JP2005008093A - エアバッグ用ガス発生器 - Google Patents

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Kenji Numamoto
賢治 沼本
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Abstract

【課題】ガス発生剤における着火斑を無くすことができ、及びより安全に製造する事ができ、更に製造が容易で、製造コストを抑えることのできるエアバッグ用ガス発生器の提供。
【解決手段】ハウジング内に、点火装置収容室と燃焼室とを区画してなるエアバッグ用ガス発生器であり、当該燃焼室内には、その長さ方向に亘って存在する中空筒状の伝火チューブが配置され、当該伝火チューブは、その長さ方向に沿う壁面に、伝火チューブの内外を連通させる空隙が連続状又は断続状に形成されると共に、その長さ方向の少なくとも一端部が開口しており、当該開口側端部は前記点火装置収容室と連通状に設けられているエアバッグ用ガス発生器。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両衝突時などの衝撃から乗員を保護するエアバッグ用ガス発生器に関する。特に、作動に際して、ハウジング内に収容されたガス発生剤を斑なく着火させることのできるエアバッグ用ガス発生器に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
自動車その他の車輌に搭載されるエアバッグシステムは、衝突などの衝撃を受けた際に、膨張可能なバッグを展開し、乗員が車輌内の構成部品(ハンドル、フロントガラスなど)と衝突するのを防止して乗員を保護するものである。かかるエアバッグは、ガス発生器で生じたガスを導入して膨張するものであり、ガス発生器は、衝撃を受けたときに、点火器の作動に起因してエアバッグ膨張用のガスを生じさせる。
【0003】
上記エアバッグ膨張用のガスの例としては、ガス発生剤の燃焼によって生じるガスが使用されるか、或いはガス発生剤の燃焼によって熱膨張された加圧ガスが使用されており、かかるガス発生剤は、点火器又はこの点火器を含んで構成された点火装置で生じる火炎や熱ミスト或いは高温ガスによって着火され、燃焼することになる。
【0004】
そして、ガス発生器におけるエアバッグ膨張用のガスの発生具合は、ガス発生剤の燃焼具合の影響を受けることから、より効率的にエアバッグ膨張用ガスを生じさせる為には、ガス発生剤を効果的に燃焼させる事が必要である。
【0005】
従って、エアバッグ膨張用のガスを生じさせる為に、直接的又は間接的にガス発生剤の燃焼によって生じるガスを使用する場合には、点火器や点火装置等でガス発生剤を着火する際に、その着火斑をなくすことが望ましい。特に、ガス発生剤の存在空間が広いか、或いは何れかの方向に長く形成されている場合には、尚更にガス発生剤の着火斑を無くすことが望ましい。
特にガス発生剤として着火性が悪い組成物が用いられた場合、点火装置近傍のガス発生剤だけが着火・燃焼し、それ以外の場所に存在するガス発生剤が未燃焼のまま残る事態も発生する。依ってこのような事態を回避して、点火装置から離れた位置にあるガス発生剤も均一に着火燃焼させる必要がある。
【0006】
また、ガス発生器の製造に際しては、製造中に作動することの無いように、作動開始装置である点火器は、できるだけ後の工程で設置できるものとして形成される事が望ましい。更に、ガス発生器の製造工程が容易で、その製造コストを抑えることが望ましい。
【0007】
依って本発明は、ガス発生剤における着火斑を無くすことのできるエアバッグ用ガス発生器を提供すること、及びより安全に製造する事ができ、更に製造が容易で、製造コストを抑えることのできるエアバッグ用ガス発生器を提供することを課題とする。
【0008】
なお、関連する先行文献としては、特許文献1〜5がある。
【0009】
