JP2005007499A - 加工条件最適化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】量産加工ラインの加工条件を最適化する加工条件最適化装置を提供する。
【解決手段】被切削物に関する物理的情報、被切削物を加工する工具に関する物理的情報、および被切削物を工具で加工するための加工情報を記憶する。被切削物に関する物理的情報、工具に関する物理的情報、および加工情報に基づいて、工具により被切削物を擬似的に加工する。このとき、擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する。工具接触状態検出部(320)は、被切削物を擬似的に加工したときの工具の先端部分と被切削物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。加工情報の補正方法を前記分類ごとに記憶する。検出された接触状態パターンの分類に応じて加工情報の補正方法を抽出し、加工情報を抽出した補正方法に基づいて補正する。
【選択図】図1
【解決手段】被切削物に関する物理的情報、被切削物を加工する工具に関する物理的情報、および被切削物を工具で加工するための加工情報を記憶する。被切削物に関する物理的情報、工具に関する物理的情報、および加工情報に基づいて、工具により被切削物を擬似的に加工する。このとき、擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する。工具接触状態検出部(320)は、被切削物を擬似的に加工したときの工具の先端部分と被切削物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。加工情報の補正方法を前記分類ごとに記憶する。検出された接触状態パターンの分類に応じて加工情報の補正方法を抽出し、加工情報を抽出した補正方法に基づいて補正する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、量産加工ラインの加工条件を最適化する加工条件最適化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、量産加工ラインの加工条件を最適化する試みが行われている。たとえば、下記特許文献1では、CADシステム上でツール材質を考慮した切削条件の最適化を図るとともに加工時間の検証をも容易にすることができるようにして、最適な加工軸の割り当てを決定している。また、引用文献2では、インターロックで関係付けられた動作部位の並行動作を検証し、後に続く側の動作部位のインターロック位置をサイクルタイム短縮の方向に修正できるようにして、サイクルタイムを最適に管理している。さらに、引用文献3では、加工軸割り当て情報が設定または変更されたとき自動的に早送り動作経路を算出できるようにして動作経路の最適化を図っている。さらに、引用文献4では、工程検討を自動化して煩雑な工程組み合わせ作業をコンピュータシステムで自動的に行えるようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−178646号公報
【特許文献2】
特開平10−249682号公報
【特許文献3】
特開平11−53015号公報
【特許文献4】
特開平11−245141号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、たとえば、シリンダヘッドやシリンダブロックなどの箱物の量産加工ラインでは、予定された生産台数をこなすため、各加工機械がサイクルタイム(制限時間)内に所望の加工作業を完了する必要がある。
【0005】
一般的に、加工時間を短くすればするほど1台の加工機械に割り当てることができる工程が増え、そのラインに設置する加工機械の台数を減らすことができるので、投資資金を削減することができる。
【0006】
ところが、シリンダヘッドやシリンダブロックは、要求される性能から穴あけ方向がその加工面に対して鉛直方向からでない場合がある。このような特殊な加工の加工時間を短くしようとすると、工具の負担が増大するため、工具の折損や加工精度の悪化が生じ、かえってそのラインの稼動効率が低下してしまう。
【0007】
工具の負担を低減するためには、加工速度を部分的に遅くすれば良いが、シリンダヘッドやシリンダブロックは加工穴が100〜150個と非常に多いため、特殊な加工を行う必要のある穴を設計図面から探し出し、投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させる最適な加工条件を設定することは、上記の引用文献1〜引用文献4の技術を参考にしても困難である。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消するために成されたものであり、量産加工ラインの加工条件を最適化する加工条件最適化装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる加工条件最適化装置は、物理的情報記憶手段、加工情報記憶手段および加工シミュレーション実行手段を有する。物理的情報記憶手段は、被加工物に関する物理的情報と当該被加工物を加工する工具に関する物理的情報を記憶する。加工情報記憶手段は、前記被加工物を当該工具で加工するための加工情報を記憶する。加工シミュレーション実行手段は、物理的情報記憶手段に記憶されている前記被加工物に関する物理的情報、前記工具に関する物理的情報、および加工情報記憶手段に記憶されている当該加工情報に基づいて、前記工具により前記被加工物を擬似的に加工する。
【0010】
また、本発明にかかる加工条件最適化装置は、接触状態パターン記憶手段、工具接触状態検出手段、加工情報補正方法記憶手段、加工情報補正方法抽出手段および加工情報補正実行手段を有する。接触状態パターン記憶手段は、擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する。工具接触状態検出手段は、前記被加工物を擬似的に加工したときの前記工具の先端部分と前記被加工物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。加工情報補正方法記憶手段は、前記加工情報の補正方法を前記分類ごとに記憶する。加工情報補正方法抽出手段は、検出された接触状態パターンの分類に応じて前記加工情報の補正方法を抽出する。加工情報補正実行手段は、前記加工情報を抽出した補正方法に基づいて補正する。
【0011】
このように、本発明にかかる加工条件最適化装置では、擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態に応じて、その工具でその被加工物を加工するための加工情報を最適な加工情報に補正することができるので、加工作業に対して投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させる最適な加工条件を設定することが可能になる。
【0012】
【発明の効果】
本発明の加工条件最適化装置によれば、工具の先端部分と被加工物との接触状態に応じて加工情報を補正するようにしたので、加工作業に対して最適な加工条件を設定することができ、投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる加工条件最適化装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる加工条件最適化装置の概略構成ブロック図である。本発明にかかる加工条件最適化装置は、入出力装置100、各種データベース200および制御装置300から構成される。
【0014】
入出力装置100は、キーボード110、ディスプレイ120、プリンタ130および入出力インターフェース140を有する。キーボード110は、たとえば、加工する工具を指定するときなどオペレータが各種の情報を制御装置300に提供するために使用する端末装置である。ディスプレイ120は、オペレータがキーボード110から入力した情報を表示したり、制御装置300で得られた各種の結果を表示したりするものである。プリンタ130は、制御装置300で得られた各種の結果をプリントするものである。入出力インターフェース140は、キーボード110、ディスプレイ120、プリンタ130を制御装置300と接続するものである。
【0015】
各種データベース200は、加工部位情報ファイル210、3D工具モデルファイル220、3D被切削物モデルファイル230、候補工具データベース240、接触状態パターンデータベース250、切削条件補正方法データベース260、工程設計変更方法データベース270および所要サイクルタイムファイル280を有する。
【0016】
加工部位情報ファイル210は、加工情報記憶手段として機能し、被加工物である被切削物を工具で加工するための加工情報を記憶する。加工部位情報ファイル210は、少なくとも図2に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、加工に用いる工具の種類(BBB、AAAなど)、その工具の材質(CCCなど)、その工具を用いて被切削物を加工するときの切削開始位置(たとえば原位置から120mm)、切削終了位置(たとえば原位置から400mm)、その工具の切削経路を意味する加工パス(0〜700mmまで直進)、その工具を早送りするときの速度と位置(原位置から120mmまではV=5000mm/minで送る)、その工具を切削送りする場合の速度と位置(原位置から120mmの位置から400mmまではF=2500mm/minで送る)を記憶している。
【0017】
3D工具モデルファイル220は、被切削物を加工する工具に関する物理的情報を記憶するものであって、少なくとも図3に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、加工に用いる工具の種類(BBBなど)、その工具の形状、その工具の寸法、その工具の材質を記憶している。3D被切削物モデルファイル230は、被切削物に関する物理的情報を記憶するものであって、少なくとも図4に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、被切削物の種類、その被切削物の形状、その被切削物の寸法、その被切削物の材質を記憶している。なお、3D工具モデルファイル220と3D被切削物モデルファイル230とは物理的情報記憶手段として機能する。
