JP2005008464A - セメント被覆粒状物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】堅牢な塗膜層を有した着色骨材や、機械的強度が改善された加熱膨張骨材の実現等、より改善されたセメント被覆粒状物を提供する。
【解決手段】特定の粒状物の単粒子で成る核2と、これを被覆するセメント被覆層3と、このセメント被覆層3をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層4とからセメント被覆粒状物を構成する。被覆層3は、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌させたもので形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】特定の粒状物の単粒子で成る核2と、これを被覆するセメント被覆層3と、このセメント被覆層3をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層4とからセメント被覆粒状物を構成する。被覆層3は、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌させたもので形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーライト、発泡ポリスチレン、肥料粒等の粒状物をセメントで被覆したセメント被覆粒状物に係り、詳しくは、耐磨耗性、圧縮強度等の機械的特性、物理的特性、化学的特性を改良して、種々の用途における諸性能を改善できる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セメント被覆粒状物としては、着色骨材や着色充填材、加熱膨張骨材、断熱塗材、断熱モルタル、発泡ポリスチレン等がある。
【0003】
先ず、塗料や塗材に使用する着色骨材や着色充填材を水系システムで製造する一つの方法として、珪砂、寒水石、木粉等の粒状物質を核として用い、その表面にバインダーとしてポリマーディスパージョン、例えば、架橋形アクリル系ポリマーディスパージョンに着色顔料を分散させたものを塗布し、乾燥させて作ることができる。
【0004】
パーライト、蛭石、火山性ガラス系バルーン等の加熱膨張骨材は、比重が小さく、断熱用塗材のフィラー、或いはセメントモルタル、コンクリート用の骨材として有用である。これらの表面殻は薄くて物理的強度が低いので、バインダーとして適当量のポリマーディスパージョンを混合して、壁面や天井面に塗布する断熱塗材として使用したり、適当量のセメント及び水を混入して比重の小さいモルタルを作り、コンクリート下地や鋼材下地等の各種下地面に塗布する断熱用モルタルとして使用したりすることが多い。
【0005】
発泡ポリスチレンは、種々の製品の包装保護材料として有用であり、使用後の再利用法として細かく粉砕し、篩い分けして軽量セメントモルタルの骨材とすることが周知である。発泡ポリスチレンの粉砕粒は比重が極めて小さく、セメントモルタルの軽量化に有効な骨材であるとともに、セメント混和用ポリマーディスパージョンを混入させて強度物性を改良することも行われている。
【0006】
また、発泡プラスチックス等の粉状物に合成樹脂溶液を加えて団粒化した後、その団粒化した粒子の表面をセメントで被覆した粒状物(骨材)や、その製造方法が提案されており、例えば、特許文献1において開示されている。さらに、合成樹脂発泡体、水硬性結合材(セメント)および水をパン型造粒機にて造粒(団粒化)し、軽量骨材を製造する方法も提案されており、例えば、特許文献2や特許文献3において開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平05−317678号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平07−277794号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平08−259290号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述した方法による着色骨材や着色充填材の塗膜層は、薄くて熱や水に弱いので、耐衝撃性や耐摩耗性に劣る難点がある。塗膜層に欠陥部が生じると、下地の核粒状物質の表面が露出し、着色骨材や着色充填材としての機能が損なわれるので、粒状物質の表面に、耐衝撃性や耐摩耗性に富むべくある程度の厚みがあって堅牢な被覆層を形成する技術の開発が望まれている。
【0011】
断熱塗材や断熱用モルタルの強度物性は満足できるようなものではなく、吸水性、防水性、耐凍結融解性、並びに吸水後の断熱性に劣るという難点がある。そこで断熱塗材については、使用するポリマーディスパージョンを塗材配合の際により耐水性に優れたものに切り換えたり、塗布後の表面にポリマーディスパージョンをトップコートとして塗布したりすることが試されたが、これらの対策は、加熱膨張骨材の有する吸水性を改良するものではないため、塗材の諸性能は低下してゆくとともに、吸水した場合の乾燥には長い日数を要するので、黴が生えて汚染される問題がある。
【0012】
断熱用モルタルについては、加熱膨張骨材、セメント及び水と共にセメント混和用ポリマーディスパージョンを混和剤として併用する方法があるが、やはり、加熱膨張骨材の吸水性は改良されないので、性能が高くコストも高いバインダーを多く使用することとなり、コスト上昇を招く割には性能の向上が期待できない。また、過熱膨張骨材の吸水性が大きくなると、強度物性は低く、乾燥収縮は大きくなって収縮亀裂が生じ易いという問題もある。
【0013】
発泡ポリスチレンの改良策として、軽量セメントモルタルを練り混ぜる際に、セメント混和用ポリマーディスパージョンを混入することが行われているが、それによってこれら両者の接着性はさほど向上せず、混入効率が低いという問題点を抱えている。
【0014】
前述の特許文献1に示されたセメント被覆粒状物は、団粒化する合成樹脂(バインダー)の種類によって、製造した粒状物の性能が著しく異なるという問題がある。即ち、粒状物内部の耐水結合性に劣るので、長期間水中に浸漬した場合に結合強度が低下したり、疎水性の合成樹脂を用いて団粒化した場合には、疎水性の外皮層の上に被覆するセメントとの付着性が劣り、骨材としての性能が十分発現しないといった具合である。
【0015】
そして、特許文献2や3に示された軽量骨材を製造する方法では、発泡ポリスチレン等の合成樹脂発泡体に対するセメントの付着性が大きく高められはしないので、圧縮強度は上昇しても肝心な付着性に関しては殆ど改良されないという問題がある。このように、セメント被覆粒状物として様々なものが作成されたり、試行されたりしているが、それらのいずれも現段階においては種々の問題点を抱えているのが実情である。
【0016】
上記実情を鑑みることにより、本発明の目的は、堅牢な塗膜層を有する着色骨材や、機械的強度が改善された加熱膨張骨材の実現等、より改善されたセメント被覆粒状物を実現させて提供する点にある。
【0017】
また、セメントで粒状物を被覆させる考え方は、化学肥料を被覆して緩効性を持たせた緩効性肥料の改善にも適用できると考えられる。即ち、低コストで数年の徐放期間を持つ被覆肥料や、ポーラスコンクリートの練り混ぜ時に混入させて、コンクリート物性と肥効成分の徐放性との双方を満足させる被覆肥料等の具現化も目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特定粒状物の単粒子の表面を被覆加工するに際し、被覆材として強度等の諸物性を満足させ、かつ、経済的に優位なセメント被覆粒状物及びその製造方法について鋭意研究を行い、次に述べるような発明を完成した。
【0019】
請求項1の発明は、セメント被覆粒状物において、特定の粒状物の単粒子で成る核と、これを被覆するセメント被覆層と、このセメント被覆層をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層とから構成されるとともに、被覆層は、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌させたもので形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、粒状物が、無機系物質又は高分子系物質で形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、粒状物が、被覆粒状肥料又は非被覆粒状肥料で形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項4の発明は、セメント被覆粒状物の製造方法において、特定の粒状物の単粒子で成る核を、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌して得られるセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行った後にセメント層で被覆された核にポリマーディスパージョンを添加して攪拌させて、セメント層の表面にポリマー層を形成させることを特徴とするものである。
【0023】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、核をセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行うセメント層作成工程が複数回繰り返されることを特徴とするものである。
【0024】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において、核をセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行うセメント層作成工程が、5〜40℃の範囲内において行われることを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明によるセメント被覆粒状物1は、図1に示すように、特定の粒状物の単粒子で成る核2と、この核2を被覆するセメント被覆層3と、このセメント被覆層3をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層4とから構成され、被覆層3は、粒状物1に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌したもので形成されている。
【0026】
このセメント被覆粒状物1の製造方法の概略は、特定の粒状物の単粒子で成る核2を、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌して得られるセメント層3で被覆し、かつ、所定時間(5〜120分)の養生を行った後にセメント層3で被覆された核2にポリマーディスパージョンを添加して攪拌して、セメント層3の表面にポリマー層4を形成させるというものである。つまり、セメント被覆粒状物1の製造方法は、セメント層3で核を被覆して所定時間養生させるセメント層形成工程と、その外表面にポリマー層を形成させるポリマー層形成工程とからなる。
【0027】
また、セメント被覆粒状物1としては、図2に示すように、セメント層形成工程を複数回(2回以上)繰り返したものでも良い。図2に示されるセメント被覆粒状物1は、セメント層形成工程を2回繰り返したものであり、第1セメント層3aと、その外側の第2セメント層3bとから成るセメント層3を有している。尚、セメント層3を、3回以上のセメント層形成工程が繰り返されて成るものとしても良い。
【0028】
まず以下に、セメント被覆粒状物を形成する種々の部材、並びに製造方法、処理方法等について、項目毎に分けて詳細に説明し、そして発明を行うに好適な実施例を挙げる。
【0029】
1.核となる粒状物
本発明におけるセメント被覆層を形成するための核となる材料としては、以下に記す種々の物質の粒状物を用いることができる。被覆加工を施すに際し、粒状物は気乾状態にして使用するのが望ましい。
【0030】
無機系粒状物としては、▲1▼好ましい粒径が0.2mm〜10mmの珪砂、山砂、海砂、陸砂、及び川砂等、▲2▼好ましい粒径が5mm〜20mmの人工軽量粗骨及び天然軽量粗骨材等、▲3▼好ましい粒径が0.2mm〜5mmの人工軽量細骨材及び天然軽量細骨材、▲4▼好ましい粒径が0.2mm〜10mmの粒状炭酸カルシウム、▲5▼好ましい粒径が0.2mm〜5mmの高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、▲6▼好ましい粒径が0.5mm〜20mmのパーライト、▲7▼好ましい粒径が0.2mm〜5mmのバーミキュライト、ガラスビーズ、(Aガラス及びEガラス)、火山性ガラス系バルーン等が使用できる。これらのうち、最も本発明の効果に優れる粒状物は、人工軽量粗骨材、人工軽量細骨材、天然軽量粗骨材、天然軽量細骨材、パーライト及びバーミキュライト等である。
【0031】
高分子系粒状物としては、好ましい粒径が0.2mm〜20mmで比重が0.02〜0.06の破砕発泡ポリスチレン、発泡ポリスチレンビーズ、破砕発泡エチレン・酢酸ビニル共重合体等が使用できる。それらのうち、本発明の効果が最も期待できる粒状物は、破砕発泡ポリスチレン、発泡ポリスチレンビーズ、破砕発泡エチレン・酢酸ビニル共重合体等である。
