95重量%を超えると、かさばりが大きくなり成形性に劣り実用に適さない。
【0019】
本発明の封止用樹脂組成物は、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、前記の(C)架橋型ホスファゼン化合物、前記の(D)環状化合物および(E)無機充填剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じてその他のリン化合物やホウ酸亜鉛等の難燃剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪族の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン系等の離型剤、エラストマー等の低応力化成分、カーボンブラック等の着色剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレートなどカップリング剤等の無機充填剤の処理剤、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化反応を促進する種々の硬化促進剤などを適宜、添加配合することができる。
【0020】
本発明の封止用樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)架橋型ホスファゼン化合物、前記の(D)環状化合物、(E)無機充填剤、その他の成分を配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理、またはニーダ等による混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、半導体装置をはじめとする電子部品あるいは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた特性と信頼性を付与させることができる。
【0021】
本発明の半導体封止装置は、上記のようにして得られた封止用樹脂を用いて、半導体チップを封止することにより容易に製造することができる。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法があるが、射出成形、圧縮成形、注型などによる封止も可能である。封止用樹脂組成物を封止の際に加熱して硬化させ、最終的にはこの組成物の硬化物によって封止された半導体封止装置が得られる。加熱による硬化は、150℃以上に加熱して硬化させることが望ましい。封止を行う半導体装置としては、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサ等で特に限定されるものではない。
【0022】
【作用】
本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、樹脂成分として上記の架橋型ホスファゼン化合物および環状化合物を配合することにより、目的とする特性が得られるものである。即ち、上記の架橋型ホスファゼン化合物および環状化合物を適当な比率で配合することにより、十分な成形性を保ちながら、樹脂組成物に優れた難燃性を付与し、かつ、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定に優れた効果を与え、その化合物の安定性から半導体封止装置において信頼性を向上させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「%」とは「重量%」を意味する。
【0024】
実施例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点74℃)14%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点87℃)9%、前記した式化16の架橋型ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)3%、前記した式化19の環状化合物(R′′=−H、R′′′=t−Bu、α=−S−)0.5%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を配合し、常温で混合し、さらに80〜95℃で混練してこれを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0025】
この成形材料を175℃に加熱した金型内にトランスファー注入し、硬化させて成形品(封止品)を成形した。この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0026】
実施例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)12%に、ノボラック型フェノールアラルキル樹脂(フェノール当量175、軟化点71℃)11%、前記した式化16に示した架橋型ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)2.5%、前記した式化19の環状化合物(R′′=−H、R′′′=t−Bu、α=−S−)0.4%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)73%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0027】
実施例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点65℃)10%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)5%、前記した式化16の架橋型ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)2%、前記した式化19の環状化合物(R′′=−H、R′′′=t−Bu、α=−S−)0.5%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)80%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.2%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0028】
比較例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)13%に、ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量400、軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点80℃)9%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、アンチモン系イオン交換体0.3%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0029】
比較例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点74℃)15%に、ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量400、軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)10%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0030】
比較例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点65℃)15%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)9%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)74%、非ハロゲン縮合リン酸エステルのPX−200(大八化学工業社製、商品名)3%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0031】
比較例4
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点65℃)16%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)10%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)73%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0032】