【0018】
候補工具データベース240は、候補工具記憶手段として機能し、被切削物を加工する際の候補となる工具を優先順位順に記憶する。候補工具データベース240は、少なくとも図5に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、候補工具の種類(BBB、AAAなど)を選択優先順位にしたがって記憶し、また、その候補工具の材質(CCC、DDDなど)を優先順位にしたがって記憶する。候補工具データベース240の内容によれば、工具種類(BBB)の材質(CCC)の候補工具の優先順位が一番高く、その次に優先順位が高いのは、工具種類(BBB)の材質(DDD)の候補工具となる。
【0019】
接触状態パターンデータベース250は、接触状態パターン記憶手段として機能し、被切削物を擬似的に加工する際の工具の先端部分と被切削物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する。接触状態パターンデータベース250は、少なくとも図6に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、加工する際の工具の先端部分と被切削物との接触状態(接触、抜け)を大分類と小分類とに大きく分類し、さらにその大きな分類を小さく複数に分類している。なお、本明細書において「接触状態」とは、工具の先端部分が被切削物に接触してからその内部に進入していく状態のみを意味するのではなく、その工具の先端部分が被切削物をその内部から外側に突き抜けていく状態をも含む意味で用いている。
【0020】
工具の先端部分と被切削物との接触状態は、工具の形状、被切削物の形状、加工パスによってそれぞれ異なる。工具の先端部分と被切削物との接触状態は、たとえば図12(A)に示すように、工具の先端部分に放射状の線分を設け、被切削物の加工中、それらの線分が被切削物にどれだけの時間接触しているかを調べることによって分類することができる。つまり、図12(A)に示すように、各線分の接触時間分布を求めることによって接触状態パターンを分類することができる。
【0021】
接触状態パターンデータベース250に記憶させる接触状態パターンは、加工の対象となる被切削物をそれぞれの工具で擬似的に加工し、その結果得られた各線分の接触時間分布をある一定の基準に基づいてオペレータが分類することによって生成される。
【0022】
たとえば、図12(B)に示すような形状の工具で同図に示したような形状の被切削物を切削したときの各線分の接触時間分布は同図に示したようなものとなり、図12(C)に示すような形状の工具で同図に示したような形状の被切削物を切削したときの各線分の接触時間分布は同図に示したようなものとなり、それぞれの接触時間分布の傾向は明らかに異なる。したがって、オペレータは接触時間分布の傾向の相違に基づいて接触状態パターンを分類し接触状態パターンデータベース250に記憶させる。上例の場合、図12(B)の接触状態パターンを大分類Aに、同図(C)の接触状態パターンを大分類Bに分類して記憶させる。
【0023】
なお、加工が終了に近づいていくときには、その工具の先端部分が被切削物をその内部から外側に突き抜けていくこともあるが、このときの接触時間分布の傾向は、抜けの大分類として分類し記憶させる。
【0024】
また、大分類としては同じような接触時間分布を呈していても、各線分の接触時間の絶対的な大きさが異なっていたり、線分間の時間差の傾向が異なっていたりする。オペレータはこのような傾向の相違を小分類として分類し接触状態パターンデータベース250に記憶させる。本実施の形態では、接触状態パターンデータベース250に、工具の先端部分が被切削物に接触してからその内部に進入していく場合の「接触」の大分類をA、B、C、Dの4種類に、その小分類を1、2、3の3種類に、さらに、工具の先端部分が被切削物をその内部から外側に突き抜けていく場合の「抜け」の大分類をN、O、P、Qの4種類に、その小分類を1、2、3の3種類に、それぞれ分類して記憶させている。
【0025】
切削条件補正方法データベース260は、加工情報補正方法記憶手段として機能し、加工情報の補正方法を接触状態パターンごとに記憶する。切削条件補正方法データベース260は、少なくとも図7に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、接触状態パターン大分類、接触状態パターン小分類および切削条件補正方法を工具別に記憶する。接触状態パターン大分類と接触状態パターン小分類は、接触状態パターンデータベース250に記憶されているものと対応している。切削条件補正方法は、擬似的な加工を行う際に、加工種類別に設定されている加工情報を補正するために用いられる。その内容としては、たとえば「50%減速」、「対応不可」、「そのままで可」、「70%減速」などがある。なお、このデータベースで分類されている工具は、工具の種類(工具種)と工具の材質(工具材質)とがキーとされている。したがって、同一の種類の工具であっても、その工具の材質が異なれば、このデータベースでは異なる工具となる。
【0026】
工程設計変更方法データベース270は、加工情報変更方法記憶手段として機能し、加工情報の変更方法を接触状態パターンごとに記憶する。工程設計変更方法データベース270は、少なくとも図8に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、接触状態パターン大分類、接触状態パターン小分類、工程設計パターン、工具種、工具材質および切削条件を記憶する。接触状態パターン大分類と接触状態パターン小分類は、接触状態パターンデータベース250に記憶されているものと対応している。工具設計パターンは、たとえば、前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる、前工程に穴径+2mmの穴加工を入れる、などの工程が例示できる。また、切削条件は、たとえば、早送り速度V=180m/min、切削送り速度F=1000mm/min、早送り速度V=300m/min、切削送り速度F=3000mm/minなどである。
【0027】
サイクルタイムファイル280は、所要サイクルタイム記憶手段として機能し、被切削物の加工に要するサイクルタイムを加工種類別に記憶する。サイクルタイムファイル280には、たとえば図9に示すように、加工種類ごとにその所要サイクルタイムが記憶されている。
【0028】
制御装置300は、加工シミュレーション実行部310、工具接触状態検出部320、切削条件補正方法抽出部330、加工パス補正実行部340、工程設計変更方法抽出部350、候補工具抽出部360、変更候補選定部370を有する。
【0029】
加工シミュレーション実行部310は、加工シミュレーション実行手段として機能し、被切削物に関する物理的情報、工具に関する物理的情報および加工情報に基づいて、工具により被切削物を擬似的に加工する。具体的には、加工シミュレーション実行部310は、加工部位情報ファイル210から必要な加工情報を取り出し、3D工具モデルファイル220から工具に関する形状や寸法(物理的情報)を取り出し、3D被切削物モデルファイル230から被切削物に関する形状や寸法(物理的情報)を取り出す。また、加工シミュレーション実行部310は、オペレータがキーボード110で指定した工具、被切削物の種類および工具の先端部分に設ける放射状の線分に関するデータを入力する。各ファイルから工具や被切削物に関する物理的情報を取り出す場合には、オペレータが指定した工具や被切削物の種類が考慮される。なお、この場合のキーボード110は工具指定手段として機能し、加工シミュレーション実行手段を構成するものである。
【0030】
加工シミュレーション実行部310は、入力した上記の加工情報、工具に関する形状や寸法、被切削物に関する形状や寸法に基づいて、指定された工具で指定された被切削物を加工する。また、入力された放射状の線分に関するデータに基づいて工具の先端部分に指定された放射状の線分を設定する。
【0031】
工具接触状態検出部320は、工具接触状態検出手段として機能し、加工シミュレーション実行部310が被切削物を擬似的に加工したときの工具の先端部分と被切削物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。工具接触状態検出部320は、この検出をするに当たって、工具の先端部分に設定された放射状の各線分が被切削物と接触している時間を計測し、図12(A)に示すような接触時間分布、すなわち接触状態パターンを求める。求めた接触状態パターンを接触状態パターンデータベース250に記憶されている接触状態パターンと比較し、求めた接触状態パターンがどの分類に属するのかを検出する。
【0032】
切削条件補正方法抽出部330は、加工情報補正方法抽出手段として機能し、検出された接触状態パターンの分類に応じて切削条件補正方法データベース260から該当する加工情報の補正方法を抽出する。切削条件補正方法抽出部330は、加工シミュレーション実行部310で最初に設定された加工情報を補正するための方法を抽出する。
【0033】
加工パス補正実行部340は、加工情報補正実行手段として機能し、切削条件補正方法抽出部330によって抽出された補正方法に基づいて、また、後述する工程設計変更方法抽出部350によって抽出された変更方法に基づいて、加工シミュレーション実行部310で最初に設定された加工情報を補正する。
【0034】
工程設計変更方法抽出部350は、加工情報変更方法抽出手段として機能し、検出された接触状態パターンの分類に応じて工程設計変更方法データベース270から該当する加工情報の変更方法を抽出する。工程設計変更方法抽出部350は、加工シミュレーション実行部310で最初に設定された加工情報を変更するための方法を抽出する。なお、工程設計変更方法抽出部350による加工情報の変更方法の抽出は、切削条件補正方法抽出部330で該当する補正方法が見つからなかった場合(「対応不可」の場合)のみに行われるようにしても良いし、補正方法が見つかるか見つからないにかかわらず常に行っても良い。