【0032】
肥料粒として使用できるものには、▲1▼被覆肥料粒や非被覆肥料粒がある。そのうち被覆肥料としては尿素、硫安等の単体、或いは必要に応じてそれらに他の種類の肥料成分を混合して粒状化し、その表面をポリオレフィン等の各種合成高分子で被覆処理を施したもので、比重は1.0〜1.5、好ましい粒径は0.5mm〜5mmのものが使用できる。それら被覆肥料中の肥料成分の含有率は90〜70%、充填材等を含む被覆材の含有率は10〜30%である。使用できる被覆肥料としての具体例は、チッソ株式会社製LPコート100、同LPコート180、多木化学株式会社製Uコート120、三菱化学株式会社製エムコートl140、住友化学工業株式会社製エムコートL140、住友化学工業株式会社製スーパーSRコート140等である。
【0033】
非被覆肥料粒としては、過燐酸石灰、重過燐酸石灰、焼成燐、熔性燐肥等を粒状に加工したもので、かつ、水に対する溶解損失率(注1参照)が30%以下であり、比重は1.2〜2.5、粒径は0.2〜5mmのものが使用できる。尚、セメント被覆を効率良く行うには、水に対する溶解損失がより小さいものが好ましい。溶解損失率が30%を越えるものは、セメント被覆を行うに際し、湿潤剤による粒子表面の湿潤において、肥料成分が溶解し、セメントの硬化を遅延したり、セメント被覆層にクラックが発生し易くなったりするので好ましくない。尚、被覆肥料粒と非被覆肥料粒とを必要に応じて任意の割合で混合して被覆処理を施しても良い。
【0034】
(注1)
風乾状態の肥料粒約3gを精秤(Dg)し、20℃の水100ml中に浸漬して3時間静置した後、肥料粒を取り出し、恒量(Eg)になるまで70℃温風循環式乾燥機中で乾燥する。溶解損失率(SL)(%)は次式で求める。
式:溶解損失率(SL)(%)={(D−E)/D}×100
【0035】
2.セメント
使用するセメント粉体(Cx)の物性は、セメント被覆処理を施す5〜40℃の範囲内における特定温度(T℃)で、3時間養生後の圧縮強度の発現性で規定している。即ち、JISで規定される配合のモルタル(セメント:標準砂:水=1:3:0.5)で縦横奥行きが4×4×16cmの試験体を成形し、前記T℃で3時間養生の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示す速硬性のセメント(粉体)(Cx)を用いる。10kgf/cm2未満のセメント(粉体)を用いると、セメントの硬化速度が遅く、1回当りの被覆処理に要する時間が長くなって生産効率が低下するので、実用性の無いものとなる。
【0036】
例えば、T℃が8℃の場合、被覆処理に使用するセメントについては、前記配合のモルタルを8℃になるように練り混ぜ、8℃で3時間養生後の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すセメントであれば良い。また、T℃が30℃の場合、30℃で3時間養生後の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すセメントを使用することができる。
【0037】
具体的に説明すると、攪拌翼付きの容器に核になる粒状物の100部を入れ、T℃で第1回目の被覆処理を行うに際し、先ず、湿潤剤として適当量の水(Y1)を加えて攪拌し、粒子表面を均一に湿潤させる。そして、T℃で3時間養生で圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すセメントを用いて、核粒子表面の湿潤した水分でセメントが粒子表面に層状に均一に付着し、かつ、そのセメント層がやがて半湿潤状態になる量(過不足ない適当量のセメント量)を添加し、攪拌し、粒子表面をセメントで均一に被覆する。この場合、もしもセメント量が適当な量よりも少ないときは、セメントは核粒子表面に吸着されるが、湿潤した水分(Y1)でセメントが完全に湿潤してペースト状になるために、粒状物がブロッキング(団粒化)を起して塊状物になり、好ましくない。一方、セメント量が適当量よりも多過ぎると、単粒子のセメント被覆粒状物と共に、粒子表面に付着し得なかったセメントが粉状で共存することになり、やはり好ましくない。過不足のない適当量なセメント量では、粒状物は団粒化することなく、単粒子を核としてセメントが粒子表面に均一な厚みで被覆し、かつ、未付着のセメント量が極めて少ない。セメント被覆の後、T℃(セメントの水和反応熱により一時的に若干温度が上昇するが、やがて下がって行く)で5〜120分間の養生を行い、セメントの硬化を進める。
【0038】
以後、必要に応じて、被覆セメント層の厚みを大きくするために第2回目の被覆処理を行うに際し、先ず、湿潤剤として水(Y2)を加えて、第1回目に被覆したセメント層(C1)を湿潤させる。その際C1層は十分に硬化しているので何ら問題はない。水(Y2)の一部はC1層に吸収されて、C1層の更なる硬化に役立ち、残りの水はC1層の表面を湿潤させる。しかし、第1回目の被覆処理にT℃で3時間の養生後の圧縮強度が10kgf/cm2未満のセメントを使用し、T℃で5〜120分間の養生後、第2回目の被覆処理のための水(Y2)による湿潤を行うと、第1回目に被覆したセメント層(C1)は硬化が不十分なために、ペースト状に変化して粒状物表面から剥離したり、粒状物がブロッキングを起して塊状物になったりして好ましくない。このように第2回目の被覆処置を行う前に、第1回目の被覆セメント層は十分に硬化していなければならない。そのためにはセメントの硬化速度はある程度速い方が良く、硬化の遅いセメントの使用は、そのセメントの硬化に時間と温度が必要で、生産効率を損ない実用性に乏しくなる。以下、同様に第3回目以降の被覆処理を重ねる必要がある場合は、セメントの速硬性が重要な役割を果たすのである。
【0039】
特公昭54−11814号公報においては、発泡合成樹脂粒子に、乳化分散液状の接着剤を塗布し、更にその表面に、塗布した接着剤の水分で完全に湿潤するよりも多量のセメント粉を付着させて、互いに分離独立して流動性を持つ発泡合成樹脂粒子を形成し、次にこの被覆粒子を型枠内に充填し、被覆セメント粉が接着剤中の水分により完全に凝固する以前に、上部から水分を与えて、発泡合成樹脂粒子を相互に立体的にセメントで固めて軽量コンクリートを製造する方法を提案している。この発明では、セメント被覆発泡樹脂粒子のセメントは未硬化であることが必須条件であるのに対して、本発明のセメント被覆においては、1回の被覆処理毎にセメントの硬化が進行しており、繰り返し被覆処理を行うための湿潤水の添加、あるいはトップコート被覆処理の水分により、被覆したセメント層の軟化、再分散或いは剥離等の現象が生じてはならない点で決定的な差異がある。
【0040】
3.使用できるセメント及び混和材
圧縮強度が10kgf/cm2以上を示す速硬性のセメントとしては、アルミナセメント、超速硬セメント、ジェットセメント、アルミナセメント/普通(早強)セメントの混合セメント(比率は1:0.5〜1:4)、セメント用超急硬性混和材(例:デンカコスミック)等が使用できる。他に塩化カルシウム等の硬化促進剤を数%程度配合した普通セメントや早強セメントなども使用することができる。尚、塩化カルシウム等の硬化促進剤を配合した普通セメント或いは早強セメントにおいて、硬化促進剤を微粉末処理してセメントと混合しても良いが、好ましくは硬化促進剤の一部或いは全量を予め湿潤剤(Yx)に添加、溶解しておくことも可能である。
【0041】
セメント粉体には各種の混和材を配合して使用することができる。フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、セメント膨張材、着色用顔料等が挙げられる。それらは、予めセメントと粉体混合させて使用するのが好ましい。尚、混和材の使用に当っては、前述の条件に従って圧縮強度試験を行い、T℃で3時間養生後の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すように調整しておく必要がある。
【0042】
4.湿潤剤量とセメント量及び養生
被覆処理を行う際、湿潤剤(Yx)として水を使用する場合について、水量(Yx)とセメント粉体量(Cx)の関係を説明する。核となる粒状物100部を用いて、第1回目の被覆処理を行うに際し、まず、粒状物の表面を均一に湿潤させるため、適当な水量(Y1)として1〜150部を使用する。この適当な水量は粒状物の種類、比重、粒径や分布、粒子表面の凹凸(空隙状態)、粒子の吸水性や溶解性等により異なる。例えば、珪砂、寒水石及び肥料粒等では1〜40部、好ましくは3〜20部であり、パーライトやバーミキュライト等では5〜50部、好ましくは10〜40部であり、破砕発泡ポリスチレン等では50〜150部、好ましくは80〜130部である。
【0043】
湿潤剤が担っている重要な機能に、その湿潤した粒状物表面へのセメントの付着量(厚み)の調節があり、セメント被覆量を多くしたい場合、湿潤剤としての水の粘度を高くしたり、水量(Y1)を増やしたりする。そして湿潤水量に対して過不足ない適当なセメント量を決めて行くのである。セメント被覆量を少なくしたい場合、湿潤剤としての水の粘度を低くしたり、水量(Y1)を少なくしたりすることで調節できる。
【0044】
1回の被覆に使用するセメント粉体量(Cx)は、核となる粒状物100部に対して10〜400部であるが、好ましいセメント量は粒状物の種類、比重、粒径や分布、粒子表面の凹凸(空隙状態)等により異なる。例えば、珪砂、寒水石及び肥料粒等では、好ましくは5〜50部、更に好ましくは5〜30部である。パーライトやバーミキュライト等では20〜100部、好ましくは40〜80部であり、破砕発泡ポリスチレン等では100〜400部、好ましくは200〜300部である。核になる粒状物に対して効率良く均一に被覆処理を施すのに適当な好ましい比(過不足無いセメント量)、即ち、セメント量(Cx)に対する湿潤剤量(Yx)の比(Cx/Yx)は、およそ0.2〜0.6である。
【0045】
セメント被覆後はセメントの養生、硬化の工程に入る。その養生温度及び所要時間は、前述の条件に適合する硬化の早いセメントを使用することにより、被覆処理温度(T)が5〜40℃の範囲内であれば5〜120分が適当である。セメントの養生、硬化が終了すれば、必要に応じてセメントの被覆厚みを大きくするために次の繰り返し被覆処理に進む。
【0046】
5.第2回目以降の被覆処理
必要に応じて行う第2回目以降の被覆処理では、第1回目の被覆セメントが硬化した後、先ず湿潤剤として適量の水(Y2)を加えて攪拌し、第1回目に被覆したセメント層(C1)を湿潤させる。次に過不足のない適当なセメント量を添加、攪拌して粒子表面にセメントを層状に均一に付着させ、かつ、そのセメント層がやがて半湿潤状態になり、セメントの水和、硬化が進む。続いて養生、硬化の工程に進む。
【0047】
通常の吸水性の小さな核粒状物ではY2は、Y2>Y1になるが、吸水性の大きい核粒状物では、Y2<Y1になる傾向がある。Y2も前記Y1と同様に、目標とするセメント被覆量(厚み)により決定する。水量(Y2)が決まれば、それに対応する過不足のない適当なセメント量(C2)を定める。以後同様に、必要に応じて第3回目或いは第4回目の被覆処理条件を決めて被覆処理を行う。被覆処理の繰り返し回数は、1〜10回程度が好ましいが、さらに好ましくは2〜5回である。
【0048】
6.湿潤剤について
湿潤剤(Yx)について詳述する。湿潤剤の役割は、核となる気乾状態の粒状物の表面を均一に湿潤し、その後添加するセメントを粒子表面に層状に均一に付着させ、湿潤剤の水分がそのセメント層を半湿潤状態として緻密なセメント硬化層を形成させ、なおかつ、粒状物表面とセメント層との付着力を高めることである。そこで、湿潤剤(Yx)には水(W)及び/又はセメント減水剤(WR)及び/又は水溶液の粘度を上げることのできる水溶性高分子溶液(SP)及び/又はポリマーディスパージョン(PD)及び/又はセメント硬化促進剤溶液(AC)の混合液を使用する。
【0049】
セメント減水剤(WR)としては、メラミン系、ナフタレン系、及びポリカルボン酸系等の各種のものを使用することができる。それらの使用量としては、湿潤剤中、濃度0〜5%の範囲内であるのが好ましい。水溶性高分子溶液としては、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶液が使用できる。それらの使用量としては、湿潤剤中、濃度0〜5%の範囲内であるのが好ましい。
【0050】
ポリマーディスパージョン(PD)としては、エチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ・アクリル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体、アクリル・スチレン共重合体、オールアクリル共重合体、エポキシ樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体等を挙げることができる。ポリマーディスパージョンの最低造膜温度(MFT)としては、被覆処理を行う温度T℃よりもやや低いのが好ましい。
【0051】