特許文献1に開示されているガス発生器は、ガス発生剤が細長い形状の空間内に収容されており、点火器で生じた着火火炎は、チューブによって当該ガス発生剤収容空間の略中央まで導かれている。併しながら、この文献1に示されたガス発生器では、チューブの先端(ガス発生剤収容空間内に存在する先端)近傍に存在するガス発生剤は、迅速かつ十分に着火されることになるが、それ以外の部分に存在するガス発生剤は、迅速かつ十分に着火されないことから、ガス発生剤全体で見れば、着火・燃焼斑が発生し易いものとなっている。
【0010】
特許文献2に開示されているガス発生器は、メインプロペラント(ガス発生剤)が収容される空間が細長く形成されており、ガス発生剤が存在する空間には、細長いブースターチューブが同心で配置されている。そして、このブースターチューブの周面には、多数の小孔が形成されている。併しながら、かかるブースターチューブを用いた場合、ブースターチューブには多くの小孔を形成しなければならないことから、ブースターチューブ自体の製造工程や製造費用が嵩むことになる。またこの文献に示されたガス発生器は、製造時における十分な安全性を確保することが困難である。
【0011】
特許文献3に開示されているガス発生器は、ガス発生剤を収容する燃焼室内に、複数の伝火孔が形成された伝火チューブが設けられており、点火手段から生じた火炎などは、この伝火孔から燃焼室内に噴出する。
【0012】
特許文献4に開示されているガス発生器は、ガス発生剤を収容する燃焼室内に、伝火薬の火炎が噴出する複数の開口が形成された伝火チューブが設けられている。
【0013】
特許文献5に開示されているガス発生器は、ガス発生剤を収容する燃焼室内に、伝火薬の火炎が噴出する開口を多数備え、管壁に均一に分散して穿設されている伝火チューブが設けられている。
【0014】
併しながら、これら特許文献3〜4に示されたガス発生器では、前記特許文献2で示したように、伝火チューブには多くの小孔(伝火孔など)を形成しなければならないことから、伝火チューブ自体の製造工程や製造費用が嵩むことになる。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,931,496号明細書
【特許文献2】特開平07−069164号公報
【特許文献3】特開2001−151070号公報
【特許文献4】特開平06−227357号公報
【特許文献5】特開平07−215165号公報
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為、本発明のエアバッグ用ガス発生器は、点火装置の火炎や熱ミスト等を燃焼室内のガス発生剤に均等に行き渡らせるものとして、中空筒状であって、その長さ方向に沿う壁面に、1又は2以上の空隙を連続状又は断続状に形成している伝火チューブを使用するものである。
【0017】
即ち、本発明のエアバッグ用ガス発生器は、ハウジング内に、ガス発生器の作動開始装置としての点火装置を収容する点火装置収容室と、点火装置の作動により着火されて燃焼し、エアバッグを膨張させるガス発生剤を収容する燃焼室とを区画してなるエアバッグ用ガス発生器であって、当該燃焼室内には、その長さ方向に亘って存在する中空筒状の伝火チューブが配置され、当該伝火チューブは、その長さ方向に沿う壁面に、伝火チューブの内外を連通させる空隙が連続状又は断続状に形成されると共に、その長さ方向の少なくとも一端部が開口しており、当該開口側端部は前記点火装置収容室と連通状に設けられているエアバッグ用ガス発生器である。
【0018】
上記伝火チューブは中空であり、その長さ方向に沿う壁面に1又は2以上の空隙が連続状乃至断続状に形成されている。かかる空隙は、少なくとも伝火チューブの内側に形成される空間と、伝火チューブの外側に存在する空間(例えば、燃焼室)とを連通させるものとして形成され、例えば、空隙は、それが形成される壁面の長さ方向に沿って連続乃至断続するものとして形成する他、この空隙が形成される壁面に沿うように捻ったり又は曲折させたりして連続乃至断続するものとして形成することもできる。
【0019】
上記のように、伝火チューブの壁面に1又は2以上の空隙を形成した場合には、複数の孔を形成する必要が無くなり、当該伝火チューブを容易且つ廉価に製造する事ができる。このことは結局、エアバッグ用ガス発生器を容易且つ廉価に製造できるとの効果に繋がることになる。更に、空隙を連続状に形成した場合には、一層製造容易性が向上され、且つ製造コストの削減を図ることができる。