【表1】
*1:トランスファー成形によって120×12×0.8mmおよび120×12×3.2mmの成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、UL−94V耐炎性試験規格に基づき燃焼性の試験を行った。
【0033】
*2:トランスファー成形によって成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、成形品を粉砕し熱水抽出し、イオンクロマトアナライザーおよび原子吸光光度計を用いて、イオン性不純物濃度測定を行った。
【0034】
*3:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を半田槽(260℃)に10秒間浸漬させ、その後プレッシャークッカー試験(125℃、100%RH)を行い、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0035】
*4:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を175℃において4時間後硬化させた後、200℃恒温槽にに保管し、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0036】
【表2】
*1:トランスファー成形によって120×12×0.8mmおよび120×12×3.2mmの成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、UL−94V耐炎性試験規格に基づき燃焼性の試験を行った。
【0037】
*2:トランスファー成形によって成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、成形品を粉砕し熱水抽出し、イオンクロマトアナライザーおよび原子吸光光度計を用いて、イオン性不純物濃度測定を行った。
【0038】
*3:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を半田槽(260℃)に10秒間浸漬させ、その後プレッシャークッカー試験(125℃、100%RH)を行い、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0039】
*4:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を175℃において4時間後硬化させた後、200℃恒温槽にに保管し、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明ならびに表1および2から明らかなように、本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、十分な難燃性を保持しつつ、成形性を低下させることなしにイオン性不純物濃度を低減させることに優れ、その結果、電極の腐食による断線不良を著しく低減することができ、また長期にわたる信頼性を保証することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に環境対応の観点から、臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン化合物(塩素原子または臭素原子を含む化合物)および三酸化アンチモン等の金属酸化物を添加することなしに優れた難燃性を有し、なおかつ、ゼライトやアンチモン、ビスマス、ハイドロタルサイト類などの金属酸化物を添加することなしにイオン性不純物を捕捉固定することに優れ、また成形性および信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置では、その封止樹脂に難燃性をもたせることが一般的であり、難燃化の処方として、ハロゲン(塩素、臭素)化合物および金属酸化物を単独もしくは併用することで難燃効果を現している。具体的には、封止用樹脂組成物として臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンを組み合わせて用いることが一般的である。また、半導体封止装置を高温多湿下で長時間使用していると故障することがある。これは、封止用樹脂組成物中に浸入した水分と、封止用樹脂組成物の一つであるエポキシ樹脂の製造過程において含まれる微量のナトリウムや塩素等の不純物イオンに要因されるものであって、アルミ配線の腐食やチップの性能低下とによる故障であることがわかっている。この故障防止のためには、封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の向上が重要となり、チップやリードと封止樹脂の界面、さらに封止用樹脂組成物中の充填剤と樹脂の界面に空隙部を作らないように相互の接着力を強化させたり、また、封止用樹脂組成物そのものの高純度化により特性不良を低減させてきた。処方としては、前者の場合は、シラン系の表面処理剤を用いることで金型からの離型性を損なうことなく接着性を向上させてきた。また、後者の場合は、封止用樹脂組成物中の原材料自体の高純度化を行いながら、イオン性不純物を捕捉固定するイオン交換体の添加で腐食を防止してきた。添加するイオン交換体としては、アンチモンやビスマス、ハイドロタルサイト類などを用いた金属化合物が主であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
封止用樹脂組成物の難燃効果を現すためにハロゲン(塩素、臭素)化合物、特に臭素化エポキシ樹脂と、その難燃効果を補助するために金属酸化物、特に三酸化アンチモンを組み合わせて添加することは、臭素イオンによる半導体封止装置の信頼性を低下させるという欠点があった。そればかりか最近では、環境保護の観点からダイオキシン類の問題に関連してハロゲン化樹脂や、劇物に指定されている三酸化アンチモンの環境への悪影響もが指摘され始めている。このため、成形性、信頼性に優れたハロゲン(塩素、臭素)化合物および金属酸化物を含有しない封止用樹脂組成物の開発が強く要望されており、その代替材として、リン系難燃剤および金属水和物の添加による封止用樹脂組成物の難燃化の検討が広く進められている。しかし、リン系難燃剤のうちリン酸に加水分解されるものの使用は、生じたリン酸が上記のナトリウムや塩素等の不純物イオンと同様に半導体封止装置の耐湿信頼性を大きく低下させてしまう恐れがあった。また、金属水和物の使用は、十分な効果を得るために多量の添加が必要となり、これによって十分な成形性が確保できないばかりか、それによる吸湿特性の劣化は、実装時の半導体封止装置の信頼性を著しく低下させてしまうという欠点があった。
【0004】
イオン性不純物を捕捉固定するためにはイオン交換体の添加が必要となり、これにより半導体封止装置の特性が十分に向上しない状況にあった。特にハイドロタルサイト類の添加は、封止用樹脂組成物の吸水率を上げるために表面実装用の半導体封止装置に適用した場合に、急激な温度上昇を伴う実装時の信頼性の低下を招く恐れがある。劇物に指定されているアンチモン化合物や、ビスマスもアンチモンに似た毒性を有するために、同様に環境への悪影響が指摘され始めている。このために、環境への悪影響がなく、また成形性や実装時信頼性の劣化が少なく、ハロゲン(塩素、臭素)化合物や酸化アンチモンを含有しない難燃剤およびイオン性不純物の捕捉固定効果のある添加剤が求められ、それらを原材料とし成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置が強く要望されてきた。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題を解決し、上記要望に応えるためになされたもので、臭素化エポキシ樹脂など含ハロゲン化合物および三酸化アンチモンなど金属酸化物および水酸化マグネシウムなど金属水和物を含有せず、またリン酸に加水分解されない難燃剤の使用により十分な難燃性を付与し、またアンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類など金属化合物系のイオン交換体を含有せずに、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物を捕捉固定し、成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、封止用樹脂組成物に、架橋型ホスファゼン化合物および環状化合物を適当な比率で配合することによって、良好な成形性とともに、十分な難燃性およびイオン性不純物の捕捉固定がなされ、信頼性が向上し、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0007】