ポリマーの選択に当たっては、それらディスパージョン中には界面活性剤を全く含まないタイプのものが好ましい。それらポリマーディスパージョンの使用量としては、湿潤剤中、濃度0〜10%の範囲内であるのが好ましい。他に、湿潤剤に塩化カルシウムや炭酸ナトリウム等のセメント硬化促進剤(AC)を溶解しておくことも可能である。それらの硬化促進剤は、湿潤剤中、濃度0〜30%の範囲内で使用することができる。
【0052】
湿潤剤の調製に当っては、核となる粒状物の性質、セメント被覆粒状物に要求される諸性能等を勘案して、上記減水剤(WR)、水溶性高分子溶液(SP)、ポリマーディスパージョン(PD)、及びセメント硬化促進剤(AC)等から選択して調製してゆくのが良い。湿潤剤の最終的な混合物の固形分濃度としては、0〜20%の範囲が好ましく、0.5〜10%の範囲がさらに好ましい。湿潤剤の粘度としては、およそ1〜100cPの範囲が好ましい。
【0053】
7.被覆処理温度
本発明における被覆処理温度(T℃)とは、被覆処理を開始する前の攪拌容器内の核となる粒状物の定常的な温度を指し、5〜40℃の間の特定温度(T℃)の範囲で行うことができる。T℃の室内に設置された攪拌容器、及び同室内に保管された粒状物、湿潤剤及びセメント粉体を用いて被覆処理を行うと、セメントの水和反応による発熱のために攪拌容器内の被覆処理粒状物の温度は徐々に上昇する。
【0054】
その上昇の程度は、環境温度、セメント粉体量、被覆処理量等によって異なるが、通常はT℃+4〜10℃以下である。上昇温度が+10℃を超えると、或いは被覆粒状物の温度が60℃を超えると、被覆セメント層にクラックが発生し易くなることがあり、好ましくない。その場合には、環境温度を下げたり、1回当りの被覆処理量を低減したりといった対策が必要になる。尚、送風機により冷却する方法もある。
【0055】
被覆処理温度(T℃)が10℃程度の低い場合、使用するセメント粉体は前記モルタル(C:S:W=1:3:0.5)での圧縮強度が、10℃で3時間養生した後に10kgf/cm2以上を示すものを使用すれば被覆処理を難なく行うことができる。或いは、温風送風機を用いて環境温度を上げたり、別の方法により被覆粒状物の温度を上げたりしても良い。
【0056】
一方被覆処理温度が35℃程度の高い場合は、圧縮強度が35℃で3時間養生した後に10kgf/cm2以上を示すものを使用すれば良い。従って、当然ながら被覆処理温度(T℃)の違いによって使用できるセメント粉体の種類や硬化促進剤の種類と量は異なり、温度条件に合せて適宜に選択する。
【0057】
8.被覆セメント層の厚み
かくして得られるセメント被覆処理粒状物のセメント被覆層の厚みは、例えば、平均粒子径が3mmの粒状物に対して3〜5回の被覆処理を行うことにより、0.3〜5mm(粒子径は4〜13mm程度)にすることができる。
【0058】
9.セメント被覆を行うための設備
セメントを被覆するための設備としては、種々の形式の混合機が使用できる。例えば、横軸ドラムミキサー、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー、V型回転ミキサー、オムニミキサー、ニーダー、リボンミキサー等を挙げることができる。それらのうちの好ましいものは、横軸ドラムミキサー、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー等である。各ミキサーの好ましい形状、寸法及び回転速度等は、被覆処理をする粒状物の種類により異なるので、適宜に選択して使用する。
【0059】
10.トップコート被覆処理
本発明の方法により得られたセメント被覆粒状物に、トップコートとしてポリマーディスパージョンを添加、攪拌して、セメント被覆層内にポリマーを含浸させ、かつ、その表面にポリマー層を形成させてセメント被覆層を強化する。
【0060】
使用できるポリマーディスパージョンは、最低造膜温度(MFT)が20〜60℃であり、種類としてはアクリル共重合体、スチレン・アクリル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等がある。ポリマーディスパージョン中には界面活性剤を含まないものが好ましい。ポリマーディスパージョンの濃度(固形分)は1〜50%が適当であり、好ましい固形分は3〜20%である。使用量としては、セメント被覆処理粒状物100部に対して0.5〜20部が適当であり、好ましくは2〜10部である。
【0061】
ポリマーディスパージョンを添加する時期は、最終回のセメント被覆処理のためのセメント粉体の混合が終わった後、セメントの硬化と発熱が進み、槽内の温度が最高値より下がり始めたとき以後が適当である。添加したポリマー粒子は、被覆セメント層表面の微細な空隙に浸透して皮膜形成をすることにより、セメント層内部を緻密にして、かつ、表面にポリマー層を形成してセメント表面層を補強する。
【0062】
使用するトップコートの種類の選定や使用量は、セメント被覆処理粒状物に要求される諸性能を勘案して決定する。例えば、塗材用の着色充填材として使用する着色骨材では、光沢、耐候性、耐磨耗性等を重視する必要があり、アクリル系ポリマーディスパージョン等を使用する。セメントモルタル、コンクリート用の骨材として使用する用途では、セメントとの付着性に優れたエチレン・酢酸ビニル共重合体系、スチレン・アクリル共重合体系のポリマーディスパージョン等が好ましい。また、必要であればトップコートのポリマーディスパージョンに少量の水性顔料分散液を配合して着色することもできる。トップコート被覆処理の適当な温度条件としては、使用するポリマーディスパージョンのMFTや使用量、或いは、核となる粒状物の温度特性等により異なるが、5〜60℃の範囲が適当である。
【0063】
11.トップコート被覆処理を行うための設備
トップコート被覆処理をするための設備としては、セメント被覆を行うための設備をそのまま継続して使用することができる。好ましいものとしては、横軸ドラムミキサー、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー等である。トップコートとしてポリマーディスパージョンを添加、攪拌した後、乾燥させる必要がある。通常のトップコート被覆処理量では、送風機にて風或いは温風をミキサー内に送り込むことにより、容易に乾燥させることができる。他に、トップコート被覆処理のみを行う設備としては、流動層式コーティング乾燥機等を使用することもできる。
【0064】
以下、好適な実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
【実施例】
〔実施例1〕
(1) 使用材料及び被覆処理温度
▲1▼ 核となる粒状物:6mesh(3.36mm)を通過し、8mesh(2.38mm)に留まる寒水石、数平均粒子径2.9mmで真比重:2.60
▲2▼ 湿潤剤:Ya1:エチレン・酢酸ビニル共重合ディスパージョンh5%(固形分で表示)、メラミン系減水剤2.5%及び塩化カルシウム2%を含有する混合水溶液 Yb2:水
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):8〜12℃(この場合、実験室内の温度)
【0066】
▲4▼ セメントa:配合は早強ポルトランドセメント72部、セメント状粉体(電気化学工業製で、商品名は速硬性混和材コスミック)20部、及びセメント用着色顔料(茶色)8部を混合したもの
ここで、圧縮強度は、セメントa:標準砂:水=1:3:0.5のモルタルを練り混ぜて4×4×16cmの型枠に充填し、練り混ぜ開始2.5時間後に脱型し、3時間後に曲げ、圧縮強度を測定したところ、15.7kgf/cm2であった。尚、試験のための材料や器具は、前日より8〜12℃の実験室に保管し、同室内で試験体を製作し、養生を行った。
【0067】
▲5▼ トップコート:スチレン・アクリル共重合体系水性ディスパージョンJ、主用途は水性塗料用ベース樹脂、固形分濃度は20%、最低造膜温度(MFT)は5℃、樹脂のガラス転移温度(Tg)は60℃。
【0068】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は8〜12℃の実験室内で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となる寒水石100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Ya1の1.1部を添加し、2分間攪拌して寒水石を湿潤し、セメントaを6部添加し、2分間攪拌して寒水石の表面にセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Ya1の2.5部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントaを8部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。
【0069】
第3回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の3部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントaを10部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。第4回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の4部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントaを14部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。その後、一旦被覆処理物を取り出し、32meshフルイ(0.5mm)で未付着のセメント粉0.8部を取り除いて、元の混合機に戻した。セメント被覆処理粒状物の収量は147部であった。
【0070】
(3) トップコート被覆処理
セメント被覆処理で得た粒状物100部を攪拌翼の付いた混合機に入れ、攪拌しながらスチレン・アクリル共重合体系水性ディスパージョンJの3部を添加し、2分間攪拌した。直ちにバットに取り出して薄く広げ、同温度の室内にて1日風乾した。このようにして、寒水石を核とする着色(茶色)粒状物103部が得られた。
【0071】
(4) 得られたセメント被覆粒状物
物性値を表1に示す。この着色粒状物の主用途は、内壁或いは外壁の化粧用塗材の着色充填材、骨材として有用である。
【0072】
【表1】
【0073】
〔実施例2〕
(1) 使用材料及び被覆処理温度
▲1▼ 核となる粒状物:破砕発泡ポリスチレンビーズ、粒径2.4〜3.4mm、嵩比重0.012、比重0.06、
▲2▼ 湿潤剤Yc1:スチレン・アクリル・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンk(MFT 0℃)固形分7%、メチルセルロース(市販セメント混和用)0.5%、及びメラミン系減水剤2%を含有する混合水溶液。
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):20〜25℃(この場合、作業室内の温度)
【0074】
▲4▼ セメントb:配合はアルミナセメント(5種)40部、普通ポルトランドセメント60部を混合したもの。圧縮強度は、実施例1に示した方法で、セメントbを用いて20〜25℃で4×4×16cmの供試体を製作し、練り混ぜ開始3時間後に測定、22.7kgf/cm2であった。
▲5▼ トップコート:スチレン・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンk、固形分:5%、MFT:0℃、Tg:0℃。
【0075】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は20〜25℃の作業室内で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となる破砕発泡ポリスチレンビーズ100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Yc1の100部をスプレーで霧状にして2分間で添加、湿潤し、セメントbの250部を32meshフルイを通しながら3分間で添加、ポリスチレンビーズの表面にセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて120分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤100部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントbを250部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて120分間の養生、硬化を行った。セメント粉を32meshフルイで取り除いた後のセメント被覆処理粒状物の収量は880部であった。
【0076】
(3) トップコート被覆処理
セメント被覆処理したポリスチレンビーズを攪拌しながらスチレン・アクリル・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンkの8部をスプレーで霧状にして2分間添加した。直ちにバットに取り出し、同温度の室内にて1日風乾した。このようにして、破砕発泡ポリスチレンビーズを核とするセメント被覆骨材53.9部が得られた。得られたセメント被覆ポリスチレンビーズ粒状物の物性値を表2に示す。