【0020】
特に伝火チューブが大凡円筒形である場合、当該空隙はその周壁面に沿うように捻って形成することができる。この際、空隙が連続状に形成される場合には、当該空隙は周壁面に沿って螺旋状に形成されることになり、その結果、当該伝火チューブの全体形状は、スパイラルチューブの如き形態となる。依って、本発明では、伝火チューブとしてスパイラルチューブを用いることができる。また、空隙を周壁面に沿う螺旋状に形成した伝火チューブとして、弦巻バネを使用する事もできる。更に空隙が螺旋状に形成された伝火チューブ、即ち螺旋状の伝火チューブを、更に螺旋状にして燃焼室内に配置することもできる。但しこの場合、中空の伝火チューブであると、ハウジング一端に設置した伝火薬からの火炎が螺旋状に配置した伝火チューブ内を通過しにくくなることも考えられる。依って、このような場合には、伝火チューブの内部にも伝火薬を配置することもできる。螺旋状の伝火チューブに厚さ50μmにアルミニウム製のテープを外側から貼り付けることで、伝火薬が粉状の場合でも、燃焼室内に漏れることはない。
【0021】
このように伝火チューブとしてスパイラルチューブや弦巻バネを使用する場合には、一層製造容易性が向上され、且つ製造コストの削減を図ることができる。
【0022】
そしてこの伝火チューブは、その長さ方向の少なくとも一端部が開口しており、当該開口側端部は前記点火装置収容室と連通状に設けられていることから、点火装置の作動に際して生じた火炎や熱ミストなどは、当該伝火チューブの内部空間内に流入することになる。また、この伝火チューブは、燃焼室内の長さ方向に亘って存在することから、伝火チューブの長さ方向に沿う壁面全域に上記空隙を形成すれば、点火装置の火炎や熱ミストなどは、燃焼室内の長さ方向に亘って存在する空隙から、燃焼室内に均等に放出されることになる。その結果ガス発生剤の着火斑を無くすことができる。特に伝火チューブとしてスパイラルチューブや弦巻バネが使用される場合には、その内部空間内に流入する点火装置の火炎や熱ミスト及び高温ガスなどは、周壁面に螺旋状に存在する空隙から放出される事になる。
【0023】
なお、上記伝火チューブを燃焼室内に配置するに際しては、当該伝火チューブは、燃焼室の長さ方向に沿って延伸するように配置され、特に燃焼室の長さ方向に直交する面の中央を貫通するように配置されることが望ましい。即ち、燃焼室が円柱状である場合、当該伝火チューブは、燃焼室の軸方向に沿って設ける事ができ、特に燃焼室と同軸に設けることが望ましい。
【0024】
更に本発明のガス発生器では、ハウジングを略円筒状に形成して、その一端部に点火装置を取り付け、前記伝火チューブをハウジングの軸方向に沿う向きに配置すると共に、その長さ方向に沿う壁部に形成された空隙を、点火装置収容室から離れるに従って開口率を大きく形成することが望ましい。伝火チューブの空隙を、点火装置収容室から離れるに従って開口率を大きく形成すれば、当該空隙は、点火装置に近い所では開口が小さく、点火装置から離れるに従って開口が大きくなることから、点火装置の作動によって生じた火炎や熱ミストを、点火装置から離れた所(即ち、伝火チューブの奥)まで行き渡らせることができる為である。
【0025】
即ち、伝火チューブの点火装置近傍に位置する部分の開口率を小さくしておけば、点火装置の燃焼乃至作動によって発生する火炎、熱ミスト、高温ガス等の燃焼生成物からなる着火エネルギーが、この部分で集中的に燃焼室内に排出されることはなくなり、その分、点火装置から遠くに位置する部分の開口(即ち空隙)まで拡散されることになる。その結果、ガス発生剤の着火斑を無くすことに関して寄り顕著な効果を得ることができる。ここで、伝火チューブにおける「開口率」とは、伝火チューブの長さ方向に沿う璧面の単位面積当たりに占める空隙部分の面積の割合のことである。また、伝火チューブは、点火装置の燃焼乃至作動によって発生する火炎、熱ミスト、高温ガス等の着火エネルギーを燃焼室内に導くものとして作用することから、着火エネルギーによって変形乃至消尽することのない材料、例えば金属などで形成される。