即ち、本発明は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)下記構造式で示される環状ホスファゼン化合物(1)及び
【化9】
(式中、R,R′はフェニル基又はアルキル基を、mは3〜25の整数をそれぞれ表す)
下記構造式で示される直鎖状ホスファゼン化合物(2)
【化10】
(式中、R,R′はフェニル基又はアルキル基を、Xは基−N=P(OC6 H5 )3 又は基−N=P(O)OC6 H5 を、Yは基−P(OC6 H5 )4 又は基−P(O)(C6 H5 )2 を、nは3〜10000の整数をそれぞれ表す)
から選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基および下記構造式で表されるビスフェニレン基
【化11】
(式中、Zは−C(CH3 )2 −、−SO2 −、−S−又は−O−を、aは0又は1をそれぞれ表す)
から選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されてなる化合物であって、(a)該架橋基はホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、(b)架橋されてなる化合物におけるフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、かつ(c)分子内にフリーの水酸基を有しない、架橋型ホスファゼン化合物、
(D)下記構造式で示される環状化合物および
【化12】
(式中、R′′,R′′′はアルキル基、フェニル基、アーレン基又は水素原子を、αは−S−、−O−又は−CH2 −を、lは4〜7の整数をそれぞれ表す)
(E)無機充填剤
を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)の架橋型ホスファゼン化合物を0.5〜30重量%、前記(D)の環状化合物を0.05〜10重量%、また前記(E)無機充填剤を40〜95重量%の割合で、それぞれ含有してなることを特徴とする封止用樹脂組成物である。また、この封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなることを特徴とする半導体封止装置である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造および分子量など特に制限なく、一般に封止用材料として使用されるものを広く包含することができる。例えば、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビフェニル型、ビスフェノール型、ジシクロペンタジエン型、スチルベン型、ナフタレン型、トリフェノールメタン型等の芳香族系、シクロヘキサン誘導体等脂肪族系等のエポキシ樹脂であり、また次の各一般式で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
【化13】
(式中、nは1以上の整数を表す)
これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0011】
本発明に用いる(B)フェノール樹脂としては、前記(A)のエポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。具体的な化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノール類、カテコール、レゾルシン、ナフトール類や、ジシクロペンタジエン変性、テルペン変性等のフェノール類であり、また、次の各一般式に示されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0012】
【化14】
(式中、nは0または1以上の整数を表す)
【化15】
(式中、nは0または1以上の整数を表す)
これらのフェノール樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0013】
(B)フェノール樹脂の配合割合は、前述したエポキシ樹脂のエポキシ基(a)とフェノール樹脂のフェノール性水酸基(b)との当量比(a)/(b)の値が0.1〜10の範囲内であることが望ましい。当量比が0.1未満あるいは10を超えると、耐熱性、成形作業性および硬化物の電気特性が悪くなり、いずれの場合も好ましくない。従って上記の範囲内に限定するのがよい。
【0014】
本発明に用いる(C)の架橋型ホスファゼン化合物としては、下記構造式で示される環状ホスファゼン化合物(1)及び
【化16】
(式中、R,R′はフェニル基またはアルキル基を、mは3〜25の整数をそれぞれ表す)
下記構造式で示される直鎖状ホスファゼン化合物(2)
【化17】
(式中、R,R′はフェニル基又はアルキル基を、Xは基−N=P(OC6 H5 )3 又は基−N=P(O)OC6 H5 を、Yは基−P(OC6 H5 )4 又は基−P(O)(C6 H5 )2 を、nは3〜10000の整数をそれぞれ表す)
から選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基および下記構造式で表されるビスフェニレン基
【化18】
(式中、Zは−C(CH3 )2 −、−SO2 −、−S−又は−O−を、aは0又は1をそれぞれ表す)
から選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されてなる化合物であって、(a)該架橋基はホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、(b)架橋されてなる化合物におけるフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、かつ(c)分子内にフリーの水酸基を有しない、架橋型ホスファゼン化合物である。これら上記の架橋型ホスファゼン化合物の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して0.5〜30重量%含有することが望ましい。この割合が0.5重量%未満では、難燃性の効果が十分に得られず、また30重量%を超えると封止樹脂の硬化等に悪影響を与え、実用に適さず好ましくない。
【0015】
本発明に用いる(D)環状化合物としては、次の構造式に示されるものである。
【0016】
【化19】
(式中、R′′,R′′′はアルキル基、フェニル基、アーレン基又は水素原子を、αは−S−、−O−又は−CH2 −を、lは4〜7の整数をそれぞれ表す)上記の環状化合物の配合割合は、樹脂組成物全体に対して0.05〜10重量%含有することが望ましい。この割合が0.05重量%未満では、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定効果が十分に得られず、また、10重量%を超えると封止用樹脂組成物の硬化等に悪影響を与え、実用に適さず好ましくない。
【0017】
本発明に用いる(E)無機充填剤としては、シリカ粉末、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、酸化チタン、窒化珪素、炭化珪素、ガラス繊維等が挙げられ、これらは、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。これらのなかでも特にシリカ粉末やアルミナ粉末が好ましく、これらはよく使用される。
【0018】
(E)無機充填剤の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して40〜95重量%の割合で含有することが望ましい。その割合が40重量%未満では、耐熱性、耐湿性、半田耐熱性、機械的特性および成形性が悪くなり、また、95重量%を超えると、かさばりが大きくなり成形性に劣り実用に適さない。
【0019】