【0035】
候補工具抽出部360は、候補工具抽出手段として機能し、候補工具データベース240に記憶されている優先順位にしたがって擬似的に加工する際の工具を抽出する。抽出された工具は、加工シミュレーション実行部310または工程設計変更方法抽出部350に提供される。なお、候補工具抽出部360による工具の抽出は、切削条件補正方法抽出部330で該当する補正方法が見つからなかった場合に行われる。
【0036】
加工シミュレーション実行部310は、最初に設定された加工情報の補正、変更、工具の変更が行われた場合には、加工情報の補正方法に基づいて、加工情報の変更方法に基づいて、または抽出された工具を使用して、再度被切削物を擬似的に加工する。なお、加工シミュレーション実行部310は、被切削物を擬似的に加工する場合、それぞれの加工に要する時間の計測も行う。
【0037】
変更候補選定部370は、変更候補選定手段として機能し、切削条件補正方法抽出部330によって抽出された補正方法、または工程設計変更方法抽出部350によって抽出された加工情報の変更方法を、候補工具抽出部360によって抽出された工具を用いて加工シミュレーション実行部310で再度被切削物の加工を行った場合に、最も加工時間の短いものを変更候補として選定する。また、変更候補選定部370は、前述の変更候補の選定を行うに際して、所要サイクルタイムファイル280に記憶されているサイクルタイムも考慮して前記変更候補を選定する。したがって、最も加工時間が短いとして選択された方法などであっても、その加工時間がサイクルタイムを超えていれば、その方法は選択されないことになる。
【0038】
次に、図10、図11に示すフローチャートに基づいて図13以降の図面を参照しながら、本発明にかかる加工条件最適化装置の一連の動作を詳細に説明する。
【0039】
まず、オペレータはキーボード110から被切削物の種類とその被切削物を加工するための工具(工具種類、工具材質)とを指定し、後述する放射状の線分に関する情報を入力する(S1)。
【0040】
加工シミュレーション実行部310は、キーボード110で指定された工具を受けて、加工部位情報ファイル210から該当する工具に関する加工情報を取り出す。たとえば、指定された工具種類が「BBB」、工具材質が「CCC」であったときには、切削開始位置が120mm、切削終了位置が400mm、加工パスが0mmから700mm、早送りの速度が5000mm/min、早送りの範囲が原位置から120mm、切削送りの速度が2500mm/min、切削送りの範囲が120mmから400mmという加工情報を取り出す。また、加工シミュレーション実行部310は、キーボード110で指定された工具を受けて、3D工具モデルファイル220から該当する工具に関する物理的情報を取り出す。上述の場合、指定された工具種類が「BBB」、工具材質が「CCC」であるので、その工具形状、工具寸法を取り出す。工具形状、工具寸法は、加工シミュレーション実行部310で工具を3次元描画するために用いられる。さらに、加工シミュレーション実行部310は、キーボード110で指定された被切削物の種類を受けて、3D被切削物モデルファイル230から該当する被切削物に関する物理的情報を取り出す。たとえば、指定された被切削物の種類が「AB」であったときには、その被切削物形状、被切削物寸法、被切削物材質を取り出す。被切削物形状、被切削物寸法は、加工シミュレーション実行部310で被切削物を3次元描画するために用いられる。(S2)。
【0041】
加工シミュレーション実行部310は、取得した工具の物理的情報にしたがって工具を3次元描画し、その工具の先端部分、すなわち、被切削物に対して切削が行われる部分に、図13(A)に示すような放射状の線分222を設定する。放射状の線分に関する情報、具体的には、工具225のどの部分にどの程度の角度ごとに線分を設けるのかなどについての情報は、キーボード110から入力されているので、加工シミュレーション実行部310はこの情報に基づいて工具に放射状の線分を設定する。なお、この放射状の線分は、工具の先端部分と被切削物との接触時間分布を演算するために用いられる(S3)。
【0042】
加工シミュレーション実行部310は、取得した被切削物の物理的情報にしたがって被切削物を3次元描画し、その被切削物と既に3次元描画した工具とをあらかじめ定められている位置に据え、既に取得済みの加工情報にしたがって擬似的な加工、すなわち動作シミュレーションを実行する。加工シミュレーション実行部310が取得している加工情報は、切削開始位置が120mm、切削終了位置が400mm、加工パスが0mmから700mm、早送りの速度が5000mm/min、早送りの範囲が原位置から120mm、切削送りの速度が2500mm/min、切削送りの範囲が120mmから400mmというものである。したがって、図13(B)に示すように、工具225は、被切削物235に対し工具の原位置から切削開始位置120mmまでは5000mm/minの速度で早送りされ、その後は、工具の原位置から切削終了位置400mmまで2500mm/minの速度で切削送りされる。したがって、工具はまず原位置から早送りで前進し、その後切削送りに切り替わってゆっくりと前進し、あるタイミングで被切削物と接触し、その時点から切削加工が開始されることになる(S4)。
【0043】
工具接触状態検出部320は、加工シミュレーション実行部310で行われた動作シミュレーションの実行結果から、工具225に設定された放射状の各線分222と被切削物235との接触時間分布を演算する。図13(C)に示すように、被切削物235の被切削面が工具225の加工パス(進行方向)に対して傾斜している場合、すなわち、工具225の前進方向のベクトルと被切削物の被加工面の法線ベクトルとが一致していない場合には、切削開始時において、工具225の先端部分とその被切削面との当たりは同図に示すように偏ったものとなる。この偏りによって、各線分222における被切削物235との接触時間が異なってくる。各線分の接触時間は、被切削物235の被切削面に工具225の先端部分が接触したときから、工具225がさらに前進し工具の先端部分が被切削物235内に完全に入ったときまでの時間である。図13(C)に示したような切削を行ったときには、図12(A)に示すような接触時間分布が得られる(S5)。
【0044】
ちなみに、図12(B)に示すような隅にRがついている形状の被切削物を切削したときには、図12(A)とは異なる接触時間部分布が、また、図12(C)に示すような片削りが存在する切削をしたときには図12(A)、(B)とは異なる接触時間部分布がそれぞれ得られる。上記では、切削が開始される場合を説明しているが、たとえば通し穴をあける切削加工の場合には、切削が終了される場合の接触時間分布を求めることによって、工具の抜けのパターンを検出することも可能となる。
【0045】
工具接触状態検出部320は、演算された接触時間分布、すなわち接触状態のパターンを接触状態パターンデータベース250に記憶されている接触状態パターンと比較し、演算された接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。接触状態パターンデータベース250には図6に示すような分類が記憶されているので、工具接触状態検出部320はたとえば演算された接触状態のパターンを大分類がA、小分類が1の分類、すなわち「A−1」の分類に属していることを検出する(S6)。
【0046】
切削条件補正方法抽出部330は、工具接触状態検出部320で検出された接触状態パターンの分類に応じて切削条件補正方法データベース260から切削条件補正方法を取得する。図7に示すように、切削条件補正方法データベースには切削条件補正方法が工具別に記憶されているので、該当する切削条件補正方法を取得するため、切削条件補正方法抽出部330は加工シミュレーション実行部310から取得済みの工具(工具種類、工具材質)も取得する。したがって、切削条件補正方法抽出部330は、工具種類、工具材質および接触状態パターンの分類に基づいて切削条件補正方法を取得する。たとえば、上述の場合、指定された工具種類が「BBB」、工具材質が「CCC」であり、演算された接触状態のパターンの分類が「A−1」であるので、図7を参照すると、切削条件補正方法抽出部330は切削条件補正方法として、「50%減速」を取得することになる(S7)。
【0047】
切削条件補正方法抽出部330は、切削条件補正方法データベース260内に該当する切削条件補正方法があったか否かを判断する(S8)。該当する切削条件補正方法があったら(S8:YES)、切削条件補正方法抽出部330は、取得した切削条件補正方法が当初取得した加工情報の補正を要するものであるか否かを判断する(S9)。この判断の結果、取得した切削条件補正方法が当初取得した加工情報の補正を要しないものであれば、この処理を終了する。たとえば、切削条件補正方法抽出部330が取得した切削条件補正方法が図7に示す「そのままで可」である場合には、その補正が必要ではないので処理を終了する(S9:NO)。
【0048】
切削条件補正方法抽出部330が切削条件補正方法データベース260内で該当する切削条件補正方法を見つけることができなかったら(S8:NO)、切削条件補正方法抽出部330はその旨を候補工具抽出部360に知らせる。この知らせを受けた候補工具抽出部360は、候補工具データベース240から現在使用している工具よりも優先順位の低い工具を選択する。たとえば、現在使用している工具種類は「BBB」であるので、それよりも優先順位の低い工具種類「AAA」を選択する(S10)。そして、工具候補データベース240のすべての工具について取得が終了していなければ(S11:NO)、S1のステップに戻って以上の処理を繰り返す。なお、この場合S1のステップではキーボード110で指定された工具種類に替えて候補工具データベース240から取得した工具種類を設定する。つまり、現在使用している工具に対し該当する切削条件補正方法が存在しなければ、工具種類を替えて切削条件補正方法を探すことになる。
【0049】