【0026】
伝火チューブの開口率を変化させる手段としては、例えば空隙が螺旋状に形成されている場合には、空隙の太さ(幅)を変える(即ち、点火装置から遠ざかるにつれて、空隙の太さを太くする)か、螺旋のピッチ(特に、円周方向への回転回数に対する軸方向への進み具合であって、軸方向への進み具合には空隙も含まれる)を変える等の方法がある。また開口が伝火チューブの軸方向に沿って(即ち平行に)形成される場合には、空隙の太さ(幅)を変える(即ち、点火装置近傍の空隙を細くし、遠ざかるにつれて徐々に太くする)手段が考えられる。
【0027】
前記点火装置は、電気的な作動信号を受領して作動する点火器のみで構成する他、更に点火器の作動によって着火し、火炎、熱ミスト及び/又は高温ガスを発生することで着火エネルギーを増幅させる伝火薬を含んで構成することができる。かかる伝火薬としては、ボロン硝石(B/KNO)を使用することができ、その他にも着火性の良いガス発生剤を使用することもできる。伝火薬として使用することのできる着火性の良いガス発生剤としては、例えば燃料としてニトログアニジン、酸化剤として硝酸ストロンチウムを使用した組成物が上げられ、これは単孔円筒状又は多孔円筒状等の有孔状成型体に形成する他、孔のないペレット状に形成することができる。
【0028】
特にエアバッグ膨張用ガスを発生する固形ガス発生剤に、硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅などを各々燃料、酸化剤として用いた場合など、当該ガス発生剤の着火性が低下する場合には、ニトログアニジン、硝酸ストロンチウム等をそれぞれ燃料、酸化剤とするガス発生剤を伝火薬として用いることができる。かかるガス発生剤を用いた伝火薬は、その成形形状によって伝火薬の燃焼完了時間を調整することができることから、エアバッグ膨張用のガスを生じさせるガス発生剤との火炎、熱ミスト、或いは高温ガス等との接触時間を長くすることができる。依って、エアバッグ膨張用のガスを生じさせるガス発生剤の着火性が低い場合には、伝火薬として、ニトログアニジン、硝酸ストロンチウム等をそれぞれ燃料、酸化剤とするガス発生剤を用いるのが好ましい。
【0029】
そして上記点火装置は、ガス発生器の製造に際して、できるだけ後の工程で設置できる部位に設けることが望ましい。即ち、仮にガス発生器製造の早い段階から点火器を設置する場合には、静電気などによって点火器が誤作動した場合には、ガス発生剤が着火・燃焼されてしまい、製造設備が損傷を受けることも考えられることから、このような事態を回避する為である。依って、本発明のガス発生器で使用する点火装置は、1つのまとまりのあるユニット状に形成され、これはハウジングにおける外側から設置できる部位に設けられる事が望ましい。即ち、点火装置収容室は、ハウジングにおける外側から設置できる部位に設けられる事が望ましい。
【0030】
更に本発明では、伝火チューブの内部空間にも伝火薬を収容することができる。このように形成すれば、点火装置の作動によって生じた着火エネルギー(火炎、熱ミスト、高温ガス等のエネルギー)を衰えさせることなく、燃焼室内のガス発生剤に導くことができる。これにより、燃焼室内全体のガス発生剤を、より一層十分に着火させることができる。この時、伝火チューブ内に充填される伝火薬が紛状又は粒状の場合には、これが空隙からこぼれ落ちる(又は排出される)ことのないように、当該空隙をガス発生剤の着火性に支障を来さない部材で塞ぐことが望ましい。例えば伝火チューブを円筒状に形成した場合、その外周面を約50μm程度の厚さのアルミニウムテープで巻くことができる。かかるアルミニウムテープは熱に弱く、伝火薬の燃焼時には消尽するため、ガス発生剤の着火性には影響しない。
【0031】