本発明の封止用樹脂組成物は、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、前記の(C)架橋型ホスファゼン化合物、前記の(D)環状化合物および(E)無機充填剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じてその他のリン化合物やホウ酸亜鉛等の難燃剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪族の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン系等の離型剤、エラストマー等の低応力化成分、カーボンブラック等の着色剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレートなどカップリング剤等の無機充填剤の処理剤、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化反応を促進する種々の硬化促進剤などを適宜、添加配合することができる。
【0020】
本発明の封止用樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)架橋型ホスファゼン化合物、前記の(D)環状化合物、(E)無機充填剤、その他の成分を配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理、またはニーダ等による混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、半導体装置をはじめとする電子部品あるいは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた特性と信頼性を付与させることができる。
【0021】
本発明の半導体封止装置は、上記のようにして得られた封止用樹脂を用いて、半導体チップを封止することにより容易に製造することができる。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法があるが、射出成形、圧縮成形、注型などによる封止も可能である。封止用樹脂組成物を封止の際に加熱して硬化させ、最終的にはこの組成物の硬化物によって封止された半導体封止装置が得られる。加熱による硬化は、150℃以上に加熱して硬化させることが望ましい。封止を行う半導体装置としては、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサ等で特に限定されるものではない。
【0022】
【作用】
本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、樹脂成分として上記の架橋型ホスファゼン化合物および環状化合物を配合することにより、目的とする特性が得られるものである。即ち、上記の架橋型ホスファゼン化合物および環状化合物を適当な比率で配合することにより、十分な成形性を保ちながら、樹脂組成物に優れた難燃性を付与し、かつ、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定に優れた効果を与え、その化合物の安定性から半導体封止装置において信頼性を向上させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「%」とは「重量%」を意味する。
【0024】
実施例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点74℃)14%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点87℃)9%、前記した式化16の架橋型ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)3%、前記した式化19の環状化合物(R′′=−H、R′′′=t−Bu、α=−S−)0.5%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を配合し、常温で混合し、さらに80〜95℃で混練してこれを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0025】
この成形材料を175℃に加熱した金型内にトランスファー注入し、硬化させて成形品(封止品)を成形した。この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0026】
実施例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)12%に、ノボラック型フェノールアラルキル樹脂(フェノール当量175、軟化点71℃)11%、前記した式化16に示した架橋型ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)2.5%、前記した式化19の環状化合物(R′′=−H、R′′′=t−Bu、α=−S−)0.4%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)73%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0027】
実施例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点65℃)10%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)5%、前記した式化16の架橋型ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)2%、前記した式化19の環状化合物(R′′=−H、R′′′=t−Bu、α=−S−)0.5%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)80%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.2%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0028】
比較例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)13%に、ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量400、軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点80℃)9%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、アンチモン系イオン交換体0.3%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0029】
比較例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点74℃)15%に、ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量400、軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)10%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0030】
比較例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点65℃)15%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)9%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)74%、非ハロゲン縮合リン酸エステルのPX−200(大八化学工業社製、商品名)3%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0031】
比較例4
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点65℃)16%に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105、軟化点70℃)10%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)73%、カルナバワックス0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、シラン系カップリング剤1%を実施例1と同様に混合、混練、粉砕して成形材料を製造した。また、実施例1と同様にして成形品を作り、この成形品について難燃性、イオン性不純物測定、耐湿性特性、高温放置特性の試験を行ったのでその結果を表2に示した。