【0077】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
(5) セメントモルタルに応用した場合の物性
表3に示す配合のモルタルを練り混ぜ、4×4×16cmの供試体を製作し、材令7日まで20℃で湿空、以後28日まで20℃、湿度60%のもとで養生を行い、曲げ、圧縮強度を測定した。曲げ、圧縮強度を表4に示す。本発明の方法によりセメント被覆処理を施したビーズを用いることにより、曲げ、圧縮強度が著しく向上している。
【0080】
【表3】
(配合は重量部)
【0081】
【表4】
【0082】
〔実施例3〕
(1) 使用材料
▲1▼ 核となる粒状物:市販黒曜石系パーライトf、粒径0.2〜3.5mm、数平均粒子径1.7mm、嵩比重0.20、
▲2▼ 湿潤剤Yd:メチルセルロース0.5%及び塩化カルシウム25%を含む混合水溶液
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):25〜30℃(作業室内の温度)
【0083】
▲4▼ セメントc:早強ポルトランドセメント
圧縮強度は、実施例1に示した方法で、セメントcを用いて25〜30℃で供試体を製作、測定し38kgf/cm2を得た。尚、塩化カルシウムをセメントに対して6%混入するように練り混ぜ水に予め溶解した。
▲5▼ トップコート:実施例2で使用した共重合体系水性ディスパージョンk 固形分5%、MFT:0℃
【0084】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は25〜30℃の作業室内で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となるパーライト100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Ydの20部をスプレーで霧状にして2分間で添加、湿潤し、セメントcの55部を32meshフルイを通しながら3分間で添加、パーライトの表面にセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、湿潤剤Ydの23部をスプレーで霧状にして2分間で添加、湿潤し、セメントcの70部を、フルイを通しながら3分間で添加、セメントを粒子表面に均一に付着させた後、攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。セメント粉を28meshフルイで取り除いた後のセメント被覆処理粒状物の収量は265部であった。
【0085】
(3) トップコート被覆処理
前記(2)で得たセメント被覆粒状物100部につき、共重合体ディスパージョンkの11部を噴霧状にして2分間で添加、均一に被覆処理した。その後、送風機で混合機内に風を送り込み15分間乾燥し、バットに取り出した。
【0086】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表5に示す。
【0087】
【表5】
(*1)測定値がバラツキ易い
【0088】
(5) セメントモルタルに応用した場合の物性
表6に示す配合のモルタルを練り混ぜ、4×4×16cmの供試体を製作し、材令7日まで20℃で湿空、以後28日まで20℃、湿度60%のもとで養生を行い、曲げ、圧縮強度、乾燥収縮率、及び吸水率を測定した。その結果を表7に示す。セメント被覆処理したパーライトは強度に優れているだけでなく、乾燥収縮、吸水率においても優れている。
【0089】
【表6】
(*2)左官用メチルセルロース(粉末)
【0090】
【表7】
(*3)JIS A 1129による。
(*4)JIS A 1171による。ただし、80℃の乾燥は行わず、水中に7日間浸漬。
【0091】
〔実施例4〕
(1) 使用材料
▲1▼ 核となる粒状物:(a)市販ポリオレフィン系樹脂被覆尿素肥料LP、粒径2〜4mm、数平均粒子径3.5mm、嵩比重0.73、比重1.29、尿素含有量85%
▲2▼ 湿潤剤Ye1:アクリル・酢酸ビニル共重合ディスパージョンn5%、及びメラミン系減水剤2%を含有する混合水溶液。Yb2:水
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):28〜33℃
【0092】
▲4▼ セメントd1:市販ジェットセメント(商品名)。セメントd2:早強ポルトランドセメント80部と電気化学工業製速硬性混和材コスミック20部の混合物。各セメントの圧縮強度(kgf/cm2)(練り混ぜ及び養生温度は28〜33℃)は、セメントd1:53,5、セメントd2:32,9であった。
▲5▼ トップコート:スチレン・アクリル・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンm(無乳化剤系)、固形分:25%、MFT:25℃
【0093】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は28〜33℃の作業環境下で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となる被覆肥料100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Ye1の1.2部を添加し、2分間攪拌して肥料粒を湿潤し、続いてセメントd1の8部を、32meshフルイを通しながら添加し、2分間攪拌して肥料粒の表面にセメントを均一に付着させてから、攪拌を止めて20分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Ye1の4.5部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントd1の12部を、フルイを通しながら添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて20分間の養生、硬化を行った。
【0094】
第3回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の5部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、セメントd2を16部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて40分間の養生、硬化を行った。第4回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の6.4部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、セメントd2を20部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて40分間の養生、硬化を行った。
【0095】
(3) トップコート被覆処理
引き続き、攪拌しながら共重合体水性ディスパージョンm9部をスプレーで霧状で添加し、2分間攪拌し、次に攪拌しながら送風機を機内に向けて15分間送り込んで徐々に乾燥した後、製品を取り出した。収量は175.4部、32meshフルイ通過分(主に未付着のセメント分)は0.13部であった。
【0096】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表8に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
(5) セメントモルタルに混入した場合の被覆粒状物の破壊についての評価
普通ポルトランドセメント100部(450g)、標準砂300部(1350g)をモルタルミキサーで2分間空練りした後、水50部(225g)を添加して2分間練り混ぜた。その後、攪拌を止めてセメント被覆肥料粒5部(22.5g)を添加してモルタルスプーンで30秒間練り混ぜた後、さらに攪拌翼で30秒間練り混ぜた。尚、ミキサーの攪拌は全て低速で行っている。昆練したモルタル全量を28meshフルイ上に移し、水を流しながら肥料粒だけを採取し70℃乾燥機中で乾燥した後、肥料粒子を未破壊粒子と破壊粒子とに分類し、破壊率(注2参照)を求めた。比較のための試験として、核として使用した被覆肥料LP2.9部を用いて同様に練り混ぜ、破壊率を求めた。それらの結果を表9に示す。この表9より、本発明の方法でセメント被覆処理した肥料粒は、セメントモルタルに安定に練り混ぜることができるということが良く分かる。
【0099】
(注2)
未破壊粒子:肥料成分が残っている粒子で、セメント被覆層に欠損が生じていない粒子、セメント被覆層に欠損が生じていても肥料成分が残っている粒子、セメント被覆層が無くなり核肥料の状態になっていても肥料成分が残っている粒子の合計個数(Na)である。
破壊粒子:肥料成分が溶け出ている粒子で、セメント被覆層に部分的な欠損が生じ肥料成分が溶け出ている粒子、セメント被覆層の大部分が無くなり肥料成分が溶け出ている粒子、核肥料の状態で欠損部があり肥料成分が溶け出ている粒子の合計個数(Nb)である。尚、拡大鏡を用いて肥料粒子の判別を行っている。また、破損率(%)=Nb/(Na+Nb)×100である。
【0100】
【表9】
【0101】
〔実施例5〕
(1) 使用材料
▲1▼ 核となる粒状物:以下の3種類の粒状物を使用した。
(a)市販過燐酸石灰系非被覆肥料粒、粒径1.0〜3.5mm、数平均粒子径2.5mm、水に対する溶解損失率(注1参照)26%
(b)市販非被覆化成肥料粒、粒径1.5〜4.5mm、数平均粒子径3.1mm、嵩比重0.81、水に対する溶解損失率(注1参照)35%
(c)市販非被覆化成肥料粒、粒径0.8〜4.2mm、数平均粒子径3.0mm、嵩比重1.04、水に対する溶解損失率(注1参照)33%
▲2▼ 湿潤剤:実施例4と同じものを使用。Ye1及びYb2
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):10〜15℃
▲4▼ セメント:アルミナセメント(5種)
▲5▼ トップコート:実施例4と同じものを使用。
【0102】
(2) セメント被覆処理
3種類の核粒状物の各々について、被覆処理温度を10〜15℃とし、上記の各材料を用いて前の実施例4と同様の操作により4回分のセメント被覆処理を施した。尚、セメントの養生、硬化時間は、10〜15℃で60分としている。
【0103】
(3) トップコート被覆処理
前(2)で得られた3種類のセメント被覆処理粒状物につき、温度28〜33℃にて、実施例4と同様な方法で被覆処理を行った。
【0104】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表10に示す。
セメント被覆肥料粒の水中14日間浸漬後の溶解損失について、(注1)の方法により試験した。但し、水中への浸漬時間は20℃×14日間としている。本発明の条件を満たしている非被覆粒状肥料(a)を核として使用したセメント被覆肥料は、セメント被覆層にクラックが生ずることなく、14日間水中に浸漬した後の溶解損失率が小さい。一方、本発明の条件を満たしていない非被覆粒状肥料(b)、(c)を核とした場合は、セメント被覆層にクラックが生じ、14日間水中に浸漬した後の溶解損失率が大きく、セメント被覆効果が出ていない。
【0105】
【表10】
(*5)被覆セメント層に微細クラックが生じている
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、核になる粒状物の表面に強固なセメント被覆層を形成し、その外側にポリマー層を形成させてあるので、核となる粒状物の機械的、物理的、或いは化学的性質を改良させることができ、しかも、セメント層の耐水性、耐磨耗性、耐衝撃性、耐酸性が改善されるので、種々の用途における粒状物の性能を向上させることができるセメント被覆粒状物を提供することができた。
【0107】
核としてパーライトを用いれば、セメント被覆処理されたものを塗料やモルタルとして使用して、強度物性、耐凍結融解性、吸水性が改善できるとともに、吸水時の断熱性も大幅に向上する。同様に、破砕発泡ポリスチレン粒に適応させた場合には、セメント被覆処理されたものをモルタルとして使うことで、強度物性を大きく向上させることができる。
【0108】
また、核として被覆肥料粒や非被覆肥料粒を用いると、例えば、セメント被覆尿素肥料粒について、ポーラスコンクリートに混入させた場合、ミキサーによる練り混ぜ中の肥料粒の破壊を著しく抑制できて、練り混ぜ時のアンモニア性臭気が殆ど発生しない望ましい状態でコンクリート打設等の作業が行えるので、作業環境を改善できるとともに、コンクリート強度が落ちることがなく、また、植物の生育に有益なポーラスセメントコンクリート硬化体が作成できる等、種々の改良が可能となる実用上の効果大なるセメント被覆粒状物を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるセメント被覆粒状物を示す断面図
【図2】セメント被覆層が複数回コーティングされたセメント被覆粒状物の断面図
【符号の説明】