また本発明のガス発生器では、リテーナに依って点火装置収容室と燃焼室とを区画し、当該リテーナには、点火装置収容室内における伝火薬等の燃焼によって生じた燃焼生成物を燃焼室側に放出するノズルを設けて、このノズルに伝火チューブを外嵌又は内嵌することが望ましい。この場合、伝火チューブにおける、リテーナのノズルに外嵌又は内嵌している側の端部は、少なくとも点火装置の作動により生じた着火エネルギーを、その内部空間内に導くことのできる形状、例えば開放状に形成するか、或いは複数の連通孔を形成する等の形状に形成する必要がある。以上のように形成すれば、伝火チューブの固定・支持を容易に行うことができる。また点火装置の作動によって生じた着火エネルギーをリテーナのノズル(開口部)のみから放出する為に、当該エネルギーを燃焼室全体に分散させずに、伝火チューブ内へ集中させることができる。これによりガス発生剤全体の着火を斑なく円滑に行うことができる。
【0032】
上記本発明にかかるガス発生器では、ハウジング内に燃焼室を2室以上設けることもできる。この場合、各燃焼室内に収容されたガス発生剤を着火するための点火装置が、それぞれの燃焼室に対応して設けられる事が望まし。そしてハウジング内に燃焼室を2室以上設ける場合、全ての燃焼室に、または何れか1若しくは2以上の燃焼室に、上記伝火チューブを設けることができる。
【0033】
更に、本発明のガス発生器では、更にエアバッグ膨張用のガスとして加圧ガスを用いて形成することもできる。この場合、ハウジング内の密閉された空間内に加圧ガス室が設けられ、上記ガス発生剤と、点火装置と、伝火チューブとを用いて構成されたものは、加圧ガス室の内側(即ち、ガス発生剤が加圧ガスの充填圧力下に存在する状態)又は外側(即ち、ガス発生剤が大気圧下に存在する状態)に配置される。何れの場合も、ガス発生剤の燃焼によって生じたガスは、加圧ガス室内に導入される必要がある。このように形成されたガス発生器(即ち、ハイブリッド型ガス発生器)では、点火装置の作動によって生じた火炎その他の作動エネルギーにより、ガス発生剤が燃焼されると、高温のガス及び火炎を生じさせ、これが加圧ガス室内に噴出して、加圧ガス室内のガスを熱膨張させる。その結果、加圧ガス等に依拠するエアバッグ膨張用のガスがガス発生器から排出されることになる。この場合でも伝火チューブを用いることによって、ガス発生剤の着火斑を無くすことができるので、望ましい作動性能を得ることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明にかかるエアバッグ用ガス発生器の、1つの実施形態を示す縦断面図である。この図に示すガス発生器10は、特に軸方向に長い筒状ハウジング1が使用されており、その内側には隔壁2によって区画された2つの燃焼室3が軸方向に隣り合う様に形成されている。この区画されたそれぞれの燃焼室3内には、燃焼してエアバッグ膨張用のガスを生じさせるガス発生剤4が収容されており、本実施の形態では、図面右側の第1の燃焼室3は、図面左側の第2の燃焼室3よりも大きい容積で形成されている。
【0035】
そしてハウジング1の長さ方向に沿う壁面(即ち周壁面)には、内側に各燃焼室3が存在する範囲に複数のガス排出口5が形成されており、またハウジング1の内側には、その内壁面と対向状にクーラント6が配置されている。
【0036】
そして軸方向に長いハウジング1の両端部には、点火装置7が設置されている。この実施の形態において、各点火装置7は、電子的な作動信号を受領して作動し、火炎や熱ミストなどを生じさせる電気式の点火器71と、この点火器71の作動で生じた火炎や熱ミストなどの勢いを増幅させる伝火薬72を含んで構成されている。かかる点火装置7は、筒状に形成されたハウジング1の軸方向端部に設置されていることから、ガス発生器10の製造に際しては、ハウジング1内にクーラント6やガス発生剤4など、必要な部材を設置した後、最後の製造段階において、点火器71を含む点火装置7を設置することができる。仮に、ガス発生器10製造の早い段階から点火器71を設置する場合には、静電気などによって点火器71が誤作動した場合にガス発生剤4が着火・燃焼されてしまい、製造設備が損傷を受けることも考えられるが、この実施例に示す如く、ハウジング1の端部に点火装置7を設置し、最後の製造段階での組み込みを可能とすることにより、ガス発生器10の製造中の誤作動を極力回避することができる。
【0037】