また、S9のステップで、切削条件補正方法抽出部330が、取得した切削条件補正方法が当初取得した加工情報の補正を要するものであると判断したときには(S9:YES)、加工パス補正実行部340は、当初取得した加工情報を取得した切削条件補正方法にしたがって補正する。上述の場合、切削条件補正方法抽出部330が切削条件補正方法として、「50%減速」を取得しているので、加工パス補正実行部340は、加工シミュレーション実行部310が既に取得済みの加工情報の内、切削送りの速度を2500mm/minから1250mm/minに変更する。次に、加工パス補正実行部340は、この補正を適用する範囲が加工パスのどの範囲であるのかを演算する。この演算は、工具接触状態検出部320が工具の先端部分と被切削物との接触時間分布を求めたときの工具の先端部分と被切削物との接触状態に基づいて行われる。補正の適用範囲は、通常、工具の先端部分が被切削物と接触した位置から、工具の先端部分が被切削物の内部に潜り込むまでの範囲である。以上の補正によって、当初の加工情報は図14に示すように変更され、その処理が終了する。
【0050】
図14(A)に示してある加工情報は当初取得した加工情報であり、原位置から120mmまでは工具225が5000mm/minの速度で早送りされ、切削開始位置120mmから切削終了位置400mmまでは2500mm/minの速度で切削送りされる。ところが上記の処理が行われると、図14(B)に示すように、工具225の先端部分が被切削物235と接触した位置から、工具225の先端部分が被切削物235の内部に潜り込むまでの範囲、すなわち、図14(B)に示す食いつき開始位置から食いつき終了位置の範囲で切削送りの速度が減速される。したがって、補正後の加工情報によれば、原位置から120mmまでは工具225が5000mm/minの速度で早送りされ、たとえば、食いつき開始位置125mmから食いつき終了位置130mmの範囲では工具225が1250mm/minの速度で送られ、食いつき終了位置130mmから切削終了位置400mmまでは2500mm/minの速度で切削送りされる(S12)。
【0051】
また、S11のステップで補正工具データベース240に記憶されている工具をすべて取得してしまった場合には、指定した被切削物はどの工具を使用しても加工できないことになるので(S11:YES)、工程設計変更方法抽出部350は、工具接触状態検出部320で検出された接触状態パターンの分類に応じて工程設計変更方法データベース270から工程設計変更方法を取得する。図8に示すように、工程設計変更方法データベース270には工程設計変更方法(工程設計パターン、切削条件)が工具別に記憶されているので、該当する工程設計変更方法を取得するため、工程設計変更方法抽出部350は加工シミュレーション実行部310から取得済みの工具(工具種類、工具材質)も取得する。したがって、工程設計変更方法抽出部350は、工具種類、工具材質および接触状態パターンの分類に基づいて工程設計変更方法を取得する。たとえば、現在の工具種類が「BBB」、工具材質が「HHH」であり、演算された接触状態のパターンの分類が「A−2」であるとすると、図8に示すように、「前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる」、「切削条件がV=180m/min、F=1000mm/min」という工程を当所の加工条件に加える(S13)。工程設計変更方法抽出部350は、工程設計変更方法データベース270内に該当する工程設計変更方法があるか否かを判断する(S14)。該当する工程設計変更方法がなければ、指定した被切削物の切削は不可能であるので処理を終了する(S14:NO)。一方、該当する工程設計変更方法があれば(S14:YES)、工程設計変更方法抽出部350は、当初取得した加工情報を取得した工程設計変更方法にしたがって補正する。上述の場合、「前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる」、「切削条件がV=180m/min、F=1000mm/min」という工程を追加する工程設計変更方法を取得しているので、加工パス補正実行部340は、加工シミュレーション実行部310が既に取得済みの加工情報に上記の工程を追加する。この工程の追加によって加工情報は図15に示すように変更され、その処理が終了する。
【0052】
図15(A)に示してある加工情報は当初取得した加工情報であり、原位置から120mmまでは工具225が5000mm/minの速度で早送りされ、切削開始位置120mmから切削終了位置400mmまでは2500mm/minの速度で切削送りされる。ところが上記の処理が行われると、図15(B)に示すように、「前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる」との変更指示および、「切削条件がV=180m/min、F=1000mm/min」との変更指示により、穴径+5mmの座ぐりを行うための工具226を所定の位置まで180m/minの速度で早送りし、被切削物235に座ぐりを入れるためにその工具226を一定の範囲で1000mm/minの速度で切削送りする。座ぐり加工が完了したら、今度は工具225に替えて、その工具225を2500mm/minの速度で切削送りする(S15)。
【0053】
以上のフローチャートの処理によって、指定した被切削物を加工するために最も適した工具とその加工条件が自動的に決まる。したがって、加工作業に対して最適な加工条件を設定することができ、投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させることができる。
【0054】
また、上記のフローチャートでは1つの加工方法を選択するようにしたが、加工の前提条件を変えることによって複数の加工方法を選択肢として挙げておくこともできる。この場合、変更候補選択部370は、切削条件補正方法抽出部330によって抽出された補正方法、または工程設計変更方法抽出部350によって抽出された加工情報の変更方法を、候補工具抽出部360によって抽出された工具を用いて、加工シミュレーション実行部310で再度被切削物の加工を行った場合に、最も加工時間の短いものを変更候補として選定する。
【0055】
また、変更候補選定部370は、前述の変更候補の選定を行うに際して、所要サイクルタイムファイル280に記憶されている図9に示すようなサイクルタイムも考慮して前記変更候補を選定する。この選定は、加工時間が短い方を選択しても良いし、使用者が技術的な観点から選択するようにしてもよい。なお、最も加工時間が短いとして選択された方法であっても、その加工時間がサイクルタイムを超えていれば、その方法は選択されない。
【0056】
以上のように、本発明の加工条件最適化装置によれば、被切削物を切削するのに最適な工具とその加工条件を自動的に決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる加工条件最適化装置の概略構成ブロック図である。
【図2】図1に示した加工部位情報ファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図3】図1に示した3D工具モデルファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図4】図1に示した3D被切削物モデルファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図5】図1に示した工具候補データベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図6】図1に示した接触状態パターンデータベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図7】図1に示した切削条件補正方法データベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図8】図1に示した工程設計変更方法データベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図9】図1に示した所要サイクルタイムファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図10】本発明にかかる加工条件最適化装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明にかかる加工条件最適化装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】接触時間分布の説明に供する図である。
【図13】図10のフローチャートの動作説明に供する図である。
【図14】図11のフローチャートの動作説明に供する図である。
【図15】図11のフローチャートの動作説明に供する図である。
【符号の説明】
100…入出力装置、
110…キーボード、
120…ディスプレイ、
130…プリンタ、
140…入出力インターフェース、
200…各種データベース、
210…加工部位情報ファイル、
220…3D工具モデルファイル、
230…3D被切削物モデルファイル、
240…候補工具データベース、
250…接触状態パターンデータベース、
260…切削条件補正方法データベース、
270…工程設計変更方法データベース、
280…所要サイクルタイムファイル、
300…制御装置、
310…加工シミュレーション実行部、
320…工具接触状態検出部、
330…切削条件補正方法抽出部、
340…加工パス補正実行部、
350…工程設計変更方法抽出部、
360…候補工具抽出部、
370…変更候補選定部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、量産加工ラインの加工条件を最適化する加工条件最適化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、量産加工ラインの加工条件を最適化する試みが行われている。たとえば、下記特許文献1では、CADシステム上でツール材質を考慮した切削条件の最適化を図るとともに加工時間の検証をも容易にすることができるようにして、最適な加工軸の割り当てを決定している。また、引用文献2では、インターロックで関係付けられた動作部位の並行動作を検証し、後に続く側の動作部位のインターロック位置をサイクルタイム短縮の方向に修正できるようにして、サイクルタイムを最適に管理している。さらに、引用文献3では、加工軸割り当て情報が設定または変更されたとき自動的に早送り動作経路を算出できるようにして動作経路の最適化を図っている。さらに、引用文献4では、工程検討を自動化して煩雑な工程組み合わせ作業をコンピュータシステムで自動的に行えるようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−178646号公報