1 セメント被覆粒状物
2 核
3 セメント被覆層
3a 第1セメント被覆層
3b 第2セメント被覆層
4 ポリマー層
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーライト、発泡ポリスチレン、肥料粒等の粒状物をセメントで被覆したセメント被覆粒状物に係り、詳しくは、耐磨耗性、圧縮強度等の機械的特性、物理的特性、化学的特性を改良して、種々の用途における諸性能を改善できる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セメント被覆粒状物としては、着色骨材や着色充填材、加熱膨張骨材、断熱塗材、断熱モルタル、発泡ポリスチレン等がある。
【0003】
先ず、塗料や塗材に使用する着色骨材や着色充填材を水系システムで製造する一つの方法として、珪砂、寒水石、木粉等の粒状物質を核として用い、その表面にバインダーとしてポリマーディスパージョン、例えば、架橋形アクリル系ポリマーディスパージョンに着色顔料を分散させたものを塗布し、乾燥させて作ることができる。
【0004】
パーライト、蛭石、火山性ガラス系バルーン等の加熱膨張骨材は、比重が小さく、断熱用塗材のフィラー、或いはセメントモルタル、コンクリート用の骨材として有用である。これらの表面殻は薄くて物理的強度が低いので、バインダーとして適当量のポリマーディスパージョンを混合して、壁面や天井面に塗布する断熱塗材として使用したり、適当量のセメント及び水を混入して比重の小さいモルタルを作り、コンクリート下地や鋼材下地等の各種下地面に塗布する断熱用モルタルとして使用したりすることが多い。
【0005】
発泡ポリスチレンは、種々の製品の包装保護材料として有用であり、使用後の再利用法として細かく粉砕し、篩い分けして軽量セメントモルタルの骨材とすることが周知である。発泡ポリスチレンの粉砕粒は比重が極めて小さく、セメントモルタルの軽量化に有効な骨材であるとともに、セメント混和用ポリマーディスパージョンを混入させて強度物性を改良することも行われている。
【0006】
また、発泡プラスチックス等の粉状物に合成樹脂溶液を加えて団粒化した後、その団粒化した粒子の表面をセメントで被覆した粒状物(骨材)や、その製造方法が提案されており、例えば、特許文献1において開示されている。さらに、合成樹脂発泡体、水硬性結合材(セメント)および水をパン型造粒機にて造粒(団粒化)し、軽量骨材を製造する方法も提案されており、例えば、特許文献2や特許文献3において開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平05−317678号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平07−277794号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平08−259290号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述した方法による着色骨材や着色充填材の塗膜層は、薄くて熱や水に弱いので、耐衝撃性や耐摩耗性に劣る難点がある。塗膜層に欠陥部が生じると、下地の核粒状物質の表面が露出し、着色骨材や着色充填材としての機能が損なわれるので、粒状物質の表面に、耐衝撃性や耐摩耗性に富むべくある程度の厚みがあって堅牢な被覆層を形成する技術の開発が望まれている。
【0011】
断熱塗材や断熱用モルタルの強度物性は満足できるようなものではなく、吸水性、防水性、耐凍結融解性、並びに吸水後の断熱性に劣るという難点がある。そこで断熱塗材については、使用するポリマーディスパージョンを塗材配合の際により耐水性に優れたものに切り換えたり、塗布後の表面にポリマーディスパージョンをトップコートとして塗布したりすることが試されたが、これらの対策は、加熱膨張骨材の有する吸水性を改良するものではないため、塗材の諸性能は低下してゆくとともに、吸水した場合の乾燥には長い日数を要するので、黴が生えて汚染される問題がある。
【0012】
断熱用モルタルについては、加熱膨張骨材、セメント及び水と共にセメント混和用ポリマーディスパージョンを混和剤として併用する方法があるが、やはり、加熱膨張骨材の吸水性は改良されないので、性能が高くコストも高いバインダーを多く使用することとなり、コスト上昇を招く割には性能の向上が期待できない。また、過熱膨張骨材の吸水性が大きくなると、強度物性は低く、乾燥収縮は大きくなって収縮亀裂が生じ易いという問題もある。
【0013】
発泡ポリスチレンの改良策として、軽量セメントモルタルを練り混ぜる際に、セメント混和用ポリマーディスパージョンを混入することが行われているが、それによってこれら両者の接着性はさほど向上せず、混入効率が低いという問題点を抱えている。
【0014】
前述の特許文献1に示されたセメント被覆粒状物は、団粒化する合成樹脂(バインダー)の種類によって、製造した粒状物の性能が著しく異なるという問題がある。即ち、粒状物内部の耐水結合性に劣るので、長期間水中に浸漬した場合に結合強度が低下したり、疎水性の合成樹脂を用いて団粒化した場合には、疎水性の外皮層の上に被覆するセメントとの付着性が劣り、骨材としての性能が十分発現しないといった具合である。
【0015】
そして、特許文献2や3に示された軽量骨材を製造する方法では、発泡ポリスチレン等の合成樹脂発泡体に対するセメントの付着性が大きく高められはしないので、圧縮強度は上昇しても肝心な付着性に関しては殆ど改良されないという問題がある。このように、セメント被覆粒状物として様々なものが作成されたり、試行されたりしているが、それらのいずれも現段階においては種々の問題点を抱えているのが実情である。
【0016】
上記実情を鑑みることにより、本発明の目的は、堅牢な塗膜層を有する着色骨材や、機械的強度が改善された加熱膨張骨材の実現等、より改善されたセメント被覆粒状物を実現させて提供する点にある。
【0017】
また、セメントで粒状物を被覆させる考え方は、化学肥料を被覆して緩効性を持たせた緩効性肥料の改善にも適用できると考えられる。即ち、低コストで数年の徐放期間を持つ被覆肥料や、ポーラスコンクリートの練り混ぜ時に混入させて、コンクリート物性と肥効成分の徐放性との双方を満足させる被覆肥料等の具現化も目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特定粒状物の単粒子の表面を被覆加工するに際し、被覆材として強度等の諸物性を満足させ、かつ、経済的に優位なセメント被覆粒状物及びその製造方法について鋭意研究を行い、次に述べるような発明を完成した。
【0019】
請求項1の発明は、セメント被覆粒状物において、特定の粒状物の単粒子で成る核と、これを被覆するセメント被覆層と、このセメント被覆層をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層とから構成されるとともに、被覆層は、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌させたもので形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、粒状物が、無機系物質又は高分子系物質で形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、粒状物が、被覆粒状肥料又は非被覆粒状肥料で形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項4の発明は、セメント被覆粒状物の製造方法において、特定の粒状物の単粒子で成る核を、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌して得られるセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行った後にセメント層で被覆された核にポリマーディスパージョンを添加して攪拌させて、セメント層の表面にポリマー層を形成させることを特徴とするものである。
【0023】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、核をセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行うセメント層作成工程が複数回繰り返されることを特徴とするものである。
【0024】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において、核をセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行うセメント層作成工程が、5〜40℃の範囲内において行われることを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明によるセメント被覆粒状物1は、図1に示すように、特定の粒状物の単粒子で成る核2と、この核2を被覆するセメント被覆層3と、このセメント被覆層3をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層4とから構成され、被覆層3は、粒状物1に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌したもので形成されている。
【0026】
このセメント被覆粒状物1の製造方法の概略は、特定の粒状物の単粒子で成る核2を、粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌して得られるセメント層3で被覆し、かつ、所定時間(5〜120分)の養生を行った後にセメント層3で被覆された核2にポリマーディスパージョンを添加して攪拌して、セメント層3の表面にポリマー層4を形成させるというものである。つまり、セメント被覆粒状物1の製造方法は、セメント層3で核を被覆して所定時間養生させるセメント層形成工程と、その外表面にポリマー層を形成させるポリマー層形成工程とからなる。
【0027】
また、セメント被覆粒状物1としては、図2に示すように、セメント層形成工程を複数回(2回以上)繰り返したものでも良い。図2に示されるセメント被覆粒状物1は、セメント層形成工程を2回繰り返したものであり、第1セメント層3aと、その外側の第2セメント層3bとから成るセメント層3を有している。尚、セメント層3を、3回以上のセメント層形成工程が繰り返されて成るものとしても良い。
【0028】
まず以下に、セメント被覆粒状物を形成する種々の部材、並びに製造方法、処理方法等について、項目毎に分けて詳細に説明し、そして発明を行うに好適な実施例を挙げる。
【0029】
1.核となる粒状物
本発明におけるセメント被覆層を形成するための核となる材料としては、以下に記す種々の物質の粒状物を用いることができる。被覆加工を施すに際し、粒状物は気乾状態にして使用するのが望ましい。
【0030】
無機系粒状物としては、▲1▼好ましい粒径が0.2mm〜10mmの珪砂、山砂、海砂、陸砂、及び川砂等、▲2▼好ましい粒径が5mm〜20mmの人工軽量粗骨及び天然軽量粗骨材等、▲3▼好ましい粒径が0.2mm〜5mmの人工軽量細骨材及び天然軽量細骨材、▲4▼好ましい粒径が0.2mm〜10mmの粒状炭酸カルシウム、▲5▼好ましい粒径が0.2mm〜5mmの高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、▲6▼好ましい粒径が0.5mm〜20mmのパーライト、▲7▼好ましい粒径が0.2mm〜5mmのバーミキュライト、ガラスビーズ、(Aガラス及びEガラス)、火山性ガラス系バルーン等が使用できる。これらのうち、最も本発明の効果に優れる粒状物は、人工軽量粗骨材、人工軽量細骨材、天然軽量粗骨材、天然軽量細骨材、パーライト及びバーミキュライト等である。
【0031】
高分子系粒状物としては、好ましい粒径が0.2mm〜20mmで比重が0.02〜0.06の破砕発泡ポリスチレン、発泡ポリスチレンビーズ、破砕発泡エチレン・酢酸ビニル共重合体等が使用できる。それらのうち、本発明の効果が最も期待できる粒状物は、破砕発泡ポリスチレン、発泡ポリスチレンビーズ、破砕発泡エチレン・酢酸ビニル共重合体等である。
【0032】
肥料粒として使用できるものには、▲1▼被覆肥料粒や非被覆肥料粒がある。そのうち被覆肥料としては尿素、硫安等の単体、或いは必要に応じてそれらに他の種類の肥料成分を混合して粒状化し、その表面をポリオレフィン等の各種合成高分子で被覆処理を施したもので、比重は1.0〜1.5、好ましい粒径は0.5mm〜5mmのものが使用できる。それら被覆肥料中の肥料成分の含有率は90〜70%、充填材等を含む被覆材の含有率は10〜30%である。使用できる被覆肥料としての具体例は、チッソ株式会社製LPコート100、同LPコート180、多木化学株式会社製Uコート120、三菱化学株式会社製エムコートl140、住友化学工業株式会社製エムコートL140、住友化学工業株式会社製スーパーSRコート140等である。
【0033】