そして、上記各点火装置7は、ハウジング1内の軸方向端部にリテーナ8によって区画されている点火装置7収容室内に収容されている。この点火装置7収容室と燃焼室3とを区画しているリテーナ8は、点火装置7の作動によって生じた火炎、熱ミスト、高温のガスなどの燃焼生成物からなる着火エネルギーを集中的に放出させるためのノズル81を備えており、このノズル81内には伝火チューブ9の一端部を挟持している。
【0038】
本実施の形態において、伝火チューブ9は、金属製のスパイラルチューブを用いて形成されており、特にそのピッチPは、点火装置7収容室側(一端部側)を小さく、他端部側を大きく形成している。この伝火チューブ9は、各燃焼室3における中心(軸心)位置に配置されており、燃焼室3内の長さ方向全体に亘って存在するものとして形成されている。そしてこの伝火チューブ9の他端側は、隔壁2に設けられた突起部21で支持されている。
【0039】
図1においては、空隙Sの幅及び螺旋状になっている壁幅Wを変化させてピッチPを変ることで、空隙Sの開口率を点火器側は小さく、点火器から離れるに従って大きくしているが、その他にも、壁幅Wを一定とし、空隙Sの幅を変えることでピッチPを変えたり、逆に空隙Sの幅を一定にして、壁幅Wを変えることでピッチPを変えて、空隙Sの開口率を点火器側は小さく、点火器から離れるに従って大きくすることもできる。もちろん、ピッチPが一定の螺旋状のチューブとすることも可能である。
【0040】
ハウジング1内周面と対向状に設けられたクーラント6は、各燃焼室3内で発生したガスを冷却する機能、及び燃焼ガス中の残渣を捕集する機能の少なくとも何れかの機能を果たすものであり、環状に形成されて、その外周面とハウジング1周壁面との間に間隙を確保して配置されている。この間隙により、その内部で発生した燃焼ガスが、クーラント6の全領域を通過してガス排出口5に到達するため、クーラント6効率、冷却効率が向上する。
【0041】
このように形成されたガス発生器10では、作動信号を受領して点火装置7が作動すると、これにより生じた火炎、熱ミスト、高温のガスなどの燃焼生成物からなる着火エネルギーは、リテーナ8のノズル81から集中的に排出されることになる。そしてこのノズル81内には、スパイラルチューブからなる伝火チューブ9が嵌っており、両者は連通していることから、当該着火エネルギーは、スパイラルチューブ内に移動することになる。そして、このスパイラルチューブの周壁面には螺旋状の空隙Sが設けられていることから、当該着火エネルギーは、空隙Sから略放射方向に燃焼室3内に噴出することになる。そして、この伝火チューブ9は燃焼室3の長さ方向全域に亘って存在することから、着火エネルギーは伝火チューブ9の内部空間に案内されて、燃焼室3全域に導かれることになる。
【0042】
特に本実施の形態に於ける伝火チューブ9は、そのピッチPが、点火装置7側が小さく形成されて、徐々に大きく形成されていることから、伝火チューブ9の周壁面に形成される空隙Sの幅(乃至面積)は、点火装置7側(一端側)が小さく、その反対側(他端側)が大きく形成されている。これにより、点火装置7の作動により生じる着火エネルギーが、リテーナ8のノズル81付近で大量に放出されることなく、燃焼室3の長さ方向全域に亘って均等に排出されることになる。これにより、燃焼室3内のガス発生剤4は均等に着火されることになり、エアバッグ膨張用のガスの放出をガス発生器の作動上、最適に行うことができる。更に、かかる伝火チューブ9として使用されているスパイラルチューブは、引き抜き加工または圧延加工によって板取りした素材(望ましくは帯状で、角断面や丸断面に形成された素材)を心金の周りに巻き付けることにより製造できることから、その製造が容易であり、依ってエアバッグ用ガス発生器10を容易に製造できる上、更に製造コストを削減することができる。
【0043】