【0032】
【表1】
*1:トランスファー成形によって120×12×0.8mmおよび120×12×3.2mmの成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、UL−94V耐炎性試験規格に基づき燃焼性の試験を行った。
【0033】
*2:トランスファー成形によって成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、成形品を粉砕し熱水抽出し、イオンクロマトアナライザーおよび原子吸光光度計を用いて、イオン性不純物濃度測定を行った。
【0034】
*3:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を半田槽(260℃)に10秒間浸漬させ、その後プレッシャークッカー試験(125℃、100%RH)を行い、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0035】
*4:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を175℃において4時間後硬化させた後、200℃恒温槽にに保管し、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0036】
【表2】
*1:トランスファー成形によって120×12×0.8mmおよび120×12×3.2mmの成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、UL−94V耐炎性試験規格に基づき燃焼性の試験を行った。
【0037】
*2:トランスファー成形によって成形品をつくり、175℃、8時間放置した後、成形品を粉砕し熱水抽出し、イオンクロマトアナライザーおよび原子吸光光度計を用いて、イオン性不純物濃度測定を行った。
【0038】
*3:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を半田槽(260℃)に10秒間浸漬させ、その後プレッシャークッカー試験(125℃、100%RH)を行い、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0039】
*4:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形して、上記チップをSOP−16に封止した。封止したテスト用素子を175℃において4時間後硬化させた後、200℃恒温槽にに保管し、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明ならびに表1および2から明らかなように、本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、十分な難燃性を保持しつつ、成形性を低下させることなしにイオン性不純物濃度を低減させることに優れ、その結果、電極の腐食による断線不良を著しく低減することができ、また長期にわたる信頼性を保証することができた。
Claims (2)
- (A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)下記構造式で示される環状ホスファゼン化合物(1)及び
下記構造式で示される直鎖状ホスファゼン化合物(2)
から選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基および下記構造式で表されるビスフェニレン基
から選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されてなる化合物であって、
(a)該架橋基はホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、(b)架橋されてなる化合物におけるフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、かつ(c)分子内にフリーの水酸基を有しない、架橋型ホスファゼン化合物、
(D)下記構造式で示される環状化合物および
(E)無機充填剤
を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)の架橋型ホスファゼン化合物を0.5〜30重量%、前記(D)の環状化合物を0.05〜10重量%、また前記(E)無機充填剤を40〜95重量%の割合で、それぞれ含有してなることを特徴とする封止用樹脂組成物。 - (A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)下記構造式で示される環状ホスファゼン化合物(1)及び
(2)下記構造式で示される直鎖状ホスファゼン化合物
から選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基および下記構造式で表されるビスフェニレン基
から選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されてなる化合物であって、
(a)該架橋基はホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、(b)架橋されてなる化合物におけるフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、かつ(c)分子内にフリーの水酸基を有しない、架橋型ホスファゼン化合物、
(D)下記構造式で示される環状化合物および
(E)無機充填剤
を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)の架橋型ホスファゼン化合物を0.5〜30重量%、前記(D)の環状化合物を0.05〜10重量%、また前記(E)無機充填剤を40〜95重量%の割合で、それぞれ含有してなる封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなることを特徴とする半導体封止装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7345102B2 (en) * | 2003-10-16 | 2008-03-18 | Nitto Denko Corporation | Epoxy resin composition for encapsulating optical semiconductor element and optical semiconductor device using the same |
US7767739B2 (en) | 2006-01-13 | 2010-08-03 | Fushimi Pharmaceutical Co., Ltd. | Cyanato group-containing cyclic phosphazene compound and method for producing the same |
-
2003
- 2003-06-23 JP JP2003177520A patent/JP2005008835A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7345102B2 (en) * | 2003-10-16 | 2008-03-18 | Nitto Denko Corporation | Epoxy resin composition for encapsulating optical semiconductor element and optical semiconductor device using the same |
US7767739B2 (en) | 2006-01-13 | 2010-08-03 | Fushimi Pharmaceutical Co., Ltd. | Cyanato group-containing cyclic phosphazene compound and method for producing the same |
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