非被覆肥料粒としては、過燐酸石灰、重過燐酸石灰、焼成燐、熔性燐肥等を粒状に加工したもので、かつ、水に対する溶解損失率(注1参照)が30%以下であり、比重は1.2〜2.5、粒径は0.2〜5mmのものが使用できる。尚、セメント被覆を効率良く行うには、水に対する溶解損失がより小さいものが好ましい。溶解損失率が30%を越えるものは、セメント被覆を行うに際し、湿潤剤による粒子表面の湿潤において、肥料成分が溶解し、セメントの硬化を遅延したり、セメント被覆層にクラックが発生し易くなったりするので好ましくない。尚、被覆肥料粒と非被覆肥料粒とを必要に応じて任意の割合で混合して被覆処理を施しても良い。
【0034】
(注1)
風乾状態の肥料粒約3gを精秤(Dg)し、20℃の水100ml中に浸漬して3時間静置した後、肥料粒を取り出し、恒量(Eg)になるまで70℃温風循環式乾燥機中で乾燥する。溶解損失率(SL)(%)は次式で求める。
式:溶解損失率(SL)(%)={(D−E)/D}×100
【0035】
2.セメント
使用するセメント粉体(Cx)の物性は、セメント被覆処理を施す5〜40℃の範囲内における特定温度(T℃)で、3時間養生後の圧縮強度の発現性で規定している。即ち、JISで規定される配合のモルタル(セメント:標準砂:水=1:3:0.5)で縦横奥行きが4×4×16cmの試験体を成形し、前記T℃で3時間養生の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示す速硬性のセメント(粉体)(Cx)を用いる。10kgf/cm2未満のセメント(粉体)を用いると、セメントの硬化速度が遅く、1回当りの被覆処理に要する時間が長くなって生産効率が低下するので、実用性の無いものとなる。
【0036】
例えば、T℃が8℃の場合、被覆処理に使用するセメントについては、前記配合のモルタルを8℃になるように練り混ぜ、8℃で3時間養生後の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すセメントであれば良い。また、T℃が30℃の場合、30℃で3時間養生後の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すセメントを使用することができる。
【0037】
具体的に説明すると、攪拌翼付きの容器に核になる粒状物の100部を入れ、T℃で第1回目の被覆処理を行うに際し、先ず、湿潤剤として適当量の水(Y1)を加えて攪拌し、粒子表面を均一に湿潤させる。そして、T℃で3時間養生で圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すセメントを用いて、核粒子表面の湿潤した水分でセメントが粒子表面に層状に均一に付着し、かつ、そのセメント層がやがて半湿潤状態になる量(過不足ない適当量のセメント量)を添加し、攪拌し、粒子表面をセメントで均一に被覆する。この場合、もしもセメント量が適当な量よりも少ないときは、セメントは核粒子表面に吸着されるが、湿潤した水分(Y1)でセメントが完全に湿潤してペースト状になるために、粒状物がブロッキング(団粒化)を起して塊状物になり、好ましくない。一方、セメント量が適当量よりも多過ぎると、単粒子のセメント被覆粒状物と共に、粒子表面に付着し得なかったセメントが粉状で共存することになり、やはり好ましくない。過不足のない適当量なセメント量では、粒状物は団粒化することなく、単粒子を核としてセメントが粒子表面に均一な厚みで被覆し、かつ、未付着のセメント量が極めて少ない。セメント被覆の後、T℃(セメントの水和反応熱により一時的に若干温度が上昇するが、やがて下がって行く)で5〜120分間の養生を行い、セメントの硬化を進める。
【0038】
以後、必要に応じて、被覆セメント層の厚みを大きくするために第2回目の被覆処理を行うに際し、先ず、湿潤剤として水(Y2)を加えて、第1回目に被覆したセメント層(C1)を湿潤させる。その際C1層は十分に硬化しているので何ら問題はない。水(Y2)の一部はC1層に吸収されて、C1層の更なる硬化に役立ち、残りの水はC1層の表面を湿潤させる。しかし、第1回目の被覆処理にT℃で3時間の養生後の圧縮強度が10kgf/cm2未満のセメントを使用し、T℃で5〜120分間の養生後、第2回目の被覆処理のための水(Y2)による湿潤を行うと、第1回目に被覆したセメント層(C1)は硬化が不十分なために、ペースト状に変化して粒状物表面から剥離したり、粒状物がブロッキングを起して塊状物になったりして好ましくない。このように第2回目の被覆処置を行う前に、第1回目の被覆セメント層は十分に硬化していなければならない。そのためにはセメントの硬化速度はある程度速い方が良く、硬化の遅いセメントの使用は、そのセメントの硬化に時間と温度が必要で、生産効率を損ない実用性に乏しくなる。以下、同様に第3回目以降の被覆処理を重ねる必要がある場合は、セメントの速硬性が重要な役割を果たすのである。
【0039】
特公昭54−11814号公報においては、発泡合成樹脂粒子に、乳化分散液状の接着剤を塗布し、更にその表面に、塗布した接着剤の水分で完全に湿潤するよりも多量のセメント粉を付着させて、互いに分離独立して流動性を持つ発泡合成樹脂粒子を形成し、次にこの被覆粒子を型枠内に充填し、被覆セメント粉が接着剤中の水分により完全に凝固する以前に、上部から水分を与えて、発泡合成樹脂粒子を相互に立体的にセメントで固めて軽量コンクリートを製造する方法を提案している。この発明では、セメント被覆発泡樹脂粒子のセメントは未硬化であることが必須条件であるのに対して、本発明のセメント被覆においては、1回の被覆処理毎にセメントの硬化が進行しており、繰り返し被覆処理を行うための湿潤水の添加、あるいはトップコート被覆処理の水分により、被覆したセメント層の軟化、再分散或いは剥離等の現象が生じてはならない点で決定的な差異がある。
【0040】
3.使用できるセメント及び混和材
圧縮強度が10kgf/cm2以上を示す速硬性のセメントとしては、アルミナセメント、超速硬セメント、ジェットセメント、アルミナセメント/普通(早強)セメントの混合セメント(比率は1:0.5〜1:4)、セメント用超急硬性混和材(例:デンカコスミック)等が使用できる。他に塩化カルシウム等の硬化促進剤を数%程度配合した普通セメントや早強セメントなども使用することができる。尚、塩化カルシウム等の硬化促進剤を配合した普通セメント或いは早強セメントにおいて、硬化促進剤を微粉末処理してセメントと混合しても良いが、好ましくは硬化促進剤の一部或いは全量を予め湿潤剤(Yx)に添加、溶解しておくことも可能である。
【0041】
セメント粉体には各種の混和材を配合して使用することができる。フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、セメント膨張材、着色用顔料等が挙げられる。それらは、予めセメントと粉体混合させて使用するのが好ましい。尚、混和材の使用に当っては、前述の条件に従って圧縮強度試験を行い、T℃で3時間養生後の圧縮強度が10kgf/cm2以上を示すように調整しておく必要がある。
【0042】
4.湿潤剤量とセメント量及び養生
被覆処理を行う際、湿潤剤(Yx)として水を使用する場合について、水量(Yx)とセメント粉体量(Cx)の関係を説明する。核となる粒状物100部を用いて、第1回目の被覆処理を行うに際し、まず、粒状物の表面を均一に湿潤させるため、適当な水量(Y1)として1〜150部を使用する。この適当な水量は粒状物の種類、比重、粒径や分布、粒子表面の凹凸(空隙状態)、粒子の吸水性や溶解性等により異なる。例えば、珪砂、寒水石及び肥料粒等では1〜40部、好ましくは3〜20部であり、パーライトやバーミキュライト等では5〜50部、好ましくは10〜40部であり、破砕発泡ポリスチレン等では50〜150部、好ましくは80〜130部である。
【0043】
湿潤剤が担っている重要な機能に、その湿潤した粒状物表面へのセメントの付着量(厚み)の調節があり、セメント被覆量を多くしたい場合、湿潤剤としての水の粘度を高くしたり、水量(Y1)を増やしたりする。そして湿潤水量に対して過不足ない適当なセメント量を決めて行くのである。セメント被覆量を少なくしたい場合、湿潤剤としての水の粘度を低くしたり、水量(Y1)を少なくしたりすることで調節できる。
【0044】
1回の被覆に使用するセメント粉体量(Cx)は、核となる粒状物100部に対して10〜400部であるが、好ましいセメント量は粒状物の種類、比重、粒径や分布、粒子表面の凹凸(空隙状態)等により異なる。例えば、珪砂、寒水石及び肥料粒等では、好ましくは5〜50部、更に好ましくは5〜30部である。パーライトやバーミキュライト等では20〜100部、好ましくは40〜80部であり、破砕発泡ポリスチレン等では100〜400部、好ましくは200〜300部である。核になる粒状物に対して効率良く均一に被覆処理を施すのに適当な好ましい比(過不足無いセメント量)、即ち、セメント量(Cx)に対する湿潤剤量(Yx)の比(Cx/Yx)は、およそ0.2〜0.6である。
【0045】
セメント被覆後はセメントの養生、硬化の工程に入る。その養生温度及び所要時間は、前述の条件に適合する硬化の早いセメントを使用することにより、被覆処理温度(T)が5〜40℃の範囲内であれば5〜120分が適当である。セメントの養生、硬化が終了すれば、必要に応じてセメントの被覆厚みを大きくするために次の繰り返し被覆処理に進む。
【0046】
5.第2回目以降の被覆処理
必要に応じて行う第2回目以降の被覆処理では、第1回目の被覆セメントが硬化した後、先ず湿潤剤として適量の水(Y2)を加えて攪拌し、第1回目に被覆したセメント層(C1)を湿潤させる。次に過不足のない適当なセメント量を添加、攪拌して粒子表面にセメントを層状に均一に付着させ、かつ、そのセメント層がやがて半湿潤状態になり、セメントの水和、硬化が進む。続いて養生、硬化の工程に進む。
【0047】
通常の吸水性の小さな核粒状物ではY2は、Y2>Y1になるが、吸水性の大きい核粒状物では、Y2<Y1になる傾向がある。Y2も前記Y1と同様に、目標とするセメント被覆量(厚み)により決定する。水量(Y2)が決まれば、それに対応する過不足のない適当なセメント量(C2)を定める。以後同様に、必要に応じて第3回目或いは第4回目の被覆処理条件を決めて被覆処理を行う。被覆処理の繰り返し回数は、1〜10回程度が好ましいが、さらに好ましくは2〜5回である。
【0048】
6.湿潤剤について
湿潤剤(Yx)について詳述する。湿潤剤の役割は、核となる気乾状態の粒状物の表面を均一に湿潤し、その後添加するセメントを粒子表面に層状に均一に付着させ、湿潤剤の水分がそのセメント層を半湿潤状態として緻密なセメント硬化層を形成させ、なおかつ、粒状物表面とセメント層との付着力を高めることである。そこで、湿潤剤(Yx)には水(W)及び/又はセメント減水剤(WR)及び/又は水溶液の粘度を上げることのできる水溶性高分子溶液(SP)及び/又はポリマーディスパージョン(PD)及び/又はセメント硬化促進剤溶液(AC)の混合液を使用する。
【0049】
セメント減水剤(WR)としては、メラミン系、ナフタレン系、及びポリカルボン酸系等の各種のものを使用することができる。それらの使用量としては、湿潤剤中、濃度0〜5%の範囲内であるのが好ましい。水溶性高分子溶液としては、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶液が使用できる。それらの使用量としては、湿潤剤中、濃度0〜5%の範囲内であるのが好ましい。
【0050】
ポリマーディスパージョン(PD)としては、エチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ・アクリル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体、アクリル・スチレン共重合体、オールアクリル共重合体、エポキシ樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体等を挙げることができる。ポリマーディスパージョンの最低造膜温度(MFT)としては、被覆処理を行う温度T℃よりもやや低いのが好ましい。
【0051】
ポリマーの選択に当たっては、それらディスパージョン中には界面活性剤を全く含まないタイプのものが好ましい。それらポリマーディスパージョンの使用量としては、湿潤剤中、濃度0〜10%の範囲内であるのが好ましい。他に、湿潤剤に塩化カルシウムや炭酸ナトリウム等のセメント硬化促進剤(AC)を溶解しておくことも可能である。それらの硬化促進剤は、湿潤剤中、濃度0〜30%の範囲内で使用することができる。
【0052】
湿潤剤の調製に当っては、核となる粒状物の性質、セメント被覆粒状物に要求される諸性能等を勘案して、上記減水剤(WR)、水溶性高分子溶液(SP)、ポリマーディスパージョン(PD)、及びセメント硬化促進剤(AC)等から選択して調製してゆくのが良い。湿潤剤の最終的な混合物の固形分濃度としては、0〜20%の範囲が好ましく、0.5〜10%の範囲がさらに好ましい。湿潤剤の粘度としては、およそ1〜100cPの範囲が好ましい。
【0053】
7.被覆処理温度
本発明における被覆処理温度(T℃)とは、被覆処理を開始する前の攪拌容器内の核となる粒状物の定常的な温度を指し、5〜40℃の間の特定温度(T℃)の範囲で行うことができる。T℃の室内に設置された攪拌容器、及び同室内に保管された粒状物、湿潤剤及びセメント粉体を用いて被覆処理を行うと、セメントの水和反応による発熱のために攪拌容器内の被覆処理粒状物の温度は徐々に上昇する。