特にこの図1に示したガス発生器10では、ハウジング1内に容積の異なる2つの燃焼室3を設け、且つそれぞれの燃焼室3に対応させて点火装置7を設けていることから、作動に際してはガス発生剤4を相互に独立して着火させることができる。これにより、作動性能(エアバッグ膨張用ガスの発生具合)を任意に調整することができる。特に、燃焼室3の容積の違いは、その中に収容されるガス発生剤4の量の違いとなっていることから、何れの燃焼室3内のガスを最初に燃焼させるかや、何れの燃焼室3内のガスのみを燃焼させるか等により、より細やかにガス発生器10の作動性能を調整することができる。
【0044】
なお、上記ガス発生器10において、容積の異なる2つの燃焼室3の内、容積の小さい方の燃焼室3が、より小さく且つ軸方向長さも短くて、点火装置7作動によって生じる着火エネルギーが燃焼室3内に迅速に行き渡る場合には、伝火チューブ9を省略することも考えられる。このように、燃焼室3内に2つの燃焼室3が設けられ、何れかの燃焼室3が十分に小容積である場合には、当該燃焼室3内の伝火チューブ9を省略でき、当該伝火チューブ9は、細長く形成された燃焼室3内のみに配置されることになる。
【0045】
また、本発明のガス発生器10は、ハウジング1内に1つの燃焼室3を設けたガス発生器10とすることも当然に可能である。この場合、大凡、上記図1に示したガス発生器10において、隔壁2から分断した形態のガス発生器10とすることができる。
【0046】
更に、図1は軸方向に長く、主に助手席側に配置するのに適した形態となっているが、更に軸方向に短く、半径方向に大きく形成したガス発生器10とすることもできる。
【0047】
また本発明で使用される伝火チューブ9は、図1に示すように螺旋状に連続した空隙Sを有する形状であると、上述したように、その製造が容易であることから好ましいものとなるが、更に空隙Sを断続状、即ち空隙Sが所々で途切れている形状に形成することもできる。特に空隙Sを断続的な螺旋状に形成する場合は、空隙の長さを半周以上、好ましくは1周以上連続させておくことができる。更にその場合でも空隙Sの開口率を、壁幅Wを変化させて、若しくは空隙幅を変化させて、又はその両方を変化させてピッチPを変えることもできる。
【0048】
そして、上記図1に示したガス発生器10では、スパイラルチューブを伝火チューブ9として使用しているが、かかる伝火チューブ9は、更に図2に示す形態のものを使用することができる。
【0049】
即ち図2は、伝火チューブ9’の別の態様を示している。この図に示す伝火チューブ9’は、図1における向かって右側の燃焼室3の伝火チューブ9に代わるもので、全体略中空筒状に形成され、その長さ方向に沿う壁面、即ち周壁面には、図2中、斜線で示したような空隙S’が形成されている。この図に示す伝火チューブ9’に形成される空隙S’は、その長さ方向に亘って幅を変えて形成されており、ガス発生器10への配置に際しては、幅狭く形成された空隙S’が点火装置7側に存在するようにして、リテーナ8のノズル81に外嵌又は内嵌させることができる。依って、図1における向かって左側の燃焼室に配置される伝火チューブは、空隙の幅(幅が変化する向き)が図2に示したものの逆(左右対称)になる。
【0050】
このような形状の伝火チューブ9’は、円筒状チューブの周壁面における空隙S’(斜線で図示)が存在することになる部分を除去することにより、空隙S’を形成することができ、依って簡易且つ廉価に伝火チューブ9’を製造することができる。もちろん伝火チューブ9’においては、空隙Sの幅を一定にしたものとすることもできる。
【0051】
そして、この伝火チューブ9’を使用してガス発生器10を製造する事により、図1に基づいて示したように、ガス発生器10を容易に製造できる上、更に製造コストを削減することができ、更に製造されたエアバッグ用ガス発生器10は、燃焼室3内のガス発生剤4を斑なく着火させることができる。
【0052】
この伝火チューブ9’においても、空隙S’を断続的に形成することができる、この場合も、空隙S’の幅を変えたものであっても、一定の幅にしたものであっても良い。
【0053】
【発明の効果】
本発明にかかるガス発生器は、点火器や点火装置等でガス発生剤を着火する際、その着火斑をなくすことができる。これは、ガス発生剤の存在空間が、広いか、或いは何れかの方向に長く形成されている場合には、ガス発生器の作動性能上、より望ましいものとなる。更に本発明にかかるガス発生器は、その製造工程が容易となり、またその製造コストを抑えることができる。