【特許文献2】
特開平10−249682号公報
【特許文献3】
特開平11−53015号公報
【特許文献4】
特開平11−245141号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、たとえば、シリンダヘッドやシリンダブロックなどの箱物の量産加工ラインでは、予定された生産台数をこなすため、各加工機械がサイクルタイム(制限時間)内に所望の加工作業を完了する必要がある。
【0005】
一般的に、加工時間を短くすればするほど1台の加工機械に割り当てることができる工程が増え、そのラインに設置する加工機械の台数を減らすことができるので、投資資金を削減することができる。
【0006】
ところが、シリンダヘッドやシリンダブロックは、要求される性能から穴あけ方向がその加工面に対して鉛直方向からでない場合がある。このような特殊な加工の加工時間を短くしようとすると、工具の負担が増大するため、工具の折損や加工精度の悪化が生じ、かえってそのラインの稼動効率が低下してしまう。
【0007】
工具の負担を低減するためには、加工速度を部分的に遅くすれば良いが、シリンダヘッドやシリンダブロックは加工穴が100〜150個と非常に多いため、特殊な加工を行う必要のある穴を設計図面から探し出し、投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させる最適な加工条件を設定することは、上記の引用文献1〜引用文献4の技術を参考にしても困難である。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消するために成されたものであり、量産加工ラインの加工条件を最適化する加工条件最適化装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる加工条件最適化装置は、物理的情報記憶手段、加工情報記憶手段および加工シミュレーション実行手段を有する。物理的情報記憶手段は、被加工物に関する物理的情報と当該被加工物を加工する工具に関する物理的情報を記憶する。加工情報記憶手段は、前記被加工物を当該工具で加工するための加工情報を記憶する。加工シミュレーション実行手段は、物理的情報記憶手段に記憶されている前記被加工物に関する物理的情報、前記工具に関する物理的情報、および加工情報記憶手段に記憶されている当該加工情報に基づいて、前記工具により前記被加工物を擬似的に加工する。
【0010】
また、本発明にかかる加工条件最適化装置は、接触状態パターン記憶手段、工具接触状態検出手段、加工情報補正方法記憶手段、加工情報補正方法抽出手段および加工情報補正実行手段を有する。接触状態パターン記憶手段は、擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する。工具接触状態検出手段は、前記被加工物を擬似的に加工したときの前記工具の先端部分と前記被加工物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。加工情報補正方法記憶手段は、前記加工情報の補正方法を前記分類ごとに記憶する。加工情報補正方法抽出手段は、検出された接触状態パターンの分類に応じて前記加工情報の補正方法を抽出する。加工情報補正実行手段は、前記加工情報を抽出した補正方法に基づいて補正する。
【0011】
このように、本発明にかかる加工条件最適化装置では、擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態に応じて、その工具でその被加工物を加工するための加工情報を最適な加工情報に補正することができるので、加工作業に対して投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させる最適な加工条件を設定することが可能になる。
【0012】
【発明の効果】
本発明の加工条件最適化装置によれば、工具の先端部分と被加工物との接触状態に応じて加工情報を補正するようにしたので、加工作業に対して最適な加工条件を設定することができ、投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる加工条件最適化装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる加工条件最適化装置の概略構成ブロック図である。本発明にかかる加工条件最適化装置は、入出力装置100、各種データベース200および制御装置300から構成される。
【0014】
入出力装置100は、キーボード110、ディスプレイ120、プリンタ130および入出力インターフェース140を有する。キーボード110は、たとえば、加工する工具を指定するときなどオペレータが各種の情報を制御装置300に提供するために使用する端末装置である。ディスプレイ120は、オペレータがキーボード110から入力した情報を表示したり、制御装置300で得られた各種の結果を表示したりするものである。プリンタ130は、制御装置300で得られた各種の結果をプリントするものである。入出力インターフェース140は、キーボード110、ディスプレイ120、プリンタ130を制御装置300と接続するものである。
【0015】
各種データベース200は、加工部位情報ファイル210、3D工具モデルファイル220、3D被切削物モデルファイル230、候補工具データベース240、接触状態パターンデータベース250、切削条件補正方法データベース260、工程設計変更方法データベース270および所要サイクルタイムファイル280を有する。
【0016】
加工部位情報ファイル210は、加工情報記憶手段として機能し、被加工物である被切削物を工具で加工するための加工情報を記憶する。加工部位情報ファイル210は、少なくとも図2に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、加工に用いる工具の種類(BBB、AAAなど)、その工具の材質(CCCなど)、その工具を用いて被切削物を加工するときの切削開始位置(たとえば原位置から120mm)、切削終了位置(たとえば原位置から400mm)、その工具の切削経路を意味する加工パス(0〜700mmまで直進)、その工具を早送りするときの速度と位置(原位置から120mmまではV=5000mm/minで送る)、その工具を切削送りする場合の速度と位置(原位置から120mmの位置から400mmまではF=2500mm/minで送る)を記憶している。
【0017】
3D工具モデルファイル220は、被切削物を加工する工具に関する物理的情報を記憶するものであって、少なくとも図3に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、加工に用いる工具の種類(BBBなど)、その工具の形状、その工具の寸法、その工具の材質を記憶している。3D被切削物モデルファイル230は、被切削物に関する物理的情報を記憶するものであって、少なくとも図4に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、被切削物の種類、その被切削物の形状、その被切削物の寸法、その被切削物の材質を記憶している。なお、3D工具モデルファイル220と3D被切削物モデルファイル230とは物理的情報記憶手段として機能する。
【0018】
候補工具データベース240は、候補工具記憶手段として機能し、被切削物を加工する際の候補となる工具を優先順位順に記憶する。候補工具データベース240は、少なくとも図5に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、候補工具の種類(BBB、AAAなど)を選択優先順位にしたがって記憶し、また、その候補工具の材質(CCC、DDDなど)を優先順位にしたがって記憶する。候補工具データベース240の内容によれば、工具種類(BBB)の材質(CCC)の候補工具の優先順位が一番高く、その次に優先順位が高いのは、工具種類(BBB)の材質(DDD)の候補工具となる。
【0019】
接触状態パターンデータベース250は、接触状態パターン記憶手段として機能し、被切削物を擬似的に加工する際の工具の先端部分と被切削物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する。接触状態パターンデータベース250は、少なくとも図6に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、加工する際の工具の先端部分と被切削物との接触状態(接触、抜け)を大分類と小分類とに大きく分類し、さらにその大きな分類を小さく複数に分類している。なお、本明細書において「接触状態」とは、工具の先端部分が被切削物に接触してからその内部に進入していく状態のみを意味するのではなく、その工具の先端部分が被切削物をその内部から外側に突き抜けていく状態をも含む意味で用いている。
【0020】
工具の先端部分と被切削物との接触状態は、工具の形状、被切削物の形状、加工パスによってそれぞれ異なる。工具の先端部分と被切削物との接触状態は、たとえば図12(A)に示すように、工具の先端部分に放射状の線分を設け、被切削物の加工中、それらの線分が被切削物にどれだけの時間接触しているかを調べることによって分類することができる。つまり、図12(A)に示すように、各線分の接触時間分布を求めることによって接触状態パターンを分類することができる。
【0021】
接触状態パターンデータベース250に記憶させる接触状態パターンは、加工の対象となる被切削物をそれぞれの工具で擬似的に加工し、その結果得られた各線分の接触時間分布をある一定の基準に基づいてオペレータが分類することによって生成される。
【0022】