【0054】
その上昇の程度は、環境温度、セメント粉体量、被覆処理量等によって異なるが、通常はT℃+4〜10℃以下である。上昇温度が+10℃を超えると、或いは被覆粒状物の温度が60℃を超えると、被覆セメント層にクラックが発生し易くなることがあり、好ましくない。その場合には、環境温度を下げたり、1回当りの被覆処理量を低減したりといった対策が必要になる。尚、送風機により冷却する方法もある。
【0055】
被覆処理温度(T℃)が10℃程度の低い場合、使用するセメント粉体は前記モルタル(C:S:W=1:3:0.5)での圧縮強度が、10℃で3時間養生した後に10kgf/cm2以上を示すものを使用すれば被覆処理を難なく行うことができる。或いは、温風送風機を用いて環境温度を上げたり、別の方法により被覆粒状物の温度を上げたりしても良い。
【0056】
一方被覆処理温度が35℃程度の高い場合は、圧縮強度が35℃で3時間養生した後に10kgf/cm2以上を示すものを使用すれば良い。従って、当然ながら被覆処理温度(T℃)の違いによって使用できるセメント粉体の種類や硬化促進剤の種類と量は異なり、温度条件に合せて適宜に選択する。
【0057】
8.被覆セメント層の厚み
かくして得られるセメント被覆処理粒状物のセメント被覆層の厚みは、例えば、平均粒子径が3mmの粒状物に対して3〜5回の被覆処理を行うことにより、0.3〜5mm(粒子径は4〜13mm程度)にすることができる。
【0058】
9.セメント被覆を行うための設備
セメントを被覆するための設備としては、種々の形式の混合機が使用できる。例えば、横軸ドラムミキサー、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー、V型回転ミキサー、オムニミキサー、ニーダー、リボンミキサー等を挙げることができる。それらのうちの好ましいものは、横軸ドラムミキサー、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー等である。各ミキサーの好ましい形状、寸法及び回転速度等は、被覆処理をする粒状物の種類により異なるので、適宜に選択して使用する。
【0059】
10.トップコート被覆処理
本発明の方法により得られたセメント被覆粒状物に、トップコートとしてポリマーディスパージョンを添加、攪拌して、セメント被覆層内にポリマーを含浸させ、かつ、その表面にポリマー層を形成させてセメント被覆層を強化する。
【0060】
使用できるポリマーディスパージョンは、最低造膜温度(MFT)が20〜60℃であり、種類としてはアクリル共重合体、スチレン・アクリル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等がある。ポリマーディスパージョン中には界面活性剤を含まないものが好ましい。ポリマーディスパージョンの濃度(固形分)は1〜50%が適当であり、好ましい固形分は3〜20%である。使用量としては、セメント被覆処理粒状物100部に対して0.5〜20部が適当であり、好ましくは2〜10部である。
【0061】
ポリマーディスパージョンを添加する時期は、最終回のセメント被覆処理のためのセメント粉体の混合が終わった後、セメントの硬化と発熱が進み、槽内の温度が最高値より下がり始めたとき以後が適当である。添加したポリマー粒子は、被覆セメント層表面の微細な空隙に浸透して皮膜形成をすることにより、セメント層内部を緻密にして、かつ、表面にポリマー層を形成してセメント表面層を補強する。
【0062】
使用するトップコートの種類の選定や使用量は、セメント被覆処理粒状物に要求される諸性能を勘案して決定する。例えば、塗材用の着色充填材として使用する着色骨材では、光沢、耐候性、耐磨耗性等を重視する必要があり、アクリル系ポリマーディスパージョン等を使用する。セメントモルタル、コンクリート用の骨材として使用する用途では、セメントとの付着性に優れたエチレン・酢酸ビニル共重合体系、スチレン・アクリル共重合体系のポリマーディスパージョン等が好ましい。また、必要であればトップコートのポリマーディスパージョンに少量の水性顔料分散液を配合して着色することもできる。トップコート被覆処理の適当な温度条件としては、使用するポリマーディスパージョンのMFTや使用量、或いは、核となる粒状物の温度特性等により異なるが、5〜60℃の範囲が適当である。
【0063】
11.トップコート被覆処理を行うための設備
トップコート被覆処理をするための設備としては、セメント被覆を行うための設備をそのまま継続して使用することができる。好ましいものとしては、横軸ドラムミキサー、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー等である。トップコートとしてポリマーディスパージョンを添加、攪拌した後、乾燥させる必要がある。通常のトップコート被覆処理量では、送風機にて風或いは温風をミキサー内に送り込むことにより、容易に乾燥させることができる。他に、トップコート被覆処理のみを行う設備としては、流動層式コーティング乾燥機等を使用することもできる。
【0064】
以下、好適な実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
【実施例】
〔実施例1〕
(1) 使用材料及び被覆処理温度
▲1▼ 核となる粒状物:6mesh(3.36mm)を通過し、8mesh(2.38mm)に留まる寒水石、数平均粒子径2.9mmで真比重:2.60
▲2▼ 湿潤剤:Ya1:エチレン・酢酸ビニル共重合ディスパージョンh5%(固形分で表示)、メラミン系減水剤2.5%及び塩化カルシウム2%を含有する混合水溶液 Yb2:水
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):8〜12℃(この場合、実験室内の温度)
【0066】
▲4▼ セメントa:配合は早強ポルトランドセメント72部、セメント状粉体(電気化学工業製で、商品名は速硬性混和材コスミック)20部、及びセメント用着色顔料(茶色)8部を混合したもの
ここで、圧縮強度は、セメントa:標準砂:水=1:3:0.5のモルタルを練り混ぜて4×4×16cmの型枠に充填し、練り混ぜ開始2.5時間後に脱型し、3時間後に曲げ、圧縮強度を測定したところ、15.7kgf/cm2であった。尚、試験のための材料や器具は、前日より8〜12℃の実験室に保管し、同室内で試験体を製作し、養生を行った。
【0067】
▲5▼ トップコート:スチレン・アクリル共重合体系水性ディスパージョンJ、主用途は水性塗料用ベース樹脂、固形分濃度は20%、最低造膜温度(MFT)は5℃、樹脂のガラス転移温度(Tg)は60℃。
【0068】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は8〜12℃の実験室内で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となる寒水石100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Ya1の1.1部を添加し、2分間攪拌して寒水石を湿潤し、セメントaを6部添加し、2分間攪拌して寒水石の表面にセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Ya1の2.5部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントaを8部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。
【0069】
第3回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の3部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントaを10部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。第4回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の4部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントaを14部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。その後、一旦被覆処理物を取り出し、32meshフルイ(0.5mm)で未付着のセメント粉0.8部を取り除いて、元の混合機に戻した。セメント被覆処理粒状物の収量は147部であった。
【0070】
(3) トップコート被覆処理
セメント被覆処理で得た粒状物100部を攪拌翼の付いた混合機に入れ、攪拌しながらスチレン・アクリル共重合体系水性ディスパージョンJの3部を添加し、2分間攪拌した。直ちにバットに取り出して薄く広げ、同温度の室内にて1日風乾した。このようにして、寒水石を核とする着色(茶色)粒状物103部が得られた。
【0071】
(4) 得られたセメント被覆粒状物
物性値を表1に示す。この着色粒状物の主用途は、内壁或いは外壁の化粧用塗材の着色充填材、骨材として有用である。
【0072】
【表1】
【0073】
〔実施例2〕
(1) 使用材料及び被覆処理温度
▲1▼ 核となる粒状物:破砕発泡ポリスチレンビーズ、粒径2.4〜3.4mm、嵩比重0.012、比重0.06、
▲2▼ 湿潤剤Yc1:スチレン・アクリル・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンk(MFT 0℃)固形分7%、メチルセルロース(市販セメント混和用)0.5%、及びメラミン系減水剤2%を含有する混合水溶液。
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):20〜25℃(この場合、作業室内の温度)
【0074】
▲4▼ セメントb:配合はアルミナセメント(5種)40部、普通ポルトランドセメント60部を混合したもの。圧縮強度は、実施例1に示した方法で、セメントbを用いて20〜25℃で4×4×16cmの供試体を製作し、練り混ぜ開始3時間後に測定、22.7kgf/cm2であった。
▲5▼ トップコート:スチレン・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンk、固形分:5%、MFT:0℃、Tg:0℃。
【0075】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は20〜25℃の作業室内で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となる破砕発泡ポリスチレンビーズ100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Yc1の100部をスプレーで霧状にして2分間で添加、湿潤し、セメントbの250部を32meshフルイを通しながら3分間で添加、ポリスチレンビーズの表面にセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて120分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤100部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントbを250部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて120分間の養生、硬化を行った。セメント粉を32meshフルイで取り除いた後のセメント被覆処理粒状物の収量は880部であった。
【0076】
(3) トップコート被覆処理
セメント被覆処理したポリスチレンビーズを攪拌しながらスチレン・アクリル・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンkの8部をスプレーで霧状にして2分間添加した。直ちにバットに取り出し、同温度の室内にて1日風乾した。このようにして、破砕発泡ポリスチレンビーズを核とするセメント被覆骨材53.9部が得られた。得られたセメント被覆ポリスチレンビーズ粒状物の物性値を表2に示す。
【0077】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
(5) セメントモルタルに応用した場合の物性
表3に示す配合のモルタルを練り混ぜ、4×4×16cmの供試体を製作し、材令7日まで20℃で湿空、以後28日まで20℃、湿度60%のもとで養生を行い、曲げ、圧縮強度を測定した。曲げ、圧縮強度を表4に示す。本発明の方法によりセメント被覆処理を施したビーズを用いることにより、曲げ、圧縮強度が著しく向上している。
【0080】
【表3】
(配合は重量部)
【0081】
【表4】
【0082】
〔実施例3〕
(1) 使用材料
▲1▼ 核となる粒状物:市販黒曜石系パーライトf、粒径0.2〜3.5mm、数平均粒子径1.7mm、嵩比重0.20、
▲2▼ 湿潤剤Yd:メチルセルロース0.5%及び塩化カルシウム25%を含む混合水溶液
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):25〜30℃(作業室内の温度)