【0054】
そして、スパイラルチューブ状に形成した伝火チューブを用いることにより、より一層ガス発生剤を均等に着火させることができる。即ち、仮に伝火チューブとして多孔円筒状の伝火チューブを用いた場合には、点火装置作動時に伝火チューブ内の圧力が何らかの原因で急激に上昇すると、当該多孔円筒状の伝火チューブはその軸方向に裂けることも考えられる。そしてこの伝火チューブの円周上の一部で裂けた部分に伝火ガスや火炎等が集中し、その近傍に存在するガス発生剤が集中的に着火・燃焼され、ガスの片噴出が発生することも考えられる。この点、スパイラルチューブ状の伝火チューブを使用すれば、その構造上、空隙が均等に広がるか、或いは狭まることから、このようなガスの片噴出が生じる可能性はない。更に、係るスパイラルチューブ状の伝火チューブでは、そのピッチや開口率の調整を容易に行うことができる上、燃焼室内に配置する場合などに於いても、曲がりやすくて加工が容易であるとの効果を有する。
【0055】
特に、点火装置をユニット状に形成した場合には、ガス発生器の製造時に誤作動を阻止しながらも、ガス発生剤の着火斑を無くしたガス発生器とすることができる。即ち、作動開始装置に含まれる点火器が、できるだけ後の工程で設置できるものとして形成され、更にガス発生器の製造工程が容易で、その製造コストを抑えたエアバッグ用ガス発生器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】1の実施態様におけるガス発生器を示す縦断面図。
【図2】伝火チューブの他の実施態様を示す要部断面図。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 隔壁
21 突起部
3 燃焼室
4 ガス発生剤
5 ガス排出口
6 クーラント
7 点火装置
71 点火器
72 伝火薬
8 リテーナ
81 ノズル
9 伝火チューブ
10 ガス発生器
P ピッチ
S 空隙

Claims (5)

  1. ハウジング内に、ガス発生器の作動開始装置としての点火装置を収容する点火装置収容室と、点火装置の作動により着火されて燃焼し、エアバッグを膨張させるガス発生剤を収容する燃焼室とを区画してなるエアバッグ用ガス発生器であって、
    当該燃焼室内には、その長さ方向に亘って存在する中空筒状の伝火チューブが配置され、
    当該伝火チューブは、その長さ方向に沿う壁面に、伝火チューブの内外を連通させる空隙が連続状又は断続状に形成されると共に、その長さ方向の少なくとも一端部が開口しており、当該開口側端部は前記点火装置収容室と連通状に設けられているエアバッグ用ガス発生器。
  2. 前記伝火チューブは略円筒状に形成されており、その長さ方向に沿う周壁面に形成される空隙は、周壁面に沿って螺旋状に形成されている請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
  3. 前記ハウジングは略円筒状であって、その一端部に点火装置が取り付けられており、前記伝火チューブはハウジングの軸方向に沿う向きに配置され、伝火チューブの長さ方向に沿う壁部に形成された空隙は、点火装置収容室から離れるに従って、開口率が大きく形成されている請求項1又は2記載のエアバッグ用ガス発生器。
  4. 前記伝火チューブの内部空間にも前記伝火薬が収容されている請求項1〜3の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。
  5. 前記点火装置収容室は、リテーナに依って燃焼室から区画されており、当該リテーナは、点火装置収容室内における伝火薬の燃焼によって生じた燃焼生成物を燃焼室側に放出するノズルを備えており、
    前記伝火チューブは、当該ノズルに外嵌又は内嵌している請求項1〜4の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。
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