たとえば、図12(B)に示すような形状の工具で同図に示したような形状の被切削物を切削したときの各線分の接触時間分布は同図に示したようなものとなり、図12(C)に示すような形状の工具で同図に示したような形状の被切削物を切削したときの各線分の接触時間分布は同図に示したようなものとなり、それぞれの接触時間分布の傾向は明らかに異なる。したがって、オペレータは接触時間分布の傾向の相違に基づいて接触状態パターンを分類し接触状態パターンデータベース250に記憶させる。上例の場合、図12(B)の接触状態パターンを大分類Aに、同図(C)の接触状態パターンを大分類Bに分類して記憶させる。
【0023】
なお、加工が終了に近づいていくときには、その工具の先端部分が被切削物をその内部から外側に突き抜けていくこともあるが、このときの接触時間分布の傾向は、抜けの大分類として分類し記憶させる。
【0024】
また、大分類としては同じような接触時間分布を呈していても、各線分の接触時間の絶対的な大きさが異なっていたり、線分間の時間差の傾向が異なっていたりする。オペレータはこのような傾向の相違を小分類として分類し接触状態パターンデータベース250に記憶させる。本実施の形態では、接触状態パターンデータベース250に、工具の先端部分が被切削物に接触してからその内部に進入していく場合の「接触」の大分類をA、B、C、Dの4種類に、その小分類を1、2、3の3種類に、さらに、工具の先端部分が被切削物をその内部から外側に突き抜けていく場合の「抜け」の大分類をN、O、P、Qの4種類に、その小分類を1、2、3の3種類に、それぞれ分類して記憶させている。
【0025】
切削条件補正方法データベース260は、加工情報補正方法記憶手段として機能し、加工情報の補正方法を接触状態パターンごとに記憶する。切削条件補正方法データベース260は、少なくとも図7に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、接触状態パターン大分類、接触状態パターン小分類および切削条件補正方法を工具別に記憶する。接触状態パターン大分類と接触状態パターン小分類は、接触状態パターンデータベース250に記憶されているものと対応している。切削条件補正方法は、擬似的な加工を行う際に、加工種類別に設定されている加工情報を補正するために用いられる。その内容としては、たとえば「50%減速」、「対応不可」、「そのままで可」、「70%減速」などがある。なお、このデータベースで分類されている工具は、工具の種類(工具種)と工具の材質(工具材質)とがキーとされている。したがって、同一の種類の工具であっても、その工具の材質が異なれば、このデータベースでは異なる工具となる。
【0026】
工程設計変更方法データベース270は、加工情報変更方法記憶手段として機能し、加工情報の変更方法を接触状態パターンごとに記憶する。工程設計変更方法データベース270は、少なくとも図8に示すような内容の情報を記憶している。すなわち、接触状態パターン大分類、接触状態パターン小分類、工程設計パターン、工具種、工具材質および切削条件を記憶する。接触状態パターン大分類と接触状態パターン小分類は、接触状態パターンデータベース250に記憶されているものと対応している。工具設計パターンは、たとえば、前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる、前工程に穴径+2mmの穴加工を入れる、などの工程が例示できる。また、切削条件は、たとえば、早送り速度V=180m/min、切削送り速度F=1000mm/min、早送り速度V=300m/min、切削送り速度F=3000mm/minなどである。
【0027】
サイクルタイムファイル280は、所要サイクルタイム記憶手段として機能し、被切削物の加工に要するサイクルタイムを加工種類別に記憶する。サイクルタイムファイル280には、たとえば図9に示すように、加工種類ごとにその所要サイクルタイムが記憶されている。
【0028】
制御装置300は、加工シミュレーション実行部310、工具接触状態検出部320、切削条件補正方法抽出部330、加工パス補正実行部340、工程設計変更方法抽出部350、候補工具抽出部360、変更候補選定部370を有する。
【0029】
加工シミュレーション実行部310は、加工シミュレーション実行手段として機能し、被切削物に関する物理的情報、工具に関する物理的情報および加工情報に基づいて、工具により被切削物を擬似的に加工する。具体的には、加工シミュレーション実行部310は、加工部位情報ファイル210から必要な加工情報を取り出し、3D工具モデルファイル220から工具に関する形状や寸法(物理的情報)を取り出し、3D被切削物モデルファイル230から被切削物に関する形状や寸法(物理的情報)を取り出す。また、加工シミュレーション実行部310は、オペレータがキーボード110で指定した工具、被切削物の種類および工具の先端部分に設ける放射状の線分に関するデータを入力する。各ファイルから工具や被切削物に関する物理的情報を取り出す場合には、オペレータが指定した工具や被切削物の種類が考慮される。なお、この場合のキーボード110は工具指定手段として機能し、加工シミュレーション実行手段を構成するものである。
【0030】
加工シミュレーション実行部310は、入力した上記の加工情報、工具に関する形状や寸法、被切削物に関する形状や寸法に基づいて、指定された工具で指定された被切削物を加工する。また、入力された放射状の線分に関するデータに基づいて工具の先端部分に指定された放射状の線分を設定する。
【0031】
工具接触状態検出部320は、工具接触状態検出手段として機能し、加工シミュレーション実行部310が被切削物を擬似的に加工したときの工具の先端部分と被切削物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。工具接触状態検出部320は、この検出をするに当たって、工具の先端部分に設定された放射状の各線分が被切削物と接触している時間を計測し、図12(A)に示すような接触時間分布、すなわち接触状態パターンを求める。求めた接触状態パターンを接触状態パターンデータベース250に記憶されている接触状態パターンと比較し、求めた接触状態パターンがどの分類に属するのかを検出する。
【0032】
切削条件補正方法抽出部330は、加工情報補正方法抽出手段として機能し、検出された接触状態パターンの分類に応じて切削条件補正方法データベース260から該当する加工情報の補正方法を抽出する。切削条件補正方法抽出部330は、加工シミュレーション実行部310で最初に設定された加工情報を補正するための方法を抽出する。
【0033】
加工パス補正実行部340は、加工情報補正実行手段として機能し、切削条件補正方法抽出部330によって抽出された補正方法に基づいて、また、後述する工程設計変更方法抽出部350によって抽出された変更方法に基づいて、加工シミュレーション実行部310で最初に設定された加工情報を補正する。
【0034】
工程設計変更方法抽出部350は、加工情報変更方法抽出手段として機能し、検出された接触状態パターンの分類に応じて工程設計変更方法データベース270から該当する加工情報の変更方法を抽出する。工程設計変更方法抽出部350は、加工シミュレーション実行部310で最初に設定された加工情報を変更するための方法を抽出する。なお、工程設計変更方法抽出部350による加工情報の変更方法の抽出は、切削条件補正方法抽出部330で該当する補正方法が見つからなかった場合(「対応不可」の場合)のみに行われるようにしても良いし、補正方法が見つかるか見つからないにかかわらず常に行っても良い。
【0035】
候補工具抽出部360は、候補工具抽出手段として機能し、候補工具データベース240に記憶されている優先順位にしたがって擬似的に加工する際の工具を抽出する。抽出された工具は、加工シミュレーション実行部310または工程設計変更方法抽出部350に提供される。なお、候補工具抽出部360による工具の抽出は、切削条件補正方法抽出部330で該当する補正方法が見つからなかった場合に行われる。
【0036】
加工シミュレーション実行部310は、最初に設定された加工情報の補正、変更、工具の変更が行われた場合には、加工情報の補正方法に基づいて、加工情報の変更方法に基づいて、または抽出された工具を使用して、再度被切削物を擬似的に加工する。なお、加工シミュレーション実行部310は、被切削物を擬似的に加工する場合、それぞれの加工に要する時間の計測も行う。
【0037】
変更候補選定部370は、変更候補選定手段として機能し、切削条件補正方法抽出部330によって抽出された補正方法、または工程設計変更方法抽出部350によって抽出された加工情報の変更方法を、候補工具抽出部360によって抽出された工具を用いて加工シミュレーション実行部310で再度被切削物の加工を行った場合に、最も加工時間の短いものを変更候補として選定する。また、変更候補選定部370は、前述の変更候補の選定を行うに際して、所要サイクルタイムファイル280に記憶されているサイクルタイムも考慮して前記変更候補を選定する。したがって、最も加工時間が短いとして選択された方法などであっても、その加工時間がサイクルタイムを超えていれば、その方法は選択されないことになる。
【0038】
次に、図10、図11に示すフローチャートに基づいて図13以降の図面を参照しながら、本発明にかかる加工条件最適化装置の一連の動作を詳細に説明する。
【0039】
まず、オペレータはキーボード110から被切削物の種類とその被切削物を加工するための工具(工具種類、工具材質)とを指定し、後述する放射状の線分に関する情報を入力する(S1)。
【0040】
加工シミュレーション実行部310は、キーボード110で指定された工具を受けて、加工部位情報ファイル210から該当する工具に関する加工情報を取り出す。たとえば、指定された工具種類が「BBB」、工具材質が「CCC」であったときには、切削開始位置が120mm、切削終了位置が400mm、加工パスが0mmから700mm、早送りの速度が5000mm/min、早送りの範囲が原位置から120mm、切削送りの速度が2500mm/min、切削送りの範囲が120mmから400mmという加工情報を取り出す。また、加工シミュレーション実行部310は、キーボード110で指定された工具を受けて、3D工具モデルファイル220から該当する工具に関する物理的情報を取り出す。上述の場合、指定された工具種類が「BBB」、工具材質が「CCC」であるので、その工具形状、工具寸法を取り出す。工具形状、工具寸法は、加工シミュレーション実行部310で工具を3次元描画するために用いられる。さらに、加工シミュレーション実行部310は、キーボード110で指定された被切削物の種類を受けて、3D被切削物モデルファイル230から該当する被切削物に関する物理的情報を取り出す。たとえば、指定された被切削物の種類が「AB」であったときには、その被切削物形状、被切削物寸法、被切削物材質を取り出す。被切削物形状、被切削物寸法は、加工シミュレーション実行部310で被切削物を3次元描画するために用いられる。(S2)。