【0083】
▲4▼ セメントc:早強ポルトランドセメント
圧縮強度は、実施例1に示した方法で、セメントcを用いて25〜30℃で供試体を製作、測定し38kgf/cm2を得た。尚、塩化カルシウムをセメントに対して6%混入するように練り混ぜ水に予め溶解した。
▲5▼ トップコート:実施例2で使用した共重合体系水性ディスパージョンk 固形分5%、MFT:0℃
【0084】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は25〜30℃の作業室内で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となるパーライト100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Ydの20部をスプレーで霧状にして2分間で添加、湿潤し、セメントcの55部を32meshフルイを通しながら3分間で添加、パーライトの表面にセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、湿潤剤Ydの23部をスプレーで霧状にして2分間で添加、湿潤し、セメントcの70部を、フルイを通しながら3分間で添加、セメントを粒子表面に均一に付着させた後、攪拌を止めて30分間の養生、硬化を行った。セメント粉を28meshフルイで取り除いた後のセメント被覆処理粒状物の収量は265部であった。
【0085】
(3) トップコート被覆処理
前記(2)で得たセメント被覆粒状物100部につき、共重合体ディスパージョンkの11部を噴霧状にして2分間で添加、均一に被覆処理した。その後、送風機で混合機内に風を送り込み15分間乾燥し、バットに取り出した。
【0086】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表5に示す。
【0087】
【表5】
(*1)測定値がバラツキ易い
【0088】
(5) セメントモルタルに応用した場合の物性
表6に示す配合のモルタルを練り混ぜ、4×4×16cmの供試体を製作し、材令7日まで20℃で湿空、以後28日まで20℃、湿度60%のもとで養生を行い、曲げ、圧縮強度、乾燥収縮率、及び吸水率を測定した。その結果を表7に示す。セメント被覆処理したパーライトは強度に優れているだけでなく、乾燥収縮、吸水率においても優れている。
【0089】
【表6】
(*2)左官用メチルセルロース(粉末)
【0090】
【表7】
(*3)JIS A 1129による。
(*4)JIS A 1171による。ただし、80℃の乾燥は行わず、水中に7日間浸漬。
【0091】
〔実施例4〕
(1) 使用材料
▲1▼ 核となる粒状物:(a)市販ポリオレフィン系樹脂被覆尿素肥料LP、粒径2〜4mm、数平均粒子径3.5mm、嵩比重0.73、比重1.29、尿素含有量85%
▲2▼ 湿潤剤Ye1:アクリル・酢酸ビニル共重合ディスパージョンn5%、及びメラミン系減水剤2%を含有する混合水溶液。Yb2:水
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):28〜33℃
【0092】
▲4▼ セメントd1:市販ジェットセメント(商品名)。セメントd2:早強ポルトランドセメント80部と電気化学工業製速硬性混和材コスミック20部の混合物。各セメントの圧縮強度(kgf/cm2)(練り混ぜ及び養生温度は28〜33℃)は、セメントd1:53,5、セメントd2:32,9であった。
▲5▼ トップコート:スチレン・アクリル・メタクリル系シランカップリング剤共重合体水性ディスパージョンm(無乳化剤系)、固形分:25%、MFT:25℃
【0093】
(2) セメント被覆処理
以下の被覆処理は28〜33℃の作業環境下で行った。第1回目の被覆処理として、攪拌翼の付いた混合機に、核となる被覆肥料100部を入れ、攪拌しながら湿潤材Ye1の1.2部を添加し、2分間攪拌して肥料粒を湿潤し、続いてセメントd1の8部を、32meshフルイを通しながら添加し、2分間攪拌して肥料粒の表面にセメントを均一に付着させてから、攪拌を止めて20分間の養生、硬化を行った。引き続き、第2回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Ye1の4.5部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、さらにセメントd1の12部を、フルイを通しながら添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて20分間の養生、硬化を行った。
【0094】
第3回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の5部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、セメントd2を16部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて40分間の養生、硬化を行った。第4回目の被覆処理として、攪拌しながら湿潤剤Yb2の6.4部を添加し、2分間攪拌して湿潤させ、セメントd2を20部添加して2分間攪拌してセメントを均一に付着させ、それから攪拌を止めて40分間の養生、硬化を行った。
【0095】
(3) トップコート被覆処理
引き続き、攪拌しながら共重合体水性ディスパージョンm9部をスプレーで霧状で添加し、2分間攪拌し、次に攪拌しながら送風機を機内に向けて15分間送り込んで徐々に乾燥した後、製品を取り出した。収量は175.4部、32meshフルイ通過分(主に未付着のセメント分)は0.13部であった。
【0096】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表8に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
(5) セメントモルタルに混入した場合の被覆粒状物の破壊についての評価
普通ポルトランドセメント100部(450g)、標準砂300部(1350g)をモルタルミキサーで2分間空練りした後、水50部(225g)を添加して2分間練り混ぜた。その後、攪拌を止めてセメント被覆肥料粒5部(22.5g)を添加してモルタルスプーンで30秒間練り混ぜた後、さらに攪拌翼で30秒間練り混ぜた。尚、ミキサーの攪拌は全て低速で行っている。昆練したモルタル全量を28meshフルイ上に移し、水を流しながら肥料粒だけを採取し70℃乾燥機中で乾燥した後、肥料粒子を未破壊粒子と破壊粒子とに分類し、破壊率(注2参照)を求めた。比較のための試験として、核として使用した被覆肥料LP2.9部を用いて同様に練り混ぜ、破壊率を求めた。それらの結果を表9に示す。この表9より、本発明の方法でセメント被覆処理した肥料粒は、セメントモルタルに安定に練り混ぜることができるということが良く分かる。
【0099】
(注2)
未破壊粒子:肥料成分が残っている粒子で、セメント被覆層に欠損が生じていない粒子、セメント被覆層に欠損が生じていても肥料成分が残っている粒子、セメント被覆層が無くなり核肥料の状態になっていても肥料成分が残っている粒子の合計個数(Na)である。
破壊粒子:肥料成分が溶け出ている粒子で、セメント被覆層に部分的な欠損が生じ肥料成分が溶け出ている粒子、セメント被覆層の大部分が無くなり肥料成分が溶け出ている粒子、核肥料の状態で欠損部があり肥料成分が溶け出ている粒子の合計個数(Nb)である。尚、拡大鏡を用いて肥料粒子の判別を行っている。また、破損率(%)=Nb/(Na+Nb)×100である。
【0100】
【表9】
【0101】
〔実施例5〕
(1) 使用材料
▲1▼ 核となる粒状物:以下の3種類の粒状物を使用した。
(a)市販過燐酸石灰系非被覆肥料粒、粒径1.0〜3.5mm、数平均粒子径2.5mm、水に対する溶解損失率(注1参照)26%
(b)市販非被覆化成肥料粒、粒径1.5〜4.5mm、数平均粒子径3.1mm、嵩比重0.81、水に対する溶解損失率(注1参照)35%
(c)市販非被覆化成肥料粒、粒径0.8〜4.2mm、数平均粒子径3.0mm、嵩比重1.04、水に対する溶解損失率(注1参照)33%
▲2▼ 湿潤剤:実施例4と同じものを使用。Ye1及びYb2
▲3▼ 被覆処理温度(T℃):10〜15℃
▲4▼ セメント:アルミナセメント(5種)
▲5▼ トップコート:実施例4と同じものを使用。
【0102】
(2) セメント被覆処理
3種類の核粒状物の各々について、被覆処理温度を10〜15℃とし、上記の各材料を用いて前の実施例4と同様の操作により4回分のセメント被覆処理を施した。尚、セメントの養生、硬化時間は、10〜15℃で60分としている。
【0103】
(3) トップコート被覆処理
前(2)で得られた3種類のセメント被覆処理粒状物につき、温度28〜33℃にて、実施例4と同様な方法で被覆処理を行った。
【0104】
(4) 得られたセメント被覆粒状物の物性値を表10に示す。
セメント被覆肥料粒の水中14日間浸漬後の溶解損失について、(注1)の方法により試験した。但し、水中への浸漬時間は20℃×14日間としている。本発明の条件を満たしている非被覆粒状肥料(a)を核として使用したセメント被覆肥料は、セメント被覆層にクラックが生ずることなく、14日間水中に浸漬した後の溶解損失率が小さい。一方、本発明の条件を満たしていない非被覆粒状肥料(b)、(c)を核とした場合は、セメント被覆層にクラックが生じ、14日間水中に浸漬した後の溶解損失率が大きく、セメント被覆効果が出ていない。
【0105】
【表10】
(*5)被覆セメント層に微細クラックが生じている
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、核になる粒状物の表面に強固なセメント被覆層を形成し、その外側にポリマー層を形成させてあるので、核となる粒状物の機械的、物理的、或いは化学的性質を改良させることができ、しかも、セメント層の耐水性、耐磨耗性、耐衝撃性、耐酸性が改善されるので、種々の用途における粒状物の性能を向上させることができるセメント被覆粒状物を提供することができた。
【0107】
核としてパーライトを用いれば、セメント被覆処理されたものを塗料やモルタルとして使用して、強度物性、耐凍結融解性、吸水性が改善できるとともに、吸水時の断熱性も大幅に向上する。同様に、破砕発泡ポリスチレン粒に適応させた場合には、セメント被覆処理されたものをモルタルとして使うことで、強度物性を大きく向上させることができる。
【0108】
また、核として被覆肥料粒や非被覆肥料粒を用いると、例えば、セメント被覆尿素肥料粒について、ポーラスコンクリートに混入させた場合、ミキサーによる練り混ぜ中の肥料粒の破壊を著しく抑制できて、練り混ぜ時のアンモニア性臭気が殆ど発生しない望ましい状態でコンクリート打設等の作業が行えるので、作業環境を改善できるとともに、コンクリート強度が落ちることがなく、また、植物の生育に有益なポーラスセメントコンクリート硬化体が作成できる等、種々の改良が可能となる実用上の効果大なるセメント被覆粒状物を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるセメント被覆粒状物を示す断面図
【図2】セメント被覆層が複数回コーティングされたセメント被覆粒状物の断面図
【符号の説明】
1 セメント被覆粒状物
2 核
3 セメント被覆層
3a 第1セメント被覆層
3b 第2セメント被覆層
4 ポリマー層
Claims (6)
- 特定の粒状物の単粒子で成る核と、これを被覆するセメント被覆層と、このセメント被覆層をポリマーディスパージョンを用いて被覆したポリマー層とから構成されるとともに、前記被覆層は、前記粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌させたもので形成されているセメント被覆粒状物。
- 前記粒状物が、無機系物質又は高分子系物質で形成されている請求項1に記載のセメント被覆粒状物。
- 前記粒状物が、被覆粒状肥料又は非被覆粒状肥料で形成されている請求項1に記載のセメント被覆粒状物。
- 特定の粒状物の単粒子で成る核を、前記粒状物に湿潤剤としての水溶液と速硬性セメント粉とを順次加えて攪拌して得られるセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行った後、セメント層で被覆された前記核にポリマーディスパージョンを添加し攪拌して、前記セメント層の表面にポリマー層を形成させるセメント被覆粒状物の製造方法。
- 前記核をセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行うセメント層作成工程が複数回繰り返される請求項4に記載のセメント被覆粒状物の製造方法。
- 前記核をセメント層で被覆し、かつ、所定時間の養生を行うセメント層作成工程が、5〜40℃の範囲内において行われる請求項4又は5に記載のセメント被覆粒状物の製造方法。
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2003
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