【0041】
加工シミュレーション実行部310は、取得した工具の物理的情報にしたがって工具を3次元描画し、その工具の先端部分、すなわち、被切削物に対して切削が行われる部分に、図13(A)に示すような放射状の線分222を設定する。放射状の線分に関する情報、具体的には、工具225のどの部分にどの程度の角度ごとに線分を設けるのかなどについての情報は、キーボード110から入力されているので、加工シミュレーション実行部310はこの情報に基づいて工具に放射状の線分を設定する。なお、この放射状の線分は、工具の先端部分と被切削物との接触時間分布を演算するために用いられる(S3)。
【0042】
加工シミュレーション実行部310は、取得した被切削物の物理的情報にしたがって被切削物を3次元描画し、その被切削物と既に3次元描画した工具とをあらかじめ定められている位置に据え、既に取得済みの加工情報にしたがって擬似的な加工、すなわち動作シミュレーションを実行する。加工シミュレーション実行部310が取得している加工情報は、切削開始位置が120mm、切削終了位置が400mm、加工パスが0mmから700mm、早送りの速度が5000mm/min、早送りの範囲が原位置から120mm、切削送りの速度が2500mm/min、切削送りの範囲が120mmから400mmというものである。したがって、図13(B)に示すように、工具225は、被切削物235に対し工具の原位置から切削開始位置120mmまでは5000mm/minの速度で早送りされ、その後は、工具の原位置から切削終了位置400mmまで2500mm/minの速度で切削送りされる。したがって、工具はまず原位置から早送りで前進し、その後切削送りに切り替わってゆっくりと前進し、あるタイミングで被切削物と接触し、その時点から切削加工が開始されることになる(S4)。
【0043】
工具接触状態検出部320は、加工シミュレーション実行部310で行われた動作シミュレーションの実行結果から、工具225に設定された放射状の各線分222と被切削物235との接触時間分布を演算する。図13(C)に示すように、被切削物235の被切削面が工具225の加工パス(進行方向)に対して傾斜している場合、すなわち、工具225の前進方向のベクトルと被切削物の被加工面の法線ベクトルとが一致していない場合には、切削開始時において、工具225の先端部分とその被切削面との当たりは同図に示すように偏ったものとなる。この偏りによって、各線分222における被切削物235との接触時間が異なってくる。各線分の接触時間は、被切削物235の被切削面に工具225の先端部分が接触したときから、工具225がさらに前進し工具の先端部分が被切削物235内に完全に入ったときまでの時間である。図13(C)に示したような切削を行ったときには、図12(A)に示すような接触時間分布が得られる(S5)。
【0044】
ちなみに、図12(B)に示すような隅にRがついている形状の被切削物を切削したときには、図12(A)とは異なる接触時間部分布が、また、図12(C)に示すような片削りが存在する切削をしたときには図12(A)、(B)とは異なる接触時間部分布がそれぞれ得られる。上記では、切削が開始される場合を説明しているが、たとえば通し穴をあける切削加工の場合には、切削が終了される場合の接触時間分布を求めることによって、工具の抜けのパターンを検出することも可能となる。
【0045】
工具接触状態検出部320は、演算された接触時間分布、すなわち接触状態のパターンを接触状態パターンデータベース250に記憶されている接触状態パターンと比較し、演算された接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する。接触状態パターンデータベース250には図6に示すような分類が記憶されているので、工具接触状態検出部320はたとえば演算された接触状態のパターンを大分類がA、小分類が1の分類、すなわち「A−1」の分類に属していることを検出する(S6)。
【0046】
切削条件補正方法抽出部330は、工具接触状態検出部320で検出された接触状態パターンの分類に応じて切削条件補正方法データベース260から切削条件補正方法を取得する。図7に示すように、切削条件補正方法データベースには切削条件補正方法が工具別に記憶されているので、該当する切削条件補正方法を取得するため、切削条件補正方法抽出部330は加工シミュレーション実行部310から取得済みの工具(工具種類、工具材質)も取得する。したがって、切削条件補正方法抽出部330は、工具種類、工具材質および接触状態パターンの分類に基づいて切削条件補正方法を取得する。たとえば、上述の場合、指定された工具種類が「BBB」、工具材質が「CCC」であり、演算された接触状態のパターンの分類が「A−1」であるので、図7を参照すると、切削条件補正方法抽出部330は切削条件補正方法として、「50%減速」を取得することになる(S7)。
【0047】
切削条件補正方法抽出部330は、切削条件補正方法データベース260内に該当する切削条件補正方法があったか否かを判断する(S8)。該当する切削条件補正方法があったら(S8:YES)、切削条件補正方法抽出部330は、取得した切削条件補正方法が当初取得した加工情報の補正を要するものであるか否かを判断する(S9)。この判断の結果、取得した切削条件補正方法が当初取得した加工情報の補正を要しないものであれば、この処理を終了する。たとえば、切削条件補正方法抽出部330が取得した切削条件補正方法が図7に示す「そのままで可」である場合には、その補正が必要ではないので処理を終了する(S9:NO)。
【0048】
切削条件補正方法抽出部330が切削条件補正方法データベース260内で該当する切削条件補正方法を見つけることができなかったら(S8:NO)、切削条件補正方法抽出部330はその旨を候補工具抽出部360に知らせる。この知らせを受けた候補工具抽出部360は、候補工具データベース240から現在使用している工具よりも優先順位の低い工具を選択する。たとえば、現在使用している工具種類は「BBB」であるので、それよりも優先順位の低い工具種類「AAA」を選択する(S10)。そして、工具候補データベース240のすべての工具について取得が終了していなければ(S11:NO)、S1のステップに戻って以上の処理を繰り返す。なお、この場合S1のステップではキーボード110で指定された工具種類に替えて候補工具データベース240から取得した工具種類を設定する。つまり、現在使用している工具に対し該当する切削条件補正方法が存在しなければ、工具種類を替えて切削条件補正方法を探すことになる。
【0049】
また、S9のステップで、切削条件補正方法抽出部330が、取得した切削条件補正方法が当初取得した加工情報の補正を要するものであると判断したときには(S9:YES)、加工パス補正実行部340は、当初取得した加工情報を取得した切削条件補正方法にしたがって補正する。上述の場合、切削条件補正方法抽出部330が切削条件補正方法として、「50%減速」を取得しているので、加工パス補正実行部340は、加工シミュレーション実行部310が既に取得済みの加工情報の内、切削送りの速度を2500mm/minから1250mm/minに変更する。次に、加工パス補正実行部340は、この補正を適用する範囲が加工パスのどの範囲であるのかを演算する。この演算は、工具接触状態検出部320が工具の先端部分と被切削物との接触時間分布を求めたときの工具の先端部分と被切削物との接触状態に基づいて行われる。補正の適用範囲は、通常、工具の先端部分が被切削物と接触した位置から、工具の先端部分が被切削物の内部に潜り込むまでの範囲である。以上の補正によって、当初の加工情報は図14に示すように変更され、その処理が終了する。
【0050】
図14(A)に示してある加工情報は当初取得した加工情報であり、原位置から120mmまでは工具225が5000mm/minの速度で早送りされ、切削開始位置120mmから切削終了位置400mmまでは2500mm/minの速度で切削送りされる。ところが上記の処理が行われると、図14(B)に示すように、工具225の先端部分が被切削物235と接触した位置から、工具225の先端部分が被切削物235の内部に潜り込むまでの範囲、すなわち、図14(B)に示す食いつき開始位置から食いつき終了位置の範囲で切削送りの速度が減速される。したがって、補正後の加工情報によれば、原位置から120mmまでは工具225が5000mm/minの速度で早送りされ、たとえば、食いつき開始位置125mmから食いつき終了位置130mmの範囲では工具225が1250mm/minの速度で送られ、食いつき終了位置130mmから切削終了位置400mmまでは2500mm/minの速度で切削送りされる(S12)。
【0051】
また、S11のステップで補正工具データベース240に記憶されている工具をすべて取得してしまった場合には、指定した被切削物はどの工具を使用しても加工できないことになるので(S11:YES)、工程設計変更方法抽出部350は、工具接触状態検出部320で検出された接触状態パターンの分類に応じて工程設計変更方法データベース270から工程設計変更方法を取得する。図8に示すように、工程設計変更方法データベース270には工程設計変更方法(工程設計パターン、切削条件)が工具別に記憶されているので、該当する工程設計変更方法を取得するため、工程設計変更方法抽出部350は加工シミュレーション実行部310から取得済みの工具(工具種類、工具材質)も取得する。したがって、工程設計変更方法抽出部350は、工具種類、工具材質および接触状態パターンの分類に基づいて工程設計変更方法を取得する。たとえば、現在の工具種類が「BBB」、工具材質が「HHH」であり、演算された接触状態のパターンの分類が「A−2」であるとすると、図8に示すように、「前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる」、「切削条件がV=180m/min、F=1000mm/min」という工程を当所の加工条件に加える(S13)。工程設計変更方法抽出部350は、工程設計変更方法データベース270内に該当する工程設計変更方法があるか否かを判断する(S14)。該当する工程設計変更方法がなければ、指定した被切削物の切削は不可能であるので処理を終了する(S14:NO)。一方、該当する工程設計変更方法があれば(S14:YES)、工程設計変更方法抽出部350は、当初取得した加工情報を取得した工程設計変更方法にしたがって補正する。上述の場合、「前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる」、「切削条件がV=180m/min、F=1000mm/min」という工程を追加する工程設計変更方法を取得しているので、加工パス補正実行部340は、加工シミュレーション実行部310が既に取得済みの加工情報に上記の工程を追加する。この工程の追加によって加工情報は図15に示すように変更され、その処理が終了する。
【0052】
図15(A)に示してある加工情報は当初取得した加工情報であり、原位置から120mmまでは工具225が5000mm/minの速度で早送りされ、切削開始位置120mmから切削終了位置400mmまでは2500mm/minの速度で切削送りされる。ところが上記の処理が行われると、図15(B)に示すように、「前工程に穴径+5mmの座ぐり加工を入れる」との変更指示および、「切削条件がV=180m/min、F=1000mm/min」との変更指示により、穴径+5mmの座ぐりを行うための工具226を所定の位置まで180m/minの速度で早送りし、被切削物235に座ぐりを入れるためにその工具226を一定の範囲で1000mm/minの速度で切削送りする。座ぐり加工が完了したら、今度は工具225に替えて、その工具225を2500mm/minの速度で切削送りする(S15)。
【0053】
以上のフローチャートの処理によって、指定した被切削物を加工するために最も適した工具とその加工条件が自動的に決まる。したがって、加工作業に対して最適な加工条件を設定することができ、投資資金の削減とラインの稼働率の向上とを両立させることができる。
【0054】
また、上記のフローチャートでは1つの加工方法を選択するようにしたが、加工の前提条件を変えることによって複数の加工方法を選択肢として挙げておくこともできる。この場合、変更候補選択部370は、切削条件補正方法抽出部330によって抽出された補正方法、または工程設計変更方法抽出部350によって抽出された加工情報の変更方法を、候補工具抽出部360によって抽出された工具を用いて、加工シミュレーション実行部310で再度被切削物の加工を行った場合に、最も加工時間の短いものを変更候補として選定する。
【0055】
また、変更候補選定部370は、前述の変更候補の選定を行うに際して、所要サイクルタイムファイル280に記憶されている図9に示すようなサイクルタイムも考慮して前記変更候補を選定する。この選定は、加工時間が短い方を選択しても良いし、使用者が技術的な観点から選択するようにしてもよい。なお、最も加工時間が短いとして選択された方法であっても、その加工時間がサイクルタイムを超えていれば、その方法は選択されない。
【0056】
以上のように、本発明の加工条件最適化装置によれば、被切削物を切削するのに最適な工具とその加工条件を自動的に決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる加工条件最適化装置の概略構成ブロック図である。
【図2】図1に示した加工部位情報ファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図3】図1に示した3D工具モデルファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図4】図1に示した3D被切削物モデルファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図5】図1に示した工具候補データベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図6】図1に示した接触状態パターンデータベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図7】図1に示した切削条件補正方法データベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図8】図1に示した工程設計変更方法データベースに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図9】図1に示した所要サイクルタイムファイルに記憶されている情報の内容を示す図である。
【図10】本発明にかかる加工条件最適化装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明にかかる加工条件最適化装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】接触時間分布の説明に供する図である。
【図13】図10のフローチャートの動作説明に供する図である。
【図14】図11のフローチャートの動作説明に供する図である。
【図15】図11のフローチャートの動作説明に供する図である。
【符号の説明】
100…入出力装置、
110…キーボード、
120…ディスプレイ、
130…プリンタ、
140…入出力インターフェース、
200…各種データベース、
210…加工部位情報ファイル、
220…3D工具モデルファイル、
230…3D被切削物モデルファイル、
240…候補工具データベース、
250…接触状態パターンデータベース、
260…切削条件補正方法データベース、
270…工程設計変更方法データベース、
280…所要サイクルタイムファイル、
300…制御装置、
310…加工シミュレーション実行部、
320…工具接触状態検出部、
330…切削条件補正方法抽出部、
340…加工パス補正実行部、
350…工程設計変更方法抽出部、
360…候補工具抽出部、
370…変更候補選定部。
Claims (8)
- 被加工物に関する物理的情報と当該被加工物を加工する工具に関する物理的情報を記憶する物理的情報記憶手段と、
前記被加工物を当該工具で加工するための加工情報を記憶する加工情報記憶手段と、
前記被加工物に関する物理的情報、前記工具に関する物理的情報および当該加工情報に基づいて、前記工具により前記被加工物を擬似的に加工する加工シミュレーション実行手段と、
擬似的に加工する際の工具の先端部分と被加工物との接触状態をパターンごとに分類して記憶する接触状態パターン記憶手段と、
前記被加工物を擬似的に加工したときの前記工具の先端部分と前記被加工物との接触状態のパターンがどの分類に属するのかを検出する工具接触状態検出手段と、
前記加工情報の補正方法を前記分類ごとに記憶する加工情報補正方法記憶手段と、
検出された接触状態パターンの分類に応じて前記加工情報の補正方法を抽出する加工情報補正方法抽出手段と、
前記加工情報を抽出した補正方法に基づいて補正する加工情報補正実行手段と、
を有することを特徴とする加工条件最適化装置。 - 前記加工シミュレーション実行手段は、前記被加工物を加工する工具を指定する工具指定手段を有することを特徴とする請求項1記載の加工条件最適化装置。
- さらに、加工情報の変更方法を前記分類ごとに記憶する加工情報変更方法記憶手段と、
検出された接触状態パターンの分類に応じて前記加工情報の変更方法を抽出する加工情報変更方法抽出手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の加工条件最適化装置。 - さらに、前記被加工物を加工する際の候補となる工具を優先順位順に記憶する候補工具記憶手段と、
前記優先順位にしたがって擬似的に加工する際の工具を抽出する候補工具抽出手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の加工条件最適化装置。 - 前記加工シミュレーション実行手段は、
前記加工情報補正方法抽出手段によって抽出された加工情報の補正方法に基づいて、または前記加工情報変更方法抽出手段によって抽出された加工情報の変更方法に基づいて前記候補工具抽出手段によって抽出された工具を使用して再度前記被加工物を擬似的に加工することを特徴とする請求項1記載の加工条件最適化装置。 - 前記加工情報変更方法抽出手段による加工情報の変更方法の抽出、または前記候補工具抽出手段による工具の抽出は、前記加工情報補正方法抽出手段によって該当する前記加工情報の補正方法ないと判断されたときに行われることを特徴とする請求項3または請求項4記載の加工条件最適化装置。
- さらに、前記加工情報補正実行手段によって抽出された補正方法、前記加工情報変更方法抽出手段によって抽出された加工情報の変更方法のいずれかに基づいて前記被加工物の加工を行った場合に、最も加工時間の短いものを変更候補として選定する変更候補選定手段を有することを特徴とする請求項1記載の加工条件最適化装置。
- さらに、前記被加工物の加工に要するサイクルタイムを加工種類別に記憶する所要サイクルタイム記憶手段を有し、
前記変更候補選定手段は、前記サイクルタイムも考慮して前記変更候補を選定することを特徴とする請求項7記載の加工条件最適化装置。
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JP2005007499A true JP2005007499A (ja) | 2005-01-13 |
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2003
- 2003-06-17 JP JP2003172322A patent/JP2005007499A/ja not_active Withdrawn
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